JP2023035170A - 圧電積層体及び圧電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧電特性の低下を抑制することが可能であり、かつ、製造コストを従来よりも抑制することが可能な圧電積層体及び圧電素子を提供する。【解決手段】圧電積層体及び圧電素子は、基板上に、下部電極層と、ペロブスカイト型酸化物を含む圧電膜とをこの順に備え、下部電極層は、Ta元素を含んでおり、下部電極層の厚み方向において、最も圧電膜側にTa窒化物を含んでおり、さらに、厚み方向にTa元素の含有量が変化する領域を含んでおり、かつ、厚み方向におけるTa元素の含有量の変化は連続的である。【選択図】図1

Description

本開示は、圧電積層体及び圧電素子に関する。
優れた圧電特性及び強誘電性を有する材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O、以下においてPZTという。)などのペロブスカイト型酸化物が知られている。ペロブスカイト型酸化物からなる圧電体は、基板上に、下部電極、圧電膜、及び上部電極を備えた圧電素子における圧電膜として適用される。この圧電素子は、メモリ、インクジェットヘッド(アクチュエータ)、マイクロミラーデバイス、角速度センサ、ジャイロセンサ、超音波素子(PMUT:Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)及び振動発電デバイスなど様々なデバイスへと展開されている。
ペロブスカイト型酸化物は、ペロブスカイト構造中の酸素の過不足により圧電特性が大きく変化する。特に、PZT膜などのPb(鉛)を含むペロブスカイト型酸化物においては、酸素が脱離し易く、圧電膜中の酸素欠陥の発生により、圧電特性の低下及び耐久性の低下などが生じ易い。ペロブスカイト型酸化物における酸素脱離を抑制するためには、下部電極及び上部電極の圧電膜に接する領域に、SRO(SrRuO)、IrOなどの導電性酸化物を用いることが有効である。そして、圧電膜に接する領域に導電性酸化物を用いる場合、良好な導電性を確保するために、導電性酸化物層にPt(白金)あるいはIr(イリジウム)などの貴金属層を積層することが一般である(例えば、特許文献1参照)。
特許文献2には、PZT膜を備えた圧電素子に関し、基板と下部電極層、及び下部電極層と圧電膜の各界面における密着性を向上するため、下部電極層を、基材側で導電性酸化物が多く、圧電膜側で導電性金属が多い構成とすることが提案されている。そして、下部電極層に含まれる導電性金属としてはPt族が好ましいことが記載されている。
一方、特許文献3には、Pt族を用いない第1電極(下部電極層に相当)を備えた圧電素子が提案されている。特許文献3において、下部電極層は、第1導電層と、窒化化合物からなる第1中間層と、第2中間層と、導電性酸化物からなる第2導電層とが積層されてなる。ここで、第1導電層は、Ti,Zr、Hf、V、Nb、Ta,Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni,Cu、Ag及びAuの1種もしくは2種以上の合金であり、第2中間層は、Ti、Zr、W,Ta及びAlの1種もしくは2種以上の合金である。特許文献3では、このような積層構造を有する下部電極層を備えることにより、白金族を用いた場合と比較して導電性および耐久性に優れた電極を有する圧電素子を提供することができると記載されている。
特開2018-085478号公報 特開2007-300071号公報 特開2011-103327号公報
特許文献1に記載の通り、ペロブスカイト型酸化物の圧電膜を備えた圧電素子において、電極層の圧電膜側に導電性酸化物層を備えることにより、圧電特性の低下を抑制することができる。また、特許文献1及び特許文献2に記載されている通り、下部電極にはPt族である貴金属が用いられることが一般的である。
しかしながら、白金族の金属は、非常に高価であるため、白金族を含む電極を備える圧電素子は製造コストを十分に抑制することは難しい。
特許文献3では、下部電極層に白金族を用いないため、白金族を用いた場合と比較して、安価に構成することができる。しかし、電極層が少なくとも4層構造となっており、材料コスト及び製造工程が複雑であるため、製造コストの抑制効果がまだ十分とは言えない。
本開示の技術は上記事情に鑑みてなされたものであり、圧電特性の低下を抑制することが可能であり、かつ、製造コストを従来よりも抑制することが可能な圧電積層体及び圧電素子を提供することを目的とする。
本開示の圧電積層体は、基板上に、下部電極層と、ペロブスカイト型酸化物を含む圧電膜とをこの順に備えた圧電積層体であって、
下部電極層は、Ta(タンタル)元素含み、厚み方向において、下部電極層の厚み方向の最も圧電膜側にTa窒化物を含み、厚み方向においてTa元素の含有量が変化する領域を含み、かつ、Ta元素の含有量が変化する領域に圧電膜側から基板側に向けてTa元素の含有量が増加する領域を含み、厚み方向におけるTa元素の含有量の変化は連続的である。
本開示の圧電積層体においては、下部電極層の厚み方向におけるTa元素の含有量は、最も基板側で最大値を示し、圧電膜側から基板側の最大値まで連続的に増加していることが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、下部電極層は、最も圧電膜側から20nm~60nmの範囲に亘ってTa窒化物を含むことが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、下部電極層と圧電膜との間に、金属酸化物を含む配向制御層を備えることが好ましい。この場合、金属酸化物が、Sr及びBaの少なくとも一方を含むことが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、ペロブスカイト型酸化物が、Pb,Zr(ジルコン),Ti(チタン)及びO(酸素)を含むことが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、ペロブスカイト型酸化物が、Nb(ニオブ)を含むことが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、ペロブスカイト型酸化物が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Pb{(ZrTi1-xy-1Nb}O (1)
0<x<1、0.1≦y≦0.4、
本開示の圧電素子は、本開示の圧電積層体と、
圧電積層体の圧電膜上に備えられた上部電極層とを備える。
本開示の圧電積層体及び圧電素子によれば、圧電特性の低下を抑制することが可能であり、かつ、従来よりも製造コストを抑制することが可能である。
第1実施形態の圧電積層体及び圧電素子の層構成を示す断面図である。 図1に示す圧電素子における下部電極層の厚み方向におけるTa元素とN元素の含有量のプロファイルを示す図である。 図1に示す圧電素子における下部電極層の厚み方向におけるTa元素の含有量の他のプロファイルを示す図である。 第2実施形態の圧電積層体及び圧電素子の層構成を示す断面図である。 実施例2の下部電極層の厚み方向におけるTa元素とN元素の含有量のプロファイルを示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面においては、視認容易のため、各層の層厚及びそれらの比率は、適宜変更して描いており、必ずしも実際の層厚及び比率を反映したものではない。
「第1実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1」
図1は、第1実施形態の圧電積層体5及び圧電積層体5を備えた圧電素子1の層構成示す断面模式図である。図1に示すように、圧電素子1は、圧電積層体5と上部電極層18とを備える。圧電積層体5は、基板10と、基板10上に積層された、下部電極層12及び圧電膜15を備える。ここで、「下部」及び「上部」は鉛直方向における上下を意味するものではなく、圧電膜15を挟んで基板10側に配置される電極を下部電極層12、圧電膜15に関して基板10と反対の側に配置される電極を上部電極層18と称しているに過ぎない。
圧電積層体5において、下部電極層12は、Ta元素を含んでおり、下部電極層12の厚み方向の最も圧電膜15側にTa窒化物(TaN)を含んでいる。また、詳細は後述するが、下部電極層12は、厚み方向において、Ta元素の含有量が変化する領域を含んでおり、かつ、厚み方向におけるTa元素の含有量の変化は連続的である。また、下部電極層12の厚み方向におけるTa元素の含有量の変化は連続的である。ここで、「厚み方向におけるTa元素の含有量」とは、厚み方向の各位置における全元素に対するTa元素の割合であり、at%の単位で示される。「厚み方向」とは、基板10に垂直な方向である。「含有量の変化が連続的である」とは、厚み方向における含有量のプロファイル(図2参照)において、不連続な箇所がないことを意味する。また、「下部電極層12がTa元素を含む」とは、下部電極層12を構成する構成元素のうちの金属元素の50at%以上を占める主成分としてTa元素を含むことを意味する。なお、下部電極層12において、下部電極層12を構成する、Ta元素以外の構成元素のうち、下部電極層12の全域に対する含有量が10at%以上である元素の含有量は、厚み方向において、一定である、もしくは連続的に変化していることが好ましい。
図1の拡大図は下部電極層12におけるTa元素の含有量の変化を模式的に示している。図1の拡大図において、Ta元素の含有量が大きいほど濃く、含有量が小さいほど薄い色で示している。また、図2は、下部電極層12中に含まれるTa元素及びN元素の含有量の厚み方向における変化(含有量のプロファイル)を示す。横軸が、下部電極層12の厚み方向の位置を示す。横軸の0が下部電極層12の最も圧電膜15側の位置(境界12a)であり、二点鎖線位置が基板10との境界である。
本実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1において、下部電極層12は、Ta窒化物を含む第1領域12bと、第1領域12bの基板10側に備えられたTa金属からなる第2領域12cとを備える。第1領域12bは、最も圧電膜15側である圧電膜15との境界12aを含む。
図2に示すように、本実施形態において、下部電極層12は厚み方向の全域に亘ってTa元素を含む。第1領域12bは、厚み方向においてTa元素の含有量が変化する領域であり、Ta元素の含有量の変化は圧電膜15側から基板10側に向かって増加基調である。より詳細には、第1領域12bにおけるTa元素の含有量は、厚み方向の最も基板10側(ここでは、第2領域12c側)で最大値(ここでは、略100at%)を示し、かつ、最も圧電膜15側である境界12aから単調に増加している。第2領域12cでは、厚み方向において、Ta元素の含有量は略一定であり、第1領域12bとの境界から連続して最大値(ここでは、略100at%)を示す。ここで、増加基調とは、始点と終点とを比較した場合に始点よりも終点の方が含有量が多いというように全体として増加する傾向であることを示し、例えば、図2のように、左側を圧電膜15側、右側を基板10側とした含有量のプロファイルにおいて、一部に測定誤差を超えて低下する箇所があっても全体として右肩上がりならば、増加基調に含まれる。また、単調に増加している、とは、含有量のプロファイルにおいて、測定誤差を超えて低下する箇所を含むことなく、増加していることをいう。
下部電極層12中の元素の含有量は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析により測定可能であり、本開示において、元素の含有量は、SIMSにより測定される値である。また、実際の測定データにおいては、ノイズにより含有量が±5at%程度変動するため、±5at%程度の変動は測定誤差の範囲と見做す。
本実施形態において、下部電極層12は、TaとN(窒素)とから構成されており(但し、不可避不純物を含む)、下部電極層12の第1領域12bの厚み方向における、N元素の含有量の変化を示すプロファイルは、含有量50at%のラインを対称軸として、Ta元素の含有量の変化を示すプロファイルと対称である。すなわち、最も圧電膜15側である境界12aから第2領域12c側に向けて連続的に減少し、その後、ほぼ0at%で一定値を示す。なお、下部電極層12の最も圧電膜15側を含むTa窒化物を含む領域(本例では第1領域12b)には、Ta酸窒化物(TaON)を含んでいてもよい。下部電極層12がTaONを含む場合には、当然ながら、N元素のプロファイルは図2に示すものとは異なる。
本実施形態において、下部電極層12の圧電膜15との境界12aにおいては、ほぼすべてのTaが窒化されている例を示している。しかし、境界12aにおいては、窒化されたTaと窒化されていないTaとが混ざっていてもよい。但し、境界12aに存在するTaのうち20at%以上が窒化されていることが好ましく、30at%以上が窒化されていることがより好ましい。また、第1領域12b全体で、Ta元素の20at%以上が窒化物として存在していることが好ましい。
下部電極層12の厚みtは、50nm~300nm程度であることが好ましく、100nm~300nmがより好ましい。下部電極層12は、少なくとも最も圧電膜15側にTa窒化物を含むが、最も圧電膜15側から20nm以上の範囲に亘ってTa窒化物を含むことが好ましく、最も圧電膜15側から30nm以上の範囲に亘ってTa窒化物を含むことがより好ましい。なお、下部電極層12の厚みtが厚くなりすぎることなく、十分な導電性を担保するために、Ta窒化物を含む範囲は最も圧電膜15側から60nm以下であることが好ましい。すなわち、下部電極層12の最も圧電膜15側から20nm~60nmに亘ってTa窒化物を含むことが好ましく、40nm~60nmに亘ってTa窒化物を含むことが特に好ましい。本実施形態の場合、第1領域12bの厚みt1が20nm~60nmであることが好ましく、30nm~60nmであることがより好ましく、40nm~60nmであることが特に好ましい。また、本例のように、下部電極層12が第1領域12bと第2領域12cとを備える場合には、第2領域12cの厚みt2は50nm~200nmが好ましく、80nm~150nmがより好ましい。下部電極層12の厚みは、断面の走査電子顕微鏡(SEM)像、透過型電子顕微鏡(TEMやSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析から見積もることができる。但し、Ta元素の含有量が変化している領域(ここでは、第1領域12b)から変化していない領域(ここでは、第2領域12c)との間で、Ta元素の含有量が連続的に変化しているので、両領域の境界は、例えば、走査電子顕微鏡像においては明確ではない。そのため、第1領域12b及び第2領域12cの厚みt1、t2は、下部電極層12の厚み方向における組成分布(図2、図5参照)、すなわち、構成元素の含有量変化の測定データから求めることとする。
圧電膜15は、ペロブスカイト型酸化物を含む。圧電膜15の80mol%以上をペロブスカイト型酸化物が占めることが好ましい。さらには、圧電膜15は、ペロブスカイト型酸化物からなる(但し、不可避不純物を含む。)ことが好ましい。
ペロブスカイト型酸化物は、一般式ABOで表される。
一般式中Aは、Aサイト元素であり、Pb、Ba(バリウム)、La(ランタン)、Sr、Bi(ビスマス)、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、Cd(カドミウム)、Mg(マグネシウム)及びK(カリウム)のうちの1つもしくは2以上の組み合わせである。
一般式中Bは、Bサイト元素であり、Ti、Zr、V(バナジウム)、Nb、Ta、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Ru、Co(コバルト)、Ir、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、In、Sn、アンチモン(Sb)及びランタニド元素のうちの1つもしくは2以上の組み合わせである。
一般式中Oは酸素である。
A:B:Oは、1:1:3が基準であるが、ペロブスカイト構造を取り得る範囲でずれていてもよい。
圧電膜15は、特に、Aサイトの主成分としてPbを含むことが好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは50mol%以上を占める成分であることを意味する。すなわち、「PbをAサイトの主成分として含有する」とは、Aサイト元素中、50mol%以上の成分がPbであることを意味する。Pbを含有するペロブスカイト型酸化物におけるPb以外のAサイト中の他の元素及びBサイトの元素は特に限定されない。
ペロブスカイト型酸化物としては、Pb(鉛),Zr(ジルコニウム),Ti(チタン)及びO(酸素)を含む、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:lead zirconate titanate)系であることが好ましい。
特に、ペロブスカイト型酸化物が、PZTのBサイトに添加物B1を含む、下記一般式(P)で表される化合物であることが好ましい。
Pb{(ZrTi1-x1-yB1}O (P)
ここで、0<x<1、0<y<0.3である。なお、一般式(P)において、Pb:{(ZrTi1+x1-y}:Oは、1:1:3が基準であるが、ペロブスカイト構造を取り得る範囲でずれていてもよい
B1としては、Sc(スカンジウム)、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Ir、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Sn、及びSbなどが挙げられ、これらのうちの1以上の元素を含むことが好ましい。B1は、Sc,Nb及びNiのいずれかであることがより好ましい。
特に、B1がNbであること、ペロブスカイト型酸化物が、Nbを含むことが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Pb{(ZrTi1-xy-1Nb}O (1)
0<x<1、0.1≦y≦0.4、
圧電膜15の膜厚は特に制限なく、通常200nm以上であり、例えば0.2μm~5μmである。圧電膜15の膜厚は1μm以上であることが好ましい。
基板10としては特に制限なく、シリコン、ガラス、ステンレス鋼、イットリウム安定化ジルコニア、アルミナ、サファイヤ、シリコンカーバイド等の基板が挙げられる。基板10としては、シリコン基板の表面にSiO酸化膜が形成された積層基板を用いてもよい。
上部電極層18は、上記下部電極層12と対をなし、圧電膜15に電圧を加えるための電極である。上部電極層18の主成分としては特に制限なく、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)クロム(Cr)、亜鉛(Zr)等の金属または金属酸化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、上部電極層18としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IGZO、LaNiO、及びSRO(Baを含んでもよい。)などを用いてもよい。上部電極層18は単層であってもよいし、複数層からなる積層構造であってもよい。なお、圧電膜15からの酸素拡散を抑制する観点から、上部電極層18の少なくとも圧電膜に接する領域は、酸化物電極であることが好ましい。
上部電極層18の層厚は特に制限なく、50nm~300nm程度であることが好ましく、100nm~300nmがより好ましい。
上記の通り、本実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1は、下部電極層12が、Ta元素を含んでおり、厚み方向において、最も圧電膜15側にTa窒化物を含んでいる。下部電極層12の最も圧電膜15側の領域が金属層である場合、圧電膜15中の酸素が抜けて下部電極層12側に移動し、下部電極層12の金属が酸化されてしまう場合がある。また、下部電極層12上に圧電膜15を成膜する際に、下部電極層12の表面に雰囲気中に残留する酸素が取り込まれて下部電極層12の表層の金属が酸化されてしまう場合がある。特に金属がTaである場合には、Taが酸化され、絶縁体であるTaが形成されることによって、導電性が著しく低下してしまう。下部電極層12の圧電膜15側の境界領域に絶縁層が形成されてしまうと電極としての性能低下に繋がり、圧電素子1としての性能(圧電特性)の低下を引き起こすことになる。しかし、本実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1は、最も圧電膜15側にTa窒化物を含むので、Taの酸化が抑制され、結果として圧電特性の低下を抑制することができる。また、圧電膜15から酸素元素が抜けにくくなるので、長期安定性の向上効果が得られる。なお、Ta窒化物が一部酸化され、Ta酸窒化物(TaON)になってもTa酸窒化物は絶縁体ではないため、Taが形成される場合よりも、下部電極層12の機能低下は小さい。
また、下部電極層12は、厚み方向にTa元素の含有量が変化する領域(ここでは、第1領域12b)を含んでおり、かつ、厚み方向におけるTa元素の含有量の変化は連続的である。厚み方向におけるTa元素の含有量の変化が不連続である場合、不連続な箇所において密着性が低下して剥離が生じる場合があるが、本実施形態においては、下部電極層12におけるTa元素の含有量の変化が連続的であるので、剥離の発生を抑制することができる。
また、下部電極層12の金属種としてTaを用いているので、Pt族の金属を主成分として用いていた従来の圧電素子と比較して、大幅にコストを抑制することができる。
また、本実施形態においては、下部電極層12におけるTa元素の含有量の変化は、圧電膜側から基板側に向けて増加基調である。下部電極層12の最も圧電膜15側の領域において、TaとNの含有比率は、Ta窒化物の化学量論比であるTaN、すなわち1:1に近いほど酸化抑制の効果が高い。一方で、下部電極層12中において、窒化されていない金属Taの割合が高いほど、導電性は高く、下部電極層12としての機能性は高い。従って、本実施形態のように、圧電膜15側から基板10側に向けてTa元素の含有量が増加基調であれば、圧電膜15における酸素欠陥の発生を抑制する効果を高め、かつ、導電性の低下を抑制する効果を高めることができる。
さらに、上記実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1は、下部電極層12のTa元素の含有量が変化する領域において、Ta元素の含有量は、厚み方向の最も基板10側で最大値を示し、かつ、圧電膜15側から単調に増加している。本構成により、圧電膜15から酸素が下部電極層12に移動するのを抑制する効果及び導電性の低下を抑制する効果を高めることができる。
下部電極層12が、最も圧電膜15側から20nm~60nmの範囲に亘ってTa窒化物を含む場合、圧電膜15から下部電極層12への酸素移動を抑制する効果をさらに高め、圧電特性の低下を抑制することができる。
上記実施形態においては、下部電極層12に含まれる金属種はTaのみであるが、Ta以外の金属種を含んでいてもよい。Ta元素以外の金属元素としては、Cu、Al、Ti、Ni、Cr及びFeなどが挙げられる。また、下部電極層12はC又はSiを含んでいてもよい。但し、下部電極層12は、Ta元素とN元素のみで形成することで、材料種を少なくすることができ、製造方法も簡素化できるので、コスト抑制の効果が高い。
上述の通り、上記実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1においては、下部電極層12は、Ta元素が圧電膜15側から基板10側に向けて連続的に増加する第1領域12bとTa金属からなる第2領域12cとを備え、Ta元素の含有量の変化は図2に示した通りである。しかし、下部電極層12の厚み方向におけるTa元素の含有量の変化は、図2に示したものに限らない。
図3に、下部電極層12の厚み方向におけるTa元素の含有量の変化の他の例(プロファイルa~d)を示す。図3において、図2と同様に、横軸が、下部電極層12の厚み方向の位置を示す。横軸の0が下部電極層12の最も圧電膜15側の位置(境界12a)であり、二点鎖線位置が基板10との境界である。図3中に示していないが、N元素のプロファイルは、例えば、それぞれTa元素のプロファイルと50at%のラインを中心軸と対称である。
図3のプロファイルaに示すように、下部電極層12の厚み方向におけるTa元素の含有量は、圧電膜15との境界12aで約50at%であり、基板10側に向かって徐々に増加して、最大値を取り、その後、基板10に向かって減少してもよい。プロファイルaにおいて、厚み方向の全域がTa元素の含有量が変化する領域である。
また、図3のプロファイルbに示すように、下部電極層12の厚み方向におけるTa元素の含有量は、圧電膜15との境界12aで約50at%であり、境界12aから基板10側に向かってしばらく一定値を示し、その後、基板10側に向かって単調増加して、最大値を取ってもよい。プロファイルbにおいて、単調増加する範囲がTa元素の含有量が変化する領域である。
先の述べた実施形態及びプロファイルa及びbにおいては、下部電極層12の最も圧電膜15側において、Ta元素の含有量が略50at%である。下部電極層12がTaとNとから構成される場合、圧電膜15側の境界12aにおいてTa元素が完全に窒化されていれば、Ta元素の含有量は50at%、Nの含有量は50at%となる。この場合、窒化されていないTa元素が存在しないために、圧電膜15中の酸素による酸化の抑制効果が高い。
しかしながら、図3のプロファイルcに示すように、下部電極層12の最も圧電膜15側の境界12aにおけるTa元素の含有量は、50at%に限らず、50at%よりも大きくてもかまわない。また、図3のプロファイルcに示すように、下部電極層12の厚み方向の全域に亘って、最も圧電膜15側から基板10側に向かって連続的にTa元素の含有量が増加してもよい。さらに、図3のプロファイルdに示すように、下部電極層12の厚み方向の全域に亘って、最も圧電膜15側から基板10側に向かってTa元素の含有量が減少していてもかまわない。
プロファイルaからdのいずれの場合も、下部電極層12は、Ta元素を含んでおり、下部電極層12の厚み方向の最も圧電膜15側にTa窒化物を含んでいる。また、厚み方向において、Ta元素の含有量が変化する領域を含んでおり、かつ、厚み方向におけるTa元素の含有量の変化は連続的である。いずれの場合も、最も圧電膜15側にTa窒化物を含むので、酸化が抑制され、圧電特性の低下を抑制することができる。また、圧電膜15から酸素元素が抜けにくくなるので、長期安定性の向上効果が得られる。そして、下部電極層12におけるTa元素の含有量の変化が連続的であるので、剥離の発生を抑制することができる。さらには、下部電極層12の金属種としてTaを用いているので、Pt族の金属を主成分として用いていた従来の圧電素子と比較して、コストを抑制することができる。
また、プロファイルaからcについては、Ta元素の含有量の厚み方向の変化が増加基調であるので、圧電膜側における酸素抑制の効果を得ると共に、導電性の低下を抑制する効果が得られる。
「第2実施形態の圧電積層体5A及び圧電素子1A」
図4は、第2実施形態の圧電積層体5A及び圧電積層体5Aを備えた圧電素子1Aの断面模式図を示す。図4において、図1に示す第1実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1と同等の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図4に示すように、圧電積層体5A及び圧電素子1Aは、基板10と下部電極層12との間に、密着層11を備える。また、下部電極層12と圧電膜15との間に、配向制御層13を備える。
密着層11は、基板10と下部電極層12との密着性を向上させ、剥離を抑制するために備えられる。密着層11としては、Ti、W、あるいはTiW等が好適に用いられる。
配向制御層13は、下部電極層12上に形成される。配向制御層13は圧電膜15の成膜初期に形成されやすいパイロクロア相の発生を抑制し、良好なペロブスカイト型酸化物を得るために備えられる層である。配向制御層13は金属酸化物を含む。金属酸化物は、Sr及びBaの少なくとも一方を含むことが好ましい。
また、配向制御層13としては、例えば、国際公開第2020/250591号、国際公開第2020/250632号及び特開2020-202327号公報等に記載の成長制御層を用いることが好ましい。
すなわち、配向制御層13は、下記一般式(2)表される金属酸化物を含むことが好ましい。
MaMb1-d (2)
Maはペロブスカイト型酸化物のAサイトに置換可能な1以上の金属元素であり、
Mbはペロブスカイト型酸化物のBサイトに置換可能な金属種からなり、Sc、Zr、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Ir、Ni,Cu、Zn、Cd、Ga、In及びSbのうちの1つを主成分とし、
Oは酸素元素である。
また、ここで、d、eはそれぞれ組成比を示し、0<d<1、eはMa、Mbの価数によって変化する。
具体的な配向制御層13としては、BaRuO及びSrRuOなどが挙げられる。
配向制御層13の厚みは、2nm以上20nm以下であることが好ましく、10nm程度がより好ましい。
本実施形態の圧電積層体5A及び圧電素子1Aにおいても、下部電極層12の構成は第1実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1と同様である。すなわち、下部電極層12は、Ta元素を含んでおり、下部電極層12の厚み方向において、最も圧電膜15側にTa窒化物を含んでおり、厚み方向にTa元素の含有量が変化する領域を含んでおり、かつ、厚み方向におけるTa元素の含有量の変化は連続的である。最も圧電膜15側にTa窒化物を含むので、酸化が抑制され、圧電特性の低下を抑制することができる。また、圧電膜15から酸素元素が抜けにくくなるので、長期安定性の向上効果が得られる。下部電極層12におけるTa元素の含有量の変化が連続的であるので、剥離の発生を抑制することができる。さらには、下部電極層12の金属種としてTaを用いているので、Pt族の金属を主成分として用いていた従来の圧電素子と比較して、コストを抑制することができる。
さらに、本実施形態の圧電積層体5A及び圧電素子1Aでは、配向制御層13を備えており、配向制御層13上に圧電膜15を成膜しているので、成膜初期に形成されやすいパイロクロア相の発生を抑制することができる。圧電膜15の下部電極層12側の界面におけるパイロクロア相の発生を抑制することができるので、圧電膜15の圧電特性が良好であり、配向制御層13が無い場合よりも高い誘電率及び高い圧電定数を得ることできる。
上記各実施形態の圧電素子1、1A、あるいは圧電積層体5、5Aは、超音波デバイス、ミラーデバイス、センサ及びメモリなどに適用可能である。
以下、本開示の圧電素子の具体的な実施例及び比較例について説明する。最初に、各例の圧電素子の作製方法について説明する。なお、下部電極層の構成及び配向制御層の有無以外の条件は、各例で共通とした。また、各層の成膜には、RF(Radio frequency)スパッタ装置を用いた。
(作製方法)
-基板-
基板として、熱酸化膜付き6インチSiウエハを用いた。
-下部電極層-
基板の熱酸化膜上に、下部電極層を成膜した。各例における下部電極層の成膜条件は、次の通りとした。なお、各例における背圧[Pa]及び成膜温度は表1に示す通りとした。
[参考例]
基板の熱酸化膜上に、下部電極層の成膜前に密着層として、TiWを20nm成膜した。その後、TiW層上に、Arガス60sccm、RF電力300W、及び成膜圧力0.25Paの条件にて、下部電極層として、Irを150nm成膜した。
[比較例1]
基板の熱酸化膜上に、Arガス60sccm、RF電力300W、及び成膜圧力0.25Paの条件にて、Taを150nm成膜した。比較例1において、下部電極層はTa金属層の単層とした。
[比較例2]
基板の熱酸化膜上に、Arガス60sccm、RF電力300W、及び成膜圧力0.25Paの条件にてTaを100nm成膜した。引き続き、Ta層上に、Arガス30sccm、Nガス30sccm、RF電力300W、及び成膜圧力0.25Paの条件にてTa窒化物を50nm成膜した。すなわち、比較例2において、下部電極層は、Ta金属層と、その上層に設けられた一定組成のTa窒化物層の二層構造とした。
[実施例1~6]
Arガス60sccm、RF電力300W、及び成膜圧力0.25Paの条件にてTaを100nm成膜した。引き続き、Arガスを60sccmから30sccmに徐々に減らし、同時にNガスを0sccmから30sccmに徐々に増やしながら、RF電力300W及び成膜圧力0.25Paの条件にて、各例についてTa窒化物を表1中の厚みで成膜した。Ta金属層成膜後にArガスとNガスの流量を連続的に変化させてTa窒化物を成膜することにより、表面から金属層からに向かってTa元素含有量が徐々に増加し、N元素含有量が徐々に減少するTa窒化物層を形成することができる(図5参照)。すなわち、実施例1~6において、下部電極層はTa金属層(実施形態における第2領域)と、Ta元素含有量及びN元素量が徐々に変化する組成傾斜層(実施形態における第1領域)の積層構造とした。表1中、下部電極層の層構成の項目において、第1領域/第2領域の順に記載している。表1中においてTaN(傾斜50nm)は、第1領域が酸窒化物であり、厚み50nmの傾斜層であることを示す。Ta金属層と組成傾斜層との間及び組成傾斜層中において、Ta元素の含有量は連続的に変化しておりシームレスな下部電極層を得た。
-配向制御層-
実施例3では、下部電極層上に基板温度500℃、成膜圧力0.8PaとなるようにArをフローさせ、配向制御層として、BaRuOを10nm成膜した。
実施例4では、下部電極層上に基板温度500℃、成膜圧力0.8PaとなるようにArをフローさせ、配向制御層として、SrRuOを10nm成膜した。
なお、他の実施例、参考例及び比較例は、配向制御層は備えていない。
-圧電膜-
下部電極層もしくは配向制御層上に、圧電膜として、NbドープPZT膜をRF(Radio Frequency)スパッタで厚さ2μm成膜した。成膜時の基板温度は550℃とし、スパッタガスはArガスに対するOガス流量比を3%とした。また、RF電力を1kWとした。
上記のようにして基板上に下部電極及び圧電膜を積層した積層基板を得た。なお、各実施例及び比較例の積層基板に関し、Malvern Panalytical社製のX線回折装置にてX線回折による回折パターンを取得して、圧電膜がペロブスカイト型構造を有することを確認した。
-上部電極層-
上記の積層基板の圧電膜上に100nm厚みのITO層をスパッタにて成膜した。
<下部電極層元素分布測定>
下部電極層の厚み方向における元素分布は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析により測定できる。1例として、実施例2の下部電極層を備えたサンプルを用いてSIMS分析により得たデータを図5に示す。サンプルに対してArイオンを照射してTa窒化物層の表面側から切削しながら分析を行った。
図5において、横軸は下部電極層の厚み方向の位置であり、0が下部電極層の表面位置、横軸右側ほど基板に近づく。図5に示すように、下部電極層の表面位置では、Ta元素とN元素はいずれも含有量が50at%近傍であった。Ta元素は、表面から基板側に向かって徐々に含有量が増加し、50nm程度で略100at%となり、一定値を示した。一方、N元素は、表面から基板側に向かって徐々に含有量が減少し、50nm程度で略0at%となり、一定値を示した。実施例2の下部電極層は、傾斜層成膜時に、ArガスとNガスとの流量比を徐々に変化させることで、図5に示すように、Ta元素とN元素との含有量が厚み方向に徐々に変化するプロファイルを示す層が得られることが明らかである。
<誘電率の測定>
(測定試料の準備)
積層基板を1インチ(25mm)角にダイシング加工し、1インチ角の圧電積層体を作製した。なお、上部電極層の成膜時に、部分的に直径400μmの円形開口を有するメタルマスクを用い、直径400μmの円形状の上部電極層を形成した。そして、円形状の上部電極層を中心に備えた1インチ角を切り出して、誘電率測定用の試料とした。
(測定)
誘電率の測定には、アジレント社製インピーダンスアナライザを用いた。各例の圧電素子に、1kHzの周波数の交流電圧を印加し、測定したインピーダンス値から誘電率を算出した。得られた誘電率を表1に示す。
<圧電定数の測定>
(測定試料の準備)
積層基板から2mm×25mmの短冊状部分を切り出してカンチレバーを作製した。
(測定)
カンチレバーを用いて、I. Kanno et. al. Sensor and Actuator A 107(2003)68.に記載の方法に従い、-10V±10Vの正弦波の印加電圧、すなわち、-10Vのバイアス電圧、振幅10Vの正弦波の印加電圧を用いて圧電定数を測定した測定結果を表1に示す。
各例の圧電素子構成及び評価を表1に纏めて示す。参考例は、従来から用いられているIrからなる下部電極層を備えた圧電素子であり、誘電率及び圧電定数は良好な例である。表1には、各実施例及び比較例について参考例の値に対する誘電率及び圧電定数の割合も併せて記載した。
Figure 2023035170000002
比較例1のように、下部電極層をTa金属層とした場合、下部電極層としてIr金属層を備えた参考例と比べて誘電率は20%低く、圧電定数は15%低い。比較例2は、下部電極層として、Taからなる第2領域と、Ta窒化物からなる第1領域とを備え、第1領域は、厚み方向において略一定の組成を有している。そのため、比較例2では、第1領域と第2領域との境界において、Ta元素の含有量は不連続である。この比較例2の素子では、剥離が生じ、誘電率及び圧電定数の測定が出来なかった。
実施例1~実施例6の圧電素子は、剥離を生じることなく、誘電率及び圧電定数の測定が可能であった。下部電極層の厚み方向におけるTa元素の含有量の変化が連続的であるためと考えられる。
実施例1~実施例6の圧電素子は、参考例と比較しても誘電率及び圧電定数は5%以内の低下にとどまっており、良好な誘電率及び圧電定数を有することが明らかである。特に配向制御層を備えた実施例3、4では、Ir電極層を備えた場合と遜色ない誘電率及び圧電定数を得ることができた。実施例1~6では、下部電極層中の金属種としてTaのみを用いており、Irを用いた従来の圧電素子と比較して材料費を大幅に抑制することができる。実施例1~6に示した通り、本開示の技術によれば、下部電極層にIrを用いた従来の圧電素子と遜色ない圧電特性を示し、かつ、製造コストを大幅に低下可能な圧電素子を提供することができることが明らかである。
1、1A 圧電素子
5、5A 圧電積層体
10 基板
11 密着層
12 下部電極層
12a 下部電極層の圧電膜側の境界
12b 第1領域
12c 第2領域
13 配向制御層
15 圧電膜
18 上部電極層

Claims (10)

  1. 基板上に、下部電極層と、ペロブスカイト型酸化物を含む圧電膜とをこの順に備えた圧電積層体であって、
    前記下部電極層は、Ta元素を含んでおり、
    前記下部電極層の厚み方向において、最も前記圧電膜側にTa窒化物を含んでおり、
    さらに、前記厚み方向に前記Ta元素の含有量が変化する領域を含んでおり、かつ、前記厚み方向における前記Ta元素の含有量の変化は連続的である、圧電積層体。
  2. 前記Ta元素の含有量の変化は、前記圧電膜側から前記基板側に向けて増加基調である、請求項1に記載の圧電積層体。
  3. 前記領域において、前記Ta元素の含有量は、前記厚み方向の最も前記基板側で最大値を示し、かつ、前記圧電膜側から単調に増加している、請求項1又は2に記載の圧電積層体。
  4. 前記下部電極層は、最も前記圧電膜側から20nm~60nmの範囲に亘って前記Ta窒化物を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電積層体。
  5. 前記下部電極層と前記圧電膜との間に、金属酸化物を含む配向制御層を備えた、請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電積層体。
  6. 前記金属酸化物が、Sr及びBaの少なくとも一方を含む、請求項5に記載の圧電積層体。
  7. 前記ペロブスカイト型酸化物が、Pb,Zr,Ti及びOを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の圧電積層体。
  8. 前記ペロブスカイト型酸化物が、Nbを含む、請求項7に記載の圧電積層体。
  9. 前記ペロブスカイト型酸化物が、下記一般式(1)で表される化合物である、
    Pb{(ZrTi1-xy-1Nb}O (1)
    0<x<1、0.1≦y≦0.4、
    請求項8に記載の圧電積層体。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載の圧電積層体と、
    前記圧電積層体の前記圧電膜上に備えられた上部電極層と、を備えた圧電素子。
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