JP2021508820A - 組織試料調製システム - Google Patents

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Abstract

本発明は、調製された試料の体積および/または形態の、元の組織の体積または形態からのずれが最小化されるように、光学分析用の生体組織試料(301)を調製する方法(100)に関する。本方法は、(a)組織試料を第1の固定溶液(202)を用いて固定する工程(102);(b)組織試料を、試料の膨張を誘導するのに適したカオトロピック剤を含む脱脂溶液(204)に浸漬する工程(104);(d)組織試料を染色する工程(108);(f)組織試料を、試料の収縮を誘導するのに適した有機脱水溶液(210)中で脱水する工程(112);および(g)固定された組織試料を有機透明化溶液(212)に浸漬する工程(114)を含む。

Description

発明の分野
本発明は、光学分析用の生体組織試料の調製、より具体的には、組織透明化プロトコルに関する。
背景および関連技術
組織試料の化学的透明化は、組織試料(例えば、器官全体)における構造の検出および再構築のための重要な技法になっている。顕微鏡分析の場合、直接観察するために十分に薄い組織型は少ない。大部分の組織(例えば、生検試料、厚い組織試料、オルガノイドもしくはスフェロイドのような複合3D組織形成物、マウスのような小型成体哺乳動物の器官全体または全身または全胚)は、厚すぎるため、光が透過し得ない。薄いスライス切片への組織の切断は、生物医学的に重要な情報が失われるという欠点を有する:生物学的構造は、本質的に三次元(3D)である。一方、数種の顕微鏡技術(例えば、共焦点顕微鏡法、二光子顕微鏡法、および光シート顕微鏡法)が、組織の3Dイメージを得るために利用可能である。しかしながら、生物学的標本は本来、UV-VIS-NIR域の光学的な光に対して不透明である。
一般に、この不透明性の主因は、吸収および散乱である。実際、生体組織試料は究極的には、脂質およびタンパク質のような様々な高屈折率の高分子が低屈折率の媒体(水)に浸漬されたものによって構成されている。生物学的分子の高い屈折率と、これらの分子を含んでいる細胞内および細胞外の水の低い屈折率との間の不一致は、多重散乱イベントをもたらし、結果として、不透明な試料をもたらす。組織における短い進行距離の後に、既に、これらの多重散乱イベントは、組織内を直進する光学的光子(弾道光子)の数の高度の低減をもたらす。組織内の途中で散乱する光子が多いほど、組織は不透明になる。しかしながら、散乱が全く起こらない場合ですら、全吸収も、完全に不透明な(透明でない)組織試料をもたらすであろう。
従って、顕微鏡によって調査するためには、一定の閾値を越えるサイズの標本は、「透明化」されなければならず、ここで、「透明化」とは、本明細書中で使用されるように、例えば、生体分子と周囲の媒体との間の屈折率ミスマッチを低減することによって、試料を通過する光の散乱が低減するように、生物学的試料を処理することである。
今日、一般的に使用されている透明化技術の大部分ではないにしても多くが、有機溶媒の使用に基づいている。例えば、uDISCOのような有機溶媒ベースの透明化方法は、約1.55の屈折率(RI)、即ち、多くの組織型の典型的なRIを示す有機溶媒による、組織水の置換に頼っている。例えば、ベンジルアルコールと安息香酸ベンジルとの混合物(BABB)が、有機溶媒として使用される。安息香酸ベンジルは水に不溶性であるため、ブタノールに基づく中間脱水工程が、一般的に使用される。この一般的なスキーム(有機溶媒による脱水の後の高屈折率有機溶媒中でのインキュベーション)は、高度にポピュラーな透明化技術であるが、いくつかの短所を有する:それは、短期間の後に、組織に既に含まれているかもしれない蛍光タンパク質の放射を消光させ、組織試料の有意な収縮および形態学的変化を引き起こし得る。例えば、Weizhe Li, Ronald N. Germain, and Michael Y. Gerner "Multiplex, quantitative cellular analysis in large tissue volumes with clearing-enhanced 3D microscopy (Ce3D))" PNAS 2017 114 (35) E7321-E7330(非特許文献1)は、CUBICプロトコルおよびiDISCOプロトコルが組織試料形態に負の影響を及ぼすことを示している。
Weizhe Li, Ronald N. Germain, and Michael Y. Gerner "Multiplex, quantitative cellular analysis in large tissue volumes with clearing-enhanced 3D microscopy (Ce3D))" PNAS 2017 114 (35) E7321-E7330
概要
独立クレームにおいて指定される、光学分析用の生体組織試料を調製する改善された方法、生物学的試料の調製のための対応するシステムおよびキットを提供することが、目的である。本発明の態様は、従属クレームにおいて与えられる。本明細書中に記載された態様および例は、相互排他的である限り、相互に自由に組み合わせられてよい。
一つの局面において、本発明は、光学分析用の生体組織試料を調製する方法に関する。具体的には、生体組織試料は、調製された試料の体積および/または形態の、元の組織の体積または形態からのずれが、低減するかまたは最小化されるように、調製される。本方法は、
(a)組織試料を第1の固定溶液を用いて固定する工程;
(b)固定された組織試料を、試料の膨張を誘導するのに適したカオトロピック剤を含む脱脂溶液に浸漬する工程;
(d)組織試料を1種または複数種の染色溶液を用いて染色する工程;
(f)染色された組織試料を、試料の収縮を誘導するのに適した有機脱水溶液中で脱水する工程;および
(g)固定された組織試料を有機透明化溶液に浸漬する工程
を含む。
いくつかの態様によると、少なくとも洗浄および脱水の工程は、複数の部分工程、例えば、増加する有機溶媒濃度を有する一連の脱水溶液中での試料の脱水を含んでいてよい。有機透明化プロトコルの情況における、固定された組織試料を、カオトロピック剤を含む脱脂溶液に浸漬することは、起源生物から最初に得られた組織試料の体積と、体積が同一であるかまたは少なくとも高度に類似している、高い光学的透明性を有する組織試料の生成を可能にすることができるため、有利であり得る。元の組織試料の形状および形態を再構築するため、透明化された試料が光学的に分析される予定である場合、これは特に有益である。先行技術において、組織試料の収縮を誘導しない水溶液ベースの(water-based)透明化プロトコルが存在する。反対に、有機透明化溶液に基づく既存の透明化プロトコルは、一般に、より高度の光学的透明性を有する組織を提供すると見なされているが、典型的には、試料の強力な収縮を誘導する。従って、本発明の態様は、組織試料の体積および/または形態を有意な程度に改変することなく、さらなる光学分析用の組織試料を調製するための有機透明化溶液の使用を可能にすることができる。
従って、本発明の態様は、大きい組織試料でも、有機溶媒による組織水の置換に応答して強力に収縮することが観察されている組織型(例えば、脳組織)であっても、透明化された組織試料の光学分析に基づき、忠実に、組織をイメージングするかまたはその元の3D形態を再構築することを可能にすることができる。
カオトロピック剤は、例えば、タンパク質を変性させ、疎水性凝集物を不安定化し、疎水性物質の溶解度を増加させることによって、タンパク質および膜を不安定化するため、カオトロピック剤の使用は有利であり得る。カオトロピック剤は、組織試料の膨張を引き起こす。態様によると、カオトロピック剤を含む脱脂溶液は、少なくとも5%だけ、具体的には少なくとも10%だけ、具体的には、有機透明化剤によって与えられる収縮を補償するのに適した量だけ、組織試料の膨張を引き起こす。
有機溶媒および有機脱水溶液によって誘導される組織収縮、ならびにカオトロピック剤によって誘導される組織膨張の両方が、組織型依存的であることが、驚くべきことに観察された。有意な膨張効果および収縮効果が、筋組織および肝組織において観察可能であるが、脳組織において観察可能な膨張効果および収縮効果は、はるかに顕著である。5〜30%、具体的には15%〜25%の濃度範囲でカオトロピック剤を含む脱脂溶液の使用が、広範囲の組織型において、有機脱水溶液によって誘導される収縮を(前もって)補償する膨張効果を誘導することが観察された。
さらなる有益な局面において、カオトロピック剤は、脂質、具体的には、膜脂質を組織から除去し、それによって、最終的に得られる透明化された組織試料の組織透明性を増加させることによって、組織透明性を増加させるため、カオトロピック剤は有利であり得る。
本発明の態様は、組織試料の体積および/または形態が保存されることを確実にすることができる、単純で、高速で、多くの労力を要しない浸漬プロトコルによって、大きい組織試料、例えば、マウス器官の光学的透明化でさえ可能にすることができる。血液を透明化するための経心灌流のような多くの労力を要する作業、および透明化または染色の技術を加速するための特殊装置の使用は、もはや必要とされない。動物研究における大きいコホートに由来するかまたは臨床的診断の情況における患者に由来する多数の試料の処理が、迅速に、再現可能に、任意で半自動的または完全自動的に、実施され得る。さらに、光シート顕微鏡(例えば3D光シート顕微鏡)による細胞レベルの分解能での組織の測定を可能にする透明度が達成される。本発明の態様による試料調製方法によって生成された試料は、元の形態の改善された保存および光散乱の有意な低減および向上したシグナルノイズ比のため、短時間で測定され得、より良好な正確さで三次元的に可視化され得る。例えば、いくつかの態様によると、腫瘍(および他の疾患)マウスモデルの腫瘍、または腫瘍微小環境、または他の器官もしくは組織において、あるいは患者の組織試料において、免疫細胞集団を三次元的に可視化し、共局在を決定し、定量化することができる。(例えば、蛍光標識されたレクチンのインビボ投与による)血管構造の標識、および形態の可視化を同時に行うことによって、前臨床研究中の治療薬の標識された細胞集団に対する効果の深遠な分析を行うことができる。例えば、方法は、臨床的診断の情況において、ヒト、例えば、患者の組織試料を処理するために使用され得る。腫瘍微小環境においてある種の細胞型を可視化するため、または、例えば、免疫細胞のエンゲージメントもしくは活性に対する薬物の効果を調べるため、血管について染色することは、必要ではないかもしれない。しかしながら、血管の標識は、(例えば、蛍光標識された治療用化合物を使用することによって)試料中の薬物体内分布を調べるため、または抗血管新生薬のような薬物が血管に対して直接効果を及ぼすか否かを調べるため、有益であり得る。
態様によると、方法は、(c)染色分子の蛍光標識のうちの少なくとも1種が励起される波長および/または染色分子の蛍光標識のうちの少なくとも1種が光を放射する波長(励起波長および/または放射波長)を含む波長域の光を、試料に照射する工程をさらに含み;照射は、該波長域における試料の自己蛍光を選択的に除去または低減するために実施される。
好ましい態様によると、選択的光退色は、使用される予定の1種または複数種の染料の放射波長を少なくとも含む波長帯によって、試料が退色されるよう実施される。染料の放射スペクトルが複雑であって、染料が複数の異なる波長を放射するケースにおいては、選択的光退色は、最も強力なシグナルを有する波長のうちの一つについて実施される。好ましくは、波長域は、狭く選択され、例えば、最も強力なシグナルを与える染料の波長+/-50nmである。例えば、Alexa Fluor 647およびAlexa Fluor 750が、一般的に使用されている染料であり、選択的光退色は、これらの染料の(シグナル振幅に関して)最も顕著な励起波長または放射波長を少なくともカバーする波長域を使用して実施され得る。
例えば、後に分析される予定のシグナルの少なくとも1種の染料が、668nmにおいて放射ピークを有する場合、退色プロセスにおいて、668nm-50nm〜668nm+50nm、即ち、618nm〜718nmの波長域の強力な光が試料に適用されるように、選択的光退色のためのフィルターを選択することができる。
他の態様によると、選択的光退色は、使用される予定の1種または複数種の染料の励起波長を少なくとも含む波長帯によって、試料が退色されるよう実施される。好ましくは、波長域は、自己蛍光構造の励起スペクトルをカバーし、試料に既に含有されていた染料(存在する場合)の励起スペクトルをカバーしない。
態様によると、前照射が、近UVおよび/または青色域、例えば、100〜482nmの域で行われる。大部分の自己蛍光構造がこの域において励起され得、使用される染料の大部分の励起/放射帯とのオーバーラップは存在しない可能性が最も高いため、これは有利であり得る。
染料が試料に適用されていないケースにおいては、広い波長域において広帯域照射を適用することができる。特異的な染料が既に含まれているケースにおいては、好ましくは、(例えば、退色波長域の部分域であり染料の励起域を含む波長域であるギャップを含む、特定の域の光を生成するための1個または複数個のフィルターを適用することによって)試料中の染料の励起チャンネルが差し引かれた広帯域照射が適用される。好ましくは、組織は、組織に損傷を与える可能性がある高輝度照射に無条件に曝されるべきではない。
態様によると、選択的光退色は、(以後、「自己蛍光ウインドウ」と呼ばれる)広スペクトル波長域を試料に照射することによって実施される。この「自己蛍光ウインドウ」は、インビボ染色法によって試料に既に導入されている染料の励起波長をカバーするスペクトル部分域ギャップを含む。試料に既に含有されている染料が退色されないことを確実にするため、この「ギャップ」を除く自己蛍光ウインドウ内の光が、試料に選択的に適用される。例えば、「自己蛍光ウインドウ」は、550〜580nmの部分域ギャップを含む450〜730nmの波長域である。
「選択的光退色」とも呼ばれるこれらの特色は、光シート顕微鏡法および他の光学的試料分析方法において一般的に得られる弱い光シグナルの情況において特に有益であるシグナルノイズ比が観察され得るため、有益であり得る。例えば、多くの蛍光顕微鏡が、選択的な波長によって特定の蛍光染料を選択的に刺激するため、または調査される染料の放射スペクトルに相当するある種の波長の波長が対物レンズに到達することを選択的に可能にするため、蛍光フィルターを装備されている。規定された波長の光を選択的に適用することは、例えば、現在調査されている蛍光染料と異なるが部分的にオーバーラップする放射スペクトルおよび/または励起スペクトルを有する、試料に含有されている可能性のある他の蛍光染料によって引き起こされるノイズを低減することができる。これらのフィルターは、高エネルギー広スペクトル光源の限定された波長スペクトルの光が、試料に到達することを選択的に可能にするためにも使用され得ることが観察された。好ましくは、フィルターは、調査される予定の蛍光染料の放射波長および/または励起波長に相当し、それらを含む限定された波長スペクトルの光が、試料に到達することを選択的に可能にするよう選択される。「選択的光退色」は、具体的には、蛍光シグナルが予想される波長帯において、試料の自己蛍光が低減し、従って、改善されたシグナルノイズ比が得られるという効果を有する。選択的光退色は、選択的光退色が実施される時に既に存在する他の蛍光染料の放射波長と典型的にはオーバーラップせず、それらを含まない比較的小さい波長域に、退色効果が限定され得るため、異なる放射スペクトルを有する複数の蛍光色素を使用する情況において特に有利であり得る。従って、本発明の態様は、悪いシグナルノイズ比によって典型的に妨げられる光学分析系の情況において、多くの異なる蛍光染料の弱い蛍光シグナルも正確に検出することを可能にすることができる。
自己蛍光は、主にホルマリンベースの組織固定および内因性(内在性)フルオロフォア(即ち、適切に励起されると蛍光を発する生体分子)の効果であり得、試料を脱脂溶液および染色溶液に浸漬することによって強力に増大し得、500〜600nmの波長域において組織自己蛍光の3D測定を実施することを可能にする。試料が、単にTBSTまたはPBSTのような古典的な染色緩衝液を含む緩衝液(例えば、PBS)中で保管されたとき、既に、自己蛍光が広域(少なくとも630nmまでの波長)で直線的に増加することが、少なくともいくつかのケースで観察された。
自己蛍光シグナルは、器官および組織の形態の詳細な局面を提供する。得られたイメージコントラストの差は、個々の組織成分の正確な区別を可能にし得る。さらに、器官全体およびその血管系は、例えば、レクチン-AlexaFluor647のような染料による血管内皮細胞のインビボ標識によって可視化され得る。組織自己蛍光および血管アーキテクチャーの共同取得は、一般に、高度および中程度の光学的透明度ならびに低いヘモグロビン割合を有する器官に適用され得るが、それは、これらの組織においては、光吸収が、限定された影響しか及ぼさないためである。高いヘモグロビン含量および低い光学的組織透明度を有する器官(例えば、肝臓、腎臓、心臓、および脾臓)からの形態学的特色の完全論的取得は、好ましくは、近赤外(NIR)色素を測定することによって実施されるが、それは、組織吸収が、この波長域(光学的ウインドウ)において高度に低減するためである。
態様によると、方法は、(e)洗浄および脱水が実施される前に、染色された組織試料を第2の固定溶液を用いて固定する工程をさらに含む。例えば、第2の固定溶液は、PBS中1% PFAであり得る。第2の固定溶液による固定は、第2の固定溶液中で、室温で、約3〜4時間、試料を静かに振とうすることを含み得る。
この付加的な固定工程は、洗浄除去されないよう染料を保護し、従って、苛酷な脱水プロトコルおよび改善されたシグナルノイズ比を可能にするため、有利であり得る。これは、例えば、光シート顕微鏡法においてしばしば起こる弱いシグナルおよび悪いシグナルノイズ比の情況において特に有益である。下記の脱水工程における漸増する溶媒濃度での反復的な浸漬工程は、既存の染料を洗浄除去するリスクを保持しているかもしれない。特に、標的を染色するために使用された抗体は、非共有結合性の相互作用を介して標的に結合しており、その相互作用は、環境が水溶性から有機に変化する時、重度に妨害される可能性が高い。付加的な固定工程の実施は、特に、(エタノールより温和な溶媒であると見なされる)ブタノールの代わりにエタノールが使用される場合、脱水プロセスにおいて洗浄除去されないようこれらの染料を保護するために役立ち得る。
態様によると、脱脂溶液の組成は、有機脱水溶液によって誘導される組織収縮が、脱脂溶液によって誘導される膨張によって前もって補償されるよう選択される。
態様によると、カオトロピック剤は、元の試料の体積の少なくとも15%だけ、または元の試料の体積の少なくとも20%だけ、試料の体積の膨張を引き起こすのに適している。
さらに、または、あるいは、脱脂溶液の組成は、脱脂溶液によって誘導される膨張と、脱水溶液によって誘導される収縮との組み合わせ効果が、元の未処理の組織試料の体積から15%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満だけずれている透明化された組織試料を提供するように、選択される。
態様によると、脱脂溶液は、水性透明化溶液である。
水溶液ベースの透明化プロトコルは、有機溶媒ベースの透明化方法の現在適用/仮定されている代替法である。従って、水溶液ベースの透明化アプローチと有機溶媒ベースの透明化アプローチとの組み合わせは、技術的に意味がないようであるが、カオトロピック剤によって誘導される膨張は、有機透明化溶液に浸漬された最終的に得られた試料の体積および形態が、元の組織の体積および形態と同一になるかまたは高度に類似することを効果的に確実にするため、カオトロピック剤を含む水性透明化溶液を有機透明化溶液と共に使用することは、本発明の態様において高度に有利であることが、驚くべきことに観察された。さらなる有益な局面において、試料を、カオトロピック剤を含む水性透明化溶液に浸漬し、その後、予備透明化され膨張した試料を、有機脱水溶液中で洗浄および脱水して、所望のRIを有する有機透明化溶液への浸漬のための試料を調製することによって、特に高度の光学的透明性が得られることが観察された。さらなる有益な局面によると、試料を脱脂溶液に浸漬することによって、後続のエクスビボ染色工程における様々な染料に対する組織の拡散抵抗性が低減する。これは、染色溶液とのインキュベーション時間を低減し、より大きい試料の透明化を可能にし、かつ/または複数の同時染色を可能にする。
態様によると、組織を第1の固定組成物中で固定する工程、固定された組織試料を脱脂溶液に浸漬する工程、固定された組織試料を染色する工程、洗浄および脱水する工程、ならびに有機透明化溶液に浸漬する工程は、灌流工程を含まない(即ち、灌流工程なしの)自動化または半自動化されたプロセスにおいて実施される。
従来のプロトコルでは、灌流された組織試料のためのプロトコル、または電気泳動チャンバーのような特別な機器を含むプロトコルにおいてのみ達成され得る程度の光学的透明性が、脱脂剤と有機透明化剤との組み合わせのため、より大きい組織試料でさえ到達される。透明化効果は、アミノアルコールを含む脱脂溶液を使用することによって、さらに有意に増強され得る。灌流工程または付加的な機器を含まない組織透明化プロトコルの提供は、多くの理由のため、有利であり得る:しばしば、例えば、試料が患者から得られる場合、試料が得られる前に組織を灌流することは可能でない。時には、エクスビボ灌流プロトコルが使用されるが、それらのプロトコルは、しばしば、例えば、組織試料の固定、試料の血管の、灌流ポンプの入口および出口との接続等のため、複雑で時間のかかる手動の工程に頼る。従って、灌流に基づくプロトコルは、光学分析用の患者試料を調製するためには適していないか、または少なくともハイスループット試料の調製および分析の情況において使用するためには適していないと、しばしば見なされる。本発明の態様のために本明細書中に記載されているように、水性透明化溶液として機能するために十分な量の界s面活性剤を含む脱脂溶液を使用し、この溶液を有機透明化プロトコルと組み合わせることによって、極めて大きい組織試料(例えば、マウスの生体全身調製物)でさえ、完全に光学的に分析し、その中に含有されている部分構造の3D再構築のために使用することができるよう調製するのに適した、半自動化または完全自動化された灌流なしの透明化プロトコルを提供することが可能であり得る。
組織形態の保存は、組織の異常および病理学的変化を検出するために使用される、透明化された組織試料の3D可視化の情況において、特に有利であり得る。一つの実験設定において、同所性に成長させたマウス非小細胞肺癌および腎腺癌の組織形態および腫瘍量が、成功裡に可視化された。この可視化は、細胞密度および/または血管系構造に関する有意な差のため、周囲の健常マウス組織からの病理学的腫瘍組織の明瞭な区別を可能にした。高分解能イメージは、生理学的な血管アーキテクチャーから高度に不規則で無秩序な腫瘍血管アーキテクチャーへの明確な推移を明白に図示する。形態学的パラメータの次に、代表(representative)分析および客観分析を保証するため、蛍光標識された化合物/治療薬の組織および器官への分布、浸透、および蓄積のような薬物動態学的特徴に取り組むことができる。腎腺癌と比較された健常マウス腎組織におけるトラスツズマブ-AlexaFluor750の3D分布を成功裡に再構築することが可能であった。標識された抗体は正常腎臓血管系内に循環しており、おそらく、抗体のFc部分を介した、免疫エフェクター細胞との結合、および壊死組織区域における蓄積は、腫瘍領域においてのみ観察された。原則として、蛍光標識された分子および/または細胞のそのような3D分析は、他の器官および組織の型に移転され得る。
態様によると、有機透明化溶液は、ジベンジルエーテルである。
別の態様によると、有機透明化溶液は、ベンジルアルコールと安息香酸ベンジルとの混合物(BABB)である。
方法は、有機透明化溶液を調製する工程を含む。有機透明化溶液の調製は、有機透明化溶液の屈折率が、試料の組織型の屈折率と同一になるかまたは類似するような、ベンジルアルコールと安息香酸ベンジルとの比の選択を含む。
さらなる態様によると、有機透明化溶液は、DPE(ジフェニルエーテル)とベンジルアルコールと安息香酸ベンジル(BABB)との混合物である。
方法は、有機透明化溶液を調製する工程を含む。有機透明化溶液の調製は、有機透明化溶液の屈折率が、試料の組織型の屈折率と同一になるかまたは類似するような、有機透明化溶液中のDPEの濃度の選択を含む。
RIは、異なる組織型において、わずかに異なることが観察されたため、分析される組織型によってベンジルアルコールと安息香酸ベンジルとの比を適合させることは、有利であり得る。態様によると、ベンジルアルコールと安息香酸ベンジルとの比は、得られる有機透明化溶液が約1.54〜1.58のRIを有するよう選択される。これは、同範囲にRIを有する多くの組織型のために適当なRI範囲であることが観察された。
態様によると、方法は、特定の型の組織の組織試料を光学的に透明化するのに適した有機透明化溶液を、この組織型のRIを経験的にまたは文献研究によって決定することによって、生成する工程を含む。有機透明化溶液は、「RI一致溶液」または「浸漬溶液」とも呼ばれる。次いで、有機透明化溶液の組成は、所望のRIに到達するよう選択される。
例えば、規定されたRIを有する有機透明化溶液の生成は、異なるBA:BB比を有する一連の約10種のBABB溶液を生成し;(複数の洗浄および脱水の工程において既に完全に脱水されている)該特定の組織の試料を該10種のBABB溶液の各々に浸漬し、10種のBABB溶液の中で組織試料のRIが最も大きい類似性(および最も少量の光散乱)を示すものを決定することによって実施され得る。あるいは、一定のBA:BB比を有するが、増加する濃度のジフェニルエーテルを有する10種のBABB溶液を、透明化された組織のRIと一致するRIをもたらすジフェニルエーテル濃度の有機透明化溶液を同定するために使用することができる。
態様によると、試料は、非ヒトまたはヒト生物の組織試料である。具体的には、試料は、ヒトおよび非ヒト哺乳類の組織試料である。例えば、試料は、患者の生検試料、例えば、腫瘍組織または健常組織に由来する試料であり得る。例えば、試料は、ヒトの肝臓、脳、腎臓、筋肉、結腸、または肺の組織の生検材料またはスライス切片であり得る。
態様によると、試料は、少なくとも0.5cm3、または少なくとも0.75cm3、または少なくとも1cm3の体積を有する。いくつかの態様において、試料は、器官全体試料、例えば、マウスまたはラットの脳または肝臓である。いくつかの態様において、組織試料は、生体全身、例えばマウス全身、または、例えば哺乳動物の全胚である。
態様によると、試料は、試料が第1の固定溶液を用いて固定される前に、既に、レポータータンパク質、または染色されたバイオマーカー、薬物、もしくは代謝物質を含む。例えば、レポータータンパク質は、試料が採取された生物に遺伝子工学を介して導入されたGFPのようなタンパク質であり得る。例えば、トランスジェニックのマウスまたはラットは、GFPの組織型感受性または組織部分領域感受性のプロモーターが活性化された、何らかの組織型または組織部分領域において選択的にGFPを発現していてよい。さらに、または、あるいは、組織は、レポーター分子によって標識された薬物または他の物質を含んでいてもよい。例えば、患者は、組織試料が採取された数分前に、蛍光標識された薬物を血流中に注射されていてもよく、試料は、試料内の特異的な細胞型における標識された薬物の蓄積を含むかもしれない。従って、遺伝子工学から蛍光標識された薬物の摂取までの範囲の様々な理由のため、組織試料は、「インビボで染色された分子」とも本明細書中で呼ばれる何らかの染色された分子を既に含んでいてよく、そのような分子を生物に導入するそれぞれのテクノロジーは「インビボ染色法」と呼ばれ得る。インビボ染色法は、エクスビボ染色法と組み合わせられてもよい。このケースにおいて、染料は、放射スペクトルが相互に容易に識別され得るよう選択されるべきである。
態様によると、方法は、3D蛍光顕微鏡法、例えば、光シート蛍光顕微鏡法(LSFM)を使用して、透明化された組織試料の染色された部分構造の3Dプロットを生成する工程をさらに含む。
少数の個々の組織スライス切片の2D調査は、不均質の組織構造についての限定された洞察しか提供せず、従って、全体的な情況を必ずしも反映し得ないことが観察されたため、該特色は有利であり得る。特に、腫瘍分析において、そのような組織型においては不均質性が特に高いため、この局面が大いに関連する。さらに、血管アーキテクチャーのような複雑な形態学的関係は、三次元でのみ完全に理解され得る。従って、全組織標本の三次元(3D)分析のみが、全体的な代表的な組織査定のための適切な解決策を提供する。しかしながら、個々の組織スライス切片に基づく、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料のデジタル3D再構築は、極めて面倒な時間のかかるプロセスである。さらに、切断プロセスによって引き起こされる組織スライス切片の機械的な歪みは、後続の3D再構築の実施を極めて困難にし、エラーに対する感受性を増加させる。本発明の態様は、透明度が高い保存された形態を有する組織試料を生成するのに適した改善された試料透明化プロトコルを提供することによって、従来のミクロトームベースの病理組織学の問題および限界を克服することを可能にし、それによって、光シート顕微鏡法のような非破壊的なイメージング方法を使用した細胞レベルの分解能での透明組織標本の3D分析のための基礎を提供し得る。
莫大な数の異なる組織透明化プロトコルが存在するが、それらは、例えば、齧歯類の脊髄および脳における、内在的に標識された神経ネットワークの3D分析のために主に適用されている。神経科学および胚発生における大成功にも関わらず、イメージング技術は、他の科学分野についても相当の可能性を示している。最初の研究は、それが癌研究および前臨床薬物開発のために非常に有益であることを示した。本発明の態様は、病理組織学の領域に3Dイメージングテクノロジーを組み込むことを可能にするかもしれない。
本発明の様々な態様のため、本明細書中に記載された組織透明化方法は、全マウス器官、同所性腫瘍異種移植片、および同系腫瘍、ならびにヒト腫瘍組織試料の、細胞レベルの分解能での三次元の非破壊的な多重分析のために成功裡に適用された。本発明の態様は、既存の有機透明化ベースのアプローチによって得られる試料より、組織完全性および透明度の両方に関して好都合な透明化された組織試料を提供し得ることが示された。
さらに、または、あるいは、方法は、透明化された組織試料をラマン分光法を使用して分析する工程をさらに含む。ラマン分光法は、系、例えば、生体組織試料において震動モード、回転モード、および他の低周波モードを観察するために使用される分光技術である。ラマン分光法は、分子を同定することができる構造フィンガープリントを提供するため、化学において一般的に使用されているが、特定の組織試料およびその部分構造の形態に関する情報を得るため、生物学、特に、組織学およびハイスループット診断においても使用され得る。ラマン分光法は、単色光の非弾性散乱またはラマン散乱に頼る。光学的に高度に透明である組織試料の使用は、ノイズを表す光の散乱が低減することを確実にし得る。さらなる利点として、レーザー光は、組織へより深く浸透することができ、それによって、より大きい試料またはより高吸収性の試料の光学分析を可能にする。
さらに、または、あるいは、方法は、透明化された組織試料を、光音響イメージング(視音響イメージング)を使用して分析する工程をさらに含む。光音響イメージングは、光音響効果に基づく生物医学的イメージングモダリティである。光音響イメージングにおいては、非電離レーザーパルスが、生物学的組織に送達される(高周波パルスが使用される時、そのテクノロジーは熱音響イメージングと呼ばれる)。送達されたエネルギーの一部は、吸収され、熱に変換され、一過性の熱弾性増大をもたらし、従って、広帯域(即ち、MHz)超音波放射をもたらす。生成された超音波が、超音波トランスデューサーによって検出され、次いで、イメージを作製するために分析される。光吸収は、ヘモグロビン濃度および酸素飽和度のような生理学的特性に密接に関連していることが公知である。その結果、局所的なエネルギー堆積に比例する超音波放射(即ち、光音響シグナル)の振幅は、生理学的に特異的な光吸収コントラストを明らかにする。次いで、標的とされた組織試料の2Dまたは3Dのイメージが形成され得る。光学的に高度に透明である組織試料の使用は、バックグラウンドノイズを増加させるレーザー光の散乱が低減することを確実にし得る。
さらなる局面において、本発明は、光学分析用の生体組織試料を調製するための自動化または半自動化されたシステムに関する。具体的には、試料は、調製された試料の体積および/または形態の、元の組織の体積または形態からのずれが、低減するかまたは最小化されるように、調製される。当該システムは、
− 第1の固定溶液を用いて固定された、固定された組織試料を受け取る工程;
− 固定された組織試料を、試料の膨張を誘導するのに適したカオトロピック剤を含む脱脂溶液に浸漬する工程;
− 組織試料を1種または複数種の染色溶液を用いて染色する工程;
− 染色された組織試料を、試料の収縮を誘導するのに適した有機脱水溶液中で脱水する工程;および
− 固定された組織試料を有機透明化溶液に浸漬する工程
のために構成されている。
態様によると、システムは、さらに、(試料調製方法のさらなる工程に相当する)以下の工程を実施するために構成されている:
− 脱脂溶液を洗浄除去する工程;
− 後続の工程における染色分子の非特異的結合を最小化するため、脱脂溶液を洗浄除去した後に、試料をブロッキング溶液に浸漬する工程;
− 染色溶液を洗浄除去する工程。
態様によると、システムは、脱脂溶液、1種または複数種の染色溶液、第2の固定溶液、有機脱水溶液、および有機透明化溶液を含む複数の溶液の各々のための試薬容器を含む。態様によると、システムは、1種または複数種の洗浄緩衝液、付加的な染色溶液、ブロッキング溶液等のための付加的な容器および/またはユニットを含んでいてもよい。試薬容器および/またはユニットの数は、使用される試料調製プロトコルの詳細、例えば、試料を染色するための1種または複数種の染色プロトコルの詳細に依存し得る。
いくつかの第1の態様によると、システムは、試料輸送手段と、試薬容器のうちの1個にそれぞれ連結された複数の試料容器とを含む。システムは、前記の試料調製システムの態様に従って試料が複数の溶液の各々に少なくとも1回浸漬されるよう、試料輸送を半自動的または完全自動的に調整するように構成されている。
別の第2の態様によると、システムは、試薬容器のうちの1個および試料容器にそれぞれ連結された1個または複数個のポンプを含む。システムは、前記の試料調製システムの態様に従って試料が複数の溶液の各々に少なくとも1回浸漬されるよう、ポンプを調整するように構成されている。
いくつかの態様によると、システムは、第1の固定溶液のための試薬容器も含む。いくつかの態様によると、制御ユニットは、組織試料の固定を確実にするために十分な時間、第1の固定溶液に試料が浸漬されるよう、試料輸送を半自動的または完全自動的に調整するように構成されている。別の態様によると、システムは、第1の固定溶液を含む試薬容器にカップリングされたポンプと、組織試料の固定を確実にするために十分な時間、第1の固定溶液に試料が浸漬されるよう、ポンプを調整するように構成されている制御ユニットとを含む。
それぞれの試料容器を含むあるユニットから次のユニットへの組織試料の移動は、手動で、半自動的に、または完全自動的に、試料輸送システムを使用して実施されてよい。同様に、第2の態様によるシステムの単一の試料容器における溶液の交換は、自動的に、半自動的に、または手動で実施されてよい。
システムは、1種または複数種の試料を、脱脂溶液、染色溶液、洗浄溶液、ブロッキング溶液、脱水溶液、および有機透明化溶液に浸漬するため、そして、第2の固定溶液が存在する場合、第2の固定溶液に浸漬するため、1個または複数個の容器を含んでいてよい。システムは、管、ポンプ、および弁を介して、1個または複数個の容器に機能的に接続された、該溶液の各々のためのボトルをさらに含んでいてもよい。システムは、ある試料容器から次の試料容器へ生物学的試料を輸送するための自動輸送手段、例えば、コンベヤーベルトまたはロボットアームをさらに含んでいてもよい。システムは、本発明の態様による試料処理方法が実施されるように、試料輸送手段、ポンプ、および弁の相互作用を調整するのに適した制御ユニットをさらに含む。
さらなる局面において、本発明は、1種または複数種の組織試料を調製するためのキットに関する。キットは、脱脂溶液および有機透明化溶液を含む。脱脂溶液は、5体積%〜30体積%、好ましくは5体積%〜15体積%の少なくとも1種のカオトロピック剤と、5〜30体積%の少なくとも1種の界面活性剤とを含む。
本発明の態様によると、キットは、光学分析用の生体組織試料を調製するのに適している。具体的には、キットは、調製された試料の体積および/または形態の、元の組織の体積または形態からのずれが、低減するかまたは最小化されるように、組織試料を調製するのに適している。
前記の指定された量のカオトロピック剤の使用は、組織試料の有意な膨張および組織の水分過剰を誘導し得るため、有利であり得る。膨張は、染色溶液および脱水溶液の浸透を容易にし、加速し、それによって、最新式の有機透明化プロトコルより速く、後続の工程を実施することを可能にする。
脱脂溶液への界面活性剤の添加は、脂質、具体的には、膜脂質が除去され、それによって、光散乱が低減し、組織試料の透過性が増加するため、有益であり得る。
態様によると、少なくとも1種の界面活性剤は、少なくとも2種の異なる界面活性剤の組み合わせである。具体的には、少なくとも2種の異なる界面活性剤の組み合わせは、トリエタノールアミン(TEA)とツイーン80との組み合わせを含むかまたはそれらからなっていてよい。
本発明の態様による試料調製プロトコルおよびそれぞれのキットによって得られる光学的な組織透明度は、組織透明性および形態学的安定性(確実性)の両方に関して、先行技術より優れていることが観察された。本発明の態様による試料処理方法およびキットは、多くの小型および中型の試料について、特に短い時間で、例えば、2日以内に、優れた屈折率(RI)および均質な組織浸漬を有する試料を作出する。必要とされる総時間は、組織型および試料サイズに依り得る。例えば、マウス全腎臓は、脱脂溶液への3日間の浸漬ならびに脱水溶液および有機透明化溶液への1.5日の浸漬の後に、完全に透明化され得る。対照的に、当技術分野において公知の有機透明化プロトコル、例えば、いくつかのBABBベースの透明化プロトコルは、より大きい光散乱および光吸収を有する試料を提供する。当技術分野において公知の水溶液ベースの透明化プロトコル、例えば、CUBIC-2ベースおよびRIMSベースの透明化プロトコルは、妨害するシュリーレンラインおよび光学収差を引き起こす。
態様によると、カオトロピック剤は、尿素またはチオ尿素である。
複数の他のカオトロピック剤、例えば、n-ブタノール、エタノール、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2-プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウムが公知である。しかしながら、非イオン性カオトロピック剤、具体的には、尿素またはチオ尿素の使用は、組織透過性、膜脂質の除去、および/または浸透圧恒常性に関して、他のいずれのカオトロピック剤より有意に良好な結果を提供することが観察された。例えば、MgClのようないくつかのカオトロピック剤は、不要の浸透圧特性を有する。
態様によると、界面活性剤は、ツイーン(Tween-)80である。別の態様によると、界面活性剤は、トリトンX-100、ツイーン20、もしくは類似の界面活性剤、またはそれらの混合物である。
態様によると、脱脂溶液は、(体積で)5〜30%、好ましくは10〜25%、好ましくは15〜25%、より好ましくは20〜25%のアミノアルコールをさらに含む。
例えば、アミノアルコールは、「Quadrol」として市販されているN,N,N',N',-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンであり得る。
さらなる成分としてのアミノアルコールの使用は、血液の様々な成分、例えば、ヘモグロビンのような強力な吸収剤として機能する分子が、組織試料から除去されるという利点を有し得る。これは、組織試料の吸収を低減し、従って、組織の光学的透明性を増加させるであろう。
好ましい態様によると、脱脂溶液に含まれるアミノアルコールの量は、光学的に分析される予定の組織試料に含有されているヘモグロビンの量と正に相関する。例えば、肝臓試料は、典型的には、大量のヘモグロビンを含み、このケースにおいて、脱脂溶液は、好ましくは約20〜25体積%のアミノアルコールを含む。脳試料は、少量のヘモグロビンのみを含み、アミノアルコールなしの脱脂溶液、または15体積%未満の少量のアミノアルコールのみを含む脱脂溶液によって処理され得る。アミノアルコールの量の低減は、脱脂溶液のコストが低減し、脱脂溶液の粘性も低減するという利点を有し得る。大きいアミノアルコール部分を有する高度に粘性の脱脂溶液は、他の液体、例えば、染色溶液の試料への迅速な浸透を可能にするため、試料から脱脂溶液を除去するため、付加的な時間および努力、例えば、追加の洗浄工程を必要とし得る。当業者は、脱脂溶液に含有されているアミノアルコールの量を、試料に含有されているヘモグロビンの量に適合させることができる。
実験的な試験において、本発明の態様に従って得られたマウス組織試料の大多数が、脱脂溶液がアミノアルコールを含まないケースでさえ、中程度〜高度の光学的組織透明度を示した。しかしながら、肝臓、腎臓、心臓、および脾臓のような天然に大きい割合のヘモグロビンを含む器官においては、アミノアルコールを脱脂溶液に添加することによって、脱脂溶液によって提供される透明化効果が有意に増加し、ヘム関連問題が克服され、ヘム関連問題が克服されるかまたは少なくとも低減した。
態様によると、脱脂溶液は、チオジエタノールをさらに含む。チオジエタノールの脱脂溶液への添加は、組織の透明性をさらに増加させ得ることが観察された。
態様によると、脱脂溶液は、pH値を安定化するのに適した緩衝溶液である。例えば、脱脂溶液は、10×PBS(リン酸緩衝生理食塩水)であり得る。
態様によると、脱脂溶液は、DMSO(ジメチルスルホキシド)をさらに含む。DMSOの脱脂溶液への添加は、粘性が低下し、従って、脱脂溶液を試料に完全に浸透させるために必要とされるインキュベーション時間も低減するという利点を有し得る。これは、大規模な自動試料処理パイプラインの情況において特に有利であり得る。
態様によると、脱脂溶液は、抗微生物剤、例えば、インビトロ診断(IVD)アッセイのための保存剤として適した広スペクトル抗微生物薬をさらに含む。好ましくは、抗微生物剤は、大部分の酵素、抗体結合を阻害せず、ISE電極に干渉しない。そのような抗生剤の例は、SigmaAldrichのProClin 300である。
態様によると、脱脂溶液は、脱脂溶液の浸透圧特性をモジュレートするための塩、例えば、NaClをさらに含む。
一つの態様によると、脱脂溶液は、20体積%の尿素、20体積%のツイーン80、20体積%のQuadrol、20体積%のチオジエタノールを含む。全成分をPBSに溶解させた後に、PBSによって溶液を最終体積にした。好ましい例示的な態様において、脱脂溶液は、ProClin 300または供給元によって推奨される他の抗微生物剤をさらに含む。該組成は、特に高い透明度を有する組織試料を提供することが示された。
別の態様によると、脱脂溶液は、15体積%の尿素、15体積%のツイーン80、15体積%のQuadrol、15体積%のチオジエタノールを含む。全成分をPBSに溶解させた後に、PBSによって溶液を最終体積にした。
別の態様によると、脱脂溶液は、10体積%の尿素、20体積%のQuadrol、5体積%のツイーン80、5%のトリエタノールアミン(TEA)、および5%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。任意で、何らかの組織構造または細胞成分を強調するために使用され得る蛍光色素が、脱脂溶液に添加されてもよい。例えば、脱脂溶液は、細胞核を選択的に染色するのに適した蛍光色素、例えば、ヨウ化プロピジウムを含んでいてよい。一例によると、脱脂溶液は、脱脂溶液1ml当たり約3μgのヨウ化プロピジウムを含む。
脱脂溶液は、全成分をPBS溶液に溶解させ、次いで、このPBS溶液を純粋なPBS緩衝液によって最終体積にすることによって作出されてよい。
例示的な態様において、脱脂溶液は、ProClin 300(例えば、0.5体積%)または供給元によって推奨される他の抗微生物剤をさらに含む。該組成は、インビボ「染色」プロトコルにおいて組織に導入された蛍光シグナルの強度を保存するために特に適した組織試料を提供することが示された。
態様によると、キットは、第1の固定溶液をさらに含む。第1の固定溶液は、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、パラホルムアルデヒド(PFA)、グルタルアルデヒド、およびグリオキサールより選択される固定剤を含む。
態様によると、キットは、PBS中1%のPFAを含む第2の固定溶液をさらに含む。
態様によると、キットは、1種または複数種の脱水溶液、例えば、70%のエタノール、95%のエタノール、および100%のエタノールをさらに含む。
態様によると、キットは、1種または複数種の洗浄溶液および/またはブロッキング溶液をさらに含む。
態様によると、キットは、試料を有機透明化溶液に浸漬し、試料が有機透明化溶液に浸漬されている間に容器中の試料の光学分析を実施するための容器をさらに含む。
いくつかの態様によると、キットは、一般用であり、光学分析用の多くの異なる型および種の組織試料を調製するためのものである。他の態様によると、キットは、特定の組織型および/または特定の種に特異的である。
態様によると、キットは、1種または複数種の染色溶液を含む。いくつかの態様によると、染料は、抗体ベースであり、即ち、染料をバイオマーカーに選択的に付着させるために1種または複数種の抗体を使用する。他の態様によると、1種または複数種の染色溶液の中の染料は、抗体ベースの蛍光染料ではなく、蛍光Fab2断片または蛍光量子ドット(QD)である。QDは、わずか数ナノメートルのサイズの極めて小さい半導体粒子であり、小さいために光学的特性および電子的特性がより大きい粒子のものと異なる。それらはナノテクノロジーにおける中心テーマである。多くの型の量子ドットが、電気または光が適用された場合に特異的な周波数の光を放射し、これらの周波数は、ドットのサイズ、形状、および材料を変化させることによって正確に調整され得る。小さいサイズのため、本発明の情況におけるナノドットの使用は、染色中のインキュベーション時間をさらに低減し、それによって、透明化プロトコルを実施するために必要な時間の量を低減することを可能にするため、特に有益であり得る。
態様によると、染色溶液は、発色染料を含む。
他の態様によると、染色溶液は、蛍光染料を含む。
実験的な試験において、マウス組織試料のいくつかの組織標的を、本発明の態様の組織調製方法に従って透明化されたマウス腎臓の連続組織スライス切片において、発色ベースおよび蛍光ベースのIHCプロトコルの両方によって染色した。得られた染色は、発色染色プロトコルと免疫蛍光染色プロトコルとの間で、組織形態および標的特異性に関する有意な差を示さなかった。さらに、同一のマウス器官または腫瘍異種移植片の透明化された組織切片および透明化されていない組織切片からの発色組織染色の比較は、H&E染色、トリクローム染色、CD31染色、および150 Ki67染色の特異性の差を例示的に示さなかった。シグナル強度の極わずかな低減が、透明化された組織スライス切片において観察された。
「試料」または「組織試料」とは、本明細書中で使用されるように、生物から取り出された組織片、例えば生検材料、またはある生物の器官全体、またはさらには生体全身である。例えば、器官全体試料は、成体のマウスまたはラットの肝臓全体、脳全体、肺全体、または心臓全体であり得る。生体全身試料は、例えば胚であり得る。
「元の組織」とは、本明細書中で使用されるように、本発明の態様のために本明細書中に記載されている試料調製方法が適用される前の状態の組織である。例えば、「元の組織」は、第1の固定溶液に浸漬される前の状態の組織試料であってもよく、例えば、さらなる処理のためにPBSまたは他の緩衝液に保管されている組織試料であってもよい。他の態様においては、「元の組織」は、生物から試料を得る前または得た直後の状態の組織をさす。
「カオトロピック剤」とは、水素結合、ファンデルワールス力、および疎水性効果のような非共有結合性の力によって媒介される分子内相互作用に干渉することによって、系のエントロピーを増加させる物質である。カオトロピック溶質は、タンパク質に隣接している水分子の無秩序化のため、疎水性領域の正味の疎水性効果を減少させることができる。これは、疎水性領域を溶液に可溶性にし、いくつかのケースにおいて、タンパク質を変性させることができる。カオトロピック剤は、電荷を遮蔽し、塩ブリッジの安定化を防止し得る。従って、「カオトロピック剤」とは、本明細書中で使用されるように、具体的には、水に溶解した時に水分子間の水素結合ネットワークを破壊することができる(即ち、カオトロピック活性を発揮する)分子である。これは、疎水性効果を弱めることによって、溶液中の他の分子、主に、高分子(タンパク質、核酸)のネイティブ状態の安定性に対して効果を及ぼす。例えば、カオトロピック剤は、バルクおよび疎水性アミノ酸周囲の水和殻の両方において、水分子によって形成されたタンパク質構造内の秩序の量を低減し、その変性を引き起こし得る。
いくつかの態様によると、「カオトロピック剤」は、元の試料の体積の少なくとも15%だけ、または元の試料の体積の少なくとも20%だけ、試料の体積の膨張を誘導するのに適した物質である。例えば、「カオトロピック剤」は、3日未満の間、約5(体積)%のカオトロピック剤を含む溶液に試料を浸漬した後、元の試料の体積の少なくとも15%だけ、具体的には、元の試料の体積の少なくとも20%だけ、試料の体積の膨張を誘導するのに適した物質である。
好ましくは、カオトロピック剤は、尿素およびチオ尿素のような非イオン性カオトロピック剤である。
他の態様によると、カオトロピック物質は、グアニジウム塩、例えば、グアニジウム塩化物、グアニジウム塩酸塩、またはグアニジウムチオシアン酸塩の形態で提供されるイオン性カオトロピックグアニジウムである。
グアニジウムは、その末端の周囲に弱い水素結合を形成することができるが、一般的に見出される四次構造アルギニン-カルボン酸「塩」結合のような、タンパク質カルボン酸基との強力に維持された水素結合イオン対を確立することができる平面状のイオンである。分散した正電荷のため、窒素原子は不十分な水素結合アクセプターである。また、グアニジウムは、類似のタンパク質表面と相互作用してタンパク質変性を可能にすることができる極めて疎水性の表面を保有している。
該カオトロープは、水素結合を弱めることによって、より多くの構造的自由を高分子に与え、タンパク質の伸張および変性を助長するという利点を有する。尿素は、十分な水の非存在下で、それ自体および存在する任意のタンパク質と水素結合する。それによって、より疎水性になり、従って、タンパク質上のさらなる部位と相互作用することができるようになり、限局性の脱水によってもたらされる変性をもたらす。さらに、尿素およびチオ尿素は、タンパク質表面からの水に取って代わり、それを除去し、それによって、タンパク質を変性させるためにも適している。尿素およびグアニジウムの両方が、内因的に無秩序のタンパク質の回転半径を増加させる。従って、前述の物質は、タンパク質を変性させるために特に適している。
さらに有益な局面において、該物質は、脱脂溶液の粘性を有意に増加させない。従って、脱脂溶液を非粘性に維持しながら、強力なタンパク質変性およびタンパク質伸張の効果を達成することが可能である。非粘性液体は、試料の取り扱いおよび処理を容易にし、脱脂溶液を試料から迅速に除去することを可能にし得る。
いくつかの態様によると、「カオトロピック剤」は、20℃で少なくとも100g/lの水溶性を有する極性物質である。
「脱脂溶液」とは、本明細書中で使用されるように、組織試料中の脂質の量を低減するのに適した少なくとも1種のカオトロピック剤と界面活性剤とを含む水性溶液である。
「水性透明化溶液」とは、本明細書中で使用されるように、水性透明化溶液に浸漬された組織試料の光散乱を低減するのに適した少なくとも1種の界面活性剤を含む水性溶液である。有機溶媒ベースの透明化方法の代替法として使用される水性組織透明化プロトコルにおいて使用される様々な水性透明化溶液、例えば、「CUBIC-1」が存在する。水性透明化溶液は、親水性透明化溶液、即ち、親水性物質を単独でまたは主に含む水性溶液であり得る。例えば、水性溶液は、水、1×PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、もしくは10×PBSもしくはPBST(トゥイーンを含むPBS)、または少なくとも1種の界面活性剤を含む類似の緩衝液であり得る。反対に、本発明の態様による「有機溶液」とは、有機溶媒、または有機溶媒から基本的になる溶液である。従って、「有機透明化溶液」は、組織透明化溶液として適合しており使用される、有機溶媒、または有機溶媒から主になる溶液である。透明化溶液として使用するのに適した溶液は、組織試料を透明化溶液に浸漬することによって、組織試料を半透明またはさらには透明にするのに適している。広く使用されている有機透明化溶液は、BABBである。
「組織の灌流」とは、特定の器官の血管または他の腔に液体を通す行為である。
「キット」とは、本明細書中で使用されるように、キットに基づく実験ワークフローの同定および開発をもたらした伝統的な実験実務より迅速である、極めて標準的な条件における実験ワークフロー(例えば、試料調製ワークフロー、またはその一部、例えば、試料染色ワークフローもしくは試料透明化ワークフロー)を実施するために設計されており、その実施を可能にする溶液の組成物である。
「調製された試料の体積および/または形態の、元の組織の体積または形態からのずれが低減するように、試料を調製する」という表現は、本明細書中で使用されるように、本明細書中に記載された組織調製方法の態様によって与えられる体積/形態変化が、最新式の有機溶媒ベースの透明化方法によって与えられる体積/形態変化より小さいことを意味する。
さらなる局面において、光学分析に供された試料のシグナルノイズ比が増加するように、組織試料を調製する方法が、本明細書中に記載される。本方法は、以下の工程を含む:
− 組織試料または選択されたその成分の染色のために使用される予定の染料によって生成される光シグナルの波長を同定する工程;
− 同定された波長を含む波長域の光を試料に照射して、該波長域における試料の自己蛍光を選択的に除去または低減する工程。
該プロセスは、本明細書中で「選択的光退色」とも呼ばれる。例えば、染料は、蛍光染料であってよく、特定の波長は、染料の放射波長、または染料の複数の放射波長のうちの一つである。例えば、特定の波長は、最も強力なシグナルを与える染料の複数の放射波長のうちの一つであり得る。例えば、波長域は、最も強力なシグナルを与える染料の波長に50nmを加え、50nmを引くことによって決定され、その加法および減法の結果が、波長域の境界を提供する。態様によると、方法は、染料によって組織試料を染色する工程をさらに含む。例えば、染料は、特定のバイオマーカー、例えば、特定のタンパク質、または特定の核酸配列に選択的に結合するのに適していてよい。態様によると、選択的光退色は、組織試料を透明化するための試料調製ワークフローにおける一工程として使用され得る。
さらなる局面において、本発明は、組織試料の光学的透明性が増加するように、光学分析用の生体組織試料を調製する方法に関する。本方法は、(a)組織試料を第1の固定溶液を用いて固定する工程;(b)固定された組織試料を、試料の膨張を誘導するのに適したカオトロピック剤を含む脱脂溶液に浸漬する工程;(d)組織試料を1種または複数種の染色溶液を用いて染色する工程;(f)染色された組織試料を、試料の収縮を誘導するのに適した有機脱水溶液中で脱水する工程;および(g)固定された組織試料を有機透明化溶液に浸漬する工程を含む。
さらなる局面において、本発明は、光学分析用の生体組織試料を調製するための自動化または半自動化されたシステムに関する。具体的には、試料は、組織試料の光学的透明性が増加するように、調製される。システムは、第1の固定溶液を用いて固定された、固定された組織試料を受け取ること;固定された組織試料を、試料の膨張を誘導するのに適したカオトロピック剤を含む脱脂溶液に浸漬すること;組織試料を1種または複数種の染色溶液を用いて染色すること;染色された組織試料を、試料の収縮を誘導するのに適した有機脱水溶液中で脱水すること;および固定された組織試料を有機透明化溶液に浸漬すること、のために構成されている。
さらなる局面において、本発明は、光学分析用の組織試料を調製するためのキットに関する。具体的には、試料は、組織試料の光学的透明性が増加するよう調製される。キットは、脱脂溶液および有機透明化溶液を含む。脱脂溶液は、5体積%〜30体積%、好ましくは5体積%〜15体積%の少なくとも1種のカオトロピック剤と、5〜30体積%の少なくとも1種の界面活性剤とを含む。
調製された試料の体積および/または形態の、元の組織の体積または形態からのずれが、最小化されるかまたは低減するように、光学分析用の生体組織試料を調製するのに適しており、そのために構成された方法、システム、およびキットに関して本明細書中に記載された全ての特色および態様が、組織試料の光学的透明性が増加するように、光学分析用の生体組織試料を調製するのに適しており、そのために構成された方法、システム、およびキットと自由に組み合わせられてよい。
以下のような図面を参照しながら、本発明の態様を、例としてのみ、以下により詳細に説明する。
光学分析用の生体組織試料を調製する方法を示す。 図1の方法において使用するための様々なキットを示す。 自動的または半自動的に組織試料を調製するように構成された2種の試料調製システムを示す。 従来の透明化プロトコルによって透明化された組織試料と、本発明の態様による方法によって透明化された組織試料との比較を示す。 光シート顕微鏡および試料を含む浸漬チャンバーを示す。 3D蛍光病理組織学ワークフローを示す。 脱脂溶液への浸漬を欠く有機透明化プロトコルの異なる段階における様々な型のマウス組織試料を示す。 様々な脱脂溶液を使用したときに得られた組織透明化効果を図示する。 図9は、複数の新鮮な未灌流の組織試料の写真、ならびに水性透明化溶液および有機溶媒ベースの透明化溶液の両方への浸漬の後の該試料の写真を示す。ここで、水性透明化溶液は、様々な濃度のカオトロピック剤尿素を有する。 図9Aの続きを示す。 複数の試料処理工程および透明化工程の各々の後の複数の組織試料の写真を示す。
図1は、光学分析用の生体組織試料を調製するために使用される透明化プロトコル100の工程を示す。
本発明の態様は、試料の高い透明度を達成し、それと同時に、試料の体積および形態を維持するため、試料の膨張および予備透明化を誘導することができる水溶性脱脂溶液と、有機脱水溶液および有機透明化溶液との組み合わせを使用することができる。さらに、染色工程後の付加的な固定工程は、インビボで取り込まれた蛍光染料のシグナル強度の保存を支援することができる。従って、本発明の態様は、組織内の選択された標的構造の蛍光物質による標識を可能にし、試料全体透明化ワークフロー中のこれらの染料の保存を可能にすることができる。
いくつかの実験設定において、任意選択のインビボ染色工程が実施されてもよい。例えば、蛍光分子がインビボで試験動物に導入されてもよい(シグナル1)。蛍光分子は、遺伝子工学によって生物に導入された蛍光レポータータンパク質であってよい。さらに、または、あるいは、蛍光分子は、生存している生物、例えば、実験動物に注射または他の方法で適用された蛍光標識された薬物または代謝物質であってよい。他の実験設定において、生物は、試料が採取される時、蛍光標識された分子を含まない。
インビボ染色は、様々な生物医学的設定において有用な技術であり得る。一例(同所性肺癌異種移植片)によると、腫瘍を保持する動物に由来する組織試料を、以下のように作出することができる:SCIDマウスにおいて、NSCLC細胞(3×10e6細胞/100μl PBS)の尾静脈注射によって、同所性肺癌異種移植片を作出する。循環する腫瘍細胞は、肺に定着し、増殖し始める。腫瘍細胞型に特異的な時間の後、例えば、25日後に、腫瘍は、さらなる調査のための最適サイズに到達する。動物は、100μgのレクチン-AlexaFluor647の静脈内尾静脈注射を受け、5分間のインキュベーションの後、安楽死させられる。次いで、肺を、肺器官全体のエクスビボ分析のため、外植することができる。あるいは、肺の一部を採取してもよい。さらに、腫瘍なしの動物に由来する組織を、対照として得ることができる。例えば、SCIDマウスに、100μgのレクチン-AlexaFluor647を尾静脈を介して静脈内注射することができる。5分間のインキュベーションの後、動物を安楽死させ、異なる器官および組織の試料を、エクスビボ分析のための組織試料の生成のため、外植する。
組織試料は、ヒトまたは非ヒト動物の組織試料であり得る。組織試料は、例えば、生検試料、組織の薄いスライス切片、器官全体組織試料、またはさらには生体全身試料、例えば、胚もしくは小型哺乳類であり得る。試料は、組織バンクまたは他の起源、例えば、冷却試料保管ユニットから回収されてもよい。試料は、試料保管ユニットにおいて、緩衝液、例えば、PBSに浸漬され、約4℃以下で保管されていてよい。
次いで、次の工程102において、この組織の状態は、第1の固定溶液、例えば、様々な標準的な透明化プロトコルにおいて使用されているホルマリンベースの固定溶液に、試料を浸漬することによって保存される。この工程の継続時間は、組織試料の型およびサイズに依り得る。組織試料は、暗所で4℃で約24時間、第1の固定溶液中でインキュベートされ得る。これらの条件は、多くの異なる組織型のため、直径1cmまでの試料のため、適用可能であることが観察された。例えば、より小さい組織のため、インキュベーション時間を低減することが可能であり得る。第1の固定溶液は、比較的低い濃度の固定剤、例えば、約10%の緩衝ホルマリンを有していてよい。
後続の工程104において、試料は、水性脱脂溶液に浸漬される。脱脂溶液は、組織の水分過剰および有意な膨張を誘導するのに適したカオトロピック剤を含む。これは、組織を液体に対してより透過性にし、有機透明化溶液の試料への拡散による組織試料の透明化を容易にし、加速する。さらに、脱脂剤は、組織からの光散乱を誘導する多くの生体分子、特に、膜脂質を除去するのに適した界面活性剤を含む。脂質の除去は、さらなる物質、例えば、染料、固定溶液、脱水溶液、および有機透明化溶液に対する組織の透過性をさらに増加させる。脱脂溶液のさらなる成分、具体的には、アミノアルコールは、さらなる吸収性成分、具体的には、ヘム基のような血液成分を組織試料から除去し、それによって、試料の透明度をさらに改善することができる。従って、工程104の結果は、元の組織試料より大きい光学的透明性(低減した光散乱)を示す、膨張した予備透明化された組織試料である。
いくつかの態様によると、蛍光核マーカー分子が、脱脂溶液に含有されていてもよい。核マーカー分子は、細胞核を選択的に染色するのに適している。従って、脱脂溶液は、細胞核の検出および可視化を可能にするさらなるシグナル(「核シグナル」)を組織試料に導入するために使用されてもよい。蛍光核マーカーの例は、例えば、Satoshi Nojima et al.:「CUBIC病理学:病理学的診断のための三次元イメージング(CUBIC pathology:three-dimensional imaging for pathological diagnosis)」Scientific Reports,24 August 2017に記載されている。脱脂溶液の成分としての核マーカーの添加は、追加の染色工程を省くことができ、従って、試料調製手法を有意に加速することができる。
1cm3までのサイズの組織試料(例えば、マウス器官全体試料またはヒト患者の大きい生検材料)は、25〜37℃の温度で、好ましくは1〜4日間、脱脂溶液に浸漬される。より高い温度は、より良好な透明化を提供するが、試料中にインビボ染料が存在する場合、そのシグナル強度を低減し、いくつかのタンパク質およびバイオマーカーの部分的な変性をもたらし、従って、いくつかのエピトープを破壊し、該エピトープの検出を困難にする可能性がある。
試料の脱脂溶液への浸漬は、ある種の波長域において自己蛍光を大きく増加させることが観察された。これは、バックグラウンドに対する組織試料の全体コントラストを改善し、組織試料の境界を容易に検出することを可能にするため、有益であり得る。しかしながら、増加した自己蛍光は、工程108において導入される蛍光染料および/またはインビボ染料として既に導入されている蛍光染料の放射波長域をカバーする可能性があり、それは不要の効果である。このケースにおいては、付加的な工程106が、任意で、実施されてよい。
工程106は、「選択的光退色」とも呼ばれ、工程108において導入される予定の1種または複数種の蛍光染料および/またはインビボ染色アプローチによって既に導入されている1種または複数種の蛍光染料の放射波長域における組織試料への選択的な高輝度照射を含む。選択的光退色は、調査される予定の蛍光染料の放射波長域において選択的に自己蛍光を低減することができる。従って、本発明の態様は、調査される予定の蛍光染料の放射波長域に相当する波長域において選択的に自己蛍光を低減することによって、増加した自己蛍光(組織試料境界のより良好な同定)を活用すること、同時に、高いシグナルノイズ比を確実にすることを可能にすることができる。
例えば、1ワット以上、好ましくは約2ワットの電力を有する光源、例えば、レーザーを使用することができる。光源の光は、約545nmの光が試料を通過することを可能にするフィルターを使用して、約10秒間、試料に適用される。光シートが試料を一方向に走査するよう、各層において、約10秒間、光シート顕微鏡によって、前述のフィルタリングされた光源が各試料に照射された。
脱脂溶液によって誘導された増加した組織透過性のため、工程108における染色手法は、単純な高速の試料浸漬プロトコルに従って実施され得る。工程102〜104に従って固定され脱脂溶液に浸漬され、任意で、選択的光退色を受けた1種または複数種の試料が、1種または複数種の染色溶液に浸漬される。例えば、染色溶液は、直接(蛍光)標識された一次抗体をそれぞれ含む1種または複数種の溶液であり得る。より少数の染色工程および染色溶液の交換が必要とされ、それによって、試料調製ワークフローの性能が増加するため、これは有利であり得る。単純に、試料を1種または複数種の染色溶液へ浸漬することによって、多数の組織試料を迅速に染色することが可能であり得る。工程108は、細胞によって発現された異なるバイオマーカー、例えば、異なるタンパク質に選択的に結合するのに適した異なる蛍光マーカーを含む複数の異なる染色溶液への試料の浸漬を含むことが可能である。脱脂溶液によって誘導された増加した組織透過性のため、染色手法は、複雑な試料灌流作業を必要としないため、プロセス自動化のために適当な単純な浸漬プロトコルとして実施され得る。さらなる有益な局面において、染色溶液中での試料のインキュベーション時間は、膨張した脱脂された組織試料の増加した透過性のため、最新式の有機組織透明化プロトコルより有意に短い。典型的には、最新式の方法に基づく大きい試料の調製および染色は、1〜2週間を必要とするが、本発明の態様によれば、比較可能なサイズの試料を4〜5日以内で調製し染色することができる。
次に、工程110において、組織試料のさらなる固定が、任意で、実施されてもよい。この工程は、工程108において1種または複数種の染色溶液によって組織試料に導入されたマーカー分子を固定するために実施される。この追加の固定工程は、付加的な時間を必要とし、従って、ワークフローをわずかに減速させ得るが、付加的な固定工程は、多くの標識されたマーカー分子が脱水工程112において洗浄除去されないよう保護し得ることが観察された。さらに、付加的な固定工程110は、蛍光染料のシグナル強度を有意に低減することなく、後続の工程112において特に苛酷な脱水プロトコルを適用することを可能にし得る。
工程112において、本明細書中で「洗浄溶液」とも呼ばれる一連の脱水溶液に、組織試料を複数回浸漬することによって、組織の段階的な脱水が実施される。一連の脱水溶液は、液体組織試料部分のRIを有機透明化溶液のRIに徐々に適合させるため、組織中の水に取って代わるため、増加する濃度の有機溶媒、例えば、エタノールを有する一連の水-溶媒混合物からなっていてよい。脱水は、組織試料の段階的な収縮をもたらし、それによって、脱脂溶液によって誘導された組織の膨張を補償する。洗浄工程が完了し、組織試料が最大の可能な濃度の有機脱水溶液を含むようになった時、試料の収縮が止まり、それによって、試料が由来した生存生物におけるそれぞれの組織の体積および/または形態と同一であるかまたは極めて類似している体積および/または形態の組織試料を提供するであろう。
例えば、組織試料は、段階的なエタノール系列において試料をインキュベートすることによって脱水され得る(70%エタノール溶液中で3回、95%エタノール溶液中で2回、および100%エタノール中で2回、各30分間)。
例えば、「脱水溶液」とも呼ばれる脱水溶液210は、水と有機溶媒、例えば、エタノールとの混合物からそれぞれなる一連の溶液を含んでいてよい。メタノールも、脱水溶液の有機成分として使用され得る。脱水手法によって誘導される蛍光シグナル強度の減少は、脱水溶液において使用されたこれらの有機化合物の各々について許容されることが見出された。
tert-ブタノール、BuOH(ブタノール)、THF(テトラヒドロフラン)のような別の脱水溶液も使用され得る。しかしながら、それらは、好ましくは脱脂溶液と組み合わせられた場合に、試料の形態が元の組織の形態に相当するように、典型的には不要の、組織の収縮効果を誘導することができるべきである。
次に、工程114において、組織試料は、有機透明化溶液、例えば、BABBに浸漬される。好ましくは、有機透明化溶液の成分、例えば、BAおよびBBの濃度は、有機透明化溶液のRIが、現在処理されている組織試料が由来した組織の型の透明化された組織試料に典型的なRIと同一になるかまたは類似するよう選択される。本明細書中に記載される試料処理ワークフローによって生成された組織試料は、最新式のアプローチによって処理された試料より大きい光学的透明度および透明性を有し得る。さらに、該試料は、生存生物における元の組織の体積および形態を忠実に再現する体積および形態を有するであろう。さらに、試料の処理は、現在の有機試料処理ワークフローより少ない時間および手動相互作用を必要とし得る。
例えば、脱水された組織試料は、1部のベンジルアルコールと2部の安息香酸ベンジルとからなる有機溶媒溶液(BABB、Sigma-Aldrich)に置かれ、暗所で4℃で少なくとも2日間インキュベートされてよい。しかしながら、継続時間は、組織試料の形およびサイズに強く依り得る。極めて大きい緻密な組織試料は、24時間を超える時間を必要とするかもしれず、より小さい試料は、12時間以下しか必要としないかもしれない。
次に、工程116において、透明化された組織試料は、光学的試料分析方法、例えば、3D光シート蛍光顕微鏡によって分析される。この顕微鏡または他の型の光学的試料分析装置によって得られたイメージは、イメージ処理ワークフローにおいて処理され、組織試料の部分構造の3Dモデルを生成し表示するために使用される。具体的には、3D可視化は、マーカー特異的染料および/または核特異的染料および/またはインビボ染料によって選択的に標識され染色された1種または複数種の標的構造または標的細胞集団の3D可視化のために利用され得る。
例えば、光学的に透明な組織試料は、試料ホルダーに置かれ、イメージングチャンバーに移され、(例えば、LaVision BioTecからの)市販の光シート顕微鏡によって三次元的に走査され得る。既存の光シート幾何学と比較して、BTLSFMは、数ミリメートルからセンチメートルサイズまでの大きい光学透明標本の均質なインフォーカス面照射のため、6種(各側から3種)の収束レーザー光シートの両側照射を使用する。この幾何学は焦点外領域からの光散乱および光退色を最小限にまで低減し、極めて高速のスティッチングなしのデータ取得を可能にする。放射された蛍光は、大きい視野(ピクセル:2560×2160)と組み合わせて高い感度および分解能を提供するsCMOSカメラによって、平行レーザービームに垂直に検出される。平行光シートを通して垂直に透明組織試料中を進むことによって、光学的切片化が実施され、得られた仮想組織スライス切片のzスタックが、細胞レベルの分解能での二次元および三次元の組織分析のために使用される。この照射幾何学は、大視野カメラと共に、6ミリメートルの深さ(z方向)まで、xy方向での大きい光学透明組織試料の高速のスティッチングなしの測定を可能にする。
全体スキャンおよび10倍(xy分解能:0.6μm)の全体倍率による高分解能スキャンを、単細胞分解能で詳細な組織情報を受け取るために実施することができる。組織自己蛍光(励起:543/22nm;放射:593/40nm)および染色工程において適用された様々な蛍光染料からの蛍光シグナルを、光学透明組織試料についてイメージングすることができる。その後、生成されたイメージデータを、Digital Imaging and Communications in Medicine(DICOM)ファイルに変換し、既存のソフトウェアソリューション、例えば、OsiriXソフトウェア(Pixmeo,Bernex,Switzerland;オープンソースソフトウェア)を使用して可視化した。さらに、または、あるいは、ImageJ(オープンソースソフトウェア)およびGNU Image Manipulation Program(GIMP、オープンソースソフトウェア)を、3Dイメージングのために使用することができる。
図2は、図1の方法において使用するための様々なキットを示す。例えば、「ミニマリストキット214」は、脱脂溶液204および有機透明化溶液212のみからなっていてよい。他のキット216、218、220、222は、1種もしくは複数種の付加的な溶液、例えば、第1の固定溶液202、第2の固定溶液208、1種もしくは複数種の脱水溶液210、および/または1種もしくは複数種の染色溶液206を含んでいてよい。
例えば、脱脂溶液204は、(体積で)約10%のカオトロピック剤尿素、20〜25%のQuadrol、5%のツイーン80、5%のTEA、および5%のDMSOを含む10×PBS緩衝液であり得る。溶液204は、色素、例えば、ヨウ化プロピジウム、および/または抗微生物剤をさらに含んでいてもよい。
染色溶液206は、1種または複数種の蛍光マーカー、例えば、量子ドットまたは抗体を含んでいてよく、いくつかの特定の可視化系において必要とされ得るペルオキシダーゼ溶液のような補助溶液も含んでいてよい。
いくつかの態様によると、キットは、「研究用キット」として、かつ/または「臨床用」キットとして提供される。「研究キット」のボトルの設計およびサイズは、手動で実行されるかまたは部分的にのみ自動化されたワークフローにおいて、限定された量の組織試料が透明化される、研究実験室または他の実験室の情況において使用するのに適していてよい。「臨床用キット」のボトルの設計およびサイズは、完全自動化または半自動化されたワークフローにおいて大量の組織試料が透明化される、大きい前臨床実験室、臨床実験室、および診断実験室の情況において使用するのに適していてよい。例えば、「臨床用キット」のボトルの設計は、例えば図3Aおよび3Bにおいて図示されている自動化された試料前処理および透明化システムの各スロットにボトルを挿入することを可能にしてよい。
図3Aは、本発明の態様のために本明細書中に記載されている試料調製方法に従って自動的または半自動的に組織試料を調製するように構成されている試料調製システム302を示す。試料調製システムは、ユニット310、312、314、316、318、320、326、306、322の各々を含むモノリシック装置であってよく、任意で、308も、統合された装置部品である。あるいは、試料調製システムは、前述のユニットのうちの1種または複数種が別々の機器または装置に相当する分散型モジュラーシステムであってもよい。あるユニットから次のユニットへの試料の輸送は、コンベヤーベルトおよび/もしくはロボットアームによって完全自動で実施されてもよいし、またはヒト使用者によって手動で実施されてもよい。1個もしくは複数個の輸送または他のワークフロー工程にのみヒトの介入が必要とされ、ワークフロー工程の大多数が自動的に実施されるような半自動的に、輸送を実行することもできる。試料調製システム302は、制御ユニット320、例えば、制御コンピューター、または、例えば、マイクロチップの形態を有する埋め込み装置を含むかまたはそれらに機能的に連結されていてよい。
使用者は、第1の固定が行われる第1の固定ユニット308から、試料調製システムのローディングユニット306へ手動でまたは自動的に輸送される、固定された組織試料を生成するため、1種または複数種の組織試料301を第1の固定溶液202に浸漬することができる。前記パラグラフにおいて記述されたように、いくつかの別の態様において、第1の固定ユニット308は、試料調製システム302の統合された一部分であってもよい。
試料調製システム302は、試料ローディングユニット306を介して、1種または複数種の固定された試料を受け取り、ユニット310に浸漬された試料の第1の試料容器C1において試料を浸漬する。容器C1は、脱脂溶液204を含む。制御装置326は、本発明の態様のために本明細書中に記載されているように、例えば、図1、工程104の説明に記載されるように、試料浸漬ユニット310が1種または複数種の試料を脱脂溶液に浸漬することを引き起こす。
光退色ユニット312は、任意選択の部品である。制御ユニットは、試料輸送ユニット211、例えば、コンベヤーベルトおよび/または1種もしくは複数種のロボットアームへ、輸送ユニットが1種または複数種の組織試料を試料浸漬ユニット310から光退色ユニット312内の容器C2へ輸送することを引き起こすのに適したコマンドを、送るように構成されていてよい。あるいは、光退色ユニットは、試料浸漬ユニットまたは染色ユニット314の統合された一部分であってもよく、容器C1またはC3に含有されている1種または複数種の試料に対して光退色を実施するのに適している。制御ユニットは、本発明の態様のために本明細書中に記載されているように、例えば、図1、工程106の説明に記載されるように、1種または複数種の試料の光退色を実施するためのコマンドを、光退色ユニットに送るのに適していてよい。
制御ユニットは、1種または複数種の組織試料を、試料浸漬ユニット310から、または光退色ユニット312が存在する場合、光退色ユニット312から、染色ユニット314内の容器C3へ輸送するためのコマンドを、試料輸送ユニット211に送るためにさらに構成されていてよい。容器C3は、染色溶液または染色プロトコル206において必要とされる溶液をそれぞれ含む1個または複数個の容器からなっていてよい。制御ユニットは、例えば、試料を、予定された時間、それぞれの染色溶液に浸漬し、次いで、染色溶液を交換するか、または、その後、異なる染色溶液を含む異なる容器C3に試料を投入することによって、本発明の態様のために本明細書中に記載されているように、例えば、図1、工程108の説明に記載されるように、1種または複数種の染料、具体的には、蛍光染料によって1種または複数種の試料を染色するためのコマンドを、染色ユニットに送るのに適していてよい。
制御ユニットは、1種または複数種の組織試料を染色ユニットから任意選択の第2の固定ユニット314内の容器C4へ輸送するためのコマンドを、試料輸送ユニット211に送るためにさらに構成されていてよい。容器C4は、染色ユニット314において組織試料に適用されたマーカーを固定するのに適した第2の固定溶液208を含んでいてよい。制御ユニットは、本発明の態様のために本明細書中に記載されているように、例えば、図1、工程110の説明に記載されるように、1種または複数種の試料を第2の固定溶液に浸漬するためのコマンドを、第2の固定ユニット316に送るのに適していてよい。
制御ユニットは、1種または複数種の組織試料を、第2の固定ユニット316が存在する場合、第2の固定ユニット316から、または染色ユニット314から、脱水ユニット318内の1個または複数個の容器C5へ輸送するためのコマンドを、試料輸送ユニット211に送るためにさらに構成されていてよい。容器C5は、1種または複数種の脱水溶液210、例えば、水とエタノールとの混合物を含んでいてよい。制御ユニットは、試料が、最初に、比較的低い含量の有機溶媒(例えば、70%エタノール、95%エタノール、および100%エタノール)を含む脱水溶液に浸漬され、次いで、増加した含量の有機溶媒を有する1種または複数種のさらなる洗浄溶液に浸漬され、最後に、高い含量の有機溶媒、例えば、100%エタノールを含む洗浄溶液に浸漬されるよう、1種または複数種の試料を複数の脱水溶液に浸漬するためのコマンドを、脱水ユニットに送るのに適していてよい。本発明の態様のために本明細書中に記載されているように、例えば、図1、工程110の説明に記載されるように、試料の洗浄が実施され得る。
制御ユニットは、1種または複数種の組織試料を脱水ユニットから透明化ユニット314内の容器C6へ輸送するためのコマンドを、試料輸送ユニット211に送るためにさらに構成されていてよい。容器C6は、有機透明化溶液212、例えば、BABBを含んでいてよく、その組成は、好ましくは、有機透明化溶液のRIが特定の組織型の洗浄された組織試料のRIと同一になるかまたは極めて類似するよう適合している。例えば、容器C6は、顕微鏡の浸漬チャンバーであってもよいし、または、使用者が、透明化された試料を顕微鏡へ運搬し、顕微鏡の浸漬チャンバーに挿入することを可能にする運搬容器であってもよい。制御ユニットは、本発明の態様のために本明細書中に記載されているように、例えば、図1、工程114の説明に記載されるように、1種または複数種の試料を有機透明化溶液に浸漬するためのコマンドを、透明化ユニット320に送るのに適していてよい。システムは、図2に示されるような試薬および溶液を含むボトル、ならびに溶液をそれぞれの容器へ協調的に送り込むための制御装置によって制御された様々なポンプをさらに含んでいてよい。
試料調製システムは、1つまたは複数の試料分析システム304(具体的には光学分析システム、例えば、光シート顕微鏡、ラマン分光計等)において分析され得る透明化された組織試料301'を提供するために使用され得る。試料301'は、試料輸送ユニットによって自動的に、または使用者によって手動で、試料分析システムに輸送されてよい。
図3Bは、試料調製システム352の別の態様を図示する。システム352は、図3aに図示されたシステムより少数の試料容器を含む。例えば、システム352は、単一の浸漬ユニット354の単一の試料容器C0を含んでいてよい。浸漬ユニットは、1個または複数個のポンプ213を介して、脱脂溶液204、1種または複数種の染色溶液206、1種または複数種の脱水溶液120、有機透明化溶液212に機能的に連結されており、任意で、第1の固定溶液202および/または第2の固定溶液208にも機能的に連結されている。制御ユニット326は、本発明の態様のために本明細書中に記載されている試料調製方法に従って、ローディングユニット306から浸漬ユニット内の容器C0にロードされる1種または複数種の組織試料301が、溶液204、206、208、120、212に浸漬されるよう、ポンプ213を調整するのに適している。例えば、制御ユニットは、例えば、有機的に透明化された試料301'が得られ、それが試料調製システム352から試料分析システム304へ取り出されるされるまで、最初に、試料を含む容器C0に脱脂溶液が充填され、次いで脱脂溶液が除去され、1種または複数種の染色溶液、第2の固定溶液、一連の脱水溶液、そして最後に有機透明化溶液に交換されるよう、1個または複数個のポンプ213を始動および停止させ、それぞれの試薬ボトル204〜212の弁を開閉することができる。
図3Aに図示された態様は、異なる溶液のための複数の異なる容器と、ある容器から他の容器へ組織試料を輸送するのに適した輸送手段との組み合わせに基づき、図3Bに図示された態様は、単一の容器C0に含有されている1種または複数種の組織試料が、予定された浸漬時間の間隔後の溶液の交換によって、その後、異なる溶液に浸漬されるような、複数の試薬ボトルに接続されたポンプおよび弁の協調的な制御に基づく。
さらなる態様による試料調製システムは、図3Aおよび3Bに図示された2種の基本概念の混合物を含んでいてよい。例えば、これらの態様は、複数個の容器および複数個の浸漬ユニットを含み、これらの容器のうちの1個から他の容器へ試料を輸送するための輸送機序を含んでいてよい。しかしながら、これらの態様は、試料を異なる容器へ輸送することなく、試料が現在浸漬されている溶液が他の溶液に交換されるよう、試薬ボトルのうちの少なくともいくつかに接続されたポンプおよび弁を調整するように構成されている制御ユニットをさらに含んでいてもよい。
現在利用可能な組織透明化手法は、ほぼ全て、器官内の血液および組織成分の光吸収の影響を低減するため、多くの時間および労力を要する動物全身灌流を使用する。反対に、本発明の態様は、組織透明化を高速化し、医薬研究のための必要条件である大型動物研究の達成を可能にするのに適した、図3Aおよび3Bに図示される自動試料処理システムに大きく頼る、灌流なしの透明化プロトコルを提供する。標準的な組織学的組織処理(ホルマリン固定&エタノール脱水)および既存の有機溶媒ベースの透明化方法(BABB)に基づき、本発明の態様は、自動化または半自動化された、従来の組織学ワークフローに統合され得る改善された透明化プロトコルを提供する。本発明の態様による組織透明化プロトコルは、実施するのが容易であり、例えば、真空および/または圧力作動式の組織調製システムにおける、灌流なしの、迅速な、自動化された、安全な、便利な組織処理を可能にする。
いくつかの態様において、いくつかの有機透明化溶液は大部分のプラスチック部品に対して高度に腐食性であため、試料を有機透明化溶液へ浸漬する工程は、自動システム外で手動で実施される。しかしながら、好ましい態様において、有機透明化溶液は、自動試料処理ワークフローにおいて室温で試料を浸漬することを可能にする、BABB、または類似した光学的特性を有する有機透明化溶液である。態様によると、完全に脱水された試料は、(キットの一部であってもよい)有機透明化溶液を含む可動式の移動可能な容器、例えば、BABB溶液を含む耐食性容器に自動的に移される。
いくつかの態様によると、試料調製システムは、標準化された条件の下で高速の自動化されたハイスループット処理を可能にする、(例えば、Tissue Tek(登録商標)VIP(Sakura 311 Finetek)のような)1種または複数種の真空および圧力作動式の組織処理装置または機能的に等価な装置もしく装置部品を含んでいてよい。
図4は、従来の有機透明化プロトコルによって透明化された組織試料と、本発明の態様による方法によって透明化された組織試料との比較を示す。
肝葉を解剖し、4℃で24時間、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を含む強力な固定溶液に浸漬した。次いで、固定された組織試料を、緩衝液(保存剤ProClin300を含有しているリン酸緩衝生理食塩水、PBSPC)に浸漬し、さらに処理するまで、4℃で保管した。次いで、生検材料を葉から採取し、組織試料として使用した。その組織試料を、異なる試料調製プロトコルに供した。
図4の上段に図示された3個の組織試料は、最新式有機組織透明化プロトコルに従って処理された標準化されたマウス肝臓試料の光学的透明度を図示する。
図4の下段に図示された3個の組織試料は、本発明の態様による組織調製プロトコルに従って処理された標準化されたマウス肝臓試料の光学的透明度を図示する。組織試料を、脱脂溶液として使用された「CUBIC-1」として公知の水性透明化溶液に浸漬し、その後、図4の上段に図示された透明化された試料の生成のために使用されたのと同一の最新式高速BABB組織透明化プロトコルを実施した。上段と下段との比較から容易に分かるように、実際の有機透明化プロトコルを開始する前の、組織試料の脱脂溶液への浸漬は、光学的透明性を有意に増加させる。さらに、元の組織試料と透明化された組織試料とのイメージの比較(示されていない)は、試料が有機溶液ベースの透明化プロトコルに従って透明化される前に、試料が脱脂溶液に浸漬されるケースにおいて、組織形態がより良好に保存されることを示す。
図5は、光シート顕微鏡304および試料504を含む浸漬チャンバーを示す。顕微鏡304の光シートを生成する照射光源502は、より詳細に図示される。顕微鏡は、組織試料中の特定の細胞またはバイオマーカーに選択的に結合した蛍光染料によって放射されるシグナルによって3D座標系が満たされるよう、光シートを垂直方向に上下に移動させることができ、2枚の他の光シートを2つの他の方向に移動させるためにさらに適合していてよい。
図6は、従来の組織学のワークフローへのデジタル3D蛍光病理組織学ワークフローの統合を示す(「FF」:ホルマリン固定、「EtOH」;エタノール、「BABB」:ベンジルアルコール安息香酸ベンジル)。「組織透明化」工程は、好ましくは、脱脂溶液および有機透明化溶液への試料の浸漬を含む透明化プロトコルに基づき実施される。試料の液体部分のRIが、イメージを分析するために使用される透明化溶液のRIと同一になるかまたは類似することを確実にするため、そして組織水と有機溶媒との混合に起因するシュリーレンが分析中に生成されないことを確実にするため、有機透明化溶液への浸漬の前には、漸増する量のアルコールのような有機溶媒を含む溶液中での一連の洗浄工程が必ず実施される。
図7は、有機的な脱水工程および透明化工程のみを含み、試料を脱脂溶液へ浸漬する工程を含まない透明化プロトコルの種々の段階における様々な型のマウス組織試料を示す。図は、組織の完全性および光学的透明度に対する、ホルマリンベースの組織固定および脱水の影響を図示する。外植されたマウスの器官および組織試料のサイズを、組織処理プロトコルの各段階において決定した(全てが図示されているわけではない)。第1の固定溶液中での試料のインキュベーション、特に、洗浄(脱水)溶液中での試料のインキュベーションは、ほぼ全ての調べられた器官において組織の有意な収縮を誘導する。特に、脳および坐骨神経のような神経組織は、ネイティブ状態と比較して、著しいサイズ低減を示した(>30%低減)。この収縮効果は、1.5%から30%までのサイズ低減の範囲で、ほぼ全ての器官および組織型について可視であった。図7Aは、脱脂溶液中でのインキュベーションを含まない有機透明化プロトコルに供された種々のマウス器官および組織を図示する。得られた光学的透明度に基づき、個々の組織型を三群に分類した:(I)高い光学的透明度(緑色のマーク)、(II)中程度の光学的透明度(黄色のマーク)、および(III)低い光学的透明度(赤色のマーク)。図7Bは、異なる組織型の組織収縮の分析を図示する。
図8は、96穴プレート806において、表802に列挙された様々な脱脂溶液をマウス脳組織試料803に適用した場合に得られた組織透明化効果を図示する。脳組織試料を、4℃で48時間、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を含む強力な固定溶液に浸漬した。次いで、固定された組織試料を、緩衝液(PBS)に浸漬し、さらに処理するまで4℃で保管した。次いで、脳試料を透明底96穴プレートに移し、散乱および吸収に起因する試料の光減衰を、異なる波長(550、630、740nm)について測定して、「最初の減衰」を得た。
次いで、全ての試料を、試料を脱脂溶液に浸漬するためのファルコンチューブに移した。同一列のウェルの試料は、全て、同一の脱脂溶液に12〜24時間浸漬された。試験された脱脂溶液のうちのいくつかは、当技術分野において公知の水性透明化溶液、例えば、CUBIC-1バリアントであった。次いで、全ての脱脂溶液を除去するため、5分間、5回、試料を充分に洗浄し、「最初の減衰」を測定するために使用されたのと同一の緩衝液(例えば、PBS)に浸漬した。次いで、試料を96穴プレートに戻し、試料の光減衰を測定した。
3種の異なる波長(550、630、および740)の平均シグナル減少を測定した。結果は、バープロット808に図示されている。脱脂溶液「1.10.1」および「1.11」が、組織の光学的透明性に関して最良の結果を提供することが観察された。従って、態様によると、脱脂剤は、例えば、脱脂溶液「1.10.1」または脱脂溶液「1.11」であり得る。「CUB1」も脱脂剤として使用され得るが、最終的に得られる組織試料の光学的透明性は、他の2種の脱脂溶液と比較して低いかもしれない。
図9Aは、2列および3段に配置された器官全体マウス組織試料の6対の写真を示す。1段目は脾組織に相当し、2段目は肝組織に相当し、最下段は脳組織に相当する。1列目「0%」および2列目「5%」は、それぞれ、組織試料の3対の写真を含み、各対の左のイメージは、新鮮な未灌流の組織試料を図示し、対の右のイメージは、水性脱脂溶液および有機透明化溶液の両方への浸漬の後の該組織試料を図示する。水性脱脂溶液は、水性透明化溶液として機能する。1列目(「0%」)において透明化された組織試料を得るために使用された水性脱脂溶液DLS0は、カオトロピック剤尿素を含まない。2列目(「5%」)において透明化された組織試料を得るための使用された水性脱脂溶液DLS5は、5(体積)%のカオトロピック剤尿素を含む。
例えば、水性脱脂溶液DLS0は、以下の成分を含む水性溶媒からなっていてよい:
・20体積%のQuadrol、
・5体積%のツイーン80、
・5%のトリエタノールアミン(TEA)、
・5%のジメチルスルホキシド(DMSO)、
・1ml当たり約3μgのヨウ化プロピジウム。
例えば、水性溶媒は、純水であってよい。あるいは、水性溶媒は、1×PBS(リン酸緩衝生理食塩水)または10×PBSまたは異なる濃度のPBS緩衝液であってもよい。PBSは、生物学的研究において一般的に使用されている緩衝溶液である。それは、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウムを含有しており、いくつかの製剤において、塩化カリウムおよびリン酸二水素カリウムを含有している水性塩溶液である。緩衝液は、一定のpHの維持を支援する。溶液の浸透圧およびイオン濃度は、好ましくは、組織試料のものと一致する(等張である)。
例えば、10×PBSは、NaCl(58.44g mol-1)、KCl(74.55g mol-1)、Na2HPO4(141.96g mol-1)、およびKH2PO4(136.09g mol-1)を含む水である。
水性脱脂溶液DLS5は、5体積%のカオトロピック剤尿素をさらに含む点においてのみDLS0と異なっていてよい。
イメージは、脱脂溶液がカオトロピック剤を欠くかまたは少量のカオトロピック剤のみを含む場合、有機溶液BABBによって引き起こされる組織収縮が、組織試料の有意な収縮および歪みをもたらすことを示す。その効果は、脳組織について特に顕著であって、BABB溶液および有機溶媒による洗浄は、脳試料の30%の体積収縮をもたらし、それは、DLS0が使用された場合、カオトロピック剤によって補償されなかった(図9Aの1列目)。DLS5溶液に含有される5%の尿素は、30%ではなく10%のみの正味の組織体積収縮効果をもたらしたため、BABBによって誘導される収縮効果は、DLS0の代わりにDLS5を適用した時、少なくとも部分的に補償され得る(図9Aの2列目)。
出願人は、脳組織、肝組織、および脾組織におけるさらなる試験系列(示されていない)において、以下に与えられる組成の別のDLS0溶液が、BABBと組み合わせられた時、同一の効果を組織試料に対して及ぼすことを観察した。別のDLS0溶液は、以下の成分を含む水性溶媒からなる:
・25体積%のQuadrol、
・5体積%のツイーン80、
・5%のトリエタノールアミン(TEA)、
・5%のジメチルスルホキシド(DMSO)、
・1ml当たり約3μgのヨウ化プロピジウム。
より高い量のquadrolは、高いヘモグロビン濃度を有する肝組織および脾組織のわずかに良好な透明化をもたらした。
図9Bは、3列および3段に配置された器官全体マウス組織試料の9対の写真を示す。図9Aと同様に、1段目は脾組織に相当し、2段目は肝組織に相当し、最下段は脳組織に相当する。1列目「15%」、2列目「25%」、および3列目「飽和」は、それぞれ、組織試料の3対の写真を含み、各対の左のイメージは新鮮な未灌流の組織試料を図示し、対の右のイメージは水性脱脂溶液および有機透明化溶液の両方への浸漬の後の該組織試料を示す。1列目(「15%」)において透明化された組織試料を得るために使用された水性脱脂溶液DLS15は、15(体積)%のカオトロピック剤尿素を含む。2列目(「25%」)において透明化された組織試料を得るために使用された水性脱脂溶液DLS25は、25(体積)%のカオトロピック剤尿素を含む。第2(「飽和」)において透明化された組織試料を得るために使用された水性脱脂溶液DLSSは、カオトロピック剤尿素が飽和した水性溶液である。
イメージは、DLS15が、有機溶液BABBによって引き起こされる組織収縮を補償することができたことを示す。肝組織および脳組織は、いくらかの軽微な変形を示すが、基本的に、元の組織試料の構造およびサイズが維持された。
最初に、DLS25溶液(即ち、25体積%の尿素を含むDLS0溶液)に組織試料を浸漬することによって、試料の有意な膨張がもたらされた(示されていない)。組織の膨張は、組織試料を他の溶媒に対して高度に透過性にし、試料に構造安定性を提供する細胞外および/または細胞内の構造の破壊をもたらす。従って、DLS25によって事前に処理された試料の洗浄および浸漬は、有意な正味の収縮および組織形態の歪みをもたらした(2列目「25%」の右のイメージ)。
最初に、DLSS溶液(即ち、尿素が飽和したDLS0溶液)に組織試料を浸漬することによって、試料の有意な膨張がもたらされた(示されていない)。膨張は、試料の構造的不安定化をもたらす。従って、DLSSによって事前に処理された試料の洗浄および浸漬は、全ての調査された組織型について、強力な正味の収縮および組織形態の歪みをもたらした(3列目「飽和」の右のイメージ)。
図9Aのイメージ対は、BABB/脱水によって誘導される収縮効果を補償するために、少なくとも5%の尿素濃度が必要とされることを図示する。
図9Bのイメージ対は、カオトロピック剤の量が高く選択されすぎた場合、膨張効果およびBABBによって誘導される収縮効果が、相互に単純に補償し得ないことを図示する。むしろ、強力な膨張は、細胞構造および細胞内構造を破壊し、組織試料をBABB/脱水によって誘導される収縮に対してさらに感受性にするかもしれない。しかしながら、カオトロピック剤の規定された濃度範囲、例えば、尿素およびチオ尿素の場合、5%〜15%において、カオトロピック剤によって誘導される膨張効果は、有機透明化溶液、例えば、BABBの収縮効果を正確に補償し、全ての種類の透明化剤および界面活性剤による組織の灌流を促進することによって、組織透明度をさらに増加させる。
各対の右のイメージに図示された組織試料を得るため、各対の左のイメージにそれぞれ図示された未処理の組織試料を、以下の試料処理手法に従って処理した:組織試料を、4℃で約22時間、試料を固定溶液に浸漬することによって固定する。固定溶液は、例えば、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)であり得る。次いで、各試料をPBSで2回濯ぎ、低速で高架で回転させながら、以下の水性脱脂溶液のうちの1種に10日間浸漬する:DLS0、DLS5、DLS15、DLS25、DLSS。次いで、試料を水で濯ぎ、0.5%のProClin(または類似の抗微生物剤)を含むPBSまたはPBST(ツイーン、例えば、ツイーン20を含むPBS)溶液に移す。暗所で室温で約16時間、低速で高架で回転させながら、PBST-ProClin溶液に試料を浸漬する。次いで、0.1%のProClinを含むPBSまたはPBSTの溶液に、試料を移す。次いで、100%エタノールに試料を移す。移動は、水を除去するための、試料の段階的な移動、例えば、70%エタノールへの移動、次いで、90%エタノールへの移動、最後に、100%エタノールへの移動を含んでいてよい。最後に、BABBのような有機透明化溶液に試料を浸漬する。
15%より高い尿素濃度は、少なくともいくつかの組織型について、組織に損傷を与えるリスクの増加に関連しており、5%未満の濃度は、脱水/BABB浸漬後の重度の組織収縮をもたらすことが示された。従って、脱脂溶液中のカオトロピック剤の理想的な濃度は、5%〜15%であると仮定することができる。
図10は、複数の試料の処理および透明化の工程の各々の後の複数の組織試料の写真を示す。調査された組織試料は、器官全体試料(脳、肝臓、心臓、腎臓、および肺)ならびに腫瘍組織試料である。DLS5は、図9に関して既に記載された脱脂溶液であり、約5%の尿素を含む。図9に関して既に記載されたインキュベーション時間および温度を、図10に図示された試料の処理のためにも使用した。2番目(DLS5中でのインキュベーションの前)および3番目(DLS5中でのインキュベーションの後)の組織試料のイメージの比較から推論され得るように、第1の透明化効果は、試料をDLS5溶液に浸漬することによって既に得られる。第2のより強力な透明化効果は、有機透明化溶液BABB中で試料をインキュベートすることによって得られる。DLS5およびBABBの両方への試料の浸漬は、特に高い透明化効果を提供し、同時に、試料の特に低い形態学的歪みを提供する。
下記表に、図10に図示された新鮮組織試料とBABBによって処理された組織試料とのサイズの比較を提供する:
Figure 2021508820
*)脾臓のようないくつかの器官の強力な屈曲のため、投影面積は、それぞれの組織の幅および長さの横方向サイズとして決定された。
典型的には、組織試料のBABBへの浸漬は、組織試料の元の体積の約30%〜50%の組織収縮をもたらす。表は、試料をBABB溶液へ浸漬する前に、約5%の尿素を含む脱脂溶液に試料を浸漬することによって、調査された組織型の大部分に由来する組織試料が、BABBによって誘導される収縮から保護され得ることを示す。その効果は、肝組織、脳組織、腎組織、および肺組織において特に顕著であり、心組織および腫瘍組織においても観察可能であった。好ましくは、特に充実性である組織型、例えば、心組織および腫瘍組織は、BABBによって誘導される収縮に対抗するため、その体積の5%を超える量、例えば、10〜15%のカオトロピック剤を含む脱脂溶液に浸漬される。
参照番号のリスト
100 方法
102〜116 工程
202 第1の固定溶液
204 脱脂溶液
206 染色溶液
208 第2の固定溶液
210 有機脱水溶液(エタノール)
211 試料輸送システム
212 有機透明化溶液
213 ポンプ
214〜222 キット
301 組織試料
301' 調製され透明化された組織試料
302 試料調製システム
304 試料分析システム、例えば、顕微鏡
306 試料ローディングユニット
308 第1の固定ユニット
310 試料浸漬ユニット
312 光退色ユニット
314 染色ユニット
316 第2の固定ユニット
318 脱水ユニット
320 透明化ユニット
322 試料取り出し(unloading)ユニット
354 試料浸漬ユニット
502 組織試料を通過する光シートのイメージ
802 表
803 脳組織試料
806 96穴プレート
808 バープロット

Claims (20)

  1. 調製された試料の体積および/または形態の、元の組織の体積または形態からのずれが最小化されるように、光学分析用の生体組織試料(301)を調製する方法(100)であって、
    (a)該組織試料を、第1の固定溶液(202)を用いて固定する工程(102);
    (b)固定された該組織試料を、該試料の膨張を誘導するのに適したカオトロピック剤を含む脱脂溶液(204)に浸漬する工程(104);
    (d)該組織試料を、1種または複数種の染色溶液(206)を用いて染色する工程(108);
    (f)染色された該組織試料を、該試料の収縮を誘導するのに適した有機脱水溶液(210)中で脱水する工程(112);および
    (g)固定された該組織試料を有機透明化溶液(212)に浸漬する工程(114)
    を含む、方法。
  2. (c)染料の放射波長および/または励起波長のうちの一つまたは複数を含む波長域における前記試料の自己蛍光を選択的に除去または低減するために、該波長域の光を該試料に照射する工程
    をさらに含む、請求項1記載の方法。
  3. (e)洗浄および脱水が実施される前に、染色された前記組織試料を、第2の固定溶液(208)を用いて固定する工程(110)
    をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  4. 前記有機脱水溶液によって誘導される組織収縮が、前記脱脂溶液によって誘導される膨張によって前もって補償されるように、該脱脂溶液の組成が選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  5. − 前記カオトロピック剤が、前記元の試料の体積の少なくとも15%だけ、または該元の試料の体積の少なくとも20%だけ、前記試料の体積の膨張を引き起こすのに適しており;かつ/または
    − 前記脱脂溶液によって誘導される膨張と、前記脱水溶液によって誘導される収縮との組み合わせ効果が、該元の未処理の組織試料の体積から15%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満だけずれている透明化された組織試料を提供するように、該脱脂溶液の組成が選択される、
    前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  6. 前記カオトロピック剤が、非イオン性カオトロピック剤、具体的には尿素もしくはチオ尿素、またはイオン性カオトロピック剤グアニジウム、具体的にはグアニジウム塩の形態で提供されるグアニジウムである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  7. 前記脱脂溶液が、5〜30体積%、好ましくは10〜25体積%、好ましくは15〜25体積%、より好ましくは20〜25体積%のアミノアルコール、具体的には、N,N,N',N',-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  8. 前記脱脂溶液が水性透明化溶液である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  9. 前記組織を第1の固定組成物中で固定する工程、固定された前記組織試料を脱脂溶液に浸漬する工程、固定された該組織試料を染色する工程、脱水する工程、および有機透明化溶液に浸漬する工程が、灌流工程なしの自動化または半自動化されたプロセスにおいて実施される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  10. 前記有機透明化溶液が、ベンジルアルコールと安息香酸ベンジルとの混合物(BABB)であり、
    前記方法が、該有機透明化溶液を調製する工程を含み、該調製が、有機透明化溶液の屈折率が前記試料の組織型の屈折率と同一になるかまたは類似するような、ベンジルアルコールと安息香酸ベンジルとの比を選択することを含む、
    前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  11. 前記試料が、少なくとも0.5cm3、または少なくとも0.75cm3、または少なくとも1cm3の体積を有する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  12. 前記試料が、該試料が前記第1の固定溶液を用いて固定される前に、既に、レポータータンパク質、または染色されたバイオマーカー、薬物、もしくは代謝物質を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  13. − 透明化された前記組織試料の染色された部分構造の3Dプロットを、光シート蛍光顕微鏡を使用して生成する工程(116)
    をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  14. − 第1の固定溶液(202)を用いて固定(102)された、固定された組織試料を受け取ること;
    − 固定された該組織試料を、該試料の膨張を誘導するのに適したカオトロピック剤を含む脱脂溶液(204)に浸漬すること(104);
    − 該組織試料を1種または複数種の染色溶液(206)を用いて染色すること(108);
    − 染色された該組織試料を、該試料の収縮を誘導するのに適した有機脱水溶液(210)中で洗浄および脱水すること(112);ならびに
    − 固定された該組織試料を有機透明化溶液(212)に浸漬すること(114)
    のために構成されている、光学分析用の生体組織試料を調製するための自動化または半自動化されたシステム(302、352)。
  15. − 脱脂溶液(204)、1種もしくは複数種の染色溶液(206)、第2の固定溶液(208)、有機脱水溶液(120)、および有機透明化溶液(212)を含む複数の溶液の各々のための試薬容器を含み;
    − 試料輸送手段(211)と、試薬容器のうちの1個にそれぞれ連結された複数個の試料容器(C1〜C6)とを含み、請求項14に従って前記試料が該複数の溶液の各々に少なくとも1回浸漬されるよう、半自動的もしくは完全自動的に試料輸送を調整するように構成されているか;または
    − 該試薬容器のうちの1個および試料容器(C0)にそれぞれ連結された1個もしくは複数個のポンプ(213)を含み、請求項14に従って前記試料が該複数の溶液の各々に少なくとも1回浸漬されるよう、該ポンプを調整するように構成されている、
    請求項14記載の自動化または半自動化されたシステム(302、352)。
  16. − 5体積%〜30体積%、好ましくは5体積%〜15体積%の少なくとも1種のカオトロピック剤と、5〜30体積%の少なくとも1種の界面活性剤とを含む脱脂溶液;および
    − 有機透明化溶液
    を含む、1種または複数種の組織試料を調製するためのキット(214、216、218、220、222)。
  17. 前記カオトロピック剤が、非イオン性カオトロピック剤またはグアニジウム、具体的には、グアニジウム塩の形態で提供されるグアニジウムである、請求項16記載のキット。
  18. 前記カオトロピック剤が、尿素またはチオ尿素である、請求項16〜17のいずれか一項記載のキット。
  19. 前記脱脂溶液が、5〜30体積%、好ましくは10〜25体積%、好ましくは15〜25体積%、より好ましくは20〜25体積%のアミノアルコール、具体的には、N,N,N',N',-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンをさらに含む、請求項16〜18のいずれか一項記載のキット。
  20. 前記少なくとも1種の界面活性剤が、少なくとも2種の異なる界面活性剤の組み合わせ、具体的には、トリエタノールアミン(TEA)とツイーン(Tween-)80との組み合わせである、請求項16〜18のいずれか一項記載のキット。
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