JP2022177571A - 構造物の構築方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】敷地や導線に制限が多い場合であっても適用でき、仮設資材も低減できる構造物の構築方法等を提供する。【解決手段】建物1の両側の柱11の高さ方向の途中で、柱11内部の鉄骨柱に固定されたブラケット15にセンターホールジャッキ20を設置し、センターホールジャッキ20を用いて、床トラス14のトラス梁141を吊り上げ、トラス梁141の両端部を、建物1の両側の柱11の高さ方向の途中に設けた仕口部16に定着する。【選択図】図2
Description
本発明は、構造物の構築方法に関する。
小学校や高校等の学校建築においては、校舎だけでなく体育館も設計されることが多いが、都心の学校は敷地に余裕が無いため、建替え時に使える工事敷地が制限される。例えばグラウンドがあったとしても、学生の部活動で使う等の理由でヤードとして使うことは難しく、重機や資材を配置する十分なスペースや導線を確保できないことが多い。
このように敷地や導線に制限が多い学校建築において、体育館のような大スパンの無柱空間を構築するにあたり、リフトアップ工法の採用が考えられる。特許文献1では、柱頭の仮設架台の内端側に設けたジャッキを用い、柱頭に架設する屋根ユニットをPC鋼材により下から吊り上げることが記載されている。
しかしながら、特許文献1の方法では、柱頭に架設する屋根ユニットを柱頭から吊り上げる際に、柱に加わる内側への転倒モーメントが大きくなる。そのため、転倒モーメントに抵抗する支持機構を柱の外側で設けて柱の内側への転倒を防止する必要があり、大掛かりな仮設資材を要する。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、敷地や導線に制限が多い場合であっても適用でき、仮設資材も低減できる構造物の構築方法等を提供することを目的とする。
前述した課題を解決するための本発明は、建物の両側の躯体の高さ方向の途中で、前記躯体の鉄骨柱に固定されたブラケットにジャッキを設置する工程と、前記ジャッキを用いて、前記建物の鉄骨梁を下から吊り上げる工程と、前記鉄骨梁の両端部を、前記建物の両側の躯体の高さ方向の途中に定着する工程と、を有することを特徴とする構造物の構築方法である。
本発明では、建物の両側の躯体の高さ方向の途中に設けたブラケットにジャッキを設置し、このジャッキから躯体の途中の高さまで鉄骨梁を吊り上げ、躯体への定着を行う。この場合、鉄骨梁の吊り上げ時に躯体に加わる転倒モーメントが小さいことから、前記の特許文献1のように大掛かりな仮設資材を用いて支持機構を形成する必要が無く、仮設資材を低減できる。またリフトアップ工法の採用により、敷地や導線に制限が多い学校建築などの場合においても、大スパンの無柱空間を有する体育館などの建物を容易に構築できる。
前記ジャッキは、前記ブラケットの上に設けられた、前記鉄骨梁と平面視で直交する方向のジャッキ受梁の上で、前記ブラケットを挟む位置に一対配置され、一対のジャッキのそれぞれから垂下した吊材を用いて前記鉄骨梁を吊り上げることが望ましい。また前記ジャッキの位置を変えることなく、上下複数段の前記鉄骨梁が順次吊り上げられることも望ましい。
ジャッキは、ブラケットを挟む位置に一対設けることで、吊材とブラケットの干渉を避けて鉄骨梁の吊り上げを行うことができる。また上下複数段の鉄骨梁を吊り上げる場合にも、吊材と上段の鉄骨梁との干渉を避けて下段の鉄骨梁を吊り上げることができ、ジャッキの位置を変えることなく、上下複数段の鉄骨梁を連続して吊り上げることが可能になる。
ジャッキは、ブラケットを挟む位置に一対設けることで、吊材とブラケットの干渉を避けて鉄骨梁の吊り上げを行うことができる。また上下複数段の鉄骨梁を吊り上げる場合にも、吊材と上段の鉄骨梁との干渉を避けて下段の鉄骨梁を吊り上げることができ、ジャッキの位置を変えることなく、上下複数段の鉄骨梁を連続して吊り上げることが可能になる。
前記鉄骨梁が、吊り上げ前に前記建物内で地組されることが望ましい。
遮音性の高い建物内で鉄骨梁の地組を行うことで、地組時の騒音を低減することができる。
遮音性の高い建物内で鉄骨梁の地組を行うことで、地組時の騒音を低減することができる。
前記建物の屋根を架設した後、前記鉄骨梁の地組と吊り上げを行うことが望ましい。
これにより、鉄骨梁の地組や吊り上げ等を天候に左右されない屋内作業とできるため、作業効率が向上するうえ、騒音・振動低減にも寄与する。
これにより、鉄骨梁の地組や吊り上げ等を天候に左右されない屋内作業とできるため、作業効率が向上するうえ、騒音・振動低減にも寄与する。
本発明により、敷地や導線に制限が多い場合であっても適用でき、仮設資材も低減できる構造物の構築方法等を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係るリフトアップ工法で床トラス14をリフトアップした後の建物1を示す図である。建物1は例えば学校の体育館やホールなどであり、大スパンの無柱空間を内部に有するが、これに限ることはない。
建物1の両側では、躯体としての柱11が地下躯体12の上に設けられ、建物1の両側の柱11の間に床トラス14が架設される。柱11は建物1の外周部に設けられる。なお、建物1の両側とは、床トラス14の後述するトラス梁141(図3等参照)の方向における両側である。
床トラス14は、建物1の中間階の床スラブを構築するためのものであり、上下複数段(図1の例では2段)に設けられる。また建物1の両側の柱11の上端部の間には屋根13が架設される。屋根13は例えば折板屋根であるが、これに限ることはない。
本実施形態のリフトアップ工法は、ジャッキを用いて上下複数段の床トラス14を順次リフトアップするものであり、図2(a)のように、地下躯体12とその上の柱11および屋根13を構築した後、床トラス14を地組し、そのリフトアップを行う。
床トラス14の地組は、建物1内の地下部分(地下躯体12の内側)で行われる。図3は、地組後の床トラス14を示したものである。床トラス14は、トラス梁141の上にデッキ143を設けたものであり、図1のように床トラス14をリフトアップした後、デッキ143の上にコンクリートを打設することで建物1の床スラブが構築される。床トラス14の地組時にデッキ143の上面で予め床スラブの配筋等を行っておくことも可能であり、工程を短縮できる。
トラス梁141は、鉛直面内にトラス構造を有する鉄骨梁であり、デッキ143の下面で複数本平行に配置される。隣り合うトラス梁141同士は連結梁144によって連結される。図3の符号Tは仮設の支持台であり、上下複数段の床トラス14を地組する際に、これらの床トラス14を下から支持するために設けられる。
本実施形態では、床トラス14をリフトアップする際に必要なブラケット15が、柱11の高さ方向の途中に予め設けられる。柱11はSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)柱やSC(鉄骨コンクリート)柱であり、内部にH形鋼などの鉄骨柱が埋設される。その他、鉄骨柱そのものを柱11としてもよい。
柱11は、建物1の両側において、トラス梁141と平面視で直交する方向に複数並べて配置され、各柱11の位置が床トラス14の各トラス梁141の位置に対応する。ブラケット15は、これらの柱11のそれぞれに固定される。
図2(b)に示すように、建物1の両側において、各柱11のブラケット15にセンターホールジャッキ(以下、単にジャッキという)20を配置し、ジャッキ20から垂下する吊材22の下端部を上段の床トラス14の各トラス梁141の両端部に取り付け、ジャッキ20によりトラス梁141の吊り上げ(リフトアップ)を行う。
吊材22としてはPC鋼線等のPC鋼材が用いられるが、これに限ることはない。ジャッキ20については、床トラス14の荷重条件等により適切な仕様と台数を選定する。なお、デッキ143はトラス梁141の両端部を除く範囲に敷設されており、吊材22の取付の支障となることはない。
図4(a)は、トラス梁141の吊り上げ途中の状態を側方から見たものである。図4(b)は図4(a)を右側から見た図である。
前記のブラケット15は、水平材151と斜材152の先端部同士を連結してフの字状に組み合わせたものであり、水平材151と斜材152の基端部は柱11内部の鉄骨柱Sに溶接等で固定される。水平材151と斜材152にはH形鋼等の鋼材が用いられる。柱11は、鉄骨柱Sにブラケット15と後述する仕口部16を固定した後、鉄骨柱Sの周囲にコンクリートを打設して形成される。
水平材151の先端部の上にはジャッキ受梁21が配置される。ジャッキ受梁21は、トラス梁141と平面視で直交する方向(図4(a)の紙面法線方向、図4(b)の左右方向に対応する)に沿って設けられる梁部材であり、前記のジャッキ20が、ジャッキ受梁21の上でブラケット15を挟んだ位置に一対配置される。
吊材22は一対のジャッキ20のそれぞれから垂下し、その下端部が吊り治具40を介してトラス梁141に取り付けられる。ジャッキ20がブラケット15を挟んだ位置に一対設けられていることにより、吊材22がブラケット15に干渉するのを防ぐことができる。
吊り治具40は、荷重受梁41の下面に、一対の取付板42を設けたものである。荷重受梁41は、トラス梁141と平面視で直交する方向に沿って配置される梁部材であり、その両端部に、一対のジャッキ20から垂下した吊材22の下端部が固定される。上記した一対の取付板42は、トラス梁141の方向に間隔を空けて設けられる。
トラス梁141の上弦材1411の上面には、板状の吊り金具145が設けられる。吊り治具40の一対の取付板42の間に吊り金具145を挟んだ状態で、両取付板42と吊り金具145にピン43を通すことで、吊り治具40が吊り金具145に取り付けられる。
吊り金具145はトラス梁141の両端部で設けられており、両吊り金具145に、建物1の両側の柱11のジャッキ20から垂下した吊材22が吊り治具40を介して取り付けられる。
このようにして、床トラス14の複数のトラス梁141のそれぞれについて、対応する位置にある柱11のジャッキ20から垂下した吊材22を取り付け、図示しない制御装置でジャッキ20間の誤差を調整しながら床トラス14のトラス梁141を吊り上げる。そして、図2(c)に示すように、床トラス14の各トラス梁141の両端部を、建物1の両側の柱11に設けた仕口部16に仮固定する。
図4(a)に示すように、本実施形態の仕口部16は、上弦材161、下弦材162、および斜材163を有する。上弦材161、下弦材162、および斜材163にはH形鋼等の鋼材が用いられ、その基端部が前記のブラケット15と同様、柱11内部の鉄骨柱Sに溶接等により固定される。仕口部16は、柱11の高さ方向の途中において、上下段の床トラス14のトラス梁141のリフトアップ高さにそれぞれ設けられる。
図5(a)はトラス梁141と仕口部16の仮固定について示す図である。トラス梁141の仮固定の際は、仕口部16の上弦材161および下弦材162の先端部を、トラス梁141の上弦材1411および下弦材1412とそれぞれ連結し、斜材163の先端部を、繋ぎ材164を介してトラス梁141の斜材1413と連結する。
部材同士の連結は、ボルトや添接板等の連結具cを用いて行われる。上弦材161、1411同士(または下弦材162、1412同士)の連結については、これらの部材に予め設けた突出片p(図4(a)参照)同士を連結具cにより連結することもできる。
上段の床トラス14の各トラス梁141を仕口部16に仮固定した後、図2(d)に示すように各ジャッキ20の吊材22を再度下方に垂下して、吊材22の下端部を下段の床トラス14の各トラス梁141に図4(a)と同様にして取り付ける。この際、前記の吊り治具40は上段の床トラス14のトラス梁141の吊り金具145から取り外し、下段の床トラス14のトラス梁141の吊り金具145に付け替える。
この後、ジャッキ20を用いて下段の床トラス14のトラス梁141を先程と同様に吊り上げる。図5(b)は、トラス梁141の吊り上げ途中の状態を示す図である。
本実施形態では、図4(b)で説明したように、ブラケット15を挟む位置にジャッキ20を一対設けていることから、ジャッキ20から垂下する吊材22が、上段の床トラス14のトラス梁141と干渉するのを避けることができ、当該トラス梁141が存在する状態で、下段の床トラス14のトラス梁141を問題なく吊り上げることができる。そのため、ジャッキ20の位置等を変更することなく、上下段の床トラス14のトラス梁141を連続して順次吊り上げることが可能になる。
下段の床トラス14のトラス梁141を所定のリフトアップ高さまで吊り上げた後、図2(e)に示すように、下段の床トラス14の各トラス梁141を、下段の仕口部16に前記と同様に仮固定する。その後、上下段の床トラス14の各トラス梁141を仕口部16に定着(本固定)する。
トラス梁141の仕口部16への定着時には、上弦材161、1411のフランジ同士の溶接や、下弦材162、1412のフランジ同士の溶接を行い、必要に応じて突出片pや不要な連結具cを撤去する。その他の連結具cは、本設のものに置き換えてこれにより部材同士の連結を行う。ただし、定着の方法がこれに限ることはない。
この後、ブラケット15やジャッキ20等を撤去し、上下段の床トラス14のリフトアップが完了する。ブラケット15は、リフトアップ後の解体・撤去が容易に行えるように、上段の床トラス14の上方近傍に設置されている。
ジャッキ20については、図6に示すように、トラス梁141と平面視で直交する方向(図6の紙面法線方向に対応する)の仮設のレール131を屋根13から吊り支持し、このレール131にレバーホイスト132を設け、レバーホイスト132でジャッキ20を吊り上げて水平方向に移動させ、ジャッキ20の撤去を行うこともできる。これにより、重量物であるジャッキ20を容易に撤去・回収することができる。
以上説明したように、本実施形態では、建物1の両側の柱11の高さ方向の途中に設けたブラケット15にジャッキ20を設置し、このジャッキ20から柱11の途中の高さまで床トラス14のトラス梁141を吊り上げ、柱11への定着を行う。この場合、床トラス14の吊り上げ時に柱11に加わる転倒モーメントが小さいことから、前記の特許文献1のように大掛かりな仮設資材を用いて支持機構を形成する必要が無く、仮設資材を低減できる。またリフトアップ工法の採用により、敷地や導線に制限が多い学校建築などの場合においても、大スパンの無柱空間を有する体育館などの建物1を容易に構築でき、工期短縮に寄与し、コストも低減できる。
また、ジャッキ20がブラケット15を挟む位置に一対配置され、それぞれのジャッキ20から垂下した吊材22を用いて床トラス14のトラス梁141を吊り上げることで、吊材22とブラケット15の干渉を避けてトラス梁141を吊り上げることができる。上下複数段の床トラス14のトラス梁141を吊り上げる場合にも、吊材22と上段の床トラス14のトラス梁141との干渉を避けて下段の床トラス14のトラス梁141を吊り上げることができ、ジャッキ20の位置を変えることなく、上下段の床トラス14のトラス梁141を連続して吊り上げることが可能になる。
また本実施形態では遮音性の高い建物1内、特に地下部分でトラス梁141を含む床トラス14の地組を行うことから、騒音も軽減される。床トラス14の地組を低所で行うことで、工具や作業者の落下リスクを低減することもできる。なお、建物1に地下部分が無い場合などでは、床トラス14の地組を1階部分の床で行うことも可能である。いずれにせよ、床トラス14は、トラス梁141が上方に吊り上げ可能なように地組されればよい。
また本実施形態では、床トラス14の地組やリフトアップを行う前に屋根13の架設をおこなうことで、地組やリフトアップ等の作業を天候に左右されない屋内作業とできるため、作業効率が向上するうえ、騒音・振動低減にも寄与する等のメリットがある。ただし、場合によっては屋根13を床トラス14のリフトアップ後に架設することも可能である。
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば建物1の両側の躯体はリフトアップ荷重に耐えうる構造強度を有していればよく、柱11に限ることはない。また躯体は少なくともリフトアップの開始時に建物1の両側にあたる位置で形成されていればよく、例えばリフトアップの開始時に建物1の三方に躯体が形成されていてもよいし、建物1の四方に躯体が形成されていてもよい。
また本実施形態では床トラス14のトラス梁141の吊り上げを行ったが、吊り上げ対象はこれに限らず、大梁などその他の鉄骨梁を吊り上げる場合にも本方法は適用できる。また鉄骨梁がトラス構造を有するものに限ることもない。
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1:建物
11:柱
12:地下躯体
13:屋根
14:床トラス
15:ブラケット
16:仕口部
20:センターホールジャッキ
21:ジャッキ受梁
22:吊材
40:吊り治具
41:荷重受梁
141:トラス梁
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41:荷重受梁
141:トラス梁
Claims (5)
- 建物の両側の躯体の高さ方向の途中で、前記躯体の鉄骨柱に固定されたブラケットにジャッキを設置する工程と、
前記ジャッキを用いて、前記建物の鉄骨梁を下から吊り上げる工程と、
前記鉄骨梁の両端部を、前記建物の両側の躯体の高さ方向の途中に定着する工程と、
を有することを特徴とする構造物の構築方法。 - 前記ジャッキは、前記ブラケットの上に設けられた、前記鉄骨梁と平面視で直交する方向のジャッキ受梁の上で、前記ブラケットを挟む位置に一対配置され、
一対のジャッキのそれぞれから垂下した吊材を用いて前記鉄骨梁を吊り上げることを特徴とする請求項1記載の構造物の構築方法。 - 前記ジャッキの位置を変えることなく、上下複数段の前記鉄骨梁が順次吊り上げられることを特徴とする請求項2記載の構造物の構築方法。
- 前記鉄骨梁が、吊り上げ前に前記建物内で地組されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の構造物の構築方法。
- 前記建物の屋根を架設した後、前記鉄骨梁の地組と吊り上げを行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の構造物の構築方法。
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