JP2023059622A - 金属部材及び金属樹脂接合体並びにそれらの製造方法 - Google Patents

金属部材及び金属樹脂接合体並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Masanori Endo
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優太 遠藤
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Abstract

【課題】高い接合強度を有し十分な気密性を担保できるような金属樹脂成形体及びそれを得るための金属部材並びにそのような金属樹脂成形体及び金属部材の製造方法を提供する。【解決手段】表面に接合対象物との接合面を備えた金属部材であって、金属製の金属基材と、その表面に水酸基含有皮膜とを備え、接合面は、水酸基含有皮膜が全面にわたって形成されており、水酸基含有皮膜は、開口径(D)が20μm~200μm、深さ(L)が20μm~200μm、開口径(D)と深さ(L)とのアスペクト比(L/D)が0.5~5である複数の凹凸部からなるマクロ凹凸部を表面に有するとともに、10nm~50nmの複数の開口部を有し、厚さが10nm~1000nmである微細凹凸部をマクロ凹凸部の表面に有することを特徴とする金属部材、及びそれを用いた金属樹脂接合体。【選択図】図1

Description

この発明は、特定の接合面を備えた金属部材、及び当該金属部材と樹脂成形体との接合体、並びにそれらの製造方法に関する。
近年、自動車の各種センサー部品、家庭電化製品部品、産業機器部品等の分野では、放熱性や導電性が非常に高い銅又は銅合金からなる銅基材や、放熱性が高く、かつ、他金属と比較して軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材などの金属製材料と、絶縁性能が高く、軽量でしかも安価である樹脂成形体とを一体に接合した金属樹脂接合体が幅広く用いられるようになり、また、その用途が拡大している。
そして、従来においては、このような異種材質である金属製材料と樹脂成形体とを互いに一体的に接合した金属樹脂接合体を製造するための工業的に好適な方法として、金属製材料を射出成形用金型内にインサートし、このインサートされた金属製材料の表面に向けて溶融した熱可塑性樹脂を射出し、熱可塑性樹脂の射出成形により樹脂成形体を成形する際に同時に金属製材料と樹脂成形体との間を接合する方法が開発され、より安価に、また、接合強度をより向上させるための幾つかの方法が提案されている。
例えば、本発明者らによれば、金属基材の表面に特定の処理を行うことにより、金属基材の表面に酸素を含有する酸素含有皮膜を形成し、この形成された酸素含有皮膜を介して、樹脂成形体を接合される技術を提案してきた(例えば、特許文献1~3)。これらの技術は、それ以前において提案されていた表面処理技術で問題となっていた金属部品や装置の腐食や、或いは、周辺の環境の汚染のおそれが少ない方法であって、一定の接合強度や気密性を得られるものであった。しかしながら、酸素含有皮膜を形成するために水和酸化物皮膜や亜鉛含有皮膜を形成する湿式処理する場合は、マクロ凹凸部が形成されないために樹脂接合体の接合強度が不十分であることから、処理方法の更なる改善の余地があった。これに対して、特許文献1~3の方法においてレーザー光を用いた場合には、マクロ凹凸部を形成することができる点で有利ではあるが、レーザー発振器固有のスポット径(ビーム径)に対して、照射間隔(ピット幅)が等しいあるいは小さくなる条件で実施されていた。この場合、所定のマクロ凹凸部が形成されず、結果として、接合強度の低下を引き起こし、気密性担保も困難になるケースがあったために、これについても更なる改善の余地があった。
一方で、前述のとおり、金属樹脂接合体を形成する方法として、金属製材料の表面をレーザー光で処理する技術がいくつか提案されている。
例えば、特許文献4では、金属成形体の接合面に対してレーザー光を照射して、多数の細孔群又は溝群を形成する際に、これら細孔群又は溝群の開口部の両側辺の面上にバリからなる「突起群」を形成し、とくにこの「突起群」が、接合される樹脂成形体に埋設されることで接合強度を高めることが開示されている。また、特許文献5では、レーザー光を照射して金属板の表面に所望のアンダーカット率を有する凹凸を形成して、金属板と樹脂との密着性を向上させる技術において、金属板が薄くなってもレーザー加工による変形を抑制できる金属樹脂複合成形品が開示されている。さらに、特許文献6では、金属表面に対して、一つの走査方向にレーザースキャニングする工程と、それにクロスする走査方向にレーザースキャニングする工程により、金属表面に対して樹脂と接合するための接合部を形成するためのレーザー加工条件が開示されている。これにより、当該接合部を凹凸形状としつつも、好適には、その一部を、凸部同士がつながってアーチ状になり下部に孔があいている「ブリッジ形状」として形成したり、或いは、凸部が「オーバーハング」してきのこ状・杉の木状に形成したりすることにより、接合部において異種材料とのアンカー効果を高めることができるとしている。
特許第6004046号公報 特許第6017675号公報 特許第6387301号公報 特許第5889775号公報 特開2020-116806号公報 特許第4020957号公報
特許文献4では、突起群を構成するバリからなる突起に挟まれたレーザー未照射部が存在している。このようなレーザー未照射部が存在することにより、接合強度の低下を引き起こすと同時に気密性が担保できなくなるおそれがある。また、特許文献5では、凹凸深さが浅いため、製品によっては、接合強度が不足する点で課題がある。さらに、特許文献6では、必ずクロスする2つの方向に対してレーザースキャンする必要があるため、加工時間が長く掛かりすぎるという点で改善の余地があり、また、好適な形状としている「ブリッジ形状」の下部にはレーザー未照射部(未処理部)が存在することで、接合強度および気密性が低下するおそれがある。
本発明の目的は、高い接合強度を有し十分な気密性を担保できるような金属樹脂成形体及びそれを得るための金属部材並びにそのような金属樹脂成形体及び金属部材の製造方法を提供することである。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]表面に接合対象物との接合面を備えた金属部材であって、
前記金属部材は、金属製の金属基材と、前記金属基材の表面に形成された水酸基を含有する水酸基含有皮膜とを備え、
前記接合面は、前記水酸基含有皮膜が全面にわたって形成されており、
当該水酸基含有皮膜は、開口径(D)が20μm~200μm、深さ(L)が20μm~200μm、開口径(D)と深さ(L)とのアスペクト比(L/D)が0.5~5である複数の凹凸部からなるマクロ凹凸部を表面に有するとともに、10nm~50nmの複数の開口部を有し、厚さが10nm~1000nmである微細凹凸部を前記マクロ凹凸部の表面に有することを特徴とする金属部材。
[2]前記水酸基含有皮膜はグロー放電発光分析法によって表面から深さ方向に向けて分析を行った際に、前記金属基材の前記金属の検出量と前記水酸基の検出量との合計量に対する前記水酸基の検出量の割合が4%以上であることを特徴とする[1]に記載の金属部材。
[3]前記金属は、アルミニウム、銅、鉄又はこれらの各金属を含む合金であることを特徴とする[1]又は[2」に記載の金属部材。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載の金属部材と、当該金属部材の表面に樹脂成形体とを、少なくとも1つずつ備え、これら金属部材と樹脂成形体とは、前記接合面を介して、マクロ凹凸部及び微細凹凸部に樹脂が入り込んだ状態で接合されていることを特徴とする金属樹脂接合体。
[5]前記樹脂成形体は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含むものであることを特徴とする[4]に記載の金属樹脂接合体。
[6]表面に接合対象物との接合面を備えた金属部材の製造方法であって、
金属製の金属基材の表面へレーザー光を照射するレーザー処理によって、前記金属基材の表面に水酸基を含有する水酸基含有皮膜を形成する皮膜形成工程を備え、
前記皮膜形成工程では、前記レーザー処理によって、前記水酸基含有皮膜が全面にわたって形成される前記接合面を形成し、
前記皮膜形成工程では、前記レーザー処理によって、開口径(D)が20μm~200μm、深さ(L)が20μm~200μm、開口径(D)と深さ(L)とのアスペクト比(L/D)が0.5~5である複数の凹凸部からなるマクロ凹凸部を表面に有するとともに、当該マクロ凹凸部の表面の全面には、10nm~50nmの複数の開口部を有し、厚さが10nm~1000nmである微細凹凸部を前記マクロ凹凸部の表面に有する前記水酸基含有皮膜を形成することを特徴とする金属部材の製造方法。
[7]前記皮膜形成工程では、前記レーザー処理におけるエネルギー密度が0.5J/mm2以上、であることを特徴とする[6]に記載の金属部材の製造方法。
[8]前記皮膜形成工程では、前記レーザー処理によって、グロー放電発光分析法によって表面から深さ方向に向けて分析を行った際に、前記金属基材の前記金属の検出量と前記水酸基の検出量との合計量に対する前記水酸基の検出量の割合が4%以上である、前記水酸基含有皮膜を形成することを特徴とする[6]または[7]に記載の金属部材の製造方法。
[9][6]~[8]のいずれか1項に記載の方法によって金属部材を得たのちに、次いで、この得られた金属部材の表面に樹脂成形体を接合させる樹脂成形工程を備え、
前記金属部材と樹脂成形体とをそれぞれ少なくとも1つずつ備えた金属樹脂接合体を製造する方法であって、
これら金属部材と樹脂成形体とは、前記接合面を介して、マクロ凹凸部及び微細凹凸部に樹脂が入り込んだ状態で接合されるようにすることを特徴とする金属樹脂接合体の製造方法。
[10]前記樹脂成形工程における樹脂接合体の接合においては、前記金属部材上に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を用いて成形することを特徴とする[9]に記載の金属樹脂接合体の製造方法。
本発明の金属部材および金属樹脂接合体は、金属部材と樹脂成形体との接合強度および気密性を向上させることができる。
図1は、マクロ凹凸部における開口径(D)と深さ(L)の求め方を示す図(写真)である。 図2は、レーザー光のビーム径と照射間隔との関係を示す模式図である。 図3は、接合強度評価(1)(せん断試験)の概要を説明するための図である。 図4は、接合強度評価(2)(せん断試験)の概要を説明するための図である。 図5は、金属樹脂接合体の気密性の評価の概要を説明するための図である。 図6は、金属樹脂金属接合体の気密性の評価の概要を説明するための図である。 図7は、接合強度評価の金属樹脂接合体の概要を示すための図である。 図8は、気密性の評価の金属樹脂接合体の概要を示すための図である。 図9は、実施例1で作製された金属樹脂接合体の接合断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図10は、実施例1で作製された金属樹脂接合体の接合断面をSEMで観察した際の精密断面評価用の図(写真)である。 図11は、実施例1で作製された樹脂接合前の金属部材の表面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図12は、実施例1で作製された金属樹脂接合体に対してアルカリ処理を行った後に、樹脂成形体の表面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図13は、実施例1で作製された樹脂接合前の金属部材に対してリン酸クロム酸処理を行った後に、金属部材の表面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図14は、実施例1で作製された樹脂接合前の金属部材をGD-OESにより表面分析を行った結果を示す図(グラフ)である。 図15は、実施例1で作製された樹脂接合前の金属部材をEPMAにより断面マッピングを行った結果を示す図である。 図16は、実施例2で作製された金属樹脂接合体の接合断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図17は、実施例2で作製された樹脂接合前の金属部材の表面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図18は、実施例2で作製された金属樹脂接合体に対してアルカリ処理を行った後に、樹脂成形体の表面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図19は、実施例2で作製された樹脂接合前の金属部材に対してリン酸クロム酸処理を行った後に、金属部材の表面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図20は、実施例3で作製された金属樹脂接合体の接合断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図21は、実施例4で作製された樹脂接合前の金属部材の、樹脂接合面側の断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図22は、実施例5に係る、接合強度評価の金属樹脂金属接合体の概要を示すための図である。 図23は、実施例5に係る、気密性の評価の金属樹脂金属接合体の概要を示すための図である。 図24は、実施例5で作製された金属樹脂金属接合体の接合断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図25は、実施例6で作製された樹脂接合前の金属部材の、樹脂接合面側の断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図26は、実施例7で作製された樹脂接合前の金属部材の、樹脂接合面側の断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図27は、比較例1で作製された金属樹脂接合体の接合断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図28は、比較例2で作製された樹脂接合前の金属部材の、樹脂接合面側の断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図29は、比較例3で作製された樹脂接合前の金属部材の、樹脂接合面側の断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図30は、比較例4で作製された金属樹脂接合体の接合断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図31は、比較例5で作製された樹脂接合前の金属部材の、樹脂接合面側の断面をSEMで観察した際の図(写真)である。 図32は、比較例6で作製された樹脂接合前の金属部材の、樹脂接合面側の断面をSEMで観察した際の図(写真)である。
以下、本発明の金属部材、金属樹脂接合体について、その製造方法と共に詳しく説明する。本発明の以下に説明する構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。
[1.金属部材および金属樹脂接合体]
本発明の金属部材は、表面に接合対象物との接合面を備えた金属部材であって、金属製の金属基材と、金属基材の表面に形成された水酸基を含有する水酸基含有皮膜とを備えている。また、水酸基含有皮膜は、マクロ凹凸部を表面に有するとともに、微細凹凸部をマクロ凹凸部の表面に有している。本発明の金属樹脂接合体は、金属部材と、金属部材の表面に樹脂成形体とを備えている。
[1-1.金属部材]
<金属基材>
先ず、本発明の金属部材に使用する金属製の金属基材については、銅又は銅合金からなる銅基材や、鉄又は鉄合金からなる鉄基材や、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材等、素材は制限されるものではなく、これを用いて形成される金属樹脂接合体の用途やその用途に要求される強度、耐食性、加工性等の種々の物性に基づいて決めることができる。また、所望の形状に適宜加工して得られる加工材、更にはこれらの加工材を適宜組み合わせて得られる組合せ材等が挙げられる。また、使用する用途にもよるが、通常はその厚みが0.3mm~10mm程度のものを用いる。通常、金属基材の表面には、酸化皮膜が形成されている。酸化皮膜は、大気中で自然に形成される自然酸化皮膜であってもよく、陽極酸化によって形成される陽極酸化皮膜であってもよい。また、熱間圧延によって形成される圧延酸化皮膜であってもよい。
<接合対象物>
金属基材との接合対象物としては、金属基材と接合可能な材料であれば特に限定されない。接合対象物は、金属基材の融点よりも低い温度で接合可能な材料を用いること好ましい。このような接合対象物は、好適には、樹脂材料からなる樹脂成形体である。樹脂成形体については後述する。
<接合面>
金属基材に形成する接合面については、金属基材の一面の一部だけでもよいし、一面の全部や、或いは、両面の一部又は全部などでもよく、使用する用途などに応じて、必要な部分に接合面が形成されればよい。また、接合面の形状、大きさ、配置等についても特に限定されない。組合せ材などの場合においても同様である。なお、本発明において、「接合面」とは、金属基材と樹脂との接合が予定されている領域であって、樹脂との接合のために金属基材の表面に所定の処理が施された領域を称呼するものとする。これに対して、金属基材と樹脂とが接合した領域を「接合部」と称呼して区別する。
<水酸基含有皮膜>
接合面には、水酸基含有皮膜が全面にわたって形成されている。水酸基含有皮膜は、図面に示されるとおり、巨視的には凹部と凸部が交互に連続して形成された「マクロ凹凸部」と、そのマクロ凹凸部の表面に形成された「微細凹凸部」とを有している。
水酸基含有皮膜は、グロー放電発光分析法(Glow discharge optical emission spectrometry:GD-OES)によって、金属部材の表層付近に存在する水酸基を検出することで確認することができる。具体的には、まず、GD-OESを用いて、金属部材の接合面における厚さ方向に対して、金属基材を構成する主金属および水酸基に由来する発光強度(V)を測定する。続いて、主金属に由来する発光強度の積算値(面積)から、金属基材を構成する主金属の検出量を算出する。また、水酸基に由来する発光強度の積算値から、水酸基の検出量を測定する。さらに、主金属の検出量と水酸基の検出量との合計量に対する、水酸基の検出量の割合を、水酸基存在率として算出する。GD-OESによって得られる発光スペクトルのうち、281nmおよび309nmに現れるピークを、水酸基に由来するピークとする。GD-OESによる金属部材の表層付近の発光強度の測定は、表面から200nmの深さまでの測定を行えばよい。具体的には、金属基材を構成する主金属の元素および水酸基に由来する発光強度が検出されてから、主金属の元素に対応する200nmのスパッタリングに要する時間が経過するまでの範囲を測定する。この測定の範囲(時間)は、測定対象となる主金属元素を高純度で含む標準試料のスパッタリングレート(μm/min)を予め測定することにより把握することができる。GD-OESを利用して発光強度を測定することで、金属部材の最表層に存在する成分だけではなく、樹脂との接合に寄与しうる、ある程度の深さまで存在する成分を検出して評価を行うことができる。
水酸基存在率は、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、特に好ましくは7%以上である。水酸基存在率が上記下限値以上であることにより、金属部材の表面付近に存在する水酸基が増加し、樹脂成形体に含まれる官能基との作用が強まることで、金属樹脂接合体の気密性が向上する傾向にある、また、このとき、金属樹脂接合体の接合強度も向上する傾向にある。水酸基存在率の上限は特に限定されないが、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。水酸基存在率は、水酸基の形成方法によって変化する。例えば、金属基材がレーザー処理を受けた場合に比して、金属基材が、温水もしくは熱水による水和酸化物処理;化成処理;ジンケート処理;等の湿式処理を受けた場合の方が高くなる傾向にある。レーザー処理により水酸基含有皮膜が形成される場合には、水酸基存在率は、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。
水酸基含有皮膜は、金属基材を構成する金属に応じて、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化水酸化アルミニウム(AlO(OH))、水酸化銅(Cu(OH)2)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)2)、酸化水酸化鉄(III)(FeO(OH))、等の金属基材を構成する金属の水酸化物(金属水酸化物)、または金属基材を構成する金属の酸化水酸化物(金属酸化水酸化物)を含んでいる。また、水酸基含有皮膜は、金属基材を構成する金属に応じて、例えば、酸化アルミニウム(Al23)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(II,III)(Fe34)、酸化鉄(III)(Fe23)、等の金属基材を構成する金属の酸化物(金属酸化物)を含んでいてもよい。
金属基材の表面には、レーザー照射に起因して形成される金属酸化物が照射部の周辺に堆積した堆積物が皮膜状に形成されている。このような堆積物からなる金属溶融層は、前記のとおりの金属酸化物として酸素を含有している。金属溶融層は、最表層に水酸基を有する水酸基含有皮膜を有している。本発明においては前記のとおり、接合面の全面が、マクロ凹凸部及び微細凹凸を有する水酸基含有皮膜で覆われている。
なお、本明細書において、「接合面の全面」とは、必ずしも接合面の表面積の100%のみに限定されるわけでなく、未照射部によって水酸基含有皮膜に覆われていない面がごく微小のスポット的に存在している場合を排除するものではない。接合面は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が水酸基含有皮膜に覆われていることがよい。
<マクロ凹凸部>
マクロ凹凸部は、μmオーダーサイズの凹凸形状を有する構造体であって、水酸基含有皮膜の表面に形成されている。マクロ凹凸部は、レーザー光の照射を受けて金属基材が穿孔されることで生じる凹部と、レーザー光の照射によって生じた金属酸化物の堆積物からなる凸部とからなる構造を有している。そして、複数回のレーザー光の照射が互いに隣接して行われることで、凹部と凸部とからなる繰り返し構造を有している。マクロ凹凸部は、金属部材の表面または断面を、例えば、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)を用いて観察することで確認することができる。
マクロ凹凸部は、図1を参照して説明する手順から求められる、所定の開口径(D)と深さ(L)を有することが重要である。また、マクロ凹凸部は、所定のアスペクト比(L/D)を有することが重要である。マクロ凹凸部は、水酸基含有皮膜と同様に、金属水酸化物または金属酸化水酸化物を含んでいる。また、マクロ凹凸部は、水酸基含有皮膜と同様に、金属酸化物を含んでいてもよい。
ここで、開口径(D)と深さ(L)を算出するためには、SEMを用いて金属部材又は金属樹脂接合体の接合断面の観察を行い、少なくとも12個の凹部と11個の凸部とが交互に連続して配置されている、レーザー照射で形成された複数の凹凸部を含む断面写真を撮影する。そして、この断面写真に含まれる複数の凹凸部から、開口径(D)と深さ(L)を算出することができる。
具体的には、図1に示すように、断面写真に以下のような線を設けることにより求める。まず、上述した断面写真において、任意に選択した連続した凹部12個について、各凹部のそれぞれの中で最も深い位置となる最底部のうちで最も深いものを最低凹部Pb1(符合:2)とする。最低凹部Pb1を通過するか、またはPb1よりも低い位置を通過するとともに、各凹部のそれぞれの最底部の位置からの距離の和が最も小さくなる位置を通る基準線RL1を引く。次に、上述した断面写真において、上述した12個の凹部に挟まれる各凸部の中で一番高い凸部を最頂凸部Pt1(符合:1)とする。最頂凸部Pt1を通過するとともに、基準線RL1と平行となる基準線RL2を引く。このように、RL1及びRL2がそれぞれ最低凹部Pb1、最頂凸部Pt1を通過するように引かれることにより、深さLを算出する際に、本来の値よりも過度に大きく又は小さく計算されて、アスペクト比が大きく又は小さく算出されてしまうことを防止することができる。続いて、上述した断面写真において、最底凹部Pb1を含む連続した12個の凹部について、各凹部の最底部から、基準線RL2に対して垂直となる方向に12本の直線を引き、これらの直線をそれぞれ順にa線~l線(図1等では、破線で表示)とする。
上述したa線~l線について、互いに隣接する線の中間において平行な中線を引き、これらの中線をそれぞれ順にA~K線とする。A線~B線の間隔を、A線とB線とによって挟まれるとともに、b線が通過する凹部の開口径D1として得る。同様にして、A~K線の隣接する線同士の間隔を、開口径D1~D10として得る。また、b線~k線それぞれにおいて、各凹部の最底部から基準線RL2までの距離を、10個の凹部の深さL1~L10として得る。開口径D1~D10、及び深さL1~L10は、a線~l線のうち、両端のa線とl線とを除いたb線~k線がそれぞれ通過する、10個の凹部の開口径D及び深さLにそれぞれ対応するものである。
このようにして、上述した断面写真に含まれるb線~k線がそれぞれ通過する10個の凹部について、深さL1~10、及び開口径D1~D10を得ることができる。さらに、深さL1~10、及び開口径D1~D10の中から、スミルノフ・グラブス検定を用いて外れ値を検出する。外れ値の検出を行うためには、まず、深さL1~L10の10個の凹部について、各深さLの値を深さL1~L10の平均値で減算した絶対偏差を算出し、算出された絶対偏差を深さL1~L10の不偏標準偏差で除算して検定統計量tを算出する。次に、検定統計量tがその値となる確率を表すp値を求める。そして、p値が5%未満となるものを外れ値として検出する。外れ値が検出された場合には、深さL1~L10の10個の凹部から外れ値が検出された凹部の深さLを除外して、残余の凹部の深さLについて再度外れ値の検出を行い、以降、外れ値が検出されなくなるまで繰り返す。同様にして、開口径D1~D10からも外れ値を検出する。さらに、上述した断面写真に含まれるb線~k線がそれぞれ通過する10個の凹部について、深さLまたは開口径Dの一方または両方で外れ値が検出された凹部を除いた残余の凹部の深さLと開口径Dから、深さLの平均値と、開口径Dの平均値とを算出する。このようにして得られた深さLの平均値と、開口径Dの平均値とを、金属部材又は金属樹脂接合体の深さ(L)、開口径(D)とする。
またさらに、上述した断面写真に含まれるb線~k線がそれぞれ通過する10個の凹部について、深さLまたは開口径Dの一方または両方で外れ値が検出された凹部を除いた残余の凹部の深さLと開口径Dから、各凹部の深さLを各凹部の開口径Dで除算して、それぞれのアスペクト比(L/D)を算出する。そして、各凹部それぞれのアスペクト比(L/D)から、複数の凹部のアスペクト比(L/D)の平均値を算出する。このようにして得られたアスペクト比(L/D)の平均値を、金属部材又は金属樹脂接合体のアスペクト比(L/D)とする。
本発明においては、開口径(D)が、通常20μm~200μm、好ましくは40μm~180μm、より好ましくは60μm~150μm、さらに好ましくは80μm~120μmである。当該開口径(D)が上記下限値以上となる場合、凹部が広くなることから、接合させる樹脂が凹部へ入り込みやすくなり、また、後述のアスペクト比を満足しやすくなる。一方で、開口径(D)が上記上限値以下となる場合、樹脂の入り込みによる嵌合効果が発揮されやすくなり、また、後述のアスペクト比を満足しやすくなる。
本発明においては、深さ(L)が、20μm~200μm、好ましくは40μm~180μm、より好ましくは60μm~150μm、さらに好ましくは80μm~120μmである。当該深さ(L)が上記下限値以上となる場合、十分な深さを有することから樹脂の入り込みによる嵌合効果が発揮されやすくなり、また、後述のアスペクト比を満足しやすくなる。一方で、深さ(L)が上記上限値以下となる場合、深さ(L)値及び開口径(D)がともに大きくなることによる粗大な凹凸構造が形成されることを防いで、樹脂の入り込みによる嵌合効果が発揮されやすくなり、また、後述のアスペクト比を満足しやすくなる。
そして、本発明においては、開口径(D)と深さ(L)とのアスペクト比(L/D)が、通常0.5~5、好ましくは0.5~4、より好ましくは0.7~3、さらに好ましくは1~2である。このようなアスペクト比を満足することにより、凹部の深部まで樹脂が流入してマクロ凹凸部と樹脂との間に生じる空隙の発生を抑えて水酸基含有皮膜の表面全体を封止するとともに、樹脂と作用する水酸基含有皮膜の表面積が増加する。このように、金属部材と樹脂とによる相互作用が十分に発揮されるような凹部の形状となることで、金属部材と樹脂成形体との接合強度及び気密性を高めることができる。L/Dが上記下限値を上回ることで、凹部の開口径に対して深さが相対的に小さすぎない程度のサイズとなって、凹部が適度な深さを有する形状となり、凹部に樹脂が流入した際に金属部材と樹脂との相互作用が発揮される形状となりやすくなる。また、アスペクト比が上記上限値を下回ることで、凹部の開口径に対して深さが相対的に大きすぎない程度のサイズとなって、凹部の幅が開口部から深部へ向けて次第に狭まる略三角形状の形状となり、凹部の深部まで樹脂が流入しやすくなる。
<微細凹凸部>
微細凹凸部は、nmオーダーサイズの凹凸形状を有する構造体であって、水酸基含有皮膜の表面のマクロ凹凸部上に形成されている。微細凹凸部は、レーザー照射によって水酸基含有皮膜を有する金属溶融層が形成された際に、水酸基含有皮膜の表面に形成される。微細凹凸部は、金属部材の表面または断面を、例えば、走査電子顕微鏡を用いて観察することで確認することができる。
微細凹凸部は、10nm~50nmのナノサイズの微細な開口部が形成されているとともに、その膜厚が10nm~1000nmの微細な構造を持つ。SEMによる観察を行った場合、微細凹凸部は、上記サイズの微細な開口部を有する海綿状の構造体として観察される。微細凹凸部は、水酸基含有皮膜と同様に、金属水酸化物または金属酸化水酸化物を含んでいる。また、微細凹凸部は、水酸基含有皮膜と同様に、金属酸化物を含んでいてもよい。
本発明者らの検証によれば、樹脂がマクロ凹凸部や微細凹凸部に入り込むことや、或いは、水酸基含有皮膜の水酸基と樹脂中の官能基との化学的な結合による作用が、接合強度や気密性の担保に寄与していることが確認された。このことについては、いまだ不明な点もあるが、後述の実施例(実施例1、実施例2)でも確認されているとおり、水酸基含有皮膜が形成された金属部材に対して、i)リン酸クロム酸処理を行うことや、ii)ステアリン酸処理を行う検証により、水酸基含有皮膜(微細凹凸部)の存在の有効性を確認することができる。その機序としては次のとおりである。i)リン酸クロム酸水溶液は、アルミニウム酸化物の溶解速度に比して、アルミニウム基材の溶解速度が緩やかである。金属部材をリン酸クロム水酸溶液によって処理することで、最表層のアルミニウム酸化物を選択的に溶解させて、処理後の最表層としてアルミニウム基材が残るようにすることができる。このとき、水酸基含有皮膜の微細凹凸構造が消失するとともに、表層の水酸基も消失される。また、ii)ステアリン酸は、親水基であるカルボキシ基(-COOH)と、疎水基であるアルキル基(-C1735)とを合わせ持ち一分子の厚みを持つ単分子膜を形成する性質がある。金属部材がステアリン酸によって処理されると、水酸基含有皮膜の表面に存在する水酸基がステアリン酸のCOOH基と相互作用(水素結合)することで、水酸基含有皮膜の表面がステアリン酸の疎水基によって覆われる。これにより、微細凹凸部の形状は維持されているものの、微細凹凸部の表面に存在する水酸基の活性を消失させることができる。
[1-2.樹脂成形体]
次いで、所定の接合面を有する金属部材に対して、接合対象物として好適に用いられる樹脂成形体について説明する。樹脂成形体は樹脂組成物を金属部材表面に成形させることにより形成することができる。樹脂成形体は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含んでいる。
熱可塑性樹脂としては、用途に応じて適宜公知のものから選択することができるが、例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができ、これらを1種又は2種以上で使用することができる。この中でも、樹脂成形時の流動性が高く凹部に入り込みやすいなどの理由から、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を用いることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、用途に応じて適宜公知のものから選択することができるが、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができ、これらを1種又は2種以上で使用することができる。この中でも、反応硬化型接着剤は水酸基含有皮膜との相性がよく、反応面積が大きくなるに伴い高い接合強度が得られるなどの理由から、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系を用いることが好ましい。
また、樹脂成形体として、例えば、接着剤を用いることもできる。接着剤としては、上述した熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂、またはその他のエラストマーまたはゴムを含み、接着性を示す化合物を用いることができる。接着剤としては、用途に応じて適宜公知のものから選択することができるが、例えば、乾燥固化型接着剤として、アクリル樹脂系エマルジョン形、ゴム系ラテックス形、酢酸ビニル樹脂系溶剤形、ビニル共重合樹脂系溶剤形、ゴム系溶剤形などが挙げられ、また、反応硬化型接着剤として、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、変性シリコーン樹脂系ものなどを挙げることができ、これらを1種又は2種以上で使用することができる。この中でも、反応硬化型接着剤は水酸基含有皮膜との相性がよく、反応面積が大きくなるに伴い高い接合強度が得られるなどの理由から、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系を用いることが好ましい。
さらに、熱可塑性エラストマーを用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを挙げることができ、これらを1種又は2種以上で使用することができる。
また、上記のそれぞれの樹脂(樹脂組成物)においては、金属部材との間の密着性、機械的強度、耐熱性、寸法安定性(耐変形、反り等)、電気的性質等の性能をより改善するために、繊維状、粉粒状、板状等の充填剤や、各種のエラストマー成分を添加することができる。
更に、樹脂(樹脂組成物)には、一般的に添加されてもよい公知の添加剤、すなわち難燃剤、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、可塑剤、潤滑剤、滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等を、要求される性能や本発明の目的を阻害しない範囲において、適宜添加することができる。
[1-3.金属樹脂接合体]
金属樹脂接合体は、樹脂が金属部材表面の接合面(マクロ凹凸部、微細凹凸部)に入り込んだ状態で成形され、接合面を介して金属部材と樹脂成形体とが一体的に接合されている。金属部材及び樹脂成形体をそれぞれ1つずつ用いて接合させてもよいし、或いは、それらのいずれか又は両方を複数用いて接合させてもよく、さらには、それらの複数のセットを任意に積層させたような態様であってもよく、用途に応じて適宜決定することができる。
例えば、金属樹脂接合体は、金属部材と樹脂成形体とが、積層または連続して配置された状態で接合している金属-樹脂接合体であってもよい。または、金属樹脂接合体は、金属部材と樹脂成形体と金属部材とが、この順で積層または連続して配置された状態で接合している金属-樹脂-金属接合体であってもよい。または、金属樹脂接合体は、樹脂成形体と金属部材と樹脂成形体とが、この順で積層または連続して配置された状態で接合している樹脂-金属-樹脂接合体であってもよい。
金属樹脂接合体が、樹脂成形体を介して2以上の金属部材を接合する金属-樹脂-金属接合体である場合には、金属部材に挟まれた状態で熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を成形した樹脂成形体を備えるものであってもよい。または、熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂等を含む接着剤を樹脂成形体として用いて、金属部材が接着剤を介して接合されたものであってもよい。
[2.金属部材および金属樹脂接合体の製造方法]
本発明の金属部材の製造方法は、表面に接合対象物との接合面を備えた金属部材の製造方法であって、金属製の金属基材の表面に水酸基を含有する水酸基含有皮膜を形成する皮膜形成工程を備えている。本発明の金属樹脂接合体の製造方法は、金属部材の表面に樹脂成形体を接合させる樹脂成形工程を備えている。
[2-1.金属部材の製造方法]
<準備工程>
本発明の金属部材の製造方法では、皮膜形成工程に先駆けて、金属基材の表面の前処理として、脱脂処理、エッチング処理、デスマット処理、化学研磨処理、及び電解研磨処理等の前処理を施す準備工程を備えていてもよい。
<皮膜形成工程>
本発明は、皮膜形成工程において、上記のように準備した金属基材の表面にレーザー光を照射する処理(以下、単に「レーザー処理」などという。)を施す。レーザー処理によって、接合対象物との接合面を形成させて、本発明に係る金属部材を得る。また、レーザー処理によって、金属基材の表面に水酸基含有皮膜を形成する。ここで、レーザーとしては、公知のレーザーを使用することができるが、本発明のようにスポット的に金属基材を加工することに好都合であることから、パルス発振レーザーを用いることが好ましく、例えば、YAGレーザー、YVO4レーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザーを用いることがよい。
水酸基含有皮膜の形成原理は概ね次のとおりである。すなわち、レーザー照射によるエネルギーによって金属基材が溶融・蒸発するが、蒸発によって穿孔されることでその空間が凹部の基となり、その凹部の両側(両隣)のレーザーが照射されない部分が凸部の基となる。それと同時に、溶融した金属部分は一部又は全部が酸化されて金属酸化物となり、これが凹部となる照射部の周辺に堆積することにより、凸部が形成される。金属酸化物からなる堆積物は、凹部と凸部を覆って皮膜状に形成される。このように、金属基材の表面に形成された金属酸化物からなる堆積物によって、マクロ凹凸部の凹凸形状を形作る金属溶融層が形成される。さらに、金属酸化物は少なくとも多少の部分的イオン性を持っており、金属酸化物の新性表面には金属イオン(Al3+)と酸化物イオン(O2-)が存在している。静電的中和性から、空気中の水分と反応することで、金属溶融層の表面に存在する金属酸化物の水酸基化が起こり、金属溶融層の表面が水酸基で覆われることになる。このようにして、金属溶融層の最表層に、水酸基を含有する水酸基含有皮膜が形成される。
なお、金属部材にレーザー照射を受けないレーザー未照射部が存在している場合には、レーザー未照射部には金属溶融層が存在しておらず、水酸基含有皮膜も存在してない。通常、レーザー未照射部には、酸化皮膜が形成されている。レーザー未照射部は、水酸基含有皮膜を有さないため、水酸基に起因する化学的接合による気密性の向上が生じない。また、レーザー未照射部が平坦な場合には、マクロ凹凸部に起因する機械的接合による接合強度の向上が見られない。したがって、接合面にレーザー未照射部が残存しており、接合面の全体に水酸基含有皮膜が形成されていない場合には、金属樹脂接合体の気密性および接合強度が低下する。
<レーザー処理条件>
本発明は、上述したようなマクロ凹凸部と微細凹凸部とを有する水酸基含有皮膜とを備えるようにするためには、次のような点を考慮したレーザー処理条件に設定することが好ましい。
レーザー処理は、単位面積当たりのレーザー光の照射エネルギー(以降、「エネルギー密度」とも称する。)の影響を受ける。エネルギー密度は、レーザー処理の対象となる対象物(ワーク)において、レーザー光が照射されるレーザー被照射部が、単位面積と単位時間当たりに受けるレーザー出力を表す。エネルギー密度(J/mm2)は、レーザー光の出力W(W)、レーザー光の走査回数N(回)、レーザー光の照射間隔C(mm)、レーザー光の走査速度V(mm/s)、レーザー被照射部におけるレーザー光の照射方向と直行する長さLength、レーザー被照射部におけるレーザー光の照射方向と平行な幅Width、から、下記式(A1)によって表される。
エネルギー密度=(((Length/C)×Width×N)/V)×W)/(Length×Width) ・・・式(A1)
式(A1)を変形すると以下の式(A2)が得られる。エネルギー密度は、式(A2)によって算出することができる。
エネルギー密度=(W×N)/(C×V) ・・・式(A2)
エネルギー密度は、好ましくは0.5J/mm2以上である。エネルギー密度が増加すると、レーザー処理を受けた金属部材の表面に、水酸基を有する微細凹凸部が形成されやすくなる。また、所定の水酸基存在率を有する水酸基含有皮膜が形成されやすくなる。さらに、エネルギー密度が増加すると、金属基材の表面に形成されるマクロ凹凸部の凹部が深く形成されて、レーザー処理後の金属部材の表面粗さが大きくなる傾向にある。なお、金属基材を構成する金属の融点が高く、熱拡散が大きいほど、金属基材がレーザー光による作用を受けにくくなる傾向にある。上述した事情を考慮して、エネルギー密度は、レーザー処理の対象となる金属にあわせて変更することが望ましい。
アルミニウムを主金属とする金属基材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは0.5J/mm2以上、より好ましくは1J/mm2以上、さらに好ましくは1.5J/mm2以上である。また、アルミニウムを主金属とする金属基材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは5J/mm2以下、より好ましくは4J/mm2以下、さらに好ましくは3J/mm2以下である。
鉄を主金属とする金属基材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは1J/mm2以上、より好ましくは2J/mm2以上、さらに好ましくは3J/mm2以上である。また、鉄を主金属とする金属基材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは10J/mm2以下、より好ましくは8J/mm2以下、さらに好ましくは6J/mm2以下である。
銅を主金属とする金属基材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは2J/mm2以上、より好ましくは4J/mm2以上、さらに好ましくは6J/mm2以上である。また、銅を主金属とする金属基材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、エネルギー密度は、好ましくは20J/mm2以下、より好ましくは15J/mm2以下、さらに好ましくは10J/mm2以下である。
エネルギー密度が上記下限値以上であることにより、レーザー処理を受けた金属部材の表面に、水酸基を有する微細凹凸部が形成されやすくなる。また、所定の水酸基存在率を有する水酸基含有皮膜が形成されやすくなる。したがって、水酸基を有する微細凹凸部及び水酸基含有皮膜によって、金属樹脂接合体の気密性及び接合強度が向上しやすくなる。また、エネルギー密度が上記下限値以上であることにより、金属基材の表面に形成されるマクロ凹凸部の凹部の深さ(L)が大きくなり、アスペクト比(L/D)が大きくなる傾向にある。したがって、マクロ凹凸部に樹脂成形体が入り込むことで、マクロ凹凸部と樹脂成形体との機械的接合(アンカー効果)が発揮されることにより、接合強度が向上しやすくなる。エネルギー密度が上記上限値以下であることにより、金属基材の表面に形成されるマクロ凹凸部の凹部深さ(L)が過度に大きくなり、アスペクト比(L/D)が過度に大きくなることを防ぎやすくなる。したがって、マクロ凹凸部の凹部の深部にまで樹脂成形体が入り込むことができ、マクロ凹凸部の全体で金属部材の水酸基と樹脂成形体との官能基との化学的接合が発揮されることにより、気密性が向上しやすくなる。また、マクロ凹凸部の凸部の構造が細長く尖った形状となることを防いで、凸部が折れるなどによる機械的強度の低下を抑えることができる。また、金属樹脂接合体が破断する際に金属部材での破壊が生じることを防ぐことができる。
レーザー処理におけるレーザー条件(レーザー処理条件)は、上述したエネルギー密度を達成するように適宜設定すればよい。レーザー処理条件のパラメータとしては、レーザー光の出力(W)、レーザー光の周波数(kHz)、レーザー光のビーム径(μm)、レーザー光の照射間隔(μm)、レーザー光の走査速度(mm/s)、レーザー光の走査回数(回)が挙げられる。なお、走査回数とは、同一の照射軌跡に沿ってレーザー光を繰り返し照射する回数をいう。ここで、レーザー光のビーム径と照射間隔との関係について、図2を参照して説明する。レーザー光の照射間隔とは、対象物に照射される一のレーザー光の軌跡6と、当該レーザーと隣接して照射される他のレーザー光の軌跡6’との間の間隔をいう。より具体的には、レーザー光の照射間隔は、当該一のレーザー光の軌跡6における走査方向3と直行する方向のいずれか一方側の端部と、当該他のレーザー光の軌跡6’における当該一のレーザー光と同じ側の端部との間の距離をいう。パルスレーザ―を照射した場合には、レーザー光の軌跡は、個々のレーザーパルスによって形成される細孔が連続した軌跡として表される。この場合、レーザー光の照射間隔5は、連続する細孔によって形成されるレーザー光の軌跡に挟まれた領域の幅と、ビーム径4の大きさとを足し合わせた長さに相当する。
レーザー処理の対象となる金属基材の主金属がアルミニウム、鉄、銅である場合について、レーザー処理条件の例を表1に示す。
Figure 2023059622000002
[2-2.金属樹脂接合体の製造方法]
金属樹脂接合体は、樹脂組成物を原料として、金属部材表面に樹脂成形体を成形させることによって製造する。
ここで、樹脂組成物の成形(樹脂成形体の形成)方法としては、使用される樹脂に合わせて適宜好ましい成形方法を採用することができる。例えば、熱可塑性樹脂を用いる場合には、金属部材上に熱可塑性樹脂を含む組成物を射出成形することにより樹脂成形体を一体的に接合させて金属樹脂接合体として得ることや、或いは、射出成形で予め樹脂成形体として得たうえで、得られた樹脂成形体を金属部材表面にレーザー溶着、振動溶着、超音波溶着、ホッとプレス溶着、熱板溶着、非接触熱板溶着又は高周波用着などの手段を用いた熱圧着により一体的に接合させる方法などを挙げることができるが、これらに限定されない。
また、例えば、熱硬化性樹脂を用いる場合には、金属部材上に熱硬化性樹脂を含む組成物の射出成形することにより樹脂成形体を一体的に接合させて金属樹脂接合体として得ることや、或いは、所定の粘度に調整した組成物を金属部材上に塗布するなどしてから一体的に加熱・加圧する圧縮成形する方法などを挙げることができるが、これらに限定されない。
また、接着剤を用いる場合には、金属部材上に塗布し、乾燥させて硬化させることができるが、必要により加温などの操作を行っても構わず、使用する接着剤に合った成形条件を採用することができる。
[3.作用効果]
従来より、金属樹脂接合体の接合強度を高めるために、金属製材料をレーザー光で処理した際に所定の開口径及び深さを有するマクロ凹凸部を形成することにより、樹脂が入り込むことで機械的な相互作用を起こしやすい構造を形成することが有効であるとされている。また、該レーザー処理により生じる金属基材の溶融部が酸素を含有する酸素含有皮膜であり、この酸素含有皮膜が接合強度の発現に寄与することが知られていた。本発明者らが詳細に検討した結果、この酸素含有皮膜にはナノサイズの微細な開口部を有する構造(微細凹凸部)を持つことを新たに突き止めた。金属樹脂成形体の接合強度や気密性をより高めるためには、樹脂がこのような微細凹凸部に入り込むことや、酸素含有皮膜の官能基と樹脂中の官能基との化学的な結合による作用を有効に発揮させることが効果的であるとの考えに至った。さらには、このような酸素含有皮膜が接合面の全面に亘って形成されることで樹脂と酸素含有皮膜との作用を十分なものとできること、及びマクロ凹凸部の形状について、とくに、凹部の開口径に対して深さを適正なものとすることで、比較的樹脂が入り込みやすい構造になるとともに、入り込む樹脂が浅くなりすぎない(樹脂と酸素含有皮膜との作用が比較的弱まらない)ようにすることが、さらに有効であるとの考えに至り、このような視点で金属基材の表面に接合面を構成することにより、樹脂成形体と接合した場合には、実際に高い接合強度が得られ、また十分な気密性を担保できる金属樹脂成形体が得られることを突き止めた。
本発明の金属部材および金属樹脂接合体では、マクロ凹凸部及び微細凹凸部を有する水酸基含有皮膜が、接合面の全面にわたって形成されている。水酸基含有皮膜を有することによって、金属部材の表面に存在する水酸基と樹脂成形体の表面に存在する官能基との間で水素結合による化学的接合が発揮される。また、水酸基含有皮膜が、μmオーダーであって所定の開口径(D)、深さ(L)、及びアスペクト比(L/D)を満たすマクロ凹凸部を有することにより、マクロ凹凸部と樹脂成形体との間で機械的接合(アンカー効果)が発揮される。ここで、水酸基含有皮膜は、所定の形状のマクロ凹凸部を有することにより、マクロ凹凸部の凹部の深部にまで樹脂を入り込ませることができる。また、水酸基含有皮膜は、μmオーダーのサイズのマクロ凹凸部を有するとともに、マクロ凹凸部の表面にnmオーダーのサイズの微細凹凸部を有している。これにより、接合面の表面に提示される水酸基含有皮膜の表面積が増大し、樹脂成形体と相互作用する水酸基の量を増大させることができる。さらに、本発明の金属部材および金属樹脂接合体では、接合面の全体にわたって水酸基含有皮膜が形成されていることによって、水酸基含有皮膜が存在しない部位に起因して生じる、接合強度や気密性の低下を抑えるができる。このように、本発明によれば、機械的接合と化学的接合による作用を接合面の全面にわたって発揮させるとともに、マクロ凹凸部と微細凹凸部に樹脂が入り込んだ状態で金属部材と樹脂成形体との接合を行うことが可能となることで、機械的接合と化学的接合に寄与する接合面の面積を増大させている。よって、本発明の金属部材および金属樹脂接合体によれば、金属部材と樹脂成形体との機械的接合と化学的接合による作用が強まり、接合強度と気密性を向上させることが可能となっている。
本発明の金属部材及び金属樹脂接合体の製造方法では、レーザー処理によって、マクロ凹凸部及び微細凹凸部を有する水酸基含有皮膜が全面にわたって形成される接合面を形成する。よって、本発明の金属部材及び金属樹脂接合体の製造方法によれば、金属部材と樹脂成形体の接合強度と気密性を向上させることが可能となる。
また、本発明の金属部材及び金属樹脂接合体の製造方法では、レーザー処理におけるエネルギー密度が0.5J/mm2以上であることにより、微細凹凸部を有する水酸基含有皮膜を形成しやすくなり、金属部材と樹脂成形体の接合強度と気密性を向上させることが可能となっている。
以下、実施例、比較例及び試験例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明がこれにより限定されて解釈されるものでもない。
[評価方法]
<接合断面の評価>
樹脂成形体を接合する前の金属部材、又は金属樹脂接合体を厚さ方向に切断して、エポキシ樹脂に埋め込んだ後、湿式研磨を行い、接合断面評価用のサンプルを作製した。接合断面評価用のサンプルに対して、厚さ方向断面を走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM-7200F)により倍率100~500倍で観察した。観察断面から、マクロ凹凸部の深さ(L)、開口径(D)を測定するとともに、アスペクト比(L/D)を算出した。また、樹脂成形体を接合する前の接合断面評価用のサンプルを厚さ方向に切断して、クロスセクションポリッシャ(日本電子製、SM-09010)を用いて、精密断面評価用のサンプルを作製した。精密断面評価用のサンプルに対して、厚さ方向断面を走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM-7200F)により倍率50000倍で断面を観察した。接合面に、水酸基含有皮膜が全面にわたって形成されている場合を「全面」、水酸基含有皮膜が全面にわたって形成されていない場合を「部分」と評価した。
<接合前の金属部材の表面の評価>
樹脂成形体を接合する前の金属部材に対して、走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM-7200F)を用いて、表面を走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM-7200F)により倍率50000倍で表面を観察した。
<アルカリ処理による接合界面の評価>
アルミニウムを主金属とする金属樹脂接合体に対して、5wt%水酸化ナトリウム溶液に、50℃で12時間浸漬するアルカリ処理を施して、金属を完全溶解させて、試験樹脂成形体を得た。アルカリ処理により、金属樹脂接合体の金属部材を溶解除去して、樹脂成形体を残すことができる。
アルカリ処理を行った後の試験樹脂成形体に対して、走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM-7200F)により倍率50000倍で表面を観察した。
<リン酸クロム酸処理による水酸基含有皮膜の評価>
樹脂接合前の金属部材(アルミ板材、アルミ円盤)を、リン酸35mL、酸化クロム(VI)20gに蒸留水を加えて1Lとしたリン酸クロム水酸溶液に95℃~100℃で10分間浸漬するリン酸クロム酸処理を施して、試験金属部材を得た。本実施例では、リン酸クロム酸処理によって、微細凹凸部および水酸基含有皮膜の表面に存在する水酸基を除去するとともに、マクロ凹凸部が溶け切らずに残存する条件で処理を行っている。
次いで、リン酸クロム酸処理後の試験金属部材に対して、後述する樹脂成形体の接合方法によって樹脂成形体を接合させて、リン酸クロム酸処理後の試験接合体を作製した。
リン酸クロム酸処理後の試験接合体に対して、後述の評価方法により接合強度と気密性を評価した。
また、リン酸クロム酸処理を行う前の金属部材と、リン酸クロム酸処理を行った後の試験金属部材に対して、走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM-7200F)を用いて、表面を観察した。
<ステアリン酸処理による水酸基含有皮膜の評価>
100℃に保持した電気炉中でステアリン酸粉末を揮発させ、その中に樹脂接合前の金属部材(アルミ板材、アルミ円盤)を24時間暴露するステアリン酸処理を施して、試験金属部材を得た。
次いで、ステアリン酸処理後の試験金属部材に対して、後述する樹脂成形体の接合方法によって樹脂成形体を接合させて、ステアリン酸処理後の試験接合体を作製した。
ステアリン酸処理後の試験接合体に対して、後述の評価方法により接合強度と気密性を評価した。
<接合強度の評価(1)(せん断試験)>
金属樹脂接合体の接合強度の評価を、ISO19095に準じたせん断強度の測定によって行った。具体的には図3に示すように、金属部材8と樹脂成形体7とを接合した金属樹脂接合体9を専用治具10に固定し、10mm/minの速度で、接合面に対して平行な方向にせん断力が加わるように荷重を印加し、金属部材と樹脂成形体との間の接合部分を破壊する試験を実施した。金属樹脂接合体が破断したときの破断力を引張せん断強度(MPa)として求めた。
さらに、せん断試験を行った後の金属部材側の破断面を目視で観察し、破断形態を確認した。樹脂成形体で母材破壊が生じた場合を樹脂破壊(良)と判断した。金属部材と樹脂成形体との界面破壊が生じた場合は界面破壊(不良)と判断した。金属部材で母材破壊が生じた場合は金属破壊(不良)と判断した。樹脂成形体の射出成形を行った後に、金型から離型した際に、金属部材と樹脂接合体との間に破断が見られたものは、せん断強度を0MPaとした。
<接合強度の評価(2)(せん断試験)>
金属樹脂金属接合体の接合強度の評価を、JIS K 6850を参考にしたせん断強度の測定によって行った。具体的には図4に示すように、2枚の金属部材8及び8’を、後述の熱硬化性接着剤を用いて貼り合わせた金属樹脂金属接合体11を専用治具10に固定し、5mm/minの速度で、接合面に対して平行な方向にせん断力が加わるように荷重を印加し、接着剤を介した金属部材どうしの接合体の接合部分を破壊する試験を実施した。金属樹脂金属接合体が破断したときの破断力を引張せん断強度(MPa)として求めた。
さらに、せん断強度の評価後の破断面を目視で観察し、破断形態を確認した。接着剤で凝集破壊が生じ、接合部全体に接着剤が残っていた場合は「樹脂破壊」(良)と判断した。金属部材と接着剤との界面破壊が生じた場合は「界面破壊」(不良)と判断した。
<気密性の評価>
金属樹脂接合体、又は金属樹脂金属接合体の気密性の評価を、エアーリーク試験によって行った。具体的には図5に示すように、金属部材8と樹脂成形体7とを接合した金属樹脂接合体9を専用気密性冶具15にクランプして固定した状態で、エアーを最大で正圧0.5MPaまで印加し、1分間保持した。その後,エアー漏れの有無を目視で確認した。または、図6に示すように、2枚の金属部材8及び8’を、後述の熱硬化性接着剤を用いて貼り合わせた金属樹脂金属接合体11を専用気密性冶具15にクランプして固定した状態で、エアーを最大で正圧0.5MPaまで印加し、1分間保持した。その後,エアー漏れの有無を目視で確認した。上述した専用気密性治具15では、金属樹脂接合体9、又は金属樹脂金属接合体11を、O-リング13を介装した状態で上下から固定治具で挟みこんで固定している。金属樹脂接合体9、又は金属樹脂金属接合体11を挟んで、専用気密性治具15の上側の開放部には水12が存在しており、専用気密性治具15の下側の密閉部には空気が存在している。通気管14を通じて密閉部にエアーを印加することで、接合界面から気泡が発生するかどうかを機序として、金属樹脂接合体9、又は金属樹脂金属接合体11を通じて、開放部側にエアーが漏れるかどうかを確認することができる。評価時間内においてエアーリークがない場合を「合格(良)」、エアーリークが観察された場合を「不合格(不良)」として評価した。
<GD-OES表面分析>
樹脂成形体を接合する前の金属部材に対して、グロー放電発光分析装置(Glow discharge optical emission spectrometry:GD-OES)(堀場製作所製:GD-Profiler2)を用いた表面分析を行った。測定条件は分析径(アノード径):4mmφ、ガス圧力:600Pa、RF出力:35W、取込間隔:0.1s、測定元素:Al(測定波長396.157nm、光電子増倍管の高電圧600V)、測定元素:Fe(測定波長374.954nm)、測定元素:Cu(測定波長324.759nm)、測定元素:OH基(測定波長306.775nm、光電子増倍管の高電圧900V)である。また,測定方法は、Arプラズマにより試料をスパッタリングさせ、スパッタされた原子を原子発光させることで、元素分析を行い、金属部材または水酸基が検出されてから金属部材を構成する主たる元素(Al、Cu、Fe)に対応する200nmのスパッタリングに要する時間が経過するまでの範囲で検出された発光強度から、水酸基存在率を算出した。200nmのスパッタリングに要する時間については、上記の元素を高純度で含む各標準試料(Al:日本軽金属株式会社製のA995、Cu:株式会社ニラコ製のCu-113514、Fe:株式会社ニラコ製のFe-223469)を上記と同じ装置及び分析条件で予め測定し、得られたスパッタリングレート(μm/min)から求めた。各標準資料の純度、並びに各標準資料のスパッタリングレート及び200nmのスパッタリングに要する時間は以下の表2のとおりである。
Figure 2023059622000003
<EPMA断面マッピング>
樹脂成形体を接合する前の金属部材に対して、電子プローブマイクロアナライザー (Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)(島津製作所製:EPMA-1610)を用いた断面マッピングを行った。測定条件は、照射径が40μm/stepで縦横方向にそれぞれ512step測定するマッピング分析を実施した。ここで、測定面積は20.48mm×20.48mmであり、1stepのサンプリングタイムは20msであって、加速電圧は15kVであり、酸素の深さ方向の分解能は3μm以下である。次に、検出された酸素強度を事前に作成した検量線から重量百分率(wt%)として算出した。なお、検量線は、Al23標準試料(酸素量:48wt%)の酸素強度と高純度Al箔の酸素強度の2点から算出し作成したものを使用した。
[実施例1]
<金属部材の作製>
ISO19095に準拠し、JIS H0001に示された調質記号T5で処理したA6063アルミニウム合金(A6063-T5)の中空押出し材から厚さ1.5mm×幅18mm×長さ45mmの長方形状のアルミ板材と、厚さ2mm×外径Φ55mm×内径Φ20mmの円環状のアルミ円盤とを、それぞれ金属基材として切り出して準備した。
次に、これらアルミ板材及びアルミ円盤のそれぞれの被加工面に対して、以下の条件でレーザー照射するレーザー処理を行い、樹脂成形体との接合面を形成した。なお、アルミ板材では、一方の主面側の長手方向の端部において、長手方向に10mm×短手方向に18mmの長方形状の領域にレーザーを縞模様に照射した。また、アルミ円盤では、内側から同心円状に幅2.0mmの円環状の領域にレーザー照射した。レーザー処理条件は、以下の表5にまとめて示した。
<レーザー処理条件>
・装置:キーエンス社製、3Axis Fiberレーザマーカ(型式:MDF-5200)
・レーザー光波長:1090nm
・発信方式:パルス
・出力:42.5W
・周波数:60kHz
・ビーム径:60μm
・照射間隔:90μm
・走査速度:320mm/s
・走査回数(照射回数):1回
・エネルギー密度:1.48J/mm2
<樹脂成形体の接合、金属樹脂接合体の作製>
上記のようにして接合面が形成された各金属部材(レーザー処理後のアルミ板材及びアルミ円盤)を、射出成形機(日精樹脂工業製、FNX1103-18A)を用いて,ISO19095に準拠して作製した金型内にそれぞれインサート後、これらに対して、熱可塑性樹脂としてポリアミドMXD10をベースレジンとする芳香族ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:Reny(登録商標)、グレード:XL1002U)を使用して、これを樹脂温度250℃、金型温度140℃、射出速度30mm/s、保圧80MPaで射出成形した。それにより、樹脂成形体の厚さが3mm×幅10mm×長さ45mmの長方形状であって、アルミ板材と樹脂成形体との長方形状の接合部の接合面積が5mm×10mmである、アルミ板材(金属部材)8と樹脂成形体7との接合体(金属樹脂接合体9、図7)を作製した。また、樹脂成形体が厚さ2mm×Φ24mmの円盤状であって、アルミ円盤の内径側面との円環状の接合部の接合幅が2.0mm、接合面積が138.2mmである、アルミ円盤(金属部材)8と樹脂成形体7との接合体(金属樹脂接合体9、図8)を作製した。
<評価>
金属樹脂接合体に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図9に示す。具体的には、図9で示した連続した凹部12個について、後述のとおり白破線cを付した右から3番目の凹部を最低凹部Pb1として、Pb1を通過するように基準線RL1を引いた。また、後述のとおりの白実線Hが通過している凸部を最頂凸部Pt1として、Pt1を通過すると共にRL1に平行となる基準線RL2を引いた。さらに、12個の各凹部の最低部からRL2に対して垂直となる方向に直線を引き、これらを破線a~lで示した。そして、破線a~lの互いに隣接する中間に平行な中線を引き、これらを実線A~Kで示した。最後に、図に示したとおりの深さL1~L10、開口径D1~D10の測定値を求めた。各定値は以下の表3、表4のとおりであった。
次に、得られた測定値に対して、前記の手順でスミルノフ・グラブス検定を行って外れ値の検出を行った。表4に示したとおり開口径D10のp値が0.022(2.2%)となったため、D10を除外した。そして、除外後のD1~D9について再度同じ検定を行った結果、外れ値は検出されなかったため、外れ値が検出されたD10に対応する凹部を除いた、L1~L9の平均値とD1~D9の平均値とを、それぞれ実施例1における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
Figure 2023059622000004
Figure 2023059622000005
また、SEMによる断面の精密断面評価用の観察結果を図10に示す。
また、レーザー処理後の金属部材に対して、接合前の金属部材の表面の評価を行った。レーザー処理後の金属部材の表面の観察結果を図11に示す。
また、金属樹脂接合体に対して、アルカリ処理による接合界面の評価を行った。アルカリ処理後の樹脂成形体の表面の観察結果を図12に示す。
また、樹脂接合前の金属部材に対して、リン酸クロム酸処理による水酸基含有皮膜の評価を行った。リン酸クロム酸処理後の金属部材のSEMによる表面の観察結果を図13に示す。リン酸クロム酸処理を行う前と後の接合強度と気密性の評価結果を表7に示す。
また、樹脂接合前の金属部材に対して、ステアリン酸暴露処理による水酸基含有皮膜の評価を行った。ステアリン酸処理を行う前と後の接合強度と気密性の評価結果を表7に示す。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
また、GD-OESによる表面分析を行った。GD-OESによる測定結果を図14に示す。GD-OESによる測定結果から、アルミニウムおよび水酸基に由来する発光強度が検出されてから、200nmのスパッタリングに要する3.33秒間が経過するまでの範囲において、アルミニウムの検出量が39.7であり、水酸基の検出量が3.6であった。水酸基存在率は8.31%と算出された。
また、EPMAによる断面マッピングを行った。EPMAによる測定結果を図15に示す。
[実施例2]
金属として、JIS H0001に示された調質記号H34で処理したA5052アルミニウム合金(A5052-H34)を用い、レーザー処理条件のうち、出力を50W、照射間隔を110μm、走査速度を400mm/s、エネルギー密度を1.14J/mm2に変更した以外は、実施例1と同様にして金属部材(アルミ板材、アルミ円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
金属樹脂接合体に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図16に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったが、外れ値は検出されなかった。そのため、L1~L10の平均値とD1~D10の平均値とを、それぞれ実施例2における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、レーザー処理後の金属部材に対して、接合前の金属部材の表面の評価を行った。レーザー処理後の金属部材の表面の観察結果を図17に示す。
また、金属樹脂接合体に対して、アルカリ処理による接合界面の評価を行った。アルカリ処理後の樹脂成形体の表面の観察結果を図18に示す。
また、樹脂接合前の金属部材に対して、リン酸クロム酸処理による水酸基含有皮膜の評価を行った。リン酸クロム酸処理を行う前と後の接合強度と気密性の評価結果を表7に示す。リン酸クロム酸処理後の金属部材のSEMによる表面の観察結果を図19に示す。
また、樹脂接合前の金属部材に対して、ステアリン酸暴露処理による水酸基含有皮膜の評価を行った。ステアリン酸処理を行う前と後の接合強度と気密性の評価結果を表7に示す。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[実施例3]
レーザー処理条件のうち、走査速度を400mm/s、エネルギー密度を1.18J/mm2に変更し、また、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィド(PPS)(ポリプラスチック社製、商品名:ジュラファイド、グレード:1150MF1)を使用した以外は、実施例1と同様にして金属部材(アルミ板材、アルミ円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
金属樹脂接合体に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図20に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったところ、開口径D1のp値が0.024(2.4%)となったため、D1を除外した。そして、除外後のD2~D10について再度同じ検定を行った結果、外れ値は検出されなかったため、外れ値が検出されたD1に対応する凹部を除いた、L2~L10の平均値とD2~D10の平均値とを、それぞれ実施例3における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[実施例4]
金属として、JIS H3100に示された無酸素銅(C1020)の圧延材を用い、また、レーザー処理条件のうち、走査速度を400mm/s、走査回数を5回、エネルギー密度を5.90J/mm2に変更し、また、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィド(PPS)(ポリプラスチック社製、商品名:ジュラファイド、グレード:1150MF1)を使用した以外は、実施例1と同様にして金属部材(銅板材、銅円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
樹脂成形体を接合する前のレーザー処理後の金属部材に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図21に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったが、外れ値は検出されなかった。そのため、L1~L10の平均値とD1~D10の平均値とを、それぞれ実施例4における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[実施例5]
JIS H0001に示された調質記号T5で処理したA6063アルミニウム合金(A6063-T5)の中空押出し材から厚さ5mm×幅25mm×長さ50mmの長方形状のアルミ板材を2枚と、厚さ2mm×外径Φ55mm×内径Φ20mmの円環状のアルミ円盤と、厚さ2mm×外径Φ24mmの円形状のアルミ円盤を、それぞれ金属基材として切り出して準備した。
次に、レーザー処理条件のうち、照射間隔を70μm、走査速度を500mm/s、エネルギー密度を1.21J/mm2に変更した以外は、実施例1と同様にしてレーザー照射して、接合面を形成した。なお、2枚のアルミ板材では、一方の主面側の長手方向の端部において、6mm×25mmの長方形状の領域にそれぞれレーザーを縞模様に照射した。また、円環状のアルミ円盤では、内側から同心円状に幅2.0mmの円環状の領域にレーザー照射した。また、円形状のアルミ円盤では、外周側から同心円状に幅2.0mmの領域にレーザー照射した。
接合面が形成された各金属部材(レーザー処理後のアルミ板材及びアルミ円盤)に対して、樹脂として熱硬化性接着剤(一液加熱硬化型エポキシ接着剤)(スリーエムジャパン株式会社社製、商品名:スコッチ・ウェルド(登録商標)SW2214)を使用して、接着剤の厚さが0.2mmとなるようにSUSワイヤーで調整して接合面に塗布した。接着剤の塗布後、2枚のアルミ板材どうしを貼り合わせ、0.01MPaの圧力をかけて、試験片温度が150℃到達した後に30分加熱した接着条件で、2枚のアルミ板材の長方形状の接合部の接合面積が6mm×25mmである、接着剤を介したアルミ板材(金属部材)8及び8'の接合体(アルミ板材と樹脂成形体とアルミ板材との接合体)(金属樹脂金属接合体11、図22)を作製した。また、接着剤の塗布後、円環状のアルミ円盤と円形状のアルミ円盤とを貼り合わせ、同様の接着条件で、円環状のアルミ円盤と円形状のアルミ円盤との円環状の接合部の接合幅が2.0mm、接合面積が138.2mmである、接着剤を介した円環状のアルミ円盤(金属部材)8と円形状のアルミ円盤(金属部材)8'との接合体(円環状のアルミ円盤と樹脂成形体と円形状のアルミ円盤との接合体)(金属樹脂金属接合体11、図23)を作製した。
金属樹脂金属接合体に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図24に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったが、外れ値は検出されなかった。そのため、L1~L10の平均値とD1~D10の平均値とを、それぞれ実施例5における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[実施例6]
金属として、JIS H3100に示された無酸素銅(C1020)の圧延材を用い、レーザー処理条件のうち、照射間隔を70μm、走査速度を400mm/s、走査回数を5回、エネルギー密度を7.59J/mm2に変更し、また、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィド(PPS)(ポリプラスチック社製、商品名:ジュラファイド、グレード:1150MF1)を使用した以外は、実施例1と同様にして金属部材(銅板材、銅円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
樹脂成形体を接合する前のレーザー処理後の金属部材に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図25に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったところ、深さL2のp値が0.030(3.0%)となったため、L2を除外した。そして、除外後のL1及びL3~L10について再度同じ検定を行った結果、外れ値は検出されなかったため、外れ値が検出されたL2に対応する凹部を除いた、L1及びL3~L10の平均値と、D1及びD3~D10の平均値とを、それぞれ実施例6における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[実施例7]
金属として、ステンレス板材(SUS304)を用い、レーザー処理条件のうち、走査速度を340mm/s、走査回数を2回、エネルギー密度を2.78J/mm2に変更し、また、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィド(PPS)(ポリプラスチック社製、商品名:ジュラファイド、グレード:1150MF1)を使用した以外は、実施例1と同様にして金属部材(鉄板材、鉄円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
樹脂成形体を接合する前のレーザー処理後の金属部材に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図26に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったところ、深さL6のp値が0.022(2.2%)となったため、L6を除外した。そして、除外後のL1~L5及びL7~L10について再度同じ検定を行った結果、外れ値は検出されなかったため、外れ値が検出されたL6に対応する凹部を除いた、L1~L5及びL7~L10の平均値と、D1~D5及びD7~D10の平均値とを、それぞれ実施例7における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[比較例1]
金属として、JIS H0001に示された調質記号H34で処理したA5052アルミニウム合金(A5052-H34)を用い、レーザー処理条件のうち、照射間隔を120μm、出力を50W、周波数を90kHz、走査速度を400mm/s、レーザーエネルギー密度を1.04J/mm2に変更した以外は、実施例1と同様にして金属部材(アルミ板材、アルミ円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
金属樹脂接合体に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図27に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったが、外れ値は検出されなかった。そのため、L1~L10の平均値とD1~D10の平均値とを、それぞれ比較例1における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
比較例1においては図27から分かるとおり、凸部の表面中央部において、レーザー未照射に由来する水酸基含有皮膜に覆われていない領域が存在していた。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[比較例2]
金属として、JIS H3100に示された無酸素銅(C1020)の圧延材を用い、レーザー処理条件のうち、出力を42.5W、周波数を60kHz、照射間隔を90μm、走査速度を100mm/s、走査回数を5回、エネルギー密度を23.6J/mm2に変更した以外は、実施例1と同様にして金属部材(銅板材、銅円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
樹脂成形体を接合する前のレーザー処理後の金属部材に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図28に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったところ、開口径D10のp値が0.036(3.6%)となったため、D10を除外した。そして、除外後のD1~D9について再度同じ検定を行った結果、外れ値は検出されなかったため、外れ値が検出されたD10に対応する凹部を除いた、L1~L9の平均値とD1~D9の平均値とを、それぞれ比較例2における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[比較例3]
金属として、JIS H0001に示された調質記号H34で処理したA5052アルミニウム合金(A5052-H34)を用い、レーザー処理条件のうち、出力を15W、周波数を60kHz、照射間隔を90μm、走査速度を340mm/s、エネルギー密度を0.49J/mm2に変更した以外は、実施例1と同様にして金属部材(アルミ板材、アルミ円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
樹脂成形体を接合する前のレーザー処理後の金属部材に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図29に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10(図中には表記無し)、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったが、外れ値は検出されなかった。そのため、L1~L10の平均値とD1~D10の平均値とを、それぞれ比較例3における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。なお、L1~10を図中に明示していないが、他の断面観察図と同様に、破線b~k上における該当箇所をL1~10とした(比較例4~6についても同様である)。
比較例3においては図29から分かるとおり、凸部の表面中央部において、レーザー未照射に由来する水酸基含有皮膜に覆われていない領域が存在していた。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[比較例4]
レーザー処理条件のうち、出力を42.5W、周波数を60kHz、照射間隔を70μm、走査速度を3000mm/s、エネルギー密度を0.20J/mm2に変更した以外は、実施例5と同様にしてレーザー照射して、接合面を形成した。
金属樹脂金属接合体に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図30に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったが、外れ値は検出されなかった。そのため、L1~L10の平均値とD1~D10の平均値とを、それぞれ比較例4における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[比較例5]
金属として、JIS H3100に示された無酸素銅(C1020)の圧延材を用い、レーザー処理条件のうち、出力を35W、周波数を60kHz、照射間隔を70μm、走査速度を800mm/s、レーザーエネルギー密度を0.63J/mm2に変更し、また、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィド(PPS)(ポリプラスチック社製、商品名:ジュラファイド、グレード:1150MF1)を使用した以外は、実施例1と同様にして金属部材(銅板材、銅円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
樹脂成形体を接合する前のレーザー処理後の金属部材に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図31に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったところ、開口径D3のp値が0.036(3.6%)となり、また、深さL6のp値が0.047(4.7%)となったため、D3と、L6とを除外した。そして、除外後のL1~L5及びL7~L10と、D1、D2、D4~D10とについて再度同じ検定を行った結果、外れ値は検出されなかったため、外れ値が検出されたD3、L6に対応する凹部を除いた、L1、L2、L4、L5及びL7~L10の平均値と、D1、D2、D4、D5及びD7~D10の平均値とを、それぞれ比較例5における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
[比較例6]
金属として、ステンレス板材(SUS304)を用い、レーザー処理条件のうち、出力を42.5W、周波数を60kHz、照射間隔を90μm、走査速度を2000mm/s、エネルギー密度を0.24J/mm2に変更した以外は、実施例1と同様にして金属部材(鉄板材、鉄円盤)を作製するとともに、評価用の各金属樹脂接合体を作製した。
樹脂成形体を接合する前のレーザー処理後の金属部材に対して、接合断面の評価を行った。SEMによる断面の観察結果を図32に示す。実施例1と同じ方法で評価を行い、L1~10、D1~10を測定してスミルノフ・グラブス検定を行ったが、外れ値は検出されなかった。そのため、L1~L10の平均値とD1~D10の平均値とを、それぞれ比較例6における深さ(L)、開口径(D)とし、アスペクト比(L/D)を求めた。測定結果を表6に示した。
また、金属樹脂接合体に対して、接合強度の評価と気密性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
Figure 2023059622000006
Figure 2023059622000007
Figure 2023059622000008
[検討]
実施例1~7の金属樹脂接合体または金属部材に対するSEMによる断面観察から、μmオーダーサイズの凹凸形状を有するマクロ凹凸部が、接合面の全面にわたって形成されていることが確認された。また、マクロ凹凸部内に樹脂が入り込んで接合していることが確認された。また、実施例1の金属部材に対するTEMによる断面観察から、マクロ凹凸部の表面には、nmオーダーサイズの微細凹凸部が形成されていることが確認された。
実施例1,2の接合前の金属部材に対するSEMによる表面観察からも、金属部材の表面にマクロ凹凸部と微細凹凸部とが形成されていることが確認された。また、実施例1,2のアルカリ処理を行った後の試験樹脂成形体に対するSEMによる表面観察から、金属部材を溶解除去した後に残る樹脂成形体の表面は、微細凹凸部をレプリカ状に写し取ったようなnmオーダーサイズの凹凸形状を有していることが確認された。この結果から、金属樹脂接合体では、微細凹凸部内に樹脂が入り込んで接合していることが確認された。
実施例1,2のリン酸クロム酸処理を行う前後のSEMによる表面観察から、リン酸クロム酸処理によって、マクロ凹凸部は残っているもの、微細凹凸部が除去されたことが確認された。さらに、実施例1,2のリン酸クロム酸処理を行った後では、リン酸クロム酸処理を行う前よりもせん断強度がやや低下していた。また、実施例1,2のリン酸クロム酸処理を行った後では、気密性の評価が不合格となっていた。またさらに、実施例1,2のステアリン酸処理を行った後では、ステアリン酸処理を行う前よりもせん断強度がやや低下していた。また、実施例1,2のステアリン酸処理を行った後では、気密性の評価が不合格となっていた。これらの結果から、微細凹凸部の有無によらずにある程度のせん断強度が維持されていたことから、金属樹脂接合体による接合強度の発現は、主としてマクロ凹凸による機械的接合(アンカー効果)が寄与していると考えられる。また、微細凹凸部の形状の存否によらず、水酸基が無い場合に気密性が不合格となっていたことから、金属樹脂接合体による気密性の発現は、主として金属部材の表面に存在する水酸基と、樹脂に含まれる官能基との水素結合による化学的接合が寄与していると考えられる。
GD-OESによる表面分析により算出される水酸基存在率から、表層付近に酸素原子及び水酸基が存在していることが測定された。また、EPMAによる断面マッピングから、金属部材の最表層に酸素元素が局在していることが観察された。これらの結果から、金属部材の表面に水酸基を含有する水酸基含有皮膜を備えていることが確認された。
実施例1~7の金属樹脂接合体または金属部材に対するSEMによる断面観察から、所定の大きさの開口径(D)と深さ(L)とを有するマクロ凹凸部が形成されており、アスペクト比(L/D)が所定の範囲にあるマクロ凹凸部が形成されていることが確認された。また、実施例1~7の金属樹脂接合体では、せん断強度の値を満足しており、接合部での樹脂破壊が生じていたことからも、金属と樹脂との接合は充分な接合強度を有していることが確認された。また、実施例1~7の気密性の評価も合格であった。
上述した評価結果から、実施例1~7の金属部材および金属樹脂接合体では、マクロ凹凸部及び微細凹凸部を有する水酸基含有皮膜が全面にわたって形成される接合面を金属部材の表面に有していることが明らかとなった。また、実施例1~7の金属部材および金属樹脂接合体では、接合強度および気密性が良好であることも確認された。
一方、比較例1,3では、SEMによる断面観察から、レーザーの照射によって穿孔された凹部の間に、レーザーが照射されておらず、且つレーザーの照射によって生じる堆積物に覆われていない、レーザー未照射部が残存していることが確認された(例えば、図27の符合17)。すなわち、比較例1,3では、金属部材の接合面にレーザー未照射部が残存しており、水酸基含有皮膜が一部不存在で部分的に形成されていることが確認された。言い換えれば、比較例1,3では、水酸基含有皮膜が全面にわたって形成される接合面を金属部材の表面に有していなかった。レーザー未照射部では、金属部材の表面が酸化皮膜によって覆われているため、水酸基含有皮膜の水酸基による樹脂との相互作用が生じない。また、比較例1,3では、マクロ凹凸部も接合面の全体に形成されていなかった。このため、比較例1,3では、レーザー未照射部において、樹脂との機械的接合が弱まることで、接合部での界面破壊が生じたと解される。また、比較例1では、レーザー未照射部において、樹脂との化学的接合が弱まることで、気密性が不充分になったと解される。
また、比較例2では、SEMによる断面観察から、アスペクト比(L/D)が所定の範囲の上限値を上回るマクロ凹凸部が形成されていることが確認された。この場合、マクロ凹凸部の凹部が開口部から深部へと向かうにつれて極度に先細りとなった形状となっていた。また、マクロ凹凸部の凸部の構造が細長く尖った形状となっていた。このため、比較例2では、マクロ凹凸部において、凹部の深部にまで樹脂が入り込むことが困難になり、凹部の深部での樹脂との化学的接合が弱まることで、気密性が不充分になったと解される。また、比較例2では、マクロ凹凸部の凸部が折れることで樹脂との機械的接合が弱まり、接合部での金属部材の破壊が生じたと解される。
比較例3~6では、SEMによる断面観察から、アスペクト比(L/D)が所定の範囲の下限値を下回るマクロ凹凸部が形成されていることが確認された。この場合、マクロ凹凸部の凹部の深さが比較的に浅い形状になっているため、樹脂の入り込みによるアンカー効果が充分に発揮されなくなることで、界面破壊が生じていたと解される。また。比較例3~6では、接合面の表面に提示される水酸基含有皮膜の表面積が減少していることで、樹脂成形体と相互作用する水酸基の量が減少して、気密性の評価が不合格になっていたものと解される。
1…最頂凸部Pt1、2…最低凹部Pb1、3…走査方向、4…ビーム径、5…照射間隔、6(6’)…レーザー光の軌跡、7…樹脂成形体、8(8’)…金属部材、9…金属樹脂接合体、10…せん断試験用の専用治具、11…金属樹脂金属接合体、12…水、13…O-リング、14…エアー吹込み用の管、15…専用気密性治具、16…微細凹凸部(酸素含有皮膜)、17…レーザー未照射部

Claims (10)

  1. 表面に接合対象物との接合面を備えた金属部材であって、
    前記金属部材は、金属製の金属基材と、前記金属基材の表面に形成された水酸基を含有する水酸基含有皮膜とを備え、
    前記接合面は、前記水酸基含有皮膜が全面にわたって形成されており、
    当該水酸基含有皮膜は、開口径(D)が20μm~200μm、深さ(L)が20μm~200μm、開口径(D)と深さ(L)とのアスペクト比(L/D)が0.5~5である複数の凹凸部からなるマクロ凹凸部を表面に有するとともに、10nm~50nmの複数の開口部を有し、厚さが10nm~1000nmである微細凹凸部を前記マクロ凹凸部の表面に有することを特徴とする金属部材。
  2. 前記水酸基含有皮膜はグロー放電発光分析法によって表面から深さ方向に向けて分析を行った際に、前記金属基材の前記金属の検出量と前記水酸基の検出量との合計量に対する前記水酸基の検出量の割合が4%以上であることを特徴とする請求項1に記載の金属部材。
  3. 前記金属は、アルミニウム、銅、鉄又はこれらの各金属を含む合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属部材。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の金属部材と、当該金属部材の表面に樹脂成形体とを少なくとも1つずつ備え、これら金属部材と樹脂成形体とは、前記接合面を介して、マクロ凹凸部及び微細凹凸部に樹脂が入り込んだ状態で接合されていることを特徴とする金属樹脂接合体。
  5. 前記樹脂成形体は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含むものであることを特徴とする請求項4に記載の金属樹脂接合体。
  6. 表面に接合対象物との接合面を備えた金属部材の製造方法であって、
    金属製の金属基材の表面へレーザー光を照射するレーザー処理によって、前記金属基材の表面に水酸基を含有する水酸基含有皮膜を形成する皮膜形成工程を備え、
    前記皮膜形成工程では、前記レーザー処理によって、前記水酸基含有皮膜が全面にわたって形成される前記接合面を形成し、
    前記皮膜形成工程では、前記レーザー処理によって、開口径(D)が20μm~200μm、深さ(L)が20μm~200μm、開口径(D)と深さ(L)とのアスペクト比(L/D)が0.5~5である複数の凹凸部からなるマクロ凹凸部を表面に有するとともに、当該マクロ凹凸部の表面の全面には、10nm~50nmの複数の開口部を有し、厚さが10nm~1000nmである微細凹凸部を前記マクロ凹凸部の表面に有する前記水酸基含有皮膜を形成することを特徴とする金属部材の製造方法。
  7. 前記皮膜形成工程では、前記レーザー処理におけるエネルギー密度が0.5J/mm2以上であることを特徴とする請求項6に記載の金属部材の製造方法。
  8. 前記皮膜形成工程では、前記レーザー処理によって、グロー放電発光分析法によって表面から深さ方向に向けて分析を行った際に、前記金属基材の前記金属の検出量と前記水酸基の検出量との合計量に対する前記水酸基の検出量の割合が4%以上である、前記水酸基含有皮膜を形成することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の金属部材の製造方法。
  9. 請求項6~8のいずれか1項に記載の方法によって金属部材を得たのちに、次いで、この得られた金属部材の表面に樹脂成形体を接合させる樹脂成形工程を備え、
    前記金属部材と樹脂成形体とをそれぞれ少なくとも1つずつ備えた金属樹脂接合体を製造する方法であって、
    これら金属部材と樹脂成形体とは、前記接合面を介して、マクロ凹凸部及び微細凹凸部に樹脂が入り込んだ状態で接合されるようにすることを特徴とする金属樹脂接合体の製造方法。
  10. 前記樹脂成形工程における樹脂接合体の接合においては、前記金属部材上に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を用いて成形することを特徴とする請求項9に記載の金属樹脂接合体の製造方法。
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