JP2023096853A - セラミックス製品および装飾用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】光沢と発色が良好な銀色装飾部を有するセラミックス製品を提供する。【解決手段】ここで開示されるセラミックス製品は、銀色装飾部を有しており、銀色装飾部は、貴金属成分を含み、貴金属成分は白金成分を主体として構成されている。ここで、SCI方式で測定したときの前記銀色装飾部の8°グロス値が500以上であり、かつ、前記8°グロス値を、SCE方式で測定したときの前記銀色装飾部の明度L*で除した値(8°グロス値/明度L*)が11以上である。【選択図】図2
Description
本発明は、セラミックス製品および装飾用組成物に関する。詳しくは、銀色装飾部を有するセラミックス製品と、当該銀色装飾部を形成するための装飾用組成物に関する。
陶磁器、ガラス器、琺瑯器などのセラミックス製品の表面には、優美または豪華な印象を与えるために、金色系や銀色系の装飾部が形成されることがある。かかる装飾部は、例えば、金属レジネートなどの金属有機化合物を含有する組成物をセラミックス製品の表面に塗布し、焼成することによって形成される。
上記構成の装飾部を形成するための組成物の一例が、特許文献1および2に記載されている。特許文献1および2においては、金(Au)を主な構成成分として含有し、金色系または銀色系の装飾部を形成するための上絵付用の水金が開示されている。
ところで、上記したような装飾部を有するセラミックス製品は、目視において優美又は豪華な印象を感じられることが好ましい。本発明者らが鋭意検討した結果によれば、光沢度を示すグロス値のみを調整した場合には、目視する角度によって反射する光の量が変わるため銀色が曇って(白くくすんで)見え、銀色装飾部の光沢(艶感)が十分に感じられないことを見出した。
そこで、本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、目視において、光沢と発色が良好な銀色装飾部を有するセラミックス製品を提供することにある。また、他の目的は、当該銀色装飾部を実現する装飾用組成物を提供することにある。
上記目的を実現するべく、ここで開示されるセラミックス製品は、銀色装飾部を有しており、上記銀色装飾部は、貴金属成分を含み、上記貴金属成分は白金成分を主体として構成されている。ここで、SCI方式で測定したときの上記銀色装飾部の8°グロス値が500以上であり、かつ、上記8°グロス値を、SCE方式で測定したときの上記銀色装飾部の明度L*で除した値(8°グロス値/明度L*)が11以上である。
かかる構成のセラミックス製品は、装飾部の8°グロス値が500以上であることによりに光沢が十分な銀色装飾部を有する。また、8°グロス値/明度L*が11以上であることにより、目視において曇りが感じられない銀色装飾部が実現される。したがって、かかる構成であれば、目視において、光沢と発色を十分に感じられる銀色装飾部を有するセラミックス製品を提供することができる。
かかる構成のセラミックス製品は、装飾部の8°グロス値が500以上であることによりに光沢が十分な銀色装飾部を有する。また、8°グロス値/明度L*が11以上であることにより、目視において曇りが感じられない銀色装飾部が実現される。したがって、かかる構成であれば、目視において、光沢と発色を十分に感じられる銀色装飾部を有するセラミックス製品を提供することができる。
ここで開示されるセラミックス製品の好ましい一態様では、上記銀色装飾部は、電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)観察に基づく上記貴金属成分の面積率が、37%以上である。
かかる構成によれば、目視において、光沢と発色を十分に感じられる銀色装飾部を有するセラミックス製品を提供することができる。
かかる構成によれば、目視において、光沢と発色を十分に感じられる銀色装飾部を有するセラミックス製品を提供することができる。
ここで開示されるセラミックス製品において上記貴金属成分は貴金属粒子を含み、上記貴金属成分の面積率が37%以上である態様においては、貴金属粒子は、個数基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)が5nm以上であってもよい。また、他の好ましい一態様では、上記貴金属粒子は、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)が20nm以上であってもよい。他の好ましい一態様では、上記貴金属粒子は、算術平均径が35nm以上であってもよい。
ここで開示されるセラミックス製品の好ましい一態様では、上記銀色装飾部のシート抵抗値が1×104Ω/□以上である。
かかる構成によれば、目視において十分な光沢と発色を感じられる銀色装飾部であって、さらに電子レンジにおいてスパークしない絶縁性を有する銀色装飾部を備えるセラミックス製品が実現される。
かかる構成によれば、目視において十分な光沢と発色を感じられる銀色装飾部であって、さらに電子レンジにおいてスパークしない絶縁性を有する銀色装飾部を備えるセラミックス製品が実現される。
上記他の目的を実現するべく、ここに開示される装飾用組成物が提供される。ここで開示される装飾用組成物は、セラミックス基材の銀色加飾に用いられる装飾用組成物であって、少なくとも貴金属元素と、マトリクス形成元素と、を含む。上記貴金属元素は、少なくともPtを含み、上記マトリクス形成元素は、第1元素と第2元素とを含む。上記第1元素は、SiおよびBiからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含み、上記第2元素は、Al、Zr、Tiおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含んでいる。ここで、上記貴金属元素と上記マトリクス形成元素との合計を100mol%とするモル比において、上記貴金属元素の含有量が76mol%以上95mol%以下であり、上記第2元素の含有量が1.5mol%以上である。
かかる構成によれば、目視において、光沢と発色を十分に感じられる銀色装飾部を形成することができる。
かかる構成によれば、目視において、光沢と発色を十分に感じられる銀色装飾部を形成することができる。
ここで開示されるセラミックス製品の好ましい一態様では、上記貴金属元素と上記マトリクス形成元素との合計を100mol%としたときに、上記第2元素の含有量が1.5mol%以上15mol%以下である。
かかる構成によれば、光沢と発色を十分に感じられる銀色装飾部を好適に形成することができる。
かかる構成によれば、光沢と発色を十分に感じられる銀色装飾部を好適に形成することができる。
ここで開示されるセラミックス製品の好ましい一態様では、上記貴金属元素と上記マトリクス形成元素との合計を100mol%とするモル比において、以下の組成:
Pt 60mol%~95mol%、
Au、Rh、PdおよびAgの合計 0mol%~20mol%、
SiおよびBiの合計 1mol%~16mol%、
Al 0mol%~13mol%、
Zr 0mol%~7mol%、
Ti 0mol%~7mol%、
希土類元素 0mol%~7mol%
(ただし、Alが10mol%以上の場合には、希土類元素が2mol%以上)、
を有する。
かかる構成によれば、目視において十分な光沢と発色を感じることができ、さらに電子レンジにおいてスパークしない絶縁性を有する銀色装飾部を形成することができる。
Pt 60mol%~95mol%、
Au、Rh、PdおよびAgの合計 0mol%~20mol%、
SiおよびBiの合計 1mol%~16mol%、
Al 0mol%~13mol%、
Zr 0mol%~7mol%、
Ti 0mol%~7mol%、
希土類元素 0mol%~7mol%
(ただし、Alが10mol%以上の場合には、希土類元素が2mol%以上)、
を有する。
かかる構成によれば、目視において十分な光沢と発色を感じることができ、さらに電子レンジにおいてスパークしない絶縁性を有する銀色装飾部を形成することができる。
以下、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄(例えば、加飾されるセラミックス基材の製造方法など)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。ここで開示される技術の内容は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」との表記は、A以上B以下を意味する。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
1.セラミックス製品
以下、ここに開示されるセラミックス製品の一実施形態について説明する。ここに開示されるセラミックス製品は、貴金属成分を含む銀色装飾部を備えている。例えば、セラミックスを主体として構成される基材の上に、当該銀色装飾部を備えていてもよい。あるいは、例えば、セラミックスを主体として構成される基材の上に、非晶質材料(典型的にはガラス)を主体として構成されるコート層と、当該銀色装飾部と、を備えていてもよい。
以下、ここに開示されるセラミックス製品の一実施形態について説明する。ここに開示されるセラミックス製品は、貴金属成分を含む銀色装飾部を備えている。例えば、セラミックスを主体として構成される基材の上に、当該銀色装飾部を備えていてもよい。あるいは、例えば、セラミックスを主体として構成される基材の上に、非晶質材料(典型的にはガラス)を主体として構成されるコート層と、当該銀色装飾部と、を備えていてもよい。
(1)基材
基材は、セラミックスを主体として構成される成形体(例えば、セラミックスの含有率が50質量%以上である成形体)である。かかる基材を構成するセラミックスとしては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO2)、セリア(CeO2)、イットリア(Y2O3)などが挙げられる。基材の厚みや形状、硬さや色などは、セラミックス製品の用途に応じて適宜変更することができ、ここに開示される技術を限定するものではないため、詳細な説明は省略する。なお、上記物質名の後の括弧内に示された化学式は、当該物質の代表組成を示すものであり、実際のセラミックの組成がかかる化学式のものに限定されることを意図したものではない。
基材は、セラミックスを主体として構成される成形体(例えば、セラミックスの含有率が50質量%以上である成形体)である。かかる基材を構成するセラミックスとしては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO2)、セリア(CeO2)、イットリア(Y2O3)などが挙げられる。基材の厚みや形状、硬さや色などは、セラミックス製品の用途に応じて適宜変更することができ、ここに開示される技術を限定するものではないため、詳細な説明は省略する。なお、上記物質名の後の括弧内に示された化学式は、当該物質の代表組成を示すものであり、実際のセラミックの組成がかかる化学式のものに限定されることを意図したものではない。
(2)コート層
コート層は、非晶質材料(例えばガラス)を主体として構成される層(例えば、非晶質材料の含有率が50質量%以上である層)である。かかるコート層は、基材の保護などのために基材の表面に形成され得る。なお、コート層は必須ではなく、他の形態において省略することも可能である。かかるコート層は、例えば、釉薬を基材の表面に塗布した後に焼成することにより形成される。ここで釉薬とは、焼成されることで酸化物となり、非晶質マトリクスを形成する金属元素および半金属元素を含有する薬剤である。この釉薬は、銀色装飾部の非晶質領域に含まれる元素と同じ元素を含んでいてもよいし、異なる元素を含んでいてもよい。
コート層は、非晶質材料(例えばガラス)を主体として構成される層(例えば、非晶質材料の含有率が50質量%以上である層)である。かかるコート層は、基材の保護などのために基材の表面に形成され得る。なお、コート層は必須ではなく、他の形態において省略することも可能である。かかるコート層は、例えば、釉薬を基材の表面に塗布した後に焼成することにより形成される。ここで釉薬とは、焼成されることで酸化物となり、非晶質マトリクスを形成する金属元素および半金属元素を含有する薬剤である。この釉薬は、銀色装飾部の非晶質領域に含まれる元素と同じ元素を含んでいてもよいし、異なる元素を含んでいてもよい。
コート層の組成は、ここに開示される技術の効果を著しく阻害しない限りにおいて、特に限定されず、セラミックス製の基材の保護に使用され得る従来公知の成分を適宜選択することができる。一例として、コート層は、Si、Al、Fe、Mg、Na、Zn、K、Ca、Snなどを含み得る。そして、これらの元素は、非晶質酸化物の形態でマトリクスを形成し得る。すなわち、コート層には、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カリウム(Na2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化カリウム(K2O)、酸化カルシウム(CaO)、酸化スズ(SnO2)などを含む非晶質マトリクスが形成され得る。なお、コート層における各元素の存在比率は、ここに開示される技術を限定するものではないため、詳細な説明を省略する。
(3)銀色装飾部
ここに開示されるセラミックス製品は、銀色装飾部を有している。銀色装飾部は、上記した基材の表面またはコート層の表面に形成され得る。ここに開示されるセラミックス製品の銀色装飾部は、貴金属成分を含んでいる。当該貴金属成分は、貴金属粒子を含み得る。例えば、貴金属成分は貴金属粒子から構成されていてもよい。かかる銀色装飾部は、SCI方式で測定したときの8°グロス値が500以上であり、かつ、8°グロス値をSCE方式で測定したときの明度L*で除した値(8°グロス値/明度L*)が11以上である。すなわち、ここに開示される銀色装飾部は、光沢があり、発色が良好な銀色を呈する装飾部である。
ここに開示されるセラミックス製品は、銀色装飾部を有している。銀色装飾部は、上記した基材の表面またはコート層の表面に形成され得る。ここに開示されるセラミックス製品の銀色装飾部は、貴金属成分を含んでいる。当該貴金属成分は、貴金属粒子を含み得る。例えば、貴金属成分は貴金属粒子から構成されていてもよい。かかる銀色装飾部は、SCI方式で測定したときの8°グロス値が500以上であり、かつ、8°グロス値をSCE方式で測定したときの明度L*で除した値(8°グロス値/明度L*)が11以上である。すなわち、ここに開示される銀色装飾部は、光沢があり、発色が良好な銀色を呈する装飾部である。
銀色装飾部の光沢度は、SCI方式で測定した8°グロス値(以下、単に「8°グロス値」ともいう。)によって評価することができる。ここで、「8°グロス値」とは、光沢度を示す値であり、8°グロス値が高いほど銀色装飾部に光沢があり艶感が向上する。8°グロス値の測定は、JIS Z 8741:1997に基づく60°光沢計に近似するように設計された分光測色計(例えばコニカミノルタセンシング株式会社製のCM-700dまたはCM-600dなど)を用いて行うことができる。なお、SCI(Specular Components Include)方式とは、正反射光を含めて測定する測定方式である。
また、銀色装飾部の発色性は、SCE方式で測定された明度L*(以下、単に「明度L*」ともいう。)によって評価することができる。明度とは、JIS Z 8781:2013に基づくL*a*b*表色系において、白みの程度を示す値であり、明度L*の値が高いほど、白みが強いことを示す。明度L*の測定は、JIS Z 8722:2009に準拠した分光測色計(例えばコニカミノルタセンシング株式会社製のCM-700dまたはCM-600dなど)を用いて行うことができる。なお、SCE(Specular Components Exclude)方式とは、正反射光を取り除き、拡散反射光のみを測定する方法であり、拡散反射測定方式とも呼ばれる。SCE方式では、同じ色であっても表面状態によって測定値が異なり、目視によって色を認識するときと近い測定結果を得ることができる。
セラミックス製品の銀色装飾部は、典型的には後述する装飾用組成物をセラミックス基材(またはコート層)の表面に塗布して焼成することにより作製することができる。この焼成の際に、貴金属粒子が過焼結した銀色装飾部においては、8°グロス値が低く、明度L*が高くなりすぎる傾向にある。これは、以下のように推測される。例えば、貴金属元素の含有量が高い装飾用組成物を、セラミックス製品の基材(例えば陶磁器)に付与して焼成した場合には、貴金属粒子が過焼結しやすく、貴金属粒子が凝集することにより、銀色装飾部内において貴金属成分が分散し難くなる。これにより、当該貴金属成分が少ない(または存在しない)領域の発色が低下することで曇りが生じ、これに伴ってグロス値(光沢度)が低下する。また、貴金属粒子が過焼結した場合には、銀色装飾部の表面に高低差のある凸凹が生じ、これによってもグロス値(光沢度)が損なわれ得る。そして、貴金属成分が少ない(または存在しない)領域においては、基材の色(例えば白色)が透けて見えやすくなる。このため、明度L*は高くなる傾向にある。8°グロス値が低く、明度L*が高すぎる銀色装飾部は目視において銀色の光沢が十分に感じられず、曇って見える。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果によれば、8°グロス値と明度L*との両方の指標に基づいて銀色装飾部を評価することにより、目視において曇りがなく光沢と発色が良好に感じられる銀色装飾部が実現されることを見出した。
具体的には、ここに開示されるセラミックス製品の銀色装飾部は、8°グロス値が500以上であり、かつ、8°グロス値を明度L*で除した値(8°グロス値/明度L*)が11以上である。銀色装飾部の8°グロス値は、500以上であって、540以上であることが好ましく、600以上であってもよく、675以上であってもよく、710以上であってもよく、780以上であってもよく、830以上であってもよく、900以上であってもよい。また、8°グロス値/明度L*は、11以上であって、11.5以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、25.9以上であることがさらに好ましく、33以上であってもよく、例えば40以上であってもよい。このような銀色装飾部は、光沢が十分で曇りがなく発色が良好な銀色装飾部である。
明度L*は、上記値を満たすように調整されていれば特に限定されない。明度L*は、例えば、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、25以上であってもよい。明度L*が高すぎる場合には、上記したように白みが強く曇った銀色になりがちである。かかる観点から、明度L*は、55以下であることが好ましく、45以下であることがより好ましく、35以下であることがさらに好ましい。例えば、明度L*は、20以上45以下程度であることが好ましい。
銀色装飾部が好適な銀色を呈するためには、JIS Z 8781:2013に基づくL*a*b*表色系における、色度a*および色度b*が高すぎず低すぎない値に調整されていることが好ましい。ここで、色度a*および色度b*は、色の方向を示しており、+a*は赤色方向、-a*は緑色方向、+b*は黄色方向、-b*は青色方向を示す。かかる色度a*および色度b*の測定は、JIS Z 8722:2009に準拠した分光測色計を用いて行うことができる。
特に限定されるものではないが、SCE方式で測定した場合の色度a*(以下、単に「色度a*」ともいう。)は、例えば-10以上10以下であることが好ましく、-5以上7以下であることがより好ましい。また、SCE方式で測定した場合の色度b*(以下、単に「色度b*」ともいう。)は、例えば-10以上20以下であることが好ましく、-5以上19以下であることがより好ましく、-3以上14以下であることがさらに好ましい。
特に限定されるものではないが、SCE方式で測定した場合の色度a*(以下、単に「色度a*」ともいう。)は、例えば-10以上10以下であることが好ましく、-5以上7以下であることがより好ましい。また、SCE方式で測定した場合の色度b*(以下、単に「色度b*」ともいう。)は、例えば-10以上20以下であることが好ましく、-5以上19以下であることがより好ましく、-3以上14以下であることがさらに好ましい。
銀色装飾部が好適な発色性および光沢を有するためには、上述したように貴金属粒子が過焼結していないことが好ましく、銀色装飾部の平面視において貴金属成分が一定の面積率を有していることが好ましい。好適な一態様では、ここに開示されるセラミックス製品の銀色装飾部は、電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)観察に基づく貴金属成分の面積率が37%以上である。FESEM観察に基づく貴金属成分の面積率は、39%以上であってもよく、43%以上であってもよく、50%以上であってもよい。FESEM観察に基づく貴金属成分の面積率の上限は、後述する絶縁性を確保する観点からは、例えば、90%以下であることが好ましく、85%以下であってもよい。
ここで、本明細書における「FESEM観察に基づく貴金属成分の面積率(%)」は、下記のようにして求めることができる。まず、基材に塗布された銀色装飾部の表面が上になるよう水平に各サンプルを試料台に固定し、オスミウムプラズマコーター(例えば、日本レーザー電子株式会社製:OPC80N等)を用いてコーティングし、表面がオスミウムで被覆された測定用試料を作製する。なお、オスミウムのコーティングの条件は、例えば、放電電圧が1.2kV、真空度が6~8Pa、コーティング時間が10秒に設定する。次に、電界放出型走査型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製:SU8230等)を用いて、銀色装飾部の表面のFESEM観察画像をランダムに複数枚(例えば3~20枚)取得する。このとき、傷や不純物などの画像解析の妨げとなるものが無い部分を選択して画像を取得する。なお、FESEM観察画像の取得における条件は、例えば、加速電圧が10.0kV、エミッション電流は10±0.5μA、に設定するとよい。また、当該FESEM観察画像の視野の倍率は、一視野においてカウント可能な粒子数が1000個~10000個となるように、適宜調整されればよく、例えば1000倍~100000倍に調整するとよい。
次いで、上記取得したFESEM観察画像に対して、著名な画像処理ソフトimage J(ver.1.53e)を用いて、上記取得した複数枚のFESEM観察画像に対して、貴金属成分が黒色、それ以外の成分(例えばマトリクス形成成分)が白色となるように二値化処理を実施する。二値化処理において、貴金属成分の領域と、それ以外の成分の領域を区別するための輝度閾値は、image Jのオート設定により決定された値を使用すればよい。そして、上記取得したFESEM観察画像において輝度が高い領域(すなわち、輝度閾値がオート設定により決定された値以上の領域)を貴金属成分の領域、輝度が低い領域(すなわち、輝度閾値がオート設定により決定された値未満の領域)をそれ以外の成分の領域として、画像を二値化する。オート設定により決定される閾値は、取得したFESEM画像のコントラストや明るさによって変動するため、特に限定されないが、上述の方法で取得したFESEM画像に対しては、一般に、輝度値50~150が閾値として設定される。上記取得した複数枚のFESEM観察画像においてそれぞれ、FESEM観察画像全体の面積に対する黒色の部分の面積を算出する。そして、かかる値の平均値を算出することにより、本明細書における「FESEM観察に基づく貴金属成分の面積率(%)」を求めることができる。
次いで、上記取得したFESEM観察画像に対して、著名な画像処理ソフトimage J(ver.1.53e)を用いて、上記取得した複数枚のFESEM観察画像に対して、貴金属成分が黒色、それ以外の成分(例えばマトリクス形成成分)が白色となるように二値化処理を実施する。二値化処理において、貴金属成分の領域と、それ以外の成分の領域を区別するための輝度閾値は、image Jのオート設定により決定された値を使用すればよい。そして、上記取得したFESEM観察画像において輝度が高い領域(すなわち、輝度閾値がオート設定により決定された値以上の領域)を貴金属成分の領域、輝度が低い領域(すなわち、輝度閾値がオート設定により決定された値未満の領域)をそれ以外の成分の領域として、画像を二値化する。オート設定により決定される閾値は、取得したFESEM画像のコントラストや明るさによって変動するため、特に限定されないが、上述の方法で取得したFESEM画像に対しては、一般に、輝度値50~150が閾値として設定される。上記取得した複数枚のFESEM観察画像においてそれぞれ、FESEM観察画像全体の面積に対する黒色の部分の面積を算出する。そして、かかる値の平均値を算出することにより、本明細書における「FESEM観察に基づく貴金属成分の面積率(%)」を求めることができる。
ここに開示されるセラミックス製品の銀色装飾部の貴金属成分は、貴金属粒子を含み得る。ここで、セラミックス基材上に形成される加飾膜においては、一般的に、当該加飾膜中に含まれる貴金属粒子の粒子径が小さくなりすぎた場合には、銀色の発色性が低下して、貴金属粒子の表面プラズモン共鳴に由来した発色となる(例えば、貴金属粒子がPt粒子である場合には、茶色みが強くなる)ことが知られている。したがって、FESEM観察に基づく貴金属成分の面積率が37%以上であっても、当該貴金属成分を構成し得る貴金属粒子の粒子径が過剰に小さくなった場合(例えば、貴金属粒子の個数基準の粒度分布におけるD50が5nm未満)には、目視において銀色の発色性が低下し得る。すなわち、発色および光沢がより良好な銀色装飾部を実現するためには、貴金属粒子の粒子径が過剰に小さくなっていないことが好ましい。
好適な一態様では、セラミックス製品の銀色装飾部の貴金属成分に含まれる貴金属粒子は、個数基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)が5nm以上である。D50は、例えば8nm以上であることがより好ましく、11nm以上であることがさらに好ましく、30nm以上であってもよい。D50の上限は、上記貴金属成分の面積率を満たすように調整されていればよく、例えば500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。これにより、銀色の発色が良好な銀色装飾部を有するセラミックス製品が実現され得る。
なお、本明細書における「個数基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)」は、以下のようにして求めることができる。まず、上記取得したFESEM観察画像において、上述したようにimage Jを用いた二値化処理を行う。続いて、image J(ver.1.53e)の「Analyze particles」機能より、貴金属粒子の面積を測定する。このときの測定条件は、サイズ、円形度ともに0-infinityに設定するとよい。また、FESEM画像の倍率は、焼結した貴金属粒子を正確にカウントできるように設定されればよい。例えば、一視野における粒子のカウント数が1000以上となるようにFESEM画像の倍率を調整するとよい。このとき、画像の淵に存在する粒子もカウント対象として設定する。一方で、一視野における粒子のカウント数が多すぎると、各貴金属粒子の輪郭がぼやけることで、正確な面積の測定ができなくなる虞がある。よって、一視野における粒子のカウント数は、10000以下となるようにFESEM画像の倍率を調整するとよい。そして、貴金属粒子の面積に基づき、下記の式(1)により、各貴金属粒子の円相当径を算出することができる。
D=2×(π/S)0.5 (1)
ここで、式(1)中のDは「円相当径(nm)」であり、Sは「画像解析処理によって得られる貴金属粒子の面積(nm2)」である。
そして、少なくとも1000個以上の粒子において算出した円相当径を粒径順に並べた個数基準の粒度分布を作成し、当該粒度分布における累積頻度50個数%に相当する粒子径を、本明細書における「個数基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)」とする。
なお、本明細書における「個数基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)」は、以下のようにして求めることができる。まず、上記取得したFESEM観察画像において、上述したようにimage Jを用いた二値化処理を行う。続いて、image J(ver.1.53e)の「Analyze particles」機能より、貴金属粒子の面積を測定する。このときの測定条件は、サイズ、円形度ともに0-infinityに設定するとよい。また、FESEM画像の倍率は、焼結した貴金属粒子を正確にカウントできるように設定されればよい。例えば、一視野における粒子のカウント数が1000以上となるようにFESEM画像の倍率を調整するとよい。このとき、画像の淵に存在する粒子もカウント対象として設定する。一方で、一視野における粒子のカウント数が多すぎると、各貴金属粒子の輪郭がぼやけることで、正確な面積の測定ができなくなる虞がある。よって、一視野における粒子のカウント数は、10000以下となるようにFESEM画像の倍率を調整するとよい。そして、貴金属粒子の面積に基づき、下記の式(1)により、各貴金属粒子の円相当径を算出することができる。
D=2×(π/S)0.5 (1)
ここで、式(1)中のDは「円相当径(nm)」であり、Sは「画像解析処理によって得られる貴金属粒子の面積(nm2)」である。
そして、少なくとも1000個以上の粒子において算出した円相当径を粒径順に並べた個数基準の粒度分布を作成し、当該粒度分布における累積頻度50個数%に相当する粒子径を、本明細書における「個数基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)」とする。
好適な一態様では、貴金属粒子は、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)が20nm以上である。D90は、例えば35nm以上であることがより好ましく、45nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であってもよい。D90の上限は、上記貴金属成分の面積率を満たすように調整されていればよく、例えば800nm以下であってもよく、650nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。これにより、銀色の発色が良好な銀色装飾部を有するセラミックス製品が実現され得る。
なお、本明細書における「個数基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)」は、以下のようにして求めることができる。まず、上記取得したFESEM観察画像において、上述したように円相当径を算出する。そして、少なくとも1000個以上の粒子において算出した円相当径を粒径順に並べた個数基準の粒度分布を作成し、当該粒度分布における累積頻度90個数%に相当する粒子径を、本明細書における「個数基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)」とする。
なお、本明細書における「個数基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)」は、以下のようにして求めることができる。まず、上記取得したFESEM観察画像において、上述したように円相当径を算出する。そして、少なくとも1000個以上の粒子において算出した円相当径を粒径順に並べた個数基準の粒度分布を作成し、当該粒度分布における累積頻度90個数%に相当する粒子径を、本明細書における「個数基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)」とする。
好適な一態様では、貴金属粒子の算術平均径が35nm以上である。貴金属粒子の算術平均径は、例えば40nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、70nm以上であってもよい。一方で、貴金属粒子の算術平均径の上限は特に限定されないが、例えば、1250nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、330nm以下であることがさらに好ましく、例えば280nm以下であってもよい。これにより、銀色の発色が良好な銀色装飾部を有するセラミックス製品が実現され得る。
なお、本明細書における「貴金属粒子の算術平均径」は、以下のようにして求めることができる。まず、上記取得したFESEM観察画像において、上述したように円相当径を算出する。そして、少なくとも1000個以上の粒子において上記円相当径を算出し、当該算出した円相当径の平均値を求めることにより、「貴金属粒子の算術平均径」を求めることができる。
なお、本明細書における「貴金属粒子の算術平均径」は、以下のようにして求めることができる。まず、上記取得したFESEM観察画像において、上述したように円相当径を算出する。そして、少なくとも1000個以上の粒子において上記円相当径を算出し、当該算出した円相当径の平均値を求めることにより、「貴金属粒子の算術平均径」を求めることができる。
ここに開示されるセラミックス製品の銀色装飾部は、好適な一態様では絶縁性を有している。なお、本明細書において、「絶縁性を有する」とは、シート抵抗値が1×104Ω/□以上であることをいう。このようなシート抵抗値を有する銀色装飾部は、電子レンジによる加熱によって、スパークしない絶縁性を有する。かかるシート抵抗値は、例えば、四探針法によって測定することができる。
なお、貴金属粒子が過焼結した場合には、当該貴金属粒子が密に存在する領域が形成され得る。これによって、セラミックス製品の銀色装飾部が導電性を有することがあり得る。したがって、絶縁性を確保する観点においても、貴金属粒子の過焼結が抑制されていることが好ましい。
なお、貴金属粒子が過焼結した場合には、当該貴金属粒子が密に存在する領域が形成され得る。これによって、セラミックス製品の銀色装飾部が導電性を有することがあり得る。したがって、絶縁性を確保する観点においても、貴金属粒子の過焼結が抑制されていることが好ましい。
ここに開示されるセラミックス製品の銀色装飾部の貴金属成分は、白金成分を主体として構成されている。ここで、本明細書において、「貴金属成分は白金成分を主体として構成される」とは、貴金属成分に含まれる貴金属元素の合計を100mol%としたときに、Ptの含有量(mol%)が最も多いことを意味する。好ましくは、貴金属成分に含まれる貴金属元素の合計を100mol%としたときに、Ptの含有量は、70mol%以上である。Ptの含有量は、75mol%以上であってもよく、79mol%以上であってもよく、85mol%以上であってもよく、90mol%以上であってもよく、95mol%以上であってもよく、例えば100mol%であってもよい。Ptの含有量は例えば、70mol%以上100mol%以下であることが好ましく、70mol%以上99.5mol%以下であることがより好ましく、78mol%以上99mol%以下であることがさらに好ましい。これにより、発色が良好な銀色装飾部を得ることができる。なお、銀色装飾部の各元素の含有量は、例えば、一般的な走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)-エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)を用いた元素分析により測定することができる。
なお、ここに開示されるセラミックス製品の銀色装飾部に含まれる貴金属成分は、後述する装飾用組成物に含まれる貴金属元素により構成され得る。すなわち、銀色装飾部における貴金属元素の割合は、概ね装飾用組成物の貴金属元素の割合が反映され得る。ここで、「貴金属元素」とは、典型的には白金(Pt)、金(Au)、ロジウム(Rh)、および銀(Ag)を含む。また、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、およびオスミウム(Os)を含み得る。
なお、ここに開示されるセラミックス製品の銀色装飾部に含まれる貴金属成分は、後述する装飾用組成物に含まれる貴金属元素により構成され得る。すなわち、銀色装飾部における貴金属元素の割合は、概ね装飾用組成物の貴金属元素の割合が反映され得る。ここで、「貴金属元素」とは、典型的には白金(Pt)、金(Au)、ロジウム(Rh)、および銀(Ag)を含む。また、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、およびオスミウム(Os)を含み得る。
銀色装飾部は、貴金属成分に含まれる貴金属元素としてAu、Rh、Pd、IrおよびAgをそれぞれ含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記貴金属元素が銀色装飾部に含まれる場合には、例えば、Au、Rh、Pd、IrおよびAgの合計が、30mol%以下であることが好ましく、25mol%以下であることがより好ましい。Auが銀色装飾部に含まれる場合には、貴金属成分に含まれる貴金属元素の合計を100mol%としたときに、Auの含有量は、0.1mol%以上25mol%以下であってもよく、3mol%以上20mol%以下であってもよい。Rhが銀色装飾部に含まれる場合にRhの含有量は、0.1mol%以上7mol%以下であってもよく、0.5mol%以上2mol%以下であってもよく、0.5mol%以上1.5mol%以下であってもよい。Irが銀色装飾部に含まれる場合にIrの含有量は、0.1mol%以上7mol%以下であってもよく、0.5mol%以上2mol%以下であってもよく、0.5mol%以上1.5mol%以下であってもよい。また、Pdが銀色装飾部に含まれる場合にPdの含有量は、0.1mol%以上10mol%以下であってもよく、1mol%以上7mol%以下であってもよい。Agが銀色装飾部に含まれる場合にAgの含有量は、0.1mol%以上12mol%以下であってもよく、1mol%以上10mol%以下であってもよい。
銀色装飾部は、典型的には、セラミックス製品の基材(またはコート層)の表面に膜状に形成されている。銀色装飾部の平均厚みは、特に限定されないが、20nm以上300nm以下であることが好ましく、50nm以上150nm以下であることがより好ましい。かかる平均厚みを有する銀色装飾部であれば、セラミックス基材の色が透けることなく、良好な銀色の銀色装飾部を実現される。かかる銀色装飾部の平均厚みは、例えば塗布方法により適宜調整することができる。
2.装飾用組成物
以下、ここに開示される装飾用組成物の一実施形態について説明する。かかる装飾用組成物をセラミックス製品の基材(またはコート層)の表面に塗布して焼成することにより、上述したように光沢度および発色性が良好な銀色装飾部を備えるセラミックス製品を実現することができる。ここに開示される装飾用組成物は、少なくとも貴金属元素とマトリクス形成元素とを含んでいる。貴金属元素は、少なくとも白金(Pt)を含む。マトリクス形成元素は、少なくとも第1元素と第2元素とを含む。ここで、第1元素は、ケイ素(Si)およびビスマス(Bi)からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。第2元素は、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)および希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。以下、ここに開示される装飾用組成物が含み得る各種成分について具体的に説明する。
以下、ここに開示される装飾用組成物の一実施形態について説明する。かかる装飾用組成物をセラミックス製品の基材(またはコート層)の表面に塗布して焼成することにより、上述したように光沢度および発色性が良好な銀色装飾部を備えるセラミックス製品を実現することができる。ここに開示される装飾用組成物は、少なくとも貴金属元素とマトリクス形成元素とを含んでいる。貴金属元素は、少なくとも白金(Pt)を含む。マトリクス形成元素は、少なくとも第1元素と第2元素とを含む。ここで、第1元素は、ケイ素(Si)およびビスマス(Bi)からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。第2元素は、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)および希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。以下、ここに開示される装飾用組成物が含み得る各種成分について具体的に説明する。
(1)貴金属元素
貴金属元素は、装飾用組成物の焼成体(すなわち、銀色装飾部)の着色に寄与する成分である。上述したように、ここに開示される装飾用組成物は、貴金属成分として少なくともPtを含む。また、Pt以外にも含み得る貴金属元素としては具体的に、金(Au)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)などが挙げられる。なお、貴金属元素は、例えば、金属レジネート(金属の有機化合物)の状態で、装飾用組成物中に含まれ得る。なお、装飾用組成物中の貴金属元素の状態は、上述の金属レジネートに限定されず、錯体や重合体であってもよいし、金属粒子であってもよい。
貴金属元素は、装飾用組成物の焼成体(すなわち、銀色装飾部)の着色に寄与する成分である。上述したように、ここに開示される装飾用組成物は、貴金属成分として少なくともPtを含む。また、Pt以外にも含み得る貴金属元素としては具体的に、金(Au)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)などが挙げられる。なお、貴金属元素は、例えば、金属レジネート(金属の有機化合物)の状態で、装飾用組成物中に含まれ得る。なお、装飾用組成物中の貴金属元素の状態は、上述の金属レジネートに限定されず、錯体や重合体であってもよいし、金属粒子であってもよい。
ここに開示される装飾用組成物中の貴金属元素の含有量は、装飾用組成物に含まれる貴金属元素とマトリクス形成元素との合計を100mol%とするモル比において、少なくとも76mol%以上である。貴金属元素の含有量は、79mol%以上であることが好ましく、82mol%以上であることがより好ましく、85mol%以上であってもよく、90mol%以上であってもよく、94mol%以上であってもよい。また、ここに開示される装飾用組成物は、マトリクス形成元素を含むため、貴金属元素の含有量は、97mol%以下であって、96mol%以下であってもよく、95mol%以下であることが好ましい。ここに開示される装飾用組成物は、後述する第2元素を所定の割合で含むことにより、貴金属元素の含有量が多い組成であっても、貴金属粒子が過焼結することが抑制され、曇りがなく発色が良好な銀色の銀色装飾部を得ることができる。なお、以下の説明において特に断りのない限りは、「装飾用組成物中の特定の元素の含有量」とは、装飾用組成物に含まれる貴金属元素とマトリクス形成元素との合計を100mol%としたときの特定の元素の含有量(mol%)を示すものとする。
白金(Pt)は、上記した銀色装飾部において光沢のある銀色系色調を呈する成分である。Ptは、装飾用組成物に含まれる貴金属元素の中で主要な構成元素(すなわち、装飾用組成物中の貴金属元素の中で最も含有量が多い元素)である。Ptは、例えば、Ptレジネートの構成元素として装飾用組成物に含まれる。Ptレジネートは、焼成により、他の貴金属元素よりも粒子径の大きなPt粒子を形成する性質を有する。このため、Pt粒子は他の貴金属元素よりも焼結し難い性質を有している。これにより、装飾用組成物の装飾部において、Pt粒子同士が隔離して配置され易くなるため、導電性が抑制される。この結果、ここに開示される装飾用組成物は、銀色装飾部中の導電性を低下させる成分(例えば、Si、Biなどのマトリクス形成成分)の含有量が低い場合であっても、好適に絶縁性を有し、電子レンジの加熱によりスパークしない銀色装飾部を実現することができる。
またPtは、上述した貴金属元素の中でも、特に優れた発色を呈するため、優美又は豪華な印象を与える銀色装飾部を比較的容易に形成できるため好ましい。装飾用組成物中のPtの含有量は、60mol%以上であることが好ましく、66mol%以上含まれていることがより好ましく、70mol%以上含まれていてもよく、80mol%以上含まれていてもよく、90mol%以上含まれていてもよい。一方で、Ptの装飾用組成物中の含有量が高すぎる場合、銀色装飾部におけるPt粒子の数が過剰に多くなる。Pt粒子は、上述したように粒子径は大きくなりがちであるため、銀色装飾部の表面に高低差のある凸凹が生じ、光沢が損なわれ得る。そのため、装飾用組成物中のPtの含有量は、97mol%以下であることが適当であり、96mol%以下であってもよく、95mol%以下であることが好ましい。
金(Au)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)および銀(Ag)は、装飾用組成物の焼成体(すなわち銀色装飾部)において銀色の色合いを調整する成分である。ここに開示される装飾用組成物は、Au、Rh、Pd、IrおよびAgを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。Auが含まれる場合に装飾用組成物中のAuの含有量は、1mol%以上20mol%以下であることが好ましく、3mol%以上17mol%以下であることがより好ましい。Rhが含まれる場合に装飾用組成物中のRhの含有量は、0.1mol%以上5mol%以下であることが好ましく、0.8mol%以上3mol%以下であることがより好ましい。Pdが含まれる場合に装飾用組成物中のPdの含有量は、0.1mol%以上10mol%以下であることが好ましく、1mol%以上8mol%以下であることがより好ましい。Irが含まれる場合に装飾用組成物中のIrの含有量は、0.1mol%以上5mol%以下であることが好ましく、0.8mol%以上3mol%以下であることがより好ましい。Agが含まれる場合に装飾用組成物中のAgの含有量は、0.1mol%以上10mol%以下であることが好ましく、1mol%以上8mol%以下であることがより好ましい。
(2)マトリクス形成元素
本明細書において「マトリクス形成元素」とは、装飾用組成物の焼成体(銀色装飾部)において酸化物の状態で非晶質マトリクスを構築し得る金属元素と半金属元素とを包含する概念である。また、「非晶質マトリクス」とは、所定の金属元素および半金属元素の非晶質酸化物の(アモルファス構造の酸化物)が骨格となったうえで、種々の金属元素(または半金属元素)が酸化物として、または陽イオンの形態で、骨格内に存在している構造のことをいう。非晶質マトリクスを有する材料(非晶質材料)の一例として、ガラスが挙げられる。かかるマトリクス形成元素の一例として、Si、Bi、Zr、Ti、Al、Ni、Cr、Sm、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Sn、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Rb、B、V、Fe、Cu、P、Sc、Pm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、In、Coなどが挙げられる。なお、上述した貴金属元素の中には、焼成処理において一部が非晶質酸化物となって非晶質マトリクスの一部を構成し得る元素(Agなど)がある。しかし、本明細書では、便宜上、上記(1)貴金属元素にて挙げた元素はマトリクス形成元素とみなさないものとする。
また、貴金属元素と同様に、装飾用組成物中のマトリクス形成成分の形態は、特に限定されず、金属レジネート(金属の有機化合物)、錯体、重合体、微細な粒子(ガラスフリット)などの形態をとり得る。
本明細書において「マトリクス形成元素」とは、装飾用組成物の焼成体(銀色装飾部)において酸化物の状態で非晶質マトリクスを構築し得る金属元素と半金属元素とを包含する概念である。また、「非晶質マトリクス」とは、所定の金属元素および半金属元素の非晶質酸化物の(アモルファス構造の酸化物)が骨格となったうえで、種々の金属元素(または半金属元素)が酸化物として、または陽イオンの形態で、骨格内に存在している構造のことをいう。非晶質マトリクスを有する材料(非晶質材料)の一例として、ガラスが挙げられる。かかるマトリクス形成元素の一例として、Si、Bi、Zr、Ti、Al、Ni、Cr、Sm、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Sn、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Rb、B、V、Fe、Cu、P、Sc、Pm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、In、Coなどが挙げられる。なお、上述した貴金属元素の中には、焼成処理において一部が非晶質酸化物となって非晶質マトリクスの一部を構成し得る元素(Agなど)がある。しかし、本明細書では、便宜上、上記(1)貴金属元素にて挙げた元素はマトリクス形成元素とみなさないものとする。
また、貴金属元素と同様に、装飾用組成物中のマトリクス形成成分の形態は、特に限定されず、金属レジネート(金属の有機化合物)、錯体、重合体、微細な粒子(ガラスフリット)などの形態をとり得る。
ここに開示される装飾用組成物は、マトリクス形成元素を含む。マトリクス形成元素は、ケイ素(Si)およびビスマス(Bi)からなる群から選択される少なくとも一種の第1元素と、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)および希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の第2元素と、を少なくとも含む。装飾用組成物中のマトリクス形成元素の含有量は、3mol%以上であることが好ましく、4mol%以上であることがより好ましく、5mol%以上であることがより好ましい。上記した貴金属元素とのバランスを考慮すると、装飾用組成物中のマトリクス形成元素の含有量は、24mol%以下であることが好ましく、21mol%以下であることがより好ましく、18mol%以下であることがさらに好ましい。
(a)第1元素
上述したように、ここに開示される装飾用組成物は、マトリクス形成元素の第1元素として、ケイ素(Si)および/またはビスマス(Bi)を含む。SiおよびBiは、焼成処理後に酸化ケイ素(SiO2)または酸化ビスマス(Bi2O3)の状態で非晶質マトリクスの骨格を形成する成分である。装飾用組成物中の第1元素の含有量(すなわち、SiとBiの合計の含有量)は、1mol%以上であることが好ましく、1.4mol%以上であることがより好ましく、3mol%以上であってもよく、10mol%以上であることがさらに好ましい。一方で、第1元素の含有量が高すぎる場合には、銀色装飾部の光沢が失われ得る。このため、装飾用組成物中の第1元素の含有量は、16mol%以下であることが好ましく、13mol%以下であってもよい。
上述したように、ここに開示される装飾用組成物は、マトリクス形成元素の第1元素として、ケイ素(Si)および/またはビスマス(Bi)を含む。SiおよびBiは、焼成処理後に酸化ケイ素(SiO2)または酸化ビスマス(Bi2O3)の状態で非晶質マトリクスの骨格を形成する成分である。装飾用組成物中の第1元素の含有量(すなわち、SiとBiの合計の含有量)は、1mol%以上であることが好ましく、1.4mol%以上であることがより好ましく、3mol%以上であってもよく、10mol%以上であることがさらに好ましい。一方で、第1元素の含有量が高すぎる場合には、銀色装飾部の光沢が失われ得る。このため、装飾用組成物中の第1元素の含有量は、16mol%以下であることが好ましく、13mol%以下であってもよい。
Siは、上記したように非晶質マトリクスの骨格を形成する成分であって、銀色装飾部の強度を向上させることができる成分である。第1元素としてSiを含む場合に、装飾用組成物中のSiの含有量は、1mol%以上16mol%以下であることが好ましく、3mol%以上14mol%以下であることがより好ましく、5mol%以上11mol%以下であることがさらに好ましい。また、Biは、上記したように非晶質マトリクスの骨格を形成する成分であって、非晶質マトリクス(ガラス)を軟化させる効果があるため、基材に対する接着性を向上させることができる成分である。第1元素としてBiを含む場合に、装飾用組成物中のBiの含有量は、0.1mol%以上5mol%以下であることが好ましく、0.3mol%以上3mol%以下であることがより好ましく、1mol%以上2mol%以下であることがさらに好ましい。
(b)第2元素
上述したように、ここに開示される装飾用組成物は、マトリクス形成元素の第2元素として、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)および希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。第2元素は、装飾用組成物中に所定の含有量で含ませることにより、曇りがなく発色が良好な銀色の銀色装飾部を実現させることができる。ここに開示される技術を限定する意図はないが、かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。上記したように、装飾用組成物中の貴金属元素の含有量が多い場合には、焼成の際に貴金属粒子が過焼結して、銀色装飾部の発色性を低下させ得る。第2元素(Al、Zr、Ti、希土類元素)は、このような貴金属粒子が過焼結することを抑制し得ると推測される。このため、装飾用組成物中の貴金属元素の含有量が高い場合であっても、第2元素を所定量含ませることにより、曇りがなく発色が良好な銀色の銀色装飾部を実現させることができる。
上述したように、ここに開示される装飾用組成物は、マトリクス形成元素の第2元素として、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)および希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。第2元素は、装飾用組成物中に所定の含有量で含ませることにより、曇りがなく発色が良好な銀色の銀色装飾部を実現させることができる。ここに開示される技術を限定する意図はないが、かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。上記したように、装飾用組成物中の貴金属元素の含有量が多い場合には、焼成の際に貴金属粒子が過焼結して、銀色装飾部の発色性を低下させ得る。第2元素(Al、Zr、Ti、希土類元素)は、このような貴金属粒子が過焼結することを抑制し得ると推測される。このため、装飾用組成物中の貴金属元素の含有量が高い場合であっても、第2元素を所定量含ませることにより、曇りがなく発色が良好な銀色の銀色装飾部を実現させることができる。
装飾用組成物中の第2元素の含有量が少なすぎる場合には、上記した貴金属粒子が過焼結することを抑制する効果が十分に発揮されない。このため、装飾用組成物中の第2元素の含有量は、少なくとも1.5mol%以上である。装飾用組成物中の第2元素の含有量は、1.5mol%以上であって、2mol%以上であることが好ましく、4mol%以上であってもよく、5mol%以上であってもよい。一方で、装飾用組成物中の第2元素の含有量が高すぎる場合には、貴金属元素の含有量が低下することにより、発色性が低下し得る。かかる観点から、装飾用組成物中の第2元素の含有量は、20mol%以下であることが好ましく、15mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であってもよく、9mol%以下であってもよい。装飾用組成物中の第2元素の含有量を上記範囲内に調整することにより、上記したような特徴を有する銀色装飾部を好適に実現することができる。
ここで、希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のなかから特に制限なく選択できる。本発明者らが鋭意検討した結果によれば、上記した希土類元素のなかでも、Y、Sm、Pr、Nd、La、Ce、Dy、Hoを好ましく用いることができる。さらにYおよびSmは、第2元素として装飾用組成物中に含有させることにより上記した効果が十分に発揮され得るため、特に好ましく用いることができる。
アルミニウム(Al)は、上記したように貴金属粒子が過焼結することを抑制し、銀色装飾部の発色性を良好にする成分である。第2元素としてAlを含む場合に装飾用組成物中のAlの含有量は、1.5mol%以上であることが好ましく、2.5mol%以上であることがより好ましく、5mol%以上であることがさらに好ましい。これにより、曇りがなく発色性が良好な銀色装飾部が実現される。装飾用組成物中のAlの含有量は、16mol%以下であって、13mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましい。
Alは、含有量が適量であれば貴金属粒子が過焼結することを抑制し得る一方で、含有量が多くなりすぎる場合には銀色装飾部が導電性を有することが実験によって確認されている。このため、好適な一態様では、第2元素としてAlを10mol%以上含む場合には、上記した希土類元素を2mol%以上含むとよい。これにより、発色性が良好で、かつ、十分な絶縁性を有する銀色装飾部を実現することができる。
好適な一態様では、装飾用組成物中のアルミニウム成分の形態は、有機金属化合物または酸化物微粒子であることが好ましい。有機金属化合物としては、金属レジネート、金属キレート化合物などが挙げられる。金属レジネートは、アルミニウムを構成元素として含み、後述する有機化合物を含む形態である。より具体的にはアルミニウム樹脂酸塩などの形態で装飾用組成物中に含まれ得る。金属キレート化合物は、アルミニウムを構成元素とするキレート化合物であって、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などが挙げられる。また、酸化物微粒子としては、アルミナ(Al2O3)の微粒子が好適に用いられる。かかる酸化物微粒子は、例えば平均粒子径が、25nm以上100nm以下程度であることが好ましい。なお、本明細書中において、「酸化物微粒子の平均粒子径」とは、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布における累積体積が50%時の粒径(D50)のことである。
ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)および希土類元素は、装飾用組成物中に適切な量で含有させることにより、上記したように貴金属粒子が過焼結することを抑制し、銀色装飾部の発色性を良好にする成分である。
第2元素としてZrを含む場合に装飾用組成物中のZrの含有量は、0.1mol%以上7mol%以下であることが好ましく、1mol%以上6.5mol%以下であることがより好ましい。第2元素としてTiを含む場合に装飾用組成物中のTiの含有量は、0.1mol%以上7mol%以下であることが好ましく、1mol%以上6.5mol%以下であることがより好ましい。また、第2元素として希土類元素を含む場合に装飾用組成物中の希土類元素の含有量は、0.1mol%以上7mol%以下であることが好ましく、0.7mol%以上7mol%以下であることがより好ましく、2mol%以上6.5mol%以下であることがさらに好ましい。
第2元素としてZrを含む場合に装飾用組成物中のZrの含有量は、0.1mol%以上7mol%以下であることが好ましく、1mol%以上6.5mol%以下であることがより好ましい。第2元素としてTiを含む場合に装飾用組成物中のTiの含有量は、0.1mol%以上7mol%以下であることが好ましく、1mol%以上6.5mol%以下であることがより好ましい。また、第2元素として希土類元素を含む場合に装飾用組成物中の希土類元素の含有量は、0.1mol%以上7mol%以下であることが好ましく、0.7mol%以上7mol%以下であることがより好ましく、2mol%以上6.5mol%以下であることがさらに好ましい。
(c)他の元素
ここに開示される装飾用組成物は、ここに開示される技術の効果を損なわない範囲において、上述した元素以外の金属元素もしくは半金属元素をマトリクス形成元素として含有し得る。かかる他の元素としては、Sn、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Rb、B、V、Fe、Cu、Pなどが挙げられる。他の元素は、装飾用組成物に含まれていなくてもよい。他の元素が装飾用組成物に含まれる場合には、装飾用組成物中の他の元素の含有量は、3mol%以下であってもよく、2.5mol%以下であってもよい。
ここに開示される装飾用組成物は、ここに開示される技術の効果を損なわない範囲において、上述した元素以外の金属元素もしくは半金属元素をマトリクス形成元素として含有し得る。かかる他の元素としては、Sn、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Rb、B、V、Fe、Cu、Pなどが挙げられる。他の元素は、装飾用組成物に含まれていなくてもよい。他の元素が装飾用組成物に含まれる場合には、装飾用組成物中の他の元素の含有量は、3mol%以下であってもよく、2.5mol%以下であってもよい。
(3)他の成分
以上、ここに開示される装飾用組成物の貴金属元素とマトリクス形成元素について説明した。なお、ここに開示される装飾用組成物は、上述した成分の他に、セラミックス製品(より詳細には基材またはコート層)の表面への定着性や装飾部の成形性などを考慮して種々の成分を添加されていると好ましい。以下、ここに開示される装飾用組成物に含まれ得る他の成分について説明する。ただし、以下で説明する他の成分は、ここに開示される技術の効果を著しく妨げない限りにおいて、装飾用組成物に使用され得る従来公知の成分を特に制限することなく使用することができる。すなわち、ここに開示される装飾用組成物は、その用途に応じて、上述した必須元素以外の成分を適宜変更することができる。
以上、ここに開示される装飾用組成物の貴金属元素とマトリクス形成元素について説明した。なお、ここに開示される装飾用組成物は、上述した成分の他に、セラミックス製品(より詳細には基材またはコート層)の表面への定着性や装飾部の成形性などを考慮して種々の成分を添加されていると好ましい。以下、ここに開示される装飾用組成物に含まれ得る他の成分について説明する。ただし、以下で説明する他の成分は、ここに開示される技術の効果を著しく妨げない限りにおいて、装飾用組成物に使用され得る従来公知の成分を特に制限することなく使用することができる。すなわち、ここに開示される装飾用組成物は、その用途に応じて、上述した必須元素以外の成分を適宜変更することができる。
まず、上述した通り、ここに開示される装飾用組成物は、貴金属元素とマトリクス形成元素のそれぞれを金属レジネートの状態で含有してもよい。この場合、装飾用組成物は、当該金属レジネートを形成するための有機化合物を含有する。有機化合物は、金属レジネートの生成に用いられ得る従来公知の樹脂材料を特に制限することなく使用することができる。かかる樹脂材料としては、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、アビエチン酸、ナフテン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ネオデカン酸などの高炭素数(例えば炭素数8以上)のカルボン酸;スルホン酸;ロジンなどに含まれる樹脂酸;テレピン油、ラベンダー油などの精油成分を含む樹脂硫化バルサム、アルキルメルカプチド(アルキルチオラート)、アリールメルカプチド(アリールチオラート)、メルカプトカルボン酸エステル、アルコキシドなどが挙げられる。
また、貴金属元素とマトリクス形成元素のそれぞれを金属レジネートの状態で含有する装飾用組成物では、該金属レジネートを分散または溶解する有機溶媒が用いられていることが好ましい。かかる有機溶媒としては、従来からレジネートペーストに使用されているものや、水金液に使用されているものを特に制限なく使用することができる。例えば、1,4-ジオキサン、1,8-シネオール、2-ピロリドン、2-フェニルエタノール、N-メチル-2-ピロリドン、p-トルアルデヒド、安息香酸ベンジル、安息香酸ブチル、オイゲノール、カプロラクトン、ゲラニオール、サリチル酸メチル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、シクロペンチルメチルエーテル、シトロネラール、ジ(2-クロロエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジヒドロカルボン、ジブロモメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン、ピロリドン、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プレゴン、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、テレピン油、ラベンダー油などが挙げられる。なお、これらの有機溶剤は、1種または2種以上を用いてもよい。なお、金属レジネートは、例えば、レジネートペーストとして市販されているため、かかるレジネートペーストをそのまま使用してもよい。
装飾用組成物に含まれ得る溶媒の重量比は、装飾用組成物の塗布方法によって好適な範囲が異なるため特に限定されず、適宜調整すればよい。例えば、装飾用組成物全体を100wt%としたとき溶媒の重量比は、概ね10wt%~50wt%程度とすればよい。一例として、インクジェットで塗布する場合には、装飾用組成物全体を100wt%としたときの溶媒の重量比は、例えば10wt%~50wt%とするのが好ましい。また、他の例として、刷毛塗りの場合には、装飾用組成物全体を100wt%としたときの溶媒の重量比は、例えば10wt%~30wt%とするのが好ましい。
装飾用組成物の粘度は、装飾用組成物の塗布方法によって適宜調整すればよく、特に限定されるものではない。装飾用組成物の粘度は、例えば10mPa・s~500mPa・s程度とすればよい。なお、装飾用組成物の粘度は溶媒の量や樹脂バルサムの添加などにより適宜調整することができる。
なお、ここで開示される装飾用組成物は、ここで開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、適宜他の成分を付加的に含んでいてもよい。付加的な成分としては、例えば、有機バインダ、保護材、界面活性剤、分散剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤などが例示される。
ここに開示される装飾用組成物は、例えば、少なくとも貴金属成分とマトリクス形成成分のそれぞれを含むように、所望の金属元素を含む材料を所定の割合になるように混合することで製造することができる。なお、上述した通り、ここに開示される装飾用組成物に含まれる貴金属成分とマトリクス形成成分の形態は、金属レジネートに限定されず、錯体、重合体、微細粒子であってもよい。なお、貴金属成分とマトリクス形成成分が金属レジネート以外の形態をとる場合には、上述した溶媒や付加的成分についても、該貴金属成分とマトリクス形成成分の形態に応じて適宜変更することが好ましい。例えば、微細粒子のような溶媒に溶解しない形態で、貴金属成分とマトリクス形成成分を含有させる場合には、当該微細粒子を適切に分散させることができる溶媒を選択するとともに、付加的成分として分散剤などを添加することが好ましい。
3.セラミックス製品の製造方法
次いで、ここに開示されるセラミックス製品を製造する方法の一例について説明する。なお、ここに開示されるセラミックス製品は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
次いで、ここに開示されるセラミックス製品を製造する方法の一例について説明する。なお、ここに開示されるセラミックス製品は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
(1)基材の準備
本実施形態に係るセラミックス製品を製造する際には、まず、所望の基材を準備する。例えば、所定のセラミックス材料を混練した基材用材料を成形・焼成することによって基材を作製できる。また、コート層付きの基材は、焼成後の基材の表面に釉薬を塗布した後に再度焼成することによって作製できる。但し、かかる工程は、基材を準備できれば特に限定されない。例えば、別途作製された基材を購入して準備してもよい。
本実施形態に係るセラミックス製品を製造する際には、まず、所望の基材を準備する。例えば、所定のセラミックス材料を混練した基材用材料を成形・焼成することによって基材を作製できる。また、コート層付きの基材は、焼成後の基材の表面に釉薬を塗布した後に再度焼成することによって作製できる。但し、かかる工程は、基材を準備できれば特に限定されない。例えば、別途作製された基材を購入して準備してもよい。
(2)銀色装飾部の形成
次に、本実施形態に係るセラミックス製品の製造では、基材(またはコート層)上に銀色装飾部を形成する。この銀色装飾部の形成では、上述した装飾用組成物を基材またはコート層の表面に塗布(付与)した後、所定の温度で焼成処理をすることにより行うことができる。かかる工程における焼成処理では、好適な一例としては、釉薬を施した後のコート層付基材に対して装飾を施す「上絵付け」にここで開示される装飾用組成物が用いられる。上絵付けでは、釉薬の表面に装飾用組成物を塗布した後、700℃~1000℃程度の中温で画付焼成を行うとよい。また、ここに開示される装飾用組成物は、素焼きした生地(セラミックス基材)に対して装飾を施す「下絵付け」にも用いられ得る。下絵付けでは、装飾用組成物を生地に塗布した後、例えば、1200℃~1400℃程度の高温で画付焼成を行うとよい。なお、装飾用組成物の塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、スクリーン印刷、インクジェット印刷など挙げられる。
次に、本実施形態に係るセラミックス製品の製造では、基材(またはコート層)上に銀色装飾部を形成する。この銀色装飾部の形成では、上述した装飾用組成物を基材またはコート層の表面に塗布(付与)した後、所定の温度で焼成処理をすることにより行うことができる。かかる工程における焼成処理では、好適な一例としては、釉薬を施した後のコート層付基材に対して装飾を施す「上絵付け」にここで開示される装飾用組成物が用いられる。上絵付けでは、釉薬の表面に装飾用組成物を塗布した後、700℃~1000℃程度の中温で画付焼成を行うとよい。また、ここに開示される装飾用組成物は、素焼きした生地(セラミックス基材)に対して装飾を施す「下絵付け」にも用いられ得る。下絵付けでは、装飾用組成物を生地に塗布した後、例えば、1200℃~1400℃程度の高温で画付焼成を行うとよい。なお、装飾用組成物の塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、スクリーン印刷、インクジェット印刷など挙げられる。
以上のようにして、光沢があり、曇りがなく発色が良好な銀色装飾部を備えるセラミックス製品を実現することができる。また、このような銀色装飾部を好適に形成する装飾用組成物が実現することができる。ここでいう「セラミックス製品」には、上記したように陶器、磁器、土器、石器、ガラスなどが包含され、具体的な製品としては、例えば、食器、装飾器、各種タイル、衛生陶器、瓦、れんが、土管、陶管などが挙げられる。特に、ここに開示される技術によれば、光沢があり、曇りがなく発色が良好な銀色装飾部を備えた食器が好適に実現される。
<試験例>
以下、ここで開示される技術に関する試験例を説明するが、ここに開示される技術をかかる試験例に限定することを意図したものではない。
以下、ここで開示される技術に関する試験例を説明するが、ここに開示される技術をかかる試験例に限定することを意図したものではない。
1.銀色装飾部の構造の検討
本試験では、銀色装飾部を備えるセラミックス製品を作製し、当該銀色装飾部の特性を評価した。具体的には、光沢度(8°グロス値)と、発色性(8°グロス値/明度L*)と、電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)観察とを行った。そして、発色および光沢が良好な銀色装飾部の構造について検討した。
本試験では、銀色装飾部を備えるセラミックス製品を作製し、当該銀色装飾部の特性を評価した。具体的には、光沢度(8°グロス値)と、発色性(8°グロス値/明度L*)と、電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)観察とを行った。そして、発色および光沢が良好な銀色装飾部の構造について検討した。
(1)装飾用組成物の調製
本試験では、表1に示す組成となるように、貴金属元素およびマトリクス形成元素を混合した。なお、表1中の各数値は、装飾用組成物に含まれる貴金属元素とマトリクス形成元素との合計を100mol%としたときの各元素の含有量(mol%)である。
各装飾用組成物の調整は、上記した方法と同様の方法で行った。このようにして、例1~例20の装飾用組成物を調製した。以下、ここで用いた貴金属成分およびマトリクス形成成分の原料を示す。
Pt:Ptレジネート(白金樹脂硫化バルサム)
Rh:Rhレジネート(ロジウム樹脂硫化バルサム)
Au:Auレジネート(金樹脂硫化バルサム)
Si:Siレジネート(シリコン樹脂酸塩)
Bi:Biレジネート(ビスマス樹脂酸塩)
Al-1:Alレジネート(アルミニウム樹脂酸塩)
Al-2:Al2O3ナノ粒子スラリー(平均粒子径50nm)
Al-3:アルミニウムキレート化合物(ALCH)
Zr:Zrレジネート(ジルコニウム樹脂酸塩)
Y:Yレジネート(イットリウム樹脂酸塩)
Ca:Caレジネート(カルシウム樹脂酸塩)
本試験では、表1に示す組成となるように、貴金属元素およびマトリクス形成元素を混合した。なお、表1中の各数値は、装飾用組成物に含まれる貴金属元素とマトリクス形成元素との合計を100mol%としたときの各元素の含有量(mol%)である。
各装飾用組成物の調整は、上記した方法と同様の方法で行った。このようにして、例1~例20の装飾用組成物を調製した。以下、ここで用いた貴金属成分およびマトリクス形成成分の原料を示す。
Pt:Ptレジネート(白金樹脂硫化バルサム)
Rh:Rhレジネート(ロジウム樹脂硫化バルサム)
Au:Auレジネート(金樹脂硫化バルサム)
Si:Siレジネート(シリコン樹脂酸塩)
Bi:Biレジネート(ビスマス樹脂酸塩)
Al-1:Alレジネート(アルミニウム樹脂酸塩)
Al-2:Al2O3ナノ粒子スラリー(平均粒子径50nm)
Al-3:アルミニウムキレート化合物(ALCH)
Zr:Zrレジネート(ジルコニウム樹脂酸塩)
Y:Yレジネート(イットリウム樹脂酸塩)
Ca:Caレジネート(カルシウム樹脂酸塩)
(2)装飾用組成物の付与および焼成
コート層付基材として、釉薬が表面に施された白磁平板(縦:15mm、横:15mm)を準備し、上記調製した装飾用組成物(例1~例20のいずれか)を白磁平板の片側の表面全体に付与(塗布)した。このとき、焼成後の銀色装飾部が50~150nmとなるように調整した。かかる装飾用組成物の付与には、ミカサ株式会社製のスピンコーター(Opticoat MS-A-150)を使用し、スピン条件を5000rpm、10秒間に設定した。装飾用組成物が付与された白磁平板を60℃のホットプレートで1時間乾燥させたのち、800℃で10分間焼成した。これにより、表面に銀色装飾部が形成された例1~例20の白磁平板(セラミックス製品)を得た。
コート層付基材として、釉薬が表面に施された白磁平板(縦:15mm、横:15mm)を準備し、上記調製した装飾用組成物(例1~例20のいずれか)を白磁平板の片側の表面全体に付与(塗布)した。このとき、焼成後の銀色装飾部が50~150nmとなるように調整した。かかる装飾用組成物の付与には、ミカサ株式会社製のスピンコーター(Opticoat MS-A-150)を使用し、スピン条件を5000rpm、10秒間に設定した。装飾用組成物が付与された白磁平板を60℃のホットプレートで1時間乾燥させたのち、800℃で10分間焼成した。これにより、表面に銀色装飾部が形成された例1~例20の白磁平板(セラミックス製品)を得た。
(3)光沢度および発色性評価
銀色装飾部が形成された白磁平板の8°グロス値と、L*値、a*値、b*値とをJIS Z 8722:2009に準拠した分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、CM-700d)を用いて測定した。なお、8°グロス値はSCI方式で測定し、L*値、a*値、b*値はSCE方式で測定した。また、8°グロス値および明度L*から、8°グロス値/明度L*を算出した。8°グロス値が500以上かつ、8°グロス値/明度L*が11以上のものを光沢および発色が良好な銀色装飾部であると評価した。結果を表2に示す。
銀色装飾部が形成された白磁平板の8°グロス値と、L*値、a*値、b*値とをJIS Z 8722:2009に準拠した分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、CM-700d)を用いて測定した。なお、8°グロス値はSCI方式で測定し、L*値、a*値、b*値はSCE方式で測定した。また、8°グロス値および明度L*から、8°グロス値/明度L*を算出した。8°グロス値が500以上かつ、8°グロス値/明度L*が11以上のものを光沢および発色が良好な銀色装飾部であると評価した。結果を表2に示す。
(4)FESEM観察
銀色装飾部が形成された白磁平板のFESEM観察を行った。まず、装飾用組成物が塗布された側(すなわち、銀色装飾部の表面)が上になるよう水平に各サンプルを試料台に固定し、オスミウムプラズマコーター(日本レーザー電子株式会社製:OPC80N)を用いてコーティングし、表面がオスミウムで被覆された測定用試料を作製した。なお、オスミウムのコーティングにおける放電電圧は1.2kVとし、真空度は6~8Paとし、コーティング時間は10秒とした。次に、電界放出型走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製:SU8230)を用いて、銀色装飾部の表面のFESEM観察画像を5枚取得した。なお、FESEM観察画像の取得における加速電圧は10.0kVとし、エミッション電流は10±0.5μAとした。視野の倍率は、一視野においてカウント可能な粒子数が1000個~10000個となるように、2000倍~100000倍に調整した。一例として、例1および例11のFESEM観察画像を図1および図2に示す。
銀色装飾部が形成された白磁平板のFESEM観察を行った。まず、装飾用組成物が塗布された側(すなわち、銀色装飾部の表面)が上になるよう水平に各サンプルを試料台に固定し、オスミウムプラズマコーター(日本レーザー電子株式会社製:OPC80N)を用いてコーティングし、表面がオスミウムで被覆された測定用試料を作製した。なお、オスミウムのコーティングにおける放電電圧は1.2kVとし、真空度は6~8Paとし、コーティング時間は10秒とした。次に、電界放出型走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製:SU8230)を用いて、銀色装飾部の表面のFESEM観察画像を5枚取得した。なお、FESEM観察画像の取得における加速電圧は10.0kVとし、エミッション電流は10±0.5μAとした。視野の倍率は、一視野においてカウント可能な粒子数が1000個~10000個となるように、2000倍~100000倍に調整した。一例として、例1および例11のFESEM観察画像を図1および図2に示す。
次いで、上記取得したFESEM観察画像に対して、著名な画像処理ソフトimage J(ver.1.53e)を用いて、上記取得した5枚のFESEM観察画像に対して、貴金属成分が黒色、それ以外の成分(例えばマトリクス形成成分)が白色となるように二値化処理を実施した。一例として、例1および例11の二値化処理画像を図3および図4に示す。このとき、上記取得したFESEM観察画像において、貴金属成分の領域と、それ以外の成分の領域とを区別するための輝度閾値は、image Jのオート設定により決定した。そして、当該輝度閾値以上の領域を貴金属成分の領域、輝度閾値未満の領域をそれ以外の成分の領域として設定し、二値化処理を実施した。5枚のFESEM観察画像においてそれぞれ、FESEM観察画像全体の面積に対する黒色の部分の面積を算出した。そして、かかる値の平均値を算出することにより、FESEM観察に基づく貴金属成分の面積率(%)を求めた。結果を表2に示す。
また、上記取得した各例のFESEM観察画像に対して著名な画像処理ソフトimage J(ver.1.53e)の「Analyze particles」機能を用いて、粒子の個々の面積を測定し、個数基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)および算術平均径を算出した。このときの測定条件は、サイズ、円形度ともに0-infinityに設定した。そして、少なくとも1000個以上の粒子において算出した円相当径を粒径順に並べた個数基準の粒度分布を作成し、当該粒度分布における累積頻度50個数%に相当する粒子径をD50、累積頻度90個数%に相当する粒子径をD90とした。また、少なくとも1000個以上の粒子における円相当径の平均値を算術平均径とした。
表2に示すように、例3~例5および例9~例19は、8°グロス値が500以上であり、かつ、8°グロス値/明度L*が11以上であることがわかる。したがって、例3~例5および例9~例19のセラミックス製品の銀色装飾部は、発色および光沢が良好な銀色装飾部であることがわかる。また、例3~例5および例9~例19は、FESEM観察に基づく貴金属成分の面積率が37%以上であることがわかる。さらに、例3~例5および例9~例19は、上記貴金属成分の面積率が37%以上であって、かつ、D50が5nm以上であることがわかる。また、例3~例5および例9~例19は、上記貴金属成分の面積率が37%以上であって、かつ、D90が20nm以上であることがわかる。そして、例3~例5および例9~例19は、上記貴金属成分の面積率が37%以上であって、かつ、算術平均径が35nm以上であることがわかる。
表1および表2に示すように、貴金属元素の含有量が50mol%~75mol%である装飾用組成物を焼成した例3~例5は、8°グロス値が500以上であり、かつ、8°グロス値/明度L*が11以上であることがわかる。一方、貴金属含有量が76mol%以上であって、第2元素を含まない装飾用組成物を焼成した例1および例2と、貴金属含有量が少ない装飾用組成物を焼成した例6および例7は、8°グロス値が500未満であり、かつ、8°グロス値/明度L*が11未満であることがわかる。貴金属含有量が76mol%以上である装飾用組成物を焼成して銀色装飾部を形成した場合には、貴金属粒子が過焼結することにより、発色が良好でなくなったと推測される。一方で、貴金属元素の含有量が低い装飾用組成物を焼成して銀色装飾部を形成した場合には、貴金属元素に由来する部分が薄くなり下地の色が透けて見えたため発色が良好でなくなったと推測される。
表1および表2に示すように、貴金属元素の含有量が76mol%以上であっても、第2元素としてAl、Zr、Tiおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を1.5mol%以上含む装飾用組成物を焼成した例9~例19の銀色装飾部は、8°グロス値が500以上であり、かつ、8°グロス値/明度L*が11以上であることがわかる。一方で、第2元素の含有量が1.5mol%以下である例8、マトリクス形成元素として上記した第2元素を含まない例20は、8°グロス値が500未満であり、かつ、8°グロス値/明度L*が11未満であることがわかる。第2元素を1.5mol%以上含まない場合や、例20のようにCaを用いた場合には、上述したような貴金属粒子の過焼結を抑制する効果が十分でないため、銀色装飾部の光沢度や発色性を向上させる効果が発揮されなかったと推測される。
したがって、少なくともPtを含む貴金属元素と、マトリクス形成元素としてSiおよびBiのうち少なくとも一種を含む第1元素および、Al、Zr、Tiおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種を含む第2元素と、を含み、貴金属元素の含有量が76mol%以上95mol%以下であり、第2元素の含有量が1.5mol%以上である装飾用組成物は、発色および光沢が良好なセラミックス製品の銀色装飾部を形成することができる。
したがって、少なくともPtを含む貴金属元素と、マトリクス形成元素としてSiおよびBiのうち少なくとも一種を含む第1元素および、Al、Zr、Tiおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種を含む第2元素と、を含み、貴金属元素の含有量が76mol%以上95mol%以下であり、第2元素の含有量が1.5mol%以上である装飾用組成物は、発色および光沢が良好なセラミックス製品の銀色装飾部を形成することができる。
2.第2元素の種類およびその含有量の検討
本試験では、上記の検討に基づいて、少なくとも貴金属元素とマトリクス形成元素とを含み、貴金属含有量が76mol%以上である装飾用組成物の焼成体(銀色装飾部)において、8°グロス値および8°グロス値/明度L*を改善させ得る第2元素の種類とそのさらに含有量について検討した。本試験では、上記試験において検討した装飾用組成物(例1~例20)に加えて、さらに組成が異なる6種類の装飾用組成物(例21~例26)を調整し、光沢度(8°グロス値)と、発色性(8°グロス値/明度L*)と、絶縁性とを評価した。例21~例26は、表3に示す組成となるように、貴金属元素およびマトリクス形成元素を混合した。表3中の各数値は、装飾用組成物に含まれる貴金属元素とマトリクス形成元素との合計を100mol%としたときの各元素の含有量(mol%)である。
本試験では、上記の検討に基づいて、少なくとも貴金属元素とマトリクス形成元素とを含み、貴金属含有量が76mol%以上である装飾用組成物の焼成体(銀色装飾部)において、8°グロス値および8°グロス値/明度L*を改善させ得る第2元素の種類とそのさらに含有量について検討した。本試験では、上記試験において検討した装飾用組成物(例1~例20)に加えて、さらに組成が異なる6種類の装飾用組成物(例21~例26)を調整し、光沢度(8°グロス値)と、発色性(8°グロス値/明度L*)と、絶縁性とを評価した。例21~例26は、表3に示す組成となるように、貴金属元素およびマトリクス形成元素を混合した。表3中の各数値は、装飾用組成物に含まれる貴金属元素とマトリクス形成元素との合計を100mol%としたときの各元素の含有量(mol%)である。
(1)装飾用組成物の調製
各装飾用組成物の調整は、上記した方法と同様の方法で行った。このようにして、例21~例26の装飾用組成物を調製した。以下、ここで用いた貴金属成分およびマトリクス形成成分の原料を示す。
Pt:Ptレジネート(白金樹脂硫化バルサム)
Rh:Rhレジネート(ロジウム樹脂硫化バルサム)
Au:Auレジネート(金樹脂硫化バルサム)
Si:Siレジネート(シリコン樹脂酸塩)
Bi:Biレジネート(ビスマス樹脂酸塩)
Al-3:アルミニウムキレート化合物(ALCH)
Ti:Tiレジネート(チタン樹脂酸塩)
Y:Yレジネート(イットリウム樹脂酸塩)
Sm:Smレジネート(サマリウム樹脂酸塩)
Mg:Mgレジネート(マグネシウム樹脂酸塩)
各装飾用組成物の調整は、上記した方法と同様の方法で行った。このようにして、例21~例26の装飾用組成物を調製した。以下、ここで用いた貴金属成分およびマトリクス形成成分の原料を示す。
Pt:Ptレジネート(白金樹脂硫化バルサム)
Rh:Rhレジネート(ロジウム樹脂硫化バルサム)
Au:Auレジネート(金樹脂硫化バルサム)
Si:Siレジネート(シリコン樹脂酸塩)
Bi:Biレジネート(ビスマス樹脂酸塩)
Al-3:アルミニウムキレート化合物(ALCH)
Ti:Tiレジネート(チタン樹脂酸塩)
Y:Yレジネート(イットリウム樹脂酸塩)
Sm:Smレジネート(サマリウム樹脂酸塩)
Mg:Mgレジネート(マグネシウム樹脂酸塩)
(2)装飾用組成物の付与および焼成
コート層付基材として、釉薬が表面に施された白磁平板(縦:15mm、横:15mm)を準備し、上記調製した装飾用組成物(例21~例26のいずれか)を白磁平板の片側の表面全体に付与(塗布)した。このとき、焼成後の銀色装飾部が50~150nmとなるように調整した。かかる装飾用組成物の付与の方法は、上記した方法と同様にして行った。装飾用組成物が付与された白磁平板を60℃のホットプレートで1時間乾燥させたのち、800℃で10分間焼成した。これにより、表面に銀色装飾部が形成された例21~例26の白磁平板(セラミックス製品)を得た。
コート層付基材として、釉薬が表面に施された白磁平板(縦:15mm、横:15mm)を準備し、上記調製した装飾用組成物(例21~例26のいずれか)を白磁平板の片側の表面全体に付与(塗布)した。このとき、焼成後の銀色装飾部が50~150nmとなるように調整した。かかる装飾用組成物の付与の方法は、上記した方法と同様にして行った。装飾用組成物が付与された白磁平板を60℃のホットプレートで1時間乾燥させたのち、800℃で10分間焼成した。これにより、表面に銀色装飾部が形成された例21~例26の白磁平板(セラミックス製品)を得た。
(3)光沢度および発色性の評価
上記得られた銀色装飾部が形成された白磁平板(例21~26)のL*値、a*値、b*値および、8°グロス値を上記した分光測色計を用いて測定した。なお、8°グロス値はSCI方式によって測定し、L*値、a*値、b*値はSCE方式で測定した。また、8°グロス値および明度L*から、8°グロス値/明度L*を算出した。8°グロス値が500以上かつ、8°グロス値/明度L*が11以上のものを光沢および発色が良好な銀色装飾部であると評価した。結果を表4に示す。なお、表4には比較のために例1~例20の測定結果も併せて記載している。
上記得られた銀色装飾部が形成された白磁平板(例21~26)のL*値、a*値、b*値および、8°グロス値を上記した分光測色計を用いて測定した。なお、8°グロス値はSCI方式によって測定し、L*値、a*値、b*値はSCE方式で測定した。また、8°グロス値および明度L*から、8°グロス値/明度L*を算出した。8°グロス値が500以上かつ、8°グロス値/明度L*が11以上のものを光沢および発色が良好な銀色装飾部であると評価した。結果を表4に示す。なお、表4には比較のために例1~例20の測定結果も併せて記載している。
(4)絶縁性の評価
上記得られた銀色装飾部が形成された白磁平板(例1~例26)のシート抵抗値(Ω/□)を測定した。シート抵抗値の測定は、株式会社三菱化学アナリテック製の抵抗率計(ロレスタGP MCP-T610)を用いて四探針法により測定した。1×104Ω/□以上のものを十分に絶縁できているものと評価した。結果を表4に示す。
上記得られた銀色装飾部が形成された白磁平板(例1~例26)のシート抵抗値(Ω/□)を測定した。シート抵抗値の測定は、株式会社三菱化学アナリテック製の抵抗率計(ロレスタGP MCP-T610)を用いて四探針法により測定した。1×104Ω/□以上のものを十分に絶縁できているものと評価した。結果を表4に示す。
表4に示すように、例3~例5、例9~例19および例21~例24は、8°グロス値が500以上であり、かつ、8°グロス値/明度L*が11以上であって、さらに、シート抵抗値が1×104Ω/□以上であることがわかる。したがって、例3~例5、例9~例19および例21~例24のセラミックス製品の銀色装飾部は、発色および光沢が良好な銀色装飾部であって、さらに十分な絶縁性を有する銀色装飾部であることがわかる。
表1、表3および表4に示すように、貴金属元素の含有量が76mol%以上であっても、第2元素としてAl、Zr、Tiおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を1.5mol%以上含む装飾用組成物を焼成した例9~例19および例21~例25のセラミックス製品の銀色装飾部は、8°グロス値が500以上であり、かつ、8°グロス値/明度L*が11以上であることがわかる。さらに、第2元素としてAlを10mol%以上含む場合には、第2元素として希土類元素を2mol%以上含む装飾用組成物を焼成した例9~例19および例21~例24のセラミックス製品の銀色装飾部は、シート抵抗値が1×104Ω/□以上であることがわかる。
したがって、少なくともPtを含む貴金属元素と、マトリクス形成元素としてSiおよびBiのうち少なくとも一種を含む第1元素および、Al、Zr、Tiおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種を含む第2元素と、を含み、貴金属元素の含有量が76mol%以上95mol%以下であり、第2元素の含有量が1.5mol%以上である装飾用組成物は、発色および光沢が良好なセラミックス製品の銀色装飾部を形成することができる。また、第2元素としてAlを10mol%以上含む場合には、第2元素として希土類元素を2mol%以上含む装飾用組成物は、発色および光沢が良好なセラミックス製品の銀色装飾部であって、さらに十分な絶縁性を有する銀色装飾部を形成することができる。
したがって、少なくともPtを含む貴金属元素と、マトリクス形成元素としてSiおよびBiのうち少なくとも一種を含む第1元素および、Al、Zr、Tiおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種を含む第2元素と、を含み、貴金属元素の含有量が76mol%以上95mol%以下であり、第2元素の含有量が1.5mol%以上である装飾用組成物は、発色および光沢が良好なセラミックス製品の銀色装飾部を形成することができる。また、第2元素としてAlを10mol%以上含む場合には、第2元素として希土類元素を2mol%以上含む装飾用組成物は、発色および光沢が良好なセラミックス製品の銀色装飾部であって、さらに十分な絶縁性を有する銀色装飾部を形成することができる。
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
Claims (9)
- 銀色装飾部を有するセラミックス製品であって、
前記銀色装飾部は、貴金属成分を含み、
前記貴金属成分は白金成分を主体として構成されており、
ここで、SCI方式で測定したときの前記銀色装飾部の8°グロス値が500以上であり、かつ、
前記8°グロス値を、SCE方式で測定したときの前記銀色装飾部の明度L*で除した値(8°グロス値/明度L*)が11以上である、セラミックス製品。 - 前記銀色装飾部は、電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)観察に基づく前記貴金属成分の面積率が、37%以上である、請求項1に記載のセラミックス製品。
- 前記貴金属成分は貴金属粒子を含み、
前記貴金属粒子は、個数基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)が5nm以上である、請求項2に記載のセラミックス製品。 - 前記貴金属成分は貴金属粒子を含み、
前記貴金属粒子は、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径(D90)が20nm以上である、請求項2に記載のセラミックス製品。 - 前記貴金属成分は貴金属粒子を含み、
前記貴金属粒子は、算術平均径が35nm以上である、請求項2に記載のセラミックス製品。 - 前記銀色装飾部のシート抵抗値が1×104Ω/□以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のセラミックス製品。
- セラミックス基材の銀色加飾に用いられる装飾用組成物であって、
少なくとも貴金属元素と、マトリクス形成元素と、を含み、
前記貴金属元素は、少なくともPtを含み、
前記マトリクス形成元素は、第1元素と第2元素とを含み、
前記第1元素は、SiおよびBiからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含み、
前記第2元素は、Al、Zr、Tiおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含んでおり、
ここで、前記貴金属元素と前記マトリクス形成元素との合計を100mol%とするモル比において、
前記貴金属元素の含有量が76mol%以上95mol%以下であり、
前記第2元素の含有量が1.5mol%以上である、装飾用組成物。 - 前記貴金属元素と前記マトリクス形成元素との合計を100mol%としたときに、前記第2元素の含有量が1.5mol%以上15mol%以下である、請求項7に記載の装飾用組成物。
- 前記貴金属元素と前記マトリクス形成元素との合計を100mol%とするモル比において、
以下の組成:
Pt 60mol%~95mol%、
Au、Rh、PdおよびAgの合計 0mol%~20mol%、
SiおよびBiの合計 1mol%~16mol%、
Al 0mol%~13mol%、
Zr 0mol%~7mol%、
Ti 0mol%~7mol%、
希土類元素 0mol%~7mol%
(ただし、Alが10mol%以上の場合には、希土類元素が2mol%以上)、
を有する、請求項7または請求項8に記載の装飾用組成物。
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JP2021212873A JP2023096853A (ja) | 2021-12-27 | 2021-12-27 | セラミックス製品および装飾用組成物 |
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