JP2022160046A - プラスチック光ファイバ並びにこれを用いた生体内照明用機器、眼科手術照明用プローブおよび血管用カテーテル。 - Google Patents
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Abstract
【課題】ファイバ表面が潤滑性に優れたプラスチック光ファイバを提供する。【解決手段】コアと少なくとも1層のクラッドを有するプラスチック光ファイバをであって、ファイバ直径が0.25mm以上2.0mm以下であり、ファイバ側面に潤滑層を有することを特徴とするプラスチック光ファイバ。【選択図】 なし
Description
本発明は、滑り性に優れたプラスチック光ファイバに関するものである。
プラスチック光ファイバは加工性、取り扱い性、製造コストなどの面でガラス系光ファイバに比べて優れているので、短距離の光信号伝送、ライトガイドなどに使用されている。
特に、医療用途で使用される内視鏡照明用プラスチック光ファイバでは、複雑な構造を持つ体内器官を通過させるために、可とう性や繰り返し屈曲に対する耐久性が要求される。また、ロボット用導光センサーや、工業機器用光電センサーにおいても、曲げ駆動部が大きいので、優れた屈曲性が要求される。加えて、管内への挿入が必要な場合も多く、その場合にはファイバ表面の滑り性も要求され、ガラスファイバ束や管内腔の滑り性向上の検討が進められている(特許文献1、2)。
プラスチック光ファイバは、通常コアとクラッドとの2層より構成されており、コアにはポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略す)に代表されるように、透明性に優れ耐候性の良好な重合体が一般に使用される。一方、クラッドとしては、コア内部に光を閉じ込めておくために、コアよりも低屈折率であることが必要であり、弗素含有重合体が広く使用されている。
弗素含有重合体として代表的な材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、0.1程度の低い動摩擦係数を持った材料であり、優れた滑り性や耐摩耗性を有しているが、プラスチック光ファイバに適用するにはその結晶性により不透明となることが問題となる。そのため、通常は透明性を確保するために2種類以上の弗素系材料を用いた共重合体が用いられるが、共重合体となることでそのすべり性は悪化する傾向にある。
また、ガラスファイバ束表面やファイバを通すカテーテル内部に潤滑層を持った例も提案されている。
これら従来の弗素含有重合体を用いてプラスチック光ファイバを製造した場合、表面の滑り性が十分ではなく、機器管内の挿入時には摩擦によるクラッドの損傷や作業効率の低下が懸念される。
本発明の主な目的は、滑り性に優れたプラスチック光ファイバを提供することにある。
本発明は、コアと少なくとも1つのクラッド有するプラスチック光ファイバであって、ファイバ直径が0.25mm以上2.0mm以下であり、ファイバ側面に潤滑層を有することを特徴とするプラスチック光ファイバである。
本発明によれば、ファイバ表面が潤滑性に優れたプラスチック光ファイバが提供可能となり、管内への挿入が必要な医療用途の照明やセンサーに特性を有したプラスチック光ファイバを提供することができる。
以下、本発明に係るプラスチック光ファイバの好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバは、コアと少なくとも1つのクラッド有するプラスチック光ファイバであって、ファイバ直径が0.25mm以上2.0mm以下であり、ファイバ側面に潤滑層を有することを特徴とするプラスチック光ファイバである。
(コア)
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバにおいて、コアをなす重合体(ポリマー)としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート主体の共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、置換スチレン、N-置換マレイミドなどを共重合したもの)、あるいはそれらを高分子反応したグルタル酸無水物、グルタルイミドなどの変性重合体などが挙げられる。好ましく用いられる重合体は、メチルメタクリレートを主成分とする重合体、すなわち、ポリマーを構成する繰り返し単位の50モル%以上、好ましく70モル%以上、より好ましく90モル%以上、がメチルメタクリレートに由来する重合体である。
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバにおいて、コアをなす重合体(ポリマー)としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート主体の共重合体(例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、置換スチレン、N-置換マレイミドなどを共重合したもの)、あるいはそれらを高分子反応したグルタル酸無水物、グルタルイミドなどの変性重合体などが挙げられる。好ましく用いられる重合体は、メチルメタクリレートを主成分とする重合体、すなわち、ポリマーを構成する繰り返し単位の50モル%以上、好ましく70モル%以上、より好ましく90モル%以上、がメチルメタクリレートに由来する重合体である。
なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレートなどが挙げられ、置換スチレンとしては、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられ、N-置換マレイミドとしては、N-イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-o-メチルフェニルマレイミドなどが挙げられる。
これら共重合成分は、複数で用いても良く、これら以外の成分を少量使用してもよい。また、耐酸化防止剤などの安定剤が透光性に悪影響しない量だけ含まれていても構わない。これらの重合体の中で、実質的にPMMAであることが、生産性、透光性、耐環境性などの点から最も好ましい。
(クラッド)
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバにおいて、最内層のクラッドは、その曲げ弾性率が20~70MPaであることが好ましく、さらに好ましくは25~50MPaであり、最も好ましくは30~40MPaである。なおここで、「クラッドの曲げ弾性率」の意味は、当該クラッドを構成する重合体の曲げ弾性率の意味であり、後述する方法に拠って求められる。なお、本発明において重合体の意味は、目的に応じて、重合体の混合物とする態様や他の成分を含有した態様(重合体組成物)とする意味を含む。
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバにおいて、最内層のクラッドは、その曲げ弾性率が20~70MPaであることが好ましく、さらに好ましくは25~50MPaであり、最も好ましくは30~40MPaである。なおここで、「クラッドの曲げ弾性率」の意味は、当該クラッドを構成する重合体の曲げ弾性率の意味であり、後述する方法に拠って求められる。なお、本発明において重合体の意味は、目的に応じて、重合体の混合物とする態様や他の成分を含有した態様(重合体組成物)とする意味を含む。
最内層のクラッドの曲げ弾性率が20MPa未満であると、クラッドが柔らかくなりすぎて、クラッドが傷つきやすくなる。また、70MPaより大きいと、クラッドが硬くなり、曲げ状態の透光損失が悪化する。
一般に、医療用途で使用されるプラスチック光ファイバは、体内の細部まで先端を精密に駆動させながら進むため、可とう性や繰り返し屈曲に対する耐久性を有することが非常に重要である。最内層のクラッドの曲げ弾性率が20~70MPaの範囲にあることで、それらの特性を満足することができる。なお、曲げ弾性率は、ASTM D790により、測定された値である。ASTM D790の代表的な試験片としては、サイズが127mm×13mm×3.1mmのものを使用する。ASTM D790の測定単位はkg/cm2とし、曲げ弾性率は、応力-曲げ変位曲線において応力印加初期のもっとも傾斜が大きくなった箇所での傾き、すなわち当該箇所での接線、から求める。
一般に、弗化ビニリデン系共重合体は、PMMAなどメチルメタクリレートを主成分とする重合体との相溶性が良いため、これらをクラッドに用いたPOF(プラスチックオプティカルファイバー)は、コアとの界面密着性が良く機械特性も良好である。しかしながら、それら弗化ビニリデン系共重合体はいずれも結晶性の重合体であるため、弗化ビニリデン組成が実質的に70~85モル%と限られた範囲内でしか無色透明性を示さない。また、弗化ビニリデン系共重合体をクラッドに用いたPMMA系のPOFの開口数は0.50前後であり、開口数アップは望めない。そこで、開口数の高いPOFを得るためには、さらに屈折率の低い弗素含有率の高いモノマーを共重合する必要がある。
そこで、本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバにおいて、最内層のクラッドは、少なくとも、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび弗化ビニリデンの3種を共重合成分とする共重合体からなることが好ましい。弗化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体は透明性が高く、さらにヘキサフルオロプロピレンを成分として含むことによって結晶性を抑えることができるので、可とう性を付与することができる。これにより、開口数が高く透光性に優れ、柔軟なプラスチック光ファイバを製造できる。
最内層のクラッドを構成する樹脂において弗化ビニリデンの含有率は、10~35重量%であることが好ましく、14~30重量%であることがより好ましく、14~25重量%であることがさらに好ましい。弗化ビニリデンが10重量%以上であると、コアとの界面密着性が良くなり、透光性が向上する。また、35重量%以下であると、弗素含有率の割合が増えるため、クラッドの屈折率が低くなり、高い開口数(高NAとも称する)が得られる。
最内層のクラッドは、上記3種の含フッ素モノマーを共重合成分とする共重合体からなることが好ましいが、さらにもう1種類の含フッ素モノマーを含めた、4種を共重合成分とする共重合体とすることで、透明性を維持しつつ、高NAで柔軟性を有したプラスチック光ファイバを得ることができる。
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバ最内層のクラッドは、最内層のクラッドを構成する樹脂を得るモノマー成分の総量を100重量%としたとき、ヘキサフルオロプロピレン 10~30重量%、テトラフルオロエチレン 45~75重量%、弗化ビニリデン 10~35重量%、パーフルオロアルキルビニルエーテル類 1~10重量%
、から得られる共重合体からなることが好ましい。また、弗素組成重量率は70~74%であることがさらに好ましい。この範囲の組成とすることで、プラスチック光ファイバの開口数(NA)を0.60~0.65とすることが簡便にでき、コア/クラッド界面での臨界角が大きいために曲げによる光量損失を小さくすることができる。また、PMMAを代表とするコア材料への密着性が良好であり、耐屈曲性などの機械特性、低粘着性、耐熱性を両立したバランス良いプラスチック光ファイバ特性が得られる。
、から得られる共重合体からなることが好ましい。また、弗素組成重量率は70~74%であることがさらに好ましい。この範囲の組成とすることで、プラスチック光ファイバの開口数(NA)を0.60~0.65とすることが簡便にでき、コア/クラッド界面での臨界角が大きいために曲げによる光量損失を小さくすることができる。また、PMMAを代表とするコア材料への密着性が良好であり、耐屈曲性などの機械特性、低粘着性、耐熱性を両立したバランス良いプラスチック光ファイバ特性が得られる。
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバの最内層のクラッドの厚みは2~20μmであることが好ましい。特に好ましいクラッドの厚みの範囲は、5~12μmである。クラッドの厚みを上記範囲内とすることで、プラスチック光ファイバとしての引張り強度が保たれ、可とう性も維持される。
また、前記クラッドの外側にさらに一層以上のクラッドを有しても良い。最表層のクラッドの特性としては、150~200℃の範囲に融点を有し、屈折率が1.37~1.41であり、比重が1.6~1.9の範囲であり、曲げ弾性率が、1000~1500MPaであり、シェアD硬度が50~90であることが好ましい。そのような重合体としては、カーボネート基を有する構造単位が共重合されたエチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体樹脂が挙げられる。また、最表層のクラッドは、最表層のクラッドを構成する樹脂を得るモノマー成分の総量を100重量%としたとき、エチレン10~35重量%、テトラフルオロエチレン45~69重量%、ヘキサフルオロプロピレン5~15重量%、及び、下記一般式(1)で示されるフルオロビニル化合物0.01~10重量%から得られる共重合体であることが好ましい。
CH2=CX1(CF2)nX2 (1)
(式中、X1はフッ素原子又は水素原子を示し、X2はフッ素原子、水素原子又は炭素原子を示し、nは1~10の整数である。)
より好ましくは、CH2=CF(CF2)3Hで示されるフルオロビニル化合物0.01~10重量%を共重合成分とする共重合体を含有することである。最表層のクラッドは好ましくは係る共重合体から実質的に構成されることが好ましい。なお、最表層のクラッドとは、クラッドを1層有する場合は当該クラッドを指し、クラッドを2層以上有する場合はその中で最も外側に位置するクラッドを指す。
CH2=CX1(CF2)nX2 (1)
(式中、X1はフッ素原子又は水素原子を示し、X2はフッ素原子、水素原子又は炭素原子を示し、nは1~10の整数である。)
より好ましくは、CH2=CF(CF2)3Hで示されるフルオロビニル化合物0.01~10重量%を共重合成分とする共重合体を含有することである。最表層のクラッドは好ましくは係る共重合体から実質的に構成されることが好ましい。なお、最表層のクラッドとは、クラッドを1層有する場合は当該クラッドを指し、クラッドを2層以上有する場合はその中で最も外側に位置するクラッドを指す。
上記の最表層のクラッドにおいて、エチレンが10重量%未満の場合、成形安定性が低下する場合がある。35重量%を超える場合、結晶性が高くなり、透明性が低下し、伝送特性が低下する場合がある。エチレンの割合は11~30重量%が好ましい。テトラフルオロエチレンが45重量%未満の場合、成形安定性が低下する場合がある。69重量%を超える場合、結晶性が高くなり、透明性が低下し、伝送特性が低下する場合がある。また、融点が高くなり、光ファイバの紡糸温度付近での流動性が低下する場合がある。ヘキサフルオロプロピレンが5重量%未満の場合、柔軟性が低下し、曲げ損失が低下する場合がある。15重量%を超える場合、粘着性が増すため、加工性が低下する場合がある。
特に、コアのメチルメタクリレートを主成分とする(共)重合体への密着性や耐熱性に優れた特性を付与するために、上記の式(1)で示されるフルオロビニル化合物を0.01~10重量%含有することが望ましい。一方、他の共重合成分の含有量との関係から、その含有量は10重量%以下であることが望ましい。
また、最表層のクラッドの共重合体が、ポリマー鎖末端または側鎖にカルボニル基含有官能基を有する共重合体であると、クラッドが1層の場合には、コアのメチルメタクリレートを主成分とする(共)重合体や被覆層との密着性が更に向上し、また、2層以上のクラッドにおける最表層である場合は被覆層との密着性が更に向上する。
ここで、カルボニル基含有官能基とは、一般に-OC(=O)O-の結合を有するカーボネート基や-COY[Yはハロゲン元素]の構造を有するカルボン酸ハライド基であり、特に含フッ素カーボネート基(RF-O-C(=O)-RF’)、またはカルボン酸フルオライド基(-C(=O)F)が好ましい。RFやRF’はフッ素基が含まれる官能基、例えばフッ化アルキル基やフッ化ビニリデン基などを表している。
(潤滑層)
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバは、ファイバ側面に潤滑層を有する。ここで、潤滑層とは摩擦や摩耗を低減させる組成を有する層のことであり、即ち最外クラッドポリマーより小さな動摩擦係数を有する層である。動摩擦係数はJIS K7218(1986年制定、A法)により測定することができる。外径25.6mm、内径20mm、長さ15mmの中空円筒試験片を使用し、相手材は炭素鋼鋼材S45Cとする。各層から樹脂を採取して直接曲げ弾性率を測定することが困難な場合、クラッドや潤滑層の組成が既知であれば、同組成の試験片を作製して動摩擦係数を測定することができる。また、潤滑層が液体や粒子を分散したものの場合、最外層クラッドポリマーの試験片の測定面にそれらを塗布して測定する。潤滑層は光の反射を要しないため必ずしも透明である必要はなく、また、クラッドに対し十分な密着性を持つ必要もない。側面、即ち機器と接する面に潤滑層を有することで、ファイバの挿入や取り出しをスムーズに行うことができる。潤滑層としてはシリコーン、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの潤滑成分を挙げることができるが、動摩擦係数が低く加工性が高いことからフッ素樹脂を含有することが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有することがより好ましい。PTFEの重量平均分子量は1万以上50万以下であることが好ましい。1万以上であることで必要な潤滑性を得ることができ、50万以下であることでPTFEの繊維化を防ぐことができる。より好ましくは30万以下、更に好ましくは10万以下である。潤滑層中のPTFEの割合は90重量%以上が好ましい。90%以上であることでPTFE特有の滑り性を十分に確保することができる。潤滑層の層厚は、潤滑作用を十分に得るため、かつムラがないよう均一に1μm以上10μm以下であることが好ましい。1μm以上であることで十分な潤滑作用を得ることができ、10μm以下であることでファイバ径に対するコア径の割合を高く保ち、光の照射量を確保することができる。
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバは、ファイバ側面に潤滑層を有する。ここで、潤滑層とは摩擦や摩耗を低減させる組成を有する層のことであり、即ち最外クラッドポリマーより小さな動摩擦係数を有する層である。動摩擦係数はJIS K7218(1986年制定、A法)により測定することができる。外径25.6mm、内径20mm、長さ15mmの中空円筒試験片を使用し、相手材は炭素鋼鋼材S45Cとする。各層から樹脂を採取して直接曲げ弾性率を測定することが困難な場合、クラッドや潤滑層の組成が既知であれば、同組成の試験片を作製して動摩擦係数を測定することができる。また、潤滑層が液体や粒子を分散したものの場合、最外層クラッドポリマーの試験片の測定面にそれらを塗布して測定する。潤滑層は光の反射を要しないため必ずしも透明である必要はなく、また、クラッドに対し十分な密着性を持つ必要もない。側面、即ち機器と接する面に潤滑層を有することで、ファイバの挿入や取り出しをスムーズに行うことができる。潤滑層としてはシリコーン、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの潤滑成分を挙げることができるが、動摩擦係数が低く加工性が高いことからフッ素樹脂を含有することが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有することがより好ましい。PTFEの重量平均分子量は1万以上50万以下であることが好ましい。1万以上であることで必要な潤滑性を得ることができ、50万以下であることでPTFEの繊維化を防ぐことができる。より好ましくは30万以下、更に好ましくは10万以下である。潤滑層中のPTFEの割合は90重量%以上が好ましい。90%以上であることでPTFE特有の滑り性を十分に確保することができる。潤滑層の層厚は、潤滑作用を十分に得るため、かつムラがないよう均一に1μm以上10μm以下であることが好ましい。1μm以上であることで十分な潤滑作用を得ることができ、10μm以下であることでファイバ径に対するコア径の割合を高く保ち、光の照射量を確保することができる。
潤滑層の形成は一般的な塗料の被膜方法と同様にして実施することができる。例えば、PTFEをトルエンやジメチルエーテル等の有機溶剤に分散させ、分散液を吹き付け被膜した後、有機溶剤を揮発させることで潤滑層が形成される。例として、“ニューTFEコート”(ファインケミカルジャパン株式会社製)等のPTFEが有機溶剤に分散したスプレーを用いることで簡便に被膜形成することができる。
本発明の実施の形態に係るプラスチック光ファイバは一般的な製造法と同様にして製造することができる。例えば、コア材とクラッド材とを加熱溶融状態下で、同心円状複合用の複合口金から吐出してコア/クラッドの2層芯鞘構造を形成させる複合紡糸法が好ましく用いられる。続いて、機械特性を向上させる目的で1.2~3倍程度の延伸処理が一般的に行なわれプラスチック光ファイバとなる。このプラスチック光ファイバの直径は通常0.1~3mm程度であり、目的に応じて適宜選択すればよいが、取扱性などの面から0.25~2.0mmのものが好ましい。0.25mm以上であることで必要な光量を確保すると共に機械的強度を確保し、2.0mm以下であることで屈曲性を確保すると共に、生体への負担を減らすことができる。
本発明のプラスチック光ファイバは、高い開口率と適度な柔軟性、また、充分な滑り性を有していることから内視鏡用途、眼科手術用途、カテーテルの用途に好適である。
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。なお、クラッド材料および作製したプラスチック光ファイバの評価は以下の方法で行った。
組成比:固体19F NMR(Bruker社製AVANCE NEO 400)を用いて求めた。
曲げ弾性率:ASTM D790の測定方法を用いた。試験片のサイズは、127mm×13mm×3.1mmとした。ASTM D790の測定単位はkg/cm2とし、曲げ弾性率は、応力-曲げ変位曲線において応力印加初期のもっとも傾斜が大きくなった箇所での傾き、すなわち当該箇所での接線、から求めた。
連続屈曲破断回数:ファイバの一端に500gの荷重をかけ、直径30mmφのマンドレルで支持し、その支持点を中心にファイバの他端を角度90°で連続的に屈曲させて、ファイバが切断するまでの回数を測定した(n=5の平均値)。
滑り性:光ファイバを内径1.1mm、長さ1mのポリ塩化ビニル製チューブに挿入し、下記基準に基づいて表面の滑り状態を評価した。なお、ファイバ径1.5mmのものは内径1.6mmの、ファイバ径2.5mmのものは内径2.6mmのチューブに挿入した。
3:挿入に抵抗が無い
2:挿入にわずかに抵抗がある
1:挿入に抵抗がある。
組成比:固体19F NMR(Bruker社製AVANCE NEO 400)を用いて求めた。
曲げ弾性率:ASTM D790の測定方法を用いた。試験片のサイズは、127mm×13mm×3.1mmとした。ASTM D790の測定単位はkg/cm2とし、曲げ弾性率は、応力-曲げ変位曲線において応力印加初期のもっとも傾斜が大きくなった箇所での傾き、すなわち当該箇所での接線、から求めた。
連続屈曲破断回数:ファイバの一端に500gの荷重をかけ、直径30mmφのマンドレルで支持し、その支持点を中心にファイバの他端を角度90°で連続的に屈曲させて、ファイバが切断するまでの回数を測定した(n=5の平均値)。
滑り性:光ファイバを内径1.1mm、長さ1mのポリ塩化ビニル製チューブに挿入し、下記基準に基づいて表面の滑り状態を評価した。なお、ファイバ径1.5mmのものは内径1.6mmの、ファイバ径2.5mmのものは内径2.6mmのチューブに挿入した。
3:挿入に抵抗が無い
2:挿入にわずかに抵抗がある
1:挿入に抵抗がある。
[実施例1]
第1のクラッド材として表1の共重合比の弗化ビニリデン(2F)/テトラフルオロエチレン(4F)/ヘキサフルオロプロピレン(6F)/ヘプタフルオロプロピルビニルエーテル共重合体(屈折率1.360、弗素含有率71.7%)を、第2のクラッド材として、表1の共重合比のエチレン/テトラフルオロエチレン(4F)/ヘキサフルオロプロピレン(6F)/フルオロビニル化合物の共重合体(カーボネート基含有)(屈折率1.385)を複合紡糸機に供給した。複合紡糸機に供給した。さらに、連続魂状重合によって製造したPMMA(屈折率1.492)をコア材として複合紡糸機に供給して、240℃にてコア、クラッドを芯鞘複合溶融紡糸し、ファイバ径1000μm(コア径980μm、第1クラッド厚5.0μm、第2クラッド厚5.0μm)のベアファイバを得た。得られたファイバに対し、PTFEが有機溶剤に分散したニューTFEコート(ファインケミカルジャパン株式会社製)を膜厚が5μmとなるようにファイバ全体にスプレー噴霧し、室温乾燥により有機溶剤を除去した。
第1のクラッド材として表1の共重合比の弗化ビニリデン(2F)/テトラフルオロエチレン(4F)/ヘキサフルオロプロピレン(6F)/ヘプタフルオロプロピルビニルエーテル共重合体(屈折率1.360、弗素含有率71.7%)を、第2のクラッド材として、表1の共重合比のエチレン/テトラフルオロエチレン(4F)/ヘキサフルオロプロピレン(6F)/フルオロビニル化合物の共重合体(カーボネート基含有)(屈折率1.385)を複合紡糸機に供給した。複合紡糸機に供給した。さらに、連続魂状重合によって製造したPMMA(屈折率1.492)をコア材として複合紡糸機に供給して、240℃にてコア、クラッドを芯鞘複合溶融紡糸し、ファイバ径1000μm(コア径980μm、第1クラッド厚5.0μm、第2クラッド厚5.0μm)のベアファイバを得た。得られたファイバに対し、PTFEが有機溶剤に分散したニューTFEコート(ファインケミカルジャパン株式会社製)を膜厚が5μmとなるようにファイバ全体にスプレー噴霧し、室温乾燥により有機溶剤を除去した。
こうして得られたPOFを前記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。表1からわかるように、高開口数であり、滑り性、曲げ特性が良好であり、プラスチック光ファイバとして好適なものであった。
[実施例2,3]
実施例1に対しクラッド厚は変更せず、コア径を変更し表1の通りにファイバ径を調整した以外は実施例1と同様にしてPOFを得た。比較例1のファイバは破断屈曲試験に耐えうる強度がなく、また、径が細すぎるためカテーテルとの滑り性評価は行えなかった。
実施例1に対しクラッド厚は変更せず、コア径を変更し表1の通りにファイバ径を調整した以外は実施例1と同様にしてPOFを得た。比較例1のファイバは破断屈曲試験に耐えうる強度がなく、また、径が細すぎるためカテーテルとの滑り性評価は行えなかった。
[実施例4,5]
表1のとおりに材料を変更した以外は実施例1と同様にしてPOFを得た。これらのPOFを使用して実施例1と同じ評価を行い、その結果を表1に示した。
表1のとおりに材料を変更した以外は実施例1と同様にしてPOFを得た。これらのPOFを使用して実施例1と同じ評価を行い、その結果を表1に示した。
[比較例1~3]
表1の通りに材料およびコア径を変更し、潤滑層を塗布しない以外は実施例1と同様にしてPOFを得た。これらのPOFを使用して実施例1と同じ評価を行い、その結果を表1に示した。
表1の通りに材料およびコア径を変更し、潤滑層を塗布しない以外は実施例1と同様にしてPOFを得た。これらのPOFを使用して実施例1と同じ評価を行い、その結果を表1に示した。
Claims (9)
- コアと少なくとも1層のクラッドを有するプラスチック光ファイバであって、ファイバ直径が0.25mm以上2.0mm以下であり、ファイバ側面に潤滑層を有することを特徴とするプラスチック光ファイバ。
- 前記潤滑層がPTFEを含有することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック光ファイバ。
- 前記光ファイバの開口数が0.60以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック光ファイバ。
- 前記光ファイバの最内層クラッドの曲げ弾性率が20~70MPaであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のプラスチック光ファイバ。
- 前記光ファイバの最内層クラッドが、ヘキサフルオロプロピレン10~30重量%、テトラフルオロエチレン45~75重量%、弗化ビニリデン10~35重量%およびパーフルオロアルキルビニルエーテル類1~10重量%、を共重合成分とする共重合体からなることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のプラスチック光ファイバ。
- コアと第1クラッドと第2クラッドとをこの順に有するプラスチック光ファイバであって、第2クラッドが、エチレン10~35重量%、テトラフルオロエチレン45~69重量%
ヘキサフルオロプロピレン5~15重量%および下記一般式(1)で示されるフルオロビニル化合物0.01~10重量%を共重合成分とする共重合体からなることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のプラスチック光ファイバ。
CH2=CX1(CF2)nX2 (1)
(式中、X1はフッ素原子又は水素原子を示し、X2はフッ素原子、水素原子又は炭素原子を示し、nは1~10の整数である。) - 請求項1~6のいずれかに記載の光ファイバを有する生体内照明用機器。
- 請求項1~6いずれかに記載の光ファイバを眼科手術用照明として有する眼科手術照明用プローブ。
- 請求項1~6のいずれかに記載の光ファイバをカテーテル用照明または光センサーとして有する血管用カテーテル。
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JP2021064545A JP2022160046A (ja) | 2021-04-06 | 2021-04-06 | プラスチック光ファイバ並びにこれを用いた生体内照明用機器、眼科手術照明用プローブおよび血管用カテーテル。 |
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