JP2022178874A - 酸化マグネシウム粒子、樹脂組成物、および酸化マグネシウム粒子の製造方法 - Google Patents

酸化マグネシウム粒子、樹脂組成物、および酸化マグネシウム粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐水性を長時間保持可能な酸化マグネシウム粒子を提供すること。【解決手段】本発明の酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粉末の一部がシリコーン化合物の膜で被覆され、酸化マグネシウム粉末の他の部分が化学式Mg1-xAlxO(0<x<1)を有する表面改質層で被覆される。シリコーン化合物はポリシロキサンであるのが好ましい。酸化マグネシウム粉末の表面積の90%以上100%未満がシリコーン化合物の膜で被覆されているのが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、放熱用充填材料などとして使用される酸化マグネシウム粒子、その酸化マグネシウム粒子の製造方法、酸化マグネシウム粒子とポリマーマトリックスと含む樹脂組成物に関する。
タブレット型端末、ノートパソコン、ゲーム機等に使用される集積回路の高密化が進み、それに伴う放熱特性の要求が高まっている。例えば、回路基板の封止剤としてエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂等が使用されているが、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂そのものの電気抵抗性は優れているものの熱伝導率に乏しく放熱材料としては好ましくない。そのため、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂にフィラーと呼ばれる無機充填剤を添加することで封止剤の熱伝導率を向上させ放熱させることが行われている。
代表的なフィラーとしては、熱伝導率が高く、且つ電気抵抗率も高い酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。フィラーの充填率を上げることで、さらに熱伝導率を向上させ高放熱を必要とする機器類に効果を発揮する。
例えば、特許文献1(特開2008-74683号公報)には、耐水性に優れた酸化マグネシウム粉末表面に被覆層を形成することによって、アルカリ溶出を制御した被覆MgO粉末及びその製造方法が提案されている。
特許文献1に記載の被覆酸化マグネシウム粉末は、酸化マグネシウム粉末表面の少なくとも一部に複酸化物よりなる被覆層を有し、その表面の少なくとも一部にリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層を有する被覆酸化マグネシウム粉末であって、その表面の少なくとも一部に有機シリケートよりなる被覆層をさらに有する、被覆酸化マグネシウム粉末である。
特許文献2(特開2011-68757)には、耐水性の改善された合成樹脂用の酸化マグネシウム系熱伝導フィラーが提案されている。
特許文献2に記載の酸化マグネシウム系熱伝導フィラーによれば、BET比表面積が1~20m2/gで、平均2次粒子径が0.5~20μmの酸化マグネシウムを1~10質量%のアルキルアルコキシシランで乾式表面被覆した耐水性の改善された酸化マグネシウム系熱伝導フィラーが開示されている。
また、特許文献3(特開2012-116715)には、吸湿性を小さく改善した酸化マグネシウム粉末を簡易な方法で製造し、また、この酸化マグネシウム粉末を含み、耐湿特性、加工性に優れかつ熱伝導性が良好な電気絶縁層のための熱硬化性樹脂組成物を製造する方法が提案されている。
特許文献3に記載の酸化マグネシウム粉末は、シリカ含有量が1~6質量%である酸化マグネシウムを原料として使用し、これを1650℃~1800℃で焼成することにより、表面にシリカ膜を形成する。熱硬化性樹脂組成物は、前記酸化マグネシウム粉末の平均粒径d1を、10μm≦d1≦80μmの範囲とし、熱硬化性樹脂固形分と酸化マグネシウム粉末を合わせた体積中に、前記酸化マグネシウム粉末の含有量が20~80体積%となるように混合する。酸化マグネシウム粉末の一部を他の無機充填材に置換えることができる。無機充填材の平均粒径は、0.1~50μm、含有量は15~30体積%が好ましいことが記載されている。
また、特許文献4(特開2011-46760号公報)には、簡易な方法で吸湿性を改善できる酸化マグネシウム粉末を製造する方法が提案されている。また、この酸化マグネシウム粉末を含み、耐湿特性、加工性に優れかつ熱伝導性が良好な熱硬化性樹脂組成物とする方法が提案されている。
特許文献4に記載の酸化マグネシウム粉末は、原料として、シリカ含有量が1~6質量%である酸化マグネシウムを使用し、これを1650~1800℃で焼成することにより、表面にシリカ膜を形成して製造する。熱硬化性樹脂組成物は、前記酸化マグネシウム粉末の平均粒径d1を、10μm≦d1≦50μmの範囲とし、前記酸化マグネシウム粉末の含有量が、熱硬化性樹脂固形分と酸化マグネシウム粉末を合わせた体積中に、20~80体積%となるように混合するものである。
特開2008-74683号公報 特開2011-68757号公報 特開2012-116715号公報 特開2011-46760号公報
回路基板の封止用樹脂組成物に用いるフィラーとして、従来のシリカに比べて熱伝導率が1桁高く、アルミナと同等の熱伝導率を有する酸化マグネシウム(MgOともいう。)が検討されている。しかし、酸化マグネシウム粉末は、シリカ粉末に比べ、吸湿性が大きい点が課題となっている。そのため、半導体の封止用樹脂フィラーとして酸化マグネシウムを用いた場合、吸湿した水と酸化マグネシウムとが水和して、フィラーの体積膨張によるクラックの発生、熱伝導性の低下等の問題が発生していた。
特許文献1の被覆酸化マグネシウム粉末は、有機シリケートとしてフュームドシリカを湿式添加してフォルステライトの被覆層を酸化マグネシウム粉末表面に形成し、さらにリン酸マグネシウム系化合物としてPAPを添加してMgの被覆層を形成するものである。しかしながら、ヒュームドシリカは複数の粒子が数珠状に凝集・融着した凝集体であるため、被覆しても耐水性が十分でなく、またリン酸マグネシウム系化合物で被覆しても、酸化マグネシウムの吸水性を長時間阻止することができなかった。
また、特許文献2の酸化マグネシウム系熱伝導フィラーは、酸化マグネシウムの表面を特定のアルキルアルコキシシランで被覆するものである。しかしながら、酸化マグネシウムの表面にシリコーンの撥水性が付与されるものであり、酸化マグネシウムの吸水性を十分に阻止することができなかった。
特許文献3および4は、酸化マグネシウム粉末の表面にシリカの膜を形成するものである。しかしながら、シリカは複数の粒子が数珠状に凝集・融着した凝集体であるため、被覆しても耐水性が十分でなく、酸化マグネシウムの吸水性を十分に阻止することができなかった。
本発明の目的は、耐水性を長時間保持可能な酸化マグネシウム粒子および酸化マグネシウム粒子の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、クラックの発生、熱伝導性の低下等の不具合が生じにくい樹脂組成物を提供することにある。
(1)
一局面に従う酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粉末の一部がシリコーン化合物の膜で被覆され、酸化マグネシウム粉末の他の部分が化学式Mg1-xAlO(0<x<1)を有する表面改質層で被覆されたものである。
これにより、シリコーン化合物の膜が酸化マグネシウム粉末の表面を被覆(コーティング)するので、酸化マグネシウム粉末の表面が露出することが抑えられ、耐水性が向上する。シリコーン化合物は、酸化マグネシウム粉末の表面において一部が凝集することによって耐水被覆が弱い部分が生じる場合がある。そのような部分については、酸化マグネシウム粒子の表面に耐水性の高いMg1-xAlOの表面改質層が形成されているため、酸化マグネシウム粒子の吸水を好ましく防止することができる。したがって、耐水性を長時間保持可能な酸化マグネシウム粒子とすることができる。
なお、上記化学式中のxは0超1未満の値である。
(2)
第2の発明に係る酸化マグネシウム粒子は、一局面の発明に係る酸化マグネシウム粒子であって、シリコーン化合物は、ポリシロキサンであってよい。
これにより、酸化マグネシウム粉末の表面とシリコーン化合物の膜との密着性が高くなり、また、凝集性が低いため、酸化マグネシウム粉末の表面のほとんどをシリコーン化合物の膜で被覆することができる。したがって、より耐水性の高い酸化マグネシウム粒子とすることができる。
(3)
第3の発明に係る酸化マグネシウム粒子は、一局面または第2の発明に係る酸化マグネシウム粒子であって、蒸留水に酸化マグネシウム粒子を25g/Lの濃度で分散させて分散液を調製し、調製後100時間経過したときに、分散液の電気伝導率が100μS/cm以下であってよい。
これにより、より長期にわたり高い耐水性を維持する酸化マグネシウム粒子とすることができる。
(4)
第4の発明に係る酸化マグネシウム粒子は、一局面から第3のいずれかに係る酸化マグネシウム粒子であって、酸化マグネシウム粉末の表面積の90%以上100%未満がシリコーン化合物の膜で被覆されていてもよい。
これにより、酸化マグネシウム粉末の表面のほとんどが耐水性の高いシリコーン化合物の膜でコーティングされる。したがって、より耐水性の高い酸化マグネシウム粒子とすることができる。
(5)
第5の発明に係る酸化マグネシウム粒子は、一局面から第4のいずれかに係る酸化マグネシウム粒子であって、表面改質層が、酸化マグネシウムと乳酸アルミニウムとの反応生成物であってよい。
これにより、シリコーン化合物の膜で被覆されていない酸化マグネシウム粉末の表面に存在するMgサイトが効果的にAlに置換されるため、酸化マグネシウム粒子の表面が耐水性の高いMg1-xAlO(0<x<1、以下同じ)によって被覆される。したがって、酸化マグネシウム粉末が露出することがなくなり、耐水性の高い酸化マグネシウム粒子とすることができる。
(6)
他の局面に従う樹脂組成物は、ポリマーマトリックスに対して、一局面から第5のいずれかに係る酸化マグネシウム粒子を50vol%以上含むものである。
これにより、クラックの発生、熱伝導性の低下等の不具合が生じにくい樹脂組成物とすることができる。
(7)
他の局面に従う酸化マグネシウム粒子の製造方法は、酸化マグネシウム粉末に、シラン化合物を混合して混合物を得る混合工程と、混合物を加熱乾燥して乾燥粉末を得るコーティング工程と、乾燥粉末にアルミニウム錯化剤を混合して加熱する表面改質工程と、を含むものである。
これにより、酸化マグネシウム粉末の表面は、シリコーン化合物の膜で被覆される。そして、シリコーン化合物が一部凝集することによって耐水被覆が弱い箇所については、表面改質工程によってMg1-xAlOの表面改質がされる。したがって、耐水性を長時間保持可能な酸化マグネシウム粒子を製造することができる。
(8)
第8の発明に係る酸化マグネシウム粒子の製造方法は、第7の発明に係る酸化マグネシウム粒子の製造方法であって、コーティング工程は、乾燥粉末に処理剤を添加して加熱する処理工程をさらに含み、処理剤は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび塩化アルミニウムからなる群より選ばれるいずれか一種であってもよい。
これにより、シリコーン化合物の硬化が促進されるとともに、酸化マグネシウム粉末の表面をシリコーン化合物の膜で効果的に被覆することができる。したがって、より耐水性の高い酸化マグネシウム粒子を製造することができる。
(9)
第9の発明に係る酸化マグネシウム粒子の製造方法は、第7または第8の発明に係る酸化マグネシウム粒子の製造方法であって、アルミニウム錯化剤は乳酸アルミニウム水溶液であり、シラン化合物はアルコキシシランであってもよい。
シラン化合物としてアルコキシシランを用いることにより、酸化マグネシウム粉末との密着性の高いポリシロキサンが形成され、また、これは凝集性が低いため、酸化マグネシウム粉末の表面のほとんどをシリコーン化合物の膜で被覆することができる。
さらにアルミニウム錯化剤として乳酸アルミニウムを用いることにより、マグネシウムイオンとキレートを形成しやすい。したがって、ポリシロキサンの耐水被覆が弱い領域を中心に、乳酸イオンがマグネシウムイオンをキレートすることによって、アルミニウムが酸化マグネシウム粉末の露出したマグネシウムサイトに置換され、加熱改質で酸化マグネシウム粒子の表面にMg1-xAlOの表面改質層が形成される。
これにより、より耐水性の高い酸化マグネシウム粒子を製造することができる。
(10)
第10の発明に係る酸化マグネシウム粒子の製造方法は、第7から第9のいずれかの発明に係る酸化マグネシウム粒子の製造方法であって、表面改質工程で得られた粉末を水洗浄して乾燥させる洗浄工程をさらに含んでもよい。
これにより、アルミニウム錯化剤の残留イオンを排除することによって絶縁性を確保し、より耐水性および絶縁性の高い酸化マグネシウム粒子を製造することができる。
酸化マグネシウム粒子の分散液の電気伝導率測定結果を示す図である。 酸化マグネシウム粒子の分散液のpH測定結果を示す図である。
(酸化マグネシウム粒子)
本発明の酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粉末の表面の一部がシリコーン化合物の膜で被覆され、他の部分が表面改質層で被覆されたものである。
酸化マグネシウム粒子の表面は、殆どがシリコーン化合物の膜で覆われているが(コーティング領域ともいう)、一部シリコーン化合物の膜が存在しない部分については、酸化マグネシウム粉末の表面がMg1-xAlOで表面改質されている(表面改質領域ともいう)。この場合において、酸化マグネシウム粒子の表面積のうち、コーティング領域(シリコーン化合物の膜)が占める割合は90%以上100%未満であり、95%以上100%未満が好ましく、98%以上100%未満がさらに好ましい。酸化マグネシウム粉末のコーティングに用いられるシリコーン化合物の配合割合は、酸化マグネシウム粉末100重量部に対して、0.5重量部以上10重量部以下が好ましく、1重量部以上5重量部以下がより好ましく、1重量部以上3重量部以下がさらに好ましい。シリコーン化合物の量を上記範囲とすることによって、耐水性をより高くすることができる。
そして、酸化マグネシウム粒子の表面積のうち、コーティング領域以外は全てMg1-xAlOで表面改質された表面改質領域となる。これにより、酸化マグネシウム粒子の長期耐水性を確実に確保することができる。酸化マグネシウム粒子の表面積のうち、シリコーン化合物の膜が占めない部分は全てMg1-xAlOからなる表面改質層が占めるのが良く、表面改質層の占める割合は10%未満が好ましく、5%未満がさらに好ましく、2%未満が最も好ましい。表面改質層は連続して形成されていてもよく、複数個所に分散し存在していても良い。酸化マグネシウム粒子の表面は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することができ、EDS搭載走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)を用いることで組成等を分析することができる。
本実施形態の酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粉末に対してシリコーン化合物の層をコーティングし、さらにアルミニウム錯化剤を用いて表面改質を行うことで得ることができる。
原料となる酸化マグネシウム粉末の粒径は、特に限定されず、用途に応じて決定することが好ましい。例えば、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)が、0.1μm以上300μm以下が好ましく、0.5μm以上150μm以下がより好ましい。
また、酸化マグネシウム粉末の純度も、特に限定されず、用途に応じて決定することが好ましい。例えば、電子部品の絶縁特性を満足するためには、純度90質量%以上であることが好ましく、純度95質量%以上であることがより好ましい。なお、本発明の特性を有する酸化マグネシウム粉末は、公知の方法、例えば、電融法、焼結法等を用いて製造することができる。
(シリコーン化合物)
本実施形態の酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粉末の表面にコーティング領域を有し、コーティング領域には、シリコーン化合物の膜が被覆されている。シリコーン化合物の膜は、シラン化合物を酸化マグネシウム粉末と混合し加熱することにより形成することができる。
シラン化合物としては、アルコキシシラン、アルキルシリケートが挙げられる。
シリコーン化合物としてアルキルシリケートを使用する場合、アルキルシリケートとしては、エチルシリケート、プロピルシリケート及びブチルシリケートからなる群から選択される1以上であることが耐水性を向上できる点で好ましい。このうち、シラン化合物として、エチルシリケートを用いることがより好ましい。これにより、熱伝導性、耐水性、生産性、コスト優位性をバランス良く付与することができる。
本実施の形態におけるエチルシリケートは、アルコキシシランを加水分解することにより得ることができる。アルコキシシランとしては、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルメチルジアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、フェニルメチルジアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランを用いることが好ましい。このうち、アルコキシ基の加水分解性、縮合性などの面から、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
本実施の形態におけるエチルシリケートは、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物を用いることがより好ましく、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物としては、エチルシリケート40(平均5量体)、エチルシリケート48(平均10量体)などが挙げられる。これにより、より高い耐水性を付与することができる。
アルコキシシランの具体例としては、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、上記のアルキル基及びアルコキシ基中の水素が1又は2以上のフッ素で置換された化合物であってもよい。
本実施の形態においては、シラン化合物を酸化マグネシウム粉末と混合し、所定の温度環境で所定時間加熱乾燥させることで、酸化マグネシウム粉末の表面にポリシロキサンの層を形成してコーティングすることができる。
コーティング時の加熱および乾燥は、粒子を攪拌しながら所定温度の乾燥空気をあてることで行うことができる。所定温度としては、100℃以上250℃以下が好ましく、150℃以上200℃以下がより好ましい。250℃を超えると、シラン化合物が分解する場合がある。また、乾燥する時間は30分以上3時間以下が好ましく、45分以上2時間以下がより好ましい。これにより、シラン化合物に悪影響を与えることなく好ましくコーティングをすることができ、耐水性を高めることができる。
酸化マグネシウム粉末の重量に対する、シラン化合物の重量の割合は、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。シリコーン化合物の含有量が上記の範囲にあると、酸化マグネシウム粉末の表面が好ましく被覆されて耐水性が向上する。
アルコキシシランは、シリコーン耐水膜として使用することにより高い耐水性能を示す。しかしながら、シリコーン化合物は、一部が凝集することによって耐水被覆が弱い領域が生じる場合がある。したがって酸化マグネシウム粉末の表面がシリコーン化合物の膜のみで被覆される場合は、高温高圧中においては時間の経過とともに耐水性が低下し、耐水性を長期間維持することができない。
なお、本実施形態の酸化マグネシウム粒子は、必要に応じて上記以外の他の任意成分を含むことができる。
(処理剤)
本実施の形態では、酸化マグネシウム粉末にシラン化合物を添加し乾燥した後に、処理剤としてイオン化合物を添加する。イオン化合物の金属としては、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、カルシウムまたはランタンであり、イオン化合物の塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩化物である。このうち、アルミニウムの化合物である、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび塩化アルミニウムからなる群より選ばれるいずれか一種であることが硬化性の観点から好ましい。
また、アルミニウム化合物のうち、硝酸アルミニウムがより好ましい。これにより、シラン化合物の分解および縮合(硬化)が好ましく促進され、より高い耐水性を付与することができる。
酸化マグネシウム粉末100重量部に対する、処理剤の重量の割合は、0.01重量部以上1.0重量部以下が好ましく、0.05重量部以上0.5重量部以下がより好ましく、0.05重量部以上0.1重量部以下がさらに好ましい。これにより、シリコーン化合物の硬化が好ましく促進され、より高い耐水性を付与することができる。
本実施の形態では、酸化マグネシウム粉末とシラン化合物とを混合した後に、混合物を高温の乾燥空気で乾燥させる。そして乾燥させた粒子状の混合物に対して、処理剤を添加して混合し、さらに高温の乾燥空気で乾燥させる。このようにすることで、酸化マグネシウム粉末の表面に硬化したシリコーン化合物がコーティングされる。
本実施の形態では加熱および乾燥を高温空気を用いて行ったが、加熱と乾燥とを分けて行ってもよく、乾燥は除湿乾燥、真空乾燥などの方法で行ってもよい。
本発明における加熱乾燥で得られた乾燥粉末とは、加熱に伴い自然乾燥された粉末も含むものであり、積極的に機械乾燥していない粉末も含まれる。
(表面改質剤)
本実施の形態では、酸化マグネシウム粉末の表面にシリコーン化合物をコーティングした後に、表面改質剤による表面改質を行う。
酸化マグネシウム粉末をシリコーン化合物でコーティングすると、粒子表面の殆どがコーティングされるが、シリコーン化合物の一部が凝集することによって耐水被覆が弱い領域が生じ、長期耐水性が低下する原因となる。そこで、シリコーン化合物でコーティングされた酸化マグネシウム粉末を表面改質剤で表面改質することによって、耐水性を長時間保持可能な酸化マグネシウム粒子とすることができる。
本実施形態で用いられる表面改質剤としては、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、カルシウムまたはランタンを含む錯化剤が挙げられる。このうち、アルミニウムを含む錯化剤が好ましい。アルミニウムはマグネシウムよりイオン半径が小さいことから、効果的にマグネシウムのサイトをアルミニウムで置換することができるためと考えられる。
錯化剤としては、マグネシウムと金属錯体を形成するものであれば特に限定されず、例えば、酒石酸、乳酸、クエン酸、EDTAなどを用いることができる。このうち、マグネシウムとキレートを形成する観点で、乳酸を用いることが好ましい。
表面改質剤としては、乳酸アルミニウム水溶液を用いることが好ましい。すなわち、乳酸アルミニウムを水溶液として酸化マグネシウム粒子に添加することによって、耐水膜が弱い箇所を中心に、マグネシウムイオンが発生し、酸化マグネシウム粉末の表面に露出したマグネシウムイオンと乳酸アルミニウムとがキレートを形成して、カウンターのアルミニウムイオンがマグネシウムサイトに効果的に置換される。
そして、さらに加熱処理を行うことによって、耐水膜が弱い箇所のみMgOがMg1-xAlOに置換されるため、酸化マグネシウムが露出する領域がなくなり、耐水性を長時間保持可能な酸化マグネシウム粒子とすることができる(xは0超1未満の値である)。
酸化マグネシウム粉末100重量部に対する、表面改質剤の重量の割合は、0.03重量部以上10重量部以下が好ましく、0.05重量部以上5重量部以下がより好ましく、0.1重量部以上1重量部以下がさらに好ましい。
表面改質剤の含有量が上記範囲にあることで、酸化マグネシウム粒子の表面が好ましく改質されて耐水性が向上する。
また、表面改質剤の水溶液の濃度および液量は、表面改質剤が十分に溶解し、かつ酸化マグネシウム粉末と十分に攪拌可能な量であればよい。例えば、粒径130μの酸化マグネシウム1kgに対して、表面改質剤は50重量%の水溶液を用いることができる。
シリコーン化合物の膜で被覆された酸化マグネシウム粉末の表面改質にあたっては、酸化マグネシウム粉末と表面改質剤とを十分に混合して、所定時間加熱することによって反応を行う。本実施の形態においては、シリコーン化合物でコーティングされた酸化マグネシウム粉末と、表面改質剤であるアルミニウム錯化剤とを混合して、所定の温度環境で所定時間乾燥させることで、酸化マグネシウム粉末の表面改質を行うことができる。
表面改質の加熱および乾燥は、混合物を攪拌しながら所定温度の乾燥空気をあてることで行うことができる。所定温度としては、80℃以上180℃以下が好ましく、100℃以上150℃以下がより好ましい。また、乾燥する時間は30分以上3時間以下が好ましく、45分以上2時間以下がより好ましい。
本実施の形態では加熱および乾燥を高温空気を用いて行ったが、加熱と乾燥とを分けて行い、乾燥は除湿乾燥、真空乾燥などの方法で行ってもよい。
(洗浄)
表面改質剤で改質した酸化マグネシウム粉末は、反応後の錯化剤(乳酸など)が表面に付着している。この残留イオンを除去するために、表面改質した酸化マグネシウム粉末を蒸留水で洗浄する。この洗浄が十分でない場合は、錯化剤のイオンが残留することになり、マトリックスの電気伝導性などに影響を与える可能性があるためである。
洗浄が十分行えたか否かの確認方法としては、例えば、洗浄済みの酸化マグネシウム粒子を蒸留水に分散させて、分散液の電気伝導率を測ることで定量化することができる。また、他の方法としては、表面改質剤の金属イオンに反応する指示薬を使用して残留評価をしてもよい。例えば、表面改質剤として乳酸アルミニウムを用いた場合は、アルミニウムの指示薬であるアリザリンを使用することができる。
なお、酸化マグネシウムの粉末は通常吸水性を有するが、コーティングおよび表面改質を行った酸化マグネシウム粒子は、耐水性を有するため、洗浄にあたっては、蒸留水を使用しても差し支えない。
(酸化マグネシウム粒子の製造方法)
本発明の酸化マグネシウム粒子の製造方法は、酸化マグネシウム粉末にシリコーン化合物のコーティングを行い、さらにコーティングが不十分な領域をMg1-xAlOで表面改質することにより、製造することができる。
また、シリコーン化合物の層を形成するにあたっては、処理剤を添加してシリコーン化合物の硬化を促進してもよい。
また、表面改質を行った酸化マグネシウム粒子は、表面改質剤を除去するために、洗浄を行ってもよい。
以下に、本実施の形態における酸化マグネシウム粒子(無機充填剤)の製造方法を詳細に説明する。
本実施形態の酸化マグネシウム粒子の製造方法は、以下の5つの工程を含む。
(1)混合工程:酸化マグネシウム粉末にシラン化合物を混合して混合物を得る。
(2)コーティング工程1:混合物を加熱して乾燥粉末を得る。
(3)コーティング工程2:乾燥粉末に処理剤を添加して加熱する(処理工程)。
(4)表面改質工程:乾燥粉末にアルミニウム錯化剤を混合して加熱する。
(5)洗浄工程:表面改質工程で得られた粉末を水洗浄して乾燥する。
これにより、酸化マグネシウム粉末の一部がシリコーン化合物の膜で被覆され、酸化マグネシウム粉末の他の部分が化学式Mg1-xAlO(0<x<1)を有する表面改質層で被覆される。これにより、耐水性を長時間保持可能な酸化マグネシウム粒子とすることができる。
(混合工程)
本実施の形態における混合工程は、酸化マグネシウム粉末に、シラン化合物を混合して混合物を得る。
シラン化合物の添加量は、酸化マグネシウム粉末の重量に対して、5質量%以上30質量%以下が好ましく、8質量%以上20質量%以下がより好ましい。シリコーン化合物の含有量が上記の範囲にあると、酸化マグネシウム粉末の表面が被覆されて耐水性が向上する。
(コーティング工程1)
本実施の形態におけるコーティング工程1は、混合工程で得られた混合物を加熱して乾燥粉末を得る。すなわち、シラン化合物を酸化マグネシウム粉末と混合し、所定の温度で所定時間加熱し乾燥させることで、酸化マグネシウム粉末の表面にシラン化合物の層を形成してコーティングすることができる。
コーティング時の加熱および乾燥は、粒子を攪拌しながら所定温度の乾燥空気をあてることで行うことができる。所定温度としては、80℃以上180℃以下が好ましく、100℃以上150℃以下がより好ましい。また、乾燥する時間は30分以上3時間以下が好ましく、45分以上2時間以下がより好ましい。
コーティング工程1で用いられる攪拌装置は、プラネタリーミキサー、ゲートミキサー、品川ミキサー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、3本ロール、ニーダー等の汎用的な設備を使用して均一混合することができる。本実施の形態ではヘンシェルミキサーを用いて攪拌した。ヘンシェルミキサーの攪拌速度は、20L容量ヘンシェルミキサーで1000rpm以上3000rpmが好ましく、1500rpm以上2500rpmがさらに好ましい。
コーティング工程1で得られた乾燥粉末は、攪拌を続けながら常温になるまで除熱する。このようにして、シリコーン化合物でコーティングされた酸化マグネシウム粉末が得られる。
(処理工程)
本実施の形態における処理工程(コーティング工程2)は、コーティング工程1で得られた乾燥粉末に処理剤を添加して、これらを攪拌しながら加熱および乾燥を行う。
処理工程における加熱および乾燥は、乾燥粉末および処理剤を攪拌しながら所定温度の乾燥空気をあてることで行うことができる。所定温度としては、80℃以上180℃以下が好ましく、100℃以上150℃以下がより好ましい。また、乾燥する時間は30分以上3時間以下が好ましく、45分以上2時間以下がより好ましい。
処理工程で用いられる攪拌装置は、プラネタリーミキサー、ゲートミキサー、品川ミキサー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、3本ロール、ニーダー等の汎用的な設備を使用して均一混合することができる。本実施の形態ではヘンシェルミキサーを用いて攪拌した。ヘンシェルミキサーの攪拌速度は、20L容量ヘンシェルミキサーで1000rpm以上3000rpmが好ましく、1500rpm以上2500rpmがさらに好ましい。
処理工程で得られた粒子は、攪拌を続けながら常温になるまで除熱する。このようにして、シリコーン化合物でコーティングされた酸化マグネシウム粒子が得られる。
(表面改質工程)
本実施の形態における表面改質工程は、コーティング工程(処理工程)で得られた乾燥粉末に、表面改質剤としてアルミニウム錯化剤を混合し、これらを攪拌しながら加熱および乾燥を行う。
表面改質工程における加熱および乾燥は、処理工程で得られた乾燥粉末に、表面改質剤を添加し、攪拌しながら所定温度の乾燥空気をあてることで行うことができる。所定温度としては、80℃以上180℃以下が好ましく、100℃以上150℃以下がより好ましい。また、乾燥する時間は30分以上3時間以下が好ましく、45分以上2時間以下がより好ましい。
処理工程で用いられる攪拌装置は、プラネタリーミキサー、ゲートミキサー、品川ミキサー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、3本ロール、ニーダー等の汎用的な設備を使用して均一混合することができる。本実施の形態ではヘンシェルミキサーを用いて攪拌した。ヘンシェルミキサーの攪拌速度は、20L容量ヘンシェルミキサーで1000rpm以上3000rpmが好ましく、1500rpm以上2500rpmがさらに好ましい。
表面改質工程で得られた酸化マグネシウム粒子は、攪拌を続けながら常温になるまで除熱する。このようにして、シリコーン化合物の膜でコーティングされ、かつMgOの表面がMg1-xAlOに改質された酸化マグネシウム粒子が得られる。
(洗浄工程)
本実施の形態における洗浄工程は、表面改質工程で得られた酸化マグネシウム粒子を水洗浄して乾燥する。
洗浄工程では、表面改質工程で得られた酸化マグネシウム粒子を大量の蒸留水の中に分散させて、攪拌装置で攪拌する。その後、攪拌物をフィルターを通じて水と酸化マグネシウム粒子とを分離して、再度同様にして洗浄を繰り返す。
このようにして、酸化マグネシウム粒子を分散させた蒸留水の電気伝導率が、所定値以下となるまで、洗浄を複数回繰り返し行う。洗浄後の濾液の電気伝導率の所定値は、80μS/cm以下が好ましく、40μS/cm以下がより好ましく、20μS/cm以下がさらに好ましい。このようにすることで、表面改質剤の残留成分を確実に除去することができる。
また、電気伝導率の測定に加えて、または電気伝導率の測定に代えて、表面改質剤に反応する指示薬を使用して残留の確認をしてもよい。
本発明の酸化マグネシウム粒子は、充填剤として使用することを考慮すると、球状に形成することが好ましい。酸化マグネシウム粒子の形状が、破砕状など球状以外であると、マトリックスの組成物の流動性が著しく劣化し、成形性が低下してしまう場合がある。
更に、酸化マグネシウム粒子を充填剤として良好に使用するために、上述したように粒径D50が、0.1μm以上300μm以下が好ましく、0.5μm以上150μm以下とすることがより好ましい。これにより、導体封止用樹脂に良好に用いられ、多ピン、多ワイヤー等を有するパッケージを良好に封止することができる。
(酸化マグネシウム粒子含有樹脂組成物)
本発明の酸化マグネシウム粒子は、エポキシ樹脂組成物等の半導体封止用樹脂組成物等に対して、充填剤として良好に配合することができる。
酸化マグネシウム粒子含有樹脂組成物は、酸化マグネシウム粒子20体積%以上90体積%以下と、ポリマーマトリックス10体積%以上80体積%以下とを含有することができる。また、本発明の酸化マグネシウム粒子含有樹脂組成物は、ポリマーマトリックスに対して、酸化マグネシウム粒子を50vol%以上含むことが好ましく、80vol%以上含むことがより好ましく、90vol%以上含むことがさらに好ましい。これにより、クラックの発生、熱伝導性の低下等の不具合が生じにくい樹脂組成物とすることができる。
(ポリマーマトリックス)
酸化マグネシウム粒子含有樹脂組成物に含まれるポリマーマトリックスとしては、以下が挙げられる。
ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、ゼラチン、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、および塩素化ポリウレタン樹脂等。ポリマーマトリックスは、1種または2種以上の樹脂を用いることができる。
上記のうち、ポリマーマトリックスは、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、およびアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
アクリル樹脂はUV硬化樹脂として使用することができるため、精密な部品の封止剤として用いることができる。また、シリコーン樹脂は耐熱性、柔軟性及びヒートシンク等への密着性が優れていることから熱インターフェース材として好適である。また、エポキシ樹脂(好適にはナフタレン型エポキシ樹脂)は、耐熱性と銅箔回路への接着強度が優れていることから、プリント配線板の絶縁層として好適である。
また、マトリックス樹脂が後述のエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂に対して酸化マグネシウム粒子80vol%以上とすることがより好ましい。これにより、クラックの発生、熱伝導性の低下等の不具合がより生じにくい樹脂組成物とすることができる。
ポリマーマトリックスと酸化マグネシウム粒子との撹拌混合には一般的な撹拌方法を用いることができる。撹拌混合機としては例えば、ディスパー、スキャンデックス、ペイントコンディショナー、サンドミル、らいかい機、メディアレス分散機、三本ロール、およびビーズミル等が挙げられる。
撹拌混合後は、樹脂組成物から気泡を除去するために、脱泡工程を経ることが好ましい。脱泡方法としては例えば、真空脱泡、および超音波脱泡等が挙げられる。また、攪拌混合と脱泡とを同時に行うことができる真空脱泡ミキサーを用いることが好ましい。
酸化マグネシウム粒子を含有する樹脂組成物は、溶融混合のような当技術分野で公知の技術によって、ミル、バンバリー、ブラベンダー、単軸又は二軸押出機、連続ミキサー、混練機などの装置で成型することができる。
酸化マグネシウム粒子含有樹脂組成物の放熱対象の物品としては、以下が挙げられる。
集積回路、ICチップ、ハイブリッドパッケージ、マルチモジュール、パワートランジスタ、およびLED(発光ダイオード)用基板等の種々の電子部品;建材、車両、航空機、および船舶等に用いられ、熱を帯び易く、性能劣化を防ぐためにその熱を外部に逃がす必要がある物品等。
高熱伝導性を実現するためには、熱伝導の異方性をなくすことが重要である。
本発明の酸化マグネシウム粒子は、エポキシ樹脂組成物等の半導体装置封止用樹脂組成物に充填剤として好適に使用することができ、該樹脂組成物に熱伝導性、耐湿性、良好な流動性を与える等、優れた性質を付与することができる。このような樹脂組成物で封止された半導体装置は優れた熱伝導率、流動性を有すると共に、クラックの発生、熱伝導性の低下等の不具合が生じにくいものである。
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明の構成は以下の例示によって限定されるものではない。
<実施例1>
酸化マグネシウム粉末を1kg用意し、シラン化合物として、アルコキシシラン(コルコート株式会社製、エチルシリケート48)を100g用意した。
この酸化マグネシウム粉末とシラン化合物とを混合機(日本コークス社製ヘルシンキミキサーFM-20C/I)で混合しながら、熱風乾燥機(松井製作所社製、型番MCAX-50-CT-J)を用いて120℃の熱風を1時間あてて加熱乾燥させ、乾燥粉末1を得た[コーティング工程]。
次に、処理剤として硝酸アルミニウム九水和物を用意し、エタノール水溶液(エタノール:水=1:9の重量比)を調製した。
そして、コーティング工程で得られた乾燥粉末1に対して、調整した硝酸アルミニウムのエタノール水溶液を10g添加(酸化マグネシウム粉末100重量部に対し硝酸アルミニウムが0.05重量部)して、混合機(日本コークス社製ヘルシンキミキサーFM-20C/I)で混合しながら、熱風乾燥機(松井製作所社製、型番MCAX-50-CT-J)を用いて120℃の熱風を1時間あてて加熱乾燥させて乾燥粉末2を得た[処理工程]。
表面改質剤として乳酸アルミニウム(富士フィルム和光純薬社製)を用意し、乳酸アルミニウム10gおよび蒸留水300gを混合して乳酸アルミニウム水溶液を調製した。
そして、処理工程で得られた乾燥粉末2に乳酸アルミニウム水溶液を添加(100重量部の乾燥粉末1に対して乳酸アルミニウム1重量部の割合)し、混合機(日本コークス社製ヘルシンキミキサーFM-20C/I)で混合しながら、熱風乾燥機(松井製作所社製、型番MCAX-50-CT-J)を用いて120℃の熱風を1時間あてて加熱乾燥させて、表面改質された酸化マグネシウム粒子を得た[表面改質工程]。
さらに、この表面改質された酸化マグネシウム粒子を、蒸留水で複数回洗浄し、洗浄後の濾液の電気伝導率が20μS/cm以下となるまで洗浄を繰り返した[洗浄工程]。
そして、最後に熱風乾燥機(松井製作所社製、型番MCAX-50-CT-J)を用いて120℃の熱風を1時間あてて乾燥させて酸化マグネシウム粒子を得た。
<実施例2>
実施例1のコーティング工程において、シラン化合物としてエチルシリケートを30gとした。また、表面改質工程において、表面改質剤として乳酸アルミニウム1.0gおよび蒸留水300gを混合して乳酸アルミニウム水溶液を調製し、100重量部の乾燥粉末1に対して乳酸アルミニウム0.1重量部の割合で乳酸アルミニウム水溶液を添加した。
そして、コーティング工程における温度条件および圧力条件を、後述の表2に記載のように様々変化させた。
その他は実施例1と同様にして、酸化マグネシウム粒子を得た。
<実施例3>
実施例1の表面改質工程において、表面改質剤として、乳酸アルミニウム(実施例1と同じ)、乳酸亜鉛、乳酸カルシウム、酒石酸アルミニウムを用いた。
その他は実施例1と同様にして、酸化マグネシウム粒子を得た。
<参考例>
蒸留水100重量部に、乳酸アルミニウムをそれぞれ0.1重量部、0.5重量部、1.0重量部および5.0重量部加えて乳酸アルミニウム水溶液を作成した。
<比較例1>
処理工程までを実施例1と同様に行い、表面改質工程以降を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、シリコーン化合物の膜が被覆された酸化マグネシウム粒子を得た。
<比較例2>
いずれの処理も行わず、コーティングまたは表面改質がされていない酸化マグネシウム粉末を用意した。
(電気伝導率の測定)
蒸留水20mLをスクリュー管瓶に入れ、上記実施例および比較例で得られた酸化マグネシウム粒子または酸化マグネシウム粉末0.5gを蒸留水に添加し、十分に攪拌して酸化マグネシウム粒子または粉末を分散させた。スクリュー管瓶に蓋をし密閉した状態で、得られた分散液を135℃に加熱し、室温に冷却した後、電気伝導率計(HORIBA社製、LAQUAtwin)を用いて分散液の電気伝導率を測定した。
分散液の電気伝導率の経時測定結果を図1に示し、分散液の168時間経過時の電気伝導率の測定結果を表1に示す。
(pH測定)
電気伝導率の測定と同様に分散液を調製し、分散液を135℃に加熱し、室温に冷却した後、pH測定機(HORIBA社製、型番LAQUAtwin)を用いて分散液のpHを測定した。
分散液のpHの経時測定結果を図2に示し、分散液の168時間経過時のpHの測定結果を表1に示す。
Figure 2022178874000002
その結果、コーティングまたは表面改質がされていない酸化マグネシウム粉末(比較例2)では、蒸留水に分散直後から分散液の電気伝導率が上昇して、50時間を経過すると450μS/cm前後で飽和傾向になり、168時間が経過すると500μS/cmという高い値となった。
また、シリコーン化合物でコーティングのみ行った酸化マグネシウム粒子(比較例1)では、水に分散直後から分散液の電気伝導率が上昇して、50時間を経過すると約150μS/cmとなり、168時間が経過すると260μS/cmとなり、時間の経過とともに分散液の電気伝導率が上昇することが確認された。
したがって、時間の経過とともに水中のマグネシウムイオン濃度が高くなっており、マグネシウム粒子の耐水性が十分でないことが確認された。
コーティングおよび表面改質を行ったマグネシウム粒子(実施例1)では、時間が経過しても分散液の電気伝導率の上昇が抑えられており、図1のように100時間を経過しても100μS/cm以下となり、168時間経過後も78μS/cmであった。
したがって、マグネシウム粒子の耐水性が長期にわたって維持されていることが確認された。
また、コーティングおよび表面改質を行ったマグネシウム粒子を、EDS搭載走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)で観測したところ、表面の一部にコーティングが不十分な領域がみられ、EDSの結果から同領域には所定量のアルミニウムが多く存在してMg1-xAlO(0<x<1)が形成されていることが確認された。
(実施例2の測定結果)
次に、実施例2において、コーティング工程時における温度環境を120℃から200℃、圧力環境を1気圧(大気圧環境)から1.86気圧に変えて、酸化マグネシウム粒子を得た。
そして、得られた酸化マグネシウム粒子0.5gと蒸留水20mLをスクリュー管瓶に入れて十分に攪拌して分散液を得た。得られた分散液の48時間経過時の電気伝導率の測定結果を表2に示す。
なお、圧力環境はオートクレーブ(三愛化学社製HU-25、容積25ml)を用いて加圧し、圧力値は気体の状態方程式より算出した。
Figure 2022178874000003
その結果、大気圧環境においては、コーティング工程における温度環境が150℃のときが電気伝導率が低く、マグネシウム粒子の耐水性が維持されていることが確認された。
また、圧力環境については、1.66atmのときが電気伝導率が低く、次に1.86atmのときが電気伝導率が低いことが確認された。
(実施例3の測定結果)
実施例3で得られた酸化マグネシウム粒子0.5gと蒸留水20mLをスクリュー管瓶に入れて十分に攪拌して、それぞれの分散液を得た。得られた分散液の48時間経過時の電気伝導率を測定した。
その結果、乳酸アルミニウムで改質した酸化マグネシウム粒子を用いた場合は、電気伝導率σが51であり、pHが9.2であった。また、乳酸亜鉛で改質した酸化マグネシウム粒子を用いた場合は、電気伝導率σが200であり、pHが9.8であった。また、乳酸カルシウムで改質した酸化マグネシウム粒子を用いた場合は、電気伝導率σが210であり、pHが10.0であった。また、酒石酸アルミニウムで改質した酸化マグネシウム粒子を用いた場合は、電気伝導率σが210であり、pHが9.9であった。
したがって、乳酸アルミニウムで改質した酸化マグネシウム粒子は、電気伝導率が低く、マグネシウム粒子の耐水性が維持されていることが確認された。
(参考例の測定結果)
参考例で得られた乳酸アルミニウム水溶液について、それぞれpHおよび電気伝導率を測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 2022178874000004
その結果、乳酸アルミニウムの濃度が増加すると、pHの値が酸性となり、また電気伝導率は増加した。
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神の範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。

Claims (10)

  1. 酸化マグネシウム粉末の一部がシリコーン化合物の膜で被覆され、
    前記酸化マグネシウム粉末の他の部分が化学式Mg1-xAlO(0<x<1)を有する表面改質層で被覆された、酸化マグネシウム粒子。
  2. 前記シリコーン化合物はポリシロキサンである、請求項1に記載の酸化マグネシウム粒子。
  3. 蒸留水に前記酸化マグネシウム粒子を25g/Lの濃度で分散させて分散液を調製し、前記調製後100時間経過したときに、前記分散液の電気伝導率が100μS/cm以下である、請求項1または2に記載の酸化マグネシウム粒子。
  4. 前記酸化マグネシウム粉末の表面積の90%以上100%未満が前記シリコーン化合物の膜で被覆されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム粒子。
  5. 前記表面改質層が、酸化マグネシウムと乳酸アルミニウムとの反応生成物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム粒子。
  6. ポリマーマトリックスに対して、請求項1から5のいずれか1項に記載の前記酸化マグネシウム粒子を50vol%以上含む、樹脂組成物。
  7. 酸化マグネシウム粉末に、シラン化合物を混合して混合物を得る混合工程と、
    前記混合物を加熱乾燥して乾燥粉末を得るコーティング工程と、
    前記乾燥粉末にアルミニウム錯化剤を混合して加熱する表面改質工程と、を含む酸化マグネシウム粒子の製造方法。
  8. 前記コーティング工程は、前記乾燥粉末に処理剤を添加して加熱する処理工程をさらに含み、
    前記処理剤は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび塩化アルミニウムからなる群より選ばれるいずれか一種である、請求項7に記載の酸化マグネシウム粒子の製造方法。
  9. 前記アルミニウム錯化剤は乳酸アルミニウムであり、
    前記シラン化合物はアルコキシシランである、請求項7または8に記載の酸化マグネシウム粒子の製造方法。
  10. 前記表面改質工程で得られた粉末を水洗浄して乾燥する洗浄工程をさらに含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム粒子の製造方法。
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