JP7287307B2 - 電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法 - Google Patents

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Description

本明細書では、電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法を開示する。
従来、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスとしては、芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を負極活物質に用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。負極活物質としての層状構造体は、導電性を有さないが、非水系電解液に溶けにくく、結晶構造を保つことにより充放電サイクル特性の安定性をより高めることができる。
特開2012-221754号公報
しかしながら、上述の特許文献1の蓄電デバイスでは、サイクル特性の安定性をより高めることができるものの、充放電における電池容量、放電電位及び分極などの充放電特性をより向上することが求められていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、充放電特性をより向上することができる新規な電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、芳香族ジカルボン酸金属塩を3種含む調製溶液を用いて所定の配合比の範囲で構造体を作製するものとすると、充放電特性をより向上することができる新規な電極活物質を作製することができることを見いだし、本開示を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示する電極活物質は、
蓄電デバイス用の電極活物質であって、
式(1)~(3)で表されるPh、Bph、Naphの3種の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを全て含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体であり、
前記電極活物質と、式(4)~(6)で表される単独の層状構造体とをCuKα線を用い2θが5°以上60°以下の範囲でXRDスペクトルを測定したときのピアソン相関係数を式(4)がRp、式(5)がRb、式(6)がRnとしたときに、0.38≦Rp≦0.49、0.37≦Rb≦0.56、0.75≦Rn≦0.90をいずれも満たし、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力するものである。
Figure 0007287307000001
あるいは、本明細書で開示する電極活物質は、
蓄電デバイス用の電極活物質であって、
式(1)~(3)で表されるPh、Bph、Naphの3種の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを全て含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体であり、
前記混合塩構造体に含まれる式(4)の質量部をXp、式(5)の質量部をXb、式(6)の質量部をXn(Xp+Xb+Xn=1)としたときに、0.01≦Xp≦0.3、0.01≦Xb≦0.34、0.36≦Xn≦0.98を満たすか、
あるいは数式(1)を満たし、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力するものである。
Figure 0007287307000002
本明細書で開示する蓄電デバイスは、
上述した電極活物質を含む負極と、
正極活物質を含む正極と、
正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
本明細書で開示する電極活物質の製造方法は、
式(1)~(3)で表されるPh、Bph、Naphの3種の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体を析出させる析出工程、を含み、
前記析出工程では、前記混合塩構造体の原料として式(4)の質量部をXp、式(5)の質量部をXb、式(6)の質量部をXn(Xp+Xb+Xn=1)としたときに、0.01≦Xp≦0.3、0.01≦Xb≦0.34、0.36≦Xn≦0.98を満たす範囲で配合するものである。
本開示では、充放電特性をより向上することができる新規の電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法を提供することができる。この電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法では、複数種の芳香族ジカルボン酸アニオンを適宜配合した調製溶液を用いることにより、新規な構造の混合塩構造体を調整することができる。また、特定の配合領域では、含まれる3種の芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩の相乗効果によって、それぞれ単独のものに比してより好適な容量、放電電位、及び分極などの充放電特性を示すものと推察される。
各芳香族ジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の化合物構造の説明図。 各芳香族ジカルボン酸ジリチウム構造体の三成分組成図。 各芳香族ジカルボン酸ジリチウム構造体の三成分組成図。 蓄電デバイス20の一例を示す模式図。 各実験例のXRDパターン。 アルコールの有無及び加熱温度の検討結果。 実験例13の充放電測定結果。 各実験例の測定結果を含む三成分組成分布図。 三成分組成図における、各割合でPh、Naph、Bphを足し合わせたXRDスペクトルとX20のスペクトルとの類似度を表す関係図。
(電極活物質)
本明細書で開示する電極活物質は、蓄電デバイス用の電極活物質である。電極活物質は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで電気エネルギーを貯蔵出力する。キャリアであるアルカリ金属イオンとしては、例えば、LiイオンやNaイオン、Kイオンなどのうち1以上が挙げられる。この電極活物質は、3種の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体である。この混合塩構造体では、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力する。
この電極活物質は、式(1)~(3)で表されるPh、Bph、Naphの3種の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを全て含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体である。この芳香族ジカルボン酸アニオンは、テレフタル酸アニオン(式(1):Ph)、4,4’-ビフェニルジカルボン酸アニオン(式(2):Bph)、2,6-ナフタレンジカルボン酸アニオン(式(3):Naph)である。この混合塩構造体は、式(4)~(6)で表される層状構造体の構造を含む。式(4)~(6)において、Aはアルカリ金属である。これらの芳香族化合物は、この構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。
Figure 0007287307000003
アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウムなどが挙げられ、このうちリチウムが好ましい。なお、蓄電デバイスのキャリアであり、充放電により電極活物質に吸蔵、放出される金属イオンは、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素と異なる種類のものとしてもよいし、同じ種類のものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができる。また、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素は、混合塩構造体の骨格を形成することから、充放電に伴うイオン移動には関与しないもの、すなわち、充放電時に吸蔵放出されないものと推察される。エネルギー貯蔵メカニズムにおいては、混合塩構造体の有機骨格層はレドックス(e-)サイトとして機能する一方、アルカリ金属元素層はキャリアである金属イオンの吸蔵サイト(アルカリ金属イオン吸蔵サイト)として機能するものと考えられる。
ここで、単独の芳香族ジカルボン酸ジリチウムアルカリ金属塩からなる層状構造体の一例について説明する。図1は、各芳香族ジカルボン酸ジリチウムアルカリ金属塩の化合物構造の説明図であり、図1Aがテレフタル酸ジリチウム、図1Bが4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウム、図1Cが2,6-ナフタレンジカルボン酸ジリチウムである。図1には、各層状構造体の格子定数、a-c面およびb-c面からの結晶構造を示した。テレフタル酸ジリチウム、4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウム及び2,6-ナフタレンジカルボン酸ジリチウムにおいて、それぞれの結晶の格子定数は、a-c面から確認できる芳香族骨格の長さに相当するa軸が変化するのに対して、b-c面の格子定数はほとんど同じである。よって、2種類以上の芳香族ジカルボン酸とアルカリ金属とを溶解した調製溶液から層状構造体の合成を行うことで、a-b面から観察される各化合物の有機-無機の積層構造を形成し、b-c面において各有機骨格のπスタッキング相互作用によりパッキングされた有機層を形成しながら、カルボン酸ジリチウムのLiO4四面体から構成される無機層部分を共有した結晶を形成することができるものと推察される。
この電極活物質は、混合塩構造体に含まれる配合比において、Ph(式(4))の質量部をXp、Bph(式(5))の質量部をXb、Naph(式(6))の質量部をXnとしたときに、Xp+Xb+Xn=1を満たし、0.01≦Xp≦0.3、0.01≦Xb≦0.34、0.36≦Xn≦0.98を満たすものとしてもよい。図2は、各芳香族ジカルボン酸ジリチウム構造体の三成分組成図である。ここで規定した範囲は、図2の一点鎖線の範囲に相当する。配合比がこのいずれの範囲も満たすものでは、3種の芳香族ジカルボン酸塩の相乗効果によって、充放電特性をより向上することができる。このとき、混合塩構造体は、0.01≦Xp≦0.20、0.05≦Xb≦0.30、0.60≦Xn≦0.80を満たすことがより好ましい。この規定した範囲は、図2の点線の範囲に相当する。配合比がこのいずれも満たすものでは、更に充放電特性をより向上することができる。
また、この電極活物質は、混合塩構造体に含まれる配合比において、Ph(式(4))の質量部をXp、Bph(式(5))の質量部をXb、Naph(式(6))の質量部をXn(Xp+Xb+Xn=1)としたときに、数式(1)を満たすものとしてもよい。図3は、各芳香族ジカルボン酸ジリチウム構造体の三成分組成図である。数式(1)で規定した範囲は、図3の一点鎖線の範囲に相当する。配合比がこの数式(1)を満たすものでは、3種の芳香族ジカルボン酸塩の相乗効果によって、充放電特性をより向上することができる。また、このとき、混合塩構造体は、数式(2)を満たすことが好ましい。数式(2)で規定した範囲は、図3の点線の範囲に相当する。配合比が数式(2)を満たすものでは、更に充放電特性をより向上することができる。更に、混合塩構造体は、数式(3)~(5)を満たすことがより好ましい。数式(3)~(5)で規定した範囲は、図3の実線で網掛けした範囲に相当する。配合比が数式(3)~(5)を満たすものでは、最も充放電特性をより向上することができる。
Figure 0007287307000004
Figure 0007287307000005
Figure 0007287307000006
この電極活物質は、この混合塩構造体と、式(4)~(6)で表される単独の層状構造体とをCuKα線を用い2θが5°以上60°以下の範囲でXRDスペクトルを測定したときのピアソン相関係数を式(4)がRp、式(5)がRb、式(6)がRnとしたときに、0.38≦Rp≦0.49、0.37≦Rb≦0.56、0.75≦Rn≦0.90をいずれも満たすものとしてもよい。ピアソン相関係数がこのいずれも満たすものでは、3種の芳香族ジカルボン酸塩の相乗効果によって、充放電特性をより向上することができる。ここで、ピアソン相関係数について説明する。ピアソン相関係数は、2つの活物質の間の相似性を表す係数であり、XRDスペクトルから求めることができる。このピアソン相関係数は、2θが5~60°の範囲全てのスペクトル値を用いて求めるものとする。活物質Xと活物質YのXRDスペクトルを、それぞれ、xi,yiとしたとき、ピアソン相関係数R(X,Y)は、式(6)によって定義される。R(X,Y)は、-1から1の間の値をとり、XとYのXRDスペクトル間の類似性を表す指標として用いることができる。両者に完全な正の相関がある場合にはR=1、完全な負の相関がある場合にはR=-1、相関が無いときはR=0となる。XRDスペクトルのピアソン相関係数と活物質の電池特性とには両者に相関がある。Ph、Naph及びBphを任意割合で配合した活物質のXRDスペクトルに対して、Ph単体のXRDスペクトルを対比したピアソン相関係数をRpとし、Naph単体のXRDスペクトルを対比したピアソン相関係数をRnとし、Bph単体のXRDスペクトルを対比したピアソン相関係数をRbとして、Ph、Naph、Bphの単体の層状構造体と、混合塩構造体との間のピアソン相関係数を指標として用いることができる。
Figure 0007287307000007
(電極活物質の製造方法)
本開示の電極活物質の製造方法は、上述した蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法である。この製造方法は、溶液調製工程と、析出工程とを含むものとしてもよい。なお、調製溶液を別途調製するものとして、溶液調製工程を省略してもよい。
溶液調製工程では、3種の芳香族ジカルボン酸(Ph、Bph、Naph)と、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を調製する。この調製溶液の溶媒は、特に限定されないが、水系溶媒としてもよいし、有機系溶媒としてもよいが、水であることが好ましい。有機溶媒としては、例えばメタノールやエタノールなどのアルコールなどが挙げられる。アルコールは、溶媒に含まれなくても混合塩構造体の構造に影響は与えないと考えられる。このため、この工程では、溶媒としてアルコールを用いなくてもよい。この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの全体の濃度が0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上である調製溶液を調製することが好ましい。また、この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が5mol/L以下である調製溶液を調製することが好ましい。このような濃度範囲では、次工程の析出工程をより行いやすい。この工程では、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のアルカリ金属カチオンを含む調製溶液を調製することが好ましい。この工程では、例えば、芳香族ジカルボン酸アニオンのモル数A(mol)に対するアルカリ金属カチオンのモル数B(mol)であるモル比B/Aが2.0を超える調製溶液を得ることが好ましく、B/Aが2.2以上である調製溶液を得ることがより好ましい。このように、アルカリ金属カチオンを過剰とすることにより、蓄電デバイス用電極の抵抗をより低減することができ、好ましい。このモル比B/Aは、2.5以上であるものとしてもよい。また、このモル比B/Aは、3.0以下であるものとしてもよい。
また、この工程では、上述の電極活物質で示した配合比でPh、Naph、Bphとを配合するものとしてもよい。例えば、Phの質量部をXp、Bphの質量部をXb、Naphの質量部をXnとしたときに、Xp+Xb+Xn=1を満たし、0.01≦Xp≦0.3、0.01≦Xb≦0.34、0.36≦Xn≦0.98を満たすものとしてもよい。また、原料の配合比は、0.01≦Xp≦0.20、0.05≦Xb≦0.30、0.60≦Xn≦0.80の範囲を満たすことがより好ましい。あるいは、上述した数式(1)を持たすものとしてもよいし、数式(2)を満たすものとしてもよいし、数式(3)~(5)のいずれも満たすものとしてもよい。
析出工程では、上記溶液調製工程で調製した調製溶液を用い、3種の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体を析出させる。この工程では、調製溶液を撹拌したのち溶媒を取り除く溶液混合法により混合塩構造体を析出させてもよい。また、調製溶液を噴霧乾燥装置を用いて噴霧乾燥する噴霧乾燥法により、混合塩構造体を析出させてもよい。この方法では、より短時間に混合塩構造体を析出させることができ、好ましい。噴霧乾燥は、スプレードライヤーにより行うものとしてもよい。噴霧乾燥条件は、例えば、装置の規模や作製する電極活物質の量によって適宜調整すればよい。この工程において、乾燥温度は、例えば、室温以上、例えば、40℃以上に加熱するものとすればよいが、溶媒の沸点以上が好ましく、100℃以上330℃以下の範囲とすることが好ましい。100℃以上では、溶媒を十分に除去することができ、330℃以下では、消費エネルギーをより低減でき好ましい。乾燥温度は、150℃以上がより好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上としてもよい。
(蓄電デバイス)
本明細書で開示する蓄電デバイスは、上述した電極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極と、正極と負極との間に介在しキャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池などとしてもよい。正極は、キャリアイオンを吸蔵放出する正極活物質を含むものとしてもよい。負極は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵放出する上述した電極活物質を含むものとしてもよい。また、イオン伝導媒体は、キャリアイオン(カチオン及びアニオンのいずれか)を伝導するものである。ここでは、負極のキャリアをリチウムイオンとする蓄電デバイスを主として説明する。
負極は、上述した電極活物質を含むものである。上述した電極活物質は、その電位がリチウム金属基準で1.0~1.5V程度であるため、負極活物質とすることが好ましい。負極は、上述した電極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。この負極において、上記電極活物質は、できるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、負極合材中に60質量%以上95質量%以下の範囲で含まれるものとしてもよい。導電材は、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1~500μmのものが用いられる。
正極は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている公知の正極を用いてもよい。正極は、例えば、正極活物質として炭素材料を含むものとしてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
あるいは、正極は、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる正極としてもよい。この場合、正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)やLi(1-x)NiaCobMnc4(a+b+c=2)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、正極活物質は、リン酸鉄リチウムなどとしてもよい。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。
正極は、例えば上述した正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極に用いる導電材、結着材、溶剤、集電体は、例えば、負極で例示したものなどを適宜用いることができる。
この蓄電デバイスにおいて、イオン伝導媒体は、例えば、支持塩と有機溶媒とを含む非水系電解液としてもよい。支持塩としては、例えば、キャリアをリチウムイオンとした場合、公知のリチウム塩を含むものとしてもよい。このリチウム塩としては、例えば、LiPF6,LiBF4、LiClO4,LiAsF6,Li(CF3SO22N,LiN(C25SO22などが挙げられ、このうちLiPF6やLiBF4などが好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等がある。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等がある。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等がある。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等がある。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等がある。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、非水系電解液としては、そのほかにアセトニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル系溶媒やイオン液体、ゲル電解質などを用いてもよい。
この蓄電デバイスは、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
この蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図4は、蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。この蓄電デバイス20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この蓄電デバイス20は、正極22と負極23との間の空間にイオン伝導媒体27が満たされている。また、この負極23は、3種の芳香族ジカルボン酸アニオン(Ph、Bph、Naph)を構造体として含む混合塩構造体を負極活物質として有する。
以上詳述した電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法では、充放電特性をより向上することができる。この電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法では、複数種の芳香族ジカルボン酸アニオンを適宜配合した調製溶液を用いることにより、新規な構造の混合塩構造体を調整することができる。また、特定の配合領域では、含まれる3種の芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩の相乗効果によって、それぞれ単独のものに比してより好適な容量、放電電位、及び分極などの充放電特性を示すものと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、電極活物質及び蓄電デバイスを具体的に実施した例を実験例として説明する。なお、実験例25,26,45~48が本開示の実施例に相当し、それ以外が比較例に相当する。
[実験例1]
(活物質の合成)
0.44mol/Lの水酸化リチウムをイオン交換水に溶かした水溶液に、0.2mol/Lのテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸を混合したものを、それぞれ溶液A(Ph)、B(Naph)、C(Bph)とする。また、メタノールを溶液D(Meth)とする。溶液A,B,C,Dの総質量が5gとなるように原料比を調整して注液、混合し、その後、窒素ガス雰囲気の管状炉にて10℃/分で昇温後、220℃にて1時間加熱し得られたものを活物質とした。具体的には、100質量%のPh(実験例9,10)、100質量%のNaph(実験例11,12)、100質量%のBph(実験例13,14)の3種の基準材料、および、溶液A,B,C,Dを適当な割合で混合した23種(X1~X23)を実験例1~52とした。実験例1~52の配合量は、表1、2に示す通りとした。
(X線回折測定)
実験例1~52の混合塩構造体のX線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製UltimaIV)を用いて行った。また、測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流30mAに設定し、0.02°刻みで5°/分の走査速度、2θ=5°~60°の角度範囲で行った。また、2θが5~60°の範囲全てのスペクトル値を用いて、合成した活物質間のXRDスペクトルのピアソン相関係数を評価した。ここで、活物質Xと活物質YのXRDスペクトルを、それぞれ、xi,yiとしたとき、ピアソン相関係数R(X,Y)は、数式(6)によって定義される。R(X,Y)は、-1から1の間の値をとり、XとYのXRDスペクトル間の類似性を表す指標として用いることができる。両者に完全な正の相関がある場合にはR=1、完全な負の相関がある場合にはR=-1、相関が無いときはR=0となる。XRDスペクトルのピアソン相関係数と活物質の電池特性を解析した結果、両者に相関があることが明らかとなった。そこで、Ph、Naph及びBphを任意割合で配合した活物質のXRDスペクトルに対して、Ph単体のXRDスペクトルを対比したピアソン相関係数をRpとし、Naph単体のXRDスペクトルを対比したピアソン相関係数をRnとし、Bph単体のXRDスペクトルを対比したピアソン相関係数をRbとして、Ph、Naph、Bphと各活物質間のピアソン相関係数を指標として用いることとした。
(XRDスペクトルの検討結果)
図5は、各実験例の活物質のXRDスペクトルである。表1、2には、サンプル名、原料の配合比(質量部)、活物質量A(g)、単位活物質量に対する電流密度I(mA/g)及びピアソン相関係数Rp、Rn、Rbをまとめた。例えば、X20は、単にPh、Naph、BphのXRDパターンを組成比で足し合したものとはなっておらず、3材料とは異なる合成物が形成されていると考えられた。例えば、原料としてNaphが多ければ、Rnは高くなり、Naphが少なければ、Rnは低くなるように、XRDスペクトルは原料の投入比に対して系統的に変化しており、構造が特性を決めている主要因となっていることがわかった。なお、Bph、Phも同様の傾向がみられた。
メタノールの効果を確認するため、Ph:Naph:Bphの割合が同じ組み合わせであり、メタノール量のみ異なる材料での特性の比較を行った。図6は、アルコールの有無(図6A)及び加熱温度の検討結果(図6B)である。評価した材料組成では、X6(0質量%Meth)と、X9(20質量%Meth)、X11(0質量%Meth)と、X14(20質量%Meth)、X21(0質量%Meth)と、X23(20質量%Meth)がそのようなデータに該当する。メタノールの有無にかかわらずXRDスペクトルはほぼ同じとなることが明らかとなり(図6A参照)、メタノールの有無は構造の変化には影響しないということが確認できた。よって、特性の傾向を支配している主要因はPh:Naph:Bphの比で決まる結晶構造であるとの結論に至った。但し、これらの試料は、後述の充放電試験においては、全てにおいて20質量%Methの方が平均電位と分極が低い値を示しており、メタノールを入れると特性が向上するという傾向が見られた。また、活物質の合成は、180℃~330℃の加熱条件で行ったが、図6Bに示すように、XRDスペクトルの変化は加熱条件には依存せず、どの加熱条件を用いても構造としてはほぼ同一のものが合成されているということが確認された。
Figure 0007287307000008
Figure 0007287307000009
(試験セルの作成、特性評価)
合成実験で得られた粉末を活物質として活物質量を0.6gに固定して、合材スラリーを作製し、それを用いて電極を作製した。上記活物質と、導電材としてのカーボンブラックと(東海カーボン製、TB5500)、結着材としてのポリビニルアルコールと(PVA;三菱ケミカル製T-330)、結着材としてのスチレンブタジエン共重合体と(SBR;JSR製TRD2001)を、モル比で85:15:3:4.5の割合とした。まず活物質、カーボンブラック、PVA結着材を乳鉢でよく混合し、0.9~1.5gのイオン交換水を入れ、攪拌機にて撹拌した。その後、SBRを入れ、再度撹拌した。各プロセスで得られたスラリーを銅箔に塗布し、120℃、8時間真空乾燥を行った。作製した電極を直径16mmにカットし、トムセルに装着し、電池特性(容量、平均電位、分極)の評価を行った。対極には金属Li、電解液には1mol/LのLiPF6を非水系溶媒に溶解したものを用いた。非水系溶媒は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合に混合したものを用いた。電解液の量は100~200μLとした。
(充放電特性の評価)
C/10で2サイクル充放電を行ったのちに、C/5で2サイクル、C/3で2サイクル、C/2で2サイクル充放電した。電圧の下限値は500mV、上限値は1500mVとして、その間で充放電特性を評価した。混合塩構造体を活物質とする場合、PhおよびNaphの理論容量はそれぞれ279.4mAh/g、221.6mAh/gであるため、混合比(質量比)で理論容量を設定してC/10などの条件を決めた。各条件で充放電を2サイクル行い、容量、平均電位、分極を評価した。図7は、トムセルを用いて100質量%Bph(実験例13,14)から作製した活物質を用いて充放電特性を評価した結果である。図7において、C/H(H=2,3,5,10)は、「H時間でBphの理論容量である200.0mAh/gをフル充電するように電流を固定する」という条件にて測定した結果である。また、図7に示したように、各工程での2回目の充電容量C’2nd、電力容量W’2nd、放電容量C2nd、電力容量W2ndを用いて、容量はC2nd、平均電位Vaveは、Vave=(W2nd/C2nd+W’2nd/C’2nd)/2、分極Vpolは、Vpol=(W2nd/C2nd-W’2nd/C’2nd)/2によって評価した。今回は、個体差を確認するために各組成で2個の電極を作製し、総計で26組成の活物質を評価した。
(結果と考察)
各電極の容量C2nd、平均電圧Vave、各電極の分極Vpolの測定結果をまとめて表3、4に示した。表3、4に示すように、理論容量の多いPhは、実際に充放電する場合は容量が少なく、平均電圧や分極は高かった。一方、Naphは、原料の中では容量が最も多く、分極は少なかった。また、Bphは平均電位が低いという傾向が見られた。そして、特に、実験例の材料組成において、X16(Ph:Naph:Bph:Meth=0.7:3.6:0.4:0.3)、X17(Ph:Naph:Bph:Meth=0.7:3.1:1.2:0)及びX20(Ph:Naph:Bph:Meth=0.1:3.8:1.1:0)が2個の電極の平均値としてみたときに、表3、4の6項目でNaphよりもより良好な容量C2nd、平均電圧Vave、分極Vpolを示すことが明らかとなった。このような配合比においては、例えば、含まれる3種の芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩の相乗効果があるものと推察された。
(材料組成と特性との相関)
各活物質生成時のPh、Naph及びBphの各水溶液の質量をそれぞれWp、Wn、Wb(g)とすると、Ph、Naph、Bphの原料比Xp、Xn、Xbを下記によって定義することができる。Xp=Wp/(Wp+Wn+Wb)、Xn=Wn/(Wp+Wn+Wb)、Xb=Wb/(Wp+Wn+Wb)。この比はMeth水溶液の有り/無しに依存せずに定義でき、Xp+Xn+Xb=1となる。図8は、各実験例の測定結果を含むPh、Naph、Bphの質量における原料比の三成分組成分布図を示した。各白丸○が評価した活物質の原料比であり、黒丸●で示された三角形の頂点に位置する活物質(X16、X17,X20)はNaph単体に比してより良好な容量、平均電位及び分極を示したものである。したがって、図中に示す一点鎖線や点線で示す配合比の範囲内では、原料を超える充放電特性が得られることが予想された。また、三角形実線内の領域に位置する原料比を有する活物質は特にNaphよりも良い特性を有すると想定された。X16、X17、X20の電極材料のPh、Naph、Bphの組成比を表5に示す。以上の結果から、Ph、Naph、Bphを含むもののうち、Ph、Naph、Bphの配合比Xp、Xn、Xbが、0.01≦Xp≦0.3、0.01≦Xb≦0.34、0.36≦Xn≦0.98の条件を同時に満たす活物質がより良好な充放電特性を示すものと推察された。更に、配合比Xp、Xn、Xbが、Xp≦-0.0575Xb+0.1538、Xp≧6.0Xb-1.3、Xp≧-0.9555Xb+0.2302の条件を同時に満たす活物質が最適な電極材料となるものと推察された。そしてまた、ピアソン相関係数Rp、Rb、Rnを考察すると、充放電特性をより良好にする最適なXRDスペクトルは、X16、X17、X20の電極材料が含まれる、0.38≦Rp≦0.49、0.37≦Rb≦0.56、0.75≦Rn≦0.90の条件をすべて満たすものであると推察された。
Figure 0007287307000010
Figure 0007287307000011
Figure 0007287307000012
(ピアソン相関係数に基づく未知試料の配合比の検討)
活物質の原料比は材料の特性を記述する重要な情報であると共に、材料を特定する有効な手段の一つである。そこで、XRDスペクトルの類似度としてピアソン相関係数を指標として活物質における芳香族ジカルボン酸塩の配合比を判別する方法を検討した。Ph、Naph、Bphの3つのXRDスペクトルを用いて原料比を類推する。一例として、Ph、Naph、Bphの3つのXRDを足し合わせたスペクトルとX20のスペクトル間のピアソン相関係数の等高線図を作成した。図9は、三成分組成図における、各割合でPh、Naph、Bphを足し合わせたXRDスペクトルとX20のスペクトルとの類似度を表す関係図である。相関係数が高いほど双方のスペクトルは似ており、X20はその近傍の原料比と推定される。図中の黒丸●はX20の実際の配合比であり、一番高い0.84の等高線上にあることがわかった。電池特性に対して、構造体(iMOF)の構造としてXRDスペクトルが重要であることから、例えば相関係数が0.84の等高線図の範囲であれば、電池特性はX20に近い物が得られるとも考えられる。同様に、図8で示した最適な原料比の範囲と図9で示した原料比の範囲が部分的に重なるようであれば、最適な原料比に近い電池特性が得られるといえる。したがって、配合比の範囲としては、混合塩層状構造体(iMOF)のXRDスペクトルを測定し、Ph、Naph、Bphの3つのXRDスペクトルを用いて図9に示す相関係数を評価して最大の等高線図を出し、最適な原料比の範囲と最大の等高線図が重なる場合は最適原料比とみなすようにして最適原料比範囲を決めることができる。但し、最大の等高線図とは、最大値に対して-0.2未満までとする。-0.2以上だと最大の等高線図が広くなり、組成範囲が限定できないためである。
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本開示は、電池産業に利用可能である。
20 蓄電デバイス、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 イオン伝導媒体。

Claims (5)

  1. 蓄電デバイス用の電極活物質であって、
    式(1)~(3)で表されるPh、Bph、Naphの3種の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンを全て含む有機骨格層と、前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を備える混合塩構造体であり、
    前記混合塩構造体に含まれる式(4)の質量部をXp、式(5)の質量部をXb、式(6)の質量部をXn(Xp+Xb+Xn=1)としたときに、0.01≦Xp≦0.20、0.05≦Xb≦0.30、0.60≦Xn≦0.80を満た
    前記混合塩構造体は、数式(1)~(3)を満たす、電極活物質。
    Figure 0007287307000013
    Figure 0007287307000014
  2. 前記電極活物質と、式(4)~(6)で表される単独の層状構造体とをCuKα線を用い2θが5°以上60°以下の範囲でXRDスペクトルを測定したときのピアソン相関係数を式(4)がRp、式(5)がRb、式(6)がRnとしたときに、0.38≦Rp≦0.49、0.37≦Rb≦0.56、0.75≦Rn≦0.90をいずれも満たす、請求項1に記載の電極活物質。
  3. 請求項1又は2に記載の電極活物質を含む負極と、
    正極活物質を含む正極と、
    正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えた蓄電デバイス。
  4. 蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法であって、
    式(1)~(3)で表されるPh、Bph、Naphの3種の構造の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体を析出させる析出工程、を含み、
    前記析出工程では、前記混合塩構造体の原料として式(4)の質量部をXp、式(5)の質量部をXb、式(6)の質量部をXn(Xp+Xb+Xn=1)としたときに、0.01≦Xp≦0.20、0.05≦Xb≦0.30、0.60≦Xn≦0.80を満たす範囲で配合数式(1)~(3)を満たすよう前記原料を配合する、電極活物質の製造方法。
    Figure 0007287307000015
    Figure 0007287307000016
  5. 前記析出工程では、前記原料を水で溶解し、アルコールを加えない、請求項に記載の電極活物質の製造方法。
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