JP2023024250A - 電極活物質、電極、蓄電デバイス、電極活物質の製造方法及び電極の製造方法 - Google Patents
電極活物質、電極、蓄電デバイス、電極活物質の製造方法及び電極の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】出力特性をより向上することができる新規な電極活物質、電極、蓄電デバイス、電極活物質の製造方法及び電極の製造方法を提供する。【解決手段】蓄電デバイスは、正極22と、負極23と、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体27とを備える。負極に用いる電極に含まれる電極活物質は、2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを全て含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体である。電極は、100面の面間距離が10.4~10.7Å、200面の面間距離が5.15~5.3Åの層状構造体を電極活物質として含むか、CuKα線を用いて測定した電極のXRDスペクトルの2θ=7.5°~25°の範囲において、2θ=8.18°~8.49°に現れる回折ピーク及び2θ=16.72°~17.20°に現れる回折ピークの高さが最も高い。【選択図】図2
Description
本明細書では、電極活物質、電極、蓄電デバイス、電極活物質の製造方法及び電極の製造方法を開示する。
従来、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスとしては、芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を負極活物質に用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。負極活物質としての層状構造体は、導電性を有さないが、非水系電解液に溶けにくく、結晶構造を保つことにより充放電サイクル特性の安定性をより高めることができる。
しかしながら、上述の特許文献1の蓄電デバイスでは、サイクル特性の安定性をより高めることができるものの、出力特性をより向上することが求められていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、出力特性をより向上することができる新規な電極活物質、電極、蓄電デバイス、電極活物質の製造方法及び電極の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、芳香族ジカルボン酸金属塩を複数種含む調製溶液を用い、所定のXRDスペクトルを示す構造体を作製するものとすると、出力特性をより向上することができる新規な電極活物質、電極及び蓄電デバイスを作製することができることを見いだし、本開示を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示する電極活物質は、
蓄電デバイス用の電極活物質であって、
式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体であり、
CuKα線を用いて前記電極活物質のXRDスペクトルを測定しブラッグの式を用いて面間距離を導出したときに100面の面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、200面の面間距離d200が5.15Å以上5.3Å以下、を満たす層状構造体を前記混合塩構造体が含み、
アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力するものである。
蓄電デバイス用の電極活物質であって、
式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体であり、
CuKα線を用いて前記電極活物質のXRDスペクトルを測定しブラッグの式を用いて面間距離を導出したときに100面の面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、200面の面間距離d200が5.15Å以上5.3Å以下、を満たす層状構造体を前記混合塩構造体が含み、
アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力するものである。
本明細書で開示する電極は、
上述した電極活物質を含むものである。
上述した電極活物質を含むものである。
あるいは、本明細書で開示する電極は、
蓄電デバイス用の電極であって、
式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体を電極活物質として含み、
CuKα線を用いて前記電極のXRDスペクトルを測定しブラッグの式を用いて面間距離を導出したときに100面の面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、200面の面間距離d200 が5.15Å以上5.3Å以下となる層状構造体を前記混合塩構造体が含み、
アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力するものである。
蓄電デバイス用の電極であって、
式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体を電極活物質として含み、
CuKα線を用いて前記電極のXRDスペクトルを測定しブラッグの式を用いて面間距離を導出したときに100面の面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、200面の面間距離d200 が5.15Å以上5.3Å以下となる層状構造体を前記混合塩構造体が含み、
アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力するものである。
あるいは、本明細書で開示する電極は、
蓄電デバイス用の電極であって、
式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体を電極活物質として含み、
CuKα線を用いて前記電極のXRDスペクトルを測定したときに、前記XRDスペクトルの2θが7.5°から25°の範囲において、2θが8.18°以上8.49°以下の範囲に現れる回折ピーク及び16.72°以上17.20°以下の範囲に現れる回折ピークの高さが最も高く、
アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力するものである。
蓄電デバイス用の電極であって、
式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体を電極活物質として含み、
CuKα線を用いて前記電極のXRDスペクトルを測定したときに、前記XRDスペクトルの2θが7.5°から25°の範囲において、2θが8.18°以上8.49°以下の範囲に現れる回折ピーク及び16.72°以上17.20°以下の範囲に現れる回折ピークの高さが最も高く、
アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力するものである。
本明細書で開示する蓄電デバイスは、
上述した電極である負極と、
正極活物質を含む正極と、
正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
上述した電極である負極と、
正極活物質を含む正極と、
正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
本明細書で開示する電極活物質の製造方法は、
上述した電極活物質の製造方法であって、
前記式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記混合塩構造体を析出させる析出工程、を含むものである。
上述した電極活物質の製造方法であって、
前記式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記混合塩構造体を析出させる析出工程、を含むものである。
本明細書で開示する電極の製造方法は、
上述した電極の製造方法であって、
前記式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記混合塩構造体を析出させる析出工程と、
前記混合塩構造体を用いて前記電極を作製する電極化工程と、
を含むものである。
上述した電極の製造方法であって、
前記式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記混合塩構造体を析出させる析出工程と、
前記混合塩構造体を用いて前記電極を作製する電極化工程と、
を含むものである。
本開示では、出力特性をより向上することができる新規の電極活物質、電極、蓄電デバイス、電極活物質の製造方法及び電極の製造方法を提供することができる。この電極活物質、電極、蓄電デバイス、電極活物質の製造方法及び電極の製造方法では、複数種の芳香族ジカルボン酸アニオンを適宜配合した調製溶液を用いることにより、新規な構造の混合塩構造体を調製することができる。また、特定のXRDスペクトルを示す混合塩構造体では、100面の面間距離d100や200面の面間距離d200が適度に広いことなどにより、キャリアイオンの拡散性が向上し、良好な出力特性を示すものと推察される。
(電極活物質)
本明細書で開示する電極活物質は、蓄電デバイス用の電極活物質である。電極活物質は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで電気エネルギーを貯蔵出力する。キャリアであるアルカリ金属イオンとしては、例えば、LiイオンやNaイオン、Kイオンなどのうち1以上が挙げられる。この電極活物質は、2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体である。この混合塩構造体では、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力する。
本明細書で開示する電極活物質は、蓄電デバイス用の電極活物質である。電極活物質は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで電気エネルギーを貯蔵出力する。キャリアであるアルカリ金属イオンとしては、例えば、LiイオンやNaイオン、Kイオンなどのうち1以上が挙げられる。この電極活物質は、2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体である。この混合塩構造体では、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力する。
電極活物質において、有機骨格層は、式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上を有するものとしてもよい。但し、この式(1)~(3)において、aは2以上5以下の整数であり、bは0以上3以下の整数であり、これらの芳香族化合物は、この構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。より具体的には、有機骨格層は、式(4)~(6)のうち1以上で表される構造のうち2種以上を有することが好ましい。以下では、式(4)のテレフタル酸アニオンを「Ph」、式(5)の4,4’-ビフェニルジカルボン酸アニオンを「Bph」、式(6)の2,6-ナフタレンジカルボン酸アニオンを「Naph」とも称する。有機骨格層は、式(1)、式(2)、式(3)の3種の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含むことが好ましく、式(4)のPh、式(5)のBph、式(6)のNaphの3種の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含むことがより好ましい。
電極活物質において、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウムなどが挙げられ、このうちリチウムが好ましい。なお、蓄電デバイスのキャリアであり、充放電により電極活物質に吸蔵、放出される金属イオンは、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素と異なる種類のものとしてもよいし、同じ種類のものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができる。また、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素は、混合塩構造体の骨格を形成することから、充放電に伴うイオン移動には関与しないもの、すなわち、充放電時に吸蔵放出されないものと推察される。エネルギー貯蔵メカニズムにおいては、混合塩構造体の有機骨格層はレドックス(e-)サイトとして機能する一方、アルカリ金属元素層はキャリアである金属イオンの吸蔵サイト(アルカリ金属イオン吸蔵サイト)として機能するものと考えられる。
電極活物質である混合塩構造体は、芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩であり、式(7)~(9)で表される層状構造体の構造のうち2種以上を含むものとしてもよい。より具体的には、式(10)~(12)に示す層状構造体の構造のうちの2種以上を含むものとしてもよい。なお、式(7)~(12)において、Aはアルカリ金属である。また、混合塩構造体は、異なるジカルボン酸アニオンの酸素4つとアルカリ金属元素とが4配位を形成する次式(13)の構造を備えているものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。但し、この式(13)において、Rは2種類以上の芳香環構造を含むものとする。また、Aはアルカリ金属である。このように、アルカリ金属元素によって有機骨格層が結合した構造を有することが好ましい。
ここで、単一種の芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩からなる層状構造体の一例について説明する。図1は、各芳香族ジカルボン酸ジリチウムの化合物構造の説明図であり、図1Aがテレフタル酸ジリチウム、図1Bが4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウム、図1Cが2,6-ナフタレンジカルボン酸ジリチウムである。図1には、各層状構造体の格子定数、a-c面およびb-c面からの結晶構造を示した。テレフタル酸ジリチウム、4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウム及び2,6-ナフタレンジカルボン酸ジリチウムにおいて、それぞれの結晶の格子定数は、a-c面から確認できる芳香族骨格の長さに相当するa軸が変化するのに対して、b-c面の格子定数はほとんど同じである。よって、2種類以上の芳香族ジカルボン酸とアルカリ金属とを溶解した調製溶液から層状構造体の合成を行うことで、a-b面から観察される各化合物の有機-無機の積層構造を形成し、b-c面において各有機骨格のπスタッキング相互作用によりパッキングされた有機層を形成しながら、カルボン酸ジリチウムのLiO4四面体から構成される無機層部分を共有した結晶を形成することができるものと推察される。
電極活物質は、CuKα線を用いて電極活物質のXRDスペクトルを測定しブラッグの式を用いて面間距離を導出したときに100面の面間距離d100(図1のa軸長に相当)が10.4Å以上10.7Å以下、200面の面間距離d200 が5.15Å以上5.3Å以下となる層状構造体を含むものとしてもよい。ブラッグの式はd=λ/2sinθ(ただし、dは面間距離、λはX線の波長、θは結晶面とX線が成す角度でありX線スペクトルからの読み取り値である)で表される。電極活物質は、上述した電極活物質のXRDスペクトルから導出した面間距離d100が10.4Å以上10.6Å以下となる層状構造体を含むものとしてもよく、10.5Å以上10.6Å以下となる層状構造体を含むものとしてもよい。電極活物質は、上述した電極活物質のXRDスペクトルから面間距離を導出したときに、011面の面間距離d011が4.51Å以上4.53Å以下、111面の面間距離d111が4.05Å以上4.08Å以下、102面の面間距離d102が3.80Å以上3.95Å以下、112面の面間距離d112が3.12Å以上3.16Å以下、のうちの1以上を満たす層状構造体を含むものとしてもよく、これらの全てを満たす層状構造体を含むものとしてもよい。電極活物質のXRDスペクトルから導出した面間距離がこれらの範囲内である層状構造体は、例えば、式(12)で表される層状構造体(2,6-ナフタレンジカルボン酸ジリチウム)であるものとしてもよい。式(12)で表される層状構造体のみからなる層状構造体では図1Cに示すようにa軸長(つまり面間距離d100)が約10.3Åであるが、混合塩構造体においてこのa軸長が拡大しているものとしてもよい。電極活物質は、上述した電極活物質のXRDスペクトルの5°以上40°以下の範囲において、011面に対応する回折ピークの高さが最も高いものとしてもよい。例えば、面間距離d011が4.51Å以上4.53Å以下となる011面に対応する回折ピークの高さ最も高くてもよいし、2θが19.58°超過19.63°以下の範囲に現れる回折ピークの高さが最も高いものとしてもよい。また、電極活物質は、上述した電極活物質のXRDスペクトルの5°以上40°以下の範囲において、102面に対応する回折ピークの高さが111面に対応する回折ピークの高さよりも低いものとしてもよい。
電極活物質は、CuKα線を用いて電極のXRDスペクトルを測定しブラッグの式を用いて面間距離を導出したときに100面の面間距離d100(図1のa軸長に相当)が10.4Å以上10.7Å以下、200面の面間距離d200 が5.15Å以上5.3Å以下となる層状構造体を含むものとしてもよい。電極活物質は、上述した電極のXRDスペクトルから導出した面間距離d100が10.4Å以上10.6Å以下となる層状構造体を含むことが好ましく、10.5Å以上10.6Å以下となる層状構造体を含むことがより好ましい。電極のXRDスペクトルから導出した面間距離がこれらの範囲内である層状構造体は、例えば、式(12)で表される層状構造体(2,6-ナフタレンジカルボン酸ジリチウム)であるものとしてもよい。式(12)で表される層状構造体のみからなる層状構造体では図1Cに示すようにa軸長(つまり面間距離d100)が約10.3Åであるが、混合塩構造体においてこのa軸長が拡大しているものとしてもよい。電極活物質は、上述した電極のXRDスペクトルの2θが7.5°から25°の範囲において、面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下(好ましくは10.4Å以上10.6Å以下)となる100面に対応する回折ピーク(第1ピークとも称する)及び面間距離d200が5.15Å以上5.3Å以下となる200面に対応する回折ピーク(第2ピークとも称する)の高さが最も高いことが好ましい。第1ピークと第2ピークの高さは同じでも異なってもよいが、第2ピークの高さが高い方が好ましい。
あるいは、電極活物質は、CuKα線を用いて電極のXRDスペクトルを測定したときに、XRDスペクトルの2θが7.5°から25°の範囲において、2θが8.18°以上8.49°以下の範囲に現れる回折ピーク及び16.72°以上17.20°以下の範囲に現れる回折ピークの高さが最も高いものとしてもよい。2θが8.18°以上8.49°以下の範囲に現れる回折ピークが上述した第1ピークに対応し、2θが16.72°以上17.20°以下の範囲に現れるピークが上述した第2ピークに対応する。第1ピークと第2ピークの高さの関係は、上述した通りである。この電極活物質は、上述した電極のXRDスペクトルにおいて、2θが8.26°以上8.49°以下の範囲に回折ピークを有するものであることが好ましく、8.34°以上8.44°以下の範囲に回折ピークを有するものであることがより好ましい。
この電極活物質は、混合塩構造体に含まれる配合比において、Ph(式(10))、Bph(式(11))、Naph(式(12))の合計を100モル%とし、Phの割合をXpモル%、Bphの割合をXbモル%、Naphの割合をXnモル%としたときに、1≦Xp≦37、1≦Xb≦29、残部がXn(34≦Xn≦98)を満たすものとしてもよい。配合比がこのいずれの範囲も満たすものでは、3種の芳香族ジカルボン酸塩の相乗効果によって、充放電特性をより向上することができる。このとき、混合塩構造体は、2≦Xp≦23、5≦Xb≦24、残部がXn(53≦Xn≦93)を満たすことがより好ましい。あるいは、混合塩構造体は、1≦Xp≦10、15≦Xb≦25、残部がXn(65≦Xn≦84)を満たすものとしてもよく、75≦Xnがより好ましい。
この電極活物質は、その形状が直径5μm以下の球状であるものとしてもよい。こうした電極活物質は、後述する噴霧乾燥法により作製することができる。なお、「球状」とは、表面に凹凸がある球形、断面が楕円状の球形など、真球のほかおおよそ球体であるものを含むものとする。この噴霧乾燥法による混合塩構造体の球状粒子は、直径が0.1μm以上5μm以下の範囲で得ることができる。
(電極)
本明細書で開示する電極は、蓄電デバイス用の電極である。この電極は、上述した電極活物質を含む。
本明細書で開示する電極は、蓄電デバイス用の電極である。この電極は、上述した電極活物質を含む。
電極は、電極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の電極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものとしてもよい。この電極において、上記電極活物質は、できるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、電極合材中に60質量%以上95質量%以下の範囲で含まれるものとしてもよい。導電材は、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1~500μmのものが用いられる。
この電極は、CuKα線を用いて電極のXRDスペクトルを測定しブラッグの式を用いて面間距離を導出したときに100面の面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、200面の面間距離d200 が5.15Å以上5.3Å以下となる層状構造体を混合塩構造体が含むものとしてもよい。この電極は、面間距離d100が10.5Å以上10.6Å以下となる層状構造体を混合塩構造体が含むことが好ましい。面間距離がこれらの範囲内である層状構造体は、例えば、式(12)で表される層状構造体(2,6-ナフタレンジカルボン酸ジリチウム)であるものとしてもよい。電極は、上述したXRDスペクトルの2θが7.5°から25°の範囲において、面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下(好ましくは10.4Å以上10.6Å以下)となる100面に対応する回折ピーク(第1ピーク)及び面間距離d200が5.15Å以上5.3Å以下となる200面に対応する回折ピーク(第2ピーク)の高さが最も高いことが好ましい。第1ピークと第2ピークの高さは同じでも異なってもよいが、第2ピークの高さが高い方が好ましい。
あるいは、この電極は、CuKα線を用いて電極のXRDスペクトルを測定したときに、XRDスペクトルの2θが7.5°から25°の範囲において、2θが8.18°以上8.49°以下の範囲に現れる回折ピーク及び16.72°以上17.20°以下の範囲に現れる回折ピークの高さが最も高いものとしてもよい。2θが8.18°以上8.49°以下の範囲に現れる回折ピークが第1ピークに対応し、2θが16.72°以上17.20°以下の範囲に現れるピークが第2ピークに対応する。第1ピークと第2ピークの高さの関係は、上述した通りである。この電極は、上述したXRDスペクトルにおいて、2θが8.26°以上8.49°以下の範囲に回折ピークを有するものであることが好ましく、8.34°以上8.44°以下の範囲に回折ピークを有するものであることがより好ましい。
(電極活物質の製造方法)
本開示の電極活物質の製造方法は、上述した蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法である。この製造方法は、溶液調製工程と、析出工程とを含むものとしてもよい。なお、調製溶液を別途調製するものとして、溶液調製工程を省略してもよい。
本開示の電極活物質の製造方法は、上述した蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法である。この製造方法は、溶液調製工程と、析出工程とを含むものとしてもよい。なお、調製溶液を別途調製するものとして、溶液調製工程を省略してもよい。
溶液調製工程では、式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を調製する。この調製溶液の溶媒は、特に限定されないが、水系溶媒としてもよいし、有機系溶媒としてもよいが、水であることが好ましい。有機溶媒としては、例えばメタノールやエタノールなどのアルコールなどが挙げられる。アルコールは、溶媒に含まれなくても混合塩構造体の構造に影響は与えないと考えられる。このため、この工程では、溶媒としてアルコールを用いなくてもよい。この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの全体の濃度が0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上である調製溶液を調製することが好ましい。また、この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が5mol/L以下である調製溶液を調製することが好ましい。このような濃度範囲では、次工程の析出工程をより行いやすい。この工程では、より具体的には、式(4)~(6)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを用いることが好ましい。さらに、この工程では、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のアルカリ金属カチオンを含む調製溶液を調製することが好ましい。この工程では、例えば、芳香族ジカルボン酸アニオンのモル数A(mol)に対するアルカリ金属カチオンのモル数B(mol)であるモル比B/Aが2.0を超える調製溶液を得ることが好ましく、B/Aが2.2以上である調製溶液を得ることがより好ましい。このように、アルカリ金属カチオンを過剰とすることにより、蓄電デバイス用電極の抵抗をより低減することができ、好ましい。このモル比B/Aは、2.5以上であるものとしてもよい。また、このモル比B/Aは、3.0以下であるものとしてもよい。
また、この工程では、式(4)~(6)で表される3種の構造の芳香族ジカルボン酸(Ph、Bph、Naph)アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を調製するものとしてもよい。この場合、原料の配合比は、上述の電極活物質で示した配合比でPh、Naph、Bphとを配合するものとしてもよい。例えば、Ph、Bph、Naphの合計を100モル%とし、Phの割合をXpモル%、Bphの割合をXbモル%、Naphの割合をXnモル%としたときに、1≦Xp≦37、1≦Xb≦29、34≦Xn≦98を満たすものとしてもよい。また、原料の配合比は、2≦Xp≦23、5≦Xb≦24、53≦Xn≦93を満たすことがより好ましい。あるいは、原料の配合比は、1≦Xp≦10、15≦Xb≦25、65≦Xn≦84を満たすものとしてもよい。
析出工程では、上記溶液調製工程で調製した調製溶液を用い、2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体を析出させる。この工程では、調製溶液を撹拌したのち溶媒を取り除く溶液混合法により混合塩構造体を析出させてもよい(溶液混合処理)。また、調製溶液を噴霧乾燥装置を用いて噴霧乾燥する噴霧乾燥法により、混合塩構造体を析出させてもよい(噴霧乾燥処理)。噴霧乾燥法では、より短時間に混合塩構造体を析出させることができ、好ましい。噴霧乾燥は、スプレードライヤーにより行うものとしてもよい。噴霧乾燥条件は、例えば、装置の規模や作製する電極活物質の量によって適宜調整すればよい。噴霧乾燥処理において、乾燥温度は、例えば、室温以上、例えば、40℃以上に加熱するものとすればよいが、溶媒の沸点以上が好ましく、100℃以上330℃以下の範囲とすることが好ましい。100℃以上では、溶媒を十分に除去することができ、330℃以下では、消費エネルギーをより低減でき好ましい。乾燥温度は、150℃以上がより好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上としてもよい。また、乾燥温度は300℃以下としてもよい。供給液量は、作製する規模にもよるが、例えば、0.1L/h以上2L/h以下の範囲としてもよい。また、調製溶液を噴霧するノズルサイズは、作製する規模にもよるが、例えば、直径0.5mm以上5mm以下の範囲としてもよい。このように噴霧乾燥処理を行うことによって混合塩構造体を作製すると、球状構造を有する電極活物質が得られる。析出工程では、溶液混合処理や噴霧乾燥処理などの析出処理により混合塩構造体の前駆体を析出させ、前駆体の結晶構造を調整する調整処理により所望の結晶構造を有する混合塩構造体を得るものとしてもよい。また、析出工程では、析出処理で結晶水を含む前駆体を析出させ、調整処理でこの結晶水を除去することで、所望の結晶構造を有する混合塩構造体を得るものとしてもよい。その場合、芳香族ジカルボン酸ユニット1分子に対して1分子以上1.8分子以下の水を除去してもよいし、1.2分子以上1.6分子以下の水を除去してもよい。調整処理としては、例えば、真空乾燥処理が挙げられる。真空乾燥処理は、-80kPa以上-100kPa以下の圧力範囲で行うことが好ましく、-90kPa以上-100kPa以下の圧力範囲(ゲージ圧)で行うことがより好ましい。また、真空乾燥処理は、100℃以上150℃以下の温度範囲で行うことが好ましく、100℃以上120℃以下の温度範囲で行うことがより好ましい。真空乾燥処理は、2時間以上8時間以下の範囲で行うことが好ましく、3時間以上6時間以下の範囲で行うことがより好ましい。
(電極の製造方法)
本開示の電極の製造方法は、上述した電極の製造方法である。この製造方法は、溶液調製工程と、析出工程と、電極化工程とを含むものとしてもよい。溶液調製工程及び析出工程は、電極活物質の製造方法で説明した工程と同様とすればよい。
本開示の電極の製造方法は、上述した電極の製造方法である。この製造方法は、溶液調製工程と、析出工程と、電極化工程とを含むものとしてもよい。溶液調製工程及び析出工程は、電極活物質の製造方法で説明した工程と同様とすればよい。
電極化工程では、上記析出工程で析出した混合塩構造体を用い、上述した電極を作製する。この工程では、混合塩構造体である電極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の電極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して電極化してもよい。この工程では、電極合材の混練や圧縮によって、電極活物質の少なくとも一部が解砕されてもよい。導電材、結着材、溶剤、集電体としては、上述の電極で例示したものを用いてもよい。
(蓄電デバイス)
本明細書で開示する蓄電デバイスは、上述した電極である負極と、正極活物質を含む正極と、正極と負極との間に介在しキャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池などとしてもよい。正極は、キャリアイオンを吸蔵放出する正極活物質を含むものとしてもよい。負極は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵放出する上述した電極活物質を含むものとしてもよい。また、イオン伝導媒体は、キャリアイオン(カチオン及びアニオンのいずれか)を伝導するものである。ここでは、負極のキャリアをリチウムイオンとする蓄電デバイスを主として説明する。
本明細書で開示する蓄電デバイスは、上述した電極である負極と、正極活物質を含む正極と、正極と負極との間に介在しキャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池などとしてもよい。正極は、キャリアイオンを吸蔵放出する正極活物質を含むものとしてもよい。負極は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵放出する上述した電極活物質を含むものとしてもよい。また、イオン伝導媒体は、キャリアイオン(カチオン及びアニオンのいずれか)を伝導するものである。ここでは、負極のキャリアをリチウムイオンとする蓄電デバイスを主として説明する。
負極は、上述した電極を含むものである。上述した電極の電極活物質は、その電位がリチウム金属基準で1.0~1.5V程度であるため、負極活物質とすることが好ましい。
正極は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている公知の正極を用いてもよい。正極は、例えば、正極活物質として炭素材料を含むものとしてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
あるいは、正極は、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる正極としてもよい。この場合、正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn2O4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMncO2(a+b+c=1)やLi(1-x)NiaCobMncO4(a+b+c=2)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV2O3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV2O5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、正極活物質は、リン酸鉄リチウムなどとしてもよい。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV2O3などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。
正極は、例えば上述した正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極に用いる導電材、結着材、溶剤、集電体は、例えば、負極で例示したものなどを適宜用いることができる。
この蓄電デバイスにおいて、イオン伝導媒体は、例えば、支持塩と有機溶媒とを含む非水系電解液としてもよい。支持塩としては、例えば、キャリアをリチウムイオンとした場合、公知のリチウム塩を含むものとしてもよい。このリチウム塩としては、例えば、LiPF6,LiBF4、LiClO4,LiAsF6,Li(CF3SO2)2N,LiN(C2F5SO2)2などが挙げられ、このうちLiPF6やLiBF4などが好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等がある。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等がある。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等がある。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等がある。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等がある。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、非水系電解液としては、そのほかにアセトニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル系溶媒やイオン液体、ゲル電解質などを用いてもよい。
この蓄電デバイスは、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
この蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図2は、蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。この蓄電デバイス20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この蓄電デバイス20は、正極22と負極23との間の空間にイオン伝導媒体27が満たされている。また、この負極23は、式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを構造体として含む混合塩構造体を負極活物質として有する。また、この負極23は、100面の面間距離d100が10.4~10.7Å、200面の面間距離d200が5.15~5.3Åの層状構造体を含むか、CuKα線を用いて測定した電極のXRDスペクトルの2θ=7.5°~25°の範囲において、2θ=8.18°~8.49°に現れる回折ピーク及び2θ=16.72°~17.20°に現れる回折ピークの高さが最も高い。
以上詳述した電極活物質、電極、蓄電デバイス、電極活物質の製造方法及び電極の製造方法では、出力特性をより向上することができる。この電極活物質、電極、蓄電デバイス、電極活物質の製造方法及び電極の製造方法では、複数種の芳香族ジカルボン酸アニオンを適宜配合した調製溶液を用いることにより、新規な構造の混合塩構造体を調製することができる。また、特定のXRDスペクトルを示す混合塩構造体では、100面の面間距離d100や200面の面間距離d200が適度に広いことなどにより、キャリアイオンの拡散性が向上し、良好な出力特性を示すものと推察される。なお、特定の配合領域では、含まれる複数種の芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩の相乗効果によって、それぞれ単独のものに比してより好適な容量、放電電位、及び分極などの充放電特性を示すものと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、電極活物質、電極及び蓄電デバイスを具体的に実施した例を実験例として説明する。なお、実験例1,2が本開示の実施例に相当し、実験例3~5が比較例に相当する。
[実験例1]
(活物質の合成)
0.44mol/Lの水酸化リチウム1水和物に対して、2,6-ナフタレンジカルボン酸(Naph)/4,4’-ビフェニルジカルボン酸(Bph)/テレフタル酸(Ph)=76/22/2(モル比)の混合物が0.20mol/Lとなるような混合水溶液を準備した。この混合水溶液をスプレードライヤー(Mini Spray Dryer B-290、日本ビュッヒ製)を用いて噴霧乾燥させ、混合ジカルボン酸リチウムを析出させた。用いたスプレードライヤーのノズル直径は1.4mm、溶液の噴霧量は0.4L/時間、乾燥温度は200℃で行い、得られた粉末(真空乾燥前粉末)を、-90~-100kPa、120℃、8時間、真空乾燥し、活物質(真空乾燥後粉末)を得た。
(活物質の合成)
0.44mol/Lの水酸化リチウム1水和物に対して、2,6-ナフタレンジカルボン酸(Naph)/4,4’-ビフェニルジカルボン酸(Bph)/テレフタル酸(Ph)=76/22/2(モル比)の混合物が0.20mol/Lとなるような混合水溶液を準備した。この混合水溶液をスプレードライヤー(Mini Spray Dryer B-290、日本ビュッヒ製)を用いて噴霧乾燥させ、混合ジカルボン酸リチウムを析出させた。用いたスプレードライヤーのノズル直径は1.4mm、溶液の噴霧量は0.4L/時間、乾燥温度は200℃で行い、得られた粉末(真空乾燥前粉末)を、-90~-100kPa、120℃、8時間、真空乾燥し、活物質(真空乾燥後粉末)を得た。
(電極の作製)
活物質/カーボンブラック(TB5500、東海カーボン製)/カルボキシメチルセルロース(CMC1120、ダイセル製)/ポリビニルアルコール(T-330、三菱化学製)=80/20/2/6(質量比)からなるスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、10cm2の面積に打ち抜いて電極を準備した。
活物質/カーボンブラック(TB5500、東海カーボン製)/カルボキシメチルセルロース(CMC1120、ダイセル製)/ポリビニルアルコール(T-330、三菱化学製)=80/20/2/6(質量比)からなるスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、10cm2の面積に打ち抜いて電極を準備した。
(XRD測定)
上述のようにして得られた真空乾燥前粉末、真空乾燥後粉末(活物質)、電極(電極のまま)を用い、Ultima IV(リガク製)を用いて、CuKα(波長 1.54051Å)、印加電圧を40kV、電流30mA、サンプリング幅0.020°、スキャン速度5°/min.でXRD測定を実施した。そして、ブラッグの式(d=λ/2sinθ)を用いて、層状構造体(式(12)と推察(同定)されるため、以下ではNaph層状構造体とも称する)の100面ピークの面間距離d100及び200面ピークの面間距離d200を求めた。真空乾燥後粉末については、011面の面間距離d011、111面の面間距離d111、102面の面間距離d102、112面の面間距離d112も求めた。なお、Naph層状構造体の結晶面の同定は、Crystal Growth & Design, Vol. 9, No. 5, 2009, 2500-2503のナフタレンジカルボン酸リチウム塩のXRDパターンから、結晶面を参照して行った。Naph層状構造体の100面は消滅則によりピークが消えるが、200面ピークの2θの半分の2θが100面に対応すると見積もって、同定した。Ph層状構造体やBph層状構造体の結晶面の同定も、同様に行った。Naph、Bph、Phの仕込み量が少ないものほど対応する層状構造体のピークが小さくなるため、仕込み量も考慮して、Naph層状構造体の100面、200面のピークを同定した。ピークの同定にあたっては、加重平均、sonneveld-visser法(ピーク幅閾値:0.10、ピーク強度:0.01)、Kα2除去(強度:0.5)のデータ前処理を行い、ピークサーチ(ピーク幅閾値:0.3、強度閾値:100)を行った。
上述のようにして得られた真空乾燥前粉末、真空乾燥後粉末(活物質)、電極(電極のまま)を用い、Ultima IV(リガク製)を用いて、CuKα(波長 1.54051Å)、印加電圧を40kV、電流30mA、サンプリング幅0.020°、スキャン速度5°/min.でXRD測定を実施した。そして、ブラッグの式(d=λ/2sinθ)を用いて、層状構造体(式(12)と推察(同定)されるため、以下ではNaph層状構造体とも称する)の100面ピークの面間距離d100及び200面ピークの面間距離d200を求めた。真空乾燥後粉末については、011面の面間距離d011、111面の面間距離d111、102面の面間距離d102、112面の面間距離d112も求めた。なお、Naph層状構造体の結晶面の同定は、Crystal Growth & Design, Vol. 9, No. 5, 2009, 2500-2503のナフタレンジカルボン酸リチウム塩のXRDパターンから、結晶面を参照して行った。Naph層状構造体の100面は消滅則によりピークが消えるが、200面ピークの2θの半分の2θが100面に対応すると見積もって、同定した。Ph層状構造体やBph層状構造体の結晶面の同定も、同様に行った。Naph、Bph、Phの仕込み量が少ないものほど対応する層状構造体のピークが小さくなるため、仕込み量も考慮して、Naph層状構造体の100面、200面のピークを同定した。ピークの同定にあたっては、加重平均、sonneveld-visser法(ピーク幅閾値:0.10、ピーク強度:0.01)、Kα2除去(強度:0.5)のデータ前処理を行い、ピークサーチ(ピーク幅閾値:0.3、強度閾値:100)を行った。
(電解液の作製)
エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート=30/40/30(体積比)の割合で混合した非水溶媒に、支持電解質の六フッ化リン酸リチウムを1.1mol/Lになるように添加して作製した。
エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート=30/40/30(体積比)の割合で混合した非水溶媒に、支持電解質の六フッ化リン酸リチウムを1.1mol/Lになるように添加して作製した。
(セルの作製)
上記の手法にて作製した電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚み300μm)を対極として、両電極の間に上記電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。
上記の手法にて作製した電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚み300μm)を対極として、両電極の間に上記電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。
(レート性能測定)
測定温度20℃、電圧範囲0.5V-1.5V(vs.Li/Li+)、活物質重量あたりの電流値20mA/g(0.1C相当)、40mA/g(0.2C相当)、100mA/g(0.5C相当)、200mA/g(1C相当)、300mA/g(1.5C相当)、400mA/g(2C相当)で各3サイクル試験を行い、各電流値での3サイクル目の活物質重量あたりの容量を調べた。また、2Cにおける充放電カーブの平均電圧から分極を計算した。
測定温度20℃、電圧範囲0.5V-1.5V(vs.Li/Li+)、活物質重量あたりの電流値20mA/g(0.1C相当)、40mA/g(0.2C相当)、100mA/g(0.5C相当)、200mA/g(1C相当)、300mA/g(1.5C相当)、400mA/g(2C相当)で各3サイクル試験を行い、各電流値での3サイクル目の活物質重量あたりの容量を調べた。また、2Cにおける充放電カーブの平均電圧から分極を計算した。
(サイクル性能測定)
0.5Cにて、レート性能測定と同様の電圧範囲で100サイクル試験を行った。
0.5Cにて、レート性能測定と同様の電圧範囲で100サイクル試験を行った。
(リチウム拡散係数測定)
Li拡散係数は定電流間欠滴定法(Galvanostatic intermittent titration technique、GITT)から算出した。GITTは、以下のように行った。上下限電圧は1.5-0.5Vにて、電流密度は20mA/g(C/10相当)、電流印加時間は30分(2電子および2Li+を伴う電荷移動反応(=理論容量)に対して0.1Li+に相当する通電時間)とした。緩和時間は100時間放置、あるいは時間に対する電圧変化が4.5mVh-1以下となるまでの時間とした。測定温度は20℃とした。緩和後の電位を開回路電位(OCP)とした。
Li拡散係数は定電流間欠滴定法(Galvanostatic intermittent titration technique、GITT)から算出した。GITTは、以下のように行った。上下限電圧は1.5-0.5Vにて、電流密度は20mA/g(C/10相当)、電流印加時間は30分(2電子および2Li+を伴う電荷移動反応(=理論容量)に対して0.1Li+に相当する通電時間)とした。緩和時間は100時間放置、あるいは時間に対する電圧変化が4.5mVh-1以下となるまでの時間とした。測定温度は20℃とした。緩和後の電位を開回路電位(OCP)とした。
リチウム拡散係数はGITTで得られる電流印加時の時間(t)に対する電位(E)の関係から、以下の数式(1)として表現することが報告されており(J. Electrochem. Soc., 1977, 124(10), 1569-1578参照)、ここからリチウム拡散係数DLiを算出することができる。ただし、数式(1)において、mBは活物質の重量、VMはモル体積、MBはモル質量、Sは電極面積、△ESは電流印加前後の電圧差、ΔEtは電流印加時の電圧差である。ここでは各水準にて得られる値のうち、最も小さな値が律速段階となるため、その値をリチウム拡散係数とした。
[実験例2]
Naph/Bph/Ph=75/7/18(モル比)とした以外は、実験例1と同じである。
Naph/Bph/Ph=75/7/18(モル比)とした以外は、実験例1と同じである。
[実験例3]
Naph/Bph/Ph=75/0/25(モル比)とした以外は、実験例1と同じである。
Naph/Bph/Ph=75/0/25(モル比)とした以外は、実験例1と同じである。
[実験例4]
Naph/Bph/Ph=100/0/0(モル比)とした以外は、実験例1と同じである。
Naph/Bph/Ph=100/0/0(モル比)とした以外は、実験例1と同じである。
[実験例5]
Naph/Bph/Ph=0/100/0(モル比)とした以外は、実験例1と同じである。
Naph/Bph/Ph=0/100/0(モル比)とした以外は、実験例1と同じである。
[検討結果]
図3に、各実験例の電極のXRDスペクトルを示した。図3では、Naph層状構造体の100面ピーク及び200面ピークが現れる領域を破線で囲った。また、この電極のXRDスペクトルから求めた100面及び200面のピークの2θ及び面間距離を、表1にまとめた。実験例4では、消滅則により、Naph層状構造体の100面ピークが非常に小さかった。一方、実験例1,2では、Naph構造の100面のピークが明確に確認された。このことから、Naphを単独で用いた実験例4では例えば図4AのようにNaph層状構造体が積層した構造を有するのに対し、NaphにBphやPhを組み合わせて用いた実験例1,2では例えば図4BのようにNaph層状構造体が単層で存在する構造を有すると推察された。また、実験例1,2では、実験例4よりもNaph層状構造体の100面及び200面のピークが低角側へシフトしており、100面や200面の面間距離が拡大したものと推察された(例えば図4B参照)。このようなピークシフトは、溶液混合法を用いた場合には見られなかったことから、本開示において、電極活物質の製造には噴霧乾燥法が適していると推察された。
図3に、各実験例の電極のXRDスペクトルを示した。図3では、Naph層状構造体の100面ピーク及び200面ピークが現れる領域を破線で囲った。また、この電極のXRDスペクトルから求めた100面及び200面のピークの2θ及び面間距離を、表1にまとめた。実験例4では、消滅則により、Naph層状構造体の100面ピークが非常に小さかった。一方、実験例1,2では、Naph構造の100面のピークが明確に確認された。このことから、Naphを単独で用いた実験例4では例えば図4AのようにNaph層状構造体が積層した構造を有するのに対し、NaphにBphやPhを組み合わせて用いた実験例1,2では例えば図4BのようにNaph層状構造体が単層で存在する構造を有すると推察された。また、実験例1,2では、実験例4よりもNaph層状構造体の100面及び200面のピークが低角側へシフトしており、100面や200面の面間距離が拡大したものと推察された(例えば図4B参照)。このようなピークシフトは、溶液混合法を用いた場合には見られなかったことから、本開示において、電極活物質の製造には噴霧乾燥法が適していると推察された。
図5に、各実験例のレート性能測定における充放電曲線(各電流値、3サイクル目)を示した。この充放電曲線から求めた0.1C,1C,2Cでの容量を表1にまとめた。表1には、各実験例の分極及びリチウム拡散係数も示した。図6に、100面の面間距離と0.1C容量(図6A)及び2C容量(図6B)との関係を示した。図7に、200面の面間距離と0.1C容量(図7A)及び2C容量(図7B)との関係を示した。ただし、図6,7において、面間距離は、電極のXRDスペクトルから求めた値である。図6A及び図7Aに示すように、0.1Cのような低レートでは、各実験例の容量に大きな違いはなかった。一方、図6B及び図7Bに示すように、2Cのような高レートでは、100面及び200面の面間距離が比較的大きい実験例1,2の方が容量が大きく、優れた出力特性を発現することがわかった。これは、表1に示すように、Naph単独では高レートでの分極が大きいのに対して、PhやBphを加えることで高いレートでの分極が抑制されるためと推察された。あるいは、表1に示すようにNaph単独ではリチウムの拡散性が低いのに対して、PhやBphを加えることでリチウムの拡散性が高まるためと推察された。
図8に、各実験例の面間距離d100とd200との関係を示した。ただし、図8において、面間距離は、電極のXRDスペクトルから求めた値である。実験例1,2の方が、実験例3,4に比べて面間距離d100及びd200の両方が大きいことがわかった。図9に、各実験例のCレートと容量維持率との関係を示した。実験例1,2の方が実験例3,4に比べて高レート特性に優れていることがわかった。以上より、実験例1,2では、Naph層状構造体の100面及び200面の面間距離が拡大することにより、具体的にはd100が10.4~10.7Å、d200が5.15~5.3Åに拡大するなどして、キャリアイオンの拡散性が向上し、優れた出力特性を示したものと推察された。
図10に、各実験例のサイクル性能測定における充放電曲線を示した。図10に示すように、実験例1,2では、実験例3,4よりもサイクル特性も優れていることがわかった。
図11に、実験例1の真空乾燥前粉末(図11A、図11B)及び活物質(図11C、図11D)のXRDスペクトルを示し、図12に実験例2の真空乾燥前粉末(図12A、図12B)及び活物質(図12C、図12D)のXRDスペクトルを示した。また、図13に、実験例4の真空乾燥前粉末(図13A、図13B)及び活物質(図13C、図13D)のXRDスペクトルを示した。また、図11~13から求めた実験例1,2,4の活物質の面間距離を図14及び表2にまとめた。なお、図11B、図11D、図12B、図12D、図13B及び図13Dは、スキャン速度1°/minで測定したものである。
図11C、図11D、図12C及び図12Dに示すように、実験例1及び実験例2の活物質では、Naph層状構造体の100面及び200面に相当するピーク又はショルダーが観察された。また、図14に示すように、どちらの活物質も、面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、及び、面間距離d200が5.15Å以上5.30Å以下を満たすものであった。一方、図13C、図13Dに示すように、実験例4の活物質では、Naph層状構造体の100面及び200面に相当するピークが観察されたものの、面間距離d100は10.4Å未満、面間距離d200は5.15Å未満であった。このように、活物質をXRD測定した場合にも、電極をXRD測定した場合と同様、出力特性の良好な実検例1,2では、面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下を満たし、面間距離d200が5.15Å以上5.30Å以下を満たすことがわかった。また、実検例1及び実検例2の活物質は、電極活物質のXRDスペクトルから面間距離を導出した場合に、面間距離d011が4.51Å以上4.53Å以下、面間距離d111が4.05Å以上4.08Å以下、面間距離d102が3.80Å以上3.95Å以下、d112が3.12Å以上3.16Å以下を満たすものであった。
ところで、実験例1及び実験例2では、図11A、図11B、図12A及び図12Bに示すように、真空乾燥前粉末のXRDスペクトルには、Naph層状構造体の100面及び200面に相当するピークやショルダーが見られなかった。このことから、実験例1及び実験例2では、真空乾燥により、基本骨格としてナフタレンジカルボン酸リチウム塩由来の構造が形成されたものと推察された。一方、実検例4では、図13A及び図13Bに示すように、真空乾燥前粉末でも、Naph層状構造体の100面及び200面に相当するピークやショルダーが見られた。また、実検例4では、面間距離d100、d200、d011、d111、d102、d112が、真空乾燥前品と活物質とで比較的近い値であった。このことから、実検例4では、真空乾燥前後でほとんど構造変化がないと推察された。
真空乾燥による構造変化について、熱重量示差熱同時測定(TG-DTA測定)を行い、その結果に基づいて検討した。図15は、実検例1の真空乾燥前粉末のTG-DTA結果、図16は、実検例2の真空乾燥前粉末のTG-DTA結果、図17は、実検例4の真空乾燥前粉末のTG-DTA結果である。実検例1及び実検例2の真空乾燥前粉末では、100℃までに、重量減少及び吸熱ピークが見られたが、実検例4の真空乾燥前粉末ではこうした重量減少および吸熱ピークは見られなかった。このことから、実検例1及び実検例2では水和水の脱水が生じたのに対して、実検例4では水和水の脱水がなかったものと推察された。脱水量について、ナフタレンジカルボン酸リチウム、ビフェニルジカルボン酸リチウム、フェニルジカルボン酸リチウムの分子量と組成比から、骨格の平均分子量を計算し、TGから得られる重量変化より、水和水と骨格の重量比を試算し、水とサンプルの平均分子量から芳香族有機骨格1ユニットに対する水分子量を求めた。その結果、実検例1では、芳香族ジカルボン酸ユニット1分子に対して1.53分子の水が脱水し、実検例2では、芳香族ジカルボン酸ユニット1分子に対して1.26分子の水が脱水したものと推察された。以上より、実検例1及び実検例2では、水和水の脱水などにより、結晶構造がより好適なものとなり、出力特性がより向上するものと推察された。
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本開示は、電池産業に利用可能である。
20 蓄電デバイス、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 イオン伝導媒体。
Claims (19)
- 蓄電デバイス用の電極活物質であって、
式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体であり、
CuKα線を用いて前記電極活物質のXRDスペクトルを測定しブラッグの式を用いて面間距離を導出したときに100面の面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、200面の面間距離d200が5.15Å以上5.3Å以下、を満たす層状構造体を前記混合塩構造体が含み、
アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力する、
電極活物質。
- 前記面間距離を導出したときに、011面の面間距離d011が4.51Å以上4.53Å以下、111面の面間距離d111が4.05Å以上4.08Å以下、102面の面間距離d102が3.80Å以上3.95Å以下、112面の面間距離d112が3.12Å以上3.16Å以下、のうちの1以上を満たす前記層状構造体を前記混合塩構造体が含む、請求項1に記載の電極活物質。
- 前記面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、前記面間距離d200 が5.15Å以上5.3Å以下となる前記層状構造体は、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジリチウムである、請求項1又は2に記載の電極活物質。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の電極活物質を含む、電極。
- 蓄電デバイス用の電極であって、
式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体を電極活物質として含み、
CuKα線を用いて前記電極のXRDスペクトルを測定しブラッグの式を用いて面間距離を導出したときに100面の面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、200面の面間距離d200 が5.15Å以上5.3Å以下となる層状構造体を前記混合塩構造体が含み、
アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力する、
電極。
- 前記混合塩構造体は前記面間距離d100が10.5Å以上10.6Å以下となる前記層状構造体を含む、
請求項6に記載の電極。 - 前記XRDスペクトルの2θが7.5°から25°の範囲において、前記面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下となる100面に対応する回折ピーク及び前記面間距離d200が5.15Å以上5.3Å以下となる200面に対応する回折ピークの高さが最も高い、
請求項6又は7に記載の電極。 - 前記面間距離d100が10.4Å以上10.7Å以下、前記面間距離d200 が5.15Å以上5.3Å以下となる前記層状構造体は、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジリチウムである、
請求項6~8のいずれか1項に記載の電極。 - 蓄電デバイス用の電極であって、
式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体を電極活物質として含み、
CuKα線を用いて前記電極のXRDスペクトルを測定したときに、前記XRDスペクトルの2θが7.5°から25°の範囲において、2θが8.18°以上8.49°以下の範囲に現れる回折ピーク及び16.72°以上17.20°以下の範囲に現れる回折ピークの高さが最も高く、
アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力する、
電極。
- 前記XRDスペクトルにおいて、2θが8.34°以上8.44°以下の範囲に回折ピークを有する、
請求項10に記載の電極。 - 請求項5~12のいずれか1項に記載の電極である負極と、
正極活物質を含む正極と、
正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えた蓄電デバイス。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載の電極活物質の製造方法であって、
前記式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記混合塩構造体を析出させる析出工程、を含む、
電極活物質の製造方法。 - 前記析出工程では、噴霧乾燥装置を用いて前記調製溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥処理を行う、請求項14に記載の電極活物質の製造方法。
- 前記析出工程では、前記噴霧乾燥処理の後に真空乾燥処理を行う、請求項15に記載の電極活物質の製造方法。
- 請求項5~12のいずれか1項に記載の電極の製造方法であって、
前記式(1)~(3)で表される構造のうち2種以上の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記混合塩構造体を析出させる析出工程と、
前記混合塩構造体を用いて前記電極を作製する電極化工程と、
を含む、電極の製造方法。 - 前記析出工程では、噴霧乾燥装置を用いて前記調製溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥処理を行う、請求項17に記載の電極の製造方法。
- 前記析出工程では、前記噴霧乾燥処理の後に真空乾燥処理を行う、請求項18に記載の電極の製造方法。
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