JP3546225B2 - 建築構造物の構築方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、建築構造物、特に大規模な片持梁形式の建築構造物を構築する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、大規模な片持梁形式の建築構造物は、梁状建築部分の下方にこれを支持するための構造物を構築する土地や空間が確保できない場合や、博覧会等のイベント会場に斬新な建築物として構築される場合が多く、不安定な構造であるため、特に構築方法に工夫を要する。
【0003】
従来、この種の建築構造物の構築方法としては、仮設の支柱や構台により支持しながら1部材ずつ組み立てる工法が採用されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構築方法は、次のような解決すべき課題を有している。
1)途中段階の架構が非常に不安定になり、また、小部材を高所で組み立てるので、作業能率が悪く、しかも建物の精度を確保することが難しい。
2)仮設支柱頂部と建築構造物との取合い部や仮設支柱脚部にピンローラーを設けているため、水平力を負担することができず、その結果、架構が不安定になり易い。従って、水平力を負担するためのトラワイヤー等を張る場所が確保できない場合が多い。
3)斜材により梁状建築部分を支持させる場合が多いが、該斜材の組み立て及び組み付け作業用の吊足場が設置し難い。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、建方中の架構を特に風や地震時の水平力に対して安定させると共に、施工精度を高めることができ、特に斜めトラス用の足場の取付・撤去作業の安全性と、該足場による構築(本締・溶接・塗装等)作業の安全性や作業能率を向上させることができる建築構造物の構築方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の建築構造物の構築方法は、コア部を所定高さに構築し、該コア部の構築作業と並行あるいは前後して中間仮設支柱を立設し、該中間仮設支柱に関して上記コア部の反対側に位置する基盤から該コア部の上端部に向けて斜材を建て込むと共に該斜材を上記中間仮設支柱の頂部に接続固定し、上記コア部の基部から上記斜材と交差するように斜めトラスを建て込むと共に上記中間仮設支柱の頂部に接続固定し、上記斜材や斜めトラスの建て込み作業と並行あるいは前後して上記斜材の基部付近から端部仮設支柱を立設してその頂部に上記斜めトラスの上端部を接続固定し、さらに上記コア部の上端部と斜めトラスの上端部の間にトラス梁を組み付け、該トラス梁の上部に上屋を構築し、最後に上記中間仮設支柱および端部仮設支柱の頂部を上記斜材および斜めトラスから切り離して撤去することを特徴とする。上記コア部は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等いずれの構造であってもよい。また、上記中間仮設支柱あるいは上記端部仮設支柱の頂部にジャッキボックスを設けて介挿部材を介して上記斜材あるいは斜めトラスを接続固定し、上記切り離し撤去作業の際に、上記ジャッキボックスの間にジャッキおよびキャンバーを設置して、該ジャッキを伸縮操作しながら上記介挿部材の背丈およびキャンバーの枚数を交互に順次低くあるいは減じて切り離しを行うことも特徴とする。さらに、上記斜めトラスを地組みする際に足場を取り付けることも特徴とする。
【0007】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
図1において、1は鉄骨コア部であって、トラス梁2の支持基端部2aを支持する。該鉄骨コア部1は、エレベータや非常階段等の移動用空間、及び設備配管等のサービス空間を提供する。1aは上記鉄骨コア部1の基礎部である。上記トラス梁2の上部には、上屋3が構築されている。該上屋3は展望室やレストラン等の使用目的に応じた利用空間を提供する。なお、上記鉄骨コア部1は、これに限定するものではなく、鉄筋コンクリートコア部、鉄骨鉄筋コンクリートコア部等であってもよい。
【0008】
4は斜めトラスであって、上記鉄骨コア部1の基部とトラス梁2の自由先端部2bとの間に斜めに建込まれ、上記トラス梁2及び上屋3の自由先端部を支持している。5はパイプ等より成る斜材であって、上記斜めトラス4の中間部と交差して、これに一体的に連結されると共に、その上端部は上記鉄骨コア部1の上端部に連結するように建込まれている。Gは基盤である。
【0009】
次に、上記実施例の建築構造物の構築方法について説明する。まず、図2に示すように、鉄骨コア部1を低層部から構築する。本実施例においては、鉄骨コア部1の各節部分を地組して、1節ずつ吊り上げて組み上げ接続することにより構築する。該鉄骨コア部1の構築作業と並行あるいは前後して中間仮設支柱6を設置する。
【0010】
続いて、図3に示すように、上記斜材5の下半部を建て込む。該斜材5の基部は上記基盤Gに定着せしめ、上部は上記中間仮設支柱6の頂部に支持せしめる。
【0011】
さらに、図4に示すように、上記斜めトラス4の下半部を建て込む。該斜めトラス4の基部は上記鉄骨コア部1の基部に連結せしめ、上部は上記中間仮設支柱6の頂部に支持せしめる。
【0012】
図5は、上記中間仮設支柱6の頂部における、上記斜材5と斜めトラス4の支持状態を示すもので、これらの斜材5と斜めトラス4の交差連結部分の下側にジョイント部材6aを一体的に取り付け、該ジョイント部材6aを、上記中間仮設支柱6の頂部に一体的に取り付けたジャッキボックス6bにより支持している。図6に拡大して示すように、これらのジャッキボックス6bとジョイント部材6aの間には、H型鋼からなる介挿部材6cが介挿されている。該介挿部材6cは、ボルト等の固定金具により取外し可能に取り付けられている。
【0013】
再び、図4において、7は端部仮設支柱であって、上記中間仮設支柱6を中心に上記鉄骨コア部1のほぼ対称位置に設置する。また、上記作業に並行あるいは前後して上記鉄骨コア部1の上部も構築する。
【0014】
次に、図7に示すように、上記斜材5の上半部を建て込んで、その上端を上記鉄骨コア部1の上端部に接続する。また、上記斜めトラス4の上半部も建て込んで、その上端を上記端部仮設支柱7の上端部に接続する。該端部仮設支柱7の頂部と斜めトラス4との取合い部も、上記ジョイント部材6a、ジャッキボックス6b、介挿部材6cと同様の構成により連結支持されている。
【0015】
続いて、図8に示すように、上記鉄骨コア部1の上端部と斜めトラス4の上端部の間に、トラス梁2を構築して、それぞれ一体的に接続する。該トラス梁2上には上屋3を構築する。
【0016】
上記建築構造物の構築が完了したら、上記中間仮設支柱6及び端部仮設支柱7を撤去する。例えば、上記中間仮設支柱6を撤去するには、まず、図9に示すように、上記ジャッキボックス6bの間にジャッキ8をセットして、キャンバー9を数枚(本実施例では4枚)載置しておく。
【0017】
上記準備が完了したら、上記介挿部材6cをジョイント部材6aから切り離してから、上記ジャッキ8を作動させて、図10に示すように、上記キャンバー9を介してジョイント部材6aを僅かに持ち上げる。その結果、上記介挿部材6cとジョイント部材6aとの間には、僅かな隙間Sが形成される。
【0018】
上記ジャッキアップした状態で、図11に示すように、上記介挿部材6cをジャッキボックス6bから切り離して、撤去する。介挿部材6cを撤去したあとには、図12に示すように、別の介挿部材6c′をセットして、ジャッキダウウンする。上記介挿部材6c′は上記介挿部材6cより背丈が低い。
【0019】
次に、上記キャンバー9を1枚取り除いてから(本実施例では3枚にする)、再び、上記ジャッキ8を作動させて上記ジョイント部材6aをジャッキアップし、図13に示すように、上記介挿部材6c′からジョイント部材6aを浮かした状態で該介挿部材6c′を撤去し、そのあとに、図14に示すように、更に別の介挿部材6c″を介挿させる。該介挿部材6c″は上記介挿部材6c′より更に背丈が低くなっている。
【0020】
上記ジョイント部材6aは、上記斜めトラス4や斜材5と一体となっているので、以上のジャッキダウン操作を数回繰り返すうちに、上記ジョイント部材6aの降下が停止する。すなわち、ジョイント部材6aはジャッキ8で支持しておく必要はなくなり、上記中間仮設支柱6から完全に切り離される。切り離された中間仮設支柱6は解体撤去する。なお、上記端部仮設支柱7も同様にジャッキダウン操作を繰り返して切り離した後、解体撤去する。
【0021】
図15は上記トラス梁4の作業用の足場10の取付状態を示すもので、該トラス梁4の地組みの際に、これに斜め(本実施例では、約45°)に取り付けられる。各足場10は適宜間隔に平行に配置されていて、その一側端部は上部の足場10から吊りチェーン10aにより保持されるようになっている。10bは手摺、11は安全ネットである。
【0022】
【発明の効果】
1)斜材および斜めトラスを仮設支柱の頂部に接続固定して構築するので、特に水平力に対する架構が非常に安定し、構築作業の能率および精度が向上する。
2)ジャッキダウンを安定かつ能率良く行うことができる。
3)斜めトラスの足場を安全かつ能率良く組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】建築構造物の一実施例を示す側面図である。
【図2】図1の建築構造物の構築方法の説明図である。
【図3】図2に続く建築構造物の構築方法の説明図である。
【図4】図3に続く建築構造物の構築方法の説明図である。
【図5】中間仮設支柱による斜めトラスの支持状態の説明図である。
【図6】図5の要部の拡大説明図である。
【図7】図4に続く建築構造物の構築方法の説明図である。
【図8】図7に続く建築構造物の構築方法の説明図である。
【図9】中間仮設支柱による斜めトラスの支持部におけるジャッキダウンの説明図である。
【図10】図9に続くジャッキダウンの説明図である。
【図11】図10に続くジャッキダウンの説明図である。
【図12】図11に続くジャッキダウンの説明図である。
【図13】図12に続くジャッキダウンの説明図である。
【図14】図13に続くジャッキダウンの説明図である。
【図15】トラス梁の足場の取付状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 鉄骨コア部
1a 基礎部
2 トラス梁
2a 支持基端部
2b 自由先端部
3 上屋
4 斜めトラス
5 斜材
6 中間仮設支柱
6a ジョイント部材
6b ジャッキボックス
6c 介挿部材
6c′介挿部材
6c″介挿部材
7 端部仮設支柱
8 ジャッキ
9 キャンバー
10 足場
10a 吊りチェーン
10b 手摺
11 安全ネット
G 基盤
S 隙間
Claims (3)
- コア部を所定高さに構築し、該コア部の構築作業と並行あるいは前後して中間仮設支柱を立設し、該中間仮設支柱に関して上記コア部の反対側に位置する基盤から該コア部の上端部に向けて斜材を建て込むと共に該斜材を上記中間仮設支柱の頂部に接続固定し、上記コア部の基部から上記斜材と交差するように斜めトラスを建て込むと共に上記中間仮設支柱の頂部に接続固定し、上記斜材や斜めトラスの建て込み作業と並行あるいは前後して上記斜材の基部付近から端部仮設支柱を立設してその頂部に上記斜めトラスの上端部を接続固定し、さらに上記コア部の上端部と斜めトラスの上端部の間にトラス梁を組み付け、該トラス梁の上部に上屋を構築し、最後に上記中間仮設支柱および端部仮設支柱の頂部を上記斜材および斜めトラスから切り離して撤去することを特徴とする建築構造物の構築方法。
- 上記中間仮設支柱あるいは上記端部仮設支柱の頂部にジャッキボックスを設けて介挿部材を介して上記斜材あるいは斜めトラスを接続固定し、上記切り離し撤去作業の際に、上記ジャッキボックスの間にジャッキおよびキャンバーを設置して、該ジャッキを伸縮操作しながら上記介挿部材の背丈およびキャンバーの枚数を交互に順次低くあるいは減じて切り離しを行うことを特徴とする請求項1に記載の建築構造物の構築方法。
- 上記斜めトラスを地組みする際に足場を取り付けることを特徴とする請求項1に記載の建築構造物の構築方法。
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