JP2022121225A - ポリイミド及びポリアミド酸 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ポリイミド並びにポリアミド酸に関する。
従来より、耐熱性や寸法安定性に優れるという観点から、芳香系のテトラカルボン酸二無水物ユニットと芳香系のジアミンユニットとを有する全芳香族ポリイミドが汎用されている。このような全芳香族ポリイミドとしては、例えば、特開2007-046045号公報(特許文献1)に記載されているような特定の繰り返し単位を有する全芳香族ポリイミドが知られている。しかしながら、従来の全芳香族ポリイミドは、高度な耐熱性を有するものの、高分子鎖内及び高分子鎖間の相互作用に起因して、黄色から褐色に着色したものとなっていた。なお、従来の全芳香族ポリイミドは、基本的に、耐熱性と黄色度がトレードオフの関係にあり、耐熱性の高いものほど着色する傾向にあった。このように、従来の全芳香族ポリイミドは、高い耐熱性と、低い黄色度を両立できなかった。
このような状況の下、全芳香族ポリイミドをガラス基板の代替品として有機EL照明やフレキシブルディスプレイ等の基板用のフィルムに応用するといった観点から、近年では、特に、耐熱性を従来とほぼ同様の高い水準に維持しつつ、黄色度がより低減された全芳香族ポリイミドの出現が望まれている。
なお、特開2018-77271号公報(特許文献2)においては、電子輸送剤に利用可能な化合物として、下記式(A)で表される化合物が開示され、その化合物の製造に、下記式(B)で表される化合物を利用することが記載されている。
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性を十分に高い水準に維持しつつ、黄色度をより低い値とすることが可能なポリイミド、及び、前記ポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なポリアミド酸を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリイミドを、下記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物とすることにより、耐熱性を十分に高い水準に維持しつつ、黄色度をより低い値とすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリイミドは、
下記式(1):
下記式(1):
で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(Helicene[5]-5,6,9,10-tetracarboxylic dianhydride)からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物であることを特徴とするものである。
本発明のポリアミド酸は、上記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(Helicene[5]-5,6,9,10-tetracarboxylic dianhydride)からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重付加物であることを特徴とするものである。
本発明によれば、耐熱性を十分に高い水準に維持しつつ、黄色度をより低い値とすることが可能なポリイミド、及び、前記ポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なポリアミド酸を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<ポリイミド>
本発明のポリイミドは、
下記式(1):
本発明のポリイミドは、
下記式(1):
で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物からなることを特徴とするものである。
なお、一般的に、ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを開環付加反応させることにより、これらの重付加物(付加重合体、開環重付加体)であるポリアミド酸を形成し、その後、得られたポリアミド酸を閉環縮合(脱水閉環:分子内縮合)させることにより得られるものであることが知られている。このように、ポリイミドは、一般に、上述のような反応により得られる重合体であることから、本発明のポリイミドは、前記ヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合(前記重付加及び前記閉環縮合)により得られる重縮合物であるといえる。
本発明にかかる芳香族テトラカルボン酸二無水物は、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなるものである。このような式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物は、[5]ヘリセン-5,6,9,10-テトラカルボン酸二無水物(Helicene[5]-5,6,9,10-tetracarboxylic dianhydride)である。このようなヘリセン型テトラカルボン酸二無水物の合成方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、Journal of Organic Chemistry (1995),vol.60(issue 6),p.1658-p.1664に記載されている方法の他、New J.Chem.,2016,vol.40,p.113-p.121に記載されている方法等、公知の文献に記載されている方法等)を適宜採用することができる。
また、本発明にかかる芳香族テトラカルボン酸二無水物は、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなるものであればよく、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物以外の他の芳香族系のテトラカルボン酸二無水物(以下、便宜上、場合により、単に「他のテトラカルボン酸二無水物」と称する)を含んでいてもよい。このような他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物の調製時に副生成物として生成され得る下記式(2):
で表される化合物や、全芳香族ポリイミドの製造に利用することが可能な公知の芳香族系のテトラカルボン酸二無水物(例えば、ピロメリット酸無水物、4,4’-ビフタル酸無水物、3,4’-ビフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(エチン-1,2-ジイル)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物等)等を適宜利用し得る。
また、本発明にかかる芳香族テトラカルボン酸二無水物が、他のテトラカルボン酸二無水物を含む場合、かかる他のテトラカルボン酸二無水物としては前記式(2)で表される化合物が好ましい。本発明にかかる芳香族テトラカルボン酸二無水物が、他の芳香族系のテトラカルボン酸二無水物として前記式(2)で表される化合物を含む場合には、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物の調製時に精製処理工程を簡略化することが可能となり、原料化合物の生成がより容易となる傾向にある。
また、本発明にかかる芳香族テトラカルボン酸二無水物中の前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物の含有量は特に制限されないが、黄色度の低減をさらに図ることが可能となるといった観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物の総量に対する前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物の量が70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90~100モル%であることが更に好ましい。また、本発明にかかる芳香族テトラカルボン酸二無水物は、黄色度を低減する効果が更に高いものとなることから、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物のみからなるものを利用することが特に好ましい。
また、前記芳香族ジアミンとしては、特に制限されず、全芳香族ポリイミドの製造に利用することが可能な公知のもの(例えば、特開2018-44180号公報の段落[0039]に記載されている芳香族ジアミン等)を適宜利用できる。このような芳香族ジアミンとしては、例えば、式(X):
H2N-Ar-NH2 (X)
[式(X)中のArは炭素数6~50のアリーレン基を示す。]
で表される芳香族ジアミンが好ましい。
H2N-Ar-NH2 (X)
[式(X)中のArは炭素数6~50のアリーレン基を示す。]
で表される芳香族ジアミンが好ましい。
このような式(X)中のArとして選択され得る炭素数6~50のアリーレン基としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応性や、得られるポリイミドの黄色度、耐熱性、機械強度、寸法安定性といった特性が、さらに向上することから、4,4’-ジアミノベンズアニリド(略称:DABAN)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(略称:4,4’-DDE)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(略称:3,4-DDE)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE-R)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(略称:TFMB)、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(略称:FDA)、p-ジアミノベンゼン(略称:PPD)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:m-tol)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(別名:o-トリジン)、4,4’-ジフェニルジアミノメタン(略称:DDM)、4-アミノフェニル―4-アミノ安息香酸(略称:BAAB)、4,4’-ビス(4-アミノベンズアミド)-3,3’-ジヒドロキシビフェニル(略称:BABB)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(略称:3,3’-DDS)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:APB-N)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE-Q)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(略称:4-APBP)、4,4’’-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS-M)、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(略称:BAPP)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:HFBAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(略称:BAPK)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(略称:4,4’-DDS)、(2-フェニル-4-アミノフェニル)-4-アミノベンゾエート(4-PHBAAB)、4,4’’-ジアミノ-p-テルフェニル(略称:Terphenyl)、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド(略称:ASD)、ビスアニリンM、ビスアニリンP、2,2’’’-ジアミノ-p-クォーターフェニル、2,3’’’-ジアミノ-p-クォーターフェニル、2,4’’’-ジアミノ-p-クォーターフェニル、3,3’’’-ジアミノ-p-クォーターフェニル、3,4’’’-ジアミノ-p-クォーターフェニル、4,4’’’-ジアミノ-p-クォーターフェニル、2,6-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、及び、1,4-ジアミノナフタレンからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基(アリーレン基)が好適なものとして挙げられる。そのため、本発明にかかる芳香族ジアミンとしては、式(X)中のAr(アリーレン基)の説明のために記載した上記の芳香族ジアミン(DABAN、DDE、TPE-R、TFMB等)を好適に利用できる。
また、このような芳香族ジアミンとしては、中でも、更なる黄色度の低減を図ることが可能となるといった観点から、TPE-R、4,4’-DDS、TFMB、3,3’-DDS、BAAB、BAPS、BAPS-Mがより好ましく、TPE-R、4,4’-DDE、TFMBが特に好ましい。なお、このような芳香族ジアミンは1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、本発明のポリイミドは、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重縮合物である。このようなポリイミドは、少なくとも、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの反応により形成される繰り返し単位を含むものとなるため、例えば、前記芳香族ジアミンを上記式(X)で表される化合物(H2N-Ar-NH2)とした場合には、下記式(3):
[式中、Arは炭素数6~50のアリーレン基を示す(上記式(X)中のArと同義である。)]
で表される繰り返し単位(I)を有するものとすることができる。
で表される繰り返し単位(I)を有するものとすることができる。
また、本発明のポリイミドが前記式(3)で表される繰り返し単位(I)を有するものである場合、前記繰り返し単位(I)の含有量は特に制限されないが、ポリイミド中の全繰り返し単位に対して80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、100モル%であることが特に好ましい。前記繰り返し単位(I)の含有量を前記下限以上とすることで、前記下限未満とした場合と比較して、黄色度を更に低減させることが可能となる。
また、本発明のポリイミドとしては、耐熱性を十分に高い状態のものとするといった観点から、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上のものが好ましく、250~550℃のものがより好ましく、300~550℃のものが更に好ましい。なお、このようなガラス転移温度(Tg)は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を使用して引張モードにより測定することができる。
さらに、本発明のポリイミドとしては、耐熱性を十分に高い状態のものとするといった観点から、5%重量減少温度が450℃以上のものが好ましく、450~550℃のものがより好ましい。なお、このような5%重量減少温度は、窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら室温(例えば、25℃)から40℃に昇温した後、40℃を測定開始温度として徐々に加熱していき、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めることができる。
また、このようなポリイミドの数平均分子量(Mn)としては、ポリスチレン換算で1000~1000000であることが好ましく、10000~500000であることがより好ましい。このようなポリイミドの重量平均分子量(Mw)としては、ポリスチレン換算で1000~5000000であることが好ましく、5000~5000000であることがより好ましく、10000~500000であることが更に好ましい。このようなMn及びMwが前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となるばかりか、製膜可能なポリイミドを得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると粘性が増大し、溶解させるのに長時間を要し、溶剤を大量に必要とするとともに、製膜時にシワが寄るなど加工が困難となる傾向にある。
さらに、このようなポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は1.1~5.0であることが好ましく、1.5~3.0であることがより好ましい。このような分子量分布が前記下限未満では製造することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると均一なフィルムを得にくい傾向にある。なお、このようなポリイミドの分子量(Mw又はMn)や分子量の分布(Mw/Mn)は、測定装置としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(東ソー株式会社製、商品名:HLC-8320GPC/カラム4本:東ソー株式会社製、商品名:TSK gel SuperAW4000,3000,2500,SuperH-RC、溶媒:N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc))を用いて測定したデータをポリスチレンで換算して求めることができる。なお、このようなポリイミドにおいては、分子量の測定が困難な場合には、そのポリイミドの製造に用いるポリアミド酸の粘度に基づいて、分子量等を類推して、用途等に応じたポリイミドを選別して使用してもよい。
なお、本発明のポリイミドは、その用途に応じて公知の成分を適宜含有させてもよく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤・ヒンダードアミン系光安定剤、核剤・透明化剤、無機フィラー(ガラス繊維、ガラス中空球、タルク、マイカ、アルミナ、チタニア、シリカなど)、重金属不活性化剤・フィラー充填プラスチック用添加剤、難燃剤、加工性改良剤・滑剤/水分散型安定剤、永久帯電防止剤、靱性向上剤、界面活性剤、炭素繊維等の添加成分を更に含有させていてもよい。
また、このようなポリイミドの形状は特に制限されず、例えば、フィルム形状や粉状としたり、更には、押出成形によりペレット形状等としてもよい。このように、本発明のポリイミドは、フィルム形状にしたり、押出成形によりペレット形状としたり、公知の方法で各種の形状に適宜成形することもできる。
また、このようなポリイミドは、各種用途に利用でき、例えば、ガラス代替用途(例えば、有機EL照明の光取り出し効率向上フィルムや、フレキシブルディスプレイの基板等)に利用するフィルムを製造するための材料等として特に有用である。
<ポリアミド酸>
本発明のポリアミド酸は、上記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重付加物であることを特徴とするものである。
本発明のポリアミド酸は、上記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重付加物であることを特徴とするものである。
なお、ポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを開環付加反応させることにより得られるものであることが知られている。このように、ポリアミド酸は、一般に、上述のような開環付加反応により得られる重合体であることから、本発明のポリアミド酸は、前記ヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重付加物(付加重合体、開環重付加体)であるといえる。また、本発明のポリアミド酸に関して、「上記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物」や「芳香族ジアミン」はいずれも、前記本発明のポリイミドにおいて説明したものと同義である。
また、本発明のポリアミド酸は、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重付加物であることから、少なくとも、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの反応により形成される繰り返し単位を含むものとなる。そのため、本発明のポリアミド酸は、例えば、前記芳香族ジアミンを上記式(X)で表される化合物(H2N-Ar-NH2)とした場合には、下記式(4):
[式中、Arは炭素数6~50のアリーレン基を示し(上記式(X)中のArと同義である。)、[5]ヘリセン環(ヘリセン骨格)の周囲の1~14の数字は位置番号を示し、[5]ヘリセン環の5の位置にaで表される結合手及びbで表される結合手のうちの一方が結合し、[5]ヘリセン環の6の位置にaで表される結合手及びbで表される結合手のうちのもう一方が結合し、[5]ヘリセン環の9の位置にcで表される結合手及びdで表される結合手のうちの一方が結合し、かつ、[5]ヘリセン環の10の位置にcで表される結合手及びdで表される結合手のうちのもう一方が結合する。]
で表される繰り返し単位(II)を有するものとすることができる。
で表される繰り返し単位(II)を有するものとすることができる。
また、本発明のポリアミド酸が前記式(4)で表される繰り返し単位(II)を有するものである場合、前記繰り返し単位(II)の含有量は特に制限されないが、ポリアミド酸中の全繰り返し単位に対して70~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、100モル%であることが特に好ましい。前記繰り返し単位(II)の含有量を前記下限以上とすることで、前記下限未満とした場合と比較して、ポリイミドの調製に利用した場合に、ポリイミドの黄色度を更に低減させることが可能となる。
また、このようなポリアミド酸としては、固有粘度[η]が0.05~3.0dL/gであることが好ましく、0.1~2.0dL/gであることがより好ましい。このような固有粘度[η]が前記下限以上とすることで、前記下限未満とした場合と比較して、これを用いてポリイミドのフィルムを製造した際に、得られるフィルムが強度を向上させることが可能となり、他方、前記上限以下とすることで、上記上限を超えた場合と比較して、粘度の観点で加工性に優れたものとなり、例えば、フィルムの製造に利用した場合においてもシワの発生を抑制することが可能となり、均一なフィルムを効率よく製造ることが可能となる。また、本明細書において、ポリアミド酸の「固有粘度[η]」は、以下のようにして測定される値を採用する。すなわち、先ず、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミドを用い、そのN,N-ジメチルアセトアミド中に前記ポリアミド酸を濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解させて、測定試料(溶液)を得る。次に、前記測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC-252」)を用いる。
また、このようなポリアミド酸は、本発明のポリイミドを製造する際に好適に利用することが可能なものである(本発明のポリイミドを製造する際の反応中間体(前駆体)として得ることが可能なものである。)。
なお、本発明のポリアミド酸は、例えば、かかるポリアミド酸が式(4)で表される繰り返し単位を有するものである場合、用途に応じた特性を有するものとなるように、溶解安定性や保存安定性を向上させるといった観点等から、これを誘導体化することにより(ポリアミド酸の誘導体を調製することにより)利用してもよい。このようなポリアミド酸の誘導体としては、例えば、下記式(4’):
[式中、Arは炭素数6~50のアリーレン基を示し(上記式(X)中のArと同義である。)、Rは炭素数1~6(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基及び炭素数3~9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種の置換基を示し、[5]ヘリセン環(ヘリセン骨格)の周囲の1~14の数字は位置番号を示し、[5]ヘリセン環の5の位置にaで表される結合手及びbで表される結合手のうちの一方が結合し、[5]ヘリセン環の6の位置にaで表される結合手及びbで表される結合手のうちのもう一方が結合し、[5]ヘリセン環の9の位置にcで表される結合手及びdで表される結合手のうちの一方が結合し、かつ、[5]ヘリセン環の10の位置にcで表される結合手及びdで表される結合手のうちのもう一方が結合する。]
で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸の誘導体が例示できる。なお、このようなRは、その置換基の種類、及び、置換基の導入率を、その製造条件を適宜変更することで変化させることができる。また、Rは炭素数1~6(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基である場合、ポリアミド酸の保存安定性をより優れたものとなる傾向にある。また、かかるRが炭素数3~9のアルキルシリル基である場合、ポリアミド酸の溶解性がより優れたものとなる傾向にある。なお、このようにRが炭素数3~9のアルキルシリル基である場合、Rはトリメチルシリル基又はt-ブチルジメチルシリル基であることがより好ましい。また、式(4’)で表される繰り返し単位の調製方法は特に制限されず、例えば、式:-COOHで表される基中の水素原子(H)を上記Rで表される置換基に置換することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。
で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸の誘導体が例示できる。なお、このようなRは、その置換基の種類、及び、置換基の導入率を、その製造条件を適宜変更することで変化させることができる。また、Rは炭素数1~6(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基である場合、ポリアミド酸の保存安定性をより優れたものとなる傾向にある。また、かかるRが炭素数3~9のアルキルシリル基である場合、ポリアミド酸の溶解性がより優れたものとなる傾向にある。なお、このようにRが炭素数3~9のアルキルシリル基である場合、Rはトリメチルシリル基又はt-ブチルジメチルシリル基であることがより好ましい。また、式(4’)で表される繰り返し単位の調製方法は特に制限されず、例えば、式:-COOHで表される基中の水素原子(H)を上記Rで表される置換基に置換することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。
<ポリアミド酸及びポリイミドを製造するための方法について>
上記本発明のポリアミド酸や、上記本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に利用可能な方法について簡単に説明する。先ず、上記本発明のポリアミド酸を製造するための方法として好適に利用可能な方法について説明する。
上記本発明のポリアミド酸や、上記本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に利用可能な方法について簡単に説明する。先ず、上記本発明のポリアミド酸を製造するための方法として好適に利用可能な方法について説明する。
上記本発明のポリアミド酸を製造するための方法として好適に利用可能な方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、有機溶媒の存在下において、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、前記芳香族ジアミンとを付加重合反応させて、上記本発明のポリアミド酸を得る方法を挙げることができる。
このような方法に用いる有機溶媒としては、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、前記芳香族ジアミンの両者を溶解することが可能な有機溶媒であることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ピリジンなどの非プロトン系極性溶媒;m-クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒;テトラハイドロフラン、ジオキサン、セロソルブ、グライムなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;シクロペンタノンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;などが挙げられる。このような有機溶媒は、1種を単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
このような有機溶媒の使用量としては、反応に用いられる前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、前記芳香族ジアミンとの総量が、反応溶液の全量に対して1~80質量%(より好ましくは5~50質量%)になるような量であることが好ましい。このような有機溶媒の使用量を前記範囲内とすることで、効率よくポリアミド酸を得ることが可能となる。
また、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、前記芳香族ジアミンとを付加重合反応させる際の反応温度は、これらの付加重合反応を進行させることが可能な温度に適宜調整すればよく、特に制限されないが、15~100℃とすることが好ましい。また、このような付加重合反応を行う際には、特に制限されないが、例えば、大気圧中、又は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下において、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、前記芳香族ジアミンとを含む溶液を前記反応温度において10~100時間撹拌しながら反応させる方法を採用してもよい。このような反応温度や反応時間を前記範囲内とすることで、十分に反応させることを可能としつつ、重合物を劣化させる物質(酸素等の劣化物質)の混入を抑制して、劣化物質に起因する分子量の低下を抑制することが可能となる。このようにして、前記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸二無水物と、前記芳香族ジアミンとの付加重合反応を進行させることで、本発明のポリアミド酸を得ることが可能となる。
次に、上記本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に利用可能な方法について説明する。上記本発明のポリイミドを製造するための方法として好適に利用可能な方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、前述のようにして、上記本発明のポリアミド酸を得た後、かかるポリアミド酸を閉環縮合(脱水閉環:分子内縮合)させてイミド化することにより、ポリイミドを得る方法を挙げることができる。なお。このようなポリアミド酸を閉環縮合(脱水閉環:分子内縮合)させてイミド化するための方法(条件等)は特に制限されず、公知のイミド化の方法(例えば、国際公開第2011/099518号に記載されているイミド化の方法等)において採用されている方法(条件)を適宜採用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<ヘリセン型テトラカルボン酸二無水物の合成について>
(合成例1)
以下のようにして、式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を製造した。なお、最終生成物を得るまでの反応の反応式(合成法)を簡略化して、下記反応式(I)に示す。そして、このような式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を製造に際しては、先ず、Chemistry Select,2018,vol.3,No.21,p.5848-p.5852に記載された方法に準拠して、下記式(I-1)で表される化合物と下記式(I-2)で表される化合物とを反応させて、下記式(I-3)で表される化合物を合成した後、New J.Chem.,2016,vol.40,p.113-p.121に記載された方法に沿って、下記式(I-3)で表される化合物から下記式(1)で表されるヘリセン型酸二無水物の合成を行い、最終生成物を得た。このような合成法によって得られた最終生成物は、下記反応式(I)に記載するように、式(1)で表されるヘリセン型酸二無水物と、式(2)で表される化合物(ジベンゾアントラセン型酸二無水物:副生成物)の混合物であった(以下、かかる混合物(合成例1で得られた最終生成物)を場合により、単に「酸二無水物の混合物(A)」と称する。)。また、下記式(I-3)で表される化合物(中間体)の収率は20%であった。また、下記式(I-3)で表される化合物(中間体)の量に基づく最終生成物の収率は44%であった。さらに、得られた最終生成物をNew J.Chem.,2016,vol.40,p.113-p.121に記載の方法に沿ってジイミド化し、重クロロホルムに溶解して1H-NMRを測定することにより、最終生成物中に含まれる式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物と式(2)で表される化合物のモル比([式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物]:[式(2)で表されるジベンゾアントラセン型酸二無水物])を確認したところ、モル比は90:10であることが確認された。
(合成例1)
以下のようにして、式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を製造した。なお、最終生成物を得るまでの反応の反応式(合成法)を簡略化して、下記反応式(I)に示す。そして、このような式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を製造に際しては、先ず、Chemistry Select,2018,vol.3,No.21,p.5848-p.5852に記載された方法に準拠して、下記式(I-1)で表される化合物と下記式(I-2)で表される化合物とを反応させて、下記式(I-3)で表される化合物を合成した後、New J.Chem.,2016,vol.40,p.113-p.121に記載された方法に沿って、下記式(I-3)で表される化合物から下記式(1)で表されるヘリセン型酸二無水物の合成を行い、最終生成物を得た。このような合成法によって得られた最終生成物は、下記反応式(I)に記載するように、式(1)で表されるヘリセン型酸二無水物と、式(2)で表される化合物(ジベンゾアントラセン型酸二無水物:副生成物)の混合物であった(以下、かかる混合物(合成例1で得られた最終生成物)を場合により、単に「酸二無水物の混合物(A)」と称する。)。また、下記式(I-3)で表される化合物(中間体)の収率は20%であった。また、下記式(I-3)で表される化合物(中間体)の量に基づく最終生成物の収率は44%であった。さらに、得られた最終生成物をNew J.Chem.,2016,vol.40,p.113-p.121に記載の方法に沿ってジイミド化し、重クロロホルムに溶解して1H-NMRを測定することにより、最終生成物中に含まれる式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物と式(2)で表される化合物のモル比([式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物]:[式(2)で表されるジベンゾアントラセン型酸二無水物])を確認したところ、モル比は90:10であることが確認された。
(合成例2)
<ヘリセン型ジイミドの調製工程>
合成例1と同様の方法を採用して、酸二無水物の混合物(A)を得た後、かかる混合物(A)を用いて、Org.Lett.2020,vol.22,No.14,p.5294~p.5296に記載された方法に準拠し、下記反応式(II)に示す方法で、下記式(II-1)で表される化合物(ヘリセン型ジイミド)を得た。すなわち、先ず、酸二無水物の混合物(A)418.4mg(酸二無水物のモル量:0.12ミリモル)をN-メチルピロリドン(NMP)17.0mLに溶解せしめて溶液を得た後、該溶液にアルゴン雰囲気下でベンジルアミン(39mg、0.360ミリモル)を加えて、反応用混合液を得た。次に、前記反応用混合液を油浴で170℃に加熱し、170℃で6.5時間撹拌して、下記式(II-1)で表される化合物(ヘリセン型ジイミド)及び下記式(II-2)で表される化合物(ジベンゾアントラセン型イミド)を含む反応液(異性体混合物を含む反応液)を得た後、得られた反応液(異性体混合物を含む反応液)をジクロロメタンで希釈した。次いで、希釈後の反応液の有機層を1mol/LのHCl水溶液及び水で順次洗浄した。その後、洗浄後の反応液から有機層を分離(分液)し、得られた有機層を無水Na2SO4で乾燥させた後、真空中で濃縮させて濃縮液(残留NMP溶液)を得た。次に、前記濃縮液(残留NMP溶液)にメタノールを加え、ヘリセン型ジイミドの固体を析出させて、ろ過することにより黄色の固体を得た。このように、Org.Lett.2020,vol.22,No.14,p.5294~p.5296に記載された方法に準拠して、ヘリセン型ジイミドとジベンゾアントラセン型イミドの混合物(異性体混合物)から、ヘリセン型ジイミド(下記式(II-1)で表される化合物)を分離して黄色の固体を得た。
<ヘリセン型ジイミドの調製工程>
合成例1と同様の方法を採用して、酸二無水物の混合物(A)を得た後、かかる混合物(A)を用いて、Org.Lett.2020,vol.22,No.14,p.5294~p.5296に記載された方法に準拠し、下記反応式(II)に示す方法で、下記式(II-1)で表される化合物(ヘリセン型ジイミド)を得た。すなわち、先ず、酸二無水物の混合物(A)418.4mg(酸二無水物のモル量:0.12ミリモル)をN-メチルピロリドン(NMP)17.0mLに溶解せしめて溶液を得た後、該溶液にアルゴン雰囲気下でベンジルアミン(39mg、0.360ミリモル)を加えて、反応用混合液を得た。次に、前記反応用混合液を油浴で170℃に加熱し、170℃で6.5時間撹拌して、下記式(II-1)で表される化合物(ヘリセン型ジイミド)及び下記式(II-2)で表される化合物(ジベンゾアントラセン型イミド)を含む反応液(異性体混合物を含む反応液)を得た後、得られた反応液(異性体混合物を含む反応液)をジクロロメタンで希釈した。次いで、希釈後の反応液の有機層を1mol/LのHCl水溶液及び水で順次洗浄した。その後、洗浄後の反応液から有機層を分離(分液)し、得られた有機層を無水Na2SO4で乾燥させた後、真空中で濃縮させて濃縮液(残留NMP溶液)を得た。次に、前記濃縮液(残留NMP溶液)にメタノールを加え、ヘリセン型ジイミドの固体を析出させて、ろ過することにより黄色の固体を得た。このように、Org.Lett.2020,vol.22,No.14,p.5294~p.5296に記載された方法に準拠して、ヘリセン型ジイミドとジベンゾアントラセン型イミドの混合物(異性体混合物)から、ヘリセン型ジイミド(下記式(II-1)で表される化合物)を分離して黄色の固体を得た。
なお、このようにして得られた黄色の固体を重クロロホルムに溶解して1H-NMRを測定することにより、得られた黄色の固体に含まれる化合物の同定を行ったところ、1H-NMRにおいて9.21ppm並びに9.17ppmにピークが確認されたことから、得られた固体は純粋なヘリセン型ジイミド(純度(質量比):100%)であると同定した。なお、1H-NMR測定の結果として、前述のようにして得られた黄色の固体の1H-NMRのグラフを図1に示す。また、得られた固体の質量から、異性体混合物の中から分離して得られたヘリセン型イミドの収率は54%であることが分かった。
<ヘリセン型テトラカルボン酸二無水物の調製工程>
前述の「ヘリセン型ジイミドの調製工程」を採用して得られた固体(式(II-1)で表される化合物:以下、便宜上、場合により単に「ヘリセン型ジイミド」と称する。)を利用し、Journal of Materials Chemistry B: Materials for Biology and Medicine,2017,vol.5,No.32,p.6572-p.6578に記載された方法に準拠して、下記反応式(III)に示す方法で、式(II-1)で表される化合物から、式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を得た。すなわち、先ず、前述の「ヘリセン型ジイミドの調製工程」を採用して得られた前記ヘリセン型ジイミド(純度(質量比):100%)0.1mmolを、前記ヘリセン型ジイミドに対して11.1モル当量となる割合のKOHと、イソプロパノールとからなる混合液中に加えた後、還流条件で8時間ほど反応を行って、反応液を得た。なお、このような反応はKOHを利用して、前記ヘリセン型ジイミドのイミド環を加水分解して開環する反応(加水分解反応)であり、かかる8時間の還流工程によって進行さえた加水分解反応によって、式(II-1)で表される化合物(前記ヘリセン型ジイミド)が完全に消費されたことが、薄層クロマトグラフィーによる分析で確認された。次いで、エバポレーターを用いて得られた反応液から溶媒を蒸散せしめて、ヘリセン型イミドの加水分解物を固形分として得た。次に、得られた固形分を、水と2mol/Lの塩酸とからなる混合液中に加えた後、60℃で30分間加熱して[5]ヘリセン-5,6,9,10-テトラカルボン酸二無水物を得た(前記固形分を形成する化合物をテトラカルボン酸二無水物に変換した)。次いで、得られた[5]ヘリセン-5,6,9,10-テトラカルボン酸二無水物を、水、エタノール、アセトン、ジエチルエーテルで洗浄し、ろ過した後、真空下において乾燥することにより、下記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を得た(収率81%)。このようにして得られた式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物に対してIR測定を行った結果、OH基のピークが確認されなかったことから、上記加水分解反応により得られたヘリセン型イミドの加水分解物や、[5]ヘリセン-5,6,9,10-テトラカルボン酸に由来するカルボン酸が含まれていないことが確認された(IR測定によりカルボン酸は検出されなかった)。このようなIR測定の結果として、得られた化合物のIRスペクトルのグラフを図2に示す。また、得られた式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物をNew J.Chem.,2016,vol.40,p.113-p.121に記載の方法に沿ってジイミド化し、重クロロホルムに溶解して1H-NMRを測定した結果、純度(質量比)が100%の純粋なヘリセン型テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。
前述の「ヘリセン型ジイミドの調製工程」を採用して得られた固体(式(II-1)で表される化合物:以下、便宜上、場合により単に「ヘリセン型ジイミド」と称する。)を利用し、Journal of Materials Chemistry B: Materials for Biology and Medicine,2017,vol.5,No.32,p.6572-p.6578に記載された方法に準拠して、下記反応式(III)に示す方法で、式(II-1)で表される化合物から、式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を得た。すなわち、先ず、前述の「ヘリセン型ジイミドの調製工程」を採用して得られた前記ヘリセン型ジイミド(純度(質量比):100%)0.1mmolを、前記ヘリセン型ジイミドに対して11.1モル当量となる割合のKOHと、イソプロパノールとからなる混合液中に加えた後、還流条件で8時間ほど反応を行って、反応液を得た。なお、このような反応はKOHを利用して、前記ヘリセン型ジイミドのイミド環を加水分解して開環する反応(加水分解反応)であり、かかる8時間の還流工程によって進行さえた加水分解反応によって、式(II-1)で表される化合物(前記ヘリセン型ジイミド)が完全に消費されたことが、薄層クロマトグラフィーによる分析で確認された。次いで、エバポレーターを用いて得られた反応液から溶媒を蒸散せしめて、ヘリセン型イミドの加水分解物を固形分として得た。次に、得られた固形分を、水と2mol/Lの塩酸とからなる混合液中に加えた後、60℃で30分間加熱して[5]ヘリセン-5,6,9,10-テトラカルボン酸二無水物を得た(前記固形分を形成する化合物をテトラカルボン酸二無水物に変換した)。次いで、得られた[5]ヘリセン-5,6,9,10-テトラカルボン酸二無水物を、水、エタノール、アセトン、ジエチルエーテルで洗浄し、ろ過した後、真空下において乾燥することにより、下記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を得た(収率81%)。このようにして得られた式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物に対してIR測定を行った結果、OH基のピークが確認されなかったことから、上記加水分解反応により得られたヘリセン型イミドの加水分解物や、[5]ヘリセン-5,6,9,10-テトラカルボン酸に由来するカルボン酸が含まれていないことが確認された(IR測定によりカルボン酸は検出されなかった)。このようなIR測定の結果として、得られた化合物のIRスペクトルのグラフを図2に示す。また、得られた式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物をNew J.Chem.,2016,vol.40,p.113-p.121に記載の方法に沿ってジイミド化し、重クロロホルムに溶解して1H-NMRを測定した結果、純度(質量比)が100%の純粋なヘリセン型テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。
[ポリイミドの合成について]
(実施例1)
<ポリアミド酸の調製工程>
芳香族テトラカルボン酸二無水物として「合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度100%)」を用い、かつ、芳香族ジアミンとして「1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE-R)」を用いて、以下のようにしてポリイミドを製造した。すなわち、先ず、窒素雰囲気下で、10mLのスクリュー瓶に、合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物41.8mg(0.1mmol)と、TPE-R29.2mg(0.1mmol)とを添加した後、さらに、N-メチルピロリドン(略称:NMP)を284mg加えて、前記ヘリセン型テトラカルボン酸二無水物とTPE-Rの固形分濃度が20質量%となる反応溶液を調製した。次に、前記スクリュー瓶内にスターラーチップを入れて、窒素雰囲気下、前記反応溶液を80℃で48時間撹拌することにより重合を行ってポリアミド酸(ポリアミック酸)を生成せしめ、固形分濃度が20質量%のポリアミド酸(前記ヘリセン型テトラカルボン酸二無水物とTPE-Rの重付加物)の樹脂溶液を得た。
(実施例1)
<ポリアミド酸の調製工程>
芳香族テトラカルボン酸二無水物として「合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度100%)」を用い、かつ、芳香族ジアミンとして「1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE-R)」を用いて、以下のようにしてポリイミドを製造した。すなわち、先ず、窒素雰囲気下で、10mLのスクリュー瓶に、合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物41.8mg(0.1mmol)と、TPE-R29.2mg(0.1mmol)とを添加した後、さらに、N-メチルピロリドン(略称:NMP)を284mg加えて、前記ヘリセン型テトラカルボン酸二無水物とTPE-Rの固形分濃度が20質量%となる反応溶液を調製した。次に、前記スクリュー瓶内にスターラーチップを入れて、窒素雰囲気下、前記反応溶液を80℃で48時間撹拌することにより重合を行ってポリアミド酸(ポリアミック酸)を生成せしめ、固形分濃度が20質量%のポリアミド酸(前記ヘリセン型テトラカルボン酸二無水物とTPE-Rの重付加物)の樹脂溶液を得た。
なお、このようにして得られた樹脂溶液を一部利用し、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC-252」)を用いて、該樹脂溶液からポリアミド酸をサンプリングすることにより、固有粘度[η]を測定した。その結果、得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.62dL/gであった。
<ポリイミドの調製工程>
次いで、得られたポリアミド酸の樹脂溶液をスライドガラス(縦7.6cm、横5.2cm、厚み1.3mm)上にスピンコートして塗膜を形成した後、かかる塗膜の形成されたスライドガラスを80℃のホットプレートに1時間載せることにより、前記塗膜からN-メチルピロリドンを蒸発させて、溶媒除去後の前記塗膜が形成されたスライドガラスを得た。次いで、溶媒除去後の前記塗膜が形成されたスライドガラスを、イナートオーブン(25cm×25cm×25cm)に入れて、窒素流量3L/分の条件下、80℃で30分間保持した後、4℃/分の昇温速度で300℃まで昇温して、300℃で60分間保持することにより、前記塗膜を構成するポリアミド酸のイミド化(熱イミド化)を行って、前期塗膜を硬化せしめて、ポリイミドからなる薄膜がコートされたスライドガラスを得た。その後、イナートオーブンが室温(25℃程度)となるまで自然冷却させた後、イナートオーブンから、前記ポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)がコートされたスライドガラスを取り出した。その後、前記ポリイミドからなる薄膜がコートされたスライドガラスを、90℃の湯浴に浸漬することで、前記スライドガラスから、ポリイミドフィルムを剥離した。次いで、剥離して得られたポリイミドフィルムを100℃の乾燥機で2時間乾燥させて、目的とするポリイミドフィルム(膜厚:35μm)を得た。なお、得られたポリイミドフィルムを構成する化合物のIRスペクトルを測定したところ、1706cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が確認されたことから、得られたフィルムを形成する化合物はポリイミドであることが確認された。なお、このようなIR測定の結果として、得られたポリイミドフィルムのIRスペクトルを図3に示す。
次いで、得られたポリアミド酸の樹脂溶液をスライドガラス(縦7.6cm、横5.2cm、厚み1.3mm)上にスピンコートして塗膜を形成した後、かかる塗膜の形成されたスライドガラスを80℃のホットプレートに1時間載せることにより、前記塗膜からN-メチルピロリドンを蒸発させて、溶媒除去後の前記塗膜が形成されたスライドガラスを得た。次いで、溶媒除去後の前記塗膜が形成されたスライドガラスを、イナートオーブン(25cm×25cm×25cm)に入れて、窒素流量3L/分の条件下、80℃で30分間保持した後、4℃/分の昇温速度で300℃まで昇温して、300℃で60分間保持することにより、前記塗膜を構成するポリアミド酸のイミド化(熱イミド化)を行って、前期塗膜を硬化せしめて、ポリイミドからなる薄膜がコートされたスライドガラスを得た。その後、イナートオーブンが室温(25℃程度)となるまで自然冷却させた後、イナートオーブンから、前記ポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)がコートされたスライドガラスを取り出した。その後、前記ポリイミドからなる薄膜がコートされたスライドガラスを、90℃の湯浴に浸漬することで、前記スライドガラスから、ポリイミドフィルムを剥離した。次いで、剥離して得られたポリイミドフィルムを100℃の乾燥機で2時間乾燥させて、目的とするポリイミドフィルム(膜厚:35μm)を得た。なお、得られたポリイミドフィルムを構成する化合物のIRスペクトルを測定したところ、1706cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が確認されたことから、得られたフィルムを形成する化合物はポリイミドであることが確認された。なお、このようなIR測定の結果として、得られたポリイミドフィルムのIRスペクトルを図3に示す。
(実施例2)
芳香族ジアミンとしてTPE-Rを利用する代わりに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(略称:TFMB)を32.0mg(0.1mmol)利用し、かつ、前記反応溶液及び前記樹脂溶液の固形分濃度が20質量%となるように、NMPの使用量を284mgから295mgに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム(膜厚:34μm)を得た。なお、得られたポリイミドフィルムのIR測定(IRスペクトル)の結果から、得られたフィルムを形成する化合物がポリイミドであることが確認された。
芳香族ジアミンとしてTPE-Rを利用する代わりに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(略称:TFMB)を32.0mg(0.1mmol)利用し、かつ、前記反応溶液及び前記樹脂溶液の固形分濃度が20質量%となるように、NMPの使用量を284mgから295mgに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム(膜厚:34μm)を得た。なお、得られたポリイミドフィルムのIR測定(IRスペクトル)の結果から、得られたフィルムを形成する化合物がポリイミドであることが確認された。
(実施例3)
芳香族テトラカルボン酸二無水物として「合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度100%)」の代わりに「合成例1で得られた酸二無水物の混合物(A):式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(90モル%)と式(2)で表されるジベンゾアントラセン型酸二無水物(10モル%)の混合物(異性体混合物)」を41.8mg(総モル数:0.1mmol)利用し、芳香族ジアミンとしてTPE-Rを利用する代わりに、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(略称:4,4’-DDS)を24.8mg(0.1mmol)利用し、かつ、前記反応溶液及び前記樹脂溶液の固形分濃度が20質量%となるように、NMPの使用量を284mgから266mgに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム(膜厚:35μm)を得た。なお、得られたポリイミドフィルムのIR測定(IRスペクトル)の結果から、得られたフィルムを形成する化合物がポリイミドであることが確認された。
芳香族テトラカルボン酸二無水物として「合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度100%)」の代わりに「合成例1で得られた酸二無水物の混合物(A):式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(90モル%)と式(2)で表されるジベンゾアントラセン型酸二無水物(10モル%)の混合物(異性体混合物)」を41.8mg(総モル数:0.1mmol)利用し、芳香族ジアミンとしてTPE-Rを利用する代わりに、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(略称:4,4’-DDS)を24.8mg(0.1mmol)利用し、かつ、前記反応溶液及び前記樹脂溶液の固形分濃度が20質量%となるように、NMPの使用量を284mgから266mgに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム(膜厚:35μm)を得た。なお、得られたポリイミドフィルムのIR測定(IRスペクトル)の結果から、得られたフィルムを形成する化合物がポリイミドであることが確認された。
(実施例4)
芳香族テトラカルボン酸二無水物として「合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度100%)」の代わりに「合成例1で得られた酸二無水物の混合物(A)」を41.8mg(総モル数:0.1mmol)利用した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム(膜厚:34μm)を得た。なお、得られたポリイミドフィルムのIR測定(IRスペクトル)の結果から、得られたフィルムを形成する化合物がポリイミドであることが確認された。
芳香族テトラカルボン酸二無水物として「合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度100%)」の代わりに「合成例1で得られた酸二無水物の混合物(A)」を41.8mg(総モル数:0.1mmol)利用した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム(膜厚:34μm)を得た。なお、得られたポリイミドフィルムのIR測定(IRスペクトル)の結果から、得られたフィルムを形成する化合物がポリイミドであることが確認された。
(比較例1)
芳香族テトラカルボン酸二無水物として「合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度100%)」の代わりに「ピロメリット酸無水物(PMDA)」を2.1812g(10mmol)利用し、TPE-Rの使用量を2.9234g(10mmol)に変更し、前記反応溶液及び前記樹脂溶液の固形分濃度が20質量%となるように、NMPの使用量を284mgから20.42gに変更した以外(芳香族テトラカルボン酸二無水物としてPMDAを用いて反応スケールを100倍とした以外)は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム(膜厚:10μm)を得た。
芳香族テトラカルボン酸二無水物として「合成例2で得られたヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度100%)」の代わりに「ピロメリット酸無水物(PMDA)」を2.1812g(10mmol)利用し、TPE-Rの使用量を2.9234g(10mmol)に変更し、前記反応溶液及び前記樹脂溶液の固形分濃度が20質量%となるように、NMPの使用量を284mgから20.42gに変更した以外(芳香族テトラカルボン酸二無水物としてPMDAを用いて反応スケールを100倍とした以外)は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム(膜厚:10μm)を得た。
[実施例1~4及び比較例1で得られたポリイミドの特性の評価]
実施例1~4及び比較例1で得られたポリイミドフィルムについて、YI、Tg、Td5%を、以下のようにして測定した。得られた結果を表1に示す。なお、表1には、ポリイミドフィルムの製造に利用したモノマーの種類も併せて記載する。ここにおいて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に関し、合成例1で得られた酸二無水物の混合物(A)(式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(90モル%)と式(2)で表されるジベンゾアントラセン型酸二無水物(10モル%)の混合物(異性体混合物))を「ヘリセン型酸二無水物の異性体混合物(90:10)」と表記し、合成例2で得られた式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度:100%)を「ヘリセン型酸二無水物(純度:100%)」と表記する。
実施例1~4及び比較例1で得られたポリイミドフィルムについて、YI、Tg、Td5%を、以下のようにして測定した。得られた結果を表1に示す。なお、表1には、ポリイミドフィルムの製造に利用したモノマーの種類も併せて記載する。ここにおいて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に関し、合成例1で得られた酸二無水物の混合物(A)(式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(90モル%)と式(2)で表されるジベンゾアントラセン型酸二無水物(10モル%)の混合物(異性体混合物))を「ヘリセン型酸二無水物の異性体混合物(90:10)」と表記し、合成例2で得られた式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物(純度:100%)を「ヘリセン型酸二無水物(純度:100%)」と表記する。
〈黄色度(YI)の測定〉
各実施例等で得られたポリイミドフィルムを用いて、得られたポリイミドの黄色度(YI)を以下のようにして測定した。すなわち、各実施例等で得られたポリイミドフィルムをそれぞれ試料として利用し、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用い、ASTM E313-05(2005年発行)に準拠したYIの測定を行って、求めた値からフィルムの膜厚10μmあたりのYIの値を算出することで、各ポリイミドのYI(膜厚10μmあたりの換算値)を求めた。
各実施例等で得られたポリイミドフィルムを用いて、得られたポリイミドの黄色度(YI)を以下のようにして測定した。すなわち、各実施例等で得られたポリイミドフィルムをそれぞれ試料として利用し、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用い、ASTM E313-05(2005年発行)に準拠したYIの測定を行って、求めた値からフィルムの膜厚10μmあたりのYIの値を算出することで、各ポリイミドのYI(膜厚10μmあたりの換算値)を求めた。
〈ガラス転移温度(Tg)の測定〉
各実施例等で得られたポリイミドフィルムを用いて、得られたポリイミドのガラス転移温度(単位:℃)を以下のようにして測定した。すなわち、各実施例等で得られたポリイミド(フィルム)から縦20mm、横5mmの大きさのフィルムをそれぞれ切り出して測定試料(試料の厚みは各実施例等で得られたフィルムの厚みのままとした)とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を用いて、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件で測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、各実施例等で得られたフィルムを構成するポリイミドのTgの値(単位:℃)を求めた。なお、Tgが250℃以上となっている場合には、全芳香族ポリイミドとして耐熱性の観点で各種用途に好適に利用できるものであるといえるため、Tgが十分に高い水準にあるものと評価できる。
各実施例等で得られたポリイミドフィルムを用いて、得られたポリイミドのガラス転移温度(単位:℃)を以下のようにして測定した。すなわち、各実施例等で得られたポリイミド(フィルム)から縦20mm、横5mmの大きさのフィルムをそれぞれ切り出して測定試料(試料の厚みは各実施例等で得られたフィルムの厚みのままとした)とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を用いて、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件で測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、各実施例等で得られたフィルムを構成するポリイミドのTgの値(単位:℃)を求めた。なお、Tgが250℃以上となっている場合には、全芳香族ポリイミドとして耐熱性の観点で各種用途に好適に利用できるものであるといえるため、Tgが十分に高い水準にあるものと評価できる。
〈5%重量減少温度(Td5%)の測定〉
各実施例等で得られたポリイミドフィルムを用いて、得られたポリイミドの5%重量減少温度(Td5%)を以下のようにして測定した。すなわち、先ず、各実施例で得られたポリイミドフィルムから、それぞれ2~4mgの試料を準備し、かかる試料をアルミ製サンプルパンに入れ、測定装置として熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「TG/DTA7200」)を使用して、窒素ガス雰囲気下、走査温度を30℃から550℃に設定し、昇温速度10℃/分の条件で加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより、各ポリイミドのTd5%の値(単位:℃)を求めた。なお、Td5%が450℃以上となっている場合には、全芳香族ポリイミドとして耐熱性の観点で各種用途に好適に利用できるものであるといえるため、Td5%が十分に高い水準にあるものと評価できる。
各実施例等で得られたポリイミドフィルムを用いて、得られたポリイミドの5%重量減少温度(Td5%)を以下のようにして測定した。すなわち、先ず、各実施例で得られたポリイミドフィルムから、それぞれ2~4mgの試料を準備し、かかる試料をアルミ製サンプルパンに入れ、測定装置として熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「TG/DTA7200」)を使用して、窒素ガス雰囲気下、走査温度を30℃から550℃に設定し、昇温速度10℃/分の条件で加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより、各ポリイミドのTd5%の値(単位:℃)を求めた。なお、Td5%が450℃以上となっている場合には、全芳香族ポリイミドとして耐熱性の観点で各種用途に好適に利用できるものであるといえるため、Td5%が十分に高い水準にあるものと評価できる。
表1に示した結果から明らかなように、実施例1~4及び比較例1で得られたポリイミドはいずれも、Tgが250℃以上であり、かつ、Td5%が450℃以上であることから、Tg及びTd5%を基準として、全芳香族ポリイミドとしての耐熱性が十分に高い水準にあることが分かった。また、実施例1~4で得られたポリイミドはいずれも、YI(膜厚10μmあたりの換算値)が40未満となっており、YIが低い値となっていた。これに対して、比較例1で得られたポリイミドは、YI(膜厚10μmあたりの換算値)が60となっており、YIが大きな値となっていた。このような結果から、上記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物であるポリイミド(実施例1~4)はいずれも、耐熱性を十分に高い水準に維持しつつ、黄色度をより低い値とすることが可能なものであることが分かった。
なお、上記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物であるポリイミド(実施例1~4)によって、黄色度をより低い値とすることが可能となった理由を、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、一般的な全芳香族ポリイミドは、高分子鎖内及び高分子鎖間の相互作用により着色することが知られている。一方、実施例1~4で得られたポリイミド(全芳香族ポリイミド)は、上記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物に由来する繰り返し単位を含むものとなる。そして、そのようなヘリセン型テトラカルボン酸二無水物に由来する繰り返し単位中に存在するヘリセン骨格(ヘリセン環)は、ねじれた構造(非平面構造:ネジレ骨格)を有するものであるため、その構造に由来してポリイミド分子間(高分子鎖間)の相互作用が一般的な全芳香族ポリイミドと比較して小さくなるものと推察される。このような事情により、上記式(1)で表されるヘリセン型テトラカルボン酸二無水物を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物であるポリイミド(実施例1~4)においては、黄色度をより低い値とすることが可能となったものと本発明者らは推察する。
以上説明したように、本発明によれば、耐熱性を十分に高い水準に維持しつつ、黄色度をより低い値とすることが可能なポリイミド、及び、前記ポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なポリアミド酸を提供することが可能となる。したがって、本発明のポリイミドは、ガラス代替用途(例えば、有機EL照明の光取り出し効率向上フィルムや、フレキシブルディスプレイの基板等)に利用するポリイミドフィルムを製造するための材料等として特に有用である。
Claims (2)
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021018466A JP2022121225A (ja) | 2021-02-08 | 2021-02-08 | ポリイミド及びポリアミド酸 |
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JP2021018466A JP2022121225A (ja) | 2021-02-08 | 2021-02-08 | ポリイミド及びポリアミド酸 |
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