JP2022033709A - エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 Download PDF

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啓之 平野
Hiroyuki Hirano
海 山本
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Abstract

【課題】弾性率、変形能力、破壊靱性、および耐熱性のバランスに優れたエポキシ樹脂組成物、および、該エポキシ樹脂組成物からなるプリプレグ、ならびに該プリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料を提供すること。【解決手段】次の成分[A]、[B]、[C]、[D]および[E]すべてを含み、下記条件(1)、(2)、(3)および(4)をすべて満たす、エポキシ樹脂組成物。[A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂[B]:ビスフェノールF型エポキシ樹脂[C]:平均エポキシ当量が1,400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂[D]:コアシェル型ゴム粒子[E]:ジシアンジアミド(1)成分[B]が2種の[B1]および[B2]からなり、[B1]および[B2]の平均エポキシ当量が、5<[B1]の平均エポキシ当量/[B2]の平均エポキシ当量<10を満たす(2)全エポキシ100質量部に対し、成分[D]を6~18質量部含む(3)135℃で2時間硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物の動的粘弾性測定でのゴム状態の貯蔵弾性率G’が8<G’<15(4)135℃で2時間硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度が140℃以上【選択図】なし

Description

本発明は、スポーツ用途、一般産業用途、および航空宇宙用途に適した繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物、ならびに、これをマトリックス樹脂として用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料に関するものである。
繊維強化プラスチックの製造には、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸したシート状の中間基材(プリプレグ)が汎用される。プリプレグを積層、加熱して熱硬化性樹脂を硬化する方法で成形体が得られ、航空機やスポーツなど、様々な分野へ適用されている。プリプレグのマトリックス樹脂として用いられる熱硬化性樹脂としては、耐熱性、接着性、機械強度に優れることから、エポキシ樹脂が汎用される。近年、繊維強化複合材料の適用が拡大するにつれて、部材に要求される性能が多様化し、プリプレグに用いられるエポキシ樹脂の高性能化が望まれている。具体的には、エポキシ樹脂硬化物の弾性率、変形能力、破壊靱性、および耐熱性を高め、高温下で使用でき、かつ機械特性や耐衝撃性に優れた繊維強化複合材料が求められている。
一般に、エポキシ樹脂硬化物の弾性率と耐熱性を高いものとする手法として、多官能のアミン型エポキシ樹脂を配合する方法が知られている。しかしながら、多官能のアミン型エポキシ樹脂を配合すると、弾性率や耐熱性が高いエポキシ樹脂硬化物を得られる一方、得られたエポキシ樹脂硬化物の変形能力や破壊靱性が低くなる。
変形能力が高いエポキシ樹脂硬化物を得るには、エポキシ樹脂硬化物の架橋密度を低いものとする手法が知られている。また、破壊靱性が高いエポキシ樹脂硬化物を得るためには、エポキシ樹脂にゴム粒子などを添加したエポキシ樹脂組成物とする技術が知られている。しかしながら、前記技術の適用ではエポキシ樹脂硬化物の耐熱性や弾性率が大幅に低いものとなるため、エポキシ樹脂硬化物の弾性率、変形能力、破壊靱性、および耐熱性を高いレベルで両立する技術構築が望まれている。
特許文献1には、架橋密度の低いエポキシ樹脂硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物に粒子状高靱性化剤を添加することで、変形能力と破壊靱性に優れるエポキシ樹脂硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、耐熱性に優れるエポキシ樹脂硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物に、特定構造を有する多官能脂肪族エポキシ樹脂を少量配合することで、耐熱性と機械特性に優れるエポキシ樹脂硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂を含むことで、耐熱性、靱性および弾性率に優れるエポキシ樹脂硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物が開示されている。
特開平11-172076号 特開2014-167103号 特開2015-157958号
特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化物の変形能力と破壊靱性に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えるが、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を高いものとすることに関する開示や示唆はない。
特許文献2に記載のエポキシ樹脂組成物は、耐熱性と機械強度に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えるものの、そのエポキシ樹脂硬化物の変形能力は不十分なものであった。また、エポキシ樹脂硬化物の破壊靱性を高いものとすることに関する言及もなかった。
特許文献3に記載のエポキシ樹脂組成物は、耐熱性と弾性率に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えるものの、そのエポキシ樹脂硬化物の破壊靱性は不十分であり、エポキシ樹脂硬化物の変形能力を高いものとすることに関する具体的な言及はなかった。
本発明は、かかる従来技術の欠点を改良し、弾性率、変形能力、破壊靱性、および耐熱性のバランスに優れるエポキシ樹脂組成物、および、該エポキシ樹脂組成物と強化繊維からなるプリプレグ、ならびに該プリプレグを硬化させてなる、耐熱性、機械特性および耐衝撃性に優れた繊維強化複合材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成からなるエポキシ樹脂組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は、以下の構成からなる。
次の成分[A]、[B]、[C]、[D]および[E]すべてを含み、下記条件(1)、(2)、(3)および(4)をすべて満たす、エポキシ樹脂組成物。
[A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂
[B]:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
[C]:平均エポキシ当量が1,400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂
[D]:コアシェル型ゴム粒子
[E]:ジシアンジアミド
(1)成分[B]が2種の[B1]および[B2]からなり、[B1]および[B2]の平均エポキシ当量が、5<[B1]の平均エポキシ当量/[B2]の平均エポキシ当量<10を満たす
(2)全エポキシ樹脂100質量部に対し、成分[D]を6~18質量部含む
(3)135℃で2時間硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物の動的粘弾性測定でのゴム状態の貯蔵弾性率G’が8<G’<15
(4)135℃で2時間硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度が140℃以上。
また、本発明のプリプレグは、前記エポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグである。
さらに、本発明の繊維強化複合材料は、前記プリプレグが硬化されてなる繊維強化複合材料である。
本発明によれば、弾性率、変形能力、破壊靱性、および耐熱性のバランスに優れるエポキシ樹脂硬化物を与えるため、本発明のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂とした繊維強化複合材料は、優れた機械特性、耐衝撃性、および耐熱性を発現することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、[A]3官能以上のアミン型エポキシ樹脂、[B]ビスフェノールF型エポキシ樹脂、[C]平均エポキシ当量が1400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂、[D]コアシェル型ゴム粒子、[E]ジシアンジアミドを必須成分として含む。まず、これらの構成要素について説明する。
(成分[A])
本発明における成分[A]は3官能以上のアミン型エポキシ樹脂である。
かかる成分[A]としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシレンジアミンなどが挙げられる。
前記テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434、ELM434VL(以上、住友化学工業(株)製)、“jER(登録商標)”604(三菱ケミカル(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY720、MY721(以上、ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ社製)等が挙げられる。前記トリグリシジルアミノフェノールまたはトリグリシジルアミノクレゾールの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM100、ELM120(以上、住友化学工業(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY0500、MY0510、MY0600(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等が挙げられる。前記テトラグリシジルキシレンジアミンの市販品としては、“TETRAD(登録商標)”-X(三菱ガス化学(株)製)等が挙げられる。
成分[A]は、全エポキシ樹脂100質量部に対し、30~50質量部含むことが好ましく、35~45質量部含むことがさらに好ましい。上記範囲を満たすことで、さらに樹脂硬化物の弾性率と強度、耐熱性に優れたエポキシ樹脂硬化物を得られる。
(成分[B])
本発明における成分[B]はビスフェノールF型エポキシ樹脂である。
かかるビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”806、807、4004P、4005P、4007P、4010P(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エポトート(登録商標)”YDF2001、YDF2004、YDF2005RD(以上、東都化成(株)製)、“Epiclon(登録商標)”830、835(DIC(株)製)などが挙げられる。
成分[B]は、全エポキシ樹脂100質量部に対し、20~40質量部含むことが好ましい。上記範囲を満たすことで、樹脂硬化物の弾性率を損なうことなく、さらに変形能力および強度を高めることができる。
(成分[C])
本発明における成分[C]は平均エポキシ当量が1,400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
かかる平均エポキシ当量が1400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、“jER(登録商標)”1007、1009、1009F、1010(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD-017、019、020G(以上、東都化成(株)製)などが挙げられる。
(成分[D])
本発明における成分[D]はコアシェル型ゴム粒子である。
まず、ゴム粒子とはゴム弾性を有する粒子である。コアシェル型ゴム粒子は、ゴム粒子の一種であり、エラストマーを主成分とする粒子状のコア成分の表面に、マトリックス樹脂との親和性を高めるための、コア部分とは異なる成分を含むシェル成分を修飾した粒子であり、コア成分の表面の一部あるいは全体をシェル成分で被覆した粒子である。シェル成分で被覆することにより、ゴム粒子よりもエポキシ樹脂組成物中での分散性が良好となり、樹脂靱性向上の効果が得られやすくなる。前記コア成分およびシェル成分の構成要素は特に限定されず、コアおよびシェル成分を有していればよいが、樹脂靱性の向上の観点からコア成分がブタジエンやスチレンをモノマー成分とするポリマーで構成されることが好ましい。
かかる成分[D]としては、“カネエース(登録商標)”MX-125、MX-150、MX-154、MX-257、MX-267、MX-416、MX-451、MX-EXP(HM5)(以上、カネカ(株)製)、“PARALOID(登録商標)”EXL-2655、EXL-2668(以上、Dow Chemical社製)などを用いることができる。これらの中には、エポキシ樹脂中に予め分散したいわゆるマスターバッチの状態の製品もある。
(成分[E])
本発明における成分[E]はジシアンジアミドである。
かかるジシアンジアミドの市販品としては、DICY7、DICY15(以上、三菱ケミカル(株)製)などが挙げられる。
成分[E]の配合量は、成分[E]の活性水素モル数を全エポキシ樹脂100質量部中の活性エポキシ基モル数で除した値が0.8~1.2当量となるように配合されることが好ましく、0.9~1.1当量となるように配合することがより好ましい。活性エポキシ基モル数と活性水素モル数の比率がこの範囲内であれば、良好な耐熱性や破壊靭性および機械特性などを有するエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。ここで、成分[E]の活性水素モル数は、ジシアンジアミドの質量をジシアンジアミドの活性水素当量である12で除することにより求められ、全エポキシ樹脂100質量部中の活性エポキシ基モル数は、各エポキシ樹脂活性基のモル数の和のことであり、下式で表される。
全エポキシ樹脂100質量部中の活性エポキシ基モル数=(エポキシ樹脂Aの質量/エポキシ樹脂Aのエポキシ当量)+(エポキシ樹脂Bの質量/エポキシ樹脂Bのエポキシ当量)+・・・・+(エポキシ樹脂Wの質量/エポキシ樹脂Wのエポキシ当量)。
成分[E]は、芳香族ウレア化合物などの硬化促進剤との併用で、成分[E]が単独で含有される場合と比較し、エポキシ樹脂組成物の硬化温度を相対的に低いものとすることができる。硬化促進剤としては、例えば、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(DCMU)、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、フェニルジメチルウレア(PDMU)、2,4-トルエンビス(3,3-ジメチルウレア)(TBDMU)などが挙げられる。また、芳香族ウレア化合物の市販品としては、DCMU99(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“Omicure(登録商標)”U-24(ピィ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)、“Dyhard(登録商標)”UR505(4,4’-メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、AlzChem社製)などが挙げられる。
ここで、硬化促進剤としては、TBDMUを用いることが特に好ましい。成分[E]とTBDMUを併用することで、耐熱性と引張破断伸度との両方が共に高いエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。
本発明では、成分[A]、[B]、[C]、[D]および[E]すべてを含むことで、弾性率、変形能力、破壊靱性、および耐熱性のバランスに優れるエポキシ樹脂硬化物を与え、かつプリプレグに好適な粘度と保存安定性を有するエポキシ樹脂組成物が得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分[B]が2種の[B1]および[B2]からなり、[B1]および[B2]の平均エポキシ当量が、5<[B1]の平均エポキシ当量/[B2]の平均エポキシ当量<10を満たす必要がある(条件(1))。なお、[B1]および[B2]について、より平均エポキシ当量が大きいものを[B1]、平均エポキシ当量が小さいものを[B2]とする。成分[B]が上記条件を満たさない場合、エポキシ樹脂硬化物の変形能力が著しく低下し、繊維強化複合材料の機械特性や耐衝撃性が不十分なものとなる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分[B]が上記範囲を満たすことで、高い変形能力を示すエポキシ樹脂硬化物を得ることが可能となる。その理由は定かではないが、[B1]および[B2]の平均エポキシ当量が特定の範囲にあることで、成分[A]から成分[E]をすべて含むエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を変形させた際に発生する、破壊の起点となる脆弱部分が減少したためと推測している。
成分[B1]の平均エポキシ当量は750~2000の範囲にあることが好ましく、成分[B2]の平均エポキシ当量は150~200の範囲にあることが好ましい、
成分[B]の平均エポキシ当量は、例えば、JIS K7236(2001)に従って電位差滴定を実施することにより、評価することができる。
ここで、エポキシ樹脂硬化物の変形能力とは、エポキシ樹脂硬化物の曲げ破断ひずみと引張破断伸度に相当する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の曲げ弾性率、曲げ強度および曲げ破断ひずみは、例えば、JIS K7171(1994)に従って3点曲げ試験を実施することにより、評価することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の引張破断伸度、引張弾性率、および引張強度は、ダンベル状に加工した樹脂硬化板を、JIS K7161(1994)に従って引張試験を実施することにより、評価することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、全エポキシ樹脂100質量部に対し、成分[D]を6~18質量部含む必要がある(条件(2))。成分[D]が上記範囲にあることで、弾性率、および耐熱性を維持したまま、優れた破壊靱性を有するエポキシ樹脂硬化物が得られる。全エポキシ樹脂100質量部に対し、成分[D]が6質量部未満の場合、破壊靱性は不十分なものとなり、成分[D]が18質量部を超える場合、エポキシ樹脂硬化物の弾性率が大幅に低いものとなるため、繊維強化複合材料の機械特性が不十分なものとなる。
なお、本発明のエポキシ樹脂硬化物の破壊靱性は、ASTM D5045-99に記載のSENB試験から得たK1c値から評価することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、135℃で2時間硬化して得られる硬化物の動的粘弾性測定でのゴム状態の貯蔵弾性率G’が8MPa<G’<15MPaであり、135℃で2時間硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度が140℃以上である必要がある(条件(3)、(4))。上記条件(3)、(4)を満たすことで、スポーツ、産業等広範な用途に適切な耐熱性を示しつつ、優れた変形能力を示すことが可能となる。ゴム状態の貯蔵弾性率が8MPa以下の場合、耐熱性が不足し、ゴム状態の貯蔵弾性率が15MPa以上の場合、耐熱性に優れるものの、変形能力が不足する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を135℃で2時間硬化して得られる硬化物の動的粘弾性測定でのゴム状態の貯蔵弾性率G’は、9MPa<G’<13MPaであることが耐熱性と変形能力のバランスの観点からさらに好ましい。
ここで、本発明のエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率は、JIS K7095(2018)に従って、DMA測定(動的粘弾性測定)の昇温測定を実施して得られる、貯蔵弾性率と温度の散布図から算出することができる。エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は、上記散布図において、ガラス領域に引いた接線と、ガラス転移領域に引いた接線との交点における温度である。また、エポキシ樹脂硬化物のゴム状態の貯蔵弾性率は、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度を50℃上回る温度における貯蔵弾性率と定義する。
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を失わない範囲において、成分[A]、[B]、[C]とは異なるその他のエポキシ樹脂を含むことができる。
その他のエポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても、複数種組み合わせてもよい。
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”825、827、828、1001、1004(以上、三菱ケミカル(株)製)などが挙げられる。
前記フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”152、154(以上、三菱ケミカル(株)製)などが挙げられる。
前記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“Epiclon(登録商標)”N660、670、690、695(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“Epiclon(登録商標)”HP7200L,HP7200,HP7200H,HP7200HH,HP7200HHH(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
前記アニリン型エポキシ樹脂の市販品としては、GAN(N,N-ジグリシジルアニリン)、GOT(N,N-ジグリシジル-o-トルイジン)(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、粘弾性を調整し、プリプレグのタッグやドレープ特性を改良する目的や、樹脂組成物の機械特性や破壊靭性がより高いエポキシ樹脂硬化物を得るなどの目的で、熱可塑性樹脂を用いることができる。かかる熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルスルホン、トリブロック共重合体などが挙げられる。
本発明では、全エポキシ樹脂100質量部に対して、成分[F]として2~10質量部のトリブロック共重合体を含むことが好ましく、特に好ましくは4~8質量部含む。かかる範囲のトリブロック共重合体を含むことで、該エポキシ樹脂組成物から得られるエポキシ樹脂硬化物をさらに高い破壊靱性を有するものとすることができる。
かかるトリブロック共重合体としては、“ナノストレングス(登録商標)”E20、E40、M22N、M52N、D51N(以上、アルケマ(株)製)などが挙げられる。
次に、本発明の繊維強化複合材料について説明する。本発明の繊維強化複合材料は前記プリプレグが硬化されてなる繊維強化複合材料である。また、本発明の繊維強化複合材料は、本発明のエポキシ樹脂組成物からなるプリプレグを積層した後、加熱し硬化させることにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物をマトリックス樹脂として含む繊維強化複合材料を得ることができる。以下に、製造方法を具体的に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、例えばニーダー、プラネタリーミキサー、3本ロールおよび2軸押出機といった機械を用いて混練してもよいし、均一な混練が可能であれば、ビーカーとスパチュラなどを用い、手で混ぜてもよい。
本発明のプリプレグは前記エポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグである。また、本発明のプリプレグは、前記の方法にて調製したエポキシ樹脂組成物を、強化繊維基材に含浸させて得ることができる。含浸させる方法としては、ホットメルト法(ドライ法)などを挙げることができる。ホットメルト法は、加熱により低粘度化した熱硬化性樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または離型紙などの上にエポキシ樹脂組成物をコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側または片側からこのフィルムを重ね、加圧加熱することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。この際、離型紙に塗布する樹脂の量を変えることで、プリプレグの繊維質量含有率を調整することができる。
本発明に用いられる強化繊維は特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが使用できる。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。軽量かつ高剛性な繊維強化複合材料が得られる観点から、炭素繊維を用いることが好ましい。
本発明の繊維強化複合材料を製造するに際しプリプレグ積層成形法において、熱および圧力を付与する方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などを適宜使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物から得られるエポキシ樹脂硬化物と、強化繊維を含む繊維強化複合材料は、スポーツ用途、航空宇宙用途および一般産業用途に好ましく用いられる。より具体的には、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバドミントンのラケットなどに好ましく用いられる。また、航空宇宙用途では、主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、および内装材等の二次構造材用途に好ましく用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、自転車、船舶および鉄道車両などの構造材に好ましく用いられる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載の態様に限定されるものではない。
本実施例で用いる構成要素は以下の通りである。
<使用した材料>
・成分[A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂
[A]-1 “アラルダイト(登録商標)”MY0510(アミノフェノール型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量101g/eq、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
[A]-2 “アラルダイト(登録商標)”MY0600(アミノフェノール型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量106g/eq、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
[A]-3 “スミエポキシ(登録商標)”ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、平均エポキシ当量120g/eq、住友化学工業(株)製)
[A]-4 “アラルダイト(登録商標)”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、平均エポキシ当量112g/eq、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)。
・成分[B]:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
[B]-1 “Epiclon(登録商標)”830(平均エポキシ当量170g/eq、DIC(株)製)
[B]-2 “jER(登録商標)”806(平均エポキシ当量168g/eq、三菱ケミカル(株)製)
[B]-3 “エポトート(登録商標)”YDF2001(平均エポキシ当量485g/eq、東都化成(株)製)
[B]-4 “エポトート(登録商標)”YDF2004(平均エポキシ当量950g/eq、東都化成(株)製)
[B]-5 “jER(登録商標)”4005P(平均エポキシ当量1,075g/eq、三菱ケミカル(株)製)
[B]-6 “jER(登録商標)”4007P(平均エポキシ当量2,250g/eq、三菱ケミカル(株)製)。
・成分[C]:平均エポキシ当量が1,400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂
[C]-1 “jER(登録商標)”1007(平均エポキシ当量1,975g/eq、三菱ケミカル(株)製)
[C]-2 “jER(登録商標)”1009(平均エポキシ当量2,850g/eq、三菱ケミカル(株)製)。
・成分[D]または成分[D]を含む原料:コアシェル型ゴム粒子([D]-3)またはコアシェル型ゴム粒子を成分[A]、成分[B]、成分[C]以外のエポキシ樹脂に分散したマスターバッチ([D]-1、[D]-2)
[D]-1 “カネエース(登録商標)”MX-125(成分[C]以外のビスフェノールA型エポキシ樹脂75質量%、および、スチレン-ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子25質量%)

[D]-2 “カネエース(登録商標)”MX-150(成分[C]以外のビスフェノールA型エポキシ樹脂60質量%、および、ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子40質量%)

[D]-3 “スタフィロイド(登録商標)”IM101(コアシェル型ゴム粒子)。
なお、「成分[D]または成分[D]を含む原料」を表1~4中では、「原料[D]」と略記する。
・成分[E]:ジシアンジアミド
[E]-1 DICY7T(三菱ケミカル(株)製)。
・硬化促進剤
“Omicure(登録商標)”U-24(2,4-トルエンビス(3,3-ジメチルウレア)、ピィ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)。
・熱可塑性樹脂
“ビニレック(登録商標)”K(ポリビニルホルマール、JNC(株)製)
“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)
“ナノストレングス(登録商標)”M22N(Bがブチルアクリレート(Tg:-54℃)、Mがメタクリル酸メチルと極性アクリル系モノマーのランダム共重合鎖からなるM-B-M型のブロック共重合体、アルケマ(株)製)。
・その他のエポキシ樹脂
“jER(登録商標)”828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量189g/eq、三菱ケミカル(株)製)
“jER(登録商標)”1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量475g/eq、三菱ケミカル(株)製)
“jER(登録商標)”1004(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量925g/eq、三菱ケミカル(株)製)
“jER(登録商標)”154(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量178g/eq、三菱ケミカル(株)製)
NC-7300L(ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量214g/eq、日本化薬(株)製)
“デナコール(登録商標)”EX-201(レゾルシノール型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量117g/eq、ナガセケムテックス(株)製)
“デナコール(登録商標)”EX-411(ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量229g/eq、ナガセケムテックス(株)製)
“Epiclon(登録商標)”HP4032H(ナフタレン型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量250g/eq、DIC(株)製)
式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂X(フルオレン型エポキシ樹脂、平均エポキシ当量281g/eq)
Figure 2022033709000001
(式(1)において、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Rは水素原子またはメチル基を示し、kは0~4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である)。
<エポキシ樹脂の平均エポキシ当量の測定方法>
ガラスビーカーに、成分[B]および[C]を、それぞれ約300mgとなるように秤量、投入し、さらに10mLのクロロホルムを添加した。秤量した成分がクロロホルムに溶解するまで、マグネティックスターラを用いて撹拌した。前記溶液に対し、酢酸を20mL添加し、つづいて臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液(0.4g/mL酢酸)を10mL添加し、撹拌した。前記溶液に電極を浸漬し、過塩素酸-酢酸標準液(0.1mol/L)にて電位差滴定を実施し、JIS K7236(2001)に従って、成分[B]および[C]の平均エポキシ当量を算出した。
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
ステンレスビーカーに、[E]ジシアンジアミド、および硬化促進剤以外の成分を所定量入れ、60~150℃まで昇温し、各成分が相溶するまで適宜混練した後、60℃まで降温させ、主剤成分を得た。別途、ポリエチレン製カップに所定量の“jER(登録商標)”828および[E]ジシアンジアミドを添加し、三本ロールを用いて混合物をロール間に2回通し、ジシアンジアミドマスターを作製した。所定の含有割合になるように上記で調製した主剤成分とジシアンジアミドマスターを60℃で混練し、最後に硬化促進剤を添加した後、60℃で30分間混練することにより、エポキシ樹脂組成物を得た。各例におけるエポキシ樹脂組成は表に示した通りである。
<エポキシ樹脂硬化物の曲げ特性の評価方法>
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、135℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、スパンを32mm、クロスヘッドスピードを10mm/分とし、JIS K7171(1994)に従って3点曲げを実施し、曲げ弾性率、曲げ強度および曲げひずみを測定した。この際、サンプル数n=6で測定した値の平均値を曲げ弾性率および曲げ強度の値として採用した。
<エポキシ樹脂硬化物の引張特性の評価方法>
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、135℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物を、JIS K7161(1994)に従って、1BA型のダンベル状に加工した。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、チャック間距離を58mmに設定し、試験速度1mm/分にて樹脂引張試験を実施し、引張弾性率、引張強度、および引張破断伸度を測定した。この際、サンプル数n=8で測定した値の平均値を引張弾性率、引張強度、および引張破断伸度の値として採用した。
<エポキシ樹脂硬化物の破壊靱性の評価方法>
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、6mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で、135℃の温度で2時間硬化させ、厚さ6mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物を、ASTM D5045-99に記載の試験片形状に加工を行った後、ASTM D5045-99に従ってSENB試験を実施した。この際、サンプル数n=16で測定した値の平均値をK1cの値として採用した。
<エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度と貯蔵弾性率の評価方法>
未硬化の樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、135℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。JIS K7095(2018)に従い、このエポキシ樹脂硬化物から、幅12.7mm、長さ45mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置(ARES W/FCO:TAインスツルメント社製)を用い、固体ねじり治具に試験片をセットし、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、ひずみ量0.08%にて、40~260℃の温度範囲について動的粘弾性測定を行った。この際、ガラス転移温度は、JIS K7095(2018)に従って、得られた貯蔵弾性率と温度のグラフ(散布図)において、ガラス領域に引いた接線と、ガラス転移温度領域に引いた接線との交点における温度とした。ゴム状態の貯蔵弾性率は、得られた貯蔵弾性率と温度のグラフ(散布図)において、ガラス転移温度+50℃の温度における貯蔵弾性率とした。本評価については、サンプル数n=1で測定を行った。
(実施例1)
エポキシ樹脂として“スミエポキシ(登録商標)”ELM434を55質量部、“jER(登録商標)”806を8質量部、“jER(登録商標)”4005Pを10質量部、“jER(登録商標)”1009を10質量部、コアシェル型ゴム粒子として“カネエース(登録商標)”MX-150を25質量部、ジシアンジアミドとしてDICY7Tを7質量部、硬化促進剤として“Omicure(登録商標)”U-24を2質量部用いて、前記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。
<エポキシ樹脂の平均エポキシ当量の測定方法>に従って、成分[B]の平均エポキシ当量を測定したところ、成分[B1]は168g/eq、成分[B2]は1,075g/eqであり、[B1]の平均エポキシ当量/[B2]の平均エポキシ当量は6.4であった。
<エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度と貯蔵弾性率の評価方法>に従って評価したところ、ガラス転移温度は173℃であり、ゴム状態の貯蔵弾性率は14.5MPaであった。
このエポキシ樹脂組成物について、<エポキシ樹脂硬化物の曲げ特性の評価方法>に従い、135℃にて2時間反応させて得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ特性を取得したところ、曲げ弾性率は3.1GPa、曲げ強度は140MPa、曲げ破断ひずみは11%であった。また、<エポキシ樹脂硬化物の引張特性の評価方法>に従い、135℃にて2時間反応させて得られたエポキシ樹脂硬化物の引張特性を取得したところ、引張弾性率は3.1GPa、引張強度は70MPa、引張破断伸度は7.2%と高い変形能力を示した。
さらに、前記<エポキシ樹脂硬化物の破壊靱性の評価方法>に従い、破壊靱性を評価したところ1.7MPa・m0.5と優れた破壊靱性を示した。
(実施例2~14)
樹脂組成をそれぞれ表1または表2に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物を作製した。表1または表2に示したエポキシ樹脂硬化物について、実施例1と同じ方法で、成分[B1]の平均エポキシ当量と成分[B2]の平均エポキシ当量、ゴム状態の貯蔵弾性率G’を取得した。各実施例のエポキシ樹脂組成物は、5<[B1]の平均エポキシ当量/[B2]の平均エポキシ当量<10を満たし、ゴム状態の貯蔵弾性率G’が8MPa<G’<15MPaを満たした。
各実施例のエポキシ樹脂組成物に関して、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した結果、全ての水準で良好な物性が得られた。
(比較例1)
表3に示した樹脂組成物について、特許文献1(特開平11-172076号)の実施例5に記載の方法でエポキシ樹脂組成物を作製した。該エポキシ樹脂組成物は成分[A]を含むが、成分[B]および成分[C]を含まない。実施例1と同じ方法でガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得したところ、ゴム状態の貯蔵弾性率は5.9MPaであり条件(3)を満たさず、ガラス転移温度は119℃と低いものであった。
また、前記<エポキシ樹脂硬化物の破壊靱性の評価方法>に従い、破壊靱性を評価したところ、1.6MPa・m0.5であった。前記<エポキシ樹脂硬化物の曲げ特性の評価方法>に従い、曲げ特性を評価したところ、曲げ弾性率は3.3GPa、曲げ強度は143MPa、曲げ破断ひずみは13%であった。また、前記<エポキシ樹脂硬化物の引張特性の評価方法>に従い、引張特性を評価したところ、引張弾性率は3.3GPa、引張強度は68MPa、引張破断伸度は10.0%であった。
(比較例2)
表3に示した樹脂組成について、特許文献2(特開2014-167103号)の実施例5に記載の方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。該エポキシ樹脂組成物は成分[A]を含むが、成分[B]、成分[C]および成分[D]を含まないため、破壊靱性が不十分であり、引張破断伸度は低いものであった。
(比較例3)
表3に示した樹脂組成について、特許文献3(特開2015-157958号)の実施例16に記載の方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。該エポキシ樹脂組成物は成分[A]を含むが、成分[C]、成分[D]を含まず、また、成分[B]が1種類のビスフェノールF型エポキシからなるため、[B1]の平均エポキシ当量/[B2]の平均エポキシ当量は0であり、条件(1)を満たさない。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性は0.9MPa・m0.5と不十分であり、引張破断伸度は3.0%と低いものであった。
(比較例4)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[D]を含むものの、4質量部であるため条件(2)を満たさない。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性は1.4MPa・m0.5と不十分であった。
(比較例5)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[D]を含むものの、20質量部であるため条件(2)を満たさない。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性は1.7MPa・m0.5と良好であったものの、曲げおよび引張弾性率が2.4GPaと著しく低いものであった。
(比較例6)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。
該エポキシ樹脂組成物のゴム状態の貯蔵弾性率は6.8MPaであり、条件(3)を満たさない。該エポキシ樹脂組成物のガラス転移温度は129℃と不十分であった。
(比較例7)
表4に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。
該エポキシ樹脂組成物のゴム状態の貯蔵弾性率は15.4MPaであり、条件(3)を満たさない。該エポキシ樹脂組成物のガラス転移温度は180℃と良好であったものの、破壊靱性は1.3MPa・m0.5と不十分であり、引張破断伸度は4.5%と低いものであった。
(比較例8)
表4に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[B]、[C]、[D]、[E]を含むが、成分[A]を含まない。また、該エポキシ樹脂組成物のゴム状態の貯蔵弾性率は6.7MPaと条件(3)を満たさない。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性は1.7MPa・m0.5、引張破断伸度は8.5%と優れていたものの、曲げおよび引張弾性率が2.3GPaと著しく低く、ガラス転移温度は119℃と不十分であった。
(比較例9)
表4に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[A]、[B]、[C]、[D]、[E]すべてを含むが、[B1]の平均エポキシ当量/[B2]の平均エポキシ当量=2.9と条件(1)を満たさないため、引張破断伸度は3.9%と低いものであった。
(比較例10)
表4に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[A]、[B]、[C]、[D]、[E]すべてを含むが、[B1]の平均エポキシ当量/[B2]の平均エポキシ当量=13.4と条件(1)を満たさないため、引張破断伸度は4.0%と低いものであった。
(比較例11)
表4に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、およびガラス転移温度とゴム状態の貯蔵弾性率を取得した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[A]、[B]、[D]、[E]を含むが、成分[C]を含まない代わりに平均エポキシ当量が925g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂である“jER(登録商標)”1004を含む。“jER(登録商標)”1004は平均エポキシ当量が1,400より小さいため、該エポキシ樹脂組成物をプリプレグに適した粘度とするために必要な添加量が多く、ガラス転移温度は134℃と不十分であった。
Figure 2022033709000002
Figure 2022033709000003
Figure 2022033709000004
Figure 2022033709000005
なお、表中の各成分の単位は質量部である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、弾性率、変形能力、破壊靱性、および耐熱性のバランスに優れた硬化物を与えるため、該エポキシ樹脂組成物からなる繊維強化複合材料は、耐熱性、機械特性、および耐衝撃吸収性に優れる。そのため、繊維強化複合材料の軽量化を可能としつつ、スポーツ、一般産業用途や航空宇宙用途などの幅広い用途に用いることができる。

Claims (7)

  1. 次の成分[A]、[B]、[C]、[D]および[E]すべてを含み、下記条件(1)、(2)、(3)および(4)をすべて満たす、エポキシ樹脂組成物。
    [A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂
    [B]:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
    [C]:平均エポキシ当量が1,400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂
    [D]:コアシェル型ゴム粒子
    [E]:ジシアンジアミド
    (1)成分[B]が2種の[B1]および[B2]からなり、[B1]および[B2]の平均エポキシ当量が、5<[B1]の平均エポキシ当量/[B2]の平均エポキシ当量<10を満たす
    (2)全エポキシ100質量部に対し、成分[D]を6~18質量部含む
    (3)135℃で2時間硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物の動的粘弾性測定でのゴム状態の貯蔵弾性率G’が8MPa<G’<15MPa
    (4)135℃で2時間硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度が140℃以上
  2. 全エポキシ樹脂100質量部のうち、成分[A]を30~50質量部含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 全エポキシ樹脂100質量部のうち、成分[B]を20~40質量部含む、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 全エポキシ樹脂100質量部に対し、成分[F]としてトリブロック共重合体を2~10質量部含む、請求項1~3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 成分[E]の配合量が下記条件(5)を満たす請求項1~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
    (5)0.9≦(成分[E]の活性水素モル数/全エポキシ樹脂100質量部中の活性エポキシ基モル数)≦1.1
  6. 請求項1~5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグ。
  7. 請求項6に記載のプリプレグが硬化されてなる繊維強化複合材料。
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