JP2022170664A - ステンレス熱延鋼材及びその製造方法 - Google Patents

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明訓 河野
Akinori Kono
一成 森田
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Abstract

【課題】耐食性に優れるステンレス熱延鋼材及びその製造方法を提供する。【解決手段】二乗平均平方根高さSqが5.0μm以下、展開界面面積率Sdrが25.0%以下の表面粗さを有する、耐食性に優れるステンレス熱延鋼材である。【選択図】なし

Description

本発明は、ステンレス熱延鋼材及びその製造方法に関する。
ステンレス鋼材は、耐食性などの各種特性に優れるため、自動車用部品、建築用部品、厨房用器具などの広範な用途に用いられている。これらの用途の中には、表面光沢に優れることが要求される場合があり、ステンレス鋼材の表面を研磨することで所望の表面光沢を向上させることが行われている。
ステンレス鋼材は、形状によって、鋼板、条鋼、鋼帯、棒鋼、鋼管などに分類される。一般的なステンレス鋼材であるステンレス鋼板は、次のような工程によって製造される。例えば、熱延鋼板(帯状を含む)は、ステンレス鋼の原料を溶解した溶銑を連続鋳造してステンレス鋼片(スラブ)とし、ステンレス鋼片を熱間圧延した後、焼鈍及び酸洗することによって製造される(例えば、特許文献1~3)。また、光沢性が要求される場合には、焼鈍に続く酸洗後に研磨が施される。このような一般的なステンレス鋼材の製造工程において、酸洗は、ステンレス鋼材の表面に形成されたスケールを除去するために行われている。以下、ステンレス鋼材の表面に形成されたスケールを除去することを「デスケール」と称する。
酸洗以外のデスケール方法としては、例えば、特許文献4には、圧延後のステンレス鋼板を焼鈍した際に該鋼板の表面に生成したスケール層に、レーザ光を照射して該スケールを溶融、蒸発させて除去するデスケール方法が提案されている。
特開平8-269549号公報 特開平8-060251号公報 特開2001-47121号公報 特開平4-182020号公報
しかしながら、酸洗のみによる特許文献1のデスケール方法では、スケールを十分に除去できない可能性がある。特許文献2及び3では、ショットブラストなどを用いた予備デスケールによって表面に凹凸が生じる。その結果、この凹凸に塩水などの腐食性物質が保持されて銹び易くなるため、耐食性が十分とはいえない。
また、レーザ光を用いた特許文献4のデスケール方法は、レーザ光の種類や条件が明示されていないため、条件によってはスケールを十分に除去できないことがある上、レーザ光の照射後に酸洗を実施した場合であっても、レーザ光によって生じた表面の凹凸によって耐食性が低下することがある。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、耐食性に優れるステンレス熱延鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、様々なデスケール方法によって得られたステンレス熱延鋼材の表面性状(表面粗さ)について鋭意研究を行った結果、二乗平均平方根高さSq及び展開界面面積率Sdrを所定の範囲に制御することで、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、このような表面性状を有するステンレス熱延鋼材が、特定の条件でレーザデスケールを行った後に研削を行うことで容易に得られることも見出した。
すなわち、本発明は、二乗平均平方根高さSqが5.0μm以下、展開界面面積率Sdrが25.0%以下の表面粗さを有する、耐食性に優れるステンレス熱延鋼材である。
また、本発明は、ステンレス鋼片を熱間圧延する熱延工程と、
前記熱間圧延された鋼材を焼鈍する焼鈍工程と、
前記焼鈍された鋼材の表面に形成されたスケールを除去するデスケール工程と
を含み、
前記デスケール工程は、パルスレーザ光の照射を行うレーザデスケール工程と、前記レーザデスケール工程後に研削を行う研削工程とを含み、
前記パルスレーザ光は、フルエンスをF[J/cm2]、パルス幅をτ[ns](ただし、τは10~1000nsである)とした場合に、以下の式(1)を満たすステンレス熱延鋼材の製造方法である。
5.0×(τ/100)1/2≦F≦13.0×(τ/100)1/2 ・・・(1)
本発明によれば、耐食性に優れるステンレス熱延鋼材及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
なお、本明細書において成分に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味する。また、「熱延鋼材」とは、熱間圧延(熱延)及び焼鈍が行われた鋼材のことを意味し、材形や板厚は特に限定されない。材形の例としては、板状(帯状を含む)、棒状、管状などが挙げられる。また、断面形状がT形、I形などの各種形鋼であってもよい。
本発明の実施形態に係るステンレス熱延鋼材は、二乗平均平方根高さSq(以下、「Sq」と略す)が5.0μm以下、好ましくは4.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下の表面粗さを有する。Sqは、ISO 25178-2:2012に規定される、平均面からの距離の標準偏差に相当するパラメータであり、表面欠陥の多さを表す指標となる。Sqを上記の範囲に制御することにより、表面欠陥が少なく、表面の平滑性を確保することができる。その結果、腐食性物質がステンレス熱延鋼材の表面に保持され難くなるため、耐食性を向上させることができる。ここで、本明細書において「腐食性物質」とは、ステンレス熱延鋼材と反応して腐食を誘発する物質のことを意味し、海水や体液などの塩水の他、二酸化硫黄、二酸化窒素などの大気汚染物質などが挙げられる。例えば、ステンレス熱延鋼材は、屋外環境において飛来した海塩が付着することで腐食が生じることがあるが、表面が平滑なほど海塩の付着が抑制され、また雨により流され易くする効果が得られる。また、表面の平滑性が高いことは研磨性の向上にもつながる。
なお、Sqは、小さいほど表面欠陥が少なくなるため、その下限値は特に限定されないが、製造コストの観点から、その下限値は例えば1.0μmである。
Sqは、ISO 25178-2:2012に準拠して測定することができる。
本発明の実施形態に係るステンレス熱延鋼材は、展開界面面積率Sdr(以下、「Sdr」と略す)が25.0%以下、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下の表面粗さを有する。Sdrは、ISO 25178-2:2012に規定される、表面積の増加割合を表すパラメータであり、表面欠陥の多さを表す指標となる。すなわち、Sdrは、所定領域の表面を平面視した場合の面積に対する所定領域の実際の表面積の増加割合を表す。Sdrを上記の範囲に制御することにより、表面欠陥が少なく、表面の平滑性を確保することができるため、耐食性を向上させることができる。また、表面の平滑性が高いことは研磨性の向上にもつながる。以下に記載する塩乾湿繰り返し試験は、屋外環境における耐食性の促進試験の一つである。
なお、Sdrは、小さいほど表面欠陥が少なくなるため、その下限値は特に限定されないが、製造コストの観点から、その下限値は例えば10.0%である。
Sdrは、ISO 25178-2:2012に準拠して測定することができる。
本発明の実施形態に係るステンレス熱延鋼材は、耐食性に優れる。ここで、本明細書において「耐食性に優れる」とは、塩水噴霧、乾燥及び湿潤を繰り返す塩乾湿繰り返し試験(以下、「複合サイクル試験(CCT)」という。)において、塩水噴霧、乾燥及び湿潤を1サイクルとして10サイクル行った場合に発銹面積率が1%以下であることを意味する。
また、ステンレス熱延鋼材の耐食性は、ステンレス熱延鋼材の表面性状以外にステンレス熱延鋼材の組成とも関係する。そのため、複合サイクル試験は、ステンレス熱延鋼材の組成を考慮して行う。具体的には、ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN:Pitting Resistance Equivalent Number)が30未満の場合は、JIS H8502:1999に規定する中性塩水噴霧サイクル試験を参考に試験条件を設定した。このとき、複合サイクル試験機に設置するステンレス熱延鋼材の設置角度(ステンレス熱延鋼材の表面の傾斜角)は、試験片の試験面の角度を鉛直方向に対して20°(試験片の試験面を垂直方向から20°傾斜させて保持するよう)に設定した。また、ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数が30以上の場合は、複合サイクル試験機に設置するステンレス熱延鋼材の設置角度として、試験片の試験面を水平(0°)に設置し、その他の条件はステンレス熱延鋼材の耐孔食指数が30未満の場合と同様とした。この耐孔食指数が30以上の場合の設置角度は、JIS G0597:2017に規定される方法を参考にした。また、耐孔食指数は、以下の式(2)によって算出することができる。
耐孔食指数(PREN)=Cr+3.3Mo+16N ・・・(2)
式(2)中、各元素記号は、各元素記号の含有量(%)を表す。
本発明の実施形態に係るステンレス熱延鋼材は、表面のビッカース硬さと厚み方向中心部のビッカース硬さとの差ΔHV(以下、「ΔHV」と略す)が、80以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが更に好ましい。このような範囲にΔHVを制御することができれば、表面の加工硬化が抑制されるため、研磨性を向上させることができる。
なお、ΔHVの下限値は、特に限定されないが、例えば20である。
表面及び厚み方向中心部のビッカース硬さは、JIS Z2244:2009に準拠して測定することができる。また、厚み方向中心部のビッカース硬さを測定するための試験片は、ステンレス熱延鋼材を厚み方向に切断したものを用いればよい。
本発明の実施形態に係るステンレス熱延鋼材は、バフ研磨後に表面の45度鏡面光沢Gs(以下、「Gs(45°)」と略す)が、500%以上であることが好ましく、600%以上であることがより好ましい。このような範囲のGs(45°)を確保することができれば、研磨性に優れるということができる。
Gs(45°)は、JIS Z8741:1997に準拠して測定することができる。
本発明の実施形態に係るステンレス熱延鋼材の鋼種は、特に限定されず、JIS規格に規定された種々のステンレス鋼種を選択することができる。例えば、鋼種の例として、オーステナイト系、フェライト系、フェライト・オーステナイト二相系、マルテンサイト系などが挙げられる。
典型的なオーステナイト系ステンレス熱延鋼材は、C:0.001~0.100%、Si:5.00%以下、Mn:3.00%以下、Cr:15.0~26.0%、Ni:6.0~26.0%、Mo:0~8.0%、N:0.350%以下、Cu:0~4.0%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。オーステナイト系ステンレス熱延鋼材は、好ましくは、C:0.005~0.080%、Si:4.00%以下、Mn:2.00%以下、Cr:16.0~23.0%、Ni:6.5~22.0%、Mo:0.1~7.0%、N:0.250%以下、Cu:0~2.0%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。
また、典型的なフェライト系ステンレス熱延鋼材は、C:0.001~0.100%、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、Cr:11.0~30.0%、Ni:0~2.0%未満、Mo:0~2.5%、N:0.050%以下、Cu:0~0.6%、Nb:0~1.0%、Ti:0~1.0%、Sn:0~0.5%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。フェライト系ステンレス熱延鋼材は、好ましくは、C:0.002~0.020%、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、Cr:13.5~23.0%、Ni:0~0.6%、Mo:0~2.0%、N:0.020%以下、Cu:0~0.5%、Nb:0~0.6%、Ti:0~0.3%、Sn:0~0.2%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。
また、典型的なフェライト・オーステナイト二相系ステンレス熱延鋼材は、C:0.001~0.100%、Si:1.50%以下、Mn:6.00%以下、Cr:15.0~30.0%、Ni:1.0~9.0%、Mo:0~5.0%、N:0.370%以下、Cu:0~2.0%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。フェライト・オーステナイト二相系ステンレス熱延鋼材は、好ましくは、C:0.005~0.030%、Si:1.00%以下、Mn:4.00%以下、Cr:20.0~26.0%、Ni:1.5~7.0%、Mo:0~4.0%、N:0.200%以下、Cu:0~1.5%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。
また、典型的なマルテンサイト系ステンレス熱延鋼材は、C:0.020~0.400%、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、Cr:10.5~14.0%、Ni:0~0.6%、Mo:0~1.0%、N:0.060%以下、Cu:0~1.0%、Nb:0~1.0%、Ti:0~1.0%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。マルテンサイト系ステンレス熱延鋼材は、好ましくは、C:0.100~0.300%、Si:0.50%以下、Mn:0.50%以下、Cr:12.0~13.5%、Ni:0~0.5%、Mo:0~0.5%、N:0.030%以下、Cu:0~0.5%、Nb:0~0.5%、Ti:0~0.5%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。
なお、本明細書において「不純物」とは、ステンレス熱延鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップなどの原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。例えば、ステンレス熱延鋼材は、不純物として、P:0.050%以下、S:0.0300%以下を含有してもよい。
本発明の実施形態に係るステンレス熱延鋼材の厚さは、特に限定されないが、例えば、板状のステンレス熱延鋼材(ステンレス熱延鋼板)の場合、板厚は3mm以上であることが好ましい。
本発明の実施形態に係るステンレス熱延鋼材は、耐食性に優れるため、耐食性部材として用いることができる。また、このステンレス熱延鋼材は、研磨性にも優れるものとすることができるため、研磨することで平滑で光沢のある表面を与え、意匠性を向上させることができる。そのため、意匠性が要求される耐食性部材に用いるのに好適である。
本発明の実施形態に係るステンレス熱延鋼材は、熱延工程(S1)と焼鈍工程(S2)とデスケール工程(S3)とを含む方法によって製造することができる。
熱延工程(S1)は、ステンレス鋼片を熱間圧延する工程である。具体的には、ステンレス鋼片を所定温度まで加熱し、所定温度に達した状態のステンレス鋼片を熱間圧延機によって粗圧延及び仕上げ圧延を何段階も施すことにより、所定の形状になるまで熱間圧延する。
なお、熱間圧延の条件は、ステンレス鋼片の組成などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。また、ステンレス鋼片は、所定の組成となるように溶製し、鍛造又は鋳造によって得ることができる。
焼鈍工程(S2)は、熱延工程(S1)で得られた鋼材を焼鈍する工程である。熱間圧延された鋼材を焼鈍炉で焼鈍することにより、熱間圧延によって硬化して延性が低下した鋼材を軟化させ、当該鋼材の延性を回復させることができる。
なお、焼鈍条件は、ステンレス鋼片の組成などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
デスケール工程(S3)は、焼鈍工程(S2)で得られた鋼材の表面に形成されたスケールを除去する工程である。デスケール工程(S3)は、パルスレーザ光の照射を行うレーザデスケール工程(S3a)と、レーザデスケール工程後に研削を行う研削工程(S3b)とを含む。このようなデスケール工程を行うことにより、酸洗によるデスケールを行う必要がないため、酸洗に起因する環境負荷やコストの問題を解消することができる。
レーザデスケール工程(S3a)では、焼鈍により鋼材の表面に形成されたスケールに対してパルスレーザ光を照射することよってスケールを蒸散させる。パルスレーザ光の照射条件は、フルエンスをF[J/cm2]、パルス幅をτ[ns](ただし、τは10~1000nsである)とした場合に、以下の式(1)を満たすように設定される。
5.0×(τ/100)1/2≦F≦13.0×(τ/100)1/2 ・・・(1)
パルスレーザ光のフルエンスを式(1)の範囲とすることにより、表面の平滑性を確保しつつ十分なデスケール効果を得ることができる。パルスレーザ光のフルエンスが式(1)の下限値未満であると、デスケール効果が不十分となる。一方、パルスレーザ光のフルエンスが式(1)の上限値を超えると、表面が粗くなってしまい、研磨性が低下してしまう。なお、式(1)の下限値は、好ましくは6.0×(τ/100)1/2である。また、式(1)の上限値は、好ましくは12.0×(τ/100)1/2である。
なお、パルス幅は10~1000nsの範囲で設定される。パルス幅は、好ましくは30~500ns、より好ましくは50~300nsの範囲で設定するのがよい。
ここで、パルス幅は、パルスレーザ光が照射対象に熱作用する1パルス当りの時間である。また、フルエンスは、パルスレーザ光における単位面積当りのエネルギー密度である。本明細書においてフルエンスは、パルスレーザ光の1パルス当りのエネルギーをパルスレーザ光の照射面積で除した値となる。したがって、他の条件が同じであれば、パルスレーザ光のパルス幅が長くなるほどパルスレーザ光のフルエンスが大きくなる。
パルスレーザ光の照射は、レーザ発振器、レーザヘッド、駆動部及び制御部を備えるレーザ光照射装置を用いて行うことができる。
レーザ発振器は、レーザ光をパルス発振可能なものであれば、その種類は特に限定されない。レーザ発振器は、デスケールの時間短縮の観点から、単位面積当りのレーザ出力が大きい固体レーザであることが好ましい。
レーザヘッドは、レーザ発振器からパルス発振されたパルスレーザ光を集光し、焼鈍後の鋼材の表面に形成されたスケールに照射する。
駆動部は、レーザヘッドと接続されており、レーザヘッドを駆動してパルスレーザ光の照射位置を移動させる。
制御部は、レーザ発振器及びレーザヘッドと接続されており、パルスレーザ光の照射条件を制御する。パルスレーザ光の照射条件としては、例えば、フルエンス、パルス幅、発振周期、レーザ出力、照射速度、照射幅及びビーム径が挙げられる。
パルスレーザ光の発振周期は、特に限定されないが、60~120kHzであることが好ましい。このような範囲内にパルスレーザ光の発振周期を制御することにより、焼鈍により鋼材の表面に形成されたスケールに対してフルエンスが好適化されたパルスレーザ光を照射することができる。パルスレーザ光の発振周期が60kHzより小さいと、スケールへの単位時間当りの照射回数が減少し過ぎてしまう。そのため、デスケールを行うのに十分なフルエンスを有するパルスレーザ光を照射できないおそれがある。また、パルスレーザ光の発振周期が120kHzより大きいと、パルスレーザ光の1パルス当りのフルエンスが小さくなる。そのため、デスケールを行うのに十分なフルエンスを有するパルスレーザ光を照射できないおそれがある。
研削工程(S3b)では、レーザデスケール工程後の鋼材の表面を研削することによって、レーザデスケール工程で生じる可能性がある焼き付きや、耐食性が低下する原因となるCr欠乏層の除去を行う。
研削方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の研削用具(例えば、研削ブラシなど)を用いて行うことができる。
研削用具は、番手#80又はそれよりも粗い砥粒を有することが好ましい。研削をより強める場合には、研削用具は、番手#60又はそれよりも粗い砥粒を有することが望ましい。このような番手の砥粒を有する研削工具を用いることにより、表面欠陥の発生を抑制しつつ、焼き付きやCr欠乏層の除去を容易にすることができる。
デスケール工程(S3)は、レーザデスケール工程(S3a)の前に、予備デスケール工程(S3c)を更に含んでもよい。例えば、予備デスケール工程(S3c)として、ショットブラスト、ベンダー、レベラーを用いて鋼材の表面のスケールにひびや亀裂を入れる工程を含んでもよい。このような機械的な予備デスケール工程(S3c)を行うことにより、スケールが除去され易くなる。
なお、一般に、ショットブラストを用いた予備デスケール工程(S3c)を行うと、鋼材の表面に大きな凹凸が形成されるため、例えば、研削ブラシで研削を行っても、凹部に研削ブラシが接触せずに研削できない部分が生じることがある。しかしながら、研削ブラシによる研削の前にレーザデスケール工程(S3a)を行うと、ショットブラストによる大きな凹凸が低減されるため、研削ブラシによる研削が可能となり、焼き付きやCr欠乏層の除去を行うことができる。
予備デスケール工程(S3c)の種類及びその条件は、鋼種や使用する装置などに応じて適宜選択、調整すればよい。また、必要に応じ、予備デスケール工程(S3c)として、酸性水溶液を用いた酸洗工程を行ってもよい。なお、酸洗工程は、研削工程(S3b)後に行ってもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明の内容を詳細に説明する。
表1に示すNo.A~Gの鋼種の組成(残部はFe及び不純物である)を有するステンレス鋼30kgを真空溶解で溶製し、厚さ30mmのステンレス鋼片に鍛造した後、1230℃で2時間加熱し、厚さ3mmとなるように熱間圧延した。熱間圧延後の鋼板は、切削加工によって50mm(圧延方向)×50mm(幅方向)に切り出した。次に、切り出された鋼板を、電気炉を用い、大気雰囲気下、表2及び3に示す温度で1分焼鈍した後、空冷した。次に、表2及び3に示すデスケール工程を順次実施することによってステンレス熱延鋼板(試験材)を得た。表2及び3において、デスケール工程は、左側に記載されているほど先に実施したことを意味する。また、「a及びb」は、実施した工程の種類、「〇」は実施したこと、「--」は実施しなかったことを表す。さらに、レーザデスケール工程については、パルスレーザ光のフルエンス(括弧内の数値がフルエンスを表す)も併せて示す。
なお、No.A、C及びFの鋼種はオーステナイト系、No.B及びGの鋼種はフェライト・オーステナイト二相系、No.D及びEの鋼種はフェライト系である。
デスケール工程の詳細な条件は以下の通りである。
<予備デスケールa>
ベンダー及び/又はレベラーの代用としてラボ冷間圧延機による予備デスケールを行った。具体的には、このラボ冷間圧延機を用い、焼鈍された鋼板を圧延した。冷間圧延条件は、板厚の伸び率を2%とした。
<予備デスケールb>
ショットブラストによる予備デスケールを行った。具体的には、直径が約0.3mmの鉄球を、焼鈍された鋼板の表面に向けてインペラーから投射した。投射時間は10秒とした。
<レーザ>
パルスレーザ光を照射することによってレーザデスケールを行った。パルスレーザ光の照射条件(フルエンスを除く)は以下の通りとした。
波長:1085nm
パルス幅:100ns
発振周期:120kHz
照射速度:100Hz
レーザのビーム径:90μm
<研削>
番手#80の砥粒をナイロンに織り込んだホイール状の研削ブラシを用いて研削を行った。研削は、回転速度が約800rpm、押しつけ量2mm、通板速度20m/分の条件で行った。
Figure 2022170664000001
Figure 2022170664000002
Figure 2022170664000003
上記のようにして得られたステンレス熱延鋼板(試験材)について以下の評価を行った。
<デスケール判定>
ステンレス熱延鋼板の表面におけるスケールの有無を50倍でルーペ観察することによって評価した。この評価において、スケールが観察されず、スケールを十分に除去できたものを「〇」(デスケール性が良好)、スケールが観察され、スケールを十分に除去できなかったものを「×」(デスケール性が不良)と表す。
<表面粗さSq及びSdr>
ステンレス熱延鋼板の表面について、オリンパス株式会社製のレーザ顕微鏡(LEXT OLS410)を用いて画像撮影を行った。撮影した画像の解析は、オリンパス株式会社製のレーザ顕微鏡(LEXT OLS410)の解析ソフトを用いて行った。Sq及びSdrの測定はISO 25178-2:2012にそれぞれ準拠して行った。測定時の温度は23~25℃とした。また、これらの測定結果は、端部から5mmまでの範囲を除く任意の5箇所で測定した値の平均値を測定結果とした。なお、各測定位置の間は5mm以上離した。レーザ顕微鏡及び解析ソフトにおける主要な設定条件は下記の通りである。
光学ズーム倍率:200倍
ビーム径:0.2μm
取込み画像サイズ:4669μm×4720μm
<表面のビッカース硬さと厚み方向中心部のビッカース硬さとの差ΔHV>
ステンレス熱延鋼板から試験片を切り出し、ビッカース硬さ試験機を用い、JIS Z2244:2009に準拠して表面及び厚み方向中心部(板厚中心部)のビッカース硬さを求めた。試験力は0.05Nとした。ビッカース硬さは、任意の5箇所で求め、その平均値を結果とした。
なお、厚み方向中心部の測定面は、圧延方向に対して平行な断面とした。
<耐食性>
耐食性は、塩水噴霧、乾燥及び湿潤を繰り返す塩乾湿繰り返し試験(複合サイクル試験)によって評価した。複合サイクル試験は、複合サイクル試験機(スガ試験機株式会社製CYP-90)にステンレス熱延鋼材を設置した。サイクル条件はJIS H8502:1999に規定する中性塩水噴霧サイクル試験に準拠し、5%のNaCl水溶液の噴霧(35℃で15分)、乾燥(相対湿度30%、温度60℃で1時間)、及び湿潤(相対湿度95%、温度50℃で3時間)を1サイクルとして10サイクル行った。複合サイクル試験機におけるステンレス熱延鋼材の設置角度は、ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN)が30未満の場合(鋼No.A~E)に鉛直方向に対して20°とし、ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN)が30以上の場合(鋼No.F及びG)に水平(0°)とした。その後、ステンレス熱延鋼板を水洗して乾燥させ、ステンレス熱延鋼板の発銹面積率を算出した。
発銹面積率の算出は、次のような手順で行った。複合サイクル試験後のステンレス熱延鋼板の表面を写真撮影し、端面を除いた中央の25mm×25mmの範囲における発銹部分の面積の割合を求めた。発銹部分の面積は、ステンレス熱延鋼板の表面の写真を画像解析により2値化し、1ピクセルあたりの面積を算出した後、発銹部分のピクセル数をカウントして求めた。発銹面積率は、以下の式によって算出した。
発銹面積率(%)=発銹部分の面積(mm2)/観察部全体の面積(625mm2)×100
この評価において、発銹面積率が1%以下であったものを「○」(耐食性が良好)、1%を超えたものを「×」(耐食性が不良)とした。
<研磨性>
番手#400のアルミナを研磨剤として用い、ステンレス熱延鋼板の表面をバフ研磨することにより、約0.6μmの表層を除去した。研磨後のステンレス熱延鋼板の表面を、JIS Z8741:1997に準拠し、光沢度計(日本電色工業株式会社製PG-1M)を用いて45度鏡面光沢Gs(45°)を測定した。Gs(45°)は、端部から5mmまでの範囲を除く5箇所で測定を行い、その平均値を評価結果とした。なお、各測定位置の間は5mm以上離した。この評価において、Gs(45°)が500%以上であったものを「〇」、500%未満であったものを「×」と表す。
上記の各評価結果を表4及び5に示す。
Figure 2022170664000004
Figure 2022170664000005
表4及び5に示されるように、本発明例のステンレス熱延鋼板は、スケールを十分に除去できたため、デスケール性に優れるとともに、Sqが5.0μm以下、Sdrが25.0%以下であったため、耐食性にも優れていた。また、ΔHVが80以下である本発明例のステンレス熱延鋼板は、耐食性に加えて研磨性にも優れていた。
これに対して比較例のいくつかのステンレス熱延鋼板は、スケールを十分に除去できなかったため、デスケール性が不十分であった(No.1-5、1-6、2-5、3-5及び4-5)。また、比較例のいくつかのステンレス熱延鋼板は、Sq及びSdrが上記範囲であったものの、耐食性が十分でなかった(No.1-7、1-9)。これら2つの比較例(No.1-7、1-9)は、オーステナイト系ステンレス鋼を用いたステンレス熱延鋼板であり、レーザデスケール後に研削を行っていないため、Cr欠乏層が残存して耐食性が劣る結果になったものと推測される。さらに、比較例の残りのステンレス熱延鋼板は、Sq又はSdrのいずれかが上記範囲から外れていたため、耐食性が十分でなかった。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、耐食性に優れるステンレス熱延鋼材及びその製造方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. 二乗平均平方根高さSqが5.0μm以下、展開界面面積率Sdrが25.0%以下の表面粗さを有する、耐食性に優れるステンレス熱延鋼材。
  2. 表面のビッカース硬さと厚み方向中心部のビッカース硬さとの差ΔHVが80以下である、請求項1に記載のステンレス熱延鋼材。
  3. バフ研磨後に表面の45度鏡面光沢Gsが500%以上である、請求項1又は2に記載のステンレス熱延鋼材。
  4. ステンレス鋼片を熱間圧延する熱延工程と、
    前記熱間圧延された鋼材を焼鈍する焼鈍工程と、
    前記焼鈍された鋼材の表面に形成されたスケールを除去するデスケール工程と
    を含み、
    前記デスケール工程は、パルスレーザ光の照射を行うレーザデスケール工程と、前記レーザデスケール工程後に研削を行う研削工程とを含み、
    前記パルスレーザ光は、フルエンスをF[J/cm2]、パルス幅をτ[ns](ただし、τは10~1000nsである)とした場合に、以下の式(1)を満たすステンレス熱延鋼材の製造方法。
    5.0×(τ/100)1/2≦F≦13.0×(τ/100)1/2 ・・・(1)
  5. 請求項1~3のいずれか一項に記載のステンレス熱延鋼材を含む耐食性部材。
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