以下、各実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一又は相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
この実施の形態に係る自動分析装置(以下、単に「分析装置」と称する)は、分注ノズルにより検体および試薬の各々を反応容器に分注し、反応容器内の反応状態を光学的に測定するように構成される。以下、分注ノズル、検体を、それぞれ「プローブ」、「サンプル」と称する。サンプルとしては、たとえば血液成分および尿を採用できる。この実施の形態では、分析装置の反応容器として、たとえばディスポーザブルキュベット(たとえば、後述する図3に示すキュベット100)を採用する。以下、図1~図5を参照して、分析装置の概要について説明する。なお、自動分析装置は、例えば(汎用)臨床化学分析装置、電解質分析装置、血液ガス分析装置、免疫血清検査装置、血液検査装置、血球計数装置、血液凝固分析装置、尿検査装置などであり、検体などの容器を搬送する機構を有している装置である。
図1は、実施の形態1における分析装置1000の制御システムを示す図である。分析装置1000は、制御装置500、入力装置610、出力装置620、サンプルラック800、試薬保冷庫700、キュベット供給装置110、サンプル分注装置20、キュベット移送装置120、試薬分注装置10、攪拌装置200、および測定装置300を備える。
制御装置500は、入力装置610、出力装置620、サンプルラック800、試薬保冷庫700、キュベット供給装置110、サンプル分注装置20、キュベット移送装置120、試薬分注装置10、攪拌装置200、および測定装置300を制御する。
制御装置500は、CPU(Central Processing Unit)510と、RAM(Random Access Memory)520と、記憶装置530とを備える。CPU510は、記憶装置530に格納されているシステムプログラム531とアプリケーションプログラム532とをRAM520に展開して実行する。システムプログラム531は、分析装置1000のシステムを管理するためのプログラムであり、アプリケーションプログラム532は、システムプログラム531の制御下で実行され、自動分析を行うためのプログラムである。アプリケーションプログラム532には、CPU510により実行される各種処理の手順が記されている。
記憶装置530には、システムプログラム531およびアプリケーションプログラム532のほか、各種処理に用いられる各種データ(たとえば、試薬情報、サンプル情報、分析スケジュール、分析履歴、パラメータ等)が格納されている。試薬情報は、試薬保冷庫700で保管されている試薬の情報である。サンプル情報は、サンプルラック800で保管されているサンプルの情報である。分析スケジュールは、分析が行われる順番である。分析装置1000は、予約された全てのサンプルの分析を効率良く行うために、各サンプルの分析項目および後述の各ポートの空き状況に基づいて分析スケジュールを決定する。これにより、分析装置1000は、複数のサンプルを並行して分析することができる。分析履歴は、分析の進行状況および測定結果を含む情報であり、分析の進行に応じて逐次更新される。パラメータは、分析装置1000の各種設定事項である。制御装置500は、これらのプログラムおよび各種データに従って、分析装置1000における各種処理を実行する。なお、処理については、ソフトウェアによるものに限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
入力装置610は、ユーザによる操作を受け付ける受付部として機能する。入力装置610は、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル等である。入力装置610は、ユーザによる操作を受け付けた場合には、その操作に対応する信号を制御装置500へ出力する。出力装置620は、アプリケーションプログラム532により提供される画面を表示する表示部として機能する。出力装置620は、たとえば、モニタ、タッチパネルディスプレイ等である。出力装置620は、制御装置500から要求があった場合には、その要求に従って所定の表示を行う。入力装置610と出力装置620とは、別体でもよいし、一体でもよい。入力装置610と出力装置620とが一体となったものとしては、たとえば、タッチパネルディスプレイ等がある。
サンプルラック800は、分析対象のサンプルが入ったサンプル容器を収容する。サンプル容器にはサンプル容器内のサンプルを特定可能な識別子(たとえば、バーコード、QRコード(登録商標)、データマトリックス等)が付されている。サンプル容器に付された識別子には、サンプル容器内のサンプルに関する情報(たとえば、患者情報、サンプルのID、分析項目等)が埋め込まれている。
試薬保冷庫700は、分析に使用される試薬が入った試薬容器を収容および保冷する。試薬容器には試薬容器内の試薬を特定可能な識別子(たとえば、バーコード、QRコード、データマトリックス等)が付されている。試薬容器に付された識別子には、試薬容器および試薬容器内の試薬に関する情報(たとえば、試薬の種類(分析項目)、試薬が1試薬系か2試薬系かを示す情報、試薬のロット番号、試薬の使用期限、試薬のシリアル番号、試薬容器の形状、試薬容器の容量、分析可能回数等)が埋め込まれている。
キュベット供給装置110は、サンプル分注装置20がサンプルを分注可能な位置(サンプル分注ポート)に空のキュベットを供給する。サンプル分注装置20は、キュベットにサンプルを分注する。キュベット移送装置120は、サンプルが分注されたキュベットを移送する。試薬分注装置10は、サンプルが分注されたキュベットに試薬を分注する。攪拌装置200は、所定の条件(たとえば、攪拌速度および攪拌時間)でキュベットの内容物を攪拌する。測定装置300は、キュベットの内容物に所定の測定を行う。この実施の形態では、測定装置300は、光源および光検出器を有し、キュベットの内容物に光源の光を照射し、光検出器で検出される光量の変化に基づいてキュベット内の反応状態を測定する。
図2は、実施の形態1における分析装置1000において、キュベットの移送および廃棄、並びにキュベットの内容物の攪拌および測定を行う構成を示す図である。
分析装置1000は、サンプル分注ポートP1を備える。キュベット供給装置110は、キュベット収容部111と、供給機構112とを含む。キュベット収容部111は、多数のキュベット(たとえば最大で1000個)を収容することができる。供給機構112は、キュベット収容部111に収容されているキュベットをサンプル分注ポートP1へ供給する。キュベット収容部111および供給機構112の詳細については、図3にて説明する。
サンプル分注ポートP1は、サンプル分注装置20(図1)がキュベットにサンプルを分注可能な位置に配置される。サンプル分注ポートP1にキュベットがセットされると、サンプル分注装置20によってキュベットにサンプルが分注される。
キュベット移送装置120は、チャック付きアーム121(以下、単に「アーム121」と称する)と、駆動装置122とを含む。アーム121は、キュベットを把持可能に構成されたチャックを有する。アーム121は、チャックによってキュベットを着脱可能に保持するように構成されている。駆動装置122は、アーム121を作動させてチャックの位置を変える。アーム121および駆動装置122の詳細についても、図3にて説明する。
分析装置1000は、キュベット移送装置120によりキュベットを移送可能な複数のポート、具体的には、攪拌ポートP2、測光ポートP3、および廃棄ポートP4をさらに備える。測光ポートP3は、複数の散乱ポートP3aと、複数の比色ポートP3bとを含む。サンプル分注ポートP1、攪拌ポートP2、測光ポートP3、および廃棄ポートP4の各々には、キュベットの有無を検出するポートセンサが設けられている。
攪拌ポートP2は、攪拌装置200の攪拌位置に配置される。攪拌装置200は、攪拌ポートP2にキュベットがセットされると、所定の条件(たとえば、攪拌速度および攪拌時間)でキュベットの内容物を攪拌する。
散乱ポートP3aおよび比色ポートP3bの各々は、測定装置300の測定位置に配置されている。以下では、区別して説明する場合を除いて、散乱ポートP3aおよび比色ポートP3bの各々を「測光ポートP3」と記載する。
測定装置300は、キュベットの内容物に所定の測定を行うように構成される。この実施の形態では、測定装置300が、光源および光検出器を有し、いずれかの測光ポートP3にセットされたキュベットの内容物に光源の光を照射し、光検出器で検出される光量の変化に基づいてキュベット内の反応状態を測定する。測定装置300は、散乱ポートP3aに対する光源および光検出器と、比色ポートP3bに対する光源および光検出器とを含む。散乱ポートP3aに対する光源、光検出器としては、それぞれ発光ダイオード、フォトダイオードを採用できる。散乱ポートP3aに対する光検出器は、90°散乱光(すなわち、光の照射方向に直交する方向の散乱光)を検出する。比色ポートP3bに対する光源、光検出器としては、それぞれハロゲンランプ、フォトダイオードを採用できる。比色ポートP3bに対する光検出器は、透過光量を検出する。
廃棄ポートP4は、使用済みのキュベットを回収する。廃棄ポートP4は、配管を介してキュベット廃棄容器400につながっている。廃棄ポートP4にキュベットが投入されると、キュベットはキュベット廃棄容器400へ導かれる。
図3は、実施の形態1における分析装置1000が備える分析テーブルの平面図である。図3中には、互いに直交する3つの軸(X軸、Y軸、およびZ軸)が示されている。X軸、Y軸、およびZ軸のうち、X軸は分析装置の幅方向を、Y軸は分析装置の奥行き方向を、Z軸は鉛直方向(すなわち、上下方向)を示している。Z軸の矢印が指し示す方向は「上」、その反対の方向は「下(すなわち、重力方向)」に相当する。
図2および図3を参照して、キュベット収容部111は、複数のキュベット100を収容している。ユーザは、キュベット収容部111の投入口からキュベット収容部111内へキュベット100を補給することができる。キュベット100は、光を透過可能であれば材質は任意であり、たとえば透明のアクリル製のものを採用することができる。
供給機構112は、キュベット100をキュベット収容部111から1つずつ取り出してサンプル分注ポートP1に供給する。供給機構112におけるキュベット100の移送方式は任意であり、たとえば、滑り台方式(自重方式)、ベルトコンベア方式、ローラ方式、スライド方式のいずれであってもよい。供給機構112は、サンプル分注ポートP1のポートセンサの検出結果を受信し、サンプル分注ポートP1が空いたら次のキュベット100をサンプル分注ポートP1に供給する。但し、これに限られず、供給機構112は、制御装置500(図1)からの指示に従ってキュベット100をサンプル分注ポートP1に供給してもよい。
アーム21は、サンプル吸引ポートP21から吸引されるサンプルを、サンプル分注ポートP1にセットされたキュベット100へ分注するための機器(サンプル分注装置20(図1))である。アーム21は、第2プローブ21aと、アーム本体21bとを含む。アーム本体21bが回転軸23aの回りを旋回することによって、アーム本体21bの先端に設けられた第2プローブ21aがXY平面において円弧状の軌道L2を描くように移動する。
アーム本体21bが旋回することによって、第2プローブ21aは、軌道L2上に設けられたサンプル分注ポートP1、サンプル吸引ポートP21、SポートP22、および洗浄ポートP23の各々に移動する。SポートP22は、洗剤ポートP22a,P22bと、緩衝液ポートP22c,P22d,P22eと、欠乏血漿ポートP22f,P22g,P22h,P22iとを含む。
サンプル吸引ポートP21の下方には、可動式のサンプルラック800(図1)が設けられている。サンプルラック800には、血液成分又は尿等のサンプルが入った複数のサンプル容器が載置されている。サンプル分注ポートP1にセットされたキュベット100へのサンプルの分注に先立ち、サンプルラック800は、分注対象のサンプル容器がサンプル吸引ポートP21の直下に配置されるように作動する。CTS機構24は、サンプル吸引ポートP21の近傍に設けられる。CTS機構24は、分注対象のサンプル容器にキャップが付いている場合に、ピアサでキャップを穿孔する。
アーム11は、吸引ポートP11,P12から吸引される試薬を、測光ポートP3にセットされている対象のキュベット100へ分注するための機器(試薬分注装置10(図1))である。アーム11は、第1プローブ11aと、アーム本体11bとを含む。アーム本体11bが回転軸13aの回りを旋回することによって、アーム本体11bの先端に設けられた第1プローブ11aがXY平面において円弧状の軌道L1を描くように移動する。
吸引ポートP11,P12の下方には、複数の試薬容器A(又は複数の洗剤容器)が載置された試薬トレイ710が設けられている。試薬トレイ710は、試薬保冷庫700内に設けられている。複数の試薬容器Aは互いに異なる試薬を保有しており、複数の洗剤容器は互いに異なる洗剤を保有している。試薬トレイ710は円盤状のターンテーブルであり、ターンテーブルが駆動することにより、所望の試薬容器A(又は洗剤容器)が吸引ポートP11,P12の直下に配置される。第1プローブ11aは、吸引ポートP11,P12の直下に配置された試薬容器A(又は洗剤容器)内の試薬(又は洗浄液)を吸引する。
アーム本体11bが旋回することによって、第1プローブ11aは、軌道L1上に設けられた攪拌ポートP2、各散乱ポートP3a、各比色ポートP3b、吸引ポートP11,P12、洗浄ポートP13の各々に移動する。なお、第1プローブ11aは試薬間のコンタミネーションを回避するために2本のプローブで構成されていてもよい。また、試薬トレイ710は外周トレイと内周トレイとを有していてもよい。2本のプローブが外周トレイ上の試薬(又は洗浄液)および内周トレイ上の試薬(又は洗浄液)を吸引ポートP11,P12から吸引する。洗浄ポートP13は、使用済みの洗浄液を回収するポートであり、特に図示しないが、第1プローブ11aから吐出される水を溜めてプローブ先端の外面を洗浄する水溜め部と、液体を廃棄する廃棄部とを含む。
アーム121は、チャック121aと、アーム本体121bとを含む。チャック121aは、キュベット100を把持可能に構成される。チャック121aがキュベット100を保持する方式は任意であり、チャック121aは、メカニカルチャックであってもよいし、マグネットチャックであってもよいし、真空チャックであってもよい。アーム本体121bが回転軸122aの回りを旋回することによって、アーム本体121bの先端に設けられたチャック121aがXY平面において円弧状の軌道L1を描くように移動することができる。
上記のように、アーム11とアーム121との旋回の中心は同じである。軌道L1上には、サンプル分注ポートP1と、攪拌ポートP2と、複数の測光ポートP3(複数の散乱ポートP3aおよび複数の比色ポートP3b)と、廃棄ポートP4と、吸引ポートP11,P12と、洗浄ポートP13とが設けられている。アーム121は、サンプル分注ポートP1、攪拌ポートP2、各測光ポートP3、および廃棄ポートP4にチャック121aを移動させることができ、アーム11は、吸引ポートP11,P12、洗浄ポートP13、攪拌ポートP2、および各測光ポートP3に第1プローブ11aを移動させることができる。
図4は、図3に示したアーム11およびアーム121の構造を説明するための図である。図4中のX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ図3中のX軸、Y軸、Z軸に対応している。
図3および図4を参照して、アーム11とアーム121とは上下方向にずれて配置される。この実施の形態では、アーム11がアーム121よりも高い位置に配置される。第1プローブ11aはアーム本体11bの先端部E1に接続され、回転軸13aはアーム本体11bの基端部E2に接続されている。第1プローブ11aは、先端に開口部OPを有する。駆動装置の昇降アクチュエータがアーム11および回転軸13aを一体的に上下方向に動かすことによって、アーム11(ひいては、第1プローブ11a)が上下に変位する。たとえば、第1プローブ11aは、比色ポートP3bにセットされたキュベット100Bに試薬を分注するときに下降してキュベット100Bに近づき、試薬の分注が終了すると、上昇してキュベット100Bから離れる。
チャック121aはアーム本体121bの先端部E3に接続され、回転軸122aはアーム本体121bの基端部E4に接続されている。アーム本体121bの基端部E4は、上下方向に変位可能な態様で回転軸122aに保持されている。駆動装置の昇降アクチュエータがアーム121を上下方向に動かすことによって、アーム121(ひいては、チャック121a)が上下に変位する。たとえば、チャック121aは、散乱ポートP3aにセットされたキュベット100Aを移送するときに下降してキュベット100Aを把持し、キュベット100Aを把持したまま上昇して散乱ポートP3aから離れる。その後、アーム121が駆動装置により回転駆動されて移送先のポート(より特定的には、軌道L1上に位置するいずれかのポート)にチャック121aが到達したら、チャック121aは再び下降してポートにキュベット100Aをセットする。キュベット100Aがポートにセットされたら、チャック121aはキュベット100Aを離して(すなわち、チャック解除して)、再び上昇する。
次に、分析装置1000における分析の流れについて説明する。分析装置1000は、分析スケジュール(図1)に従って、複数のサンプルの分析を同時に進行する。具体的には、分析装置1000は、あるサンプルの測定準備(吸引ポートP11(図3)又はサンプル吸引ポートP21(図3)における分注)を行いながら、別のサンプルの測定(測光ポートP3(図3)における光学的な測定)を行う。分析スケジュールは、予約された全てのサンプルの分析が効率良く行われるように、サンプル情報(たとえば、各サンプルの分析項目)および各ポートの空き状況に基づいて決定される。分析スケジュールには、分注および測定の各々のタイミングと、分注対象のサンプルの情報と、分注対象の試薬の情報と、測定を行う測光ポートP3(図3)の番号とが含まれる。分析スケジュールは、記憶装置530(図1)に保存され、サンプルのID毎(サンプル容器毎)に管理される。
分析開始時に、分析で使用されるキュベット100(図3)にID(キュベットのID)が付与される。分析が進行すると、途中経過を含む分析履歴(図1)が記憶装置530(図1)に保存される。分析履歴は、分析の進行に応じて逐次更新される。分析履歴には、キュベット100の移動経路(現在位置を含む)と、キュベット100に分注されたサンプルおよび試薬と、測定が行われた測光ポートP3(図3)と、測定結果とが含まれる。分析履歴は、キュベットのID毎(キュベット100毎)に管理される。ユーザは、分析履歴を参照することにより、分析が分析スケジュールどおりに行われたか(又は、進行しているか)を確認することができる。
図5は、実施の形態1における分析装置1000の分析の流れを示すフローチャートである。図5に示す処理は、制御装置500が行う処理であり、CPU510が記憶装置530に格納されているプログラムを実行することにより実現される。
図1、図3、および図5を参照して、まず、制御装置500は、キュベット100をサンプル分注ポートP1に供給する(ステップS510)。具体的には、供給機構112が、キュベット100をキュベット収容部111から取り出してサンプル分注ポートP1に供給する。供給機構112は、サンプル分注ポートP1のポートセンサの出力に基づき、サンプル分注ポートP1が空くと次のキュベット100をサンプル分注ポートP1に供給する。
次いで、制御装置500は、サンプルをキュベット100に分注し、キュベット100の内容物を攪拌する(ステップS520)。具体的には、制御装置500は、分析スケジュールを参照しながら、可動式のサンプルラック800を制御することにより、サンプル吸引ポートP21の直下に所定のサンプル(より特定的には、分析スケジュールが設定するサンプル)を配置する。続けて、制御装置500は、駆動装置を制御して、第2プローブ21aをサンプル吸引ポートP21に移動させ、第2プローブ21aに上記サンプルを吸引させる。続けて、制御装置500は、駆動装置を制御して、第2プローブ21aをサンプル分注ポートP1に移動させ、上記サンプルを第2プローブ21aからキュベット100(より特定的には、ステップS510でサンプル分注ポートP1に供給されたキュベット100)に分注する。分注後、第2プローブ21aは洗浄される。
次いで、制御装置500は、キュベット100を測光ポートP3へ移送する(ステップS530)。具体的には、制御装置500は、駆動装置を制御してアーム121を動かすことにより、キュベット100をサンプル分注ポートP1から測光ポートP3に移送する。
次いで、制御装置500は、キュベット100を攪拌ポートP2へ移送する(ステップS540)。具体的には、制御装置500は、駆動装置を制御してアーム121を動かすことにより、キュベット100を測光ポートP3から攪拌ポートP2に移送する。ただし、分析項目が凝固項目である場合には、ステップS540および後述するステップS560は省略される。この場合、後述するステップS550においては、制御装置500は、測光ポートP3に位置するキュベット100に試薬を分注し、分注後の攪拌は行わない。ステップS550における試薬吐出の勢いでキュベット100の内容物が混合される。
ステップS550では、制御装置500は、サンプルの入ったキュベット100に試薬を分注し、キュベット100の内容物を攪拌する。具体的には、制御装置500は、分析スケジュールを参照しながら、試薬保冷庫700のターンテーブルを駆動することにより、吸引ポートP11の直下に所定の試薬(より特定的には、分析スケジュールが指定する試薬)を配置する。続けて、制御装置500は、駆動装置を制御して、第1プローブ11aを吸引ポートP11に移動させ、第1プローブ11aに上記試薬を吸引させる。続けて、制御装置500は、駆動装置を制御して、第1プローブ11aを攪拌ポートP2に移動させ、上記試薬を第1プローブ11aからキュベット100に分注する。分注後、攪拌装置200によってキュベット100の内容物が攪拌される。また、分注後、第1プローブ11aは洗浄される。
制御装置500は、分析項目が2試薬系の比色項目である場合には、上記ステップS530~ステップS550の処理を繰り返して、第1試薬および第2試薬の分注を行う。全ての試薬の分注が完了すると、制御装置500は、キュベット100を測光ポートP3へ移送する(ステップS560)。
次いで、制御装置500は、測定装置300を制御することにより、以下に説明する測定を行う(ステップS570)。
たとえば、サンプルが血漿であり、分析項目が凝固項目である場合には、散乱ポートP3aにおいてサンプルの凝固時間が測定される。凝固の進行に伴って散乱光の強度が増加し、凝固反応が終了すると、散乱光の強度はほとんど変化しなくなるため、散乱光の強度から凝固時間を求めることができる。
サンプルが血漿であり、分析項目が比色項目である場合には、比色ポートP3bにおいてサンプルの濃度および活性値が測定される。制御装置500は、サンプルをキュベット100に分注してから所定時間経過後に第1試薬をキュベット100に分注し、さらに、第1試薬の分注から所定時間経過後に第2試薬(より特定的には、第1試薬とは異なる試薬)をキュベット100に分注する。第2試薬をキュベット100に分注することによって、サンプルと試薬との反応が開始し、キュベット100の内容物の吸光度が変化する。こうした吸光度の推移からサンプルの濃度および活性値を求めることができる。こうした測定では、第1試薬および第2試薬の各々の分注後において、第1プローブ11aが洗浄される。
サンプルが尿である場合には、たとえば比色ポートP3bにおいて、サンプルと試薬との反応によって生ずる吸光度の変化が光学的に測定される。
上記測定が終了すると、制御装置500は、キュベット100を廃棄する(ステップS580)。具体的には、制御装置500は、駆動装置を制御してアーム121を動かすことにより、測光ポートP3から廃棄ポートP4にキュベット100を移送するとともに、アーム121のチャックを解除して、廃棄ポートP4にキュベット100を投入する。廃棄ポートP4にキュベット100が投入されると、そのキュベット100(すなわち、使用済みの反応容器)はキュベット廃棄容器400(図2)に回収される。
ステップS580の後、制御装置500は、分析スケジュールが指定する次のサンプルの分析を開始するため、処理をステップS510へ移行する。
このように、分析装置1000は、サンプルおよび試薬の各々をキュベット100に分注し、キュベット100内の反応状態を光学的に測定する。測定結果は、出力装置620に表示される。出力装置620には、測定結果以外にも、試薬情報、サンプル情報、分析スケジュール、分析履歴、およびパラメータ等が表示される。分析装置1000の電源がONの状態においては、入力装置610は、アプリケーションプログラム532に対するユーザの操作だけでなく、システムプログラム531に対するユーザの操作も受け付けてしまう。そのため、ユーザは、試薬情報、サンプル情報、分析スケジュール、分析履歴、パラメータ等を編集したり、削除したりすることができ、また、これらのデータを任意の記録媒体へ保存することもできる。さらに、ユーザは、アプリケーションプログラム532の構成ファイルを編集したり削除したりすることもできる。ユーザが編集、削除、および保存等の操作を自由に行えることから、個人情報が漏洩したり、アプリケーションプログラム532、ひいては分析装置1000が故障したりする虞がある。そこで、分析装置1000では、分析装置1000の電源がONの状態において、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限することにより、個人情報の漏洩や分析装置1000の故障を防止する。当該制限には、第1制限と第2制限とがある。第1制限は、システムプログラム531により提供される画面において、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限することである。第2制限は、アプリケーションプログラム532により提供される画面において、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限することである。以下、第1制限と第2制限とについて具体的に説明する。
図6を参照して、分析装置1000の電源がONの状態において、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限する処理について説明する。図6は、実施の形態1における制御装置500による制御処理を示すフローチャートである。図6に示す処理は、制御装置500が行う処理であり、CPU510が記憶装置530に格納されているプログラムを実行することにより実現される。
まず、制御装置500は、分析装置1000の電源をONにする指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS605)。分析装置1000の電源をONにする指示を受け付けた場合には(ステップS605においてYES)、制御装置500は、システムプログラム531を起動する(ステップS610)。
次いで、制御装置500は、システムプログラム531により提供される画面において、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限する(第1制限)(ステップS615)。具体的には、制御装置500は、システムプログラム531の起動後、システムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示がシステムプログラム531により提供される画面に表示されることを制限する。システムプログラム531が起動すると、システムプログラム531により提供される画面が出力装置620に表示される。そこで、制御装置500は、システムプログラム531に対する操作(たとえば、アプリケーションプログラム532の構成ファイルを編集または削除する操作、バックアップデータを保存する操作、外部記憶装置を安全に取り外すための操作等)の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示(たとえば、外部記憶装置を取り外すための操作ボタン、システムプログラム531がWindows(登録商標)の場合には、Windowsのショートカットキー等)がシステムプログラム531により提供される画面に表示されることを制限する。
分析装置1000の電源がONになった後、システムプログラム531が起動してから分析装置1000の電源がOFFになるまでの間に、システムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示(たとえば、Windowsのショートカットキー等)がシステムプログラム531により提供される画面に表示されると、ユーザは、試薬情報、サンプル情報、分析スケジュール、分析履歴、パラメータ等を編集したり、削除したりすることができ、また、これらのデータを任意の記録媒体へ保存することもできる。さらに、ユーザは、アプリケーションプログラム532の構成ファイルを編集したり削除したりすることもできる。ユーザが編集、削除、および保存等の操作を自由に行えることから、個人情報が漏洩したり、アプリケーションプログラム532、ひいては分析装置1000が故障したりする虞がある。しかしながら、分析装置1000では、システムプログラム531の起動後に、システムプログラム531により提供される画面にシステムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示を表示させないので、個人情報が漏洩したり、分析装置1000が故障したりすることが防止される。
次いで、制御装置500は、アプリケーションプログラム532を起動する(ステップS620)。分析装置1000では、第1制限により、システムプログラム531が起動した後においても、システムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示がシステムプログラム531により提供される画面に表示されることはない。したがって、分析装置1000では、分析装置1000の電源がONになった後、システムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示がシステムプログラム531により提供される画面に表示されることなく、アプリケーションプログラム532が起動することになるので、分析装置1000の電源がONになった後、アプリケーションプログラム532が起動するまでの間、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態が制限される。
また、分析装置1000では、第1制限により、アプリケーションプログラム532の起動中においても、システムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示がシステムプログラム531により提供される画面に表示されることはない。したがって、アプリケーションプログラム532の起動中においても、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態が制限される。
次いで、制御装置500は、アプリケーションプログラム532により提供される画面において、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限する(第2制限)(ステップS625)。具体的には、制御装置500は、アプリケーションプログラム532の起動後、システムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示(たとえば、システムプログラム531により提供される画面を開くための操作ボタン)がアプリケーションプログラム532により提供される画面に表示されることを制限する。
システムプログラム531により提供される画面には、たとえば、バックアップデータの保存場所を指定するための画面(以下、「保存場所指定画面」とも称す)等がある。バックアップデータの保存場所を指定する操作は、システムプログラム531に対するユーザによる操作の一つである。ここで、図7~図10を参照して、第2制限の一例として、保存場所指定画面を開くための操作ボタンの表示制限について説明する。
アプリケーションプログラム532により提供される各種機能の1つに、自動分析に関する情報(たとえば、試薬情報、サンプル情報、分析スケジュール、分析履歴、分析に必要な設定情報(パラメータ)等)をバックアップする機能がある。バックアップ機能には、日が替わって最初に分析装置1000の電源をONにした場合に自動でバックアップが開始される自動バックアップ機能と、ユーザがバックアップを指示した場合にバックアップが開始される手動バックアップ機能とがある。ここでは、ユーザは、自動バックアップ機能の有効/無効をアプリケーションプログラム532により提供される環境設定画面で設定することができ、手動バックアップ機能の有効/無効をアプリケーションプログラム532により提供されるリカバリ設定画面で設定することができるものとする。
図7は、実施の形態1における分析装置1000の環境設定画面650を示す図である。図8は、実施の形態1における分析装置1000のリカバリ設定画面660を示す図である。図9は、実施の形態1における分析装置1000と比較される分析装置の環境設定画面650Aを示す図である。図10は、実施の形態1における分析装置1000と比較される分析装置のリカバリ設定画面660Aを示す図である。
図7および図8を参照して、環境設定画面650およびリカバリ設定画面660は、アプリケーションプログラム532により提供され、出力装置620(図1)に表示される画面である。環境設定画面650には、自動バックアップ機能の有効/無効を設定するための操作ボタン651が表示され、ユーザは、操作ボタン651を入力装置610(図1)で操作する(たとえば、タッチパネルをタッチする、マウスでクリックする)ことにより、自動バックアップ機能を有効にすることができる。また、リカバリ設定画面660には、手動バックアップ機能の有効/無効を設定するための操作ボタン661が表示され、ユーザは、操作ボタン661を入力装置610で操作する(たとえば、タッチパネルをタッチする、マウスでクリックする)ことにより、手動バックアップ機能を有効にすることができる。一方で、環境設定画面650およびリカバリ設定画面660には、保存場所指定画面を開くための操作ボタンは表示されず、ユーザは任意にバックアップデータの保存場所を指定することができない。分析装置1000では、バックアップデータの保存場所はアプリケーションプログラム532の構成ファイルであらかじめ規定されている。
これに対し、図9に示すように、分析装置1000と比較される分析装置の出力装置に表示される環境設定画面650Aには、自動バックアップ機能の有効/無効を設定できる操作ボタン651Aに加え、保存場所指定画面を開くための操作ボタン652Aが表示されている。ユーザが操作ボタン652Aを操作する(たとえば、タッチパネルをタッチする、マウスでクリックする)ことにより、システムプログラムにより提供される画面が開き、バックアップデータの保存場所を指定することが可能になる。また、図10に示すように、分析装置1000と比較される分析装置の出力装置に表示されるリカバリ設定画面660Aには、手動バックアップ機能の有効/無効を設定できる操作ボタン661Aに加え、保存場所指定画面を開くための操作ボタン662Aが表示されている。ユーザが操作ボタン662Aを操作する(たとえば、タッチパネルをタッチする、マウスでクリックする)ことにより、システムプログラムにより提供される画面が開き、バックアップデータの保存場所を指定することが可能になる。
保存場所指定画面を開くための操作ボタンが環境設定画面650およびリカバリ設定画面660に表示されると、ユーザがバックアップデータをあらかじめ規定されている保存場所とは異なる保存場所に保存する虞がある。バックアップデータは、試薬情報、サンプル情報、分析スケジュール、分析履歴等の自動分析に関する情報であり、これらは個人情報を含む。したがって、バックアップデータをあらかじめ規定されている保存場所とは異なる保存場所に保存する行為は、個人情報が漏洩する原因となる。しかしながら、分析装置1000では、アプリケーションプログラム532により提供される画面に保存場所指定画面を開くための操作ボタンを表示させないので、個人情報の漏洩が防止される。
再び、図6を参照して、次いで、制御装置500は、分析装置1000への外部記憶装置の接続を検知したか否かを判定する(ステップS630)。外部記憶装置とは、たとえば、USB(Universal Serial Bus)メモリ等である。分析装置1000への外部記憶装置の接続を検知した場合には(ステップS630においてYES)、制御装置500は、処理をステップS635に移行する。一方、分析装置1000への外部記憶装置の接続を検知しなかった場合には(ステップS630においてNO)、制御装置500は、処理をステップS640に移行する。
ステップS635において、制御装置500は、分析装置1000から外部記憶装置を安全に取り外すための操作ボタン671をアプリケーションプログラム532により提供される画面に表示し、処理をステップS640に移行する。
ここで、図11を参照して、外部記憶装置がUSBである場合を例に、外部記憶装置が分析装置1000に接続されている際にアプリケーションプログラム532により提供される表示について説明する。図11は、実施の形態1における分析装置1000においてUSBが接続されている場合の表示を示す図である。画面670は、アプリケーションプログラム532により提供され、出力装置620(図1)に表示される画面である。USBが分析装置1000に接続されたことが検知されると、操作ボタン671が画面670に表示される。操作ボタン671は、USBを分析装置1000から安全に取り外すための処理の実行を指示するためのボタンである。ユーザは、操作ボタン671を入力装置610(図1)で操作する(たとえば、タッチパネルをタッチする、マウスでクリックする)ことにより、USBを分析装置1000から安全に取り外すことができる。
USBを分析装置1000から安全に取り外すための処理はシステムプログラム531で行われる処理であり、USBを分析装置1000から安全に取り外すための処理の実行を指示する操作は、システムプログラム531に対するユーザによる操作の一つである。分析装置1000では、第1制限により、USBを安全に取り外すための操作ボタンがシステムプログラム531により提供される画面に表示されない。そこで、分析装置1000では、USBが分析装置1000に接続された場合には、アプリケーションプログラム532により提供される画面に操作ボタン671を表示することで、USBを分析装置1000から安全に取り外すことができるようにしている。
なお、USBは一例であり、アプリケーションプログラム532により提供される画面に外部記憶装置を安全に取り外すための操作ボタン671を表示することは、USB以外の外部記憶装置にも適用される。
再び図6を参照して、ステップS640において、制御装置500は、分析装置1000の電源をOFFにする指示を受け付けたか否かを判定する。分析装置1000の電源をOFFにするための操作ボタンは、アプリケーションプログラム532の開始/終了画面に表示されており、ユーザがその操作ボタンを入力装置610で操作することにより、分析装置1000の電源をOFFにすることができる。
ここで、図12および図13を参照して、第2制限の他の例として、アプリケーションプログラム532の開始/終了画面における表示制限について説明する。図12は、実施の形態1における分析装置1000のアプリケーションプログラム532の開始/終了画面680を示す図である。図13は、実施の形態1における分析装置1000と比較される分析装置のアプリケーションプログラムの開始/終了画面680Aを示す図である。開始/終了画面680は、アプリケーションプログラム532により提供され、出力装置620(図1)に表示される画面である。開始/終了画面680には、分析装置1000の電源をOFFにする操作ボタン681が表示されている。ユーザが操作ボタン681を入力装置610(図1)で操作する(たとえば、タッチパネルをタッチする、マウスでクリックする)と、アプリケーションプログラム532およびシステムプログラム531が終了し、分析装置1000の電源がOFFになる。一方で、開始/終了画面680には、アプリケーションプログラム532を終了させてシステムプログラム531により提供される画面を表示させるための操作ボタンは表示されておらず、ユーザはアプリケーションプログラム532の終了後にシステムプログラム531を操作することができない。
これに対し、実施の形態1における分析装置1000と比較される分析装置のアプリケーションプログラムの開始/終了画面680Aには、分析装置の電源をOFFにする操作ボタン681Aに加え、アプリケーションプログラムを終了させてシステムプログラムにより提供される画面を表示させるための操作ボタン682Aが表示されている。ユーザは、操作ボタン682Aを入力装置610で操作する(たとえば、タッチパネルをタッチする、マウスでクリックする)ことにより、アプリケーションプログラムを終了させて、その後にシステムプログラムを操作することができる。
アプリケーションプログラム532の終了後にシステムプログラム531に対する操作が可能な場合には、ユーザがシステムプログラム531に対する操作(たとえば、バックアップデータを他の記憶装置に保存する操作、アプリケーションプログラム532の構成ファイルを編集または/および削除する操作等)を行う虞がある。バックアップデータを他の記憶装置に保存する行為は、バックアップデータが試薬情報、サンプル情報、分析スケジュール、分析履歴等の個人情報を含むことから、個人情報が漏洩する原因となる。また、アプリケーションプログラム532の構成ファイルを編集または/および削除する操作は、アプリケーションプログラム532、ひいては分析装置1000が故障する原因となる。しかしながら、分析装置1000では、アプリケーションプログラム532の終了後に入力装置610でシステムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示(たとえば、アプリケーションプログラム532を終了させてシステムプログラム531により提供される画面を表示させるための操作ボタン)をアプリケーションプログラム532により提供される画面に表示させない。これにより、分析装置1000では、アプリケーションプログラム532が終了した後のシステムプログラム531に対する操作が制限されるので、個人情報が漏洩したり、分析装置1000が故障したりすることが防止される。
再び、図6を参照して、分析装置1000の電源をOFFにする指示を受け付けた場合には(ステップS640においてYES)、制御装置500は、アプリケーションプログラム532を終了する(ステップS645)。
次いで、制御装置500は、システムプログラム531を終了する(ステップS650)。分析装置1000では、第1制限により、アプリケーションプログラム532の終了後においても、システムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示がシステムプログラム531により提供される画面に表示されることはない。したがって、分析装置1000では、アプリケーションプログラム532の終了後に、システムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示がシステムプログラム531により提供される画面に表示されることなく、システムプログラム531の終了処理が開始される。これにより、アプリケーションプログラム532が終了した後、システムプログラム531が終了するまでの間、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態が制限される。
ステップS650の後、制御装置500は、図6に示す一連の処理を終了する。
図6に示す一連の処理により、分析装置1000では、分析装置1000の電源がONになってから分析装置1000の電源がOFFになるまでの間、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限することができる。その結果、個人情報の漏洩や分析装置1000の故障を防止することができる。また、分析装置1000では、外部記憶装置を分析装置1000から安全に取り外すための操作については、例外的に受け付け可能な状態に制御することができるので、外部記憶装置を分析装置1000から安全に取り外すことができる。
なお、上記では、第1制限の一例として、Windowsのショートカットキーの表示を制限することを挙げたが、システムプログラム531がWindows以外のシステムプログラム(たとえば、MacOS等)である場合には、そのWindows以外のシステムプログラムにおいて提供される、Windowsのショートカットキーに対応するような表示を制限することとしてもよい。
また、上記では、第1制限をシステムプログラム531に対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示がシステムプログラム531により提供される画面に表示されることを制限することとしたが、キーボードのWindowsボタンが押下された場合に、その押下操作の受け付けを制限することとしてもよい。
また、開始/終了画面680(図12)には、分析装置1000の電源をOFFにする操作ボタン681(図12)だけでなく、使用者ID、使用者名、およびパスワードを入力するための欄が表示される。入力された使用者ID、使用者名、およびパスワードが認証されると、分析装置1000は当該使用者IDでログインした状態に制御され、当該使用者は、アプリケーションプログラム532により提供される各種機能を使用することが可能となる。
[実施の形態2]
実施の形態1においては、分析装置1000では、ログインしているモードがユーザモードであるかサービスモードであるかに関わらず、第1制限および第2制限が行われた。これに対し、実施の形態2における分析装置においては、ログインしているモードがユーザモードである場合には、第1制限および第2制限が行われ、ログインしているモードがサービスモードである場合には、第1制限と第2制限とのいずれの制限も行われない。なお、実施の形態1と実施の形態2においては、制御装置による制御処理が異なるものの、分析装置の構成は同様であることから、同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。また、以下では、実施の形態1と異なる点、すなわち、制御装置による制御処理についてのみ説明する。
図14は、実施の形態2における制御装置500による制御処理を示すフローチャートである。図14に示す処理は、制御装置500が行う処理であり、CPU510が記憶装置530に格納されているプログラムを実行することにより実現される。なお、以下では、実施の形態1と同様の処理については、詳細には説明しない。
まず、制御装置500は、分析装置1000の電源をONにする指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS1405)。分析装置1000の電源をONにする指示を受け付けた場合には(ステップS1405においてYES)、制御装置500は、システムプログラム531を起動する(ステップS1410)。
次いで、制御装置500は、システムプログラム531により提供される画面において、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限する(ステップS1415)。
次いで、制御装置500は、アプリケーションプログラム532を起動する(ステップS1420)。
次いで、制御装置500は、サービスモードでのログイン操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS1425)。サービスモードは、主に分析装置1000のメンテナンス時に使用されるモードであり、ユーザモードは主に分析時に使用されるモードである。制御装置500は、開始/終了画面680で入力された使用者IDを基に、サービスモードでのログイン操作を受け付けたか否かを判定する。サービスモードでのログイン操作を受け付けたと判定した場合には(ステップS1425においてYES)、第1制限を解除し(ステップS1445)、処理をステップS1450に移行する。一方、サービスモードでのログイン操作を受け付けていない(すなわち、ユーザモードでのログイン操作を受け付けた)と判定した場合には(ステップS1425においてNO)、処理をステップS1430に移行する。
ステップS1430において、制御装置500は、アプリケーションプログラム532により提供される画面において、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限する。
次いで、制御装置500は、分析装置1000への外部記憶装置の接続を検知したか否かを判定する(ステップS1435)。分析装置1000への外部記憶装置の接続を検知した場合には(ステップS1435においてYES)、制御装置500は、処理をステップS1440に移行する。一方、分析装置1000への外部記憶装置の接続を検知しなかった場合には(ステップS1435においてNO)、制御装置500は、処理をステップS1450に移行する。
ステップS1440において、制御装置500は、分析装置1000から外部記憶装置を安全に取り外すための操作ボタン671をアプリケーションプログラム532により提供される画面に表示し、処理をステップS1450に移行する。
ステップS1450において、制御装置500は、分析装置1000の電源をOFFにする指示を受け付けたか否かを判定する。分析装置1000の電源をOFFにする指示を受け付けた場合には(ステップS1450においてYES)、制御装置500は、アプリケーションプログラム532を終了する(ステップS1455)。
次いで、制御装置500は、システムプログラム531を終了し(ステップS1460)、図14に示す一連の処理を終了する。
図6および図14から分かるように、実施の形態2における制御処理において実施の形態1における制御処理と異なる点は、以下の2つある。1つ目は、アプリケーションプログラム532が起動した(ステップS1420)後に、サービスモードでのログイン操作を受け付けたか否かを判定し(ステップS1425)、サービスモードでのログイン操作を受け付けたと判定した場合には(ステップS1425においてYES)、第1制限を解除する(ステップS1445)点である。2つ目は、サービスモードでのログイン操作を受け付けたと判定した場合には(ステップS1425においてYES)、第2制限をかけない点である。
図14に示す一連の処理により、実施の形態2における分析装置1000では、ユーザモードでログインしている場合には、第1制限および第2制限が行われ、サービスモードでログインしている場合には、第1制限と第2制限とのいずれの制限も行われない。サービスモードでログインしてメンテナンスをしている際等には、システムプログラム531に対して操作せざるを得ない場面がある。実施の形態2に従えば、サービスモードでログインしている場合には、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作を受け付け可能な状態が制限されないので、メンテナンスを効率よく行うことができる。また、ユーザモードでログインしている場合には、入力装置610でシステムプログラム531に対するユーザの操作を受け付け可能な状態が制限されるため、個人情報の漏洩および分析装置1000の故障が防止される。
[変形例]
上述した例示的な実施の形態は、検体と試薬とを反応させることにより検体の生化学分析を行う分析装置1000のみならず、他の検体検査機器、たとえば、(汎用)臨床化学分析装置、電解質分析装置、血液ガス分析装置、免疫血清検査装置、血液検査装置、血球計数装置、血液凝固分析装置、尿検査装置等に適用してもよい。
[態様]
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)一態様に係る自動分析装置は、ユーザによる操作を受け付ける受付部と、自動分析装置のシステムを管理するためのシステムプログラムと、システムプログラムの制御下で実行され、自動分析を行うためのアプリケーションプログラムとを記憶する記憶部と、記憶部に記憶されている、システムプログラムおよびアプリケーションプログラムを実行する制御部と、を備える。制御部は、アプリケーションプログラムの起動中に、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限する。
第1項に記載の自動分析装置によれば、アプリケーションプログラムの起動中に、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作を受け付け可能な状態が制限される。これにより、個人情報の漏洩、および、装置の故障を防ぐことができる。
(第2項)第1項に記載の自動分析装置において、制御部は、アプリケーションプログラムが終了した後に、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作の受け付けが可能な期間を設けることなく、システムプログラムの終了処理を開始する。
第2項に記載の自動分析装置によれば、アプリケーションプログラムが終了した後に、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作を受け付け可能な状態が制限される。これにより、個人情報の漏洩、および、装置の故障を防ぐことができる。
(第3項)第1項又は第2項に記載の自動分析装置において、制御部は、自動分析装置の電源がONになった後、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作の受け付けが可能な期間を設けることなく、アプリケーションプログラムを起動する。
第3項に記載の自動分析装置によれば、自動分析装置の電源がONになった後、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作を受け付け可能な状態が制限される。これにより、個人情報の漏洩、および、装置の故障を防ぐことができる。
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の自動分析装置において、制御部は、アプリケーションプログラムの起動中に、自動分析に関する情報のバックアップ先を指定するユーザの操作を制限する。
第4項に記載の自動分析装置によれば、自動分析に関する情報のバックアップデータをあらかじめ規定されている保存場所とは異なる保存場所に保存することが制限される。これにより、個人情報の漏洩を防ぐことができる。
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載の自動分析装置は、アプリケーションプログラムにより提供される画面を表示する表示部をさらに備える。制御部は、アプリケーションプログラムの起動中に、システムプログラムに対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示を表示部に表示することを制限する。
第5項に記載の自動分析装置によれば、アプリケーションプログラムの起動中に、システムプログラムに対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示が表示部に表示されないので、システムプログラムに対するユーザの操作が制限される。これにより、個人情報の漏洩、および、装置の故障を防ぐことができる。
(第6項)第5項に記載の自動分析装置において、制御部は、自動分析装置に外部記憶装置が接続された場合に、アプリケーションプログラムにより提供される画面に外部記憶装置を取り外すための操作ボタンを表示する。
第6項に記載の自動分析装置によれば、外部記憶装置を取り外すための操作ボタンがアプリケーションプログラムにより提供される画面に表示される。これにより、外部記憶装置を安全に取り外すことができる。
(第7項)第5項又は第6項に記載の自動分析装置において、制御部は、アプリケーションプログラムが終了した後に、システムプログラムに対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示を表示部に表示することなく、システムプログラムの終了処理を開始する。
第7項に記載の自動分析装置によれば、アプリケーションプログラムが終了した後に、システムプログラムに対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示が表示部に表示されないので、システムプログラムに対するユーザの操作が制限される。これにより、個人情報の漏洩、および、装置の故障を防ぐことができる。
(第8項)第5項~第7項のいずれか1項に記載の自動分析装置において、制御部は、自動分析装置の電源がONになった後、システムプログラムに対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示を表示部に表示する期間を設けることなく、アプリケーションプログラムを起動する。
第8項に記載の自動分析装置によれば、自動分析装置の電源がONになった後、システムプログラムに対する操作の受け付けが可能であることをユーザに示唆する表示が表示部に表示されることなく、アプリケーションプログラムが起動するので、システムプログラムに対するユーザの操作が制限される。これにより、個人情報の漏洩、および、装置の故障を防ぐことができる。
(第9項)第5項~第8項のいずれか1項に記載の自動分析装置において、制御部は、アプリケーションプログラムの起動中に、自動分析に関する情報のバックアップ先を指定するユーザの操作に関する画面の表示部への表示を制限する。
第9項に記載の自動分析装置によれば、自動分析に関する情報のバックアップデータをあらかじめ規定されている保存場所とは異なる保存場所に保存することが制限される。これにより、個人情報の漏洩を防ぐことができる。
(第10項)第1項~第9項のいずれか1項に記載の自動分析装置において、制御部は、受付部で受け付けた操作に基づいて、アプリケーションプログラムの起動中に、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作の受け付けが可能な状態を制限する第1モードと、アプリケーションプログラムの起動中に、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作の受け付けが可能な状態となる第2モードとを切り替える。
第10項に記載の自動分析装置によれば、サービスモードでログインしている場合には、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作を受け付け可能な状態が制限されないので、メンテナンスを効率よく行うことができる。また、ユーザモードでログインしている場合には、受付部でシステムプログラムに対するユーザの操作を受け付け可能な状態が制限されるので、個人情報の漏洩、および、装置の故障を防ぐことができる。
(第11項)第1項~第10項のいずれか1項に記載の自動分析装置は、検体と試薬とを反応させることにより検体の生化学分析を行う装置である。
第11項に記載の自動分析装置によれば、検体と試薬とを反応させることにより検体の生化学分析を行う装置において、個人情報の漏洩、および、装置の故障を防ぐことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。