JP2014004800A - 金属部材を一体化した樹脂成形品とその製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 樹脂部材の成形により、金属部材と樹脂部材とが同じ平面内で接合され一体化されている樹脂成形品である。前記金属部材の樹脂部材との接合面には、レーザ光照射による平行な微細幅寸法の溝の集合領域が付与されている。溝の集合領域を構成する前記溝のそれぞれは、レーザ光スポットによる走査を、レーザ光スポットの径より小さい送りピッチで一方向へ同一線上で複数回繰り返して形成されたものである。そして、前記平行な隣り合う溝と溝は、前記レーザ光スポットの径の30%以上の微細な幅寸法の凸条により隔てられている
【選択図】 図1
Description
すなわち、金属部材の表面を一つの走査方向にレーザスキャニング加工し、さらに、同一面内で前記走査方向と交差する別の走査方向にもレーザスキャニング加工して(クロススキャニング加工して)、微細な凹凸を金属表面に付与する技術が開示されている。クロススキャニング加工は、複数回重畳的に実施され、付与された微細な凹凸は、微細三次元網目形状に形成された凹状部と少なくとも一部がブリッジ形状またはオーバーハング形状をなした凸部となっている。ここで、ブリッジ形状とは、生成された凸部の頂上同士が溶融してつながりアーチ状になり下部に孔が開いている形状である。
上記の微細な凹凸が付与された金属表面に樹脂材料を射出成形すると、微細三次元網目形状の凹状部とブリッジ部下空孔に樹脂材料が入り込む結果、金属表面(接合面)と樹脂材料が接する表面積が増大すると同時に極めて高いアンカー効果が得られるとしている。
そして、前記金属部材の樹脂部材との接合面には、レーザ光照射による平行な微細幅寸法の溝の集合領域が付与されており、前記溝のそれぞれは、レーザ光スポットによる走査を、レーザ光スポットの径より小さい送りピッチで一方向へ同一線上で複数回繰り返して形成されたものであり、前記平行な隣り合う溝と溝は、前記レーザ光スポットの径の30%以上の微細な幅寸法の凸条により隔てられていることを特徴とする(請求項1)。
前記溝は、レーザ光スポットによる走査を、レーザ光スポットの径より小さい送りピッチで一方向へ同一線上で複数回繰り返して形成されたものであるので、十分な深さを有している。また、隣り合う溝と溝を隔てる前記凸条の頂部には、溝が形成される時に昇華して飛散した金属が冷却され付着することにより複雑な凹凸が生成している。この複雑な凹凸は、一方向・同一線上で複数回の走査を繰り返し、その都度、昇華し冷却されて析出した微細金属塊が積み重なって生成されたものであることから、極めて複雑で微細な凹凸形状を呈している。この金属部材に樹脂部材を成形により一体化すると、前記溝には樹脂材料が深く入り込み、他方で、凸条の頂部の複雑・微細な凹凸の間隙にも樹脂材料が侵入して複雑・微細な凹凸を確実に抱え込む。
上記において、平行な隣り合う溝と溝を隔てている凸条の幅を、レーザ光スポットの径の30%以上としているのは、30%より小さいと凸条の頂部に複雑・微細な凹凸を十分に付与する広さを確保できないためである。前記凸条の幅寸法のレーザ光スポットの径に対する割合の上限は、凸条の頂部に複雑・微細な凹凸が付与されない金属部材の地肌のままの箇所が残存しない値に設定することが好ましい。これは、レーザ光の出力の大きさ、金属部材の材質等によって決定される。
本発明に係る樹脂成形品は、金属部材をインサート或いはアウトサートし樹脂部材を例えば射出成形して、金属部材と樹脂部材を接合し一体化したものとされる。金属部材に何らの処理も付与されていない場合は、金属部材と樹脂部材とは単に接触しているだけであり、両者の界面での結合はなく容易に剥離してしまうし、気密性・液密性も保てない。そこで、本発明においては、以下に説明するように、金属部材の接合面に、レーザ光を照射して形成される平行な微細幅寸法の溝の集合領域が付与されている。
溝の深さは、好ましくは、50〜100μmであり、走査の繰り返し回数は、レーザ光の出力の大きさと金属部材の材質を勘案しながら決定される。
そして、例えば、図3(C)に示すように、金属部材1の片面に樹脂部材3が成形により一体化された樹脂成形品4とする。樹脂部材3は、金属部材1の溝の集合領域2に強固に接合している。
図2上段実施例の断面写真から理解できるように、溝の集合領域のそれぞれの溝は、レーザ光スポットによる走査を、レーザ光スポットの径より小さい送りピッチで一方向へ同一線上で複数回繰り返して形成され十分な深さを有しているので、樹脂部材の成形により前記溝には樹脂材料が深く入り込んでいる。これが、接合部界面の高い気密性・液密性を確保することに寄与している。また、凸条の頂部に生成された複雑・微細な凹凸の間隙に樹脂材料が侵入して、当該樹脂材料が複雑・微細な凹凸を確実に抱え込んでいる。これが、金属部材と樹脂部材の接合強度を大きくすることに寄与している。図3(C)に示した例では、樹脂部材3が円筒部を有しており、当該円筒部の内側と外側の間の気密性・液密性が良好に保たれる。
図4(A)は走査方向の線上に光源が位置する場合であり、平面視による走査方向と照射方向とが一致している。この場合、図4(B)に示すように、金属部材の表面に対してほぼ垂直な深さ方向を有する溝6と、隣接する溝6と溝6を隔てる金属部材の表面に対してほぼ垂直な凸条7が形成される。なお、レーザ光の光源を固定し、光源からのレーザ光スポットを反射させる反射板の角度を変えることにより走査を制御している場合は、レーザ光スポットによる走査で或る一つの溝形成をした後、走査方向と直交する方向へ所定ピッチ移動して隣接する溝形成に移ったとき、厳密に言うと走査方向と照射方向とは一致せず、ずれを生じている。しかし、走査方向と直交する方向へ所定ピッチ移動の距離は小さいので、前記生じるずれはわずかであり、この場合も、平面視による走査方向と照射方向とは一致していると表現する。
図4(C)は走査方向の線上に光源が位置しない場合であり、平面視による走査方向と照射方向とが交叉している。この場合、図4(D)に示すように、隣接する溝6と溝6を隔てる凸条7が、表面に対し傾斜した状態で形成される。この例では、金属部材と樹脂部材のより大きい接合強度を期待できる。また、溝の集合領域を任意の区画に分け、前記区画毎に光源を相対的に移動させ、2以上の方向からそれぞれ照射することもできる。この場合、凸条7は、前記区画毎に表面に対して2以上の方向に傾斜した状態で形成される。この例では、金属部材と樹脂部材のさらに大きい接合強度を期待できる。
図3(A)に示すように、金属部材1(アルミニウム板)の表面に、平行な微細幅寸法の溝の集合領域2(リング形状)を付与した。リングは、内径8mm、外径10mmであり、溝の集合領域2の幅寸法は1mmとなる。
照射するレーザ光は、Ybファイバレーザ、波長1070nm、出力42Wである。
レーザ光スポットの径を70μmとし、レーザ光スポットによる走査の一方向への送りピッチを20μmとした。走査速度は、1000mm/秒である。
また、一つの溝から隣接する次の溝形成に移るときの走査方向と直交する方向への移動ピッチ距離(隣接する溝の幅方向の中心間距離)を100μmとした。
上記の条件で、先ず、溝の集合領域2の全体を区画するために、レーザ光スポットによる走査を1回行なうごとに走査方向と直交する方向へ100μm移動して、隣接する溝形成に移るという操作を繰り返して一通り行ない、これと同一軌跡をなぞりながら、同様のレーザ光照射の走査を10回繰り返した。なお、溝形成のためのレーザ光スポット5の走査方向とレーザ光の光源からの照射方向の位置関係は、図4(A)に示したとおりとした。
上記のようにして形成された溝6は、幅が約55μm、金属部材1の表面からの深さが約60μmである。また、形成された凸条7は、幅寸法が約45μm、溝底部からの高さが約110μmである。凸条7の頂部は、金属部材1の表面よりも突出しており、これは、レーザ光スポットによる走査の繰り返しの都度、昇華して飛散し冷却されて析出した微細金属塊が付着して積み重なった結果である(図2上段実施例の断面写真(a)を参照)。
上記の金属部材1に射出成形により樹脂部材3(ポリフェニレンサルファイド)を成形し、図3(C)に示した形状の両者を一体化した樹脂成形品4とした。
図3(B)に示すように、金属部材1’(アルミニウム板)の表面に、微細幅寸法の溝の集合領域2’(リング形状)を付与した。リングの寸法形状は、上記の実施例と同様である。
本従来例が、上記実施例と異なる点は、レーザ光スポットによる走査が直交する二方向からである(実施例は一方向からの走査のみ)点と、レーザ光スポットによる走査の繰り返しが各方向5回である(実施例は一方向からの走査のみ10回)点である。
本従来例においては、図1下段従来例の拡大写真の観察から理解できるように、直交する二方向からのレーザ光スポットによる走査によって、直交する溝が明確に形成されているわけではなく、言わば、周囲に凹陥部が形成された結果、残存した部分が凸部として現出した状態となっている(図1下段従来例の写真(c)(d)を参照)。そして、前記凸部の頂部は、金属部材1’の表面とほぼ同一高さのままである(図2下段従来例の断面写真(a)を参照)。
上記従来例1において、リングの幅寸法を3mmとし、そのほかは従来例1と同様とした。
上記従来例1において、リングの幅寸法を5mmとし、そのほかは従来例1と同様とした。
上記従来例1において、幅寸法1mmのリングを1mmの間隔で同心円状に配置した三重とし、そのほかは従来例1と同様とした。
気密性評価は、樹脂成形品の円筒部にエアパイプを接続し、これを水中に没して、円筒内に外圧より最大で0.6Mpa高い圧力をかけて、円筒内から円筒外への空気漏れの有無を確認した。
液密性評価は、樹脂成形品の円筒内部に浸透液((株)タイホーコーザイ製、ミクロチェック浸透液)を注入し、常温で2週間放置して円筒内から円筒外への浸透液の染み出しの有無を確認した。
表1には、上記評価試験の結果と、溝の集合領域を付与するための加工時間を比較して示した。
2,2’ 溝の集合領域
3 樹脂部材
4 樹脂成形品
5 レーザ光スポット
6 溝
7 凸条
Claims (4)
- 樹脂部材の成形により、金属部材と樹脂部材とが同じ平面内で接合され一体化されている樹脂成形品であって、
前記金属部材の樹脂部材との接合面には、レーザ光照射による平行な微細幅寸法の溝の集合領域が付与されており、
前記溝のそれぞれは、レーザ光スポットによる走査を、レーザ光スポットの径より小さい送りピッチで一方向へ同一線上で複数回繰り返して形成されたものであり、
前記平行な隣り合う溝と溝は、前記レーザ光スポットの径の30%以上の微細な幅寸法の凸条により隔てられていることを特徴とする樹脂成形品。 - 平行な微細幅寸法の溝の集合領域は、一方向の溝の集合体で構成されるリング形状又は矩形若しくは多角形の枠形状の領域である請求項1記載の樹脂成形品。
- 樹脂部材の成形により、金属部材と樹脂部材とが同じ平面内で接合され一体化される樹脂成形品の製造法であって、
前記金属部材の樹脂部材との接合面にレーザ光を照射して平行な微細幅寸法の溝の集合領域を形成する工程を含み、
前記溝のそれぞれの形成は、レーザ光スポットによる走査を、一方向へ同一線上で複数回繰り返すことによって実施し、レーザ光スポットによる走査の送りピッチをレーザ光スポットの径より小さく設定するとともに、
走査方向と直交する方向への移動ピッチ距離は、平行な隣り合う溝と溝を隔てる微細幅寸法の凸条が残るように調整して、前記凸条の幅寸法をレーザ光スポットの径の30%以上とすることを特徴とする樹脂成形品の製造法。 - レーザ光スポットによる複数回の走査は、先ず、溝の集合領域の全体を区画するために、一方向へのレーザ光スポットによる走査を1回行なうごとに走査方向と直交する方向へ所定ピッチ移動して、隣接する溝形成に移るという操作を繰り返して一通り行ない、これと同一軌跡をなぞりながら、同様のレーザ光スポットによる走査を繰り返すことを特徴とする請求項3記載の樹脂成形品の製造法。
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