JP2022096170A - 溶接システムおよび鋼管形状特定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
溶接ロボットで角形鋼管を継ぎ足す際には、先ず、継ぎ足す角形鋼管の端部にそれぞれエレクションピースを形成し、エレクションピースどうしを建て入れ治具で仮止めしておく。次に、建て入れ治具で仕切られた区間毎に溶接ロボットを設置し、区間毎に所定パス数の初期溶接を行ってゆく。全ての区間で初期溶接が終了したら、エレクションピースから建て入れ治具を撤去し、角形鋼管の継ぎ目の全周にわたって残りの複数パスの溶接を行い、全ての溶接が終了した後にエレクションピースを除去する(特許文献2参照)。
これに対し、角形鋼管および走行レールの形状に基づいて溶接ロボットの移動速度を制御することで、溶接速度を一定化して溶接品質を安定化することがなされている(特許文献3参照)。
角形鋼管の角部(コーナ部)では、角形鋼管および走行レールの形状によって3つの配置関係が生じる(特許文献3段落0024~0028参照)。すなわち、角形鋼管と走行レールとの曲線部の曲率中心が一致しており、各々の曲線部の範囲が同じとなる場合(特許文献3図4(a)参照)、走行レールの曲率中心が角形鋼管の曲率中心よりも角形鋼管の内側にあり、走行レールの曲線部が角形鋼管の直線部まではみ出している場合(同図4(b)参照)、走行レールの曲率中心が角形鋼管の曲率中心よりも角形鋼管の外側にあり、角形鋼管の曲線部が走行レールの直線部まではみ出している場合(同図4(c)参照)がある。特許文献3の溶接ロボットでは、これらの各々に対応可能である。
また、特許文献3の溶接ロボットでは、角形鋼管の大きさ(外形寸法等)、直線部や曲線部等の寸法(大きさや中心位置等)と、使用するガイドレールの直線ユニット、コーナユニットの曲線部の寸法(大きさや中心位置等)が予め記録されている(特許文献3段落0023参照)。
また、特許文献3における角形鋼管情報記憶部は、予め曲線部の形状情報が記憶されるが、その形状情報を準備して記憶させる作業が必要であるうえ、公称寸法であるため製造誤差への対応が不十分である。
特許文献3とは別に、溶接ロボットを鋼管に設置し、台車をレールに沿って移動させ、レールの曲線部および鋼管の曲線部をユーザがティーチングすることも行われる。しかし、溶接作業のつどティーチングが必要であり、煩雑さが避けられなかった。
そこで、鋼管において、直線部とは異なる曲線部の処理を行うために、曲線部の正確な形状および範囲を効率よく測定することが求められていた。
図1において、溶接システム10は、一対の鋼管1,2の端部を建て入れ治具5で仮止めした状態で、接続端3,4どうしを全周にわたって自動溶接するものである。
溶接システム10は、鋼管1,2に支持されて接続端3,4に沿うように配置された走行レール11と、走行レール11に沿って移動可能な溶接ロボット20と、溶接ロボット20に接続された制御装置9と、を有する。
溶接ロボット20は、走行レール11に支持された台車21と、先端から溶接ワイヤ221が延びる溶接トーチ22と、溶接トーチ22を台車21に支持する支持機構30と、を有する。
支持機構30は、溶接トーチ22を、溶接ワイヤ221が接続端3,4に接触する溶接位置Pw(図3参照)から、溶接トーチ22が建て入れ治具5と干渉しない退避位置Pe(図4参照)まで退避させる退避機構31を備えている。
さらに、支持機構30は、溶接トーチ22を台車21に対して近接離隔させる移動支持機構32と、溶接トーチ22を台車21に対して回動させる回動支持機構33と、を有する。
回動支持機構33は、移動支持機構32に接続されたブラケット331と、ブラケット331に接続されたパネル332と、パネル332に支持されたホルダ333と、を有する。このホルダ333に溶接トーチ22が支持されている。
回動支持機構33には、台車21の走行方向Dmの軸線まわりに溶接トーチ22を回動させるねらい角調整機構34と、鋼管1,2の延長方向Dcの軸線まわりに溶接トーチ22を回動させるトーチ角回動機構35と、が形成されている。
ねらい角調整機構34は、パネル332のブラケット331に対する角度を調整することで、溶接トーチ22のねらい角Awを調整可能である。ねらい角Awは、溶接トーチ22の先端に支持された溶接ワイヤ221の上下方向つまり鋼管1,2の延長方向Dcの向きであり、鋼管1,2の接続端3,4の溶接部位の状態に応じて適切に調整される。
図3の状態では、溶接トーチ22の先端の溶接ワイヤ221が鋼管1,2の接続端3,4の溶接部位に近接され、溶接を行うことができる(溶接位置Pw)。
図4において、ねらい角調整機構34は、軸線341まわりに大きく回動させて溶接ワイヤ221を接続端3,4から離隔させることができる(退避位置Pe)。退避位置Peは、溶接ワイヤ221およびこれを支持する溶接トーチ22の先端部分が建て入れ治具5と干渉しない位置とすることができる。
従って、溶接トーチ22の先端の溶接ワイヤ221が接続端3,4に接触する溶接位置Pwから、溶接トーチ22が建て入れ治具5と干渉しない退避位置Peまで退避させる退避機構31が構成される。
トーチ角回動機構35は、ホルダ333のパネル332に対する角度を調整することで、溶接トーチ22のトーチ角Atを調整可能である。トーチ角Atは、溶接トーチ22の先端に支持された溶接ワイヤ221の水平方向つまり台車21の走行方向Dmの向きであり、鋼管1,2の接続端3,4の溶接部位の状態および建て入れ治具5との相対位置に応じて適切に調整される。
一対のカメラ23は、それぞれCCD(Charge Coupled Device、電荷結合素子)などの固体撮像素子で構成され、支持アーム24を介して移動支持機構32の側面に支持されている。
一対のカメラ23は、溶接トーチ22を挟んで両側に対向設置され、溶接トーチ22の先端および鋼管1,2の接続端3,4の溶接部位の溶接方向前側および後側の画像を撮影可能である。一対のカメラ23および支持アーム24は、それぞれ走行の際にも建て入れ治具5と干渉しない位置に配置されている。
照明装置25は、ラインレーザ照射装置であり、接続端3,4に形成された開先の横断方向に拡がるレーザ光束251を鋼管1,2の接続端3,4の開先に照射し、この開先の断面形状252を周囲よりも明るく浮かび上がらせることができる。
カメラ23は、断面形状252を含む測定部位253の画像を撮影し、画像データとして制御装置9に送信可能である。
図6において、制御装置9は、既存のコンピュータシステムに専用のドライバを組み合わせて構成され、記憶領域に格納されたプログラムを実行することで、走行レール11に沿った台車21の走行、溶接トーチ22の姿勢調整、溶接トーチ22への供給電圧および電流の調整、溶接ワイヤの送り速度の調整など、溶接システム10の各部動作の制御を行うものである。
このために、制御装置9は、溶接トーチ22ほかを制御する溶接動作制御部91を有するとともに、台車21を制御する台車移動制御部92を有する。
このために、制御装置9には、形状特定部93が形成されている。
形状特定部93は、測定手段94、記憶手段95、記憶制御手段96、特定手段97を有し、鋼管1,2の曲線部、つまり鋼管1,2の矩形断面形状における四隅の形状を示す曲線部形状情報を特定する。
なお、測定手段94としては、溶接ロボット20にレーザ測距装置を設置し、鋼管1,2の表面に直交するレーザビームを用いて鋼管1,2から溶接ロボット20までの距離を測定してもよい。
併せて、記憶手段95は、走行レール11における溶接ロボット20の位置情報、つまり溶接ロボット20が走行レール11のどこにあるか、を記憶可能である。
さらに、記憶手段95は、溶接ロボット20の移動経路を示す移動経路形状情報として、走行レール11の平面形状(鋼管1,2の断面方向)を記憶している。この移動経路形状情報は、鋼管1,2の溶接に用いられる走行レール11のパーツの設計情報、および鋼管1,2に設置された組立状態での形状情報に基づいて設定される。
これらの記憶手段95の記憶は、記憶制御手段96により制御される。
また、記憶制御手段96は、測定手段94により鋼管1,2から溶接ロボット20までの距離が測定された際に、この距離と、測定された時点の走行レール11における溶接ロボット20の位置情報とを、一対の位置距離情報(図11の台車位置および台車距離)にして記憶手段95に記憶する。この際、溶接ロボット20が走行レール11に沿って走行しつつ、距離の測定および記憶を繰り返し行うことで、記憶手段95には複数の台車距離と台車位置の対が記憶される。
特定手段97は、走行レール11に沿った溶接ロボット20の移動に伴って測定手段94により測定された鋼管1,2までの距離(図11の台車距離)が変化した場合に、溶接ロボット20の移動経路上の位置を示す位置情報(図11の台車位置)を用いて、鋼管1,2の曲線部の中央の位置(曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置)を取得することにより、鋼管1,2の曲線部形状情報を特定する。このために、特定手段97は、記憶手段95に記憶された移動経路形状情報と、位置距離情報とを参照し、曲線部形状情報を特定する。
また、特定手段97は、溶接ロボット20の移動に伴って測定手段94により測定された距離が長くなり始めた場合の溶接ロボット20の位置情報が示す位置を変化開始位置とし、その後の溶接ロボット20の移動に伴って測定手段94により測定された距離が変化しなくなり始めた場合の溶接ロボット20の位置情報が示す位置を変化終了位置とし、得られた変化開始位置および変化終了位置に基づき、曲線部中央位置曲線部の中央の位置を取得することができる。
そして、特定手段97は、取得した曲線部の中央の位置に基づいて曲線部の両端にある曲線部開始点及び曲線部終了点を求めることにより、曲線部形状情報を特定することができる。
曲線部形状情報を特定するより詳細な手順については、のちほど図9~図18を用いて説明する。
本実施形態の溶接システム10では、先ず鋼管1,2を建て入れ治具5で仮止めし、走行レール11および溶接ロボット20を設置したのち、溶接ロボット20を走行レール11に沿って走行させて曲線部形状情報の特定を行い、得られた曲線部形状情報を参照しつつ鋼管1,2の接続端3,4の自動溶接を実行する。
図7および図8には、本実施形態の溶接システム10による鋼管1,2の自動溶接動作が示されている手順について説明する。
溶接4の終端に達したら、建て入れ治具5は越えずに走行する向きを反転し、区画S4を反時計回りに走行しつつ溶接5を行う。続いて、退避機構31で建て入れ治具5を避けて区画S3に移動し、区画S3を反時計回りに走行しつつ溶接6を行う。以下同様に、区画S2で溶接7を行い、区画S1で溶接8を行う。
また、溶接1~8を繰り返し、鋼管1,2の接続端3,4の溶接に所定の強度が得られたら、建て入れ治具5を取り外して区画S1~S4が互いに連続した状態とし、全周の連続溶接を行う。全周の連続溶接は、走行方向を反転させつつ、必要回数だけ繰り返し行う。
このうち、走行レール11の直線部11Fおよび曲線部11Cについては、各々の設置範囲、長さや境界点位置、曲線部11Cの曲率中心位置および曲率半径が、予め走行レール11の設計情報として既知である。
一方、鋼管1,2の直線部2Fおよび曲線部2Cについては、各々の設置範囲、長さや境界点位置、曲線部2Cの曲率中心位置および曲率半径が、材料の公称寸法として定められているが、実際の寸法は異なる場合がある。
さらに、走行レール11の曲線部11Cと、鋼管1,2の曲線部2Cとで、設置範囲、曲率中心位置および曲率半径が異なると、溶接ロボット20が曲線部11Cを通過する際に、溶接ロボット20から鋼管1,2までの距離が変化し、溶接条件の設定を適切に調整する必要が生じる。
さらに、同様のことが、区画S2の始端位置P21、中間位置P22,P23,P24,P25、および終端位置P26(図7の溶接2,溶接7)、区画S3の始端位置P31、中間位置P32,P33,P34,P35、および終端位置P36(図7の溶接3,溶接6)、区画S4の始端位置P41、中間位置P42,P43,P44,P45、および終端位置P46(図7の溶接4,溶接5)にもいえる。
そこで、本実施形態では、前述した形状特定部93により、鋼管1,2の曲線部形状情報を特定する。
以下、本実施形態における曲線部形状特定処理について説明する。
以下、鋼管1,2の区画S1についての曲線部形状特定処理について説明する。例示は区画S1であるが、他の区画S2~S4あるいは逆向きの区画S4~S1についても同様に適用可能である。また、区画S1の一つではなく、区画S1~S2、あるいは区画S1~S4のように複数の区画を連続して処理してもよい。
走行レール11に関して、区画S1を構成する曲線部11Cの両側の直線部11Fの延伸方向はX軸方向およびY軸方向である。走行レール11の厚み方向中央位置を結ぶ線が溶接ロボット20の移動経路GLであり、曲線部11Cにおける移動経路GLは曲率中心Crおよび曲率半径Rrである。
曲線部11Cの設置範囲に関して、曲線部11Cとその両側の直線部11Fとの境界点を移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proとする。移動経路側開始点Priは、曲率中心Crを通りY軸に平行な移動経路側開始線Lriと走行レール11との交点である。移動経路側終了点Proは、曲率中心Crを通りX軸に平行な移動経路側開始線Lriと走行レール11との交点である。
曲線部2Cの設置範囲に関して、曲線部2Cとその両側の直線部2Fとの境界点を曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoとする。曲線部開始点Pciは、曲率中心Ccを通りY軸に平行な曲線部開始線Lciと鋼管1,2の表面との交点である。曲線部終了点Pcoは、曲率中心Ccを通りX軸に平行な曲線部終了線Lcoと鋼管1,2の表面との交点である。
鋼管1,2の曲率中心Ccと走行レール11の曲率中心Crとは、X軸方向にdx、Y軸方向にdyだけ鋼管1,2の中心側へずれている。
ここで、鋼管1,2の曲線部2Cが、走行レール11の曲線部11Cと同心円状であったならば、曲線部2Ccのようになる。
鋼管1,2の曲率中心Ccが走行レール11の曲率中心Crよりも鋼管1,2の中心側へずれているとき、曲線部開始線Lciが区画S1の中間位置P12、移動経路側開始線Lriが区画S1の中間位置P13、移動経路側終了線Lroが区画S1の中間位置P14、曲線部終了線Lcoが区画S1の中間位置P15に相当する。
溶接ロボット20は、台車21の両端近傍の2つの支持点PF,PLを走行レール11でガイドされる。測定手段94は、2つの支持点PF,PLの中点PMから、支持点PF,PLを結ぶ線分と直交方向の距離(台車距離Dr)を測定する。台車距離Drの測定は、走行レール11を移動しつつ所定距離または所定時間ごとに複数回行われ(例えば台車距離Dr3、Dr10、Dr18など)、それぞれ測定した際の台車位置Pr(例えば台車位置Pr3、Pr10、Pr18など)と一対にして記録される。
具体的には、図6の記憶制御手段96により、台車位置Prと台車距離Drとを対にして記憶手段95に順次記憶されてゆき、これにより記憶手段95には位置距離情報951(図11参照)が形成される。
なお、台車21が曲線部11Cにあるとき、中点PMは台車位置Prから内側に変位する。このため、記録する台車距離Drにおいては、測定手段94による測定距離に対して中点PMの内側変位分を補正した値とする。
記憶手段95に記憶された位置距離情報951は、特定手段97(図6参照)が随時読み出し可能である。
特定手段97は、位置距離情報951として記憶された複数対の台車位置Prおよび台車距離Drから、曲線部11C,2Cの中央位置および対称線を検出する。
続く曲線部開始線Lciより右の領域では、曲線部2Cによって直線部11Fとの間が拡がり、曲線部開始線Lciを超えると台車距離Drがさらに拡大し、この拡大は対称線Lmまで続く。
すなわち、鋼管1,2との曲率中心Ccが走行レール11の曲率中心Crにあれば、曲線部11Cおよび曲線部2Ccが同心円となり、曲線部11Cにおいても台車距離Drは変化しない。しかし、曲率中心Ccである曲線部2Cは、曲線部2Ccから鋼管1,2の内側へ変位しており、従ってこの領域(曲線部開始線Lciから対称線Lmまで)では台車距離Drが拡大することになる。
ここで、曲線部2C,2Cc,11Cの各々の曲率中心Cc,Crを通る直線は、中心角R=90度の半分(R/2=45度)の方向に延びる。
この直線を対称線Lmとすると、曲線部2C,2Cc,11Cはこれらに接続される直線部2F,11Fの近傍部分も含めて、対称線Lmに対して線対称となる。対称線Lmと曲線部2Cとの交点を曲線部2Cの中央位置Pcmとし、対称線Lmと曲線部11Cとの交点を曲線部11Cの中央位置Prmとすると、各々は曲線部2C,11Cの経路上の中点位置となる。
図13に、位置距離情報951に記憶された複数対の台車位置Prおよび台車距離Drの変化を模式的に示す。
前述した通り、台車距離Drは、台車位置Prが曲線部開始線Lciまでは一定であるが、曲線部開始線Lciを超え、さらに移動経路側開始線Lriを超えると増大し、対称線Lmで最大となったのち減少に転じ、移動経路側終了線Lroを超え、さらに曲線部終了線Lcoを超えると再び一定となる。
従って、位置距離情報951に記憶された複数対の台車位置Prおよび台車距離Drから、最大値Drxを検出することで、対称線Lmに対応する曲線部11Cの中央位置Prmを検出可能である。
曲線部11Cの中央位置Prmに対して、移動経路GLに沿ってπ/4=45度(曲線部11Cの中心角R=90度の半分)だけ戻ること、つまり移動経路GLを長さ2Rr(π/4)だけ辿ることで、移動経路側開始点Priを検出することができる。同様に、中央位置Prmから移動経路GLに沿って45度進むことで、移動経路側終了点Proを検出することができる。
なお、以上の処理により、走行レール11の曲線部11Cの中央位置Prm、移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proが確定できる。しかし、鋼管1,2の表面形状は確定できていないので、同様の手順で曲線部2Cの中央位置Pcm、曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoの座標を確定できない。これらの確定については後述する。
図15において、位置距離情報951に記憶された台車位置Pr1~Pr24および台車距離Dr1~Dr24のうち、例えば台車距離Dr12が最小値Drnであれば、これに対応する台車位置Pr12を曲線部11Cの中央位置Prmとする。さらに、曲線部11Cの中央位置Prmに対して、移動経路GLに沿ってπ/4=45度の長さを辿ることで、移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proを検出することができる。
ここで、本実施形態の台車21は、一対の支持点PF,PLが移動経路GLに沿って移動し、台車21が曲線部11Cにあるとき、中点PMは台車位置Prから内側に変位する。このため、曲線部2C,11Cの間隔が直線部2F,11Fの間隔と同じであっても、台車距離Drには曲線部11Cによる変動が生じる。
具体的には、台車21が直線部11Fを移動し、台車21の前方の支持点PFが曲線部11Cに入ると、中点PMが内側へ変位しはじめる。続いて、台車21の後方の支持点PLが曲線部11Cに入ると、中点PMの内側への変位が一定となる。台車21の前方の支持点PFが曲線部11Cを出て反対側の直線部11Fに入ると、中点PMの内側への変位が減少しはじめ、台車21の後方の支持点PLも直線部11Fに入ると、中点PMの内側への変位がない状態に戻る。
ここで、所定の閾値dDrを用いて斜めの部分の台車距離Drを検査することで、台形の両側で交差位置Prit,Protを検出することができる。前述の通り、曲線部11Cは対称線Lmに対して線対称であるため、両側の交差位置Prit,Protの中点を中央位置Prmとして検出できる。
一方、特定手段97は、以下の処理により、鋼管1,2の曲線部2Cの表面形状、中央位置Pcm、曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoを検出する。
軌跡Tcが得られれば、軌跡Tcと対称線Lmの交点により曲線部2Cの中央位置Pcmを検出でき、前述した移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proと同様の手順により、曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoを検出することができる。
本実施形態の溶接システム10においては、走行レール11を鋼管1,2に設置し、溶接ロボット20を装着し、制御装置9の制御のもとで自動溶接を行う。
本実施形態では、溶接ロボット20による自動溶接に先立って、本発明に基づく曲線部形状特定処理を行う。
次に、検出工程として、作業者は制御装置9に検出動作を実行させる。
制御装置9は、走行レール11上で溶接ロボット20を走行させ(処理PA3)、走行レール11上の台車位置Prにおいて鋼管1,2までの台車距離Drを検出し(処理PA4)、台車位置Prと台車距離Drとの対を位置距離情報951に記録してゆく(処理PA5)。溶接ロボット20が検出範囲(例えば図7の区画S1)を走行し終えていなければ、処理PA3~PA6を繰り返す。
検出工程に続いて、演算工程として、制御装置9は、得られた位置距離情報951と、準備工程で記憶しておいた移動経路情報とを用いて、曲線部形状情報を演算する(処理PA7)。演算工程の詳細は図19で詳述する。
以上により曲線部形状情報が得られたら、作業者が同情報に基づいて溶接プランを作成し、同プランに基づいて制御装置9に自動溶接動作を実行させる(処理PA8)。
まず、制御装置9は、位置距離情報951から最大の台車距離Dr(最大値Drx)を選択し、対応する台車位置Prを通りかつ移動経路GLと直交方向の対称線Lmを計算する(処理PB1)。
次に、制御装置9は、曲線部11Cの移動経路GL上で対称線Lmに対して曲線部の中心角の1/2となる移動経路側開始点Priおよび移動経路側終了点Proを計算する(処理PB2)。
続いて、制御装置9は、各台車位置Prから移動経路GLと直交方向に各台車距離Drだけ離れた点を計算し(処理PB3)、得られた点を円弧近似して軌跡Tcを計算し、曲率中心Ccおよび曲率半径Rcを計算する(処理PB4)。
そして、対称線Lmと軌跡Tcとの交点から曲線部2Cの中央位置Pcmを計算し(処理PB5)、軌跡Tc上で対称線Lmに対して曲線部の中心角の1/2となる曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoを計算する(処理PB6)。
ここで、軌跡Tcの曲率中心Ccが移動経路GLの曲率中心Crよりも内側であれば(図17の形状)、曲線部開始点Pciを変化開始位置とし、曲線部終了点Pcoを変化終了位置とする(処理PB8)。
一方、軌跡Tcの曲率中心Ccが移動経路GLの曲率中心Crよりも内側でなければ(同じまたは外側であれば)、移動経路側開始点Priを変化開始位置とし、移動経路側終了点Proを変化終了位置とする(処理PB9)。
本実施形態によれば、鋼管1,2の曲線部2Cの正確な形状(軌跡Tc)および範囲(曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pco)を効率よく測定できる。
とくに、走行レール11の曲線部11Cおよび鋼管1,2の曲線部2Cの対称性を利用し、対称線Lmを求めることで中心角の1/2を用いて曲線部開始点Pciおよび曲線部終了点Pcoを効率よく測定できる。
本実施形態では、2つの支持点PF,PLが移動経路GLに沿って移動する台車21を用いることで、曲線部11Cにおける中点PMの内側への変位により、曲線部11Cと曲線部2Cが同心円状であっても、対称線Lmを求めることができる。
本実施形態では、測定手段94としてカメラ23を用いることで、開先断面形状の測定用途と本発明に基づく鋼管形状特定方法とで兼用することができる。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
図20において、測定手段94としては、溶接ロボット20にレーザ測距装置941を設置し、鋼管1,2の表面に直交するレーザビーム942を用いて鋼管1,2から溶接ロボット20までの距離を測定してもよい。
Claims (15)
- 断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周を移動する溶接ロボットにより前記鋼管を溶接する溶接システムであって、
前記鋼管から前記溶接ロボットまでの距離を測定する測定手段と、
前記測定手段による測定の結果に基づき、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を特定する特定手段と、
を備え、
前記特定手段は、前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された前記距離が変化した場合に、前記溶接ロボットの移動経路上の位置を示すロボット位置情報を用いて前記曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置を取得することにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする溶接システム。 - 断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周に沿った移動経路上を移動する溶接ロボットにより前記鋼管を溶接する溶接システムであって、
前記鋼管から前記溶接ロボットまでの距離を測定する測定手段と、
記憶手段と、
少なくとも前記移動経路の形状を示す移動経路形状情報を前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記測定手段による測定の結果に基づき、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を特定する特定手段と、
を備え、
前記記憶制御手段は、前記溶接ロボットの前記移動経路上の位置をそれぞれ示す複数のロボット位置情報と、前記ロボット位置情報で示される複数の位置それぞれで前記測定手段が測定した距離をそれぞれ示す複数の距離情報と、をそれぞれ対応付けて位置距離情報として前記記憶手段に記憶させ、
前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された前記移動経路形状情報及び前記位置距離情報を用い、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする溶接システム。 - 前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された前記移動経路形状情報及び前記位置距離情報を用いて前記曲線部の一端と他端との間の曲線部中央位置を取得することにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする請求項2に記載の溶接システム。
- 前記特定手段は、前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された距離が長くなり始めた場合の前記ロボット位置情報が示す位置を変化開始位置とし、その後の前記溶接ロボットの移動に伴って前記測定手段により測定された距離が変化しなくなり始めた場合の前記ロボット位置情報が示す位置を変化終了位置とし、前記変化開始位置および前記変化終了位置に基づき、前記曲線部中央位置を取得することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の溶接システム。
- 前記特定手段は、取得した前記曲線部中央位置に基づいて前記曲線部の両端にある曲線部開始点及び曲線部終了点を求めることにより、前記曲線部形状情報を特定することを特徴とする請求項1、請求項3、および請求項4のいずれか一項に記載の溶接システム。
- 前記曲線部形状情報は、前記曲線部の曲率中心、又は、前記曲線部の曲率半径を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の溶接システム。
- 前記溶接ロボットは、前記溶接ロボットの移動経路に沿って移動する台車を有し、
前記測定手段が測定する距離は、前記台車の移動方向に垂直な方向の距離であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の溶接システム。 - 前記測定手段が、前記台車に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の溶接システム。
- 断面形状に直線部および曲線部を有する鋼管の外周に、所定の移動経路に沿って移動する台車を有する溶接ロボットを設置する準備工程と、
前記鋼管の前記曲線部に臨む区間で、前記台車を前記移動経路に沿って移動させつつ、前記移動経路上の複数の台車位置で、それぞれ前記台車から前記鋼管までの距離を示す台車距離を検出し、検出した前記台車距離と前記台車位置とを対にして位置距離情報として記録する検出工程と、
前記位置距離情報に基づいて、前記曲線部の形状を示す曲線部形状情報を演算する演算工程と、
を有する鋼管形状特定方法。 - 前記準備工程では、前記移動経路の形状を示す移動経路形状情報を記憶しておき、
前記検出工程では、前記移動経路の直交方向に前記台車から前記鋼管までの距離を検出し、
前記演算工程では、前記位置距離情報および前記移動経路形状情報に基づいて、複数の前記台車位置ごとに、前記台車位置から前記移動経路の直交方向に前記台車距離だけ離れた点を求め、得られた複数の点を近似処理して前記曲線部形状情報を演算する、
請求項9に記載の鋼管形状特定方法。 - 前記曲線部は円弧状であり、
前記演算工程の前記近似処理は最小二乗法による円弧近似であり、
前記曲線部形状情報として前記曲線部の曲率中心および曲率半径を求める
請求項10に記載の鋼管形状特定方法。 - 前記曲線部形状情報として前記曲線部の軌跡を求め、
前記位置距離情報として記録された複数の前記台車距離および前記台車位置の対のうち、前記台車距離が最大値または最小値となる対を選択し、選択した対の前記台車位置を通り前記移動経路に直交する対称線を求め、
前記対称線と前記軌跡の交点を曲線部中央位置とし、
前記鋼管の前記曲線部を挟む一対の前記直線部のなす中心角を求め、
前記軌跡上で前記対称線に対して前記中心角の2分の1となる曲線部開始点および曲線部終了点を求める、
請求項11に記載の鋼管形状特定方法。 - 前記曲線部の曲率中心が、前記移動経路の曲率中心よりも前記鋼管の内側にあるとき、
前記曲線部開始点を変化開始位置とし、前記曲線部終了点を変化終了位置とする、
請求項12に記載の鋼管形状特定方法。 - 前記曲線部の曲率中心が、前記移動経路の曲率中心よりも前記鋼管の外側にあるとき、
前記移動経路上で前記対称線に対して前記中心角の2分の1となる移動経路側開始点および移動経路側終了点を変化開始位置および変化終了位置とする、
請求項12に記載の鋼管形状特定方法。 - 前記台車が、前記移動経路上を通りかつ互いに所定距離離れた一対の支持点を有し、
前記台車距離が、一対の前記支持点を結ぶ線分の中点から前記支持点を結ぶ線分に直交する方向に前記鋼管までの距離である、
請求項9から請求項14のいずれか一項に記載の鋼管形状特定方法。
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