JP2021155835A - 建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】防眩性を確保するために表面を粗面化した場合であっても耐食性に優れる建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板を提供する。【解決手段】仕上げ冷間圧延および連続焼鈍後に、ショットブラストにより表面が粗粒化されたものであって、鋼板表面に凹部及び凸部が設けられており、凹部の面積率が40〜60%であり、表面における中心粗さ曲線における表面粗さRzが3.0〜20.0μmであり、凹部の最大直径が400.0μm以下であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、耐食性に優れた建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板に関する。
外装建材、内装建材には、SUS304、SUS316などに代表されるオーステナイト系ステンレス鋼板や、SUS430に代表されるフェライト系ステンレス鋼板が多く用いられている。
そして、外装建材や内装建材の用途では、鋼板から建材製品を製造する際や、建材の施工の際に、鋼の表面に付着する飛来海塩に対する耐食性が求められている。一方、ステンレス鋼板を屋根材や壁材として使用する場合は、鋼板に対してダルロールによる圧延を行い、表面に数μmの凹凸を付与することで、防眩性を向上させる例が多い。しかしながら、屋外での使用環境においては、表面の小さな凹凸の存在により、鋼板に粉塵や海塩粒子が付着しやすくなる。また、ダルロールによって形成された鋼板表面の凹部は、強加工を受けているため不働態皮膜が弱くなっており、また、凹部は結露が生じやすいことから、表面の粗度を高めるほど屋外での耐食性が極端に低下することが知られている。
そこで、特許文献1では、防眩性を確保するためにダルロールによる粗面化を行ってRa0.5μm〜5μmとし、さらに凹凸の平均傾斜角を4°以上11°以下とし、さらに、耐食性を確保するために、鋼成分が45≧Cr(%)+4Mo(%)≧28を満たすことで、耐食性と防眩性の両立を図っている。
また、防眩性と耐食性とを兼ね備えたステンレス鋼板として、特許文献2に示すように、ダルロールによる圧延を行って表面の算術平均粗さRaを2.8μm以上とし、Cr+Mo:24.5%以上、Ni:0.1%以上25%以下、Cu:0.01%以上3%以下にする技術が知られている。
しかし、特許文献1または特許文献2に記載された技術では、鋼における合金元素の増加が不可欠であり、大幅なコスト増加が避けられない。
また、特許文献1または特許文献2に記載のステンレス鋼板のように、ダルロールによって表面を粗面化すると、粉塵や海塩粒子の付着が避けられず、耐食性が低下するおそれがある。一般に、耐食性と表面の粗面化は相対するものであり、表面を粗面化するほど耐食性が劣るおそれがある。
特許第3287302号公報 特許第3499361号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、防眩性を確保するために表面を粗面化した場合であっても耐食性に優れる建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板を提供することを課題とする。
[1] 鋼板表面に凹部及び凸部が設けられており、
前記凹部の面積率が40〜60%であり、
前記表面における中心粗さ曲線における表面粗さRzが3.0〜20.0μmであり、
前記凹部の最大直径が400.0μm以下であることを特徴とする建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板。
[2] 鋼中に含まれるフェライト相の平均粒径と、オーステナイト相の平均粒径との差が、5.0μm以下であることを特徴とする[1]に記載の建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板。
本発明によれば、鋼板表面を粗面化した場合であっても耐食性に優れる建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板を提供できる。
図1は、本発明の実施形態である建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板の表面を3次元形状測定機で測定した場合の表面の凹凸形態および凹部を示す図である。
本発明の実施形態に係る建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板(以下、二相ステンレス鋼板と表記する場合がある)は、仕上げ冷間圧延および連続焼鈍後に、ショットブラストによって表面が粗面化されたものであって、屋根、建材等の建材材料として好適である。本実施形態の二相ステンレス鋼板は、仕上げ冷間圧延後のショットブラストにより所定の表面性状となるように制御されることで、従来のダルロール圧延によって表面性状が制御されたステンレス鋼板に比べて、耐食性の大幅な向上が見込まれる。
以下、本実施形態の二相ステンレス鋼板について詳細に説明する。
(鋼板)
本実施形態の二相ステンレス鋼板の種類は特に限定されず、例えば、SUS821L1、SUS323L、SUS329J1、SUS329J3L、SUS329J4L、SUS327L1などを挙げることができる。また、鋼板の厚みは特に限定されないが、例えば、屋根材などの屋外向け建材用途として、0.1mm以上10.0mm以下の範囲が好ましい。
(鋼板の表面性状)
次に、本実施形態の二相ステンレス鋼板の表面性状について説明する。本実施形態の二相ステンレス鋼板の鋼板表面には、凹部及び凸部が設けられており、凹部の面積率が40〜60%とされ、表面における中心粗さ曲線における表面粗さRzが3.0〜20.0μmとされ、凹部の最大直径が400.0μm以下とされる。このような表面性状を持つことで、建材として好ましい防眩性を確保できるとともに、耐食性を向上することができるようになる。以下、本実施形態の二相ステンレス鋼板の表面性状と耐食性との関係について説明する。
屋外で使用されるステンレス鋼の耐食性を向上する観点においては、海水や凝縮水のような、塩化物イオンを含む水溶液が厳しい腐食環境と考えられる。海水は乾燥時に塩化ナトリウム(NaCl)などの塩を生成し、この塩と鋼の素地とが密着した場合、より腐食が促進される。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、表面を所定の凹凸性状に制御することで、生成した塩と鋼素地との密着を抑制し、耐食性を向上させることが判明した。
本実施形態に係る二相ステンレス鋼板では、表面性状の規定方法として、凹部の面積率及び凹部の最大直径に加えて、最大高さの指標である表面粗さRzの3つのパラメーターで規定することが好ましいことを見出した。腐食起点となるような突出した凹凸の影響を評価するには、算術平均粗さRaは適切でなく、最大高さRzとすることで、腐食との関係を適正に評価できる指標であることを知見した。そして、表面粗さRzで評価した場合に、Rzが所定の範囲になる鋼板が、耐食性に優れることを見出した。以下、各パラメーターの限定理由を説明する。
[凹部の面積率]
鋼板表面における凹部の面積率は、40〜60%の範囲とする。これにより、耐食性が向上する。凹部の面積率が40%未満では、塩化物イオンを含む水溶液から析出した塩が、凸部で優先的に析出して鋼素地に密着するため耐食性を劣化させる。一方、凹部の面積率が60%を超えると、凹部内で析出した塩が成長し、これにより、鋼素地に塩が密着して耐食性を低下させる。なお、塩の密着性は、後述する乾湿繰り返し試験における塩の析出痕の有無により判断することができる。
[表面粗さRz]
中心粗さ曲線における表面粗さRzは、3.0〜20.0μmの範囲とする。これにより、耐食性を向上させる。Rzが3.0μm未満では、塩と鋼素地とが密着して耐食性を低下させる。また、Rzが20.0μmを超えると、凹部及び凸部が設けられた鋼板表面に汚れが付着しやすくなり、耐食性を劣化させる。Rzは、より好ましくは3.0〜15.0μmの範囲とする。
[凹部の最大直径]
凹部の最大直径は、400.0μm以下とする。これにより、耐食性を向上させる。凹部の最大直径が400.0μmを超えると、塩と鋼素地とが密着して耐食性を低下させる。
鋼板表面におけるRzは、JIS B 0601:2013に準ずる方法でRzを測定する。なお、算術平均粗さRzの測定は、圧延方向に垂直な方向で3回行い、平均値を算出して評価する。
鋼板表面における凹部の面積率及び凹部の最大直径の測定は、3次元形状測定機(キーエンス製:VR−3000)により鋼板表面を観察して、凹部の面積率を算出する。凹部は、3次元形状測定機で測定した評価面の高さ0μmを基準として高さ0μm以下かつ円状に凹んでいる場所を凹部と定義する。凹部以外の領域を凸部とする。なお、3次元形状測定機を用いて得られた3次元プロファイルを解析する際に基準面を設定する。この基準面は付随する解析ソフトにおいて自動で決定される。基準面は、全測定領域の深さの中央値に相当する。本発明においては、倍率120倍で測定した視野全ての高さ情報から基準面の設定を行う。また、測定した3次元プロファイルから凹部の最大直径を算出する。なお、鋼板表面の観察は、観察倍率を120倍として評価する。
[フェライト相およびオーステナイト相の平均粒径差]
本実施形態の二相ステンレス鋼板には、鋼組織中にフェライト相とオーステナイト相とが含まれるが、本実施形態では、鋼中に含まれるフェライト相の平均粒径と、オーステナイト相の平均粒径との差(=フェライト相平均粒径−オーステナイト相平均粒径)が、5.0μm以下であることが好ましい。これにより、耐食性をより向上させることができる。粒径差が5.0μm以下になると、酸洗時におけるフェライト相とオーステナイト相の溶解速度差に起因するRzの増加を防止することができ、耐食性が向上するようになる。
次に、本実施形態の二相ステンレス鋼板の製造方法について説明する。
耐食性に優れた二相ステンレス鋼板を製造するには、熱間圧延後の鋼板に対して、焼鈍、酸洗、仕上げ冷間圧延および仕上げ焼鈍を順次行い、更に、最終焼鈍後の鋼板に対してショットブラストを行うことにより、表面を所定の性状に制御することが重要である。また、ショットブラストの後に更に酸洗を行うと、耐食性がより向上するため好ましい。
まず、熱間圧延後の鋼板を出発材料とし、焼鈍および酸洗を行うことで、メタルやスケール等の比較的粗大な付着物を除去する。熱間圧延条件、焼鈍条件及び酸洗条件については後述する。
次いで、仕上げ冷間圧延にて十分な圧延率で圧延し、酸洗にて生成された窪み(脱落痕)や、粒界侵食による窪みをできるだけ平滑化する。さらに、仕上げ冷間圧延後の仕上げ焼鈍後を行うことにより、耐食性に優れた二相系ステンレス鋼の原板を製造する。仕上げ冷間圧延、仕上げ焼鈍及び酸洗の条件については後述する。
そして、このように製造した二相系ステンレス鋼の原板について、凹部の面積率、Rz、凹部の最大直径を制御するために、所定の条件にてショットブラストを行うことで、耐食性に優れた二相ステンレス鋼板を製造する。ショットブラスト後に酸洗を行ってもよい。ショットブラストおよび酸洗の条件については後述する。
なお、本実施形態の二相ステンレス鋼板を製造する際には、熱延鋼板を出発材料とし、少なくとも仕上げ冷間圧延を行った後に仕上げ焼鈍を行い、ショットブラストを行えばよく、これ以外の工程は、省略してもよく、また、工程の順序を変更してもよい。
一例として、熱間圧延後の鋼板に対して、焼鈍、酸洗、仕上げ冷間圧延、仕上げ焼鈍、ショットブラスト、酸洗の順に処理を進行する手順(i)を挙げることができる。
また、別の手順として、熱間圧延後の鋼板に対して、焼鈍、酸洗、仕上げ冷間圧延、仕上げ焼鈍、ショットブラストの順に処理を進行する手順(ii)でもよい。
更に、他の手順として、熱間圧延後の鋼板に対して、焼鈍、酸洗、冷間圧延、焼鈍、酸洗、仕上げ冷間圧延、仕上げ焼鈍、ショットブラスト、酸洗の順に処理を進行する手順(iii)でもよい。
更にまた、熱間圧延後の鋼板に対して、焼鈍、酸洗、第1の冷間圧延、第1の焼鈍、第1の酸洗、第2の冷間圧延、第2の焼鈍、第2の酸洗、仕上げ冷間圧延、仕上げ焼鈍、ショットブラスト、酸洗の順に処理を進行する手順(iv)でもよい。
また、熱間圧延後の鋼板に対して、焼鈍、酸洗、冷間圧延、光輝焼鈍、仕上げ冷間圧延、仕上げ焼鈍、ショットブラスト、酸洗の順に処理を進行する手順(v)でもよい。
なお、上記手順(i)ないし(v)では、必要に応じて研磨工程や脱脂工程を加えてもよい。また、ショットブラスト後の酸洗の後に、表面性状に影響を与えない範囲で、調質圧延を行ってもよい。更に、調質圧延後に、表面性状に影響を与えない範囲で、脱脂、テンションレベラーおよびスリット等の精整工程を行ってもよい。
以下、各工程における具体的な条件について説明する。
熱延鋼板は、一般的な二相ステンレス鋼を製造する場合と同様に、ステンレス鋼の溶製、鋳造および熱間圧延することで製造する。
熱間圧延後の鋼板の焼鈍および酸洗は、鋼板表面に付着したメタルやスケール等の粗大な異物を除去するために有効な処理である。
熱間圧延後の焼鈍は、材料の製造性や特性を考慮して適宜条件を選択できる。また、焼鈍は、鋼板の表面性状に影響を与えない範囲において、バッチ式焼鈍または連続式焼鈍のいずれの方式でもよく、例えばその材料に応じて選択できる。
酸洗は、中性塩や、硫酸、硝酸、フッ酸および塩酸等の酸を組み合わせて行われ、電解酸洗を行ってもよい。
仕上げ冷間圧延は、最後の仕上げ焼鈍の直前に行われる冷間圧延である。冷間圧延のパス回数は、1回のパスでもよく、複数回のパスでもよい。また、例えば一般的なゼンジミアミルおよび薄板専用ミル等の異なる複数種の圧延機を順に使用してもよい。
仕上げ焼鈍の均熱温度は、二相ステンレス鋼板を仕上焼鈍する一般的な条件であればよく、特に制限はないが、フェライト相およびオーステナイト相の粒径制御のためには、950〜1150℃とすることが好ましい。焼鈍時の均熱温度を1000℃以上にすると再結晶が安定することから焼鈍時の均熱温度は好ましくは1000℃以上である。また、焼鈍時の均熱温度が1100℃以下にすると結晶粒径の粗大化を防止できるため、焼鈍時の均熱温度は好ましくは1100℃以下とする。
仕上げ焼鈍の均熱時間は、フェライト相およびオーステナイト相の粒径制御のために0.05〜1.00分とする。再結晶の安定化のためには均熱時間を好ましくは0.15分以上にするとよい。また、結晶粒径の粗大化を防止するためには均熱時間を好ましくは0.75分以下とするとよい。
ショットブラスト工程における投射材の平均粒径は0.1〜1.2mmとし、投射速度は30〜100m/sとし、投射量は30〜200Kg/mとする。凹部の面積率はショット粒の投射量とともに増加するため、投射量は好ましくは70〜120Kg/mである。また、Rzおよび凹部の最大直径は、投射速度とともに比例して増加するため、投射速度は好ましくは50〜70m/sである。ショットブラスト処理における投射材の平均粒径、投射速度、投射量が、上記範囲にあることによって、ステンレス鋼板表面の形態を制御する。投射材の材質は、鉄、アルミナ、SiC、セラミックスなどの硬質粒子が望ましく、いずれを使用してもよい。
ショットブラスト後の酸洗は、硫酸、硝酸、弗酸、塩酸のうちいずれか2種を含む混酸を用いることが好ましい。混酸における好ましい濃度範囲は、硫酸は100〜300g/L、硝酸は20〜200g/L、弗酸は10〜100g/Lである。混酸液の温度は20℃〜90℃が好ましい。
以上により、本実施形態の二相ステンレス鋼板を製造できる。本実施形態の二相ステンレス鋼板は、防眩性を付与するために鋼板表面を粗面化した場合であっても、耐食性に優れたものとなる。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
まず、二相ステンレス鋼としてSUS821L1を、電気炉、転炉およびAOD工程にて溶製し、連続鋳造してスラブとした。
次いで、連続鋳造後のスラブを通常の方法で熱間圧延して鋼板とした。そして、熱間圧延後の鋼板を出発材料として、焼鈍、酸洗、仕上げ冷間圧延、仕上げ焼鈍、ショットブラストの順に処理(上記手順(ii))を行い、板厚1.5mmのショットブラスト後の鋼板を得た。
仕上げ焼鈍の均熱温度は1030℃〜1180℃とし、均熱時間は0.3分とした。ショットブラストは、0.4mmの投射材を使用した。投射材の材質は鉄とした。ショットブラストの他の条件は表1に記載した通りとした。このようにして、本発明例1及び比較例1〜3の供試材を得た。
各供試材を用いて、耐食性および表面性状に関する各種測定を行った。具体的には、鋼板表面における凹部の面積率、鋼板表面における中心粗さ曲線における表面粗さRz、凹部の最大直径を測定し、更に耐食性の評価を行った。
鋼板表面におけるRzは、各供試材から切り出した50mm角のサンプルについて、アセトンを用いた超音波洗浄を行った後、JIS B 0601:2013に準ずる方法でRzを測定した。なお、この算術平均粗さRzの測定は、圧延方向に垂直な方向で3回行い、平均値を算出して評価した。
鋼板表面における凹部の面積率及び凹部の最大直径の測定は、各供試材から切り出した50mm角のサンプルについて、アセトンを用いた超音波洗浄を行った後、3次元形状測定機(キーエンス製:VR−3000)により鋼板表面を観察して、凹部の面積率を算出した。凹部は、3次元形状測定機で測定した評価面の高さ0μmを基準として高さ0μm以下かつ円状に凹んでいる場所を凹部と定義した。凹部以外の領域を凸部とした。なお、3次元形状測定機を用いて得られた3次元プロファイルを解析する際に基準面を設定する。この基準面は付随する解析ソフトにおいて自動で決定される。基準面は、全測定領域の深さの中央値に相当する。本発明においては、倍率120倍で測定した視野全ての高さ情報から基準面の設定を行った。また、測定した3次元プロファイルから凹部の最大直径を算出した。なお、鋼板表面の観察は、観察倍率を120倍として評価した。図1に、3次元プロファイルの一例を示す。
耐食性の評価では、各供試材から切り出したL150mm×W70mmのサンプルについて、人工海水CCTを実施し、測定用試料を得た。人工海水CCTは複合サイクル試験機(スガ試験機:CYP−90)にてアクアマリン(八洲薬品製)を用いた乾湿繰り返し試験である。具体的には供試材を70°〜75°に傾けた状態で噴霧過程として人工海水を4時間噴霧し、その後乾燥過程としてRH25%に2時間保持し、湿潤過程としてRH95%に2時間保持することを1サイクルとする試験である。本人工海水CCTは12サイクル実施した。上記CCT12サイクル後に生じたさびの程度は、試料外観をJIS G 0595:2004に準拠したレイティングナンバー(RN)にて評価した。RNが5以上を合格(○)、4以下を不合格(×)とした。また、析出した塩と素材表面の密着性は、上記CCTで生じたさびに析出塩の痕跡有無により評価し、痕跡が無い場合は密着性なし(○)と評価し、痕跡がある場合は(×)とした。
これら各種測定の結果を表1に示す。
Figure 2021155835
表1に示すように、本発明の要件を満たす本発明例は、凹部の面積率が40%〜60%の範囲内であり、Rzが3.0〜20.0μmの範囲内であり、凹部の最大直径が400μm以下であった。本発明例は、本発明の要件を満たさない比較例1〜3と比べて、耐食性に優れていた。
[実施例2]
まず、二相ステンレス鋼としてSUS821L1を、電気炉、転炉およびAOD工程にて溶製し、連続鋳造してスラブとした。
次いで、連続鋳造後のスラブを通常の方法で熱間圧延して鋼板とした。そして、熱間圧延後の鋼板を出発材料として、焼鈍、酸洗、仕上げ冷間圧延、仕上げ焼鈍、ショットブラストの順に処理を行い、更に一部の供試材についてはショットブラスト後に酸洗を行った。このようにして、板厚1.5mmの鋼板を得た。
仕上げ焼鈍は1050℃〜1180℃とし、均熱時間は0.05〜1.00分とした。仕上げ焼鈍後のショットブラストは平均粒径0.4mmの投射材を使用した。投射材の材質は鉄とした。ショットブラストの他の条件は表2に記載した通りとした。ショットブラスト後の酸洗は、30g/Lの弗酸と90g/Lの硝酸の混酸を用い、液温40℃で実施した。このようにして、本発明例2〜5及び比較例4〜7の供試材を得た。
各供試材を用いて、実施例1と同様にして、鋼板表面における凹部の面積率、鋼板表面における中心粗さ曲線における表面粗さRz及び凹部の最大直径を測定した。
また、フェライト相およびオーステナイト相の平均粒径の測定は、EBSD法により測定した。測定は測定倍率2000倍で0.2μmステップの条件とし、得られたデータをTSL社OIM解析ソフトにより解析し、算出した。オーステナイトとフェライトはソフトのデータベースから鉄FCC、鉄BCCを参照して決定した。方位差15°以上を結晶粒界として1つの粒界を設定し円相当径を算出した。得られた円相当径を算術平均によって求めた値を結晶粒径とした。
耐食性の評価では、各供試材から切り出したL150mm×W70mmのサンプルについて、人工海水CCTを実施し、測定用試料を得た。人工海水CCTは複合サイクル試験機(スガ試験機:CYP−90)にてアクアマリン(八洲薬品製)を用いた乾湿繰り返し試験である。具体的には供試材を70°〜75°に傾けた状態で噴霧過程として人工海水を4時間噴霧し、その後乾燥過程としてRH25%に2時間保持し、湿潤過程としてRH95%に2時間保持することを1サイクルとする試験である。本人工海水CCTは12サイクル実施した。上記CCT12サイクル後に生じたさびの程度は試料外観をJIS G 0595:2004に準拠したレイティングナンバー(RN)にて評価した。RNが5以上を合格(○)、4以下を不合格(×)とした。また、RNが6以上を特に耐食性に優れる(◎)とした。析出した塩と素材表面の密着性は上記CCTで生じたさびに析出塩の痕跡有無により評価し、痕跡が無い場合は密着性なし(○)と評価し、痕跡がある場合は(×)とした。
これら各種測定の結果を表2に示す。
Figure 2021155835
表2に示すように、本発明の要件を満たす本発明例はいずれも、凹部の面積率が40%〜60%の範囲であり、Rzが3.0〜20.0μmの範囲であり、凹部の最大直径が400μm以下の範囲であった。また、仕上げ圧延後の焼鈍条件を最適化することにより、フェライト相とオーステナイト相の粒径差が5.0μm以下である二相ステンレス鋼が得られ、耐食性がより一層向上した。
以上のように、本発明の要件を満たす発明例はいずれも、本発明の要件を満たさない比較例と比べて耐食性に優れていた。特にRzが3.0〜15.0μmの範囲にある発明例では、耐食性に優れていた。したがって、本発明の要件を満たした本発明例はいずれも、例えば建材部材として好適な耐食性に優れた表面性状を有する鋼板であると評価できる。

Claims (2)

  1. 鋼板表面に凹部及び凸部が設けられており、
    前記凹部の面積率が40〜60%であり、
    前記表面における中心粗さ曲線における表面粗さRzが3.0〜20.0μmであり、
    前記凹部の最大直径が400.0μm以下であることを特徴とする建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板。
  2. 鋼中に含まれるフェライト相の平均粒径と、オーステナイト相の平均粒径との差が、5.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の建材用フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼板。
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