JP2023019665A - メス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネス - Google Patents
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Abstract
【課題】アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができるメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスを提供する。【解決手段】メス型端子10は、電線3に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とで端子本体13が設けられている。基台部20は、オス型端子5が挿入可能な所定間隔を隔てて配置された一対の側壁21を有し、バネ部材30は、少なくとも一方側の側壁21に沿設される沿設板(内板31)と沿設板(内板31)から他方側の側壁21に向かって延出されるアームバネ35とを有している。そして、側壁21と沿設板(例えば鍔板33)とが溶接されて溶接部36が設けられており、側壁21の内側面21aにおける、溶接部36の周囲に形成された熱影響領域36hから離間した位置に、アームバネ35の基点部35bが当接している。【選択図】図3
Description
この発明は、大電流が流れる電気回路のメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスに関する。
従来より、電気機器は、電動装置や電源装置をワイヤーハーネスによって接続することで電気回路を構成している。ワイヤーハーネスと電動装置ならびにワイヤーハーネスと電源装置は、それぞれに装着されたコネクタを介して互いに接続されている。
例えば、特許文献1に示すコネクタは、コネクタハウジングにメス型端子を収容したものである。かかるメス型端子は、基台部とバネ部材によって端子本体が設けられており、コネクタハウジング同士が嵌合した際にその内部にオス型端子が挿入される。このとき、オス型端子に対してバネ部材の一部であるアームバネを押し付け、確実に接触させることが重要となる。
ところで、自動車における駆動系等の電気回路においては、大電流が流れることから、良好な導電性を確保すべく基台部とバネ部材を溶接することが考えられる。しかし、基台部とバネ部材を溶接する際の溶接熱がアームバネの基点部に到達すると、基点部が高温になって金属組織が変化し、アームバネの押し付け力が低下してしまうおそれがあった。ひいては導電性が不安定になってしまうおそれがあった。
この発明は、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができるメス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネスを提供することを目的としている。
この発明は、電線に接続される基台部と、前記基台部に取り付けられるバネ部材とで端子本体が設けられ、前記基台部は、オス型端子が挿入可能な所定間隔を隔てて配置された一対の側壁を有し、前記バネ部材は、少なくとも一方側の前記側壁に沿設される沿設板と当該沿設板から他方側の前記側壁に向かって延出されるアームバネとを有し、前記側壁と前記沿設板とが溶接されて溶接部が設けられており、前記側壁の内側面における、前記溶接部の周囲に形成された熱影響領域から離間した位置に、前記アームバネの基点部が当接又は近接配置されているメス型端子である。
なお、本発明における熱影響領域とは、溶接熱によって金属組織に変化が生じた領域を意味している。さらに、アームバネの基点部とは、沿設板とこの沿設板から延出されたアームバネとの境界部分を意味している。
またこの発明には、前述のメス型端子と、前記メス型端子を収容するコネクタハウジングとが備えられたコネクタ、ならびに前述のメス型端子と、前記メス型端子の前記基台部に接続される前記電線とが備えられた端子付き電線が含まれるものとする。
さらにこの発明には、前述の端子付き電線と、前記端子付き電線を収容するコネクタハウジングとが備えられたコネクタ付き電線、ならびに前述の端子付き電線及び前述のコネクタ付き電線のうち少なくとも一方が備えられたワイヤーハーネスが含まれるものとする。
この発明により、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
詳述すると、本願発明に係るメス型端子等は、側壁の内側面における、溶接部の周囲に形成された熱影響領域から離間した位置に、アームバネの基点部が当接又は近接配置されている。このような構成により、溶接熱がアームバネの基点部に到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部における温度の上昇を抑え、この基点部において金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
詳述すると、本願発明に係るメス型端子等は、側壁の内側面における、溶接部の周囲に形成された熱影響領域から離間した位置に、アームバネの基点部が当接又は近接配置されている。このような構成により、溶接熱がアームバネの基点部に到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部における温度の上昇を抑え、この基点部において金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
この発明の態様として、前記側壁の先端面に沿設される前記沿設板を有し、前記側壁の先端面と前記沿設板とが溶接されて前記溶接部が設けられており、前記側壁の内側面における、前記溶接部の周囲に形成された熱影響領域の最深点よりも前記側壁の反先端面側の位置に、前記アームバネの基点部が当接又は近接配置されてもよい。
なお、本発明における熱影響領域の最深点とは、熱影響領域の外縁のうち、側壁の先端面から最も遠い位置にある点を意味している。また、反先端面側とは、側壁の先端面から離れる方向を意味している。
この発明により、熱影響領域からアームバネの基点部まで、ある程度の距離を保つことができるため、溶接熱がアームバネの基点部に到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部における温度の上昇を抑え、この基点部において金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
より詳しく説明すると、熱影響領域は、溶接熱が側壁の先端面から深さ方向(溶け込み方向)に伝わりつつ周囲に消散するため、側壁の先端面側で広く徐々に狭くなった略釣り鐘形に形成される。そのため、側壁の内側面における、熱影響領域の最深点よりも側壁の反先端面側の位置に、アームバネの基点部が当接又は近接配置されれば、熱影響領域の外縁に対してある程度の距離を保つことができる。
特に、側壁の先端面と沿設板との溶接は、溶接可能面積が狭いことから、微細な溶接を実現できるレーザー溶接機が用いられる。レーザー溶接機を用いて溶接を行った場合は、横方向(メス型端子の幅方向)よりも深さ方向(メス型端子の高さ方向)に溶接熱が伝わりやすいという特徴を有する。すると、溶接時における熱量の僅かな増減によって熱影響領域の深さが変わりやすく、熱影響領域とアームバネの基点部の深さ方向(メス型端子の高さ方向)への相対的な位置関係が重要となる。そのため、側壁の内側面における、熱影響領域の最深点よりも側壁の反先端面側の位置に、アームバネの基点部が当接又は近接配置されれば、確実に基点部における温度の上昇を抑え、この基点部において金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
またこの発明の態様として、前記側壁の外側面に沿設される前記沿設板を有し、前記側壁の外側面と前記沿設板とが溶接されて前記溶接部が設けられており、前記側壁の内側面における、前記溶接部の周囲に形成された熱影響領域の一方側の最外点よりも前記側壁の先端面側又は前記熱影響領域の他方側の最外点よりも前記側壁の反先端面側の位置に、前記アームバネの基点部が当接又は近接配置されてもよい。
なお、本発明における熱影響領域の一方側の最外点とは、熱影響領域の外縁のうち、側壁の先端面から最も近い位置にある点を意味している。また、他方側の最外点とは、側壁の先端面から最も遠い位置にある点を意味している。さらに、先端面側とは、側壁の先端面に近づく方向を意味し、反先端面側とは、側壁の先端面から離れる方向を意味している。
この発明により、熱影響領域からアームバネの基点部まで、ある程度の距離を保つことができるため、溶接熱がアームバネの基点部に到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部における温度の上昇を抑え、この基点部において金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
より詳しく説明すると、熱影響領域は、溶接熱が側壁の外側面から深さ方向(溶け込み方向)に伝わりつつ周囲に消散するため、側壁の外側面側で広く徐々に狭くなった略釣り鐘形に形成される。そのため、側壁の内側面における、熱影響領域の一方側の最外点(上端点)よりも側壁の先端面側又は熱影響領域の他方側の最外点(下端点)よりも側壁の反先端面側の位置に、アームバネの基点部が当接又は近接配置されれば、熱影響領域の外縁に対してある程度の距離を保つことができる。
特に、側壁の外側面と沿設板との溶接は、溶接可能面積が広いことから、レーザー溶接機のほかに超音波溶接機やアーク溶接機を用いることができる。アーク溶接機を用いて溶接を行った場合は、深さ方向(メス型端子の幅方向)よりも横方向(メス型端子の高さ方向)に溶接熱が伝わりやすいという特徴を有する。すると、溶接時における熱量の僅かな増減によって熱影響領域の幅が変わりやすく、熱影響領域とアームバネの基点部の横方向(メス型端子の高さ方向)への相対的な位置関係が重要となる。そのため、側壁の内側面における、熱影響領域の一方側の最外点(上端点)よりも側壁の先端面側又は熱影響領域の他方側の最外点(下端点)よりも側壁の反先端面側の位置に、アームバネの基点部が当接又は近接配置されれば、確実に基点部における温度の上昇を抑え、この基点部において金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
またこの発明の態様として、前記側壁の内側面に沿設される前記沿設板を有し、前記側壁の内側面と前記沿設板とが端子開口から斜めに溶接されて前記溶接部が設けられており、前記側壁の内側面における、前記溶接部の周囲に形成された熱影響領域の一方側の最外点よりも前記側壁の先端面側又は前記熱影響領域の他方側の最外点よりも前記側壁の反先端面側の位置に、前記アームバネの基点部が当接又は近接配置されてもよい。
なお、本発明における熱影響領域の一方側の最外点も、熱影響領域の外縁のうち、側壁の先端面から最も近い位置にある点を意味している。また、他方側の最外点も、側壁の先端面から最も遠い位置にある点を意味している。さらに、先端面側も、側壁の先端面に近づく方向を意味し、反先端面側も、側壁の先端面から離れる方向を意味している。
この発明により、熱影響領域からアームバネの基点部まで、ある程度の距離を保つことができるため、溶接熱がアームバネの基点部に到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部における温度の上昇を抑え、この基点部において金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
より詳しく説明すると、熱影響領域は、溶接熱が側壁の内側面から深さ方向(溶け込み方向)に伝わりつつ周囲に消散するため、側壁の内側面側で広く徐々に狭くなった略釣り鐘形に形成される。そのため、側壁の内側面における、熱影響領域の一方側の最外点(上端点)よりも側壁の先端面側又は熱影響領域の他方側の最外点(下端点)よりも側壁の反先端面側の位置に、アームバネの基点部が当接又は近接配置されれば、熱影響領域の外縁に対してある程度の距離を保つことができる。
特に、側壁の内側面と沿設板との溶接は、互いに対向する側壁と側壁との隙間が狭いためにレーザー溶接機を用いて端子開口から斜めに溶接することが考えられる。すると、側壁の内側面に対して斜めに溶接熱が伝わるとともに、形成された熱影響領域と内側面との間に挟まれた部分にも溶接熱が伝わるので、溶接時における熱量の僅かな増減によって熱影響領域の幅が変わりやすく、熱影響領域とアームバネの基点部の横方向(メス型端子の高さ方向)への相対的な位置関係が重要となる。そのため、側壁の内側面における、熱影響領域の一方側の最外点(上端点)よりも側壁の先端面側又は熱影響領域の他方側の最外点(下端点)よりも側壁の反先端面側の位置に、アームバネの基点部が当接又は近接配置されれば、確実に基点部における温度の上昇を抑え、この基点部において金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネの押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
またこの発明の態様として、前記アームバネの基点部における硬度が母材硬度の80パーセント以上であればよい。
なお、本発明における硬度とは、いわゆるビッカーズ硬さ試験に代表される押し込み試験法による硬度を意味している。
なお、本発明における硬度とは、いわゆるビッカーズ硬さ試験に代表される押し込み試験法による硬度を意味している。
この発明により、アームバネに必要とされる押し付け力を確保することができる。また、基点部における硬度が母材硬度の80パーセント以上であることを確認すれば、アームバネの押し付け力が確保されるものと推定できるので、押し付け力に関する検査が容易となる。さらに、アームバネの押し付け力に大きな影響を及ぼす基点部の硬度を測定するのであるから、試験結果に対する推定(アームバネの押し付け力が確保されるか否か)に高い信頼性が得られる。
またこの発明の態様として、前記アームバネの接点部における硬度が母材硬度の90パーセント以上であればよい。
なお、本発明における硬度も、いわゆるビッカーズ硬さ試験に代表される押し込み試験法による硬度を意味している。
なお、本発明における硬度も、いわゆるビッカーズ硬さ試験に代表される押し込み試験法による硬度を意味している。
この発明により、アームバネに必要とされる押し付け力を確保することができる。また、接点部における硬度が母材硬度の90パーセント以上であることを確認すれば、アームバネの押し付け力が確保されるものと推定できるので、押し付け力に関する検査が容易となる。さらに、アームバネの基点部に折り曲げによる加工硬化が生じていても接点部の硬度を測定するのであるから、試験結果に対する推定(アームバネの押し付け力が確保されるか否か)に高い信頼性が得られる。
この発明の一実施形態を図面に基づいて詳述する。
図1はコネクタ1を示す全体斜視図である。図1においては、メス型端子10を収容するコネクタハウジング4を破線にて表している。
図1はコネクタ1を示す全体斜視図である。図1においては、メス型端子10を収容するコネクタハウジング4を破線にて表している。
図2はメス型端子10の分解斜視図である。図3はメス型端子10の斜視図である。図4はメス型端子10の側面図であり、図5はメス型端子10の正面図であり、図6はメス型端子10の平面図である。また、図7は図6におけるA-A矢視断面図であり、図8は図6におけるB-B矢視断面図及びC-C矢視断面図である。さらに、図9はメス型端子10の拡大断面図であり、図10はメス型端子10の内側にオス型端子5を挿入した状態の拡大断面図である。
図1に示すように、コネクタ1は、ワイヤーハーネス2を構成する電線3の先端部分に取り付けられている。コネクタ1は、コネクタハウジング4に二つのメス型端子10を平行に収容したものである。
ワイヤーハーネス2は、複数の電線3を束ねることで構成されている。電線3は、電導体である芯線3aを絶縁被覆3bで覆ったものであり、その先端部分にて露出した芯線3aがメス型端子10の基台部20に接続されている。
コネクタハウジング4は、電線3が挿通される電線挿通部41と、メス型端子10を収容する端子収容部42とを有している。メス型端子10が収容される収容空間4Sは、略四角形状に開口されており、この開口にオス型端子5(図10参照)を収容するコネクタハウジングの突出部分が嵌合される。その際、メス型端子10の内側にオス型端子5が挿入され、端子同士が電気的に接続されることとなる。
図2から図10に示すように、メス型端子10は、電線接続部11と端子接続部12とで構成されている。電線接続部11と端子接続部12は、電線3の延長線上に直列に設けられている。本願においては、かかる方向を長手方向Lとして説明する。また、オス型端子5(図10参照)を挿入する方向に対して平行となる方向を高さ方向Hとし、長手方向L及び高さ方向Hに対して直交する方向を幅方向Wとして説明する。
電線接続部11には、幅方向Wに対して垂直となる接続板111が設けられている。また、接続板111の上方側端部ならびに下方側端部が折り曲げられて案内片112が設けられている。それぞれの案内片112は、接続板111に対して接続される芯線3aの広がりを抑える役割を有している。
端子接続部12には、オス型端子5(図10参照)と電気的に接続される端子本体13が設けられている。本実施形態に係るメス型端子10において、端子本体13は、電線接続部11を含んで一体的に形成された基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とで構成されている。以下に、基台部20とバネ部材30について詳しく説明するものとする。
基台部20は、オス型端子5が挿入可能な所定間隔を隔てて配置された一対の側壁21を有している。より詳しく説明すると、基台部20は、それぞれが幅方向Wに対して垂直となる所定間隔を隔てた一対の側壁21を有している。また、基台部20は、それぞれの側壁21における下方側端部をつなぐ底壁22を有している。そのため、基台部20は、長手方向Lから視て略U字状となっている(図4参照)。
また、基台部20における一方側の側壁21は、接続板111を長手方向Lに延出することによって形成されている。他方側の側壁21は、案内片112が形成された側に板材(基台部20の基材)を折り返すことで形成されている。そのため、基台部20は、高さ方向Hから視て略矩形状となっている(図6参照)。このように、基台部20は、案内片112が形成された側に他方側の側壁21を形成することで、メス型端子10のコンパクト化を実現している。
さらに、基台部20における上方側の案内片112は、接続板111の上方側端部を折り曲げることによって形成されているところ、かかる案内片112を形成する際に側壁21が歪まないよう切欠部11aが設けられている。同様に、基台部20における下方側の案内片112も、接続板111の下方側端部を折り曲げることによって形成されているところ、かかる案内片112を形成する際に側壁21が歪まないよう切欠部11bが設けられている。なお、切欠部11bにてバネ部材30の一部が露出しており、バネ部材30を下方側から押し出して取り外すことを可能としている(図5及び図7参照)。
加えて、基台部20は、銅合金やアルミ合金等の導電性を有する板材から切り出され、かつ折り曲げられることによって形成されている。基台部20は、その表面にメッキ処理を施したものではないが、これに限定するものではない。そのため、その表面に導電性を向上させる銀メッキ又は錫メッキ等のメッキ処理を施したものであってもよい。あるいは部分的にメッキ処理を施したものであってもよい。部分的にメッキ処理を施したものとは、例えば、電線接続部11や端子接続部12の一面にメッキ処理を施したものが考えられる。あるいは電線接続部11にのみメッキ処理を施したものや、端子接続部12にのみメッキ処理を施したものが考えられる。
バネ部材30は、一対の側壁21の間に嵌め込まれた状態において側壁21の内側面21aに沿う内板31を有している。また、側壁21の外側面21bに沿う外板32を有している。さらに、内板31と外板32における上方側端部をつなぐ鍔板33を有している。そして、それぞれの内板31における下方側端部をつなぐ底板34を有している。そのため、バネ部材30は、長手方向Lから視て略M字状となっている(図4参照)。
また、バネ部材30における一方側の内板31は、側壁21の開口端縁に沿って長手方向Lに延びており、この内板31から対向する側壁21に向かって六つのアームバネ35が延出されている(図7参照)。これらアームバネ35は、全て同じ形状とされており、具体的には、長手方向Lから視て対向する側壁21に近づくように斜め下方側に延び、かつその先端縁を含む一部が折り返された形状となっている(図8参照)。
なお、一方側の内板31に設けられたアームバネ35は、側壁21の開口端縁に沿う内板31の下端縁から延びており、この内板31との境界部分がそれぞれアームバネ35の基点部35bとされる(図8参照)。本実施形態に係るメス型端子10において、アームバネ35の基点部35bは、側壁21の内側面21aに対して常に当接している。側壁21からの反力が基点部35bを介してアームバネ35に作用するため、アームバネ35の接点部35cをオス型端子5に押し付けることが可能となる(図10における矢印F参照)。
さらに、バネ部材30における他方側の内板31も、側壁21の開口端縁に沿って長手方向Lに延びており、この内板31から対向する側壁21に向かって六つのアームバネ35が延出されている(図7参照)。これらアームバネ35は、全て同じ形状とされており、具体的には、長手方向Lから視て対向する側壁21に近づくように斜め下方側に延び、かつその先端縁を含む一部が折り返された形状となっている(図8参照)。
なお、他方側の内板31に設けられたアームバネ35も、側壁21の開口端縁に沿う内板31の下端縁から延びており、この内板31との境界部分がそれぞれアームバネ35の基点部35bとされる(図8参照)。本実施形態に係るメス型端子10において、アームバネ35の基点部35bは、側壁21の内側面21aに対して常に当接している。側壁21からの反力が基点部35bを介してアームバネ35に作用するため、アームバネ35の接点部35cをオス型端子5に押し付けることが可能となる(図10における矢印F参照)。
加えて、バネ部材30は、側壁21の先端面21cに対して鍔板33が面接触した状態となっている。そして、この面接触している領域の幅方向Wの所定部分に長手方向Lに沿って溶接が行われている。そのため、鍔板33には、長手方向Lに沿って直線状の溶接部36が形成されている(図6から図10参照)。なお、溶接部36は、側壁21や鍔板33の一部が溶融して再び冷え固まった金属凝固部36mを指している。溶接部36の周囲には、溶接熱によって母材組織に変化が生じた熱影響領域36hが形成される。溶接部36の中心線Cは、側壁21の先端面21cならびに鍔板33に対して垂直に溶接されているため、これらに対して垂直となる。
さらに加えて、本実施形態に係るメス型端子10においては、側壁21の内側面21aにおける熱影響領域36hから離間した位置にアームバネ35の基点部35bが当接している。具体的に説明すると、熱影響領域36hの最深点Peよりも側壁21の反先端面側(図9及び図10における矢印A参照)の位置にアームバネ35の基点部35bが当接している。この構成については、熱影響領域36hの外縁のうち、側壁21の先端面21cから深さ方向(下方側に向かう方向:溶接部36の中心線Cに沿う溶け込み方向)に最も遠い位置にある最深点Peまでの長さをD1とし、側壁21の先端面21cからアームバネ35の基点部35bが当接している当接点Pcまでの長さをD2とした場合、D1<D2の関係が成り立つように構成されているともいえる。
ところで、図11に示すように、本実施形態に係るメス型端子10は、以下のような工程を通じて組み立て作業が完了する。すなわち、基台部20における一対の側壁21の間にバネ部材30を嵌め込み(図11(a)参照)、側壁21の先端面21cとこの先端面21cに面接触した鍔板33を溶接し(図11(b)参照)、アームバネ35の基点部35bにおける硬度を測定して組み立て作業が完了する(図11(c)参照)。もちろん硬度を測定する工程に関しては、所定数ごと(生産ロットごと)に行なわれるとしてもよい。
なお、アームバネ35の基点部35bにおける硬度を測定するのは、アームバネ35の基点部35bにおける硬度が母材硬度の80パーセント以上であることを確認するためである。すなわち、アームバネ35の基点部35bにおける硬度が基材の状態における硬度(母材硬度)の80パーセント以上であることを確認するためである。このような要件を課したのは、検査が容易であり、アームバネ35の押し付け力が適正に確保されるものと推定できるからである。
この点、アームバネ35の接点部35cにおける硬度を測定するとしてもよい。このようにするのは、アームバネ35の接点部35cにおける硬度が母材硬度の90パーセント以上であることを確認するためである。すなわち、アームバネ35の接点部35cにおける硬度が基材の状態における硬度(母材硬度)の90パーセント以上であることを確認するためである。このような要件を課したのは、検査が容易であり、アームバネ35の押し付け力が適正に確保されるものと推定できるからである。特に、アームバネ35の基点部35bに折り曲げによる加工硬化が生じていても変わらずに検査できるという利点がある。
次に、第二の実施形態に係るメス型端子10について説明する。図12は、第二の実施形態に係るメス型端子10の拡大断面図である。なお、かかるメス型端子10は、溶接部36が設けられた位置を除いて前述したメス型端子10と同様の構造である。
本実施形態に係るメス型端子10において、バネ部材30は、側壁21の外側面21bに対して外板32が面接触した状態となっている。そして、この面接触している領域の高さ方向Hの所定部分に長手方向Lに沿って溶接が行われている。そのため、外板32には、長手方向Lに沿って直線状の溶接部36が形成されている。なお、溶接部36は、前述したように、側壁21や外板32の一部が溶融して再び冷え固まった金属凝固部36mを指している。溶接部36の周囲には、溶接熱によって母材組織に変化が生じた熱影響領域36hが形成される。溶接部36の中心線Cは、側壁21の外側面21bならびに外板32に対して垂直に溶接されているため、これらに対して垂直となる。
本実施形態に係るメス型端子10においても、側壁21の内側面21aにおける熱影響領域36hから離間した位置にアームバネ35の基点部35bが当接している。具体的に説明すると、熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図12における矢印A参照)の位置にアームバネ35の基点部35bが当接している。この構成については、熱影響領域36hの外縁のうち、側壁21の先端面21cから深さ方向(下方側に向かう方向)に最も遠い位置にある下端点Pdまでの長さをD1とし、側壁21の先端面21cからアームバネ35の基点部35bが当接している当接点Pcまでの長さをD2とした場合、D1<D2の関係が成り立つように構成されているともいえる。
なお、本実施形態に係るメス型端子10おいては、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図12における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接している構成であるが、熱影響領域36hの上端点Puよりも側壁21の先端面側の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接していてもよい。このような構成であったとしても、同様の効果を奏するものと考えられる。さらに、本実施形態に係るメス型端子10おいては、側壁21の内側面21aにアームバネ35の基点部35bが当接している構成であるが、内側面21aに対して近接配置(内側面21aに対して基点部35bが僅かに隙間をあけて配置)されていてもよい。
次に、第三の実施形態に係るメス型端子10について説明する。図13は、第三の実施形態に係るメス型端子10の拡大断面図である。なお、かかるメス型端子10は、溶接部36が設けられた位置を除いて前述したメス型端子10と同様の構造である。
本実施形態に係るメス型端子10において、バネ部材30は、側壁21の内側面21aに対して内板31が面接触した状態となっている。そして、この面接触している領域の高さ方向Hの所定部分に長手方向Lに沿って溶接が行われている。そのため、内板31には、長手方向Lに沿って直線状の溶接部36が形成されている。なお、溶接部36は、前述したように、側壁21や内板31の一部が溶融して再び冷え固まった金属凝固部36mを指している。溶接部36の周囲には、溶接熱によって母材組織に変化が生じた熱影響領域36hが形成される。溶接部36の中心線Cは、側壁21の内側面21aならびに内板31に対して斜めに溶接されているため、これらに対して傾斜している。
本実施形態に係るメス型端子10においても、側壁21の内側面21aにおける熱影響領域36hから離間した位置にアームバネ35の基点部35bが当接している。具体的に説明すると、熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図13における矢印A参照)の位置にアームバネ35の基点部35bが当接している。この構成については、熱影響領域36hの外縁のうち、側壁21の先端面21cから深さ方向(下方側に向かう方向)に最も遠い位置にある下端点Pdまでの長さをD1とし、側壁21の先端面21cからアームバネ35の基点部35bが当接している当接点Pcまでの長さをD2とした場合、D1<D2の関係が成り立つように構成されているともいえる。
なお、本実施形態に係るメス型端子10おいては、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図13における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接している構成であるが、熱影響領域36hの上端点Puよりも側壁21の先端面側の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接していてもよい。このような構成であったとしても、同様の効果を奏するものと考えられる。さらに、本実施形態に係るメス型端子10おいては、側壁21の内側面21aにアームバネ35の基点部35bが当接している構成であるが、内側面21aに対して近接配置(内側面21aに対して基点部35bが僅かに隙間をあけて配置)されていてもよい。
以上のように、前述の各実施形態に係るメス型端子10は、電線3に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられるバネ部材30とで端子本体13が設けられている。基台部20は、オス型端子5が挿入可能な所定間隔を隔てて配置された一対の側壁21を有し、バネ部材30は、少なくとも一方側の側壁21に沿設される沿設板(内板31)と沿設板(内板31)から他方側の側壁21に向かって延出されるアームバネ35とを有している。そして、側壁21と沿設板(例えば鍔板33)とが溶接されて溶接部36が設けられており、側壁21の内側面21aにおける、溶接部36の周囲に形成された熱影響領域36hから離間した位置に、アームバネ35の基点部35bが当接している。
このようなメス型端子10によれば、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
詳述すると、本願発明に係るメス型端子10は、側壁21の内側面21aにおける、溶接部36の周囲に形成された熱影響領域36hから離間した位置に、アームバネ35の基点部35bが当接している。このような構成により、溶接熱がアームバネ35の基点部35bに到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部35bにおける温度の上昇を抑え、この基点部35bにおいて金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
詳述すると、本願発明に係るメス型端子10は、側壁21の内側面21aにおける、溶接部36の周囲に形成された熱影響領域36hから離間した位置に、アームバネ35の基点部35bが当接している。このような構成により、溶接熱がアームバネ35の基点部35bに到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部35bにおける温度の上昇を抑え、この基点部35bにおいて金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
また、第一の実施形態に係るメス型端子10においては、側壁21の先端面21cに沿設される鍔板33を有し、側壁21の先端面21cと鍔板33とが溶接されて溶接部36が設けられている。そして、側壁21の内側面21aにおける、溶接部36の周囲に形成された熱影響領域36hの最深点Peよりも側壁21の反先端面側(図9及び図10における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接している。
このようなメス型端子10によれば、熱影響領域36hからアームバネ35の基点部35bまで、ある程度の距離を保つことができるため、溶接熱がアームバネ35の基点部35bに到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部35bにおける温度の上昇を抑え、この基点部35bにおいて金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
より詳しく説明すると、熱影響領域36hは、溶接熱が側壁21の先端面21cから深さ方向(溶け込み方向)に伝わりつつ周囲に消散するため、側壁21の先端面21c側で広く徐々に狭くなった略釣り鐘形に形成される。そのため、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの最深点Peよりも側壁21の反先端面側(図9及び図10における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接されれば、熱影響領域36hの外縁に対してある程度の距離を保つことができる。
特に、側壁21の先端面21cと鍔板33との溶接は、溶接可能面積が狭いことから、微細な溶接を実現できるレーザー溶接機が用いられる。レーザー溶接機を用いて溶接を行った場合は、横方向(メス型端子10の幅方向W)よりも深さ方向(メス型端子10の高さ方向H)に溶接熱が伝わりやすいという特徴を有する。すると、溶接時における熱量の僅かな増減によって熱影響領域36hの深さが変わりやすく、熱影響領域36hとアームバネ35の基点部35bの深さ方向(メス型端子10の高さ方向H)への相対的な位置関係が重要となる。そのため、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの最深点Peよりも側壁21の反先端面側(図9及び図10における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接されれば、確実に基点部35bにおける温度の上昇を抑え、この基点部35bにおいて金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
なお、アームバネ35の基点部35bが当接しておらず、側壁21の内側面21aに対して近接配置(内側面21aに対して基点部35bが僅かに隙間をあけて配置)されていてもよい。このような構成であったとしても、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
また、第二の実施形態に係るメス型端子10においては、側壁21の外側面21bに沿設される外板32を有し、側壁21の外側面21bと外板32とが溶接されて溶接部36が設けられている。そして、側壁21の内側面21aにおける、溶接部36の周囲に形成された熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図12における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接している。
このようなメス型端子10によれば、熱影響領域36hからアームバネ35の基点部35bまで、ある程度の距離を保つことができるため、溶接熱がアームバネ35の基点部35bに到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部35bにおける温度の上昇を抑え、この基点部35bにおいて金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
より詳しく説明すると、熱影響領域36hは、溶接熱が側壁21の外側面21bから深さ方向(溶け込み方向)に伝わりつつ周囲に消散するため、側壁21の外側面21b側で広く徐々に狭くなった略釣り鐘形に形成される。そのため、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図12における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接されれば、熱影響領域36hの外縁に対してある程度の距離を保つことができる。
特に、側壁21の外側面21bと外板32との溶接は、溶接可能面積が広いことから、レーザー溶接機のほかに超音波溶接機やアーク溶接機を用いることができる。アーク溶接機を用いて溶接を行った場合は、深さ方向(メス型端子10の幅方向W)よりも横方向(メス型端子10の高さ方向H)に溶接熱が伝わりやすいという特徴を有する。すると、溶接時における熱量の僅かな増減によって熱影響領域36hの幅が変わりやすく、熱影響領域36hとアームバネ35の基点部35bの横方向(メス型端子10の高さ方向H)への相対的な位置関係が重要となる。そのため、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図12における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接されれば、確実に基点部35bにおける温度の上昇を抑え、この基点部35bにおいて金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
なお、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの上端点Puよりも側壁21の先端面側の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接してもよい。また、いずれにおいてもアームバネ35の基点部35bが当接しておらず、側壁21の内側面21aに対して近接配置(内側面21aに対して基点部35bが僅かに隙間をあけて配置)されていてもよい。このような構成であったとしても、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
また、第三の実施形態に係るメス型端子10においては、側壁21の内側面21aに沿設される内板31を有し、側壁21の内側面21aと内板31とが端子開口から斜めに溶接されて溶接部36が設けられている。そして、側壁21の内側面21aにおける、溶接部36の周囲に形成された熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図13における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接している。
このようなメス型端子10によれば、熱影響領域36hからアームバネ35の基点部35bまで、ある程度の距離を保つことができるため、溶接熱がアームバネ35の基点部35bに到達するまでの間で大きく消散することとなる。そのため、基点部35bにおける温度の上昇を抑え、この基点部35bにおいて金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
より詳しく説明すると、熱影響領域36hは、溶接熱が側壁21の内側面21aから深さ方向(溶け込み方向)に伝わりつつ周囲に消散するため、側壁21の内側面21a側で広く徐々に狭くなった略釣り鐘形に形成される。そのため、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図13における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接されれば、熱影響領域36hの外縁に対してある程度の距離を保つことができる。
特に、側壁21の内側面21aと内板31との溶接は、互いに対向する側壁21と側壁21との隙間が狭いためにレーザー溶接機を用いて端子開口から斜めに溶接することが考えられる。すると、側壁21の内側面21aに対して斜めに溶接熱が伝わるとともに、形成された熱影響領域36hと内側面21aとの間に挟まれた部分(図13における領域R)にも溶接熱が伝わるので、溶接時における熱量の僅かな増減によって熱影響領域36hの幅が変わりやすく、熱影響領域36hとアームバネ35の基点部35bの横方向(メス型端子10の高さ方向H)への相対的な位置関係が重要となる。そのため、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの下端点Pdよりも側壁21の反先端面側(図13における矢印A参照)の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接されれば、確実に基点部35bにおける温度の上昇を抑え、この基点部35bにおいて金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
なお、側壁21の内側面21aにおける、熱影響領域36hの上端点Puよりも側壁21の先端面側の位置に、アームバネ35の基点部35bが当接してもよい。また、いずれにおいてもアームバネ35の基点部35bが当接しておらず、側壁21の内側面21aに対して近接配置(内側面21aに対して基点部35bが僅かに隙間をあけて配置)されていてもよい。このような構成であったとしても、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
また、第一から第三の実施形態に係るメス型端子10においては、アームバネ35の基点部35bにおける硬度が母材硬度の80パーセント以上である。これは、溶接を行う前後において測定された測定値に基づいて算出される。あるいは基材の状態におけるバネ部材30の測定値と溶接を行った後において測定された測定値とに基づいて算出される。
このようなメス型端子10によれば、アームバネ35に必要とされる押し付け力を確保することができる。また、基点部35bにおける硬度が母材硬度の80パーセント以上であることを確認すれば、アームバネ35の押し付け力が確保されるものと推定できるので、押し付け力に関する検査が容易となる。さらに、アームバネ35の押し付け力に大きな影響を及ぼす基点部35bの硬度を測定するのであるから、試験結果に対する推定(アームバネ35の押し付け力が確保されるか否か)に高い信頼性が得られる。
また、第一から第三の実施形態に係るメス型端子10においては、アームバネ35の接点部35cにおける硬度が母材硬度の90パーセント以上である。これも、溶接を行う前後において測定された測定値に基づいて算出される。あるいは基材の状態におけるバネ部材30の測定値と溶接を行った後において測定された測定値とに基づいて算出される。
このようなメス型端子10によれば、アームバネ35に必要とされる押し付け力を確保することができる。また、接点部35cにおける硬度が母材硬度の90パーセント以上であることを確認すれば、アームバネ35の押し付け力が確保されるものと推定できるので、押し付け力に関する検査が容易となる。さらに、アームバネ35の基点部35bに折り曲げによる加工硬化が生じていても接点部35cの硬度を測定するのであるから、試験結果に対する推定(アームバネ35の押し付け力が確保されるか否か)に高い信頼性が得られる。
なお、各実施形態に係るメス型端子10においては、ファイバーレーザー溶接機を用いて側壁21と沿設板(内板31、外板32及び鍔板33)の溶接を行うものとしているが、アーク溶接機等を用いて溶接を行うとしてもよい。また、超音波溶接や抵抗溶接、摩擦溶接、その他の溶接を可能とする溶接機を用いて溶接を行うとしてもよい。さらに、ろう付けやはんだ付け等のろう接も溶接の概念に含むものとする。
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明のコネクタはコネクタ1に対応し、
以下同様に、
ワイヤーハーネスはワイヤーハーネス2に対応し、
電線は電線3に対応し、
コネクタハウジングはコネクタハウジング4に対応し、
オス型端子はオス型端子5に対応し、
メス型端子はメス型端子10に対応し、
端子本体は端子本体13に対応し、
基台部は基台部20に対応し、
側壁は側壁21に対応し、
内側面は内側面21aに対応し、
外側面は外側面21bに対応し、
先端面は先端面21cに対応し、
バネ部材はバネ部材30に対応し、
沿接板は内板31及び外板32及び鍔板33に対応し、
アームバネはアームバネ35に対応し、
基点部は基点部35bに対応し、
接点部は接点部35cに対応し、
溶接部は溶接部36に対応し、
金属凝固部は金属凝固部36mに対応し、
熱影響領域は熱影響領域36hに対応し、
熱影響領域の最深点は最深点Peに対応し、
熱影響領域の一方側の最外点は上端点Puに対応し、
熱影響領域の他方側の最外点は下端点Pdに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
以下同様に、
ワイヤーハーネスはワイヤーハーネス2に対応し、
電線は電線3に対応し、
コネクタハウジングはコネクタハウジング4に対応し、
オス型端子はオス型端子5に対応し、
メス型端子はメス型端子10に対応し、
端子本体は端子本体13に対応し、
基台部は基台部20に対応し、
側壁は側壁21に対応し、
内側面は内側面21aに対応し、
外側面は外側面21bに対応し、
先端面は先端面21cに対応し、
バネ部材はバネ部材30に対応し、
沿接板は内板31及び外板32及び鍔板33に対応し、
アームバネはアームバネ35に対応し、
基点部は基点部35bに対応し、
接点部は接点部35cに対応し、
溶接部は溶接部36に対応し、
金属凝固部は金属凝固部36mに対応し、
熱影響領域は熱影響領域36hに対応し、
熱影響領域の最深点は最深点Peに対応し、
熱影響領域の一方側の最外点は上端点Puに対応し、
熱影響領域の他方側の最外点は下端点Pdに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
例えば、第一の実施形態に係るメス型端子10は、側壁21の先端面21cに鍔板33が溶接され、第二実施形態に係るメス型端子10は、側壁21の外側面21bに外板32が溶接され、第三実施形態に係るメス型端子10は、側壁21の内側面21aに内板31が溶接されている。しかし、図14(a)に示すように、鍔板33における溶接と外板32における溶接が行われていてもよい。あるいは図14(b)に示すように、鍔板33における溶接と内板31における溶接が行われていてもよい。もちろん他の組み合せでもよい。さらには各溶接部36が複数本又は複数個の溶接箇所で構成されていてもよい。
また、第一から第三の実施形態に係るメス型端子10は、側壁21の開口端縁に沿う内板31の下端縁からアームバネ35が延出されており、この内板31とアームバネ35の境界部分がアームバネ35の基点部35bであるとされている。しかし、図15(a)に示すように、内板31に凸形部分31tが形成されており、側壁21と凸形部分31tとの当接点Pcを基点としてアームバネ35が機能する場合は、この凸形部分31tがアームバネ35の基点部35bとなる。あるいは図15(b)に示すように、側壁21に凸形部分21tが形成されており、凸形部分21tと内板31との当接点Pcを基点としてアームバネ35が機能する場合は、この凸形部分21tが当接している部分がアームバネ35の基点部35bとなる。
最後に、本願の発明には、前述のメス型端子10と、メス型端子10を収容するコネクタハウジング4とが備えられたコネクタ1(図1参照)、ならびに前述のメス型端子10と、メス型端子10の基台部20に接続される電線3とが備えられた端子付き電線6(図1参照)が含まれるものとする。
さらには、本願の発明には、前述の端子付き電線6と、端子付き電線6を収容するコネクタハウジング4とが備えられたコネクタ付き電線7(図1参照)、ならびに前述の端子付き電線6及び前述のコネクタ付き電線7のうち少なくとも一方を備えたワイヤーハーネス2(図1参照)が含まれるものとする。
これらにおいても、本願発明に係るメス型端子10と同様の効果を奏する。すなわち、基点部35bにおける温度の上昇を抑え、この基点部35bにおいて金属組織が変化することを防止できる。したがって、アームバネ35の押し付け力が低下することを防ぎ、ひいては導電性を安定させることができる。
1…コネクタ
2…ワイヤーハーネス
3…電線
4…コネクタハウジング
5…オス型端子
6…端子付き電線
7…コネクタ付き電線
10…メス型端子
13…端子本体
20…基台部
21…側壁
21a…内側面
21b…外側面
21c…先端面
30…バネ部材
31…内板
32…外板
33…鍔板
35…アームバネ
35b…アームバネの基点部
35c…アームバネの接点部
36…溶接部
36m…金属凝固部
36h…熱影響領域
Pe…最深点
Pu…上端点
Pd…下端点
2…ワイヤーハーネス
3…電線
4…コネクタハウジング
5…オス型端子
6…端子付き電線
7…コネクタ付き電線
10…メス型端子
13…端子本体
20…基台部
21…側壁
21a…内側面
21b…外側面
21c…先端面
30…バネ部材
31…内板
32…外板
33…鍔板
35…アームバネ
35b…アームバネの基点部
35c…アームバネの接点部
36…溶接部
36m…金属凝固部
36h…熱影響領域
Pe…最深点
Pu…上端点
Pd…下端点
Claims (10)
- 電線に接続される基台部と、
前記基台部に取り付けられるバネ部材とで端子本体が設けられ、
前記基台部は、オス型端子が挿入可能な所定間隔を隔てて配置された一対の側壁を有し、
前記バネ部材は、少なくとも一方側の前記側壁に沿設される沿設板と当該沿設板から他方側の前記側壁に向かって延出されるアームバネとを有し、
前記側壁と前記沿設板とが溶接されて溶接部が設けられており、
前記側壁の内側面における、前記溶接部の周囲に形成された熱影響領域から離間した位置に、前記アームバネの基点部が当接又は近接配置されている
メス型端子。 - 前記側壁の先端面に沿設される前記沿設板を有し、
前記側壁の先端面と前記沿設板とが溶接されて前記溶接部が設けられており、
前記側壁の内側面における、前記熱影響領域の最深点よりも前記側壁の反先端面側の位置に、前記アームバネの基点部が当接又は近接配置されている
請求項1に記載のメス型端子。 - 前記側壁の外側面に沿設される前記沿設板を有し、
前記側壁の外側面と前記沿設板とが溶接されて前記溶接部が設けられており、
前記側壁の内側面における、前記熱影響領域の一方側の最外点よりも前記側壁の先端面側又は前記熱影響領域の他方側の最外点よりも前記側壁の反先端面側の位置に、前記アームバネの基点部が当接又は近接配置されている
請求項1に記載のメス型端子。 - 前記側壁の内側面に沿設される前記沿設板を有し、
前記側壁の内側面と前記沿設板とが端子開口から斜めに溶接されて前記溶接部が設けられており、
前記側壁の内側面における、前記熱影響領域の一方側の最外点よりも前記側壁の先端面側又は前記熱影響領域の他方側の最外点よりも前記側壁の反先端面側の位置に、前記アームバネの基点部が当接又は近接配置されている
請求項1に記載のメス型端子。 - 前記アームバネの基点部における硬度が母材硬度の80パーセント以上である
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のメス型端子。 - 前記アームバネの接点部における硬度が母材硬度の90パーセント以上である
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のメス型端子。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のメス型端子と、
前記メス型端子を収容するコネクタハウジングとが備えられた
コネクタ。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のメス型端子と、
前記メス型端子の前記基台部に接続される前記電線とが備えられた
端子付き電線。 - 請求項8に記載の端子付き電線と、
前記端子付き電線を収容するコネクタハウジングとが備えられた
コネクタ付き電線。 - 請求項8に記載の端子付き電線及び請求項9に記載のコネクタ付き電線のうち少なくとも一方が備えられた
ワイヤーハーネス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021124584A JP2023019665A (ja) | 2021-07-29 | 2021-07-29 | メス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネス |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021124584A JP2023019665A (ja) | 2021-07-29 | 2021-07-29 | メス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネス |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2023019665A true JP2023019665A (ja) | 2023-02-09 |
Family
ID=85160208
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2021124584A Pending JP2023019665A (ja) | 2021-07-29 | 2021-07-29 | メス型端子、コネクタ、端子付き電線、コネクタ付き電線及びワイヤーハーネス |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2023019665A (ja) |
-
2021
- 2021-07-29 JP JP2021124584A patent/JP2023019665A/ja active Pending
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