JP3557606B2 - 光ファイバおよび光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、光ファイバおよびその製造方法に関するものである。1.3μm帯シングルモードファイバ、分散シフト、分散補償ファイバの他、いかなる種類の光ファイバおよびその製造方法にも適用することができるが、特にコアへのGeの添加量が多く、PMD(偏波モード分散:単に偏波分散ともいう)が大きい分散補償ファイバおよびその製造方法に好適である。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ母材の一端を加熱・軟化させ、そこから光ファイバを線引きする従来の光ファイバの製造方法では、光ファイバのコア部分およびその周囲のクラッド部分の断面形状を完全に真円形の同心円状とすることは困難であり、わずかに楕円状または歪んだ円状となるのが通例であった。従って、光ファイバの断面構造における屈折率分布も完全な同心円状でなくなり、これが原因となって光ファイバ断面内の直交する2偏波間の群速度に差異が生じ、偏波分散が大きくなってしまうという問題があった。このため、大容量かつ長距離の伝送が必要とされる海底ケーブル用または幹線ケーブル用の光ファイバとして実用化する場合には、偏波分散の影響が大きく現れてしまう。また、この偏波分散は、同一程度のコア非円でもコアに添加するドーパント、例えばGeO2 の添加量が大きいほど大きな値となる。
【0003】
こうした偏波分散の問題を解消すべく、光ファイバ母材から光ファイバを線引きし、この光ファイバに所定の被覆材料をコーティングした後、この光ファイバを回転軸が周期的に応動させる揺動するガイドローラでガイドすることにより、光ファイバに所定のねじりを付与する光ファイバの製造方法が提案されている (特開平6−171970参照)。
【0004】
以下、この光ファイバの製造方法の概略を、図9および図10を用いて説明する。ここで、図9は光ファイバの製造方法を説明するための製造工程図、図10は光ファイバにねじりを付与する方法を説明するための図である。
【0005】
図9に示すように、光ファイバ母材300が線引き炉310の中に送られ、線引き炉310内で加熱・軟化させた光ファイバ母材300の一端から光ファイバ320が線引きされる。この線引きされた光ファイバ320は、直径モニタ330を介してコーティング処理装置340を通過し、このコーティング処理装置340で高分子コーティングを施される。その後、光ファイバ320は、コーティング同心性モニタ350、例えばUVランプを有するコーティング樹脂硬化装置360、コーティング直径モニタ370を順次通過する。
【0006】
次いで、光ファイバ320は、第1乃至第3のガイドローラ381、382、383と光ファイバ320を所定の力で引っ張る引張りキャプスタン390を有する領域400に入る。ここで、第1のガイドローラ381の回転軸が引張りタワー軸に平行な方向の回りに揺動する点に本製造方法の特徴がある。なお、第1のガイドローラ381の次段に設置された第2のガイドローラ382および次次段に設置された第3のガイドローラ383は、それぞれその回転軸が固定されている。
【0007】
図10に示すように、例えば第1のガイドローラ381が引張りタワー軸に平行な方向の回りに角度θだけ傾くと、この傾きによって光ファイバ320に横方向の力が加わり、光ファイバ320が第1のガイドローラ381のローラ表面を転動する。そしてこの転動が母材の加熱部まで伝わることにより、光ファイバ320に長手方向軸回りのねじりが付与される。続いて、第1のガイドローラ381は元の状態に戻る。こうして、図中の両頭矢印に示されるように、第1のガイドローラ381の角度0から角度+θまで揺動する非対称の往復運動が繰り返されることにより、光ファイバ320には間欠的にねじりが付与される。
【0008】
なお、この第1のガイドローラ381の揺動運動は、図10に示される場合に限らず、引張りタワー軸に平行な方向の回りに角度−θから角度+θまでの2θ間の対称的な往復運動であってもよい。また、第1のガイドローラ381の軸方向に揺動する対称的な往復運動であってもよい。これらの場合、光ファイバ320には進行方向に対して時計回りのねじりと反時計回りのねじりとが交番的に付与される。
【0009】
以上のように、提案されている光ファイバの製造方法によれば、光ファイバ320に間欠的または交番的にねじりが付与されていることにより、たとえコア部分およびクラッド部分の断面形状が真円形の同心円状でなくとも、長尺の光ファイバ全体として、真円形の同心円状である場合と等価的に偏波分散を抑制した光ファイバ320を得ることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の光ファイバの製造方法においては、第1のガイドローラ381の揺動運動によって光ファイバ320がローラ表面をスムーズに転動することができず、そのため光ファイバ320に所定のねじりを有効に付与することができないという問題がある。
【0011】
この問題を明確にするため、図11を用いて説明する。ここで、図11(a)は光ファイバの製造装置のガイド部分の模式図、図11(b)は図11(a)の第1のガイドローラを上から見た図、図11(c)は図11(b)の第1のガイドローラを横から見た図である。
【0012】
図11(a)に示すように、回転軸が引張りタワー軸に平行な方向の回りに揺動する第1のガイドローラ381に対して、次段の回転軸が固定されている第2のガイドローラ382は相対的に高い位置に設置されている。従って、図中において、線引き炉側から送られてきた光ファイバ321は第1のガイドローラ381のローラの右側面から底面を通り左側面に至るまで接触した後、光ファイバ322としてローラの左側面から離脱して第2のガイドローラ382に送られるが、このときの光ファイバが第1のガイドローラ381のローラ表面に接触する長さは、円周角90°に相当するローラ円周を越える長さになる。なお、ここでは図示しないが、第2のガイドローラ382のローラ幅は、上記図10に示す場合と同様に、第1のガイドローラ381のローラ幅と同じである。
【0013】
次に、このような条件の下で、揺動する第1のガイドローラ381により光ファイバ320をガイドする場合について述べる。
【0014】
図11(b)、(c)に示すように、第1のガイドローラ381が角度+θだけ傾いた状態においては、線引き炉310側から第1のガイドローラ381の右側面に到達した光ファイバ321は第1のガイドローラ381の右側面からローラ表面に接触し始め、底面を通り左側面に至るまで接触を続けた後、ローラから離脱し、光ファイバ322として次段の第2のガイドローラ382へ向かっている。
【0015】
この状態から第1のガイドローラ381が元の状態に戻ると、第1のガイドローラ381の右側面において、光ファイバ321aはその進行方向に向かって反時計回りにローラ表面を転動し、光ファイバ321bの位置まで達しようとする。他方、第1のガイドローラ381の左側面においては、光ファイバ322aはその進行方向に向かって時計回りにローラ表面を転動し、光ファイバ322bの位置まで達しようとする。このように、第1のガイドローラ381の右側面と左側面とにおいては、転動する方向が互いに逆になるため、互いに相手の転動を妨害し合う関係になる。
【0016】
従って、第1のガイドローラ381の右側面における光ファイバ321aから光ファイバ321bへの反時計回りの転動は、左側面における光ファイバ322aから光ファイバ322bへの時計回りの転動によって妨害され、部分的に摺動することになる。このため、本来は光ファイバ321aから光ファイバ321bへの反時計回りの転動により光ファイバ320にその進行方向に向かって反時計回りのねじりを付与するはずであるのが、有効にねじり付与することができなくなる。
【0017】
この原因は、第1に、第2のガイドローラ382が第1のガイドローラ381の設置位置より高い位置に設置されているため、光ファイバ320が第1のガイドローラ381の右側面のみならず左側面にも接触することになり、この左側面において生じる光ファイバの転動が右側面における転動を妨害することである。第2に、第2のガイドローラ382のローラ幅が第1のガイドローラ381のローラ幅と同じであるため、第2のガイドローラ382のローラ表面においても光ファイバ320が転動可能となり、第1のガイドローラ381の左側面における光ファイバ320の転動を抑制することができないこと、また第2のガイドローラ382における光ファイバ320の転動が第1のガイドローラ381の左側面における転動と同様の効果をもち、第1のガイドローラ381の右側面における転動を妨害することである。
【0018】
従って、上記図9に示した従来例においては、揺動する第1のガイドローラ381と次段の第2のガイドローラ382とが同じ高さに設置されているため、光ファイバ320への有効なねじりの付与を妨げる上記第1の原因は解消されているが、第2のガイドローラ382が第1のガイドローラ381と同じローラ幅を有し、第2のガイドローラ382のローラ表面においても光ファイバ320が転動可能な構造であるという上記第2の原因が残存しているため、光ファイバ320への有効なねじりの付与を実現することが依然として困難であるという問題があった。
【0019】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、ガイドローラの揺動運動により光ファイバをローラ表面に転動させて光ファイバに所定のねじりを有効に付与し、コア部分およびクラッド部分の断面形状が真円形の同心円状でなくとも、長尺の光ファイバ全体として、真円形の同心円状である場合と等価的に偏波分散を抑制することが可能な光ファイバおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバの製造方法は、光ファイバ母材から光ファイバを線引きする第1の工程と、光ファイバに所定の被覆材料をコーティングする第2の工程と、所定の被覆材料をコーティングした光ファイバに所定のねじりを付与する第3の工程とを備える光ファイバの製造方法であって、第3の工程は、所定の被覆材料をコーティングした光ファイバを、周期的に揺動する第1のガイドローラでガイドすると共に、この第1のガイドローラの揺動により、第1のガイドローラのローラ表面に前記光ファイバを転動させる第1のステップと、第1のガイドローラを経由した光ファイバを、第1のガイドローラの次段に設置され、回転軸が固定された第2のガイドローラでガイドすると共に、この第2のガイドローラに設けた光ファイバ転動抑止手段により、第2のガイドローラのローラ表面を光ファイバが転動することを抑止する第2のステップとを備える、ことを特徴とする。
【0021】
ここで、上記第2のガイドローラに設けた光ファイバ転動抑止手段は、第2のガイドローラのローラ表面に形成され、光ファイバを挿着するV字型、U字型、または凹形状の狭溝を有していることを特徴とするものであってもよい。
【0022】
また、第1のガイドローラおよび第2のガイドローラの各ローラ外径および設置位置を調整することにより、光ファイバの第1のガイドローラのローラ表面に接触する長さが、第1のガイドローラの円周角90°に相当するローラ円周とほぼ等しい長さか或いはそれ以下の長さになっていることが好ましい。
【0023】
また、光ファイバが接触する第1のガイドローラのローラ表面は、光ファイバの所定の被覆材料との摩擦係数が大きい樹脂で覆われていることが好ましい。
【0024】
また、第1のガイドローラのローラ表面を覆う樹脂は、ウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂であることが好適である。
【0025】
また、前記光ファイバの線引張力は、4.0kg/mm2 以上、かつ、16kg/mm2 以下であることが好適である。
【0026】
また、上記第3の工程は、第1のガイドローラの前段に設置した光ファイバ応動抑制手段により、第1のガイドローラの揺動によって生ずる光ファイバの応動を抑制するステップを更に備えることが好適である。
【0027】
また、上記光ファイバ応動抑制手段は、第1のガイドローラ上方に所定の距離をもって設置され、光ファイバを通過させるための所定の間隔をもって相対する1対以上のガイドローラであることが好ましい。
【0028】
本発明の光ファイバの製造方法においては、光ファイバ母材から光ファイバを線引きし、この光ファイバに所定の被覆材料をコーティングし、この所定の被覆材料をコーティングした光ファイバに所定のねじりを付与する。この場合、光ファイバへの所定のねじりの付与は、回転軸が周期的に揺動する第1のガイドローラで光ファイバをガイドし、そのローラ表面に転動させるステップと、第1のガイドローラを経由した光ファイバを次段の回転軸が固定された第2のガイドローラでガイドし、第2のガイドローラに設けた光ファイバ転動抑止手段により光ファイバがローラ表面を転動することを抑止するステップとの組み合わせにより行う。
【0029】
即ち、揺動する第1のガイドローラのローラ表面を光ファイバが転動することにより、光ファイバに所定のねじりが付与されるが、その際に、次段の第2のガイドローラにおいてそのローラ表面を光ファイバが自由に転動するに任せると、第1のガイドローラにおける光ファイバの転動が妨害され、光ファイバに有効にねじりが付与されなくなる。このため、第1のガイドローラに設けた光ファイバ転動抑止手段により光ファイバがローラ表面を転動することを抑止することにより、第1のガイドローラにおいてその揺動速度に対して高効率に光ファイバにねじりが付与される。従って、揺動する第1のガイドローラと光ファイバ転動抑止手段を設けた第2のガイドローラとの組み合わせにより、光ファイバに有効にねじりを付与することができる。
【0030】
なお、第2のガイドローラに設けた光ファイバ転動抑止手段としては、ローラ表面に形成されたV字型、U字型、または凹形状の狭溝があり、この狭溝に光ファイバを挿着してガイドすることにより、光ファイバの転動を抑止することが可能となる。
【0031】
また、光ファイバの第1のガイドローラのローラ表面に接触する長さが、円周角90°に相当するローラ円周を越える長さになると、光ファイバがローラに接触し始める側での転動と光ファイバがローラから離脱する側での転動とが逆方向になり、光ファイバにねじりを付与すべき転動が妨害されるため、光ファイバに有効にねじりを付与することができなくなる。従って、第1のガイドローラおよび第2のガイドローラの各ローラ外径および設置位置を調整して、光ファイバの第1のガイドローラに接触する長さが、円周角90°に相当するローラ円周とほぼ等しい長さか或いはそれ以下の長さになるようにすることにより、光ファイバに有効にねじりを付与することができる。
【0032】
また、光ファイバに付与されるねじりは、光ファイバが第1のガイドローラのローラ表面を転動することにより生じるため、光ファイバがローラ表面を摺動することなく理想的に転動するには、光ファイバの所定の被覆材料とローラ表面との摩擦係数が大きいことが必要とされる。従って、光ファイバが接触する第1のガイドローラのローラ表面が、光ファイバの所定の被覆材料との摩擦係数が大きい樹脂、例えばウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂で覆われていることにより、光ファイバをローラ表面に理想的に転動させることができるため、光ファイバに有効にねじりを付与することができる。
【0033】
また、光ファイバの所定の被覆材料に働く第1のガイドローラのローラ表面での摩擦力を大きくするには、線引張力を大きくし、ローラ表面における光ファイバの所定の被覆材料がローラに押しつける力を大きくすることも有効である。摩擦力の増大による転動性の向上は、線引張力が4.0kg/mm2 以上で現れる。なお、線引張力が16kg/mm2 を超えると断線が発生するので、線引張力は16kg/mm2 以下とする必要がある。
【0034】
また、第1のガイドローラの揺動に連れて、第1のガイドローラのローラに接触する直前の光ファイバが応動するが、この光ファイバの応動を放置すると、光ファイバに付与されるねじり量が低減したり、光ファイバ被覆が偏肉したりする。従って、第1のガイドローラの前段に設置した光ファイバ応動抑制手段によって光ファイバの応動を抑制することにより、光ファイバに付与されるねじり量の低減を抑止すると共に、光ファイバ被覆の偏肉を抑止することができる。
【0035】
この光ファイバ応動抑制手段としては、第1のガイドローラ上方に所定の距離をもって設置され、光ファイバを通過させるための所定の間隔をもって相対する1対以上のガイドローラがある。この1対以上のガイドローラにより、第1のガイドローラの揺動によって光ファイバが応動する際、光ファイバの応動が一定範囲内であれば、1対以上のガイドローラの間を光ファイバが通過するが、一定範囲を越えると、いずれかのガイドローラに接触して、それ以上の応動が阻止される。従って、この1対以上のガイドローラは、光ファイバ応動抑制手段として機能する。
【0036】
本発明の光ファイバは、コア部分と前記コア部分を覆うクラッド部分を備え、所定のねじりが付与された光ファイバであって、上記の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0037】
本発明の光ファイバにおいては、上記の製造方法により製造されたものであって、コア部分と前記コア部分を覆うクラッド部分を備え、所定のねじりが付与されているため、たとえコア部分およびクラッド部分の断面形状が真円形の同心円状でなくとも、長尺の光ファイバ全体として、真円形の同心円状である場合と等価的に偏波分散を抑制することができる。また、光ファイバ被覆の偏肉が抑止されているため、光ファイバの断面における応力分布が非対称となることを防止することができ、光ファイバをケーブル化した場合の強度を向上させることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0039】
図1は、本発明の光ファイバの製造方法の実施形態の製造工程図である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の光ファイバの製造方法では、先ず、光ファイバ母材100を用意する。この光ファイバ母材100は、気相軸付法(VAD法)、外付け法(OVD法)、内付け法(MCVD法)、またはロッドインチューブ法などで作成される。
【0041】
次いで、光ファイバ母材100を線引き炉110にセットした後、線引き炉110内のヒータ120で光ファイバ母材100の下端を加熱・軟化させ、光ファイバ130を線引きする。このときの線引き速度Vpは、例えば100m/分である。
【0042】
次いで、線引きした光ファイバ130の外径を、レーザ外径測定器140で測定する。なお、この測定結果は線引き制御部150に報告される。そして線引き制御部150は、測定結果に基づいて光ファイバ130の外径が所定の値、通常は125μmになるように、ヒータ120の加熱温度や線引き速度Vpを制御する。
【0043】
次いで、光ファイバ130を、第1の樹脂コーティングダイス161に貯えられた液状樹脂171中を経由させ、光ファイバ130表面に第1層目の樹脂を付着させる。引き続き、第1層目の樹脂が付着した光ファイバ130にUVランプ181を照射して、第1層目の樹脂を硬化させる。同様にして、第2の樹脂コーティングダイス162に貯えられた液状樹脂172中を経由させ、光ファイバ130の第1層目の樹脂表面に第2層目の樹脂を付着させた後、引き続き、第2層目の樹脂が付着した光ファイバ130にUVランプ182を照射して、第2層目の樹脂を硬化させる。こうして、光ファイバ130表面に2層の樹脂からなる樹脂被膜190をコーティングした光ファイバ200を形成する。このときの光ファイバ200の被覆径は例えば250μmである。
【0044】
次いで、光ファイバ200を、光ファイバ200の進行方向に自由に回転する光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ210の間を通過させた後、引き続き、揺動ガイドローラ220、この揺動ガイドローラ220の次段に設置された第1の固定ガイドローラ231、この第1の固定ガイドローラ231の次段に設置された第2の固定ガイドローラ232で順次ガイドする。更に、これら揺動ガイドローラ220、第1の固定ガイドローラ231、第2の固定ガイドローラ232で順次経由した光ファイバ200を、ドラム240に巻き取る。
【0045】
このとき、光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ210は、揺動ガイドローラ220の真上方向に距離L=100mmの位置に設置されており、1対のガイドローラ210の間隔dは2mmである。また、揺動ガイドローラ220は、そのローラ外径が150mm、ローラ幅が30mmであり、ローラ表面の材質はローラ自体の材質であるアルミニウムであり、その回転軸が引張りタワー軸に平行な方向の回りに角度−θから角度+θまで周期100rpmまで揺動している。また、第1の固定ガイドローラ231は、揺動ガイドローラ220の真横方向に距離D=250mmの位置に設置され、揺動ガイドローラ220のローラと同様にローラ外径が150mm、ローラ幅が30mmであるが、その回転軸が固定されていると共に、ローラ表面の中央部に光ファイバ転動抑止手段としてのV字型の狭溝が設けられている。このような条件で配置された光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ210、揺動ガイドローラ220、および第1の固定ガイドローラ231の組み合わせにより、有効に即ち揺動ガイドローラ220の揺動速度に対して高効率に光ファイバ200に所定のねじりを付加する。そしてこの点に本実施形態の特徴がある。
【0046】
次に、光ファイバ200に所定のねじりを有効に付加する方法を、図2および図3を用いて説明する。ここで、図2は図1の揺動ガイドローラ220および第1の固定ガイドローラ231を上から見た図、図3は図1の光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ210および揺動ガイドローラ220を横から見た図である。
【0047】
図2に示すように、揺動ガイドローラ220が引張りタワー軸に平行な方向の回りに角度+θだけ傾くと、この傾きによって光ファイバ200に横方向の力が加わり、揺動ガイドローラ220のローラ表面を光ファイバ200が転動する。そしてこの転動により、光ファイバ200にねじりが付与される。続いて、揺動ガイドローラ220は逆方向に角度−θだけ傾く。こうして、図中の両頭矢印に示されるように、揺動ガイドローラ220が角度+θから角度−θまで揺動する対称的な往復運動が繰り返されることにより、光ファイバ200に進行方向に対する時計回りのねじりと反時計回りのねじりとが交番的に付与される。
【0048】
このとき、揺動ガイドローラ220の次段の第1の固定ガイドローラ231が揺動ガイドローラ220の真横向の位置に同じローラ外径をもって設置されいるため、光ファイバ200の揺動ガイドローラ220のローラ表面に接触する長さは、揺動ガイドローラ220の円周角90°に相当するローラ円周とほぼ等しい長さになる。即ち、光ファイバ200は揺動ガイドローラ220のローラの一方の側面から底面まで接触し、その最底部で離脱する。このため、ローラの他方の側面において光ファイバ200の転動が生じて一方の側面における光ファイバ200の転動を妨害し、光ファイバ200を摺動させるという事態が阻止される。従って、揺動ガイドローラ220のローラの一方の側面における光ファイバ200の転動により、揺動ガイドローラ220の揺動速度に対して高効率に光ファイバ200にねじりを付与することができる。
【0049】
また、第1の固定ガイドローラ231のローラ表面の中央部に光ファイバ転動抑止手段としてのV字型の狭溝250が設けられており、第1の固定ガイドローラ231でガイドされる光ファイバ200はこのV字型の狭溝250に挿着される。このため、第1の固定ガイドローラ231のローラ表面で光ファイバ200が転動して光ファイバ200にねじりを付与するための揺動ガイドローラ220における転動を妨害するという事態が阻止される。従って、V字型の狭溝250によって第1の固定ガイドローラ231のローラ表面での光ファイバ200の転動を抑止することにより、揺動ガイドローラ220の揺動速度に対して高効率に光ファイバ200にねじりを付与することができる。
【0050】
図3に示すように、揺動ガイドローラ220が引張りタワー軸に平行な方向の回りに角度+θだけ傾き、この揺動ガイドローラ220のローラ表面を光ファイバ200が転動すると、この光ファイバ200の転動に連れて、揺動ガイドローラ220直前の線引き炉側の光ファイバ200も揺動ガイドローラ220の揺動方向に応動する。そしてこの光ファイバ200の応動が一定範囲を越えると、光ファイバ200に付与するねじり量が低減したり、樹脂被膜190をコーティングした光ファイバ200が偏肉したりする原因となるが、1対のガイドローラ210が揺動ガイドローラ220の真上方向に設置されているため、光ファイバ200の応動が一定以上になると、1対のガイドローラ210の一方のローラに接触し、それ以上の光ファイバ200の応動が阻止される。従って、1対のガイドローラ210が光ファイバ200の応動を抑制することにより、光ファイバ200に付与されるねじり量の低減や、樹脂被膜190をコーティングした光ファイバ200の偏肉を抑止することができる。
【0051】
このように本実施形態の光ファイバの製造方法によれば、光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ210、揺動ガイドローラ220、および第1の固定ガイドローラ231を組み合わせることにより、揺動ガイドローラ220がその揺動運動によってそのローラ表面に光ファイバ200を転動させ時計回りのねじりと反時計回りのねじりとを交番的に付与すると共に、光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ210と光ファイバ転動抑止手段を設けた第1の固定ガイドローラ231とが揺動ガイドローラ220のローラ表面での光ファイバ200のスムーズな転動を補助するため、揺動ガイドローラ220の揺動速度に対して高効率に光ファイバ200にねじりを付与することができる。
【0052】
また、本実施形態の光ファイバの製造方法によれば、揺動ガイドローラ220のローラ表面で光ファイバ200を転動させる際に、光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ210により、光ファイバ200の応動を抑制することができるため、樹脂被膜190をコーティングした光ファイバ200の偏肉を抑止することができる。
【0053】
従って、本発明の光ファイバ200は、上記の製造方法により製造されたものであって、コア部分と前記コア部分を覆うクラッド部分を備え、時計回りのねじりと反時計回りのねじりとが交番的に付与されているため、たとえコア部分およびクラッド部分の断面形状が真円形の同心円状でなくとも、長尺の光ファイバ全体として、真円形の同心円状である場合と等価的に偏波分散を抑制することができる。
【0054】
また、本発明の光ファイバ200は、樹脂被膜190をコーティングした光ファイバ200の偏肉が抑止されているため、光ファイバ200の断面における応力分布が非対称となることが防止され、光ファイバ200をケーブル化した場合の強度を向上させることができる。
【0055】
なお、上記実施形態においては、揺動ガイドローラ220の揺動運動は、図2に示されるような角度−θから角度+θまでの対称的な往復運動であったが、これに限定されず、例えば角度0から角度+θまで揺動する非対称の往復運動であってもよい。この場合は、光ファイバ200には間欠的にねじりが付与される。また、揺動ガイドローラ220の回転軸の方向に揺動する対称的な往復運動であってもよい。この場合は、上記実施形態の場合と同様に、光ファイバ200には時計回りのねじりと反時計回りのねじりとが交番的に付与される。
【0056】
また、上記実施形態においては、第1の固定ガイドローラ231の光ファイバ転動抑止手段としてのV字型の狭溝250を設けたが、この代わりにU字型の狭溝、または凹形状の狭溝を設けても、同様の効果を奏することが可能である。
【0057】
次に、上記実施形態の本質的部分である光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ210、揺動ガイドローラ220、および第1の固定ガイドローラ231の効果を確認し、その最適条件を求めるために本発明者が行った実験およびその結果について説明する。
【0058】
第1の実験は、光ファイバ転動抑止手段を設けた第1の固定ガイドローラ231によって光ファイバ200をガイドすることによる効果を確認するためのものである。即ち、第1の固定ガイドローラ231に光ファイバ転動抑止手段としてのV字型の狭溝250を設け、このV字型の狭溝250に光ファイバ200を挿着させてガイドした場合と、第1の固定ガイドローラ231に光ファイバ転動抑止手段を設けず、そのローラ表面においても光ファイバが転動可能な構造としてガイドした場合とを比較した。なお、その他の諸条件は、上記図1および図2を用いて説明した場合と同様であるが、揺動ガイドローラ220の揺動周期は0から200rpmまで変化させた。
【0059】
この第1の実験の結果を、図4のグラフに示す。このグラフから明らかなように、第1の固定ガイドローラ231に光ファイバ転動抑止手段を設けず、そのローラ表面においても光ファイバが転動可能な構造とした場合、揺動ガイドローラ220の揺動周期を変化させても光ファイバ200の偏波分散は低減されない。これに対して、第1の固定ガイドローラ231に光ファイバ転動抑止手段としてのV字型の狭溝250を設けた場合、全ての揺動周期において光ファイバ200の偏波分散が低減されており、特に揺動周期100〜150rpmにおいてその効果が顕著である。
【0060】
従って、第1の実験により、光ファイバ転動抑止手段を設けた第1の固定ガイドローラ231は、揺動ガイドローラ220のローラ表面で光ファイバ200がスムーズに転動し、揺動ガイドローラ220の揺動速度に対して高効率に光ファイバ200にねじりを付与するように補助していることが確認される。
【0061】
第2の実験は、揺動ガイドローラ220と第1の固定ガイドローラ231との相対的設置位置についての最適条件を求めるためのものである。即ち、図5(a)に示すように、揺動ガイドローラ220から第1の固定ガイドローラ231までの水平方向の距離Dをパラメータとして(D=180mm、250mm、500mm)、揺動ガイドローラ220の最底部に対する第1の固定ガイドローラ231の最底部の相対的高さΔh(下方向を正、上方向を負とする)を変化させて場合における光ファイバ200の偏波分散を測定した。なお、その他の諸条件は、上記図1および図2を用いて説明した場合と同様である。
【0062】
この第2の実験の結果を、図5(b)のグラフに示す。このグラフから明らかなように、揺動ガイドローラ220の最底部に対する第1の固定ガイドローラ231の最底部の相対的高さΔhが0≦Δh<150mmの場合、即ち揺動ガイドローラ220の最底部と第1の固定ガイドローラ231の最底部とが同一の高さかまたは第1の固定ガイドローラ231の最底部が相対的に低い場合の方が、相対的高さΔhが−150mm<Δh<0の場合、即ち第1の固定ガイドローラ231の最底部が相対的に高い場合よりも、光ファイバ200の偏波分散が大幅に低減される。また、揺動ガイドローラ220から第1の固定ガイドローラ231までの水平方向の距離Dが長くなるほど光ファイバ200の偏波分散が低減されるが、相対的高さΔhが0≦Δh<150mmにおいてはそれほど大きな差を生じない。
【0063】
これは、相対的高さΔhが0≦Δh<150mmの場合、光ファイバ200の揺動ガイドローラ220のローラ表面に接触する長さが円周角90°に相当するローラ円周と等しいかまたはそれ以下の長さになるため、光ファイバ200が揺動ガイドローラ220のローラの一方の側面から底面まで接触し、その最底部またはその直前で離脱するのに対し、相対的高さΔhが−150mm<Δh<0の場合、光ファイバ200の揺動ガイドローラ220のローラ表面に接触する長さが円周角90°に相当するローラ円周を越える長さになるため、光ファイバ200が揺動ガイドローラ220のローラの一方の側面から底面を経て他方の側面に至るまで接触するという相違に起因する。即ち、後者の場合、ローラの他方の側面においても光ファイバ200の転動が生じるため、光ファイバ200にねじりを付与する一方の側面における転動を妨害する事態が発生するが、前者の場合、かかる事態が発生しないため、光ファイバ200をスムーズな転動させ、揺動ガイドローラ220の揺動速度に対して高効率に光ファイバ200にねじりを付与することができることになる。
【0064】
従って、第2の実験により、光ファイバ200の揺動ガイドローラ220のローラ表面に接触する長さが、揺動ガイドローラ220の円周角90°に相当するローラ円周と等しいかまたはそれ以下の長さになるように、揺動ガイドローラ220と第1の固定ガイドローラ231との相対的設置位置を調整することが望ましいことが確認される。
【0065】
なお、ここでは、揺動ガイドローラ220と第1の固定ガイドローラ231の各ローラ外径が等しい場合について述べているが、異なる場合であっても、揺動ガイドローラ220の最底部と第1の固定ガイドローラ231の最底部との相対的高さΔhに着目すればよい。このことは、揺動ガイドローラ220と第1の固定ガイドローラ231の各ローラ外径を変化させることによっても、光ファイバ200の揺動ガイドローラ220のローラ表面に接触する長さを調整することができることを意味する。
【0066】
第3の実験は、揺動ガイドローラ220のローラ表面の最適材質を求めるためのものである。即ち、上記図1および図2に示す場合においては、ローラ表面の材質としてローラ自体の材質であるアルミニウムを用いたが、ローラ表面の材質を種々変化させて光ファイバ200の偏波分散を測定した。なお、その他の諸条件は、上記図1および図2を用いて説明した場合と同様であるが、揺動ガイドローラ220の揺動周期は0から200rpmまで変化させた。
【0067】
この第3の実験の結果を、図6のグラフに示す。このグラフから明らかなように、そもそも揺動ガイドローラ220を揺動させない場合には、ローラ表面の材質の相違による差はないが、揺動させた場合には、全ての揺動周期においてローラ表面の材質がウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アルミニウム、ベークライトの順番で光ファイバ200の偏波分散が低減されており、特に揺動周期100〜150rpmにおけるウレタン系樹脂の場合、次いでアクリル系樹脂の場合に、光ファイバ200の偏波分散の低減が顕著である。
【0068】
この光ファイバ200の偏波分散の低減効果は、光ファイバ200表面にコーティングされている樹脂被膜190に対するローラ表面の材質の摩擦係数の大きさに対応している。即ち、光ファイバ200表面の樹脂被膜190に対するローラ表面の材質の摩擦係数が大きいほど、光ファイバがローラ表面を摺動することなく理想的に転動し、この転動により光ファイバ200にねじりが付与されるため、光ファイバ200の偏波分散が低減することになる。
【0069】
従って、第3の実験により、光ファイバ200が接触する揺動ガイドローラ220のローラ表面は、光ファイバ200表面の樹脂被膜190との摩擦係数が大きい樹脂で覆われていることが好ましく、その樹脂としてウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂が好適であることが確認される。
【0070】
第4の実験は、揺動ガイドローラ220のローラ表面における転動性と光ファイバ200の線引張力との関係を求めるためのものである。即ち、上記図1および図2に示すように、ローラ表面の材質としてローラ自体の材質であるアルミニウムを用い、揺動周期を100rpmに設定し、線引張力を変化させて転動回数を観測した。なお、光ファイバ200の被覆外径は250μmとした。
【0071】
この第4の実験の結果を、図7のグラフに示す。このグラフから明らかなように、転動性の向上は、線引張力が4.0kg/mm2 以上で現れる。そして、線引張力が16kg/mm2 を超えると断線が発生する。
【0072】
従って、第4の実験により、光ファイバ200の線引張力は、4.0〜16kg/mm2 が好適であることが確認される。
【0073】
第5の実験は、光ファイバ200の進行方向に自由に回転する光ファイバ揺動抑制用の1対のガイドローラ210の揺動ガイドローラ220に対する相対的設置位置および1対のガイドローラ210の間隔についての最適条件を求めるためのものである。即ち、図8(a)に示すように、揺動ガイドローラ220から上方の1対のガイドローラ210までの垂直方向の距離Lをパラメータとし(L=30mm、50mm、100mm、200mm)、1対のガイドローラ210の間隔dを1mmから8mmまで変化させて場合における光ファイバ200の偏波分散を測定した。なお、その他の諸条件は、上記図1および図2を用いて説明した場合と同様である。また、1対のガイドローラ210を光ファイバ200の進行方向に自由に回転できるようにした効果を確認するため、回転できないように固定した場合についても測定した。
【0074】
この第5の実験の結果を、図8(b)のグラフに示す。このグラフから明らかなように、揺動ガイドローラ220から1対のガイドローラ210までの垂直方向の距離Lが短くなるほど光ファイバ200の偏波分散が低減され、1対のガイドローラ210の間隔dが小さくなるほど光ファイバ200の偏波分散が低減される傾向にある。特にL=30mmの場合、dの大きさを問わず大幅に低減され、L=50mmの場合、d=1mm〜2mmで大幅に低減される。
【0075】
これは、1対のガイドローラ210が、揺動ガイドローラ220の揺動に連れて生じる光ファイバ200の応動を一定範囲内に抑制して、光ファイバ200の応動に起因する光ファイバ200のねじり量の低減を抑止していることを意味する。そして揺動ガイドローラ220から1対のガイドローラ210までの垂直方向の距離Lが短ければ短いほど、また1対のガイドローラ210の間隔dが小さければ小さいほど、光ファイバ200の応動を抑制する効果が大きくなるため、それに応じて光ファイバ200の偏波分散の低減効果も大きくなっていると考えられる。
【0076】
また、1対のガイドローラ210が回転しないようにした場合は、距離Lの大きさの如何によらず、一般的に1対のガイドローラ210が回転する場合よりも光ファイバ200の偏波分散が大きい。但し、間隔dが大きくなるほど光ファイバ200の偏波分散が低減される傾向にあり、d=10mmでは、1対のガイドローラ210が回転する場合との差が殆どなくなる。
【0077】
更に、第5の実験と同様の条件で、樹脂被膜190をコーティングした光ファイバ200の偏肉率を測定した。なお、偏肉率が0%のとき、光ファイバ200のコア部分およびクラッド部分の断面形状が真円形の同心円状になるものとする。この測定結果は、グラフには図示しないが、距離Lの大きさの如何によらず、間隔d=1mmにおいて偏肉率は15%、間隔d=2mmにおいて偏肉率は20%、間隔d=5mmにおいて偏肉率は35%、間隔d=8mmにおいて偏肉率は40%、間隔d=10mmにおいて偏肉率は45%となった。即ち、間隔dが小さくなるほど偏肉率が低下し、樹脂被膜190をコーティングした光ファイバ200の偏肉が減少する傾向にある。
【0078】
これは、1対のガイドローラ210の間隔dが小さければ小さいほど光ファイバ200の応動を抑制し、揺動ガイドローラ220のローラ表面で光ファイバ200をスムーズに転動させることができるため、この光ファイバ200のスムーズな転動により、樹脂被膜190をコーティングした光ファイバ200の偏肉率が低下すると考えられる。
【0079】
従って、第5の実験により、光ファイバ200の進行方向に自由に回転する光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ210は、揺動ガイドローラ220のローラ表面で光ファイバ200がスムーズに転動し、揺動ガイドローラ220の揺動速度に対して高効率に光ファイバ200にねじりを付与するように補助していることが確認されると共に、その効果は、揺動ガイドローラ220までの垂直方向の距離Lが短いほど、また1対のガイドローラ210の間隔dが小さいほど大きくなることが確認される。また、樹脂被膜190をコーティングした光ファイバ200の偏肉が減少するのことが確認されると共に、その効果は、1対のガイドローラ210の間隔dが小さいほど大きくなることが確認される。
【0080】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した通り、本発明の光ファイバの製造方法によれば、回転軸が周期的に揺動する第1のガイドローラで光ファイバをガイドすると共に、第1のガイドローラの揺動により、そのローラ表面に前記光ファイバを転動させる第1のステップと、第1のガイドローラを経由した光ファイバを、第1のガイドローラの次段に設置され、回転軸が固定された第2のガイドローラでガイドすると共に、第2のガイドローラに設けた光ファイバ転動抑止手段により、そのローラ表面を光ファイバが転動することを抑止する第2のステップとを備えることにより、光ファイバに有効に所定のねじりを付与することができる。
【0081】
また、上記第1のガイドローラの前段に設置した光ファイバ応動抑制手段によって第1のガイドローラの揺動によって生ずる光ファイバの応動を抑制するステップを更に備えることにより、光ファイバに更に有効に所定のねじりを付与することができると共に、光ファイバ被膜の偏肉を抑止することができる。
【0082】
更に、本発明の光ファイバは、上記の製造方法により製造され、有効に所定のねじりが付与されているため、たとえコア部分およびクラッド部分の断面形状が真円形の同心円状でなくとも、長尺の光ファイバ全体として、真円形の同心円状である場合と等価的に偏波分散を抑制することができる。また、光ファイバ被膜の偏肉が抑止されているため、光ファイバの断面における応力分布が非対称となることが抑制され、光ファイバをケーブル化した場合の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバの製造方法の実施形態の製造工程図である。
【図2】図1の揺動ガイドローラおよび第1の固定ガイドローラを上から見た図である。
【図3】図1の光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラおよび揺動ガイドローラを横から見た図である。
【図4】第1の固定ガイドローラにおける光ファイバ転動抑止手段の有無と光ファイバの偏波分散との関係を説明するグラフである。
【図5】揺動ガイドローラおよび第1の固定ガイドローラの相対的設置位置と光ファイバの偏波分散との関係を説明するグラフである。
【図6】揺動ガイドローラのローラ表面の材質と光ファイバの偏波分散との関係を説明するグラフである。
【図7】線引張力と揺動ガイドローラのローラ表面での転動性との関係を説明するグラフである。
【図8】光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラの揺動ガイドローラに対する相対的設置位置および1対のガイドローラの間隔と光ファイバの偏波分散との関係を説明するための図である。
【図9】従来の光ファイバの製造方法の製造工程図である。
【図10】従来の光ファイバにねじりを付加する方法を説明するための図(その1)である。
【図11】従来の光ファイバにねじりを付加する方法を説明するための図(その2)である。
【符号の説明】
100…光ファイバ母材、110…線引き炉、120…ヒータ、130…光ファイバ、140…レーザ外径測定器、150…線引き制御部、161…第1の樹脂コーティングダイス、162…第2の樹脂コーティングダイス、171、172…液状樹脂、181、182…UVランプ、190…樹脂被膜、200…光ファイバ、210…光ファイバ応動抑制用の1対のガイドローラ、220…揺動ガイドローラ、231…第1の固定ガイドローラ、232…第2の固定ガイドローラ、240…ドラム、250…V字型の狭溝、300…光ファイバ母材、310…線引き炉、320、321、321a、321b、322、322a、322b、…光ファイバ、330…直径モニタ、340…コーティング処理装置、350…コーティング同心性モニタ、360…回復ステーション、370…コーティング直径モニタ、381…第1のガイドローラ、382…第2のガイドローラ、383…第3のガイドローラ、390…引張りキャプスタン、400…領域。
Claims (9)
- 光ファイバ母材から光ファイバを線引きする第1の工程と、前記光ファイバに所定の被覆材料をコーティングする第2の工程と、前記所定の被覆材料をコーティングした前記光ファイバに所定のねじりを付与する第3の工程とを備える光ファイバの製造方法であって、
前記第3の工程は、前記所定の被覆材料をコーティングした前記光ファイバを、周期的に揺動する第1のガイドローラでガイドすると共に、前記第1のガイドローラの揺動により、前記第1のガイドローラのローラ表面に前記光ファイバを転動させる第1のステップと、
前記第1のガイドローラを経由した前記光ファイバを、前記第1のガイドローラの次段に設置され、回転軸が固定された第2のガイドローラでガイドすると共に、前記第2のガイドローラに設けた光ファイバ転動抑止手段により、前記第2のガイドローラのローラ表面を前記光ファイバが転動することを抑止する第2のステップと
を備える、ことを特徴とする光ファイバの製造方法。 - 前記第2のガイドローラに設けた前記光ファイバ転動抑止手段は、前記第2のガイドローラのローラ表面に形成され、前記光ファイバを挿着するV字型、U字型、または凹形状の狭溝である、ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバの製造方法。
- 前記第1のガイドローラおよび前記第2のガイドローラの各ローラ外径および設置位置を調整することにより、前記光ファイバの前記第1のガイドローラのローラ表面に接触する長さが、前記第1のガイドローラの円周角90°に相当するローラ円周とほぼ等しい長さか或いはそれ以下の長さになっている、ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバの製造方法。
- 前記光ファイバが接触する前記第1のガイドローラのローラ表面は、前記光ファイバの前記所定の被覆材料に対する摩擦係数が大きい樹脂で覆われている、ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバの製造方法。
- 前記第1のガイドローラのローラ表面を覆う前記樹脂は、ウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂である、ことを特徴とする請求項4記載の光ファイバの製造方法。
- 前記光ファイバの線引張力は、4.0kg/mm2 以上、かつ、16kg/mm2 以下である、ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバの製造方法。
- 前記第3の工程は、前記第1のガイドローラの前段に設置した光ファイバ応動抑制手段により、前記第1のガイドローラの揺動によって生ずる前記光ファイバの応動を抑制するステップを更に備える、ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバの製造方法。
- 前記光ファイバ応動抑制手段は、前記第1のガイドローラ上方に所定の距離をもって設置され、前記光ファイバを通過させるための所定の間隔をもって相対する1対以上のガイドローラである、ことを特徴とする請求項7記載の光ファイバの製造方法。
- コア部分と前記コア部分を覆うクラッド部分を備え、所定のねじりが付与された光ファイバであって、請求項1記載の製造方法により製造された、ことを特徴とする光ファイバ。
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