JP2022064465A - 負極スラリー、負極及び二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】ケイ素原子を含有する負極活物質を用いることによる負極の膨張ならびに充放電サイクルの繰り返しによる容量劣化を抑制することができ、かつ負極合剤層の厚みを大きくした場合であってもクラックが発生しにくい負極を形成することができる負極スラリーを提供する。【解決手段】ケイ素原子を含む第1活物質を5質量%以上100質量%以下の範囲で含有する負極活物質と、これら負極活物質を結着させるバインダーと、前記負極活物質及び前記バインダーを分散させる負極スラリー用溶媒とを含む負極スラリーであって、前記第1活物質が、ケイ素原子を20質量%以上100質量%以下含有する第1活物質を5質量%以上含有するものであり、前記バインダーが、粒子状分散体と、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有する水溶性重合体とを含み、前記負極活物質及び前記バインダーの合計質量を100質量%とした場合の前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上2質量%以下であることを特徴とする負極スラリー。【選択図】なし
Description
本発明は、負極スラリー、この負極スラリーを使用して形成された負極、及び前記負極を備える二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解質二次電池の高容量化の方法の一つとして、従来の黒鉛系活物質に比べてリチウム吸蔵量の多いケイ素含有活物質を適用することが挙げられる。
ケイ素含有活物質はリチウム吸蔵・放出に伴う体積変化が大きいため、充放電時に負極合剤層が激しく膨張収縮する。その結果、負極活物質-負極活物質間における電子伝導性の低下、合剤層内におけるケイ素含有活物質の孤立や負極活物質-集電体間での導電パスの遮断が起こり、二次電池のサイクル特性が悪くなるという課題がある。
そこで、負極の膨張を抑制することを目的として、特許文献1~3に示すように、比較的硬度の高いアクリル酸系の重合体をバインダーとして含む負極スラリーを使用して負極を作成することが考えられている。
ケイ素含有活物質はリチウム吸蔵・放出に伴う体積変化が大きいため、充放電時に負極合剤層が激しく膨張収縮する。その結果、負極活物質-負極活物質間における電子伝導性の低下、合剤層内におけるケイ素含有活物質の孤立や負極活物質-集電体間での導電パスの遮断が起こり、二次電池のサイクル特性が悪くなるという課題がある。
そこで、負極の膨張を抑制することを目的として、特許文献1~3に示すように、比較的硬度の高いアクリル酸系の重合体をバインダーとして含む負極スラリーを使用して負極を作成することが考えられている。
しかしながら、本発明者がこれら特許文献1~3に記載された負極スラリーを使用して負極を作成したところ、例えば、3.5mAh/cm2以上の厚みを有する負極を作成する場合に、負極スラリーの塗工・乾燥工程において、負極にクラックが発生するという問題があることに気が付いた。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ケイ素原子を含有する負極の膨張ならびに充放電サイクルの繰り返しによる容量劣化を抑制することができ、かつ塗工・乾燥工程において、従来よりもクラックが発生しにくい負極を形成することができる負極スラリーを提供することを主な目的とする。
すなわち、本発明に係る負極用スラリーは、ケイ素原子を含有する第1活物質を5質量%以上100質量%以下の範囲で含有する負極活物質と、該負極活物質を結着させるバインダーと、前記負極活物質及び前記バインダーを分散させる負極スラリー用溶媒とを含む負極スラリーであって、
前記第1活物質が、ケイ素原子を20質量%以上100質量%以下の範囲で含有するものであり、前記バインダーが、粒子状分散体と、アクリル酸系単量体とアクリロニトリル系単量体とを含む共重合体(以下、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体ともいう。)を含有する水溶性重合体と、を含むものであり、前記負極活物質及び前記バインダーの合計質量を100質量%とした場合の前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上2質量%以下であることを特徴とするものである。
前記第1活物質が、ケイ素原子を20質量%以上100質量%以下の範囲で含有するものであり、前記バインダーが、粒子状分散体と、アクリル酸系単量体とアクリロニトリル系単量体とを含む共重合体(以下、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体ともいう。)を含有する水溶性重合体と、を含むものであり、前記負極活物質及び前記バインダーの合計質量を100質量%とした場合の前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上2質量%以下であることを特徴とするものである。
このように構成した負極スラリーによれば、前記バインダーがアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有する水溶性重合体を含むものであるので、ケイ素含有活物質を含む負極の膨張を抑制することができる。さらに、前記バインダーが水溶性重合体だけでなく、粒子状分散体をも含有するものであり、前記バインダー中の前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上2質量%以下であるので、負極スラリーの塗工・乾燥によって形成される負極合剤層の柔軟性を適切な範囲に調整することができる。その結果、塗工・乾燥時の負極におけるクラックの発生を従来よりも抑えることができる。
負極の膨張をより抑制するには、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体が、(メタ)アクリル酸系単量体由来の単位を40質量%以上70質量%以下、(メタ)アクリロニトリル単量体由来の単位を30質量%以上60質量%以下の範囲で含有するものであることが好ましい。このような構成の共重合体とすることで、この共重合体を含む負極スラリーを負極集電体上に塗工・乾燥して形成された負極合剤層の前記負極集電体からの剥離を抑制し、サイクル維持率についてもより向上させることができる。前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル酸系単量体由来の単位又は(メタ)アクリロニトリル単量体由来の単位と共重合可能な単量体由来の単位をさらに含有しているものとしても良い。
充電時の負極の膨張ならびに負極合剤層の負極集電体からの剥離をより低減するという観点から、前記水溶性重合体が、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を50質量%以上含有していることが好ましい。
具体的な実施態様としては、例えば、前記(メタ)アクリル酸系単量体が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の金属塩、(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩及び(メタ)アクリル酸のアミン塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものを挙げることができる。
充電時の負極の膨張ならびに負極合剤層の負極集電体からの剥離をより抑えるという観点から、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の8質量%の水溶液の粘度が、25℃で500mPa・s以上とすることが好ましい。また、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の8質量%の水溶液の粘度が、25℃で10000mPa・s以下であれば、負極スラリーの粘度が大きくなり過ぎず、粘度調整のために負極スラリーの固形分濃度を下げる必要がないので、乾燥時間を低減して生産性を向上できるため好ましい。
負極スラリーの安定性をより向上させるという観点から、前記粒子状分散体が、ガラス転移温度-30℃以上20℃以下の重合体であることが好ましい。
前記粒子状分散体の具体例としては、スチレン単量体由来の単位と、ブタジエン単量体由来の単位とを含有する共重合体であるものを挙げることができる。
前記負極スラリーの粘度をより塗工に適した粘度に調整するという観点から、前記水溶性重合体が、カルボキシメチル基を含有するセルロースエーテル又はカルボキシメチル基を含有するセルロースエーテルの塩をさらに含むものであることが好ましい。
塗工のしやすさという観点から、前記負極スラリーの固形分濃度45質量%以上60質量%以下における粘度が、25℃において1000mPa・s以上5000mPa・s以下であることが好ましい。なお、負極スラリーの固形分濃度は、前記負極スラリーを調製する際に添加した前記負極スラリー用溶媒以外の各成分の質量(粉体として添加する成分については粉体としての質量、水溶液として添加する成分についてはその水溶液中の濃度から算出される固形成分としての質量)を全て合計した質量の、負極スラリー全体の質量に対する割合から求めることができる。
本発明の具体的な実施態様としては、前記負極活物質が、第2活物質として黒鉛系活物質をさらに含むものを挙げることができる。また負極スラリーが導電剤をさらに含有するものとしても良い。
本発明によれば、ケイ素含有活物質による膨張及び充放電サイクルを繰り返すことによる二次電池の容量劣化を抑制することができ、かつ塗工・乾燥工程において、従来よりもクラックが発生しにくい負極を形成することができる負極スラリーを提供することができる。
以下に、本発明の一実施形態に係る二次電池の具体的な構成について説明する。
<1.非水電解質二次電池>
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータ(separator)と、非水電解質と、を備えるものである。
このリチウムイオン二次電池の充電到達電圧(酸化還元電位)は、例えば、4.0V(vs.Li/Li+)以上5.0V以下、特に4.2V以上5.0V以下となる。リチウムイオン二次電池の形態は、特に限定されないが、例えば、円筒形、角形、ラミネート(laminate)形、またはボタン(button)形等のいずれであってもよい。
<1.非水電解質二次電池>
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータ(separator)と、非水電解質と、を備えるものである。
このリチウムイオン二次電池の充電到達電圧(酸化還元電位)は、例えば、4.0V(vs.Li/Li+)以上5.0V以下、特に4.2V以上5.0V以下となる。リチウムイオン二次電池の形態は、特に限定されないが、例えば、円筒形、角形、ラミネート(laminate)形、またはボタン(button)形等のいずれであってもよい。
(1-1.正極)
前記正極は、正極集電体と、該正極集電体上に形成された正極合剤層とを備えている。
前記正極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、アルミニウム(aluminum)、ステンレス(stainless)鋼、及びニッケルメッキ(nickel coated)鋼等で構成されることが好ましい。
前記正極合剤層は、少なくとも正極活物質を含み、導電剤と、正極用バインダーとをさらに含んでいてもよい。
前記正極は、正極集電体と、該正極集電体上に形成された正極合剤層とを備えている。
前記正極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、アルミニウム(aluminum)、ステンレス(stainless)鋼、及びニッケルメッキ(nickel coated)鋼等で構成されることが好ましい。
前記正極合剤層は、少なくとも正極活物質を含み、導電剤と、正極用バインダーとをさらに含んでいてもよい。
前記正極活物質は、例えば、リチウムを含む遷移金属酸化物または固溶体酸化物であり、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出することができる物質であれば特に制限されない。リチウムを含む遷移金属酸化物としては、例えば、Li1.0Ni0.88Co0.1Al0.01Mg0.01O2等を挙げることができるが、これ以外にも、LiCoO2等のLi・Co系複合酸化物、LiNixCoyMnzO2等のLi・Ni・Co・Mn系複合酸化物、LiNiO2等のLi・Ni系複合酸化物、またはLiMn2O4等のLi・Mn系複合酸化物等を例示することができる。固溶体酸化物としては、LiaMnxCoyNizO2(1.150≦a≦1.430、0.45≦x≦0.6、0.10≦y≦0.15、0.20≦z≦0.28)、LiMn1.5Ni0.5O4等を例示することができる。なお、前記正極活物質の含有量(含有比)は、特に制限されず、非水電解質二次電池の正極合剤層に適用可能な含有量であればよい。また、これらの化合物を単独で用いても良いし、または複数種混合して用いてもよい。
前記導電剤は、前記正極の導電性を高めるためのものであれば特に制限されない。前記導電剤の具体例としては、例えば、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛及び繊維状炭素の中から選ばれる一種以上を含有するものを挙げることができる。
前記カーボンブラックの例としては、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)等を挙げることができる。
前記繊維状炭素の例としては、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバ等を挙げることができる。
前記導電剤の含有量は、特に制限されず、非水電解質二次電池の正極合剤層に適用可能な含有量であれば良い。
前記カーボンブラックの例としては、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)等を挙げることができる。
前記繊維状炭素の例としては、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバ等を挙げることができる。
前記導電剤の含有量は、特に制限されず、非水電解質二次電池の正極合剤層に適用可能な含有量であれば良い。
前記正極用バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)等のフッ素含有樹脂、スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber)等のエチレン含有樹脂、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(ethylene-propylene-diene terpolymer)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitile-butadiene rubber)、フッ素ゴム(fluororubber)、ポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、カルボキシメチルセルロース(carboxy metyl cellulose)若しくはカルボキシメチルセルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースの塩等)、又はニトロセルロース(nitrocellulose)等を挙げることができる。前記正極用バインダーは、前記正極活物質及び前記導電剤を前記正極集電体上に結着させることができるものであればよく、特に制限されない。
(1-2.負極)
負極は、負極集電体と、該負極集電体上に形成された負極合剤層とを備えるものである。
前記負極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、銅、ステンレス鋼、及びニッケルメッキ鋼等で構成されるものであることが好ましい。
前記負極合剤層は、例えば、負極活物質と、負極用バインダーとを含むものである。
この負極合剤層の構成は、本発明の特徴部分にあたるので、後で詳しく述べることとする。
負極は、負極集電体と、該負極集電体上に形成された負極合剤層とを備えるものである。
前記負極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、銅、ステンレス鋼、及びニッケルメッキ鋼等で構成されるものであることが好ましい。
前記負極合剤層は、例えば、負極活物質と、負極用バインダーとを含むものである。
この負極合剤層の構成は、本発明の特徴部分にあたるので、後で詳しく述べることとする。
(1-3.セパレータ)
セパレータは、特に制限されず、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用されるものであれば、どのようなものであってもよい。セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)等に代表されるポリオレフィン(polyolefin)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)等に代表されるポリエステル(polyester)系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoropropylene copolymer)、フッ化ビニリデン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(vinylidene difluoride-perfluoroninylether copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-フルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-fluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロアセトン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoroacetone copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-プロピレン共重合体(vinylidene difluoride-propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoro propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene-tetrafluoroethylene copolymer)等を挙げることができる。なお、セパレータの気孔率は、特に制限されず、従来のリチウムイオン二次電池のセパレータが有する気孔率を任意に適用することが可能である。
セパレータは、特に制限されず、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用されるものであれば、どのようなものであってもよい。セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)等に代表されるポリオレフィン(polyolefin)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)等に代表されるポリエステル(polyester)系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoropropylene copolymer)、フッ化ビニリデン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(vinylidene difluoride-perfluoroninylether copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-フルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-fluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロアセトン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoroacetone copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-プロピレン共重合体(vinylidene difluoride-propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoro propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene-tetrafluoroethylene copolymer)等を挙げることができる。なお、セパレータの気孔率は、特に制限されず、従来のリチウムイオン二次電池のセパレータが有する気孔率を任意に適用することが可能である。
セパレータの表面に、耐熱性を向上させるための無機粒子を含む耐熱層、または電極と接着して電池素子を固定化するための接着剤を含む層があってもよい。前述の無機粒子としては、Al2O3、AlOOH、Mg(OH)2、SiO2などがあげられる。接着剤としてはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン重合体の酸変性物、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などがあげられる。
(1-4.非水電解液)
非水電解液は、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。非水電解液は、電解液用溶媒である非水溶媒に電解質塩を含有させた組成を有する。前記非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate)、クロロエチレンカーボネート(chloroethylene carbonate)、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate)等の環状炭酸エステル類、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、γ-バレロラクトン(γ-valerolactone)等の環状エステル類、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル(methylformate)、酢酸メチル(methylacetate)、酪酸メチル(methylbutyrate)、プロピオン酸エチル(ethyl propionate)、プロピオン酸プロピル(propyl propionate)等の鎖状エステル類、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)またはその誘導体、1,3-ジオキサン(1,3-dioxane)、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)、1,4-ジブトキシエタン(1,4-dibutoxyethane)、またはメチルジグライム(methyldiglyme)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(ethylene glycol monopropyl ether)、プロピレンレングリコールモノプロピルエーテル(propylene glycol monopropyl ether)等のエーテル類、アセトニトリル(acetonitrile)、ベンゾニトリル(benzonitrile)等のニトリル類、ジオキソラン(dioxolane)またはその誘導体、エチレンスルフィド(ethylene sulfide)、スルホラン(sulfolane)、スルトン(sultone)またはその誘導体等を、単独で、またはそれら2種以上を混合して使用することができる。なお、前記非水溶媒を2種以上混合して使用する場合、各非水溶媒の混合比は、従来のリチウムイオン二次電池で用いられる混合比が適用可能である。
非水電解液は、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。非水電解液は、電解液用溶媒である非水溶媒に電解質塩を含有させた組成を有する。前記非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate)、クロロエチレンカーボネート(chloroethylene carbonate)、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate)等の環状炭酸エステル類、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、γ-バレロラクトン(γ-valerolactone)等の環状エステル類、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル(methylformate)、酢酸メチル(methylacetate)、酪酸メチル(methylbutyrate)、プロピオン酸エチル(ethyl propionate)、プロピオン酸プロピル(propyl propionate)等の鎖状エステル類、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)またはその誘導体、1,3-ジオキサン(1,3-dioxane)、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)、1,4-ジブトキシエタン(1,4-dibutoxyethane)、またはメチルジグライム(methyldiglyme)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(ethylene glycol monopropyl ether)、プロピレンレングリコールモノプロピルエーテル(propylene glycol monopropyl ether)等のエーテル類、アセトニトリル(acetonitrile)、ベンゾニトリル(benzonitrile)等のニトリル類、ジオキソラン(dioxolane)またはその誘導体、エチレンスルフィド(ethylene sulfide)、スルホラン(sulfolane)、スルトン(sultone)またはその誘導体等を、単独で、またはそれら2種以上を混合して使用することができる。なお、前記非水溶媒を2種以上混合して使用する場合、各非水溶媒の混合比は、従来のリチウムイオン二次電池で用いられる混合比が適用可能である。
電解質塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LIPF6-x(CnF2n+1)x[但し、1<x<6、n=1or2]、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、NaClO4、NaI、NaSCN、NaBr、KClO4、KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、(CH3)4NBF4、(CH3)4NBr、(C2H5)4NClO4、(C2H5)4NI、(C3H7)4NBr、(n-C4H9)4NClO4、(n-C4H9)4NI、(C2H5)4N-maleate、(C2H5)4N-benzoate、(C2H5)4N-phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム(stearyl sulfonic acid lithium)、オクチルスルホン酸リチウム(octyl sulfonic acid lithium)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(dodecyl benzeneulfonic acid lithium)等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。なお、電解質塩の濃度は、従来のリチウムイオン二次電池で使用される非水電解液と同様でよく、特に制限はない。本実施形態では、前述したようなリチウム化合物(電解質塩)を0.8mol/l以上1.5mol/l以下程度の濃度で含有させた非水電解液を使用することが好ましい。
なお、非水電解液には、各種の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、負極作用添加剤、正極作用添加剤、エステル系の添加剤、炭酸エステル系の添加剤、硫酸エステル系の添加剤、リン酸エステル系の添加剤、ホウ酸エステル系の添加剤、酸無水物系の添加剤、及び電解質系の添加剤等が挙げられる。これらのうちいずれか1種を非水電解液に添加しても良いし、複数種類の添加剤を非水電解液に添加してもよい。
<2.本実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法>
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。正極は、以下のように作製される。まず、正極活物質、導電剤、及び正極用バインダーを所望の割合で混合したものを、正極スラリー用溶媒(例えばN-メチル- 2-ピロリドン)に分散させることで正極スラリーを形成する。次いで、この正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥させることで、正極合剤層を形成する。なお、塗布の方法は、特に限定されない。塗布の方法としては、例えば、ナイフコーター(knife coater)法、グラビアコーター(gravure coater)法、リバースロールコーター(reverse roll coater)、スリットダイコーター(slit die coater)等が考えられる。以下の各塗布工程も同様の方法により行われる。次いで、プレス(press)機により正極合剤層を所望の密度となるようにプレスする。これにより、正極が作製される。
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。正極は、以下のように作製される。まず、正極活物質、導電剤、及び正極用バインダーを所望の割合で混合したものを、正極スラリー用溶媒(例えばN-メチル- 2-ピロリドン)に分散させることで正極スラリーを形成する。次いで、この正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥させることで、正極合剤層を形成する。なお、塗布の方法は、特に限定されない。塗布の方法としては、例えば、ナイフコーター(knife coater)法、グラビアコーター(gravure coater)法、リバースロールコーター(reverse roll coater)、スリットダイコーター(slit die coater)等が考えられる。以下の各塗布工程も同様の方法により行われる。次いで、プレス(press)機により正極合剤層を所望の密度となるようにプレスする。これにより、正極が作製される。
負極も、正極と同様に作製される。まず、負極合剤層を構成する材料を混合したものを、負極スラリー用溶媒(例えば、水等の水系溶媒)に分散させることで、負極スラリーを作製する。次いで、負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥させることで、負極合剤層を形成する。次いで、プレス機により負極合剤層を所望の密度となるようにプレスする。これにより、負極が作製される。
次いで、セパレータを正極及び負極で挟むことで、電極構造体を作製する。次いで、電極構造体を所望の形態(例えば、円筒形、角形、ラミネート形、ボタン形等)に加工し、当該形態の容器に挿入する。次いで、当該容器内に非水電解液を注入することで、セパレータ内の各気孔や正極及び負極の空隙に電解液を含浸させる。これにより、リチウムイオン二次電池が作製される。
<3.本実施形態に係るバインダー組成物の特徴構成>
以下に、本実施形態に係る負極合剤層及び該負極合剤層を形成するために使用される負極スラリーについて詳述する。
以下に、本実施形態に係る負極合剤層及び該負極合剤層を形成するために使用される負極スラリーについて詳述する。
(3-1.負極スラリー)
前述したように、前記負極スラリーは、負極活物質と、負極用バインダーとを含有するものである。前記負極スラリーは、前記負極活物質及び前記負極用バインダーを分散させる負極スラリー用溶媒をさらに含有するものである。
前述したように、前記負極スラリーは、負極活物質と、負極用バインダーとを含有するものである。前記負極スラリーは、前記負極活物質及び前記負極用バインダーを分散させる負極スラリー用溶媒をさらに含有するものである。
前記負極活物質は、例えば、ケイ素原子を含有するケイ素含有活物質であるSi系活物質(第1活物質ともいう。)と、黒鉛を含有する黒鉛系活物質(第2活物質ともいう。)とを含有するものである。
前記Si系活物質の具体例としては、例えば、ケイ素(Si)もしくはケイ素酸化物(SiOx(0≦x≦2))の微粒子と黒鉛質炭素もしくは非晶質炭素とが複合された混合物(シリコン-カーボン複合活物質ともいう。)、ケイ素の微粒子、ケイ素を基本材料とした合金等からなる群より選ばれる1種以上の活物質を含むものを挙げることができる。
前記黒鉛系活物質の具体例としては、例えば、石炭系、石油系の生コークス、カルサインコークス、ニードルコークス(Coke, Car Sign coke, Needle coke)などのコークス類、メソフェーズ(Mesophase)小球体、バルクメソフェーズ(Bulk mesophase)などのメソフェーズカーボン類などの黒鉛前駆体を1500℃以上、好ましくは2800℃~3200℃で黒鉛化処理した人造黒鉛、鱗片状、塊状又は造粒球形化した天然黒鉛、人造黒鉛と天然黒鉛との混合物、人造黒鉛を被覆した天然黒鉛等からなる群より選ばれる1種以上の活物質を含むものを挙げることができる。これらは、化学的あるいは物理的な処理を施したものであってもよく、処理法として、粉砕、分級、造粒、積層、圧縮、複合、混合、被覆、酸化、蒸着、メカノケミカル(Mechano Chemical)処理、角取り、球形化、湾曲化、熱処理などが例示される。人造黒鉛の場合は黒鉛化処理前後のいずれにおいてもこれらの処理を組み合わせて行うことができる。前記人造黒鉛の具体例としては、例えば、MCMB、MCF、MAG等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
負極合剤層の充放電量容量を十分に大きくするという観点から、前記黒鉛系活物質と前記Si系活物質との含有比は、例えば、前記黒鉛系活物質の比容量(単位:mAh/g)に対して、前記Si系活物質の比容量(単位:mAh/g)が3.5倍以上となっていることが好ましい。
このような容量比を実現するには、前記Si系活物質が、ケイ素原子を20質量%以上100質量%以下の範囲で含有するものであることが好ましく、さらに前記負極活物質中に占める前記Si系活物質の含有量を5質量%以上100質量%以下とすることが好ましい。
前記黒鉛系活物質の具体例としては、例えば、石炭系、石油系の生コークス、カルサインコークス、ニードルコークス(Coke, Car Sign coke, Needle coke)などのコークス類、メソフェーズ(Mesophase)小球体、バルクメソフェーズ(Bulk mesophase)などのメソフェーズカーボン類などの黒鉛前駆体を1500℃以上、好ましくは2800℃~3200℃で黒鉛化処理した人造黒鉛、鱗片状、塊状又は造粒球形化した天然黒鉛、人造黒鉛と天然黒鉛との混合物、人造黒鉛を被覆した天然黒鉛等からなる群より選ばれる1種以上の活物質を含むものを挙げることができる。これらは、化学的あるいは物理的な処理を施したものであってもよく、処理法として、粉砕、分級、造粒、積層、圧縮、複合、混合、被覆、酸化、蒸着、メカノケミカル(Mechano Chemical)処理、角取り、球形化、湾曲化、熱処理などが例示される。人造黒鉛の場合は黒鉛化処理前後のいずれにおいてもこれらの処理を組み合わせて行うことができる。前記人造黒鉛の具体例としては、例えば、MCMB、MCF、MAG等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
負極合剤層の充放電量容量を十分に大きくするという観点から、前記黒鉛系活物質と前記Si系活物質との含有比は、例えば、前記黒鉛系活物質の比容量(単位:mAh/g)に対して、前記Si系活物質の比容量(単位:mAh/g)が3.5倍以上となっていることが好ましい。
このような容量比を実現するには、前記Si系活物質が、ケイ素原子を20質量%以上100質量%以下の範囲で含有するものであることが好ましく、さらに前記負極活物質中に占める前記Si系活物質の含有量を5質量%以上100質量%以下とすることが好ましい。
前記負極活物質は前述したもの以外に、例えば、Sn系活物質(例えば、スズ(Sn)もしくはスズ酸化物の微粒子と黒鉛系活物質との混合物、スズの微粒子、スズを基本材料とした合金)、金属リチウム及びLi4Ti5O12等の酸化チタン系化合物、リチウム窒化物等からなる群から選ばれる1種以上の負極活物質をさらに含有していても良い。
前記負極用バインダーは、前記負極活物質同士、及び前記負極合剤層を前記負極集電体上に結着させる結着剤であり、粒子状分散体と水溶性重合体とを含有するものである。
前記粒子状分散体は、前記負極スラリー用溶媒である水などの水系溶媒に均一に分散可能な微粒子であり、そのガラス転移温度が、-50℃以上、より好ましくは-30℃以上である疎水性重合体からなる微粒子であることが好ましく、前記疎水性重合体としては、例えば、スチレン単量体由来の単位と、ブタジエン単量体由来の単位とを含有するものであることが好ましい。前記疎水性重合体の具体例としては、例えば、スチレンブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体を加硫した変性スチレンブタジエン共重合体、スチレンアクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン系重合体、ポリフッ化ビニリデン系重合体等を挙げることができる。前記疎水性重合体は、ガラス転移温度が、室温以下(例えば20℃以下)である合成ゴムであることがさらに好ましい。なお、前記水系溶媒とは、前述した水以外にも、例えば、水と混和可能な有機溶媒と水との混合液であり、水の含有量が50質量%以上のものを指す。水と混和可能な有機溶媒としては、例えば、水溶性アルコールなどを挙げることができる。
前記粒子状分散体の平均粒子径は、10nm以上500nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以上400nm以下、さらに好ましくは50nm以上300nm以下である。
前記粒子状分散体の平均粒子径は、10nm以上500nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以上400nm以下、さらに好ましくは50nm以上300nm以下である。
前記水溶性重合体は、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有するものである。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸系単量体由来の単位と(メタ)アクリロニトリル単量体由来の単位とを含むものである。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸系単量体由来の単位の含有量が40質量%以上70質量%以下であり、(メタ)アクリロニトリル単量体由来の単位の含有量が30質量%以上60質量%以下であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸系単量体及び/又は(メタ)アクリロニトリル単量体と共重合可能な他の単量体由来の単位を含有しているものとしても良く、前記他の単量体由来の単位の含有量は、0質量%を超えて20質量%以下の範囲であることが好ましい。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸系単量体由来の単位と(メタ)アクリロニトリル単量体由来の単位とを含むものである。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸系単量体由来の単位の含有量が40質量%以上70質量%以下であり、(メタ)アクリロニトリル単量体由来の単位の含有量が30質量%以上60質量%以下であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸系単量体及び/又は(メタ)アクリロニトリル単量体と共重合可能な他の単量体由来の単位を含有しているものとしても良く、前記他の単量体由来の単位の含有量は、0質量%を超えて20質量%以下の範囲であることが好ましい。
アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体における(メタ)アクリル酸系単量体に由来する単位の含有量が、40質量%以上であれば前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体が水に溶けやすくなり、負極活物質の分散性並びに負極スラリーの保存安定性をより向上させることができるので好ましい。また、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位の含有量が70質量%以下であれば、負極スラリーの塗布、乾燥工程におけるクラックの発生をより抑制することができるので好ましい。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体における(メタ)アクリロニトリル単量体に由来する構造単位の含有量が、30質量%以上であれば、負極合剤層の負極集電体に対する密着性をより向上させることができるので好ましい。また、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体における(メタ)アクリロニトリル単量体に由来する構造単位の含有量が、60質量%以下であれば、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体が水により溶けやすくなり、負極活物質の分散性並びに負極スラリーの保存安定性をより向上させやすいので好ましい。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体における(メタ)アクリル酸系単量体及び(メタ)アクリロニトリル単量体と共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の含有量が、20質量%以下であれば、負極スラリーの塗布、乾燥工程におけるクラックの発生や充電時における負極合剤層の負極集電体からの剥離を抑制することができる。
前記(メタ)アクリル酸系単量体が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の金属塩、(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩及び(メタ)アクリル酸のアミン塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものであることが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸の金属塩としては、例えば、アクリル酸のアルカリ金属塩等を使用することが好ましい。アクリル酸の金属塩の具体的な例としては、例えば、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸カルシウム等を挙げることができる。これらの中でも、アクリル酸ナトリウムを使用することがより好ましい。
前記(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩としては、(メタ)アクリル酸のアンモニア中和物、モノエタノールアミン中和物、ジエタノールアミン中和物、ヒドロキシルアミン中和物等が挙げることができる。これらの中でも、アクリル酸のアンモニア中和物を使用することがより好ましい。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体における(メタ)アクリル酸系単量体及び(メタ)アクリロニトリル単量体と共重合可能な他の単量体は、例えば、水溶性の単量体であることが好ましい。
前記水溶性の単量体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ビニルピロリドン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド、ビニルアルコールなどを挙げることができる。
前記水溶性の単量体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ビニルピロリドン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド、ビニルアルコールなどを挙げることができる。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の8質量%の水溶液の25℃における粘度が500mPa・s以上10000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の水溶液の前記粘度が500mPa・s以上であれば、負極合剤層の負極集電体に対する密着性を向上することができるので好ましい。また、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体水溶液の前記粘度が10000mPa・s以下であれば、負極合剤層を形成するための負極スラリーに過度に粘性を付与することがないため、高固形分な状態でスラリーを塗工することができ、負極スラリーを効率よく乾燥して負極を得ることができるので好ましい。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の水溶液の前記粘度が500mPa・s以上であれば、負極合剤層の負極集電体に対する密着性を向上することができるので好ましい。また、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体水溶液の前記粘度が10000mPa・s以下であれば、負極合剤層を形成するための負極スラリーに過度に粘性を付与することがないため、高固形分な状態でスラリーを塗工することができ、負極スラリーを効率よく乾燥して負極を得ることができるので好ましい。
前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の水溶液の前記粘度を上記の範囲にするための製造方法は特に制限されないが、例えば、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の合成時に、前記他の単量体として、ジビニル系単量体を共重合して、粘度を上げてもよい。前記ジビニル系単量体としては、N,N′-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、N,N‘-エチレンビス[2-(ビニルスルホニル)アセトアミド]、N,N’-トリメチレンビス[2-(ビニルスルホニル)アセトアミド]などを用いることができる。
前記水溶性重合体は、前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体以外の水溶性高分子化合物をさらに含有していても良い。前記水溶性高分子化合物は、例えば、カルボキシメチル基を含有するセルロースエーテル又はその塩を含むものであることが好ましい。このような水溶性高分子化合物の具体例としては、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩などを挙げることができる。
前記水溶性重合体中における前記アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の含有量は、前記Si系活物質による負極の膨張ならびに負極合剤層の負極集電体からの剥離をより低減するという観点から、50質量%以上、より好ましく70質量%以上であることが好ましい。
前記負極スラリー中の前記負極用バインダーの含有量は、前記負極活物質と前記負極用バインダーとを合わせた合計質量を100質量%とした場合に、2.5質量%以上4.5質量%となるようにすることが好ましい。前記負極用バインダーの含有量が、2.5質量%以上であれば、負極合剤層を塗工乾燥し、圧延(プレス)したときに負極合剤層の割れや剥離をより抑えることができるので好ましい。また、前記負極用バインダーの含有量が、4.5質量%以下であれば、電極抵抗が過度に大きくなることを抑えて、サイクル性能が良好な負極を得ることができるので好ましい。
前記負極活物質及び前記負極用バインダーの合計質量を100質量%とした場合における、前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上2質量%以下の範囲になるようにしてある。
前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上とすることによって、前記Si系活物質による負極の膨張を十分に抑えることができる。また、前記水溶性重合体の含有量が、2質量%以下であれば、前記負極スラリーを塗工乾燥、圧延したときに負極合剤層におけるクラックを生じにくくすることができる。
前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上とすることによって、前記Si系活物質による負極の膨張を十分に抑えることができる。また、前記水溶性重合体の含有量が、2質量%以下であれば、前記負極スラリーを塗工乾燥、圧延したときに負極合剤層におけるクラックを生じにくくすることができる。
前記負極スラリーの固形分濃度45質量%以上60質量%以下における粘度は、25℃において1000mPa・s以上5000mPa・s以下であることが好ましく、1500mPa・s以上4500mPa・s以下であることがさらに好ましい。この負極スラリーの粘度は、例えば、前記水溶性高分子化合物の添加量などによって調節するようにしても良い。
(3-2.負極合剤層)
前記負極合剤層は、前述したように、前記負極スラリーを前記負極集電体上の片面又は両面に塗布して、乾燥させ、プレスすることにより形成される。前記乾燥工程において、前記負極スラリー用溶媒が揮発し、前記負極スラリー中に分散していた前記負極活物質や前記負極用バインダー等の固形成分が前記負極集電体上に残留して前記負極合剤層を形成するので、前記負極合剤層中の各構成成分の含有比率は、前記負極スラリー中における前記固形成分の含有比率をそのまま反映するものとなっている。
前記負極合剤層は、前述したように、前記負極スラリーを前記負極集電体上の片面又は両面に塗布して、乾燥させ、プレスすることにより形成される。前記乾燥工程において、前記負極スラリー用溶媒が揮発し、前記負極スラリー中に分散していた前記負極活物質や前記負極用バインダー等の固形成分が前記負極集電体上に残留して前記負極合剤層を形成するので、前記負極合剤層中の各構成成分の含有比率は、前記負極スラリー中における前記固形成分の含有比率をそのまま反映するものとなっている。
前記負極合剤層は、プレス後の面積容量が3.5mAh/cm2以上10mAh/cm2以下の範囲となっていることが好ましい。このような負極合剤層を形成するには、前述した負極スラリーを、例えば、片面の面密度で5mg/cm2以上25mg/cm2以下の塗工量で塗工することが好ましく、10mg/cm2以上20mg/cm2以下の塗工量で塗工することがより好ましい。
また、乾燥及びプレス後の前記負極合剤層の厚みは、片面の厚みとして、例えば、50μm以上150μm以下であることが好ましい。
前記負極合剤層の塗工量及び厚みをこのような範囲とすることによって、前記リチウムイオン二次電池の充放電容量をより大きくすることができるので好ましい。
また、乾燥及びプレス後の前記負極合剤層の厚みは、片面の厚みとして、例えば、50μm以上150μm以下であることが好ましい。
前記負極合剤層の塗工量及び厚みをこのような範囲とすることによって、前記リチウムイオン二次電池の充放電容量をより大きくすることができるので好ましい。
なお、前記負極合剤層は導電剤をさらに含んでいても良い。導電剤は、例えば、正極に使用するものとして例示したものを用いることができる。
<4.本実施形態による効果>
以上のように構成した負極スラリー、この負極スラリーによって形成された負極合剤層及び負極によれば、以下のような効果を奏することができる。
前記バインダーが、粒子状分散体とアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有する水溶性重合体とを含有し、前記水溶性重合体の含有量が、前記負極活物質及び前記バインダーの合計質量を100質量%とした場合の前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上2質量%以下であるので、前記負極活物質がケイ素原子を含むものである場合における負極の膨張を十分に抑え、かつ、前記負極スラリーを塗工・乾燥する際のクラックの発生を抑えることができる。
本実施形態で記載した例のように、面積容量が3.5mAh/cm2以上の負極合剤層を形成する場合や、円筒状の電池を形成する場合には、前述した効果が特に顕著に発揮される。
以上のように構成した負極スラリー、この負極スラリーによって形成された負極合剤層及び負極によれば、以下のような効果を奏することができる。
前記バインダーが、粒子状分散体とアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有する水溶性重合体とを含有し、前記水溶性重合体の含有量が、前記負極活物質及び前記バインダーの合計質量を100質量%とした場合の前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上2質量%以下であるので、前記負極活物質がケイ素原子を含むものである場合における負極の膨張を十分に抑え、かつ、前記負極スラリーを塗工・乾燥する際のクラックの発生を抑えることができる。
本実施形態で記載した例のように、面積容量が3.5mAh/cm2以上の負極合剤層を形成する場合や、円筒状の電池を形成する場合には、前述した効果が特に顕著に発揮される。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、あくまでも本発明の一例であり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、まずアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体A~Eを合成した。次に、これらアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体A~Eを含有する負極スラリーを調製して、実施例1~14及び比較例1~8の二次電池を作製し、これらの二次電池について評価を行った。
以下、各実施例及び比較例について説明する。
本実施例では、まずアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体A~Eを合成した。次に、これらアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体A~Eを含有する負極スラリーを調製して、実施例1~14及び比較例1~8の二次電池を作製し、これらの二次電池について評価を行った。
以下、各実施例及び比較例について説明する。
<アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体の合成>
まず、以下の表1に示す組成のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体A~Eを合成した。
まず、以下の表1に示す組成のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体A~Eを合成した。
アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体A~Eの具体的な合成手順については以下の通りである。
(アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの合成)
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸114.0g、アクリロニトリル76.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液158.2ml、10質量%アンモニア水107.77g、イオン交換水705.5gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)2608mgをイオン交換水26.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、薄黄色のポリマー水溶液を得た。反応後の水溶液の不揮発分を測定したところ、16.0質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体A水溶液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水溶液の粘度=2160mPa・s)。なお、ポリマー水溶液の濃度は、未反応の単量体を除いた状態での水溶液の不揮発成分の質量から算出することができる。
(アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの合成)
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸114.0g、アクリロニトリル76.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液158.2ml、10質量%アンモニア水107.77g、イオン交換水705.5gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)2608mgをイオン交換水26.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、薄黄色のポリマー水溶液を得た。反応後の水溶液の不揮発分を測定したところ、16.0質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体A水溶液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水溶液の粘度=2160mPa・s)。なお、ポリマー水溶液の濃度は、未反応の単量体を除いた状態での水溶液の不揮発成分の質量から算出することができる。
(アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bの合成)
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸80.0g、アクリロニトリル80.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液222.0ml、イオン交換水592.0gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)2642mgをイオン交換水26.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、薄黄色のポリマー水溶液を得た。反応後の水溶液の不揮発分を測定したところ、16.1質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体B水溶液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水溶液の粘度=2020mPa・s)。
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸80.0g、アクリロニトリル80.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液222.0ml、イオン交換水592.0gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)2642mgをイオン交換水26.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、薄黄色のポリマー水溶液を得た。反応後の水溶液の不揮発分を測定したところ、16.1質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体B水溶液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水溶液の粘度=2020mPa・s)。
(アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Cの合成)
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸128.0g、アクリロニトリル32.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液177.6ml、10質量%アンモニア水121.0g、イオン交換水541.4gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)2744mgをイオン交換水26.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、黄色のポリマー水溶液を得た。反応後の水溶液の不揮発分を測定したところ、16.5質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体C水溶液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水溶液の粘度=1840mPa・s)。
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸128.0g、アクリロニトリル32.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液177.6ml、10質量%アンモニア水121.0g、イオン交換水541.4gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)2744mgをイオン交換水26.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、黄色のポリマー水溶液を得た。反応後の水溶液の不揮発分を測定したところ、16.5質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体C水溶液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水溶液の粘度=1840mPa・s)。
(アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Dの合成)
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸48.0g、アクリロニトリル112.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液133.2ml、イオン交換水670.8gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)3600mgをイオン交換水36.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、黄色のポリマー懸濁液を得た。反応後の懸濁液の不揮発分を測定したところ、15.5質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体D水懸濁液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水懸濁液の粘度=1520mPa・s)。
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸48.0g、アクリロニトリル112.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液133.2ml、イオン交換水670.8gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)3600mgをイオン交換水36.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、黄色のポリマー懸濁液を得た。反応後の懸濁液の不揮発分を測定したところ、15.5質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体D水懸濁液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水懸濁液の粘度=1520mPa・s)。
(アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Eの合成)
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸30.0g、アクリロニトリル20.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液27.75ml、10質量%アンモニア水28.36g、イオン交換水883.9gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)944mgをイオン交換水10.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、薄黄色のポリマー水溶液を得た。反応後の水溶液の不揮発分を測定したところ、4.9質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体E水溶液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水溶液の粘度=250mPa・s)。
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計を装着した2000mlのセパラブルフラスコ内に、アクリル酸30.0g、アクリロニトリル20.0g、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液27.75ml、10質量%アンモニア水28.36g、イオン交換水883.9gを仕込んで400rpmにて撹拌した後、系内を窒素置換し、ジャケット温度を85℃の設定にして昇温した。系内温度が60℃になった時点で、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド)944mgをイオン交換水10.0gに溶解した開始剤水溶液を添加した。ジャケット温度85℃の設定にて、前述の開始剤添加から12時間撹拌を継続して、薄黄色のポリマー水溶液を得た。反応後の水溶液の不揮発分を測定したところ、4.9質量%であった。その後、加熱減圧蒸留によって反応液を濃縮して未反応単量体を除去した後、アンモニア水およびイオン交換水を添加して、ポリマー水溶液の濃度およびpHを調整して、重合体を8質量%含有するpH7.5のアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体E水溶液を得た(B型粘度計にて、25℃、30rpmにおける8質量%ポリマー水溶液の粘度=250mPa・s)。
<実施例1>
以下のようにして、リチウムイオン二次電池を作成した。
(負極作製)
Si系活物質であるシリコン-カーボン複合活物質15.0g、黒鉛系活物質である人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック(アセチレンブラック)1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液14.32g、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC)の1.0質量%水溶液41.67g、イオン交換水35.60gを混合した後、ガラス転移点が-15℃の変性スチレンブタジエン共重合体からなる粒子状分散体aの40質量%水分散液3.91g(平均粒子径170nm)を加えることで、負極スラリーを作製した。次いで、乾燥後の負極合剤層の塗布量(面密度)が片面あたり10.3mg/cm2になるように、前記負極スラリーを負極集電体となる銅箔上の両面にリバースロールコーターを用いて塗工し乾燥させた。その後、ロールプレス機で負極合剤層の密度が1.65g/ccとなるようにプレスし、面積容量4.9mAh/cm2の負極を作製した。
以下のようにして、リチウムイオン二次電池を作成した。
(負極作製)
Si系活物質であるシリコン-カーボン複合活物質15.0g、黒鉛系活物質である人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック(アセチレンブラック)1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液14.32g、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC)の1.0質量%水溶液41.67g、イオン交換水35.60gを混合した後、ガラス転移点が-15℃の変性スチレンブタジエン共重合体からなる粒子状分散体aの40質量%水分散液3.91g(平均粒子径170nm)を加えることで、負極スラリーを作製した。次いで、乾燥後の負極合剤層の塗布量(面密度)が片面あたり10.3mg/cm2になるように、前記負極スラリーを負極集電体となる銅箔上の両面にリバースロールコーターを用いて塗工し乾燥させた。その後、ロールプレス機で負極合剤層の密度が1.65g/ccとなるようにプレスし、面積容量4.9mAh/cm2の負極を作製した。
(正極作製)
Li1.0Ni0.88Co0.1Al0.01Mg0.01O2、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを粉体としての質量比が97.7:1.0:1.3となるように、正極スラリー用溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン中に分散させて混合することで、正極スラリーを作製した。次いで、乾燥後の正極合剤層の塗布量(面密度)が片面24.0mg/cm2になるようにスラリーを正極集電体となるアルミニウム集電箔上の片面にリバースロールコーターを用いて塗工乾燥させた後、ロールプレス機で合剤層密度が3.65g/ccとなるようにプレスし、正極を作製した。
Li1.0Ni0.88Co0.1Al0.01Mg0.01O2、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを粉体としての質量比が97.7:1.0:1.3となるように、正極スラリー用溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン中に分散させて混合することで、正極スラリーを作製した。次いで、乾燥後の正極合剤層の塗布量(面密度)が片面24.0mg/cm2になるようにスラリーを正極集電体となるアルミニウム集電箔上の片面にリバースロールコーターを用いて塗工乾燥させた後、ロールプレス機で合剤層密度が3.65g/ccとなるようにプレスし、正極を作製した。
(二次電池セル作製)
上述の負極、正極にそれぞれニッケル及びアルミリード線を溶接した後、ポリエチレン製多孔質セパレータを介して負極1枚を正極2枚で挟む形で積層させることで、電極積層体を作製した。次いで、アルミラミネートフィルム内に上記の電極積層体を、リード線を外部に引き出した状態で収納し、電解液を注液して減圧封止することで初期充電前二次電池セルを作製した。電解液には、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/フルオロエチレンカーボネートを15/80/5(体積比)で混合した電解液用溶媒に1.3MのLiPF6および1%質量%のビニレンカーボネートを溶解させたものを使用した。
上述の負極、正極にそれぞれニッケル及びアルミリード線を溶接した後、ポリエチレン製多孔質セパレータを介して負極1枚を正極2枚で挟む形で積層させることで、電極積層体を作製した。次いで、アルミラミネートフィルム内に上記の電極積層体を、リード線を外部に引き出した状態で収納し、電解液を注液して減圧封止することで初期充電前二次電池セルを作製した。電解液には、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/フルオロエチレンカーボネートを15/80/5(体積比)で混合した電解液用溶媒に1.3MのLiPF6および1%質量%のビニレンカーボネートを溶解させたものを使用した。
(金属リチウム対極セル作製)
上述のセル作製において、片面正極電極を金属リチウム貼り合わせ銅箔に変更した以外は同様の手順で、初期充電前の金属リチウム対極セルを作製した。
上述のセル作製において、片面正極電極を金属リチウム貼り合わせ銅箔に変更した以外は同様の手順で、初期充電前の金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例2>
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えて、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bを使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えて、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bを使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例3>
実施例1の負極作製工程において、粒子状分散体aに替えて、ガラス転移点が9℃の変性スチレンブタジエン共重合体からなる粒子状分散体b(平均粒子径180nm)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、粒子状分散体aに替えて、ガラス転移点が9℃の変性スチレンブタジエン共重合体からなる粒子状分散体b(平均粒子径180nm)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例4>
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えてアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bを使用し、さらに粒子状分散体aに替えて粒子状分散体bを使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えてアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bを使用し、さらに粒子状分散体aに替えて粒子状分散体bを使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例5>
実施例4の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液26.04g、イオン交換水49.92gを混合した後、粒子状分散体aの40質量%水分散液2.60gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例4の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液26.04g、イオン交換水49.92gを混合した後、粒子状分散体aの40質量%水分散液2.60gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例6>
実施例5の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えてアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bを使用した以外は、実施例5と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例5の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えてアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bを使用した以外は、実施例5と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例7>
実施例5の負極作製工程において、粒子状分散体aに替えて粒子状分散体bを使用した以外は、実施例5と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例5の負極作製工程において、粒子状分散体aに替えて粒子状分散体bを使用した以外は、実施例5と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例8>
実施例5の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えてアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bを使用し、さらに、粒子状分散体aに替えて粒子状分散体bを使用した以外は、実施例5と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例5の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えてアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bを使用し、さらに、粒子状分散体aに替えて粒子状分散体bを使用した以外は、実施例5と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<比較例1>
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、ポリアクリル酸のナトリウム塩の5質量%水溶液62.5g、イオン交換水40.71gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して、乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、ポリアクリル酸のナトリウム塩の5質量%水溶液62.5g、イオン交換水40.71gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して、乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
<比較例2>
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液39.06g、イオン交換水52.80gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して、乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液39.06g、イオン交換水52.80gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して、乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
<比較例3>
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bの8.0質量%水溶液39.06g、イオン交換水52.80gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して、乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bの8.0質量%水溶液39.06g、イオン交換水52.80gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して、乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
<比較例4>
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液19.53g、カルボキシメチルセルロース(CMC)の1.5質量%水溶液104.17g、イオン交換水6.74gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して、乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液19.53g、カルボキシメチルセルロース(CMC)の1.5質量%水溶液104.17g、イオン交換水6.74gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して、乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
<比較例5>
実施例1の負極作製工程において、負極スラリーは、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bの8.0質量%水溶液19.53g、CMCの1.5質量%水溶液104.17g、イオン交換水6.74gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
実施例1の負極作製工程において、負極スラリーは、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Bの8.0質量%水溶液19.53g、CMCの1.5質量%水溶液104.17g、イオン交換水6.74gを混合することで、負極スラリーを作製した。実施例1と同様の手順で負極スラリーを銅箔上に塗工して乾燥を行ったが、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)が発生したため、二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製することができなかった。
<比較例6>
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、CMCの1.5質量%水溶液104.16g、イオン交換水49.92gを混合した後、粒子状分散体aの40質量%水分散液3.91gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、CMCの1.5質量%水溶液104.16g、イオン交換水49.92gを混合した後、粒子状分散体aの40質量%水分散液3.91gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<比較例7>
実施例1の負極作成工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、CMCの1.5質量%水溶液104.16g、イオン交換水49.92gを混合した後、粒子状分散体bの40質量%水分散液3.91gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作成工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、CMCの1.5質量%水溶液104.16g、イオン交換水49.92gを混合した後、粒子状分散体bの40質量%水分散液3.91gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<比較例8>
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、ポリアクリル酸のナトリウム塩の5質量%水溶液22.92g、CMCの1.0質量%水溶液41.67g、イオン交換水52.09gを混合した後、粒子状分散体aの40質量%水分散液3.91gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、ポリアクリル酸のナトリウム塩の5質量%水溶液22.92g、CMCの1.0質量%水溶液41.67g、イオン交換水52.09gを混合した後、粒子状分散体aの40質量%水分散液3.91gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例9>
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えて、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Cを使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えて、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Cを使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例10>
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えて、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Dを使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aに替えて、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Dを使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例11>
実施例1の負極作製工程において、負極スラリーは、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Eの8.0質量%水溶液14.32g、CMCの1.0質量%水溶液41.67g、イオン交換水18.66gを混合した後、粒子状分散体aの40質量%水分散液3.91gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、負極スラリーは、シリコン-カーボン複合活物質15.0g、人造黒鉛活物質85.0g、デンカブラック1.042g、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Eの8.0質量%水溶液14.32g、CMCの1.0質量%水溶液41.67g、イオン交換水18.66gを混合した後、粒子状分散体aの40質量%水分散液3.91gを加えることで、負極スラリーを作製した。負極スラリーの配合を変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例12>
実施例1の負極作製工程において、粒子状分散体aに替えて、ガラス転移点が-35℃の変性スチレンブタジエン共重合体からなる粒子状分散体c(平均粒子径180nm)を使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、粒子状分散体aに替えて、ガラス転移点が-35℃の変性スチレンブタジエン共重合体からなる粒子状分散体c(平均粒子径180nm)を使用した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例13>
実施例1の負極作製工程において、粒子状分散体aに替えて、ガラス転移点が-50℃の変性スチレンブタジエン共重合体からなる粒子状分散体d(平均粒子径180nm)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、粒子状分散体aに替えて、ガラス転移点が-50℃の変性スチレンブタジエン共重合体からなる粒子状分散体d(平均粒子径180nm)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<実施例14>
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液の添加量を6.48g、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC)の1.0質量%水溶液の添加量を51.87g、粒子状分散体aの40質量%水分散液の添加量を4.15gとした以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
実施例1の負極作製工程において、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体Aの8.0質量%水溶液の添加量を6.48g、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC)の1.0質量%水溶液の添加量を51.87g、粒子状分散体aの40質量%水分散液の添加量を4.15gとした以外は、実施例1と同様の手順で二次電池セル及び金属リチウム対極セルを作製した。
<負極スラリー、負極、二次電池の評価>
(塗工適性)
実施例1~14および比較例1~8において、負極スラリーを銅箔上に塗工乾燥する工程において、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)発生有無を見ることで、塗工適性を評価した。評価基準を以下に示す。
○:クラック発生無し
×:クラック発生有り
(塗工適性)
実施例1~14および比較例1~8において、負極スラリーを銅箔上に塗工乾燥する工程において、塗工乾燥中に負極合剤層に亀裂(クラック)発生有無を見ることで、塗工適性を評価した。評価基準を以下に示す。
○:クラック発生無し
×:クラック発生有り
(粘度変化)
実施例1~14および比較例1~8において、作成直後の負極スラリー粘度と、室温下40rpmの撹拌下で24時間保管後の負極スラリー粘度とを比較することで、スラリーの粘度安定性を評価した。なお、スラリー粘度(単位:mPa・s)は、25℃、30rpm撹拌下、B型粘度計にて測定した。評価基準を以下に示す。
〇:作成直後に対する、24時間保管後のスラリー粘度変化が50~150%の範囲内
△:作成直後に対する、24時間保管後のスラリー粘度変化が150%以上
実施例1~14および比較例1~8において、作成直後の負極スラリー粘度と、室温下40rpmの撹拌下で24時間保管後の負極スラリー粘度とを比較することで、スラリーの粘度安定性を評価した。なお、スラリー粘度(単位:mPa・s)は、25℃、30rpm撹拌下、B型粘度計にて測定した。評価基準を以下に示す。
〇:作成直後に対する、24時間保管後のスラリー粘度変化が50~150%の範囲内
△:作成直後に対する、24時間保管後のスラリー粘度変化が150%以上
(密着性)
実施例1~14および比較例6~8で作製した負極を幅25mm、長さ100mmの短冊状に切り出した。ついで、両面テープを用いてステンレス板に活物質面を被着面として張り合わせ、密着性評価用サンプルとした。剥離試験機((株)島津製作所社製SHIMAZU EZ-S)にサンプルを装着し、180度ピール強度を測定した。
実施例1~14および比較例6~8で作製した負極を幅25mm、長さ100mmの短冊状に切り出した。ついで、両面テープを用いてステンレス板に活物質面を被着面として張り合わせ、密着性評価用サンプルとした。剥離試験機((株)島津製作所社製SHIMAZU EZ-S)にサンプルを装着し、180度ピール強度を測定した。
(初回充電後の負極膨張率)
実施例1~14および比較例6~8で製した金属リチウム対極セルを、25℃の恒温槽内で設計容量の0.1CA(1CAは1時間放電率)で0.005Vまで定電流充電を行い、引き続き0.005Vで0.01CAになるまで定電圧充電を行った。その後、電池を解体し、負極を取出し、マイクロメーターにて負極の厚みを測定し、予め測定しておいた初回充電前(電解液注液前)の負極の厚みと比較することで、初回充電後の負極膨張率を評価した。ここで、膨張率の値は((充電後の負極厚み)-(充電前の負極厚み)/(充電前の負極厚み))×100として算出した。
実施例1~14および比較例6~8で製した金属リチウム対極セルを、25℃の恒温槽内で設計容量の0.1CA(1CAは1時間放電率)で0.005Vまで定電流充電を行い、引き続き0.005Vで0.01CAになるまで定電圧充電を行った。その後、電池を解体し、負極を取出し、マイクロメーターにて負極の厚みを測定し、予め測定しておいた初回充電前(電解液注液前)の負極の厚みと比較することで、初回充電後の負極膨張率を評価した。ここで、膨張率の値は((充電後の負極厚み)-(充電前の負極厚み)/(充電前の負極厚み))×100として算出した。
(初回充電後の負極合剤層剥離)
前述の初回充電後負極膨張率評価において、初回充電後に取り出した負極を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:基材銅箔に対する負極合剤層の剥離無し
△:基材銅箔に対して負極合剤層の一部が剥離
×:基材銅箔に対して負極合剤層が全面剥離
前述の初回充電後負極膨張率評価において、初回充電後に取り出した負極を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:基材銅箔に対する負極合剤層の剥離無し
△:基材銅箔に対して負極合剤層の一部が剥離
×:基材銅箔に対して負極合剤層が全面剥離
(サイクル特性)
実施例1~4および比較例3~5で作製した二次電池セルを、25℃の恒温槽内で設計容量の0.1CAで4.3Vまで定電流充電を行い、引き続き4.3Vで0.05CAになるまで定電圧充電を行った。その後0.1CAで2.5Vまで定電流放電を行った。さらに、25℃の恒温槽内で、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧2.5Vの条件で0.2CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.2CAで定電流放電を1サイクル行い、初期放電容量を測定した。この二次電池を、25℃の温度下、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧2.5Vの条件で0.5CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.5CAで定電流放電する寿命試験を100サイクル実施した。そして、100サイクル後、定電流充電0.2CA、定電圧充電0.05CA、放電0.2CAでの放電容量を計測し、初期放電容量で除算することで、100サイクル後の容量維持率を測定した。
実施例1~4および比較例3~5で作製した二次電池セルを、25℃の恒温槽内で設計容量の0.1CAで4.3Vまで定電流充電を行い、引き続き4.3Vで0.05CAになるまで定電圧充電を行った。その後0.1CAで2.5Vまで定電流放電を行った。さらに、25℃の恒温槽内で、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧2.5Vの条件で0.2CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.2CAで定電流放電を1サイクル行い、初期放電容量を測定した。この二次電池を、25℃の温度下、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧2.5Vの条件で0.5CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.5CAで定電流放電する寿命試験を100サイクル実施した。そして、100サイクル後、定電流充電0.2CA、定電圧充電0.05CA、放電0.2CAでの放電容量を計測し、初期放電容量で除算することで、100サイクル後の容量維持率を測定した。
(評価結果)
実施例1~14比較例1~8の評価結果を表2及び表3にまとめた。
実施例1~14比較例1~8の評価結果を表2及び表3にまとめた。
(実施例、比較例の結果についての考察)
まず、表2及び表3に示すように、ポリアクリル酸単独重合体のみからなる負極用バインダーを用いた比較例1においては、負極スラリーの塗布乾燥工程において負極合剤層にクラックが発生して、実用に供する負極を得ることができなかった。ポリアクリル酸は高弾性率であることが知られているが、屈曲性に乏しいため、負極合剤層に求められる充分な柔軟性が得られなかったと考えられる。このことは表3におけるプレス後の密着性が大きく低下していることからも推測できる。
アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体のみを負極用バインダーとして用いた比較例2~3においても、比較例1と同様に、負極スラリーの塗布乾燥工程において負極合剤層にクラックが発生して、実用に供する負極を得ることができなかった。
同様に、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体とCMCとを含有する水溶性重合体を用いた比較例4及び比較例5においても、負極スラリーの塗布乾燥工程におけるクラック発生の問題は改善されなかった。
表3から、これら比較例2~5においても、プレス後の密着性が大きく低下していることから、これら比較例2~5においても比較例1と同様に、負極合剤層として求められる充分な柔軟性が得られなかったことが考えられる。
まず、表2及び表3に示すように、ポリアクリル酸単独重合体のみからなる負極用バインダーを用いた比較例1においては、負極スラリーの塗布乾燥工程において負極合剤層にクラックが発生して、実用に供する負極を得ることができなかった。ポリアクリル酸は高弾性率であることが知られているが、屈曲性に乏しいため、負極合剤層に求められる充分な柔軟性が得られなかったと考えられる。このことは表3におけるプレス後の密着性が大きく低下していることからも推測できる。
アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体のみを負極用バインダーとして用いた比較例2~3においても、比較例1と同様に、負極スラリーの塗布乾燥工程において負極合剤層にクラックが発生して、実用に供する負極を得ることができなかった。
同様に、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体とCMCとを含有する水溶性重合体を用いた比較例4及び比較例5においても、負極スラリーの塗布乾燥工程におけるクラック発生の問題は改善されなかった。
表3から、これら比較例2~5においても、プレス後の密着性が大きく低下していることから、これら比較例2~5においても比較例1と同様に、負極合剤層として求められる充分な柔軟性が得られなかったことが考えられる。
また、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を使用していない比較例6~8においては、表3に示すように、初回充電後の負極膨張率が43%超と大きくなっており、100サイクル後の容量維持率が76%を下回る結果となっている。これらの結果から、比較例6~8の負極スラリーは、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有していないために、負極の膨張を十分に抑制できず、その結果サイクル寿命も低下してしまったものと考えられる。また、これら比較例では初回充電後の負極合剤層の剥離が起こりやすいことも分かった。
一方、本発明の具体例である実施例1~14においては、表3に示すように、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有する水溶性重合体と粒子状分散体とを併用し、前記水溶性重合体の含有量を所定範囲とすることで、前述のクラック発生の問題を解決することができた。
これは、負極用バインダーが、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有する前記水溶性重合体の含有量を所定の範囲とすることによって、負極合剤層の柔軟性が実用に供するレベルにまで改善されたことによる効果であると考えられる。なお、実施例1~14においては、前記負極活物質及び前記バインダーの合計質量を100質量%とした場合の、前記水溶性重合体の含有量が1.0質量%~2.0質量%の場合を挙げたが、これらに限られず、前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%の場合であっても、負極の膨張を十分に抑えることが可能であることが確認されている。
これは、負極用バインダーが、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有する前記水溶性重合体の含有量を所定の範囲とすることによって、負極合剤層の柔軟性が実用に供するレベルにまで改善されたことによる効果であると考えられる。なお、実施例1~14においては、前記負極活物質及び前記バインダーの合計質量を100質量%とした場合の、前記水溶性重合体の含有量が1.0質量%~2.0質量%の場合を挙げたが、これらに限られず、前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%の場合であっても、負極の膨張を十分に抑えることが可能であることが確認されている。
さらに、これら実施例1~14は、比較例6~8と比較して、充電に伴う負極の膨張が十分に抑制されると共に、優れたサイクル特性を示しており、充放電サイクルを繰り返すことによる電池の容量劣化が抑えられていることが分かった。
また、これら実施例1~14では、初回充電後の負極合剤層の剥離も抑えられることが分かった。
実施例9~14においても、本発明による効果は十分に発揮されるものであったが、実施例1~8においては、表3に示すように、全ての項目において二次電池としてより優れた性能を発揮することが分かった。この結果から、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体におけるアクリル酸とアクリロニトリルの各共重合比率ならびにアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有する水溶液の粘度、負極スラリーの粘度等をより適切な範囲に設計することで、より負極の膨れ抑制と寿命向上の効果、さらには負極合剤層の剥離抑制効果が大きくなることが分かった。また、粒子状分散体のガラス転移温度についても-30℃以上20℃以下のものを用いた場合によりスラリーの経時安定性が向上することが分かった。
実施例1~14においては、塗工厚み4.9mAh/cm2とした場合であってもクラック発生を十分に抑制可能であることを示したが、この塗工厚みについては、これら実施例1~14記載の負極スラリーを使用した場合、10mAh/cm2までの範囲においてクラックの発生がほとんどないことが本発明者らの実験によって確認されている。
また、これら実施例1~14では、初回充電後の負極合剤層の剥離も抑えられることが分かった。
実施例9~14においても、本発明による効果は十分に発揮されるものであったが、実施例1~8においては、表3に示すように、全ての項目において二次電池としてより優れた性能を発揮することが分かった。この結果から、アクリル酸-アクリロニトリル系共重合体におけるアクリル酸とアクリロニトリルの各共重合比率ならびにアクリル酸-アクリロニトリル系共重合体を含有する水溶液の粘度、負極スラリーの粘度等をより適切な範囲に設計することで、より負極の膨れ抑制と寿命向上の効果、さらには負極合剤層の剥離抑制効果が大きくなることが分かった。また、粒子状分散体のガラス転移温度についても-30℃以上20℃以下のものを用いた場合によりスラリーの経時安定性が向上することが分かった。
実施例1~14においては、塗工厚み4.9mAh/cm2とした場合であってもクラック発生を十分に抑制可能であることを示したが、この塗工厚みについては、これら実施例1~14記載の負極スラリーを使用した場合、10mAh/cm2までの範囲においてクラックの発生がほとんどないことが本発明者らの実験によって確認されている。
Claims (17)
- ケイ素原子を含む第1活物質を5質量%以上100質量%以下の範囲で含有する負極活物質と、該負極活物質を結着させるバインダーと、前記負極活物質及び前記バインダーを分散させる負極スラリー用溶媒とを含む負極スラリーであって、
前記第1活物質が、ケイ素原子を20質量%以上100質量%以下含有するものであり、前記バインダーが、粒子状分散体と、(メタ)アクリル酸系単量体由来の単位と(メタ)アクリロニトリル単量体由来の単位とを含む共重合体を含有する水溶性重合体とを含むものであり、
前記負極活物質及び前記バインダーの合計質量を100質量%とした場合の、前記水溶性重合体の含有量が0.5質量%以上2質量%以下であることを特徴とする負極スラリー。 - 前記負極スラリー用溶媒が水系溶媒である、請求項1記載の負極スラリー。
- 前記第1活物質が、ケイ素もしくはケイ素酸化物の微粒子と黒鉛質炭素もしくは非晶質炭素とが複合された混合物、ケイ素の微粒子、及びケイ素を基本材料とした合金からなる群より選ばれる1種以上の活物質を含むものである。請求項1又は2記載の負極スラリー。
- 前記共重合体が、(メタ)アクリル酸系単量体由来の単位を40質量%以上70質量%以下、(メタ)アクリロニトリル単量体由来の単位を30質量%以上60質量%以下の範囲で含有するものである、請求項1~3の何れか一項に記載の負極スラリー。
- 前記共重合体が、前記(メタ)アクリル酸系単量体由来の単位又は(メタ)アクリロニトリル単量体由来の単位と共重合可能な単量体由来の単位をさらに含有する、請求項4記載の負極スラリー。
- 前記水溶性重合体が、前記共重合体を50質量%以上含有するものである、請求項1~5の何れか一項に記載の負極スラリー。
- 前記(メタ)アクリル酸系単量体が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の金属塩、(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩及び(メタ)アクリル酸のアミン塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものである、請求項1~6の何れか一項に記載の負極スラリー。
- 前記共重合体の8質量%の水溶液の粘度が、25℃で500mPa・s以上10000mPa・s以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の負極スラリー。
- 前記粒子状分散体が、ガラス転移温度-30℃以上20℃以下の重合体を含有するものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の負極スラリー。
- 前記粒子状分散体が、スチレン単量体由来の単位と、ブタジエン単量体由来の単位とを含有する共重合体を含有するものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の負極スラリー。
- 前記水溶性重合体が、カルボキシメチル基を含有するセルロースエーテル又はカルボキシメチル基を含有するセルロースエーテルの塩をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の負極スラリー。
- 固形分濃度45質量%以上60質量%以下における粘度が、25℃において1000mPa・s以上5000mPa・s以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の負極スラリー。
- 前記負極活物質が、第2活物質として黒鉛系活物質をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の負極スラリー。
- 導電剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の負極スラリー。
- 請求項1~14に記載された負極スラリー中の固形成分を含む負極。
- 面積容量が3.5mAh/cm2以上10mAh/cm2以下である、請求項15記載の負極。
- 請求項15又は16に記載の負極を備えた二次電池。
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