JP5372469B2 - 金属合金積層材 - Google Patents

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本発明は、移動機械、舶用機械、電子電気機器、モバイル機器、医療機器、一般機械、その他の産業機械、民生機器等に用いられている金属合金製の部材や部品の製造方法に関する。更に詳しくは、異種又は同種の金属合金板を接着接合、又は加熱プレス若しくは加熱ロールで圧着接合して得られる金属合金積層材に関する。
本発明者らは、これまで金属合金と樹脂を接合するための技術を開発してきた。各種金属合金と樹脂を強固に接合するための技術について特許文献1〜14に開示している。この金属と樹脂を一体化する技術は、自動車、家庭電化製品、産業機器等、あらゆる部品部材製造業から求められており、このために多くの接着剤が開発されている。この中には非常に優れた接着剤がある。例えば常温、又は加熱により機能を発揮する接着剤は、金属と合成樹脂を一体化する接合に使用され、この方法は現在では一般的な接着技術である。
一方、接着剤を使用しない接合方法も研究されてきた。マグネシウム、アルミニウムやそれらの合金である軽金属類、またステンレスなどの鉄合金類に対し、接着剤の介在なしで高強度の熱可塑性のエンジニアリング樹脂を射出等によって一体化する方法がその例である。例えば、射出等の方法で樹脂成形と同時に接合を為す方法(以下、「射出接合」という)として、アルミニウム合金に対し熱可塑性樹脂であるポリブチレンテレフタレート樹脂(以下「PBT」という)又はポリフェニレンサルファイド樹脂(以下「PPS」という)を射出接合させる製造技術が開発されている(例えば特許文献1、2参照)。加えて、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレス鋼等も同系統の樹脂の使用で射出接合することが可能であることも実証されている(特許文献3、4、5、6参照)。
これらの発明は全て本発明者らによるが、これらは比較的単純な接合理論によっている。本発明者らは、アルミニウム合金に関する接合理論を「NMT」(Nano molding technologyの略)理論と称し、金属合金全般の射出接合に関しては、「新NMT」理論と称している。より広く使用できる「新NMT」理論の仮説は以下の通りである。即ち、強烈な接合力ある射出接合を得るために、金属合金側と射出樹脂側の双方に各々条件があり、まず金属側については以下に示す3条件が必要である。
[新NMT理論での金属合金側の条件]
第1条件は、金属合金表面が、化学エッチング手法によって1〜10μm周期の凹凸で、その凹凸高低差がその周期の半分程度まで、即ち0.5〜5μmまでの粗い粗面になっていることである。ただし、実際には、前記粗面で正確に全表面を覆うことはバラツキがあり、一定しない化学反応では難しく、具体的には、粗度計で見た場合に0.2〜20μm範囲の不定期な周期の凹凸で、且つその最大高低差が0.2〜5μmの範囲である粗度曲線が描けること、又は、最新型のダイナミックモード型の走査型プローブ顕微鏡で走査して、JIS規格(JISB0601:2001)でいう平均周期、即ち山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmである粗度面であれば、前記で示した粗度条件を実質的に満たしたものと考えている。本発明者等は、理想とする粗面の凹凸周期が前記したように、ほぼ1〜10μmであるので、分かり易い言葉として「ミクロンオーダーの粗度を有する表面」と称した。
第2の条件は、上記ミクロンオーダーの粗度を有する金属合金表面に、さらに5nm以上の超微細凹凸が形成されていることである。言い換えると、ミクロの目で見てザラザラ面であることを要する。当該条件を具備するために、上記金属合金表面に、微細エッチング処理や酸化処理、化成処理等を行い、前述のミクロンオーダーの粗度をなす凹部内壁面に5〜500nm、好ましくは10〜300nm、より好ましくは50〜100nm周期の超微細凹凸を形成する。
この超微細凹凸について述べると、その凹凸周期が10nm以下の周期であると樹脂分の進入が明らかに難しくなる。また、この場合には通常、凹凸高低差も小さくなるので、樹脂側から見て円滑面に見える。その結果、スパイクの役目を為さなくなる。又、周期が300〜500nm程度又はこれよりよりも大きな周期なら(その場合、ミクロンオーダーの粗度をなす凹部の直径や周期は10μm近くになると推定される)、ミクロンオーダーの凹部内でのスパイクの数が激減するので効果が効き難くなる。よって、原則としては、超微細凹凸の周期が10〜300nmの範囲であることを要する。しかしながら、超微細凹凸の形状によっては、5nm〜10nm周期のものでも、樹脂がその間に侵入する場合がある。例えば、5〜10nm直径の棒状結晶が錯綜している場合等がこれに該当する。また、300nm〜500nm周期のものでも、超微細凹凸の形状がアンカー効果を生じやすい場合がある。例えば、高さ及び奥行きが数百〜500nmで、幅が数百〜数千nmの階段が無限に連続した形状がこれに該当する。このような場合も含め、要求される超微細凹凸の周期を5nm〜500nmと規定した。
ここで、従来は上記第1の条件に関して、Rsmの範囲を1〜10μm、Rzの範囲を0.5〜5μmと規定していたが、Rsmが0.8〜1μm、Rzが0.2〜0.5μmの範囲であっても、超微細凹凸の凹凸周期が、特に好ましい範囲(概ね30〜100nm)に有れば、接合力が高く維持できる。それ故に、Rsmの範囲を小さい方にやや広げることとした。即ち、Rsmが0.8〜10μm、Rzが0.2〜5μmの範囲とした。
さらに、第3の条件は、上記金属合金の表層がセラミック質であることである。具体的には、元来耐食性のある金属合金種に関しては、その表層が自然酸化層レベルかそれ以上の厚さの金属酸化物層であることを要し、耐食性が比較的低い金属合金種(例えばマグネシウム合金や一般鋼材等)では、その表層が化成処理等によって生成した金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であることが第3の条件となる。
[新NMT理論での樹脂側の条件]
次に、樹脂側の条件を説明する。樹脂としては、硬質の高結晶性の熱可塑性樹脂であって、これに適切な別ポリマーをコンパウンドする等して、急冷時での結晶化速度を遅くした物が使用できる。実際には、結晶性の硬質樹脂であるPBTやPPSに適切な別ポリマー及びガラス繊維等をコンパウンドした樹脂組成物が使用できる。
[新NMT理論に基づく射出接合]
上記金属合金及び樹脂を使用して、一般の射出成形機、射出成形金型によって射出接合できるが、この過程を前述の「新NMT」理論仮説に従って説明する。射出した溶融樹脂は、融点よりも150℃程度温度が低い金型内に導かれるが、この流路で冷やされ、融点以下の温度になっているとみられる。即ち、溶融した結晶性樹脂が急冷された場合、融点以下になったとしてもゼロ時間で結晶が生じ固体に変化することはない。要するに、融点以下ながら溶融している状態、即ち過冷却状態がごく短時間存在する。前述したように、PBTやPPSに特殊なコンパウンドを行うことによって、この過冷却時間を少し長くすることが可能である。これを利用して大量の微結晶が生じることによる粘度の急上昇が起こる前に、ミクロンオーダーの粗度を有する金属表面の凹部にその微結晶が侵入できるようにした。侵入後も冷え続けるので、これに伴い微結晶の数が急激に増えて粘度は急上昇する。しかし、凹部の奥底まで樹脂が到達できるか否かは凹部の大きさや形状にも依存する。
本発明者等の実験結果では、金属種を選ばず、上記ミクロンオーダーの粗度に係る1〜10μm径の凹部であって、その深さが周期の半分程度までであれば、凹部の結構奥まで微結晶が侵入すると推測された。さらに、その凹部内壁面が、前述した第2条件のように、ミクロの目で見てザラザラ面であれば、超微細凹凸にも一部樹脂が侵入し、その結果、樹脂側に引き抜き力が付加されても引っかかって抜け難くなると推定される。そしてこのザラザラ面が、第3条件で示したように金属酸化物又は金属リン酸化物で覆われていれば、硬度が高く、樹脂と超微細凹凸に係る凹部との引っ掛かりが、スパイクの如く効果的になる。
ここで、接合自体は、樹脂成分と金属合金表面の問題であるが、樹脂組成物に強化繊維や無機フィラーが入っていると、樹脂全体の線膨張率を金属合金に近づけられるので接合後の接合力維持が容易になる。このような仮説に従って、例えばマグネシウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレス鋼等に、PBTやPPS系樹脂を射出接合して得た接合体は、せん断破断力で20〜30MPa(約200〜300kgf/cm)以上、引っ張り破断力で30〜40MPa(約300〜400kgf/cm)以上となり、強固な接合体であることが確認されている。
[NAT理論(接着剤接合)]
本発明者らは、接着剤接合に関しても「新NMT」理論仮説が応用できると考え、類似理論による高強度の接着が可能であるかを確認した。そして、市販の汎用の1液性エポキシ系接着剤を使用し、金属合金の表面構造を工夫することで、より接着力の高い接合体を得ようと試みた。
接着剤接合の実験手法に関する手順を以下に示す。前記「新NMT」理論に基づき、射出接合実験で使用したものと同じ表面の金属合金(即ち上記3条件を満たす金属合金)を作成した。そして、液状の1液性エポキシ系接着剤をその金属合金の所定範囲に塗布し、一旦真空下に置いて常圧に戻すなどして金属合金表面の超微細凹凸面に接着剤を侵入させる。その後、前記所定範囲に被着材を貼り合わせ、加熱して硬化させる方法である。
こうした場合、金属合金表面のミクロンオーダーの粗度に係る凹部(前記第1条件における凹凸の凹部)内に、多少の粘度あるエポキシ系接着剤も液体故に侵入可能である。そして侵入したエポキシ系接着剤は、その後の加熱でこの凹部内で硬化することになる。実際には、この凹部の内壁面には超微細凹凸がさらに形成されており(前記の第2条件)、且つこの超微細凹凸は、セラミック質の高硬度の薄膜(前記の第3条件)で覆われていることから、凹部内部に侵入して固化したエポキシ樹脂は、スパイクのような超微細凹凸に掴まって抜け難くなる。
本発明者らは、「新NMT」理論を応用して、1液性エポキシ接着剤によって、金属合金同士及び金属合金とCFRP(carbon fiber reinforced plasticsの略)との高強度の接着が可能であることを実証した。一例として、A7075アルミニウム合金板同士を、市販の汎用エポキシ接着剤のみからなる接着剤で接合した結果、70MPaもの強烈なせん断破断力、引っ張り破断力を示す接合体を得ることができた。
実際、このような高強度の接着剤接合は、本発明者等によって、アルミニウム合金に次いで、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレス鋼、一般鋼材、アルミ鍍金鋼板、亜鉛鍍金鋼板に於いて実証された(特許文献7、8、9、10、11、12、13、及び14参照)。いずれも金属合金表面の状態を制御することによって、各種金属合金を過去に例のない強さで接着することができた。このような接着剤接合に関して「新NMT」理論を応用した前記技術を、本発明者らは「NAT(Nano adhesion technologyの略)」と称している。
WO 03/064150 A1 WO 2004/041532 A1 WO 2008/069252 A1 WO 2008/047811 A1 WO 2008/078714 A1 WO 2008/081933 A1 PCT/JP2008/054539(アルミニウム合金) PCT/JP2008/057309(マグネシウム合金) PCT/JP2008/056820(銅合金) PCT/JP2008/057131(チタン合金) PCT/JP2008/057922(ステンレス鋼) PCT/JP2008/059783(一般鋼材) 特願2007−336378号公報(アルミ鍍金鋼板) 特願2008−67313号公報(亜鉛系鍍金鋼板)
前述したように、A7075アルミニウム合金板(「超々ジュラルミン」とも言う)同士を、市販の汎用エポキシ系接着剤を用いて接合することで、70MPaもの強烈なせん断破断力、引っ張り破断力を示す接合体を得ることができた。これは、寸法が45mm×15mm×3mm厚のA7075板の対を、0.6〜0.7cmの接着面積で相互に接合した接合体を引っ張り試験して得た数値である。また、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレス鋼、一般鋼材、アルミ鍍金鋼板、及び亜鉛鍍金鋼板に関しても、同種の金属合金板同士の接合体において高い接着力が観察された。当初は、入手可能な市販の金属合金板を用いていたが、市販品では金属合金板の厚さは合金種によって異なり、本発明者らが要求する厚さ、即ち各種金属合金板について共通の厚さのものは入手出来なかった。しかし接着力測定試験を積み重ねるに従って、金属合金板の厚さと、その金属合金自身が本来保有している曲げ強さによって接着強度が大きく違うことが明らかになった。
即ち、金属合金板の曲げ強度が十分強く、厚さも十分にあるA7075アルミニウム合金板(厚さ3.0mm)の場合には、せん断破断力が70MPa付近であった。一方、A5052アルミニウム合金板(厚さ1.6mm)では60MPa、自動車用熱間圧延鋼材として用いられるSAPH440鋼板材(同1.6mm)では65MPa、AZ31Bマグネシウム合金板(同1.0mm)では30MPa、KFC銅合金板(同0.7mm)では約30MPaであった。
このように、市販されている金属合金板は厚さが規定されており、その厚さが一定の値に達していないため、その金属合金種本来の接着強度(せん断破断力、引っ張り破断力)を発揮できない場合がある。これにより、本発明者等が提案するNAT理論に基づく接着接合の効力が減殺されることになる。ここで、本来の接着強度を得るために上記一定の厚さに達していない金属合金板を積層材(同一金属合金種の積層材又は異種金属合金板種の積層材)とし、この積層材同士を一定面積(0.6〜0.7cm)で接着接合し、そのせん断破断力、引っ張り破断力を測定するとする。この場合であっても、金属合金板間の接着が強固でなければ、積層材同士の接合体を引っ張り破断するときに、その積層材を構成する金属合金板同士が先に分離してしまうため、NAT理論に基づく接着接合の効力が減殺されるという問題がある。
本発明は、このような技術背景のもとになされたものであり、その目的は、その金属合金種本来の接着強度を発揮できるような金属合金積層材を提供することにある。特に銅合金板、ステンレス鋼板、チタン合金等に関しては、前述した金属合金種の中でも強度が比較的低いために、本発明が寄与するところが大きいといえる。
金属合金板表面に前述したNAT理論に基づく表面処理を施し、これに一液性熱硬化型接着剤を塗布して積層材とすることで曲げ強度を補強しつつ、積層材を構成する金属合金板同士を強力に接着接合するようにした。その結果、チタン合金を除く全ての金属合金種で50〜70MPaのせん断破断力が得られた。
金属合金同士を接着剤で接合した場合、その接着力は金属合金種によって異なるとされるのが一般的である。ところが、各種金属合金にNAT理論に基づく表面処理を施して接着接合した接合体では、後述の実験結果に示すように、接着力が金属合金種に殆ど依存しないことを示した。これは、接着学や接着に関する実務者にとっては驚くべき結果であると思われる。即ち、この結果は、「接着力は使用した接着剤の性能にのみ依存する」、又は「金属合金同士の接着接合は既に最適化されている」ということを示しうる結果であるといえる。
以下、せん断破断力の測定法に関して説明する。せん断破断力の測定に関しては、従来のJISK6850に示される方法が挙げられる。即ち100mm×25mm×1mm厚の金属合金板を用いて、その端部から12.5mmを相互に重ね合わせた接着物(接着面積は25mm×12.5mm=3.125cm)を作成して、これを引っ張り破断試験するというものである。しかし、この方法は、せん断破断力が10〜20MPa程度である場合には適しているが、せん断破断力が70MPaに至るような強烈な接着では、その引っ張り破断試験に於いて破断前に金属合金板の接着面側が引き伸ばされて非接着面側より長くなるという問題がある。1mm程度の薄さであると高強度の一般鋼材でも前記の原因によって曲げ変形が生じる。
せん断破断前に、その様な曲げ変形が金属合金板に生じれば、それは接着面端部に強い剥がし方向の応力集中を生じる。接着面端部がその応力集中で局所的に剥がれるとその周辺に応力集中が移動するだけで剥がれの連鎖が生じ、接合面積が徐々に減少してせん断破断も生じ易くなり破断に至る。即ち、金属合金板が曲げに強い物であれば、剥がれを起点とする破断の開始は遅れるので本来のせん断破断力の数値に近い値が観察できる。要するに、100MPaに近いせん断破断力を示す様な強烈な接着状態において引っ張り破断試験をするときには、金属合金板は小さくして応力集中度を下げることが重要であり、且つ、厚さが十分にあって耐曲がり硬さがあることが必要である。本発明者らは前記のようにJISの規定より小さい金属合金板で破壊試験を行ったが、それでも金属合金板の厚さが当初は不十分だったのである。
せん断破断力の測定だけでなく、円筒棒状や角棒状の金属合金部材を、その先端部同士で接着接合した接合体を引っ張り破断し、引っ張り破断力を測定する場合でも同様である。JISK6852の規定に従った直径1.27cmの円筒状棒材や1辺1.27cmの四角棒材の端部を対接着した試料を引っ張り破断試験したのでは、本来の値から遥かに低い数値しか観察できない。即ち、接着力が強烈な場合、破断前にかなりの力が掛かって被着体の棒状物自身が伸ばされる。この伸びは僅かなので形状変化が目視で分かるわけではない。棒が十分長いとして、接合面付近に於いて、縦方向に生じる伸び長さは断面の各箇所でほぼ同一になるはずである。しかし同じ長さの引っ張り伸びを押し止めようとする応力は円形や正方形を成す断面上の各箇所によって異なる。例えば、円筒棒の両端を引っ張った場合の応力分布は断面円の外周部で最も高くなることは簡単な物理計算で算出される。要するに接着面に生じる剥がし力はその外周部で最大値となる。そして接着面外周部に生じる応力集中は、丸棒や角棒の直径が大きいほど大きい。
結局、棒状物を付き合わせ接着して、これの両端部を引っ張って破断した場合に測定される引っ張り破断力を本来の値に近づけるには、出来るだけ細い棒状物を作り、その端部をつき合せて接着した物で測定すべきである。本発明者らは、3mm×4mm×18mmの角棒状の金属合金片を作成し、その棒端部を接着し、引っ張り破断して引っ張り破断力を求めた。即ち、接着面積は0.12cmであった。A7075アルミニウム合金を3mm×4mm×18mmの角棒状の金属合金片に加工し、これにNAT理論に基づく表面処理を施し、その端部に市販の汎用1液性エポキシ接着剤を塗布して端部同士を接着し、これを引っ張り破断して、引っ張り破断力を測定したところ約70MPaと出た。この数値はA7075で測定した前記せん断破断力と同値であった。せん断破断力と引っ張り破断力がほぼ同値であることに理論的な意味があるか否かは不明であるが、双方がほぼ同値であり且つ高い数値であることから、金属合金同士の接着接合の最適化はNAT理論の適用によって達成されたと考えられる。
以上のようにNAT理論に基づく同種金属合金片同士の接着接合体は、市販接着剤を使用した場合で、せん断破断力も引っ張り破断力も60〜70MPaを示した。しかしこの数値自体は言わば理論値に近い。実際の接着では、接着接合体が大きくなり応力集中の度合いが大きくなる。それ故、実際のせん断破断力や引っ張り破断力の数値はこれより低くなる。
NAT理論に基づく接着方法自体は完成されているので、今後実用面における重要な点は、(1)接着面上に大きな応力集中箇所を設けないようにする設計技術を開発すること、(2)NAT理論に基づく接着力の向上が接着剤に依っていることが明らかになったので、接着剤改良の指針を示し、且つ、それに基づいてより強力な接着剤を開発することと考えられる。即ち、NAT理論を適用して得られた金属合金接合体の接着力は従来に見られないほど強烈なものだが、硬質物同士を接着する場合では必ず応力集中が生じ、設計によってはその応力集中は100MPaを簡単に超える。従って数十MPaの接着力向上が得られたとしても、設計が不十分であればその効果を実感できない。
このような観点から、接着面積が被着体の面積に近い面接着であれば、応力集中によって接着層の一部が破壊されてもその接着剤層は広く、連鎖破壊を抑えることが出来るので、全体として原型を守り易いと言える。即ち、NAT理論に基づく接合を積層材の作成に適用することで、各金属合金層が強固に面接合し、かつ連鎖破壊を抑えて接合力を維持することが可能になると考えられる。
以下、本発明を構成する各要素について詳細に説明する。
〔金属合金部品〕
本発明でいう金属合金部品、即ち前述の「NAT」理論に基づく表面構造を具備する金属合金としては、理論上特にその種類に制限はない。全金属種としてもよいが、実際に意味を有しているのは硬質で実用的な金属種、合金種である。即ち、水銀は当然ながら液状だから本発明に関係しないが、鉛など軟質金属種も本発明者の考える金属種からは除外されている。当然であるが、化学的には存在するが大気中で活発に反応するアルカリ金属種、アルカリ土類金属種(マグネシウムを除いて)も基本的には除外の対象である。
本発明者等は、実質的に「NAT」理論を適用可能な金属合金種として、アルミニウム、マグネシウム、銅、チタン、鉄を主成分とする合金種と考えている。以下、これらについて説明する。しかし、あくまでも「NAT」理論は、金属種を限定していないし、更に言えば金属であること自体も限定していない。非金属を「NAT」で条件とするミクロンオーダーの粗度や超微細凹凸面、且つ、高硬度の表面層とすることの3条件を同時に備えさせることは容易でない。要するに「NAT」は表面形状とその表面薄層硬度だけを規定してアンカー効果論で接着を論じているので、少なくとも下記した金属合金種に限定されるものではない。特許文献7にアルミニウム合金に関する記載をした。特許文献8にマグネシウム合金に関する記載をした。特許文献9に銅合金に関する記載をした。特許文献10にチタン合金に関する記載をした。特許文献11にステンレス鋼に関する記載をした。特許文献12に一般鋼材に関する記載をした。これら各種金属合金について詳細に説明する。
(アルミニウム合金)
本発明で使用可能なアルミニウム合金は、アルミニウム合金であればいかなる種類を問わない。具体的には、日本工業規格(JIS)に規定されている展伸用アルミニウム合金のA1000番台〜7000番台(耐食アルミニウム合金、高力アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金等)等の全ての合金、及びADC1〜12種(ダイカスト用アルミニウム合金)等の鋳造用アルミニウム合金が使用できる。形状物としては、鋳造用合金等であれば、ダイキャスト法で形状化された部品、またそれを更に機械加工して形状を整えた部品が使用できる。又、展伸用合金では、中間材である板材その他、又それらを熱プレス加工などの機械加工を加えて形状化した部品も使用できる。
(マグネシウム合金)
本発明に使用するマグネシウム合金は、国際標準機構(ISO)、日本工業規格(JIS)、米国材料試験協会(ASTM)等に規定される展伸用アルミニウム合金のAZ31B合金等、及びAZ91D等の鋳物用マグネシウム合金が使用できる。鋳物用マグネシウム合金であれば、砂型、金型、ダイカストのいずれかの方法で形状化された部品、またそれを更に、切削、研削等の機械加工して形状を整えた部品、構造体が使用できる。又、展伸用マグネシウム合金では、中間材である板材その他、又それらを温間プレス加工等の塑性加工を加えて形状化した部品、構造体が使用できる。
(銅合金)
本発明に使用する銅、及び銅合金とは、銅、黄銅、りん青銅、洋泊、アルミニウム青銅等を指す。日本工業規格(JIS H 3000系)に規定されるC1020、C1100等の純銅系合金、C2600系の黄銅合金、C5600系の銅白系合金、その他のコネクター用の鉄系含む各種用途に開発された銅合金等、全ての銅合金等が対象である。これらの中間材である板材、条、管、棒、線等の塑性加工製品を、切削加工、プレス加工等の機械加工を加えて形状化した部品、及び鍛造加工した部品等が対象である。
(チタン合金)
本発明に使用するチタン合金は、国際標準化機構(ISO)、日本工業規格(JIS)等で規定される純チタン系合金、α型チタン合金、β型チタン合金、α−β型チタン合金等、全てのチタン合金が対象である。このチタン合金の中間材である板材、棒材、管材等、又それらを切削・研削加工、プレス加工等の機械加工を加えて形状化したものが、各種機械、装置の部品、構造体に使用できる。
(ステンレス鋼)
本発明でいうステンレス鋼とは、鉄にクロム(Cr)を加えたCr系ステンレス鋼、又ニッケル(Ni)をクロム(Cr)と組合せて添加した鋼であるCr−Ni系ステンレス鋼、その他のステンレス鋼と呼称される公知の耐食性鉄合金が対象である。国際標準機構(ISO)、日本工業規格(JIS)、米国材料試験協会(ASTM)等で、規格化されているSUS405、SUS429、SUS403等のCr系ステンレス鋼、SUS301、SUS304、SUS305、SUS316等のCr−Ni系ステンレス鋼である。
(鉄鋼材料)
本発明で用いる鉄鋼材料は、一般構造用圧延鋼材等の炭素鋼(所謂一般鋼材)、高張力鋼(ハイテンション鋼)、低温用鋼、及び原子炉用鋼板等の鉄鋼材料をいう。具体的には、冷間圧延鋼材(以下、「SPCC」という。)、熱間圧延鋼材(以下、「SPHC」という。)、自動車構造用熱間圧延鋼板材(以下、「SAPH」という。)、自動車加工用熱間圧延高張力鋼板材(以下、「SPFH」という。)、主に機械加工に使用される鋼材(以下「SS材」という。)等、各種機械の本体、部品等に使用されている構造用鉄鋼材料が含まれる。これらの多くの鋼材は、プレス加工、切削加工が可能であるので、部品、本体として採用するとき、構造、形状も自由に選択できる。又、本発明でいう鉄鋼材料は、上記鋼材に限らず、日本工業規格(JIS)、国際標準化機構(ISO)等で、規格化されたあらゆる鉄鋼材料が含まれる。
〔金属合金材の化学エッチング〕
本発明における化学エッチングは、金属合金表面にミクロンオーダーの粗度を生じさせることを目的とする。腐食には全面腐食、孔食、疲労腐食など種類があるが、その金属合金に対して全面腐食を生じる薬品種を選んで試行錯誤し、適当なエッチング剤を選ぶことができる。文献記録(例えば「化学工学便覧(化学工学協会編集)」)によれば、アルミニウム合金は塩基性水溶液、マグネシウム合金は酸性水溶液、ステンレス鋼や一般鋼材全般は、塩酸等ハロゲン化水素酸、亜硫酸、硫酸、これらの塩、等の水溶液で全面腐食するとの記録がある。又、耐食性の強い銅合金は、強酸性とした過酸化水素などの酸化剤によって全面腐食させられるし、チタン合金は蓚酸や弗化水素酸系の特殊な酸で全面腐食させられることが専門書や特許文献から散見される。実際に市場で販売されている金属合金類は、純銅系銅合金や純チタン系チタン合金のように純度が99.9%以上で合金とは言い難い物もあるが、これらも本発明には含まれる。実際に世間で使用されている物の大部分は特徴的な物性を求めて多種多用な他元素が混合されて純金属系の物は少なく、実質的には合金である。
即ち、純金属から合金化した目的の金属の殆どが、元々の金属物性を低下させることなく耐食性を上げることにあった。それ故、合金では、前記したように文献から参照して適用した酸塩基類や特定の化学物質を使っても、目標とする化学エッチングが出来ない場合もよくある。要するに、前記した酸塩基類、特定化学薬品の使用は基本であって、実際には使用する酸塩基水溶液の濃度、液温度、浸漬時間、場合によっては添加物を工夫しつつ試行錯誤して適正な化学エッチングを行うことになる。化学エッチング法について言えば、特許文献7にアルミニウム合金に関する記載、特許文献8にマグネシウム合金に関する記載、特許文献9に銅合金に関する記載、特許文献10にチタン合金に関する記載、特許文献11にステンレス鋼に関する記載、特許文献12に一般鋼材に関する記載、特許文献13にアルミ鍍金鋼板に関する記載、及び、特許文献14に亜鉛系鍍金鋼板に関する記載をした。
実際に行う作業として全般的に共通する点を説明すると、金属合金形状物を得たら、まず各金属用の市販脱脂剤を溶かした水溶液に浸漬して脱脂し水洗する。この工程は、金属合金形状物を得る工程で付着した機械油や指脂の大部分を除けるので好ましく、常に行うべきである。次いで、薄く希釈した酸・塩基水溶液に浸漬して水洗するのが好ましい。これは本発明者等が予備酸洗浄や予備塩基洗浄と称している工程で、一般鋼材のように酸で腐食するような金属種では、塩基性水溶液に浸漬し水洗し、又、アルミニウム合金のように塩基性水溶液で特に腐食が早い金属種では、希薄酸水溶液に浸漬し水洗することである。これらは、化学エッチングに使用する水溶液と逆性のものを前もって金属合金に付着(吸着)させる工程であり、その後の化学エッチングが誘導期間なしに始まることになって処理の再現性が著しく向上する。それ故にこの予備酸洗浄、予備塩基洗浄工程は本質的なものではないが、実務上、採用することが好ましい。これらの工程の後に化学エッチング工程を入れる。
〔微細エッチング・表面硬化処理〕
本発明における微細エッチングは、金属合金表面に超微細凹凸を形成することを目的とする。また本発明における表面硬化処理は、金属合金の表層を金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層とすることを目的とする。金属合金種によっては前記化学エッチングを行っただけで同時にナノオーダーの微細エッチングもなされ、超微細凹凸が形成される場合がある。さらに、金属合金種によっては表面の自然酸化層が元よりも厚くなって表面硬化処理も完了している場合もある。例えば、純チタン系のチタン合金は化学エッチングだけを行うことで、表面がミクロンオーダーの粗度を有し、且つ超微細凹凸も形成される。即ち、化学エッチングと併せて微細エッチングもなされる。しかし、多くは化学エッチングによりミクロンオーダーの大きな凹凸面を作った後で微細エッチングや表面硬化処理を行う必要がある。
この時でも予測できない化学現象に見舞われることが多い。即ち、表面硬化処理や表面安定化処理を目的に化学エッチング後の金属合金に酸化剤等を反応させたり化成処理をしたとき、得られる表面に偶然ながら超微細凹凸が形成される場合がある。マグネシウム合金を過マンガン酸カリ系水溶液で化成処理した場合に生じた酸化マンガンとみられる表面層は10万倍電子顕微鏡でようやく判別つく5〜10nm直径の棒状結晶が錯綜したものである。この試料をXRD(X線回折計)で分析したが、酸化マンガン類由来の回折線は検出できなかった。表面が酸化マンガンで覆われていることはXPS分析で明らかである。XRDで検出できなかった理由は結晶が検出限界を超えた薄い層であったからとみている。要するに、マグネシウム合金では表面硬化処理としての化成処理を施したことで、微細エッチングも併せて完了していたことになった。銅合金でも同様で、塩基性下の酸化で表面を酸化第2銅に変化させる表面硬化処置を取ったところ、純銅系銅合金では、その表面は円形や円が歪んだ形の穴開口部が一面に生じ特有の超微細凹凸面になる。純銅系でない銅合金では凹部型でなく10〜150nm径の粒径物や不定多角形状物が連なり、一部融け合って積み重なった形の超微細凹凸形状になったりする。この場合でも表面の殆どは酸化第2銅で覆われており、表面の硬化と超微細凹凸の形成が同時に生じる。
一般鋼材に関しては、更なる検証が必要ではあるものの、ミクロンオーダーの粗度を形成するための化学エッチングだけで超微細凹凸も併せて形成されていることが多く、元来表層(自然酸化層)が硬いこともあって、表面硬化処理や微細エッチング処理を改めて行わずとも、「NAT」理論を適用可能と考えられた。問題は自然酸化層の耐食性が十分でないために、接着工程までに腐食が始まってしまったり、接着後の環境如何では短時間で接着力が低下することであった。
これらは化成処理によって防ぐことができるが、実際には接着物を温度衝撃試験にかける試験、一般環境下に放置する試験、塗装した物を塩水噴霧装置にかける試験等を行って、接着の耐久性を調べる必要がある。例を挙げると、化成処理をしていない鋼材(実際にはSPCC:冷間圧延鋼材)同士をフェノール樹脂系接着剤で接着した接合体に関しては、4週間という短期間で接着力が急減した。一方、化成処理をした一般鋼材(SPCC)同士をフェノール樹脂系接着剤で接着した接合体に関しては、同じ期間では当初の接着力から低下しなかった。
また、本発明者らは、一般に、化成処理によって金属合金表面に形成された被膜(化成被膜)の膜厚が厚いと、接着力が低下することが多いことを確認している。前記のマグネシウム合金に付着した酸化マンガン薄層のように、XRDで回折線が検出されないような薄層である方が、強い接着力が得られる。化成被膜が厚い金属合金同士をエポキシ系接着剤で接着し、破壊試験した場合、破壊面は殆どが金属相と化成皮膜の間となる。本発明者らが行った実験では、厚い化成皮膜とエポキシ系接着剤硬化物との接合力は、その化成皮膜と内部金属合金相との接合力より常に強かった。即ち、一般鋼材でも、化成処理時間を更に長くして化成処理層を厚くすれば、接着物の永続性(即ち接着力の維持性)は向上するはずである。しかしながら化成皮膜を厚くすれば、接着力自体が低下する。従って、どの程度でバランスを取るかは、使用目的、用途等にもよる。以下各種金属合金部品の表面処理方法について詳述する。
(アルミニウム合金の表面処理)
アルミニウム合金部品は、まず脱脂槽に浸漬して機械加工等で付着した油剤や油脂を除去するのが好ましい。具体的には、本発明に特有な脱脂処理は必要ではなく、市販のアルミニウム合金用脱脂材を、その薬剤メーカーの指定通りの濃度で湯に投入した温水溶液を用意し、これに浸漬し水洗するのが好ましい。要するに、アルミニウム合金で行われている常法の脱脂処理で良い。脱脂材の製品によって異なるが、一般的な市販品では、濃度5〜10%として液温を50〜80℃とし5〜10分間浸漬する。
これ以降の前処理工程は、アルミニウム合金に珪素が比較的多く含まれる合金と、これらの成分が少ない合金とでは処理方法が異なる。珪素分が少ない合金、即ち、A1050、A1100、A2014、A2024、A3003、A5052、A7075等の展伸用アルミニウム合金では、以下のような処理方法が好ましい。即ち、アルミニウム合金部品を、酸性水溶液に短時間浸漬して水洗し、アルミニウム合金部品の表層に酸成分を吸着させるのが、次のアルカリエッチングを再現性良く進める上で好ましい。この処理は、予備酸洗工程といってよいが、使用液は、硝酸、塩酸、硫酸等、安価な鉱酸の1%〜数%濃度の希薄水溶液が使用できる。次いで、強塩基性水溶液に浸漬して水洗し、エッチングを行う。
このエッチングにより、アルミニウム合金表面に残っていた油脂や汚れがアルミニウム合金表層と共に剥がされる。この剥がれと同時に、この表面にはミクロンレベルの粗度を有するようになる。即ち、JIS規格(JIS B 0601:'01,ISO 4287:'97/ISO 1302:'02)で言えば、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5.0μmの凹凸面となる。これらの数値は、昨今の走査型プローブ顕微鏡にかければ自動的に計算をして出力されるようになっている。ただし、細かい凹凸を自動出力で表記した場合の数値は、算出RSm値が実情を表さない場合もある。より正確な数値を得るには、この凹凸に関して走査型プローブ顕微鏡が出力する粗度曲線グラフを目視検査することにより、RSm値を再確認する必要がある。
前記粗度曲線グラフを目視検査して、0.2〜20μm範囲の不定期な周期で高低差が0.2〜5μm範囲の粗さ状況にあれば、実際は前記山谷平均間隔(RSm:0.8〜10μm)及び最大高さ粗さ(Rz:0.2〜5.0μm)とほぼ同じである。この目視検査法は、自動計算が信頼できないと判断した場合に、目視検査で判断が簡単にできるので好ましい。要するに、本発明で定義した技術用語で言えば、「ミクロンオーダーの粗度ある表面」にする。使用液は、1%〜数%濃度の苛性ソーダ水溶液を、30〜40℃にして数分浸漬するのが好ましい。次に、再度酸性水溶液に浸漬し、水洗することでナトリウムイオンを除き前処理を終えるのが好ましい。本発明者等はこれを中和工程と呼んでいる。この酸性水溶液として数%濃度の硝酸水溶液が特に好ましい。
一方、ADC10、ADC12等の鋳造用アルミニウム合金では、以下の工程を経るのが好ましい。即ち、アルミニウム合金の表面から油脂類を除去する脱脂工程の後、前述した工程と同様に予備酸洗し、エッチングするのが好ましい。このエッチングにより、強塩基性下で溶解しない銅分や珪素分が微粒子の黒色スマット(以下、この汚れ状物を鍍金業界では「スマット」と呼ぶので、この表現に倣う。)となる。よって、このスマットを溶かし剥がすべく、次いで数%濃度の硝酸水溶液に浸漬するのが好ましい。硝酸水溶液への浸漬で、銅スマットは溶解され、且つ珪素スマットはアルミニウム合金表面から浮く。
特に、使用した合金がADC12のように珪素分が多量に含まれた合金であると、硝酸水溶液に浸漬しただけでは、珪素スマットがアルミニウム合金基材の表面に付着し続け、これは剥がし切れない。それ故、次いで超音波をかけた水槽内に浸漬して、超音波洗浄し、珪素スマットを物理的に引き剥がすのが好ましい。これで全てのスマットが剥がれ落ちるわけではないが、実用上は十分である。これで前処理を終えても良いが、再度、希薄硝酸水溶液に短時間浸漬し水洗するのが好ましい。これで前処理を終えるが、前処理は酸性水溶液浸漬と水洗で終わっているのでナトリウムイオンが残ることはない。以下、ナトリウムイオンについて述べる。
実験事実から言えば、エポキシ系接着剤を使用して、アルミニウム合金板同士を接着したときの接合強度は、ミクロンオーダーの粗度とその面のナノオーダーの超微細凹凸の形状特性によって殆ど決定される。実験事実から言えば、苛性ソーダ水溶液によるエッチングで、その浸漬条件等を探し出せば、前述した「NAT」理論でいう条件を偶然にしろ形状的に満たしていれば、意外に強い接着力が得られる。しかしながら、苛性ソーダによるエッチングのみの処理で、表面処理を終了させれば、その後に水洗を十々分に行ってもアルミニウム合金表層にナトリウムイオンが残存する。ナトリウムイオンは小粒径が故に移動し易く、塗装や接着が為された後であっても全体が濡れた状態になると、樹脂層を浸透する水分子に伴われて残存していたナトリウムイオンが、何故か金属/樹脂の境界面に集まって来て、アルミニウム表面の酸化を進める。
即ち、アルミニウム合金表面の腐食が生じ、その結果、基材と塗膜や接着剤間の剥離を促進する。この様な事情から未だに接着前に行うアルミニウム合金前処理として、苛性ソーダ水溶液でのエッチングを行う理由はない。それ故、現在でも、重クロム酸カリ、無水クロム酸の6価クロム化合物の水溶液に、アルミニウム合金を浸漬してクロメート処理するか、又は陽極酸化して未封孔のまま使用するのが強い接着剤接合の標準的前処理法とされている。要するにエッチングによる接着力向上に注目する以前に、アルミニウム合金表面の腐食や変質を防止することに主眼があった。
しかしながら、アルミニウム合金を苛性ソーダエッチングする方法が全く使用されていないわけではなく、塗装の為の前処理でよく使用されている。通常、塗装では極限的な接着力が求められるわけでもなく、風雨が当たる屋外使用用途でなければ水に浸ることもないとの判断による。加えて塗膜保証を10年とする等というような製品でなければ、この塗装前処理法も不合理ではない。本発明はこのような安易な考え方を前提とせず、長期的な接合安定性を重要課題とした。それ故、ナトリウムイオンの排除は最重要事項なのである。
アルミニウム合金に含有するナトリウム(Na)についても述べておく。アルミニウム金属の製法は、ボーキサイトを苛性ソーダ水溶液で溶解することで高純度のアルミニウム化合物を得、その電解還元によってアルミニウム地金を製造している。この製法上、アルミニウム地金にナトリウムが不純物として含まれることは避けられない。しかし現行の冶金技術は、アルミニウム合金中のナトリウム含量を極限まで抑えることが出来ている。それ故、酸塩基のミストがない通常環境において、昨今の市販アルミニウム合金では、直接的な濡れ(液体の水)が共存しないと腐食が進むことはない。実際、腐食が高速で進行するのは、濡れと潮風からの塩分(塩化ナトリウム)、及び陽光による加熱があるときである。即ち、市販のアルミニウム合金を、悪環境地域、例えば海岸近くに所在する都市で、潮風強く、かつ気温も高い地域の屋外で使用したとき、その腐食速度は速い。
この腐食対策は、一般にはその全表面を塗料、接着剤等で被覆する。そのとき、その塗膜や接着層に割れヒビ等が生じないことで必要であり、この割れヒビ等から、塩分を含む水が、アルミニウム合金の表面に侵入しないようにすることが重要である。そのような対策が為された場合、必ずしもアルミニウム合金の表面処理としては一般的なクロメート処理による必要はなく、塗膜耐候性が良くて塗膜/基材間の接着が良好であれば、塗装のみでも悪環境下にても十分に長持ちする。特に、昨今は6価クロムの使用が世界中で拒絶されつつあり、クロメート処理は既に好ましいアルミニウム合金表面処理法と言えない。その一方、現在では、耐候性に優れた塗料、耐湿性や耐熱性に優れた接着剤が多く市販されている。このような中、本発明者等は、塗料や接着剤とアルミニウム合金基材間の強い接合が、長期に維持されるためにアルミニウム合金側に求められる条件の最適化とその理論化を図ろうとした。
アルミニウム合金表面の好ましい粗度は、具体的には基本的に苛性ソーダ等の強塩基性水溶液によって得て、その後に酸性水溶液への浸漬と十分な水洗でナトリウムイオンを取り除く。ところが、電子顕微鏡で観察すると、苛性ソーダ水溶液でのエッチングで得られたアルミニウム合金表面の微細構造は、数十nm周期の超微細凹凸があり、硬化した接着剤が基材凹部から抜け難いとみられる面、即ち「NAT」仮説で求める好ましい超微細凹凸面であるに対し、そのアルミニウム合金を硝酸水溶液に浸漬水洗した後の表面は、超微細凹凸の品質レベル(凹凸の高低差)が低下していた。要するに、ナトリウムイオンを取り除く為の酸性水溶液へ浸漬操作が、一種の化学研磨になる。苛性ソーダ水溶液でのエッチング後のアルミニウム合金表面の電子顕微鏡写真を見た場合、感覚的な表現でいうと、ミクロの目で見た場合のザラザラ面となっており、このザラザラ面は酸性水溶液に浸漬した場合、化学研磨によりザラザラ度を低下せしめ、接着剤接合には逆効果になった。
そこでこのザラザラ度を、以下に述べる微細エッチングで取り戻すようにしたものである。要するに、本発明者等が本発明をするに至った経緯、思考、理論は、数nmの高解像度が得られる高性能電子顕微鏡が容易に使用できるようになったことにもよっている。又、本発明において、アルミニウム合金の耐候性耐食性の獲得は、得られた最終的なアルミニウム合金表面を酸化アルミニウム表層とし、且つ、合金基材への接着剤の接合力を極限に高めることで達成しようという考え方である。
前処理を終えたアルミニウム合金部品は、最終処理である以下のような表面処理、即ち微細エッチングを行う。前処理を終えたアルミニウム合金部品を、水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物のいずれか1つ以上を含む水溶液に浸漬し、その後水洗し、70℃以下で乾燥するのが好ましい。これは、前処理の最終処理で行う脱ナトリウムイオン処理によって表面がやや変化し、粗度は保たれるがその表面がやや円滑になったことに対する粗面の復活策でもある。水和ヒドラジン水溶液等の弱塩基性水溶液に、短時間浸漬して微細エッチングし、表面に10〜100nm径で同等高さ、又は深さの凹部若しくは突起のある超微細凹凸面で覆うようにするものであり、細かく言えば、ミクロンオーダーの凹凸の凹部内壁面に、40〜50nm周期の超微細凹凸が多数を占めるように形成し、電子顕微鏡写真で見た感覚を視覚的に言えばザラザラ度の高い面に仕上げるのが好ましい。
又、水洗後の乾燥温度を例えば100℃以上の高温にすると、仮に乾燥機内が密閉的であると、沸騰水とアルミニウム間で水酸化反応が生じ、表面が変化してベーマイト層が形成される。これは丈夫な表層と言えず好ましくない。乾燥機内の湿度状況は乾燥機の大きさや換気の様子だけでなく、投入するアルミニウム合金の量にも関係する。その意味で表面のベーマイト化を防ぐにはどの様な投入条件であれ、90℃以下、好ましくは70℃以下で温風乾燥するのが良好な結果を再現性良く得る上で好ましい。70℃以下で乾燥した場合、XPSによる表面元素分析でアルミニウムのピークからアルミニウム(3価)しか検出できず、市販のA5052、A7075アルミニウム合金板材等のXPS分析では検出できるアルミニウム(0価)は消える。
XPS分析は、金属表面から1〜2nm深さまでに存在する元素が検出できるので、この結果から、水和ヒドラジンやアミン系化合物の水溶液に浸漬し、その後水洗して温風乾燥することで、アルミニウム合金が持っていた本来の自然酸化層(1nm厚さ程度の酸化アルミニウム薄層)が微細エッチングでより厚くなったことが分かった。少なくとも自然酸化層と異なって、2nm以上の厚さのあることが分かったので、それ以上解明しなかった。即ち、アルゴンイオンビーム等でエッチングしてからXPS分析をすれば、10〜100nm程度のより深い位置での分析が可能であるが、ビーム自体の影響で深層のアルミニウム原子の価数が変化する可能性もあるとのことで、現時点でこの解析が困難と考えて本発明者等はこの考察を止めた。
他の表面処理方法によるアルミニウム合金表面の酸化アルミニウム層の形成について述べる。アルミニウム合金の耐候性向上のために行う表面処理法の一つに陽極酸化法がある。アルミニウム合金に陽極酸化を為した場合、数μm〜十数μm厚の酸化アルミニウム層が形成でき、耐候性は大きく向上する。陽極酸化処理直後の酸化アルミニウム層には、無数の20〜40nm径程度の穴の開口部が残されている。この状態、即ち未封孔アルマイト状態で接着剤の接合、又は塗料の塗布を行うと、接着剤、又は塗料が開口部から穴に若干入り込んで固化し、強いアンカー効果を発揮し、接着剤による接合では強い接合力を生むとされている。実際、航空機の組み立てでは、陽極酸化アルミニウム合金として、これに接着剤を塗布して異材質材等を接合することが知られている。
しかしながら、本発明者等はこの説に疑問を持った。即ち、陽極酸化アルミニウム合金同士をエポキシ系接着剤で強固に接合した一体化物のせん断破断試験を行った場合、本発明者等の破断試験によると、40MPa(40N/mm)以上の強い力で破断したサンプルはなく、且つ破断面を見ると、接着剤が破断するのではなく、陽極酸化層(酸化アルミニウム層)がアルミニウム合金基材から剥がれているものが殆どであった。ここで本発明者等の考察を言えば、「強い接合に必要な金属側の表面は、金属酸化物等セラミック質の高硬度の層でなければならないがその厚さは厚すぎてはならない。」というものである。陽極酸化物の表層は酸化アルミニウムであって、基材アルミニウム自身の酸化物ではあるが、表層はセラミック質で基材は金属だから互いに異物同士である。
セラミック質が厚ければ、必ず極限状態では物性の差異が現れて破断するはずである。それ故、金属酸化物層は薄い方が好ましく、且つ常識から、その金属酸化物はアモルファスか微結晶状態のセラミック質であると基材との接合が万全で好ましいはずと考えた。即ち、接着物のせん断破断力を強烈なものにするには、むやみに酸化金属層を厚くすべきでなく、陽極酸化を為した未封孔アルマイトの使用は好ましくないという結論である。
以下、本発明でいう微細エッチングについて更に詳細に述べる。水和ヒドラジン、アンモニア、又は水溶性アミン等の水溶液で、PH9〜10の弱塩基性水溶液に適当な温度、適当な時間だけ浸漬すると、その表面は直径10〜100nmの超微細凹凸形状で全面が覆われたものとなる。数平均の直径で言えば50nm程度である。又、逆の言い方をすれば、表面に直径10〜100nmの超微細凹凸形状を得るためには、最適なPH、温度、時間を選択すると良いということである。本発明者等が予想している最も好ましい超微細凹凸の周期、又は超微細凹凸部の直径は、50nm程度であろうと経験的に考えている。その理由は、10nm周期の凹凸なら、ザラザラ面というよりも凹凸具合が微細に過ぎて粘性ある接着剤にとっては円滑面であり、又、100nm以上であれば、ザラザラ面というには大まか過ぎて引っかかるイメージがない。なお、本発明でいう「数平均」とは、統計的に検証出来る程度の総和平均という程度ではない、20個以内のサンプルを抽出した程度の平均値をいう。
50nmは、実験結果から得た経験的感覚からの数値である。ただ50nm周期を目指すとしても、化学反応でそのような規律正しいものが出来るはずがなく、バラついたものになる。電子顕微鏡で撮影した写真を見て数値化するしかなく、その結果から言えば、直径10〜100nmで同等の深さの凹部、又は直径10〜100nmで同等の高さの凸部でほぼ100%全面が覆われた超微細凹凸形状面ということになる。実際、直径10〜20nmの凹凸が表面の大部分を占める場合、又、逆に直径100nm以上の凹凸が多きを占めるような場合も接合力は劣ったものとなった。A7075材やA5052材を水和ヒドラジンの水溶液でエッチングした例を記す。
即ち、このような大きさの凹部や凸部でアルミニウム合金を覆うようにするには、試行錯誤した実験による浸漬条件を探索する必要がある。一水和ヒドラジンの3.5%濃度の60℃の水溶液で言うと、A5052、A7075材の浸漬では浸漬時間を2分間程度とするのが最適であり、この浸漬時間による表面は10〜100nm直径、数平均では直径40〜50nmの凹部で全面が覆われる。しかしながら、4分間浸漬した場合、凹部の直径が拡大して80〜200nmのものとなり、これらの凹部の直径の数平均値では100nm径を超えるように急拡大し、凹部の底部にも更に凹部が発生してその構造が複雑化する。更に、8分間浸漬すると、横穴状の侵食も進んでややスポンジ状になり、更に深い凹部が繋がって谷や峡谷状に変化する。16分浸漬すると、目視でもアルミニウム合金が元の金属色からやや褐色かかって可視光線の吸収具合が変化し始めたことが分かる。
ちなみに前述した条件で浸漬時間が1分間のときは、電子顕微鏡写真で10〜40nm径の凹部が観察され、これらの数平均直径は25〜30nmの凹部であった。更に、0.5分間の浸漬であると、表面を覆う凹部の直径は10〜30nmであり、これらの数平均直径で言えば25nm程度で、浸漬時間1分の場合と大差がない。そして浸漬時間0.5分の物と、浸漬時間1分の物の電子顕微鏡写真をよく見比べてみると、凹部の深さは0.5分間浸漬したものが1分間浸漬したものより明らかに浅い様子であった。要するに、弱塩基性水溶液中のA5052、A7075では、何故か20〜25nm周期で侵食が始まり、まずこれが直径20nm程度の凹部を作り、この凹部の深さが直径と同レベルまで深くなったら、その後は凹部の縁が侵食されて凹部直径の拡大となり、凹部の内部の不定方向への侵食が始まることが分かった。そのように侵食された場合、最も接着剤接合に適した単純で且つ丈夫な侵食具合は、A7075、A5052を3〜5%一水和ヒドラジン水溶液(60℃)に浸漬した場合で、ほぼ2分間であった。
例えば、温度23℃で粘度40Pa・秒の1液性高温硬化型エポキシ系接着剤「EP106(セメダイン株式会社(日本国東京都)製)」を使用した場合について説明する。実施例で示す接着実験の結果から言えば、前記条件で水和ヒドラジン水溶液に1分浸漬したA7075等のアルミニウム合金材の場合では、数平均で超微細凹部の直径が25nm程度と小さ過ぎてエポキシ樹脂がこの超微細凹部に侵入し難いようであり、浸漬時間を2分にした場合の接着力が最大になるようであった。前記条件でA7075等を2分間浸漬した場合、超微細凹部の直径は数平均の直径で40nm程度になったので、このエポキシ樹脂はこの程度以上の超微細凹部であれば、この超微細凹部内に頭を突っ込み得るのだろうと推定された。
要するに、ミクロンオーダーの凹部の内面が数十nm周期の凹凸あるザラザラ面であると、接合力が高くなるのである。又、前述した浸漬時間が2分間以上、例えば4分間、8分間と長くなると凹部径が大きくなるだけでなく、凹部の中にまた凹部が出来、簡単に言えばスポンジ状になってきて、アルミニウム合金表面層自体の強度が弱くなるだけでなく、深く複雑な穴の奥まで接着剤が侵入できないのである。この結果、接合物の接合境界部に空隙部が増え、結果として接合力が最大値より低下する。要するに、前記のエポキシ系接着剤をA7075等のアルミニウム合金に使用する場合、その接合力を最高にするには、ミクロンオーダーの適当な粗度とするに加え、その表面を数平均値で40〜50nm直径の超微細凹部で覆うことが好ましく、この超微細凹部を作るための最適な浸漬時間の範囲は非常に狭いことが理解できる。前述した2分間前後(概ね1.5分〜3分)の浸漬時間の場合に、最善の接合結果が得られたからである。
A5052のアルミニウム合金に対して同じエポキシ系接着剤を使用した場合、苛性ソーダ水溶液によるエッチング時の浸漬条件はA7075に対する場合と若干異なる。これは侵食具合や、その侵食された表面の物性が当然だが異なるからと考えられる。
アンモニア水はヒドラジン水溶液よりもPHが低いし、水溶液を常温より高温にするとアンモニアの揮発が激しくなる。それ故に高濃度、低温での浸漬処理となり、25%濃度程度の最も濃いアンモニア水を常温で使用する場合も15〜20分の浸漬時間が必要となる。逆に水溶性アミン類の多くは、ヒドラジン水溶液よりも強い塩基性水溶液となるのでより短時間での処理となる。量産処理では浸漬時間が長過ぎても短きに過ぎても作業の安定性が失われる。その意味で最適浸漬時間を数分にできる水和ヒドラジンが実際の使用には適しているように思われる。
何れの場合も、水和ヒドラジン、アンモニア、又は水溶性アミンの水溶液への浸漬の後で、数%濃度の過酸化水素水溶液に浸漬した場合に接合力が向上する合金種があった。表面の酸化金属層の厚さが厚くなっているのかもしれないが、厚さ2nm以上について分析が難しく理論的には解明出来なかった。
(マグネシウム合金の表面処理)
マグネシウム合金部品は、まず脱脂槽に浸漬して機械加工で付着した油剤や指脂を除くのが好ましい。具体的には、市販のマグネシウム合金用脱脂材を、薬剤メーカーの指定通りの濃度で湯に投入して水溶液を用意し、これに浸漬した後、これを水洗するのが好ましい。通常の市販品では、一般的には濃度5〜10%、液温を50〜80℃とし、これに5〜10分浸漬する。次に、酸性水溶液に短時間浸漬した後、これを水洗しマグネシウム合金の化学エッチングを行う。この脱脂工程で除き切れなかった汚れを含めマグネシウム合金表層が剥がされ、同時にミクロンオーダーの粗度、即ち、走査型プローブ顕微鏡観察測定によるJIS規格(JISB0601:2001(ISO 4287))で言えば、粗さ曲線の平均長さ(RSm)が0.8〜10μm、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmの凹凸がある面にする。
上記で行う化学エッチング用の使用液としては、1%〜数%濃度のカルボン酸や鉱酸の水溶液、特にクエン酸、マロン酸、酢酸、硝酸等の水溶液が好ましい。エッチングでは、通常マグネシウム合金に含まれるアルミニウムや亜鉛は、溶解せず黒色のスマットとしてマグネシウム合金表面に付着残存するから、次に弱塩基性水溶液に浸漬してアルミニウムスマットを溶解して除き、次に強塩基水溶液に浸漬して亜鉛スマットを溶解して除くのが好ましい。これらの処理で前処理を終える。
前記の前処理を終えたマグネシウム合金部品を、所謂、化成処理する。即ち、マグネシウムは、イオン化傾向の非常に高い金属であるから空気中の湿気と酸素による酸化速度が他の金属に比べて速い。マグネシウム合金には、自然酸化膜があるが耐食性の点から見て十分強いものではなく、通常の環境下でも自然酸化膜を拡散した水分子や酸素で酸化腐食が進行する。それ故、通常のマグネシウム合金部品は、クロム酸や重クロム酸カリ等の水溶液に浸漬して酸化クロムの薄層で全面を覆う(クロメート処理と呼ばれる)か、又はリン酸を含むマンガン塩の水溶液に浸漬して、リン酸マンガン系化合物で全面を覆う処理を行って、腐食防止処置を行う。これらの処置をマグネシウム業界では化成処理と呼んでいる。
要するに、マグネシウム合金に行う化成処理とは、金属塩を含む水溶液にマグネシウム合金を浸漬して、その表面を金属酸化物及び/又は金属リン酸化物の薄層で覆う処置を言う。現在では、6価のクロム化合物を使用するクロメート型の化成処理は環境汚染の観点から忌避されており、ノンクロメート処理と言われるクロム以外の金属塩を使用した化成処理、実際には、前記したリン酸マンガン系化成処理、又は珪素系化成処理が行われる。本発明ではこれらの方法と相違して、弱酸性とした過マンガン酸カリの水溶液を、化成処理用水溶液として使用するのが特に好ましい。この場合、表面を覆う皮膜(化成皮膜という)は、二酸化マンガンとなる。
具体的な処理法としては、前処理を終えたマグネシウム合金部品を非常に希薄な酸性水溶液に短時間浸漬した後、これを水洗し、前処理で洗浄し切れず残存しているナトリウムイオンを中和して除き、次に化成処理用水溶液に浸漬した後、これを水洗する方法が好ましい。希薄な酸性水溶液として、クエン酸やマロン酸の0.1〜0.3%の水溶液を使用するのが好ましく、常温付近で1分程度浸漬するのが好ましい。化成処理用水溶液としては、過マンガン酸カリを1.5〜3%、酢酸を1%前後、及び酢酸ナトリウムを0.5%前後含む水溶液を、温度40〜50℃で使用するのが好ましく、この水溶液では浸漬時間は1分程度が好ましい。これらの操作により、マグネシウム合金はニ酸化マンガンの化成皮膜で覆われたものとなり、その表面形状は、ミクロンオーダーの大きな粗度(粗さ面)を有し、且つ電子顕微鏡で観察するとナノオーダーの超微細凹凸あるものとなる。
図5及び図6は、それぞれ10万倍のナノオーダーの超微細凹凸形状の電子顕微鏡写真である。これらの超微細凹凸の表面形状を、文章表現で表現するのは困難であるが、敢えて言えば、図5の電子顕微鏡写真からは、5〜20nm径で20〜200nm長さの棒状、又は球状物のような無数に錯綜した凹凸で表面が覆われている超微細凹凸形状と言える。図6の電子顕微鏡写真からは、この超微細凹凸形状は、5〜20nm径で10〜30nm長さの棒状、又は球状のような突起が無数に生えた直径80〜120nmの球状物が、不規則に積み重なったような形状の表面を呈している。約10nm径の棒状(針状)物質は、電子顕微鏡観察から言えば完全に結晶であると言うべきだが、X線回折装置(XRD)からはマンガン酸化物で見られる回折線は認められなかった。
X線回折装置(XRD)は、結晶の量が少ないと検出できないので、今のところ学問的にこれらが結晶であると判断して良いか否かは、結晶学の学徒でない本発明者等には分からない。少なくとも、これらがアモルファス(非結晶)というには形が整い過ぎており、本発明者はこれがアモルファスとも言えないと考える。なお、XPS分析からは、マンガン(イオンであり0価のマンガンではない)と酸素の大きなピークが認められ、表層はマンガン酸化物であることは間違いない。この表面は、色調が暗色であり、二酸化マンガンが少なくとも主体のマンガン酸化物である。
又、前記と全く異なる微細表面形状であるが、直径20〜40nmの粒径物や不定多角形状物が積み重なった形状、言わば溶岩台地の斜面にあるようなデコボコ形状の地面のような超微細凹凸形状で、ほぼ全面が覆われている場合もある。要するに、5〜20nm直径の棒状物が認められない場合には、このような溶岩台地の表面のような形状になることが多く、組成的にはアルミニウム含量の多い場合である。この表面の一例の写真を図7に示したが、これは鋳造用マグネシウム合金であるAZ91Dの処理例である。
(銅合金の表面処理)
銅合金部品は、まず脱脂槽に浸漬して機械加工で付着した油剤や指脂をその表面から除去するのが好ましい。具体的には、市販の銅合金用脱脂材を薬剤メーカーの指定通りの濃度で水に投入して水溶液を用意し、これに浸漬し水洗するのが好ましいが、市販の鉄用、ステンレス用、アルミ用等の脱脂剤、更には工業用、一般家庭用の中性洗剤を溶解した水溶液も使用できる。具体的には、市販脱脂剤や中性洗剤を数%〜5%濃度で水に溶解し、50〜70℃とし5〜10分浸漬し水洗するのが好ましい。
次に、銅合金部品を40℃前後に保った数%濃度の苛性ソーダ水溶液に浸漬した後に水洗する洗浄である、予備塩基洗浄するのが好ましい。更に、過酸化水素と硫酸を含む水溶液に、銅合金部品を浸漬した後に、水洗して、化学エッチングとするのが好ましい。この化学エッチングは、20℃〜常温付近の、硫酸、過酸化水素の両方を共に数%含む水溶液が好ましい。このときの浸漬時間は、合金種によって異なるが、数分〜20分である。これらの前処理工程で、殆どの銅合金でミクロンオーダーの好ましい粗度、即ち走査型プローブ顕微鏡で解析してJIS規格(JIS B 0601:2001(ISO4287))でいう粗さ曲線の平均長さ(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜10μmである、粗さ面を有する銅合金となる。好ましくは、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであると良い。
しかしながら、特に純銅系の銅合金で言えることだが、前述した化学エッチングの結果で得られる粗面は、凹凸周期が10μm以上になることも多く、その平均値、RSmは純銅系以外の銅合金に比較して大きい。一方、そのRSmの大きい割りには凹凸高低差が小さい。特に、銅分が高純度であるC1020(無酸素銅)等、金属結晶粒径の大きいことが明らかなもので、前述したような周期の大きな粗さ曲線を与えることが明らかに多く、凹凸周期と金属結晶粒径の大きさに直接的な相関関係があると推定された。純銅系合金だけでなく、各種合金で行う化学エッチングでも、その多くは結晶粒界から侵食が始まることに起因するからであろうと推定される。何れにせよ、ミクロンオーダー周期の凹凸があっても、その周期の割に凹凸の高低差が小さいと、本発明の効果が発揮され難い。それ故、大きな凹凸の荒さがが不足していると感じたものについては、後記するがそれなりの処理法を実施するのが好ましい。
前処理を終えた銅合金部品を酸化する。電子部品業界では黒化処理と呼ばれている方法が知られているが、本発明で実施する酸化は、その目的と酸化程度が異なるものの工程そのものは同じである。化学的に言えば、銅合金の表面層を強塩基性下で酸化剤によって酸化する。銅原子を酸化剤でイオン化した場合に、周りが強塩基性であると水溶液に溶解せず黒色の酸化第2銅になる。銅合金製部品をヒートシンクや発熱材部品として使用する場合、表面を黒色化して輻射熱の放熱や吸熱での効率を上げるために為されているが、この処理を、銅を使用する電子部品業界では黒化処理と呼んでいる。本発明の表面処理にもこの黒化処理法が利用できる。但し、この黒化処理の目的は、粗さを有する銅合金部品に、硬質で、且つナノオーダーの超微細凹凸を有する表面を作ることであるから、文字通り黒色化することではない。
市販の黒化剤を、市販メーカーの指示する濃度、温度で使用できるが、その場合の浸漬時間は所謂黒化時よりずっと短時間である。実際には得られた合金を、電子顕微鏡観察して浸漬時間を調整することになる。本発明者等は、亜塩素酸ナトリウムを5%前後、苛性ソーダを5〜10%含む水溶液を、60〜70℃として使用するのが好ましく、その場合の浸漬時間は0.5〜1.0分程度が好ましい。これらの操作により、銅合金は酸化第2銅の薄層で覆われたものとなり、その表面には、ミクロンオーダーの粗さを有する粗面が形成され、且つ電子顕微鏡で観察すると、その粗面には直径が10〜150nmの円穴、又は長径ないし短径が10〜150nmの楕円状の穴が形成される。
この円形状の穴、又は楕円状の穴である孔開口部が、30〜300nm周期で全表面に存在する超微細凹凸形状のものとなる(この例を図8の写真で示した)。要するに、この表面硬化処理を行うと、超微細凹凸形成と表面硬化層の双方が同時に得られることになる。又、前記の処理液への浸漬時間を2〜3分にするなど長くし、表面硬化処理をし過ぎることは結果的に分かったことであるが、返って接合力を弱くし、好ましくない。
前述した純銅系銅合金のエッチングでは、観察結果から金属結晶粒界から銅の侵食が起こるのが確実な模様であり、前述したように結晶粒径の特に大きいもの、即ち、無酸素銅(C1020)では、前述した化学エッチングと表面硬化処理をしただけでは強い接合力を発揮できなかった。要するに、最も重要なサイズの凹部が予期したように出来上がっていないのである。
このような場合の処置法を本発明者等は発見した。結果は非常に単純な方法であるが、一旦表面硬化処理(黒化)を終えた後のものを、再度エッチング液に短時間浸漬して再エッチングし、その後に再度の黒化をする方法である。結果的に、ミクロンオーダーの粗さの周期は、10μm程度か、それ以下に近づけられて予期したようなものとなり、且つ、超微細凹凸の様子は電子顕微鏡観察によると繰り返し処理をしない場合と変わらない。
(チタン合金の表面処理)
チタン合金部品は、まず脱脂槽に浸漬して機械加工で付着した油剤や指脂を取り除くのが好ましい。特殊なものは必要でなく、具体的には、市販の鉄用脱脂剤、ステンレス用脱脂剤、アルミニウム合金用脱脂材、マグネシウム合金用脱脂剤等の一般的な脱脂剤を、その薬剤メーカーの指定通りの濃度で湯に投入して水溶液を用意し、これに浸漬し水洗するのが好ましい。更には、市販されている工業用中性洗剤で、数%濃度の水溶液を作成し、この温度を60℃前後にして浸漬した後、これを水洗するのも好ましい。次に、塩基性水溶液に浸漬して水洗し、予備塩基洗浄することが好ましい。
次に、還元性の酸の水溶液に浸漬して化学エッチングするのが好ましい。具体的には、蓚酸、硫酸、弗化水素酸等が、チタン合金を全面腐食させ得る還元性酸と言え、これらを使用できる。効率から言えば、このうちエッチング速度が速いのは弗化水素酸である。ただし弗化水素酸は、万が一にも人間の肌に触れると侵入して骨に至り、奥深い痛みが数日続くことがある。要するに塩酸等と異なる問題があり、労働環境面からこの酸は使用を敬遠したほうが好ましい。
好ましいのは、弗化水素酸より遥かに安全な扱いができる弗化水素酸の半中和物の1水素2弗化アンモニウムである。1水素2弗化アンモニウムの1%前後の水溶液を、温度50〜60℃として、これに数分浸漬した後、水洗する処理方法が好ましい。1水素2弗化アンモニウム水溶液による化学エッチングは、ミクロンオーダーの粗度(粗さ面)を得るために行ったが、電子顕微鏡観察や最新分析機器による観察では、化学エッチング後の水洗と乾燥によりチタン合金表面は、不思議な形状の超微細凹凸形状となり、且つ、表面は酸化チタン薄層で覆われたものとなることが分かった。要するに、特段の微細エッチング工程、表面酸化工程等の表面処理は、不要であり、行わなくても良いようであった。
1水素2弗化アンモニウム水溶液でエッチングし、水洗し、更にこれを乾燥したチタン合金の分析例を示す。まず走査型プローブ顕微鏡による走査解析結果を得た。ここでは20μm角の正方形面積内を走査して、粗さ曲線の平均長さ(輪郭曲線要素の平均長さ)RSmが、1.8μm、最大高さ粗さ(輪郭曲線の最大高さ)Rzは、0.9μが得られた。又、同じ処理をした物の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真の例を図12(a),(b)に示した。ここでは、高さ及び幅が10〜300nm、長さが10nm以上の山状又は連山(山脈)状凸部が10〜350nm周期で、全表面に存在する非常にユニークで不思議な超微細凹凸形状が示された。
又、XPS分析によると、大きな酸素、チタンのピークが得られ表面の化合物は明らかに酸化チタンであることが分かった。ただ表面色調は暗褐色であり、チタン(3価)酸化物か、又はチタン(3価)とチタン(4価)の混合酸化物の薄膜とみられた。即ち、エッチング前は金属色であり、この表面はチタンの自然酸化層であるが、1水素2弗化アンモニウム水溶液でエッチングした後は、自然酸化層でない暗色の酸化チタン層に変化した。この酸化チタン層をアルゴンイオンビームで十〜数十nmエッチングし、エッチング後の面をXPS分析した。このXPS分析で、チタン酸化物層の厚さが判明したが、この厚さは明らかに自然酸化層の厚さより厚く、1水素2弗化アンモニウム水溶液による純チタン系のチタン合金エッチング品では50nm以上とみられた。
しかも表面から内部に向かってチタンイオンの価数が減少しており、表面の4価又は3価と4価の混合状態から内部に向かって2価が増え、更に2価が減って0価の金属に至ることが分かった。要するに、チタン酸化物である酸化膜は単純なチタン酸化物層でなく、チタン価数が表面から連続的に減ってゼロ価に達したような連続変化層であり、別の表現では、まるで酸素が表面から染み込んだように、表面は濃く内部に向かって薄くなる興味ある連続変化層であることが分かる。このような金属酸化膜では金属相との間にはっきりした境がないため、酸化膜層と金属基材間の接合力は非常に強力で、その耐引き剥がし破壊(応力)力に関しては何ら心配することのないことが予期できる。
純チタン系合金以外のチタン合金の具体的な処理法は、前述した処理法と同様であるが、還元性の強酸水溶液によるエッチング時に生じる発生期の水素ガスによって、少量添加物として含まれている他金属が還元されて不溶物、いわゆるスマットを生じることがある。スマットの多くは、その後に数%濃度の硝酸水溶液に浸漬することで溶解除去することができる。但し、珪素スマットは硝酸水溶液に溶解せず遊離するだけないので、超音波をかけた水中で剥がすのが好ましい。
純チタン系チタン合金以外の合金を、一水素2弗化アンモニウムでエッチングしスマット除去したものの表面形状は、前述した図12の写真に比較し、その表面形状を言語表現することが難しい表面形状になる。アルミニウムを含有するα−β型チタン合金の例を、図13の写真に示す。ここにはチタン合金らしい(図12に似た)超微細凹凸がない綺麗な山か丘の斜面状部分も観察されるが、植物の枯葉のような形状の不思議な形状が観察された。この表面全体は、前述した第2の条件として好ましい10〜300nm周期の超微細凹凸で覆われているというものではなく、より周期の大きいもの(「微細凹凸」と呼ぶ)が観察され、この微細凹凸自体が滑らかであった。
しかしながら、この表面中の、円滑なドーム状部分は別として、枯葉形状部は薄くて湾曲しており、これに硬度があれば強力なスパイク形状となる。α−β型チタン合金表面は、前述したNAT理論における第2の条件(5nm〜500nm周期の超微細凹凸)に合致しない部分が殆どだが、このスパイク形状によって第2の条件で求めている超微細凹凸の役割を果たしうると考えられる。この表面のスパイク形状は大きいため、むしろNATで求めている第1の条件で要求するミクロンオーダーの粗度(表面粗さ)にも関係してくる。このスパイク形状によって、走査型プローブ顕微鏡で見て、第1の条件(山谷平均間隔(RSm):0.8〜10μm,最大高さ粗さ(Rz):0.2〜5μm)を満たす粗度面が形成されている。なお、第2の条件からやや外れて凹凸周期が大きいので、10万倍の電子顕微鏡写真では表面の全体像を掴むことができない。表面観察は、1万倍以下の倍率写真を撮って観察した。即ち、図13のように1万倍の電子顕微鏡で見て、少なくとも10μm角以上の面積を見ることである。そうすれば、円滑なドーム状形状と湾曲した枯葉形状の双方が存在する微細凹凸形状が観察される。
(ステンレス鋼の表面処理)
各種ステンレス鋼は、耐食性を向上すべく開発されたものであるから耐薬品性は明確に記録されている。腐食には全面腐食、孔食、疲労腐食等の種類があるが全面腐食を生じる薬品種を選んで試行錯誤し、適当なエッチング剤を選ぶことができる。文献の記録(例えば「化学工学便覧」、第6版、化学工学会編、丸善 (1999))によれば、ステンレス鋼全般は、塩酸等ハロゲン化水素酸、亜硫酸、硫酸、ハロゲン化金属塩等の水溶液で、全面腐食するとの記録がある。多くの薬剤に耐食性があるステンレス鋼の残された弱点は、ハロゲン化物に腐食されることであるが、炭素含有量を減らしたステンレス鋼、モリブデンを添加したステンレス鋼等ではその弱点が小さくなっている。
しかし、基本的には前述した水溶液で、全面腐食を起こすのでステンレス鋼の種類によって、その浸漬条件を変化させればよい。更には、焼き鈍し等で硬度を下げ、構造的に言えば金属結晶粒径を大きくした物は、結晶粒界が少なくなっており、意図的に全面腐食させるのが困難になる。このような場合は、浸漬条件を変えて腐食が進行するような条件にするだけでは、エッチングが意図したレベルまで中々進まず、何らかの添加剤を加えるなどの工夫が必要である。何れにせよ、前処理としてミクロンオーダーの粗度面が大部分を占めるようにすることを目的として化学エッチングする。
具体的に言えば、特殊な脱脂剤は必要ではなく、市販されている一般的なステンレス鋼用の脱脂剤、鉄用の脱脂剤、アルミニウム合金用脱脂剤、又は市販の一般向け中性洗剤を入手し、これらの脱脂剤メーカーの説明書に記載された指示通りの水溶液の濃度、又は数%濃度で、温度40〜70℃の水溶液にして、処理したいステンレス鋼を5〜10分浸漬し水洗する。これは言わば脱脂工程である。次に、このステンレス鋼を数%濃度の苛性ソーダ水溶液に短時間浸漬した後に、これを水洗して、この表面に塩基性イオンを吸着させるのが好ましい。この操作で、次の化学エッチングが再現性よく進むからである。これは言わば予備塩基洗浄工程である。次にエッチング工程に入る。
SUS304であれば、10%濃度程度の硫酸水溶液を温度60〜70℃として、これに数分間浸漬する方法が好ましく、この処理方法により、本発明で要求するミクロンオーダーの粗度が得られる。又、SUS316では、10%濃度程度の硫酸水溶液を温度60〜70℃として5〜10分間浸漬するのが好ましい。ハロゲン化水素酸、例えば塩酸水溶液もエッチングに適しているが、この水溶液を高温化すると酸の一部が揮発し、周囲の鉄製構造物を腐食する恐れがあるほか、局所排気しても排気ガスに何らかの処理が必要になる。その意味で硫酸水溶液の使用がコスト面で好ましい。ただし、鋼材によっては、硫酸単独の水溶液では全面腐食の進行が遅すぎる場合がある。このような場合、硫酸水溶液にハロゲン化水素酸を添加してエッチングすることは効果的である。
前記の化学エッチングの後に、十分水洗することでステンレス鋼の表面は自然酸化し腐食に耐える表層に再度戻るため特に硬化処理は行う必要がない。しかし、ステンレス鋼表面の金属酸化物層を厚く、強固なものにするべく、酸化性の酸、例えば硝酸等の酸化剤、即ち、硝酸、過酸化水素、過マンガン酸カリ、塩素酸ナトリウム等、の水溶液に浸漬した後、これを水洗するのが好ましい。
エポキシ系接着剤接合試験にかけて接合力の高い物を選び、その上で同じ物を電子顕微鏡観察し微細凹凸形状が存在すること、その形状を確認するのが好ましい。勿論、先に電子顕微鏡観察をしてから射出接合試験にかけてもよい。何れにせよ、数十nm〜百nm周期の超微細凹凸、好ましくは、50nm程度の周期の超微細凹凸形状が、確実に存在する微細構造表面を有するステンレス鋼では、高い射出接合力を有するはずである。これらは、前述したように、本発明者等は既にマグネシウム合金、アルミニウム合金、銅合金、チタン合金で確認している。
実際に、ステンレス鋼を硫酸水溶液で化学エッチングした例を示す。適切なエッチングにより前記したような粗度面(表面粗さ面)が得られ、この粗度面は粗度計(表面粗さ計)、走査型プローブ顕微鏡等を用いた観察で確認できるが、更に表面を電子顕微鏡観察すると非常に興味ある超微細凹凸形状を有した面で覆われていることが分かる。要するに、ステンレス鋼では、上記のような化学エッチングだけで微細エッチングも同時に形成される。この微細エッチング面を電子顕微鏡写真で説明する。微細エッチング面の一例の写真(図14)では、直径20〜70nmの粒径物、不定多角形状物等が積み重なった形状が認められ、この1万倍写真(図14上段)、及び10万倍写真(図14下段)の観察写真も、まるで火山周辺で溶岩が流れて形成される溶岩台地の斜面のガラ場に酷似していた。
又、エッチング面である超微細凹凸形状で覆われたステンレス鋼をXPS分析すると、酸素、鉄の大きなピークと、ニッケル、クロム、炭素、モリブデンの小さなピークが認められた。要するに、表面は通常のステンレス鋼と全く同じ組成の金属の酸化物であり、同様の耐食面で覆われているとみられた。なお、ここで化学エッチング手法を取ることの重要性について述べておく。どのような手法であっても、予期した前述した表面形状になればよいのであるが、何故化学エッチングかということである。昨今の、光化学レジストを塗布し可視光線、本発明での紫外線等を使って行うような高度の超微細加工法を使用すれば、設計した超微細凹凸形状面が実現可能になると考えられるからである。
しかし化学エッチングは、操作が簡単であるという以外に、射出接合に特に好ましい理由がある。即ち、化学エッチングを適切な条件で行うと、適当な凹凸周期、適当な凹部の深さが得られるだけでなく、得られる凹部の微細形状は単純形状とはならず、凹部の多くはアンダー構造になるからである。本発明でいうこのアンダー構造とは、凹部をその垂直面上から見た場合に見えない面があることであり、凹部の底からミクロの目で見たと仮定した場合に、オーバーハング箇所が見えるということである。アンダー構造が射出接合に必要なことは容易に理解できよう。
又、前記還元性酸水溶液によるエッチングの後、硝酸水溶液、過酸化水素水溶液等に浸漬して、金属酸化物層をしっかり作るべく追加処理も行ったが、電子顕微鏡写真で見た場合も接着剤により接合したときの接合力も、この追加処理の付加によって明確な差異はなかった。長期の耐候性試験をすれば、接合力に差が出てくるかもしれないが未だ確認していない。
(鉄鋼材の表面処理)
鉄鋼材料の腐食には、全面腐食、孔食、疲労腐食等の種類が知られているが、全面腐食を生じる薬品種を選んで試行錯誤し、適当なエッチング剤を選ぶことができる。各種文献の記録(例えば、「化学工学便覧(化学工学協会編集)」)によれば、鉄鋼材全般は、塩酸等ハロゲン化水素酸、亜硫酸、硫酸、これらの塩、等の水溶液で全面腐食するとの記載がある。炭素、クロム、バナジウム、モリブデン、その他の少量添加物の添加量次第で、その腐食速度や腐食形態は変化するが、基本的には前述した水溶液で全面腐食を起こす。従って、基本的には鉄鋼材料の種類によって、その浸漬条件を変化させればよい。
具体的に言えば、まずSPCC、SPHC、SAPH、SPFH、SS材等のように市販され、かつよく使用される鉄鋼材料では、この鉄鋼材用として市販されている脱脂剤、ステンレス鋼用の脱脂剤、アルミニウム合金用脱脂剤、更には、市販の一般向け中性洗剤を入手し、これらの脱脂剤メーカーの説明書に記載された指示通りの水溶液の濃度、又は数%濃度の水溶液にして、この温度を40〜70℃として5〜10分浸漬した後、これを水洗する(脱脂工程)。次に、エッチングを再現性よくするために希薄な苛性ソーダ水溶液に短時間浸漬した後、これを水洗するのが好ましい。この処理工程は、言わば予備塩基洗浄工程である。
次に、SPCCであれば、10%濃度程度の硫酸水溶液を50℃として、これに数分間浸漬してエッチングするのが好ましい。これは、ミクロンオーダーの粗度を得るためのエッチング工程である。SPHC、SAPH、SPFH、SS材では、前者より硫酸水溶液の温度を10〜20℃上げて実施するのが好ましい。ハロゲン化水素酸、例えば塩酸水溶液もエッチングに適しているが、この水溶液を使用すると、酸の一部が揮発し周囲の鉄製構造物を腐食する恐れがあるほか、局所排気しても排気ガスに何らかの処理が必要になる。その意味で硫酸水溶液の使用がコスト面で好ましい。
[表面処理方法I:水洗して強制乾燥する方法]
前述した化学エッチングの後に水洗して乾燥し、電子顕微鏡写真で観察すると、高さ及び奥行きが50〜500nmで、幅が数百〜数千nmの階段が無限段に続いた形状の超微細凹凸形状でほぼ全面が覆われていることが多い。具体的には、前記の化学エッチング工程で硫酸水溶液を適当な条件で使用したとき、大きなうねりに相当する凹凸面が得られると同時に、微細で不思議な階段状の超微細凹凸形状を有する表面も同時に形成されることが多い。このようにミクロンオーダーの粗度と、超微細凹凸形状の作成が一挙に為される場合、前記エッチング後の水洗は特に十分行ってから水を切り、温度90〜100℃以上の高温で急速乾燥させたものは、そのまま使用できる。表面に変色した錆は出ず、綺麗な自然酸化層となる。
但し、自然酸化層のみでは一般環境下、特に日本国内のように高湿度、温暖環境下では、耐食性は不十分と思われる。おそらく、乾燥下に保管して接着工程にかけることが必要である上に、接着された複合体も経時的に十分な時間、接合力(接着力)を維持できるか疑問である。実際、屋根付きだが実質的に屋外に近い箇所に1ヶ月放置した後(日本国群馬県太田市末広町、2006年12月〜2007年1月)、破断試験をしたところ、やや接合力が低下していた。やはり実用的には、明確な表面安定化処理が必要のようである。
[表面処理方法II:アミン系分子の吸着を利用する方法]
前述の化学エッチングの後で水洗し、引き続いてアンモニア、ヒドラジン、又は水溶性アミン系化合物の水溶液に浸漬し、水洗し、乾燥する。アンモニア等の広義のアミン系物質は、前記エッチング工程後の鋼材に残存することが分かっている。正確に言えば、乾燥後の鋼材をXPSで分析すると窒素原子が確認される。それ故に、アンモニアやヒドラジンを含む広義のアミン類が、鋼材表面に化学吸着しているものだと理解したが、10万倍電子顕微鏡観察の結果で言えば、表面に薄い膜状の異物質が付着しているように見えるので、鉄のアミン系錯体が生じているのかもしれない。
更に具体的に言えば、アンモニア水に浸漬して得た鋼材と、ヒドラジン水溶液に浸漬して得た鋼材の10万倍の電子顕微鏡写真は、階段上に付着した薄皮状物質の形が異なるように見える。何れにせよ、これらアミン類の吸着又は反応は、水分子の吸着や鉄の水酸化物生成反応より優先しているようである。その意味で、少なくともエポキシ系接着剤との接合操作を行うまでの数日〜数週間は、水分の吸着とその反応による錆の発生を抑えられる。加えて、接着後の接着力の維持も前述した「表面処理方法I」より優れているものと予想している。少なくとも接合物を4週間放置したものでは接合力の低下はなかった。
使用するアンモニア水、ヒドラジン水溶液、又は水溶性アミンの水溶液の濃度や温度は、厳密な条件設定が殆ど必要ない。具体的には、0.5〜数%濃度の水溶液を常温下で用い、0.5〜数分浸漬し、水洗し、乾燥することで効果が得られる。工業的には、若干臭気があるが安価な1%程度濃度のアンモニア水か、臭気が小さく効果が安定的な水和ヒドラジンの1%〜数%の水溶液が好ましい。
[表面処理方法III:化成処理による方法]
前述した化学エッチングの後で水洗し、引き続いて6価クロム化合物、過マンガン酸塩、又はリン酸亜鉛系化合物等を含む酸や塩の水溶液に浸漬して水洗することで、鋼材表面がクロム酸化物、マンガン酸化物、亜鉛リン酸化物等の金属酸化物や金属リン酸化物で覆われて耐食性が向上することが知られている。これは、鉄合金、鋼材の耐食性向上の方法としてよく知られている方法であり、この方法も利用できる。ただ、真の目的は、実用上で完全と言えるような耐食性の確保ではなく、接着工程までに少なくとも支障を生じることがなく、接着後も一体化物に対してそれなりの耐食処理、例えば塗装等をしておけば、接着部分に経時的な支障を生じ難いレベルにすることである。要するに、化成皮膜を厚くした場合には、耐食性の観点からは好ましいだろうが、接合力で言えば好ましくないのである。化成皮膜は必要であるが、厚過ぎると接合力は逆に弱くなる、というのが本発明者等の見解である。
具体的な耐食の実施方法について延べる。化成処理液に三酸化クロムの希薄水溶液に浸漬して水洗、乾燥した場合、表面は酸化クロム(III)で覆われるとみられる。その表面は均一な膜状物で覆われるのではなく、10〜30nm径で同等高さの突起状物もほぼ100nm程度の距離を置いて生じていた。又、弱酸性に調整した数%濃度の過マンガン酸カリの水溶液も好ましく使用できた。
又、SPCCを、リン酸亜鉛系の水溶液に浸漬する化成処理をした表面の電子顕微鏡写真を撮った。階段状の角部付近に主に異物が付着したような形状であり、且つ階段の平らな部分にも密度は低いが10〜30nm径の小さな突起が点在した形であった。いずれも水溶液を温度45〜60℃にして、前記SPCCを0.5〜数分浸漬し、水洗し、乾燥するのが高い接合力を得るには好ましく、それ故に化成皮膜は薄い。前記した化成処理剤による変化も、倍率の低い1万倍電子顕微鏡写真では確認出来るようなものではなかった。
[表面処理方法IV:シランカップリング剤]
耐食性、耐候性を鋼材に与えるために為す処理法として、多数の発明がなされ提案されており、その中にシランカップリング剤を吸着させる方法が知られている。シランカップリング剤は、親水性基と撥水性基を分子内に持たせた化合物であり、その希薄な水溶液に鋼材を浸漬し、水洗して乾燥させると、親水性のある鋼材表面にシランカップリング剤の親水性基側が吸着し、その結果として鋼材全体をシランカップリング剤の撥水基側が覆う形となる。シランカップリング剤が吸着したままエポキシ系接着剤を作用させた場合、硬化した接着剤と鋼材表面が作る数十nmレベルのごく薄い間隙内に、水分子が浸入して来た場合でも、鋼材を覆うシランカップリング剤の撥水基群により、水分子が鋼材に近づくことが抑制される可能性がある。
これらについては、前述した表面処理II、及び表面処理IIIと同様に、表面処理Iより耐食性に優れていると予期できるが、そのことを実証するには長期試験が必要である。本発明者等が行った短時間の耐久性実験では、前述した表面処理I、表面処理II、表面処理III、及び表面処理IVの方法のどれを使用しようと、少なくとも接着剤を接合後に、約1週間(平成2007年1月:日本国群馬県太田市の屋根付き建屋内)後の破壊データ(せん断破断データ)は、初期とほぼ同等の強度だったが、4週間後では前記表面処理Iのものは悪化した。もっと長期間の放置試験を行えば、どの方法が最も実用的なのか判明できると思われる。ただ、実用面で言えば、鋼材は塗装して使用されるのが一般的であり、非塗装物試験にて候補を選び、更に塗装しての長期環境試験が必要であろう。
〔1液性熱硬化型接着剤〕
NAT理論に基づく接合では1液性熱硬化型接着剤を使用する。主液と硬化剤を混ぜて接着剤を作成して、数分〜1時間以内に塗布して常温硬化させるタイプの2液性接着剤であっても金属合金板の接着自体は可能であるが、本発明に適していない。これは、NAT理論が、液状接着剤が金属合金表面上のミクロンオーダーの粗度をなす凹部に深く侵入し、且つこの凹部内壁面にある超微細凹凸にも侵入することを根拠とするためである。2液性接着剤、例えば、2液性エポキシ樹脂接着剤では、主液と硬化剤を混ぜたその瞬間から高分子化、ゲル化が始まり、前記の超微細凹凸に侵入するには分子径が大きくなり過ぎる。且つ、現実には、2液を混合してから塗布し、金属合金表面に染込ませる作業(後述)までの時間を固定できない。これにより接着力の安定性が確保できないという問題がある。
言い換えると、一般的に2液性接着剤や2液性硬化物とみられている物であっても、硬化剤を混合してから直ぐに高分子化やゲル化が起こらない、例えば数時間は実質的に反応が進まない物であれば、実質的に1液性熱硬化型接着剤と見なせるため本発明に適しているといえる。このような接着剤としては、不飽和ポリエステル樹脂に特定の有機過酸化物を加えたものが挙げられる。本発明で使用するのは、実質的に1液性であるエポキシ樹脂系接着剤及び不飽和ポリエステル樹脂系接着剤である。以下、これらについて詳しく述べる。
(エポキシ樹脂系接着剤)
1液性熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤はエポキシ樹脂と硬化剤の混合物である。双方とも容易に入手可能であり、エポキシ樹脂については、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、多官能ポリフェノール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等が市販されている。又、エポキシ基が多官能の化合物、例えば複数の水酸基やアミノ基を有する多官能化合物やオリゴマー等と結合した多官能エポキシ樹脂も多種が市販されている。一方、エポキシ樹脂の硬化剤として使用できる物には、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族ジアミン類、脂肪族ポリアミン類等のアミン系化合物、フェノール樹脂等の複数の水酸基を有する類、及び酸無水物類等がある。この内、エポキシ樹脂と混ぜると常温で反応が始まり、そのままゲル化固化に進めるのは脂肪族アミン類であり、これは本発明に適合しない。それ故、本発明で使用すべき硬化剤は、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族ジアミン類、酸無水物類、及びフェノール樹脂から選ぶことになる。
接着剤の組成物として、上記エポキシ樹脂と硬化剤の他、有機又は無機の充填材がある。特に重要なのは無機充填材の添加であり、これは接着の強度向上や接着の安定性維持に大いに役立つ。即ち、多くの接着剤メーカーの開発研究の多くは、ポリマーや硬化剤種の選択というより無機有機の充填剤の探索と試行錯誤である。即ち、使用する充填材の種類(材料種だけでなくその平均粒径、粒径分布、その表面処理法等)、充填材の添加量、更には充填材の分散技術等は、市販品に応用されている。それ故、市販の物が多数ある1液性エポキシ樹脂系接着剤に関しては、充填剤を含めて、本発明者らは市販品を使用した。一方、後述する不飽和ポリエステル樹脂系接着剤については市販品が存在しないので、充填剤については本発明者らが知る一般的な配合をした。
1液性エポキシ樹脂系接着剤として本発明者らが使用したのは「EP106(セメダイン株式会社(日本国東京都)製)」、及び「EP160(セメダイン株式会社製)」である。前者は硬化剤にジシアンジアミド、後者はイミダゾール類を使用した物である。双方とも充填材として粒径数μm以上の物を使用しているが、その種類、平均粒径、粒径分布、表面処理の有無、等については開示されておらず、本発明者らも分析しなかった。硬化剤種から判断して「EP106」は常温下では強い接着力を示すものの高温下では接着力が大きく下がると見込まれ、一方の「EP160」はイミダゾール類が硬化剤であるので前者よりは耐熱性がある。メーカーカタログには「EP160」は耐熱性1液性エポキシ接着剤とされており、その硬化物のガラス転移点(硬化樹脂が明確に軟質化する温度であり、通常この温度付近で接着力が急減するので接着剤の耐熱性の指標とされる)は140℃とある。「EP106」は室温下で20Pa秒程度の粘度の液状物で、一方の「EP160」は室温下ではペースト状であり、50℃程度に昇温すると液状化した。接着剤が前述した超微細凹凸に侵入するためには、少なくとも塗布時に粘度10Pa秒程度以下の液体であることが必要だから、特に「EP160」では塗布後にやや昇温して金属表面に染込ませる必要がある。なお、昇温するとごく僅かでも重合反応が生じるおそれがあるので、双方とも保管は5℃以下とした冷蔵庫に入れる。
(不飽和ポリエステル樹脂系接着剤)
通常の熱硬化型不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂を含む主液と有機過酸化物からなる硬化剤の2液性物であるが、硬化剤を選べば室温下では容易にゲル化せず80〜90℃でゲル化硬化する系にもなる。それ故、この様な系の物を硬化剤混合後数時間以内に使用すれば、超微細凹凸に侵入しうるので、実質的には1液性熱硬化型接着剤として本発明に使用できる。熱硬化型不飽和ポリエステル樹脂の組成は、通常、(1)不飽和ポリエステル樹脂、(2)液状ビニルモノマー、(3)硬化剤(有機過酸化物)、(4)コバルト化合物等の硬化促進剤が含まれる。通常は、2液性として使用し、主液には(1)(2)が混合されていて、これに(3)硬化剤を加え、混合使用する。なお、熱硬化性ではあるが、硬化剤を選べば室温付近でも重合反応が開始されるので、その様な場合には硬化促進剤(4)も使用して室温下での硬化を確実にする操作を行う。但し、このような室温硬化型の組成は本発明に適していない。
不飽和ポリエステル樹脂組成物に関しては、多数の解説書が出版されているが、ここではその要点を示す。(1)の不飽和ポリエステルとしては、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和二塩基酸、無水フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、エンド酸等の飽和二塩基酸と各種グリコールを混合脱水重合して得たアルキッド樹脂と称される一群と、エポキシ樹脂やフェノール樹脂の末端や中間部にメタクリル酸等を反応させてエステルとし一体化したビニルエステル樹脂の一群がある。アルキッド樹脂は不飽和ポリエステルであるが、ビニルエステル樹脂は不飽和ジエステルの程度なので不飽和ポリエステルとは通常言わない。しかし、本発明内では、双方とも不飽和結合と複数のエステルを分子内に含むので、ビニルエステル類も不飽和ポリエステルの仲間に入れて話を進める。双方とも分子量が数千程度の固体又は高粘度液体であり、これを(2)液状ビニルモノマー(実際には多くでスチレンが使われる)に溶かすことで(1)(2)からなる主液は、やや粘性ある液体となる。
(3)の硬化剤は有機過酸化物であり、不飽和ポリエステル樹脂の硬化用に使用される有機過酸化物には、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドを初め多種あり、昇温や(4)硬化促進剤の添加で分解してラジカルを生成し重合を開始する。本発明では基本的に重合が非常に低速であり、その結果、金属合金板表面への接着剤塗布に際して接着剤組成物中にゲル(巨大分子)が少ない状態とし、接着剤組成物を、ミクロンオーダーの粗度に係る凹部壁面に形成された超微細凹凸にも1気圧程度の圧力で侵入可能とする。要するに「新NMT」「NAT」理論の基本的な考えは、液状樹脂が前記のような超微細凹凸に侵入した後で高硬度固化することが強力な接着接合を生むというものであるから、接着剤成分の早期のゲル化は接着力をそぐ。
それ故、(3)の有機過酸化物としてキックオフ温度(熱分解開始温度)の高い物、例えば、ビス(1−ヒドロキシシクロヘキシル)パーオキサイド、ヒドロヘキシヘプチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセナート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシル−パーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、等が使用できる。
これらの中でもt−ブチル−パーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシル−パーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の使用は本発明に於いて特に好ましい。換言すると、主液に硬化剤を混ぜた後で、少なくとも常温下で1時間、好ましくは3時間ゲル化が始まらず、混合液に温度計を差していたとしても液温が上がらないものが適している。その意味で前記の物が好ましいのである。これらを使用しても、混合液が60〜80℃まで昇温するとゲル化を始めるため、1液性エポキシ系接着剤やフェノール樹脂系接着剤と比較して温度管理は厳しく行う必要がある。結論として、不飽和ポリエステル系接着剤としては、前記の(1)(2)(3)の混合物を使用する。(4)の効果促進剤は必ずしも必要でない。
〔充填材について〕
接着剤に加える充填材について説明する。特に無機充填材は、接着剤硬化物の破壊理論に関係するとされている。具体的には、硬化した接着剤相のミクロンレベルの微細ヒビの連鎖成長を抑制するのに無機充填材の存在が重要である。即ち、接着剤硬化物相に強い力がかかって、応力集中箇所の局部でミクロンレベルの小さなヒビが入ったとする。その後に力が弱まり生じたヒビは小さなまま残されたとしても、その後の環境温度の変化や繰り返し加えられた弱い力によってヒビは成長する。長時間の経過でヒビはミリオーダーにまで成長し、やがて弱い力で破断する。接着剤中に分散された無機充填材が存在することで、この微細ヒビの成長を防ぐことが出来るとされている。特に、接着剤相の破壊がミリオーダーに近づいた場合にこれを封じ込める役目を有するとみられるのがエラストマー系の充填材である。金属合金板同士の接合で最も重要なことは、局所的に起こる接合破壊を止めることではなく、その周辺への連鎖を抑えることである。即ち、接着剤組成について、エラストマー系充填材を導入して最適化することが重要である。この場合、エラストマーの粒径が十数μm〜数十μmと大きくてもよい。
即ち、ヒビが成長してやがてその両端が粒径数μm〜十数μmの無機微粉と衝突すると、そこでヒビの成長が止まると推定できる。ただし、粒子径が小さきに過ぎるとヒビは無機微粉を通過するし、粒子と接着剤樹脂分との親和力がないと粒子が凝集したままで全体に良く分散せず、ヒビが伸びてズレや微小割れまで成長し易い。要するに、適した無機充填材をしっかり分散できれば実質的な接着力が向上するし接着の永続性も向上する。それ故、無機充填材は接着剤にとって非常に重要な要素であるし、その配合が適切か否かを判断するためには試行錯誤以外にないと思われる。前述したエラストマーの粒径はNAT理論に基づく表面形状(ミクロンオーダーの粗度)との比較において、相対的に大きいが、実用上は十分効果を発揮した。エラストマーは、金属合金表面と接着剤硬化相の界面近辺に存在しない場合でも、接着剤硬化相自体の弾性向上に寄与するからである。
1液性エポキシ樹脂系接着剤における無機充填材に関する技術蓄積は接着剤メーカーに多くあると見られ、本発明者らは接着剤メーカーのエポキシ系接着剤を購入して使用した。しかし不飽和ポリエステル樹脂系の接着剤は市販品がない。不飽和ポリエステル樹脂と硬化剤の組み合わせを2液性接着剤として使用すること自体は可能であるが、硬化剤に使う有機過酸化物は低温貯蔵が必要であり、また低温貯蔵しても少しづつ分解が進む。従って2液性接着剤としての販売に適していないということが理由にある。従って、充填材を含めた接着剤組成物は自作する必要がある。
従来は、どのような無機充填材が不飽和ポリエステル樹脂系接着剤に最適なのか不明であったが、無機充填材として、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、クレー(粘土)等が使用できることを確認した。無機充填材の平均粒径は5〜15mとした。本発明者らは、(1)不飽和ポリエステル樹脂、(2)スチレン、及び(3)硬化剤(t−ブチルパーオキシベンゾエート)に、無機充填材として微粉タルク「ハイミクロンHE5(竹原化学工業株式会社(日本国兵庫県)製)」を添加した。この「ハイミクロンHE5」の粉体の平均粒径は10μm程度であり、(1)+(2)の樹脂分合計に対して2〜3質量%使用した。
実際の作成法は市販のGFRP用の不飽和ポリエステル樹脂主液((1)+(2))としてアルキッド樹脂とスチレンの混合液である「リゴラック258BQTN(昭和高分子株式会社(日本国東京都)製)」や、ビニルエステル樹脂とスチレンの混合液である「リポキシR802(昭和高分子株式会社製)」を100部とり、これに微粉タルクを加えて混合し、これをサンドグラインドミル「ツエア(アシザワ・ファインテック株式会社(日本国東京都)製)」にかけて充填材を分散させた。得られた充填材入り主液に硬化剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート「パーブチルZ(日油株式会社(日本国東京都)製)」を1部加えて、よく混合し、接着剤とした。
〔接着剤塗布後の処理工程〕
前述した製造方法により得た接着剤を金属合金板の必要箇所に塗布する。筆塗りでもヘラ塗りでもよい。接着剤が常温で粘度10Pa秒程度以下の液状であれば、接着剤を塗布した金属合金板をデシケータのような減圧が可能な容器に一旦入れる。又、常温でペースト状の接着剤の場合は、接着剤を塗り付けた金属合金板を予め50〜70℃に加熱しておいたデシケータのような減圧容器に入れる。そして50mmHg程度まで減圧して数秒置き、その後空気を入れて常圧に戻すのが好ましい。更に、減圧と昇圧のサイクルを繰り返すのが好ましい。減圧下で接着剤と金属合金間の空気が抜け、常圧戻しで接着剤が金属面上の超微細凹凸に侵入し易くなる。勿論、より専門的な圧力容器を使用して減圧と加圧のサイクルを繰り返してもよい。ただし、実際の量産に当たっては、圧力容器を使用して高圧空気を使用するのは設備上も経費上もコストアップに繋がるので、気密性のある袋や減圧容器を使用して減圧/常圧戻しを数回行うのが経済的である。容器や袋から取り出し、常温以下の温度とした保管場所に置き、短時間内に次工程に入るのが好ましい。
〔金属合金板同士の接着剤接合〕
NAT理論に基づく金属合金板同士の接着接合においては、各金属合金板は、同種の金属合金又は異種の金属合金のいずれでも良い。金属合金板に接着剤を塗布し、可能であれば前記減圧/常圧戻しの工程を行い、これらを重ねてから厚い鉄板を錘として乗せ又はサイズの小さい金属合金板同士なら抱き合わせてクリップ等で留め、熱風乾燥機にて加熱硬化させる。加熱する際は、エポキシ系接着剤の場合、硬化剤によって温度域が異なる。どの様な硬化剤を用いたとしても、硬化方法として、80〜90℃、130〜140℃、160〜180℃の各温度に30分づつ置く3段法を採ることで、確実に硬化を完了することができると考えられた。勿論、市販の接着剤ではメーカー指示の温度履歴でも行ったが、前記の3段方を用いた場合との比較で、せん断破断力は変わらなかった。一方、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤では、70〜80℃、110〜120℃の各温度域に45分づつ置く2段法で加熱硬化した。これらは本発明者らが行った方法に過ぎず、特に加熱条件は限られるべきものではない。
〔金属合金板同士の圧着接合〕
金属合金板同士を、接着剤を介在させることなく強固に接合させることが可能であれば、クラッド材又はサンドイッチ材の製造工程を簡素化し、低コスト化に大きく寄与することとなる。本発明者らはアルミニウム合金A5052に前述したNAT理論に基づく表面処理を施し、銅合金C1100との圧着接合を試みた。ここでC1100は脱脂処理のみを施し、エッチングを施していない。そしてA5052の前記表面処理を施した面と、C1100の前記脱脂処理のみを施した面を面接触させるように両者を重ね合わせた。そして重ね合わせた接合体を、200℃とした熱ロールにゆっくり通して圧着させ、クラッド材を作成した。必要であれば、その際、更に熱プレスで150℃×20MPa(100cm当たり20t)程度かけると両者は爆着で接合したようなクラッド材に出来る。即ち、芯材となる側のA5052は硬度が高く、その表面にはミクロンオーダーの粗度が形成されている。一方で、皮材となる金属合金が純銅に近い軟質物であれば、強い圧力を加えることで、その表面が変形し、前記ミクロンオーダーの粗度をなしている凹部に多少でも押し込めるとの考え方である。
上記実験の結果、予期以上の安定したクラッド材が得られた。勿論、皮材となる銅合金C1100は、軟質といえ金属であるから、ミクロンオーダーの粗度に係る凹部に押し込まれる深さは限られている。しかしながら、接着剤を用いない金属合金板同士の面接合であるから、接着剤接合のような連鎖破壊はない。高温下での接合力は反って接着剤による接合よりも強い可能性がある。現状、本発明者らによる接着剤開発の目標は、1液性エポキシ接着剤を用いた場合で100℃、150℃における高い接着力の確保であるが、これは困難だからである。このように簡略された接合方法によって、高温での高い接合力が得られれば、自動車のエンジン廻り部品など使用範囲が大きく広がると思われる。
前述したように、皮材となる側の金属合金板は、比較的軟質の金属、例えば、C1020やC1100等の純銅系の銅合金、純チタン、A1085、A1050、A1100等の純アルミ系のアルミニウム合金、及び純鉄や軟鉄、の薄板材である。そして芯材となる金属合金板は、NAT理論に基づく表面処理を施した各種金属合金である。この芯材となる金属合金板の両面にNAT理論に基づく表面処理を施し、その両面を、前記軟質金属の薄板材(2枚)の脱脂処理を施した面と、各々面接合させるように挟み、その接合体をを高圧でプレス、又は高温高圧の熱プレスすることでサンドイッチ材が得られる。本発明者らが実際に行った方法はロールと熱プレス機の双方を使用する方法であった。結果として、接着剤や樹脂類の介在なしに、高い圧力で軟質金属を芯材となる金属の凹凸面に押し込むことが可能だった。当然ながらせん断破断力や引っ張り破断力は、接着剤を介在して接合した場合と比較して大きく劣るが、面接着であり実用面で支障があるとは考えられない。ここで言う実用面とは、クラッド材又はサンドイッチ材に対して、90度曲げ加工等をして、これらを構成する金属合金板同士が剥離しない状態で使用している場合をいう。クラッド材又はサンドイッチ材に一切曲げ加工等が施されず、これらを構成する金属合金板同士を引きはがす力が加わるような場合には、当然適していない。
本発明者らが提案するNAT理論とは、芯材となる金属合金板の表面に、(1)ミクロンオーダーの粗度を有し、(2)且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、(3)且つ、表層が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層となることを要するが、接着剤を介在させない圧着では、(1)と(3)の要件を満たせば良い。即ち、超微細凹凸にまで軟質の金属が侵入することはないので、(2)の要件は不要であり、また、超微細凹凸は、接合力の向上に寄与しない。従って、圧着接合を行う場合には、超微細凹凸を形成するためのエッチングは不要である。それでも金属合金板同士が、芯材側表面のミクロンオーダーの粗度に係る凹凸でかみ合っているので、一定の接合力があり、しかも面接合であるから前述した実用的なレベルには達しているのである。
更に言えば、(2)超微細凹凸にまで軟質の金属が侵入し得た場合、その後の加熱圧縮力や擦れ合って生じる局所的発熱から相間で両者間の合金相が出来る可能性もある。何れにせよ、接合した板状物を曲げた場合、その中間層に接着剤硬化物のような物がないので金属合金同士が耐えられる伸び以内の曲げであれば何処にも破壊される部位がない。この効果が実用面で大きく、実際にどのような合金組み合わせでどの程度の圧着操作をすれば良いのかを開発すべきである。本発明では、皮材となる金属合金として、軟質でこの方法が最も容易と思われた純銅系銅合金のC1100薄板を使用した例を示した。
金属合金板表面に前述したNAT理論に基づく表面処理を施し、これに一液性熱硬化型接着剤を塗布して積層材とすることで曲げ強度を補強しつつ、積層材を構成する金属合金板同士を強力に接着接合するようにした。その結果、その積層材同士を一定面積で接着接合したときのせん断破断力は、チタン合金を除く全ての金属合金種で50〜70MPaを示した。
ここでNAT理論に基づく接合は、対象となる金属合金種を選ばないので、異なる金属合金種の金属合金板を積層して、複数の金属合金種からなる積層材を作成することができる。当然に、同種の金属合金板を積層して所定の厚さとした積層材を作成することもできる。ここで、金属合金の比重を比較すると、マグネシウム合金は1.7〜1.8、アルミニウム合金は2.7付近、チタン合金は4付近、ステンレス鋼や一般鋼材は7.9付近、銅合金は8.9付近である。又、通常の環境で耐食性に優れるのはアルミニウム合金、銅合金、チタン合金、及びステンレス鋼であり、湿気や浸水環境で優れるのは銅合金、チタン合金、及びステンレス鋼であり、特に海水には銅合金、チタン合金が強い。導電性や熱伝導性で優れているのはアルミニウム合金、及び銅合金である。又、構造体として使用可能な強度を有するのはステンレス鋼、一般鋼材、その他にA7075アルミニウム合金(超々ジュラルミン)、α−β型チタン合金等である。鋼材としては、昨今、ハイテンション鋼という抗張力300〜700MPaの高張力鋼が開発されている。このハイテンション鋼も一般鋼材と同様にNAT理論に基づく表面処理を施し、異種又は同種の金属合金板を積層することができ、曲げ強度のある積層材とすることができる。
即ち、上記各金属合金種の特性を考慮し、目的に応じた特性の金属合金板を選択し、それらを組み合わせて最適な積層材を作成することができる。また、複数の金属合金板が強固に接合され、かつ、その接合力が維持される積層材を作成することができる。
NAT理論に基づく接着剤接合では、その接着力は金属合金種によってではなく接着剤性能だけで決まる。それ故、金属合金種に関し同種同士でも異種同士でも同様に接合できる。但し現状で最高の接着力が発揮される1液性エポキシ樹脂系接着剤を使用しても常温下のせん断破断力や引っ張り破断力で60MPa程度が限界である。今後は接着剤の改良が求められるだろうが、前記を現状と考えればNAT理論の効果が最も発揮されるのは板状物の面接着である。同種の金属合金板を積層すれば厚板に近い物性を有する積層材を得ることができるし、異種の金属合金板を積層すれば、芯材及び皮材を構成する金属合金板が分離し難いサンドイッチ材等が得られる。後者では、各種金属合金の有する物性を併存させることが出来る。即ち、各種金属合金の各々が有する耐食性、軽量性、強靭性、良導電性、良熱電導性を比較的自由に選択して、用途に最適な金属合金接合体を製造することが出来る。
更には、本発明によれば、NAT理論に基づく表面処理を施した金属合金板と脱脂処理のみした軟質の金属合金板とを、接着剤を用いず、圧着又は加熱圧着によって面接合させ、クラッド材を得ることができる。これにより、積層材の製造工程を劇的に低コスト化、簡素化することが可能になる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。測定等に使用した機器類は以下に示したものである。
(a)X線表面観察(XPS観察)
数μm径の表面を深さ1〜2nmまでの範囲で構成元素を観察する形式のESCA「AXIS−Nova(クレイトス(米国)/株式会社 島津製作所(日本国京都府)製)」を使用した。
(b)電子顕微鏡観察
SEM型の電子顕微鏡「S−4800(株式会社 日立製作所製)」及び「JSM−6700F(日本電子株式会社(日本国東京都)製)」を使用し1〜2KVにて観察した。
(c)走査型プローブ顕微鏡観察
「SPM−9600(株式会社 島津製作所製)」を使用した。
(d)X線回折分析(XRD分析)
「XRD−6100(株式会社 島津製作所製)」を使用した。
(e)複合体の接合強度の測定
引っ張り試験機「MODEL−1323(アイコーエンジニアリング株式会社(日本国大阪府)製)」を使用し、引っ張り速度10mm/分でせん断破断力を測定した。
次に積層材を構成する金属合金板の表面処理について説明する。
[実験例1](アルミニウム合金(A7075)の表面処理)
市販の厚さ3mmのアルミニウム合金板材「A7075」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のA7075片を多数作成した。槽の水に市販のアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社(日本国東京都)製)」を投入して、60℃、濃度7.5%の水溶液とした。これに前記A7075片を7分浸漬し、よく水洗した。続いて別の槽に40℃とした1%濃度の塩酸水溶液を用意し、これに前記A7075片を1分浸漬し、よく水洗した。次いで別の槽に40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに前記A7075片を4分浸漬し、よく水洗した。続いて別の槽に40℃とした3%濃度の硝酸水溶液を用意し、これに前記A7075片を1分浸漬し、水洗した。次いで別の槽に60℃とした一水和ヒドラジンを3.5%含む水溶液を用意し、これに前記A7075片を2分浸漬し、水洗した。次いで5%濃度の過酸化水素水溶液を40℃とし、これに前記A7075片を5分浸漬し、水洗した。次いで67℃にした温風乾燥機に前記A7075片を15分入れて乾燥した。
乾燥後、アルミ箔で前記A7075片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。同じ処理をした1個を電子顕微鏡で観察したところ、40〜100nm径の凹部で覆われていることが分かった。電子顕微鏡を1万倍、10万倍として観察したときの写真を図3に示した。又、走査型プローブ顕微鏡にかけて粗度データを得た。これによると山谷平均間隔(RSm)は3〜4μm、最大高さ粗さ(Rz)は1〜2μmであった。
[実験例2](アルミニウム合金(A5052)の表面処理)
市販の厚さ1.6mmのアルミニウム合金板材「A5052」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のA5052片を多数作成した。槽の水に市販のアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を投入して、60℃、濃度7.5%の水溶液とした。これに前記A5052片を7分浸漬し、よく水洗した。続いて別の槽に40℃とした1%濃度の塩酸水溶液を用意し、これに前記A5052片を1分浸漬し、よく水洗した。次いで別の槽に40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに前記A5052片を2分浸漬し、よく水洗した。続いて別の槽に40℃とした3%濃度の硝酸水溶液を用意し、これに前記A5052片を1分浸漬し、よく水洗した。次いで別の槽に60℃とした一水和ヒドラジンを3.5%含む水溶液を用意し、これに前記A5052片を2分浸漬し、水洗した。次いで67℃にした温風乾燥機に前記A5052片を15分入れて乾燥した。
乾燥後、アルミ箔で前記A5052片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。同じ処理をした1個を電子顕微鏡で観察したところ、30〜100nm径の凹部で覆われていることが分かった。電子顕微鏡を1万倍、10万倍として観察したときの写真を図4に示した。又、走査型プローブ顕微鏡にかけて粗度データを得た。これによると山谷平均間隔(RSm)は1〜2μm、最大高さ粗さ(Rz)は0.3〜0.5μmであった。
[実験例3](マグネシウム合金の表面処理)
市販の厚さ1mmのマグネシウム合金板材「AZ31B」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のAZ31B片を多数作成した。槽の水に市販のマグネシウム合金用脱脂剤「クリーナー160(メルテックス株式会社製)」を投入して、65℃、濃度7.5%の水溶液とした。これに前記AZ31B片を5分浸漬し、よく水洗した。続いて別の槽に40℃とした1%濃度の水和クエン酸水溶液を用意し、これに前記AZ31B片を6分浸漬し、よく水洗した。次いで別の槽に65℃とした1%濃度の炭酸ナトリウムと1%濃度の炭酸水素ナトリウムを含む水溶液を用意し、これに前記AZ31B片を5分浸漬し、よく水洗した。続いて別の槽に65℃とした15%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに前記AZ31B片を5分浸漬し、水洗した。次いで別の槽に40℃とした0.25%濃度の水和クエン酸水溶液を用意し、これに前記AZ31B片を1分浸漬し、水洗した。次いで過マンガン酸カリを2%、酢酸を1%、及び水和酢酸ナトリウムを0.5%含む水溶液(45℃)を用意し、これに前記AZ31B片を1分浸漬し、15秒水洗した後、90℃にした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。
乾燥後、アルミ箔で前記AZ31B片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。同じ処理をした1個を電子顕微鏡で観察したところ、5〜10nm径の棒状結晶が複雑に絡み合っている箇所や、それらの塊が100nm径程度の集まりとなり、その集まりが面を作っている超微細な凹凸形状で覆われている箇所があった。電子顕微鏡を10万倍として観察したときの写真を図5、図6に示した。又、走査型プローブ顕微鏡で走査して粗度観測を行ったところJISで言う山谷平均間隔、即ち凹凸周期の平均値(RSm)が2〜3μm、最大高さ粗さ(Rz)が1〜1.5μmであった。
[実験例4](銅合金(C1100)の表面処理)
市販の厚さ1mmの純銅系銅合金であるタフピッチ銅板材「C1100」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のC1100片を多数作成した。槽に市販のアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を7.5%含む水溶液(60℃)を用意し、これに前記C1100片を5分浸漬して水洗した。次いで40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液に前記C1100片を1分浸漬して水洗することにより予備塩基洗浄した。次いで25℃とした銅合金用エッチング材「CB−5002(メック株式会社(日本国兵庫県)製)」を20%、30%過酸化水素を18%含む水溶液を用意し、これに前記C1100片を10分浸漬し、水洗した。
次いで別の槽に苛性ソーダを10%、亜塩素酸ナトリウムを5%含む水溶液(65℃)を酸化用水溶液として用意し、前記C1100片を1分浸漬し、よく水洗した。次いで前記C1100片を前述したエッチング用槽に1分浸漬して水洗した後、前述した酸化用水溶液に1分浸漬し、よく水洗した。次いで前記C1100片を、90℃とした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。乾燥後、アルミ箔で前記C1100片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。同じ処理をした1個を走査型プローブ顕微鏡にかけた。その結果、JISで言う山谷平均間隔(RSm)は3〜7μm、最大高さ粗さ(Rz)は3〜5μmであった。又、10万倍電子顕微鏡で観察したところ、直径又は長径短径の平均が10〜150nmの孔開口部又は凹部が30〜300nmの非定期な間隔で全面に存在する超微細凹凸形状でほぼ全面が覆われていた。電子顕微鏡を1万倍、10万倍として観察したときの写真を図8に示した。
[実験例5](銅合金(C5191)の表面処理)
市販の厚さ0.8mmのリン青銅板材「C5191」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のC5191片を多数作成した。槽に市販のアルミ合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を7.5%含む水溶液(60℃)を脱脂用水溶液として用意し、これに前記C5191片を5分浸漬して脱脂し、よく水洗した。続いて別の槽に銅合金用エッチング材「CB5002(メック株式会社製)」を20%、30%過酸化水素を18%含む水溶液(25℃)を用意し、これに前記C5191片を15分浸漬し水洗した。次いで別の槽に苛性ソーダを10%、亜塩素酸ナトリウムを5%含む水溶液を酸化用水溶液(65℃)として用意し、これに前記C5191片を1分浸漬し、よく水洗した。
次いで前記C5191片を、再び前述したエッチング液に1分浸漬し、水洗した後、再度前述した酸化用水溶液に1分浸漬し、水洗した。次いで前記C5191片を、90℃にした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。アルミニウム箔に包んで保管した。同じ処理をした1個を、電子顕微鏡にて1万倍、10万倍として観察したときの写真を図9に示した。電子顕微鏡を10万倍としたときの観察で、直径又は長径短径の平均が10〜200nmの凸部が混ざり合って全面に存在する超微細凹凸形状であり、純銅系であるタフピッチ銅の微細構造とは全く異なった形状であった。又、走査型プローブ顕微鏡にかけた。その結果、JISで言う山谷平均間隔(RSm)は1〜3μm、最大高さ粗さ(Rz)は0.3〜0.4μmであった。
[実験例6](銅合金(KFC)の表面処理)
市販の厚さ0.7mmの鉄含有銅合金板材「KFC(株式会社 神戸製鋼所製)」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のKFC片を多数作成した。槽に市販のアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を7.5%含む水溶液(60℃)を用意し、これに前記KFC片を5分浸漬して水洗し、次いで40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液に1分浸漬して水洗することにより予備塩基洗浄した。次いで、銅合金用エッチング材「CB5002(メック株式会社製)」を20%、30%過酸化水素を18%含む水溶液(25℃)を用意し、これに前記KFC片を8分浸漬し、水洗した。
次いで別の槽に苛性ソーダを10%、亜塩素酸ナトリウムを5%含む水溶液(65℃)を酸化用水溶液として用意し、これに前記KFC片を1分浸漬し、よく水洗した。次いで、前述したエッチング用槽に前記KFC片を1分浸漬して水洗した後、前述した酸化用水溶液に1分浸漬し、よく水洗した。次いで前記KFC片を、90℃とした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。乾燥後、前記KFC片をアルミ箔でまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。同じ処理をした1個を走査型プローブ顕微鏡にかけた。その結果、JISで言う山谷平均間隔(RSm)は1〜3μm、最大高さ粗さ(Rz)は0.3〜0.5μmであった。又、10万倍電子顕微鏡観察したところ、直径又は長径短径の平均が10〜200nmの凸部が混ざり合って全面に存在する超微細凹凸形状で全面が覆われていた。電子顕微鏡を1万倍、10万倍として観察したときの写真を図10に示した。
[実験例7](銅合金(KLF5)の表面処理)
市販の厚さ0.7mmの特殊銅合金板材「KLF5(株式会社 神戸製鋼所製)」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のKLF5片を多数作成した。槽に市販のアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を7.5%含む水溶液(60℃)を用意し、これに前記KLF5片を5分浸漬して水洗し、次いで40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液に1分浸漬して水洗することにより予備塩基洗浄した。次いで銅合金用エッチング材「CB5002(メック株式会社製)」を20%、30%過酸化水素を18%含む水溶液(25℃)を用意し、これに前記KLF5片を8分浸漬し、水洗した。
次いで別の槽に苛性ソーダを10%、亜塩素酸ナトリウムを5%含む水溶液(65℃)を酸化用水溶液として用意し、これに前記KLF5片を1分浸漬してよく水洗した。次いで前述したエッチング用槽に前記KLF5片を1分浸漬して水洗した後、前述した酸化用水溶液に1分浸漬し、よく水洗した。次いで前記KLF5片を、90℃とした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。乾燥後、アルミ箔で前記KLF5片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。同じ処理をした1個を走査型プローブ顕微鏡にかけた。その結果、JISで言う山谷平均間隔(RSm)は1〜3μm、最大高さ粗さ(Rz)は0.3〜0.5μmであった。又、10万倍電子顕微鏡観察したところ、直径10〜20nmの粒径物及び50〜150nm径の不定多角形状物が混ざり合って積み重なった形状、言わば溶岩台地斜面ガラ場状の超微細凹凸形状でほぼ全面が覆われていた。電子顕微鏡を1万倍、10万倍として観察したときの写真を図11に示す。
[実験例8](純チタン合金の表面処理)
市販の厚さ1mmの純チタン型チタン合金板材「KS40(株式会社 神戸製鋼所製)」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のKS40片を多数作成した。槽に市販のアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を7.5%含む水溶液(60℃)を用意し、これを脱脂用水溶液とした。この脱脂用水溶液に前記KS40片を5分浸漬して脱脂し、よく水洗した。続いて別の槽に1水素2弗化アンモニウムを40%含む万能エッチング材「KA−3(株式会社 金属化工技術研究所(日本国東京都)製)」を2%含む水溶液(60℃)を用意し、これに前記KS40片を3分浸漬し、イオン交換水でよく水洗した。次いで、前記KS40片を3%濃度の硝酸水溶液に1分浸漬し、水洗した後、90℃とした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。
乾燥後、アルミ箔で前記KS40片ををまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。同じ処理をした1個を電子顕微鏡、及び走査型プローブ顕微鏡にかけ観察した。電子顕微鏡での観察から、幅と高さが10〜数百nmで長さが10nm以上(殆どは数百nm)の湾曲した連山状突起が間隔周期10〜数百nmで面上に林立している形状の超微細凹凸面を有していることが分かった。電子顕微鏡を1万倍、10万倍として観察したときの写真を図12に示した。又、走査型プローブ顕微鏡の観察で、山谷平均間隔(RSm)は1〜3μm、最高高さ粗さ(Rz)は0.8〜1.5μmであった。又、XPSによる分析から表面には酸素とチタンが大量に観察され、少量の炭素が観察された。これらから表層は酸化チタンが主成分であることが分かり、しかも暗色であることから3価のチタンの酸化物と推定された。
[実験例9](α−β型チタン合金の表面処理)
市販の厚さ1mmのα−β型チタン合金板材「KSTi−9(株式会社 神戸製鋼所製)」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のKSTi−9片を多数作成した。槽に市販のアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を7.5%含む水溶液(60℃)を用意し、これを脱脂用水溶液とした。この脱脂用水溶液に前記KSTi−9片を5分浸漬して脱脂し、よく水洗した。次いで別の槽に苛性ソーダ1.5%濃度の水溶液(40℃)を用意し、これに前記KSTi−9片を1分浸漬し、水洗した。次いで別の槽に、市販汎用エッチング試薬「KA−3(株式会社 金属化工技術研究所製)」を2重量%溶解した水溶液(60℃)を用意し、これに前記KSTi−9片を3分浸漬し、イオン交換水でよく水洗した。ここで前記KSTi−9片には黒色のスマットが付着していたので、40℃とした3%濃度の硝酸水溶液に3分浸漬し、次いで超音波を効かしたイオン交換水に5分浸漬してスマットを落とし、再び3%硝酸水溶液に0.5分浸漬し、水洗した。次いで前記KSTi−9片を、90℃とした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。得られたKSTi−9片に金属光沢はなく暗褐色であった。
乾燥後、アルミ箔で前記KSTi−9片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。同じ処理をした1個を電子顕微鏡、及び走査型プローブ顕微鏡で観察した。電子顕微鏡を1万倍、10万倍として観察したときの写真を図13に示す。その様子は実験例8の電顕観察写真図12に酷似した部分に加え、表現が難しい枯葉状の部分が多く見られた。又、走査型プローブ顕微鏡による走査解析によると、山谷平均間隔RSmは4〜6μm、最大高さ粗さRzは1〜2μmと出た。
[実験例10](ステンレス鋼の表面処理)
市販の厚さ1mmのステンレス鋼板材「SUS304」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のSUS304片を多数作成した。槽に市販のアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を7.5%含む水溶液(60℃)を用意し、これを脱脂用水溶液とした。この脱脂用水溶液に前記SUS304片を5分浸漬して脱脂し、よく水洗した。次いで別の槽に1水素2弗化アンモニウムを1%と98%硫酸を5%含む水溶液(65℃)を用意し、これに前記SUS304片を4分浸漬し、イオン交換水でよく水洗した。次いで、前記SUS304片を、40℃とした3%濃度の硝酸水溶液に3分浸漬し、水洗した後、90℃とした温風乾燥機に15分入れて乾燥した。
乾燥後、アルミ箔で前記SUS304片をまとめて包み、更にこれをポリ袋に入れて封じ保管した。同じ処理をした1個を電子顕微鏡、及び走査型プローブ顕微鏡で観察した。電子顕微鏡を1万倍、10万倍として観察したときの写真を図14に示す。電子顕微鏡による観察では、表面が、直径20〜70nmの粒径物や不定多角形状物が積み重なった形状、言わば溶岩台地斜面ガラ場状、の超微細凹凸形状で覆われていた。また、走査型プローブ顕微鏡の走査解析で、山谷平均間隔(RSm)は1〜2μmであり、その最大高さ粗さ(Rz)は0.3〜0.4μmであった。更に別の1個をXPS分析にかけた。このXPS分析から表面には酸素と鉄が大量に、又、少量のニッケル、クロム、炭素、ごく少量のモリブデン、珪素が観察された。これらから表層は金属酸化物が主成分であることが分かった。この分析パターンはエッチング前のSUS304と殆ど同じであった。
〔実験例11〕(一般鋼材(SPCC)の表面処理)
市販の厚さ1.6mmの冷間圧延鋼板材「SPCC」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のSPCC片を多数作成した。各SPCC片の端部に穴を開け、その穴に塩化ビニルでコートした銅線を通し、SPCC片同士が互いに重ならないように銅線を曲げて加工し、全てを同時にぶら下げられるようにした。槽にアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」7.5%を含む水溶液(60℃)を用意し、これに前記SPCC片を5分浸漬し、水道水(群馬県太田市)で水洗した。次いで別の槽に40℃とした1.5%苛性ソーダ水溶液を用意し、これに前記SPCC片を1分浸漬し、水洗した。次いで別の槽に98%硫酸を10%含む水溶液(50℃)を用意し、これに前記SPCC片を6分浸漬し、イオン交換水で十分に水洗した。次いで前記SPCC片を、25℃とした1%濃度のアンモニア水に1分浸漬して水洗した後、2%濃度の過マンガン酸カリ、1%濃度の酢酸、0.5%濃度の水和酢酸ナトリウムを含む水溶液(45℃)に1分浸漬して十分に水洗した。次いで、前記SPCC片を90℃とした温風乾燥機内に15分入れて乾燥した。
同じ処理をしたSPCC片の10万倍電子顕微鏡による観察結果を図15に示した。この写真から、高さ及び奥行きが80〜200nmで幅が数百〜数千nmの階段が無限に続いた形状の超微細凹凸形状で、ほぼ全面が覆われていることが分かる。パーライト構造が剥き出しになった様子であり、化成処理層はごく薄いことが分かる。一方、走査型プローブ顕微鏡による走査解析では、山谷平均間隔RSmが1〜3μm、最大高さ粗さRzが0.3〜1.0μmの粗度が観察された。
〔実験例12〕(一般鋼材(SPHC)の表面処理)
市販の厚さ1.6mmの熱間圧延鋼板材「SPHC」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のSPHC片を多数作成した。各SPHC片の端部に穴を開け、その穴に塩化ビニルでコートした銅線を通し、SPHC片同士が互いに重ならないように銅線を曲げて加工し、全てを同時にぶら下げられるようにした。槽にアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」7.5%を含む水溶液(60℃)を用意し、これに前記SPHC片を5分浸漬し、水道水(群馬県太田市)で水洗した。次いで別の槽に40℃とした1.5%苛性ソーダ水溶液を用意し、これに前記SPHC片を1分浸漬し、水洗した。次いで別の槽に98%硫酸を10%と1水素2弗化アンモニウム1%を含む水溶液(65℃)を用意し、これに前記SPHC片を2分浸漬し、イオン交換水で十分に水洗した。次いで、前記SPHC片を、25℃とした1%濃度のアンモニア水に1分浸漬して水洗した。次いで、前記SPHC片を、80%正リン酸を1.5%、亜鉛華を0.21%、珪弗化ナトリウムを0.16%、塩基性炭酸ニッケルを0.23%含む水溶液(55℃)に1分浸漬して十分に水洗した。次いで、前記SPHC片を90℃とした温風乾燥機内に15分入れて乾燥した。
得られたSPHC片の10万倍電子顕微鏡による観察結果から、高さ及び奥行きが80〜500nmで幅が数百〜数万nmの階段が無限に続いた形状の超微細凹凸形状でほぼ全面が覆われていることが分かり、これもやはりパーライト構造であった。一方、走査型プローブ顕微鏡による走査解析では山谷平均間隔RSmが1〜3μm、最大高さ粗さRzが0.3〜1.0μmの粗度が観察された。
〔実験例12’〕(一般鋼材(SAPH440)の表面処理)
また、市販の厚さ1.6mmの自動車構造用熱間圧延鋼板材「SAPH440」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のSAPH440片を多数作成した。このSAPH440片に対しても、上記SPHC片と全く同様の表面処理を施した。表面処理後のSAPH440片の表面形状は、SPHC片と同様であった。
〔実験例13〕(超高張力鋼材(DP590N)の表面処理)
市販の厚さ1mmの超高張力鋼板材「DP590N(新日本製鐵株式会社(日本国東京都)製)」を入手し、切断して長方形(45mm×18mm)のDP590N片を多数作成した。各DP590N片の端部に穴を開け、その穴に塩化ビニルでコートした銅線を通し、DP590N片同士が互いに重ならないように銅線を曲げて加工し、全てを同時にぶら下げられるようにした。槽にアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」7.5%を含む水溶液(60℃)を用意し、これに前記DP590N片を5分浸漬し、水道水(群馬県太田市)で水洗した。次いで別の槽に40℃とした1.5%苛性ソーダ水溶液を用意し、これに前記DP590N片を1分浸漬し、水洗した。次いで別の槽に98%硫酸を10%と1水素2弗化アンモニウム1%を含む水溶液(65℃)を用意し、これに前記DP590N片を2分浸漬し、イオン交換水で十分に水洗した。次いで、前記DP590N片を、25℃とした1%濃度のアンモニア水に1分浸漬して水洗した。次いで、前記DP590N片を、80%正リン酸を1.5%、亜鉛華を0.21%、珪弗化ナトリウムを0.16%、塩基性炭酸ニッケルを0.23%含む水溶液(55℃)に2分浸漬して十分に水洗した。次いで、前記DP590N片を、90℃とした温風乾燥機内に15分入れて乾燥した。
[実験例14](接着剤の作成)
市販の1液性エポキシ接着剤「EP106NL(セメダイン株式会社製)」、及び「EP160(セメダイン株式会社製)」、多層型カーボンナノチューブ「MCNT(ナノカーボンテクノロジーズ株式会社(日本国東京都)製)」、熱可塑性樹脂であるポリエーテルスルホンの微粉砕物「スミカエクセル4100MP(住友化学株式会社(日本国)製)」を入手した。エポキシ接着剤「EP106NL」100部に対して前記「MCNT」を0.3部取り、よく混ぜ、40℃以上にならぬよう冷風をかけて冷やしながら、ジルコニアビーズ0.5mmを80容積%充填したサンドグラインドミル「ツエア(アシザワ・ファインテック株式会社製)」にかけて粉砕分散させた。この際の周速は、11.4m/秒であり、0.5時間かけて破砕分散させた。この方法でCNT0.3%入りの「EP106NL」を得た。これを5℃とした冷蔵庫に保管した。約1週間後に、前記の接着剤100部に再び「EP106NL」を加え更に「スミカエクセル4100MP」を加えて自動乳鉢でよく混合した。更にこの混合物を前記サンドグラインドミル「ツエア」にかけた。この際の周速は、11.4m/秒であり、1時間かけて破壊分散させた。その結果として得られた接着剤を以下「EP106−A」と称する。この「EP106−A」は、「MCNT」を0.1質量%、「スミカエクセル4100MP」を2質量%含む物である。
[実験例15](接着実験1)
市販の接着剤「EP106NL(セメダイン株式会社製)」を使用して、実験例1で得たA7075片同士を接着接合した。これを、せん断破断力測定用の試験試料とする。即ち、実験例1に示した方法で45mm×18mm×3mm厚のA7075片を6個作成し、このA7075片の端部に「EP106NL」を薄く塗り付けた。これを大型デシケータに入れて蓋をし、真空ポンプを使用して内部を30mmHg以下に減圧にした。減圧下に30秒以上置き、常圧に戻した。この減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、その後にデシケータを開いてA7075片を取り出した。そして接着剤塗布面同士を突き合わせ接着面積が0.6〜0.7cmになるようにしてからクリップ2個で固定した。この方法によってA7075片の対を3組作成した。これを90℃にセットしておいた熱風乾燥機内に入れた。90℃に40分保持した後に135℃に昇温し、この温度に40分保持した。その後に更に165℃に昇温して40分保持し、熱風乾燥機の電源を切って翌日まで放冷した。これにより、図1に示すように、A7075片同士の接着接合体である試験試料1が完成した。この図に示すように、2枚のA7075アルミニウム合金片10が相互に面端部で接着接合されている。図1の斜線部分で示される範囲が接着面積に相当する。このようにして得た得た3組の試験試料について、常温で引っ張り破断試験した。せん断破断時の力をその後の測定で出た接着面積で除してせん断破断力を算出した。このせん断破断力について3組の平均値を算出したところ69.1MPaであった。
[実験例16](接着実験2)
実験例14で得た接着剤「EP106−A」を使用して実験例1で得たA7075片同士を接着接合した。これを、せん断破断力測定用の試験試料とする。即ち、使用した接着剤が「EP106−A」である他は、実験例15と全く同様に実験を行い、3組の試験試料のせん断破断力を測定した。その結果、せん断破断力の平均値は77.1MPaであった。
[実験例17](接着実験3)
市販の接着剤「EP160(セメダイン株式会社製)」を使用して、実験例1〜13の表面処理を施した金属合金片同士を接着接合した。これをせん断破断力測定用の試験試料とする。A7075片同士の接着接合方法を以下に示す。実験例1に示した表面処理を施した45mm×18mm×3mm厚のA7075片を18個作成し、このA7075片の端部に「EP160」を薄く塗り付けた。これを予め70℃の温風乾燥機内に1時間入れて暖めておいた大型デシケータに入れて蓋をし、真空ポンプを使用して内部を30mmHg以下に減圧にした。減圧下に30秒以上置き、常圧に戻した。この減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、その後にデシケータを開いてA7075片を取り出した。そして接着剤塗布面同士を突き合わせ接着面積が0.6〜0.7cmになるようにしてからクリップ2個で固定した。この方法によってA7075片の対を9組作成した。これを90℃にセットしておいた熱風乾燥機内に入れた。90℃に40分保持した後に135℃に昇温し、この温度に40分保持した。その後に更に165℃に昇温して40分保持し、熱風乾燥機の電源を切って翌日まで放冷した。
上記A7075片と同じ方法で、実験例2、3、6、8、9、10、及び12’の表面処理を施した金属合金片同士を「EP160」で接着接合した。これにより、A7075片、A5052片、AZ31B片、KFC片、KS40片、KSTi−9片、SUS304片、及びSAPH440片の、各種金属合金毎に9組の試験試料を得た。各種金属合金について、試験試料9個のうち、3個を常温で、3個を100℃下で、残り3個を150℃下で引っ張り破断試験した。せん断破断時の力をその後の測定で出た接着面積で除してせん断破断力を算出し、平均値を出した。その結果を図16に示す。
図16に示すように、A5052、A7075、及びSAPH440の接合体は、常温(25℃)でのせん断破断力が50〜60MPaであった。また、SUS304の接合体は、常温でのせん断破断力が50MPa弱であった。一方、KFC、KS40、KSTi−9、及びAZ31Bの接合体は、常温でのせん断破断力が30MPa付近であり、前述の金属合金より低かった。この常温におけるせん断破断力のみを比較した場合、その差は金属合金種が異なることに起因するとも考えられる。しかし100℃、150℃でのせん断破断力を比較すると、金属合金種の相違による差が常温ほどには大きくないため、必ずしもせん断破断力の差は金属合金種の相違によるものではないと考えられる。図16から把握されるように、100℃以上の温度でのせん断破断力は、上記の金属合金種で似た値になり、100℃では26〜37MPaに収束し、150℃では9〜15MPaに収束した。
結局、30MPa以上のせん断破断力を示す領域では、金属合金種間におけるバラツキが存在するが、これは各金属合金種の曲げ強度の差違によるものであると本発明者らは推定した。AZ31Bは強度が弱い上に、厚さは1mmである。同様に、KFCも強度は十分高いとは言えない上に、厚さは0.7mmである。また、チタン合金板KS40及びKSTi−9の双方とも、厚さは1mmであった。これらについては、これ以上の厚さのものが一般向けに市販されておらず、本発明者らは同じ厚さでの比較を行っていなかったのだが、それでも、せん断破断力の測定に関しては接着面積をかなり小さく絞っていたので、厚さに依存することなく、本来のせん断破断力の値が得られると予想していたのである。
本発明者らは、各金属合金種について本来のせん断破断力の値を得るために、試験片の大きさ自体は現行の45mm×18mmであって、接着面積が0.7cm程度で良いと判断している。しかしながら、この図16の結果から、金属合金板の厚さは少なくとも3mm程度は必要であると判断した。但し、強度が抜き出でている一般鋼材SAPH440に関しては、現行の厚さ1.6mmでも十分と考えた。
[実験例18](KFC積層材による接着実験)
実験例6で示した表面処理を施した厚さ0.7mmのKFC片を24枚用意した。各KFC片の片面全面に接着剤「EP160」を塗り、予め70℃の温風乾燥機内に1時間入れて暖めておいたデシケータに入れて蓋をし、真空ポンプを使用して実験例17と同様に減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、その後にデシケータを開いてKFC片を取り出した。取り出したKFC片の接着剤塗布面同士を面接合させて、KFC片2枚を積層した。これにより積層材を12組得た。次いで、各積層材(KFC片2枚からなる積層材)の片面全面に再び「EP160」を塗り、同様にデシケータを使用して減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、接着剤塗布面同士を面接合させて、2組の積層材を積層した。これによりKFC片4枚からなる積層材を作成した。即ち、厚さ2.8mm(0.7mm×4)のKFC積層材を6組得たことになる。
さらに各KFC積層材の端部に「EP160」を塗り、デシケータを使用して減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、接着面積が0.6〜0.7cmになるように接着剤塗布部同士を接着接合させた。この接合体を3組作成し、各接合体全体をクリップ6個で固定した。これらの接合体を90℃にセットしておいた熱風乾燥機内に入れた。90℃に40分保持した後に135℃に昇温し、この温度に40分保持した。その後に更に165℃に昇温して40分保持し、熱風乾燥機の電源を切って翌日まで放冷した。これにより、図2に示すように、KFC積層材21同士の接着接合体である試験試料2を得た。この図に示すように、2つのKFC積層材21が相互に面端部で接着接合されている。そして各KFC積層材21は、4枚のKFC片20から構成されている。得られた3組の試験試料について、接着実験3で示したKFC片同士の接合体と同様にせん断破断力を測定した。3組の平均のせん断破断力は平均51MPaであった。
[実験例19](A5052積層材による接着実験)
実験例2で示した表面処理を施した厚さ1.6mmのA5052片を12枚用意した。実験例18と全く同じ方法で、各A5052片の片面全面に接着剤「EP160」を塗り、デシケータによる減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返した。そのA5052片の接着剤塗布面同士を面接合させて、A5052片2枚を積層し、A5052積層材を作成した。即ち、厚さ3.2mm(1.6mm×2)のA5052積層材を6組得たことになる。さらにA5052積層材同士を、実験例18と同様に、接着面積が0.6〜0.7cmになるように接着接合し、3組の接合体を得た。これらについて、せん断破断力を測定した結果、3組の平均のせん断破断力は54MPaであった。
[実験例20](SUS304積層材による接着実験)
実験例10で示した表面処理を施した厚さ1mmのSUS304片を12枚用意した。実験例18と全く同じ方法で、各SUS304片の片面全面に接着剤「EP160」を塗り、デシケータによる減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返した。そのSUS304片の接着剤塗布面同士を面接合させて、SUS304片2枚を積層し、SUS304積層材を作成した。即ち、厚さ2.0mm(1.0mm×2)のSUS304積層材を6組得たことになる。さらにSUS304積層材同士を、実験例18と同様に、接着面積が0.6〜0.7cmになるように接着接合し、3組の接合体を得た。これらについて、せん断破断力を測定した結果、3組の平均のせん断破断力は58MPaであった。
[実験例21](AZ31B/SPCC積層材による接着実験)
実験例3で示した表面処理を施した厚さ1mmのAZ31B片と、実験例11で示した表面処理を施した厚さ1.6mmのSPCC片を各々6枚ずつ用意した。各AZ31B片の片面全面、各SPCC片の片面全面に接着剤「EP160」を塗り、予め70℃の温風乾燥機内に1時間入れて暖めておいたデシケータに入れて蓋をし、真空ポンプを使用して実験例17と同様に減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、その後にデシケータを開いてAZ31B片及びSPCC片を取り出した。取り出したAZ31B片及びSPCC片の接着剤塗布面同士を面接合させて積層材を作成した。これにより、厚さ2.6mm(1.0mm+1.6mm)のAZ31B/SPCC積層材を6組得たことになる。そして、この積層材では、AZ31Bの曲げ強度をSPCCによって強化していることになる。
さらに各積層材のAZ31B面の端部に「EP160」を塗り、デシケータを使用して減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、接着面積が0.6〜0.7cmになるように接着剤塗布部同士を接着接合させた。このAZ31B面同士が上記面積で接着接合されている接合体を3組作成し、各接合体全体をクリップ6個で固定した。これらの接合体を90℃にセットしておいた熱風乾燥機内に入れた。90℃に40分保持した後に135℃に昇温し、この温度に40分保持した。その後に更に165℃に昇温して40分保持し、熱風乾燥機の電源を切って翌日まで放冷した。即ち、AZ31B/SPCC積層材同士の接合体を3組得た。これらについて、せん断破断力を測定した。3組の平均のせん断破断力は48MPaであった。
[実験例22](KS40/SPHC積層材による接着実験)
実験例8で示した表面処理を施した厚さ1mmのKS40片と、実験例12で示した表面処理を施した厚さ1.6mmのSPHC片を各々6枚ずつ用意した。各KS40片の片面全面、各SPHC片の片面全面に接着剤「EP160」を塗り、予め70℃の温風乾燥機内に1時間入れて暖めておいたデシケータに入れて蓋をし、真空ポンプを使用して実験例17と同様に減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、その後にデシケータを開いてKS40片及びSPHC片を取り出した。取り出したKS40片及びSPHC片の接着剤塗布面同士を面接合させて積層材を作成した。これにより、厚さ2.6mm(1.0mm+1.6mm)のKS40/SPHC積層材を6組得たことになる。そして、この積層材では、KS40の曲げ強度をSPHCによって強化していることになる。
さらに各積層材のKS40面の端部に「EP160」を塗り、デシケータを使用して減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、接着面積が0.6〜0.7cmになるように接着剤塗布部同士を接着接合させた。このKS40面同士が上記面積で接着接合されている接合体を3組作成し、各接合体全体をクリップ6個で固定した。これらの接合体を90℃にセットしておいた熱風乾燥機内に入れた。90℃に40分保持した後に135℃に昇温し、この温度に40分保持した。その後に更に165℃に昇温して40分保持し、熱風乾燥機の電源を切って翌日まで放冷した。即ち、KS40/SPHC積層材同士の接合体を3組得た。これらについて、せん断破断力を測定した。3組の平均のせん断破断力は40MPaであった。
構造強度が強い厚さ1.6mmのA5052、厚さ3mmのA7075、厚さ1.6mmの一般鋼材(SAPH440)の接合体のせん断破断力が50〜60MPaであるから、これらと比較して明らかに低い。また、他の積層材(KFC積層材、A5052積層材、SUS304積層材、AZ31B/SPCC積層材)の接合体と比較しても低いといえる。これは、KS40の表面に形成されている超微細凹凸が、前述したNAT理論の第2の条件には合致しているものの、好ましい周期(10〜300nm周期)で出現する頻度が低いからと考えられる。
[実験例23](KSTi−9/SPHC積層材による接着実験)
実験例9で示した表面処理を施した厚さ1mmのKSTi−9片と、実験例12で示した表面処理を施した厚さ1.6mmのSPHC片を各々6枚ずつ用意した。各KSTi−9片の片面全面、各SPHC片の片面全面に接着剤「EP160」を塗り、予め70℃の温風乾燥機内に1時間入れて暖めておいたデシケータに入れて蓋をし、真空ポンプを使用して実験例17と同様に減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、その後にデシケータを開いてKSTi−9片及びSPHC片を取り出した。取り出したKSTi−9片及びSPHC片の接着剤塗布面同士を面接合させて積層材を作成した。これにより、厚さ2.6mm(1.0mm+1.6mm)のKSTi−9/SPHC積層材を6組得たことになる。そして、この積層材では、KSTi−9の曲げ強度をSPHCによって強化していることになる。
さらに各積層材のKSTi−9面の端部に「EP160」を塗り、デシケータを使用して減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、接着面積が0.6〜0.7cmになるように接着剤塗布部同士を接着接合させた。このKSTi−9面同士が上記面積で接着接合されている接合体を3組作成し、各接合体全体をクリップ6個で固定した。これらの接合体を90℃にセットしておいた熱風乾燥機内に入れた。90℃に40分保持した後に135℃に昇温し、この温度に40分保持した。その後に更に165℃に昇温して40分保持し、熱風乾燥機の電源を切って翌日まで放冷した。即ち、KSTi−9/SPHC積層材同士の接合体を3組得た。これらについて、せん断破断力を測定した。3組の平均のせん断破断力は42MPaであった。
構造強度が強い厚さ1.6mmのA5052、厚さ3mmのA7075、厚さ1.6mmの一般鋼材(SAPH440)の接合体のせん断破断力が50〜60MPaであるから、これらと比較して明らかに低い。また、他の積層材(KFC積層材、A5052積層材、SUS304積層材、AZ31B/SPCC積層材)の接合体と比較しても低いといえる。これは、KSTi−9の表面の殆どが、前述した第2の条件に合致していないからと考えられる。
[せん断破断力の比較]
実験例18〜23の試験結果、即ち常温におけるKFC積層材、A5052積層材、SUS304積層材、AZ31B/SPCC積層材、KS40/SPHC積層材、及びKSTi−9/SPHC積層材同士の接合体のせん断破断力を図17に示す。また、図16から常温(25℃)におけるA7075片、SAPH440片同士の接合体のせん断破断力も転載している。また括弧内の数値は積層化する前のせん断破断力を示す。
図17から、金属合金が実験条件下で曲がりを生じないような十分な強度を保有していれば、各金属合金種で共通して、常温下(25℃)におけるせん断破断力が50〜60MPaを示すことがわかる。A5052積層材では、積層前(53MPa)と比較して、せん断破断力が殆ど向上していない(54MPa)が、これは1.6mm厚であっても最適な接着がなされている、即ちNAT理論を適用した効果が十分に発揮できることを示す。一方、KFC(積層前は31MPa)、AZ31B(積層前は28MPa)では、せん断破断力が20MPa向上するという劇的な効果が得られた。また、SUS304(積層前は47MPa)でも、10MPa以上のせん断破断力の向上を確認できた。これらについては積層化することによって、最適な接着が可能となったと言える。さらに、チタン合金類であるKS40(積層前は31MPa)、KSTi−9(積層前は36MPa)についても、積層化によって、それぞれ40MPa、42MPaと40MPa以上のせん断破断力を示すようになった。
各金属合金種間におけるせん断破断力のバラつきは、特に好ましい表面形状に近い形状か否かによるものと考えられる。即ち、超微細凹凸形状の周期が30〜100nmの範囲であれば特に好ましいのであるが、純チタン合金KS40に関しては、前述したように超微細凹凸が前記範囲から外れており、α−β型チタン合金KSTi−9に関してはNAT理論の第2の条件(5〜500nm周期)からも外れている。故に、これらをSPHCによって補強した場合であっても、常温下でのせん断破断力が40MPa台と明らかに低いものになっている。
[実験例24](A7075/DP160積層材による接着実験)
実験例1と全く同じ方法で300mm×25mm×3mm厚のA7075片に表面処理を施した。また、厚さ1mmの超高張力鋼板材「DP160(新日本製鐵株式会社(日本国東京都)製)」を長方形(280mm×18mm)に切断したDP160ハイテンション鋼材片に、実験例13と全く同じ方法で表面処理を施した。このA7075片の片面全面、DP160片の片面全面に実験例14で得た「EP160−A」を薄く塗り付けた。これらを予め70℃の温風乾燥機内に1時間入れて暖めておいた大型デシケータに入れて蓋をし、真空ポンプを使用して内部を30mmHg以下に減圧にした。減圧下に30秒以上置き、常圧に戻した。この減圧/常圧戻しの操作を3回繰り返し、その後にデシケータを開いてA7075片、DP160片を取り出した。そしてA7075片、DP160片の接着剤塗布面同士を面接合させた。この接合体を90℃にセットしておいた熱風乾燥機内に入れた。90℃に40分保持した後に135℃に昇温し、この温度に40分保持した。その後に更に165℃に昇温して40分保持し、熱風乾燥機の電源を切って翌日まで放冷した。その結果図18に示すA7075/DP160積層材である試験試料3を得た。
ここで、図18に示すように、A7075片31よりもDP160片32が一回り小さく、A7075片31の中央部分にDP160片32を接着するようにした。このようにして得られたA7075/DP160積層材のDP160片側を下に向けて、その両端を幅10mm、厚さ1.5mmの板棒材2本で支え、上面となっているA7075片の中央部分に錘を置いた。
一方、上記A7075/DP160積層材との曲げ強度を比較すべく、A7075/A5052積層材を作成した。即ち、実験例1と全く同じ方法で300mm×25mm×3mm厚のA7075片に表面処理を施した。また、実験例2と全く同じ方法で280mm×18mm×1mm厚のA5052片に表面処理を施した。これらをA7075/DP160積層材と同様に接合し、A7075/A5052積層材を得た。即ち、補強用金属が「DP160」ではなく「A5052」である点が異なる。このようにして得られたA7075/A5052積層材をのA5052片側を下に向けて、その両端を幅10mm、厚さ1.5mmの板棒材2本で支え、上面となっているA7075片の中央部分に錘を置いた。
A7075/DP160積層材、A7075/A5052積層材の双方の中央に置く錘の重さを徐々に増やしていき、中央部のたわみを測定した。その結果、A7075/DP160積層材の場合には、錘が21kgのときに中央部が元の位置から1.2mm下がった。一方、A7075/A5052積層材の場合には、錘が10kgのときに中央部が元の位置から1.2mm下がった。即ち、積層材の作成にあたり、A5052よりもハイテンション鋼を用いることによって、抗張力が明らかに向上したことを確認できた。このような接着接合によっても溶接やボルト止めと同様に、積層化の効果が得られたことになる。更に言えば、抗張力の大きい金属合金を芯材に貼り付けて一体化することにより、部品の機械的性質を一変させることも出来るのである。
[実験例25](SUS304/AZ31B/SUS304サンドイッチ材の作成)
実験例3と全く同じ方法で100mm×25mm×1mm厚のAZ31B片に表面処理を施した。又、実験例10と全く同じ方法で100mm×25mm×0.1mm厚のSUS304片に表面処理を施した。AZ31B片の両面全面に実験例14で得た接着剤「EP106−A」を塗布した。また、AZ31B片1枚に対して、SUS304片の片面全面に「EP106−A」を塗布したものを2枚用意した。これらについて実験例24と同様に減圧/常圧戻しの操作を行った。そして、AZ31B片の両面各々にSUS304片の接着剤塗布面側を面接合させるようにして、このAZ31B片をSUS304片で挟み込み、これを実験例24と同様に加熱して接着剤を硬化させた。これにより、SUS304/AZ31B/SUS304サンドイッチ材を得た。即ち、皮材がSUS304(0.1mm)、芯材がAZ31B(1.0mm)で構成された厚さ1.2mmのサンドイッチ材となっている。これは耐食性があり、且つ比重が2.4程度であり、且つ曲げ強度も十分にある材料である。パソコンケース等の軽量で強度の必要な材料に使用できる。
[実験例26](SUS304/SPCC/SUS304サンドイッチ材の作成)
実験例11と全く同じ方法で100mm×25mm×1.6mm厚のSPCC片に表面処理を施した。又、実験例10と全く同様な方法で100mm×25mm×0.1mm厚のSUS304片に表面処理を施した。SPCC片の両面全面に実験例14で得た接着剤「EP106−A」を塗布した。また、SPCC片1枚に対して、SUS304片の片面全面に「EP106−A」を塗布したものを2枚用意した。これらについて実験例24と同様に減圧/常圧戻しの操作を行った。そして、SPCC片の両面各々にSUS304片の接着剤塗布面側を面接合させるようにして、このSPCC片をSUS304片で挟み込み、これを実験例24と同様に加熱して接着剤を硬化させた。これにより、SUS304/SPCC/SUS304サンドイッチ材を得た。即ち、皮材がSUS304(0.1mm)、芯材がSPCC(1.6mm)で構成された厚さ1.8mmのサンドイッチ材となっている。これは耐食性があり、高強度の構造材の材料となる。屋外で腐食しないので、屋根材等に使用できる。
[実験例27](A5052/C1100積層材の作成)
実験例2と全く同じ方法で100mm×100mm×5mm厚のA5052片に表面処理を施した。又、実験例4と全く同様な方法で100mm×100mm×0.5mm厚のC1100片に表面処理を施した。A5052片の片面全面、C1100片の片面全面に実験例14で得た接着剤「EP106−A」を塗布した。これらについて実験例24と同様に減圧/常圧戻しの操作を行った。そして、A5052片とC1100片の接着剤塗布面同士を面接合させ、これを実験例24と同様に加熱して接着剤を硬化させた。これにより、A5052/C1100積層材を得た。即ち、一方の面がA5052であり、他方の面がC1100で構成された厚さ5.5mmの積層材となっている。
この積層材のA5052面側を機械加工して、幅2mmで深さ3mm程度の溝を多数設けると、これは放熱に適した表面積の大きい面となる。そして、A5052は強度が十分にあるアルミニウム合金であるから、溝が増えても構造的に十分な強度を維持することができる。さらに、A5052と面接触しているのは最も熱伝導性の高い純銅系の銅合金C1100である。従ってC1100面上にパワー型半導体や高周波半導体などの発熱性の高い電子部品を設置すると、熱は銅合金C1100を経由してアルミニウム合金A5052側に移り、溝が設けられたA5052の広い表面から放熱できる。ここで、このような放熱機構を構成するにあたり、アルミニウム合金を一切用いず、全てを銅合金で作成することも可能であるが、重量が大きくなってしまうのでモバイル用機器等には適していない。又、A5052の熱伝導性は銅より劣るものの、それほど低くはないし、強度もある。結論としては、A5052/C1100積層材からなる放熱機構は、放熱性に優れ、且つ、一定の強度もあって軽量であるから、モバイル用通信機器のヒートシンク等に用いることができる。
[実験例28](A5052/C1100クラッド材の作成)
実験例2と全く同じ方法で100mm×100mm×5mm厚のA5052片に表面処理を施した。又、0.5mm厚のC1100板材を入手し、これを切断して100mm×100mm×0.5mm厚のC1100片とした。このC1100片を、アルミ用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を7.5%含む水溶液(60℃)に5分浸漬して水道水で水洗し、70℃とした温風乾燥機で乾燥した。A5052片とC1100片の四隅を揃えて密着させ、平板プレス機で1tかけて仮接合した。次に加熱可能な平板金型を100トン型プレス機に乗せて、金型温度を200℃に制御した。仮接合したA5052片とC1100片の対を金型間に乗せ、締め切った時の金型隙間(即ち成型品の厚さ)が5.3mmになるようセットして圧縮した。圧縮した状態で30秒置いて金型を開き、接合したA5052/C1100クラッド材を取り出した。取り出したクラッド材の周辺をフライス盤で削り、100mm×100mmの綺麗な正方形状に戻した。さらに、A5052面側に、NCフライス盤によって幅2mm深さ3mmの溝を20本の設け、放熱板とした。
この機械加工したクラッド材を温度衝撃試験機に入れて、−30℃/+100℃の温度衝撃を3000サイクル加えたが、全く2種材料間に剥がれが生じなかった。A5052/C1100クラッド材からなる放熱機構は、放熱性に優れ、且つ、一定の強度もあって軽量であるから、モバイル用通信機器のヒートシンク等に用いることができる。
[実験例29](不飽和ポリエステル樹脂系接着剤)
市販の不飽和ポリエステル樹脂「リポキシR802(昭和高分子株式会社製)」100部に熱可塑性樹脂のポリエーテルスルホン「スミカエクセル4100MP(住友化学株式会社製)」2部を加え、窒素下で100℃まで上げて攪拌混合した。冷やした後で、これをジルコニアビーズ0.5mmを80容積%充填したサンドグラインドミル「ツエア(アシザワ・ファインテック株式会社製)」にかけた。その際の周速を11.4m/秒として、微粉タルク「ハイミクロンHE5(竹原化学工業株式会社(日本国兵庫県)製)」2部を加えて運転を30分続けて分散させた。これにより得られた液状物を主液とし、この主液100部に対しt−ブチルパーオキシベンゾエート「パーブチルZ(日油株式会社製)」を1部加え、よく混合して接着剤とした。この接着剤は60分以内に使用した。
[実験例30](SPCC/SUS304積層材の作成)
実験例11と全く同じ方法で100mm×100mm×1.6mm厚のSPCC片に表面処理を施した。又、実験例10と全く同様な方法で100mm×100mm×0.1mm厚のSUS304片に表面処理を施した。SPCC片、SUS304片の片面全面に実験例29で得た不飽和ポリエステル樹脂系接着剤を塗り付けた。SPCC片、SUS304片を大型デシケータに入れ、真空ポンプにて50mmHg程度まで減圧にし、減圧下に数十秒置いて常圧に戻した。この減圧/常圧戻しの作業を3回繰り返し、デシケータから両金属合金片を取り出した。取り出した金属合金片を50℃とした温風乾燥機に30分入れ、ゲル化を若干進めた。温風乾燥機からSPCC片、SUS304片を取り出し、双方の接着剤塗布面同士を面接合した。
10mm厚の鉄板を2枚用意し、その1枚を熱風乾燥機内に置き、その鉄板上にポリエチフィルムを敷き、その上に前記SPCC片とSUS304片を接合したものを置き、その上に別のポリエチフィルムを敷き、さらにその上にもう1枚の鉄板を乗せた。熱風乾燥機の扉を閉め、温度を90℃にセットして昇温した。そして90℃に1時間置き、更に120℃まで昇温し1時間置いて電源を切って放冷した。これにより得られたSPCC/SUS304積層材をフライス盤で90mm×90mmの正方形板状物に加工した。SPCC片とSUS304片の間で剥がれは観察されなかったので、これを温度衝撃試験機に入れ−30℃/+80℃の温度衝撃を1000サイクル加えた。この温度衝撃試験でも2層間に剥がれは確認されなかった。
図1は、金属合金片同士を1液性熱硬化型接着剤で接着した接合体を示す外観図である。 図2は、KFC積層材同士を1液性熱硬化型接着剤で接着した接合体を示す外観図である。 図3は、苛性ソーダ水溶液でエッチングし、水和ヒドラジン水溶液で微細エッチング処理したA7075アルミニウム合金片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図4は、苛性ソーダ水溶液でエッチングし、水和ヒドラジン水溶液で微細エッチング処理したA5052アルミニウム合金片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図5は、クエン酸水溶液でエッチングし、過マンガン酸カリ水溶液で化成処理したAZ31Bマグネシウム合金片の10万倍電子顕微鏡写真である。 図6は、クエン酸水溶液でエッチングし、過マンガン酸カリ水溶液で化成処理したAZ31Bマグネシウム合金片の10万倍電子顕微鏡写真である。 図7は、有機カルボン酸水溶液でエッチングし、過マンガン酸カリ水溶液で化成処理したAZ91Dマグネシウム合金片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図8は、硫酸・過酸化水素水溶液でエッチングし、亜塩素酸ソーダ水溶液で表面硬化処理したC1100タフピッチ銅片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図9は、硫酸・過酸化水素水溶液でエッチングし、亜塩素酸ソーダ水溶液で表面硬化処理したC5191リン青銅片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図10は、硫酸・過酸化水素水溶液でエッチングし、亜塩素酸ソーダ水溶液で表面硬化処理したKFC銅合金片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図11は、硫酸・過酸化水素水溶液でエッチングし、亜塩素酸ソーダ水溶液で表面硬化処理したKLF5銅合金片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図12は、1水素2弗化アンモニウム水溶液でエッチングした純チタン系チタン合金KS40片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図13は、1水素2弗化アンモニウム水溶液でエッチングしたα−β型チタン合金KSTi−9片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図14は、硫酸水溶液でエッチングしたステンレス鋼SUS304片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図15は、硫酸水溶液でエッチングし、過マンガン酸カリ系水溶液で化成処理した冷間圧延鋼材SPCC鋼材片の1万倍、10万倍電子顕微鏡写真である。 図16は、各種金属合金片同士を1液性エポキシ系接着剤により接着接合した接合体のせん断破断力と試験温度の関係を示すグラフである。 図17は、各種金属合金積層材同士を1液性エポキシ系接着剤により接着接合した接合体のせん断破断力と試験温度の関係を示すグラフである。 図18は、A7075アルミニウム合金片とDP160ハイテンション鋼材片を1液性エポキシ系接着剤で面接着した積層材を示す外観図である。
符号の説明
1:試験試料
2:試験試料
3:試験試料
10:A7075アルミニウム合金片
20:KFC銅合金片
21:KFC積層材
31:A7075アルミニウム合金片
32:DP160ハイテンション鋼材片

Claims (12)

  1. マグネシウム合金板及び鋼板材から構成される金属合金積層材であって、
    前記マグネシウム合金板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層がマンガン酸化物の薄層であり、
    前記鋼板材の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であり、
    前記マグネシウム合金板の表面と前記鋼板材の表面の間に1液性熱硬化型接着剤を介在させて積層した状態で、圧力を加えつつ加熱することによって、その1液性熱硬化型接着剤を硬化させたことを特徴とする金属合金積層材。
  2. チタン合金板及び鋼板材から構成される金属合金積層材であって、
    前記チタン合金板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層がチタン酸化物の薄層であり、
    前記鋼板材の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であり、
    前記チタン合金板の表面と前記鋼板材の表面の間に1液性熱硬化型接着剤を介在させて積層した状態で、圧力を加えつつ加熱することによって、その1液性熱硬化型接着剤を硬化させたことを特徴とする金属合金積層材。
  3. α−β型チタン合金板及び鋼板材から構成される金属合金積層材であって、
    前記α−β型チタン合金板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、10μm角の面積内に円滑なドーム状形状と枯葉形状の双方が混在する微細凹凸が形成され、且つ、表層がチタンとアルミニウムを含む金属酸化物の薄層であり、
    前記鋼板材の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であり、
    前記α−β型チタン合金板の表面と前記鋼板材の表面の間に1液性熱硬化型接着剤を介在させて積層した状態で、圧力を加えつつ加熱することによって、その1液性熱硬化型接着剤を硬化させたことを特徴とする金属合金積層材。
  4. アルミニウム合金板及び超高張力鋼板材から構成される金属合金積層材であって、
    前記アルミニウム合金板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層がナトリウムイオンを含まない厚さ2nm以上の酸化アルミニウムの薄層であり、
    前記超高張力鋼板材の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であり、
    前記アルミニウム合金板の表面と前記超高張力鋼板材の表面の間に1液性熱硬化型接着剤を介在させて積層した状態で、圧力を加えつつ加熱することによって、その1液性熱硬化型接着剤を硬化させたことを特徴とする金属合金積層材。
  5. マグネシウム合金板を芯材とし、ステンレス鋼板を皮材として構成されるサンドイッチ型の金属合金積層材であって、
    前記マグネシウム合金板の両側表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層がマンガン酸化物の薄層であり、
    前記ステンレス鋼板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が金属酸化物の薄層であり、
    前記マグネシウム合金板の両側表面各々と前記ステンレス鋼板の表面の間に1液性熱硬化型接着剤を介在させて、[ステンレス鋼板/マグネシウム合金板/ステンレス鋼板]のサンドイッチ型となるように積層した状態で、圧力を加えつつ加熱することによって、その1液性熱硬化型接着剤を硬化させたことを特徴とする金属合金積層材。
  6. 鋼板材を芯材とし、ステンレス鋼板を皮材として構成されるサンドイッチ型の金属合金積層材であって、
    前記鋼板材の両側表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であり、
    前記ステンレス鋼板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が金属酸化物の薄層であり、
    前記鋼板材の両側表面各々と前記ステンレス鋼板の表面の間に1液性熱硬化型接着剤を介在させて、[ステンレス鋼板/鋼板材/ステンレス鋼板]のサンドイッチ型となるように積層した状態で、圧力を加えつつ加熱することによって、その1液性熱硬化型接着剤を硬化させたことを特徴とする金属合金積層材。
  7. アルミニウム合金板及び銅合金板から構成される金属合金積層材であって、
    前記アルミニウム合金板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層がナトリウムイオンを含まない厚さ2nm以上の酸化アルミニウムの薄層であり、
    前記銅合金板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が酸化第2銅の薄層であり、
    前記アルミニウム合金板の表面と前記銅合金板の表面の間に1液性熱硬化型接着剤を介在させて積層した状態で、圧力を加えつつ加熱することによって、その1液性熱硬化型接着剤を硬化させたことを特徴とする金属合金積層材。
  8. 鋼板材及びステンレス鋼板から構成される金属合金積層材であって、
    前記鋼板材の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であり、
    前記ステンレス鋼板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、その粗度を有する面内には、5〜500nm周期の超微細凹凸が形成され、且つ、表層が金属酸化物の薄層であり、
    前記鋼板材の表面と前記ステンレス鋼板の表面の間に1液性熱硬化型接着剤を介在させて積層した状態で、圧力を加えつつ加熱することによって、その1液性熱硬化型接着剤を硬化させたことを特徴とする金属合金積層材。
  9. 請求項1ないしから選択される1項に記載した金属合金積層材であって、
    前記1液性熱硬化型接着剤がエポキシ樹脂系接着剤であることを特徴とする金属合金積層材。
  10. 請求項1ないしから選択される1項に記載した金属合金積層材であって、
    前記1液性熱硬化型接着剤が不飽和ポリエステル樹脂系接着剤であることを特徴とする金属合金積層材。
  11. 第1の金属合金板及び第2の金属合金板から構成される金属合金積層材であって、
    前記第1の金属合金板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、表層が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層であり、
    その第1の金属合金板の表面と前記第2の金属合金板を面接触させて積層した状態で、両者を熱プレス又は熱ロールによって圧着させたことを特徴とする金属合金積層材。
  12. アルミニウム合金板及び銅合金板から構成されるクラッド型の金属合金積層材であって、
    前記アルミニウム合金板の表面は、エッチングが施されることにより、山谷平均間隔(RSm)が0.8〜10μm、最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmであるミクロンオーダーの粗度を有し、且つ、表層がナトリウムイオンを含まない厚さ2nm以上の酸化アルミニウムの薄層であり、
    そのアルミニウム合金の表面と前記銅合金板を面接触させて積層した状態で、両者を熱プレス又は熱ロールによって圧着させたことを特徴とする金属合金積層材。


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