以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の第1実施形態による筆記具1の非筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図であり、図2は、図1の筆記具1の非筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図3は、図1の筆記具1の筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図4は、図1の筆記具1のノック機構10の分解組立図である。
筆記具1は、筒状に形成され且つ前軸2及び後軸3を備えた軸筒4と、軸筒4内に配置され且つ一端に筆記部5aを備えた筆記体であるリフィル5と、リフィル5を後方へ付勢するスプリング6と、軸筒4の後端部、すなわち後軸3の後端部に配置されたノック機構10とを有する。ノック機構10は、それぞれ筒状に形成された内筒20と操作部30と回転子40とを有する。前軸2の前端部はテーパー状に形成され、リフィル5の筆記部5aを突出させるための貫通孔2aが形成されている。前軸2の後端部は、後軸3の前端部の内部に挿入され、圧入によって嵌合している。内筒20は、後軸3と一体に形成してもよい。また、前軸2及び後軸3は、一体に形成してもよい。
なお、本明細書では、内筒20、前軸2及び後軸3を総じて軸筒と称する。また、本明細書中では、筆記具1の軸線方向において、筆記部5a側を「前」側と規定し、筆記部5aとは反対側を「後」側と規定する。さらに、筆記具1では、ノック機構10によって、リフィル5が軸筒4内を前後方向に移動する。このとき、筆記部5aが軸筒4内に没入した状態を非筆記状態(図1及び図2)と称し、筆記部5aが軸筒4から突出した状態を筆記状態(図3)と称す。さらに、図1乃至図3において、上方は鉛直上方であり、下方は鉛直下方である。すなわち、重力が、各図において下方に向かって作用する。
軸筒4内において、ノック機構10の前方、すなわち回転子40の前方には、ノックロック部材50が配置されている。したがって、軸筒4内には、操作部30、回転子40及びノックロック部材50が、後端側から順に配置されている(図4)。
ノックロック部材50は、後述するように、重力によって軸筒4内を前後方向に移動可能である。したがって、図1及び図2は、筆記具1の同じ非筆記状態を示しているが、図1では、筆記具1の前端、すなわち軸筒4の前端が上向きであることから、ノックロック部材50は、軸筒4内において後端側に寄っている。他方、図2では、筆記具1の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材50は、図1と比較して、軸筒4内において前端側に寄っている。
図5は、図1の筆記具1の内筒20の部分縦断面図である。図5において、上方が筆記具1の前側である。内筒20の内面には、4つの外カム21が周方向に等間隔に設けられている。隣接する2つの外カム21によって、前後方向に延在する4つのガイド溝22が画成されている。外カム21の各々は、前後方向に延在し且つ周方向に連続して配置された第1突起部23と第2突起部24と第3突起部25とから成る。中央に配置された第2突起部24は、第1突起部23及び第3突起部25よりも薄い径方向の厚みを有する。したがって、第1突起部23と第3突起部25との間には、径方向の凹部が形成され、後述する操作部30の突起部31が、両端の第1突起部23と第3突起部25との間、すなわち、第2突起部24の上に収容される。
図6は、図1の筆記具1の操作部30、いわゆるノック棒の斜視図である。図6において、上方が筆記具1の前側である。操作部30の前側の外周面には、8つの突起部31が周方向に等間隔に設けられている。突起部31の各々は、ノック操作によって、外カム21内、より具体的には第1突起部23と第3突起部25との間の凹部内、又は、外カム21間のガイド溝22内を前後方向に移動するように構成されている。また、操作部30の前端面にはカム面32が形成されている。カム面32は8つの山部33及び谷部34を有する。
さらに操作部30は、消去部として機能する円柱状の消去部材35を有する。消去部材35は、その他の部分に対して接着又は二色成形等によって取り付けられている。言い換えると、操作部30の一部が消去部として機能している。
図7は、図1の筆記具1の回転子40の斜視図である。図7において、上方が筆記具1の前側である。回転子40は、操作部30内に挿入されて芯合わせに使用される小径部41と、小径部41の前方に形成された中径部42と、中径部42の前方に形成された大径部43とから成る。中径部42は小径部41よりも大きな直径を有し、大径部43は中径部42よりも大きな直径を有する。中径部42の後端面には、操作部30のカム面32と相補的な形状のカム受け面44が形成されている。カム受け面44は操作部30のカム面32と同様に8つの山部45及び谷部46を有する。中径部42の外周面には、前後方向に延在する4つの内カム47が周方向に等間隔に設けられている。内カム47は、ノック操作によって回転子40が周方向に回転すると、外カム21と係合し又は外カム21間のガイド溝22内に収容される。内カム47が外カム21間のガイド溝22内に収容されるとき、外カム21は内カム47間の溝48内に収容される。
操作部30のカム面32及び回転子40のカム受け面44は、内カム47が外カム21と係合し又は外カム21間のガイド溝22内に収容されるとき、カム面32の山部33が、周方向において、カム受け面44の隣接する山部45と谷部46との間の斜面上に位置するように構成されている。このため、ノック操作によってカム面32の斜面がカム受け面44の斜面を押圧すると、この操作荷重及びスプリング6による付勢力に起因し、回転子40は周方向の分力を受けて周方向に回転する。一方、操作部30は、突起部31が外カム21の第1突起部23又は第3突起部25に周方向に当接することによって周方向の回転が規制される。
回転子40の大径部43の前端面には、カム面49が形成されている。カム面49は4つの山部49a及び谷部49bを有する。詳細には、カム面49が、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部49cと、前後方向に沿って延びる縦壁部49dとを有するように、山部49a及び谷部49bが構成されている。回転子40のカム面49の山部49aは、操作部30のカム面32の山部33と異なり非対称であるが、同じように対称的な形状であってもよい。
図8は、図1の筆記具1のノックロック部材50の斜視図であり、図9は、図1の筆記具1のノックロック部材50の別の斜視図である。図8及び図9において、上方が筆記具1の前側である。ノックロック部材50は、筒状の部材である。ノックロック部材50は、リフィル5によって貫通され、後述する係止部60と回転子40との間を前後方向に移動可能である。
ノックロック部材50の後端面には、回転子40のカム面49と相補的な形状のカム受け面51が形成されている。カム受け面51は、回転子40のカム面49と同様に4つの山部51a及び谷部51bを有する。すなわち、ノックロック部材50のカム受け面51は、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部51cと、前後方向に沿って延びる縦壁部51dとを有するように、山部51a及び谷部51bが構成されている。
ノックロック部材50の前端面には、第1突起部として、前方へ突出する4つの角部52を有している。4つの角部52は、周方向に等間隔に設けられている。また、角部52は、筒状の部材の前端から後方に向かって形成された矩形の切り欠き53によって画成された形状を有する。角部52の先端には、カム受け面51の斜部51cと同じ方向に傾斜した斜面54を有する。
図10は、図1の筆記具1の後軸3の縦断面図であり、図11は、図1の筆記具の後軸3の背面図である。図10において、上方が筆記具1の前側である。後軸3の後端には、内筒20が圧入によって嵌合する際の回転止めとなる切り欠き3aが形成されている。また、後軸3の内面の中間部には、係止部60が設けられている。係止部60は、第2突起部として、4つの突起部61を有する。突起部61は、前後方向に延在し且つ周方向に等間隔に配置されている。隣接する突起部61によって、前後方向に延在する4つのガイド溝62が画成されている。
係止部60の突起部61の周方向における側面61a、特に後端部の側面61aには、周方向の凹部63が、それぞれ形成されている。凹部63の前側の内面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した斜面64である。また、凹部63の底面は、突起部61の周方向における側面61aと平行な側面65である。したがって、斜面64は、突起部61の側面61aとこれに平行な凹部63の側面65とを接続する斜面である。また、係止部60の突起部61の後端部には、前後方向に対して垂直な後端面66が形成されている。突起部61の側面65はノックロック部材50の周方向の回転を規制する役割を果たし、突起部61の後端面66はノックロック部材50の前方への移動を規制する役割を果たしている。
ノックロック部材50の角部52の各々は、対応する係止部60のガイド溝62内に収容され、ガイド溝62内を前後に移動する。ノックロック部材50の角部52が係止部60のガイド溝62内に収容されるとき、係止部60の突起部61は、ノックロック部材50の切り欠き53内に収容される。
回転子40のカム面49及びノックロック部材50のカム受け面51は、ノックロック部材50の角部52が、係止部60のガイド溝62内に収容されるとき、カム面49の山部49aが、周方向において、カム受け面51の斜部51c上に位置するように構成されている。このため、例えば図1に示されるように筆記具1の前端を上向きにすると、ノックロック部材50が重力の作用によって回転子40に当接するが、ノックロック部材50の自重に起因し、ノックロック部材50は周方向の分力を受けて周方向に回転する。一方、回転子40は、内カム47がガイド溝22内に収容されることによって周方向の回転が規制される。
図12は、図1の筆記具1のノック機構10の非筆記状態から筆記状態への切り替えを示す模式図である。すなわち、図12は、外カム21と操作部30と回転子40とノックロック部材50との位置関係を示す模式図であり、外カム21を周方向に展開したものに対して、回転子40の内カム47及びカム面49とノックロック部材50のカム受け面51及び角部52と後軸3の係止部60との位置を示したものである。図中、上方が筆記具1の前側であり、下方が筆記具1の後側である。
回転子40は、上述した操作部30のカム面32と回転子40のカム受け面44とのカム機構によって回転力を与えられ、ノック操作毎に図の左から右へ移動する。なお、図12では、便宜上、外カム21の第1突起部23と第2突起部24と第3突起部25とは一体的に示され、操作部30の突起部31は省略されている。
図12(a)は、図1に示されるような筆記具1の非筆記状態で且つ前端が上向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中下方に向かって作用している。このとき、リフィル5を介してスプリング6によって後方に付勢された回転子40の内カム47は、外カム21間のガイド溝22内に収容されている。したがって、この状態では、筆記部5aが軸筒4内に没入している。また、操作部30のカム面32と回転子40のカム受け面44とは噛合している。
筆記具1の前端を上に向けることによって、ノックロック部材50は、後方へ移動して回転子40に当接する。ノックロック部材50は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて周方向に回転する。すなわち、回転子40のカム面49とノックロック部材50のカム受け面51とが協働してノックロック部材50を周方向へ回転させる。その回転の結果、ノックロック部材50が係止部60と係止し、回転子40、ひいては操作部30の前方への移動が阻止される。
詳細には、ノックロック部材50の角部52が、係止部60の凹部63内に収容されることによって、ノックロック部材50と係止部60とが係止状態になる。言い換えると、ノックロック部材50の角部52が係止部60の凹部63内に収容されるように、係止部60の凹部63は、ノックロック部材50の角部52の一部と相補的な形状となるよう構成される。したがって、角部52の斜面54は、凹部63の斜面64と同じ傾きを有する。この状態で、操作部30を強く押圧して前方へ移動させようとしても、ノックロック部材50の角部52が係止部60の凹部63内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
図12(b)は、図2に示されるような筆記具1の非筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。筆記具1の前端を下に向けることによって、ノックロック部材50は、回転子40との関係において自由になる。他方、ノックロック部材50は、自重によって角部52を介して係止部60を押圧する。すなわち、ノックロック部材50の自重に起因し、角部52の斜面54は、係止部60の凹部63の斜面64から周方向の分力を受ける。その結果、ノックロック部材50は、図12(a)の場合とは逆の周方向に回転し、角部52がガイド溝62内に案内される。すなわち、ノックロック部材50と係止部60との係止状態が解除され、回転子40、ひいては操作部30の前方への移動が可能な状態となる。
図12(c)は、筆記具1の筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。スプリング6の付勢力に抗して操作部30を押圧し、操作部30及び回転子40を前方へ移動させると、内カム47の後端部が前後方向において外カム21の前端部、すなわち第1突起部23を越える。このとき、カム面32とカム受け面44とが一致し、外カム21の側面による、回転子40の周方向の回転の規制は、解除される。なお、ノックロック部材50がこれら動作を阻止することはない。
図12(d)は、図3に示されるような筆記具1の筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。図12(c)の状態から操作部30の押圧を解除すると、操作部30及び回転子40は、スプリング6の付勢力によって後退する。このとき、外カム21の側面による、回転子40の周方向の回転は規制されていないことから、回転子40は、外カム21の斜面から分力を受けて、周方向(前方から見たときに反時計回り)に回転する。すなわち、回転子40の内カム47は、外カム21の斜面を、第3突起部25の前端部側面に当接するまで移動する。その結果、内カム47は外カム21と係合して後退が妨げられ、リフィル5を介して回転子40に連結された筆記部5aは、軸筒4から突出する状態に保たれるので、筆記が可能となる。
本実施形態では、特に図12(a)を参照しながら説明したように、非筆記状態で且つ前端が上向き状態において、操作部30の前方への移動が阻止され、ノック操作ができない。したがって、例えば、操作部30の消去部材35を用いた当該筆記具1による筆跡の消去時に、安定した擦過動作を行うことが可能となる。すなわち、筆記具1を持ち替えて操作部30を筆記面に対して押圧して擦過動作を行っても、操作部30ががたつくことがない。
図13は、本発明の第2実施形態による筆記具100の非筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図であり、図14は、図13の筆記具100の非筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図である。また、図15は、図13の筆記具100の筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図16は、図13の筆記具100の筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図である。
本実施形態による筆記具100は、ノックロック部材150及び係止部160の形状のみ、第1実施形態による筆記具1のノックロック部材50及び係止部60の形状と異なる。したがって、本実施形態について、第1実施形態と異なる点のみ説明する。図13乃至図16においても、上方は鉛直上方であり、下方は鉛直下方である。すなわち、重力が、各図において下方に向かって作用する。
ノックロック部材150は、重力によって軸筒4内を前後方向に移動可能である。したがって、図13及び図14は、筆記具100の同じ非筆記状態を示しているが、図13では、筆記具100の前端、すなわち軸筒4の前端が上向きであることから、ノックロック部材50は、軸筒4内において後端側に寄っている。他方、図14では、筆記具100の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材150は、図13と比較して、軸筒4内において前端側に寄っている。同様に、図15及び図16は、筆記具100の同じ筆記状態を示しているが、図15では、筆記具100の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材150は、軸筒4内において前端側に寄っている。他方、図16では、筆記具100の前端、すなわち軸筒4の前端が上向きであることから、ノックロック部材150は、図15と比較して、軸筒4内において後端側に寄っている。
図17は、図13の筆記具100のノックロック部材150の斜視図であり、図18は、図13の筆記具100のノックロック部材150の別の斜視図である。図17及び図18において、上方が筆記具100の前側である。ノックロック部材150は、筒状の部材である。ノックロック部材150は、リフィル5によって貫通され、後述する係止部160と回転子40との間を前後方向に移動可能である。
ノックロック部材150の後端面には、回転子40のカム面49と相補的な形状のカム受け面151が形成されている。カム受け面151は、回転子40のカム面49と同様に4つの山部151a及び谷部151bを有する。すなわち、ノックロック部材150のカム受け面151は、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部151cと、前後方向に沿って延びる縦壁部151dとを有するように、山部151a及び谷部151bが構成されている。
ノックロック部材150の前端面には、第1突起部として、前方へ突出する2つの角部152を有している。2つの角部152は、周方向に等間隔に設けられている。また、角部152は、筒状の部材の前端から後方に向かって形成された矩形の切り欠き153によって画成された形状を有する。角部152の先端には、カム受け面151の斜部151cと同じ方向に傾斜した斜面154を有する。
図19は、図13の筆記具100の後軸3の縦断面図であり、図20は、図13の筆記具の後軸3の背面図である。図19において、上方が筆記具1の前側である。後軸3の内面の中間部には、係止部160が設けられている。係止部160は、第2突起部として、2つの突起部161を有する。突起部161は、前後方向に延在し且つ周方向に等間隔に配置されている。隣接する突起部161によって、前後方向に延在する2つのガイド溝162が画成されている。
係止部160の突起部161の周方向における側面161a、特に後端部の側面161aには、周方向の第1凹部163が、それぞれ形成されている。さらに、第1凹部163より前方の係止部160の突起部161の周方向における側面161aには、周方向の第2凹部164が、それぞれ形成されている。すなわち、第1凹部163及び第2凹部164は、前後方向に離間して配置されている。第1凹部163の底面は、突起部161の周方向における側面161aと平行な側面165であり、第2凹部164の底面は、突起部161の周方向における側面161aと平行な側面166である。第1凹部163の前側の内面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した第1斜面167であり、第2凹部164の前側の内面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した第2斜面168である。第1凹部163及び第2凹部164は、突起部161後方から前方に向かって見て、階段状に形成されている。また、係止部160の突起部161の後端部には、前後方向に対して垂直な後端面169が形成される。突起部161の側面165及び側面166はノックロック部材150の周方向の回転を規制する役割を果たし、突起部161の後端面169はノックロック部材150の前方への移動を規制する役割を果たしている。
ノックロック部材150の角部152の各々は、対応する係止部160のガイド溝162内に収容され、ガイド溝162内を前後に移動する。ノックロック部材150の角部152が係止部160のガイド溝162内に収容されるとき、係止部160の突起部161は、ノックロック部材150の切り欠き153内に収容される。
回転子40のカム面49及びノックロック部材150のカム受け面151は、ノックロック部材150の角部152が、係止部160のガイド溝162内に収容されるとき、カム面49の山部49aが、周方向において、カム受け面151の斜部151c上に位置するように構成されている。このため、例えば図13及び図16に示されるように筆記具100の前端を上向きにすると、ノックロック部材150が重力の作用によって回転子40に当接するが、ノックロック部材150の自重に起因し、ノックロック部材150は周方向の分力を受けて周方向に回転する。一方、回転子40は、内カム47が外カム21と係合し又はガイド溝22内に収容されることによって周方向の回転が規制される。
図21は、図13の筆記具のノック機構10の非筆記状態から筆記状態への切り替えを示す模式図である。図21は、図12と同様の模式図であり、図中、上方が筆記具100の前側であり、下方が筆記具100の後側である。
図21(a)は、図13に示されるような筆記具100の非筆記状態で且つ前端が上向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中下方に向かって作用している。このとき、リフィル5を介してスプリング6によって後方に付勢された回転子40の内カム47は、外カム21間のガイド溝22内に収容されている。したがって、この状態では、筆記部5aが軸筒4内に没入している。また、操作部30のカム面32と回転子40のカム受け面44とは噛合している。
筆記具100の前端を上に向けることによって、ノックロック部材150は、後方へ移動して回転子40に当接する。ノックロック部材150は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて周方向に回転する。すなわち、回転子40のカム面49とノックロック部材150のカム受け面151とが協働してノックロック部材150を周方向へ回転させる。その回転の結果、ノックロック部材150が係止部160と係止し、回転子40、ひいては操作部30の前方への移動が阻止される。
詳細には、ノックロック部材150の角部152が、係止部160の第1凹部163内に収容されることによって、ノックロック部材150と係止部160とが係止状態になる。言い換えると、非筆記状態において、ノックロック部材150の角部152が係止部160の第1凹部163内に収容されるように、係止部160の第1凹部163は、ノックロック部材150の角部152の一部と相補的な形状となるよう構成される。したがって、角部152の斜面154は、第1凹部163の第1斜面167と同じ傾きを有する。この状態で、操作部30を強く押圧して前方へ移動させようとしても、ノックロック部材150の角部152が係止部160の第1凹部163内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
図21(b)は、図14に示されるような筆記具100の非筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。筆記具100の前端を下に向けることによって、ノックロック部材150は、回転子40との関係において自由になる。他方、ノックロック部材150は、自重によって角部152を介して係止部160を押圧する。すなわち、ノックロック部材150の自重に起因し、角部152の斜面154は、係止部160の第1凹部163の第1斜面167から周方向の分力を受ける。その結果、ノックロック部材150は、図21(a)の場合とは逆の周方向に回転し、角部152がガイド溝162内に案内される。すなわち、ノックロック部材150と係止部160との係止状態が解除され、回転子40、ひいては操作部30の前方への移動が可能な状態となる。
図21(c)は、筆記具100の筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。スプリング6の付勢力に抗して操作部30を押圧し、操作部30及び回転子40を前方へ移動させると、内カム47の後端部が前後方向において外カム21の前端部、すなわち第1突起部23を越える。このとき、カム面32とカム受け面44とが一致し、外カム21の側面による、回転子40の周方向の回転の規制は、解除される。なお、ノックロック部材150がこれら動作を阻止することはない。
図21(d)は、図15に示されるような筆記具100の筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。図21(c)の状態から操作部30の押圧を解除すると、操作部30及び回転子40は、スプリング6の付勢力によって後退する。このとき、外カム21の側面による、回転子40の周方向の回転は規制されていないことから、回転子40は、外カム21の斜面から分力を受けて、周方向(前方から見たときに反時計回り)に回転する。すなわち、回転子40の内カム47は、外カム21の斜面を、第3突起部25の前端部側面に当接するまで移動する。その結果、内カム47は外カム21と係合して後退が妨げられ、リフィル5を介して回転子40に連結された筆記部5aは、軸筒4から突出する状態に保たれるので、筆記が可能となる。
図21(e)は、図16に示されるような筆記具100の筆記状態で且つ前端が上向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中下方に向かって作用している。筆記具100の前端を上に向けることによって、ノックロック部材150は、後方へ移動して回転子40に再び当接する。ノックロック部材150は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて周方向に回転する。すなわち、回転子40のカム面49とノックロック部材150のカム受け面151とが協働してノックロック部材150を周方向へ回転させる。その回転の結果、ノックロック部材150が係止部160と係止し、回転子40、ひいては操作部30の前方への移動が阻止される。
詳細には、ノックロック部材150の角部152が、係止部160の第2凹部164内に収容されることによって、ノックロック部材150と係止部160とが係止状態になる。言い換えると、筆記状態において、ノックロック部材150の角部152が係止部160の第2凹部164内に収容されるように、係止部160の第2凹部164は、ノックロック部材150の角部152の一部と相補的な形状となるよう構成される。したがって、角部152の斜面154は、第2凹部164の第2斜面168と同じ傾きを有する。この状態で、操作部30を強く押圧して前方へ移動させようとしても、ノックロック部材50の角部52が係止部60の第1凹部163内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
なお、第2凹部164を介したノックロック部材150と係止部160との係止状態は、第1凹部163の場合と同様に、筆記具100の前端が下向きの状態にすることによって解除される。その状態でノック操作を行うことによって、筆記具100を筆記状態から非筆記状態へ切り替えることができる。
本実施形態では、第1実施形態で説明したように、非筆記状態で且つ前端が上向き状態において、操作部30の前方への移動が阻止されると共に、筆記状態においても同様に操作部30の前方への移動が阻止される。したがって、例えば、操作部30の消去部材35を用いた当該筆記具100による筆跡の消去時に、筆記具100が筆記状態であっても非筆記状態であっても、安定した擦過動作を行うことが可能となる。すなわち、筆記具100を持ち替えて操作部30を筆記面に対して押圧して擦過動作を行っても、操作部30は、常にがたつくことがない。
図22乃至図25は、本発明の第3実施形態による筆記具の部品図である。本実施形態による筆記具は、ノックロック部材250、係止部260及びノックロック部材250に対応する回転子40のカム面49の形状が、第1実施形態による筆記具1と異なる。したがって、本実施形態について、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
図22は、本発明の第3実施形態による筆記具のノックロック部材250の斜視図であり、図23は、図22の筆記具のノックロック部材250の別の斜視図である。図22及び図23において、上方が筆記具の前側である。ノックロック部材250は、筒状の部材である。ノックロック部材250は、リフィル5によって貫通され、後述する係止部260と回転子40との間を前後方向に移動可能である。
ノックロック部材250の後端面には、回転子40のカム面49と相補的な形状のカム受け面251が形成されている。カム受け面251は、3つの山部251a及び谷部251bを有する。すなわち、ノックロック部材250のカム受け面251は、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部251cと、前後方向に沿って延びる縦壁部251dとを有するように、山部251a及び谷部251bが構成されている。なお、対応する回転子40のカム面も同様に、3つの山部49a及び谷部49bを有する。
ノックロック部材250の前方側の外周面には、前方へ突出する3つの角部252を有している。3つの角部252は、周方向に等間隔に設けられている。また、角部252は、筒状の部材の前端から後方に向かって形成された矩形の切り欠き253によって画成された形状を有する。角部252の先端には、カム受け面251の斜部251cと同じ方向に傾斜した斜面254を有する。
3つの角部252は、ノックロック部材250の前端面から前方へ突出する筒状に形成された筒部255によって連結されている。すなわち、筒部255は、その外面が3つの角部252の内面に当接するように配置されている。言い換えると、角部252は、筒部255の外周面から突出する第1突起部である。また、筒部255の外径は、後述する係止部260の内径よりも小さく形成されている。筒部255は、3つの角部252を連結していることから、角部252を補強する役割を果たしている。その結果、角部252の長期間に亘る繰り返し動作に対する耐久性を向上させることができる。
図24は、本発明の第3実施形態による筆記具の後軸3の縦断面図であり、図25は、図24の筆記具の後軸3の背面図である。図24において、上方が筆記具の前側である。後軸3の後端には、内筒20が圧入によって嵌合する際の回転止めとなる切り欠き3aが形成されている。また、後軸3の内面の中間部には、係止部260が設けられている。係止部260は、第2突起部として、3つの突起部261を有する。突起部261は、前後方向に延在し且つ周方向に等間隔に配置されている。隣接する突起部261によって、前後方向に延在する3つのガイド溝262が画成されている。
係止部260の突起部261の後端部には、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した斜面263が形成されている。斜面263は、例えば第1実施形態における凹部63と同様に、ノックロック部材250の角部252と係止状態になることができる。したがって、斜面263は、ノックロック部材250の前方への移動を規制する役割を果たしている。
ノックロック部材250の角部252の各々は、対応する係止部260のガイド溝262内に収容され、ガイド溝262内を前後に移動する。ノックロック部材250の角部252が係止部260のガイド溝262内に収容されるとき、係止部260の突起部261は、ノックロック部材250の切り欠き253内に収容される。上述したように、筒部255の外径は、係止部260の内径よりも小さく形成されていることから、ノックロック部材250の角部252の前後の移動を阻害することはない。
本実施形態による筆記具では、第1実施形態による筆記具1と比較して、係止部260に凹部が形成されていないものの、対応する斜面263を有することによって、ノック機構10の非筆記状態から筆記状態への切り替えは、図12を参照しながら説明した態様と同様である。したがって、非筆記状態で且つ前端が上向き状態において、操作部30の前方への移動が阻止され、ノック操作ができない。このため、例えば、操作部30の消去部材35を用いた当該筆記具による筆跡の消去時に、安定した擦過動作を行うことが可能となる。すなわち、筆記具を持ち替えて操作部30を筆記面に対して押圧して擦過動作を行っても、操作部30ががたつくことがない。
図26は、別の態様による消去部材135のカバー部材70を示す側面図であり、図27は、図26の消去部材135にカバー部材70を装着した縦断面図である。消去部材135及びカバー部材70は、上述したいずれの実施形態による筆記具に対しても適用可能である。
消去部材135は、上述した態様による消去部材35よりも小さい外径を有する。すなわち、消去部材135は、操作部30の外径よりも小さい外径を有する円柱状に形成されている。消去部材135は、操作部30の後端部に対して接着又は二色成形等によって取り付けられている。また、先端は半球状に形成されている。
カバー部材70は、操作部30の外径と略同一の外径を有し、後端部が閉塞した筒状のキャップ部材である。カバー部材70の内径は、消去部材135の外径と略同一か又は僅かばかり小さく設定されている。したがって、カバー部材70は、消去部材135に対して着脱可能に装着させることができる。消去部材135は、使用時以外は、カバー部材70によって覆われていることから、消去部材135の汚れを防止することが可能となっている。
図28は、本発明の第4実施形態による筆記具300の側面図であり、図29は、図28の筆記具300の非筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図であり、図30は、図28の筆記具300の非筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図31は、図28の筆記具300の筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図である。また、図32は、図28の筆記具300のノック機構の分解組立図である。
本実施形態による筆記具300は、後軸303、内筒20、操作部330、ノックロック部材350及び消去部材335の形状が、第2実施形態による筆記具100の後軸3、内筒20、操作部30、ノックロック部材150及び消去部材35の形状と大きく異なる。すなわち、本実施形態は、上述した実施形態におけるノックロック部材の第1突起部と係止部の第2突起部との役割を反転させたような構成を有している。第4実施形態による筆記具300の他の構成は、第2実施形態による筆記具100と概ね同一である。例えば、内筒20は、クリップ20aを有しているが、第2実施形態による筆記具100の内筒20と同様に、その内面に外カムを有している。したがって、本実施形態について、第2実施形態と大きく異なる点のみ説明する。図29乃至図31において、上方は鉛直上方であり、下方は鉛直下方である。すなわち、重力が、各図において下方に向かって作用する。
ノックロック部材350は、重力によって軸筒4内を前後方向に移動可能である。したがって、図29及び図30は、筆記具300の同じ非筆記状態を示しているが、図29では、筆記具300の前端、すなわち軸筒4の前端が上向きであることから、ノックロック部材350は、軸筒4内において後端側に寄っている。他方、図30では、筆記具300の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材350は、図29と比較して、軸筒4内において前端側に寄っている。図31は、筆記具300の筆記状態を示しており、筆記具300の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材350は、軸筒4内において前端側に寄っている。
図33は、図28の筆記具300の後軸303の側面図であり、図34は、図28の筆記具300の後軸303の背面図であり、図35は、図33の後軸302の線A-Aにおける断面図である。図33及び図35において、上方が筆記具300の前側である。後軸303の後端には、内筒20が圧入によって嵌合する際の回転止めとなる切り欠き303aが形成されている。また、後軸303の内面の中間部には、係止部360が設けられている。係止部360は、周方向に等間隔に配置された4つの第2突起部361を有する。第2突起部361は、横断面が平行四辺形である。第2突起部361の後端面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した斜面362である。
第2突起部361よりも後方の後軸303の側面には、外部から軸筒4の内部が視認可能となるように、1つの窓部303bが形成されている。本実施形態において、窓部303bは、矩形の貫通孔であるが、内部が視認可能である限りにおいて、貫通孔でなくてもよく、部分的に透明又は半透明な素材で形成してもよい。すなわち、軸筒4を透過性のある材料で形成した後、窓部303bの部分を残すように塗装を施したりフィルム巻き付けたりして窓部303bを形成してもよい。また、窓部303bの形状及び個数は任意に設定可能である。さらに、軸筒4と、窓部303bを介して視認できるノックロック部材350の部分とを異なる色で形成してもよい。当然のことながら、窓部303bの構成を、上述した実施形態に対して適用可能である。
筆記具300が、窓部303bを有することによって、窓部303bを介してノックロック部材350が視認可能となり、ノックロック部材350の位置を容易に確認することができる。すなわち、ノックロック部材350が、軸筒4内において後端側に寄っているときに窓部303bを介して視認でき、軸筒4内において前端側に寄っているときに窓部303bを介して視認できない。または、ノックロック部材350が、軸筒4内において前端側に寄っているときに窓部303bを介して視認できるようにし、軸筒4内において後端側に寄っているときに窓部303bを介して視認できないようにしてもよい。それによって、安定した擦過動作が可能な状態か否かの判別が容易になる。すなわち、窓部303bを介して、ノックロック部材350が視認できる場合には安定した擦過動作ができ、ノックロック部材350が視認できない場合には安定した擦過動作ができない。なお、当然のことながら、軸筒4に対して内部が視認可能となるように窓部を形成する構成は、他の実施形態においても適用可能である。
図36は、図28の筆記具300のノックロック部材350の斜視図であり、図37は、図28の筆記具300のノックロック部材350の別の斜視図である。図36及び図37において、上方が筆記具300の前側である。ノックロック部材350は、筒状の部材である。ノックロック部材350は、リフィル5によって貫通され、係止部360と回転子40との間を前後方向に移動可能である。
ノックロック部材350の後端面には、回転子40のカム面49と相補的な形状のカム受け面351が形成されている。カム受け面351は、回転子40のカム面49と同様に4つの山部351a及び谷部351bを有する。すなわち、ノックロック部材350のカム受け面351は、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部351cと、前後方向に沿って延びる縦壁部351dとを有するように、山部351a及び谷部351bが構成されている。
ノックロック部材350の筒部350aの外周面には、第2実施形態による筆記具100の後軸3に設けられた突起部161と類似形状の4つの第1突起部352を有している。第1突起部352は、前後方向に延在し且つ周方向に等間隔に配置されている。隣接する第1突起部352によって、前後方向に延在する4つのガイド溝353が画成されている。
第1突起部352の周方向における側面352a、特に前端部の側面352aには、周方向の第1凹部354が、それぞれ形成されている。さらに、第1凹部354より後方の第1突起部352の周方向における側面352aには、周方向の第2凹部355が、それぞれ形成されている。すなわち、第1凹部354及び第2凹部355は、前後方向に離間して配置されている。第1凹部354の底面は、第1突起部352の周方向における側面352aと平行な側面356であり、第2凹部355の底面は、第1突起部352の周方向における側面352aと平行な側面357である。第1凹部354の後側の内面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した第1斜面358であり、第2凹部355の後側の内面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した第2斜面359である。第1凹部354及び第2凹部355は、第1突起部352前方から後方に向かって見て、階段状に形成されている。第1突起部352の側面356及び側面357はノックロック部材350の周方向の回転を規制する役割を果たしている。
ノックロック部材350のガイド溝353の各々は、対応する後軸303の係止部360の第2突起部361をその内部に収容し、ガイド溝353内を前後に相対的に移動可能とさせている。
回転子40のカム面49及びノックロック部材350のカム受け面351は、係止部360の第2突起部361が、ノックロック部材350のガイド溝353内に収容されるとき、カム面49の山部49aが、周方向において、カム受け面351の斜部351c上に位置するように構成されている。このため、例えば図29に示されるように筆記具300の前端を上向きにすると、ノックロック部材350が重力の作用によって回転子40に当接するが、ノックロック部材350の自重に起因し、ノックロック部材350は周方向の分力を受けて周方向に回転する。一方、回転子40は、内カム47が外カム21と係合し又はガイド溝22内に収容されることによって周方向の回転が規制される。
図38は、図28の筆記具300のノック機構10の非筆記状態から筆記状態への切り替えを示す模式図である。図38は、図12と同様の模式図であり、図中、上方が筆記具300の前側であり、下方が筆記具300の後側である。
図38(a)は、図29に示されるような筆記具300の非筆記状態で且つ前端が上向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中下方に向かって作用している。このとき、リフィル5を介してスプリング6によって後方に付勢された回転子40の内カム47は、外カム21間のガイド溝22内に収容されている。したがって、この状態では、筆記部5aが軸筒4内に没入している。また、操作部330のカム面32と回転子40のカム受け面44とは噛合している。
筆記具300の前端を上に向けることによって、ノックロック部材350は、後方へ移動して回転子40に当接する。ノックロック部材350は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて周方向に回転する。すなわち、回転子40のカム面49とノックロック部材350のカム受け面351とが協働してノックロック部材350を周方向へ回転させる。その回転の結果、ノックロック部材350が係止部360と係止し、回転子40、ひいては操作部330の前方への移動が阻止される。
詳細には、係止部360の第2突起部361が、ノックロック部材350の第1突起部352の第1凹部354内に収容されることによって、ノックロック部材350と係止部360とが係止状態になる。言い換えると、非筆記状態において、係止部360の第2突起部361がノックロック部材350の第1突起部352の第1凹部354内に収容されるように、第1凹部354は、係止部360の第2突起部361の一部と相補的な形状となるよう構成される。したがって、第2突起部361の斜面362は、第1凹部354の第1斜面358と同じ傾きを有する。この状態で、操作部330を強く押圧して前方へ移動させようとしても、係止部360の第2突起部361がノックロック部材350の第1凹部354内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
図38(b)は、図30に示されるような筆記具300の非筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。筆記具300の前端を下に向けることによって、ノックロック部材350は、回転子40との関係において自由になる。他方、ノックロック部材350は、自重によって第1突起部352を介して係止部360を押圧する。すなわち、ノックロック部材350の自重に起因し、第1突起部352の第1凹部354の第1斜面358は、係止部360の第2突起部361の斜面362から周方向の分力を受ける。その結果、ノックロック部材350は、図38(a)の場合とは逆の周方向に回転し、第2突起部361がガイド溝353内に案内される。すなわち、ノックロック部材350と係止部360との係止状態が解除され、回転子40、ひいては操作部330の前方への移動が可能な状態となる。ノックロック部材350の前方への移動は、前軸2の後端面によって停止される。
図38(c)は、筆記具300の筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。スプリング6の付勢力に抗して操作部330を押圧し、操作部330及び回転子40を前方へ移動させると、内カム47の後端部が前後方向において外カム21の前端部、すなわち第2突起部361を越える。このとき、カム面32とカム受け面44とが一致し、外カム21の側面による、回転子40の周方向の回転の規制は、解除される。なお、ノックロック部材350がこれら動作を阻止することはない。
図38(d)は、図31に示されるような筆記具300の筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。図38(c)の状態から操作部330の押圧を解除すると、操作部330及び回転子40は、スプリング6の付勢力によって後退する。このとき、外カム21の側面による、回転子40の周方向の回転は規制されていないことから、回転子40は、外カム21の斜面から分力を受けて、周方向(前方から見たときに反時計回り)に回転する。すなわち、回転子40の内カム47は、外カム21の斜面を、第3突起部25の前端部側面に当接するまで移動する。その結果、内カム47は外カム21と係合して後退が妨げられ、リフィル5を介して回転子40に連結された筆記部5aは、軸筒4から突出する状態に保たれるので、筆記が可能となる。
図38(e)は、筆記具300の筆記状態で且つ前端が上向きの状態(図示しないが図16と同様である。)におけるノック機構10の模式図である。したがって、重力は図中下方に向かって作用している。筆記具300の前端を上に向けることによって、ノックロック部材350は、後方へ移動して回転子40に再び当接する。ノックロック部材350は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて周方向に回転する。すなわち、回転子40のカム面49とノックロック部材350のカム受け面351とが協働してノックロック部材350を周方向へ回転させる。その回転の結果、ノックロック部材350が係止部360と係止し、回転子40、ひいては操作部330の前方への移動が阻止される。
詳細には、係止部360の第2突起部361が、ノックロック部材350の第1突起部352の第2凹部355内に収容されることによって、ノックロック部材350と係止部360とが係止状態になる。言い換えると、筆記状態において、係止部360の第2突起部361がノックロック部材350の第1突起部352の第2凹部355内に収容されるように、第2凹部355は、係止部360の第2突起部361の一部と相補的な形状となるよう構成される。したがって、第2突起部361の斜面362は、第2凹部355の第2斜面359と同じ傾きを有する。この状態で、操作部330を強く押圧して前方へ移動させようとしても、係止部360の第2突起部361がノックロック部材350の第2凹部355内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
なお、第2凹部355を介したノックロック部材350と係止部360との係止状態は、第1凹部354の場合と同様に、筆記具300の前端が下向きの状態にすることによって解除される。その状態でノック操作を行うことによって、筆記具300を筆記状態から非筆記状態へ切り替えることができる。
本実施形態では、第2実施形態で説明したように、非筆記状態及び筆記状態のいずれの場合も、前端が上向き状態であれば、操作部330の前方への移動が阻止される。したがって、例えば、操作部330の消去部材335を用いた当該筆記具300による筆跡の消去時に、筆記具300が筆記状態であっても非筆記状態であっても、安定した擦過動作を行うことが可能となる。すなわち、筆記具300を持ち替えて操作部330を筆記面に対して押圧して擦過動作を行っても、操作部330は、常にがたつくことがない。
図39は、図28の筆記具300の消去部材335の部分の縦断面図である。
操作部330の後端部には、前方に向かって延びる穴部331が形成されている。穴部331は、操作部330の側壁部332と、側壁部332にほぼ直交して結合されている底壁部333とによって画成される。穴部331の内部は、消去部材335によって充填される。穴部331の側壁部332の内面には、内径を縮小する2つの段付き部332a、332bが形成され、その結果、底側の小径部と入口側の大径部とそれらの間の中径部が形成される。穴部331の底壁部333の中心部には、比較的小さな貫通穴333aが設けられている。本実施形態において、小径部、中径部及び大径部の各横断面形状は、円形であるが、楕円形や矩形等その他の形状であってもよい。
消去部材335は、穴部331を充填する比較的細径の基部336と、筆跡等を擦過する外側部337であって、操作部330の外径と略同一の外形を有する比較的大径の外側部337とを有し、その結果、基部336と外側部337との外径の差に基づいて肩状部338が外側部337に形成される。また、消去部材335の基部336には、操作部330の穴部331の形状に対応して、小径部336aと中径部336bと大径部336cとが形成される。
操作部330と消去部材335とは、接着又は二色成形法等によって互いに接合されている。本実施形態では、操作部330と消去部材335は二色成形法を用いて成形されて互いに接合される。二色成形法を用いた場合、最初に操作部330が射出成形され、次に、成形された操作部330を残置する金型のコアに、消去部材335を成形するための金型のキャビティーが組み合わされて、操作部330とは異なる、例えば後述するゴム系の材料が射出されて消去部材335が操作部330に付加的に成形される。二色成形法により、操作部330及び消去部材335の表面は、用いられる材料にもよるが、比較的高い強度で接合される。
操作部330の底壁部333に貫通穴333aが設けられているので、二色成形時において、消去部材335を射出成形するときに成形材料から発生するガスの逃げ道が確保され、その結果、消去部材335の基部336における充填不足等の成形不良を防止することが可能になる。
また、操作部330の側壁部332に2つの段付き部332a、332bが形成されていることから、その段の縁が消去部材335を係止し、段付き部がない場合と比較して接合強度が向上する。また、操作部330よりも高価な材料が用いられることの多い消去部材335の体積を減らすことが可能になる。さらに、小径部、中径部及び大径部の各横断面形状の少なくとも1つの横断面形状を楕円形等の非円形状とすることによって、軸線回りに消去部材335に作用するねじりモーメントに対する構造的な支持部が提供される。
以上より、操作部330及び消去部材335によれば、強く擦過された場合でも消去部材335の筆記具本体からの脱落が防止され、また長期に亘り消去部材335の保持力を確保することが可能になる。
図40は、本発明の第5実施形態による筆記具400の非筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図であり、図41は、図40の筆記具400の非筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図42は、図40の筆記具400の前端が下向きでノック操作をしている状態の縦断面図であり、図43は、図40の筆記具400の筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図44は、図40の筆記具400の筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図である。また、図45は、図40の筆記具400のノック機構410の分解組立図である。図40乃至図44において、上方は鉛直上方であり、下方は鉛直下方である。すなわち、重力が、各図において下方に向かって作用する。
上述した実施形態による筆記具のノック機構では、操作部、回転子及びノックロック部材が、後端側から順に、直列的に軸筒内に配置されていた(例えば、図4参照)。それによって、回転子のカム面と、ノックロック部材のカム受け面とが協働してノックロック部材を周方向へ回転させ、係止部とノックロック部材とを係止状態にさせていた。本実施形態による筆記具400は、その基本的な構成が異なっている。すなわち、筆記具400のノック機構410では、図45に示されるように、回転子440は、操作部430内に配置され且つ操作部430内を前後方向に移動する。それによって、操作部430のカム面432と、ノックロック部材450のカム受け面451とが協働してノックロック部材450を周方向へ回転させ、係止部460とノックロック部材450とを係止状態にさせる。以下、詳細に説明する。
ノックロック部材450は、重力によって軸筒4内を前後方向に移動可能である。したがって、図40及び図41は、筆記具400の同じ非筆記状態を示しているが、図40では、筆記具400の前端、すなわち軸筒4の前端が上向きであることから、ノックロック部材450は、軸筒4内において後端側に寄っている。他方、図41では、筆記具400の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材450は、図40と比較して、軸筒4内において前端側に寄っている。また、図42は、筆記具400の前端が下向きでノック操作をしている状態を示しているが、筆記具400の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材450は、図40と比較して、軸筒4内において前端側に寄っている。同様に、図43及び図44は、筆記具400の同じ筆記状態を示しているが、図43では、筆記具400の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材450は、軸筒4内において前端側に寄っている。他方、図44では、筆記具400の前端、すなわち軸筒4の前端が上向きであることから、ノックロック部材450は、図43と比較して、軸筒4内において後端側に寄っている。
図46は、図40の筆記具400の後軸403の縦断面図である。図46において、上方が筆記具400の前側である。後軸403の後端には、内筒420が圧入によって嵌合する際の回転止めとなる切り欠き403aが形成されている。また、後軸403の内面の中間部には、係止部460が設けられている。係止部460は、周方向に等間隔に配置された6つの第2突起部461を有する。本実施形態において、第2突起部461は、第4実施形態における第2突起部361と同様の形状である。したがって、第2突起部461は、横断面が平行四辺形である。また、第2突起部461の後端面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した斜面462である。
図47は、図40の筆記具400の内筒420の正面図であり、図48は、図47の内筒420の線B-Bにおける断面図である。図48において、上方が筆記具400の前側である。内筒420は、筒状の部材である。内筒420の中央部の内面には、外カム421が周方向に等間隔に設けられている。外カム421は、径方向に突出する3つの大突起部422から成り、各大突起部422の前端には、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜面が形成されている。周方向に沿った各大突起部422間の中央の内筒420の内面には、3つの小突起部423が設けられている。小突起部423は、大突起部422よりも薄い径方向の厚みを有する。また、外カム421より後方の内筒420の内面には、後端へ向かって延びる複数のリブ424が設けられている。複数のリブ424は、内筒420内に配置される後述する付勢スプリング490と、内筒420の内面との摩擦抵抗を軽減させる。
図49は、図40の筆記具400の操作部430の斜視図であり、図50は、図40の筆記具400の操作部430の縦断面図である。図49及び図50において、上方が筆記具400の前側である。操作部430は、筒状の部材である。操作部430は、軸線方向の中央部分に、平滑な外周面を有する円筒部431を有する。円筒部431の内面には、3つの楕円形状の突起431aが周方向に等間隔に設けられている。円筒部431の前方は、僅かばかり大きい外径に形成され、その前端面には、カム面432が形成されている。カム面432は6つの山部432a及び谷部432bを有する。詳細には、カム面432が、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部432cと、前後方向に沿って延びる縦壁部432dとを有するように、山部432a及び谷部432bが構成されている。操作部430のカム面432の山部432aは、周方向に沿って非対称であるが、対称的な形状であってもよい。
円筒部431の後方には、円筒部431の外径よりも僅かばかり小さい外径を有するガイド部433が形成されている。ガイド部433の後端には、後壁433aが設けられている。ガイド部433には、軸線方向に沿って3つのスリット433bが形成されている。3つのスリット433bは、内部まで貫通するようにして、周方向に等間隔に設けられている。したがって、3つのスリット433bによって、断面が略扇形の3つの柱部434が画成される。柱部434の各々の外面には、軸線方向に沿ってガイド溝434aが形成されている。また、柱部434の各々の内面には、後壁433aの内面から前方へ向かって延びる突起部434bが形成されている。突起部434bの各々の前端面には、V字形に画成されたV字形カム面435が形成されている。すなわち、ガイド部433の内面には、3つのV字形カム面435が形成されている。
ガイド部433の後端面、すなわちガイド部433の後壁433aの後端面には、後方に向かって延在する3つの嵌合角部436が形成されている。3つの嵌合角部436は、周方向に等間隔に設けられ、径方向に弾性変形可能に形成されている。嵌合角部436の各々の先端部外面には、径方向外方へ延びる嵌合突起436aが形成されている。
操作部430は、内筒420に対して前方から挿入される。その際、内筒420の大突起部422の各々は、操作部430のスリット433b間に配置され、したがって、操作部430の柱部434は、内筒420の大突起部422間に配置される。このとき、内筒420に形成された小突起部423の各々は、対応する操作部430の柱部434に形成されたガイド溝434a内に配置される。内筒420の小突起部423が、操作部430のガイド溝434a内に配置されることによって、操作部430は、内筒420に対する周方向の回転が規制されると共に、前後方向に移動可能となる。また、内筒420の大突起部422の各々は、スリット433bを介して操作部430のガイド部433内に突出し、その突出量は、柱部434の内面からの突起部434bの突出量と略同一である。したがって、内筒420の大突起部422と、操作部430の突起部434bとは、協働して後述する回転子440の内カム443に作用する。
図51は、図40の筆記具400の回転子440の斜視図である。図51において、上方が筆記具400の前側である。回転子440は、筒状の部材である。回転子440は、円筒状の本体部441と、本体部441の前端部に設けられたフランジ部442とを有している。フランジ部442の外径は、挿入される操作部430の円筒部431の内径より僅かばかり小さく設定されている。本体部441の外周面には、前後方向に延在する3つの内カム443が周方向に等間隔に設けられている。内カム443の各々の後端面には、操作部430のV字形カム面435と協働する鋸刃状のカム受け面444が形成されている。
回転子440は、操作部430に対して前方から挿入される。回転子440が挿入された後は、フランジ部442と、操作部430の内面に形成された突起431aとの係止によって、容易に外れることはない。回転子440の内カム443は、ノック操作によって回転子440が周方向に回転すると、スリット433bを介して操作部430内に突出する、外カム421と係合し又は外カム421間に配置される。内カム443が外カム421間に配置されるとき、外カム421は内カム443間に配置される。
操作部430のV字形カム面435及び回転子340のカム受け面444は、内カム443が外カム421と係合し又は外カム421間に配置されるとき、V字形カム面435とカム受け面444との位相がずれるように構成されている。このため、ノック操作によってV字形カム面435の斜面がカム受け面444の斜面を押圧すると、この操作荷重及びスプリング6による付勢力に起因し、回転子440は周方向の分力を受けて周方向に回転する。一方、操作部430は、上述したように、ガイド溝434a内に内筒420の小突起部423が配置されることによって、周方向の回転が規制される。
図52は、図40の筆記具400のノックロック部材450の斜視図であり、図53は、図40の筆記具400のノックロック部材450の別の斜視図である。図52及び図53において、上方が筆記具400の前側である。ノックロック部材450は、筒状の部材である。ノックロック部材450は、リフィル5によって貫通され、係止部460と操作部430との間を前後方向に移動可能である。
ノックロック部材450の後端面には、操作部430のカム面432と相補的な形状のカム受け面451が形成されている。カム受け面451は、操作部430のカム面432と同様に6つの山部451a及び谷部451bを有する。すなわち、ノックロック部材450のカム受け面451は、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部451cと、前後方向に沿って延びる縦壁部451dとを有するように、山部451a及び谷部451bが構成されている。
ノックロック部材450の筒部450aの外周面には、第4実施形態によるノックロック部材350と類似形状の6つの第1突起部452を有している。第1突起部452は、前後方向に延在し且つ周方向に等間隔に配置されている。隣接する第1突起部452によって、前後方向に延在する6つのガイド溝453が画成されている。
第1突起部452の周方向における側面452a、特に前端部の側面452aには、周方向の凹部454が、それぞれ形成されている。凹部454の底面は、第1突起部452の周方向における側面452aと平行な側面455である。凹部454の後側の内面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した斜面456である。凹部454は、第1突起部452前方から後方に向かって見て、階段状に形成されている。第1突起部452の側面455はノックロック部材450の周方向の回転を規制する役割を果たしている。
ノックロック部材450のガイド溝453の各々は、対応する後軸403の係止部460の第2突起部461をその内部に収容し、ガイド溝453内を前後に相対的に移動可能とさせている。
操作部430のカム面432及びノックロック部材450のカム受け面451は、係止部460の第2突起部461が、ノックロック部材450のガイド溝453内に収容されるとき、カム面432の山部432aが、周方向において、カム受け面451の斜部451c上に位置するように構成されている。このため、例えば図40に示されるように筆記具400の前端を上向きにすると、ノックロック部材450が重力の作用によって操作部430に当接するが、ノックロック部材450の自重に起因し、ノックロック部材450は周方向の分力を受けて周方向に回転する。一方、操作部430は、ガイド溝434a内に内筒420の小突起部423が配置されることによって、周方向の回転が規制される。
図54は、図40の筆記具400の前軸402の側面図である。前軸402の後部には、後軸403と螺合する螺合部402aが形成され、螺合部402aより後方の前軸402の後端部には、緩衝部材402bが配置されている。筆記具400を、前端が上向きの状態、すなわちノックロック部材450が後端側に寄っている状態から、筆記具400を持ち替えて、前端が下向きの状態にすると、ノックロック部材450は、重力の作用によって前方へ移動する。ノックロック部材450の前方への移動は、前軸402の後端面との当接、すなわち衝突によって、停止する。このとき、前軸402の後端部に緩衝部材402bが設けられていることによって、衝突時の衝撃や音を低減させることができる。したがって、ノックロック部材450の前方への移動は、緩衝部材402b、特にその後端面との当接によって阻止される。
緩衝部材402bは、例えば、後述する消去部材として選択可能な材料から形成してもよい。その場合、緩衝部材402bは、接着又は二色成形等によって前軸402の後端部に設けてもよい。また、緩衝部材402bとして、スプリングやスポンジ等を配置するようにしてもよい。なお、本実施形態において、緩衝部材402bは前軸402の後端部に設けたが、ノックロック部材450の前端部に設けてもよい。これら構成は、当然のことながら、他の実施形態においても適用可能である。
図55は、図40の筆記具400の消去部材470の斜視図であり、図56は、図40の筆記具400の消去部材470の縦断面図である。図56において、下方が筆記具400の前側である。消去部材470は、保持部材471の後端部に設けられ、保持部材471を介して操作部430の後端部に取り付けられている。言い換えると、操作部430の一部が消去部として機能している。消去部材470は、保持部材471に対して接着又は二色成形等によって設けられている。
保持部材471は、保持部本体472を有している。保持部本体472の前部は、前方に開口する筒状に形成されている。筒状の部分の外周面には、3つの矩形の開口473が形成されている。また、開口473より前方の外周面には、フランジ部474が形成されている。保持部材471は、操作部430の嵌合角部436に対して嵌合によって取り付けられる。すなわち、保持部材471を取り付ける際に、操作部430の嵌合角部436は、径方向内方へ弾性変形し、嵌合角部436の嵌合突起436aが、保持部本体472の開口473内にスナップ式に嵌合する。保持部本体472の後部は、消去部材470と共に全体として先細りの截頭三角錐体状に形成されている。
消去部材470には、図40及び図44においては省略されているが図41乃至図43に示されるように、カバー部材480が装着されている。具体的には、カバー部材480は、保持部本体472と着脱可能に嵌合している。カバー部材480の前端面は、保持部材471のフランジ部474の後端面と当接している。消去部材470は、使用時以外は、カバー部材480によって覆われていることから、消去部材470の汚れを防止することが可能となっている。なお、カバー部材480の後端の閉鎖端面には空気孔が形成されている。
さらに、図40乃至図44に示されるように、内筒420の3つの大突起部422の後端面と、保持部材471のフランジ部474の前端面との間に、操作部430のガイド部433を包囲するように、付勢スプリング490が配置されている。付勢スプリング490は、内筒420に対して、保持部材471、さらには、保持部材471に接続された操作部430及び保持部材471に取り付けられた消去部材470を後方へ付勢している。したがって、筆記具400が筆記状態であっても非筆記状態であっても、消去部材470は、軸線方向において常に同一位置に配置される。
図57は、図40の筆記具400のノック機構410の非筆記状態から筆記状態への切り替えを示す模式図である。図57は、図12と同様の模式図であり、図中、上方が筆記具400の前側であり、下方が筆記具400の後側である。
図57(a)は、図40に示されるような筆記具400の非筆記状態で且つ前端が上向きの状態におけるノック機構410の模式図である。したがって、重力は図中下方に向かって作用している。このとき、リフィル5を介してスプリング6によって後方に付勢された回転子440の内カム443は、外カム421間に配置されている。したがって、この状態では、筆記部5aが軸筒4内に没入している。また、操作部430のV字形カム面435と回転子440のカム受け面444とが当接しているが、V字形カム面435とカム受け面444との位相はずれている。
筆記具400の前端を上に向けることによって、ノックロック部材450は、後方へ移動して操作部430に当接する。ノックロック部材450は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて周方向に回転する。すなわち、操作部430のカム面432とノックロック部材450のカム受け面451とが協働してノックロック部材450を周方向へ回転させる。その回転の結果、ノックロック部材450が係止部460と係止し、操作部430の前方への移動が阻止される。
詳細には、係止部460の第2突起部461が、ノックロック部材450の第1突起部452の凹部454内に収容されることによって、ノックロック部材450と係止部460とが係止状態になる。言い換えると、非筆記状態において、係止部460の第2突起部461がノックロック部材450の第1突起部452の凹部454内に収容されるように、凹部454は、係止部460の第2突起部461の一部と相補的な形状となるよう構成される。したがって、第2突起部461の斜面462は、凹部454の斜面456と同じ傾きを有する。この状態で、操作部430を強く押圧して前方へ移動させようとしても、係止部460の第2突起部461がノックロック部材450の凹部454内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
図57(b)は、図41に示されるような筆記具400の非筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構410の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。筆記具400の前端を下に向けることによって、ノックロック部材450は、操作部430との関係において自由になる。他方、ノックロック部材450は、自重によって第1突起部452を介して係止部460を押圧する。すなわち、ノックロック部材450の自重に起因し、第1突起部452の凹部454の斜面456は、係止部460の第2突起部461の斜面462から周方向の分力を受ける。その結果、ノックロック部材450は、図57(a)の場合とは逆の周方向に回転し、第2突起部461がガイド溝453内に案内される。すなわち、ノックロック部材450と係止部460との係止状態が解除され、操作部430の前方への移動が可能な状態となる。ノックロック部材450の前方への移動は、前軸2の緩衝部材402bによって停止される。
図57(c)は、図42に示されるような筆記具400の筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構410の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。スプリング6及び付勢スプリング490の付勢力に抗して操作部430を押圧し、操作部430及び回転子440を前方へ移動させると、内カム443の後端部が前後方向において外カム421の前端部、すなわち大突起部422を越える。それによって、回転子440の周方向の回転の規制は、解除される。このとき、操作部430のV字形カム面435及び回転子440のカム受け面444の位相がずれていることから、回転子440は周方向の分力を受けている。
図57(d)は、図43に示されるような筆記具400の筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構410の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。図57(c)の状態から操作部430の押圧を解除すると、回転子440は、スプリング6の付勢力によって後退する。このとき、外カム421の側面による、回転子440の周方向の回転は規制されていないことから、回転子440は、外カム421の斜面から分力を受けて、周方向に回転する。すなわち、回転子440の内カム443は、外カム421の斜面を移動する。その結果、内カム443は外カム421と係合し、すなわち鋸刃状のカム受け面444と外カム421の大突起部422とが係合して後退が妨げられ、リフィル5を介して回転子440に連結された筆記部5aは、軸筒4から突出する状態に保たれるので、筆記が可能となる。なお、操作部430は、付勢スプリング490の付勢力によって後退し、元の位置に復帰する。
図57(e)は、図44に示されるような筆記具400の筆記状態で且つ前端が上向きの状態におけるノック機構410の模式図である。したがって、重力は図中下方に向かって作用している。筆記具400の前端を上に向けることによって、ノックロック部材450は、後方へ移動して操作部430に再び当接する。ノックロック部材450は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて周方向に回転する。すなわち、操作部430のカム面432とノックロック部材450のカム受け面451とが協働してノックロック部材450を周方向へ回転させる。その回転の結果、ノックロック部材450が係止部460と係止し、操作部430の前方への移動が阻止される。
詳細には、係止部460の第2突起部461が、ノックロック部材450の第1突起部452の凹部454内に再び収容されることによって、ノックロック部材450と係止部460とが係止状態になる。この状態で、操作部430を強く押圧して前方へ移動させようとしても、係止部460の第2突起部461がノックロック部材450の凹部454内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
なお、上述したように、凹部454を介したノックロック部材450と係止部460との係止状態は、筆記具400の前端が下向きの状態にすることによって解除される。その状態でノック操作を行うことによって、筆記具400を筆記状態から非筆記状態へ切り替えることができる。これに関し、図58を参照しながら簡単に説明する。
図58は、図40の筆記具400のノック機構410の筆記状態から非筆記状態への切り替えを示す模式図である。図58は、図12と同様の模式図であり、図中、上方が筆記具400の前側であり、下方が筆記具400の後側である。
図58(a)は、図57(d)と同一であり、図43に示されるような筆記具400の筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構410の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。
図58(b)は、筆記具400の非筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構410の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。スプリング6及び付勢スプリング490の付勢力に抗して操作部430を押圧し、操作部430及び回転子440を前方へ移動させると、内カム443の後端部が前後方向において外カム421の前端部、すなわち大突起部422を越える。それによって、回転子440の周方向の回転の規制は、解除される。このとき、操作部430のV字形カム面435及び回転子440のカム受け面444の位相がずれていることから、回転子440は周方向の分力を受けている。
図58(c)は、筆記具400の非筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構410の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。図58(b)の状態から操作部430の押圧を徐々に解除すると、回転子440は、スプリング6の付勢力によって後退する。この直後は、外カム421の側面による、回転子440の周方向の回転は規制されていないことから、回転子440は、外カム421の斜面から分力を受けて、周方向に回転する。すなわち、回転子440の内カム443は、外カム421の斜面を移動する。操作部430の後退によって、回転子440は、回転子440の内カム443が外カム421間に配置されているまで、周方向に回転する。このとき、外カム421の側面によって、回転子440の周方向の回転は規制されている。
図58(d)は、図57(b)と同一であり、図41に示されるような筆記具400の非筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構410の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。図58(c)の状態から操作部430の押圧を完全に解除すると、回転子440は、スプリング6の付勢力によってさらに後退する。回転子440の内カム443は、外カム421間に配置されていることから、リフィル5を介して回転子440に連結された筆記部5aが軸筒4内に没入するまで、回転子440は後退する。その結果、筆記具400は、非筆記状態となる。なお、操作部430は、付勢スプリング490の付勢力によって後退し、元の位置に復帰する。
図59は、本発明の第6実施形態による筆記具500の非筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図であり、図60は、図59の筆記具500の非筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図61は、図59の筆記具500の筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図62は、図59の筆記具500の筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図である。また、図63は、図59の筆記具のノック機構510の分解組立図である。図59乃至図63において、上方は鉛直上方であり、下方は鉛直下方である。すなわち、重力が、各図において下方に向かって作用する。
本実施形態による筆記具500のノック機構510では、図63に示されるように、操作部530は、ノックロック部材450よりも軸線方向の長さが長く形成されていることから、ノックロック部材450は、操作部530を包囲するように配置される。ノックロック部材450は、第5実施形態による筆記具400のノックロック部材450と同一形状である。操作部530は、ノックロック部材450を貫通して前方へ延在し、回転子540と協働する。操作部530のカム面532と、ノックロック部材450のカム受け面451とが協働してノックロック部材450を周方向へ回転させ、係止部560とノックロック部材450とを係止状態にさせる。以下、詳細に説明する。なお、本実施形態において、消去部材及び保持部材も、第5実施形態による筆記具400の消去部材470及び保持部材471と同一である。
ノックロック部材450は、重力によって軸筒4内を前後方向に移動可能である。したがって、図59及び図60は、筆記具500の同じ非筆記状態を示しているが、図59では、筆記具500の前端、すなわち軸筒4の前端が上向きであることから、ノックロック部材450は、軸筒4内において後端側に寄っている。他方、図60では、筆記具500の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材450は、図59と比較して、軸筒4内において前端側に寄っている。また、図61及び図62は、筆記具500の同じ筆記状態を示しているが、図61では、筆記具500の前端、すなわち軸筒4の前端が下向きであることから、ノックロック部材450は、軸筒4内において前端側に寄っている。他方、図62では、筆記具500の前端、すなわち軸筒4の前端が上向きであることから、ノックロック部材450は、図61と比較して、軸筒4内において後端側に寄っている。
図64は、図59の筆記具500の後軸503の縦断面図である。図64において、上方が筆記具500の前側である。後軸503の内面の中間部には、係止部560が設けられている。係止部560は、周方向に等間隔に配置された3つの第2突起部561を有する。第2突起部561の後端面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した斜面562である。また、第2突起部561の前方には、第2突起部561より径方向に突出した大突起部564を介して、外カム563が形成されている。外カム563の前端面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、第2突起部561の斜面562と同一方向に傾斜した斜面である。
図65は、図59の筆記具500の操作部530の斜視図である。図65において、上方が筆記具500の前側である。操作部530は、筒状の部材である。操作部530は、軸線方向の中央部分に、平滑な外周面を有する円筒部531を有する。円筒部531の後方は、前方に面した段部531aを介して、僅かばかり大きい外径に形成され、前方に面したカム面532が形成されている。カム面532は6つの山部532a及び谷部532bを有する。詳細には、カム面532が、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部532cと、前後方向に沿って延びる縦壁部532dとを有するように、山部532a及び谷部532bが構成されている。操作部530のカム面532の山部532aは、周方向に沿って非対称であるが、対称的な形状であってもよい。
円筒部531の前部の外周面には、前後方向に延在して前端部まで延びる3つのガイド溝531bが形成されている。円筒部531の前端面にはカム面533が形成されている。カム面533は6つの山部534及び谷部535を有する。
操作部530の後端部には、第5実施形態による筆記具400の操作部430の嵌合角部436と同一である、後方に向かって延在する3つの嵌合角部536が形成されている。3つの嵌合角部536は、周方向に等間隔に設けられ、径方向に弾性変形可能に形成されている。嵌合角部536の各々の先端部外面には、径方向外方へ延びる嵌合突起536aが形成されている。
操作部530は、後軸503に対して前方から挿入される。その際、後軸503に形成された大突起部564の各々は、操作部530の対応するガイド溝531b内に配置される。後軸503の大突起部564が、操作部530のガイド溝531b内に配置されることによって、操作部530は、後軸503に対する周方向の回転が規制されると共に、前後方向に移動可能となる。
図66は、図59の筆記具500の回転子の斜視図である。図66において、上方が筆記具500の前側である。回転子540は、筒状の部材である。回転子540は、円筒状の本体部541を有している。本体部541の外周面には、前後方向に延在する3つの内カム543が周方向に等間隔に設けられている。内カム543の各々の後端面には、操作部530のカム面533と協働する鋸刃状のカム受け面544が形成されている。
回転子540の内カム543は、ノック操作によって回転子540が周方向に回転すると、外カム563と係合し又は外カム563間に配置される。内カム543が外カム563間に配置されるとき、外カム563は内カム543間に配置される。
操作部530のカム面533及び回転子540のカム受け面544は、内カム543が外カム563と係合し又は外カム563間に配置されるとき、カム面533とカム受け面544との位相がずれるように構成されている。このため、ノック操作によってカム面533の斜面がカム受け面544の斜面を押圧すると、この操作荷重及びスプリング6による付勢力に起因し、回転子540は周方向の分力を受けて周方向に回転する。一方、操作部530は、上述したように、ガイド溝531b内に後軸503の大突起部564が配置されることによって、周方向の回転が規制される。
本実施形態による筆記具500のノックロック部材は、上述したように、第5実施形態による筆記具400のノックロック部材450と同一形状である。本実施形態において、ノックロック部材450は、操作部530によって貫通され、係止部560と操作部530との間を前後方向に移動可能である。ノックロック部材450の後端面に形成されたカム受け面451は、操作部530のカム面532と相補的な形状である。ノックロック部材450のガイド溝453の各々は、対応する後軸503の係止部560の第2突起部561をその内部に収容し、ガイド溝453内を前後に相対的に移動可能とさせている。
操作部530のカム面532及びノックロック部材450のカム受け面451は、係止部560の第2突起部561が、ノックロック部材450のガイド溝453内に収容されるとき、カム面532の山部532aが、周方向において、カム受け面451の斜部451c上に位置するように構成されている。このため、例えば図59に示されるように筆記具500の前端を上向きにすると、ノックロック部材450が重力の作用によって操作部530に当接するが、ノックロック部材450の自重に起因し、ノックロック部材450は周方向の分力を受けて周方向に回転する。一方、操作部530は、ガイド溝531b内に後軸503の大突起部564が配置されることによって、周方向の回転が規制される。
さらに、図59乃至図62に示されるように、後軸503の3つの大突起部564の後端面と、保持部材471のフランジ部474の前端面との間に、操作部530の円筒部531を包囲するように、付勢スプリング590が配置されている。付勢スプリング590は、後軸503に対して、保持部材471、さらには、保持部材471に接続された操作部530及び保持部材471に取り付けられた消去部材470を後方へ付勢している。したがって、筆記具500が筆記状態であっても非筆記状態であっても、消去部材470は、軸線方向において常に同一位置に配置される。なお、ノックロック部材450は、付勢スプリング590を包囲するように配置される。
図67は、図59の筆記具500のノック機構510の非筆記状態から筆記状態への切り替えを示す模式図である。図67は、図12と同様の模式図であり、図中、上方が筆記具500の前側であり、下方が筆記具500の後側である。
図67(a)は、図59に示されるような筆記具500の非筆記状態で且つ前端が上向きの状態におけるノック機構510の模式図である。したがって、重力は図中下方に向かって作用している。このとき、リフィル5を介してスプリング6によって後方に付勢された回転子540の内カム543は、外カム563間に配置されている。したがって、この状態では、筆記部5aが軸筒4内に没入している。また、操作部530のカム面533と回転子540のカム受け面544とが当接しているが、カム面533とカム受け面544との位相はずれている。
筆記具500の前端を上に向けることによって、ノックロック部材450は、後方へ移動して操作部530に当接する。ノックロック部材450は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて周方向に回転する。すなわち、操作部530のカム面532とノックロック部材450のカム受け面451とが協働してノックロック部材450を周方向へ回転させる。その回転の結果、ノックロック部材450が係止部560と係止し、操作部530の前方への移動が阻止される。
詳細には、係止部560の第2突起部561が、ノックロック部材450の第1突起部452の凹部454内に収容されることによって、ノックロック部材450と係止部560とが係止状態になる。言い換えると、非筆記状態において、係止部560の第2突起部561がノックロック部材450の第1突起部452の凹部454内に収容されるように、凹部454は、係止部560の第2突起部561の一部と相補的な形状となるよう構成される。したがって、第2突起部561の斜面562は、凹部454の斜面456と同じ傾きを有する。この状態で、操作部530を強く押圧して前方へ移動させようとしても、係止部560の第2突起部561がノックロック部材450の凹部454内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
図67(b)は、図60に示されるような筆記具500の非筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構510の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。筆記具500の前端を下に向けることによって、ノックロック部材450は、操作部530との関係において自由になる。他方、ノックロック部材450は、自重によって第1突起部452を介して係止部560を押圧する。すなわち、ノックロック部材450の自重に起因し、第1突起部452の凹部454の斜面456は、係止部560の第2突起部561の斜面562から周方向の分力を受ける。その結果、ノックロック部材450は、図67(a)の場合とは逆の周方向に回転し、第2突起部561がガイド溝453内に案内される。すなわち、ノックロック部材450と係止部560との係止状態が解除され、操作部530の前方への移動が可能な状態となる。ノックロック部材450の前方への移動は、後軸503の大突起部564の後端面との当接によって停止される。したがって、後軸503の大突起部564を上述した緩衝部材として形成してもよい。
図67(c)は、筆記具500の筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構510の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。スプリング6及び付勢スプリング590の付勢力に抗して操作部530を押圧し、操作部530及び回転子540を前方へ移動させると、内カム543の後端部が前後方向において外カム563の前端部を越える。それによって、回転子540の周方向の回転の規制は、解除される。このとき、操作部530のカム面533及び回転子540のカム受け面544の位相がずれていることから、回転子540は周方向の分力を受けている。
図67(d)は、図61に示されるような筆記具500の筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構510の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。図67(c)の状態から操作部530の押圧を解除すると、回転子540は、スプリング6の付勢力によって後退する。このとき、外カム563の側面による、回転子540の周方向の回転は規制されていないことから、回転子540は、外カム563の斜面から分力を受けて、周方向に回転する。すなわち、回転子540の内カム543は、外カム563の斜面を移動する。その結果、内カム543は外カム563と係合し、すなわち鋸刃状のカム受け面544と外カム563とが係合して後退が妨げられ、リフィル5を介して回転子540に連結された筆記部5aは、軸筒4から突出する状態に保たれるので、筆記が可能となる。なお、操作部530は、付勢スプリング590の付勢力によって後退し、元の位置に復帰する。
図67(e)は、図62に示されるような筆記具500の筆記状態で且つ前端が上向きの状態におけるノック機構510の模式図である。したがって、重力は図中下方に向かって作用している。筆記具500の前端を上に向けることによって、ノックロック部材450は、後方へ移動して操作部530に再び当接する。ノックロック部材450は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて周方向に回転する。すなわち、操作部530のカム面532とノックロック部材450のカム受け面451とが協働してノックロック部材450を周方向へ回転させる。その回転の結果、ノックロック部材450が係止部560と係止し、操作部530の前方への移動が阻止される。
詳細には、係止部560の第2突起部561が、ノックロック部材450の第1突起部452の凹部454内に再び収容されることによって、ノックロック部材450と係止部460とが係止状態になる。この状態で、操作部530を強く押圧して前方へ移動させようとしても、係止部560の第2突起部561がノックロック部材450の凹部454内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
なお、上述したように、凹部454を介したノックロック部材450と係止部560との係止状態は、筆記具500の前端が下向きの状態にすることによって解除される。その状態でノック操作を行うことによって、筆記具500を筆記状態から非筆記状態へ切り替えることができる。これに関し、図68を参照しながら簡単に説明する。
図68は、図62の筆記具500のノック機構510の筆記状態から非筆記状態への切り替えを示す模式図である。図68は、図12と同様の模式図であり、図中、上方が筆記具500の前側であり、下方が筆記具500の後側である。
図68(a)は、図67(d)と同一であり、図61に示されるような筆記具500の筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構510の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。
図68(b)は、筆記具500の非筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構510の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。スプリング6及び付勢スプリング590の付勢力に抗して操作部530を押圧し、操作部530及び回転子540を前方へ移動させると、内カム543の後端部が前後方向において外カム563の前端部を越える。それによって、回転子540の周方向の回転の規制は、解除される。このとき、操作部530のカム面533及び回転子540のカム受け面544の位相がずれていることから、回転子540は周方向の分力を受けている。
図68(c)は、筆記具500の非筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構510の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。図68(b)の状態から操作部530の押圧を徐々に解除すると、回転子540は、スプリング6の付勢力によって後退する。この直後は、外カム563の側面による、回転子540の周方向の回転は規制されていないことから、回転子540は、外カム563の斜面から分力を受けて、周方向に回転する。すなわち、回転子540の内カム543は、外カム563の斜面を移動する。操作部530の後退によって、回転子540は、回転子540の内カム543が外カム563間に配置されているまで、周方向に回転する。このとき、外カム563の側面によって、回転子540の周方向の回転は規制されている。
図68(d)は、図67(b)と同一であり、図60に示されるような筆記具500の非筆記状態で且つ前端が下向きの状態におけるノック機構510の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。図68(c)の状態から操作部530の押圧を完全に解除すると、回転子540は、スプリング6の付勢力によってさらに後退する。回転子540の内カム543は、外カム563間に配置されていることから、リフィル5を介して回転子540に連結された筆記部5aが軸筒4内に没入するまで、回転子540は後退する。その結果、筆記具500は、非筆記状態となる。なお、操作部530は、付勢スプリング590の付勢力によって後退し、元の位置に復帰する。
第5実施形態及び第6実施形態では、第2実施形態及び第4実施形態で説明したように、非筆記状態及び筆記状態のいずれの場合も、筆記具の前端が上向き状態であれば、操作部の前方への移動が阻止される。したがって、例えば、操作部430の消去部材470を用いた当該筆記具400による筆跡の消去時に、筆記具400が筆記状態であっても非筆記状態であっても、安定した擦過動作を行うことが可能となる。すなわち、筆記具を持ち替えて操作部を筆記面に対して押圧して擦過動作を行っても、操作部は、常にがたつくことがない。
さらに、第5実施形態及び第6実施形態では、操作部及び消去部材が常に後方へ付勢されていることから、消去部材の軸筒後端部からの突出量は、非筆記状態及び筆記状態のいずれの場合も、第2実施形態及び第4実施形態の場合と異なり、同一である。したがって、操作部の消去部材を用いた当該筆記具による筆跡の消去時に、筆記具が筆記状態であっても非筆記状態であっても、消去部材を等しく視認することができる。その結果、意図した箇所を容易に狙うことができ、正確な擦過動作を行うことが可能となる。
また、第5実施形態では、回転子440が操作部430内に配置されていることから、リフィル5の全長をより長くすることが可能となり、その結果、筆記距離をより長くすることが可能となる。
ノックロック部材は、軸筒内を前後方向に移動可能であれば任意の形状であってもよい。ノックロック部材の第1突起部の数及び対応する係止部の第2突起部の数は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、任意に設定可能である。したがって、それぞれ1つでもよく、2つ以上の複数であってもよい。また、ノックロック部材の第1突起部の一部及び対応する係止部の第2突起部の凹部の形状は、相補的でなくても互いに係止可能であれば任意の形状を採用可能である。
上述した実施形態における筆記体であるリフィル5は、熱変色性インクを収容してもよい。この場合、筆記具1は熱変色性筆記具であり、消去部である摩擦体によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、筆記具1の筆跡を熱変色可能である。なお、筆記体として、熱変色インクを収容したボールペン、熱変色芯を収容したシャープペンシル、鉛筆ホルダ等を使用することもできる。また、消しゴムで消去可能な消しゴム消去式インクを収容した筆記具としてもよい。
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して消去部としての摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
また、消しゴムで消去可能な消しゴム消去式インクを収容した筆記具とする場合における消しゴム消去性インクは、水と、平均粒子径1.0~15μmの非熱可塑性着色樹脂粒子をインキ組成物全量に対して、3~30重量%と、0.1~10重量%の非着色粒子とを少なくとも含有することが必要である。本発明の水性インキに用いる着色樹脂粒子は、着色された樹脂粒子からなるものであり、非熱可塑性であり、かつ、平均粒子径が1.0~15μmとなるものであり、例えば、樹脂粒子中に顔料からなる着色剤が分散された着色樹脂粒子、樹脂粒子の表面が顔料からなる着色剤で被覆された着色樹脂粒子、樹脂粒子に染料からなる着色剤が染着された着色樹脂粒子などが挙げられる。本実施形態では、着色樹脂粒子が非熱可塑性で上記平均粒子径を充足するものであれば、その構造〔中空構造あり、中空構造なし(密実)〕、形状(球状、多角形状、扁平状、繊維状)等は特に限定されるものでないが、好ましくは、優れた消しゴム消去性、筆記性、インキとしての経時安定性を発揮させる点から、ガラス転移点が150℃以上で熱分解温度に近く、更にはメルトフローインデックス値が0.1未満であるような分子内架橋を持つ粒子で粘着性を有せず、かつ、平均粒子径が1.0~15μmとなる球状の着色樹脂微粒子の使用が望ましい。なお、本発明(実施例等含む)で規定する「平均粒子径」は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社製)〕にて測定したD50の値である。
消去部、すなわち消去部材35、消去部材135又は消去部材335を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の熱硬化性ゴムやスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物を、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)で荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が10mg以上となるように構成し、消去部材を形成する。さらに、テーバー摩耗量が10mg以上となるように調整するために、消去部材の材料に対して、より柔軟性を出すためのフタル酸系可塑剤を添加してもよい。消去部材が、フタル酸系可塑剤を含むことによって、消去部材がより摩耗しやすくなるため、紙面を傷めず且つ印刷文字等を掠れさせることなく、筆跡の消去が可能となる。さらに、消去部材は、JIS K6203に規定されたデュロメータD硬度が30以上であることが望ましい。それによって、所定の硬さが確保でき、より安定した擦過動作が可能となる。なお、消去部材は、タッチペン、スタイラスペンとしても適用可能である。
なお、本発明における「消去」とは、上記熱変色性インクを用いた場合以外にも、筆記した描線、文字等を消しゴム等の消去部で吸着又は削ぎ落とすことをいう。さらに、操作部を消去部材の代わりに、感圧式タッチペンや軸筒等に電導性を付与して静電容量式タッチペンとして使用可能なように構成してもよい。したがって、本発明は、筆記した描線を、消去部を用いて消去する任意の筆記具にも適用可能である。