JP2022053506A - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents

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卓司 東大路
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Abstract

【課題】低温低湿度、低温高湿度、高温低湿度、高温高湿度の全ての温湿度領域で優れた寸法安定性を有し、かつ優れた表面平滑性とスリット性を両立した二軸配向ポリエステルフィルムを安定に提供すること。【解決手段】二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面(B面)において、高さ50nm以上の突起個数が5.0万個/mm2以下、高さ100nm以上の突起個数が1.5万個/mm2以下であり、該層の表面平均粗さSaBがもう片方の最外層表面(A面)の表面平均粗さSaAよりも大きい二軸配向ポリエステルフィルムとする。【選択図】なし

Description

本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、データストレージなどの塗布型磁気記録媒体のベースフィルムに好適に用いることができる二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
二軸配向ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御のし易さから各種用途に使用されており、特に磁気記録媒体などの支持体としての有用性がよく知られている。磁気記録媒体には常に高密度記録化が要求される。
高密度記録を達成する方法としては、一般に、トラック数の増加、記録波長の短波長化、テープ長増大の3つの方法がある。
トラック数を多くすると1トラックの幅が狭くなるため、僅かな寸法変化がデータ欠落の原因となることがあり、テープ幅方向の寸法安定性の制御が重要となる。このような寸法変化は、熱収縮等の不可逆的変化と温度、湿度による膨張、収縮等の可逆的変化に分けられる。不可逆的変化はないことが好ましいが、加工工程でアニール等の処理により取り除くことができる。これに対して、可逆的変化は容易に取り除くことができないために、保存時に温度、湿度が変化するとフィルムの膨張や収縮が起こり、記録データが本来あるべき位置からずれることにより、読み取れなくなることがある。
また、記録波長を短波長化した上で、十分な電磁変換特性を実現するためには表面平滑性が求められ、さらに、磁性層の薄膜化や微粒子磁性体を使用し磁性層表面の平滑性をさらに向上させることが有効である。
近年の強磁性六方晶フェライト粉末を用いてなる磁気記録媒体用支持体においては、磁性層や非磁性層、バックコート層、さらには支持体自体の薄膜化に伴い平滑面のみならず走行面の粗面化が制約されている。製造過程で磁気記録媒体としてロール状態で保存する場合、走行面に形成されている突起が磁性面に転写し、平滑な磁性層表面に窪みを形成させたり、支持体の薄膜化に伴い支持体に含有している大きな粒子が平滑面に突き上げられたりして磁性層表面になだらかな凸状のウネリを発生させ磁性層表面の平滑性が低下することによってエラー信号(ミッシングパルス)が発生するといった問題に加えて、次世代用データテープ(例えばLTO9、LTO10)に用いる場合は、高平滑高容量化に対応したヘッドが採用され、ヘッドのトラック密度の狭小化により感度が向上するため、これまでは問題ではなかったレベルの突起が欠点を引き起こすことが発覚した。これに伴い磁性層並びにバックコート層のさらなる平滑性への要求が高まり、依然としてエラー欠点の低減に至っていない。また、幅方向の寸法安定性向上には幅方向の延伸倍率の高倍化が必須で有り、これに伴いバックコート層表面の突起高さが高くなり易い傾向にあるため、バックコート層の転写による磁性面の平滑性の低下を解消できないのが実情である。
上記課題を解決するために、あらゆる環境変化に対応できるような温湿度領域で優れた寸法安定性を有するポリエステルフィルム(例えば特許文献1、2)が検討されている。また、特定の波長に起因するパワースペクトル密度を規定し、幅方向の寸法安定性を向上させた二軸配向ポリエステルフィルム(例えば特許文献3)や、微細な粒子を含有させて、フィルム表面の粗さや突起高さと個数を制御し磁性層表面への転写を抑制したポリエステルフィルム(例えば特許文献4.5)や、ポリエステルフィルム表面のうねりを特定の範囲内に制御することで優れた巻き取り性と電磁変換特性を両立したポリエステルフィルム(例えば特許文献6)も検討されている。
特開2005-163020号公報 特開2015-25047号公報 特開2018-150463号公報 特開2012-153100号公報 特開2013-200927号公報 特開2012-153099号公報 特開2000-141475号公報
しかしながら、磁性層薄膜化や強磁性六方晶フェライト粉末などの微粒子磁性体を使用し、次世代データテープ(例えばLTO9、LTO10)として有用な磁性層表面の平滑性を担保できるための支持体の表面を得られていないのが実状である。さらに、熱に対する寸法安定性とフィルムの剛性を両立させたポリエステルフィルム(例えば特許文献7)が検討されているが、温度膨張については全く考慮されておらず、常温常湿度、低温低湿度、低温高湿度、高温低湿度、高温高湿度などの全ての温湿度領域で優れた寸法変化を有するフィルムには至っていない。
本発明の目的は、低温低湿度、低温高湿度、高温低湿度、高温高湿度の全ての温湿度領域で優れた寸法安定性を有し、かつ優れた表面平滑性とスリット性を両立した二軸配向ポリエステルフィルムを安定に提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、次の各構成を特徴とするものである。
(1)二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面(B面)において、高さ50nm以上の突起個数が5.0万個/mm以下、高さ100nm以上の突起個数が1.5万個/mm以下であり、該層の表面平均粗さSaBがもう片方の最外層表面(A面)の表面平均粗さSaAよりも大きい二軸配向ポリエステルフィルム。
(2)(1)に記載の特徴を有する最外層表面(B面)において、高さ40nm以上の突起個数が7.0万個/mm以下である、(1)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(3)(1)に記載の特徴を有する最外層表面(B面)において、高さ30nm以上の突起個数が0.5万~10.0万個/mm以下である、(1)および(2)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(4)(1)に記載の特徴を有する最外層表面(B面)において、高さ30nm以上の突起個数が1.5万~10.0万個/mm以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(5)(1)に記載の特徴を有する最外層表面(B面)において、高さ1nm以上10nm未満の突起個数が100万個/mm以上である、(1)~(4)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(6)幅方向の湿度膨張係数が4.5~6.5ppm/%RHである、(1)~(5)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(7)幅方向の温度膨張係数が-3.0~4.0ppm/℃以下である、(1)~(6)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(8)塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体用ベースフィルムに用いられる、(1)~(7)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、スリット性、低温低湿度、低温高湿度、高温低湿度、高温高湿度の全ての温湿度領域での寸法安定性、かつ優れた表面平滑性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムであって、磁気記録媒体、特に次世代データテープとした際に平滑な磁性層を有すると共に温度や湿度の環境変化や保存による寸法変化が小さく、ミッシングパルスなどのエラー欠点の発生が抑制された高密度磁気記録媒体となる二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明において用いるポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものを用いることができる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4-ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp-アミノフェノール、p-アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
ポリマーの共重合割合はNMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT-IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
ポリエステルは、二軸延伸を施せること、および、寸法安定性などの本発明の効果を発現するために、ガラス転移温度が150℃未満のものを好適に使用できる。本発明において用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン-2,6-ナフタレート)が好ましく、また、これらの共重合体や変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは高分子多成分系のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドでもよい。本発明で用いるポリエステルとしては特に、結晶子サイズや結晶配向度を高めるプロセスが適用しやすいことから主成分がポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。ここで、主成分とはフィルム組成中80質量%以上であることをいう。
本発明で用いるポリエチレンテレフタレートをポリマーアロイとする場合、他の熱可塑性樹脂は、ポリエステルと相溶するポリマーが好ましく、ポリエーテルイミド樹脂などがより好ましい。ポリエーテルイミド樹脂としては、例えば以下で示すものを用いることができる。
Figure 2022053506000001
(ただし、上記式中Rは、6~30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、Rは6~30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2~20個の炭素原子を有するアルキレン基、2~20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2~8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R、Rとしては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
Figure 2022053506000002
(nは2以上の整数、好ましくは20~50の整数である。)
本発明では、ポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm-フェニレンジアミン、またはp-フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
Figure 2022053506000003
または
Figure 2022053506000004
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社より入手可能であり、「Ultem(登録商標)1000」、「Ultem(登録商標)1010」、「Ultem(登録商標)1040」、「Ultem(登録商標)5000」、「Ultem(登録商標)6000」および「Ultem(登録商標)XH6050」シリーズや「Extem(登録商標) XH」および「Extem(登録商標) UH」の登録商標名等で知られているものである。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面(以降、かかる表面をB面、かかすB面を有する層をB層という場合がある)において、高さ50nm以上の突起個数は5.0万個/mm以下であり、好ましくは1.0万~5.0万個/mm、さらに好ましくは1.5万~4.5万個/mmである。高さ50nm以上の突起個数が5.0万個/mmを超えると次世代データテープとして巻き取った際にバックコート層表面の微細な凹凸が磁性層表面へ転写するために転写痕の数が多くなり、エラー欠点を発生する場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面(B面)において、高さ100nm以上の突起個数は1.5万個/mm以下であり、好ましくは1.2万個/mm、さらに好ましくは1.0万個/mm以下である。高さ100nm以上の突起個数が1.5万個/mmを超えると次世代データテープとして巻き取った際にバックコート層表面の凹凸が磁性層表面へ転写するために大きな転写痕を発生させ、ミッシングパルスが低下する場合がある。
なお、上記した本発明の高さ50nm以上の突起個数、あるいは100nm以上の突起個数は、後述する測定方法において原子間力顕微鏡測定により求められる基準面からの高さ閾値50nm、あるいは100nmにおける突起個数である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面(B面)において、高さ40nm以上の突起個数は7.0万個/mm以下であることが好ましく、より好ましくは2.0万~7.0万個/mm、さらに好ましくは2.0万~6.0万個/mmである。高さ40nm以上の突起個数が7万個/mmを超えると本発明の高さ50nm以上の突起個数を5.0万個/mm以下に制御できない場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面(B面)において、高さ30nm以上の突起個数は0.5~10.0万個/mm以下であることが好ましく、より好ましくは1.5万~10.0万個/mm、さらに好ましくは2.0万~9.0万個/mm、最も好ましくは3.0万~8.0万個/mmである。高さ30nm以上の突起個数が10.0万個/mmを超えると本発明の高さ50nm以上の突起個数を5.0万個/mm以下に制御できない場合がある。また、下限値以下であるとスリット性が悪化するので好ましくない。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面(B面)において、高さ1nm以上10nm未満の突起個数が100万個/mm以上であることが好ましく、より好ましくは150万個/mm以上、さらに好ましくは200万個/mm以上である。高さ1nm以上10nm未満の微細な突起が多ければ多いほど、次世代データテープとして巻き取った際にバックコート層表面の凹凸が磁性層表面へ転写する応力を分散でき、ミッシングパルスなどのエラー欠点が抑制しやすい。さらに、微細な突起が多数形成されているためにスリット性と表面平滑性の両立が高いレベルで可能となり好ましい。高さ1nm以上10nm未満の突起個数の上限は、製法上の観点より1000万個/mm以下であるが、当然、粒子を併用する場合の上限はさらに低下する。本発明のスリット性と表面平滑性の両立の観点では、200~600万個/mmが好ましい。ここで、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面(B面)の表面粗さはもう片方の最外層表面(以降、かかる表面をA面、かかるA面を有する層をA層という場合がある)の表面粗さよりも大きく、最外層表面(B面)の表面粗さ(SaB)は2.0~6.0nmであることが好ましく、2.5~5.0nmであることがより好ましい。表面粗さが下限値以下であるとスリット性が悪化する場合がある。また、上限値を超えると本発明の高さ50nm以上や100nm以上の突起個数を本発明の範囲内に制御できない場合がある。
また、上述した最外層表面(A面)の表面粗さ(SaA)は、0.5~3.0nmであることが好ましく、より好ましくは0.5~2.5nmである。最外層表面(A面)は、平滑性を担う表面として機能し、磁気記録媒体とする際は。該A面側に磁性層を設けることが本発明の課題を解消するためには好ましい。最外層表面(A面)の表面粗さが上記の範囲外であると該表面に磁性層を設け磁気記録媒体とした際に走行性やスリット性、ミッシングパルスを両立することが困難となることがある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の湿度膨張係数は4.5~6.5ppm/%RHであることが好ましく、より好ましくは5.0~6.3ppm/%RHである。湿度膨張係数が6.5ppm/%RHより大きいと磁気データを記録・再生する環境において、湿度変化に対してフィルムが幅方向に膨張するため再生不良を起こしやすくなる場合がある。また、湿度膨張係数が4.5ppm/%RHより小さい場合は、フィルムの温度膨張係数を本発明の範囲内に制御することが困難となることがある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の温度膨張係数は-3.0~4.0ppm/℃であることが好ましく、より好ましくは-1.0~3.0ppm/℃である。温度膨張係数が-3.0ppm/℃を下回ると磁気データを記録・再生する環境の温度変化に対してフィルムの幅方向への収縮が大きくなる。一方、磁気ヘッドは温度変化に対して膨張(通常7.0ppm/℃)するため、相互の寸法変化が大きくなりすぎる再生不良を起こしやすくなる。温度膨張係数が4.0ppm/℃を超えると、湿度膨張係数を本発明の範囲内に制御できなくなり、磁気データを記録・再生する環境の温湿度変化に対してフィルムが幅方向に膨張するため再生不良を起こしやすくなる場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の熱収縮率は1.0%以下であることが好ましい。幅方向の熱収縮率が1.0%を超えると、磁気記録媒体の加工工程においてフィルムが幅方向に収縮し、磁気記録媒体表面にシワが発生したり、磁性層表面の平滑性が低下することがある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向のヤング率が7.0~12.0GPaであることが好ましく、7.0~11.0GPaであることが幅方向の湿度膨張係数の制御の観点からより好ましい。幅方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の記録再生時の環境変化による寸法安定性が良好となる傾向にある。幅方向のヤング率は後述するTD延伸1、2の温度や倍率によって制御することができる。特にトータルのTD倍率が影響し、トータルのTD倍率が高いほどTDヤング率が高くなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向のヤング率が3.5~8.0GPaであることが好ましい。長手方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の保管時の張力による保存安定性がより良好となる。長手方向のヤング率のさらに好ましい範囲は3.8~7.0GPa、さらにより好ましい範囲は4.0~6.0GPaである。長手方向のヤング率はMD延伸倍率で制御することができる。MD倍率が高いほどMDヤング率が高くなる。
本発明のB面の高さ50nm以上の突起個数および高さ100nm以上の突起個数の制御方法としては、B層における含有粒子の平均粒子径、添加量、幅方向の延伸倍率、熱固定温度で制御が可能である。特にB層に含有する粒子の数平均粒子径は0.3μm以下、好ましくは0.01~0.3μmの粒径の異なる粒子を2種類以上併用することが重要である。
この場合、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に好ましく含有される粒子としては特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、いずれも用いることができる。具体的な種類としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ珪酸塩、カオリン、タルク、モンモリロナイト、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子、コアシェル型有機粒子などが例示できるが、本発明の高さ50nm以上および高さ100nm以上の突起個数を制御するには、球形の粒子である有機粒子やコロイダルシリカを添加することが特に好ましい。さらに、走行性とスリット性を改善させるためにアルミナ粒子をB層に添加させると効率よく改善できるため好ましい。アルミナ粒子の好ましい添加量は0.1~1.5質量%、さらに好ましくは0.2~1質量%である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に添加される粒子の含有量は、0.005~0.8質量%が好ましく例示され、高さ50nm以上の突起個数および高さ100nm以上の突起個数を制御する場合は、平均一次粒子径が0.1~0.2μmの球形の粒子の含有量は0.0~0.2質量%、好ましくは0.05~0.15質量%の範囲内とすることが重要である。0.2μmを越えて0.3μm以下の粒子を含有する場合の含有量は0.005~0.05質量%、好ましくは0.01~0.03質量%である。平均一次粒子径が0.1~0.2μmの球形の粒子を、0.2質量%を越えて含有すると、本発明の高さ50nmのおよび高さ100nm以上の突起個数を本発明の範囲内に制御することが困難となる場合があり、磁性体用磁気記録媒体(例えばLTO9,LTO10)として用いたときにエラー欠点が発生する場合があり好ましくない。
本発明のB面の高さ50nm以上の突起個数および高さ100nm以上の突起個数の制御として、上述に記載の通り、平均粒径の異なる粒子を2種類以上併用することが好ましくで、さらに走行性とスリット性の改善のためにアルミナ粒子を併用する態様が例示される。粒子の添加量を低下させれば本発明の各高さの突起個数は低下するがその反面、走行性やスリット性が悪化する。別の態様として、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層表面に高さ1nm以上10nm未満の突起個数を100万個/mm以上形成することによって、平均粒径の異なる粒子を2種類以上併用することなく本発明の表面平滑性と走行性やスリット性の両立が可能となる。
この場合、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に好ましく含有される上述に記載の粒子の平均粒子径は0.1~0.3μmが好ましく、さらに好ましくは0.2~0.3μmであり、添加量は0.01~0.16質量%、好ましくは0.02~0.13質量%である。粒子の添加量が多すぎると本発明の高さ1nm以上10nm未満の突起個数を100万個/mm以上形成することが困難となる場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層表面に高さ1nm以上10nm未満の突起個数を100万個/mm以上形成させる方法は特に限定されないが、未延伸シートに大気圧グロー放電によるプラズマ処理を行った後に二軸延伸することが好ましく例示される。ここでいう大気圧とは700Torr~780Torrの範囲である。
大気圧グロー放電処理は、相対する電極とアースロール間に処理対象のフィルムを導き、装置中にプラズマ励起させ電極間においてグロー放電を行うものである。一般的に大気圧グロー放電によるプラズマ処理によって熱可塑性樹脂フィルムの表面を処理する場合、グロー放電によって生じるプラズマのエネルギーによって、フィルム表面の分子鎖の切断や、生じる低分子量体が気化し、フィルム表面が削られる現象(以降、分解除去と称する)が起こる。これによりフィルム表面に微細な突起が形成される。 プラズマ励起性気体とは前記のような条件においてプラズマ励起されうる気体をいう。プラズマ励起性気体としては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガス、窒素、二酸化炭素、酸素、またはテトラフルオロメタンのようなフロン類およびそれらの混合物などが挙げられる。また、プラズマ励起性気体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の混合比で組み合わせてもよい。プラズマによって励起された場合に活性が高くなる観点から、窒素、酸素、二酸化炭素のうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、窒素を含むことがより好ましい。活性の高いプラズマ励起性気体を用いることで、フィルム表面の分解除去が促進し形成する突起の高さや突起個数が増大する傾向にある。
プラズマ処理における高周波電圧の周波数は1kHz~100kHzの範囲が好ましい。また、以下方法で求められる放電処理強度(E値)は、10~2000W・min/mの範囲で処理することが突起形成の観点から好ましく、より好ましくは40~500W・min/mである。放電処理強度(E値)が低すぎると、突起が十分に形成されない場合があり、放電処理強度(E値)が高すぎると、熱可塑性樹脂フィルムにダメージを与えてしまう、または、分解除去が進行し、好ましい突起が形成されない場合がある。
<放電処理強度(E値)の求め方>
E=Vp×Ip/(S×Wt)
E:E値(W・min/m
Vp:印加電圧(V)
Ip:印加電流(A)
S:処理速度(m/min)
Wt:処理幅(m)
一般的に、大気圧グロー放電によるプラズマ処理によって熱可塑性樹脂フィルム、とくにPETやPENのように非晶部と結晶部を持つフィルムの表面を分解除去する場合、柔らかい非晶部から分解除去されていく。結晶部と非晶部を細分化させることで、大気圧グロー放電処理することでより微細な突起を形成することができ、また、結晶部を増やしておくことで柔らかい非晶部が深く削れることで突起高さを高くすることが可能となる。
このため、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの前記表面を有する層の固有粘度(IV)は、0.50dl/g以上であることが好ましく、また0.85dl/g以下であることが好ましい。IVは、分子鎖の長さを反映した数字であり、分子鎖が本発明の範囲であると、同一分子鎖の中で結晶部と非晶部を明確に形成しやすいため、大気圧グロー放電によるプラズマ処理することでより微細な突起を形成することが容易となるため好ましい。また、IVが0.50dl/g未満の場合、分子鎖が短いことで結晶化が進行しやすくなるため、延伸工程で破断が頻発し製膜が困難になる場合がある。また、IVが0.85dl/gを超える場合は押出不安定になる場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層の積層厚み(t)は、2.0μm以下が好ましく、さらに好ましくは1.5μm以下である。積層厚みが2.0μmを超えるとになると高さ50nmおよび100nm以上の突起個数を本発明の範囲内に制御することが困難となる場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを製造するに際しては、熱固定温度を190~235℃の範囲内で2段階以上に分けて段階高温熱固定を実施することが重要である。突起高さや表面粗さは、熱固定温度が高温になるほど高く大きくなる傾向があるが、段階高温熱固定を採用することによって、高温熱固定による突起高さと表面粗さの増加を抑制することが可能となる。さらに、熱固定温度を高く設定すると、配向緩和を起こしやすくなるため、本発明の幅方向の湿度膨張係数を制御できなくなる場合があるが、段階高温熱固定を採用することによって、特に幅方向の配向緩和が緩やかとなり本発明の温湿度膨張係数を好ましい範囲内に制御することが可能となる。また、本発明の高さ1nm以上10nm未満の突起個数を100万個/mm以上形成するためには、熱固定温度は210℃以上、好ましくは220~235℃の範囲内で2段階以上に分けて段階高温熱固定を実施することが重要である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは3.5~4.6μmの範囲が好ましい。厚みが3.5μmより小さくなると、剛性や寸法安定性が悪化しテープの腰が不十分となり磁気記録媒体としたときに電磁変換特性が悪化する傾向がある。また、B層内の含有粒子による平滑面(A面)側への突き上げを抑制しにくくなる。また、4.6μmより大きいと、テープ1巻あたりのテープ長さが短くなるため、磁気テープの小型化、高容量に対応し難い。厚みの調整方法としては、二軸配向ポリエステルフィルムの製膜の際のポリマーの溶融押出時におけるスクリューの吐出量を調整し、口金から未延伸フィルムの厚みを制御することによって二軸延伸後のフィルム厚みを調節することが可能となる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いる場合は、上記した最外層表面(B面)側にバックコート層(以下BC層という)を設けることが高密度磁気記録媒体を得る上で好ましい。磁性層に強磁性六方晶フェライト粉末を用いてなる磁気記録媒体はベースフィルムのみならず磁性層および非磁性下層やBC層自体の厚みも薄膜化の傾向にある。特に、BC層の厚みが0.4μm以下と薄膜化するとBC層表面が支持体に起因する突起の影響を受け易くなり、BC層表面の平滑性が低下する。B層表面の特定の高さの突起個数を本発明の範囲に規定することによって、より薄膜化したBC層であってもその表面の平滑性を損なうことなくミッシングパルスをはじめとする微小なエラー欠点の発生頻度の少ない優れた電磁変換特性を発揮できる。
上記したような本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、たとえば次のように製造されるが、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、かかる記載方法により得られるフィルムに限定されるものではない。
まず、ポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。
本発明の特徴を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
続いて、上記シートを長手方向と幅方向を二軸に延伸した後、再度横方向に延伸し熱処理する。表面の突起個数を本発明の好ましい範囲に制御したり、また、幅方向の寸法安定性を本発明の好ましい範囲に制御したりするために、延伸工程は縦横方向の多段延伸および幅方向に再延伸すること、さらに多段階の熱固定処理を施すことが好ましい。幅方向の再延伸により高寸法安定性の磁気テープとして最適な高強度のフィルムが得られ易いために好ましい。しかしながら、幅方向に再延伸すると、粒子周りのボイドが大きくなり、突起高さが高くなる傾向にあるため本発明の高さ50nmおよび高さ100nmの突起個数が制御され難い傾向にある。本発明の好ましい表面特性を得るためには、後述する幅方向の延伸温度と延伸倍率、さらに多段階の熱固定温度を採用すると寸法安定性との両立が図れるため好ましい。
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に2段階で延伸を行うなどの逐次二軸延伸法や同時二軸延伸した後にさらに幅方向に延伸する延伸方法が好ましい。
本発明のB面の高さ1nm以上10nm未満の突起個数を100万個/mm以上形成する場合は
上記シートを延伸する前に大気圧グロー放電プラズマ処理を施し二軸延伸することが好ましい。延伸方法は上述の逐次二軸延伸や同時二軸延伸が適用でき、必要に応じて再延伸も可能である。
以下、本発明のフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)をポリエステルとして用いた例を代表例として説明する。なお本発明はPETフィルムに限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレートなどを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
まず、PETのペレットを製造する。PETは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のPETまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。
フィルムを構成するPETに粒子を含有させるには、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。粒子を添加する際には、例えば、粒子の合成時に得られる水スラリーやアルコールスラリーの粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。ここで高さ100nm以上の突起個数を本発明の範囲内に制御するためには、粒子のスラリー濃度を5質量%以下にすることが重要である。添加する粒子が無機粒子の場合は、特定濃度に調整した粒子含有スラリーに平均粒径0.5~0.05mmのガラスビーズを加え1,000~5,000rpmで1~5時間攪拌することも非常に効果的である。
次に、粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、粒子含有量が0.1~0.5質量%となるようにPETに練り込み粒子マスターペレットを作成することが特に重要である。粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で作成した特定濃度の粒子マスターペレットを製膜時に粒子を実質的に含有しないPETで希釈して粒子の含有量を調節する方法が好ましい。また、高温熱固定によるフィルム破れの低減にも繋がるため特に重要である。さらに、2種類以上の粒子マスターペレットを用いる場合に、予め所定の所望の含有量になるように配合した後、再度、溶融混練した2段混練粒子マスターを用いて粒子の分散性を向上させると段階高温延伸を行う際のフィルム破れが低減するため好ましく例示される。
次に、得られたPETのペレットを、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270~320℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなる高精度フィルターを用いることが好ましい。また、定量供給性を向上させ、所望の積層厚みを得るためにギアポンプを設けることは上記した特徴面を形成する上で極めて好ましい。フィルムを積層するには、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層するとよい。
次に、このようにして得られた未延伸フィルムを、数本のロールを配置した縦延伸機を用いてロールの周速差を利用して縦方向に延伸し(MD延伸)、続いてステンターにより横延伸を行い(TD延伸1)、再度幅方向に延伸(TD延伸2)する方法について説明する。
なお、本発明において、MDとは二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向(縦方向)を示し、TDとは二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向(横方向)を示す。
まず、未延伸フィルムをMD方向に延伸する。延伸温度は、用いるポリマーの種類によって異なるが、未延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)を目安として決めることができる。Tg+3~Tg+30℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg+5℃~Tg+20℃である。上記範囲より延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下し、二軸延伸後に再度幅方向に延伸する際に安定して延伸することが困難となることがある。MD延伸倍率は合計の延伸倍率が3.1~6.0倍、好ましくは3.2~5.5倍の範囲内で2段階以上に分けて、好ましくは3段階に分けて多段延伸する。好ましく例示されるMD多段延伸としては、最初のMD延伸1を1.05~1.5倍、2段目のMD延伸2を1.3~2.5倍、3段目のMD延伸3を1.02~1.8倍の範囲内で行うことが幅方向に再延伸した際の突起高さの増加を抑制し易くなり好ましい。
次に、ステンターを用いて、TD延伸を行う。TD延伸1の延伸温度はTg+10~Tg+20℃、延伸倍率は3.1~6.0倍、好ましくは3.3~5.5倍である。
次に、再度TD方向に延伸(TD延伸2)を行う。TD延伸2の延伸温度は180~220℃、好ましくは190~210℃である。TD延伸2の延伸倍率は好ましくは1.2~1.7倍であり、より好ましくは1.3~1.6倍である。TD延伸2の延伸倍率や延伸温度が本発明の範囲外であると温湿度膨張係数を本発明の範囲内に制御できなくなる場合がある。面積倍率は12~30倍、好ましくは14~25倍である。面積倍率が本発明の範囲外であると温湿度膨張係数の両立が困難となる場合がある。面積倍率が30倍を超えると温湿度膨張係数を本発明の範囲内に制御できなくなる場合や、高さ50nmおよび高さ100nm以上の突起個数が多くなりすぎる場合がある。面積倍率が12倍を下回ると、本発明の温湿度膨張係数を得ることが困難となる傾向にある。
次にこの二軸延伸フィルムを幅方向に弛緩しながら熱固定処理する。熱固定処理条件として、熱固定温度は、190~235℃が好ましく、さらに好ましくは200~230℃である。熱固定温度は2段階以上に分けて段階高温熱固定を施すことが本発明の温湿度膨張係数の両立と高さ50nmおよび高さ100nm以上の突起個数制御、表面粗さ、およびフィルム破れの観点より好ましい。段階高温熱固定の条件は、1段目熱固定温度(HS1)は(TD延伸2の延伸温度+3℃)~(TD延伸2の延伸温度+20℃)が好ましく例示される。2段目熱固定温度(HS2)は、(HS1+5℃)~(HS1+15℃)の範囲が好ましい。3段目熱固定温度(HS3)は、(HS2)~(HS2+10℃)の範囲が好ましく、さらに好ましくは、(HS2+2℃)~(HS2+10℃)である。本発明の温湿度膨張係数を得るためには、2段目の熱固定温度を215℃以上、好ましくは220~235℃に設定すると制御しやすくなり好ましい。
熱固定処理時間は0.5~10秒の範囲、弛緩率は幅方向に0.8~2.0%で行うのが好ましい。
次に130~180℃に調整された冷却ゾーンに導き徐冷した後、フィルムエッジ部を裁断してロールに巻き取り、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
TD延伸2の延伸温度と1段目熱固定温度に差があり、熱固定温度が上述の範囲よりも高いとフィルムが緩和しやすくなり、本発明の湿度膨張係数を得ることが困難となり寸法安定性が低下しやすい。さらに、表面平滑性が低下し本発明の表面粗さを得ることが困難となる場合がある。一方で熱固定温度が低すぎると幅方向の寸法安定性を本発明の範囲内に制御できない場合や結晶性が低くなりやすく、磁気記録媒体の製造工程においてベースフィルムの平面性が低下しミッシングパルスやエラー欠点の発生頻度が増加する傾向がある。
次に、磁気記録媒体は例えば次のように製造される。
上記のようにして得られた磁気記録媒体用支持体(二軸配向ポリエステルフィルム)を、たとえば0.1~3m幅にスリットし、速度20~300m/min、張力50~300N/mで搬送しながら、一方の面に非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより厚み0.5~1.5μm塗布し乾燥後、さらに磁性塗料を厚み0.1~0.3μmで塗布する。その後、磁性塗料および非磁性塗料が塗布された支持体を磁気配向させ、温度80~130℃で乾燥させる。次いで、反対側の面にバックコートを厚み0.3~0.8μmで塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。なお、カレンダー処理は、小型テストカレンダー装置(金属ロール、7段)を用い、温度70~120℃、線圧0.5~5kN/cmで行う。その後、60~80℃にて24~72時間エージング処理し、12.65mm幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
ここで、磁性塗料などの組成は例えば以下のような組成が挙げられる。
以下、単に「部」と記載されている場合は、「質量部」を意味する。
[磁性層形成塗液]
バリウムフェライト磁性粉末 100部
〔板径:20.5nm、板厚:7.6nm、板状比:2.7、Hc:191kA/m(≒2400Oe)飽和磁化:44Am/kg、BET比表面積:60m/g〕
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10,000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α-アルミナ HIT60(住友化学社製) 8部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製)粒子サイズ0.015μm 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
[非磁性層形成用塗布液]
非磁性粉体 α酸化鉄 100部
平均長軸長 :0.09μm、BET法による比表面積 50m/g
平均針状比 : 7
DBP吸油量: 27~38ml/100g
表面処理層 :Al 8質量%
カーボンブラック 25部
コンダクテックスSC-U(コロンビアンカーボン社製)
塩化ビニル共重合体 MR104(日本ゼオン社製) 13部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 5部
フェニルホスホン酸 3.5部
ブチルステアレート 1.0部
磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(例えばリニアテープ式の記録媒体(LTO8、次世代LTOテープ(LTO9、LTO10))や映像などのデジタル画像の記録用途などに好適に用いることができる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが好適に用いられる塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体としては、例えば、磁性層がバリウムフェライト等の強磁性粉末をポリウレタン樹脂等のバインダーに均一に分散させて磁性塗液を作成し、その塗液を塗布して磁性層が形成された塗布型磁気記録媒体を例示することができる。
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
(1)幅方向の湿度膨張係数(ppm/%RH)
フィルムの幅方向に対して、下記条件にて測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における湿度膨張係数とした。
測定装置 :大倉インダストリ(株)製 テープ伸び量試験機 1TTM1
恒温恒湿槽 :(株)カトー製 TP計装 Version 1.04
試料サイズ :幅 10mm × 長さ 200mm(サンプル長)
荷重 :10g
測定回数 :3回
温度 :30℃
湿度条件 :<1> 40%RHで6時間保持
<2> 80%RHで6時間保持(昇湿レート:0.7%RH/min)
<3> 40%RHに降湿(降湿レート:1.4%RH/min)後、6時間保持
<4> 80%RHに昇湿(昇湿レート:0.7%RH/min)
測定(L40):湿度条件<3>の湿度40%RH 6時間保持後のサンプル長を計測(L40
測定(L80):湿度条件<4>の湿度40%RHから80%RHまで昇湿(昇湿レート:0.7%RH/min)させた時のサンプル長を計測(L80)。
ΔL(mm):寸法変化量ΔL(L80-L40
次式から湿度膨張係数(ppm/%RH)を算出した。
湿度膨張係数(ppm/%RH)=10×{(ΔL/(測定前のサンプル長×湿度差)}
測定前のサンプル長=200(mm)
湿度差=40(%)(40→80%RH)
湿度条件:20%RH下で1時間保持→80%RHで1時間保持したあと支持体幅方向の寸法変化量ΔL(mm)を測定する。次式から湿度膨張係数(ppm/%RH)を算出した。
湿度膨張係数(ppm/%RH)=10×{(ΔL/200)/(80-40)}。
(2)幅方向の温度膨張係数(ppm/℃)
試料サイズ :フィルム長手方向4mm×フィルム幅方向12.6mm
測定装置 :(株)リガク製 微小定荷重熱膨張計
測定モード :等速昇温測定
測定温度範囲:10℃~50℃
昇温速度 :2℃/分
測定雰囲気 :窒素中
Reference :石英ガラス
負荷荷重 :0.5g(圧縮荷重)
測定方向 :幅方向(TD)
計算式 :温度膨張係数={(ΔL/L0)T1-(ΔL/L0)T2}/ΔT(T1-T2)
*ΔLは膨張長さ、L0は初期試料長、ΔTは温度差。
(3)高さ50nm以上および高さ100nm以上、高さ40nm以上、高さ30nm以上、高さ1nm以上10nm未満の突起個数(個/mm
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、場所を変えて20視野測定を行った。サンプルセットは、カンチレバーの走査方向に対して垂直方向(Y軸方向)がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをセットして、以下のAFM測定条件にて測定する。得られた画像について、付属の解析ソフト(NanoScope Analysis Version 1.40)を用い解析する。得られるフィルム表面のHeight Sensor画像を下記するFlatten処理のみを施した後、Particle Analysis解析モードを下記の通り設定することで、フィルム表面の基準面が自動的に決定される。該基準面から、突起高さの閾値(Threshold Height)を50nmに定めて得られる突起個数(Mean列-Total Count行の値)求める。20視野のそれぞれの突起個数を合算し、20視野の総面積における総突起個数を求める。この総突起個数を1mm当たりに換算した数値を、高さ50nm以上の突起個数とする。引き続き、突起高さの閾値を100nmに設定して高さ100nm以上の突起個数を求める。同様に、突起高さの閾値を40nm、30nm、10nm、1nmに設定して各高さの突起個数を求める。1nm以上10nm未満の突起個数は、1nmの突起個数から10nmの突起個数を引いた値を1nm以上10nm未満の突起個数とした。
[AFM測定条件]
・装置:Bruker社製 原子間力顕微鏡(AFM)
Dimention Icon with ScanAsyst
・カンチレバー :窒化ケイ素製プローブ ScanAsyst Air
・走査モード :ScanAsyst
・走査速度 :0.8Hz
・走査方向 :後述する方法にて作製した測定サンプルの幅方向に走査を行う
・測定視野 :50μm四方
・サンプルライン :512
・LP Deflection BW :40 kHz
・サンプル調整 :23℃、65%RH、24時間静置
・AFM測定環境 :23℃、65%RH
・サンプル測定回数 :各サンプル同士が少なくとも5μm以上離れるように場所を変え、20回測定を行う。
[Flatten処理条件]
・Flatten Order :3rd
・Flatten Z Threshholding Direction
:No theresholding
・Find Threshold for :the whole image
・Flatten Z Threshold % :0.00 %
・Mark Excluded Data :Yes
[Particle Analysisモード設定条件]
(Detectタブ)
・Threshold Height :1nm、10nm,30nm,40nm、50nm、100nm
・Feature Direction :Above
・X Axis :Absolute
・Number Histogram Bins :512
・Histogram Filter Cutoff :0.00 nm
・Min Peak to Peak :1.00 nm
・Left Peak Cutoff :0.00000%
・Right Peak Cutoff :0.00000%
(Modifyタブ)
・Beughbirhood Size :3
・Number Pixels Off :1
・一切のDilate/Erode操作を行わない。
(Selectタブ)
・Image Cursor Mode:Particle Select
・Bound Particles :Yes
・Non-Representative Particles :Yes
・Height Reference :Relative To Threshold
・Number Histogram Bins :50
・前記数値を求めるに際し、解析画像中の特定のピーク、エリアを選択しない。
・Diameter、Height、Area全てのヒストグラムで特定の場所を選択しない。
(4)ヤング率
ASTM-D882(1997年)に準拠してフィルムのヤング率を測定した。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとした。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とした。
測定装置:インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848
試料サイズ:
フィルム幅方向のヤング率測定の場合
フィルム長手方向2mm×フィルム幅方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム幅方向に8mm)
フィルム長手方向のヤング率測定の場合
フィルム幅方向2mm×フィルム長手方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム長手方向に8mm)
引張り速度:1mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定回数:5回。
(5)表面平均粗さ(SaA)、(SaB)
フィルムの両面について、前記(3)に記載の装置を用いて、同条件にて場所を変えて20視野の測定を実施し、変換処理を施した後、付帯の解析ソフトにおいて各視野の表面平均粗さ(Sa)を求めた。各面について20視野の平均値を求め、表面平均粗さが小さい側の表面粗さをSaA(かかる表面をA面)、表面平均粗さが大きい側の表面粗さをSaB(かかる表面をB面)とした。
(6)積層厚み(μm)
以下の条件にて断面観察を場所を変えて10視野行い、得られた厚み(μm)の平均値を算出しA層の厚み(μm)とした。
測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM) 日立製H-7100FA型
測定条件:加速電圧 100kV
測定倍率:1万倍
試料調整:超薄膜切片法
観察面 :TD-ZD断面(TD:幅方向、ZD:厚み方向)
測定回数:1視野につき3点、10視野を測定する。
(7)粒子の数平均粒子径および凝集粒子の平均1次粒子径
フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1万倍で観察する。この時、写真上で1cm以下の粒子が確認できた場合はTEM観察倍率を5万倍に変えて観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて100視野測定し、写真に撮影された分散した粒子全てについて等価円相当径をもとめ、横軸に等価円相当径を、縦軸に粒子の個数として粒子の個数分布をプロットし、そのピーク値の等価円相当径を粒子の平均粒径とした。ここで、1万倍で観察した写真上に凝集粒子が確認できた場合は上記プロットに含めない。フィルム中に粒子径の異なる2種類以上の粒子が存在する場合、上記等価円相当径の個数分布は2個以上のピークを有する分布となる。この場合は、それぞれのピーク値をそれぞれの粒子の平均粒径とする。
凝集粒子の平均1次粒子径は、上記の装置を用いて20万倍で観察する。凝集粒子100個について、凝集粒子を構成する個々の1次粒子の等価円相当径をもとめ、上記と同様の方法でプロットし、ピーク値の等価円相当径を凝集粒子の平均1次粒子径とする。
(8)ミッシングパルス発生頻度
1m幅にスリットしたフィルムを、張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面に下記に従って磁性塗料および非磁性塗料を塗布し12.65mm幅にスリットし、パンケーキを作成する。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、磁気テープとした。
(以下、「部」とあるのは「質量部」を意味する。)
磁性層形成用塗布液
バリウムフェライト磁性粉末 100部
(板径:20.5nm、板厚:7.6nm、
板状比:2.7、Hc:191kA/m(≒2400Oe)
飽和磁化:44Am/kg、BET比表面積:60m/g)
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10,000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α-アルミナ HIT60(住友化学社製) 8部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製)
粒子サイズ0.015μm 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
非磁性層形成用塗布液
非磁性粉体 α酸化鉄 85部
平均長軸長 : 0.09μm、BET法による比表面積 50m/g
平均針状比 : 7
DBP吸油量: 27~38ml/100g
表面処理層 : Al 8質量%
カーボンブラック 15部
“コンダクテックス”(登録商標)SC-U(コロンビアンカーボン社製)
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 22部
フェニルホスホン酸 3部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
上記の塗布液のそれぞれについて、各成分をニ-ダで混練した。0.5mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルに、塗布液をポンプで通液し、2,000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)、分散させた。得られた分散液にポリイソシアネ-トを非磁性層の塗料には5.0部、磁性層の塗料には2.5部を加え、さらにメチルエチルケトン3部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
得られた非磁性層形成用塗布液を、PETフィルム上に乾燥後の厚さが0.8μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層形成用塗布液を乾燥後の磁性層の厚さが0.07μmになるように塗布を行い、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに6,000G(600mT)の磁力を持つコバルト磁石と6,000G(600mT)の磁力を持つソレノイドにより配向させ乾燥させた。その後、カレンダ後の厚みが0.35μmとなるようにバックコート層(カーボンブラック 平均粒子サイズ:17nm 100部、炭酸カルシウム平均粒子サイズ:40nm 80部、αアルミナ 平均粒子サイズ:200nm 5部をポリウレタン樹脂、ポリイソシアネートに分散)を塗布した。次いでカレンダで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)にてカレンダ処理を行った後、65℃で、72時間キュアリングした。さらに、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性面に押し当たるように取り付け、テープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行い、磁気テープを得た。
上記により得られた磁気テープカートリッジ(磁気テープ全長500m)をIBM社製LTO-7ドライブにセットし、磁気テープを張力0.55N、走行速度8m/秒で1,500往復走行させた。
上記走行後の磁気テープカートリッジをリファレンスドライブ(IBM社製LTO7ドライブ)にセットし、磁気テープを走行させて記録再生を行った。走行中の再生信号を外部AD(Analog/Digital)変換装置に取り込み、再生信号振幅が平均(全トラックでの測定値の平均)に対して80%以上低下した信号をミッシングパルスとして、その発生頻度を磁気テープ全長で除して、磁気テープの単位長さ当たりのミッシングパルス発生頻度(単位:回/m)として求めた。ミッシングパルス発生頻度が2.5回/m以下のテープを信頼性の高い磁気テープとし、ミッシングパルス発生頻度が2.5回/mを超えて発生するテープを不良とし、以下の基準で判断した。
AA:ミッシングパルス発生頻度が1.5回/m未満
A:ミッシングパルス発生頻度が1.5回/m以上、2.0回/m未満
B:ミッシングパルス発生頻度が2.0回/m以上、2.5回/m未満
C:ミッシングパルス発生頻度が2.5回/m以上。
(9)SNR(Signal-to-noise ratio)
上記(8)にて作製した磁気テープを下記条件で磁気信号をテープ長手方向に記録し、30℃、60%RH雰囲気下に7日間放置した後、磁気抵抗効果型(MR;Magnetoresistive)ヘッドで再生した。再生信号を シバソク製スペクトラムアナライザーで周波数分析し、300kfciの出力と、0~6 00kfci範囲で積分したノイズとの比をSNRとし、磁気テープの電磁変換特性をSNRで評価した。
記録再生条件
記録:記録トラック幅5μm
記録ギャップ0.17μm
ヘッド飽和磁束密度Bs1.8T
再生:再生トラック幅0.4μm
シールド間距離(sh-sh距離)0.08μm
記録波長:300kfci
判断基準
5: ノイズがほぼなく、シグナルが良好でエラーも見られず、実用上問題なし。
4: ノイズが小さく、シグナルが良好で、実用上問題なし。
3: ノイズが見られるが、シグナルが良好なため、実用上問題なし。
2: ノイズが大きく、シグナルが不明瞭で、実用上問題あり。
1: ノイズとシグナルの区別ができないか記録できておらず、実用上問題あり。
(10)スリット性
フィルムを幅1mにスリットする際、スリット速度を変更しフィルム端部の切れ味を目視にて以下に示す方法により評価した。なお、Cをスリット性不良と判断した。
A:速度50m/分以上で端部が歪になることなくスリット可能。
B:速度30m/分以上50m/分未満で端部が歪になることなくスリット可能。
C:速度30m/分未満でフィルム表面にシワが発生し端部が歪になる。
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、ここでポリエチレンテレフタレートをPET、ポリエチレンナフタレートをPEN、ポリエーテルイミドをPEIと表記する。
(1)PETペレットの作製:テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140~230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を0.5質量部(リン酸トリメチルとして0.025質量部)とリン酸二水素ナトリウム2水和物の5質量%エチレングリコール溶液を0.3質量部(リン酸二水素ナトリウム2水和物として0.015質量部)添加した。
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
移行後、反応系を230℃から275℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た(原料-1)。
(2-a)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を1質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2a)を得た。
(2-b)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子の5質量%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2b)を得た。
(2-c)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.15μmの架橋ポリスチレン粒子の5質量%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2c)を得た。
(2-d)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を94質量部と平均粒径0.060μmのコロイダルシリカ粒子の5質量%水スラリーに平均粒径0.05mmのガラスビーズを加え1,000rpmで2時間攪拌した後ろ過しガラスビーズを除去した水スラリーを6質量部(コロイダルシリカ粒子として0.3質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を0.3質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2d)を得た。
(2-e)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.20μmのコロイダルシリカ粒子の5質量%水スラリーに平均粒径0.05mmのガラスビーズを加え3,000rpmで2時間攪拌した後ろ過しガラスビーズを除去した水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2e)を得た。
(2-f)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と1次平均粒径0.02μmのアルミナ粒子の10質量%水スラリーに平均粒径0.5mmのジルコニアビーズを加え3,000rpmで2時間攪拌した後ろ過しジルコニアビーズを除去した水スラリーを10質量部(アルミナ粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、アルミナ粒子を1質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2f)を得た。
(3)2成分組成物(PET/PEI)ペレットの作製:温度280℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、上記方法で得られたPETペレット(原料-1)とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem”(登録商標)1010のペレットを供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、PEIを50質量%含有した2成分組成物ペレットを得た。なお、作製した2成分組成物ペレットのガラス転移温度は150℃であった(原料-3)。
(実施例1)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、PETペレット(原料-1)を29質量部、2成分組成物ペレット(原料-3)4質量部、平均粒径0.06μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2d)67質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、PETペレット(原料-1)52質量部、2成分組成物ペレット(原料-3)4質量部、平均粒径0.20μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2e)40質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料-2b)4質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=8|1とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
この積層未延伸フィルムを表2に示す条件にて延伸、熱固定を実施し、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表4に示すように、磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
以下、表に各実施例、比較例の原料組成、製膜条件、二軸配向ポリエステルフィルムの物性、磁気テープの特性等を示す。
(実施例2~4)
表に示す粒子処方となるように、B層原料および延伸条件を変更して厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表に示すように、磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例5)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、PETペレット(原料-1)を29質量部、2成分組成物ペレット(原料-3)4質量部、平均粒径0.06μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2d)67質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、PETペレット(原料-1)92質量部、2成分組成物ペレット(原料-3)4質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料-2b)4質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=8|1とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
この積層未延伸フィルムを相対する電極とアースロール間に導き、装置中に窒素ガスを導入し、E値が300W・min/mとなる条件で大気圧グロー放電プラズマ処理をB層側に行った。
表2に示す条件にて延伸、熱固定を実施し、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ4.3μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表4に示すように、磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(実施例6)
表に示す粒子処方となるように、B層原料を変更した以外は実施例5と同様にして厚さ4.3μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表に示すように、磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
(比較例1~4)
表に示す粒子処方となるように、B層原料を変更し、実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例5)
表に示す粒子処方となるように、AおよびB層原料を変更し、2段目の幅延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
Figure 2022053506000005
Figure 2022053506000006
Figure 2022053506000007
Figure 2022053506000008

Claims (8)

  1. 二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最外層表面(B面)において、高さ50nm以上の突起個数が5.0万個/mm以下、高さ100nm以上の突起個数が1.5万個/mm以下であり、該層の表面平均粗さSaBがもう片方の最外層表面(A面)の表面平均粗さSaAよりも大きい二軸配向ポリエステルフィルム。
  2. 請求項1に記載の特徴を有する最外層表面(B面)において、高さ40nm以上の突起個数が7.0万個/mm以下である、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  3. 請求項1に記載の特徴を有する最外層表面(B面)において、高さ30nm以上の突起個数が0.5万~10.0万個/mm以下である、請求項1および2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  4. 請求項1に記載の特徴を有する最外層表面(B面)において、高さ30nm以上の突起個数が1.5万~10.0万個/mm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  5. 請求項1に記載の特徴を有する最外層表面(B面)において、高さ1nm以上10nm未満の突起個数が100万個/mm以上である請求項1~4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  6. 幅方向の湿度膨張係数が4.5~6.5ppm/%RHである、請求項1~5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  7. 幅方向の温度膨張係数が-3.0~4.0ppm/℃以下である、請求項1~6のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  8. 塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体用ベースフィルムに用いられる、請求項1~7のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
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