JP2023061327A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンの始動に際して、通信遅れによるエンジン始動性能の悪化を抑制する。【解決手段】エンジン制御部によって、エンジンの始動に際して、所定の進行段階から次の進行段階への移行が許可されたときには、次の進行段階への移行が許可されたことに伴うクラッチ制御部からの次の進行段階における始動用指令値の送信に先立って、クラッチ制御部により算出されて送信された、次の進行段階における始動用指令値の大きさ及び出力時間を含む指令値情報に基づいて、次の進行段階における始動時駆動用指令値が出力されるので、通信遅れによるエンジンの制御に対する次の進行段階の開始遅れが抑制される。よって、エンジンの始動に際して、通信遅れによるエンジン始動性能の悪化を抑制することができる。【選択図】図4
Description
本発明は、エンジンと駆動輪との間に設けられたクラッチを備えた車両の制御装置に関するものである。
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられたクラッチと、前記クラッチの制御状態の切替えに用いられる調圧された油圧を供給する油圧制御回路と、を備えた車両の制御装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車両の通信異常対応制御装置がそれである。この特許文献1には、エンジンを制御するエンジンコントローラと、クラッチを制御するクラッチコントローラと、各コントローラへの指令値を演算する統合コントローラと、の間の情報交換を通信で行うこと、及びエンジンを始動する際には、クラッチを締結しつつ、クラッチと駆動輪との間に設けられた電動機でエンジンをクランキングすると共に、そのクランキングに合わせて点火等を行ってエンジンの運転を開始すること、が開示されている。
ところで、エンジンを始動する場合、エンジンの制御とクラッチの制御との連携が必要である。各制御を異なる制御部又はコントローラ等にて行う構成であると、エンジンの始動に際して、各制御部等の間でのデータバスラインを介した信号の送信周期による通信遅れによってクラッチの制御に遅れが生じてしまう可能性がある。そうすると、例えばクラッチの係合状態への切替え過渡中における特性の進行段階の開始がエンジンの制御に対して遅れることによってショックが発生したりするなどエンジン始動性能が悪化するおそれがある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンの始動に際して、通信遅れによるエンジン始動性能の悪化を抑制することができる車両の制御装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられたクラッチと、前記クラッチの制御状態の切替えに用いられる調圧された油圧を供給する油圧制御回路と、を備えた車両の、制御装置であって、(b)前記エンジンの始動に際して、前記クラッチの制御状態を解放状態から係合状態へ切り替えるように前記油圧を調圧する始動用指令値を算出するクラッチ制御部と、(c)前記エンジンの始動に際して、前記クラッチ制御部から送信された前記始動用指令値に基づいて前記油圧制御回路を駆動する始動時駆動用指令値を出力すると共に、前記クラッチの係合状態への切替えに連動して前記エンジンが運転を開始するように前記エンジンを制御するエンジン制御部と、を含んでおり、(d)前記クラッチ制御部は、前記エンジンの始動に際して、前記クラッチの係合状態への切替え過渡中における所定の進行段階では、前記所定の進行段階の次の進行段階における始動用指令値の大きさ及び出力時間を含む指令値情報を算出し、前記指令値情報を前記エンジン制御部へ送信するものであり、(e)前記エンジン制御部は、前記エンジンの始動に際して、前記所定の進行段階から前記次の進行段階への移行を許可したときには、前記次の進行段階への移行を許可したことに伴う前記クラッチ制御部からの前記次の進行段階における始動用指令値の送信に先立って、前記指令値情報に基づいて前記次の進行段階における始動時駆動用指令値を出力することにある。
前記第1の発明によれば、エンジン制御部によって、エンジンの始動に際して、所定の進行段階から次の進行段階への移行が許可されたときには、次の進行段階への移行が許可されたことに伴うクラッチ制御部からの次の進行段階における始動用指令値の送信に先立って、クラッチ制御部により算出されて送信された、次の進行段階における始動用指令値の大きさ及び出力時間を含む指令値情報に基づいて、次の進行段階における始動時駆動用指令値が出力されるので、通信遅れによるエンジンの制御に対する次の進行段階の開始遅れが抑制される。よって、エンジンの始動に際して、通信遅れによるエンジン始動性能の悪化を抑制することができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、動力源SPとして機能する、エンジン12及び電動機MGを備えたハイブリッド車両である。又、車両10は、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16と、を備えている。
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置90によって、車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
電動機MGは、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。電動機MGは、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられたバッテリ54に接続されている。バッテリ54は、電動機MGに対して電力を授受する蓄電装置である。電動機MGは、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、電動機MGの出力トルクであるMGトルクTmが制御される。MGトルクTmは、例えば電動機MGの回転方向がエンジン12の運転時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。具体的には、電動機MGは、バッテリ54から供給される電力により動力を発生する。又、電動機MGは、エンジン12の動力や駆動輪14側から入力される被駆動力により発電を行う。バッテリ54は、電動機MGの発電による電力を充電する。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギーも同意である。前記動力は、特に区別しない場合には駆動力、トルク、及び力も同意である。
動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース18内において、K0クラッチ20、トルクコンバータ22、自動変速機24等を備えている。K0クラッチ20は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路におけるエンジン12と電動機MGとの間に設けられたクラッチである。トルクコンバータ22は、K0クラッチ20を介してエンジン12に連結されている。自動変速機24は、トルクコンバータ22に連結されており、トルクコンバータ22と駆動輪14との間の動力伝達経路に介在させられている。自動変速機24は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路における電動機MGと駆動輪14との間に設けられた変速機である。又、動力伝達装置16は、自動変速機24の出力回転部材である変速機出力軸26に連結されたプロペラシャフト28、プロペラシャフト28に連結されたディファレンシャルギヤ30、ディファレンシャルギヤ30に連結された1対のドライブシャフト32等を備えている。又、動力伝達装置16は、エンジン12とK0クラッチ20とを連結するエンジン連結軸34、K0クラッチ20とトルクコンバータ22とを連結する電動機連結軸36等を備えている。
電動機MGは、ケース18内において、電動機連結軸36に動力伝達可能に連結されている。つまり、電動機MGは、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路、特にはK0クラッチ20とトルクコンバータ22との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結されている。見方を換えれば、電動機MGは、K0クラッチ20を介することなくトルクコンバータ22や自動変速機24と動力伝達可能に連結されている。
トルクコンバータ22は、電動機連結軸36と連結されたポンプ翼車22a、及び自動変速機24の入力回転部材である変速機入力軸38と連結されたタービン翼車22bを備えている。トルクコンバータ22は、動力源SPからの動力を流体を介して電動機連結軸36から変速機入力軸38へ伝達する流体式伝動装置である。トルクコンバータ22は、ポンプ翼車22aとタービン翼車22bとを連結する、つまり電動機連結軸36と変速機入力軸38とを連結する直結クラッチとしてのLUクラッチ40を備えている。LUクラッチ40は、公知のロックアップクラッチである。
LUクラッチ40は、車両10に備えられた油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるLU油圧PRluによりLUクラッチ40のトルク容量であるLUトルクTluが変化させられることで、作動状態つまり制御状態が切り替えられる。LUクラッチ40の制御状態としては、LUクラッチ40が完全に解放された状態である解放状態、LUクラッチ40が滑りを伴って係合された状態であるスリップ状態、及びLUクラッチ40が完全に係合された状態である係合状態がある。LUクラッチ40が解放状態とされることにより、トルクコンバータ22はトルク増幅作用が得られるトルクコンバータ状態とされる。又、LUクラッチ40が係合状態とされることにより、トルクコンバータ22はポンプ翼車22a及びタービン翼車22bが一体回転させられるロックアップ状態とされる。
自動変速機24は、例えば不図示の1組又は複数組の遊星歯車装置と、複数の係合装置CBと、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、例えば公知の油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。
自動変速機24は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合されることによって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。自動変速機24は、後述する電子制御装置90によって、ドライバー(=運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるギヤ段が切り替えられる。AT入力回転速度Niは、変速機入力軸38の回転速度であり、自動変速機24の入力回転速度である。AT入力回転速度Niは、トルクコンバータ22の出力回転速度であるタービン回転速度Ntと同値である。AT入力回転速度Niは、タービン回転速度Ntで表すことができる。AT出力回転速度Noは、変速機出力軸26の回転速度であり、自動変速機24の出力回転速度である。
K0クラッチ20は、例えば多板式或いは単板式のクラッチにより構成される油圧式の摩擦係合装置である。K0クラッチ20は、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるK0油圧PRk0によりK0クラッチ20のトルク容量であるK0トルクTk0が変化させられることで、係合状態、スリップ状態、解放状態などの制御状態が切り替えられる。
車両10において、K0クラッチ20の係合状態では、エンジン12とトルクコンバータ22とが動力伝達可能に連結される。一方で、K0クラッチ20の解放状態では、エンジン12とトルクコンバータ22との間の動力伝達が遮断される。電動機MGはトルクコンバータ22に連結されているので、K0クラッチ20は、エンジン12を電動機MGと断接するクラッチとして機能する。
動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ20が係合された場合に、エンジン連結軸34から、K0クラッチ20、電動機連結軸36、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、及びドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。又、電動機MGから出力される動力は、K0クラッチ20の制御状態に拘わらず、電動機連結軸36から、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、及びドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。
車両10は、機械式のオイルポンプであるMOP58、電動式のオイルポンプであるEOP60、ポンプ用モータ62等を備えている。MOP58は、ポンプ翼車22aに連結されており、動力源SPにより回転駆動させられて動力伝達装置16にて用いられる作動油OILを吐出する。ポンプ用モータ62は、EOP60を回転駆動する為のEOP60専用のモータである。EOP60は、ポンプ用モータ62により回転駆動させられて作動油OILを吐出する。MOP58やEOP60が吐出した作動油OILは、油圧制御回路56へ供給される。油圧制御回路56は、MOP58及び/又はEOP60が吐出した作動油OILを元にして各々調圧した、LU油圧PRlu、CB油圧PRcb、K0油圧PRk0などを供給する。
車両10は、更に、車両10の制御装置を含む電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、電動機制御用、クラッチ制御用等の各コンピュータを含んで構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、タービン回転速度センサ72、出力回転速度センサ74、MG回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、スロットル弁開度センサ80、ブレーキスイッチ82、バッテリセンサ84、油温センサ86など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne、AT入力回転速度Niと同値であるタービン回転速度Nt、車速Vに対応するAT出力回転速度No、電動機MGの回転速度であるMG回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、油圧制御回路56内の作動油OILの温度である作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、ポンプ用モータ62など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、電動機MGを制御する為のMG制御指令信号Sm、係合装置CBを制御する為のCB油圧制御指令信号Scb、K0クラッチ20を制御する為のK0油圧制御指令信号Sk0、LUクラッチ40を制御する為のLU油圧制御指令信号Slu、EOP60を制御する為のEOP制御指令信号Seopなど)が、それぞれ出力される。
各油圧制御指令信号Sについて、K0油圧制御指令信号Sk0を例示して説明する。電子制御装置90は、油圧制御回路56から調圧されたK0油圧PRk0を供給させる為の油圧指令値であるK0油圧指令値Spk0を算出する。電子制御装置90は、K0油圧指令値Spk0を、油圧制御回路56に備えられたK0ソレノイドSLk0を駆動する為のK0指示電流値Sik0に変換する。K0ソレノイドSLk0は、K0油圧PRk0を出力するK0クラッチ20用のソレノイドバルブである。K0油圧制御指令信号Sk0は、K0指示電流値Sik0に基づく、電子制御装置90に備えられたSLk0リニアドライバ92a3(後述する図3参照)がK0ソレノイドSLk0を駆動する為のK0駆動電流値Sik0dである。SLk0リニアドライバ92a3は、K0ソレノイドSLk0を駆動する駆動回路である。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現する為に、動力源制御手段すなわち動力源制御部92、及びクラッチ制御手段すなわちクラッチ制御部94を備えている。
動力源制御部92は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部92aとしての機能と、インバータ52を介して電動機MGの作動を制御する電動機制御手段すなわち電動機制御部92bとしての機能と、を含んでおり、それらの制御機能によりエンジン12及び電動機MGによるハイブリッド駆動制御等を実行するハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部である。
動力源制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量DEMを算出する。前記駆動要求量マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である。駆動要求量DEMは、例えば駆動輪14における要求駆動トルクTrdemである。要求駆動トルクTrdem[Nm]は、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPrdem[W]である。駆動要求量DEMとしては、駆動輪14における要求駆動力Frdem[N]、変速機出力軸26における要求AT出力トルク等を用いることもできる。駆動要求量DEMの算出では、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良い。動力源制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機24の変速比γat等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御するエンジン制御指令信号Seと、電動機MGを制御するMG制御指令信号Smと、を出力する。尚、駆動トルクTrなどの車両10の出力を制御すること以外の制御では、駆動要求量DEMは、例えば単にアクセル開度θaccやスロットル弁開度θth等を用いることもできる。
動力源制御部92は、電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合には、車両10を駆動する駆動モードをBEV駆動モードとする。BEV駆動モードは、K0クラッチ20の解放状態において、電動機MGのみを動力源SPに用いて走行するモータ走行(=BEV走行)が可能なモータ駆動モードである。一方で、動力源制御部92は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求駆動トルクTrdemを賄えない場合には、駆動モードをエンジン駆動モードつまりHEV駆動モードとする。HEV駆動モードは、K0クラッチ20の係合状態において、少なくともエンジン12を動力源SPに用いて走行するエンジン走行つまりハイブリッド走行(=HEV走行)が可能なハイブリッド駆動モードである。他方で、動力源制御部92は、電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合であっても、バッテリ54の充電が必要な場合やエンジン12等の暖機が必要な場合などには、HEV駆動モードを成立させる。
動力源制御部92は、エンジン12の制御状態を停止状態から運転状態へ切り替えるエンジン始動要求の有無を判定する。例えば、動力源制御部92は、BEV駆動モード時に、要求駆動トルクTrdemが電動機MGの出力のみで賄える範囲よりも増大したか否か、又は、エンジン12等の暖機が必要であるか否か、又は、バッテリ54の充電が必要であるか否かなどに基づいて、エンジン始動要求が有るか否かを判定する。
クラッチ制御部94は、動力源制御部92によりエンジン始動要求が有ると判定された場合には、エンジン12の始動制御を実行するようにK0クラッチ20を制御する。例えば、クラッチ制御部94は、クランキングトルクTcrをエンジン12側へ伝達する為のK0トルクTk0が得られるように、解放状態のK0クラッチ20を係合状態に向けて制御する為のK0指示電流値Sik0を算出する。つまり、クラッチ制御部94は、エンジン12の始動に際して、K0クラッチ20の制御状態を解放状態から係合状態へ切り替えるようにK0油圧PRk0を調圧する始動用指令値としての始動用のK0指示電流値Sik0を算出する。クランキングトルクTcrは、エンジン回転速度Neを引き上げるエンジン12のクランキングに必要なトルクである。
動力源制御部92は、エンジン始動要求が有ると判定した場合には、エンジン12の始動制御を実行するようにエンジン12及び電動機MGを制御する。例えば、エンジン制御部92aは、エンジン12の始動に際して、クラッチ制御部94から送信された始動用のK0指示電流値Sik0に基づいて油圧制御回路56つまりK0ソレノイドSLk0を駆動する始動時駆動用指令値としての始動時のK0駆動電流値Sik0dを出力する。電動機制御部92bは、K0クラッチ20の係合状態への切替えに合わせて、電動機MGがクランキングトルクTcrを出力する為のMG制御指令信号Smをインバータ52へ出力する。つまり、電動機制御部92bは、エンジン12の始動に際して、クランキングトルクTcrを電動機MGが出力するように、すなわちMGトルクTmをクランキングトルクTcr分増加するように、電動機MGを制御する為のMG制御指令信号Smをインバータ52へ出力する。又、エンジン制御部92aは、エンジン12のクランキングに連動して、燃料供給やエンジン点火などを開始する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。つまり、エンジン制御部92aは、エンジン12の始動に際して、K0クラッチ20の係合状態への切替えつまりエンジン12のクランキングに連動してエンジン12が運転を開始するようにエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。エンジン制御部92aは、エンジン12の点火を開始した初爆後にエンジン12の爆発による自立回転が安定した状態すなわちエンジン12が完爆した状態となるようにエンジントルクTeを出力する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。
エンジン12のクランキング時には、K0クラッチ20の係合に伴う反力トルクが生じる。この反力トルクは、BEV走行時には、エンジン始動中のエンジン12等のイナーシャによる駆動トルクTrの落ち込みを生じさせる。その為、エンジン12を始動する際にクランキングトルクTcrに向けて増加させられるMGトルクTmは、この反力トルクを打ち消す為のMGトルクTmであって、この反力トルクを補償するMGトルクTm分すなわち反力補償用のMGトルクTmである。クランキングトルクTcrは、エンジン12のクランキングに必要なK0トルクTk0であり、電動機MG側からK0クラッチ20を介してエンジン12側へ流れる、エンジン12のクランキングに必要なMGトルクTmである。クランキングトルクTcrは、例えばエンジン12の諸元、エンジン12の始動方法等に基づいて予め定められた例えば一定のトルクである。
電動機制御部92bは、エンジン12の初爆後、電動機MGがクランキングトルクTcrの出力を停止する為のMG制御指令信号Smをインバータ52へ出力して、エンジン12のクランキングを終了する。クラッチ制御部94は、エンジン12のクランキングが終了した後には、K0トルクTk0をクランキングトルクTcrよりも低下させて所定トルクTk0fに維持するように、K0クラッチ20の係合状態への切替えを待機する為のK0指示電流値Sik0を出力する。所定トルクTk0fは、クランキングの終了後に、エンジン12の完爆の外乱とならない為の、クランキングトルクTcrよりも小さな予め定められたK0トルクTk0である。エンジン12の完爆の外乱とならないということとは、エンジン12の初爆後に、エンジン12の自立回転を妨げないということである。別の観点では、エンジン12の点火後に自立回転でエンジン回転速度Neを上昇させるに当たり、K0クラッチ20が例えばクランキングトルクTcr相当のK0トルクTk0を持っているとK0クラッチ20よりも下流側の電動機MG等のイナーシャ分の影響により始動ショックが増大する可能性がある。所定トルクTk0fは、エンジン12のクランキングの終了後に、エンジン12の自立回転でエンジン回転速度Neを上昇させる際の始動ショックを低減する為の、クランキングトルクTcrよりも小さな予め定められたK0トルクTk0である。クラッチ制御部94は、エンジン12の完爆後、K0クラッチ20の入力回転速度と出力回転速度とを同期させる為の同期用K0トルクTk0sycが得られるように、K0クラッチ20を係合状態に向けて制御する為のK0指示電流値Sik0を出力する。K0クラッチ20の入力回転速度は、エンジン連結軸34の回転速度であって、エンジン回転速度Neと同値である。K0クラッチ20の出力回転速度は、電動機連結軸36の回転速度であって、MG回転速度Nmと同値である。つまり、K0クラッチ20の入力回転速度と出力回転速度とを同期させることとは、エンジン回転速度NeとMG回転速度Nmとを同期させることと同意である。
動力源制御部92は、エンジン12の制御状態を運転状態から停止状態へ切り替えるエンジン12の停止要求であるエンジン停止要求の有無を判定する。例えば、動力源制御部92は、HEV駆動モード時に、要求駆動トルクTrdemが電動機MGの出力のみで賄える範囲内であって、エンジン12等の暖機が不要であり、バッテリ54の充電が不要であるか否かなどに基づいて、エンジン停止要求が有るか否かを判定する。
動力源制御部92は、エンジン停止要求が有ると判定した場合には、エンジントルクTeを漸減する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。その後、動力源制御部92は、クラッチ制御部94によってK0クラッチ20が解放状態へ切り替えられた後に、エンジン12への燃料供給を停止するフューエルカットを実施する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。
クラッチ制御部94は、例えば予め定められた関係である変速マップを用いて自動変速機24の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機24の変速制御を実行する為のCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力する。前記変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機24の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。前記変速マップでは、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良いし、又、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。
図2は、エンジン12の始動制御が実行された場合のタイムチャートの一例を示す図である。図2において、t1時点は、例えばBEV走行中に、運転者によるアクセルペダルの踏み増し操作に伴ってエンジン始動要求が有ると判定されたことにより、エンジン12の始動制御が開始された時点を示している。エンジン12の始動制御の開始後、K0クラッチ20のパック詰め制御すなわちK0パック詰め制御が実行される(t1時点-t2時点参照)。K0パック詰め制御は、K0クラッチ20の摩擦プレート等におけるパッククリアランスを詰められた状態とする、K0クラッチ20のパック詰めを行う制御である。K0パック詰め制御では、先ず、K0油圧PRk0の初期応答性を向上させる為に、一時的に高いK0駆動電流値Sik0dを出力するクイックアプライ(=QA)が実行され(a部参照)、次いで、K0クラッチ20のパック詰めを完了させる為に、一定圧で待機するパック詰め用定圧待機が実行される(b部参照)。パック詰め用定圧待機における破線では、K0クラッチ20をパック詰め完了状態に維持する為のK0油圧PRk0である一定のパック圧PRk0pkとするK0駆動電流値Sik0dが出力されている。パック詰め用定圧待機における実線では、パック圧PRk0pkに、クランキングトルクTcrに相当するK0油圧PRk0分を加えた合計のK0油圧PRk0とするK0駆動電流値Sik0dが出力されている。破線に示すK0駆動電流値Sik0dと実線に示すK0駆動電流値Sik0dとでは、K0パック詰め制御の期間は本来は異なるが、図2では便宜上同じ長さとしている。
K0パック詰め制御の終了後、エンジン12をクランキングする為に、クランキングトルクTcrをエンジン12側へ伝達するK0クラッチ20によるクランキングすなわちK0クランキングが実行される(t2時点-t3時点参照)。K0クランキング時のK0駆動電流値Sik0dは、クランキングトルクTcrに相当するK0油圧PRk0分をパック圧PRk0pkに加えた合計のK0油圧PRk0を実現する為のK0駆動電流値Sik0dであって、クランキングトルクTcrをK0クラッチ20が伝達するようにK0油圧PRk0を調圧するK0駆動電流値Sik0dである。K0クランキング時には、クランキングトルクTcrに相当する大きさのMGトルクTmすなわち反力補償用のMGトルクTmが電動機MGから出力させられる。K0クランキング時において、エンジン回転速度Neが引き上げられると、エンジン点火などが開始されてエンジン12が初爆させられる。
K0クランキングの終了後、K0クラッチ20の係合状態への切替えを待機する為に、K0トルクTk0をクランキングトルクTcrよりも低下させて所定トルクTk0fに維持するクランキング後定圧待機が実行される(t3時点-t4時点参照)。クランキング後定圧待機時のK0駆動電流値Sik0dは、例えばK0クラッチ20をパック詰め完了状態に維持する値と同程度又はそれよりも大きく、エンジン12の完爆の外乱とならないK0トルクTk0を実現する為のK0駆動電流値Sik0dであって、K0トルクTk0をクランキングトルクTcrよりも低下させて一時的に所定トルクTk0fに維持するようにK0油圧PRk0を調圧するK0駆動電流値Sik0dである。クランキング後定圧待機の実行中、エンジン回転速度Neは、K0トルクTk0によってではなく、専らエンジン12の燃焼トルクによって上昇させられる。尚、本実施例では、クランキング後定圧待機の実行に先立って、K0油圧PRk0の初期応答性を向上させる為に、一時的に低いK0駆動電流値Sik0dを出力するクイックドレン(=QD)が実行されている(c部参照)。
クランキング後定圧待機の実行中に、エンジン12の爆発による自立回転が安定した状態となると、すなわちエンジン12が完爆した状態となると、エンジン12と電動機MGとの回転同期制御、つまりエンジン回転速度NeとMG回転速度Nmとを同期させるK0クラッチ20による同期制御すなわちK0同期制御が実行される(t4時点以降参照)。エンジン12の完爆は、例えばエンジン制御部92aから完爆通知が出力されたときに判断される。エンジン12の完爆通知は、例えばエンジン回転速度Neが予め定められたエンジン12の完爆回転速度に到達した時点からの経過時間が予め定められた完爆通知待機時間を超えたときに、エンジン制御部92aにより出力される。この完爆通知待機時間は、例えばエンジン12の排ガス要件が考慮されて予め定められている。K0クラッチ20の入力回転速度と出力回転速度との同期すなわちK0同期が完了した後、つまりK0クラッチ20の係合状態への切替えすなわちK0係合が完了した後、K0クラッチ20を完全係合状態へ移行するK0完全係合制御が実行される。K0完全係合制御によってK0クラッチ20が完全係合状態とされた後、エンジン12の始動制御が完了させられ(t5時点参照)、K0クラッチ20の完全係合状態が維持される(t5時点以降参照)。
図3は、電子制御装置90の一部を構成する、エンジン制御部92a及びクラッチ制御部94の一例を示す図である。図3において、電子制御装置90は、エンジン制御部92aとして機能するエンジン制御用コンピュータENG_ECU、及びクラッチ制御部94として機能するクラッチ制御用コンピュータCLT_ECUを含んでいる。エンジン制御部92aは、始動停止判断部92a1、K0解放許可判断部92a2、SLk0リニアドライバ92a3などを備え、例えば前述したエンジン12の始動制御や停止制御におけるエンジン12の制御を行う。クラッチ制御部94は、K0制御フェーズ判断部94a、要求K0油圧算出部94b、要求SLk0電流算出部94cなどを備え、例えば前述したエンジン12の始動制御や停止制御におけるK0クラッチ20の制御を行う。K0制御フェーズは、エンジン12の始動過程や停止過程において切り替えられるK0クラッチ20の制御状態毎に区分された複数の進行段階である。図2を参照すれば、K0制御フェーズは、例えばQAフェーズ、パック詰め用定圧待機フェーズ、K0クランキングフェーズ、QDフェーズ、クランキング後定圧待機フェーズ、K0同期フェーズ、K0完全係合フェーズなどが定義されている。要求K0油圧は、K0制御フェーズ毎のK0油圧指令値Spk0である。要求SLk0電流は、K0制御フェーズ毎のK0指示電流値Sik0である。
エンジン制御部92aとクラッチ制御部94との相互の間での各種信号の伝送は、所定の通信システム例えばCAN(Controller Area Network)通信システムにて行われる。クラッチ制御部94からエンジン制御部92aへ送信されたK0指示電流値Sik0は、SLk0リニアドライバ92a3からK0駆動電流値Sik0dとして油圧制御回路56のK0ソレノイドSLk0へ出力される。
図7は、CAN通信システムにて送信されたK0指示電流値Sik0に基づくK0駆動電流値Sik0dの比較例の一例を示す図である。図7において、t1b時点は、エンジン制御部92a(ENG_ECU)特には始動停止判断部92a1によりエンジン始動要求が有ると判定された時点を示している。t1b時点でエンジン制御部92aから送信されたエンジン始動要求は、CAN通信遅れ時間後のt2b時点でクラッチ制御部94(CLT_ECU)により受信される。CAN通信システムを介する信号は、送信周期による通信遅れが存在する。クラッチ制御部94では、エンジン始動要求の受信後、QAフェーズにおけるK0指示電流値Sik0の出力が開始される(t2b時点参照)。K0指示電流値Sik0はエンジン制御部92aへ送信され、エンジン制御部92aでは、K0指示電流値Sik0に基づくK0駆動電流値Sik0dが出力される。K0駆動電流値Sik0dにおいて、QAフェーズの開始は、t2b時点からCAN通信遅れ時間後のt3b時点とされている。
K0クラッチ20の制御が進行していき、K0クランキングに連動してエンジン点火などが開始されると、エンジン12の自立回転を妨げない為に、一時的にK0トルクTk0を低下させる、QDフェーズ、クランキング後定圧待機フェーズが実行される。その為、エンジン点火などの開始後に、エンジン制御部92a特にはK0解放許可判断部92a2により、K0クランキングフェーズを終了してQDフェーズへの移行を判断する、K0解放許可判定が成立させられてK0解放許可フラグがオンとされる(t4b時点参照)。t4b時点でエンジン制御部92aから送信されたK0解放許可フラグのオン情報は、CAN通信遅れ時間後のt5b時点でクラッチ制御部94により受信される。クラッチ制御部94では、K0解放許可フラグのオン情報の受信後、QDフェーズにおけるK0指示電流値Sik0の出力が開始される(t5b時点参照)。QDフェーズにおけるK0指示電流値Sik0はエンジン制御部92aへ送信され、エンジン制御部92aでは、QDフェーズにおけるK0指示電流値Sik0に基づくQDフェーズにおけるK0駆動電流値Sik0dが出力される。K0駆動電流値Sik0dにおいて、QDフェーズの開始は、t5b時点からCAN通信遅れ時間後のt6b時点とされている。従って、エンジン制御部92aによりK0解放許可判定が成立させられた時点から、エンジン制御部92a→クラッチ制御部94→エンジン制御部92aにおけるCAN通信遅れ時間分、QDフェーズの開始つまり実際のK0クラッチ20の解放作動が遅れる(A部参照)。エンジン12の点火後に自立回転でエンジン回転速度Neが上昇させられるに当たって、実際のK0クラッチ20の解放作動が遅れると、つまりK0クランキングフェーズの終了が遅れると、クランキングトルクTcrによって始動ショックが増大させられたり、又は、クランキングトルクTcrによるK0クラッチ20の急係合によって係合ショックが増大させられたりするなどエンジン始動性能が悪化するおそれがある。
そこで、クラッチ制御部94は、所定の進行段階つまりK0制御フェーズでは、K0指示電流値Sik0とは別に、所定のK0制御フェーズの次のK0制御フェーズつまり所定の次のK0制御フェーズにおける先読みした電流値の形状の情報を算出し、その先読みした電流値の形状の情報をK0指示電流値Sik0と共にエンジン制御部92aへ送信する。所定のK0制御フェーズは、例えばCAN通信遅れに因って所定の次のK0制御フェーズの開始が遅れるとエンジン始動性能の悪化を招くおそれがあるとして予め定められたK0制御フェーズであり、例えばK0クランキングフェーズなどである。所定の次のK0制御フェーズは、例えばQDフェーズである。先読みした電流値の形状の情報は、例えば所定の次のK0制御フェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の大きさ及び出力時間を含む指令値情報Icmdである。又、所定の次のK0制御フェーズの終了後、更にその次のK0制御フェーズつまり第2の所定の次のK0制御フェーズを実行する為に、所定の次のK0制御フェーズにおける指令値情報Icmdは、例えば第2の所定の次のK0制御フェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の大きさを含んでいても良い。第2の所定の次のK0制御フェーズは、例えばクランキング後定圧待機フェーズである。このように、クラッチ制御部94は、エンジン12の始動に際して、K0クラッチ20の係合状態への切替え過渡中における所定のK0制御フェーズでは、所定の次のK0制御フェーズにおける指令値情報Icmdを算出し、その指令値情報Icmdをエンジン制御部92aへ送信する。
エンジン制御部92aは、所定のK0制御フェーズにおいて所定の次のK0制御フェーズへの移行を許可したときには、この後にクラッチ制御部94から送信される所定の次のK0制御フェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0に基づいて始動時のK0駆動電流値Sik0dを出力することに替えて、事前にクラッチ制御部94から送信された所定の次のK0制御フェーズにおける指令値情報Icmdに基づいて始動時のK0駆動電流値Sik0dを出力する。つまり、エンジン制御部92aは、所定のK0制御フェーズから所定の次のK0制御フェーズへの移行を許可したときには、始動時のK0駆動電流値Sik0dの大きさを、指令値情報Icmdに含まれる所定の次のK0制御フェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の大きさとし、指令値情報Icmdに含まれる所定の次のK0制御フェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の出力時間分だけ出力する。又、エンジン制御部92aは、所定の次のK0制御フェーズの終了後は、始動時のK0駆動電流値Sik0dの大きさを、指令値情報Icmdに含まれる第2の所定の次のK0制御フェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の大きさとする。このように、エンジン制御部92aは、エンジン12の始動に際して、所定のK0制御フェーズから所定の次のK0制御フェーズへの移行を許可したときには、所定の次のK0制御フェーズへの移行を許可したことに伴うクラッチ制御部94からの所定の次のK0制御フェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の送信に先立って、クラッチ制御部94から送信された指令値情報Icmdに基づいて所定の次のK0制御フェーズにおける始動時のK0駆動電流値Sik0dを出力する。
図4は、CAN通信システムにて送信されたK0指示電流値Sik0に基づくK0駆動電流値Sik0dの本実施例の一例を示す図である。図4において、t1c時点は、エンジン制御部92a(ENG_ECU)によりエンジン始動要求が有ると判定された時点を示している。このエンジン始動要求に伴ってクラッチ制御部94(CLT_ECU)により始動用のK0指示電流値Sik0の出力が開始され、このK0指示電流値Sik0に基づいてエンジン制御部92aにより始動用のK0駆動電流値Sik0dの出力が開始される。
K0クラッチ20の制御が進行していき、K0クランキングに連動してエンジン点火などが開始されると、エンジン制御部92aによりK0解放許可判定が成立させられる(t2c時点参照)。破線に示す比較例では、図7でも示した通り、エンジン制御部92aから送信されたK0解放許可フラグのオン情報は、CAN通信遅れ時間後のt3c時点でクラッチ制御部94により受信され、QDフェーズにおけるK0指示電流値Sik0の出力が開始される。その為、比較例では、QDフェーズにおけるK0指示電流値Sik0の出力開始よりも更にCAN通信遅れ時間後にエンジン制御部92aによりQDフェーズにおけるK0指示電流値Sik0に基づくQDフェーズにおけるK0駆動電流値Sik0dの出力が開始される。これに対して、実線に示す本実施例では、エンジン制御部92aによりK0解放許可判定が成立させられる時点よりも前のK0クランキングフェーズにおいて、特定の条件下のときに、クラッチ制御部94により、指令値情報Icmdが算出され、その指令値情報Icmdがエンジン制御部92aはへ送信されている。上記特定の条件下は、例えばMG回転速度Nmが低回転等、K0クラッチ20の解放を速やかに行わなければならない領域に車両状態があるという条件下である。指令値情報Icmdには、例えばQDフェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の大きさである先読み電流値1、QDフェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の出力時間である先読み電流時間、及びクランキング後定圧待機フェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の大きさである先読み電流値2が含まれている。そして、本実施例では、エンジン制御部92aにより、K0解放許可判定が成立させられたときに、クラッチ制御部94から事前に送信された指令値情報Icmdに基づいて、QDフェーズにおけるK0指示電流値Sik0の形状が先読み的に出力される(B部参照)。これにより、本実施例では、CAN通信遅れなどの外乱に対応し、K0クラッチ20の解放遅れによる係合ショックを回避又は抑制することができ、エンジン始動性能の悪化が抑制される。
本実施例では、始動用のK0指示電流値Sik0に替えて、始動用とは別のK0指示電流値Sik0に基づいて始動時のK0駆動電流値Sik0dを出力することを、「乗っ取り」と表現する。特に、事前に読み込んだ指令値情報Icmdに基づいて先読み的にK0駆動電流値Sik0dを出力することを、「先読み」と表現する。
図5は、電子制御装置90の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、エンジン12の始動に際してCAN通信遅れによるエンジン始動性能の悪化を抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図5において、フローチャートの各ステップはクラッチ制御部94(CLT_ECU)の機能に対応している。ステップ(以下、ステップを省略する)S10aにおいて、エンジン12の始動制御の実行中であるか否かが判定される。このS10aの判断が肯定される場合はS20aにおいて、現在のK0制御フェーズが、「先読み」を実施するK0制御フェーズすなわち所定のK0制御フェーズとしてのK0クランキングフェーズであるか否かが判定される。このS20aの判断が肯定される場合はS30aにおいて、先読み許可判定が成立したか否かが判定される。この先読み許可判定は、例えば作動油温THoilが所定油温以上であり、且つ、アクセル開度θaccが所定開度未満であり、且つ、車速Vが所定車速未満である等の、「先読み」の許可を判断する為の条件である。これにより、アクセル開度θaccが高開度時等の、ショックの抑制よりもエンジン始動の応答性が優先されるシーン(状況、場面)においては、「先読み」が許可されず、「先読み」が実施されない。このS30aの判断が肯定される場合はS40aにおいて、「先読み」に必要な油圧形状情報が算出される。「先読み」に必要な油圧形状情報は、所定の次のK0制御フェーズとしてのQDフェーズにおけるK0油圧指令値Spk0、そのK0油圧指令値Spk0の継続時間、及び第2の所定の次のK0制御フェーズとしてのクランキング後定圧待機フェーズにおけるK0油圧指令値Spk0である。上記S10aの判断が否定される場合は、又は、上記S20aの判断が否定される場合は、又は、上記S30aの判断が否定される場合は、S50aにおいて、「先読み」に必要な油圧形状情報が全て無効値とされる。上記S40aに次いで、又は、上記S50aに次いで、S60aにおいて、油圧-電流変換により、指令値情報Icmdつまり先読み電流形状情報が算出され、その先読み電流形状情報がエンジン制御部92a(ENG_ECU)に送信される。先読み電流形状情報は、例えば「先読み」必要な油圧形状情報の各値が変換された、QDフェーズにおけるK0指示電流値Sik0つまり先読み電流値1、そのK0指示電流値Sik0の継続時間つまり先読み電流時間、及びクランキング後定圧待機フェーズにおけるK0指示電流値Sik0つまり先読み電流値2である。本実施例では、先読み電流値1を先読み指示電流値1、先読み電流時間を先読み指示電流時間、先読み電流値2を先読み指示電流値2と称することもある。尚、「先読み」に必要な油圧形状情報が全て無効値とされている場合には、先読み電流形状情報も全て無効値とされる。
図6は、電子制御装置90の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、エンジン12の始動に際してCAN通信遅れによるエンジン始動性能の悪化を抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば図5のフローチャートと共に繰り返し実行される。
図6において、フローチャートの各ステップはエンジン制御部92a(ENG_ECU)の機能に対応している。S10bにおいて、フェールセーフ(=F/S)等の、クラッチ制御部94からの先読み要求よりも高優先の乗っ取り要求がないか否かが判定される。クラッチ制御部94からの先読み要求は、例えば先読み電流形状情報と共に送信される。高優先の乗っ取り要求は、例えばF/S時等に、始動用とは別の、F/S等に用いられるK0指示電流値Sik0と共に送信される。このS10bの判断が肯定される場合はS20bにおいて、先読み実施判定が成立したか否かが判定される。この先読み実施判定は、例えばK0解放許可判定の成立つまりK0解放許可フラグがオフ→オンであり、且つ、現在のK0制御フェーズが「先読み」を実施するK0制御フェーズすなわち所定のK0制御フェーズとしてのK0クランキングフェーズであり、且つ、アクセル開度θaccが所定開度未満であり、且つ、先読み電流形状情報の何れの値も有効値である等の、「先読み」の実施を判断する為の条件である。このS20bの判断が肯定される場合はS30bにおいて、先読み実施前提条件が成立したか否かが判定される。この先読み実施前提条件は、例えばハイブリッドシステムが起動した状態つまりアクセルオンすれば走行可能な状態であり、且つ、K0制御フェーズがK0クラッチ20を解放状態とする過渡中のフェーズやK0クラッチ20を強制的に係合状態とするバックアップフェーズでない等の、「先読み」を実施する前提の状態となっていることを判断する為の条件である。このS30bの判断が肯定される場合はS40bにおいて、先読み実施終了条件が成立したか否かが判定される。この先読み実施終了条件は、例えば「先読み」の実施開始からの経過時間である先読み時間が先読み指示電流時間以上である、又は、先読み時間がバックアップタイマ以上である等の条件である。このバックアップタイマは、例えばCAN通信のばらつきやエラーの影響がある為に強制的に「先読み」を終了させる必要がある時間として予め定められた閾値つまり所定時間である。このS40bの判断が否定される場合はS50bにおいて、K0駆動電流値Sik0dとして、クラッチ制御部94からの先読み指示電流値1が出力される。上記S40bの判断が肯定される場合はS60bにおいて、クラッチ制御部94からK0クランキングフェーズ以降のK0制御フェーズにおける通常時の要求SLk0電流すなわちK0指示電流値Sik0が送信されているか否かが判定される。このS60bの判断が否定される場合はS70bにおいて、K0駆動電流値Sik0dとして、クラッチ制御部94からの先読み指示電流値2が出力される。上記S10bの判断が否定される場合は、又は、上記S20bの判断が否定される場合は、又は、上記S30bの判断が否定される場合は、又は、上記S60bの判断が肯定される場合は、S80bにおいて、K0駆動電流値Sik0dとして、クラッチ制御部94(CLT_ECU)からの通常時のK0指示電流値Sik0に基づく値が出力される。
上述のように、本実施例によれば、エンジン制御部92aによって、エンジン12の始動に際して、所定のK0制御フェーズから所定の次のK0制御フェーズへの移行が許可されたときには、所定の次のK0制御フェーズへの移行が許可されたことに伴うクラッチ制御部94からの所定の次のK0制御フェーズにおける始動用のK0指示電流値Sik0の送信に先立って、クラッチ制御部94により算出されて送信された指令値情報Icmdに基づいて所定の次のK0制御フェーズにおける始動時のK0駆動電流値Sik0dが出力されるので、CAN通信遅れによるエンジン12の制御に対する所定の次のK0制御フェーズの開始遅れが抑制される。よって、エンジン12の始動に際して、CAN通信遅れによるエンジン始動性能の悪化を抑制することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、図5のフローチャートにおけるS30aの先読み許可判定には、自動変速機24のシフトポジションがPポジションやNポジション等の非走行ポジションではないという条件を含めても良い。自動変速機24が非走行ポジションであるときには、K0油圧指令値Spk0に対するK0油圧PRk0の特性を補正する学習制御を実施する場合がある。又、自動変速機24の非走行ポジションは、動力伝達装置16における動力伝達が遮断された自動変速機24のシフトポジションであり、自動変速機24が駆動力を伝達不能な状態であるニュートラル状態とされるシフトポジションであるので、K0クラッチ20の解放遅れによるショックが微小とされる。その為、自動変速機24が非走行ポジションであるときには、「先読み」が許可されず、「先読み」が実施されないようにしても良い。自動変速機24のシフトポジションが非走行ポジションではないという条件は、自動変速機24のシフトポジションを選択する為のシフトレバーの操作ポジションが、自動変速機24のPポジションやNポジションに対応したP操作ポジションやN操作ポジション等の、自動変速機24の非走行位置を選択する非走行操作ポジションではないという条件に置き換えられても良い。
また、前述の実施例において、図5のフローチャートにおけるS30aの先読み許可判定には、先読み実施履歴がオフであるという条件を含めても良い。この先読み実施履歴は、「先読み」が実施されたときにオンとされ、エンジン12の始動制御の終了時にオフとされる。これにより、「先読み」の実施中に指令値情報Icmdが更新されることがないので、「先読み」によるQDフェーズの実施中に、「先読み」によるQDフェーズを実施するK0駆動電流値Sik0dが再度出力されることが回避される。
また、前述の実施例において、図5のフローチャートにおけるS30aの先読み許可判定には、エンジン12の始動を失敗したときの再度のエンジン12の始動制御時ではないという条件を含めても良い。これにより、エンジン12の始動を失敗したときは、ショックの抑制よりも確実なエンジン始動が優先され、「先読み」が許可されず、「先読み」が実施されない。
また、前述の実施例では、始動用指令値としての始動用のK0指示電流値Sik0を例示したが、この態様に限らない。この始動用指令値は、例えば始動用のK0油圧指令値Spk0、K0指示電圧値などであっても良い。又、この始動時駆動用指令値は、始動時の油圧指令値、K0駆動電圧値などであっても良い。
また、前述の実施例では、自動変速機24として遊星歯車式の自動変速機を例示したが、この態様に限らない。自動変速機24は、公知のDCT(Dual Clutch Transmission)を含む同期噛合型平行2軸式自動変速機などであっても良い。要は、エンジンと、エンジンと駆動輪との間に設けられたクラッチと、を備えた車両であれば、本発明を適用することができる。
また、前述の実施例では、流体式伝動装置としてトルクコンバータ22が用いられたが、この態様に限らない。例えば、流体式伝動装置として、トルクコンバータ22に替えて、トルク増幅作用のないフルードカップリングなどの他の流体式伝動装置が用いられても良い。又は、流体式伝動装置は、必ずしも備えられている必要はなく、例えば発進用のクラッチに置き換えられても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
12:エンジン
14:駆動輪
20:K0クラッチ(クラッチ)
56:油圧制御回路
90:電子制御装置(制御装置)
92a:エンジン制御部
94:クラッチ制御部
12:エンジン
14:駆動輪
20:K0クラッチ(クラッチ)
56:油圧制御回路
90:電子制御装置(制御装置)
92a:エンジン制御部
94:クラッチ制御部
Claims (1)
- エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられたクラッチと、前記クラッチの制御状態の切替えに用いられる調圧された油圧を供給する油圧制御回路と、を備えた車両の、制御装置であって、
前記エンジンの始動に際して、前記クラッチの制御状態を解放状態から係合状態へ切り替えるように前記油圧を調圧する始動用指令値を算出するクラッチ制御部と、
前記エンジンの始動に際して、前記クラッチ制御部から送信された前記始動用指令値に基づいて前記油圧制御回路を駆動する始動時駆動用指令値を出力すると共に、前記クラッチの係合状態への切替えに連動して前記エンジンが運転を開始するように前記エンジンを制御するエンジン制御部と、
を含んでおり、
前記クラッチ制御部は、前記エンジンの始動に際して、前記クラッチの係合状態への切替え過渡中における所定の進行段階では、前記所定の進行段階の次の進行段階における始動用指令値の大きさ及び出力時間を含む指令値情報を算出し、前記指令値情報を前記エンジン制御部へ送信するものであり、
前記エンジン制御部は、前記エンジンの始動に際して、前記所定の進行段階から前記次の進行段階への移行を許可したときには、前記次の進行段階への移行を許可したことに伴う前記クラッチ制御部からの前記次の進行段階における始動用指令値の送信に先立って、前記指令値情報に基づいて前記次の進行段階における始動時駆動用指令値を出力することを特徴とする車両の制御装置。
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JP (1) | JP2023061327A (ja) |
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2021
- 2021-10-19 JP JP2021171260A patent/JP2023061327A/ja active Pending
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