JP6107892B2 - 鋼部材および鋼部材の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、ステンレス鋼は高価であるため、耐食性の要求される様々な用途において、より廉価な耐食鋼材に置き換えることが検討されている。近年、ステンレスのように多量のCrを含有させることなく、良好な耐食性が得られる鋼材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によって提案された耐食鋼材は、Crを4〜9%、Al:0.1〜5%含有し、裸耐発錆性に優れた耐食鋼材である。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ステンレス鋼よりもCr含有量の少ない鋼部材であって、室内環境下で使用され、優れた熱間加工性および耐発錆性を有する鋼部材と、その製造方法を提供することを課題とする。
その結果、優れた熱間加工性および耐発錆性を有する鋼部材とするためには、鋼材の成分組成について、Cr:5.0%以上9.0%以下とするとともに、Mn:0.1%以上3.0%未満とすることにより耐発錆性を確保し、Al:0.05%以下に制限することにより熱間加工性を向上させる必要があることがわかった。
C:0.005%以上0.050%以下、
Si:0.10%以上1.00%以下、
Mn:0.1%以上3.0%未満、
P:0.030%以下、
S:0.005%以下、
Cr:5.0%以上8.0%以下、
Al:0.01%以上、0.05%以下、
N:0.020%以下
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼材からなり、
鋼材表面に、以下に示す(a)を満足する平滑領域が形成されていることを特徴とする鋼部材。
(a)粗さパラメータRaが0.04以上0.6以下。
(2)前記平滑領域が、更に以下に示す(b)を満足することを特徴とする(1)に記載の鋼部材。
(b)表面に垂直な方向に対して20±5度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm 2 当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合が20%以下。
(5)前記鋼材が、更に、質量%で、Ca:0.0005%以上0.010%以下、Mg:0.0005%以上0.010%以下、REM:0.001%以上0.010%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の鋼部材。
鋼材表面に、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行う表面処理工程を含むことを特徴とする鋼部材の製造方法。
「鋼部材」
図1(a)は、本発明の鋼部材の一例を示した概略断面図である。
図1(a)に示す本実施形態の鋼部材1は、鋼板であり、工作機械や産業機械の部品として室内環境下で用いられるものである。
本発明の鋼部材は、図1(a)に示すように、鋼板であってもよいし、鋼管であっても、鋼板や鋼管を加工して得られた部品であってもよく、如何なる形状であってもよい。また、本発明の鋼部材は、複数の部品を溶接することによって得られたものであってもよい。
また、本発明において「空調環境」とは、空調設備により気温・湿度が制御されている環境を意味する。また、本発明における空調環境は、気温が10〜35℃の範囲内になるように保たれているとともに、湿度が80%以下の範囲内になるように保たれている環境であることが好ましい。
(a)粗さパラメータRaが0.6以下。
(b)表面に垂直な方向に対して20±5度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm2当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合(以下「影領域比」という場合がある。)が20%以下。
図2はフライス加工による機械切削を行った鋼材の表面であり、図3は80番手の研磨剤を用いて機械研磨を行った鋼材の表面である。図4は、黒皮を除去した後、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子(ガラスビーズ)を1〜5分間、圧縮空気を用いて投射するブラスト処理を行った鋼材の表面である。また、図5は、黒皮を除去するために、酸洗処理とアルカリ中和処理を行った鋼板の表面の画像であり、図6は、黒皮を除去した後、鉱物用15段階評価によるモース硬度が12である粒子(セラミック)を1〜5分間、圧縮空気を用いて投射するブラスト処理を行った鋼材の表面である。なお、アルミナ、SiCなどのセラミックを投射するブラスト処理をセラミックブラスト処理と称する。図6はアルミナを投射した例である。
また、図5に示すように、酸洗処理とアルカリ中和処理を行った鋼板の影領域比は20%以下であるが、酸洗処理後、直ちにアルカリ中和処理を施さないと発錆する。このため、酸洗処理からアルカリ中和処理までの時間を短くする必要がある。鋼部材が大型である場合、酸洗処理からアルカリ中和処理までの時間を充分に短くすることは困難であるため、酸洗処理は、後述する常圧露出面処理工程として好ましくない。
Cは、鋼材の強度を向上させる元素であり、0.005%以上含有する必要がある。しかし、Cの含有量が多すぎると炭化物を形成して耐食性を阻害する。このため、C含有量の上限を0.050%とする。なお、強度と延性、溶接性のバランスを考慮すると0.005以上、0.030%以下が好ましい。さらに製造安定性を考慮すると、0.010%以上0.020%以下が好ましい。
Siは、脱酸剤および強化元素として含有することが有効である。Siの含有量が0.10%未満では、脱酸効果が充分に得られない。また、Siの含有量が1.00%を超えると、脱酸剤および強化元素としての効果は飽和する。したがって、鋼材に含まれるSiの含有量を0.10%以上1.00%以下に限定する。また、鋼材の強度を高めるには、Siを0.15%以上添加することが好ましく、0.18%以上の添加がより好ましい。一方、延性を確保するには、Siの含有量の上限は、0.80%以下が好ましく、0.50%以下がより好ましい。
Mnは、溶接部の靭性を向上させるとともに強度を向上させる元素であり、0.1%以上を添加する。また、Mnは、オーステナイト形成元素として作用し、粗大フェライトの形成を抑制する効果を有するため、0.2%以上を添加することが好ましい。また、フェライト形成元素であるCrが多量に含有され、フェライト単相組織になると、鋳片の割れなどが生じて製造性が低下することがあるため、Mnを0.5%以上含有させることが好ましい。しかし、Mnを3.0%以上含有させると、母材の延性が著しく低下するため、Mnの含有量は3.0%未満とする。1.6%を超えてMnを含有させると、腐食の起点となる介在物を形成し、耐食性が低下することがあるため、Mnの含有量は1.6%以下が好ましい。より好ましくは、Mnの含有量を1.0%以下とする。さらに、鋼材の強度、加工性、耐食性を考慮すると、Mnの含有量は0.6%以上0.9%以下が好ましい。
Pが多量に存在すると、延性が低下して製造性が低下する懸念がある。したがって、鋼材に含まれるPの含有量は少ないことが望ましく、Pの含有量は0.030%以下とする。
Sが多量に存在すると、耐孔食性が低下する。したがって、鋼材に含まれるSの含有量は、少ないことが望ましく、Sの含有量は0.005%以下とする。なお、耐孔食性と製造性のバランスを考慮すると0.003%以下が好ましい。
Crは、耐食性を確保するために5.0%以上を含有させることが必要である。しかし、9.0%を超えてCrを含有させてもコストが増すばかりか、延性を損なう。したがって、鋼材に含まれるCrの含有量は9.0%以下とする。なお、鋼材の製造性、溶接性、加工性を考慮すると、5.5%以上8.0%以下が好ましい。さらに経済性とのバランスを考慮すると、6.5%以上7.5%以下が好ましい。
Alは、脱酸剤として0.01%以上含有することが好ましく、0.02%以上含有することがより好ましい。しかし、Alを0.05%超えて含有させると、介在物の増加によって延性が低下したり、熱間加工性が低下して、熱間圧延を行う際に幅方向端部に耳割れを生じさせる原因となる。したがって、鋼材に含まれるAlの含有量の上限を0.05%以下に限定する。さらに、加工性、製造安定性を考慮すると、Alの含有量の上限は0.03%以下が好ましい。
Nは、多量に添加されると窒化物の形成などにより延性や耐食性を阻害する。このため、鋼材に含まれるNの含有量は0.020%以下とする。なお、耐食性、経済性、加工性を考慮すると、0.015%以下にすることが好ましい。
「Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%」
Cu、Niともに強度を改善するとともに、フェライト生成を抑制する効果がある。さらに、Niは延性・靭性を改善する効果がある。これらの効果を得るためには、Cuおよび/またはNiを0.05%以上含有させることが好ましい。しかし、Cu、Niは、いずれも0.50%を越えて含有させると脆化を生じさせる。このため、鋼材に含まれるCu、Niの含有量は、いずれも0.05〜0.50%であることが好ましい。さらに、Cu、Niともに耐食性、製造性、加工性を考慮すると、0.10〜0.30%にすることが好ましい。
Moは、CrおよびAlを含有する鋼材において、0.01%以上含有されることにより、孔食の発生と成長を抑制する効果が認められる元素である。しかし、0.20%を超えてMoを含有させると、上記効果が飽和するばかりか靭性を低下させる。したがって、鋼材に含まれるMoの含有量は、0.01%以上0.20%以下であることが好ましい。さらに、耐食性、製造性、加工性のバランスを考慮すると、0.05%以上0.10%以下にすることが好ましい。
Vは、Nbと同じく耐食性を損なわずに、強度を改善する元素である。Vを0.005%以上含有させることにより、上記効果が認められる。しかし、Vを多量に含有させると周知のように延性を阻害する。したがって、鋼材に含まれるVの含有量は0.005%以上0.050%以下であることが好ましい。
Nbは、耐食性を損なわずに、強度および靭性を改善する元素である。Nbを0.005%以上含有させることにより、上記効果が認められるが、0.050%を超えるとその効果が飽和する。したがって、鋼材に含まれるNbの含有量は、0.005%以上0.050%以下であることが好ましい。
Tiは、窒化物の生成を通じて高温での結晶粒径の細粒化に寄与する元素であり、耐食性を損なわずに、延性の改善に寄与する元素である。Tiを0.005%以上含有させることにより、上記効果が認められる。しかし、0.030%を超えるTiを含有させると、炭化物が多量に析出し、かえって延性を阻害する。したがって、鋼材に含まれるTiの含有量は、0.005%以上0.030%以下であることが好ましい。
Snは、Crと複合添加することによって、耐食性を向上させる元素であり、Snを0.01%以上含有させることが好ましい。しかし、0.30%を超えるSnを含有させると、熱間加工性が低下し、表面疵の原因となることがある。したがって、鋼材に含まれるSnの含有量は、0.01%以上0.30%以下であることが好ましい。より好ましくは、Snの含有量を0.03%以上とし、さらに好ましくは0.05%以上とする。
CaおよびMgは、CrおよびAlを含有する鋼において、耐食性を改善できる元素である。Caおよび/またはMgを0.0005%以上含有させることにより、上記効果が認められる。しかし、Caおよび/またはMgの含有量が0.010%を超えると、その効果が飽和するばかりではなく、延性や靭性が低下する傾向が明らかとなる。したがって、鋼材に含まれるCaおよびMgの含有量は、いずれも0.0005%以上0.010%以下であることが好ましい。
希土類元素(REM)は、耐食性を損なわずに延性を改善できる元素である。上記効果を得るためには、REMの含有量を0.001%以上とすることが好ましい。しかし、REMの含有量が多量であると、上記効果が阻害される。したがって、鋼材に含まれるREM(希土類元素)含有量は、0.001%以上0.010%以下であることが好ましい。
本実施形態においては、本発明の鋼部材の製造方法の一例として、図1(a)に示す鋼部材1の製造方法を例に挙げて説明する。なお、通常、本発明の鋼部材は、室内環境下で製造される。本発明の鋼部材の製造方法は、鋼材表面に、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、ブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行う表面処理工程を含む方法である。
黒皮を除去する際の生産性を高めるためには酸洗を行うことが好ましい。本発明における酸洗では、SUS304等に用いられる硝酸及びフッ酸からなる酸洗液を用いる方法では溶解速度が速すぎる。本発明における鋼板および/または鋼管の酸洗としては、例えば、表面をアルカリ性の溶液にて脱脂洗浄後、塩酸などの酸洗液に数時間浸漬し、黒皮を除去した後、アルカリ性溶液で中和処理する方法などを用いることが好ましい。
なお、上述の成分組成からなる鋼材は、電解研磨や酸洗などのウエット処理を施すと極めて発錆し易くなるため、表面処理工程は、機械切削、機械研削、機械研磨やブラスト処理などのドライ処理によって行う。
表面処理工程では、一面側表面11および他面側表面12に対してそれぞれ、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行う。表面処理工程を行うことにより、図1(a)に示す鋼部材1の一面側表面11および他面側表面12の全面が、表面の粗さパラメータRaが0.6以下、および/または影領域比が20%以下である平滑領域となる。
一面側表面11および他面側表面12を機械研削する工程としては、具体的には、例えば、砥石やグラインダーなどの工作機械を用いて表面を研削する方法などが挙げられる。粗さパラメータRaを小さくするには、平面研削盤を使用することが好ましい。
一面側表面11および他面側表面12を機械切削又は機械研削することにより、容易に効率よく、一面側表面11および他面側表面12の粗さパラメータRaを0.6以下にすることができる。
また、一面側表面11および他面側表面12に、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理を行った場合、一面側表面11および他面側表面12の形状に関わらず、容易に効率よく、一面側表面11および他面側表面12の影領域比を20%以下にすることができる。
また、本実施形態において一面側表面11に対して行う表面処理工程と、他面側表面12に対して行う表面処理工程とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
「鋼部材」
図1(b)は、本発明の鋼部材の他の例を示した概略断面図である。図1(b)に示す本実施形態の鋼部材10が、図1(a)に示す第1実施形態の鋼部材1と異なるところは、本実施形態の鋼部材10が、真空装置の部材としてクリーンルーム内などの空調環境下で用いられるものであって、鋼材表面のうち図1(b)に示す他面側表面12aが真空空間に露出される真空露出領域とされているところである。したがって、本実施形態においては、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同じ構成についての説明を省略する。
鋼部材10が真空装置の部材として空調環境下で用いられるものである場合、真空空間に露出される真空露出領域である他面側表面12aのガス放出を抑制する必要がある。本実施形態においては、他面側表面12aの粗さパラメータRaが0.1以下とされていることにより、他面側表面12aにおけるガス放出量が十分に少ないものとなっている。他面側表面12aの粗さパラメータRaは、より一層ガス放出量の少ないものとするために、0.07以下であることが好ましい。
本実施形態の鋼部材10を製造する場合、例えば、他面側表面12aに対する表面処理工程が、300番手以上の研磨剤を用いて機械研磨する真空露出面処理工程を含むこと以外は、第1実施形態と同様にして製造できる。
なお、他面側表面12aに対する表面処理工程は、300番手以上の研磨剤を用いて研磨する真空露出面処理工程のみであってもよいが、生産性を向上させるために、真空露出面処理工程に先立ち、機械切削する工程、機械研削する工程、200番手以下の研磨剤を用いる機械研磨する工程、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行うことが好ましい。
また、鋼部材が、鋼材表面に真空空間に露出される真空露出領域が形成されているものである場合、真空露出領域は、図1(b)に示す鋼部材10のように、鋼部材10の一方の面であってもよいし、鋼部材の一方の面または両面の一部であってもよい。
「実施例1」
表1および表2の試験例1〜38の成分組成を有する鋼を溶製、鋳造し、得られた鋼片を1200℃に加熱し、6パスにて総圧下率90%、仕上げ温度800℃の条件で熱間圧延して板厚3mmの鋼板を製造し、熱間加工性を評価した。
熱間加工性は、以下に示す方法により評価した。すなわち、鋼板端部の耳割れ状況を確認し、幅方向に入っている最大耳割れ部の長さが5mm未満のものを「○」とし、5mm以上のものを「×」とした。
熱間加工性の評価結果を表1および2に示す。
これに対し、Al含有量が0.05%超えており、成分組成が本発明の範囲外である試験例36〜38では、熱間加工性の評価結果が「×」であった。
曲げ試験として、JIS Z 2248に準拠して、90°曲げ試験を行った。
曲げ試験の結果は、曲げ部を目視で観察するか、または、浸透探傷試験を行い、割れが発生していないものを「○」とし、割れが発生しているものを「×」とした。
曲げ試験の評価結果を表1および2に示す。
これに対し、成分組成が本発明の範囲外である試験例25〜27では、曲げ試験の結果が「×」であった。
熱間加工性および曲げ試験の評価が「○」であった表1および表2の試験例1〜24、28〜35の成分組成を有する鋼を溶製、鋳造し、得られた鋼片を熱間圧延して板厚10mmの鋼板を製造した。得られた鋼板から、それぞれ縦200mm、横150mm、厚み10mmの試験片を採取した。その後、試験片に酸洗を行い、表面に形成されている黒皮を除去した。酸洗は、塩酸を用いて表面を洗浄した後、中和する方法により行った。次いで、表3および表4に示すように、一部の試験片に溶接歪み除去を模擬する焼鈍を施した。焼鈍の温度は550℃、保持時間は40分とした。
一面側表面の表面処理工程としては、表3および表4に示すように、機械切削する工程、フライスを用いて切削加工する機械研削する工程、機械研磨する工程、ブラスト処理工程のいずれか一以上を実施した。なお、試験例30、32、33、35の試験片の一面側表面にはアルミナを投射するブラスト処理工程(セラミックブラスト処理)のみを施した。また、試験例31、34の試験片の一面側表面には表面処理工程を施さなかった。
なお、Raは、JIS B0601−1994に従い、評価長さ標準値4.0mmを例とした粗さパラメータ測定結果より、平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値とした。
また、影領域比は、表面に垂直な方向に対して20度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm2当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合を算出することにより、求めた。
これに対し、表面処理工程を施さなかった試験例31、34の試験片では、粗さパラメータRaが0.6を超え、かつ表面の影領域比が20%超えていた。
また、表面処理工程として、セラミックブラスト処理のみを行った試験例35の試験片でも粗さパラメータRaが0.6を超え、かつ表面の影領域比が20%超えていた。
これに対し、表面処理工程を施さなかった試験例31、34、表面処理工程として、セラミックブラスト処理のみを行った試験例35の試験片は、「室内環境曝露試験」および「空調環境曝露試験」の評価が「×」であった。
「室内環境曝露試験」および「空調環境曝露試験」の評価が「◎」または「○」であった試験例1〜22、29、30、32、33の試験片の他面側表面に、表面処理工程を行った。
他面側表面の表面処理工程としては、表5および表6に示すように、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、ブラスト処理工程のいずれか一以上を実施した。
なお、機械研磨する工程として300番手以上の研磨剤を用いて機械研磨する工程を行ったものを「○」、200番手以下の研磨剤を用いて機械研磨する工程を行ったものを「×」で示した。
すなわち、試験片を真空中(1×10−5Pa以下)に保持して、250℃に加熱し、放出されたガスの質量分析を行って評価した。質量分析には四重極質量分析計を使用した。なお、ガス放出性試験の予備処理として、試験片をアセトン中で超音波洗浄して表面を脱脂し、真空中に保持して2時間経過した後、400℃で加熱し、60分冷却後、5分間大気中に放置し、吸湿条件を同一条件とした。
ガス放出性の評価結果を表5および表6に示す。
表5および表6に示すように、試験例1〜22、29、30、32、33の試験片のうち、表面の粗さパラメータRaが0.1以下である試験片では、ガス放出性の評価が「◎」または「○」となった。
Claims (7)
- 室内環境下で用いられる鋼部材であって、質量%で、
C:0.005%以上0.050%以下、
Si:0.10%以上1.00%以下、
Mn:0.1%以上3.0%未満、
P:0.030%以下、
S:0.005%以下、
Cr:5.0%以上8.0%以下、
Al:0.01%以上0.05%以下、
N:0.020%以下
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼材からなり、
鋼材表面に、以下に示す(a)を満足する平滑領域が形成されていることを特徴とする鋼部材。
(a)粗さパラメータRaが0.04以上0.6以下。 - 前記平滑領域が、更に以下に示す(b)を満足することを特徴とする請求項1に記載の鋼部材。
(b)表面に垂直な方向に対して20±5度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm 2 当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合が20%以下。 - 前記鋼材が、更に、質量%で、
Cu:0.05%以上0.50%以下、
Ni:0.05%以上0.50%以下
の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼部材。 - 前記鋼材が、更に、質量%で、
Mo:0.01%以上0.20%以下、
V:0.005%以上0.050%以下、
Nb:0.005%以上0.050%以下、
Ti:0.005%以上0.030%以下、
Sn:0.01%以上0.30%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の鋼部材。 - 前記鋼材が、更に、質量%で、
Ca:0.0005%以上0.010%以下、
Mg:0.0005%以上0.010%以下、
REM:0.001%以上0.010%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の鋼部材。 - 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の鋼部材の製造方法であり、
鋼材表面に、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行う表面処理工程を含むことを特徴とする鋼部材の製造方法。 - 前記球状粒子が、ガラスビーズであることを特徴とする請求項6に記載の鋼部材の製造方法。
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