JP2022035252A - ガイドローラ、光ファイバの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光ファイバの製造工程中における光ファイバの断線頻度を減らせるガイドローラ、光ファイバの製造方法を提供する。【解決手段】光ファイバの製造工程に用いられ、走行する光ファイバを案内するガイドローラ19a~19iである。ガイドローラが、内輪31と、外輪32と、内輪と外輪との間の軸受内空間33に配置されて転動する転動体34と、を備えたベアリング30を中央部に有して構成される。軸受内空間に封入されるグリースの基油動粘度を40℃において26mm2/s以下とする。【選択図】図2

Description

本開示は、ガイドローラ、光ファイバの製造方法に関する。
一般的な光ファイバの製造(線引き)方法では、光ファイバ用のガラス母材(以下、光ファイバ母材と称する)の先端部分を加熱して軟化し、この軟化した部分に張力をかけて引き伸ばすことにより、細径のガラスファイバとする。次いで、冷却工程、樹脂の被覆工程などを経て、ガラスファイバが被覆に覆われた光ファイバとし、ガイドローラによって案内された後、引き取り装置によりそのパスラインの下流側(光ファイバの走行方向を考慮した際の後方側)に引き取られてボビン等に巻き取る。
ガイドローラは、ベアリングの劣化等によってローラの回転抵抗が増加することがある。ガイドローラの数が多い場合、各ローラの回転抵抗が積み重なることになるため、劣化等によりローラの回転抵抗が高くなれば、引き取り装置に入る前の、光ファイバに生ずる張力も高くなる。張力が高くなると、仮に光ファイバに低強度の部分が存在したときには、引き取り装置の上流側で断線する確率が高くなるため、張力が高くなりすぎないようにすることが好ましい。張力を低く抑える技術として、例えば、特許文献1には、ローラの回転抵抗を低くするために、鋼球とグリースに替えてセラミック球とオイル潤滑を用いるガイドローラの技術が開示されている。
特開2000-118867号公報
しかしながら、通常のベアリングに用いられる鋼球やグリースを用いた場合であっても、光ファイバの製造工程中における光ファイバの断線頻度を減らすためには、ローラの回転抵抗を低くすることが望まれる。
本開示は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、光ファイバの製造工程中における光ファイバの断線頻度を減らせるガイドローラ、光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係るガイドローラは、光ファイバの製造工程に用いられ、走行する光ファイバを案内するガイドローラであって、前記ガイドローラが、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間の軸受内空間に配置されて転動する転動体と、を備えたベアリングを中央部に有して構成され、前記軸受内空間に封入されるグリースの基油動粘度を40℃において26mm/s以下とする。
上記によれば、光ファイバの製造工程中における光ファイバの断線頻度を減らすことができる。
本開示の一態様に係る光ファイバの製造装置の概略図である。 ベアリングの一例を説明する図である。 各試料の諸元と評価結果を説明する表である。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示に係るガイドローラは、(1)光ファイバの製造工程に用いられ、走行する光ファイバを案内するガイドローラであって、前記ガイドローラが、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間の軸受内空間に配置されて転動する転動体と、を備えたベアリングを中央部に有して構成され、前記軸受内空間に封入されるグリースの基油動粘度を40℃において26mm/s以下とする。
ベアリングに使用されているグリースの基油動粘度を40℃において26mm/s以下とするので、鋼球やグリースを使用した場合でも、通常のベアリングに用いられる程度の基油動粘度のグリースを使用したガイドローラに比べ、ローラの回転抵抗を低くすることができる。よって、光ファイバの製造工程中における光ファイバの断線頻度を減らすことができる。
(2)本開示のガイドローラの一態様では、前記グリースの封入量を前記軸受内空間の容積の35%以下にする。
グリースの封入量を軸受内空間の容積の35%以下にすれば、通常用いられる程度の封入量のベアリングを用いたガイドローラに比べ、ローラの回転抵抗がより低くなる。
(3)本開示のガイドローラの一態様では、前記ベアリングの内径を8mm以下とする。
ベアリングに使用している軸径を小さくし、ベアリングの内径を8mm以下とすれば、通常用いられる程度の内径のベアリングを用いたガイドローラに比べ、ローラの回転抵抗がより低くなる。
(4)本開示のガイドローラの一態様では、前記グリースの基油動粘度を40℃において16mm/s以下とする。
グリースの基油動粘度を40℃において16mm/s以下とすれば、ローラの回転抵抗がより一層低くなる。
(5)本開示のガイドローラの一態様では、前記グリースの封入量を前記軸受内空間の容積の25%以下にする。
グリースの封入量を軸受内空間の容積の25%以下にすれば、ローラの回転抵抗がより一層低くなる。
本開示に係る光ファイバの製造方法は、(6)上記いずれかのガイドローラを光ファイバ用の製造装置に用いて、走行する前記光ファイバを案内する。
光ファイバ用の製造装置に用いているガイドローラの回転抵抗が低くなるので、光ファイバの断線頻度が減る光ファイバの製造方法を提供することができる。
(7)本開示の光ファイバの製造方法の一態様では、前記光ファイバの走行速度が1000m/min以上である。
線速が速い程、ガイドローラの回転抵抗は高くなるが、回転抵抗が低くなるベアリングのガイドローラを使用しているので、光ファイバの線速が1000m/min以上になっても、光ファイバの断線頻度を減らすことができる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係るガイドローラ、光ファイバの製造方法の具体例について説明する。図1は、本開示の一態様に係る光ファイバの製造装置の概略図である。
図1に示すように、光ファイバ製造装置10は、最上流位置に、光ファイバ母材Gを加熱して軟化させる線引き炉11を備える。
線引き炉11は、内側に光ファイバ母材Gが供給される円筒状の炉心管12と、この炉心管12を取り囲む発熱体13と、炉心管12内に例えばアルゴンガスを供給するガス供給部14とを有している。これにより、炉内雰囲気を、Ar、He、N、若しくはこれらの混合ガス雰囲気に設定する。なお、線引き炉11は、抵抗ヒータ加熱炉でもよいし、誘導加熱炉でもよい。
光ファイバ母材Gの上部は母材送りユニットFに把持されており、光ファイバ母材Gは母材送りユニットFにより炉心管12内に送られる。光ファイバ母材Gの下端部分が発熱体13によって加熱されて下方に線引きされると、光ファイバG2の構成部材であるガラスファイバG1が形成される。
光ファイバ製造装置10は、線引き炉11の下流側に冷却ユニット15を備える。冷却ユニット15には、例えば冷却用のガスが供給されており、光ファイバ母材Gから線引きされたガラスファイバG1は、冷却ユニット15で冷却される。
光ファイバ製造装置10は、冷却ユニット15の下流側に外径測定ユニット16を備える。外径測定ユニット16は、例えばレーザ光を用いてガラスファイバG1の外径を測定可能に構成されており、冷却ユニット15で冷却されたガラスファイバG1は、外径測定ユニット16で外径が測定されて下方に送られる。なお、外径測定ユニット16は、ガラスファイバG1の外径を非接触で測定できれば、レーザ光以外の測定方式であってもよい。
光ファイバ製造装置10は、外径測定ユニット16の下流側に紫外線硬化樹脂(以下、UV(ultraviolet)硬化樹脂と称する)の樹脂塗布装置17a、UV硬化炉17bを備える。
樹脂塗布装置17aには、例えばガラスファイバ保護用のUV硬化樹脂が供給されている。外径が測定されたガラスファイバG1には、例えば、ウレタンアクリレート樹脂が樹脂塗布装置17aで塗布され、このウレタンアクリレート樹脂はUV硬化炉17bで紫外線が照射されて硬化する。これにより、ガラスファイバG1の周囲に樹脂層を形成した光ファイバ(光ファイバ素線とも呼ばれる)G2となる。
なお、ガラスファイバ保護用のUV硬化樹脂は、プライマリ(一次)樹脂とセカンダリ(二次)樹脂で構成してもよい。この場合、一次被覆用の樹脂塗布装置、第1のUV硬化炉を設け、この第1のUV硬化炉の下流に、二次被覆用の樹脂塗布装置、第2のUV硬化炉を設けてもよいし、一次被覆と二次被覆とを同時に塗布する装置と、同時に硬化する硬化炉を設けてもよい。
光ファイバ製造装置10は、UV硬化炉17bの下流側に、直下ローラ18、および、例えば9個のガイドローラ19a~19iを備える。直下ローラ18は、線引き炉11の直下に配置され、光ファイバG2の走行方向が垂直方向から例えば水平方向へと変更される。
直下ローラ18によって走行方向が変更された光ファイバG2は、ガイドローラ19a~19iにそれぞれ案内され、最下流に位置するガイドローラ19iによって走行方向が例えば斜め上方へと変更される。
光ファイバ製造装置10は、ガイドローラ19iの下流側に、さらに、引き取り装置20、ガイドローラ21、ダンサローラ22、および巻き取り装置23を備えている。光ファイバG2は、引き取り装置20のキャプスタンで所定の速度で引き取られ、ダンサローラ22を介して巻き取り装置23のボビンBに巻き取られる。
引き取り装置20の手前に位置するガイドローラ19a~19iは、それぞれ円盤状に形成され、その外周面には所定形状の溝が設けられている。この溝の内壁面に光ファイバG2が接触することにより、光ファイバG2が案内される。ガイドローラ19a~19iは、その中央位置にベアリング(図2)をそれぞれ有する。
図2に示すように、ベアリング30は、内輪31および外輪32を有している。内輪31の外周には軌道溝31aが、外輪32の内周には軌道溝32aがそれぞれ設けられている。転動体34は、内輪31と外輪32との間で保持器35によって転動自在に保持されており、外輪32が内輪31に対して回転可能に構成されている。図2では、転動体34の一例として玉(例えば鋼製)で説明するが、円柱形状(コロ)であってもよい。
ベアリング30の内径(軸受内径ともいう。図2にdで示す)は、例えば8mmに設定されている。光ファイバG2の線速が1000m/min以上になった場合、ローラ径が40mmであれば、ベアリング30の回転数は7500回/min以上になるが、φ8mmのように細径の場合には、通常用いられる程度の内径のベアリングを用いたガイドローラに比べ、ローラの回転抵抗が低くなる。このローラの回転抵抗をさらに低くするためには、φ6mmや、φ5mm以下のように細くすることが好ましい。
軸受内空間33は、内輪31と外輪32との間に設けられた空間であり、例えば、シール部材36を用いて密封される。この軸受内空間33内には、グリースが封入されている。
グリースの基油動粘度としては、例えば40℃において26mm/sに設定される。26mm/sに設定することで、通常のベアリングに用いられる程度の基油動粘度のグリースを使用したガイドローラに比べ、回転抵抗を小さくできるが、ローラの回転抵抗をより一層低くするためには、グリースの基油動粘度を、40℃において16mm/s以下とすることが望ましい。
また、グリースの封入量は、軸受内空間33の容積の35%以下に設定することが好ましい。また、ローラの回転抵抗をさらに低くするためには、軸受内空間33の容積の25%以下や、軸受内空間33の容積の15%以下にまでグリースの封入量を減らすことが好ましい。
図3は、各試料の諸元と評価結果を説明する表である。
引き取り装置20のキャプスタンの手前に10個のガイドローラを設置し、各ガイドローラのベアリングには、内径d=3~10mmのベアリング30を用いた。
各ベアリング30について、グリースの基油動粘度、グリースの封入量をそれぞれ変更して、引き取り装置20に最も近いガイドローラのガイドローラ軸に加わる力(光ファイバ張力と称する)を測定し、光ファイバG2の断線頻度との関係を求めた。そして、各々の条件のものがガイドローラのベアリングに適するか否か(適する場合をA、適しない場合をB)を評価した。なお、断線頻度は、光ファイバG2が線引き長1000km当たりで断線する回数と定義した。
グリースの基油動粘度を54mm/s、グリースの封入量を上記容積の35%とした場合(試料1と称する)、光ファイバ張力の測定値は560gとなった。試料1の場合、断線頻度は0.9回となり、1回に近い頻度で生じていたので、ガイドローラのベアリングには適さない(評価B)と判定した。
これに対し、試料2のように、グリースの基油動粘度を試料1よりも小さく(26mm/s)した場合、グリースの封入量は40%であっても、光ファイバ張力の測定値は490g、断線頻度は0.43回であった。0.5回未満の頻度で済んでいたため、ガイドローラのベアリングに適する(評価A)と判定した。
そして、グリースの基油動粘度は試料2と同じだが、グリースの封入量を35%にした試料3では、光ファイバ張力の測定値は460g、断線頻度は0.32回であった。また、グリースの基油動粘度、封入量を試料3よりさらに小さくした試料4(グリースの基油動粘度24.1mm/s、グリースの封入量30%)では、光ファイバ張力の測定値は450g、断線頻度は0.3回であった。このように、試料3および試料4は、いずれも断線頻度がさらに低くなったので、ガイドローラのベアリングに適する(評価A)と判定した。
また、試料5(グリースの基油動粘度16mm/s、グリースの封入量は試料4と同じ)では、光ファイバ張力の測定値は410gであり、ローラの回転抵抗がより一層低くなっていた。断線頻度は0.22回であった。
次に、試料6(グリースの基油動粘度15.3mm/s、グリースの封入量は試料4と同じ)では、光ファイバ張力の測定値は400g、断線頻度は0.2回であった。
さらに、試料7(グリースの基油動粘度12mm/s、グリースの封入量25%)では、光ファイバ張力の測定値は370gであり、ローラの回転抵抗がより一層低くなっていた。また、試料8(グリースの基油動粘度は試料7と同じ、グリースの封入量15%)では、光ファイバ張力の測定値は350gであり、ローラの回転抵抗がより一層低くなっていた。試料7の断線頻度は0.1回、試料8の断線頻度は0.05回であった。
これら試料5から試料8のいずれも断線頻度が低いので、ガイドローラのベアリングに適する(評価A)と判定した。そのうち、試料7および試料8は、断線頻度が特に低くなった。
このように、ベアリング30の内径を8mmとした場合、グリースの基油動粘度を40℃において26mm/s以下、グリースの封入量を軸受内空間33の容積の35%以下にすれば、鋼球やグリースを使用した場合でも、ローラの回転抵抗を低くすることができる。よって、光ファイバの製造工程中における光ファイバの断線頻度を減らすことができる。
また、グリースの基油動粘度、封入量は試料4と同じだが、ベアリング30の内径を10mmとした試料11では、光ファイバ張力の測定値は540g、断線頻度は0.8回であったので、ガイドローラのベアリングには適さない(評価B)と判定した。一方、ベアリング30の内径を5mmとした試料9では、光ファイバ張力の測定値は350g、断線頻度は0.08回であり、ベアリング30の内径を3mmとした試料10では、光ファイバ張力の測定値は310g、断線頻度は0.05回であった。これら試料9および試料10では断線頻度が低いので、ガイドローラのベアリングに適する(評価A)と判定した。よって、ベアリング30の内径が8mm以下であって、グリースの基油動粘度を40℃において26mm/s以下、グリースの封入量を軸受内空間33の容積の35%以下にすれば、ローラの回転抵抗を低くすることができる。
ところで、図1では、線引き工程の例を挙げて説明したが、本開示はこの例に限定されない。例えば、着色工程において着色用のUV硬化樹脂を供給する樹脂塗布装置を設けて着色し、光ファイバ素線に着色用のUV硬化樹脂で被覆した光ファイバ心線を走行させるガイドローラであってもよい。このように、本開示の光ファイバには、光ファイバ素線の他、光ファイバ心線も該当する。また、着色工程に用いるガイドローラのほか、線引き後に巻き取った光ファイバ素線や光ファイバ心線を所望の長さに分割する場合に用いるガイドローラにも適用可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10…光ファイバ製造装置、11…線引き炉、12…炉心管、13…発熱体、14…ガス供給部、15…冷却ユニット、16…外径測定ユニット、17a…UV樹脂塗布装置、17b…UV硬化炉、18…直下ローラ、19a~19i…ガイドローラ、20…引き取り装置、21…ガイドローラ、22…ダンサローラ、23…巻き取り装置、30…ベアリング、31…内輪、31a…軌道溝、32…外輪、32a…軌道溝、33…軸受内空間、34…転動体、35…保持器、36…シール部材、d…軸受内径、F…母材送りユニット、G…光ファイバ母材、G1…ガラスファイバ、G2…光ファイバ、B…ボビン。

Claims (7)

  1. 光ファイバの製造工程に用いられ、走行する光ファイバを案内するガイドローラであって、
    前記ガイドローラが、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間の軸受内空間に配置されて転動する転動体と、を備えたベアリングを中央部に有して構成され、
    前記軸受内空間に封入されるグリースの基油動粘度を40℃において26mm/s以下とする、ガイドローラ。
  2. 前記グリースの封入量を前記軸受内空間の容積の35%以下にする、請求項1に記載のガイドローラ。
  3. 前記ベアリングの内径を8mm以下とする、請求項1または請求項2に記載のガイドローラ。
  4. 前記グリースの基油動粘度を40℃において16mm/s以下とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガイドローラ。
  5. 前記グリースの封入量を前記軸受内空間の容積の25%以下にする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガイドローラ。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガイドローラを光ファイバ用の製造装置に用いて、走行する前記光ファイバを案内する、光ファイバの製造方法。
  7. 前記光ファイバの走行速度が1000m/min以上である、請求項6に記載の光ファイバの製造方法。
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