JP2022018675A - 内燃機関のバルブタイミング制御装置とローラ減速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】バックラッシによる干渉異音を抑制しつつローラの転動時におけるフリクションを低減できる。【解決手段】減速機13は、偏心軸24と、内周面に周方向へ等間隔で設けられた複数の内歯5aを有する内歯車5と、偏心軸の外周に固定された中径ボールベアリング37と、外輪37bの外周面と各内歯との間に配置された複数のローラ38と、各ローラを転動可能に保持する複数のローラ保持孔41を有する保持器39と、を備え、偏心軸の偏心量を減少させる一方、外輪の外径を偏心軸の偏心量を減少させた分だけ大きくし、偏心軸が自由な状態において、偏心軸の最大偏心部24bでは、ローラが径方向へ移動可能な隙間を有し、偏心軸の最大偏心部に対して周方向へ所定の角度ずれた位置では、各ローラが内歯に接触している。【選択図】図4
Description
本発明は、内燃機関のバルブタイミング制御装置とローラ減速機に関する。
内燃機関の電動式のバルブタイミング制御装置としては、本出願人が先に出願した以下の特許文献1に記載されたものがある。
このバルブタイミング制御装置は、モータハウジングがクランクシャフトと同期回転する電動モータと、該電動モータの回転速度を減速してカムシャフトに伝達するローラ減速機と、を備えている。
このローラ減速機は、電動モータのモータ出力軸から回転力が伝達される偏心軸と、タイミングスプロケットに一体に設けられ、内周に波形状の複数の内歯を有する内歯構成部と、該内歯構成部の各内歯とボールベアリングの外輪との間に設けられた複数のローラと、カムシャフトに結合された従動部材に設けられ、複数の保持孔内で前記各ローラの間を仕切りつつローラ全体の径方向の移動を許容する保持器と、を備えている。
また、前記各ローラと各内歯との間のクリアランスの大きさに応じて、外径が異なる複数のローラを選択的に組み付けて最大クリアランスを10~40μmの範囲内で調整している。
前記特許文献1に記載の従来のバルブタイミング制御装置のローラ減速機は、外径の異なる複数のローラを選択的に組み付けて偏心軸の最も偏心した最大偏心部(上死点)でのクリアランスを調整していた。
しかし、このローラ減速機では、作動中において最大偏心部を中心とした左右周方向へ所定角度ずれた部位が最も荷重が掛かるため、音振の低減を図るためには前記部位でのバックラッシの低減が要望されている。したがって、前記部位のクリアランスを可及的に減少させる必要があるが、前記部位のクリアランスについては何ら考慮されていない。
この結果、作動時におけるローラと内歯との間などで干渉異音が発生するおそれがある。
本発明は、前記従来の技術的課題に鑑みて案出されたもので、バックラッシによる干渉異音を抑制することが可能な内燃機関のバルブタイミング制御装置及び減速機を提供することを一つの目的としている。
本願請求項1に記載の発明は、とりわけ、減速機は、出力軸によって回転する偏心軸と、内周面に周方向へ等間隔で設けられた複数の内歯を有する内歯車と、前記偏心軸の外周に設けられたベアリングと、前記ベアリングの外周面と前記各内歯との間に配置された複数のローラと、従動回転体に設けられ、前記各ローラの周方向の移動を規制しつつ径方向の移動を許容する複数の保持孔を有する保持部材と、を備え、
前記出力軸が回転せずに前記偏心軸が自由な状態において、前記偏心軸の最も偏心している最大偏心部位置では、前記ローラが前記出力軸に対して径方向へ移動可能な隙間を有し、前記偏心軸の前記最大偏心部に対して周方向へ所定の角度ずれた位置では、前記ローラが前記内歯に当接していることを特徴としている。
前記出力軸が回転せずに前記偏心軸が自由な状態において、前記偏心軸の最も偏心している最大偏心部位置では、前記ローラが前記出力軸に対して径方向へ移動可能な隙間を有し、前記偏心軸の前記最大偏心部に対して周方向へ所定の角度ずれた位置では、前記ローラが前記内歯に当接していることを特徴としている。
本発明の好ましい態様によれば、ローラの転動時におけるバックラッシによる干渉異音を抑制して十分な静粛性を得ることができる。
以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置及びローラ減速機の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、一気筒あたり2つの吸気弁を有する例えば4気筒内燃機関の吸気側に適用されている。
図1は本発明に係るバルブタイミング制御装置の一実施形態を示す縦断面図である。図2は本実施形態における主要な構成部材を示す分解斜視図である。図3は図1のA-A線断面図である。
このバルブタイミング制御装置(VTC)は、図1及び図2に示すように、駆動回転体であるタイミングスプロケット(以下、スプロケットという。)1と、シリンダヘッド01上に軸受ブラケット02を介して回転可能に支持され、スプロケット1から伝達された回転力によって回転するカムシャフト2と、スプロケット1の前方位置に配置されたチェーンケース6に固定されたカバー部材3と、スプロケット1とカムシャフト2の間に配置されて、機関運転状態に応じて両者1、2の相対回転位相を変更する位相変更機構4と、を備えている。
スプロケット1は、内燃機関のクランクシャフトによってタイミングチェーンを介して回転駆動するようになっている。このスプロケット1は、全体が鉄系金属によって環状一体に形成されたスプロケット本体1aと、該スプロケット本体1aの外周に一体に設けられて、巻回された図外のタイミングチェーンを介してクランクシャフトからの回転力を受ける歯車部1bと、スプロケット本体1aのカムシャフト2と軸方向で反対側の前端側に一体に設けられ、後述する減速機13の一部を構成する内歯車5と、から構成されている。
スプロケット1は、スプロケット本体1aとカムシャフト2の前端部に設けられた後述する従動部材9との間に、1つの大径ボールベアリング19が介装されている。この大径ボールベアリング19は、スプロケット1を従動部材9に対して相対回転可能に軸受している。
内歯車5は、スプロケット本体1aの前端部外周側に一体に設けられている。この内歯車5は、位相変更機構4の前方へ延出した円筒状に形成されて、内周に波形状の複数の内歯5aが形成されている。この各内歯5aの内周面のプロファイルは、後述するように、偏心軸24の偏心量や各ローラ38の半径などに基づいて算出される式1によって作製されるようになっている。これらの具体的な構成については後述する。
さらに、スプロケット本体1aの内歯車5と軸方向で反対側の後端部には、鉄系の金属板材で円環状に形成された保持プレート8が配置されている。この保持プレート8は、内周面8aの所定位置に、径方向内側の中心軸方向に向かって突出したストッパ凸部8bが一体に設けられている。このストッパ凸部8bは、ほぼ扇状に形成されて、先端縁が円弧状に形成されている。
スプロケット本体1a(内歯車5を含む)及び保持プレート8のそれぞれの外周部には、周方向のほぼ等間隔位置に複数(本実施形態では8つ)のボルト挿通孔1c、8cが貫通形成されている。
また、スプロケット本体1aの内歯車5側の前端には、後述するモータハウジング14の後端部が対向配置されている。このモータハウジング14の後端部の周壁には、各ボルト挿通孔1c、8cと対応した位置に複数(本実施形態では8つ)の雌ねじ孔14dが形成されている。したがって、スプロケット1と保持プレート8及びモータハウジング14は、各孔1c、8c、14dに挿通、螺着した8本のボルト7によってモータハウジング14の回転軸の軸方向から共締め固定されている。
なお、スプロケット本体1aと内歯車5が、後述する減速機13のケーシングとして構成されている。
チェーンケース6は、図1に示すように、内燃機関のシリンダヘッドとシリンダブロックの前端側にスプロケット1に巻回された図外のチェーンを覆うよう上下方向に沿って配置固定されている。このチェーンケース6は、前端部の外周縁にフランジ部6aが一体に設けられている。また、チェーンケース6は、前端部の内周に円環溝6bが形成されている。この円環溝6bは、チェーンケース6の前端縁から内側軸方向へ延びた軸方向幅がフランジ部6aの肉厚幅よりも大きく形成されている。
カムシャフト2は、外周に図外の吸気弁を開作動させる一気筒当たり2つの駆動カムを有している。また、カムシャフト2は、回転軸方向の一端部2aにフランジ部2bが一体に設けられていると共に、一端部2aの内部軸方向に雌ねじ2cが形成されている。このカムシャフト2は、フランジ部2bと後述するストッパ部材11を介して従動部材9がカムボルト10によって回転軸方向から結合されている。
フランジ部2bは、図1に示すように、前端面の外周部が大径ボールベアリング19の内輪の軸方向外端面に当接配置されている。またフランジ部2bの位相変更機構4側の前端には、円盤状のストッパ部材11が設けられている。
このストッパ部材11は、外周に保持プレート8のストッパ凸部8bが入り込むストッパ凹溝11aが円周方向に沿って形成されている。このストッパ凹溝11aは、円周方向へ所定長さの円弧状に形成されている。ストッパ凸部8bは、この両端縁がストッパ凹溝11aの長さ範囲で回動して周方向の対向縁にそれぞれ当接する。これによって、スプロケット1に対するカムシャフト2の最大進角側あるいは最大遅角側の相対回転位置が規制されるようになっている。
カムボルト10は、頭部10aの端面が小径ボールベアリング35の内輪を軸方向から当接支持している。このカムボルト10は、軸部10bの外周にカムシャフト2の端部から内部の回転軸心方向に沿って形成された雌ねじ2cに螺着する雄ねじ10cが形成されている。
従動部材9は、金属材である例えば鉄系金属によって一体に形成され、図1に示すように、後端側(カムシャフト2側)に形成された円板状の固定端部9aと、該固定端部9aの内周前端面から従動部材9の回転軸の軸方向へ突出した円筒部9bと、から構成されている。
固定端部9aは、後端面に形成された円盤状の溝内にストッパ部材11の環状凸部11bが嵌合する嵌合溝9cが形成されている。また、固定端部9aは、カムシャフト2のフランジ部2bの前端面にストッパ部材11を介して当接配置され、カムボルト10の軸力によって、フランジ部2bにストッパ部材11を介して軸方向から圧接固定されている。
円筒部9bは、中央にカムボルト10の軸部10bが挿通される挿通孔9dが貫通形成されている。また、円筒部9bの外周側には、ニードルベアリング36が設けられている。
位相変更機構4は、従動部材9の円筒部9bの前端側に配置された電動モータ12と、該電動モータ12の回転速度を減速してカムシャフト2に伝達する減速機13と、から主として構成されている。
電動モータ12は、ブラシ付きのDCモータであって、スプロケット1と一体に回転するモータハウジング14と、該モータハウジング14の内部に回転可能に設けられたモータ出力軸15と、モータハウジング14の内周面に固定された円弧状の4つの永久磁石16と、モータハウジング14の前端部に設けられた封止プレート17と、を備えている。
モータハウジング14は、図1に示すように、金属材である例えば鉄系金属材あるいは焼結金属などによって有底筒状に形成されたヨークとしてのハウジング本体14aを有している。このハウジング本体14aは、後端側に円板状の仕切壁14bが設けられている。この仕切壁14bは、ほぼ中央に後述する偏心軸24が挿入される大径な軸挿通孔14cが形成されている。この軸挿通孔14cの孔縁には、カムシャフト2と反対方向へ突出した円筒状の延出部が一体に設けられている。
モータ出力軸15は、段差円筒状に形成されてアーマチュアとして機能し、軸方向のほぼ中央位置に形成された段差部を介してカムシャフト2側の大径部15aと、封止プレート17側の小径部15bと、から構成されている。
大径部15aは、外周に鉄心ロータ18が固定されていると共に、後端側には減速機13の一部を構成する前記偏心軸24が一体に設けられている。
小径部15bは、外周に非磁性材の円環部材20が圧入固定されている。この円環部材20の外周面には、コミュテータ21が軸方向から圧入固定されている。
また、小径部15bの内周面には、モータ出力軸15の回転位置を検出する回転検出機構の被検出部22が圧入固定されている。この被検出部22は、合成樹脂材によって有蓋円筒状に形成され、前端壁の前面に3葉状の被検出ロータ22aが固定されている。また、この被検出部22は、外周にモータ出力軸15の内周面との間をシールするオイルシール22bが設けられている。
鉄心ロータ18は、複数の磁極を持つ磁性材によって形成され、外周側がコイル18aのコイル線を巻回させるスロットを有するボビンとして構成されている。
コミュテータ21は、導電材によって円環状に形成されて、鉄心ロータ18の極数と同数に分割された各セグメントにコイル18aの引き出されたコイル線の端末が電気的に接続されている。
各永久磁石16は、全体が円筒状に形成されて円周方向に複数の磁極を有し、ハウジング本体14aの回転軸方向の位置が鉄心ロータ18の固定位置よりも前方にオフセット配置されている。
封止プレート17は、全体が円盤状に形成され、中央位置にモータ出力軸15の一端部などが挿通される軸挿通孔17aが貫通形成されている。また、この封止プレート17は、円盤状の非磁性材である樹脂部17bと、該樹脂部17bの内部に埋設された円板状の芯金17cと、を有している。
また、封止プレート17は、樹脂部17bに設けられた複数(本実施形態では4つ)のホルダ23a~23dと、該各ホルダ23a~23dの内部に径方向に沿って摺動可能に収容配置された切換用ブラシ(整流子)である4つのブラシ25a~25dと、樹脂部17bの前端面に各外端面を露出した状態で埋設固定された内外二重の円環状の給電用スリップリング26a、26bと、各ブラシ25a~25dと各スリップリング26a、26bを電気的に接続する図外のピグテールハーネスと、を備えている。
各切換用ブラシ25a~25dは、コイルスプリングのばね力で各先端面がコミュテータ21の外周面に径方向から弾接するようになっている。
また、封止プレート17は、樹脂部17bの外周から露出した芯金17cの外周部がモータハウジング14の前端部内周に形成された凹状段差部に外周方向からのかしめによって位置決め固定されている。
カバー部材3は、図1及び図2に示すように、モータハウジング14の前端部を覆うように配置されている。カバー部材3は、樹脂体27と該樹脂体27の内部に埋め込まれた金属プレート28によってほぼ円盤状に一体に形成されている。つまり、カバー部材3は、全体を合成樹脂材によってモールド成形する際に、内部に補強用の金属プレート28が埋め込まれている(モールド固定)。このカバー部材3は、円盤状のカバー本体3aと、該カバー本体3aの開口側の外周縁に一体に形成された円環状の取付フランジ3bと、を有している。
カバー本体3aは、中央に被検出部22の先端部が挿入される挿入用孔3cが貫通形成されている。また、カバー本体3aは、図1に示すように、背面側に回転検出機構の検出部である受信回路や励磁回路を備えた検出回路52や集積回路53などが保持されている。また、カバー本体3aの外側には、検出回路52や集積回路53などを覆い保護する蓋部30が着脱可能に取り付けられている。つまり、カバー本体3aは、図1に示すように、背面側の外周部に環状の固定用溝3fが形成されている。一方、蓋部30は、合成樹脂材によってほぼ矩形状の薄肉一体に形成されて、外周部に固定用溝3fに着脱可能な環状の嵌着部30a有している。
また、カバー部材3は、図1及び図2に示すように、カバー本体3aから下方向へ突出した給電用コネクタ31と、該給電用コネクタ31の側部に配置された信号用コネクタ32と、を一体に有している。
給電用コネクタ31は、一部がカバー本体3aの内部に配設された細長い導電性の一対の端子片を有している(図示せず)。この各端子片は、カバー本体3a内でクランク状に折曲されて、内部の一端部が図外のピグテールハーネスを介して給電用ブラシ33a、33bに接続されている。一方、各端子片の他端部は、カバー本体3aからコネクタ部で露出して図外のコントロールユニットに別のコネクタを介して電気的に接続されている。
信号用コネクタ32は、図1に示すように、一部がカバー本体3aの内部に配設された細長い導電性の一対の端子片32aを有している。この各端子片32aは、一端部がハーネスを介して集積回路53に電気的に接続され、各他端部32cがコネクタ部内で露出してコントロールユニットに接続されている。このコントロールユニットは、検出回路52で検出されたモータ出力軸25の回転位置信号を入力して電動モータ12を回転制御するようになっている。なお、集積回路53は、被検出部22から入力された信号を入力する検出回路52から情報信号が入力されるようになっている。
取付フランジ3bは、樹脂材によって円環状に形成されていると共に、外周面のほぼ等間隔位置に複数(本実施形態では4つ)のボス部3dが一体に設けられている。この各ボス部3dには、金属製のスリーブによってボルト挿入孔3eがそれぞれ貫通形成されている。
また、この取付フランジ3bは、各ボルト挿入孔3eに挿入される図外の取付ボルトによってチェーンケース6のフランジ部6aに締結固定されている。
さらに、取付フランジ3bのモータハウジング14側の内端面と、該内端面に対向するチェーンケース6のフランジ部6aの前端面との間には、両者3b、6間をシールするゴム製のシールリング50が配置されている。
また、チェーンケース6の円環溝6bの内周面とモータハウジング14の外周面との間には、大径なオイルシール51が介装されている。
カバー本体3aは、カバー部材3の樹脂体27における金属プレート28の一部切り欠かれた箇所で、かつ、各スリップリング26a、26bと対応した位置に、2つのブラシホルダ29a、29bが固定されている。この各ブラシホルダ29a、29bは、導電材によって角筒状に形成されて、内部のそれぞれに後述する2つの給電用ブラシ33a、33bを摺動可能に収容するものである。また、各ブラシホルダ29a,29bは、カバー部材3の樹脂モールド成形時に該カバー部材3に対して一体的に固定されている。
また、各ブラシホルダ29a、29bのそれぞれの収容孔29c内には、各先端面が各スリップリング26a、26bに軸方向からそれぞれ当接する一対の給電用ブラシ33a、33bが軸方向へ摺動可能に保持されている。この各給電用ブラシ33a、33bは、各収容孔29cの内壁面形状に合わせてそれぞれ角柱状に形成されて横断面が長方形状に形成れていると共に、所定の軸方向長さに設定されている。
また、この各給電用ブラシ33a、33bは、カバー本体3aの背面側に設けられた付勢部材である一対の捩りコイルばね34、34のばね力によってそれぞれ各スリップリング26a、26b方向へ付勢されている。つまり、この両捩りコイルばね34は、外方へ突出した図外の各一端部がカバー本体3aの背面側に弾接している。両捩りコイルばね34の各他端部は、各給電用ブラシ33a、33bの後端面に形成された図外の凹溝の底面に弾接して各給電用ブラシ33a、33bの各先端部が各スリップリング26a、26bに当接する方向へ付勢している。
また、各給電用ブラシ33a、33bは、後端部の一側面にそれぞれ形成された小孔33cにピグテールハーネスの一端部が挿入されて、例えば半田付けなどによって固定されている。この各ピグテールハーネスは、各給電用ブラシ33a、33bが各捩りコイルばね34のばね力によって最大に進出した際に、ブラシホルダ29a、29bから脱落しないように、その最大摺動位置を規制する長さに設定されている。一方、ピグテールハーネスの各他端部は、給電用コネクタ31の各端子片の他端部に半田付けによって固定されて両者を電気的に接続されている。
モータ出力軸15と偏心軸24は、カムボルト10の頭部10a側の軸部10bの外周面に設けられた小径ボールベアリング35と、従動部材9の円筒部9bの外周面に設けられて小径ボールベアリング35の軸方向側部に配置されたニードルベアリング36とによって回転可能に支持されている。
また、モータ出力軸15(偏心軸24)の外周面とモータハウジング14の延出部の内周面との間には、減速機13の内部から電動モータ12内への潤滑油のリークを阻止する小径なオイルシール45が設けられている。
コントロールユニットは、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサなど各種のセンサ類から情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出して機関制御を行う。さらに、コントロールユニットは、コイル18aに通電してモータ出力軸15の回転制御を行い、減速機13を介してカムシャフト2のスプロケット1に対する相対回転位相を制御するようになっている。
減速機13は、図1~図3に示すように、偏心回転運動を行う偏心軸24と、該偏心軸24の外周に設けられた中径ボールベアリング37と、中径ボールベアリング37の外周に設けられた複数のローラ38と、固定端部9aの外周部に一体に設けられて、複数のローラ38を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する保持部材である円筒状の保持器39と、該保持器39と一体の従動部材9と、から主として構成されている。
偏心軸24は、図3に示すように、円筒状に形成されて、外周面に形成されたカム面24aの軸心Yがモータ出力軸15の軸心Xから径方向へ偏心している。つまり、偏心軸24は、肉厚が円周方向で変化するように形成されて、所定の部位を最大肉厚部(最大偏心部)24bとし、この最大偏心部24bと円周方向180°の位置では最小肉厚部(最小偏心部)24cとして、これにより、カム面24aの軸心Yがモータ出力軸15の軸心Xから径方向へ偏心している。
中径ボールベアリング37は、ニードルベアリング36の径方向位置で全体がほぼオーバーラップする状態に配置され、内輪37aと外輪37b及び両輪37a、37bとの間に介装されたボール37cとから構成されている。内輪37aは、偏心軸24の外周面に圧入固定されているのに対して、外輪37bは、軸方向で固定されることなくフリーな状態になっている。
つまり、この外輪37bは、回転軸方向の一端面がどの部位にも接触せず、また回転軸方向の他端面がこれに対向する保持器39の基部の内側面との間に微小な第1隙間が形成されて、軸方向でフリーな状態になっている。また、外輪37bの外周面には、各ローラ38の外周面が転動可能に当接している。この外輪37bの外周側には、円環状の第2隙間が形成されており、この第2隙間によって、中径ボールベアリング37全体が偏心軸24の偏心回転に伴って径方向へ移動可能、つまり偏心動可能になっている。
各ローラ38は、半径rが所定の大きさに形成された例えば鉄系金属によって形成され、偏心軸24の偏心回転に伴う中径ボールベアリング37の偏心動によって径方向へ移動しつつ外周側が内歯車5の各内歯5aに噛み合い保持されている。また、各ローラ38は、その全体の数が内歯車5の内歯5aの全体の歯数よりも少なくなっている。
さらに、この各ローラ38は、保持器39の後述するローラ保持孔41の両側に有する各保持片42によって周方向へガイドされつつ径方向に揺動運動させるようになっている。
保持器39は、図1に示すように、固定端部9aの外周部前端から前方へ断面ほぼL字形状に折曲されて、固定端部9aに一体に結合された基部と、基部の外周に一体に有し、円筒部9bと同方向へ突出した筒状部40と、を有している。
筒状部40は、雌ねじ孔14dと延出部との間に形成された円環凹状の収容空間を介してモータハウジング14の仕切壁14b方向へ延出している。また、筒状部40の周方向のほぼ等間隔位置には、複数のローラ38をそれぞれ転動可能に保持するほぼ長方形状の複数(本実施形態では例えば50個)のローラ保持孔41が周方向の等間隔位置に形成されている。
この各ローラ保持孔41は、筒状部40の円周方向に所定間隔をもって該筒状部40の回転軸方向に沿った細長い長方形状の長孔に形成されている。つまり、このローラ保持孔41は、筒状部40をプレス成形機のパンチによって該筒状部40の外周面から回転軸心の方向に向かって長方形状に打ち抜かれている。したがって、この各ローラ保持孔41は、打ち抜かれた残余部が筒状部40の基部と先端部及びそれぞれの両側壁となる両保持片によって長方形に仕切られている。
図4は図3のB領域の概略図を示し、内歯車5の各内歯5aと各ローラ38との間のバックラッシの説明図、図5は図4のC領域の拡大図であって、偏心軸が自由状態にあるローラクリアランスを示している。
すなわち、図4、図5に示すように、中径ボールベアリング37の外輪37bの外周面上を転動する各ローラ38のそれぞれの外周面38aと前記内歯車5の各内歯5aの内周面との間には、微小なラジアルクリアランスであるローラクリアランス(バックラッシ)RCが設定されている。
通常、内歯5aの内周面のプロファイルを作製するには、ローラ38の中心(軸心)の回転軌跡にローラ38の半径rを加えたものを設計値とし作製するが、偏心軸24の偏心量は、内歯5aのプロファイルの設計値に基づいて決定するようになっている。
そして、ローラクリアランスRCは、通常は各内歯5aのプロファイルの計算に使用する偏心軸24の偏心量の最小値を基準として、減速機13の上死点(TDC)、つまり、図3及び図4に示す偏心軸24の軸心Pと最大偏心部24bの中心とを結ぶ一点鎖線上にある上死点(TDC)でのローラ38の外周面38aと内歯5aの内周面との間のローラクリアランスRCが一定値になるように、中径ボールベアリング37の外輪37bの半径値と偏心軸24の半径値を選択して嵌合することにより行っている。
しかし、前述のローラクリアランスRCの設定方法では、作動中において上死点(TDC)から最も荷重が作用する左右所定の角度領域でローラ38と内歯5aの間のローラクリアランスRCであるバックラッシ(角加速度deg)が減少せずに比較的大きくなっている。このため、作動時における各ローラ38の外周面38aと内歯5aの内周面との間で干渉異音や振動が発生するおそれがある。
そこで、本実施形態では、ローラクリアランスRCを、以下の式1にもとづく設定方法によって行うようにした。
すなわち、中径ボールベアリング37の半径をRとし、各ローラ38のそれぞれの半径をr、内歯5aの内周面のプロファイルを作製するに使用する偏心量(作製用偏心量)をa、減速比をnとしたときに、
前記内歯5aの内周面のプロファイルは、以下の式1から求められるローラ38の軸心の描く軌跡Lと、前記ローラの半径rとに基づいて作製される。
前記内歯5aの内周面のプロファイルは、以下の式1から求められるローラ38の軸心の描く軌跡Lと、前記ローラの半径rとに基づいて作製される。
L=a×cos(1+n)θ+√(a×cos(1+n)θ)2-a2+(R+r)2 …式1
図4で示すように、偏心軸24の実際の偏心量a’を、前記プロフィル作製用の偏心量aよりも小さくすると共に、図4の2点鎖線で示すボールベアリング37の実際の半径R’を、図4の実線で示す内歯5aのプロファイル作製用の前記半径Rよりも大きく設定した。
図4で示すように、偏心軸24の実際の偏心量a’を、前記プロフィル作製用の偏心量aよりも小さくすると共に、図4の2点鎖線で示すボールベアリング37の実際の半径R’を、図4の実線で示す内歯5aのプロファイル作製用の前記半径Rよりも大きく設定した。
つまり、各内歯5aの内周面のプロファイルは、前述した偏心軸24の偏心量aなどに基づいて作製する。つまり、前述のように、内歯5aのプロファイルの計算には、偏心軸24の実際の偏心量a’よりも大きいプロフィル作製用の偏心量aを用いてプロファイル作製する。
しかし、各内歯5aのプロファイルの作製後には、図4に示すように、偏心軸24の実際の偏心量a’を、プロフィル作製用の偏心量aものよりも小さくする。言い換えれば、最大偏心部24bの肉厚を減少させると共に、最小偏心部24cの肉厚を増加させて、実際の偏心量a’をプロフィル作製用の偏心量aよりも小さく形成する。
また、偏心軸24の実際の偏心量a’を小さく設定するだけでなく、この偏心量a’を小さくした分だけ、中径ボールベアリング37の実際の半径R’を、図4の破線で示すように大きく設定する。これは、中径ボールベアリング37の例えば外輪37bの径方向の肉厚を大きく形成することによって実際の半径R’を大きくする。本実施形態では外輪37bの外径のみを大きくするが、ボールベアリング37全体の外径を大きくすることも可能である。
これによって、最大偏心部24b(図4の上死点TDC)に対して周方向に所定の角度ずれたS、S領域(図3参照)での前記各ローラ38と各内歯5aが接触しやすくなる。つまり、ローラクリアランスRC(バックラッシ)が消失する。
要するに、偏心軸24の実際の偏心量a’を減少させた分だけ中径ボールベアリング37の実際の半径R’を大きくしたことから、減速機13が作動せずに偏心軸24が自由な状態では、従来品と同一のローラクリアランスRCであっても(図5参照)、作動状態では、上死点TDCから左右周方向へ所定角度ずれたS、S領域(図3参照)においては、外輪37bの外径(実際の半径R’)の増加に伴って該外輪37bの外周面により各ローラ38が径方向外側(各内歯5a方向)へ僅かに移動する(図4破線参照)。
したがって、ローラ38の外周面38aと内歯5aの内周面との間のローラクリアランスRC(バックラッシ)が消失して、径方向での接触が従来品よりも大きくなる。前記ローラクリアランスRCの減少による接触部は、図4の黒点で示すように、上死点より図中左側のS領域では内歯5aの内周面の左側端部となり、上死点より図中右側のS領域では内歯5aの内周面の右側端部となる。
これによって、ローラ38の外周面と内歯5aの内周面との間のローラクリアランスRC(バックラッシ)が消失して、作動時における干渉異音や振動の発生を効果的に抑制することが可能になる。
図6は本願の発明者が、ローラクリアランスRC(バックラッシ)と偏心軸24(中径ボールベアリング37)の偏心量の相関関係を実験した各内歯5aと各ローラ38の接触対象部位を示し、図7はその実験結果を示すグラフである。
図7の破線で示す折れ線グラフは、従来技術における偏心軸24の偏心量や中径ボールベアリング37の外径を今までと同じに設定した場合の実験グラフである。図7の実線で示す折れ線グラフは、本実施形態における偏心軸24の偏心量を従来技術よりも小さくし、ボールベアリング37の外径を偏心量の減少分だけ従来技術よりも大きくした場合の実験グラフである。
なお、この実験では、図4に示す上死点位置から図中左方向へ所定角度の範囲にある第1ローラ38~第7ローラ38までの部位についてのバックラッシ状態を示している。
減速機13の停止時での偏心軸24の自由状態では、いずれもローラクリアランスRCを10μmに設定した。また、図7の破線で示す折れ線グラフは、前記内歯5aのプロファイルを作製するための偏心軸24の偏心量を0.5mmとした。図7の実線で示す折れ線グラフは、本実施形態において偏心軸24の実際の偏心量を0.4mmとした。
減速機13の作動時は、上死点位置にある第1ローラ38から離れた第3ローラ38~第7ローラ38に、作動時に最も大きな荷重が作用することから、この部位をピックアップして実験したのである。
図7の破線で示す折れ線グラフを視ると、上死点(TDC)付近の第1ローラ38から第3ローラ38まで比較的急な角度でローラクリアランスRCであるバックラッシが減少している。さらに第4ローラ38から第5ローラまではなだらかな曲線でバックラッシ(角加速度deg)が減少しているが、第5ローラ38~第7ローラ38までは急激にバックラッシが増加していくことが分かる。
しかし、全体のバックラッシの減少量は、零には届かず比較的大きなバックラッシが存在してしまう。このため、前述したように、作動時における各ローラ38の外周面と内歯5aの内周面との間で干渉異音や振動が発生するおそれがある。
これに対して、図7の実線で示す折れ線グラフ(本実施形態)を視ると、上死点(TDC)付近の第1ローラ38から第3ローラ38まで急激な角度でバックラッシが減少し、第3ローラ38ではほぼ零に近いバックラッシ減少量となっている。さらに第3ローラ38~第4ローラ38になるとバックラッシが零に減少し、この第4ローラ38から第7ローラ38まではバックラッシがほぼ零の状態が続いていることが分かった。つまり、前述したように、第3ローラ38~第7ローラ38の外周面と内歯5aの内周面との間のバックラッシが減少して殆どが接触していることが分かった。
減速機13の内部には、潤滑油供給手段によって潤滑油が供給されるようになっている。この潤滑油供給手段は、軸受ブラケット02の内部に形成されて、図外のメインオイルギャラリーから潤滑油が供給される油供給通路と、図1に示すように、カムシャフト2の内部軸方向とストッパ部材11内に形成されて、油供給通路に連通した油供給孔43と、従動部材9の内部軸方向に貫通形成されて、一端が油供給孔43に開口し、他端がニードルベアリング36と中径ボールベアリング37の付近に開口したオイル孔44と、同じく従動部材9に貫通形成された図外のオイル排出孔と、から構成されている。
〔VTCの作動〕
以下、本実施形態に係るVTCの作動について簡単に説明する。
〔VTCの作動〕
以下、本実施形態に係るVTCの作動について簡単に説明する。
まず、機関のクランクシャフトの回転駆動に伴いスプロケット1が回転して、その回転力が内歯車5を介してモータハウジング14、つまり電動モータ12が同期回転する。一方、内歯車5の回転力が、各ローラ38から保持器39及び従動部材9を経由してカムシャフト2に伝達される。これによって、カムシャフト2のカムが吸気弁を開閉作動させる。
そして、機関始動後の所定の機関運転時には、コントロールユニットから各給電用ブラシ33a、33bや各スリップリング26a、26bなどを介して電動モータ12のコイル18aに通電される。これによって、モータ出力軸15が回転駆動され、この回転力が減速機13を介してカムシャフト2に減速された回転力が伝達される。
すなわち、モータ出力軸15の回転に伴い偏心軸24が偏心回転すると、各ローラ38がモータ出力軸15の1回転毎に保持器39の各ローラ保持孔39bで径方向へガイドされながら内歯車5の一つの内歯5aを乗り越えて隣接する他の内歯5aに転動しながら移動する。各ローラ38は、これを順次繰り返しながら円周方向へ転接する。この各ローラ38の転接によってモータ出力軸15の回転が減速されつつ従動部材9に回転力が伝達される。このときの減速比は、ローラ38の個数などによって任意に設定することが可能である。
これにより、カムシャフト2が、スプロケット1に対して正逆相対回転して相対回転位相が変換されて、吸気弁の開閉タイミングを進角側あるいは遅角側に変換制御するのである。
そして、本実施形態では、前述したように、前記式1に基づいて偏心軸24の実際の偏心量a’を減少させた分だけ中径ボールベアリング37の外輪37bの外径を大きくした。このため、減速機13が作動せずに偏心軸24が自由な状態では、従来品と同一のローラクリアランスRCであっても、作動状態では、上死点から左右周方向へ所定角度ずれたS領域においては、外輪37bの外径の増加に伴って該ボールベアリング37により各ローラ38が径方向外側(各内歯5a方向)へ僅かに移動する。これによって、ローラ38の外周面と内歯5aの内周面との間のローラクリアランスRC(バックラッシ)が減少してほぼ零となって接触状態になる。この結果、作動時における干渉異音や振動の発生を効果的に抑制することが可能になる。
また、本実施形態によれば、中径ボールベアリング37を、バイアススプリングを用いて各ローラ38を各内歯5a方向へ付勢することによってローラクリアランスRCを減少させるのではなく、減速機13の偏心軸24の偏心量や中径ボールベアリング37の外径を変えることによりローラクリアランスRC(バックラッシ)を減少させるようにした。このため、部品点数の増加を抑制できるので、製造作業や組み付け作業能率の向上が図れる。
本願発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、ローラを用いずに環状の外歯と環状の内歯を互いに噛合させる減速機を用いた、例えば特開2020-20282号公報に記載されたバルブタイミング制御装置に適用することも可能である。
また、減速機13の偏心軸24の偏心量や中径ボールベアリング37の外径などは、減速機13の仕様や大きさなどに応じて任意に変更することが可能である。
また、ベアリングとしては、前記ボールベアリング37の他に円環状のプレーンベアリングやニードルベアリングなどであっても良い。
さらに、前記内歯車5は、スプロケット1と一体ではなく、別体に設けることも可能である。
以上説明した実施形態に基づく内燃機関のバルブタイミング制御装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
その一つの態様において、クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、カムシャフトに固定される従動回転体と、出力軸を回転させる電動モータと、前記出力軸の回転を減速して前記従動回転体に伝達することによって前記駆動回転体に対する前記従動回転体の相対回転位相を変更する減速機と、を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記減速機は、前記出力軸によって回転する偏心軸と、内周面に複数の内歯を有する内歯車と、前記偏心軸の外周に設けられたベアリングと、前記ベアリングの外周面と前記各内歯との間に配置された複数のローラと、前記従動回転体に設けられ、前記各ローラの周方向の移動を規制しつつ径方向の移動を許容する複数の保持孔を有する保持部材と、
を備え、
前記出力軸が回転せずに前記偏心軸が自由な状態において、前記偏心軸の最も偏心している最大偏心部位置では、前記ローラが前記出力軸に対して径方向へ移動可能な隙間を有し、前記偏心軸の前記最大偏心部に対して周方向へ所定の角度ずれた位置では、前記ローラが前記内歯に当接している。
前記減速機は、前記出力軸によって回転する偏心軸と、内周面に複数の内歯を有する内歯車と、前記偏心軸の外周に設けられたベアリングと、前記ベアリングの外周面と前記各内歯との間に配置された複数のローラと、前記従動回転体に設けられ、前記各ローラの周方向の移動を規制しつつ径方向の移動を許容する複数の保持孔を有する保持部材と、
を備え、
前記出力軸が回転せずに前記偏心軸が自由な状態において、前記偏心軸の最も偏心している最大偏心部位置では、前記ローラが前記出力軸に対して径方向へ移動可能な隙間を有し、前記偏心軸の前記最大偏心部に対して周方向へ所定の角度ずれた位置では、前記ローラが前記内歯に当接している。
この発明の態様によれば、偏心軸の偏心量を減少させた分だけベアリングの外径を大きくしたことから、偏心軸が自由な状態では、従来品と同一のローラクリアランスであっても、最大偏心部である上死点から周方向へ所定角度ずれた位置では、ベアリングの外径の増加に伴って該ベアリングにより各ローラが径方向外側(各内歯方向)へ僅かに移動する。つまり、各ローラと各内歯との径方向での接触が従来品よりも大きくなる。これによって、ローラと内歯との間のバックラッシが減少して作動時における振動や騒音の発生を効果的に抑制できる。
さらに好ましくは、ベアリングの半径をRとし、前記ローラの半径をr、前記内歯のプロファイルを作製するために使用する前記偏心軸の偏心量をa、減速比をnとしたときに、
前記各内歯のプロファイルは、以下の式1から求められるローラの軸心の描く軌跡Lと前記ローラの半径rに基づいて形成され、
L=a×cos(1+n)θ+√(a×cos(1+n)θ)2-a2+(R+r)2 …式1
前記偏心軸の実際の偏心量a’が、前記内歯のプロファイルを作製するために使用する前記偏心軸の偏心量aよりも小さく形成されていると共に、前記ベアリングの実際の半径R’が、前記ベアリングの半径Rよりも大きく形成されている。
前記各内歯のプロファイルは、以下の式1から求められるローラの軸心の描く軌跡Lと前記ローラの半径rに基づいて形成され、
L=a×cos(1+n)θ+√(a×cos(1+n)θ)2-a2+(R+r)2 …式1
前記偏心軸の実際の偏心量a’が、前記内歯のプロファイルを作製するために使用する前記偏心軸の偏心量aよりも小さく形成されていると共に、前記ベアリングの実際の半径R’が、前記ベアリングの半径Rよりも大きく形成されている。
この発明の態様によれば、各内歯のプロファイルは前記式1に基づいて計算して作製するが、偏心軸の実際の偏心量はa’を、前記内歯のプロファイルを作製するに使用する偏心軸の偏心量aのものよりも小さくする。言い換えれば、内歯のプロファイルを作製する計算には、偏心軸の実際の偏心量a’よりも大きい通常の偏心量aを用いるが、実際の偏心量a’は前記aよりも小さく形成する。
また、偏心軸の実際の偏心量a’を減少させるだけでなく、この減少分だけベアリングの実際の半径R’を通常の半径Rよりも大きくすることで、最大偏心部に対して周方向に所定の角度ずれた領域での前記各ローラと各内歯の接触がし易くなる。つまり、バックラッシが減少する。このため、作動時における振動や騒音の発生を効果的に抑制できる。
さらに好ましくは、前記偏心量aと実際の偏心量a’の差分が、前記半径Rと前記実際の半径R’の差分とほぼ等しくなっている。
別の好ましい態様として、ローラ減速機であって、
回転駆動する偏心軸と、該偏心軸の外周に設けられたベアリングと、該ベアリングの外周面に転接する複数のローラと、該各ローラを転動可能に保持する保持器と、内周に前記各ローラの外周面が転接可能な複数の内歯を有する内歯車とを備え、
前記ローラと前記ベアリング及び前記内歯との間の前記偏心軸の軸心から径方向に有するクリアランスは、前記偏心軸の偏心方向の周方向両側の少なくともいずれか一方において消失している。
回転駆動する偏心軸と、該偏心軸の外周に設けられたベアリングと、該ベアリングの外周面に転接する複数のローラと、該各ローラを転動可能に保持する保持器と、内周に前記各ローラの外周面が転接可能な複数の内歯を有する内歯車とを備え、
前記ローラと前記ベアリング及び前記内歯との間の前記偏心軸の軸心から径方向に有するクリアランスは、前記偏心軸の偏心方向の周方向両側の少なくともいずれか一方において消失している。
さらに好ましくは、前記ベアリングの半径をRとし、前記ローラの半径をr、前記内歯のプロファイルを作製するに使用する前記偏心軸の偏心量をa、減速比をnとしたときに、
前記各内歯のプロファイルは、以下の式1から求められるローラの軸心の描く軌跡Lと前記ローラの半径rに基づいて形成され、
L=a×cos(1+n)θ+√(a×cos(1+n)θ)2-a2+(R+r)2 …式1
前記偏心軸の実際の偏心量a’が、前記内歯のプロファイルを作製するために使用する前記偏心軸の偏心量aよりも小さく形成されていると共に、前記ベアリングの実際の半径R’が、前記ベアリングの半径Rよりも大きく形成されている。
前記各内歯のプロファイルは、以下の式1から求められるローラの軸心の描く軌跡Lと前記ローラの半径rに基づいて形成され、
L=a×cos(1+n)θ+√(a×cos(1+n)θ)2-a2+(R+r)2 …式1
前記偏心軸の実際の偏心量a’が、前記内歯のプロファイルを作製するために使用する前記偏心軸の偏心量aよりも小さく形成されていると共に、前記ベアリングの実際の半径R’が、前記ベアリングの半径Rよりも大きく形成されている。
さらに好ましくは、前記偏心量aと実際の偏心量a’の差分が、前記半径Rと前記実際の半径R’の差分とほぼ等しくなっている。
別の好ましい態様としては、クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、カムシャフトに固定される従動回転体と、電動モータと、 前記電動モータの出力軸の回転速度を減速して前記駆動回転体と従動回転体の相対回転位相変更する減速機と、を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記減速機は、前記電動モータの出力軸によって回転する偏心軸と、前記駆動回転体の内周に設けられた複数の内歯を有する内歯車と、前記偏心軸と内歯車との間に配置されて、前記内歯と噛み合う外歯と有すると共に、前記従動回転体と回転力を伝達する外歯車と、を有し、
前記偏心軸が前記出力軸に対して径方向に付勢されない自由な状態において、前記偏心軸の最も偏心している最大偏心部では、前記内歯と外歯との間に径方向のクリアランスを有し、前記偏心軸の前記最大偏心部に対して周方向へ所定の角度ずれた位置では、前記内歯と外歯が当接している。
前記減速機は、前記電動モータの出力軸によって回転する偏心軸と、前記駆動回転体の内周に設けられた複数の内歯を有する内歯車と、前記偏心軸と内歯車との間に配置されて、前記内歯と噛み合う外歯と有すると共に、前記従動回転体と回転力を伝達する外歯車と、を有し、
前記偏心軸が前記出力軸に対して径方向に付勢されない自由な状態において、前記偏心軸の最も偏心している最大偏心部では、前記内歯と外歯との間に径方向のクリアランスを有し、前記偏心軸の前記最大偏心部に対して周方向へ所定の角度ずれた位置では、前記内歯と外歯が当接している。
1…タイミングスプロケット(駆動回転体)、1a…スプロケット本体、2…カムシャフト、4…位相変更機構、5…内歯車、5a…内歯、9…従動部材(従動回転体)、12…電動モータ、15…モータ出力軸、24…偏心軸、24a…カム面、24b…最大偏心部、24c…最小偏心部、37…中径ボールベアリング、37a…内輪、37b…外輪、37c…ボール、38…ローラ389…保持器(保持部材)、40…筒状部、41…ローラ保持孔、RC…ローラクリアランス、a…偏心量、a’…実際の偏心量、R…中径ボールベアリングの半径、R’…中径ボールベアリングの実際の半径。
Claims (7)
- クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、
カムシャフトに固定される従動回転体と、
出力軸を回転させる電動モータと、
前記出力軸の回転を減速して前記従動回転体に伝達することによって前記駆動回転体に対する前記従動回転体の相対回転位相を変更する減速機と、
を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記減速機は、
前記出力軸によって回転する偏心軸と、
内周面に複数の内歯を有する内歯車と、
前記偏心軸の外周に設けられたベアリングと、
前記ベアリングの外周面と前記各内歯との間に配置された複数のローラと、
前記従動回転体に設けられ、前記各ローラの周方向の移動を規制しつつ径方向の移動を許容する複数の保持孔を有する保持部材と、
を備え、
前記出力軸が回転せずに前記偏心軸が自由な状態において、前記偏心軸の最も偏心している最大偏心部位置では、前記ローラが前記出力軸に対して径方向へ移動可能な隙間を有し、前記偏心軸の前記最大偏心部に対して周方向へ所定の角度ずれた位置では、前記ローラが前記内歯に当接していることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記ベアリングの半径をRとし、前記ローラの半径をr、前記内歯のプロファイルを作製するために使用する前記偏心軸の偏心量をa、減速比をnとしたときに、
前記各内歯のプロファイルは、以下の式1から求められるローラの軸心の描く軌跡Lと前記ローラの半径rに基づいて形成され、
L=a×cos(1+n)θ+√(a×cos(1+n)θ)2-a2+(R+r)2 …式1
前記偏心軸の実際の偏心量a’が、前記内歯のプロファイルを作製するために使用する前記偏心軸の偏心量aよりも小さく形成されると共に、前記ベアリングの実際の半径R’が、前記ベアリングの半径Rよりも大きく形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記偏心量aと前記実際の偏心量a’の差分が、前記半径Rと前記実際の半径R’の差分とほぼ等しいことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - ローラ減速機であって、
回転駆動する偏心軸と、該偏心軸の外周に設けられたベアリングと、該ベアリングの外周面に転接する複数のローラと、該各ローラを転動可能に保持する保持器と、内周に前記各ローラの外周面が転接可能な複数の内歯を有する内歯車とを備え、
前記ローラと前記ベアリング及び前記内歯との間の前記偏心軸の軸心から径方向に有するクリアランスは、前記偏心軸の偏心方向の周方向両側の少なくともいずれか一方において消失していることを特徴とするローラ減速機。 - 請求項4に記載のローラ減速機であって、
前記ベアリングの半径をRとし、前記ローラの半径をr、前記内歯のプロファイルを作製するに使用する前記偏心軸の偏心量をa、減速比をnとしたときに、
前記各内歯のプロファイルは、以下の式1から求められるローラの軸心の描く軌跡Lと前記ローラの半径rに基づいて形成され、
L=a×cos(1+n)θ+√(a×cos(1+n)θ)2-a2+(R+r)2 …式1
前記偏心軸の実際の偏心量a’が、前記内歯のプロファイルを作製するために使用する前記偏心軸の偏心量aよりも小さく形成されていると共に、前記ベアリングの実際の半径R’が、前記ベアリングの半径Rよりも大きく形成されていることを特徴とするローラ減速機。 - 請求項5に記載のローラ減速機であって、
前記偏心量aと実際の偏心量a’の差分が、前記半径Rと前記実際の半径R’の差分とほぼ等しいことを特徴とするローラ減速機。 - クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、
カムシャフトに固定される従動回転体と、
電動モータと、
前記電動モータの出力軸の回転速度を減速して前記駆動回転体と従動回転体の相対回転位相変更する減速機と、
を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記減速機は、
前記電動モータの出力軸によって回転する偏心軸と、
前記駆動回転体の内周に設けられた複数の内歯を有する内歯車と、
前記偏心軸と内歯車との間に配置されて、前記内歯と噛み合う外歯と有すると共に、前記従動回転体と回転力を伝達する外歯車と、
を有し、
前記偏心軸が前記出力軸に対して径方向に付勢されない自由な状態において、前記偏心軸の最も偏心している最大偏心部では、前記内歯と外歯との間に径方向のクリアランスを有し、前記偏心軸の前記最大偏心部に対して周方向へ所定の角度ずれた位置では、前記内歯と外歯が当接していることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
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