JP2023001809A - 板材のループ状態測定方法及びループ状態測定装置、並びに板材の圧延方法 - Google Patents

板材のループ状態測定方法及びループ状態測定装置、並びに板材の圧延方法 Download PDF

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Yoshihito Isei
武 太田
Takeshi Ota
昂 佐々木
Takashi Sasaki
雅希 柴田
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Abstract

【課題】板材のループ状態を精度良く安定して測定可能な板材のループ状態測定装置等を提供する。【解決手段】本発明に係るループ状態測定装置100は、板材Sの幅方向に沿って設けられ、熱間圧延ラインのパスラインPL上方から、撮像視野内に板材のエッジが含まれるように撮像して撮像画像を生成する2台の2次元撮像装置1、2と、撮像画像に基づき、ステレオ立体視の手法を用いて、板材の圧延方向の複数箇所での板材のエッジの座標を算出し、算出した複数箇所での板材のエッジの座標に基づき、隣接する2組のロール対WRa、WRbの間における板材Sのエッジの長さを演算する演算装置3と、を備える。【選択図】 図4

Description

本発明は、熱延鋼板等の板材の熱間圧延ラインにおける板材のループ状態(ループの発生有無やループの程度)を測定する、板材のループ状態測定方法及びループ状態測定装置、並びにこれを用いた板材の圧延方法に関する。
図1は、熱延鋼板の熱間圧延ラインの設備構成例を模式的に示す図である。図1(a)は全体構成図であり、図1(b)は、図1(a)において破線で囲って示す第6圧延スタンド及び第7圧延スタンド周辺の拡大構成図である。熱延鋼板の熱間圧延ラインが備える仕上圧延機は、例えば約5.5mの間隔で水平方向に配置された6~7基の圧延機(以下、「圧延スタンド」と称する)で構成されている。各圧延スタンドは、板材Sの圧延方向(搬送方向)上流側から順に、第1圧延スタンド、第2圧延スタンドのように、番号が付される。図1(b)に示すように、各圧延スタンドには、上下に対向配置され、間に挟んだ板材Sを押圧して圧延するワークロールWRa、WRbと、これらを支持するバックアップロールBRa、BRbと、が配置されている。
そして、粗バーと称される、仕上圧延機入側の寸法として厚みが30~60mm、幅が700~2100mm、長さが約70mの板材Sを、約1000℃の高温状態で仕上圧延機の各圧延スタンドで順次圧延し、最終圧延スタンド(図1に示す例では、第7圧延スタンド)で所定の1.2~数mmの製品板厚まで薄くする。最終圧延スタンド出側での板材Sの温度は850~950℃であり、板材Sの速度は、板材Sの温度低下を抑制するために、先端から後端にかけて加速され、最高速度は1600mpmになる。
図1(b)に、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7に着目した場合を例として示したように、仕上圧延機の各圧延スタンド間には、板材Sに張力を付与して通板を安定化させるためのルーパLPが設けられている。ルーパLPは、ルーパロールLR及びルーパアームLAを具備する。ルーパロールLRは、ルーパアームLAの先端に保持されており、ルーパアームLAの回動によりルーパロールLRを昇降させることで、これに接触する板材Sを昇降させ、圧延スタンド間の板材Sのたるみを吸収して、適度な張力を付与する。通常、仕上圧延機で圧延中の板材Sに付与される張力としては、約1kg/mmが望ましいとされている。板材Sにかかる張力が、この張力よりも小さくなると、板材Sが蛇行し通板が不安定になり、大きくなると、板材Sの幅が縮み、幅寸法不良を生じて製品歩留まりを悪化させる。特に、板材Sの先端を仕上圧延機の各圧延スタンドに通していく際には、板材Sが無張力状態であるため、安定的に通板しながら製品寸法を確保することが圧延中で最も難しい。ルーパLPの駆動装置(ルーパアームLAを回動させる装置)としては、電動モータや油圧モータが使用される。
以下、仕上圧延機における従来の板材Sの圧延方法について説明する。
従来の圧延方法は、仕上圧延機のセットアップ制御、板材先端通板時のルーパ制御、張力制御モードの順に実行される。以下、これらについて順に説明する。
<仕上圧延機のセットアップ制御>
仕上圧延機のセットアップ制御では、板材Sの先端を各圧延スタンドに順番に噛み込ませて圧延していく際に、予めプロセスコンピュータにより、板材Sの変形抵抗及び温度の予測値に基づき、各圧延スタンドのワークロールWRa、WRbの開度(ロールギャップ量)及び周速度を設定する。セットアップ制御では、最初に各圧延スタンド(図1に示す例では、第1~第7圧延スタンド)における目標板厚が決定され、各圧延スタンドでの板材Sの変形抵抗及び温度の予測値に基づき、各圧延スタンドのワークロールWRa、WRbの開度を決定する。次に、最終圧延スタンド(図1に示す例では、第7圧延スタンドF7)出側の板材Sの速度Vを、仕上圧延時の板材Sの温度降下を考慮して決定し、各圧延スタンド出側の板材Sの速度がバランスするように、各圧延スタンドのワークロールWRa、WRbの周速度(ロール周速度)を決定する。
任意の第i番目の圧延スタンドを第i圧延スタンドとすると、第i圧延スタンド出側の板材Sの速度Vは、第i圧延スタンドのロール周速度VRiと先進率fとを用いて、以下の式(1)で表すことができる。ここで先進率fは、ワークロールWRa、WRbと板材Sとのすべりの割合を表す定数で、圧延理論や実験値に基づく予測値が使用される。
=VRi(1+f)・・・(1)
したがって、第i圧延スタンド出側の板材Sの体積速度Qは、第iスタンド出側の板材Sの厚み(板厚)t及び幅(板幅)Wを用いて、以下の式(2)で表すことができる。
=W・t・V=W・t・VRi(1+f)・・・(2)
例えば圧延スタンドが7基である場合には、最終圧延スタンドである第7圧延スタンドF7出側の板材Sの体積速度Qは、上記の式(2)において、i=7を代入することで、以下の式(3)で表すことができる。
=W・t・VR7(1+f)・・・(3)
各圧延スタンド出側の板材Sの速度がバランスし、各圧延スタンド間に過大なループや過張力を生じさせないためには、最終圧延スタンドである第7圧延スタンドF7出側の板材Sの体積速度Qと、各圧延スタンド出側の板材Sの体積速度Qとが等しくなければならない。すなわち、以下の式(4)が成立する必要がある。
・t・VRi(1+f)=W・t・VR7(1+f)・・・(4)
上記の式(4)において、通常、板幅Wは各圧延スタンド出側で変化しない(無視できる程度の変化量である)ため、W=Wとなり、これを上記の式(4)に代入して整理すると、第i圧延スタンドのロール周速度VRiは、以下の式(5)で表される。
Ri=t・VR7(1+f)/{t(1+f)}・・・(5)
上記の式(5)の右辺のVR7は、前述のように、仕上圧延時の板材Sの温度降下を考慮して決定された最終圧延スタンドである第7圧延スタンドF7出側の板材Sの速度Vを用いて式(1)により算出される。
セットアップ制御では、この式(5)で算出されるVRiを用いて各圧延スタンドのロール周速度が設定される。
<板材先端通板時のルーパ制御>
図2は、板材Sの先端が第i圧延スタンド及び第i+1圧延スタンドを通板する際の制御を実行する状態の圧延制御装置を模式的に示す図である。具体的には、図2は、第i圧延スタンドと第i+1圧延スタンドとの間に板材Sの先端を通板し、第i+1圧延スタンドに板材Sの先端を噛み込ませてルーパLPを制御する状態を示す。なお、図2に示すパスラインPLは、板材Sの圧延方向上流側に位置するロール対(第i圧延スタンドのワークロールWa、Wb)の下側に位置するロール(第i圧延スタンドのワークロールWb)の頂点(上下方向最上部)と、板材Sの圧延方向下流側に位置するロール対(第i+1圧延スタンドのワークロールWa、Wb)の下側に位置するロール(第i+1圧延スタンドのワークロールWb)の頂点(上下方向最上部)とを結ぶ直線を意味する。
図2に示すように、第i圧延スタンドのワークロールWRa、WRbの周速度を制御する速度制御装置に対して、プロセスコンピュータからセットアップ制御で算出した第i圧延スタンドのロール周速度(設定周速度)VRiを送信することで、速度制御装置は、ワークロールWRa、WRbがロール周速度VRiで回転するようにワークロールWRa、WRbの駆動装置Mを制御する。同様に、第i+1圧延スタンドのワークロールWRa、WRbの周速度を制御する速度制御装置に対して、プロセスコンピュータからセットアップ制御で算出した第i+1圧延スタンドのロール周速度(設定周速度)VRi+1を送信することで、速度制御装置は、ワークロールWRa、WRbがロール周速度VRi+1で回転するようにワークロールWRa、WRbの駆動装置Mを制御する。これにより、第i圧延スタンドのワークロールWRa、WRbは周速度VRiで予め回転し、第i+1圧延スタンドのワークロールWRa、WRbは周速度VRi+1で予め回転する。
第i圧延スタンドを通過した板材Sの先端は、下限位置で待機するルーパLPのルーパアームLAの上側の側面(図2の左側面)に支えられて進行し、ルーパロールLRを経て、第i+1圧延スタンド入側のサイドガイド(図示せず)に支えられて第i+1圧延スタンドのロールギャップ(ワークロールWRaとワークロールWRbとの隙間)に進入する。
板材Sの先端が第i+1圧延スタンドのロールギャップに進入することで、第i+1圧延スタンドに圧延荷重が発生したことをロードセル(図示せず)で検出すると、ルーパLPに接続されたトルク制御装置が、ルーパLPの駆動装置Mに立ち上げ指令(上昇指令)を送信する。この際、トルク制御装置は、プロセスコンピュータから送信された立ち上げトルクTsの値も駆動装置Mに対して送信する。これにより、ルーパLPの駆動装置Mは、ルーパロールLRを一定のトルクTsで上昇(一定の速度で上昇)させて、予め定めた所定の時間が経過した後、張力制御モードに移行する。
<張力制御モード>
図3は、張力制御モードを実行する状態の圧延制御装置を模式的に示す図である。
図3に示すように、張力制御モードでは、ルーパLPに接続されたトルク制御装置が、板材Sの張力実績T(張力計TMで実測した板材Sの張力)がプロセスコンピュータから送信された目標張力Taimに近づくように、ルーパロールLRに作用するトルクを制御する。具体的には、トルク制御装置が、張力実績Tが目標張力Taimに近づくトルクの値(以下、これを適宜「制御トルク」と称する)を演算し、ルーパLPの駆動装置Mに送信する。これにより、ルーパLPの駆動装置Mが、ルーパロールLRに対して制御トルクを作用させる。なお、張力計TMとしては、例えば、ルーパアームLAに取り付けた荷重計を用いて張力を演算する構成や、ルーパLPの駆動装置Mのトルク実績から張力を演算する構成を用いることができる。
また、張力制御モードでは、第i圧延スタンドのワークロールWRa、WRbの周速度を制御する速度制御装置が、ルーパロールLRの角度実績θ(角度計AMで実測したルーパロールLRの水平方向からの角度)がプロセスコンピュータから送信された目標角度θaimに近づくように、設定周速度VRiに補正を加えた第i圧延スタンドのワークロールWRa、WRbの周速度を制御する。具体的には、速度制御装置が、角度実績θが目標角度θaimに近づくワークロールWRa、WRbの周速度の値(以下、これを適宜「制御周速度」と称する)を演算し、ワークロールWRa、WRbの駆動装置Mに送信する。これにより、ワークロールWRa、WRbの駆動装置Mが、ワークロールWRa、WRbを制御周速度で回転させる。なお、ルーパロールLRの角度実績θが目標角度θaimよりも大きいときには、速度制御装置はワークロールWRa、WRbの周速度を減速させ、角度実績θが目標角度θaimよりも小さいときにはワークロールWRa、WRbの周速度を加速させる。目標角度θaimは、一般に15~20°の範囲であり、圧延スタンド間における板材Sの通板安定性や張力制御性等を考慮して経験的に設定される。なお、角度計AMとしては、例えば、ルーパLPの駆動装置Mの回動軸に取り付けられたロータリエンコーダを用いることができる。
以上に説明した従来の仕上圧延機における板材Sの圧延方法においては、圧延理論や実験値に基づき予測した先進率に誤差が含まれるため、板材Sの先端が各圧延スタンドを通過する際に、先進率に基づいて算出された各圧延スタンド出側の板材Sの速度バランスが崩れ、ループや過張力が発生する場合がある。ループの発生とは、ルーパロールLRの立ち上げ(上昇)完了後に張力制御モードに移行した後も、ルーパロールLRに板材Sが接触していない状態になることであり、過大なループが発生した場合には、張力制御が不能となり圧延トラブルを発生させる原因となる。過張力は、ルーパロールLRの立ち上げ(上昇)開始直後の目標角度θaim以下でルーパロールLRが板材Sに接触し、そのままルーパロールLRを上昇させ続けてしまい、過剰な張力が板材Sにかかる状態であり、板材Sの幅の縮みが発生して歩留まりが低下する。このため、仕上圧延機のオペレータが、圧延スタンド間の板材Sの状況を目視によって監視し、必要に応じて、上流側に位置する圧延スタンド(第i圧延スタンド)のワークロールWRa、WRbの周速度を手動で操作して補正(図2に示すΔV)することで対応している。しかしながら、そうしたオペレータによる操作では、操作の遅れが発生したり周速度の補正量が適正でないことによって、圧延トラブルや板幅の縮みによる歩留まり低下が生じる場合があった。また、圧延実績に基づき、先進率の予測誤差を考慮して、経験的に板材Sの体積速度を補正して設定することも行なわれているが、そうした予測も完全ではないため、従来より、各種の板材の圧延技術が提案されてきた。
従来提案されている板材の圧延技術を大別すると、ルーパに設けられたトルク計や荷重計によって板材の張力を推定する技術や、板材のループ状態をセンサによって直接測定する技術の2種類が提案されている。前者の技術としては、例えば、特許文献1、2に記載の技術が、後者の技術としては、例えば、特許文献3、4に記載の技術が提案されている。
特許文献1には、「スタンド間に設置された電動ルーパの高さを検出して得られるルーパ高さ検出値をルーパ高さ目標値に追随させるようにルーパ駆動用電動機を速度制御するルーパ高さ制御系と、ルーパロールの下面に設置した荷重計の出力に基づいて演算したスタンド間の張力検出値を張力目標値に追随させるように主機駆動用電動機を速度制御する張力制御系とを備えた熱間連続圧延機のルーパ制御装置において、スタンド間材料の前記ルーパロールからの板離れを検出する板離れ検出手段を検出する手段と、この板離れ検出手段が板離れを検出したとき、スタンド間材料のループを小さくするような速度補正信号またはゲイン補正信号を前記張力制御系に加える主機速度補正手段とを備えたことを特徴とする連続圧延機のルーパ制御装置」が提案されている(特許文献1の特許請求の範囲等)。
特許文献2には、「ルーパーの駆動トルクを検出する装置およびこの検出装置により検出されたトルクをルーパーロールの高さの関数としてスタンド間の張力値に変換する装置を具備した熱間タンデム圧延機のスタンド間ルーバーの張力を制御する方法において、上記のルーパーの上昇指令と共にあらかじめ設定した高速でこのルーパーロールを上昇すること、および、上記のスタンド間の張力値があらかじめ設定した目標張力値の許容範囲内に入ったとき以降において上記のスタンド間の張力値が上記の目標張力値に一致するに至るまで上記のルーパーを駆動するトルクを制御することを特徴とするルーパーの張力制御方法」が提案されている(特許文献2の特許請求の範囲等)。
特許文献3には、「被圧延材を圧延する複数の圧延スタンドを有する連続圧延機の速度設定装置において、圧延スタンド間の速度アンバランス量を検出する手段と、この速度アンバランス量に基づいて次の被圧延材の圧延速度設定値を修正する速度修正手段とを備えた連続圧延機の速度設定装置」が提案されている(特許文献3の請求項1等)。
特許文献4には、「圧延材を所定の製品板厚まで圧延する仕上圧延機を構成する複数のスタンドのうち隣接する2つのスタンドの間の側面に設置され、前記圧延材の側面を撮像する撮像部と、前記撮像部により得られた画像データに基づいて前記2つのスタンド間の前記圧延材のループ量を求め、前記ループ量と基準値を比較判定する画像処理部と、前記ループ量が前記基準値より大きい場合、前記2つのスタンド間の距離と前記ループ量に基づいて圧延速度の速度変更量を演算する圧延速度演算部と、前記速度変更量に応じて2つのスタンドのうち前記圧延材の搬送方向上流側スタンドの圧延速度を制御する圧延速度制御部とを備えたことを特徴とする圧延制御システム」が提案されている(特許文献4の請求項1等)。
特開平1-48616号公報 特開昭54-117358号公報 特開平9-52107号公報 特開2004-243365号公報
特許文献1に開示された技術は、板離れ、すなわち、ループの発生を抑制できるという特徴を有する。しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、ルーパロールの下面に設置した荷重計の出力に基づいて圧延スタンド間の張力検出値を演算するが、ルーパロールが使用される環境は高温・高振動の環境であるため、荷重計が故障し易い。このため、特許文献1に開示された技術には、メンテナンスが難しいという問題がある。また、特許文献1に開示された技術では、圧延中(全ての圧延スタンドに板材が噛みこんだ後)の板離れしか想定していない。このため、特許文献1に開示された技術では、板材の先端が圧延スタンドに噛みこむ状況には対応できないという問題もある。
特許文献2に開示されている技術によれば、圧延スタンド間の張力値を正確に予測できれば、板材のループや過張力を発生させることなく、ルーパロールの上昇を適切に停止することができ、圧延トラブルを抑制することが可能になると考えられる。しかしながら、特許文献2に開示されている張力値の計算式には板材の重さ等の不確定要素が含まれる他、板材とルーパロールとが安定して接触していることを前提に導出された計算式であるため、板材が折り重なって圧延スタンドに進入するようなときの板離れを検出できないという問題がある。
以上のように、ルーパに設けられたトルク計や荷重計によって板材の張力を推定する技術では、圧延スタンド間の板材のループ状態を直接測定していないため、板材とルーパロールとの接触状態を正確に判定できないという問題がある。
特許文献3には、圧延スタンド間の速度アンバランス量を検出する手段として、上流側に位置する圧延スタンド出側での板速度及び下流側に位置する圧延スタンドの入側での板速度を板速度センサを用いて測定し、この測定結果に基づき速度アンバランス量を算出する構成が記載されている。ルーパロールが板材に接触する前に板速度を測定するには、非接触の板速度センサを用いる必要があり、一般的に、レーザドップラ速度計が用いられる。しかしながら、仕上圧延機の圧延スタンド間は、粉塵や湯気が充満し、大量に水滴が飛散するという劣悪な環境であるため、レーザドップラ速度計により鋼板の速度を安定して測定することは容易でないという問題がある。
特許文献4には、仕上圧延機の圧延スタンド間の側方から、撮像部として2次元のカメラを用いて板材のエッジ形状を撮像し、この撮像画像からループ高さを算出し、上流側に位置する圧延スタンドの下側のワークロールの頂点と、ループ頂点と、下流側に位置する圧延スタンドの下側のワークロールの頂点とを結んだ折れ線の長さを板材のエッジの長さ(特許文献4では、板長さK)として算出することが記載されている。しかしながら、無張力状態では、下側のワークロールの頂点とループ頂点とを結んだ折れ線で算出(近似)した板材のエッジの長さは、原理的に実際のエッジの長さよりも短いことは明らかであり、誤差が大きい。また、圧延スタンド間の側方から板材を撮像する場合、操業に使用するクレーン等の干渉があったり、圧延スタンドのハウジングやサイドガイドにより視野が限られており、実際には撮像が困難である。
以上のように、板材のループ状態を板速度センサや熱間圧延ラインの側方に設置された撮像手段を用いて測定する技術では、安定して高精度にループ状態を測定できないという問題がある。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、板材のループ状態を精度良く安定して測定可能な板材のループ状態測定方法及びループ状態測定装置、並びにこれを用いて安定して板材を圧延可能な板材の圧延方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の発明者が鋭意検討した結果、仕上圧延機の圧延スタンド間の上方には圧延スタンド間の設備メンテナンスの観点から空間が確保されており、板材を2次元撮像装置を用いて圧延スタンド間の上方から撮像すると、サイドガイド内も撮像できるため、圧延方向にも測定視野を広くとることができ、2次元撮像装置を2台用いてステレオ立体視すれば、板材のエッジの形状、ひいては、板材のエッジの長さを精度良く安定して測定できることを見出した。
本発明は、本発明者らの上記知見に基づき完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、上下に対向配置されたロールから構成されるロール対が水平方向に複数設置された熱間圧延ラインにおいて、圧延される板材のループ状態を測定する板材のループ状態測定方法であって、前記複数のロール対のうち隣接する2組のロール対の間において、前記板材の幅方向に沿って設けられた2台の2次元撮像装置を用い、前記熱間圧延ラインのパスライン上方から、撮像視野内に前記板材のエッジが含まれるように前記板材を撮像して撮像画像を生成する撮像工程と、前記撮像画像に基づき、前記板材の圧延方向の複数箇所での前記板材のエッジの座標を算出し、算出した前記複数箇所での前記板材のエッジの座標に基づき、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のエッジの長さを演算する演算工程と、を有し、前記2台の2次元撮像装置は、前記板材の圧延方向から見た場合の光軸の方向が、互いに異なるように設けられており、前記演算工程では、前記2台の2次元撮像装置で撮像した前記撮像画像における前記板材のエッジの位置を検出し、検出した前記撮像画像における前記板材のエッジの位置に基づき、前記2台の2次元撮像装置から前記複数箇所での前記板材のエッジまでの距離を算出し、前記算出した距離と前記2台の2次元撮像装置の幾何学的配置条件とに基づき、前記板材の圧延方向の複数箇所での前記板材のエッジの座標を算出する、板材のループ状態測定方法を提供する。
本発明に係る板材のループ状態測定方法において、「ロール対」は、間に挟んだ板材を押圧して圧延する圧延ロール(ワークロール)に限るものではなく、間に挟んだ板材に張力を付与する(圧延はしない)拘束ロール(ピンチロールやブライドルロールなど、ロールの周速度を制御することで、板材に張力を付与可能なロール)も含む概念である。また、「パスライン」は、隣接する2組のロール対のうち、板材の圧延方向上流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点(上下方向最上部)と、板材の圧延方向下流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点(上下方向最上部)とを結ぶ直線を意味する。さらに、「エッジ」は、板材の幅方向(圧延方向に直交する方向)のエッジ(板材の幅方向端部)を意味する。
本発明に係る板材のループ状態測定方法の撮像工程で撮像する板材のエッジは、必ずしも板材の幅方向両端部を成す両エッジである必要はなく、いずれか一方のエッジであってもよい。ただし、いずれか一方のエッジを撮像する場合、2台の2次元撮像装置で撮像するエッジは同じ側のエッジである。
本発明に係る板材のループ状態測定方法によれば、撮像工程において、板材の幅方向に沿って設けられ、板材の圧延方向から見た場合に、それぞれの光軸(視軸)の方向が互いに異なる2台の2次元撮像装置によって、熱間圧延ラインのパスライン上方から、撮像視野内に板材のエッジが含まれるように撮像される。そして、演算工程において、2台の2次元撮像装置で異なる方向から撮像した板材の撮像画像を用いたいわゆるステレオ立体視の手法により、板材の圧延方向の複数箇所での板材のエッジの座標が算出され、この複数箇所での板材のエッジの座標に基づき、隣接する2組のロール対の間における板材のエッジの長さが演算される。本発明に係る板材のループ状態測定方法におけるステレオ立体視の手法は、具体的には、2台の2次元撮像装置で撮像した板材の撮像画像における板材のエッジの位置を検出し、検出した撮像画像における板材のエッジの位置に基づき、2台の2次元撮像装置から複数箇所での板材のエッジまでの距離を算出し、算出した距離と2台の2次元撮像装置の幾何学的配置条件とに基づき、板材の圧延方向の複数箇所での板材のエッジの座標を算出する手法である。
本発明に係る板材のループ状態測定方法によれば、特許文献3に記載の板速度センサのように環境の劣悪な場所に2次元撮像装置を設置する必要が無く、特許文献4に記載のカメラのように圧延スタンド間の側方から撮像することによるクレーンの干渉等も避けることができ、板材のループ状態(ループ状態に関わる板材のエッジの長さ)を精度良く安定して測定可能である。また、板材のループは、板材の温度変化等によって板材の変形抵抗が変化した際にも発生するため、板材の先端をロール対に噛み込ませるときだけでなく、圧延の定常部においても本発明に係る測定方法を適用することで、圧延の定常部においても、圧延の異常を検知し、トラブルを防止することが可能である。
好ましくは、前記演算工程において、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のエッジの長さとして、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向上流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点と、算出した前記複数箇所でのエッジの座標と、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向下流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点とを結んだ折れ線の長さを算出する。
上記の好ましい方法によれば、特許文献4に記載のように3点(上流側に位置する圧延スタンドの下側のワークロールの頂点と、ループ頂点と、下流側に位置する圧延スタンドの下側のワークロールの頂点)を結んだ折れ線の長さで板材のエッジの長さを算出する場合に比べて、実際の板材のエッジの長さに近い値を算出可能である。
なお、上記の好ましい方法において、上流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点の座標、及び、下流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点の座標は、熱間圧延ラインの設計仕様等に基づき、予め求めることが可能である。
好ましくは、前記演算工程において、前記隣接する2組のロール対の間のロール対間長さとして、前記板材の圧延方向上流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点と、前記板材の圧延方向下流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点とを結んだ線分の長さを算出し、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のエッジの長さから、前記隣接する2組のロール対の間のロール対間長さを減算することで、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のループ長を算出する。
上記の好ましい方法のように、板材のループ状態を示す指標として、ループ長という値を算出することで、板材のループ状態に応じた適正な板材の圧延を実行することが可能である。
なお、上記の好ましい方法において、ロール対間長さは、熱間圧延ラインの設計仕様等に基づき、予め求めることが可能である。
好ましくは、前記熱間圧延ラインは、前記隣接する2組のロール対の間にルーパロールを有し、前記2台の2次元撮像装置は、撮像視野内に前記ルーパロールが含まれ、前記演算工程において、前記ルーパロールの角度又は高さの実績に基づき、前記隣接する2組のロール対の間において前記板材がとり得る最短の長さである最短板材長さを算出し、前記最短板材長さから前記ロール対間長さを減算することで、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材の最短ループ長を算出し、前記板材のループ長と、前記板材の最短ループ長との差を算出する前記熱間圧延ラインは、前記隣接する2組のロール対の間にルーパロールを備え、前記撮像工程で用いる前記2台の2次元撮像装置は、撮像視野内に前記ルーパロールを含み、前記演算工程において、前記ルーパロールの角度又は高さの実績に基づき、前記隣接する2組のロール対の間において前記板材がとり得る最短の長さである最短板材長さを算出し、前記最短板材長さから前記ロール対間長さを減算することで、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材の最短ループ長を算出し、前記板材のループ長と、前記板材の最短ループ長との差を算出する。
上記の好ましい方法で算出する板材のループ長と板材の最短ループ長との差は、板材がルーパロールに接触して板材に張力が付与されたか否かで変化する。2台の2次元撮像装置は、撮像視野内にルーパロールを有するため、演算工程において、板材のエッジの座標を算出する板材の圧延方向の複数箇所にルーパロールと接触し得る箇所を含めることができ、板材のエッジの長さ、ひいては板材のループ長を精度良く算出可能である。このため、板材のループ長と板材の最短ループ長との差の絶対値が所定のしきい値を超えれば、ルーパロールに板材が接触していない、すなわち、ループが発生したと判定可能であり、板材のループ長と板材の最短ループ長との差の絶対値が所定のしきい値以下であれば、ルーパロールに板材が接触していると判定可能である。
したがって、上記の好ましい方法のように、板材のループ状態を示す指標として、板材のループ長と板材の最短ループ長との差の値を算出することで、板材のループ状態に応じたより適正な板材の圧延を実行することが可能である。
好ましくは、前記隣接する2組のロール対よりも前記板材の圧延方向上流側において、前記板材の温度を測定し、測定した前記温度に基づき、前記撮像工程で用いる前記2台の2次元撮像装置の露光時間を設定する。
熱間圧延ラインにおいて、板材は高温であるため、板材の強い自発光が重畳された状態で板材の撮像画像(輝度画像)を取得することになる。そのため、板材の温度に対して、2次元撮像装置の感度が適正でなければ、ハレーションによって撮像画像における板材のエッジの位置を正確に検出できない場合や、逆に暗すぎて板材のエッジを認識できない場合が生じ得る。板材の圧延の定常部では、自動的に2次元撮像装置の露光時間や感度を調整することも可能であるが、板材の先端からエッジの位置を検出したい場合には調整が困難である。
上記の好ましい方法によれば、隣接する2組のロール対よりも板材の圧延方向上流側において、板材の温度を測定し、その測定した温度に基づき、2次元撮像装置の露光時間を設定するため、板材の先端からエッジの位置を検出可能、ひいては、板材のエッジの長さを演算可能である。
また、前記課題を解決するため、本発明は、第1の板材の圧延方法として、前記板材のループ状態測定方法を用いて、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向下流側に位置するロール対に前記板材の先端が噛み込んだ後、前記ルーパロールを上昇させる過程における、前記板材のループ長と前記板材の最短ループ長との差を逐次算出し、算出した前記差の絶対値が所定のしきい値以下となる状態が所定の設定時間以上続いた場合に、前記ルーパロールによって前記板材に張力が付与されたと判断して、前記板材の張力実績が目標張力に近づくように前記ルーパロールに作用するトルクを制御し、前記ルーパロールの角度実績が目標角度に近づくように前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度を制御する張力制御モードに移行する、板材の圧延方法を提供する。
前述のように、従来の板材の圧延方法では、板材の圧延方向下流側に位置するロール対に板材の先端が噛み込んだ後、ルーパロールを上昇させ、上昇させてから予め定めた所定の時間が経過した後、張力制御モードに移行している。しかしながら、各ロール対出側の板材の速度バランスが適正でなく、ループ長が予想よりも短いと、ルーパロールの上昇を開始した直後にルーパロールが板材と接触し、長い時間に亘って板材に過張力が付与されることで、板材の幅が縮む原因となる。
本発明に係る第1の板材の圧延方法によれば、板材のループ長と板材の最短ループ長との差を算出することで、板材がルーパロールに接触して板材に張力が付与されたか否かを判断可能である。板材のループ長を誤差なく算出できる(板材のエッジの長さを誤差なく演算できる)のであれば、板材のループ長と板材の最短ループ長との差が正の値のときに、板材がルーパロールに接触しておらず、板材のループ長と板材の最短ループ長との差が0のときに、板材がルーパロールに接触して板材に張力が付与されたと判断することができる。しかしながら、算出されたループ長には誤差が含まれ得るため、本発明に係る第1の板材の圧延方法では、板材のループ長と板材の最短ループ長との差の絶対値が所定のしきい値以下となる状態が所定の設定時間以上続いた場合に初めて板材に張力が付与されたと判断し、ルーパロールを上昇させてから所定の時間が経過したか否かに関わらず、張力制御モードに移行することで、板材に過張力が付与されず、安定した板材の圧延が可能である。
なお、従来の板材の圧延方法の張力制御モードでは、ルーパロールの角度実績が目標角度に近づくように板材の圧延方向上流側に位置するロール対の周速度を制御しているが、これに限るものではなく、本発明に係る第1の板材の圧延方法の張力制御モードのように、ルーパロールの角度実績が目標角度に近づくように板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度を制御しても同様の作用効果を奏する。この点は、後述の第2の板材の圧延方法についても同様である。
本発明に係る第1の板材の圧延方法の張力制御モードで用いる張力実績としては、例えば、ルーパロールを保持するルーパアームに取り付けた荷重計を用いて演算した張力、ルーパ(ルーパロール及びルーパアーム)の駆動装置のトルク実績から演算した張力、上流側又は下流側に位置するロール対の駆動装置のトルク実績から演算した張力などを用いることができる。また、本発明に係る第1の板材の圧延方法の張力制御モードで用いる角度実績としては、例えば、ルーパの駆動装置の回動軸に取り付けられたロータリエンコーダで測定した角度などを用いることができる。この点は、後述の第2の板材の圧延方法についても同様である。
また、前記課題を解決するため、本発明は、第2の板材の圧延方法として、前記ループ状態測定方法を用いて、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向下流側に位置するロール対に前記板材の先端が噛み込んだ後、前記ルーパロールを上昇させる過程における、前記板材のループ長と前記板材の最短ループ長との差を逐次算出し、前記ルーパロールを上昇させてから所定の時間が経過した場合に、前記板材の張力実績が目標張力に近づくように前記ルーパロールに作用するトルクを制御し、前記ルーパロールの角度実績が目標角度に近づくように前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度を制御する張力制御モードに移行し、前記張力制御モードでは、前記張力制御モードに移行した時点で算出した前記板材のループ長と前記板材の最短ループ長との差に基づき、前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度の増減量を決定して、決定した前記増減量に応じて前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度を増減させる、板材の圧延方法を提供する。
本発明に係る第2の板材の圧延方法は、板材の圧延方向下流側に位置するロール対に板材の先端が噛み込んだ後、ルーパロールを上昇させ、上昇させてから予め定めた所定の時間が経過した後、張力制御モードに移行する点で、従来の板材の圧延方法と同様である。ここで、ルーパロールの上昇量の上限(ルーパロールの角度上限)は機械的に決まっているため、上限に到達する前に張力制御モードに移行する必要がある。このため、張力制御モードに移行する所定の時間は、ルーパロールの上昇速度から推定される上限到達時間よりも前に設定される。
しかしながら、各ロール対出側の板材の速度バランスが適正でなく、ループ長が予想よりも長いと、ルーパロールの上昇開始から所定の時間を経過しても、ルーパロールが板材に接触せず、板材に張力が付与されていない状態で張力制御モードに移行する場合が発生する。この場合、張力制御モードによって、ループ長が短くなるように板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度が制御されるものの、従来の板材の制御方法では、どの程度のループ長が生じているのか分からないため、ロール対の周速度が適正に制御されず、ルーパロールに板材が接触しないままの状態となり、圧延トラブルが発生するおそれがある。
本発明に係る第2の板材の圧延方法によれば、張力制御モードに移行した時点で算出した板材のループ長と板材の最短ループ長との差に基づき(換言すれば、どの程度のループ長が生じているかに応じて)、板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度の増減量を決定して、決定した増減量に応じて板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度を増減させるため、早期に安定的にルーパロールに板材が接触した状態となり、目標張力及び目標角度に近づくように制御することができる。前述の従来の板材の制御方法と同様に、張力制御モードにおいては、ルーパ角度実績θが目標角度θaimに近づくように、設定周速度VRiに補正を加えたロール対(ワークロールWRa、WRb)の周速度を演算することが考えられる。本発明に係る第2の板材の圧延方法において、張力制御モードに移行した時点で算出した板材のループ長と板材の最短ループ長との差に基づくロール対の周速度の増減は、この張力制御モードで演算された周速度に対して行ってもよい。
また、前記課題を解決するため、本発明は、第3の板材の圧延方法として、前記板材のループ状態測定方法を用いて、前記隣接する2組のロール対の間において、前記板材の両エッジにおける前記板材のエッジの長さを演算し、演算した前記両エッジにおける前記板材のエッジの長さの差に基づき、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対のレベリングを制御する、板材の圧延方法を提供する。
板材の両エッジにおける板材のエッジの長さは、必ずしも一致しない場合がある。これは、圧延における幅方向の圧下率に差が生じ、幅方向に板材の速度むらが生じたこと等が原因である。
本発明に係る第3の板材の圧延方法によれば、両エッジにおける板材のエッジの長さの差に基づき、隣接する2組のロール対のうち板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対のレベリングを制御する(ロール対のロールギャップ量の幅方向の分布を調整する)ため、板材の幅方向に亘って均一な圧延速度を実現して、板材の蛇行や、耳波といった形状不良による圧延トラブルを防止できる。
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、上下に対向配置されたロールから構成されるロール対が水平方向に複数設置された熱間圧延ラインにおいて、圧延される板材のループ状態を測定する板材のループ状態測定装置であって、前記複数のロール対のうち隣接する2組のロール対の間において、前記板材の幅方向に沿って設けられ、前記熱間圧延ラインのパスライン上方から、撮像視野内に前記板材のエッジが含まれるように前記板材を撮像して撮像画像を生成する2台の2次元撮像装置と、前記撮像画像に基づき、前記板材の圧延方向の複数箇所での前記板材のエッジの座標を算出し、算出した前記複数箇所での前記板材のエッジの座標に基づき、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のエッジの長さを演算する演算装置と、を有し、前記2台の2次元撮像装置は、前記板材の圧延方向から見た場合の光軸の方向が、互いに異なるように設けられており、前記演算装置は、前記2台の2次元撮像装置で撮像した前記撮像画像における前記板材のエッジの位置を検出し、検出した前記撮像画像における前記板材のエッジの位置に基づき、前記2台の2次元撮像装置から前記複数箇所での前記板材のエッジまでの距離を算出し、前記算出した距離と前記2台の2次元撮像装置の幾何学的配置条件とに基づき、前記板材の圧延方向の複数箇所での前記板材のエッジの座標を算出する、板材のループ状態測定装置としても提供される。
本発明に係る板材のループ状態測定方法及びループ状態測定装置によれば、板材のループ状態を精度良く安定して測定可能である。また、本発明に係る板材の圧延方法によれば、安定して板材を圧延可能である。
熱延鋼板の熱間圧延ラインの設備構成例を模式的に示す図である。 従来の板材の圧延方法において、板材の先端が第i圧延スタンド及び第i+1圧延スタンドを通板する際の制御を実行する状態の圧延制御装置を模式的に示す図である。 従来の板材の圧延方法において、張力制御モードを実行する状態の圧延制御装置を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る板材のループ状態測定装置の概略構成を模式的に示す図である。 図4に示す2次元撮像装置1、2で撮像した撮像画像の例を示す。 図4に示す演算装置における演算内容(エッジの座標の算出)を説明する説明図である。 図6のCC’面に直交する方向から見た説明図である。 図4に示す演算装置における演算内容(エッジの長さの算出)を説明する説明図である。 本発明の一実施形態に係る板材のループ状態測定装置を用いた精度評価試験の結果を示す図である。 本発明の一実施形態に係る板材のループ状態測定装置を用いて、板材のエッジの形状を測定した結果の一例を示す。 本発明の一実施形態に係る板材のループ状態測定装置を用いて、図10と同じ板材について、ループ高さ、ループ長、及び、ループ長と最短ループ長との差を測定した結果を示す図である。 本発明の一実施形態に係る板材のループ状態測定装置を用いて、板材のエッジの形状を測定した結果の別の一例を示す。 本発明の一実施形態に係る板材のループ状態測定装置を用いて、図12と同じ板材について、ループ高さ、ループ長、及び、ループ長と最短ループ長との差を測定した結果を示す図である。
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について、板材が熱延鋼板であり、その間の板材のループ状態を測定する隣接する2組のロール対が、熱延鋼板の熱間圧延ラインが備える7基の圧延スタンドで構成された仕上圧延機の第6圧延スタンド及び第7圧延スタンドのワークロールである場合を例に挙げて説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る板材のループ状態測定装置(以下、適宜、単に「ループ状態測定装置」という)の概略構成を模式的に示す図である。図4(a)は、板材の圧延方向(搬送方向)に直交する水平方向から見た側面図である。図4(b)は、板材の圧延方向から第6圧延スタンドを見た正面図である。図4(b)ではワークロールやバックアップロールの図示を省略している。
図4に示すように、ループ状態測定装置100は、上下に対向配置されたワークロールWRa、WRbから構成されるロール対が水平方向に複数設置された熱間圧延ラインにおいて、圧延される板材Sのループ状態を測定する装置であって、本実施形態では、一例として、仕上圧延機の第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7の間の板材Sのループ状態を測定する。ループ状態測定装置100は、2台の2次元撮像装置1、2と、演算装置3と、を備えている。
なお、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間には、板材Sに張力を付与して通板を安定化させるために、ルーパロールLR及びルーパアームLAを具備するルーパLPが設けられている。また、図4では、上側に位置するワークロールWRaを支持するバックアップロールBRaのみを図示しているが、実際には、下側に位置するワークロールWRbを支持するバックアップロールも設けられている。
2台の2次元撮像装置1、2は、第6圧延スタンドF6のワークロールWRa、WRbと、第7圧延スタンドF7のワークロールWRa、WRbとの間において、板材Sの幅方向に沿って並んで設けられている。また、2台の2次元撮像装置1、2は、板材Sの圧延方向から見た場合に、それぞれの光軸(視軸)11、21の方向が互いに異なるように設けられている。本実施形態では、2次元撮像装置1、2は、第6圧延スタンドF6出側のハウジングの上部に取り付けられている。
図4に示す破線は、2次元撮像装置1、2の撮像視野の境界である。図4に示す破線の位置から分かるように、2次元撮像装置1、2は、パスラインPLの上方から、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間で搬送される板材Sを、撮像視野内に板材Sのエッジ(本実施形態では両エッジ)が含まれるように撮像する。また、2次元撮像装置1、2は、撮像視野内にルーパロールLRが含まれている。
2次元撮像装置1、2としては、例えば、有効画素数が720×500の電子シャッター付きのCMOSカメラを使用できる。例えば、外部トリガによって、2台同時に電子シャッターを駆動して同じタイミングで撮像し、撮像画像を生成すればよい。仕上圧延機で圧延される板材Sの温度は850~950℃の高温であるため、板材Sの先端からハレーションなく撮像するために、本実施形態では、第6圧延スタンドF6よりも上流側の圧延スタンド間で板材Sの温度を放射温度計(図示せず)を用いて測定し、この測定した温度に基づき、2次元撮像装置1、2の露光時間を設定している。さらに、板材Sの圧延中に板材Sの温度が変化しても、適度な明るさで板材Sを撮像するために、板材Sの先端が2次元撮像装置1、2の撮像視野を通過した後、所定の時間が経過した後に、自動明るさ調整モード(板材Sに相当する画素領域の輝度値が設定値と同じになるように露光時間を自動的に変更するモード)に移行するように構成されている。
図5は、2次元撮像装置1、2で撮像した撮像画像の例を示す。図5(a)は2次元撮像装置1で撮像した撮像画像であり、図5(b)は2次元撮像装置1と同じタイミングで2次元撮像装置2で撮像した撮像画像である。
後述のように、演算装置3は、図5に示す撮像画像における板材Sの圧延方向の複数箇所(本実施形態では、図5に破線で示すL0~L7の8箇所)のエッジの位置(図5では、便宜上、L0における両エッジEWS及びEDSのみを図示)を検出し、この検出したエッジの位置に基づき、所定の演算を行うことでエッジの座標を算出し、ひいては板材Sのエッジの長さ等を算出することになる。具体的な演算内容については後述する。
演算装置3は、2台の2次元撮像装置1、2に接続されており、2台の2次元撮像装置1、2で撮像された撮像画像に対して所定の演算を行うプログラムがインストールされたコンピュータから構成されている。演算装置3は、2台の2次元撮像装置1、2でそれぞれ撮像した板材Sの撮像画像に基づき、ステレオ立体視の手法により、板材Sの圧延方向の複数箇所での板材Sのエッジの座標を算出する。具体的には、演算装置3は、図5に示すように、2台の2次元撮像装置1、2でそれぞれ撮像した板材Sの撮像画像における板材Sの圧延方向の複数箇所のエッジの位置を検出し、検出した撮像画像における板材Sのエッジの位置に基づき、2台の2次元撮像装置1、2から前記複数箇所での板材Sのエッジまでの距離を算出し、算出した距離と2台の2次元撮像装置1、2の幾何学的配置条件とに基づき、板材Sの圧延方向の複数箇所での板材Sのエッジの座標を算出する。そして、演算装置3は、算出した複数箇所での板材Sのエッジの座標に基づき、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間における板材Sのエッジの長さを演算する。なお、板材Sの撮像画像における板材Sの圧延方向の複数箇所のエッジの位置(例えば、図5に示す両エッジEWS及びEDSの位置)は、例えば、特開2004-141956号公報や特開2012-26767号公報に記載のような、板材Sに相当する画素領域の輝度値と背景に相当する画素領域の輝度値との差を利用して板材Sのエッジの位置を検出する公知の方法を用いて検出することができるため、ここでは、その詳細な説明を省略する。
以下、演算装置3における演算内容について、具体的に説明する。
<板材SのエッジPの座標(X,Y)の算出>
図6は、演算装置3における演算内容(エッジの座標の算出)を説明する説明図であり、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間を板材Sの圧延方向(図6のX軸方向)に直交する水平方向から見た側面図を模式的に示すものである。図6に示すY軸方向は上下方向を示す。X軸の原点は第6圧延スタンドF6に配置されたワークロールWRa、WRbの中心と一致し、Y軸の原点は予め決められた所定の位置である。図6に示すCC’面は、2台の2次元撮像装置1、2の光軸(図2(b)に示す光軸11、21)を含む平面である。なお、図6では、ルーパの図示を省略している。
図6に示すように、演算装置3は、2次元撮像装置1、2から複数箇所(図6に丸8箇所)での板材Sのエッジまでの距離として、2次元撮像装置1、2を用いて生成した撮像画像に基づき、板材Sの圧延方向の8箇所のエッジP(i=0~7)をCC’面上に射影した点P’までの距離hを算出する。そして、演算装置3は、この距離hと、2台の2次元撮像装置1、2の幾何学的配置条件とに基づき、板材Sの圧延方向の8箇所での板材SのエッジPの座標(X,Y)を算出する。図6に示すように、2次元撮像装置1、2の座標を(L,H)とし、2次元撮像装置1、2の光軸の上下方向に対する傾斜角(X軸方向についての傾斜角)をθとし、エッジPが2次元撮像装置1、2の光軸に対してX軸方向に角度φを成すとすれば、エッジPの座標(X,Y)は、幾何学的に、以下の式(6)、式(7)で算出される。
=L+h・sin(θ-φ)/cosφ・・・(6)
=H-h・cos(θ-φ)/cosφ・・・(7)
圧延における幅方向の圧下率に差が生じ、幅方向に板材Sの速度むらが生じたこと等を原因として、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間における板材Sの両エッジにおける板材Sのエッジの長さは、必ずしも一致しない場合がある。このため、本実施形態の演算装置3は、後述のように、板材Sの幅方向両側のうち、ワークロールWRa、WRbの駆動装置(図示せず)が配置されたDS(Drive Side)側と、その反対側であるWS(Work Side)側とを区別して、板材Sのエッジの長さを算出する。このため、距離hやエッジPの座標(X,Y)についても、WS側とDS側とを区別し、それぞれの側について算出する。すなわち、演算装置3は、WS側のエッジPについては、後述のようにして算出したWS側の距離hWSiを上記の式(6)及び式(7)のhに代入することで、その座標(X,Y)を算出し、DS側のエッジPについては、後述のようにして算出したDS側の距離hDSiを上記の式(6)及び式(7)のhに代入することで、その座標(X,Y)を算出する。
<2次元撮像装置1、2から板材Sのエッジまでの距離h(hDSi、hWSi)の算出>
図7は、図6のCC’面に直交する方向から見た説明図である。なお、図7では、説明の便宜上、2次元撮像装置1の光軸11が上下方向に対して板材Sの幅方向に傾斜角θで傾斜している状態を図示しているが、傾斜角θは、図4(b)に示すように、θ=0°であってもよく、適宜、後述の傾斜角θとは異なる任意の角度に設定することができる。
2台の2次元撮像装置1、2は、Y軸の原点(Y=0)から距離Hの位置に配置されているため、演算装置3が検出する2次元撮像装置1、2の撮像画像における板材Sのエッジの位置は、図6に示すCC’面上に射影した点P’(図7では、WS側のエッジPを射影した点をPWSi’とし、DS側のエッジPを射影した点をPDSi’として図示している)を更に距離Hに射影した点の座標として検出される。具体的には、図7に示すように、2次元撮像装置1の撮像画像におけるWS側のエッジの位置は、第6圧延スタンドF6のセンターライン(第6圧延スタンドF6の板幅方向の中心線)CLからの距離WaWSiとして検出され、2次元撮像装置1の撮像画像におけるDS側のエッジの位置は、センターラインCLからの距離WaDSiとして検出される。同様に、2次元撮像装置2の撮像画像におけるWS側のエッジの位置は、センターラインCLからの距離WbWSiとして検出され、2次元撮像装置1の撮像画像におけるDS側のエッジの位置は、センターラインCLからの距離WbDSiとして検出される。
2次元撮像装置1、2の光軸11、21の上下方向に対する板材Sの幅方向への傾斜角をそれぞれθ、θとし、2次元撮像装置1、2から射影点PWSi’、PDSi’までの距離をそれぞれhWSi、hDSiとすれば、上記のようにして検出される各距離と、実際の射影点PWSi’、PDSi’のセンターラインCLからの距離WWSi、WDSiとの関係は、以下の式(8)~式(11)で表される。
WSi=hWSi/H・WaWSi-(H-hWSi)・tanθ・・・(8)
DSi=hDSi/H・WaDSi-(H-hDSi)・tanθ・・・(9)
WSi=hWSi/H・WbWSi-(H-hWSi)・tanθ・・・(10)
DSi=hDSi/H・WbDSi-(H-hDSi)・tanθ・・・(11)
上記の式(8)及び式(10)から以下の式(12)が成立し、上記の式(9)及び式(11)から以下の式(13)が成立する。
bWSi-WaWSi=H/hWSi・(H-hWSi)(tanθ-tanθ)・・・(12)
aDSi-WbDSi=H/hDSi・(H-hDSi)(tanθ-tanθ)・・・(13)
ここで、Cpass=H(tanθ-tanθ)とすれば、上記の式(12)及び式(13)から以下の式(14)及び式(15)が成立する。
bWSi-WaWSi=Cpass(H/hWSi-1)・・・(14)
aDSi-WbDSi=Cpass(H/hDSi-1)・・・(15)
passは2台の2次元撮像装置1、2の配置条件によって決まる固定値であるため、一方の2次元撮像装置1の撮像画像において検出されたWS側のエッジの位置と、他方の2次元撮像装置2の撮像画像において検出されたWS側のエッジの位置との差、すなわち、WS側の視差(WaWSi-WbWSi)から、式(14)によって、距離hWSiを算出することができる。同様に、DS側の視差(WaDSi-WbDSi)から、式(15)によって、距離hDSiを算出することができる。
演算装置3は、以上のようにして距離hWSi、hDSiを算出し、前述のように、この距離hWSi、hDSiを式(6)及び式(7)のhに代入することで、WS側のエッジPの座標(X,Y)と、DS側のエッジPの座標(X,Y)とを算出可能である。
なお、算出した距離hWSi、hDSiをそれぞれ式(8)及び式(9)に代入することで、実際の射影点PWSi’、PDSi’のセンターラインCLからの距離WWSi、WDSiを算出することも可能である。距離WWSi、WDSiを算出することで、板材Sの幅や蛇行量を算出でき、幅の変化や先端の曲がりも検出可能となる。また、圧延方向の複数箇所で算出した板材Sの幅を比較することで、後述する板材Sのエッジの長さの演算結果に異常が生じていないか判定する(例えば、複数箇所で算出した板材Sの幅に大きな差異が生じていれば、板材Sのエッジの長さの演算結果に異常が生じていると判定する)ことも可能である。
<板材Sのエッジの長さの演算>
図8は、演算装置3における演算内容(エッジの長さの算出)を説明する説明図であり、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間を板材Sの圧延方向(図8のX軸方向)に直交する水平方向から見た側面図を模式的に示すものである。図8に示すX軸及びY軸は、図6に示すX軸及びY軸と同じものである。なお、図8は、WS側のエッジの長さを算出する場合を例示した説明図であるが、DS側のエッジの長さについても同様に算出できる。
図8に示すように、演算装置3は、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間の板材SのWS側のエッジの長さとして、第6圧延スタンドF6の下側に位置するワークロールWRbの頂点PF6(0,YF6)と、前述のようにして算出した複数箇所でのWS側のエッジPWSi(i=0~7)の座標と、第7圧延スタンドF7の下側に位置するワークロールWRbの頂点PF7(LSTD,YF7)とを結んだ折れ線の長さを算出する。すなわち、板材SのWS側のエッジの長さをLWSとすると、以下の式(16)によって、WS側のエッジの長さLWSを算出する。
Figure 2023001809000002
同様に、演算装置3は、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間の板材SのDS側のエッジの長さとして、第6圧延スタンドF6の下側に位置するワークロールWRbの頂点PF6(0,YF6)と、前述のようにして算出した複数箇所でのDS側のエッジPDSi(i=0~7)の座標と、第7圧延スタンドF7の下側に位置するワークロールWRbの頂点PF7(LSTD,YF7)とを結んだ折れ線の長さを算出する。すなわち、板材SのDS側のエッジの長さをLDSとすると、以下の式(17)によって、DS側のエッジの長さLDSを算出する。
Figure 2023001809000003
以上に説明したように、本実施形態に係るループ状態測定装置100によれば、環境の劣悪な場所に2次元撮像装置1、2を設置する必要が無く、圧延スタンド間の側方から撮像することによるクレーンの干渉等も避けることができ、板材Sのループ状態(ループ状態に関わる板材Sのエッジの長さLWS、LDSをステレオ立体視の手法によって精度良く安定して測定可能である。
なお、本実施形態に係るループ状態測定装置100の演算装置3は、板材Sのエッジの長さLWS、LDSに加えて、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間における板材Sのループ長(WS側のループ長LPWS、DS側のループ長LPDS)を算出する。板材Sのループ長は、板材Sのエッジの長さ(WS側のエッジの長さLWS、DS側のエッジの長さLDS)から、以下の式(18)で表されるロール対間長さ(第6圧延スタンドF6の下側に位置するワークロールWRbの頂点PF6と、第7圧延スタンドF7の下側に位置するワークロールWRbの頂点PF7とを結んだ線分の長さ)Lを減算した値として定義される。
Figure 2023001809000004
すなわち、演算装置3は、WS側のループ長LPWSを以下の式(19)によって算出し、DS側のループ長LPDSを以下の式(20)によって算出する。
PWS=LWS-L・・・(19)
PDS=LDS-L・・・(20)
また、本実施形態の演算装置3は、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間において板材Sがとり得る最短の長さである最短板材長さLminを算出する。板材Sの長さは、板材Sが図8の破線S’で示す状態(すなわち、ルーパロールLRが板材Sに接触し、板材Sに張力が付与された状態)になったときに最短になるため、最短板材長さLminは、幾何学的に、以下の式(21)で算出される。
min={(x+l・cosθ)+(l・sinθ-y-YF6+r1/2+{(LSTD-x-l・cosθ)+(l・sinθ-y-YF7+r1/2 ・・・(21)
上記の式(21)において、(X、Y)はルーパアームLAの回動中心の座標であり、lはルーパアームLAの回動中心とルーパロールLRの中心との距離であり、θはルーパロールLRの角度実績であり、rはルーパロールLRの半径である。図4では図示を省略したが、演算装置3は、ルーパロールLRの角度実績θを測定する角度計と接続されており、角度計から角度実績θが逐次入力されることで、上記の式(21)で表される演算を行うことが可能である。
そして、演算装置3は、上記のようにして算出した最短板材長さLminからロール対間長さLを減算することで、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間における板材Sの最短ループ長Lpminを算出する。すなわち、以下の式(22)によって、板材Sの最短ループ長Lpminを算出する。
Pmin=Lmin-L・・・(22)
さらに、演算装置3は、板材Sのループ長(WS側のループ長LPWS、DS側のループ長LPDS)と、板材Sの最短ループ長Lpminとの差を算出する。すなわち、WS側のループ長LPWSと最短ループ長Lpminとの差ΔLWS、及び、DS側のループ長LPDSと最短ループ長Lpminとの差ΔLDSを算出する。
また、本実施形態の演算装置3は、ループ高さを算出する。ループ高さは、算出した板材Sの複数箇所のエッジPの座標(X,Y)のうち、最も大きなY座標を意味し、演算装置3は、WS側及びDS側の双方について、ループ高さを算出する。図8には、WS側のループ高さhPWSを図示しているが、DS側のループ高さhPDSについても同様である。
さらに、本実施形態の演算装置3は、図8に示すルーパロール高さhを算出する。ルーパロール高さhは、ルーパロールLRの角度実績θを用いて、以下の式(23)によって算出される。
=l・sinθ-y+r・・・(23)
以下、本実施形態に係るループ状態測定装置100を用いた板材Sの圧延方法(以下、適宜、単に「圧延方法」という)の例について説明する。
前述のように、本実施形態に係るループ状態測定装置100(演算装置3)は、板材Sの両エッジにおけるエッジの長さ(LWS、LDS)を演算可能であると共に、板材Sのループ長(WS側のループ長LPWS、DS側のループ長LPDS)と、板材Sの最短ループ長Lpminとの差(ΔLWS、ΔLDS)を算出可能であるため、これらを利用することで、従来にない板材Sの圧延が可能である。以下、圧延方法の具体例(第1~第3の圧延方法)について説明する。
<第1の圧延方法>
第1の圧延方法では、第7圧延スタンドF7のワークロールWRa、WRbに板材Sの先端が噛み込んだ後、ルーパロールLRを上昇させる過程において、演算装置3によって板材Sのループ長(LPWS、LPDS)と板材Sの最短ループ長Lpminとの差(ΔLWS、ΔLDS)を逐次算出する。そして、算出した前記差の絶対値が所定のしきい値以下となる状態が所定の設定時間以上続いた場合に、ルーパロールLRによって板材Sに張力が付与されたと判断して、張力制御モードに移行する。張力制御モードでは、板材Sの張力実績Tが目標張力Taimに近づくようにルーパロールLRに作用するトルクを制御し、ルーパロールLRの角度実績θが目標角度θaimに近づくように第6圧延スタンドF6及び第7圧延スタンドF7の少なくとも何れか一方におけるワークロールWRa、WRbの周速度を制御する。
第1の圧延方法は、図3に示す従来の圧延方法に用いる圧延制御装置に本実施形態に係るループ状態測定装置100を接続することで実行可能である。例えば、図3に示すプロセスコンピュータにループ状態測定装置100を接続し、プロセスコンピュータが、ループ状態測定装置100から入力された前記差の絶対値が所定のしきい値以下となる状態が所定の設定時間以上続いたか否かを判断し、続いた場合に、トルク制御装置及び速度制御装置を張力制御モードで動作させる態様が考えられる。
第1の圧延方法によれば、板材Sのループ長(LPWS、LPDS)と板材Sの最短ループ長Lpminとの差(ΔLWS、ΔLDS)の絶対値が所定のしきい値以下となる状態が所定の設定時間以上続いた場合に初めて板材Sに張力が付与されたと判断し、ルーパロールLRを上昇させてから所定の時間が経過したか否かに関わらず、張力制御モードに移行することで、板材Sに過張力が付与されず、安定した板材Sの圧延が可能である。
<第2の圧延方法>
第2の圧延方法では、従来の圧延方法と同様に、ルーパロールLRを上昇させてから所定の時間が経過した後に、張力制御モードに移行する。しかしながら、第2の圧延方法の張力制御モードでは、張力制御モードに移行した時点で算出した板材Sのループ長(LPWS、LPDS)と板材Sの最短ループ長Lpminとの差(ΔLWS、ΔLDS)に基づき、第6圧延スタンドF6及び第7圧延スタンドF7の少なくとも何れか一方におけるワークロールWRa、WRbの周速度の増減量を決定して、決定した増減量に応じて第6圧延スタンドF6及び第7圧延スタンドF7の少なくとも何れか一方におけるワークロールWRa、WRbの周速度を増減させる点が、従来の圧延方法と異なる。
第2の圧延方法も、図3に示す従来の圧延方法に用いる圧延制御装置に本実施形態に係るループ状態測定装置100を接続することで実行可能である。例えば、図3に示すプロセスコンピュータにループ状態測定装置100を接続し、プロセスコンピュータが、ループ状態測定装置100から入力された前記差に基づき、第6圧延スタンドF6及び第7圧延スタンドF7の少なくとも何れか一方におけるワークロールWRa、WRbの周速度の増減量を決定し、この増減量を速度制御装置に送信して、張力制御モードの動作に反映させる態様が考えられる。
第2の圧延方法によれば、張力制御モードに移行した時点で算出した板材Sのループ長(LPWS、LPDS)と板材Sの最短ループ長Lpminとの差(ΔLWS、ΔLDS)に基づき(換言すれば、どの程度のループ長が生じているかに応じて)、第6圧延スタンドF6及び第7圧延スタンドF7の少なくとも何れか一方におけるワークロールWRa、WRbの周速度の増減量を決定して、決定した増減量に応じて第6圧延スタンドF6及び第7圧延スタンドF7の少なくとも何れか一方におけるワークロールWRa、WRbの周速度を増減させるため、早期に安定的にルーパロールLRに板材Sが接触した状態となり、目標張力及び目標角度に近づくように制御することができる。
<第3の圧延方法>
第3の圧延方法では、演算した両エッジにおけるエッジの長さ(LWS、LDS)の差に基づき、第6圧延スタンドF6及び第7圧延スタンドF7の少なくとも何れか一方におけるワークロールWRa、WRbのレベリングを制御する。
第3の圧延方法は、熱延鋼板の熱間圧延ラインが一般的に備えるワークロールWRa、WRbのレベリング調整装置に本実施形態に係るループ状態測定装置100を接続することで実行可能である。例えば、レベリング調整装置が、ループ状態測定装置100から入力された両エッジにおけるエッジの長さ(LWS、LDS)の差に応じて、第6圧延スタンドF6及び第7圧延スタンドF7の少なくとも何れか一方におけるワークロールWRa、WRbのレベリングを調整する態様が考えられる。
第3の圧延方法によれば、両エッジにおけるエッジの長さの差に基づきレベリングを制御するため、板材Sの幅方向に亘る均一な速度を実現して、板材Sの蛇行や、耳波といった形状不良による圧延トラブルを防止できる。
以下、本実施形態に係るループ状態測定装置100による測定結果の例について説明する。
<測定精度の評価>
ループ状態測定装置100の測定精度を評価するため、熱延鋼板の熱間圧延ライン上で且つ2次元撮像装置1、2の撮像視野内に平坦な板材を所定の高さ(設定高さ)に載置し、板材のエッジの高さ(前述のループ高さhPWS、hPDSに相当)を測定する試験を行った。この試験では、板材を載置する設定高さを変更し、設定高さ毎にループ状態測定装置100によって板材のエッジの高さ(測定高さ)を測定した。
図9は、上記評価試験の結果を示す図である。図9(a)はWS側の測定結果を、図9(b)はDS側の測定結果を示す。図9に示すように、WS側もDS側も測定高さの誤差は、σ(標準偏差)で3mm以下であり、高精度に板材のエッジの高さ(すなわち、ループ高さ)を測定可能なことが確認できた。
<過張力気味であった場合のオンライン測定例>
第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間をループが発生することなく板材Sの先端が通過した場合の測定例について説明する。
第6圧延スタンドF6に板材Sの先端が噛み込んだ後、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間でループ状態測定装置100が板材Sを検出すると測定を開始し、その後、第7圧延スタンドF7に板材Sの先端が噛み込み、ルーパロールLRが上昇を開始する。図10は、ループ状態測定装置100が板材Sを検出してから、0.1秒毎に第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間における板材Sのエッジの形状(具体的には、板材Sの圧延方向8箇所での板材Sのエッジの座標)を測定した結果の一例を示す。図10(a)はDS側の測定結果であり、図10(b)はWS側の測定結果である。なお、図10には、ルーパロールLRの角度実績θに基づき0.1秒毎に算出された最短ループ長Lpminが得られる場合の板材Sのエッジの形状(以下、適宜、「最短エッジ形状」という)を破線で示している。
図10(a)から分かるように、0.5秒時点で測定されたDS側のエッジの形状が、最短エッジ形状とほぼ一致している。一方、図10(b)から分かるように、0.6秒時点で測定されたWS側のエッジの形状が、最短エッジ形状とほぼ一致している。これらの状況から、DS側は0.5秒時点で板材SにルーパロールLRが接触して張力が付与され、WS側は0.6秒時点で板材SにルーパロールLRが接触して張力が付与されていることが分かる。
図11は、図10と同じ板材Sについて、ループ状態測定装置100が板材Sを検出してからの4秒間における、ループ高さ(hPDS、hPWS)、ループ長(LPDS、LPWS)、及び、ループ長と最短ループ長との差(ΔLWS、ΔLDS)を測定した結果を示す図である。図11(a)はループ高さの測定結果であり、図11(b)はループ長の測定結果であり、図11(c)はループ長と最短ループ長との差の測定結果である。図11(a)~図11(c)の横軸は全て同じ時間であるため、図11(c)にのみ図示している。図11(a)には、ルーパロール高さhも図示している。図11(b)には最短ループ長Lpminも図示している。
図11に示すように、0.32秒時点で第7圧延スタンドF7に板材Sの先端が噛み込み、ルーパロールLRが上昇を開始し、予め定めた所定の時間(図11に示す例では0.5秒)が経過した後の0.82秒時点で張力制御モードに移行している。
図11(a)に示すように、板材S(板材SのDS側)に張力が付与された0.5秒時点以降は、ループ高さがルーパロール高さとほぼ一致しており、ループ高さが精度良く測定できている。
また、図11(b)に示すように、板材Sに張力が付与された0.5秒時点以降、ループ長が最短ループ長とほぼ一致しており、板材Sがたるみなく通過したことが分かる。また、ルーパロールLRの上昇によって、ループ長は30mm程度伸ばされており、その分だけ板材Sの幅が縮んだ可能性がある。
さらに、図11(c)に示すように、ループ長と最短ループ長との差の絶対値は、0.5秒時点以降、ほぼ0mm(±2mm以内)になっており、このタイミングで板材Sに張力が付与されたと判断できる。このループ長と最短ループ長との差の絶対値によって判断された0.5秒時点で張力制御モードに移行していれば、図11(b)から考えて、ループ長の増加は5mm程度に抑えられて、板材Sの幅の減少が最小限に抑えることができていたと推定される。また、実際の仕上圧延機への適用においては、測定誤差による誤動作を防止するために、ループ長と最短ループ長との差の絶対値が所定のしきい値以下となる状態が所定の設定時間以上続いた場合に張力制御モードに移行することも可能である。この例の場合であれば、例えば、しきい値2mm以下の状態が0.1秒続いたら、張力制御モードに強制的に移行することが望ましい。
以上のように、本実施形態に係るループ状態測定装置100によれば、ループ長と最短ループ長との差を測定して、ルーパロールLRの上昇過程における板材Sへの張力付与のタイミングを正確に検出できる。このため、前述の第1の圧延方法を実行し、検出した板材Sへの張力付与のタイミングで張力制御モードに移行すれば、板材Sへの過張力を防止し、板材Sの幅が縮むことによる歩留まり低下を防止することができる。
<ループが発生した場合のオンライン測定例>
第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間で板材Sのループが発生した場合の測定例について説明する。
第6圧延スタンドF6に板材Sの先端が噛み込んだ後、第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間でループ状態測定装置100が板材Sを検出すると測定を開始、その後、第7圧延スタンドF7に板材Sの先端が噛み込み、ルーパロールLRが上昇を開始する。図12は、ループ状態測定装置100が板材Sを検出してから、0.2秒毎に第6圧延スタンドF6と第7圧延スタンドF7との間における板材Sのエッジの形状(具体的には、板材Sの圧延方向8箇所での板材Sのエッジの座標)を測定した結果の一例を示す。図12(a)はDS側の測定結果であり、図12(b)はWS側の測定結果である。なお、図12には、図10と同様に0.2秒毎に算出された板材Sの最短エッジ形状を破線で示している。
図12(a)から分かるように、1.8秒時点で測定されたDS側のエッジの形状が、最短エッジ形状とほぼ一致している。一方、図12(b)から分かるように、1.0秒時点で測定されたWS側のエッジの形状が、最短エッジ形状とほぼ一致している。これらの状況から、WS側は1.0秒時点で板材Sに張力が付与されているが、DS側は板材Sのたるみが大きく1.8秒時点でようやく板材Sに張力が付与されていることが分かる。
図13は、図12と同じ板材Sについて、ループ状態測定装置100が板材Sを検出してからの4秒間における、ループ高さ(hPDS、hPWS)、ループ長(LPDS、LPWS)、及び、ループ長と最短ループ長との差(ΔLWS、ΔLDS)を測定した結果を示す図である。図13(a)はループ高さの測定結果であり、図13(b)はループ長の測定結果であり、図13(c)はループ長と最短ループ長との差の測定結果である。図13(a)~図13(c)の横軸は全て同じ時間であるため、図13(c)にのみ図示している。図13(a)には、ルーパロール高さhも図示している。図13(b)には最短ループ長Lpminも図示している。
図13に示すように、0.4秒時点で第7圧延スタンドF7に板材Sの先端が噛み込み、ルーパロールLRが上昇を開始し、予め定めた所定の時間(図13に示す例では0.5秒)が経過した後の0.9秒時点で張力制御モードに移行している。
図13(a)に示すループ高さは、DS側もWS側も1.0秒時点以降のルーパロール高さとの差が、ルーパロール高さに対して小さく、張力付与のタイミングを判断し難い。例えば、まだ張力が付与されていない1.2秒時点でループ高さがルーパロール高さとほぼ一致している。一方、図13(b)に示すループ長は、図12から分かる張力付与タイミングである、WS側1.0秒時点まで、DS側1.8秒時点までで明らかに最短ループ長と差があり、それ以降で最短ループ長とほぼ一致していることが分かる。さらに、図13(c)に示すループ長と最短ループ長との差の絶対値は、1.8秒時点以降でDS側もWS側もほぼ0mm(±2mm以内)になっており、正確に且つ容易に張力が付与されたタイミングを判断できる。
この測定例では、0.9秒時点で張力制御モードに移行したが、DS側はループのために板材Sに張力を付与できていなかった。張力制御モードに移行し、ルーパロールLRの角度実績θが目標角度θaimよりも大きいために、これを是正するように第6圧延スタンドF6のワークロールWRa、WRbの周速度を減速することで、何とか1.8秒時点で全板幅に亘って張力を付与でき、安定した通板に移行した。図13(c)に示すように、張力制御モードに移行の際、DS側のループ長と最短ループ長との差が10mmであったので、この差に応じて減速量を補正していれば、よい早いタイミングでループを解消できていたと推定される。
以上のように、本実施形態に係るループ状態測定装置100によれば、ループ長と最短ループ長との差を測定することで、張力制御モードへの移行時点(ルーパロールLRの上昇過程終了時点)での板材Sのたるみ(ループ長と最短ループ長との差)を定量的に把握できる。このため、前述の第2の圧延方法を実行し、張力制御モードへの移行時点でのループ長と最短ループ長との差に応じたワークロールWRa、WRbの周速度の増減量を決定し、決定した増減量に応じてワークロールWRa、WRbの周速度を増減させれば、早期にループを解消して、過大ループによる圧延トラブルを防止可能である。
また、この測定例のように、両エッジのループ長に差が生じたのは、圧延時に幅方向に板材の速度むらが生じているためである。本実施形態に係るループ状態測定装置100によれば、両エッジのループ長を測定できるため、前述の第3の圧延方法を実行し、両エッジにおけるエッジの長さの差に基づき、ワークロールWRa、WRbのレベリングを調整すれば、蛇行や形状不良による圧延トラブルを防止可能である。
1、2・・・2次元撮像装置
3・・・演算装置
100・・・ループ状態測定装置
S・・・板材
LR・・・ルーパロール
WRa、WRb・・・ワークロール(ロール対)

Claims (9)

  1. 上下に対向配置されたロールから構成されるロール対が水平方向に複数設置された熱間圧延ラインにおいて、圧延される板材のループ状態を測定する板材のループ状態測定方法であって、
    前記複数のロール対のうち隣接する2組のロール対の間において、前記板材の幅方向に沿って設けられた2台の2次元撮像装置を用い、前記熱間圧延ラインのパスライン上方から、撮像視野内に前記板材のエッジが含まれるように前記板材を撮像して撮像画像を生成する撮像工程と、
    前記撮像画像に基づき、前記板材の圧延方向の複数箇所での前記板材のエッジの座標を算出し、算出した前記複数箇所での前記板材のエッジの座標に基づき、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のエッジの長さを演算する演算工程と、
    を有し、
    前記2台の2次元撮像装置は、前記板材の圧延方向から見た場合の光軸の方向が、互いに異なるように設けられており、
    前記演算工程では、前記2台の2次元撮像装置で撮像した前記撮像画像における前記板材のエッジの位置を検出し、検出した前記撮像画像における前記板材のエッジの位置に基づき、前記2台の2次元撮像装置から前記複数箇所での前記板材のエッジまでの距離を算出し、前記算出した距離と前記2台の2次元撮像装置の幾何学的配置条件とに基づき、前記板材の圧延方向の複数箇所での前記板材のエッジの座標を算出する、板材のループ状態測定方法。
  2. 前記演算工程において、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のエッジの長さとして、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向上流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点と、算出した前記複数箇所でのエッジの座標と、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向下流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点とを結んだ折れ線の長さを算出する、請求項1に記載の板材のループ状態測定方法。
  3. 前記演算工程において、
    前記隣接する2組のロール対の間のロール対間長さとして、前記板材の圧延方向上流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点と、前記板材の圧延方向下流側に位置するロール対の下側に位置するロールの頂点とを結んだ線分の長さを算出し、
    前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のエッジの長さから、前記隣接する2組のロール対の間のロール対間長さを減算することで、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のループ長を算出する、請求項2に記載の板材のループ状態測定方法。
  4. 前記熱間圧延ラインは、前記隣接する2組のロール対の間にルーパロールを有し、
    前記2台の2次元撮像装置は、撮像視野内に前記ルーパロールが含まれ、
    前記演算工程において、
    前記ルーパロールの角度又は高さの実績に基づき、前記隣接する2組のロール対の間において前記板材がとり得る最短の長さである最短板材長さを算出し、
    前記最短板材長さから前記ロール対間長さを減算することで、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材の最短ループ長を算出し、
    前記板材のループ長と、前記板材の最短ループ長との差を算出する、請求項3に記載の板材のループ状態測定方法。
  5. 前記隣接する2組のロール対よりも前記板材の圧延方向上流側において、前記板材の温度を測定し、測定した前記温度に基づき、前記撮像工程で用いる前記2台の2次元撮像装置の露光時間を設定する、請求項1から4の何れか一項に記載の板材のループ状態測定方法。
  6. 請求項4に記載の板材のループ状態測定方法を用いて、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向下流側に位置するロール対に前記板材の先端が噛み込んだ後、前記ルーパロールを上昇させる過程における、前記板材のループ長と前記板材の最短ループ長との差を逐次算出し、
    算出した前記差の絶対値が所定のしきい値以下となる状態が所定の設定時間以上続いた場合に、
    前記ルーパロールによって前記板材に張力が付与されたと判断して、前記板材の張力実績が目標張力に近づくように前記ルーパロールに作用するトルクを制御し、前記ルーパロールの角度実績が目標角度に近づくように前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度を制御する張力制御モードに移行する、板材の圧延方法。
  7. 請求項4に記載の板材のループ状態測定方法を用いて、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向下流側に位置するロール対に前記板材の先端が噛み込んだ後、前記ルーパロールを上昇させる過程における、前記板材のループ長と前記板材の最短ループ長との差を逐次算出し、
    前記ルーパロールを上昇させてから所定の時間が経過した場合に、
    前記板材の張力実績が目標張力に近づくように前記ルーパロールに作用するトルクを制御し、前記ルーパロールの角度実績が目標角度に近づくように前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度を制御する張力制御モードに移行し、
    前記張力制御モードでは、前記張力制御モードに移行した時点で算出した前記板材のループ長と前記板材の最短ループ長との差に基づき、前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度の増減量を決定して、決定した前記増減量に応じて前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対の周速度を増減させる、板材の圧延方法。
  8. 請求項1から5の何れか一項に記載の板材のループ状態測定方法を用いて、前記隣接する2組のロール対の間において、前記板材の両エッジにおける前記板材のエッジの長さを演算し、
    演算した前記両エッジにおける前記板材のエッジの長さの差に基づき、前記隣接する2組のロール対のうち前記板材の圧延方向上流側及び下流側の少なくとも何れか一方に位置するロール対のレベリングを制御する、板材の圧延方法。
  9. 上下に対向配置されたロールから構成されるロール対が水平方向に複数設置された熱間圧延ラインにおいて、圧延される板材のループ状態を測定する板材のループ状態測定装置であって、
    前記複数のロール対のうち隣接する2組のロール対の間において、前記板材の幅方向に沿って設けられ、前記熱間圧延ラインのパスライン上方から、撮像視野内に前記板材のエッジが含まれるように前記板材を撮像して撮像画像を生成する2台の2次元撮像装置と、
    前記撮像画像に基づき、前記板材の圧延方向の複数箇所での前記板材のエッジの座標を算出し、算出した前記複数箇所での前記板材のエッジの座標に基づき、前記隣接する2組のロール対の間における前記板材のエッジの長さを演算する演算装置と、
    を有し、
    前記2台の2次元撮像装置は、前記板材の圧延方向から見た場合の光軸の方向が、互いに異なるように設けられており、
    前記演算装置は、前記2台の2次元撮像装置で撮像した前記撮像画像における前記板材のエッジの位置を検出し、検出した前記撮像画像における前記板材のエッジの位置に基づき、前記2台の2次元撮像装置から前記複数箇所での前記板材のエッジまでの距離を算出し、前記算出した距離と前記2台の2次元撮像装置の幾何学的配置条件とに基づき、前記板材の圧延方向の複数箇所での前記板材のエッジの座標を算出する、板材のループ状態測定装置。
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