JP2022156932A - ポリイミド及びポリイミド前駆体樹脂 - Google Patents
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Abstract
【課題】黄色度及び濁度を共に一定水準以下の低い値とすることが可能であるとともに、耐熱性をより高いものとすることが可能なポリイミドを提供すること。【解決手段】下記一般式(1):JPEG2022156932000016.jpg4570[式(1)中、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。]で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重縮合物からなることを特徴とするポリイミド。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリイミド及びポリイミド前駆体樹脂に関する。
従来より、高い耐熱性を有しかつ軽くて柔軟な素材としてポリイミドが着目されており、様々な種類のポリイミドが研究されてきた。
例えば、特開2015-7219号公報(特許文献1)には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族系テトラカルボン酸二無水物と、特定の芳香族系ジアミン化合物とを反応させて得られる繰り返し単位を有する、芳香族系のポリイミド(芳香族ポリイミド)が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されているような従来の芳香族ポリイミドは、高い耐熱性を有するものの、黄色度(YI)の値が大きく褐色を呈するものとなっていた。また、特許文献1に記載されているような従来の芳香族ポリイミドは、濁度(HAZE)の値を低い値とするといった点においても必ずしも十分なものではなかった。そのため、特許文献1に記載されているような従来の芳香族ポリイミドは、例えば、透明性が要求されるような用途に応用することは困難であった。このように、従来の芳香族ポリイミドは、黄色度(YI)と濁度(HAZE)を共に一定の水準以下(例えばYIが20以下かつHAZEが15以下)とするといった点で問題があった。
また、国際公開第2017/98936号(特許文献2)には、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸-3,4:3’,4’-二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとのイミド化物であるポリイミド(脂環式ポリイミド)が開示されている。しかしながら、このような脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドは、黄色度(YI)や濁度(HAZE)を一定の水準以下とすることは可能であるものの、耐熱性が低いものとなってしまい、耐熱性が必要となるような用途に応用することができなかった。このように、特許文献2に記載のような従来の脂環式ポリイミドは、耐熱性の点で問題があった。
このような状況の下、近年では、従来のポリイミドの問題点を解消すべく、様々な研究が進められている。例えば、国際公開第2015/163314号(特許文献3)においては、ノルボルナン環と芳香環とを骨格構造中に有する特定の一般式で表されるテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを原料として得られる、ポリイミドが開示されている。このような特許文献3に記載のポリイミドは、黄色度(YI)やHAZEを一定の水準(特定の基準値)以下とすることが可能なものであるとともに、優れた耐熱性を有するものとなっていた。なお、用途によって特に要求される特性等が異なることから、ポリイミドの分野においては、黄色度及び濁度を一定水準以下とすることが可能となるようなポリイミドであって、特許文献3に記載のポリイミドと比較した場合においても一部の特性がより優れたものとなるような新たな特性を有するポリイミドの出現が望まれている。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、黄色度及び濁度を共に一定水準以下の低い値とすることが可能であるとともに、耐熱性をより高いものとすることが可能なポリイミド、及び、そのポリイミドを製造するために好適に使用することが可能なポリイミド前駆体樹脂を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリイミドを、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重縮合物とすることにより、驚くべきことに、得られるポリイミドの黄色度及び濁度を共に一定水準以下の低い値とすること(YIを従来の芳香族系テトラカルボン酸二無水物では達成できないような20以下の値としつつHAZEを15以下の値とすること)を可能としながら、前記特許文献3に記載のポリイミドと比較した場合においても、より高い耐熱性を達成することが可能となって、ポリイミドの耐熱性を更に高い水準のものとすることが可能となることを見出すとともに、前記重縮合物よりなるポリイミドによって、前記特許文献3に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いてポリイミドを製造した場合と比較した場合に、線膨張係数をより低い値とすることも可能となることも見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリイミドは、下記一般式(1):
[式(1)中、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重縮合物からなることを特徴とするものである。
で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重縮合物からなることを特徴とするものである。
また、本発明のポリアミド酸は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重付加物であることを特徴とするものである。
本発明によれば、黄色度及び濁度を共に一定水準以下の低い値とすることが可能であるとともに、耐熱性をより高いものとすることが可能なポリイミド、及び、そのポリイミドを製造するために好適に使用することが可能なポリイミド前駆体樹脂を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断らない限り、数値X及びYについて「X~Y」という表記は「X以上Y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Xにも適用されるものとする。
<ポリイミド>
本発明のポリイミドは、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重縮合物からなることを特徴とするものである。
本発明のポリイミドは、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重縮合物からなることを特徴とするものである。
なお、一般的に、ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体と、ジアミンとを開環付加反応させることにより、これらの重付加物(付加重合体、開環重付加体)であるポリアミド酸を形成し、その後、得られたポリアミド酸を閉環縮合(脱水閉環:分子内縮合)させることにより得られるものであることが知られている。このように、ポリイミドは、一般に、上述のような反応により得られる重合体であることから、前記モノマー(A)とモノマー(B)との重縮合(前記重付加及び前記閉環縮合)により得られる重縮合物は、ポリイミドであるといえる。以下、先ず、このような重縮合物を形成するために利用される、モノマー(A)と、モノマー(B)とについて分けて説明する。
〈モノマー(A)〉
本発明にかかるモノマー(A)は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むものである。ここで、先ず、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物について説明する。
本発明にかかるモノマー(A)は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むものである。ここで、先ず、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物について説明する。
前記一般式(1)中のR1~R5は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。一般式(1)中のR1~R5として選択され得る炭化水素基は、炭素数1~20(より好ましくは1~10、更に好ましくは1~5、特に好ましくは1~3)のものであればよい。このような炭素数を前記上限以下とした場合には、前記上限を超えた場合と比較して、製造時の還流条件の温度を低くすることが可能となり、これに起因して製造時に分解等の副反応を低減させることが可能となって、得られるテトラカルボン酸ニ無水物を用いて形成されるポリイミドの透明性をより向上させることが可能となるとともに、得られるテトラカルボン酸ニ無水物に含有される残存溶媒量をより低減させることも可能となる。また、このような炭化水素基は、飽和炭化水素基であっても、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。さらに、前記炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれのものであってもよい。このような炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のような直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロへキシル基等の環状のアルキル基;ベンジル基等の芳香族炭化水素基;等を例示できる。このような一般式(1)中のR1~R5として選択され得る炭化水素基は、アルキル基であることがより好ましい。また、このようなアルキル基としては、精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
また、前記一般式(1)中のR1~R5としては、より高度な耐熱性が得られること、原料の入手が容易であること、精製がより容易であること、等といった観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
ここで、このような一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を製造するための方法としては、例えば、ギ酸、2-プロパノール及び水素からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤、塩基、並びに、パラジウム触媒の存在下、下記一般式(2):
[式(2)中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示し、
R6は、それぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示し、
Xはハロゲン原子を示す。]
で表される芳香族化合物と、下記一般式(3):
R6は、それぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示し、
Xはハロゲン原子を示す。]
で表される芳香族化合物と、下記一般式(3):
[式(3)中、R4~R5は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示し、
R7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される脂環式化合物とを反応させることにより、下記一般式(4):
R7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される脂環式化合物とを反応させることにより、下記一般式(4):
[式(4)中、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示し、
R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~10の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表されるカルボニル化合物を得る工程(I)と、
前記一般式(4)で表されるカルボニル化合物を、酸触媒を用いて(酸触媒の存在下で)、炭素数1~5のカルボン酸中において加熱することにより、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を得る工程(II)と、
を含む方法を採用することが好ましい。以下、このような工程(I)及び(II)について簡単に説明する。
R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~10の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表されるカルボニル化合物を得る工程(I)と、
前記一般式(4)で表されるカルボニル化合物を、酸触媒を用いて(酸触媒の存在下で)、炭素数1~5のカルボン酸中において加熱することにより、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を得る工程(II)と、
を含む方法を採用することが好ましい。以下、このような工程(I)及び(II)について簡単に説明する。
〈工程(I)について〉
工程(I)は、ギ酸、2-プロパノール及び水素からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤、塩基、並びに、パラジウム触媒の存在下、前記一般式(2)で表される芳香族化合物と、前記一般式(3)で表される脂環式化合物とを反応させることにより、前記一般式(4)で表されるカルボニル化合物を得る工程である。
工程(I)は、ギ酸、2-プロパノール及び水素からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤、塩基、並びに、パラジウム触媒の存在下、前記一般式(2)で表される芳香族化合物と、前記一般式(3)で表される脂環式化合物とを反応させることにより、前記一般式(4)で表されるカルボニル化合物を得る工程である。
前記工程(I)においては、前記一般式(2)で表される芳香族化合物を用いる。このような一般式(2)中のR1~R3はそれぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。このような一般式(2)中のR1~R3はそれぞれ、前記一般式(1)中のR1~R3と同義であり、その好適なものも前述の一般式(1)中のR1~R3と同様である。
また、前記一般式(2)中のR6は、それぞれ独立に、炭素数1~10(より好ましくは1~5、特に好ましくは1~3)の炭化水素基よりなる群から選択される1種である。このような炭素数を前記上限以下とした場合には、前記上限を超えた場合と比較して合成と精製を容易にすることが可能となる。また、このような炭化水素基は、飽和炭化水素基であっても、あるいは、不飽和炭化水素基であってもよい。さらに、前記炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれのものであってもよい。このようなR6として選択され得る炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のような直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロへキシル基等の環状のアルキル基;ベンジル基等の芳香族炭化水素基;等を例示できる。また、このような一般式(2)中のR6として選択され得る炭化水素基は、精製の容易さの観点から、アルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
また、前記一般式(2)中のXはハロゲン原子である。前記一般式(2)中のXをハロゲン原子とすることで、前記一般式(3)で表される脂環式化合物との間で効率よく還元的ヘック反応を進行させることが可能となる。また、前記一般式(2)中のXとして利用されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子がより好ましく、臭素原子、ヨウ素原子が特に好ましい。
また、このような芳香族化合物としては、特に制限されないが、4-ブロモフタル酸ジメチル、4-ブロモフタル酸ジエチル、4-ヨードフタル酸ジメチル、4-ヨードフタル酸ジエチル等を例示できる。また、このような一般式(2)で表される芳香族化合物を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。なお、このような芳香族化合物としては、市販のものを適宜利用してもよい。
工程(I)においては、前記一般式(3)で表される脂環式化合物を用いる。前記一般式(3)中のR4~R5は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。このような一般式(3)中のR4~R5はそれぞれ、前記一般式(1)中のR4~R5と同義であり、その好適なものも前述の一般式(1)中のR4~R5と同様である。
前記一般式(3)中のR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。このような一般式(3)中のR7として選択され得る炭化水素基はそれぞれ、前記一般式(2)中のR6として選択され得る炭化水素基と同義である(その好適なものも前記一般式(2)中のR6として選択され得る炭化水素基と同様である)。
前記一般式(3)で表される脂環式化合物としては、例えば、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸ジメチル(ナジック酸ジメチル)、5-メチルナジック酸ジメチル、5,6-ジメチルナジック酸ジメチル等が挙げられる。
また、前記工程(I)において、前記還元剤としては、ギ酸、2-プロパノール及び水素からなる群から選択される少なくとも1種を用いる。このような還元剤を用いることにより、効率よく還元的ヘック反応を進行させることが可能となり、十分に効率よく目的生成物を得ることが可能となる。このような還元剤(水素源)としては、反応効率の観点から、ギ酸が好ましい。
また、前記工程(I)に用いる前記塩基としては、特に制限されず、いわゆる還元的ヘック反応に用いることが可能な公知の塩基(例えば、国際公開第2015/163314号の段落[0088]に例示されているもの等)を適宜利用することができる。このような塩基としては反応収率向上の観点から、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムがより好ましく、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンが更に好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。なお、このような塩基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて利用することができる。
さらに、前記工程(I)に用いる前記パラジウム触媒としては、特に制限されず、いわゆる還元的ヘック反応に用いることが可能な公知のパラジウム触媒(例えば、国際公開第2015/163314号の段落[0085]~段落[0087]に例示されているもの等)を適宜利用することができる。このようなパラジウム触媒としては、酢酸パラジウムに配位子(他の錯イオンや他の分子)が更に結合した錯体を用いることが好ましく、酢酸パラジウムにホスフィン配位子が結合した錯体(酢酸パラジウムとホスフィン化合物とから合成できるもの)がより好ましい。このようなホスフィン化合物(酢酸パラジウムにホスフィン配位子として結合する化合物)としては、特に制限されないが、中でも、トリ(o-トリル)ホスフィンがより好ましい。
また、本発明においては、前記還元剤、前記塩基、並びに、前記パラジウム触媒の存在下、前記一般式(2)で表される芳香族化合物と、前記一般式(3)で表される脂環式化合物とを反応させる。このような反応(前記芳香族化合物と前記脂環式化合物との反応)は、前記還元剤、前記塩基、並びに、前記パラジウム触媒の存在する溶媒中で行うことが好ましい。このような溶媒としては、公知の溶媒(例えば、アミド系溶媒等)を適宜用いることでき、特に制限されないが、収率がより向上することから、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドを用いることがより好ましい。このような溶媒は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を混合して利用してもよい。
また、このような反応を行うために、前記溶媒と、前記還元剤と、前記塩基と、前記パラジウム触媒と、前記芳香族化合物と、前記脂環式化合物とを含む混合液を用いることが好ましい。このような混合液を用いることで、混合液中に前記還元剤と、前記塩基と、パラジウム触媒とが含まれることから、これらの存在下において反応を進行せしめることが可能となる。
また、このような反応に利用する前記脂環式化合物の量は特に制限されないが、前記芳香族化合物1モルに対して0.5~10モルとすることが好ましい。さらに、前述のように溶媒中で反応を進行せしめるために前記混合液を利用する場合、前記混合液中の前記芳香族化合物及び前記脂環式化合物の総量は、1~80質量%とすることが好ましい。また、前記混合液を利用する場合、前記混合液中のパラジウム触媒の含有量は特に制限されないが、前記混合液中のパラジウムのモル量が、前記脂環式化合物のモル量の0.00001~0.2倍モルとなる量とすることが好ましい。さらに、このような混合液中の塩基の含有量としては、前記脂環式化合物のモル量に対して1.0~5.0倍モルとなる量とすることが好ましい。また、前記混合液中の前記還元剤の含有量としては特に制限されないが、前記還元剤のモル量が、前記脂環式化合物のモル量の1.0~5.0倍モルとなる量とすることが好ましい。
また、このような反応に利用する反応装置としては特に制限されず、前記還元剤と、前記塩基と、前記パラジウム触媒と、前記芳香族化合物と、前記脂環式化合物とを導入することが可能な容器(例えば、ガラスフラスコやグラスライニングの釜等)を適宜利用できる。また、前記反応を行う際の雰囲気ガスの条件としては、原料及び生成物の安定性の観点から、不活性ガス雰囲気であることが好ましい。このような不活性ガスとしては、特に制限されず、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
また、このような反応の際の反応温度は、用いる原料化合物やパラジウム触媒の種類によっても異なるものであり、特に制限されないが、より高い反応効率が得られるといった観点からは、65~85℃とすることがより好ましく、70~80℃とすることが更に好ましい。また、このような反応の反応時間は、0.5~20時間(より好ましくは2~15時間)とすることが好ましい。
このようにして、前記芳香族化合物と前記脂環式化合物とを反応させることにより、前記一般式(4)で表されるカルボニル化合物を得ることが可能となる。なお、前記一般式(4)中のR1~R5は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示し、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~10の炭化水素基よりなる群から選択される1種を示す。このような一般式(4)中のR1~R5はそれぞれ、前記一般式(1)中のR1~R5と同義であり、その好適なものも前述の一般式(1)中のR1~R5と同様である。前記一般式(4)中のR6として選択され得る炭化水素基は、前記一般式(2)中のR6と同義であり(その好適なものも同義である)、前記一般式(4)中のR7として選択され得る炭化水素基は、前記一般式(3)中のR7と同義である(その好適なものも同義である)。
なお、工程(I)の反応により得られる前記カルボニル化合物は、式(4)中のR6及びR7が水素原子以外の基であるエステル化合物となるが、このようにしてエステル化合物を得た後、R6及びR7を含むエステル基の部分がカルボン酸基に変換されるように公知の方法(例えば、低級カルボン酸中で加熱する方法)により反応させることにより、R6及びR7が水素原子である前記一般式(4)で表されるカルボニル化合物を得ることも可能である。
〈工程(II)について〉
工程(II)は、前述の通り、前記一般式(4)で表されるカルボニル化合物を、酸触媒を用いて(酸触媒の存在下で)、炭素数1~5のカルボン酸中において加熱することにより、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を得る工程である。
工程(II)は、前述の通り、前記一般式(4)で表されるカルボニル化合物を、酸触媒を用いて(酸触媒の存在下で)、炭素数1~5のカルボン酸中において加熱することにより、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を得る工程である。
工程(II)で用いる前記酸触媒としては特に制限されず、隣接する2つの炭素原子にそれぞれ結合したエステル基又はカルボン酸の構造部分(ジエステル又はジカルボン酸の部分)を酸無水物とする反応(以下、場合により、単に「酸無水物化反応」と称する)において利用することが可能な公知のもの(例えば、国際公開第2015/163314号の段落[0140]に例示されている酸触媒(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸等)や、その他公知の酸触媒(例えば塩酸、硫酸等))を適宜利用できる。また、このような酸触媒としては、反応収率向上の観点から、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロエタンスルホン酸がより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸が特に好ましい。なお、このような酸触媒としては、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、前記酸触媒の使用量としては、特に制限されないが、前記カルボニル化合物の使用量1モルに対して酸触媒により供与される水素イオン(H+)のモル量が0.005~0.2モル(より好ましくは0.01~0.1モル)となるような量とすることが好ましい。また、酸触媒の濃度は前記カルボニル化合物の使用量の総モル量に対して0.50~5.0モル%の範囲とすることが好ましい。
また、工程(II)においては、炭素数1~5のカルボン酸を用いる。このような炭素数1~5のカルボン酸を用いることで、効率よくテトラカルボン酸二無水物を製造することが可能となる。また、このような炭素数1~5のカルボン酸の中でも、製造及び精製の容易さの観点から、ギ酸、酢酸、プロピオン酸が好ましく、酢酸がより好ましい。このようなカルボン酸は1種を単独で或は2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、工程(II)においては、前記カルボニル化合物を、前記酸触媒を用いて、前記炭素数1~5のカルボン酸中において加熱するが、炭素数1~5のカルボン酸中における加熱が可能となるように、前記カルボン酸、前記テトラエステル化合物及び前記酸触媒の混合物を調製することが好ましい。このような混合物の調製方法は特に制限されず、加熱工程に利用する装置などに応じて適宜調製すればよく、例えば、同一の容器内にこれらを添加(導入)することで調製してもよい。また、このような混合物を調製する際には、前記炭素数1~5のカルボン酸に更に他の溶剤を添加して利用してもよい。このような他の溶剤としては、酸無水物化反応に利用可能な公知のもの(例えば、国際公開第2015/163314号の段落[0146]に例示されている溶剤(例えば、酢酸エチル等のエステル系溶媒や、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒等))を適宜利用することができる。
また、前記カルボニル化合物がエステル化合物である場合(前記一般式(4)中のR6及びR7がいずれも炭化水素基である場合)、酸触媒を添加する前(前記混合物を調製する前)に、予め炭素数1~5のカルボン酸中(なお、場合により炭素数1~5のカルボン酸と他の溶剤との混合物中)において前記カルボニル化合物を加熱して、前記カルボニル化合物中のR6及びR7を水素原子に置換してもよい。
また、前記カルボニル化合物を、前記酸触媒を用いて、前記炭素数1~5のカルボン酸中において加熱する工程(以下、場合により単に「加熱工程」と称する)に際しては、反応時に生成された水及び炭素数1~5のカルボン酸のエステル化合物(例えば酢酸エチル等)を蒸留で系外に除去しながら反応させることが好ましい。また、前記加熱工程に際しては、前記炭素数1~5のカルボン酸とともに無水酢酸を利用して、反応時に生成された水の除去を行ってもよい。なお、前記加熱工程においては、より収率が向上するといった観点からは、水及び前記エステル化合物を蒸留する工程を採用することが好ましい。また、このような加熱工程は、加熱により還流させつつ、水及び前記エステル化合物を蒸留する工程とすることが好ましい。
また、前記加熱工程においては、加熱温度を80~180℃とすることが好ましく、80~150℃とすることがより好ましく、100~140℃とすることが更に好ましく、110~130℃とすることが特に好ましい。また、このような加熱温度は、上記温度条件の範囲内において、前記酸触媒の沸点よりも低い温度に設定することが好ましい。また、加熱時間も特に制限されないが、0.5~100時間とすることが好ましく、1~50時間とすることがより好ましい。このような条件を満たすように加熱温度や加熱時間を設定することにより、より効率よく生成物を得ることができる。
また、前記加熱工程において、圧力条件(反応時の圧力条件)は特に制限されず、常圧下であっても、加圧条件下であっても或は減圧条件下であってもよく、いずれの条件下であっても反応を進行させることが可能であり、還流を採用する場合には溶媒となる炭素数1~5のカルボン酸の蒸気等による加圧条件下で反応を行ってもよい。また、前記加熱工程に際して雰囲気ガスも特に制限されず、例えば、空気であっても不活性ガス(窒素、アルゴン等)であってもよい。このようにして、前記加熱工程を施すことにより、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を得ることが可能となる。以上、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を製造するための方法について説明したが、以下、モノマー(A)について更に説明する。
本発明にかかるモノマー(A)は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むものである。ここで、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の誘導体としては、特に制限されないが、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の変性物であるジエステルジカルボン酸、及び、ジエステルジカルボン酸ジクロライドがより好ましい。すなわち、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の誘導体を利用する場合、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を、対応するジエステルジカルボン酸、または、ジエステルジカルボン酸ジクロライドに変性してから使用することが好ましい。このような誘導体の調製方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の誘導体として好適なジエステルジカルボン酸ジクロライドを調製する場合、例えば、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を任意のアルコールと反応させることで、ジエステルジカルボン酸を得た後に、塩素化試薬(チオニルクロライド、オキサリルクロライドなど)と反応させることで、対応するジエステルジカルボン酸ジクロライドを得る方法等を採用することができる。
また、本発明にかかるモノマー(A)は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでいればよく、他の化合物(モノマー(B)と反応させることでポリイミドを製造することが可能な公知の他のモノマー化合物)を更に含んでいてもよい。このように、モノマー(A)が他の化合物を更に含む場合、モノマー(A)は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とともに、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の「他のテトラカルボン酸二無水物」及び/又はその誘導体を更に含むことが好ましい。このように、モノマー(A)は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とともに、他のテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体を含む、テトラカルボン酸二無水物系のモノマーからなるものとして利用してもよい。
このような他のテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限されず、ポリイミドの製造に利用可能な公知のものを適宜利用でき、例えば、無水ピロメリット酸、3,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、3-カルボキシメチル-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、下記式(5)~(6):
で表される化合物(上記式(5)で表される化合物(略称「BNBDA」)、上記式(6)で表される化合物(略称「BzDA」))等を挙げることができる。このような他のテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。なお、このような他のテトラカルボン酸二無水物を利用する場合、モノマー(A)中の化合物の総モル量に対して、他のテトラカルボン酸二無水物の含有量が5~30モル%となるようにして利用することが好ましい。
また、本発明にかかるモノマー(A)は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体を主成分として含むことが好ましく、モノマー(A)中のテトラカルボン酸二無水物の全量(化合物の全量)に対して、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体の含有量(総量)が70モル%(より好ましくは80モル%、更に好ましくは90モル%、特に好ましくは95モル%以上であることが好ましい。なお、モノマー(A)は、ポリアミド酸の製造を介して容易にポリイミドを製造することが可能であることから、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるものとして利用してもよい。
〈モノマー(B):ジアミン化合物〉
モノマー(B)は、ジアミン化合物である。このようなモノマー(B)としてのジアミン化合物としては特に制限されず、ポリイミドの製造に利用することが可能な公知のものを適宜利用でき、芳香族ジアミン及び/又は脂肪族ジアミンを好適に利用できる。
モノマー(B)は、ジアミン化合物である。このようなモノマー(B)としてのジアミン化合物としては特に制限されず、ポリイミドの製造に利用することが可能な公知のものを適宜利用でき、芳香族ジアミン及び/又は脂肪族ジアミンを好適に利用できる。
このような芳香族ジアミンとしては、特に制限されず、ポリイミドの製造に利用することが可能な公知のもの(例えば、特開2018-44180号公報の段落[0039]に記載されている芳香族ジアミン等)を適宜利用できる。また、前記脂肪族ジアミンとしても特に制限されず、ポリイミドの製造に利用することが可能な公知のものを適宜利用できる。なお、前記脂肪族ジアミンは、脂環式のものであってもよい。なお、このようなジアミン化合物(好ましくは、芳香族ジアミン及び/又は脂肪族ジアミン)は、分子内にエステルやアミド結合を含む化合物であってもよく、更には、ジアミンから誘導化された誘導体であってもよい。このように、本発明において「ジアミン化合物」は、ジアミン自体の他、その誘導体を含む概念である。なお、このような誘導体としては、例えば、アルキルアミン、アルキルシリルアミンが挙げられる。
このようなジアミン化合物としては、例えば、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、5(6)-アミノ-1-(4-アミノメチル)-1,3,3-トリメチルインダン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレンジアミン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1,6-ジアミノヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(4-シクロヘキシルアミン)、トランス-1,4-シクロヘキサンジアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-1,3-ジアミン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、2-(4-アミノフェニル)アミノベンゾオキサゾール、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2’-ビス(3-スルホプロポキシ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル-3,3’-ジスルホン酸等が挙げられる。なお、このようなジアミン化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、このようなジアミン化合物としては、中でも、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(別名「2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン」、略称:TFMB)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(略称:4,4’-DDE)、4,4’-ジアミノベンズアニリド(略称:DABAN)、2,2’-ジメチルー[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:MTD)、p-フェニレンジアミン(別名「p-ジアミノベンゼン」、略称:PPD)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート(略称:BPTP)、4,4’-((プロパンー2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(オキシ))ジアニリン(略称:BAPP)、4,4’-(1,3-フェニレンビス(オキシ))ジアニリン(略称:TPE-R)、4,4’-([1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルビス(オキシ))ジアニリン(略称:BODA)、4,4’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジアニリン(略称:FDA)が好ましく、TFMB、4,4’-DDE、DABAN、MTD、PPD、BPTP、BAPP、TPE-R、BODA、FDAがより好ましく、TFMB、DABAN、PPD、FDAが更に好ましい。なお、このようなジアミン化合物を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。また、このようなジアミン化合物は、市販のものを適宜利用してもよい。
〈ポリイミドの特性等〉
本発明のポリイミドは、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重縮合物からなるものである。
本発明のポリイミドは、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重縮合物からなるものである。
このようなポリイミドは、モノマー(A)及びモノマー(B)の重縮合物であるため、少なくとも、前記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体と、ジアミン化合物との反応により形成される繰り返し単位を含むものとなる。そのため、かかるポリイミドは、例えば、下記式(10):
[式(10)中、Arは前記ジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた残基(好ましくは、炭素数6~50のアリーレン基、より好ましくは炭素数6~40のアリーレン基、さらに好ましくは炭素数6~30のアリーレン基、特に好ましくは炭素数が12~20のアリーレン基)を示し、R1~R5はそれぞれ、前記一般式(1)中のR1~R5と同義(好適なものも同義)である。]
で表される繰り返し単位(I)、及び、
下記式(11):
で表される繰り返し単位(I)、及び、
下記式(11):
[式(11)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に前記ジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた残基(好ましくは、炭素数6~50のアリーレン基、より好ましくは炭素数6~40のアリーレン基、さらに好ましくは炭素数6~30のアリーレン基、特に好ましくは炭素数が12~20のアリーレン基)を示し、R1~R5はそれぞれ、前記一般式(1)中のR1~R5と同義(好適なものも同義)である。]
で表される繰り返し単位(II)からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有するものとすることができる。
で表される繰り返し単位(II)からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有するものとすることができる。
また、本発明のポリイミドが前記繰り返し単位(I)及び/又は(II)を有するものである場合、前記繰り返し単位(I)及び(II)の含有量(総量)は特に制限されないが、ポリイミド中の全繰り返し単位に対して(I)及び(II)の含有量(総量)が70~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、100モル%であることが特に好ましい。前記繰り返し単位(I)及び(II)の含有量(総量)を前記下限以上とすることで、前記下限未満とした場合と比較して、ポリイミドフィルムにした際の製膜性及び靭性を向上させること、透明性と耐熱性を向上させること、CTEを低下させることが可能となる。なお、前記モノマー(A)が、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体とともに、他のテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体を含有するものである場合、本発明のポリイミドは、他のテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体とジアミン化合物(成分(B))とを重縮合して得られる構造(他の繰り返し単位)を更に有するものとなる。
また、本発明のポリイミドとしては、耐熱性を更に高い水準のものとするといった観点から、ガラス転移温度(Tg)が300℃以上のものが好ましく、350℃以上のものがより好ましい。なお、このようなガラス転移温度(Tg)は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を使用して引張モードにより測定することができる。
さらに、本発明のポリイミドとしては、耐熱性を十分に高い状態のものとするといった観点から、5%重量減少温度が450℃以上のものが好ましく、470℃以上のものがより好ましい。なお、このような5%重量減少温度は、窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら室温(例えば、25℃)から40℃に昇温した後、40℃を測定開始温度として徐々に加熱していき、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めることができる。
また、本発明のポリイミドとしては、耐熱性を十分に高い状態のものとするといった観点から、1%重量減少温度が400℃以上のものが好ましく、420℃以上のものがより好ましい。なお、このような1%重量減少温度は、窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら室温(例えば、25℃)から40℃に昇温した後、40℃を測定開始温度として徐々に加熱していき、用いた試料の重量が1%減少する温度を測定することにより求めることができる。
また、本発明のポリイミドとしては、フィルムを形成した場合に、透明性が必要となるような用途により効率よく利用することが可能となること等から、黄色度(YI)が20以下(更に好ましくは10以下)であるものがより好ましい。このような黄色度(YI)はASTM E313-05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求めることができる。
本発明のポリイミドとしては、フィルムを形成した場合に、透明性が必要となるような用途により効率よく利用することが可能となること等から、濁度(HAZE:ヘイズ)が15以下(更に好ましくは5以下)であるものがより好ましい。なお、ヘイズ(濁度)は、JIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求めることができる。
また、このようなポリイミドの数平均分子量(Mn)としては、ポリスチレン換算で1,000~1,000,000であることが好ましい。このようなポリイミドの重量平均分子量(Mw)としては、ポリスチレン換算で1,000~5,000,000であることが好ましい。さらに、このようなポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は1.1~5.0であることが好ましい。このようなポリイミドの分子量(Mw又はMn)や分子量の分布(Mw/Mn)が前記範囲内にある場合には、より均一なフィルムをより効率よく製膜することが可能となる。なお、このようなポリイミドの分子量(Mw又はMn)や分子量の分布(Mw/Mn)は、測定装置としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(東ソー株式会社製、商品名:HLC-8320GPC/カラム4本:東ソー株式会社製、商品名:TSK gel SuperAW4000,3000,2500,SuperH-RC、溶媒:N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc))を用いて測定したデータをポリスチレンで換算して求めることができる。なお、このようなポリイミドにおいては、分子量の測定が困難な場合には、そのポリイミドの製造に用いるポリアミド酸の粘度に基づいて、分子量等を類推して、用途等に応じたポリイミドを選別して使用してもよい。
また、本発明のポリイミドは、溶媒に対する溶解性を有するものとすることも可能であるため、有機溶媒に溶解させてポリイミド溶液(樹脂溶液:ワニス)として利用することも可能である、なお、このようなポリイミド溶液に用いる有機溶媒としては、溶解性、成膜性、生産性、工業的入手性、既存設備の有無、価格といった観点から、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、シクロペンタノンが好ましく、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素がより好ましく、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトンが特に好ましい。なお、このような有機溶媒は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、本発明のポリイミドをポリイミド溶液として利用する場合、各種の加工品を製造するための塗工液等として好適に利用することも可能である。例えば、フィルムを形成する場合、ポリイミド溶液を基材上に塗工して塗膜を得た後、溶媒を除去することで、ポリイミドフィルムを形成してもよい。なお、このようなポリイミド溶液においては、前記ポリイミドの含有量(溶解量)は特に制限されないが、1~75質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
また、本発明のポリイミドは、その用途に応じて公知の成分を適宜含有させて利用してもよく、例えば、他のポリマー、酸化防止剤、紫外線吸収剤・ヒンダードアミン系光安定剤、核剤・透明化剤、無機フィラー(ガラス繊維、ガラス中空球、タルク、マイカ、アルミナ、チタニア、シリカなど)、重金属不活性化剤・フィラー充填プラスチック用添加剤、難燃剤、加工性改良剤・滑剤/水分散型安定剤、永久帯電防止剤、靱性向上剤、界面活性剤、炭素繊維等の添加成分を更に含有させて利用してもよい。
また、このようなポリイミドの形状は特に制限されず、例えば、フィルム形状や粉状としたり、更には、押出成形によりペレット形状等としてもよい。このように、本発明のポリイミドは、フィルム形状にしたり、押出成形によりペレット形状としたり、公知の方法で各種の形状に適宜成形することもできる。
<ポリイミド前駆体樹脂>
本発明のポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重付加物からなることを特徴とするものである。
本発明のポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、ジアミン化合物であるモノマー(B)との重付加物からなることを特徴とするものである。
ここで、本発明のポリイミド前駆体樹脂は、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)とを重付加することにより得られるものであればよい。すなわち、本発明のポリイミド前駆体樹脂は、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との重付加体の他、その付加重合体から得られる誘導体をも含む概念である(例えば、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを重付加することにより得られる付加重合体(開環重付加体)であるポリアミド酸の他、その付加重合体から得られる誘導体であってもよい)。また、このようなポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体と、ジアミン化合物とを重付加することにより得られる構造(繰り返し単位)及びその誘導体を含むものであればよく、他のテトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体とジアミン化合物とを重付加して得られる構造(他の繰り返し単位)を更に有するものであってもよい。なお、本発明のポリイミド前駆体樹脂において、「モノマー(A)」や「モノマー(B)」はいずれも、前記本発明のポリイミドにおいて説明したものと同義である。
また、このような本発明のポリイミド前駆体樹脂が含有し得る繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(12):
[式(12)中、Arは前記ジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた残基(好ましくは、炭素数6~50のアリーレン基、より好ましくは炭素数6~40のアリーレン基、さらに好ましくは炭素数6~30のアリーレン基、特に好ましくは炭素数が12~20のアリーレン基)を示し、R1~R5はそれぞれ、前記一般式(1)中のR1~R5と同義(好適なものも同義)であり、Y1はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基及び炭素数3~9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種を示し、aで表される結合手及びbで表される結合手のうちの一方が*1で表される炭素原子に結合し、aで表される結合手及びbで表される結合手のうちのもう一方が*2で表される炭素原子に結合し、cで表される結合手及びdで表される結合手のうちの一方が*3で表される炭素原子に結合し、かつ、cで表される結合手及びdで表される結合手のうちのもう一方が*4で表される炭素原子に結合する。]
で表される繰り返し単位(III)を例示することができる。そして、本発明のポリイミド前駆体樹脂としては、前記繰り返し単位(III)を含有するものがより好ましい。
で表される繰り返し単位(III)を例示することができる。そして、本発明のポリイミド前駆体樹脂としては、前記繰り返し単位(III)を含有するものがより好ましい。
このような繰り返し単位(III)において、式中のY1はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基及び炭素数3~9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種を示す。このようなY1は、その置換基の種類、及び、置換基の導入率を、その製造条件を適宜変更することで変化させることができる。なお、このようなY1が、いずれも水素原子である場合(いわゆるポリアミド酸の繰り返し単位となる場合)には、それを脱水閉環させることで、効率よくポリイミドを製造することが可能となる。また、前記一般式(12)中のY1が炭素数1~6(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基である場合、ポリイミド前駆体樹脂の保存安定性がより優れたものとなる傾向にある。Y1として選択され得る炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基又はエチル基がより好ましい。また、前記一般式(12)中のY1が炭素数3~9のアルキルシリル基である場合、ポリイミド前駆体樹脂の溶解性がより優れたものとなる傾向にある。Y1として選択され得る炭素数3~9のアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基又はt-ブチルジメチルシリル基がより好ましい。
前記繰り返し単位(III)中のY1に関して、水素原子以外の基(アルキル基及び/又はアルキルシリル基)の導入率は、特に限定されないが、ポリイミド前駆体樹脂中に含まれる全繰り返し単位(III)中の全Y1のうちの少なくとも一部をアルキル基及び/又はアルキルシリル基とする場合、前記繰り返し単位(III)中のY1の総量の25%以上(より好ましくは50%以上、更に好ましくは75%以上)をアルキル基及び/又はアルキルシリル基とすることが好ましい(なお、この場合、アルキル基及び/又はアルキルシリル基以外のY1は水素原子となる)。Y1の総量の25%以上をアルキル基及び/又はアルキルシリル基にすることで、ポリイミド前駆体樹脂の保存安定性がより優れたものとなる傾向にある。
また、前記一般式(12)において、ノルボルナン環を形成する炭素原子*1(記号*1が付された炭素原子)にはaで表される結合手及びbで表される結合手のうちの一方が結合し、かつ、ノルボルナン環を形成する炭素原子*2(記号*2が付された炭素原子)にはaで表される結合手及びbで表される結合手のうちのもう一方が結合する。また、前記一般式(12)において、ベンゼン環を形成する炭素原子*3(記号*3が付された炭素原子)にはcで表される結合手及びdで表される結合手のうちの一方が結合し、かつ、ノルボルナン環を形成する炭素原子*4(記号*4が付された炭素原子)にはcで表される結合手及びdで表される結合手のうちのもう一方が結合する。
また、本発明のポリイミド前駆体が前記繰り返し単位(III)を有するものである場合、前記繰り返し単位(III)の含有量は特に制限されないが、ポリイミド前駆体中の全繰り返し単位に対して70~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、100モル%であることが特に好ましい。前記繰り返し単位(II)の含有量を前記下限以上とすることで、前記下限未満とした場合と比較して、ポリイミドを製造した場合に、ポリイミドの黄色度を更に低減させることが可能となる。
また、このようなポリイミド前駆体(好ましくはポリアミド酸)の固有粘度[η]は0.05~3.0dL/gであることが好ましく、0.1~2.0dL/gであることがより好ましい。このような固有粘度[η]が前記下限以上とすることで、前記下限未満とした場合と比較して、これを用いてポリイミドのフィルムを製造した際に、得られるフィルムが強度を向上させることが可能となり、他方、前記上限以下とすることで、上記上限を超えた場合と比較して、粘度の観点で加工性に優れたものとなり、例えば、フィルムの製造に利用した場合においてもシワの発生を抑制することが可能となり、均一なフィルムを効率よく製造ることが可能となる。また、本明細書において、ポリイミド前駆体(好ましくはポリアミド酸)の「固有粘度[η]」は、例えば、希釈溶媒(例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc))を用いてポリイミド前駆体の濃度が0.5g/dLとなる測定試料(溶液)を調製し、その測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、CANNON INSTRUMENT COMPANY製の全自動粘度測定装置(商品名「miniPV(登録商標)-HX」)を用いる。
また、このようなポリイミド前駆体(好ましくはポリアミド酸)は、本発明のポリイミドを製造する際に好適に利用することが可能なものである(本発明のポリイミドを製造する際の反応中間体(前駆体)として得ることが可能なものである。)。
なお、このような本発明のポリイミド前駆体樹脂(好ましくはポリアミド酸)は、有機溶媒中に含有せしめて、ポリイミド前駆体樹脂溶液(ワニス)として利用してもよい。このようなポリイミド前駆体樹脂溶液(ワニス)に利用する有機溶媒としては特に制限されず、公知のものを適宜利用でき、例えば、国際公開第2018/066522号公報の段落[0175]及び段落[0133]~[0134]に記載されている溶媒等を適宜利用することができる。また、このようなポリイミド前駆体樹脂溶液における前記ポリイミド前駆体樹脂の含有量は特に制限されないが、1~80質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましい。なお、このようなポリイミド前駆体樹脂溶液には、その使用目的等に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、フィラー等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
<ポリイミド前駆体及びポリイミドを製造するための方法について>
前記本発明のポリイミド前駆体や、前記本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に利用可能な方法について簡単に説明する。先ず、前記本発明のポリイミド前駆体を製造するための方法として好適に利用可能な方法について説明する。
前記本発明のポリイミド前駆体や、前記本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に利用可能な方法について簡単に説明する。先ず、前記本発明のポリイミド前駆体を製造するための方法として好適に利用可能な方法について説明する。
前記本発明のポリイミド前駆体を製造するための方法として好適に利用可能な方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、有機溶媒の存在下において、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むモノマー(A)と、前記ジアミン化合物であるモノマー(B)とを付加重合反応させてポリイミド前駆体を得る方法を挙げることができる。
このような方法に用いる有機溶媒としては、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)の両者を溶解することが可能な有機溶媒(さらに好ましくは、形成されるポリイミド前駆体も溶解可能な有機溶媒)であることが好ましい。このような有機溶媒としては、特に制限されず、ポリイミドの製造に利用可能なものを適宜利用でき、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-カプロラクトン(GBL)、テトラメチル尿素(N,N,N’,N’-テトラメチルウレア:TMU)、ジメチルスルホキシド、δ-バレロラクトンなどが挙げられる。このような有機溶媒は、1種を単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
前記有機溶媒の使用量としては、反応に用いられるモノマーの総量(前記モノマー(A)と、前記モノマー(B)の総量)が、反応溶液の全量に対して5~40質量%(より好ましくは10~25質量%)になるような量であることが好ましい。このような有機溶媒の使用量を前記範囲内とすることで、効率よくポリアミド酸を得ることが可能となる。
また、前記モノマー(B)としてのジアミン化合物の使用量は、反応に用いられる前記モノマー(A)中の化合物の総量を1モルに換算した場合に、前記ジアミン化合物のモル数が0.9~1.1モルとなる量とすることが好ましく、より重合度を高めることが可能であるといった観点からは、前記ジアミン化合物のモル数が0.95~1.05モルとなる量とすることが好ましい。
また、前記モノマー(A)と、前記モノマー(B)とを付加重合反応させる際の反応温度は、これらの付加重合反応を進行させることが可能な温度に適宜調整すればよく、特に制限されないが、15~100℃とすることが好ましい。また、このような付加重合反応を行う際には、特に制限されないが、例えば、モノマー(A)が前記一般式(1)で表されるテトラテトラカルボン酸二無水物からなる場合、大気圧中、又は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下において、前記一般式(1)で表されるテトラテトラカルボン酸二無水物(モノマー(A))と、前記ジアミン化合物(モノマー(B))とを含む溶液を前記反応温度において10~100時間撹拌しながら反応させる方法を採用してもよい。このようにして、前記一般式(1)で表されるテトラテトラカルボン酸二無水物と、前記ジアミン化合物との付加重合反応を進行させることで、本発明のポリイミド前駆体として好適なポリアミド酸(式(12)中のY1がいずれも水素原子である繰り返し単位(II)からなるポリイミド前駆体)を得ることが可能となる。
ここで、式(12)中のY1が水素原子以外となるような繰り返し単位(II)を含有するポリイミド前駆体樹脂を製造する場合の製造方法としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物として前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いる以外は、国際公開第2018/066522号公報の段落[0165]~[0174]に記載されている方法と同様にして製造する方法を適宜採用してもよい。
次に、上記本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に利用可能な方法について説明する。上記本発明のポリイミドを製造するための方法は、特に制限されず、例えば、モノマー(A)として前記一般式(1)で表される化合物を利用する場合、テトラカルボン酸二無水物として前記一般式(1)で表される化合物を利用する以外は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させてポリイミドを製造する公知の方法(例えば、国際公開第2011/099518号に記載されている方法、国際公開第2015/163314号公報に記載されている方法、特開2018-044180号公報に記載されている方法、国際公開第2018/066522号に記載されている方法、等)で採用されている条件を適宜採用できる。なお、本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に利用可能な方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、前述のようにしてポリイミド前駆体樹脂(好ましくはポリアミド酸(ポリアミック酸))を形成し、その後、ポリイミド前駆体樹脂を閉環縮合(脱水閉環:分子内縮合)させてイミド化することにより、ポリイミドを得る方法を例示することができる。また、前記ポリイミド前駆体樹脂(好ましくはポリアミド酸)を閉環縮合させてイミド化するための方法(条件等)は特に制限されず、公知のイミド化の方法(例えば、国際公開第2011/099518号に記載されているイミド化の方法等)において採用されている方法(条件)を適宜採用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[ポリイミド等の特性の評価方法について]
先ず、後述の各実施例及び各比較例で得られたポリイミド等の特性の評価方法(測定方法)を説明する。なお、ポリイミドのIR測定にはFT-IR測定機(ThermoScientific製、商品名:Nicolet iS10 FT-IR)を利用した。
先ず、後述の各実施例及び各比較例で得られたポリイミド等の特性の評価方法(測定方法)を説明する。なお、ポリイミドのIR測定にはFT-IR測定機(ThermoScientific製、商品名:Nicolet iS10 FT-IR)を利用した。
<濁度(ヘイズ)及び黄色度(YI)の測定>
各実施例等で得られたポリイミドの濁度(HAZE:ヘイズ)及び黄色度(YI)は、各実施例等で得られたフィルムをそのまま測定用の試料として用い、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH-5000」又は日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用いて、それぞれ測定を行うことにより求めた。また、かかる測定に際しては、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH-5000」で濁度(ヘイズ)を測定し、日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」で黄色度を測定した。また、濁度(ヘイズ)はJIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、黄色度(YI)はASTM E313-05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。なお、YIが20以下であり、かつ、ヘイズが15以下となるような場合、フィルムの着色や濁りが十分に低く、透明性が十分に高い水準にあるものと言える。
各実施例等で得られたポリイミドの濁度(HAZE:ヘイズ)及び黄色度(YI)は、各実施例等で得られたフィルムをそのまま測定用の試料として用い、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH-5000」又は日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用いて、それぞれ測定を行うことにより求めた。また、かかる測定に際しては、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH-5000」で濁度(ヘイズ)を測定し、日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」で黄色度を測定した。また、濁度(ヘイズ)はJIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、黄色度(YI)はASTM E313-05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。なお、YIが20以下であり、かつ、ヘイズが15以下となるような場合、フィルムの着色や濁りが十分に低く、透明性が十分に高い水準にあるものと言える。
<1%重量減少温度(Td1%)及び5%重量減少温度(Td5%)の測定>
各実施例等で得られたポリイミドの1%重量減少温度及び5%重量減少温度はそれぞれ、以下のようにして測定した。すなわち、先ず、各実施例で得られたポリイミド(フィルム)から、それぞれ2~4mgの試料を準備し、かかる試料をアルミ製サンプルパンに入れ、測定装置として熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「TG/DTA220」)を使用して、窒素ガスを流しながら室温から40℃に昇温した後、40℃を測定開始温度として、昇温速度10℃/分の条件で加熱していき、用いた試料の重量が、1%減少する温度及び5%減少する温度を測それぞれ測定して求めた。
各実施例等で得られたポリイミドの1%重量減少温度及び5%重量減少温度はそれぞれ、以下のようにして測定した。すなわち、先ず、各実施例で得られたポリイミド(フィルム)から、それぞれ2~4mgの試料を準備し、かかる試料をアルミ製サンプルパンに入れ、測定装置として熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「TG/DTA220」)を使用して、窒素ガスを流しながら室温から40℃に昇温した後、40℃を測定開始温度として、昇温速度10℃/分の条件で加熱していき、用いた試料の重量が、1%減少する温度及び5%減少する温度を測それぞれ測定して求めた。
<ガラス転移温度(Tg)及び線膨張係数(CTE)の測定>
先ず、各実施例等で得られたポリイミド(フィルム形状のポリイミド)から縦20mm、横5mmの大きさの試験片をそれぞれ切り出して測定試料とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件で測定を行ってTMA曲線を求めた。そして、得られたTMA曲線を用いて、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、各実施例等で得られたフィルムを構成するポリイミドのガラス転移温度(Tg)の値(単位:℃)を求めた。また、前記TMA曲線を用いて、100℃~200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を算出することにより、ポリイミドの線膨張係数(CTE)を求めた(得られた平均値をポリイミドの線膨張係数として採用した)。
先ず、各実施例等で得られたポリイミド(フィルム形状のポリイミド)から縦20mm、横5mmの大きさの試験片をそれぞれ切り出して測定試料とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件で測定を行ってTMA曲線を求めた。そして、得られたTMA曲線を用いて、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、各実施例等で得られたフィルムを構成するポリイミドのガラス転移温度(Tg)の値(単位:℃)を求めた。また、前記TMA曲線を用いて、100℃~200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を算出することにより、ポリイミドの線膨張係数(CTE)を求めた(得られた平均値をポリイミドの線膨張係数として採用した)。
<誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の測定方法>
誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の値の測定は、実施例1で得られたポリイミド(フィルム)並びに比較例1で得られたポリイミド(フィルム)に対して行った。かかる測定に際しては、これらのポリイミド(フィルム)から、それぞれ幅:1.5mm、長さ:70~80mmの大きさに切りだした試料片(厚みは各実施例等で得られたフィルムの厚みをそのまま採用)を作成し、測定法として空洞共振器摂動法(IEC 62810に準拠)を採用し、以下のようにして測定した。すなわち、このような誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の値の測定は、それぞれ、上述のようにして作成した試験片(幅:1.5mm、長さ:70~80mm、厚さ:17μm(実施例1)又は33μm(比較例1))を23℃で相対湿度50%の環境下で24時間静置した後、23℃、相対湿度50%の環境下に調節した実験室にて行った。また、測定装置としてはキーサイト・テクノロジー株式会社製の「PNAネットワークアナライザN522B」及び関東電子応用開発製の商品名「空洞共振器10GHz用CP531」を利用した。また、測定に際しては、前記試験片を前記測定装置の空洞共振器にセットし、周波数を10GHzとして、誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の実測値をそれぞれ求めた。そして、このような実測値の測定を計2回行い、それらの平均値を求めることにより、誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の値を求めた。このように、誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の値としては、2回の測定により得られた実測値の平均値を採用した。
誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の値の測定は、実施例1で得られたポリイミド(フィルム)並びに比較例1で得られたポリイミド(フィルム)に対して行った。かかる測定に際しては、これらのポリイミド(フィルム)から、それぞれ幅:1.5mm、長さ:70~80mmの大きさに切りだした試料片(厚みは各実施例等で得られたフィルムの厚みをそのまま採用)を作成し、測定法として空洞共振器摂動法(IEC 62810に準拠)を採用し、以下のようにして測定した。すなわち、このような誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の値の測定は、それぞれ、上述のようにして作成した試験片(幅:1.5mm、長さ:70~80mm、厚さ:17μm(実施例1)又は33μm(比較例1))を23℃で相対湿度50%の環境下で24時間静置した後、23℃、相対湿度50%の環境下に調節した実験室にて行った。また、測定装置としてはキーサイト・テクノロジー株式会社製の「PNAネットワークアナライザN522B」及び関東電子応用開発製の商品名「空洞共振器10GHz用CP531」を利用した。また、測定に際しては、前記試験片を前記測定装置の空洞共振器にセットし、周波数を10GHzとして、誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の実測値をそれぞれ求めた。そして、このような実測値の測定を計2回行い、それらの平均値を求めることにより、誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の値を求めた。このように、誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)の値としては、2回の測定により得られた実測値の平均値を採用した。
<固有粘度[η]の測定>
ポリアミド酸又はポリイミドの固有粘度[η]は、各実施例等において反応液(樹脂溶液:ポリイミド溶液又はポリアミド酸の溶液)の調製の際に用いた溶媒を希釈溶媒として用いて、濃度0.5g/dLのポリアミド酸又はポリイミドの溶液を測定試料として調製し、測定装置としてCANNON INSTRUMENT COMPANY製の全自動粘度測定装置(商品名「miniPV(登録商標)-HX」)を用いて、30℃の温度条件下において測定した。
ポリアミド酸又はポリイミドの固有粘度[η]は、各実施例等において反応液(樹脂溶液:ポリイミド溶液又はポリアミド酸の溶液)の調製の際に用いた溶媒を希釈溶媒として用いて、濃度0.5g/dLのポリアミド酸又はポリイミドの溶液を測定試料として調製し、測定装置としてCANNON INSTRUMENT COMPANY製の全自動粘度測定装置(商品名「miniPV(登録商標)-HX」)を用いて、30℃の温度条件下において測定した。
(合成例1:4-ブロモフタル酸ジメチルの合成)
容量が1Lの還流管付きのフラスコの内部を窒素置換した後、前記フラスコ内に、先ず、4-ブロモフタル酸無水物(80.0g、352mmol)を添加した後、メタノール(400mL)を添加し、次いで、塩酸(8.0mL、HClの濃度:35質量%)を添加して混合液を得た。次に、前記混合液を加熱して29時間還流させて、反応液を得た。なお、このような加熱還流により得られた反応液に対してガスクロマトグラフィーによる分析(GC分析)を行ったところ、4-ブロモフタル酸ジメチルの純度が86.8面積%となっていることが確認された。なお、かかるGC分析の際に採用した条件は以下の通りである。
容量が1Lの還流管付きのフラスコの内部を窒素置換した後、前記フラスコ内に、先ず、4-ブロモフタル酸無水物(80.0g、352mmol)を添加した後、メタノール(400mL)を添加し、次いで、塩酸(8.0mL、HClの濃度:35質量%)を添加して混合液を得た。次に、前記混合液を加熱して29時間還流させて、反応液を得た。なお、このような加熱還流により得られた反応液に対してガスクロマトグラフィーによる分析(GC分析)を行ったところ、4-ブロモフタル酸ジメチルの純度が86.8面積%となっていることが確認された。なお、かかるGC分析の際に採用した条件は以下の通りである。
<GC測定条件1>
カラム:HP-5MS UI(アジレント・テクノロジー株式会社製)
カラム流量:1.2mL/min
注入量:1μL
注入口:200℃、8.9psi、スプリット比97.1:1
オーブンでの加熱条件:100℃で2分間保持した後、昇温速度10℃/minで300℃まで昇温し、300℃で1分間保持した。
検出器:FID、300℃。
カラム:HP-5MS UI(アジレント・テクノロジー株式会社製)
カラム流量:1.2mL/min
注入量:1μL
注入口:200℃、8.9psi、スプリット比97.1:1
オーブンでの加熱条件:100℃で2分間保持した後、昇温速度10℃/minで300℃まで昇温し、300℃で1分間保持した。
検出器:FID、300℃。
次いで、得られた反応液からメタノールを減圧留去した後、酢酸エチル(400mL)を加えて、酢酸エチル溶液を得た。次に、このようにして得られた酢酸エチル溶液を飽和重曹水(160mL)で2回洗浄した後、更に水(160mL)で1回洗浄した。次に、このような洗浄後の酢酸エチル溶液から溶媒を留去して残留物を得た。このようにして得られた残留物を室温(25℃程度)条件下、真空乾燥させることにより、白色固体として4-ブロモフタル酸ジメチル(77.7g、284mmol、収率:80.1%、純度(GC分析により確認):100面積%、前記一般式(2)で表される化合物に相当する化合物)を得た。なお、このようなGC分析の条件は、上記<GC測定条件1>と同様の条件を採用した。
(合成例2:カルボニル化合物の合成)
窒素置換した容量が1Lのフラスコに、トリ(o-トリル)ホスフィン(579mg、1.90mmol)と、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2、214mg、0.951mmol)を添加した後、N,N-ジメチルホルムアミド(150mL、略称:DMF)を更に添加して混合液を得た。その後、フラスコ内に窒素を流しながら(窒素気流下)、前記混合液を50℃で30分間撹拌することにより、前記混合液中において、トリ(o-トリル)ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体を形成せしめた。次いで、前記パラジウム錯体を含む混合液(黄色の溶液)に対して、合成例1で得られた4-ブロモフタル酸ジメチル(57.2g、209mmol、前記一般式(2)で表される化合物に相当する化合物(原料化合物の1種))、ナジック酸ジメチル(40.0g、190mmol、前記一般式(3)で表される化合物に相当する化合物(原料化合物の1種))を加えて、原料混合液を得た。次いで、このようにして得られた原料混合液に対して、トリエチルアミン(38.5g、381mmol)と、ギ酸(17.5g、381mmol)と、DMF(96.0mL)とを含む溶液を添加することにより、反応用の混合液を得た。その後、前記反応用の混合液を80℃まで昇温し、80℃で5時間維持することにより、前記混合液中において4-ブロモフタル酸ジメチルとナジック酸ジメチルとを反応せしめ、反応溶液を得た。なお、このようにして得られた反応溶液に対してGC分析を行ったところ、2種の原料化合物(4-ブロモフタル酸ジメチル及びナジック酸ジメチル)の消失が確認され、更に、GC分析により算出される混合液中の反応生成物の収率は67.1%であることが分かった。なお、かかるGC分析の際に採用した条件は以下の通りである。
窒素置換した容量が1Lのフラスコに、トリ(o-トリル)ホスフィン(579mg、1.90mmol)と、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2、214mg、0.951mmol)を添加した後、N,N-ジメチルホルムアミド(150mL、略称:DMF)を更に添加して混合液を得た。その後、フラスコ内に窒素を流しながら(窒素気流下)、前記混合液を50℃で30分間撹拌することにより、前記混合液中において、トリ(o-トリル)ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体を形成せしめた。次いで、前記パラジウム錯体を含む混合液(黄色の溶液)に対して、合成例1で得られた4-ブロモフタル酸ジメチル(57.2g、209mmol、前記一般式(2)で表される化合物に相当する化合物(原料化合物の1種))、ナジック酸ジメチル(40.0g、190mmol、前記一般式(3)で表される化合物に相当する化合物(原料化合物の1種))を加えて、原料混合液を得た。次いで、このようにして得られた原料混合液に対して、トリエチルアミン(38.5g、381mmol)と、ギ酸(17.5g、381mmol)と、DMF(96.0mL)とを含む溶液を添加することにより、反応用の混合液を得た。その後、前記反応用の混合液を80℃まで昇温し、80℃で5時間維持することにより、前記混合液中において4-ブロモフタル酸ジメチルとナジック酸ジメチルとを反応せしめ、反応溶液を得た。なお、このようにして得られた反応溶液に対してGC分析を行ったところ、2種の原料化合物(4-ブロモフタル酸ジメチル及びナジック酸ジメチル)の消失が確認され、更に、GC分析により算出される混合液中の反応生成物の収率は67.1%であることが分かった。なお、かかるGC分析の際に採用した条件は以下の通りである。
<GC測定条件2>
カラム:HP-5MS UI(アジレント・テクノロジー株式会社製)
カラム流量:1.2mL/min
注入量:1μL
注入口:320℃、9.5psi、スプリット比97.1:1
オーブンでの加熱条件:100℃で2分間保持した後、昇温速度10℃/minで320℃まで昇温し、320℃で16分間保持した。
検出器:FID、340℃。
カラム:HP-5MS UI(アジレント・テクノロジー株式会社製)
カラム流量:1.2mL/min
注入量:1μL
注入口:320℃、9.5psi、スプリット比97.1:1
オーブンでの加熱条件:100℃で2分間保持した後、昇温速度10℃/minで320℃まで昇温し、320℃で16分間保持した。
検出器:FID、340℃。
次に、前述のようにして得られた反応溶液に水(246mL)を加えた後、トルエン(400mL)で2回抽出を行い、トルエン溶液を得た。次いで、塩酸(HClの濃度:5質量%、205mL)、飽和重曹水(205mL)、水(205mL)を記載した順でそれぞれ1回ずつ用いて、前記トルエン溶液を洗浄した。次いで、洗浄後の溶液から有機層を分離して得た後、得られた有機層を濾過し、その後、溶媒を減圧留去することにより、黄色の油状物質よりなる粗生成物(83.1g、算出収率:62.4%、トルエン溶液中の含有率(GC分析により算出):57.8質量%)を得た(粗生成物を得る工程)。なお、ここにおいて、算出収率とは、製造に用いた原料化合物の仕込み量(使用量)から算出される、生成物の理論量に対する収率をいう(以下において、同様の意味で利用する)。また、このようなGC分析の測定条件は、上記<GC測定条件2>と同様の条件を採用した。
次に、前記「粗生成物を得る工程」を上記と同様の手法で別途行い、総量が182gの粗生成物(HPLC純度73.1面積%)を準備した。そして、粗生成物182gをシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、淡黄色の油状物質よりなる生成物を得た。すなわち、このような精製に際しては、先ず、カラムに対して粗生成物の質量の2.5倍量のシリカゲルを充填した後、得られたカラムに、粗生成物を移動相溶媒に溶解させた溶液を染み込ませた。なお、移動相溶媒としてはヘプタンと酢酸エチルの混合液を用い、図1に示すように、測定回数に応じて、前記移動相溶媒中のヘプタンと酢酸エチルの容量比(ヘプタン/酢酸エチル)が4/1から徐々に2/1となるようにすることで、前記移動相溶媒の極性を徐々に変化させながら、複数回の測定(合計30回の測定)を行った。なお、図1に示すように、1回目~10回目の測定まではヘプタンと酢酸エチルの容量比が4/1の溶媒を用い、11回目~24回目の測定まではヘプタンと酢酸エチルの容量比が3/1の溶媒を用い、25回目~30回目の測定まではヘプタンと酢酸エチルの容量比が2/1の溶媒を用いた。また、このような測定に際しては、各回の測定後、カラムに吸着された物質を溶出させて、溶出液をそれぞれ集めた。このようにして複数回の測定を行った後、薄層クロマトグラフィー(TLC)により、目的物のスポットに一致する位置に物質が吸着された測定回(16回目~25回目の測定回)を確認し、その測定回(16回目~25回目)の溶出液(フラクション)を一つにまとめ、その後、得られた溶出液から溶媒を留去することにより、107gの淡黄色の油状物質よりなる生成物(粗生成物に対する回収率:58.8質量%)を得た。なお、前記TLCに際しては、ヘプタンと酢酸エチルの容量比が1/1の溶媒を用い、検出に紫外線(UV)を利用し、TLCの発色試薬としてKMn2O7とK2CO3とを含む水溶液を利用した。
このようにして得られた生成物の構造確認のために、NMR(1H-NMR、13C-NMR)測定を行った。なお、NMR測定には、NMR測定機(Varian製、600MHz NMR)を用い、溶剤としてCDCl3を利用した。このようにして得られた生成物の1H-NMR(CDCl3)及び13C-NMR(CDCl3)スペクトルをそれぞれ図2及び図3に示す。図2及び図3に示す結果から、得られた生成物は、下記式(A):
で表されるカルボニル化合物(化合物名:dimethyl 5-(3,4-bis(methoxycarbonyl)phenyl)bicyclo[2.2.1]heptane-2,3-dicarboxylate、略称:PNBTE)であることが確認された。このような結果から、合成例2においては、PNBTEが107g(265mmol)得られたことが分かった。
また、このような生成物(PNBTE)の純度をHPLCにより測定したところ、純度は99.9面積%であることが確認された。なお、粗生成物及び生成物の純度の測定のために採用したHPLC測定の条件としては、以下に記載の条件を採用した。
<HPLC測定条件>
カラム:ZORBAX SB-C18(2.1×150mm、1.8μm)(アジレント・テクノロジー株式会社製)
移動相:アセトニトリル(MeCN)/水(H2O)=7/3(容量比)
流量:0.150mL/min
検出器:DAD 254nm
温度:35℃。
カラム:ZORBAX SB-C18(2.1×150mm、1.8μm)(アジレント・テクノロジー株式会社製)
移動相:アセトニトリル(MeCN)/水(H2O)=7/3(容量比)
流量:0.150mL/min
検出器:DAD 254nm
温度:35℃。
(合成例3:テトラカルボン酸二無水物の合成)
合成例2で得られたPNBTE(53.5g、132mmol)を酢酸エチルに溶解させて酢酸エチル溶液(125mL)を調製した。次に、前記酢酸エチル溶液と、酢酸(450g)とを、容量が1Lの還流管付きのフラスコ中に添加した。次いで、前記フラスコ内の雰囲気ガスを窒素に置換した後、フラスコ内に窒素を流しながら(窒素気流下)、前記酢酸エチル溶液と前記酢酸との混合物を125℃で2.5時間加熱することにより、前記混合物から酢酸とともに酢酸エチルを抜き出した。なお、このような加熱は、フラスコ内の液量がほぼ一定となるように、抜き出した酢酸と同量の酢酸を補充しながら行った。このような加熱を行った後、前記フラスコ内に、トリフルオロメタンスルホン酸(993mg、6.61mmol、略称:TfOH)を酢酸(30.5g)に溶解させた溶液を添加し、フラスコ内に混合液(PNBTE、酢酸及びTfOHを含む混合液)を調製した。その後、窒素気流下、前記混合液を7.5時間加熱(加熱条件:フラスコを135℃の油浴にて加熱)した。なお、このような混合液の加熱は、還流させつつ(還流条件で)、蒸気(酢酸等)の一部を抜き出すようにして行った。また、かかる混合液の加熱に際して、混合液の液量が急激に減らないように、フラスコ内に新たな酢酸の滴下する工程を同時に行った。そして、このような混合液の加熱及び酢酸の滴下は、7.5時間後(加熱終了後)に、混合液中の反応生成物(酸二無水物)の濃度が40質量%となるように計算して行った。このような混合液の加熱により、濃縮された状態の反応生成物の溶液を得た。なお、このような加熱終了後の混合液中の反応生成物(酸二無水物)の濃度(40質量%)の計算は、PNBTEが全て反応して、得られる化合物(反応生成物)がいずれも下記式(B):
合成例2で得られたPNBTE(53.5g、132mmol)を酢酸エチルに溶解させて酢酸エチル溶液(125mL)を調製した。次に、前記酢酸エチル溶液と、酢酸(450g)とを、容量が1Lの還流管付きのフラスコ中に添加した。次いで、前記フラスコ内の雰囲気ガスを窒素に置換した後、フラスコ内に窒素を流しながら(窒素気流下)、前記酢酸エチル溶液と前記酢酸との混合物を125℃で2.5時間加熱することにより、前記混合物から酢酸とともに酢酸エチルを抜き出した。なお、このような加熱は、フラスコ内の液量がほぼ一定となるように、抜き出した酢酸と同量の酢酸を補充しながら行った。このような加熱を行った後、前記フラスコ内に、トリフルオロメタンスルホン酸(993mg、6.61mmol、略称:TfOH)を酢酸(30.5g)に溶解させた溶液を添加し、フラスコ内に混合液(PNBTE、酢酸及びTfOHを含む混合液)を調製した。その後、窒素気流下、前記混合液を7.5時間加熱(加熱条件:フラスコを135℃の油浴にて加熱)した。なお、このような混合液の加熱は、還流させつつ(還流条件で)、蒸気(酢酸等)の一部を抜き出すようにして行った。また、かかる混合液の加熱に際して、混合液の液量が急激に減らないように、フラスコ内に新たな酢酸の滴下する工程を同時に行った。そして、このような混合液の加熱及び酢酸の滴下は、7.5時間後(加熱終了後)に、混合液中の反応生成物(酸二無水物)の濃度が40質量%となるように計算して行った。このような混合液の加熱により、濃縮された状態の反応生成物の溶液を得た。なお、このような加熱終了後の混合液中の反応生成物(酸二無水物)の濃度(40質量%)の計算は、PNBTEが全て反応して、得られる化合物(反応生成物)がいずれも下記式(B):
で表されるテトラカルボン酸二無水物(化合物名:5-(1,3-dioxo-1,3-dihydroisobenzofuran-5-yl)hexahydro-4,7-methanoisobenzofuran-1,3-dione、略称:PNBDA)になったものと想定(100%の変換率となる場合を想定)して行った。そして、かかる加熱後の反応生成物(酸二無水物)の溶液(濃縮液)を一晩(15時間程度)かけてゆっくりと放冷することにより、溶液中に固形分(白色粉末)を析出せしめた(析出開始は85℃付近)。その後、固形分を室温で濾過した後、4℃程度に冷やした酢酸エチル(32.1mL)で洗浄した。そして、洗浄後の固形分を80℃で真空乾燥させることにより、19.2gの白色粒状固体よりなる生成物を得た。
このようにして得られた生成物の構造確認のために、NMR(1H-NMR、13C-NMR)測定を行った。なお、NMR測定には、NMR測定機(Varian製、600MHz NMR)を用い、溶剤としてジメチルスルホキシド-D6(DMSO-D6)を利用した。このようにして得られた生成物の1H-NMR(DMSO-D6)及び13C-NMR(DMSO-D6)スペクトルをそれぞれ図4及び図5に示す。図4及び図5に示す結果から、得られた生成物は、前記式(B)で表されるテトラカルボン酸二無水物(PNBDA)であることが確認された。このような結果から、合成例3においては、PNBDAが19.2g(61.5mmol、算出収率46.5%)得られたことが分かった。また、得られた生成物(PNBDA)の純度を、HPLC測定(PNBTEの純度の測定の際に採用したHPLC測定条件と同様の条件を採用)により求めたところ、純度は98.8面積%であることが確認された。なお、HPLC測定の条件としては、合成例2に記載のHPLC測定条件と同じ条件を採用した。
(実施例1)
先ず、50mLの二口フラスコ内の雰囲気ガスを窒素で置換し、前記二口フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、窒素雰囲気下、前記二口フラスコ内に2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)を1.0275g(3.209mmol)、合成例3で得られたPNBDA(前記式(B)で表されるテトラカルボン酸二無水物)を1.0020g(3.209mmol)添加した。次いで、前記二口フラスコ内に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)とγ―ブチロラクトン(GBL)の混合溶媒を6.089g(質量比:DMAc/GBL=1/1)添加するとともにトリエチルアミンを16.2mg(0.160mmol)添加して撹拌することにより混合液を得た。
先ず、50mLの二口フラスコ内の雰囲気ガスを窒素で置換し、前記二口フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、窒素雰囲気下、前記二口フラスコ内に2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)を1.0275g(3.209mmol)、合成例3で得られたPNBDA(前記式(B)で表されるテトラカルボン酸二無水物)を1.0020g(3.209mmol)添加した。次いで、前記二口フラスコ内に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)とγ―ブチロラクトン(GBL)の混合溶媒を6.089g(質量比:DMAc/GBL=1/1)添加するとともにトリエチルアミンを16.2mg(0.160mmol)添加して撹拌することにより混合液を得た。
次に、前記二口フラスコ内に窒素を流しながら(窒素気流下)、得られた混合液を180℃で5時間加熱撹拌することにより反応液を得た。なお、このような混合液の加熱撹拌工程は、加熱中に副生された水を溶媒(DMAc)と一緒に留出させつつ、留出した溶媒(DMAc)の量と同量のDMAcを前記二口フラスコに添加しながら行った。なお、TFMBの官能基(アミノ基)及びPNBDAの官能基(カルボン酸無水物基)の種類や、前記加熱温度(180℃)等を考慮すれば、前記加熱撹拌工程により前記混合液中にポリイミドが形成されていることは明らかであり、前記反応液はポリイミドの溶液(溶媒:DMAc及びGBL)であることは明白である。また、かかる反応液(ポリイミド溶液)の一部を利用して、ポリイミドを単離した後、ポリイミドの濃度が0.5g/dLとなるDMAc溶液を測定試料として調製し、ポリイミドの固有粘度[η]を測定したところ、ポリイミドの固有粘度[η]は0.34dL/gであった。なお、測定方法は後述する。
次に、塗工液として前記反応液をそのまま利用し、前記塗工液(前記反応液)をガラス板(縦:76mm、横52m、厚み1.3mm)上にスピンコートし、ガラス板上に塗膜を形成した。次いで、前記塗膜の形成されたガラス板を真空ホットチャンバーに投入し、窒素雰囲気、圧力:100Pa程度、温度:70℃の条件で1時間静置した。このようにして、ガラス基板上にポリイミドの乾燥塗膜を形成した。次いで、前記乾燥塗膜の形成されたガラス板をイナートオーブンに投入し、イナートオーブン内で、窒素雰囲気下、30℃から350℃まで4℃/minの昇温速度で昇温し、350℃の焼成温度で60分間保持することにより、前記乾燥塗膜を焼成した後、室温となるまで6時間程度かけて、ゆっくりと冷却することにより、前記ガラス基板上にポリイミドからなるフィルム(ポリイミドフィルム)を形成した。次いで、前記フィルムの形成されたガラス板をオーブンから取り出した後、これを90℃の水中に0.5時間浸漬することにより前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離し、ポリイミドフィルムを回収した。このようにして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み17μm)を得た。
このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。なお、IRスペクトルの測定にはFT-IR測定機(ThermoScientific製、商品名:Nicolet iS10 FT-IR)を利用した。得られたフィルムのIRスペクトルを図6に示す。図6に示す結果からも明らかなように、1714cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
(比較例1)
TFMBの使用量を1.0275g(3.209mmol)から6.4046g(20.000mmol)に変更し、PNBDAの代わりに下記式(C):
TFMBの使用量を1.0275g(3.209mmol)から6.4046g(20.000mmol)に変更し、PNBDAの代わりに下記式(C):
で表されるテトラカルボン酸二無水物(BzDA)を8.1286g(20.000mmol)用い、DMAcとGBLの混合溶媒の代わりに、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)とGBLとの混合溶媒10.9g(質量比:NMP/GBL=1/1)を用い、かつ、反応液(ポリイミド溶液)を得るために前記混合液を180℃で5時間加熱撹拌する代わりに、前記混合液を180℃で6時間加熱撹拌した以外は、前記試験例1と同様にしてポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み33μm)を得た。なお、BzDAは、国際公開第2015/163314号の実施例1に記載された方法に準拠して合成したものを用いた。
[試験例1及び比較試験例1で得られたポリイミドの特性について]
ポリイミドの調製に用いたジアミン化合物の種類が共にTFMBであることから、テトラカルボン酸二無水物の種類の違いに基づくポリイミドの特性の違いを評価すべく、試験例1及び比較試験例1で得られたポリイミドに対して、それぞれ前述の測定方法を採用して特性(YI、HAZE、Tg、Td5%、Td1%、CTE、比誘電率、誘電正接)を評価した。得られた結果を表1に示す。
ポリイミドの調製に用いたジアミン化合物の種類が共にTFMBであることから、テトラカルボン酸二無水物の種類の違いに基づくポリイミドの特性の違いを評価すべく、試験例1及び比較試験例1で得られたポリイミドに対して、それぞれ前述の測定方法を採用して特性(YI、HAZE、Tg、Td5%、Td1%、CTE、比誘電率、誘電正接)を評価した。得られた結果を表1に示す。
表1に示す結果からも明らかなように、実施例1及び比較例1で得られたポリイミドは共にTd1%が420℃以上、Td5%が470℃以上という条件を満たしており、重量減少温度(Td1%、Td5%)を基準とする耐熱性が十分に高い水準にあることが確認された。また、実施例1及び比較例1で得られたポリイミドは共にYIが20以下であり、かつ、HAZEが15以下という条件を満たしていることから、フィルムの着色や濁りが十分に低く、透明性が十分に高い水準にあることも確認された。なお、このような表1に示すYI及びHAZEの値から、実施例1で得られたポリイミドは、従来の芳香族ポリイミドと比較して、透明性の点で優れたものであることは明らかである。
ここで、表1に示す結果からも明らかなように、テトラカルボン酸二無水物としてPNBDAを用いてポリイミドを製造した場合(実施例1)には、Tg、Td1%、Td5%がいずれも、テトラカルボン酸二無水物としてBzDAを用いてポリイミドを製造した場合(比較例1)と対比してより優れた値となっていることから、同じジアミン化合物(TFMB)を利用してポリイミドを調製する場合には、PNBDAを用いた場合に、BzDAを用いた場合よりも、より高度な水準の耐熱性が得られることが確認された。また、PNBDAを用いてポリイミドを製造した場合(実施例1)には、BzDAを用いてポリイミドを製造した場合(比較例1)と対比して、CTEがより低い値となっていることから、同じジアミン化合物(TFMB)を利用してポリイミドを調製する場合には、PNBDAを用いた場合に、BzDAを用いた場合よりもCTEをより低い値とすることも可能となることが分かった。さらに、比誘電率及び誘電正接の測定結果から、同じジアミン化合物(TFMB)を利用してポリイミドを調製する場合には、PNBDAを用いた場合に、BzDAを用いた場合よりも比誘電率及び誘電正接がより低い値となることも分かった。このような結果から、本発明のポリイミドによって、黄色度及び濁度を共に一定水準以下の低い値とすることが可能であるとともに、耐熱性をより高いものとすることができ、更には、線膨張係数をより低い値とすることも可能となることが確認された。
(実施例2)
窒素雰囲気下において、20mLのスクリュー管内に4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-DDE)を0.2562g(1.279mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を3.6960gを導入した。次いで、前記スクリュー管内に、PNBDA(前記式(B)で表されるテトラカルボン酸二無水物)を0.4002g(1.282mmol)添加して混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、室温(25℃程度)の条件下で2日間撹拌して反応液を得た。このようにして反応液中にポリアミド酸を形成した。なお、このようにして得られた反応液(ポリアミド酸のDMAc溶液)の一部を利用して、ポリアミド酸の濃度が0.5g/dLとなるDMAc溶液を調製し、ポリアミド酸の固有粘度[η]を測定した結果、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.61dL/gであった。
窒素雰囲気下において、20mLのスクリュー管内に4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-DDE)を0.2562g(1.279mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を3.6960gを導入した。次いで、前記スクリュー管内に、PNBDA(前記式(B)で表されるテトラカルボン酸二無水物)を0.4002g(1.282mmol)添加して混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、室温(25℃程度)の条件下で2日間撹拌して反応液を得た。このようにして反応液中にポリアミド酸を形成した。なお、このようにして得られた反応液(ポリアミド酸のDMAc溶液)の一部を利用して、ポリアミド酸の濃度が0.5g/dLとなるDMAc溶液を調製し、ポリアミド酸の固有粘度[η]を測定した結果、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.61dL/gであった。
次いで、前記塗膜の形成されたガラス板を真空ホットチャンバーに投入し、窒素雰囲気、圧力:100Pa程度、温度:70℃の条件で1時間静置した。このようにして、ガラス基板上にポリアミド酸(ポリアミック酸)の乾燥塗膜を形成した。次いで、前記乾燥塗膜の形成されたガラス板をイナートオーブンに投入し、イナートオーブン内で、窒素雰囲気下、30℃から350℃まで4℃/minの昇温速度で昇温し、350℃の焼成温度で10分間保持することにより、前記乾燥塗膜を焼成した後、室温となるまで6時間程度時間程度かけて、ゆっくりと冷却することにより、前記ガラス基板上にポリイミドからなるフィルム(ポリイミドフィルム)を形成した。次いで、前記フィルムの形成されたガラス板をオーブンから取り出した後、これを90℃の水中に0.5時間浸漬することにより前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離し、ポリイミドフィルムを回収した。このようにして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み17μm)を得た。
このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図7に示す。図7に示す結果からも明らかなように、1705cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
(実施例3)
PNBDAの使用量を0.2562gから1.022g(3.273mmol)に変更し、4,4’-DDEの代わりに4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABAN)を0.7438g(3.273mmol)用い、DMAcの代わりにテトラメチル尿素(N,N,N’,N’-テトラメチルウレア:TMU)を7.077g用い、反応液を得る際の混合液の撹拌時間を2日から4日に変更した以外は、実施例2と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み16μm)を得た。なお、実施例2と同様に、ポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.38dL/gであった。また、このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図8に示す。図8に示す結果からも明らかなように、1703cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
PNBDAの使用量を0.2562gから1.022g(3.273mmol)に変更し、4,4’-DDEの代わりに4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABAN)を0.7438g(3.273mmol)用い、DMAcの代わりにテトラメチル尿素(N,N,N’,N’-テトラメチルウレア:TMU)を7.077g用い、反応液を得る際の混合液の撹拌時間を2日から4日に変更した以外は、実施例2と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み16μm)を得た。なお、実施例2と同様に、ポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.38dL/gであった。また、このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図8に示す。図8に示す結果からも明らかなように、1703cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
(実施例4)
PNBDAの使用量を0.2562gから1.0123g(3.242mmol)に変更し、4,4’-DDEの代わりに2,2’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(MTD)を0.6891g(3.246mmol)用い、DMAcの使用量を3.6960gから3.9696gに変更し、反応液を得る際の混合液の撹拌時間を2日から3日に変更し、イナートオーブンにて30℃から350℃に昇温する際の昇温速度を2℃/minに変更した以外は、実施例2と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み13μm)を得た。なお、実施例2と同様に、ポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.35dL/gであった。また、このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図9に示す。図9に示す結果からも明らかなように、1706cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
PNBDAの使用量を0.2562gから1.0123g(3.242mmol)に変更し、4,4’-DDEの代わりに2,2’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(MTD)を0.6891g(3.246mmol)用い、DMAcの使用量を3.6960gから3.9696gに変更し、反応液を得る際の混合液の撹拌時間を2日から3日に変更し、イナートオーブンにて30℃から350℃に昇温する際の昇温速度を2℃/minに変更した以外は、実施例2と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み13μm)を得た。なお、実施例2と同様に、ポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.35dL/gであった。また、このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図9に示す。図9に示す結果からも明らかなように、1706cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
(実施例5)
PNBDAの使用量を0.2562gから1.099g(3.519mmol)に変更し、4,4’-DDEの代わりにp-フェニレンジアミン(PPD)を0.3804g(3.518mmol)用い、DMAcの代わりにTMUを8.3838g用い、反応液を得る際の混合液の撹拌時間を2日から3日に変更し、イナートオーブンにて30℃から350℃に昇温する際の昇温速度を2℃/minに変更した以外は、実施例2と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み13μm)を得た。なお、実施例2と同様に、ポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.31dL/gであった。また、このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図10に示す。図10に示す結果からも明らかなように、1704cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
PNBDAの使用量を0.2562gから1.099g(3.519mmol)に変更し、4,4’-DDEの代わりにp-フェニレンジアミン(PPD)を0.3804g(3.518mmol)用い、DMAcの代わりにTMUを8.3838g用い、反応液を得る際の混合液の撹拌時間を2日から3日に変更し、イナートオーブンにて30℃から350℃に昇温する際の昇温速度を2℃/minに変更した以外は、実施例2と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み13μm)を得た。なお、実施例2と同様に、ポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.31dL/gであった。また、このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図10に示す。図10に示す結果からも明らかなように、1704cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
(実施例6)
PNBDAの使用量を1.0020gから0.9637g(3.086mmol)に変更し、TFMBの代わりに4,4’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジアニリン(FDA)とDABANの混合物を用い、FDAの使用量を0.5377g(1.543mmol)とし、DABANの使用量を0.3507g(1.543mmol)とし、トリエチルアミンの使用量を15.6mg(0.154mmol)に変更し、混合溶媒の使用量を6.089gから5.556gに変更し、イナートオーブンでの焼成温度を350℃から300℃に変更し、イナートオーブンにて30℃から350℃に昇温する代わりに30℃から300℃まで昇温し、かつ、イナートオーブンにて焼成温度で保持する時間を60分から120分に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み20μm)を得た。このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図11に示す。図11に示す結果からも明らかなように、1706cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
PNBDAの使用量を1.0020gから0.9637g(3.086mmol)に変更し、TFMBの代わりに4,4’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジアニリン(FDA)とDABANの混合物を用い、FDAの使用量を0.5377g(1.543mmol)とし、DABANの使用量を0.3507g(1.543mmol)とし、トリエチルアミンの使用量を15.6mg(0.154mmol)に変更し、混合溶媒の使用量を6.089gから5.556gに変更し、イナートオーブンでの焼成温度を350℃から300℃に変更し、イナートオーブンにて30℃から350℃に昇温する代わりに30℃から300℃まで昇温し、かつ、イナートオーブンにて焼成温度で保持する時間を60分から120分に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み20μm)を得た。このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図11に示す。図11に示す結果からも明らかなように、1706cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
(実施例7)
PNBDAの使用量を1.0020gから0.952g(3.094mmol)に変更し、TFMBの代わりにTFMBとMTDの混合物を用い、TFMBの使用量を0.4881(1.524mmol)とし、MTDの使用量を0.3236g(1.524mmol)とし、トリエチルアミンの使用量を15.4mg(0.152mmol)に変更し、混合溶媒の使用量を6.089gから5.291gに変更し、混合液を180℃で加熱撹拌する時間を5時間から4時間に変更し、イナートオーブンでの焼成温度を350℃から300℃に変更し、イナートオーブンにて30℃から350℃に昇温する代わりに30℃から300℃まで昇温し、かつ、イナートオーブンにて焼成温度で保持する時間を60分から120分に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み29μm)を得た。このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図12に示す。図12に示す結果からも明らかなように、1709cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
PNBDAの使用量を1.0020gから0.952g(3.094mmol)に変更し、TFMBの代わりにTFMBとMTDの混合物を用い、TFMBの使用量を0.4881(1.524mmol)とし、MTDの使用量を0.3236g(1.524mmol)とし、トリエチルアミンの使用量を15.4mg(0.152mmol)に変更し、混合溶媒の使用量を6.089gから5.291gに変更し、混合液を180℃で加熱撹拌する時間を5時間から4時間に変更し、イナートオーブンでの焼成温度を350℃から300℃に変更し、イナートオーブンにて30℃から350℃に昇温する代わりに30℃から300℃まで昇温し、かつ、イナートオーブンにて焼成温度で保持する時間を60分から120分に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドからなるフィルム(縦76mm、横52mm、厚み29μm)を得た。このようにして得られたフィルムのIRスペクトルを測定した。得られたフィルムのIRスペクトルを図12に示す。図12に示す結果からも明らかなように、1709cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が見られることから、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
[実施例2~7で得られたポリイミドの特性について]
実施例2~7で得られたポリイミドの特性(膜厚、YI、HAZE、Tg、Td5%、Td1%、CTE)の評価結果をそれぞれ表2に示す。なお、表2中の「-」は未測定であることを示す。
実施例2~7で得られたポリイミドの特性(膜厚、YI、HAZE、Tg、Td5%、Td1%、CTE)の評価結果をそれぞれ表2に示す。なお、表2中の「-」は未測定であることを示す。
表2に示す結果からも明らかなように、実施例2~7で得られたポリイミドはいずれも、Td1%が420℃以上、Td5%が470℃以上という条件を満たしており、重量減少温度(Td1%、Td5%)を基準とする耐熱性が十分に高い水準にあることが確認された。また、実施例2~7で得られたポリイミドはいずれも、YIが20以下であり、かつ、HAZEが15以下であるという条件を満たすことから、フィルムの着色や濁りが十分に低く、透明性が十分に高い水準にあることも確認された。なお、このような表1に示すYI及びHAZEの値から、実施例1で得られたポリイミドは、従来の芳香族ポリイミドと比較して、透明性の点で優れたものであることは明らかである。
表1及び表2に示す結果を併せ勘案すれば、本発明のポリイミドによって、黄色度及び濁度を共に一定水準以下の低い値とすることが可能であるとともに、耐熱性をより高いものとすることが可能であることが分かった。また、本発明のポリイミドによれば、BzDAを用いてポリイミドを製造した場合(比較例1)と対比して、CTE、比誘電率及び誘電正接がより低い値となることも分かった。
以上説明したように、本発明によれば、黄色度及び濁度を共に一定水準以下の低い値とすることが可能であるとともに、耐熱性をより高いものとすることが可能なポリイミド、及び、そのポリイミドを製造するために好適に使用することが可能なポリイミド前駆体樹脂を提供することが可能となる。したがって、本発明のポリイミドは、特に、フレキシブル配線基板用フィルム、液晶配向膜に用いるフィルム、有機EL用透明導電性フィルム、有機EL照明用フィルム、フレキシブル基板フィルム、フレキシブル有機EL用基板フィルム、フレキシブル透明導電性フィルム、透明導電性フィルム、有機薄膜型太陽電池用透明導電性フィルム、色素増感型太陽電池用透明導電性フィルム、フレキシブルガスバリアフィルム、タッチパネル用フィルム、フレキシブルディスプレイ用フロントフィルム、フレキシブルディスプレイ用バックフィルム、ポリイミドベルト、コーティング剤、バリア膜、封止材、層間絶縁材料、パッシベーション膜、TABテープ、FPC、COF、光導波路、カラーフィルター基材、半導体コーティング剤、耐熱絶縁テープ、電線エナメル等の用途に好適に利用可能である。
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