JP2022121230A - 連続繊維強化樹脂複合材料及びその製造方法 - Google Patents

連続繊維強化樹脂複合材料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、界面研磨値が良好で、高い強度、弾性率、衝撃特性、高温特性、吸水特性及び界面回復特性を有する連続繊維強化樹脂複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂複合材料であり、連続繊維強化樹脂複合材料の連続強化繊維の長さ方向に直交する断面を研磨し、研磨した断面を電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)で観察したときに、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との間に空隙が観察されない最大の研磨圧力P(g/cm2)を、連続繊維強化樹脂複合材料中の連続強化繊維の体積比率Vf(%)で除した値である界面研磨値P/Vfが、10g/cm2・%以上であることを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料。【選択図】なし

Description

本発明は、連続繊維強化樹脂複合材料及びの製造方法に関する。
各種機械や自動車等の構造部品、圧力容器、及び管状の構造物等には、マトリックス樹脂材料にガラス繊維等の強化材が添加された複合材料成形体が使用されている。特に、強度の観点から、強化繊維が連続繊維である連続繊維強化樹脂複合材料が望まれている。この連続繊維強化樹脂複合材料としては、強化繊維に添加する収束剤を工夫しているもの(例えば、以下の特許文献1参照)、融点と結晶化温度の差を工夫しているもの(例えば、以下の特許文献2参照)、樹脂材料に有機塩を加えているもの(例えば、以下の特許文献3参照)、成形前駆体の布帛を熱可塑性の樹脂で積層しているもの(例えば、以下の特許文献4参照)、連続強化繊維と樹脂の界面における接着力、親和性等が良好なもの(例えば、以下の特許文献5参照)が提案されている。
特開2003-238213号公報 特許第5987335号公報 特開2017-222859号公報 特開2009-19202号公報 国際公開第2019/208586号
しかしながら、従来技術の連続繊維強化樹脂複合材料では、いずれも、界面研磨値(連続繊維強化樹脂複合材料の連続強化繊維の長さ方向に直交する断面を研磨し、研磨した断面を電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)で観察したときに、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との間に空隙が観察されない最大の研磨圧力P(g/cm)を、連続繊維強化樹脂複合材料中の連続強化繊維の体積比率Vf(%)で除した値(P/Vf))が良好ではなく、強度、弾性率、衝撃等の物性、吸水特性や界面回復特性が十分でない点で改善の余地がある。
かかる従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、界面研磨値が良好で、高い強度、弾性率、衝撃特性、高温特性、吸水特性及び界面回復特性を有する連続繊維強化樹脂複合材料及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた結果、μドロップレット法により求められる連続繊維強化樹脂複合材料の連続強化繊維と熱可塑性樹脂との界面せん断強度特性とμドロップレット接触角を調整して製造し、連続繊維強化樹脂複合材料の有する界面研磨値を特定の範囲とすることで、上記課題を解決できることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]
連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂複合材料であり、
前記連続繊維強化樹脂複合材料の前記連続強化繊維の長さ方向に直交する断面を研磨し、研磨した前記断面を電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)で観察したときに、前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との間に空隙が観察されない最大の研磨圧力P(g/cm)を、前記連続繊維強化樹脂複合材料中の前記連続強化繊維の体積比率Vf(%)で除した値である界面研磨値P/Vfが、10g/cm・%以上であることを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料。
[2]
[1]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法であり、
連続強化繊維を表面処理剤で処理することにより、表面処理剤を含む連続強化繊維を得ることを含み、
μドロップレット法により下記式(1)で求められる前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度が、前記表面処理剤の代わりにカップリング剤のみで処理したカップリング剤処理連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度の0.8~1.2倍であり、
μドロップレット法により測定される前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角が、前記表面処理剤を含まない表面処理剤非含有連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角の0.4~0.7倍であることを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
τ=F/πdL ・・・(1)
(式中、τは界面せん断強度(MPa)、dは連続強化繊維の径(μm)、Lは連続強化繊維の単繊維に付着させた熱可塑性樹脂の樹脂玉(μドロップ)の、連続強化繊維の繊維軸方向の長さ(μm)、Fは樹脂玉を連続強化繊維から引き抜く際のせん断荷重(N)を表す。)
[3]
前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との前記界面せん断強度が、前記表面処理剤非含有連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度の1.8~10倍である、[2]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
[4]
前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との前記μドロップレット接触角が、前記カップリング剤処理連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角の0.8~1.6倍である、[2]又は[3]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
本発明に係る連続繊維強化樹脂複合材料は、界面研磨値が良好で、高い強度、弾性率、衝撃特性、高温特性、吸水特性及び界面回復特性を発現することができる。
連続強化繊維の単繊維と連続強化繊維の単繊維に付着させた熱可塑性樹脂の樹脂玉(μドロップ)とを示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[連続繊維強化樹脂複合材料]
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料(以下、単に「複合材料」ともいう。)は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含み、前記連続繊維強化樹脂複合材料の前記連続強化繊維の長さ方向に直交する断面を研磨し、研磨した前記断面を電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)で観察したときに、前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との間に空隙が観察されない最大の研磨圧力P(g/cm)を、前記連続繊維強化樹脂複合材料中の前記連続強化繊維の体積比率Vf(%)で除した値である界面研磨値P/Vfが、10g/cm・%以上である。
上記界面研磨値は、12g/cm・%以上であることが好ましく、17g/cm・%以上であることがより好ましく、21g/cm・%以上であることが更に好ましく、25g/cm・%以上であることがより更に好ましく、32g/cm・%以上であることが特に好ましく、42g/cm・%以上であることが最も好ましい。前記界面研磨値がこの範囲にあると、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維と熱可塑性樹脂との密着性が良好で両者の破壊が生じにくく、優れた強度や弾性率、衝撃特性、高温特性、吸水特性、界面回復特性を発現することができる。
なお、本開示で、「空隙」は、連続強化繊維の外周部から径方向に該連続強化繊維の直径の20分の1以上の幅で熱可塑性樹脂が存在しない領域を意味する。
また、「連続強化繊維と熱可塑性樹脂との間に空隙が観察されない」とは、研磨した断面をFESEMで観察したときに、連続強化繊維の単繊維1本の全周長を100%として、空隙が生じている部分の周長が10%以下である状態を意味する。
前記界面研磨値を前記範囲に調整する方法としては、例えば、連続強化繊維を表面処理剤で処理することにより、表面処理剤を含む連続強化繊維を作製し、得られた表面処理剤を含む連続強化繊維と熱可塑性樹脂との後述する界面せん断強度を、前記表面処理剤の代わりにカップリング剤のみで処理したカップリング剤処理連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度の0.8~1.2倍とし、且つ、前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との後述するμドロップレット接触角を、前記表面処理剤を含まない表面処理剤非含有連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角の0.4~0.7倍とする方法が挙げられる。更に、前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度を、前記表面処理剤非含有連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度の1.8~10倍とする方法、前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角を、前記カップリング剤処理連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角の0.8~1.6倍とする方法等を用いて調整することができる。
なお、本開示で、連続繊維強化樹脂複合材料の界面研磨値P/Vfは、連続繊維強化樹脂材料を、連続強化繊維の長さ方向に直交する断面(研磨面)が得られるようにバンドソーにより切削し、研磨面にかかる研磨圧力を変化させて研磨機で研磨面を研磨した後、FESEMにより研磨面を観察し、任意の連続強化繊維の単繊維10本を観察したときに、いずれにおいても樹脂との間に空隙が観察されない最大の研磨圧力P(g/cm)を、連続繊維強化樹脂複合材料中の連続強化繊維の体積比率Vf(%)で除すことで求めることができ、詳細には、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
[連続繊維強化樹脂複合材料の形態]
連続繊維強化樹脂複合材料の形態は、特に制限されず、以下の種々の形態が挙げられる。例えば、連続強化繊維の織物や編み物、組紐、パイプ状のものと熱可塑性樹脂とを複合化した形態、一方向に引き揃えた連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを複合化した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる糸を一方向に引き揃えて賦形した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなる糸とを織物や編み物、組紐、パイプ状にして賦形した形態等が挙げられる。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、平板であってよく、連続強化繊維の層と熱可塑性樹脂との層を含む積層体であってよい。例えば、連続強化繊維の長さ方向が平板の表面に略平行に配置されていてもよい。なお、連続強化繊維の層とは、連続強化繊維(例えば、連続強化繊維基材)を含む層であり、連続強化繊維の内部に熱可塑性樹脂が含浸している層であってよい。
連続繊維強化樹脂複合材料の賦形前の中間材料の形態としては、特に制限されず、連続強化繊維と樹脂繊維との混繊糸、連続強化繊維の束の周囲を樹脂で被覆したコーティング糸、連続強化繊維に予め樹脂を含浸させテープ状にしたもの、連続強化繊維を樹脂のフィルムで挟んだもの、連続強化繊維に樹脂パウダーを付着させたもの、連続強化繊維の束を芯材としてその周囲を樹脂繊維で組紐としたもの、強化繊維の間に予め樹脂を含浸させたもの、連続強化繊維と溶融した樹脂とを接触させた形態等が挙げられる。
[連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法]
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法は、特に制限されず、以下の種々の方法が挙げられる。
一方法では、例えば、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する基材(例えば、連続強化繊維からなる基材、熱可塑性樹脂からなる基材)を、所望の複合材料に合わせて裁断又は賦形し、目的とする製品の厚みを考慮して必要個数積み重ね又は必要枚数積層させ、金型に金型形状に合わせてセットする。
基材の裁断は、1枚ずつ行ってもよいし、所望の枚数を重ねてから行ってもよい。生産性の観点からは、重ねた状態で裁断することが好ましい。裁断する方法は、任意の方法でよく、例えば、ウォータージェット、刃プレス機、熱刃プレス機、レーザー、プロッター等が挙げられる。中でも、断面形状に優れ、更に、複数を重ねて裁断する際に端面を溶着することで取扱い性がよくなる熱刃プレス機が好ましい。適切な裁断形状は、トライアンドエラーを繰り返すことでも調整できるが、金型の形状にあわせてCAE(computer aided engineering)によるシミュレーションを行うことで設定することが好ましい。
基材の賦形は、任意の方法で行ってよく、例えば、シート状の形状に賦形してよい。
基材を金型にセットした後に金型を閉じて圧縮する。そして、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度に金型を温調して熱可塑性樹脂を溶融させ、賦形する。型締め圧力に特に規定はないが、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上である。また、ガス抜き等をするために一旦型締めをし、圧縮成形した後に一旦金型の型締め圧力を解除してもよい。圧縮成形の時間は、強度発現の観点からは、使用される熱可塑性樹脂が熱劣化しない範囲で長い方が好ましいが、生産性の観点からは、好ましくは2分以内、より好ましくは1分以内が適している。
その他の方法として、ダブルベルトプレス機や連続圧縮成形装置により連続繊維強化樹脂複合材料を構成する基材を連続的に供給し、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して任意の圧力で圧縮成形し、熱可塑性樹脂の結晶化温度やガラス転移温度以下に冷却して製造する方法が挙げられる。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法では、連続強化繊維を表面処理剤で処理することにより表面処理剤を含む連続強化繊維を作製し、μドロップレット法により下記式(1)で求められる表面処理剤を含む連続強化繊維と熱可塑性樹脂との界面せん断強度を、前記表面処理剤の代わりにカップリング剤のみで処理したカップリング剤処理連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度の0.8~1.2倍とし、且つ、μドロップレット法により測定される前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角を、前記表面処理剤を含まない表面処理剤非含有連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角の0.4~0.7倍とすることが好ましい。
τ=F/πdL ・・・(1)
(式中、τは界面せん断強度(MPa)、dは連続強化繊維の径(μm)、Lは連続強化繊維の単繊維に付着させた熱可塑性樹脂の樹脂玉(μドロップ)の、連続強化繊維の繊維軸方向の長さ(μm)、Fは樹脂玉を連続強化繊維から引き抜く際のせん断荷重(N)を表す。)
上記表面処理剤を含む連続強化繊維と熱可塑性樹脂との界面せん断強度は、より好ましくはカップリング剤処理連続強化繊維と熱可塑性樹脂との界面せん断強度の0.85~1.17倍であり、更に好ましくは0.90~1.15倍であり、より更に好ましくは1.0~1.1倍である。界面せん断強度が上記範囲であると、連続繊維強化樹脂複合材料の界面研磨値が大きくなる傾向にある。
なお、上記せん断荷重Fは、連続強化繊維の単繊維1本に熱可塑性樹脂の樹脂玉(μドロップ)を付着させたものに対し、複合材料界面特性評価装置を用いて測定することができ、詳細には、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
図1は、連続強化繊維の単繊維1と、該単繊維1に付着させた熱可塑性樹脂の樹脂玉(μドロップ)2とを示す模式図であり、dは単繊維1の径、Lは樹脂玉2の、単繊維1の繊維軸方向の長さを示す。
上記界面せん断強度は、使用する連続強化繊維、表面処理剤、熱可塑性樹脂の種類を変更すること等により、調整することができる。
カップリング剤処理連続強化繊維を作製する方法としては、連続強化繊維を製造する際にカップリング剤のみで処理する方法や、表面処理剤を含む連続強化繊維の表面処理剤を電気炉等により除去した後にカップリング剤のみで処理する方法等が挙げられる。
また、上記表面処理剤を含む連続強化繊維と熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角は、より好ましくは表面処理剤非含有連続強化繊維と熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角の0.45~0.65倍であり、更に好ましくは0.50~0.60倍である。μドロップレット接触角が上記範囲であると、連続繊維強化樹脂複合材料の界面研磨値が大きくなる傾向にある。
なお、μドロップレット接触角は、連続強化繊維の単繊維1本に熱可塑性樹脂の樹脂玉(μドロップ)を付着させたものに対し、複合材料界面特性評価装置を用いて測定することができ、詳細には、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
図1は、連続強化繊維の単繊維1と、該単繊維1に付着させた熱可塑性樹脂の樹脂玉(μドロップ)2とを示す模式図であり、αはμドロップレット接触角を示す。
上記μドロップレット接触角は、使用する連続強化繊維、表面処理剤、熱可塑性樹脂の種類を変更すること等により、調整することができる。
表面処理剤を含まない表面処理剤非含有連続強化繊維について、「表面処理剤を含まない」とは、表面処理剤非含有連続強化繊維全体を100質量%としたときに、表面処理剤の含有量が0.45質量%以下であり、ゼータ電位測定において、等電点がpH=3未満であり、pHが3~8において負であることを意味する。
ゼータ電位は、例えば、固体専用ゼータ電位計を用いて、塩酸や水酸化カリウムによりpHを調整することにより求めることができる。
表面処理剤非含有連続強化繊維を得る方法としては、連続強化繊維を製造する際に表面処理剤で処理しない方法や、表面処理剤を含む連続強化繊維の表面処理剤を電気炉等により除去する方法等が挙げられる。
また、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法において、前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との前記界面せん断強度を、前記表面処理剤非含有連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度の1.8~10倍とすることが好ましく、より好ましくは2.0~8.0倍であり、更に好ましくは3.0~6.0倍であり、より更に好ましくは3.5~5.0倍である。界面せん断強度が上記範囲であると、連続繊維強化樹脂複合材料の界面研磨値が大きくなる傾向にある。
上記界面せん断強度は、使用する連続強化繊維、表面処理剤、熱可塑性樹脂の種類を変更すること等により、調整することができる。
更に、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法において、前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との前記μドロップレット接触角を、前記カップリング剤処理連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角の0.8~1.6倍とすることが好ましく、より好ましくは0.85~1.4倍であり、更に好ましくは0.90~1.2倍である。μドロップレット接触角が上記範囲であると、連続繊維強化樹脂複合材料の界面研磨値が大きくなる傾向にある。
上記μドロップレット接触角は、使用する連続強化繊維、表面処理剤、熱可塑性樹脂の種類を変更すること等により、調整することができる。
連続繊維強化樹脂複合材料は、さらにハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填してハイブリッド複合材料としてもよい。ハイブリッド複合材料の製造工程においては、金型内に上記基材をセットして金型を閉じ、加圧し、所定の時間後に、更に所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填して成形し、基材の熱可塑性樹脂と、所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物とを接合させることにより、ハイブリッド複合材料を製造してもよい。
所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填するタイミングは、両熱可塑性樹脂間の界面強度に大きく影響する。所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填するタイミングは、基材を金型内にセットして金型を閉じた後に金型温度が基材を構成する熱可塑性樹脂の融点以上又はガラス転移温度以上に昇温してから、30秒以内が好ましい。
所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填する時の金型温度は、ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物と接合する、基材を構成する熱可塑性樹脂の融点以上又はガラス転移温度以上であることが好ましい。より好ましくは、ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物と接合する、基材を構成する熱可塑性樹脂の融点+10℃以上又はガラス転移温度+10℃以上であり、更に好ましくは、融点+20℃以上又はガラス転移温度+20℃以上、更により好ましくは融点+30℃以上又はガラス転移温度+30℃以上である。
ハイブリッド複合材料において、基材を構成する熱可塑性樹脂と、射出成形により形成されたハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物との接合部分は、互いに混じり合った凹凸構造となっていることが好ましい。
金型温度を射出するハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物の融点以上とし、射出成形時の樹脂保圧を高く、例えば、1MPa以上とすることは、界面強度を高める上で有効である。界面強度を高めるためには、上記保圧を5MPa以上とすることが好ましく、10MPa以上とすることがより好ましい。
また、保圧時間を長く、例えば5秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは金型温度が熱可塑性樹脂組成物の融点以下になるまでの間の時間保持することは、界面強度を高める観点から好ましい。
(ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物)
ハイブリッド複合材料を製造するために用いる射出成形用のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物としては、一般の射出成形に使用される熱可塑性樹脂組成物であれば、特に限定されない。
ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂の一種又は二種以上を混合した混合物などが挙げられる。
ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物には、各種充填材が配合されていてもよい。ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物は、着色剤を含む、黒色の樹脂組成物としてよい。
各種充填材としては、上記連続強化繊維と同種の材料の不連続強化材料である短繊維、長繊維材料等が挙げられる。
不連続強化材料にガラス短繊維、長繊維を用いる場合、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する上記連続強化繊維に塗布される集束剤と同様のもの用いてもよい。集束剤(サイジング剤)は、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましい。シランカップリング剤、潤滑剤、結束剤の種類に関しては、上記連続強化繊維の集束剤と同様のものが使用できる。
射出成形に用いるハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、接合する熱可塑性樹脂との界面強度の観点から、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する接合面の熱可塑性樹脂と類似のものが好ましく、同種類のものがより好ましい。具体的には、接合面の熱可塑性樹脂にポリアミド66を用いた場合には、射出成形用のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物の樹脂材料は、ポリアミド66が好ましい。
その他の方法として、基材を金型に設置してダブルベルトプレス機により圧縮する成形方法や、設置した基材の四方を囲むように型枠を設置し、ダブルベルトプレス機により加圧し成形する方法や、一つ又は複数の温度に設定した加熱用の圧縮成形機と、一つ又は複数の温度に設定した冷却用の圧縮成形機を用意し、基材を設置した金型を順番に、圧縮成形機に投入して成形する成形方法等が挙げられる。
(連続強化繊維)
連続強化繊維としては、通常の連続繊維強化樹脂複合材料に使用されるものを用いてよい。
連続強化繊維としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミックス繊維等が挙げられる。
機械的特性、熱的特性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維が好ましく、生産性の面からは、ガラス繊維が好ましい。
上記連続強化繊維は、1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記連続強化繊維は表面処理剤が処理されていてもよい。
-表面処理剤-
連続強化繊維は、表面処理剤を含んでいても(表面処理剤により被覆されていても)よい。
--集束剤--
連続強化繊維としてガラス繊維を選択する場合、表面処理剤として、例えば、集束剤を用いることができる。
集束剤(サイジング剤)は、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなる群から選択される1種以上を含むものであってよく、少なくとも結束剤又はシランカップリング剤を含むことが好ましい。但し、シランカップリング剤のみからなるものは除く。
また、集束剤は、シランカップリング剤及び結束剤からなるものとしてよく、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなるものとしてもよい。
ガラス繊維とその周りを被膜する樹脂との強い結合を作る集束剤であることにより、空隙率の少ない連続繊維強化樹脂複合材料を得ることができる。
集束剤は、使用される材料に対して外的に加えられてもよく、使用される材料に内的に含まれていてもよい。例えば、潤滑剤は、用いられる熱可塑性樹脂の市販品に含まれている場合がある。
--シランカップリング剤--
シランカップリング剤は、ガラス繊維の界面接着強度向上に寄与する。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類、マレイン酸類等が挙げられる。熱可塑性樹脂としてポリアミドを用いる際には、ポリアミド系樹脂の末端基であるカルボキシル基又はアミノ基と結合しやすいものを選択することが好ましく、アミノシラン類が好ましい。
--潤滑剤--
潤滑剤は、ガラス繊維の開繊性向上に寄与する。
潤滑剤としては、シランカップリング剤及び結束剤を阻害しない限り、目的に応じた通常の液体又は固体の任意の潤滑材料が使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系又は鉱物系のワックス;脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族系エステル、芳香族系エーテル等の界面活性剤等が挙げられる。
--結束剤--
結束剤は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上に寄与する。
結束剤としては、目的に応じたポリマー、連続繊維強化樹脂複合材料の主たる材料としての熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂が使用可能である。
結束剤としてのポリマーは、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。また、例えば、m-キシリレンジイソシアナート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)及びイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるポリウレタン系樹脂も好適に使用される。
アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量1,000~90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~25,000である。
アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する共重合性モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。共重合性モノマーとして、エステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
アクリル酸のホモポリマー及びコポリマーの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩やグリシン塩等が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20~90%とすることが好ましく、40~60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000~50,000の範囲が好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、複合材料とした際の特性向上の観点から50,000以下が好ましい。
熱可塑性樹脂としてポリアミドを用いる際には、結束剤としてはポリアミド樹脂と濡れ性のよい、又は表面張力の近い樹脂を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂のエマルジョンやポリアミド樹脂のエマルジョンやその変性体を選択することができる。
結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂等が挙げられる。結束剤として用いられる熱可塑性樹脂は、連続強化繊維の周囲を被覆する樹脂と同種の熱可塑性樹脂及び/又は変性熱可塑性樹脂であると、複合材料となった後、ガラス繊維と熱可塑性樹脂の接着性が向上し、好ましい。
更に、一層、連続強化繊維とそれを被覆する熱可塑性樹脂の接着性を向上させ、集束剤を水分散体としてガラス繊維に付着させる場合において、乳化剤成分の比率を低減、あるいは乳化剤不要とできる等の観点から、結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、変性熱可塑性樹脂が好ましい。
ここで、変性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂の主鎖を形成し得るモノマー成分以外に、その熱可塑性樹脂の性状を変化させる目的で、異なるモノマー成分を共重合させ、親水性、結晶性、熱力学特性等を改質したものを意味する。
結束剤として用いられる変性熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、変性ポリオレフィン系樹脂、変性ポリアミド系樹脂、変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
結束剤としての変性ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸及び/又はそのエステル体等のオレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、又は、不飽和カルボン酸及び/又そのエステル体等のオレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーの単独重合体であり、公知の方法で製造できる。オレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸及び/又そのエステル体とを共重合させたランダム共重合体でもよいし、オレフィンに不飽和カルボン酸をグラフトしたグラフト共重合体でもよい。
オレフィン系モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和カルボン酸、及びこれら不飽和カルボン酸のエステル化体(メチルエステル、エチルエステル等)等が挙げられ、これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
変性ポリオレフィン系樹脂がオレフィン系モノマーと該オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合である場合、モノマー比率としては、共重合の合計質量を100質量%として、オレフィン系モノマー60~95質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー5~40質量%であることが好ましく、オレフィン系モノマー70~85質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー15~30質量%であることがより好ましい。オレフィン系モノマーが60質量%以上であれば、マトリックスとの親和性が良好であり、また、オレフィン系モノマーの質量%が95質量%以下であれば、変性ポリオレフィン系樹脂の水分散性が良好で、連続強化繊維への均一付与が行いやすい。
結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂は、共重合により導入したカルボキシル基等の変性基が、塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類が挙げられる。結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、5,000~200,000が好ましく、50,000~150,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から5,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から200,000以下が好ましい。
結束剤として用いられる変性ポリアミド系樹脂は、分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖や3級アミン成分等の親水基を導入した変性ポリアミド化合物であり、公知の方法で製造できる。
分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖を導入する場合は、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等の一部又は全部をジアミン又はジカルボン酸に変性したものを共重合して製造される。3級アミン成分を導入する場合は、例えばアミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン、α-ジメチルアミノε-カプロラクタム等を共重合して製造される。
結束剤として用いられる変性ポリエステル系樹脂とは、ポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合体で、かつ末端を含む分子骨格中に親水基を有する樹脂であり、公知の方法で製造できる。
親水基としては、例えば、ポリアルキレンオキサイド基、スルホン酸塩、カルボキシル基、これらの中和塩等が挙げられる。ポリカルボン酸又はその無水物としては、芳香族ジカルボン酸、スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スルホテレフタル酸塩、5-スルホイソフタル酸塩、5-スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
これらの中で、変性ポリエステル系樹脂の耐熱性を向上させる観点から、全ポリカルボン酸成分の40~99モル%が芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。また、変性ポリエステル系樹脂を水分散液とする場合の乳化安定性の観点から、全ポリカルボン酸成分の1~10モル%がスルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリオールとしては、ジオール、3官能以上のポリオール等が挙げられる。
ジオールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。3官能以上のポリオールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合比率としては、共重合成分の合計質量を100質量%として、ポリカルボン酸又はその無水物40~60質量%、ポリオール40~60質量%であることが好ましく、ポリカルボン酸又はその無水物45~55質量%、ポリオール45~55質量%がより好ましい。
変性ポリエステル系樹脂の重量平均分子量としては、3,000~100,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から3,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から100,000以下が好ましい。
結束剤として用いる、ポリマー、熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
結束剤の全量を100質量%として、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩より選択された1種以上のポリマーを50質量%以上用いることが好ましく、60質量%以上用いることがより好ましい。
集束剤が、シランカップリング剤及び結束剤からなる場合、集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤及び結束剤の合計質量として、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%、更に好ましくは0.2~1質量%付与して付着させる。ガラス繊維の集束性制御と界面接着強度向上の観点から、集束剤の付着量が、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤及び結束剤の合計質量として0.1質量%以上であることが好ましく、糸の取扱い性の観点から3質量%以下であることが好ましい。
また、集束剤が、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなる場合、集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%、更に好ましくは0.2~1質量%付与して付着させる。ガラス繊維の集束性制御と界面接着強度向上の観点から、集束剤の付着量が、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として0.1質量%以上であることが好ましく、糸の取扱い性の観点から3質量%以下であることが好ましい。
--ガラス繊維用の集束剤の組成--
ガラス繊維用の集束剤におけるシランカップリング剤の配合量は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上と複合材料の機械的強度向上との観点から、0.1~2質量%が好ましく、より好ましくは0.1~1質量%、更に好ましくは0.2~0.5質量%である。
ガラス繊維用の集束剤における潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、界面接着強度向上と複合材料の機械的強度向上の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
ガラス繊維用の集束剤における結束剤の配合量は、ガラス繊維の集束性制御及び界面接着強度向上と複合材料の機械的強度向上との観点から、好ましくは1~25質量%、より好ましくは3~15質量%、更に好ましくは3~10質量%である。
連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合であって、集束剤が、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなる場合、当該ガラス繊維の集束剤においては、それぞれ、シランカップリング剤を0.1~2質量%、潤滑剤を0.01~1質量%、結束剤を1~25質量%を含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することが好ましい。
--ガラス繊維用の集束剤の使用態様--
ガラス繊維用の集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整してもよいが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液の形態とすることが好ましい。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する連続強化繊維としてのガラス繊維は、上述した集束剤を、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与して製造したガラス繊維を乾燥することによって連続的に得られる。
また、連続強化繊維として炭素繊維を選択した場合も同様に、表面処理剤として集束剤を用いることができ、集束剤は、カップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましい。カップリング剤としては炭素繊維の表面に存在する水酸基と相性の良いもの、結束剤としては選択した熱可塑性樹脂と濡れ性が良いものや表面張力の近いもの、潤滑剤としてはカップリング剤と結束剤を阻害しないものを選択することができる。
炭素繊維に用いる集束剤の種類については、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、特開2015-101794号公報に記載のものを用いることができる。
その他の連続強化繊維を用いる場合、連続強化繊維の特性に応じ、表面処理剤としてガラス繊維、炭素繊維に用いることが可能な集束剤の種類、付与量を適宜選択することができ、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
(連続強化繊維の形状)
連続強化繊維は複数本のフィラメントからなるマルチフィラメントであり、単糸数は、取扱い性の観点から30~15,000本であることが好ましい。
連続強化繊維の単糸径Rは、強度の観点、及び、取り扱い性の観点から2~30μmであることが好ましく、4~25μmであることがより好ましく、6~20μmであることが更に好ましく、8~18μmであることが最も好ましい。
連続強化繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm)の積RDは、連続強化繊維の取り扱い性と複合材料の強度の観点から、好ましくは5~100μm・g/cm、より好ましくは10~50μm・g/cm、更に好ましくは15~45μm・g/cm、より更に好ましくは20~45μm・g/cmである。
密度Dは、比重計により測定することができる。
他方、単糸径R(μm)は、密度D(g/cm)と繊度(dtex)、単糸数(本)から、以下の式:
Figure 2022121230000001
により算出することができる。また、単糸径R(μm)は例えば、連続強化繊維単糸のSEM観察によって求めることができる。
連続強化繊維の積RDを所定の範囲とするには、市販で入手可能な連続強化繊維について、連続強化繊維の有する密度に応じて、繊度(dtex)及び単糸数(本)を適宜選択すればよい。例えば、連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、密度が約2.5g/cmであるから、単糸径が2~40μmのものを選べばよい。具体的には、ガラス繊維の単糸径が9μmである場合、繊度660dtexで単糸数400本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、23となる。また、ガラス繊維の単糸径が17μmである場合、繊度11,500dtexで単糸数2,000本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、43となる。連続強化繊維として炭素繊維を用いる場合、密度が約1.8g/cmであるから、単糸径が2.8~55μmのものを選べばよい。具体的には、炭素繊維の単糸径が7μmである場合、繊度2,000dtexで単糸数3,000本の炭素繊維を選択することにより、積RDは、13となる。連続強化繊維としてアラミド繊維を用いる場合、密度が約1.45g/cmであるから、単糸径が3.4~68μmのものを選べばよい。具体的には、アラミド繊維の単糸径が12μmである場合、繊度1,670dtexで単糸数1,000本のアラミド繊維を選択することにより、積RDは、17となる。
連続強化繊維、例えば、ガラス繊維は、原料ガラスを計量、混合し、溶融炉で溶融ガラスとし、これを紡糸してガラスフィラメントとし、集束剤を塗布し、紡糸機を経て、ダイレクトワインドロービング(DWR)、ケーキ、撚りを入れたヤーン等の巻き取り形態として製造される。
連続強化繊維はどのような形態でも構わないが、ヤーン、ケーキ、DWRに巻き取ってあると、樹脂を被覆させる工程での生産性、生産安定性が高まるため好ましい。生産性の観点からはDWRが最も好ましい。
連続強化繊維の形態は、特に制限されず、織物や編み物、組紐、パイプ状のもの、ノンクリンプファブリック、一方向材等、種々の形態が挙げられ、好ましくは、織物、ノンクリンプファブリック、一方向材の形態である。
(熱可塑性樹脂)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド1010、ポリアミド12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系樹脂;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;ポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からより好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が更に好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点からポリアミド系樹脂がより更に好ましい。
-ポリエステル系樹脂-
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に-CO-O-(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。
ポリエステル系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂は、ホモポリエステルであってもよく、また、共重合ポリエステルであってもよい。
共重合ポリエステルの場合、ホモポリエステルに適宜第3成分を共重合させたものが好ましく、第3成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分等が挙げられる。
また、バイオマス資源由来の原料を用いたポリエステル系樹脂を用いることもでき、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
-ポリアミド系樹脂-
ポリアミド系樹脂とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、脂肪族系ポリアミド、芳香族系ポリアミド、全芳香族系ポリアミド等があげられる。
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリアミド系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカンラクタムやドデカラクタムが挙げられる。
ω-アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの水による開環化合物であるω-アミノ脂肪酸が挙げられる。ラクタム又はω-アミノカルボン酸はそれぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
ジアミン(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2-メチルペンタンジアミンや2-エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p-フェニレンジアミンやm-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。単量体としてのジアミン及びジカルボン酸はそれぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612等の脂肪族ポリアミド、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)等の半芳香族ポリアミド、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合体、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合体、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合体が挙げられる。
ポリアミド樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂が、(A)脂肪族ポリアミドを50~99質量部、及び、イソフタル酸単位を少なくとも75モル%含むジカルボン酸単位と、炭素数4~10のジアミン単位を少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含有する(B)半芳香族ポリアミドを1~50質量部、を含有してもよい。
熱可塑性樹脂が、上記範囲の(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドを含むと、ポリアミドとして(A)脂肪族ポリアミドのみを含む場合と比較して、連続繊維強化樹脂複合材料の物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
熱可塑性樹脂100質量%に対して、(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの合計含有量は、70~100質量%であることが好ましく、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。
上記(A)脂肪族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612等が挙げられる。
熱可塑性樹脂中のポリアミド100質量%中の、(A)脂肪族ポリアミドの含有量は、50~99質量%であることが好ましく、より好ましくは60~90質量%、更に好ましくは70~80質量%である。
上記(B)半芳香族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド6I、ポリアミド9I、ポリアミド10I等が挙げられる。
上記イソフタル酸単位及び炭素数4~10のジアミン単位の合計量は、(B)半芳香族ポリアミドの全構成単位100モル%に対して、80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、95~100モル%であることが更に好ましい。
なお、(B)半芳香族ポリアミドを構成する単量体単位の割合は、例えば、13C核磁気共鳴分光法(NMR)により測定することができる。
(B)半芳香族ポリアミドにおいて、ジカルボン酸単位中のイソフタル酸単位の割合は、少なくとも75モル%であり、好ましくは85モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。ジカルボン酸単位中のイソフタル酸単位の割合が上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
(B)半芳香族ポリアミドにおいて、ジアミン単位中の炭素数4~10のジアミン単位の割合は、少なくとも50モル%であり、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上である。ジアミン単位中の炭素数4~10のジアミン単位の割合が上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
熱可塑性樹脂中のポリアミド100質量%中の、(B)半芳香族ポリアミドの含有量は、1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10~40質量%、更に好ましくは20~30質量%である。
上記(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドは、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよく、(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとを合わせたポリアミド1gに対する当量として表される(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの封止された末端量の合計が、5~180μ当量/gであることが好ましく、10~170μ当量/gがより好ましく、20~160μ当量/gがさらに好ましく、30~140μ当量/gが特に好ましく、40~140μ当量/gが最も好ましい。封止された末端量が、上記範囲であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
ここで、封止された末端量とは、封止剤により封止されたアミノ末端及びカルボキシル末端の合計量である。封止された末端量は、H-NMRを用いて測定することができる。
(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度は、(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下であることが好ましく、2/5以下であることがより好ましい。(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度が(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度は、H-NMRを用いて測定することができる。
(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとは、損失正接tanδのピーク温度の差が45~100℃であることが好ましく、50~90℃であることがより好ましく、60~90℃であることが更に好ましい。(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとのtanδのピーク温度の差が、上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
損失正接tanδのピーク温度とは、温度を変化させながらそれぞれの温度でtanδを測定したときに、tanδの値が最大となるときの温度を意味する。(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドのtanδのピーク温度は、例えば、粘弾性測定解析装置を用いて測定することができる。
(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとの粘度の差が3倍以上であることが強度、剛性、成形性、外観の観点から好ましく、4倍以上であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂の粘度はMFR測定(ISO1133に準拠)により求めることができる。
[添加剤]
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料には、必要に応じて添加剤を含有させてもよい。本実施形態の複合材料は、例えば、着色剤、老化防止剤、酸化防止剤、耐候剤、金属不活性剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、防菌・防黴剤、防臭剤、導電性付与剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤、難燃剤、制振剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤等の添加剤を含有してもよい。
添加剤の含有量は、複合材料100質量%に対して、3質量%以下としてよい。
(着色剤)
着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アルミ顔料、二酸化チタン、群青、シアニンブルー、シアニングリーン、キナクリドン、珪藻土、モノアゾ塩、ペリレン、ジスアゾ、縮合アゾ、イソインドリン、弁柄、ニッケルチタンイエロー、ジケトンピロロピロール、金属塩、ペリレンレッド、金属酸化物、バナジン酸ビスマス、コバルトグリーン、コバルトブルー、アンスラキノン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等が挙げられる。中でも、黒色の着色剤が好ましく、カーボンブラック、ニグロシンがより好ましい。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、好適には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、連続強化繊維の含有量が90~525質量部、これら以外の成分の含有量が0~2質量部であり、より好適には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、連続強化繊維の含有量が150~340質量部、これら以外の成分の含有量が0~1質量部である。
また、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、連続繊維強化樹脂複合材料中の連続強化繊維の体積比率Vf(%)が、好適には20~80%であり、より好適には30~70%であり、更に好適には40~60%である。
[連続繊維強化樹脂複合材料の用途]
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、航空機、車、建設材料、ロボット等の構造材料用途に好適に使用することができる。
車用途においては、以下に限定されるものではないが、例えば、シャーシ/フレーム、足回り、駆動系部品、内装部品、外装部品、機能部品、その他部品に使用できる。
具体的には、ステアリング軸、マウント、サンルーフ、ステップ、スーフトリム、ドアトリム、トランク、ブートリッド、ボンネット、シートフレーム、シートバック、リトラクター、リタラクター支持ブラケット、クラッチ、ギア、プーリー、カム、アーゲー、弾性ビーム、バッフリング、ランプ、リフレクタ、グレージング、フロントエンドモジュール、バックドアインナー、ブレーキペダル、ハンドル、電装材、吸音材、ドア外装、内装パネル、インパネ、リアゲート、天井ハリ、シート、シート枠組み、ワイパー支柱、EPS(Electric Power Steering)、小型モーター、ヒートシンク、ECU(Engine Control Unit)ボックス、ECUハウジング、ステアリングギアボックスハウジング、プラスチックハウジング、EV(Electric Vehicle)モーター用筐体、ワイヤーハーネス、車載メーター、コンビネーションスイッチ、小型モーター、スプリング、ダンパー、ホイール、ホイールカバー、フレーム、サブフレーム、サイドフレーム、二輪フレーム、燃料タンク、オイルパン、インマニ、プロペラシャフト、駆動用モーター、モノコック、水素タンク、燃料電池の電極、パネル、フロアパネル、外板パネル、ドア、キャビン、ルーフ、フード、バルブ、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブ、可変バルブタイミングユニット、コネクティングロッド、シリンダボア、メンバー(エンジンマウンティング、フロントフロアクロス、フットウェルクロス、シートクロス、インナーサイド、リヤクロス、サスペンション、ピラーリーンフォース、フロントサイド、フロントパネル、アッパー、ダッシュパネルクロス、ステアリング)、トンネル、締結インサート、クラッシュボックス、クラッシュレール、コルゲート、ルーフレール、アッパボディ、サイドレール、ブレーディング、ドアサラウンドアッセンブリー、エアバッグ用部材、ボディーピラー、ダッシュツゥピラーガセット、サスペンジョンタワー、バンパー、ボディーピラーロワー、フロントボディーピラー、レインフォースメント(インパネ、レール、ルーフ、フロントボディーピラー、ルーフレール、ルーフサイドレール、ロッカー、ドアベルトライン、フロントフロアアンダー、フロントボディーピラーアッパー、フロントボディーピラーロワー、センターピラー、センターピラーヒンジ、ドアアウトサイドパネル)、サイドアウターパネル、フロントドアウインドゥフレーム、MICS(Minimum Intrusion Cabin System)バルク、トルクボックス、ラジエーターサポート、ラジエーターファン、ウォーターポンプ、燃料ポンプ、電子制御スロットルボディ、エンジン制御ECU、スターター、オルタネーター、マニホールド、トランスミッション、クラッチ、ダッシュパネル、ダッシュパネルインシュレータパッド、ドアサイドインパクトプロテクションビーム、バンパービーム、ドアビーム、バルクヘッド、アウタパッド、インナパッド、リヤシートロッド、ドアパネル、ドアトリムボドサブアッセンブリー、エネルギーアブソーバー(バンパー、衝撃吸収)、衝撃吸収体、衝撃吸収ガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、ルーフサイドインナーガーニッシュ、樹脂リブ、サイドレールフロントスペーサー、サイドレールリアスペーサー、シートベルトプリテンショナー、エアバッグセンサー、アーム(サスペンション、ロアー、フードヒンジ)、サスペンションリンク、衝撃吸収ブラケット、フェンダーブラケット、インバーターブラケット、インバーターモジュール、フードインナーパネル、フードパネル、カウルルーバー、カウルトップアウターフロントパネル、カウルトップアウターパネル、フロアサイレンサー、ダンプシート、フードインシュレーター、フェンダーサイドパネルプロテクター、カウルインシュレーター、カウルトップベンチレータールーパー、シリンダーヘッドカバー、タイヤディフレクター、フェンダーサポート、ストラットタワーバー、ミッションセンタートンネル、フロアトンネル、ラジコアサポート、ラゲッジパネル、ラゲッジフロア、アクセルペダル、アクセルペダルベース等の部品として好適に使用することができる。
[複合材料の成形]
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、さらに成形することができる。上記の方法としては、例えば、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を、所定の大きさに切りだし、赤外線ヒーターで加熱し、プレス成形機で加熱圧縮プレスする方法等が挙げられる。
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができることはいうまでもない。
実施例及び比較例において使用した測定及び評価方法は、以下のとおりである。
[連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維の体積比率(Vf)]
連続繊維強化樹脂複合材料2gを切り出し、電気炉に入れ、温度650℃で3時間加熱して、樹脂を焼失させた。その後、室温まで自然冷却し、残留した連続強化繊維の質量を測定することで、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維と樹脂の質量比率を求めた。次に、求めた質量比率と密度とから、連続繊維強化樹脂複合材料における連続強化繊維の体積比率Vf(%)を求めた。
[界面研磨値]
連続繊維強化樹脂複合材料を、連続強化繊維の長さ方向に直交する断面(研磨面)が得られるようにバンドソーにより切削し、切削した試験片を研磨機(小型精密試料作成システム IS-POLISHER ISPP-1000、株式会社池上精機)により、研磨面にかかる研磨圧力を200g/cmから20g/cmずつ上昇させて研磨した。FESEM(S-4700、株式会社日立ハイテクノロジーズ)(倍率:4500倍)により研磨面を観察し、任意の連続強化繊維10本を観察したときに、いずれにおいても樹脂との間に空隙が観察されない最大の研磨圧力P(g/cm)を求め、上記で求めたVf(%)で除すことにより、界面研磨値P/Vf(g/cm・%)を求めた。
研磨は、耐水ペーパー番手#2000で10分間、炭化ケイ素フィルム粒度9μmで5分間、アルミナフィルム粒度5μmで5分間、アルミナフィルム粒度3μmで5分間、アルミナフィルム粒度1μmで5分間、バフ研磨紙発泡ポリウレタンを用いた粒度0.1μmのコロイダルシリカ(バイカロックス0.1CR)で5分間の順番で行い、各研磨は約7mL/minで水を加えながら行った。
[引張強度、引張強度保持率]
連続繊維強化樹脂複合材料から長さ70mm、幅10mm、肉厚2mmの短冊状の試験片を切り出し、80℃の真空乾燥機で18時間以上乾燥した。その後、インストロン万能試験機にて、試験片を、長手方向に30mmの間隔でチャッキングし、速度5mm/minで、23℃、50%RHの環境下、及び100℃、50%RHの環境下で、それぞれ引張強度(MPa)を測定した。
下記式により、80℃での引張強度保持率(%)を求めた。
100℃での引張強度保持率=(100℃、50%RHでの引張強度/23℃、50%RHでの引張強度)×100
[曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ強度保持率、曲げ弾性率保持率]
連続繊維強化樹脂複合材料から長さ100mm、幅10mm、肉厚2mmの短冊状の試験片を切り出し、80℃の真空乾燥機で18時間以上乾燥した。その後、インストロン万能試験機にて、3点曲げ用の治具を用い、スパン間を厚み×16(mm)に設定して速度1mm/minで、23℃、50%RHの環境下、及び100℃、50%RHの環境下で、それぞれ曲げ強度(MPa)、曲げ弾性率(GPa)を測定した。
下記式により、100℃での曲げ強度保持率(%)及び曲げ弾性率保持率(%)を求めた。
100℃での曲げ強度保持率=(100℃、50%RHでの曲げ強度/23℃、50%RHでの曲げ強度)×100
80℃での曲げ弾性率保持率=(100℃、50%RHでの曲げ弾性率/23℃、50%RHでの曲げ弾性率)×100
[吸水特性]
連続繊維強化樹脂複合材料から長さ100mm、幅10mm、肉厚2mmの短冊状の試験片を切り出し、80℃の恒温水槽に18時間浸漬したものを吸水時の試験片とした。上記記載の方法により、乾燥時及び吸水時の試験片の23℃、50%RHの環境下で引張強度(MPa)、曲げ強度(MPa)、及び曲げ弾性率(GPa)を測定した。
下記式により、吸水時の引張強度保持率(%)、曲げ強度保持率(%)、及び曲げ弾性率保持率(%)を求めた。
吸水時の引張強度保持率=(吸水時の引張強度/乾燥時の引張強度)×100
吸水時の曲げ強度保持率=(吸水時の曲げ強度/乾燥時の曲げ強度)×100
吸水時の曲げ弾性率保持率=(吸水時の曲げ弾性率/乾燥時の曲げ弾性率)×100
[衝撃強度]
連続繊維強化樹脂複合材料から長さ60mm、幅60mm、肉厚2mmの試験片を切り出し、高速衝撃試験機(島津 HYDRO SHOT HITS-P10、株式会社島津製作所)にて、JIS K7211-2;2006に準拠して、ストライカー径20mmφ、受け径40mmφ、試験速度4.4m/sec、試験温度23℃、試験数n=5で試験を行った。変位に対する試験力のグラフを書き、当該グラフから求めた最大の衝撃強度(kN)を試験片の厚みで割り、5サンプルの平均値(kN/mm)で求めた。
[振動疲労試験]
連続繊維強化樹脂複合材料からASTM-D1822引張衝撃ダンベルTypeSの試験片を用意し、EHF-EB50kN-40L(RV)(株式会社島津製作所)により、試験温度23℃、周波数20Hz、波形を正弦波、チャック間35mmとして、振動疲労試験を実施した。250MPaにおける振動疲労試験の判断回数が、20,000回以上のものを「〇(良好)」、20,000回未満のものを「×(不良)」とした。
[界面回復特性]
上記曲げ試験後の連続繊維強化樹脂複合材料を、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度+100℃の温度で5MPa印加して15分間プレスした。その後、曲げ試験部を連続強化繊維の長さ方向に直交する断面(研磨面)が得られるようにバンドソーにより切り出し、切り出した曲げ試験部を研磨機(小型精密試料作成システム IS-POLISHER ISPP-1000、株式会社池上精機)により、研磨面にかかる研磨圧力が125g/cmとなるように研磨した。FESEM(S-4700、株式会社日立ハイテクノロジーズ)(倍率:4500倍)により、研磨面の任意の連続強化繊維50本を観察し、樹脂との間に空隙が観察されない連続強化繊維の割合が、曲げ試験前の連続強化繊維樹脂複合材料において同様にして求めた樹脂との間に空隙が観察されない連続強化繊維の割合の0%以上20%未満であれば「1」、20%以上40%未満であれば「2」、40%以上60%未満であれば「3」、60%以上80%未満であれば「4」、80%以上100%以下であれば「5」と評価した。
研磨は、耐水ペーパー番手#2000で10分間、炭化ケイ素フィルム粒度9μmで5分間、アルミナフィルム粒度5μmで5分間、アルミナフィルム粒度3μmで5分間、アルミナフィルム粒度1μmで5分間の順番で行い、各研磨は約7mL/minで水を加えながら行った。
[μドロップレット接触角、界面せん断強度]
複合材界面特性評価装置(HM410、東栄産業株式会社)の加熱炉部分に熱可塑性樹脂をセットし、炉内温度を熱可塑性樹脂の融点+15℃に設定して連続強化繊維の単糸1本に樹脂付けし、μドロップレットを作製した。作製したμドロップレットは、強化繊維を中心として、強化繊維の長さ方向に長い楕円球形状であった。室温に冷却後、連続強化繊維と熱可塑性樹脂のμドロップレットとがなす接触角(図1のαを参照)を測定し、μドロップレットの、連続強化繊維の繊維軸方向の長さLが95~105μmであるμドロップ100点から得られた接触角の中央値から、μドロップレット接触角(°)を求めた。
また、連続強化繊維の直径d(μm)、μドロップレットの、連続強化繊維の繊維軸方向の長さL(μm)を測定した後、95~105μmであるμドロップのせん断試験を行い、ブレードにより樹脂玉をこそぎ落とす際のせん断荷重F(N)を測定し、下記式(1)から界面せん断強度τ(MPa)を求めた。測定点数は100点として、その100点の中央値を求めた
τ=F/πdL ・・・(1)
実施例、比較例で用いた材料は以下のとおりである。
[連続強化繊維]
(ガラス繊維)
ガラス繊維1(GF1):繊度1.15g/mで単糸数2000本のガラス繊維100質量%に対し、集束剤を0.45質量%付着させたものを製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は約17μmとした。上記集束剤は、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903、信越化学工業株式会社製)0.5質量%、カルナウバワックス1質量%、ポリウレタン樹脂(Y65-55、株式会社ADEKA製)2質量%、共重合化合物(無水マレイン酸40質量%、アクリル酸メチル50質量%、及びメタクリル酸メチル10質量%を共重合させた、重量平均分子量が20000である共重合化合物)3質量%、となるように脱イオン水で調製することで作製した。
ガラス繊維2(GF2):GF1を電気炉により、650℃で3時間処理し、表面処理剤を含まないGF2を得た。(GF2について、GF2中の表面処理剤の含有量が0.45質量%以下であり、また、ゼータ電位測定において、等電点がpH=3未満であり、pH=3~8において負であることを確認した。)
ガラス繊維3(GF3):ガラス繊維2をγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903、信越化学工業株式会社製)の0.5質量%水溶液に30分間浸漬し、110℃で3時間乾燥した。
[連続強化繊維基材の作製]
ガラスクロス:レピア織機(織幅1m)を用い、上記ガラス繊維を経糸、緯糸として用いて製織することでガラスクロスを製造した。得られたガラスクロスの織形態は、(平織、織密度は6.5本/25mm、目付は640g/m)であった。
[熱可塑性樹脂]
樹脂1:ポリアミド66
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
アジピン酸(和光純薬工業)とヘキサメチレンジアミン(東京化成工業)との等モル塩:1500gを蒸留水:1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。次に、1時間かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。 その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行い、ペレット状で排出した。ペレットを100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、樹脂1(ポリアミド66)を得た。得られた樹脂1(ポリアミド66)は、重量平均分子量Mw=35000、分子量分布Mw/Mn=2.0(Mnは数平均分子量)であった。
樹脂2:ポリアミド6I
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
イソフタル酸(和光純薬工業)とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩:1500g、及び、全等モル塩成分に対して4.0モル%の酢酸を蒸留水:1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。次に、30分かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出した。ペレットを100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、樹脂2(ポリアミド6I)を得た。得られた樹脂2(ポリアミド6I)は、Mw=20000、Mw/Mn=2.0であった。
樹脂3:樹脂1と樹脂2とのドライブレンド品(質量比は、樹脂1(PA66):樹脂2(PA6I)=2:1)
樹脂4:ポリアミド12(3014U、宇部興産(株))
樹脂5:ポリアミド1010(ベスタミドDS16、ダイセル・エボニック(株))
樹脂6:ポリアミド612(ベスタミドD16、ダイセル・エボニック(株))
樹脂7:ポリアミド6(1010X1、宇部興産(株))
樹脂8:ポリアミド9T(ジェネスタN1000A、(株)クラレ)
樹脂9:ポリプロピレン(プライムポリプロJ707EG、(株)プライムポリマー)
樹脂10:ポリエチレン(サンテックJ240、旭化成(株))
[熱可塑性樹脂フィルムの作製]
Tダイ押し出し成形機(株式会社創研製)を用いて成形することで熱可塑性樹脂フィルムを得た。熱可塑性樹脂フィルムの厚さは200μmであった。
[実施例1]
樹脂1を用いて、前記方法で熱可塑性樹脂フィルム1を得た。
GF1を用いて製造したガラスクロス1を5枚と熱可塑性樹脂フィルム1を6枚準備し、熱可塑性樹脂フィルム1が表面となるようにガラスクロス1と熱可塑性樹脂フィルム1とを交互に重ねて成形を行い、連続繊維強化樹脂複合材料を得た。この時、熱可塑性樹脂の仕込み体積の割合は50%であった。
成形機として、連続圧縮成形機を使用した。上記ガラスクロスと上記熱可塑性樹脂フィルム1とを上記のように重ねて成形機に設置し、成形機内の加熱ゾーンの温度を330℃、冷却ゾーンを水冷で温度調整し、圧力3MPa、ベルト速度0.5m/minで圧縮成形を行った。
得られた連続繊維強化樹脂複合材料の各物性と、GF1、GF2、GF3と樹脂1との界面せん断強度、μドロップレット接触角を表1に示す。
[実施例2~6]
熱可塑性樹脂として表1に示す樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、連続繊維強化樹脂複合材料を得た。
得られた連続繊維強化樹脂複合材料の各物性と、GF1、GF2、GF3と各実施例で使用した樹脂との界面せん断強度、μドロップレット接触角を表1に示す。
[実施例7]
成形機として、ダブルベルトプレス機を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、連続繊維強化樹脂複合材料を得た。
得られた連続繊維強化樹脂複合材料の各物性と、GF1、GF2、GF3と樹脂1との界面せん断強度、μドロップレット接触角を表1に示す。
[比較例1、2、5、6]
熱可塑性樹脂として表1に示す樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、連続繊維強化樹脂複合材料を得た。
得られた連続繊維強化樹脂複合材料の各物性と、GF1、GF2、GF3と各実施例で使用した樹脂との界面せん断強度、μドロップレット接触角を表1に示す。
[比較例3]
ポリアミド66をガラスクロスに含浸したBond Laminate製「Tepex dynalite 101」に関して、実施例1と同様の評価を行った。
各物性を表1に示す。
[比較例4]
上記GF2(100質量%)に対し、集束剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-402、信越化学工業株式会社)0.3質量%、エポキシ樹脂エマルジョン1.5質量%、カルナウバワックス0.2質量%の混合物を付着させたガラス繊維(GF4)を用いて、平織、織密度は6.5本/25mm、目付600g/mのガラスクロスを製造して用いたこと以外は実施例1と同様にして、連続繊維強化樹脂複合材料を得た。なお、熱可塑性樹脂の仕込み体積の割合は50%であった。
得られた連続繊維強化樹脂複合材料の各物性と、GF4、GF2、GF3と樹脂1との界面せん断強度、μドロップレット接触角を表1に示す。
Figure 2022121230000002
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、各種機械や自動車等の構造部品等、高レベルでの機械的物性が要求される材料の補強材として、また、熱可塑性樹脂組成物との複合成形体材料として、産業上の利用可能である。
1:連続強化繊維の単繊維
2:熱可塑性樹脂の樹脂玉(μドロップ)
α:μドロップレット接触角
d:連続強化繊維の単繊維の径
L:樹脂玉(μドロップ)の、連続強化繊維の繊維軸方向の長さ

Claims (4)

  1. 連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂複合材料であり、
    前記連続繊維強化樹脂複合材料の前記連続強化繊維の長さ方向に直交する断面を研磨し、研磨した前記断面を電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)で観察したときに、前記連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との間に空隙が観察されない最大の研磨圧力P(g/cm)を、前記連続繊維強化樹脂複合材料中の前記連続強化繊維の体積比率Vf(%)で除した値である界面研磨値P/Vfが、10g/cm・%以上であることを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料。
  2. 請求項1に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法であり、
    連続強化繊維を表面処理剤で処理することにより、表面処理剤を含む連続強化繊維を得ることを含み、
    μドロップレット法により下記式(1)で求められる前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度が、前記表面処理剤の代わりにカップリング剤のみで処理したカップリング剤処理連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度の0.8~1.2倍であり、
    μドロップレット法により測定される前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角が、前記表面処理剤を含まない表面処理剤非含有連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角の0.4~0.7倍であることを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
    τ=F/πdL ・・・(1)
    (式中、τは界面せん断強度(MPa)、dは連続強化繊維の径(μm)、Lは連続強化繊維の単繊維に付着させた熱可塑性樹脂の樹脂玉(μドロップ)の、連続強化繊維の繊維軸方向の長さ(μm)、Fは樹脂玉を連続強化繊維から引き抜く際のせん断荷重(N)を表す。)
  3. 前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との前記界面せん断強度が、前記表面処理剤非含有連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との界面せん断強度の1.8~10倍である、請求項2に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
  4. 前記表面処理剤を含む連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂との前記μドロップレット接触角が、前記カップリング剤処理連続強化繊維と前記熱可塑性樹脂とのμドロップレット接触角の0.8~1.6倍である、請求項2又は3に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
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