JP2022033710A - エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性率と変形能力、破壊靱性値を高いレベルで両立できるエポキシ樹脂組成物、および、該エポキシ樹脂組成物からなるプリプレグ、ならびに該プリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料を提供すること。【解決手段】次の成分[A]、[B]、[C]、[D]および[E]すべてを含み、下記条件(1)を満たす、エポキシ樹脂組成物。[A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂[B]:ビスフェノールF型エポキシ樹脂[C]:トリブロック共重合体[D]:コアシェル型ゴム粒子[E]:ジアミノジフェニルスルホン(1)エポキシ樹脂組成物を180℃で120分反応させて得られる樹脂硬化物の引張破断伸度が7%以上【選択図】なし
Description
本発明は、スポーツ用途、一般産業用途、および航空宇宙用途に適した繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物、ならびに、これをマトリックス樹脂として用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料に関するものである。
繊維強化プラスチックの製造には、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸したシート状の中間基材(プリプレグ)が汎用される。プリプレグを積層、加熱して熱硬化性樹脂を硬化する方法で成形体が得られ、航空機やスポーツなど、様々な分野へ適用されている。プリプレグのマトリックス樹脂として用いられる熱硬化性樹脂としては、耐熱性、接着性、機械強度に優れることから、エポキシ樹脂が汎用される。近年、繊維強化複合材料の適用が拡大するにつれて、部材に要求される性能が多様化し、プリプレグに用いられるエポキシ樹脂の高性能化が望まれている。具体的には、エポキシ樹脂硬化物の破壊強度と破壊靭性、および、変形能力を高めることで、軽量かつ耐衝撃吸収性に優れた繊維強化複合材料を設計することが可能となる。
一般に、破壊強度を高めるためには、エポキシ樹脂硬化物の弾性率を高める手法が知られている。しかしながら、一般にエポキシ樹脂硬化物の弾性率を高めると変形能力が低下し、繊維強化複合材料が破壊にいたるまでの変形量が小さくなり、破壊強度が十分に向上しない。
また、エポキシ樹脂硬化物の破壊靭性値を高めるためには、エポキシ樹脂に不溶な粒子を添加する技術が知られているが、多量に配合した場合、弾性率が大きく低下するため、エポキシ樹脂硬化物の破壊強度が不足する。そこで、弾性率と変形能力、破壊靱性を高いレベルで両立する技術構築が望まれている。
特許文献1には、エポキシ樹脂と反応し得る反応基を有するトリブロック共重合体、熱可塑性樹脂粒子を含むことで、層間靱性に優れた繊維強化複合材料を与えるエポキシ樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、ポリエーテルスルホン骨格を主として含む熱可塑性樹脂を多量に含むことで、耐熱性、弾性率、破壊靱性に優れるエポキシ樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、低粘度のエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂、エラストマー微粒子、および、シリカ微粒子を含むことで、耐熱性と常温での取扱性に優れたエポキシ樹脂組成物が示されている。
特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化物の弾性率と破壊靱性に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えるが、エポキシ樹脂硬化物の変形能力に関しての具体的な示唆や言及はされていない。
特許文献2に記載のエポキシ樹脂組成物は、耐熱性と弾性率に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えるものの、エポキシ樹脂硬化物の破壊靱性は不十分なものであった。また、変形能力に関する言及もなかった。
特許文献3に記載のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を高いものとすることが記載されているが、エポキシ樹脂硬化物の変形能力および破壊靱性は不十分であった。
本発明は、かかる従来技術の欠点を改良し、弾性率、破壊強度、変形能力、および破壊靱性に優れるエポキシ樹脂組成物、および、該エポキシ樹脂組成物と強化繊維からなるプリプレグ、ならびに該プリプレグを硬化させてなる、機械特性および耐衝撃吸収性に優れた繊維強化複合材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成からなるエポキシ樹脂組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は、以下の構成からなる。
次の成分[A]、[B]、[C]、[D]および[E]すべてを含み、下記条件(1)を満たす、エポキシ樹脂組成物。
[A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂
[B]:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
[C]:トリブロック共重合体
[D]:コアシェル型ゴム粒子
[E]:ジアミノジフェニルスルホン
(1)エポキシ樹脂組成物を180℃で120分反応させて得られる樹脂硬化物の引張破断伸度が7%以上。
[A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂
[B]:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
[C]:トリブロック共重合体
[D]:コアシェル型ゴム粒子
[E]:ジアミノジフェニルスルホン
(1)エポキシ樹脂組成物を180℃で120分反応させて得られる樹脂硬化物の引張破断伸度が7%以上。
また、本発明のプリプレグは、前記エポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグである。
さらに、本発明の繊維強化複合材料は、前記プリプレグが硬化されてなる繊維強化複合材料である。
本発明によれば、弾性率、破壊強度、変形能力、および破壊靱性値を高いレベルで両立するエポキシ樹脂硬化物を与えるため、本発明のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂とした繊維強化複合材料は、優れた破壊強度と耐衝撃吸収性を発現することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、[A]3官能以上のアミン型エポキシ樹脂、[B]ビスフェノールF型エポキシ樹脂、[C]トリブロック共重合体、[D]コアシェル型ゴム粒子、[E]ジアミノジフェニルスルホンを必須成分として含む。まず、これらの構成要素について説明する。
(成分[A])
本発明における成分[A]は3官能以上のアミン型エポキシ樹脂である。
本発明における成分[A]は3官能以上のアミン型エポキシ樹脂である。
かかる成分[A]としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシレンジアミンなどが挙げられる。
前記テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ”(登録商標)ELM434、ELM434VL(以上、住友化学工業(株)製)、“jER”(登録商標)604(三菱ケミカル(株)製)、“アラルダイト”(登録商標)MY720、MY721(以上、ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ社製)等が挙げられる。前記トリグリシジルアミノフェノールまたはトリグリシジルアミノクレゾールの市販品としては、“スミエポキシ”(登録商標)ELM100、ELM120(以上、住友化学工業(株)製)、“アラルダイト”(登録商標)MY0500、MY0510、MY0600(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等が挙げられる。前記テトラグリシジルキシレンジアミンの市販品としては、“TETRAD”(登録商標)-X(三菱ガス化学(株)製)等が挙げられる。
成分[A]としては、アミノフェノール型エポキシ樹脂を使用し、全エポキシ樹脂100質量部に対し、20~70質量部含むことが好ましい。
アミノフェノール型エポキシ樹脂を使用し、上記範囲を満たすことで樹脂硬化物の弾性率と強度のバランスが良いエポキシ樹脂硬化物を得られる。
アミノフェノール型エポキシ樹脂を使用し、上記範囲を満たすことで樹脂硬化物の弾性率と強度のバランスが良いエポキシ樹脂硬化物を得られる。
(成分[B])
本発明における成分[B]はビスフェノールF型エポキシ樹脂である。
本発明における成分[B]はビスフェノールF型エポキシ樹脂である。
かかるビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)806、807、4004P、4005P、4007P、4010P(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エポトート”(登録商標)YDF2001、YDF2004、YDF2005RD(以上、東都化成(株)製)、“Epiclon”(登録商標)830、835(DIC(株)製)などが挙げられる。
成分[B]は、全エポキシ樹脂100質量部に対し、15~30質量部含むことが好ましい。上記範囲を満たすことで、樹脂硬化物の弾性率を損なう事なく、破断伸度および強度を高めることができる。
ここで、曲げ破断ひずみと引張破断伸度はエポキシ樹脂硬化物の変形能力に相当する。エポキシ樹脂硬化物の変形能力が低いと、破壊にいたるまでの変形量が小さくなり、破壊強度が十分に向上しない。そのため、変形能力が高いことは、破壊強度や耐衝撃吸収性を向上させる観点から好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、該エポキシ樹脂組成物を180℃で120分反応させて得られる樹脂硬化物の引張破断伸度が7%以上である(条件(1))。樹脂硬化物の引張破断伸度が7%以上であることで、破壊強度および耐衝撃吸収性が良好な繊維強化複合材料を得ることができる。なお、引張破断伸度が8%以上であることが好ましい。
ここで、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の曲げ弾性率、曲げ強度および曲げひずみは、例えば、JIS K7171(1994)に従って3点曲げ試験を実施することにより、評価することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の引張破断伸度、引張弾性率、および引張強度は、ダンベル状に加工した樹脂硬化板を、JIS K7161(1994)に従って引張試験を実施することにより、評価することができる。
(成分[C])
本発明における成分[C]はトリブロック共重合体である。
本発明における成分[C]はトリブロック共重合体である。
トリブロック共重合体は、S-B-M、または、M-B-Mからなるブロック共重合体であって、前記の各ブロックは共有結合によって連結されるか、一方のブロックに一つの共有結合形成を介して結合され、他方のブロックに他の共有結合形成を介して結合された中間分子によって連結されている。
ブロックMはポリメタクリル酸メチルのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを少な
くとも50質量%含むコポリマーであり、ブロックBはブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下である。また、ブロックSはブロックBおよびMに非相溶であり、そのガラス転移温度は、ブロックBよりも高いものである。
くとも50質量%含むコポリマーであり、ブロックBはブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下である。また、ブロックSはブロックBおよびMに非相溶であり、そのガラス転移温度は、ブロックBよりも高いものである。
トリブロック共重合体S-B-Mの市販品としては、スチレン-ブタジエン-メタクリル酸メチルからなる共重合体として、“ナノストレングス”(登録商標)E20,“ナノストレングス”(登録商標)E40(以上、アルケマ(株)製)などが挙げられる。
トリブロック共重合体M-B-Mの市販品としては、メタクリル酸メチル-ブチルアク
リレート-メタクリル酸メチルからなる共重合体として、“ナノストレングス”(登録商標)M22N、“ナノストレングス”(登録商標)M52N、“ナノストレングス”(登録商標)D51N(以上、アルケマ(株)製)などが挙げられる。
リレート-メタクリル酸メチルからなる共重合体として、“ナノストレングス”(登録商標)M22N、“ナノストレングス”(登録商標)M52N、“ナノストレングス”(登録商標)D51N(以上、アルケマ(株)製)などが挙げられる。
(成分[D])
本発明における成分[D]はコアシェル型ゴム粒子である。
本発明における成分[D]はコアシェル型ゴム粒子である。
まず、ゴム粒子とはゴム弾性を有する粒子である。コアシェル型ゴム粒子は、ゴム粒子の一種であり、エラストマーを主成分とする粒子状のコア成分の表面に、マトリックス樹脂との親和性を高めるためのコア部分とは異なる成分を含むシェル成分を修飾した粒子であり、コア成分の表面の一部あるいは全体をシェル成分で被覆した粒子である。シェル成分で被覆することにより、ゴム粒子よりもエポキシ樹脂組成物中での分散性が良好となり、樹脂靱性向上の効果が得られやすくなる。前記コア成分およびシェル成分の構成要素は特に限定されず、コアおよびシェル成分を有していればよい。
かかる成分[D]としては、“カネエース”(登録商標)MX-125、MX-150、MX-154、MX-257、MX-267、MX-416、MX-451、MX-EXP(HM5)(以上、カネカ(株)製)、“PARALOID”(登録商標)EXL-2655、EXL-2668(以上、Dow Chemical社製)などを用いることができる。これらの中には、エポキシ樹脂中に予め分散したいわゆるマスターバッチの状態の製品もある。
かかる成分[D]としては、“カネエース”(登録商標)MX-125、MX-150、MX-154、MX-257、MX-267、MX-416、MX-451、MX-EXP(HM5)(以上、カネカ(株)製)、“PARALOID”(登録商標)EXL-2655、EXL-2668(以上、Dow Chemical社製)などを用いることができる。これらの中には、エポキシ樹脂中に予め分散したいわゆるマスターバッチの状態の製品もある。
本発明では、前記成分[C]と成分[D]を同時に含む必要がある。成分[C]と[D]を同時に含むことにより、該エポキシ樹脂組成物からなるエポキシ樹脂硬化物の変形能力と破壊靱性は著しく高いものとなる。前記効果は、成分[C]または成分[D]単独で発現できるレベルではなく、成分[C]と成分[D]を同時に含むことで発現する、特異的な向上効果である。
また、全エポキシ樹脂100質量部に対し、成分[C]を2~10質量部、全エポキシ樹脂100質量部に対し、成分[D]を4~15質量部、同時に含むことが好ましい。成分[C]と成分[D]を上記範囲で同時に含むことにより、該エポキシ樹脂組成物からなるエポキシ樹脂硬化物の引張破断伸度と破壊靱性値をさらに高いレベルで両立することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂硬化物の破壊靱性値は、ASTM D5045-99に記載のSENB試験から得たK1c値から評価することができる。
(成分[E])
本発明における成分[E]はジアミノジアミノジフェニルスルホンである。
本発明における成分[E]はジアミノジアミノジフェニルスルホンである。
ジアミノジフェニルスルホンはエポキシ樹脂硬化剤として配合される。ジアミノジフェニルスルホンの市販品としては、“セイカキュア”(登録商標)-S(セイカ(株)製)、3,3’-DAS(三井化学ファイン(株)製)などが挙げられる。
成分[E]としては、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを使用することが好ましい。3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを使用することで、弾性率に優れた樹脂硬化物を得ることができる。
成分[E]の配合量は、成分[E]の活性水素モル数を全エポキシ樹脂100質量部中の活性エポキシ基モル数で除した値が0.8~1.2当量となるように配合することが好ましく、0.9~1.1当量となるように配合することがより好ましい。活性エポキシ基モル数と活性水素モル数の比率がこの範囲内であれば、良好な耐熱性や破壊靭性および弾性率などを有するエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。ここで、成分[E]の活性水素モル数は、ジアミノジフェニルスルホンの質量をジアミノジフェニルスルホンの活性水素当量である62で除することにより求められ、全エポキシ樹脂100質量部中の活性エポキシ基モル数は、各エポキシ樹脂活性基のモル数の和のことであり、下式で表される。
全エポキシ樹脂100質量部中の活性エポキシ基モル数=(エポキシ樹脂Aの質量/エポキシ樹脂Aのエポキシ当量)+(エポキシ樹脂Bの質量/エポキシ樹脂Bのエポキシ当量)+・・・・+(エポキシ樹脂Wの質量/エポキシ樹脂Wのエポキシ当量)。
全エポキシ樹脂100質量部中の活性エポキシ基モル数=(エポキシ樹脂Aの質量/エポキシ樹脂Aのエポキシ当量)+(エポキシ樹脂Bの質量/エポキシ樹脂Bのエポキシ当量)+・・・・+(エポキシ樹脂Wの質量/エポキシ樹脂Wのエポキシ当量)。
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を失わない範囲において、成分[F]として、成分[A]、[B]とは異なるその他のエポキシ樹脂を含むことができる。
かかる成分[F]として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても、複数種組み合わせてもよい。
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)825、827、828、1001、1004、1007、1009(以上、三菱ケミカル(株)製)などが挙げられる。
前記フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER”(登録商標)152、154(以上、三菱ケミカル(株)製)などが挙げられる。
前記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“Epiclon”(登録商標)N660、670、690、695(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“Epiclon”(登録商標)HP7200L,HP7200,HP7200H,HP7200HH,HP7200HHH(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
前記アニリン型エポキシ樹脂の市販品としては、GAN(N,N-ジグリシジルアニリン)、GOT(N,N-ジグリシジル-o-トルイジン)(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
前記ジアミノジフェニルスルホン型エポキシ樹脂の市販品としては、TG3DAS(小西化学工業(株)製)などが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、粘弾性を調整し、プリプレグのタッグやドレープ特性を改良する目的や、樹脂組成物の機械特性や破壊靭性がより高いエポキシ樹脂硬化物を得るなどの目的で、成分[G]として熱可塑性樹脂を用いることができる。かかる熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。
次に、本発明の繊維強化複合材料について説明する。本発明の繊維強化複合材料は前記プリプレグが硬化されてなる繊維強化複合材料である。また、本発明の繊維強化複合材料は、本発明のエポキシ樹脂組成物からなるプリプレグを積層した後、加熱し硬化させることにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物をマトリックス樹脂として含む繊維強化複合材料を得ることができる。以下に、製造方法を具体的に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、例えばニーダー、プラネタリーミキサー、3本ロールおよび2軸押出機といった機械を用いて混練してもよいし、均一な混練が可能であれば、ビーカーとスパチュラなどを用い、手で混ぜてもよい。
本発明のプリプレグは前記エポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグである。また、本発明のプリプレグは、前記の方法にて調製したエポキシ樹脂組成物を、強化繊維基材に含浸させて得ることができる。含浸させる方法としては、ホットメルト法(ドライ法)などを挙げることができる。ホットメルト法は、加熱により低粘度化した熱硬化性樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または離型紙などの上にエポキシ樹脂組成物をコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側または片側からこのフィルムを重ね、加圧加熱することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。この際、離型紙に塗布する樹脂の量を変えることで、プリプレグの繊維質量含有率を調整することができる。
本発明に用いられる強化繊維は特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが使用できる。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。軽量かつ高剛性な繊維強化複合材料が得られる観点から、炭素繊維を用いることが好ましい。
本発明の繊維強化複合材料を製造するに際し、プリプレグ積層成形法において、熱および圧力を付与する方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などを適宜使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物と、強化繊維を含む繊維強化複合材料は、スポーツ用途、航空宇宙用途および一般産業用途に好ましく用いられる。より具体的には、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバドミントンのラケットなどに好ましく用いられる。また、航空宇宙用途では、主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、および内装材等の二次構造材用途に好ましく用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、自転車、船舶および鉄道車両などの構造材に好ましく用いられる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載の態様に限定されるものではない。
本実施例で用いる構成要素は以下の通りである。
<使用した材料>
・成分[A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂
[A]-1 “アラルダイト”(登録商標)MY0510(アミノフェノール型エポキシ樹脂、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
[A]-2 “アラルダイト”(登録商標)MY0600(アミノフェノール型エポキシ樹脂、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)。
[A]-3 “スミエポキシ”(登録商標)ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学工業(株)製)。
・成分[A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂
[A]-1 “アラルダイト”(登録商標)MY0510(アミノフェノール型エポキシ樹脂、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
[A]-2 “アラルダイト”(登録商標)MY0600(アミノフェノール型エポキシ樹脂、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)。
[A]-3 “スミエポキシ”(登録商標)ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学工業(株)製)。
・成分[B]:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
[B]-1 “Epiclon”(登録商標)830(DIC(株)製)
[B]-2 “jER”(登録商標)806(三菱ケミカル(株)製)
[B]-3 “エポトート”(登録商標)YDF2001(東都化成(株)製)
[B]-4 “jER”(登録商標)4004P(三菱ケミカル(株)製)
[B]-5 “jER”(登録商標)4005P(三菱ケミカル(株)製)。
[B]-1 “Epiclon”(登録商標)830(DIC(株)製)
[B]-2 “jER”(登録商標)806(三菱ケミカル(株)製)
[B]-3 “エポトート”(登録商標)YDF2001(東都化成(株)製)
[B]-4 “jER”(登録商標)4004P(三菱ケミカル(株)製)
[B]-5 “jER”(登録商標)4005P(三菱ケミカル(株)製)。
・成分[C]:トリブロック共重合体
[C]-1 “ナノストレングス”(登録商標)M22N(Bがブチルアクリレート(Tg:-54℃)、Mがメタクリル酸メチルと極性アクリル系モノマーのランダム共重合鎖からなるM-B-M型のブロック共重合体、アルケマ(株)製)
[C]-2 “ナノストレングス”(登録商標)M52N(Bがブチルアクリレート(Tg:-54℃)、Mがメタクリル酸メチルと極性アクリル系モノマーのランダム共重合鎖からなるM-B-M型のブロック共重合体、アルケマ(株)製)
[C]-3 “ナノストレングス”(登録商標)SM4032XM10(Bがブチルアクリレート(Tg:-54℃)、Mがメタクリル酸メチルとカルボキシル基含有アクリル系モノマーとのランダム共重合鎖からなるM-B-Mのブロック共重合体、アルケマ(株)製)。
[C]-1 “ナノストレングス”(登録商標)M22N(Bがブチルアクリレート(Tg:-54℃)、Mがメタクリル酸メチルと極性アクリル系モノマーのランダム共重合鎖からなるM-B-M型のブロック共重合体、アルケマ(株)製)
[C]-2 “ナノストレングス”(登録商標)M52N(Bがブチルアクリレート(Tg:-54℃)、Mがメタクリル酸メチルと極性アクリル系モノマーのランダム共重合鎖からなるM-B-M型のブロック共重合体、アルケマ(株)製)
[C]-3 “ナノストレングス”(登録商標)SM4032XM10(Bがブチルアクリレート(Tg:-54℃)、Mがメタクリル酸メチルとカルボキシル基含有アクリル系モノマーとのランダム共重合鎖からなるM-B-Mのブロック共重合体、アルケマ(株)製)。
・成分[D]を含む原料:コアシェル型ゴム粒子とエポキシ樹脂の組成物
[D]-1 “カネエース”(登録商標)MX-125(ビスフェノールA型エポキシ樹脂75質量%、および、スチレン-ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子25質量%)
[D]-2 “カネエース”(登録商標)MX-257(ビスフェノールA型エポキシ樹脂63質量%、および、ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子37質量%)
[D]-3 “カネエース”(登録商標)MX-267(成分[B]以外のビスフェノールF型エポキシ樹脂63質量%、および、ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子37質量%)
[D]-4 “カネエース”(登録商標)MX-EXP(HM5)(ビスフェノールA型エポキシ樹脂70質量%、および、コアシェル型ゴム粒子30質量%)(以上、カネカ(株)製)。
[D]-5 “カネエース”(登録商標)MX-150(ビスフェノールA型エポキシ樹脂70質量%、および、コアシェル型ゴム粒子30質量%)(以上、カネカ(株)製)。
[D]-1 “カネエース”(登録商標)MX-125(ビスフェノールA型エポキシ樹脂75質量%、および、スチレン-ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子25質量%)
[D]-2 “カネエース”(登録商標)MX-257(ビスフェノールA型エポキシ樹脂63質量%、および、ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子37質量%)
[D]-3 “カネエース”(登録商標)MX-267(成分[B]以外のビスフェノールF型エポキシ樹脂63質量%、および、ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子37質量%)
[D]-4 “カネエース”(登録商標)MX-EXP(HM5)(ビスフェノールA型エポキシ樹脂70質量%、および、コアシェル型ゴム粒子30質量%)(以上、カネカ(株)製)。
[D]-5 “カネエース”(登録商標)MX-150(ビスフェノールA型エポキシ樹脂70質量%、および、コアシェル型ゴム粒子30質量%)(以上、カネカ(株)製)。
・成分[E]:ジアミノジフェニルスルホン
[E]-1 “セイカキュア”(登録商標)-S(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、セイカ(株)製)
[E]-2 3,3’-DAS(3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)。
・成分[F]その他のエポキシ樹脂
[F]-1 “jER”(登録商標)828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-2 “EPON”(登録商標)825(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-3 “jER”(登録商標)1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-4 “jER”(登録商標)1007(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-5 “jER”(登録商標)154(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-6 “Epiclon”(登録商標)N695(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
[F]-7 “Epiclon”(登録商標)HP7200HHH(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
[F]-8 GOT(N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、日本化薬(株)製)。
[E]-1 “セイカキュア”(登録商標)-S(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、セイカ(株)製)
[E]-2 3,3’-DAS(3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)。
・成分[F]その他のエポキシ樹脂
[F]-1 “jER”(登録商標)828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-2 “EPON”(登録商標)825(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-3 “jER”(登録商標)1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-4 “jER”(登録商標)1007(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-5 “jER”(登録商標)154(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)製)
[F]-6 “Epiclon”(登録商標)N695(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
[F]-7 “Epiclon”(登録商標)HP7200HHH(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
[F]-8 GOT(N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、日本化薬(株)製)。
・成分[G]:熱可塑性樹脂
[G]-1 “ビニレック”(登録商標)K(ポリビニルホルマール、JNC(株)製)
[G]-2 “スミカエクセル”(登録商標)PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)
[G]-3 “Virantage”(登録商標)VW-10700RP(ポリエーテルスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製)
[G]-4 ブロック共重合体 X1(ポリ(エーテルスルホン)-block-ポリ(シロキサン))(攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を取り付けた300mLの三口フラスコに、“Virantage”(登録商標)VW-10700RP(ポリエーテルスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製)“5.0gに対し、BY16-752A (フェノール変性シリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製)8.2g、脱水ジメチルスルホキシド(脱水DMSO)120ml、脱水トルエン30ml、無水炭酸カリウム2.5gを秤量した。脱水DMSO/脱水トルエン反応溶液を攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ、反応時間4時間でフェノール性水酸基の求核置換反応を終了した。反応溶液を500mlのメタノールに投下し、析出固体を粉砕、500mlの水で2回洗浄した。130℃で真空乾燥を行い、白色粉末状2.5gを得た。)。
[G]-1 “ビニレック”(登録商標)K(ポリビニルホルマール、JNC(株)製)
[G]-2 “スミカエクセル”(登録商標)PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)
[G]-3 “Virantage”(登録商標)VW-10700RP(ポリエーテルスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製)
[G]-4 ブロック共重合体 X1(ポリ(エーテルスルホン)-block-ポリ(シロキサン))(攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を取り付けた300mLの三口フラスコに、“Virantage”(登録商標)VW-10700RP(ポリエーテルスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製)“5.0gに対し、BY16-752A (フェノール変性シリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製)8.2g、脱水ジメチルスルホキシド(脱水DMSO)120ml、脱水トルエン30ml、無水炭酸カリウム2.5gを秤量した。脱水DMSO/脱水トルエン反応溶液を攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ、反応時間4時間でフェノール性水酸基の求核置換反応を終了した。反応溶液を500mlのメタノールに投下し、析出固体を粉砕、500mlの水で2回洗浄した。130℃で真空乾燥を行い、白色粉末状2.5gを得た。)。
・その他の硬化剤
DICY7(ジシアンジアミド、三菱ケミカル製)
“Omicure”(登録商標)U-24(トルエンビスジメチルウレア、ピィ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)。
DICY7(ジシアンジアミド、三菱ケミカル製)
“Omicure”(登録商標)U-24(トルエンビスジメチルウレア、ピィ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)。
・その他の添加物
Nanopox F400(ビスフェノールA型エポキシ樹脂60質量%、および、疎水性ナノシリカ粒子40質量%、Hanse Chemie社製)
“トレパール”(登録商標)TN(熱可塑性樹脂粒子、東レ(株)製)。
Nanopox F400(ビスフェノールA型エポキシ樹脂60質量%、および、疎水性ナノシリカ粒子40質量%、Hanse Chemie社製)
“トレパール”(登録商標)TN(熱可塑性樹脂粒子、東レ(株)製)。
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
ステンレスビーカーに、[E]ジアミノジフェニルスルホン、および、その他の硬化剤以外の成分を所定量入れ、60~150℃まで昇温し、各成分が相溶するまで適宜混練した後、60℃まで降温させ、主剤成分を得た。所定の含有割合になるように上記で調製した主剤成分と、[E]ジアミノジフェニルスルホンまたはその他の硬化剤を添加した後、60℃で30分間混練することにより、エポキシ樹脂組成物を得た。各例におけるエポキシ樹脂組成は表に示した通りである。
ステンレスビーカーに、[E]ジアミノジフェニルスルホン、および、その他の硬化剤以外の成分を所定量入れ、60~150℃まで昇温し、各成分が相溶するまで適宜混練した後、60℃まで降温させ、主剤成分を得た。所定の含有割合になるように上記で調製した主剤成分と、[E]ジアミノジフェニルスルホンまたはその他の硬化剤を添加した後、60℃で30分間混練することにより、エポキシ樹脂組成物を得た。各例におけるエポキシ樹脂組成は表に示した通りである。
<エポキシ樹脂硬化物の曲げ特性の評価方法>
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン”(登録商標)製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。この得られたエポキシ樹脂硬化物から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、スパンを32mm、クロスヘッドスピードを10mm/分とし、JIS K7171(1994)に従って3点曲げを実施し、曲げ弾性率、曲げ強度および曲げひずみを測定した。この際、サンプル数n=6で測定した値の平均値を曲げ弾性率および曲げ強度の値として採用した。
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン”(登録商標)製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。この得られたエポキシ樹脂硬化物から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、スパンを32mm、クロスヘッドスピードを10mm/分とし、JIS K7171(1994)に従って3点曲げを実施し、曲げ弾性率、曲げ強度および曲げひずみを測定した。この際、サンプル数n=6で測定した値の平均値を曲げ弾性率および曲げ強度の値として採用した。
<エポキシ樹脂硬化物の引張特性の評価方法>
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン”(登録商標)製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物を、JIS K7161(1994)に従って、1BA型のダンベル状に加工した。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、チャック間距離を58mmに設定し、試験速度1mm/分にて樹脂引張試験を実施し、引張弾性率、引張強度、および引張破断伸度を測定した。この際、サンプル数n=8で測定した値の平均値を採用した。
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン”(登録商標)製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物を、JIS K7161(1994)に従って、1BA型のダンベル状に加工した。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、チャック間距離を58mmに設定し、試験速度1mm/分にて樹脂引張試験を実施し、引張弾性率、引張強度、および引張破断伸度を測定した。この際、サンプル数n=8で測定した値の平均値を採用した。
<エポキシ樹脂硬化物の破壊靱性値の評価方法>
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、6mm厚の“テフロン”(登録商標)製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ6mmの樹脂硬化板を得た。得られた樹脂硬化板を、ASTM D5045-99に記載の試験片形状に加工を行った後、ASTM D5045-99に従ってSENB試験を実施した。この際、サンプル数n=16で測定した値の平均値をK1cの値として採用した。
未硬化のエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、6mm厚の“テフロン”(登録商標)製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ6mmの樹脂硬化板を得た。得られた樹脂硬化板を、ASTM D5045-99に記載の試験片形状に加工を行った後、ASTM D5045-99に従ってSENB試験を実施した。この際、サンプル数n=16で測定した値の平均値をK1cの値として採用した。
<エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の測定>
未硬化の樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン”(登録商標)製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、硬化剤の種類に応じて180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。JIS K7095(2018)に従い、このエポキシ樹脂硬化物から、幅12.7mm、長さ45mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置(ARES W/FCO:TAインスツルメント社製)を用い、固体ねじり治具に試験片をセットし、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、ひずみ量0.08%にて、40~260℃の温度範囲について動的粘弾性測定を行った。この際、ガラス転移温度は、JIS K7095(2018)に従って、得られた貯蔵弾性率と温度のグラフ(散布図)において、ガラス領域に引いた接線と、ガラス転移温度領域に引いた接線との交点における温度とした。本評価については、サンプル数n=1で測定を行った。
未硬化の樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン”(登録商標)製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、硬化剤の種類に応じて180℃の温度で120分間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。JIS K7095(2018)に従い、このエポキシ樹脂硬化物から、幅12.7mm、長さ45mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置(ARES W/FCO:TAインスツルメント社製)を用い、固体ねじり治具に試験片をセットし、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、ひずみ量0.08%にて、40~260℃の温度範囲について動的粘弾性測定を行った。この際、ガラス転移温度は、JIS K7095(2018)に従って、得られた貯蔵弾性率と温度のグラフ(散布図)において、ガラス領域に引いた接線と、ガラス転移温度領域に引いた接線との交点における温度とした。本評価については、サンプル数n=1で測定を行った。
(実施例1)
エポキシ樹脂として“スミエポキシ”(登録商標)ELM434を35質量部、“Epiclon”(登録商標)830を10質量部、“jER”(登録商標)828を30質量部、“jER”(登録商標)1001を14質量部、トリブロック共重合体として“ナノストレングス”(登録商標)M22Nを4質量部、コアシェル型ゴム粒子として“カネエース”(登録商標)MX-125を14質量部、ジアミノジフェニルスルホンとして“セイカキュア”(登録商標)-Sを37質量部用いて、前記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。
エポキシ樹脂として“スミエポキシ”(登録商標)ELM434を35質量部、“Epiclon”(登録商標)830を10質量部、“jER”(登録商標)828を30質量部、“jER”(登録商標)1001を14質量部、トリブロック共重合体として“ナノストレングス”(登録商標)M22Nを4質量部、コアシェル型ゴム粒子として“カネエース”(登録商標)MX-125を14質量部、ジアミノジフェニルスルホンとして“セイカキュア”(登録商標)-Sを37質量部用いて、前記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。
このエポキシ樹脂組成物について、<エポキシ樹脂硬化物の曲げ特性の評価方法>に従い、180℃にて120分反応させて得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ特性を取得したところ、曲げ弾性率は3.3GPa、曲げ強度は147MPa、曲げ破断ひずみは10%であった。また、<エポキシ樹脂硬化物の引張特性の評価方法>に従い、180℃にて120分反応させて得られたエポキシ樹脂硬化物の引張特性を取得したところ、引張弾性率は3.2GPa、引張強度は86MPa、引張破断伸度は7.0%と高い変形能力を示した。
さらに、前記<エポキシ樹脂硬化物の破壊靱性値の評価方法>に従い、破壊靱性値を評価したところ1.6MPa・m0.5と優れた破壊靱性値を示した。耐熱性について、前記<エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の測定>に従って評価したところ、ガラス転移温度は182℃であった。
(実施例2~19)
樹脂組成をそれぞれ表1に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物を作製した。
樹脂組成をそれぞれ表1に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物を作製した。
各実施例のエポキシ樹脂組成物に関して、曲げ特性、引張特性、破壊靱性値、および耐熱性を評価した結果、全ての水準で良好な物性が得られた。
(比較例1)
表3に示した樹脂組成物について、特許文献1(国際公開第2013/099862号)の実施例7に記載の方法でエポキシ樹脂組成物を作製した。
表3に示した樹脂組成物について、特許文献1(国際公開第2013/099862号)の実施例7に記載の方法でエポキシ樹脂組成物を作製した。
このエポキシ樹脂組成物について、前記<エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の測定>に従って評価したところ、ガラス転移温度は176℃であった。また、前記<エポキシ樹脂硬化物の破壊靱性値の評価方法>に従い、破壊靱性値を評価したところ、1.6MPa・m0.5であった。
前記<エポキシ樹脂硬化物の曲げ特性の評価方法>に従い、曲げ特性を評価したところ、曲げ弾性率は3.7GPa、曲げ強度は167MPa、曲げ破断ひずみは7%であった。また、前記<エポキシ樹脂硬化物の引張特性の評価方法>に従い、引張特性を評価したところ、引張弾性率は3.5GPa、引張強度は65MPaであったものの、成分[C]と成分[D]を同時に含まないため、引張破断伸度が3.8%と著しく低いものであった。
(比較例2)
表3に示した樹脂組成について、特許文献2(国際公開第2018/131580号)の実施例2に記載の方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。該エポキシ樹脂組成物は成分[C]および成分[D]を含まないため、破壊靱性値が不十分なものであった。また、引張破断伸度は著しく低いものであった。
表3に示した樹脂組成について、特許文献2(国際公開第2018/131580号)の実施例2に記載の方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。該エポキシ樹脂組成物は成分[C]および成分[D]を含まないため、破壊靱性値が不十分なものであった。また、引張破断伸度は著しく低いものであった。
(比較例3)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[C]を含むものの、成分[D]を含まないため、破壊靱性値は1.3MPa・m0.5と不十分であり、引張破断伸度は4.0%と低いものであった。
(比較例4)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[C]を含み、成分[D]を含まないかわりにエポキシ樹脂に不溶な粒子としてNanopox F400を含む。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性値は1.4MPa・m0.5と不十分であり、引張破断伸度は3.9%と低いものであった。
(比較例5)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[D]を含むものの、成分[C]を含まないため、破壊靱性値と引張破断伸度は低いものであった。
(比較例6)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[D]を含み、成分[C]を含まないかわりに熱可塑性樹脂として“ビニレック(登録商標)”Kを含む。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性値は1.3MPa・m0.5と不十分であり、引張破断伸度は4.4%と低いものであった。
(比較例7)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[D]を含み、成分[C]を含まないかわりに熱可塑性樹脂として“スミカエクセル(登録商標)”PES5003Pを含む。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性値は1.3MPa・m0.5と不十分であり、引張破断伸度は3.9%と低いものであった。
(比較例8)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[B]、[C]、[D]、[E]を含むが、成分[A]を含まない。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性値は1.8MPa・m0.5、引張破断伸度は7.9%と優れていたものの、曲げ弾性率と引張弾性率が2.9GPaと著しく低く、曲げ強度と引張強度はそれぞれ127MPaと57MPaと不十分であった。
(比較例9)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[B]を含まないかわりに成分[F]として“jER(登録商標)”828と“jER(登録商標)”1007を含む。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性値は1.8MPa・m0.5、引張破断伸度は7.8%と優れていたものの、曲げ弾性率と引張弾性率が3.0GPaと低く、曲げ強度と引張強度はそれぞれ133MPaと59MPaと不十分であった。
(比較例10)
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
表3に示した樹脂組成について、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、比較例1と同じ方法で、曲げ特性、引張特性、破壊靱性、および耐熱性を評価した。
該エポキシ樹脂組成物は成分[E]を含まないかわりに硬化剤および硬化促進剤としてDICY7と“Omicure(登録商標)”U-24を含む。該エポキシ樹脂組成物の破壊靱性値は1.8MPa・m0.5、であったものの、成分[E]含まないため引張破断伸度は4.1%と著しく低く、また、ガラス転移温度も149℃と低いものであった。
なお、表中の各成分の単位は質量部である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、弾性率と変形能力、破壊靱性値を高いレベルで両立する硬化物を与えるため、該エポキシ樹脂組成物からなる繊維強化複合材料は、破壊強度と耐衝撃吸収性に優れる。そのため、繊維強化複合材料の軽量化が可能であり、スポーツ、一般産業用途や航空宇宙用途などに幅広く用いることができる。
Claims (7)
- 次の成分[A]、[B]、[C]、[D]および[E]すべてを含み、下記条件(1)を満たす、エポキシ樹脂組成物。
[A]:3官能以上のアミン型エポキシ樹脂
[B]:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
[C]:トリブロック共重合体
[D]:コアシェル型ゴム粒子
[E]:ジアミノジフェニルスルホン
(1)エポキシ樹脂組成物を180℃で120分反応させて得られる樹脂硬化物の引張破断伸度が7%以上 - 成分[C]および成分[D]が下記条件(2)および(3)を同時に満たす、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
(2)全エポキシ樹脂100質量部に対し、成分[C]を2~10質量部含む
(3)全エポキシ樹脂100質量部に対し、成分[D]を4~15質量部含む - 成分[A]がアミノフェノール型エポキシ樹脂であり、かつ、全エポキシ樹脂100質量部に対し、20~70質量部含む、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 全エポキシ樹脂100質量部に対し、成分[B]を15~30質量部含む、請求項1~3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 成分[E]が3,3’-ジアミノジフェニルスルホンである、請求項1~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1~5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグ。
- 請求項6に記載のプリプレグが硬化されてなる繊維強化複合材料。
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