JP2023070575A - 圧電積層体、圧電素子及び圧電積層体の製造方法 - Google Patents

圧電積層体、圧電素子及び圧電積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧電特性及び駆動安定性を向上させた圧電積層体及び圧電素子を得る。【解決手段】圧電積層体及び圧電素子は、基板上に、下部電極層、及び、ペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電膜をこの順に備える。圧電膜は、下部電極層に接した領域に酸素欠損領域を有しており、圧電膜を厚み方向に3等分した3領域のうち中央に位置する領域における酸素量の平均値を第1平均酸素量とし、酸素欠損領域における酸素量の平均値を第2平均酸素量とした場合に、第1平均酸素量に対する第2平均酸素量の比Rが0.97未満であり、酸素欠損領域の厚みが、120nm以上であり、かつ、圧電膜全体の厚みの1/3以下である。【選択図】図1

Description

本開示は、圧電積層体、圧電素子及び圧電積層体の製造方法に関する。
優れた圧電特性及び強誘電性を有する材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O、以下においてPZTという。)などのペロブスカイト型酸化物が知られている。ペロブスカイト型酸化物からなる圧電体は、圧電素子の圧電膜に用いられる。圧電素子は、基板上に、下部電極、圧電膜、及び上部電極を備えている(特許文献1など)。圧電素子は、メモリ、インクジェットヘッド(アクチュエータ)、マイクロミラーデバイス、角速度センサ、ジャイロセンサ、超音波素子(PMUT:Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)及び振動発電デバイスなど様々なデバイスに利用されている。
圧電素子をデバイスに適用する場合、圧電特性が高いほどデバイス性能も高まるため、圧電特性は高いことが望ましい。圧電材料の中でもPZTは、特に優れた圧電特性を有することから、広く各種デバイスに利用されている。PZTは圧電性を示すペロブスカイト構造とは別に、圧電性を示さないパイロクロア構造を取ることが知られている。特に、PZT膜を成膜する際の成膜初期において、パイロクロア相が成長し易く、圧電特性を高めるにあたっては、如何にパイロクロア相を抑制したPZT膜を得るかが重要である。PZT膜においてパイロクロア相を含むことは、圧電特性の低下及び駆動安定性の低下につながる。
PZT膜成膜時のパイロクロア相の成長を抑制する手法として、よく知られているのはシード層を用いる手法である(特許文献2及び特許文献3など)。SrRuO(ルテニウム酸ストロンチウム)、PbTiO(チタン酸鉛)及びSrTiO(チタン酸ストロンチウム)などをシード層として用い、シード層上にPZTを成膜することにより、パイロクロア構造を抑制し、良好なペロブスカイト構造のPZT膜を形成することができる。SrRuO、PbTiO及びSrTiOなどは、パイロクロア構造を取りにくく安定してペロブスカイト構造が得られる材料である。
国際公表第2015/045845号公報 特開2019-052348号公報 特開2017-59751号公報
既述のようなシード層上にPZT膜を成膜することにより、パイロクロア相の成長を抑制することができる。しかしながら、下部電極層と、PZT膜との間に、下部電極層及びPZT膜とは組成の異なる材料からなるシード層を設けることは、工程数の増加及び材料種の増加といったプロセス負荷及び製造コストの上昇に繋がる。
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、プロセス負荷及び製造コストの増加を増加させることなく、パイロクロア相の成長を抑制し、圧電特性及び駆動安定性を向上させた圧電積層体、圧電素子および圧電積層体の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
本開示の圧電積層体は、基板上に、下部電極層、及び、ペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電膜をこの順に備えた圧電積層体であって、
圧電膜は、下部電極層に接した領域に酸素欠損領域を有しており、
圧電膜を厚み方向に3等分した3領域のうち中央に位置する領域における酸素量の平均値を第1平均酸素量とし、酸素欠損領域における酸素量の平均値を第2平均酸素量とした場合に、第1平均酸素量に対する第2平均酸素量の比Rが0.97未満であり、
酸素欠損領域の厚みが、120nm以上であり、かつ、圧電膜全体の厚みの1/3以下である。
本開示の圧電積層体においては、比Rが、0.91以上、0.95以下であることが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、酸素欠損領域の厚みが、150nm以上であり、かつ、圧電膜全体の厚みの1/4以下であることが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、圧電膜が、(100)方向に配向した1軸配向膜であることが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、圧電膜の分極方向が、下部電極層側から圧電膜の膜面に向かう方向であることが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、ペロブスカイト型酸化物が、Pb,Zr,Ti及びOを含むことが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、ペロブスカイト型酸化物が、Bサイトに、V,Nb,Ta,Sb,Mo及びWの中から選択される1以上の元素を含むことが好ましい。
本開示の圧電積層体においては、圧電膜と接する下部電極層が(111)面に配向したIr層であることが好ましい。
本開示の圧電素子は、上記圧電積層体と、圧電積層体の圧電膜上に設けられる上部電極層とを備える。
本開示の圧電積層体の製造方法は、基板上に、下部電極層、及び、ペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電膜をこの順に備えた圧電積層体の製造方法であって、
下部電極層上に圧電膜をスパッタ成膜する圧電膜成膜工程を含み、圧電膜成膜工程において、成膜初期の予め定められた厚みまでを第1酸素体積分率で成膜し、引き続き第1酸素体積分率よりも高い第2酸素体積分率で残りの厚みを成膜する。
本開示の圧電積層体の製造方法においては、予め定められた厚みが25nm以上であることが好ましい。
本開示の圧電積層体、圧電素子及び圧電積層体の製造方法によれば、プロセス負荷及び製造コストを増加させることなく、圧電特性及び駆動安定性を向上させることができる。
一実施形態の圧電素子の層構成を示す断面図である。 圧電膜の厚み方向における酸素量の変化を示す模式図である。 圧電膜の拡大模式図である。 実施例1のXRDチャートである。 比較例1のXRDチャートである。 実施例1及び比較例1のTOF-SIMSのデータを示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面においては、視認容易のため、各層の層厚及びそれらの比率は、適宜変更して描いており、必ずしも実際の層厚及び比率を反映したものではない。
「圧電積層体及び圧電素子」
図1は、実施形態の圧電積層体5及び圧電積層体5を備えた圧電素子1の層構成を示す断面模式図である。図1に示すように、圧電素子1は、圧電積層体5と上部電極層18とを備える。圧電積層体5は、基板10と、基板10上に積層された、下部電極層12及びペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電膜15を備える。ここで、「下部」及び「上部」は鉛直方向における上下を意味するものではなく、圧電膜15を挟んで基板10側に配置される電極を下部電極層12及び圧電膜15に関して基板10と反対の側に配置される電極を上部電極層18と称しているに過ぎない。
圧電膜15はペロブスカイト型酸化物を主成分とする。ここで、主成分とするとは、圧電膜15の80mol%以上をペロブスカイト型酸化物が占めることを意味する。圧電膜15は、90mol%以上をペロブスカイト型酸化物が占めることがより好ましい。さらには、圧電膜15は、略100mol%をペロブスカイト型酸化物が占める(但し、不可避不純物を含む。)ことが好ましい。
圧電膜15は、下部電極層12に接した領域に酸素欠損領域15bを有する。圧電膜15を厚み方向に3等分した3領域のうち中央に位置する領域15a(以下において、中央領域15aという。)における酸素量の平均値を第1平均酸素量とし、酸素欠損領域15bにおける酸素量の平均値を第2平均酸素量とした場合に、第1平均酸素量に対する第2平均酸素量の比Rは0.97未満である。
ペロブスカイト型酸化物は一般にABOで表される。AはAサイト元素、BはBサイト元素、Oは酸素元素を示す。A:B:Oは1:1:3が化学量論比である。Aサイト元素とBサイト元素の比は、A/B=1が化学量論比であるが、ペロブスカイト型構造を維持する範囲でA/Bが1からずれていてもよい。特に、後述するAがPbを主成分とする場合には、A/B>1であることが好ましい。Aサイト元素及びBサイト元素の詳細については後述する。
圧電膜15は、Aサイト元素、Bサイト元素及びその構成比率は全域に亘って同等である。これに対し、圧電膜15の酸素欠損領域15bは、中央領域15aの酸素量に対して、酸素が少ない。酸素欠損領域15bにおけるペロブスカイト型酸化物の組成はABO(b<3)で表される。これは、ペロブスカイト型酸化物における酸素結合量が化学量論比よりも少なく、酸素欠陥を有していることを意味する。一方、中央領域15aを構成するペロブスカイト型酸化物はABOで表され、a=3が基準である。aはペロブスカイト構造を維持し、かつ、後述するbとの関係を満たす範囲で3からずれていてもよい。但し、化学量論比に近いほど、圧電定数が大きいことから、a=3であることが好ましい。ここで、b/aが第1平均酸素量に対する第2平均酸素量の比Rと等しい。すなわち、R=b/aである。
そして、既述の通り、本実施形態の圧電素子1においては、比Rが0.97未満である(R=b/a<0.97)。比Rは0.91以上、0.95以下である(0.91≦R=b/a≦0.95)ことが好ましい。
また、酸素欠損領域15bの厚みtbは120nm以上であり、かつ、圧電膜15全体の厚みtの1/3以下である。酸素欠損領域15bの厚みtbは、150nm以上、かつ、圧電膜15全体の厚み5の1/4以下であることが好ましく、250nm以上であることがさらに好ましい。なお、圧電膜15全体の厚みtは0.4μm~5μm程度が好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
圧電膜15中の酸素量に比例する酸素信号強度は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)によって測定することができる。本開示において、第1平均酸素量に対する第2平均酸素量の比Rは、TOF-SIMSによって測定された酸素信号強度のデータに基づいて算出した値とする。また、酸素欠損領域15bの厚みもTOF-SIMSによって測定されたデータに基づいて求める。
図2は、TOF-SIMSによって測定される酸素信号強度の一例を模式的に示す図である。縦軸は酸素量に比例する酸素信号強度であり、横軸は圧電膜15の厚み方向位置を示す。図2の例では、圧電膜15中の酸素信号強度は、上部電極層18側から中央領域15aにかけて略一定値を示し、中央領域15aよりも下部電極層12側において下部電極層12に向かって徐々に低下している。図2において模式的に示すように、実際に取得される信号値にはノイズが含まれるため、信号値は細かく上下する。
第2平均酸素量に対する第1平均酸素量の比Rの求め方を説明する。圧電膜15を厚み方向に3等分する2つの仮想線k1(k1=t/3)及びk2(k2=2t/3)を引く。仮想線k1とk2との間の領域が中央領域15aである。まず、この中央領域15aの各厚み位置での信号の平均値α(以下において、中央領域平均信号値αという。)を求める。中央領域15aよりも下部電極層12側の領域において、中央領域平均信号値αから信号値が低下する領域を目視により定め、この領域のデータに対して直線フィッティングを行い、近似線mを引く。この近似線mと中央領域平均信号値αとの交点をcとする。下部電極層12との界面からこの交点cまでを酸素欠損領域15bと看做す。すなわち、下部電極層12との界面から交点cまでの距離を圧電膜15における酸素欠損領域15bの厚みtbである。そして、この酸素欠損領域15bにおける、信号値の平均値βを(以下において、酸素欠損領域平均信号値β)を求める。
以上のようにして、TOF-SIMSのデータから中央領域平均信号値αと、酸素欠損領域平均信号値βを求め、β/αを算出する。酸素信号強度は酸素量に比例するので、中央領域平均信号値αに対する酸素欠損領域平均信号値βの比β/αは、中央領域15aにおける酸素量の平均値(第1平均酸素量)に対する、酸素欠損領域15bにおける酸素量の平均値(第2平均酸素量)の比Rと等しい(R=β/α)。
以上の通り、TOF-SIMSのデータから酸素欠損領域15bの厚みtb及び第1平均酸素量に対する第2平均酸素量の比Rを求めることができる。
圧電膜15を構成するペロブスカイト型酸化物のAサイト元素Aは、例えば、Pb(鉛)、Ba(バリウム)、La(ランタン)、Sr、Bi(ビスマス)、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、Cd(カドミウム)、Mg(マグネシウム)及びK(カリウム)のうちの1つもしくは2以上の組み合わせである。
Bサイト元素Bは、例えば、Ti(チタン)、Zr、(ジルコニウム)、V(バナジウム),Nb(ニオブ),Ta(タンタル),Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Ru、Co(コバルト)、Ir、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、In、スズ、アンチモン(Sb)及びランタニド元素のうちの1つもしくは2以上の組み合わせである。
圧電膜15に含まれるペロブスカイト型酸化物としては、Pb,Zr,Ti及びOを含む、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:lead zirconate titanate)系が好ましい。PZT系のペロブスカイト型酸化物としては、ペロブスカイト型構造を維持できる範囲でAサイトにPb以外の元素が添加されていてもよく、BサイトにZr、Ti以外の元素が添加されていてもよい。
特に、ペロブスカイト型酸化物が、PZTのBサイトに添加物B1を含む、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Pb{(ZrTi1-x1-yB1}O (1)
ここで、B1はV(バナジウム),Nb(ニオブ),Ta(タンタル),Sb(アンチモン),Mo(モリブデン)及びW(タングステン)の中から選択される1以上の元素であることが好ましい。B1がNbであることが最も好ましい。ここで、0<x<1、0<y<0.4である。nは中央領域15aにおいて上述のaであり、酸素欠損領域15bにおいて上述のbである。
B1は、Vのみ、あるいはNbのみ等の単一の元素であってもよいし、VとNbとの混合、あるいはVとNbとTaの混合等、2あるいは3以上の元素の組み合わせであってもよい。B1がこれらの元素である場合、Aサイト元素のPbと組み合わせて非常に高い圧電定数を実現することができる。
なお、圧電膜15は、図3に断面模式図を示すように、多数の柱状結晶体17を含む柱状構造を有する柱状構造膜であることが好ましい。多数の柱状結晶体17は基板10(図1参照)の表面に対して非平行に延び、(100)方向に配向した1軸配向膜であることが好ましい。配向構造とすることで、より大きな圧電性を得ることができる。また、図3に示すように、圧電膜15の分極方向Pは、下部電極層12から上部電極層18に向かう方向であることが好ましい。すなわち、圧電積層体5において、圧電膜15の分極方向Pは下部電極層12側から上部電極層18側の膜面に向かう方向であることが好ましい。
PZT系のペロブスカイト型酸化物において、上記一般式(1)においてB1として、V,Nb、Ta、Sb、MoあるいはWが添加された場合、下部電極側から上部電極側に向かう向きの分極が安定となる。そのため、スパッタ成膜直後の状態(as deposited)において、圧電膜15は、分極方向が下部電極層から上部電極層に向かう向きに形成される。B1としては、特にNbが好ましい。
また、圧電膜15は、図3に示すように、下部電極層12との界面にパイロクロア相16を含む場合がある。詳細は後述するが、パイロクロア相16を含んでいる場合であっても、従来の圧電膜と比較してパイロクロア相16は十分に抑制された状態である。パイロクロア相16は20nm以下であることが好ましい。なお、パイロクロア相16は下部電極層12の表面に均一に形成されるわけではなく、図3に示すように部分的に成長している。パイロクロア相16の厚みの算出方法は実施例にて説明する。なお、パイロクロア相16が20nm以下である場合、XRD(X-ray diffraction)チャートにおいてパイロクロア相のピークはほぼ観察されない(実施例参照)。
基板10としては特に制限なく、シリコン、ガラス、ステンレス鋼、イットリウム安定化ジルコニア、アルミナ、サファイヤ、シリコンカーバイド等の基板が挙げられる。基板10としては、シリコン基板の表面にSiO酸化膜が形成された熱酸化膜付きシリコン基板等の積層基板を用いてもよい。
下部電極層12は、上部電極層18と対をなし、圧電膜15に電圧を加えるための電極である。下部電極層12の主成分としては特に制限なく、Au(金)、Pt(白金)、Ir(イリジウム)、Ru(ルテニウム)、Ti、Mo、Ta、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ag(銀)等の金属または金属酸化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、ITO(Indium Tin Oxide)を用いてもよい。特には、下部電極層12としては、(111)面に配向したIr層を圧電膜15と接する面に備えていることが好ましい。
下部電極層12の層厚は特に制限なく、50nm~300nm程度であることが好ましく、100nm~300nmがより好ましい。
上部電極層18は、下部電極層12と対をなし、圧電膜15に電圧を加えるための電極である。上部電極層18の主成分としては特に制限なく、一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料の他、ITO(Indium Tin Oxide)、LaNiO、及びSRO(SrRuO)等の導電性酸化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
上部電極層18の層厚は特に制限なく、50nm~300nm程度であることが好ましく、100nm~300nmがより好ましい。
本実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1において、圧電膜15は、下部電極層12に接した領域に酸素欠損領域15bを有している。下部電極層12上にペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電膜15を成膜する際に、酸素欠陥を有するペロブスカイト型酸化物を先に成長させることによって、パイロクロア相の成長を抑制することができる。特に、圧電膜15を厚み方向に3等分した3領域のうち中央に位置する領域における酸素量の平均値を第1平均酸素量とし、酸素欠損領域における酸素量の平均値を第2平均酸素量とした場合に、第1平均酸素量に対する第2平均酸素量の比Rが0.97未満であり、酸素欠損領域15bの厚みtbが、100nm超であることにより、パイロクロア相の成長を抑制する効果を確実なものとすることができる。パイロクロア相を十分に抑制することができるので、良好なペロブスカイト型酸化物を含む圧電膜15を備えた圧電積層体5及び圧電素子1を得ることができる。パイロクロア相が抑制された圧電膜15を備えているので、高い圧電特性を得ることができ、従来よりも高い駆動安定性を得ることができる。また、酸素欠損領域15bの圧電膜15全体の厚みtの1/3以下であることにより、圧電特性および駆動安定性の低下を抑制することができる。ここで、駆動安定性とは、長期亘って安定した駆動が可能であることを意味する。
また、本実施形態の圧電積層体5及び圧電素子1は、酸素欠損領域15bをシード層として用いているが、圧電膜15全体を通して、酸素量以外は同一組成であるので、圧電膜と異なる材料からなるシード層を備えた従来の圧電素子と比較して、プロセス負荷及び製造コストの増加を抑制することができる。すなわち、本開示の技術によれば、圧電積層体5及び圧電素子1によれば、プロセス負荷及び製造コストを増加させることなく、圧電特性及び駆動安定性を向上させることができる。
中央領域15aの第1平均酸素量に対する、酸素欠損領域15bにおける第2平均酸素量の比Rが0.91以上0.95以下である場合に、パイロクロア相の抑制効果が特に高い。また、酸素欠損領域15bの厚みが、150nm以上であり、かつ、圧電膜15全体の厚みの1/4である場合に、パイロクロア相の抑制効果と高い圧電定数の維持の両立が可能である。
圧電膜15は、ペロブスカイト型酸化物を含むが、特にPbを含有するペロブスカイト型酸化物を含む場合、成膜初期にパイロクロア相が形成されやすい。そのため、圧電膜15が、Pbを含有するペロブスカイト型酸化物を主成分とする場合に、パイロクロア相の抑制効果が特に高い。Pbを含有するペロブスカイト型酸化物のうち、Pb,Zr,Ti及びOを含むPZT系ペロブスカイト型酸化物は圧電特性が高く特に好ましい。特に、ペロブスカイト型酸化物が、上述の一般式(1)で表される化合物であり、B1はV,Nb,Ta,Sb,Mo及びWの中から選択される1以上の元素であれば、さらに高い圧電特性が得られる。
また、既述の通り、Bサイトに上記B1元素を添加することにより、成膜直後の状態において、圧電膜15の分極方向の向きが下部電極層から上部電極層に向かう向きとすることができる。そのため、分極処理をすることなく、高い圧電性を得ることができる。
下部電極層12としては、Irが好適である。Irは圧電膜15との密着性が良好であるため、下部電極層12と圧電膜15との剥離を抑制できる。Irは、導電性が高く下部電極層12の低抵抗化を図ることができる。また、Irは、圧電膜成膜時において高温になった場合にもAu等の他の金属と比較して元素拡散が生じにくく、駆動安定性が高い。一方で、Irはスパッタ等で成膜された場合に、(111)面に優先的に配向する。この(111)面上にPZT系ペロブスカイト型酸化物を成膜した場合、成膜初期にパイロクロア相が形成されやすい。従って、(111)面配向のIr層からなる下部電極層12に圧電膜15を成膜するに際して、下部電極層12に接した領域に酸素欠損領域15bを設けることによる、パイロクロア相の成長を抑制する効果が特に高い。
「圧電積層体及び圧電素子の製造方法」
圧電積層体及び圧電素子は、以下のようにして製造することができる。
基板10上に下部電極層12を成膜し、引き続き圧電膜15を成膜することで圧電積層体5を得ることができ、さらに圧電膜15上に上部電極層18を成膜することで圧電素子1を得ることができる。各層12、15及び18の成膜にはスパッタ成膜が好適である。
圧電膜15の成膜工程において、スパッタ成膜する際に、成膜チャンバ内の成膜ガス中の酸素体積分率を変化させる。具体的には、圧電膜15の、成膜初期の予め定まられた厚みまで第1酸素体積分率にて成膜し、その後、残りの厚みを、酸素体積分率を上昇させた第2酸素体積分率で成膜する。第1酸素体積分率<第2酸素体積分率とすることで、下部電極層12と接する領域に中央領域15aよりも酸素量の少ない酸素欠損領域15bを形成し、その後、化学量論比もしくは化学量論比に近い酸素量のペロブスカイト型酸化物を含む圧電膜15を成長させる。
例えば、予め、化学量論比のペロブスカイト型酸化物を成膜することが可能な酸素体積分率を調べておき、化学量論比のペロブスカイト型酸化物を成膜可能な酸素体積分率を第2酸素体積分率として設定する。第1酸素体積分率として、第2酸素体積分率より小さく、化学量論比よりも酸素結合量が小さいペロブスカイト型酸化物が形成される酸素体積分率に設定する。第2酸素体積分率は、一例として、8%以上15%以下程度であり、第1酸素体積分率は、一例として2%以上、8%未満程度である。
第1酸素体積分率で形成する予め定められた厚みは、15nm以上が好ましく、25nm以上がより好ましい。一例として、第1酸素体積分率で15nm~200nm、好ましくは25nm~150nm、より好ましくは50nm~100nm成膜する。その後、第1酸素体積分率から第2酸素体積分率に変化させ、第2酸素体積分率にて所望の厚みとなるまで成膜する。このように、成膜初期の一定厚みを第1酸素体積分率で成膜することによって、成膜初期におけるパイロクロア相の成長を抑制することができる。圧電膜15を成膜初期に第1酸素体積分率で25nm以上成膜することにより、パイロクロア相を抑制する効果をより確実にすることができる。また、Pbを含有するペロブスカイト型酸化物を成膜しようとする場合においては、成膜初期にパイロクロア相が成長し易いため、本製造方法によるパイロクロア相の成長の抑制効果が高い。
圧電膜15の成膜工程において、酸素体積分率以外の条件は変化させない。すなわち、ターゲット、ターゲットへの投入電力、成膜チャンバ内の真空度(成膜圧力)及び基板温度等の酸素体積分率以外の成膜条件は、圧電膜15全体を成膜するまで同一とする。これによって、圧電膜15は、厚み方向においても酸素量以外は同じ組成とすることができる。
なお、第1酸素体積分率で、予め定められた厚みまで成膜し、その後、第2酸素体積分率で所望の厚みtとなるまで成膜して得られる圧電膜15中において、酸素欠損領域15bは、第1酸素体積分率で成膜した厚みよりも広い範囲に広がる(実施例参照)。そのため、上記製造方法により得られた圧電積層体5及び圧電素子1における圧電膜15における酸素欠損領域15bの厚みtbは、成膜工程における第1酸素体積分率で成膜される予め定められた厚みとは、異なる。
上記各実施形態の圧電素子1あるいは圧電積層体5は、超音波デバイス、ミラーデバイス、センサ及びメモリなどに適用可能である。
以下、本開示の圧電素子の具体的な実施例及び比較例について説明する。最初に、各例の圧電素子の作製方法について説明する。各層の成膜には、RF(Radio frequency)スパッタ装置を用いた。なお、圧電膜以外の条件は、各例で共通とした。作製方法の説明においては、図1に示した圧電素子1の各層の符号を参照して説明する。
(下部電極層成膜)
基板10として、4インチサイズの熱酸化膜付きシリコン基板を用いた。基板10上に下部電極層12をRF(radio-frequency)スパッタリングにて成膜形成した。具体的には、下部電極層12として基板10上に50nm厚みのTiW層を成膜し、引き続き、200nm厚みのIr層を成膜した。すなわち、下部電極層12は、TiW層とIr層の二層構造とした。各層のスパッタ条件は以下の通りとした。
-TiW層スパッタ条件-
ターゲット-基板間距離:100mm
ターゲット投入電力:600W
Arガス圧:0.5Pa
基板設定温度:350℃
-Ir層スパッタ条件-
ターゲット-基板間距離:100mm
ターゲット投入電力:600W
Arガス圧:0.1Pa
基板設定温度:350℃
(圧電膜成膜)
RFスパッタリング装置内に上記下部電極層12付きの基板10を載置し、圧電膜15として、BサイトへのNbドープ量を12at%としたNbドープPZT膜を2μm成膜した。ここでは、Pb1.3Zr0.435Ti0.445Nb0.12ターゲットを用いた。100nm/1分の成膜レートとし、計20分間成膜して約2μmの圧電膜15を得た。この際のスパッタ条件は、以下の通りとした。
-圧電膜スパッタ条件-
ターゲット-基板間距離:60mm
ターゲット投入電力:500W
真空度:0.3Pa、Ar及びO混合雰囲気
基板設定温度:700℃
上記条件は圧電膜全域において共通とし、成膜室内における酸素体積分率の条件を各実施例及び比較例で異ならせた。各実施例及び比較例について、圧電膜形成時の酸素体積分率の条件は以下の通りとした。比較例1、2では、圧電膜全域において共通の酸素体積分率とし、実施例1~7においては、圧電膜成膜初期において第1酸素体積分率とし、その後第2酸素体積分率に変化させた。
「実施例1」
成膜初期の1分間のみ(厚み100nm)を酸素体積分率5%で成膜し、残り19分間は酸素体積分率10%で成膜した。
「実施例2」
成膜初期の1分間のみ(厚み100nm)酸素体積分率6%で成膜し、残り19分間は酸素体積分率10%で成膜した。
「実施例3」
成膜初期の1分間のみ(厚み100nm)酸素体積分率7.5%で成膜し、残り19分間は酸素体積分率10%で成膜した。
「実施例4」
成膜初期の1分間のみ、すなわち、厚み100nmを酸素体積分率2%で成膜し、残り19分間は酸素体積分率10%で成膜した。
「実施例5」
成膜初期の2分間のみ、すなわち、厚み200nmを酸素体積分率5%で成膜し、残り18分間は酸素体積分率10%で成膜した。
「実施例6」
成膜初期の30秒間(0.5分間)のみ、すなわち、厚み50nmを酸素体積分率5%で成膜し、残り19分30秒間は酸素体積分率10%で成膜した。
「実施例7」
成膜初期の15秒間(約0.25分間)のみ、すなわち、厚み25nmを酸素体積分率5%で成膜し、残り19分45秒間は酸素体積分率10%で成膜した。
「実施例8」
成膜初期の10秒間(約0.17分間)のみ、すなわち、厚み17nmを酸素体積分率5%で成膜し、残り19分50秒間は酸素体積分率10%で成膜した。
「比較例1」
20分間全て(厚み2μm)酸素体積分率10%で成膜した。
「比較例2」
20分間全て(厚み2μm)酸素体積分率5%で成膜した。
各例において圧電膜成膜時に異ならせた条件を表1にまとめて示す。
Figure 2023070575000002
(上部電極層成膜)
次に、RFスパッタリング装置の成膜チャンバ内に圧電膜15成膜後の基板10を載置し、ITO(Indium Tin Oxide)ターゲットを用い、厚み200nmのITO層を上部電極層18として成膜した。なお、上部電極層18の成膜前に、圧電膜15上に評価サンプル用のリフトオフパターンを作製し、上部電極層18はリフトオフパターン上に形成した。上部電極層18の成膜条件は、以下の通りとした。
-上部電極層スパッタ条件-
ターゲット-基板間距離:100mm
ターゲット投入電力:200W
真空度:0.3Pa、Ar及びO混合ガス(O体積分率5%)
基板設定温度:RT(室温)
(評価用電極パターンの形成)
上部電極層18の形成後、リフトオフ法により、リフトオフパターンに沿って上部電極層18をリフトオフして、上部電極層18をパターニングした。
以上の工程により、基板10上に下部電極層12、圧電膜15及びパターニングされた上部電極層18を備えた、各例の圧電積層基板を作製した。
(評価用サンプルの準備)
-評価用サンプル1-
圧電積層基板から、2mm×25mmの短冊状部分を切り出して、評価用サンプル1としてカンチレバーを作製した。
-評価用サンプル2-
圧電積層基板から、圧電膜15の表面中心に直径400μmの円形にパターニングされた上部電極層18を有する25mm×25mmの部分を切り出して、評価用サンプル2とした。
<圧電特性の評価>
各実施例及び比較例の圧電特性の評価として、圧電定数d31を測定した。圧電定数d31の絶対値が大きいほど圧電特性が高く、小さいほど圧電特性は低い。
圧電定数d31の測定は、上記評価用サンプル1を用い、I.Kanno et. al. Sensor and Actuator A 107(2003)68.に記載の方法に従って、-10V±10Vの正弦波の印加電圧で行った。結果を表2に示す。
<駆動安定性の評価>
駆動安定性の評価として経時的絶縁破壊(TDDB:Time Dependent Dielectric Breakdown)試験を行った。評価用サンプル2を用い、120℃の環境下にて、下部電極層12を接地し、上部電極層18に-40Vの電圧を印加して、電圧印加開始から絶縁破壊が生じるまでの時間(hr)を測定した。測定結果は表2に示す。絶縁破壊とは、400μmの円形状の上部電極層に電圧を印加し、1mA以上の電流が流れたことをもって定義する。なお、TDDB試験は1000時間行い、1000時間まで絶縁破壊が生じなかったものは、表2中において1000と記載した。
<結晶性評価>
RIGAKU製、RINT-ULTIMAIIIを用いたXRD分析にて各例の圧電積層体の圧電膜の結晶性を評価した。
(パイロクロア相由来のピーク強度評価)
図4に実施例1、図5に比較例1についてのXRDチャートを示す。結晶性評価は、上部電極層成膜前の圧電積層体を用いて行った。
各例について得られたXRDチャートから、異相であるパイロクロア相(222)の強度を求めた。パイロクロア相の(222)が検出される領域は、29°近傍であり、得られたXRD回折の強度(counts)からバックグラウンド由来のノイズを除去したものをパイロクロア相(222)由来のピーク強度とした。
また、XRDチャートから、
py(222)/{pr(100)+pr(110)+pr(111)}×100 %
をパイロクロア率として算出した。
各面からの強度はそれぞれ以下のようにして求めた。
2θが25°~28°でのcounts数の平均値をバックグラウンド由来のノイズNとした。
py(222)の強度は、2θが28°~30°の範囲の最大counts数からNを除した値とした。
pr(100)の強度は、2θが21°~23°の範囲の最大counts数からNを除した値とした。
pr(110)の強度は、2θが30°~32°の範囲の最大counts数からNを除した値とした。
pr(111)の強度は、2θが37.5°~39.5°の範囲の最大counts数からNを除した値とした。
図4及び図5において、ペロブスカイト相(100)のピーク値は同等である。一方、パイロクロア相(222)には差がみられる。図5に示すように、比較例1では、29°近傍に明らかなパイロクロア相(222)のピークがある。図4に示す実施例1では、比較例1の場合に比べるとパイロクロア相(222)ピーク値が低下し、ほとんど観察されなかった。図4及び図5に示すように、(001)に1軸配向したPZT膜が得られた。
<パイロクロア相厚み評価>
実施例及び比較例について、TEM(Transmission Electron Microscope)像を撮影し、TEM像からパイロクロア相の厚みを決定した。圧電膜において、パイロクロア相とペロブスカイト相とでTEM像中におけるコントラストが異なるため、パイロクロア相の領域を特定し、厚みを算出することができる。なお、圧電膜のパイロクロア相以外の部分にはペロブスカイト型酸化物の柱状結晶体が形成されている様子が観察された。パイロクロア相の厚みは、パイロクロア相が下部電極層の表面に均一に形成されるわけではない為、平均厚みとして計算した。
具体的には、画像処理ソフトのコントラスト調整機能を利用して、所定のしきい値で原画像を2値化し、画像処理ソフトのエッジ抽出機能を用いてパイロクロア相を抽出する。この場合のしきい値は、できるだけノイズを除去するとともに明らかにパイロクロア相と判別できるものだけが抽出されるようにする。2値化画像においてパイロクロア型酸化物層の輪郭が不鮮明な場合、2値化画像を見ながら経験的に輪郭線を引き、その内部を塗りつぶす。抽出したパイロクロア相の面積を画像処理ソフトのピクセル数から算出しTEM像の視野幅で除して平均層厚とする。画像処理ソフトとしては、ここでは、Photoshop(登録商標)を利用した。上記のようにして求めたパイロクロア相の厚みを表2に示す。
<PZT中の酸素量測定:TOF-SIMS>
TOF-SIMSは、固体試料にイオンビーム(一次イオン)を照射し、表面から放出されるイオン(二次イオン)を、その飛行時間差を利用して質量分離して、特定の元素量を測定する手法である。本実施例においては、下記装置を使用して分析を行った。
測定装置:ION-TOF社製TOF_SIMS5
一次イオン源:Bi
スパッタイオン源:Cs
TOF-SIMS測定用の試料として、各例の圧電積層基板から1cm×1cm切り出して、圧電膜15を下部電極層12との界面で剥離した。下部電極層12を剥離した圧電膜15の剥離面側から50μm角の範囲にイオンビームを照射して測定を行った。
TOF-SIMSによる測定データから圧電膜の中央領域の酸素量、酸素欠損領域の酸素量及び酸素欠損領域の厚みをそれぞれ求めた結果を表2に示す。
一例として、図6に実施例1及び比較例1の圧電膜中における酸素量測定データを示す。図6に示すように、まず、圧電膜を厚み方向に三等分する仮想線k1及びk2を引き中央領域を定めた。そして、中央領域の酸素信号強度の平均値α(中央領域平均信号値α)を算出した。実施例1及び比較例1において、中央領域の平均値αは同等であった。そして、中央領域よりも下部電極層側の領域において、中央領域平均信号値αから信号値が低下する領域を目視により定め、この領域のデータに対して直線フィッティングを行い、近似線を引いた。下部電極側の界面(ここでは、剥離面)から、近似線と中央領域平均信号値αとの交点までを酸素欠損領域の厚みとして求めた。そして、酸素欠損領域における酸素信号強度の平均値βを求めた。図6中において、実施例1についての酸素欠損領域は酸素欠損領域実1として示し、比較例1についての酸素欠損領域は酸素欠損領域比1として示している。また、β実1が、実施例1についての酸素信号強度平均値であり、β比1が、比較例1についての酸素信号強度平均値である。
表3に各例の中央領域平均信号値α、酸素欠損領域平均信号値β、中央領域の平均酸素量(第1平均酸素量)に対する酸素欠損領域の平均酸素量(第2平均酸素量)の比R(=β/α)、及び酸素欠損領域の厚みtbを示す。
各評価結果を表2及び表3に示す。
Figure 2023070575000003

Figure 2023070575000004
第1酸素体積分率で17nm以上成膜し、酸素欠損領域の厚みが120nm以上であっ実施例1~8は、比較例1及び2と比較して圧電定数が高く、かつ駆動安定性も高かった。実施例1~8のうち、第1酸素体積分率で25nm以上成膜し、酸素欠損領域の厚みが150nm以上であった実施例1~7は、実施例8と比較してパイロクロア相の抑制効果が高く、圧電定数及び駆動安定性のいずれも良好な結果が得られた。
比較例1及び2はいずれも圧電膜全域に亘って同一の酸素体積分率で成膜されている。比較例1の圧電膜は、全域に亘って、化学量論比の酸素結合量のペロブスカイト相が得られる酸素体積分率で成膜され、比較例2の圧電膜は、全域に亘って、化学量論比よりも少ない酸素結合量のペロブスカイト相が得られる酸素体積分率で成膜されている。比較例1及び2は、酸素体積分率を変化させていないが、いずれも下部電極層との界面において酸素欠陥を有する酸素欠損領域が形成されていた。しかし、実施例1~8のように、成膜初期に第1酸素体積分率で成膜し、その後、酸素体積分率を上昇させて第2酸素体積分率で成膜した場合と比較して、中央領域における酸素量と酸素欠損領域の酸素量との差は小さく、酸素欠損領域の厚みも薄い。比較例2のように、圧電膜全体を酸素体積分率5%で成膜した場合、実施例のパイロクロア相の抑制効果と同等の効果が得られた。この結果から、下部電極層に接する領域において、化学量論比の酸素結合量よりも少ない酸素結合量のペロブスカイト型酸化物を成長させることが、パイロクロア相の抑制に効果があると結論付けられる。一方で、比較例2の酸素体積分率5%で成膜した場合、比較例1の酸素体積分率10%で成膜した場合と比較して、圧電定数が1/2と大幅に低下している。この結果から、酸素欠陥を含むペロブスカイト型酸化物は、酸素欠陥が少ない、あるいは化学量論比のペロブスカイト型酸化物と比較して圧電定数が低く、かつ、駆動安定性が低いことが明らかである。
実施例1~8は、いずれも下部電極層に接した領域に酸素欠損領域を有しており、中央領域の酸素量の平均値である第1平均酸素量と、酸素欠損領域における酸素量の平均値である第2平均酸素量の比Rが0.97未満であり、酸素欠損領域の厚みが、120nm以上であり、かつ、圧電膜全体の厚みの1/3以下を満たす。実施例1~8においては、圧電膜と別組成のシード層を備えることなく、パイロクロア相の成長を抑制することができた。すなわち、プロセス負荷及び製造コストを増加させることなく、パイロクロア相の抑制することができた。酸素欠損領域を圧電膜全体の厚みの1/3以下とすることによって、圧電定数および駆動安定性の低下を抑制でき、また、パイロクロア相の抑制効果による圧電定数の向上および駆動安定性の向上を実現できた。
1 圧電素子
5 圧電積層体
10 基板
12 下部電極層
15 圧電膜
15a 中央領域
15b 酸素欠損領域
16 パイロクロア相
17 柱状結晶体
18 上部電極層
t 圧電膜厚み
tb 酸素欠損領域厚み

Claims (11)

  1. 基板上に、下部電極層、及び、ペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電膜をこの順に備えた圧電積層体であって、
    前記圧電膜は、前記下部電極層に接した領域に酸素欠損領域を有しており、
    前記圧電膜を厚み方向に3等分した3領域のうち中央に位置する領域における酸素量の平均値を第1平均酸素量とし、前記酸素欠損領域における酸素量の平均値を第2平均酸素量とした場合に、前記第1平均酸素量に対する前記第2平均酸素量の比Rが0.97未満であり、
    前記酸素欠損領域の厚みが、120nm以上であり、かつ、前記圧電膜全体の厚みの1/3以下である、圧電積層体。
  2. 前記比Rが、0.91以上0.95以下、である、請求項1に記載の圧電積層体。
  3. 前記酸素欠損領域の厚みが、150nm以上であり、かつ、前記圧電膜全体の厚みの1/4以下である、請求項1または2に記載の圧電積層体。
  4. 前記圧電膜が、(100)方向に配向した1軸配向膜である、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電積層体。
  5. 前記圧電膜の分極方向が、前記下部電極層側から前記圧電膜の膜面に向かう方向である、請求項4に記載の圧電積層体。
  6. 前記ペロブスカイト型酸化物が、Pb,Zr,Ti及びOを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電積層体。
  7. 前記ペロブスカイト型酸化物が、Bサイトに、V,Nb,Ta,Sb,Mo及びWの中から選択される1以上の元素を含む、請求項6に記載の圧電積層体。
  8. 前記圧電膜と接する前記下部電極層が(111)面に配向したIr層である、請求項1から7のいずれか1項に記載の圧電積層体。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の圧電積層体と、
    前記圧電積層体の前記圧電膜上に設けられる上部電極層とを備えた、圧電素子。
  10. 基板上に、下部電極層、及び、ペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電膜をこの順に備えた圧電積層体の製造方法であって、
    前記下部電極層上に前記圧電膜をスパッタ成膜する圧電膜成膜工程を含み、前記圧電膜成膜工程において、成膜初期の予め定められた厚みまでを第1酸素体積分率で成膜し、引き続き前記第1酸素体積分率よりも高い第2酸素体積分率で残りの厚みを成膜する、圧電積層体の製造方法。
  11. 前記予め定められた厚みが25nm以上である、請求項10に記載の、圧電積層体の製造方法。
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