〔実施形態〕
以下、図1~17を参照し、本発明の実施形態の溶接システム100を説明する。以下説明の簡単のため鋼管を例として用いて溶接システム100を説明するが、鋼管に限らず鋼材であれば鋼管に限らずどのようなものであってもよい。鋼管以外の鋼材は例えば平板や、H型鋼である。
図1に示されるように、溶接システム100は、鉛直方向Dvに並べて配置された鋼管8の端部同士を溶接するために用いられる。鋼管8は、4つの円弧状の角部と、角部同士をそれぞれ接続する4つの直線部とを有する角形鋼管である。鋼管8は、鉛直方向Dvに延びる。初期状態では、鋼管8は、建方治具9により仮止めされている。建方治具9は、鋼管8の直線部に取り付けられている。4つの建方治具9が、4つの直線部にそれぞれ取り付けられている。
〔溶接システムの概要〕
まず、図1~図3を参照して、溶接システム100の概要を説明する。図1は、実施形態の溶接システム100を示す全体図である。図2は、実施形態の溶接システム100の概要を説明するブロック図である。図3は、実施形態における溶接ロボット及び撮影装置を示す第1の斜視図である。
溶接システム100は、溶接ロボット1と、ガイドレール2と、撮影装置3と、溶接電源4と、ワイヤ送給装置5と、システム制御装置6と、を備える。
溶接ロボット1は、鋼管8に沿って配置されたガイドレール2上を所定方向に移動し且つ鋼管8を溶接する。溶接ロボット1は、制御部31と、複数のモータ32と、溶接トーチ13と、第1ローラ121と、第2ローラ122と、を備える。制御部31は、溶接ロボット1の動作を制御する。制御部31は、システム制御装置6と通信可能に接続されており、システム制御装置6による制御を受けて溶接ロボット1の動作を制御する。なお、制御部31は、システム制御装置6に設けられていても良い。
モータ32は、溶接ロボット1を駆動させるモータである。モータ32は、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させるサーボモータを含む。モータ32の駆動により第1ローラ121及び第2ローラ122が回転する。
溶接トーチ13は、鋼管8の端部同士の溶接に用いられる。溶接トーチ13による溶接は、例えばアーク溶接によって行われる。溶接トーチ13内には、溶接ワイヤ113が配置されている。
第1ローラ121及び第2ローラ122は、溶接ロボット1がガイドレール2上を移動するためのローラである。したがって第1ローラ121は回転することで溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させるローラである。第2ローラ122は、第1ローラ121とは異なるローラであって回転することで溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させるローラである。第1ローラ121と第2ローラ122との中心を結ぶ線は、ガイドレール2に略平行である。
図1に示されるように、ガイドレール2は、鋼管8に沿って配置される。ガイドレール2は、鋼管8の周方向に環状に、鋼管8を囲むように配置される。溶接ロボット1は、ガイドレール2に沿って移動可能である。以下、溶接ロボット1がガイドレール2に沿って移動する方向を、走行方向Drと称する。すなわち、走行方向Drは、ガイドレール2が延びる方向である。また、鉛直方向Dv及び走行方向Drに直交する方向を、近接隔離方向Dhと称する。例えば、鋼管8の直線部においては、近接隔離方向Dhは、鋼管8の面に直交する方向である。
撮影装置3は、溶接ロボット1に取り付けられる。撮影装置3は、溶接前のセンシングの処理において鋼管8の溶接部位、及び建方治具9を撮影する。また、撮影装置3は、溶接処理において溶接ロボット1による溶接の様子を撮影する。撮影装置3は、例えばCCD(Charge Coupled Device)などの固体撮像素子を含んで構成される。撮影装置3はシステム制御装置6と通信可能に接続されており、撮影装置3が取得した画像又は動画(以下、撮影結果と言う)はシステム制御装置6に送信される。
溶接システム100は、より具体的には図3に示すように撮影装置3を複数備える。図3の例における溶接システム100は撮影装置3として、撮影装置3-1と撮影装置3-2とを備える。撮影装置3-1は、溶接ロボット1に取り付けられた撮影装置であって鋼材に形成された開先901を撮影可能な撮影装置である。撮影装置3-2は、溶接ロボット1に取り付けられた撮影装置であり撮影装置3-1とは異なる撮影装置であり開先901を撮影可能な撮影装置である。撮影装置3-1と撮影装置3-2とは、溶接トーチ13を挟んで両側に設置される。
撮影装置3は、例えば照明装置36によって線状に照明された断面形状912を含む測定部位911を撮影する。照明装置36は、溶接ロボット1に取り付けられたラインレーザ照射装置である。すなわち、溶接ロボット1は照明装置36を備える。照明装置36は、開先901の横断方向(すなわちX軸方向)に拡がるレーザ光束を開先901の測定部位911に照射することで、測定部位911を開先901の横断方向へ連続して線状に照明する。測定部位911は、溶接対象の部位のうち撮影装置3によって測定される部位である。図1~図3の例における溶接対象は、具体的には鋼管8である。照明装置36による測定部位911へのレーザ光束の照明により、断面形状912は周囲よりも明るく浮かび上がる。
撮影装置3の撮影は、例えばガイドレール2に沿って移動する溶接ロボット1が溶接を行う場所に到達した後、溶接を開始する前に実行される。画像は例えば、ユーザが画像を見て開先901の状態を確認し、確認結果に基づいた溶接ロボット1への指示であって溶接の品質を高める指示を後述する入力部63等の所定のユーザインタフェースにユーザが入力することに用いられる。画像は、例えば、システム制御装置6が画像解析により開先901の状態を解析し、その解析結果に基づいてより一層溶接の品質が高まるように溶接ロボット1の溶接の動作を制御する、ということに用いられてもよい。より具体的には、システム制御装置6は、後述する開先断面形状情報を撮影装置3の撮影の結果に基づいて取得し、取得した開先断面形状情報に基づいてより一層溶接の品質が高まるように溶接ロボット1の溶接の動作を制御してもよい。
画像は、例えば、溶接品質向上や溶接品質の担保のために用いられる。具体的には、開先断面形状情報に基づいて、ユーザが溶接の積層要領を計画し、さらにその積層を実現するために各層の溶接を実行するときの、ワイヤ狙い位置や溶接速度などのパラメータを適切な値にユーザが決定する、ことに用いられる。
このように、溶接システム100は、鋼管8に形成された開先901を写す画像に基づき溶接ロボット1によって溶接を行う。
溶接電源4は、ワイヤ送給装置5へ電力を供給する。溶接電源4は、鋼管8と溶接トーチ13との間に電圧を印加する。ワイヤ送給装置5は、溶接トーチ13へ溶接ワイヤ113を供給する。溶接トーチ13は、溶接トーチ用ケーブル80を介して、ワイヤ送給装置5と接続される。
システム制御装置6は、溶接システム100の動作を制御する。システム制御装置6は、具体的には、溶接ロボット1、撮影装置3、照明装置36、溶接電源4及びワイヤ送給装置5の動作を制御する。溶接ロボット1は、制御ケーブル70を介して、システム制御装置6と接続される。制御ケーブル70は、システム制御装置6が送信した信号であって溶接ロボット1を制御する制御信号を溶接ロボット1に伝送する。
〔溶接ロボットの構成〕
次に、図1~図3を参照して、溶接ロボット1の構成を説明する。溶接ロボット1は、本体部11と、溶接トーチ13と、支持部14と、を備える。本体部11は、溶接ロボット1の基台である。本体部11は、制御部31及びモータ32を備える。本体部11は、ガイドレール2に取り付けられるスライド部12を備える。溶接ロボット1は、スライド部12がガイドレール2の上を摺動することで、走行方向Drに移動する。スライド部12は、モータ32(サーボモータ)が駆動することで第1ローラ121及び第2ローラ122が回転し、ガイドレール2の上を摺動する。
支持部14は、本体部11と溶接トーチ13との間に設けられ、溶接トーチ13を支持する。支持部14は、ケース21と、ブラケット22と、パネル23と、ホルダ24と、を有する。
ケース21は、本体部11の外側を覆うように設けられる。ケース21は、例えばケース21の内部に構成された送り機構により、本体部11に対して、近接隔離方向Dhへ移動可能とされている。ケース21とブラケット22とにより、移動部33が構成される。移動部33は、ケース21を本体部11に対して近接隔離方向Dhへ移動させることで、溶接トーチ13を鋼管8に対して近接離隔させることができる。
ブラケット22は、ケース21に接続される。ブラケット22は、ケース21の下端から、鉛直方向Dvの下方へ延びる。パネル23は、ブラケット22の下端に接続される。ホルダ24は、パネル23の下面に接続される。ホルダ24に、溶接トーチ13が支持されている。
パネル23は、ブラケット22に対して、走行方向Drに平行な軸線341回りに回動可能とされている。ブラケット22とパネル23とにより、第1の角度調整部34が構成される。
ホルダ24は、パネル23に対して、パネル23の表面と直交する軸線351回りに回動可能とされている。パネル23とホルダ24とにより、第2の角度調整部35が構成される。
溶接ロボット1は、第1の角度調整部34と、第2の角度調整部35と、姿勢調整機構40とを備える。図4及び図5を参照して、第1の角度調整部34について詳述する。図4は、実施形態における溶接ロボット1において、溶接トーチ13が溶接位置にある状態を説明する側面図である。図5は、実施形態における溶接ロボット1において、溶接トーチ13が退避位置にある状態を説明する側面図である。
図4に示されるように、第1の角度調整部34は、パネル23のブラケット22に対する角度を調整することで、溶接トーチ13のねらい角Awを調整する。ねらい角Awは、溶接トーチ13の先端に支持された溶接ワイヤ113の鉛直方向Dvの向きである。ねらい角Awは、鋼管8の溶接部位の状態に応じて適切に調整される。
なお、図4においては、溶接トーチ13のねらい角Awは調整されるものの、溶接トーチ13の先端の溶接ワイヤ113は鋼管8の溶接部位に接触又は近接しており、溶接トーチ13による鋼管8の溶接が可能となっている。溶接トーチ13による溶接が可能な範囲内における溶接トーチ13の位置を、溶接位置Pwと称する。
また、本実施形態においては、図5に示されるように、第1の角度調整部34は、溶接トーチ13を、溶接位置Pwから、溶接トーチ13が建方治具9と干渉しない退避位置Prまで退避させる退避機構を兼ねている。すなわち、第1の角度調整部34は、溶接トーチ13を軸線341回りに大きく回動させることにより、溶接ワイヤ113を鋼管8の溶接部位から離間させ、退避位置Prまで移動させる。退避位置Prは、溶接ワイヤ113及びこれを支持する溶接トーチ13の先端部が建方治具9と干渉しないときの溶接トーチ13の位置である。
図6及び図7を参照して、第2の角度調整部35について詳述する。図6は、実施形態における溶接ロボット1において、溶接トーチ13が正立溶接位置にある状態を示す正面図である。図7は、実施形態における溶接ロボット1において、溶接トーチ13が傾斜溶接位置にある状態を示す正面図である。
図6に示されるように、第2の角度調整部35は、ホルダ24のパネル23に対する角度を調整することで、溶接トーチ13のトーチ角Atを調整する。トーチ角Atは、溶接トーチ13の先端に支持された溶接ワイヤ113の走行方向Drの向きである。トーチ角Atは、鋼管8の溶接部位の状態、及び溶接ロボット1と建方治具9との相対位置に応じて適切に調整される。
図6においては、溶接トーチ13のトーチ角Atは0となっている。このときの溶接トーチ13の位置を、正立溶接位置Pw0とする。すなわち、溶接トーチ13が正立溶接位置Pw0に位置するとき、溶接トーチ13は、溶接方向(走行方向Dr)に対して直角に正立し、溶接方向が双方向いずれであっても同条件で溶接を行うことができる。
また、図7に示されるように、第2の角度調整部35は、溶接トーチ13のトーチ角Atを変更し、溶接トーチ13を傾斜させて、溶接トーチ13の先端を鋼管8と建方治具9との間に潜り込ませる。これにより、鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の溶接を行うことができる。このときの溶接トーチ13の位置を、傾斜溶接位置Pw1とする。なお、これら第1の角度調整部34及び第2の角度調整部35は、いずれもモータ32の駆動により動作する。
図8は、実施形態における溶接ロボット及び撮影装置を示す第2の斜視図である。図9は、実施形態における溶接ロボット及び撮影装置を示す第3の斜視図である。図8及び図9に示されるように、撮影装置3は、姿勢調整機構40を介して溶接ロボット1に取り付けられる。撮影装置3は、溶接トーチ13の姿勢に影響されない状態で溶接ロボット1に取り付けられている。姿勢調整機構40及び撮影装置3は、溶接ロボット1の走行の際にも建方治具9と干渉しない位置に設けられる。
一対の撮影装置3及び一対の姿勢調整機構40が、溶接ロボット1の幅方向の両側に設置される。なお、溶接ロボット1の幅方向とは、走行方向Drと平行な方向である。一対の撮影装置3を設けることにより、溶接ロボット1が走行方向Drの双方向いずれに向かって走行しても、一方の撮影装置3により溶接ロボット1の前方の溶接部位、すなわちこれから溶接する部位を撮影し、他方の撮影装置3により溶接ロボット1の後方の溶接部位、すなわち溶接された部位を撮影することができる。
図9に示されるように、姿勢調整機構40は、レール401と、スライダ402と、アーム403と、マウント404とを有する。レール401は、ケース21に取り付けられる。レール401は、鉛直方向Dvに沿って延びる。スライダ402は、レール401に、レール401に沿って移動可能に取り付けられる。スライダ402は、レール401の任意の位置で停止可能である。これにより、撮影装置3を、溶接ロボット1に対して鉛直方向Dvの任意の位置へ移動させることができる。
アーム403は、スライダ402から延びる。アーム403の先端には、マウント404が取り付けられる。マウント404には、撮影装置3が支持される。撮影装置3は、マウント404に対して鉛直方向Dvの軸線まわりに回動可能に取り付けられる。これにより、撮影装置3を、鉛直方向Dvに沿った軸線回りの任意の角度に回動させることができる。
このように、撮影装置3は、溶接ロボット1に対して鉛直方向Dvの任意の位置へ移動可能であり、かつ鉛直方向Dvに沿った軸線回りの任意の角度に回動可能である。これにより、撮影装置3の撮影アングルの自由度を高めることができる。
また、スライダ402は、レール401の上方へ抜き出すことができる。これにより、撮影装置3は、溶接ロボット1から着脱可能である。
〔溶接システムの制御系〕
次に、図10~図17を参照して、溶接システム100の制御系について説明する。図10は、実施形態におけるシステム制御装置6のハードウェア構成の一例を示す図である。システム制御装置6は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備え、プログラムを実行する。システム制御装置6は、プログラムの実行によって制御部61、通信部62、入力部63、記憶部64及び出力部65を備える装置として機能する。
より具体的には、システム制御装置6は、プロセッサ91が記憶部64に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、システム制御装置6は、制御部61、通信部62、入力部63、記憶部64及び出力部65を備える装置として機能する。
制御部61は、システム制御装置6が備える各種機能部の動作を制御する。制御部61は、例えば溶接ロボット1の動作を制御する。制御部61は、例えば溶接ロボット1に溶接を実行させる。制御部61は、例えば溶接ロボット1の動作の制御に際して、溶接電源4の動作やワイヤ送給装置5の動作を制御することで溶接ロボット1の動作を制御することもある。制御部61は、例えば撮影装置3に撮影を実行させる。制御部61は、例えば照明装置36による照明を制御する。
通信部62は、システム制御装置6を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部62は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば溶接ロボット1である。通信部62は、例えば制御ケーブル70を介して溶接ロボット1と通信する。通信部62は、例えば溶接ロボット1に制御信号を送信する。外部装置は、例えば撮影装置3である。通信部62は、撮影装置3との通信によって、撮影結果を取得する。外部装置は、例えば溶接電源4である。外部装置は、例えばワイヤ送給装置5である。外部装置は、例えば照明装置36である。
通信部62は、例えば制御ケーブル70を介して溶接ロボット1の位置に関する情報(以下、溶接ロボット位置情報と言う)を取得する。溶接ロボット位置情報は、例えば溶接ロボット1の移動に関するサーボモータ(モータ32)の制御の目標値(以下、単に目標値とも言う)である。
入力部63は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部63は、これらの入力装置をシステム制御装置6に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部63は、システム制御装置6に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部63には、例えば溶接の開始の指示が入力される。入力部63には、例えばユーザの指示が入力されてもよい。
記憶部64は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置を用いて構成される。記憶部64は、システム制御装置6自体を含む溶接システム100に関する各種情報を記憶する。記憶部64は、例えば通信部62又は入力部63を介して入力された情報を記憶する。記憶部64は、例えば制御部61による処理の実行により生じた各種情報を記憶する。記憶部64は、例えば撮影装置3が取得した撮影結果を記憶する。
記憶部64は、例えば前記目標値(溶接ロボット位置情報)を記憶する。記憶部64は、予め建方治具9の形状を示す建方治具形状情報を記憶する。建方治具形状情報は、建方治具9の幅を示す幅情報を含む。建方治具形状情報は、建方治具9の側面であって鋼管8とは反対側の側面の高さ(以下、建方治具9の高さとも称する)、及び建方治具9の側面であって鋼管8側の側面の高さ(以下、建方治具9の底面の鋼管8からの高さとも称する)を示す高さ情報を含む。
記憶部64は、予め、第2の角度調整部35による軸線351回りの溶接トーチ13の回動可能範囲(以下、トーチ角Atの可動範囲とも称する)、及び溶接トーチ13の先端の溶接ワイヤ113の可動な長さの範囲(以下、溶接トーチ13の可動半径とも称する)を記憶する。
記憶部64は、予め、溶接トーチ13を溶接位置Pwから退避位置Prへ移動させるための動作に関する退避動作情報を記憶する。退避動作情報は、例えば、溶接位置Pwから退避位置Prへの溶接トーチ13の回動量を含む。
出力部65は、各種情報を出力する。出力部65は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部65は、これらの表示装置をシステム制御装置6に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部65は、例えば入力部63に入力された情報を出力する。出力部65は、例えば撮影装置3の撮影した画像を出力してもよい。
図11は、実施形態における制御部61の機能構成の一例を示す図である。制御部61は、システム動作制御部601、位置判定部602、開先画像取得部603、生成部604、測定位置決定部605、測定位置決定情報取得部606、記憶制御部607、入力制御部608及び出力制御部609を備える。
システム動作制御部601は、溶接ロボット1、撮影装置3、照明装置36、溶接電源4及びワイヤ送給装置5の動作を制御する。システム動作制御部601による溶接ロボット1の動作の制御は、例えば、溶接ロボット1による溶接と、溶接ロボット1の移動と、第1の角度調整部34及び第2の角度調整部35の動作と、の制御を含む。
システム動作制御部601は、溶接実行制御部611、移動制御部612、退避制御部613及び撮影制御部614を含む。
溶接実行制御部611は、溶接ロボット1の動作を制御して溶接ロボット1に溶接を実行させる。溶接実行制御部611は、例えばユーザの入力した指示にも基づいて溶接ロボット1の動作を制御し溶接ロボット1に溶接を実行させてもよい。ユーザの指示は例えば、撮影装置3の撮影の結果に基づいた指示であって溶接の品質を向上させる指示である。溶接実行制御部611は、例えば撮影装置3の撮影の結果を画像解析し、画像解析の結果に基づいて溶接ロボット1の動作を制御して溶接ロボット1に溶接を実行させてもよい。より具体的には、生成部604の取得する情報であって後述する開先断面形状情報に基づいて溶接ロボット1の動作を制御して溶接ロボット1に溶接を実行させてもよい。
溶接実行制御部611は、開先断面形状情報に基づいて、例えば溶接品質向上や溶接品質の担保のために溶接ロボット1を動作させる。具体的には、溶接実行制御部611は、開先断面形状情報に基づいて、溶接の積層要領を計画し、さらにその積層を実現するために各層の溶接を実行するときの、ワイヤ狙い位置や溶接速度などのパラメータを適切な値に決定する。
なお、溶接の積層要領の計画とは、溶接にて開先を金属で埋めていく層構造(層数)とその各層を構成するパスの回数を決定することを意味する。溶接実行制御部611が溶接の積層要領を計画するとは、溶接実行制御部611が所定のコンピュータプログラムを実行して、溶接にて開先を金属で埋めていく層構造(層数)とその各層を構成するパスの回数を決定すること、を意味する。ただし、溶接の積層要領の計画は、必ずしも溶接実行制御部611が実行する必要は無い。溶接の積層要領の計画は、例えば人間が実行してもよい。人間は実行した結果を、入力部63等を介してシステム制御装置6に入力する。このような場合、溶接実行制御部611は、溶接の積層要領を計画することに代えて、人間が入力した結果を取得する。なお、溶接実行制御部611が計画した結果に対しては、さらに人間が入力部63等を介して修正を加えてもよい。
移動制御部612は、モータ32の動作を制御しモータ32を駆動させることで第1ローラ121及び第2ローラ122を回転させて、溶接ロボット1を移動させる。すなわち、移動制御部612は、第1ローラ121及び第2ローラ122の動作を制御することで溶接ロボット1の移動を制御する。移動制御部612は、制御の履歴を記憶部64に記憶する。第1ローラ121及び第2ローラ122の制御の履歴は、ローラが溶接ロボット1を移動させるものであることから、溶接ロボット1の移動の履歴でもある。したがって、制御の履歴は、溶接ロボット1の位置を示す情報であり、溶接ロボット位置情報の一例である。
退避制御部613は、接触判定処理と退避処理とを実行する。接触判定処理は、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する処理である。退避処理は、接触判定処理の判定の結果に基づき、溶接ロボット1が建方治具9に接触しないように溶接ロボット1の動作を制御する処理を含む処理である。接触判定処理及び退避処理の詳細は後述する。
撮影制御部614は、撮影装置3の動作と照明装置36の動作とを制御して撮影装置3に照明装置36によって照明された箇所を撮影させる。
位置判定部602は、溶接ロボット位置情報に基づき、ガイドレール2上の区間である第1区間、第2区間又は第3区間のいずれに溶接ロボット1が位置するのかを判定する。第1区間は、所定方向側撮影装置が開先901を撮像可能な区間である。第2区間は、反対側撮影装置が開先901を撮像可能な区間である。第3区間は、所定方向側撮影装置及び反対側撮影装置の両方が開先901を撮像可能な区間である。
所定方向側撮影装置は、溶接ロボット1の所定方向の側に位置する撮影装置3である。所定方向は、予め定められた方向であって、例えば溶接ロボット1の走行方向Drである。したがって、所定方向側撮影装置は、例えば撮影装置3-1である。反対側撮影装置は、溶接ロボット1の所定方向の側とは反対の側に位置する撮影装置3である。したがって、反対側撮影装置は、例えば所定方向側撮影装置が撮影装置3-1である場合、撮影装置3-2である。
開先画像取得部603は、撮影装置3-1による撮影の結果と撮影装置3-2による撮影の結果とのうち、開先画像として用いられる画像の画像データを、ガイドレール2上の溶接ロボット1の位置に応じて、取得する。すなわち、開先画像取得部603は、位置判定部602の判定の結果に基づいて、開先画像として用いられる画像の画像データを取得する。開先画像は、溶接に用いられる画像であって開先901を写す画像である。開先画像取得部603の取得する画像の画像データは、例えば通信部62を介して取得された画像データであって、撮影装置3-1又は撮影装置3-2の撮影した画像の画像データである。
開先画像取得部603は、例えば、位置判定部602によって溶接ロボット1が第1区間に位置すると判定された場合には所定方向側撮影装置の撮影の結果を開先画像の画像データとして取得する。開先画像取得部603は、例えば、位置判定部602によって溶接ロボット1が第2区間に位置すると判定された場合には反対側撮影装置の撮影の結果を開先画像の画像データとして取得する。開先画像取得部603は、例えば、位置判定部602によって溶接ロボット1が第3区間に位置すると判定された場合には所定方向側撮影装置及び反対側撮影装置のいずれか一方又は両方の撮影の結果を開先画像の画像データとして取得する。
生成部604は、所定方向側撮影装置が開先901を撮影して生成する第1画像と反対側撮影装置が開先901を撮影して生成する第2画像とのいずれか一方又は両方の画像データ、に基づいて、開先の断面形状を示す開先断面形状情報を生成する。生成部604は、例えば開先画像取得部603が所定方向側撮影装置の撮影の結果を取得し反対側撮影装置の撮影の結果を取得しなかった場合には、所定方向側撮影装置の撮影の結果を用いて開先断面形状情報を生成する。生成部604は、例えば開先画像取得部603が所定方向側撮影装置の撮影の結果を取得せず反対側撮影装置の撮影の結果を取得した場合には、反対側撮影装置の撮影の結果を用いて開先断面形状情報を生成する。生成部604は、溶接ロボット1が第3区間に位置すると位置判定部602により判定される場合、予め定められた規則(以下「生成規則」という。)にしたがって、第1画像と第2画像とのいずれか一方又は両方に基づいて、開先断面形状情報を生成する。
生成規則は、例えば、第1画像及び第2画像の両方の画像データに基づいて、開先断面形状情報を生成する、という規則である。生成規則は、例えば、第1画像及び第2画像のうちの開先断面形状情報の生成に用いる画像としてユーザが指示した画像の画像データを用いて開先断面形状情報を生成する、という規則であってもよい。ユーザの指示は、例えばユーザによって入力部63に入力される。ユーザの指示の内容は、例えば第1画像と第2画像との両方の画像データを開先断面形状情報の生成に用いることを指示する内容である。ユーザの指示の内容は、例えば開先断面形状情報の生成に用いる画像として第1画像又は第2画像のうちの一方の画像を指示する内容であってもよい。
測定位置決定部605は、開先901の断面形状を測定する位置(以下「測定位置」という。)を、測定位置の決定に関する所定の情報である測定位置決定情報に基づいて決定する。以下、測定位置決定部605の決定した測定位置を決定位置という。測定位置決定部605による決定位置の決定の後、溶接システム100では、例えば移動制御部612が測定位置決定部605の決定した測定位置である決定位置に溶接ロボット1を移動させる処理が実行される。
測定位置決定情報取得部606は、建方治具位置情報取得部661、曲線端部情報取得部662、中間位置情報取得部663、溶接端情報取得部664、測定数情報取得部665、半径情報取得部666、ローラ間距離情報取得部667及び曲率中心間距離情報取得部668を備え、測定位置決定情報を取得する。
建方治具位置情報取得部661は、鋼管8に設けられた建方治具9の位置を示す建方治具位置情報を取得する。例えば、建方治具位置情報取得部661はセンシング処理を実行し、その結果に基づき建方治具位置情報取得部661は、建方治具9の位置を示す建方治具位置情報を取得する。建方治具位置情報は例えばユーザが後述する入力部63に入力してもよい。この場合、建方治具位置情報取得部661が取得する建方治具位置情報は、入力部63に入力された建方治具位置情報であってもよい。建方治具位置情報は、測定位置決定情報が含む情報の一例である。ここで建方治具位置情報の取得のより詳細な一例を説明する。
<建方治具位置情報の取得の例>
例えば、建方治具9の幅方向の中央の位置にマーカを付しておく。マーカの一例は、QRコード(登録商標)(Quick Response Code)である。なお、建方治具9の幅方向とは、走行方向Drと平行な方向である。溶接前のセンシング処理において、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させながら、撮影装置3により建方治具9に付されたマーカを撮影する。撮影装置3が取得した撮影結果は、通信部62を介して記憶部64に記憶される。なお、例えば、撮影装置3による撮影の開始時に、走行方向Drに沿う軸(1次元の座標)の原点を設定する。軸の原点は、任意に設定可能であり、記憶部64に記憶されている。例えば、軸の原点は、入力部63に撮影の開始の指示が入力された時における溶接ロボット1の位置とすることができる。
建方治具位置情報取得部661は、記憶部64及び通信部62を介して撮影装置3から撮影結果を取得する。建方治具位置情報取得部661は、撮影装置3が取得した撮影結果に対して画像認識処理を行うことによって、マーカの位置を特定する。マーカの位置は、上記1次元の座標で示される。建方治具位置情報取得部661は、このマーカの位置を、建方治具位置情報として取得する。すなわち、この場合、建方治具位置情報は、建方治具9の幅方向の中央の位置である。建方治具9の幅方向の中央の位置は、上記1次元の座標で示される。
曲線端部情報取得部662は、ガイドレール2が有する曲線部の開始点(以下「曲線部開始点」という。)を示す曲線部開始点位置情報と、ガイドレール2が有する曲線部の終了点(以下「曲線部終了点」という。)を示す曲線部終了点位置情報と、を取得する。曲線部開始点位置情報及び曲線部終了点位置情報は例えば予め記憶部64に記憶済みであり、曲線端部情報取得部662は記憶部64から曲線部開始点位置情報及び曲線部終了点位置情報を読み出すことで、曲線部開始点位置情報及び曲線部終了点位置情報を取得する。曲線部開始点位置情報及び曲線部終了点位置情報は、測定位置決定情報が含む情報の一例である。
中間位置情報取得部663は、曲線部開始点と曲線部終了点との中間の位置を示す中間位置情報を取得する。中間位置情報は例えば予め記憶部64に記憶済みであり、中間位置情報取得部663は記憶部64から中間位置情報を読み出すことで、中間位置情報を取得する。中間位置情報取得部663は、例えば予め記憶部64に記憶済みの曲線部開始点位置情報及び曲線部終了点位置情報に基づき計算により、中間位置情報を取得してもよい。中間位置情報は、測定位置決定情報が含む情報の一例である。
溶接端情報取得部664は、溶接の開始端を示す開始端情報と、溶接の終了端を示す終了端情報と、を取得する。開始端は、溶接ロボット1による溶接が開始されるガイドレール2上の溶接ロボット1の位置である。終了端は、溶接ロボット1による溶接が終了するガイドレール2上の溶接ロボット1の位置である。開始端情報及び終了端情報は例えば予め記憶部64に記憶済みであり、溶接端情報取得部664は記憶部64から開始端情報及び終了端情報を読み出すことで、開始端情報及び終了端情報を取得する。開始端情報及び終了端情報は、測定位置決定情報が含む情報の一例である。
測定数情報取得部665は、開先901の断面形状を測定する位置の数を示す測定数情報を取得する。測定数情報は、例えば予め記憶部64に記憶済みであり、測定数情報取得部665は記憶部64から測定数情報を読み出すことで、測定数情報を取得する。測定数情報は、測定位置決定情報が含む情報の一例である。
ここで、測定数情報が、建方治具位置情報、開始端情報、終了端情報及び測定数情報を含む場合に測定位置決定部605が測定位置を決定する処理の一例を説明する。
<測定位置の決定の処理の一例>
図12は、実施形態における測定位置決定部605が測定位置を決定する処理を説明する説明図である。図12において位置T1は、開始端情報の示す開始端の一例である。図12において位置T2は、建方治具位置情報の示す建方治具9の位置の一例である。図12において位置T3は、終了端情報の示す終了端の一例である。図12において、位置P1~P14それぞれは、決定位置の一例である。図12の例では、建方治具9の位置は決定位置ではない。
したがって、図12の例において、測定数情報は14である。このように、測定位置決定部605は、建方治具位置情報、開始端情報及び終了端情報に基づき、候補区間内の位置のうち、測定数情報の示す数の位置を決定位置として決定する。候補区間は、例えば開始端から終了端までの走行方向に沿ったガイドレール2上の区間であって、建方治具9の位置を含まないという条件を満たす区間である。決定位置は、例えば開始端から終了端までの走行方向に沿ったガイドレール2上に等間隔に位置する、という条件を満たす位置である。
半径情報取得部666は、ガイドレール2の曲線部の曲率半径を示す半径情報を取得する。半径情報は例えば予め記憶部64に記憶済みであり、半径情報取得部666は記憶部64から半径情報を読み出すことで、半径情報を取得する。半径情報は、測定位置決定情報が含む情報の一例である。
ローラ間距離情報取得部667は、第1ローラ121と第2ローラ122との距離を示すローラ間距離情報を取得する。ローラ間距離情報の示す距離は、例えば第1ローラ121の中心と第2ローラ122の中心との距離である。ローラ間距離情報は例えば予め記憶部64に記憶済みであり、ローラ間距離情報取得部667は記憶部64からローラ間距離情報を読み出すことで、ローラ間距離情報を取得する。ローラ間距離情報は、測定位置決定情報が含む情報の一例である。
曲率中心間距離情報取得部668は、ガイドレール2の曲率中心と鋼管8の曲率中心との距離であって、ガイドレール2の直線部に直交する方向に沿った距離である曲率中心間距離を示す曲率中心間距離情報、を取得する。曲率中心間距離情報は例えば予め記憶部64に記憶済みであり、曲率中心間距離情報取得部668は記憶部64から曲率中心間距離情報を読み出すことで、曲率中心間距離情報を取得する。曲率中心間距離情報は、測定位置決定情報が含む情報の一例である。
<測定位置決定情報が、半径情報、中間位置情報、ローラ間距離情報及び曲率中心間距離情報を含む場合に奏する効果>
ここで、測定位置決定情報が、半径情報、中間位置情報、ローラ間距離情報及び曲率中心間距離情報を含む場合に奏する効果について図13~図15を用いて説明する。
図13は、実施形態における半径情報、中間位置情報、ローラ間距離情報及び曲率中心間距離情報を含む測定位置決定情報が奏する効果について説明する第1の説明図である。図14は、実施形態における半径情報、中間位置情報、ローラ間距離情報及び曲率中心間距離情報を含む測定位置決定情報が奏する効果について説明する第2の説明図である。図15は、実施形態における半径情報、中間位置情報、ローラ間距離情報及び曲率中心間距離情報を含む測定位置決定情報が奏する効果について説明する第3の説明図である。
簡単のため、説明においては二次元の直交座標系として互いに直交するU軸とV軸とを有する座標系を用いる。U軸とV軸とはどちらも、ガイドレール2の直線部に直交する。図13~図15において、曲線Cは、鋼管8の外面形状を示す。図13は、スライド部12と鋼管8との関係を2つの場所について示す。
スライド部12上に位置する点PLと点PFとはそれぞれ第1ローラ121と第2ローラ122とである。スライド部12上に位置する点PLFは第1ローラ121と第2ローラ122との中心の位置である。したがって点PLFの位置を示す情報は、中間位置情報の一例である。
図13~図15の点Prailは、ガイドレール2の曲率中心の位置を示す。点Prailは、U軸とV軸とを有する座標系の原点である。図13~図15において長さLrollは、点PLと点PFとの距離を示す。したがって、長さLrollはローラ間距離情報の一例である。
2つの場所の一方(以下「第1の場所」という。)は、点Prailと点PLFとを結ぶ直線(以下「第1径方向直線」という。)とV軸とのなす角がθ1の場所である。2つの場所の他方(以下「第2の場所」という。)は、第2径方向直線とV軸とのなす角が(θ1+θ2)の場所である。第2径方向直線は、点Prailと点PFとを結ぶ直線に垂直である。
図13~図15において点Paimは、開先のセンシングの対象の位置である。センシングとは、鋼管8の溶接部位、及び建方治具9を撮影する処理である。点Paimは、具体的には、径方向直線と曲線Cの交点である。図13~図15において、Lrailは、ガイドレール2の直線部における曲線Cからガイドレール2までの距離を示す。図13~図15において、Rcolは、鋼管8の曲率半径を示す。図13~図15において、Rrailは、ガイドレール2の曲率半径を示す。したがってRrailを示す情報が、半径情報の一例である。
図13~図15において、点Pcolは、鋼管8の曲率中心を示す。図13~図15において、dは、鋼管8の曲率中心とガイドレール2の曲率中心との間のV軸及びU軸のそれぞれに平行な方向の距離を表す。したがって、距離dを示す情報は、曲率中心間距離情報の一例である。
なお、距離Lroll、Lrail、Rcol及びRrailはいずれも正の実数である。また、dは実数である。dは負の値であってもよい。
図14は、第1の場所にスライド部12が位置する場合に、点Paimに位置する鋼管8の開先をセンシングすることが可能であることを示す。第1の場所にスライド部12が位置する場合にセンシングが可能である理由は、第1の場所にスライド部12が位置する場合、R部の対称中心位置にスライド部12が存在するため、点PLと点PFとを結ぶ直線に垂直に伸びる直線が鋼管8に垂直になるから、である。なお、対称中心位置は、R部の開始点と終了点との中間の位置を意味する。
図14は、スライド部12が第3の場所に位置する場合に、点Paimに位置する鋼管8の開先のセンシングが可能であることを示す。第3の場所は、第1場所条件、第2場所条件及び第3場所条件を満たす場所である。
第1場所条件は、スライド部12の点PLFがガイドレール2の直線部に位置するという条件である。第2場所条件は、点PLと点PFとが、ガイドレール2の直線部とR部との境界とガイドレール2の直線部とのいずれか一方に位置するという条件である。第3場所条件は、点PLFと点Pcolとを結ぶ直線が点PLと点PFとを結ぶ直線に直交するという条件である。
この理由は、スライド部12のR部に近い側のローラが、ガイドレール2のR部と直線部との境界に位置しており、そのとき、Paimが鋼管8の直線部とR部との境界点に位置し、点PLと点PFとを結ぶ直線に垂直に伸びる直線が鋼管8に垂直になるからである。
図15は、スライド部12が第4の場所に位置する場合に、点Paimに位置する鋼管8の開先のセンシングが可能であることを示す。第4の場所は、第1場所条件、第2場所条件及び第4場所条件を満たす場所である。図15において、第4の場所に位置するスライド部12は、スライド部F1である。
第4場所条件は、点PLFと点Pcolとを結ぶ直線が点PLと点PFとを結ぶ直線に直交しない、という条件である。第4場所条件は、具体的には距離dが所定の値より大きい場合に満たされる。
この理由は、第4場所条件が満たされる場合、点PLと点PFとを結ぶ直線に垂直に伸びる直線が鋼管8のR部で垂直に交わらないからである。このような場合、センシングを行うためには、スライド部12がガイドレール2のR部から離れるように移動する必要がある。
移動の距離は、具体的には、d-(Lroll/2)である。d-(Lroll/2)>0の場合には、距離d-(Lroll/2)だけ、スライド部12をガイドレール2のR部から離れるように移動させる必要がある。
なお、距離d―(Lroll/2)だけ、スライド部12をガイドレール2のR部から離れるように移動させることで、点Paimのうち、ガイドレールのR部の対称中心位置から最も近い点Paimに位置する鋼管8の開先をセンシングすることが可能である。この最も近い点Paimを求めることで、鋼管8の開先をセンシング可能な点Paimそれぞれの間隔を最も狭くすることができ、これら間隔を広げることも容易になる。
一方、d-(Lroll/2)<0の場合には、移動は必要なく、R部に近い側のローラがガイドレール2のR部と直線部との境界に位置する状態で、センシングが可能である。
このように、測定位置決定情報が、半径情報、中間位置情報、ローラ間距離情報及び曲率中心間距離情報を含む場合にセンシングが可能な位置と不可能な位置との判定が可能である。センシングが可能である位置は測定位置の候補なので、半径情報、中間位置情報、ローラ間距離情報及び曲率中心間距離情報に基づいて、決定位置を決定することで、測定できない位置を決定位置にしてしまう確率を下げることができる。
記憶制御部607は、各種情報を記憶部64に記録する。記憶制御部607は、例えば制御部61の動作によって生じた各種情報を記憶部64に記録する。
入力制御部608は、入力部63の動作を制御する。出力制御部609は、出力部65の動作を制御する。
<接触判定処理の詳細>
接触判定処理の詳細を説明する。接触判定処理は、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する処理である。判定には、接触位置情報、傾斜溶接開始位置情報及び溶接ロボット位置情報が用いられる。接触位置情報は、溶接トーチ13が建方治具9に接触するときの溶接ロボット1の位置(以下、接触位置とも称する)に関する情報である。
傾斜溶接開始位置情報は、溶接トーチ13を傾斜させて鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の溶接を開始するときの溶接ロボット1の位置(以下「傾斜溶接開始位置」という。))に関する情報である。
より詳細に接触判定処理を説明する。接触判定処理では、接触位置情報を取得する処理(以下「接触位置情報取得処理」という。)が実行される。接触位置情報取得処理では、建方治具位置情報(例えば建方治具9の幅方向の中央の位置)と、建方治具形状情報に含まれる幅情報とに基づき、溶接ロボット1の接触位置を算出する処理が実行される。算出された接触位置を示す情報が、接触位置情報の一例である。溶接ロボット1の接触位置は、上記1次元の座標で示される。
接触判定処理では、傾斜溶接開始位置情報を取得する処理(以下「傾斜溶接開始位置情報取得処理」という。)が実行される。傾斜溶接開始位置情報取得処理では、溶接ロボット1の接触位置から、上記1次元の座標(すなわち走行方向Drに沿う軸上の座標)において所定の余裕代αだけ手前の位置を溶接ロボット1の傾斜溶接開始位置として算出する処理が実行される。算出された傾斜溶接開始位置を示す情報が傾斜溶接開始位置情報である。溶接ロボット1の傾斜溶接開始位置は、上記1次元の座標で示される。なお、所定の余裕代αは、予め記憶部64に記憶されている。
接触位置情報取得処理では、溶接ロボット位置情報に基づいて、走行中の溶接ロボット1の位置(以下、走行位置とも言う)を推定する処理が実行される。走行位置は、上記1次元の座標で示される。接触判定処理では、推定された走行位置と、接触位置情報又は傾斜溶接開始位置情報とに基づき、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する処理が実行される。このようにして、接触判定処理では、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する。
接触判定処理の例を説明する。接触判定処理では例えば、溶接ロボット1の走行位置が傾斜溶接開始位置に到達したか否かを判定することで、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する。接触判定処理では例えば、溶接ロボット1の走行位置が接触位置に到達したか否かを判定することで、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定してもよい。
<退避処理の詳細>
退避処理の詳細を説明する。退避処理は、建方治具9の位置で実行されることにより、溶接ロボット1が建方治具9による妨げられることなく移動することを可能にする。その結果、建方治具9の位置で退避処理が実行されることで、溶接ロボット1は鋼管8の溶接部位の全周又は一部の初期溶接を連続して行うことができる。退避処理は、溶接トーチ13を傾斜させて、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の溶接を行う処理を含む。
退避処理について、図16を参照して詳述する。図16は、実施形態における退避処理を説明する説明図である。退避制御部613は、溶接ロボット1の走行位置が傾斜溶接開始位置に到達したと判定されると、第2の角度調整部35により溶接トーチ13のトーチ角Atを変更させながら(溶接位置Pw1)、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の前半分の溶接を行う。なお、このとき、溶接ロボット1の移動は中断しない。具体的には、退避制御部613は、記憶部64又は通信部62を介して、建方治具形状情報を取得する。
退避制御部613は、記憶部64又は通信部62を介して、トーチ角Atの可動範囲及び溶接トーチ13の可動半径を取得する。退避制御部613は、建方治具形状情報に含まれる幅情報及び高さ情報と、トーチ角Atの可動範囲と、溶接トーチ13の可動半径とに基づき、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の前半分の溶接を行うよう制御する。
上記前半分の溶接が終了すると、退避制御部613は、溶接ロボット1を停止させるとともに、溶接ロボット1による溶接を中断する。退避制御部613は、第2の角度調整部35により溶接トーチ13のトーチ角Atを0まで戻し、第1の角度調整部34により溶接トーチ13を溶接位置Pw(Pw1)から退避位置Prに退避させる。具体的には、退避制御部613は、記憶部64又は通信部62を介して、退避動作情報を取得する。退避制御部613は、退避動作情報に基づき、溶接トーチ13を溶接位置Pwから退避位置Prへ移動させる。
その後、退避制御部613は、溶接ロボット1を走行方向Drに所定距離だけ移動させ、建方治具9を跨いで通過させる。すなわち、退避制御部613は、接触判定処理の実行により得られた建方治具形状情報に含まれる幅情報に基づき、溶接トーチ13が建方治具9に接触しない位置まで溶接ロボット1を走行方向Drに移動させる。
溶接ロボット1を所定距離だけ移動させると、退避制御部613は、溶接ロボット1の移動を停止させ、第1の角度調整部34により溶接トーチ13を退避位置Prから溶接位置Pw(Pw2)まで、鋼管8に接近させる。退避制御部613は、溶接ロボット1の移動を再開させ、第2の角度調整部35により溶接トーチ13のトーチ角Atを変更させながら(溶接位置Pw2)、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の溶接を行う。退避制御部613は、建方治具形状情報に含まれる幅情報及び高さ情報と、トーチ角Atの可動範囲と、溶接トーチ13の可動半径とに基づき、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の後半分の溶接を行うよう制御する。
図17は、実施形態におけるシステム制御装置6が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。測定位置決定部605が、予め定められた種類の測定位置決定情報を測定位置決定情報取得部606に取得させ、取得させた測定位置決定情報に基づいて測定位置を決定する(ステップS101)。次に、移動制御部612が、ステップS101で決定された測定位置のうち、溶接ロボット1の位置から見て走行方向Drの側の最も近い測定位置に、溶接ロボット1を移動させる(ステップS102)。ステップS102の処理により、溶接ロボット位置情報が更新される。また、移動中に建方治具9が存在する場合には、接触判定処理及び退避処理が実行されてもよい。したがってステップS102の処理の実行中には退避制御部613も動作してもよい。
次に、位置判定部602が、溶接ロボット位置情報に基づき、ガイドレール2上の区間である第1区間、第2区間又は第3区間のいずれに溶接ロボット1が位置するのかを判定する(ステップS103)。次に開先画像取得部603が、撮影装置3-1による撮影の結果と撮影装置3-2による撮影の結果とのうち、開先画像として用いられる画像の画像データを、ステップS103で実行された判定の結果に基づいて、取得する(ステップS104)。
ステップS104の処理において開先画像取得部603は例えば、撮影装置3-1と、撮影装置3-2との、どちらに撮影させるか、又は、両方に撮影させるかをステップS103で実行された判定の結果に基づいて決定する。次に開先画像取得部603は、撮影制御部614の動作を制御して、決定した撮影装置3による撮影を行わせる。このようにして開先画像取得部603は、例えば撮影装置3-1による撮影の結果と撮影装置3-2による撮影の結果とのうち、開先画像として用いられる画像の画像データを取得してもよい。
またステップS104の処理において開先画像取得部603は例えば、撮影装置3-1及び撮影装置3-2の両方に撮影させる。次に開先画像取得部603は、ステップS103で実行された判定の結果に基づいて、両方の撮影結果のうちいずれを取得するのか、あるいは、両方取得するのか、を決定し、決定した結果にしたがう画像の画像データを取得する。このようにして開先画像取得部603は、例えば撮影装置3-1による撮影の結果と撮影装置3-2による撮影の結果とのうち、開先画像として用いられる画像の画像データを取得してもよい。
ステップS104の次に生成部604が、ステップS104で得られた画像データに基づいて、開先の断面形状を示す開先断面形状情報を生成する(ステップS105)。次に溶接実行制御部611が、ステップS101で決定された測定位置の中に、未だ溶接ロボット1が移動していない測定位置があるか否かを判定する。すなわち、溶接実行制御部611は、次の測定位置が存在するか否かを判定する(ステップS106)。
次の測定位置が存在しない場合(ステップS106:NO)、溶接実行制御部611が開先断面形状情報に基づいて、溶接実行パラメータを算出する(ステップS107)。なお溶接実行パラメータとは、溶接の実行に関するパラメータであり、例えばワイヤ狙い位置である。次に、溶接実行制御部611が、開先断面形状情報に基づいて、溶接ロボット1に溶接を実行させる。具体的には、溶接ロボット1が、算出された溶接実行パラメータを用いて、溶接を行う(ステップS108)。次に処理が終了する。一方、次の測定位置が存在する場合(ステップS106:YES)、ステップS102の処理が実行される。
このように構成された実施形態の溶接システム100は、開先画像取得部603を備え、撮影装置3-1の撮影した画像と撮影装置3-2の撮影した画像とのいずれか一方又は両方のどの画像の画像データを、開先断面形状情報の生成に用いる画像データとして採用するかを決定する。そのため、鋼材の位置と溶接すべき箇所と溶接ロボット1の向きと気象条件又は日照条件との関係で開先を適切に撮影できない撮影装置3が存在する場合に、より適切な画像を選択可能なので、溶接の品質を向上させることができる。そして、そのような溶接の品質を向上させる画像データを自動で選択する開先画像取得部603を溶接システム100は備えるため、溶接システム100は、溶接に要する労力を軽減することができる。なお適切とは、例えば輝度や解像度等の画像の特徴が所定の基準を満たすという意味である。
(変形例)
なお開先画像取得部603は、撮影装置3-1による撮影の結果と撮影装置3-2による撮影の結果とのうち、ガイドレール2上の溶接ロボット1の位置と建方治具位置情報取得部661により取得された建方治具位置情報とに応じた画像の画像データを、開先画像として用いられる画像の画像データとして取得、してもよい。
なお、建方治具位置情報は、建方治具9の幅方向における建方治具の位置を示してもよい。また、建方治具位置情報は、建方治具9の幅方向における、建方治具9の端部の位置を示してもよい。
なお撮影装置3-1は第1撮影装置の一例であり、撮影装置3-2は第2撮影装置の一例である。なお、ステップS104の処理において、開先画像取得部603が、撮影装置3-1と、撮影装置3-2との、どちらに撮影させるか、又は、両方に撮影させるかをステップS103で実行された判定の結果に基づいて決定する場合、撮影させると決定された撮影装置3は、被決定撮影装置の一例である。なお、開先画像取得部603が、撮影装置3-1と、撮影装置3-2との、どちらに撮影させるか、又は、両方に撮影させるかをステップS103で実行された判定の結果に基づいて決定する処理は、撮影装置決定処理の一例である。
なお、溶接システム100の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
なお、制御部61は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いて実装されてもよい。この場合、制御部61が備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
なお、開先画像取得部603は、例えば、位置判定部602によって溶接ロボット1が第3区間に位置すると判定された場合には所定方向側撮影装置又は反対側撮影装置の撮影の結果を開先画像の画像データとして取得しても良い。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。