JP5974678B2 - 鋼部材および鋼部材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、熱間加工性および耐発錆性に優れた室内環境下で用いられる鋼部材およびその製造方法に関する。
工作機械や産業機械の部品など、室内環境下で使用される部品において、耐食性が要求される場合には、一般に、部品の材料としてSUS304やSUS316Lなどのステンレス鋼が用いられている。
しかし、ステンレス鋼は高価であるため、耐食性の要求される様々な用途において、より廉価な耐食鋼材に置き換えることが検討されている。近年、ステンレスのように多量のCrを含有させることなく、良好な耐食性が得られる鋼材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によって提案された耐食鋼材は、Crを4〜9%、Al:0.1〜5%含有し、裸耐発錆性に優れた耐食鋼材である。
特開2008−127653号公報
しかしながら、従来のCrを4〜9%、Al:0.1〜5%含有する耐食鋼材は、熱間加工性が不十分であり、熱間圧延を行う際に幅方向端部に耳割れが生じる場合があった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ステンレス鋼よりもCr含有量の少ない鋼部材であって、室内環境下で使用され、優れた熱間加工性および耐発錆性を有する鋼部材と、その製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究した。
その結果、優れた熱間加工性および耐発錆性を有する鋼部材とするためには、鋼材の成分組成について、Cr:5.0%以上9.0%以下とするとともに、Mn:0.1%以上3.0%未満とすることにより耐発錆性を確保し、Al:0.05%以下に制限することにより熱間加工性を向上させる必要があることがわかった。
また、発錆を十分に防止するためには、表面を滑らかにする必要があることがわかった。表面を滑らかにするには、粗さパラメータRaを低下させるか、凹凸の形状を制御することが必要である。Cr:5.0%以上9.0%以下、Al:0.05%以下、Mn:0.1%以上3.0%未満である成分組成を有する鋼部材の表面を滑らかにすることによって、耐発錆性が向上する理由については必ずしも明確ではないが、表面に形成される酸化皮膜の形態によるものと考えられる。すなわち、成分組成を最適化した鋼部材の粗さパラメータRaを低下させるか、凹凸の形状を制御することによって、表面に連続的な酸化皮膜が形成されることになり、耐発錆性が向上するものと考えられる。
本発明者は、さらに鋭意研究を重ね、鋼部材の表面において、(a)粗さパラメータRaを0.6以下とすること、(b)表面に垂直な方向に対して20±5度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合を20%以下とすること、のいずれか一方または両方を満足することが必要であるという知見を得た。上記(a)、上記(b)のいずれか一方または両方を満足すれば、発錆の起点となりやすい凹凸が十分に少ないものとなり、室内環境下で使用される鋼部材の表面として十分な耐発錆性が得られる。
本発明は以上のような知見に基づいて完成されたものであって、その要旨は、以下のとおりである。
(1)室内環境下で用いられる鋼部材であって、質量%で、
C:0.005%以上0.050%以下、
Si:0.10%以上1.00%以下、
Mn:0.1%以上3.0%未満、
P:0.030%以下、
S:0.005%以下、
Cr:5.0%以上9.0%以下、
Al:0.05%以下、
N:0.020%以下
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼材からなり、
鋼材表面に、以下に示す(a)(b)のいずれか一方または両方を満足する平滑領域、及び、真空空間に露出される真空露出領域が形成されており、前記真空露出領域の粗さパラメータRaが0.1以下とされていることを特徴とする鋼部材。
(a)粗さパラメータRaが0.6以下。
(b)表面に垂直な方向に対して20±5度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合が20%以下。
(2)前記鋼材が、更に、質量%で、Cu:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上0.50%以下の1種または2種を含有することを特徴とする(1)に記載の鋼部材。
)前記鋼材が、更に、質量%で、Mo:0.01%以上0.20%以下、V:0.005%以上0.050%以下、Nb:0.005%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.030%以下、Sn:0.01%以上0.30%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)または2)に記載の鋼部材。
)前記鋼材が、更に、質量%で、Ca:0.0005%以上0.010%以下、Mg:0.0005%以上0.010%以下、REM:0.001%以上0.010%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜()のいずれか一項に記載の鋼部材。
(5)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の鋼部材の製造方法であり、
鋼材表面に、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行う表面処理工程を含み、前記鋼材表面のうち真空空間に露出される領域に対する前記表面処理工程が、300番手以上の研磨剤を用いて機械研磨する真空露出面処理工程を含むことを特徴とする鋼部材の製造方法。
(6)前記球状粒子が、ガラスビーズであることを特徴とする(5)に記載の鋼部材の製造方法。
本発明の鋼部材は、所定の成分組成を有する鋼材からなり、鋼材表面に、(a)一面側表面の粗さパラメータRaが0.6以下、(b)一面側表面に垂直な方向に対して20±5度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm当たりの輝度分布0〜255の領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合が20%以下、のいずれか一方または両方を満足する平滑領域が形成されているものであるので、優れた熱間加工性および耐発錆性を有するものとなる。
図1(a)は、本発明の鋼部材の一例を示した概略断面図であり、図1(b)は、本発明の鋼部材の他の例を示した概略断面図である。 図2は、機械切削を行なった鋼材の表面の画像の一例である。 図3は、機械研磨を行なった鋼材の表面の画像の一例である。 図4は、ガラスビーズブラスト処理を行なった鋼材の表面の画像の一例である。 図5は、酸洗によって黒皮を除去した鋼材の表面の画像の一例である。 図6は、セラミックブラスト処理を行なった鋼材の表面の画像の一例である。
(第1実施形態)
「鋼部材」
図1(a)は、本発明の鋼部材の一例を示した概略断面図である。
図1(a)に示す本実施形態の鋼部材1は、鋼板であり、工作機械や産業機械の部品として室内環境下で用いられるものである。
本発明の鋼部材は、図1(a)に示すように、鋼板であってもよいし、鋼管であっても、鋼板や鋼管を加工して得られた部品であってもよく、如何なる形状であってもよい。また、本発明の鋼部材は、複数の部品を溶接することによって得られたものであってもよい。
なお、本発明の鋼部材は、例えば、真空装置の真空容器(チャンバー)の部材など、空調環境下で用いられるものであってもよい。鋼部材1が、空調環境下で用いられるものである場合、より長期間にわたって優れた耐発錆性が得られる。
なお、本発明において「室内環境」とは、屋根および壁で囲われており、風雨に曝されることはないものの、大気に露出され、気温および湿度の調整や空気の清浄化がなされていない環境を意味する。室内環境では、発汗、更には海塩粒子の飛来によって、鋼部材1の表面に塩分が堆積し、腐食環境となる場合がある。
また、本発明において「空調環境」とは、空調設備により気温・湿度が制御されている環境を意味する。また、本発明における空調環境は、気温が10〜35℃の範囲内になるように保たれているとともに、湿度が80%以下の範囲内になるように保たれている環境であることが好ましい。
図1(a)に示す鋼部材1は、後述する所定の成分組成を有する鋼材からなるものである。また、鋼部材1においては、一面側表面11も他面側表面12も全面が使用時に大気に露出される領域であり、以下に示す(a)(b)のいずれか一方または両方を満足する平滑領域とされている。
(a)粗さパラメータRaが0.6以下。
(b)表面に垂直な方向に対して20±5度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合(以下「影領域比」という場合がある。)が20%以下。
なお、本発明における粗さパラメータRaは、算術平均粗さ(JIS B0601−1994)を意味している。また、本発明において、表面の粗さパラメータRaは、評価長さ標準値4.0mmを例とした粗さパラメータ測定結果より、平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値とし、単位μmで表す。
影領域比とは、表面に垂直な方向に対して20±5度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合を意味している。なお、本発明において、影領域比を算出する際の単位面積は、影領域比のばらつきを少なくするため、1mm以上とする。また、影領域比を算出する際に用いる光は、表面に切削ラインが形成されている場合には、平面視で切削ラインと直交する方向から照射する。
影領域比の測定方法について、さらに具体的に説明する。
図2はフライス加工による機械切削を行った鋼材の表面であり、図3は80番手の研磨剤を用いて機械研磨を行った鋼材の表面である。図4は、黒皮を除去した後、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子(ガラスビーズ)を1〜5分間、圧縮空気を用いて投射するブラスト処理を行った鋼材の表面である。また、図5は、黒皮を除去するために、酸洗処理とアルカリ中和処理を行った鋼板の表面の画像であり、図6は、黒皮を除去した後、鉱物用15段階評価によるモース硬度が12である粒子(セラミック)を1〜5分間、圧縮空気を用いて投射するブラスト処理を行った鋼材の表面である。なお、アルミナ、SiCなどのセラミックを投射するブラスト処理をセラミックブラスト処理と称する。図6はアルミナを投射した例である。
また、図2〜図6は、表面に垂直な方向に対して20度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm当たりの撮影輝度を0から255分割による輝度分布として測定し、そのうち輝度分布128数値以下の輝度領域と輝度分布128数値超の輝度領域とを分離し、輝度128数値以下の領域面積を抽出した画像である。なお、図2〜6の各視野の面積は1.5mmに相当する。
図2〜図6に示した画像のうち、白色の部分の面積を全体の面積で除し、面積比をパーセントで評価したものが影領域比である。図2に示す鋼材の影領域比は15%、図3に示す鋼材の影領域比は4%、図4に示す鋼材の影領域比は12%である。また、図5に示す鋼材の影領域比は7%、図6に示す鋼材の影領域比は29%である。
図6に示す鋼材では、ブラスト処理に用いた粒子のモース硬度が大きいため、セラミックブラスト処理によって影領域比が20%を超えている。ブラスト処理に用いる粒子のモース硬度の上限は7.5以下にすることが必要である。
また、図5に示すように、酸洗処理とアルカリ中和処理を行った鋼板の影領域比は20%以下であるが、酸洗処理後、直ちにアルカリ中和処理を施さないと発錆する。このため、酸洗処理からアルカリ中和処理までの時間を短くする必要がある。鋼部材が大型である場合、酸洗処理からアルカリ中和処理までの時間を充分に短くすることは困難であるため、酸洗処理は、後述する常圧露出面処理工程として好ましくない。
図1(a)に示す鋼部材1の一面側表面11および他面側表面12は、粗さパラメータRaが0.6以下および/または影領域比が20%以下であるものであり、一面側表面11および他面側表面12における錆びの発生が十分に防止されたものとなっている。一面側表面11および他面側表面12の粗さパラメータRaが0.6を超え、なおかつ、影領域比が20%を超えると、使用時に大気に露出される領域である一面側表面11および他面側表面12の耐発錆性が不十分となり、一面側表面11および他面側表面12に錆びが生じやすくなる。
次に、鋼部材1を構成する鋼材の成分組成について説明する。本発明において鋼部材1に用いられる鋼材は、下記の各元素を下記含有量で含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する。なお、以下の説明において「%」は、特に断りがない場合「質量%」を意味する。
「C:0.005%以上0.050%以下」
Cは、鋼材の強度を向上させる元素であり、0.005%以上含有する必要がある。しかし、Cの含有量が多すぎると炭化物を形成して耐食性を阻害する。このため、C含有量の上限を0.050%とする。なお、強度と延性、溶接性のバランスを考慮すると0.005以上、0.030%以下が好ましい。さらに製造安定性を考慮すると、0.010%以上0.020%以下が好ましい。
「Si:0.10%以上1.00%以下」
Siは、脱酸剤および強化元素として含有することが有効である。Siの含有量が0.10%未満では、脱酸効果が充分に得られない。また、Siの含有量が1.00%を超えると、脱酸剤および強化元素としての効果は飽和する。したがって、鋼材に含まれるSiの含有量を0.10%以上1.00%以下に限定する。また、鋼材の強度を高めるには、Siを0.15%以上添加することが好ましく、0.18%以上の添加がより好ましい。一方、延性を確保するには、Siの含有量の上限は、0.80%以下が好ましく、0.50%以下がより好ましい。
「Mn:0.1%以上3.0未満」
Mnは、溶接部の靭性を向上させるとともに強度を向上させる元素であり、0.1%以上を添加する。また、Mnは、オーステナイト形成元素として作用し、粗大フェライトの形成を抑制する効果を有するため、0.2%以上を添加することが好ましい。また、フェライト形成元素であるCrが多量に含有され、フェライト単相組織になると、鋳片の割れなどが生じて製造性が低下することがあるため、Mnを0.5%以上含有させることが好ましい。しかし、Mnを3.0%以上含有させると、母材の延性が著しく低下するため、Mnの含有量は3.0%未満とする。1.6%を超えてMnを含有させると、腐食の起点となる介在物を形成し、耐食性が低下することがあるため、Mnの含有量は1.6%以下が好ましい。より好ましくは、Mnの含有量を1.0%以下とする。さらに、鋼材の強度、加工性、耐食性を考慮すると、Mnの含有量は0.6%以上0.9%以下が好ましい。
「P:0.030%以下」
Pが多量に存在すると、延性が低下して製造性が低下する懸念がある。したがって、鋼材に含まれるPの含有量は少ないことが望ましく、Pの含有量は0.030%以下とする。
「S:0.005%以下」
Sが多量に存在すると、耐孔食性が低下する。したがって、鋼材に含まれるSの含有量は、少ないことが望ましく、Sの含有量は0.005%以下とする。なお、耐孔食性と製造性のバランスを考慮すると0.003%以下が好ましい。
「Cr:5.0%以上9.0%以下」
Crは、耐食性を確保するために5.0%以上を含有させることが必要である。しかし、9.0%を超えてCrを含有させてもコストが増すばかりか、延性を損なう。したがって、鋼材に含まれるCrの含有量は9.0%以下とする。なお、鋼材の製造性、溶接性、加工性を考慮すると、5.5%以上8.0%以下が好ましい。さらに経済性とのバランスを考慮すると、6.5%以上7.5%以下が好ましい。
「Al:0.05%以下」
Alは、脱酸剤として0.01%以上含有することが好ましく、0.02%以上含有することがより好ましい。しかし、Alを0.05%超えて含有させると、介在物の増加によって延性が低下したり、熱間加工性が低下して、熱間圧延を行う際に幅方向端部に耳割れを生じさせる原因となる。したがって、鋼材に含まれるAlの含有量の上限を0.05%以下に限定する。さらに、加工性、製造安定性を考慮すると、Alの含有量の上限は0.03%以下が好ましい。
「N:0.020%以下」
Nは、多量に添加されると窒化物の形成などにより延性や耐食性を阻害する。このため、鋼材に含まれるNの含有量は0.020%以下とする。なお、耐食性、経済性、加工性を考慮すると、0.015%以下にすることが好ましい。
さらに、本発明では以下の元素を選択して添加できる。
「Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%」
Cu、Niともに強度を改善するとともに、フェライト生成を抑制する効果がある。さらに、Niは延性・靭性を改善する効果がある。これらの効果を得るためには、Cuおよび/またはNiを0.05%以上含有させることが好ましい。しかし、Cu、Niは、いずれも0.50%を越えて含有させると脆化を生じさせる。このため、鋼材に含まれるCu、Niの含有量は、いずれも0.05〜0.50%であることが好ましい。さらに、Cu、Niともに耐食性、製造性、加工性を考慮すると、0.10〜0.30%にすることが好ましい。
「Mo:0.01%以上0.20%以下」
Moは、CrおよびAlを含有する鋼材において、0.01%以上含有されることにより、孔食の発生と成長を抑制する効果が認められる元素である。しかし、0.20%を超えてMoを含有させると、上記効果が飽和するばかりか靭性を低下させる。したがって、鋼材に含まれるMoの含有量は、0.01%以上0.20%以下であることが好ましい。さらに、耐食性、製造性、加工性のバランスを考慮すると、0.05%以上0.10%以下にすることが好ましい。
「V:0.005%以上0.050%以下」
Vは、Nbと同じく耐食性を損なわずに、強度を改善する元素である。Vを0.005%以上含有させることにより、上記効果が認められる。しかし、Vを多量に含有させると周知のように延性を阻害する。したがって、鋼材に含まれるVの含有量は0.005%以上0.050%以下であることが好ましい。
「Nb:0.005%以上0.050%以下」
Nbは、耐食性を損なわずに、強度および靭性を改善する元素である。Nbを0.005%以上含有させることにより、上記効果が認められるが、0.050%を超えるとその効果が飽和する。したがって、鋼材に含まれるNbの含有量は、0.005%以上0.050%以下であることが好ましい。
「Ti:0.005%以上0.030%以下」
Tiは、窒化物の生成を通じて高温での結晶粒径の細粒化に寄与する元素であり、耐食性を損なわずに、延性の改善に寄与する元素である。Tiを0.005%以上含有させることにより、上記効果が認められる。しかし、0.030%を超えるTiを含有させると、炭化物が多量に析出し、かえって延性を阻害する。したがって、鋼材に含まれるTiの含有量は、0.005%以上0.030%以下であることが好ましい。
「Sn:0.01%以上0.30%以下」
Snは、Crと複合添加することによって、耐食性を向上させる元素であり、Snを0.01%以上含有させることが好ましい。しかし、0.30%を超えるSnを含有させると、熱間加工性が低下し、表面疵の原因となることがある。したがって、鋼材に含まれるSnの含有量は、0.01%以上0.30%以下であることが好ましい。より好ましくは、Snの含有量を0.03%以上とし、さらに好ましくは0.05%以上とする。
「Ca:0.0005%以上0.010%以下、Mg:0.0005%以上0.010%以下」
CaおよびMgは、CrおよびAlを含有する鋼において、耐食性を改善できる元素である。Caおよび/またはMgを0.0005%以上含有させることにより、上記効果が認められる。しかし、Caおよび/またはMgの含有量が0.010%を超えると、その効果が飽和するばかりではなく、延性や靭性が低下する傾向が明らかとなる。したがって、鋼材に含まれるCaおよびMgの含有量は、いずれも0.0005%以上0.010%以下であることが好ましい。
「REM(希土類元素):0.001%以上0.010%以下」
希土類元素(REM)は、耐食性を損なわずに延性を改善できる元素である。上記効果を得るためには、REMの含有量を0.001%以上とすることが好ましい。しかし、REMの含有量が多量であると、上記効果が阻害される。したがって、鋼材に含まれるREM(希土類元素)含有量は、0.001%以上0.010%以下であることが好ましい。
「鋼部材の製造方法」
本実施形態においては、本発明の鋼部材の製造方法の一例として、図1(a)に示す鋼部材1の製造方法を例に挙げて説明する。なお、通常、本発明の鋼部材は、室内環境下で製造される。本発明の鋼部材の製造方法は、鋼材表面に、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、ブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行う表面処理工程を含む方法である。
図1(a)に示す鋼部材1を製造するには、まず、上述した成分組成を有する鋼板を用意する。鋼板は、上述した鋼材の成分組成を有する鋼片を加熱後、熱間圧延し、必要に応じて焼入れ、焼戻しや焼きならしなどの熱処理工程を行うことにより製造される。鋼板の製造に用いられる鋼片は、転炉あるいは、電気炉により成分調整され溶製後、連続鋳造法および造塊・分塊法などの工程により製造される。
なお、本発明の鋼部材が上述した所定の成分組成および表面状態を有する鋼材からなる管状の部品である場合には、上述した鋼材の成分組成を有する鋼板に代えて、上述した鋼材の成分組成を有する鋼管を用意する。鋼管は、上述した鋼材の成分組成を有する鋼片を加熱後、熱間圧延し、必要に応じて焼入れ、焼戻しや焼きならしなどの熱処理工程を行うことにより製造できる。
このようにして得られた鋼板および/または鋼管の表面には、通常、黒皮が形成されているため、機械切削、機械研削、酸洗のいずれかを行い、黒皮を除去する。
黒皮を除去する際の生産性を高めるためには酸洗を行うことが好ましい。本発明における酸洗では、SUS304等に用いられる硝酸及びフッ酸からなる酸洗液を用いる方法では溶解速度が速すぎる。本発明における鋼板および/または鋼管の酸洗としては、例えば、表面をアルカリ性の溶液にて脱脂洗浄後、塩酸などの酸洗液に数時間浸漬し、黒皮を除去した後、アルカリ性溶液で中和処理する方法などを用いることが好ましい。
次に、本実施形態においては、鋼部材1の形状加工工程を行う。形状加工工程においては、まず、鋼部材1に対応する形状となるように、鋼板および/または鋼管を所定の形状に切断し、必要に応じて曲げ加工や溶接等を行う。なお、形状加工工程において溶接を行った場合は、必要に応じて、鋼部材1に負荷された溶接歪などの応力を除去するため、熱処理などの応力除去工程を行うことが好ましい。
次に、本実施形態においては、精密形状加工を行って、形状加工工程により形成された部材の形状を、図1(a)に示す鋼部材1の形状とする。このことにより、上述した成分組成を有する鋼材からなる鋼部材1となる。なお、精密形状加工は、形状加工工程により、十分な寸法精度で鋼部材1の形状を形成できる場合には省略してもよい。また、精密形状加工は、以下に説明する表面処理工程の後に行ってもよい。
なお、上述の成分組成からなる鋼材は、電解研磨や酸洗などのウエット処理を施すと極めて発錆し易くなるため、表面処理工程は、機械切削、機械研削、機械研磨やブラスト処理などのドライ処理によって行う。
次に、本実施形態においては、一面側表面11および他面側表面12に、表面処理工程を行う。一面側表面11および他面側表面12は、鋼部材1の表面における使用時に大気に露出される領域である。
表面処理工程では、一面側表面11および他面側表面12に対してそれぞれ、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行う。表面処理工程を行うことにより、図1(a)に示す鋼部材1の一面側表面11および他面側表面12の全面が、表面の粗さパラメータRaが0.6以下、および/または影領域比が20%以下である平滑領域となる。
鋼部材1の一面側表面11および他面側表面12を機械切削する工程としては、具体的には、例えば、フライスなどの工作機械を用いて表面を切削する方法などが挙げられる。例えば、フライスを用いて切削加工する場合には、回転数を上げ、送り速度を遅くすることにより、粗さパラメータRaを小さくすることができる。
一面側表面11および他面側表面12を機械研削する工程としては、具体的には、例えば、砥石やグラインダーなどの工作機械を用いて表面を研削する方法などが挙げられる。粗さパラメータRaを小さくするには、平面研削盤を使用することが好ましい。
一面側表面11および他面側表面12を機械切削又は機械研削することにより、容易に効率よく、一面側表面11および他面側表面12の粗さパラメータRaを0.6以下にすることができる。
一面側表面11および他面側表面12を機械研磨する工程は、研磨剤を用いて表面を研磨する方法などである。研磨剤の番手は、粗さパラメータを測定しながら、適宜、調整すればよい。
また、一面側表面11および他面側表面12に、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理を行った場合、一面側表面11および他面側表面12の形状に関わらず、容易に効率よく、一面側表面11および他面側表面12の影領域比を20%以下にすることができる。
ブラスト処理において用いる球状粒子のモース硬度は、ブラスト処理に要する時間やブラスト処理後の外面の影領域比に影響を及ぼす。球状粒子のモース硬度を5.5以上にすると、ブラスト処理に必要な時間を短くすることが可能になり、生産性を高めることができる。また、ブラスト処理に用いる球状粒子のモース硬度が硬すぎると、ブラスト処理による一面側表面11および他面側表面12への衝撃が強くなりすぎて、一面側表面11および他面側表面12の影領域比が大きくなることがある。球状粒子のモース硬度を7.5以下にすると、一面側表面11および他面側表面12の影領域比を十分に小さくできる。
ブラスト処理において用いる球状粒子は、ガラスビーズであることが好ましい。球状粒子がガラスビーズである場合、一面側表面11および他面側表面12にガラスビーズが残留したとしても、一面側表面11および他面側表面12の錆びの原因になりにくく、好ましい。なお、ガラスビーズを投射するブラスト処理をガラスビーズブラスト処理と称する。表面処理工程としては、フライスを用いて切削加工した後に、ガラスビーズブラスト処理を施す態様が最適である。
また、本実施形態においては、表面処理工程が、一面側表面11および他面側表面12を機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、ブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行った後に、一面側表面11および他面側表面12をクエン酸処理する工程を含むことが好ましい。このことにより、表面処理工程によって形成された平滑領域である一面側表面11および他面側表面12がより一層滑らかなものとなり、一面側表面11および他面側表面12の影領域比がより一層小さくなり、一面側表面11および他面側表面12の耐発錆性をより一層向上させることができる。
また、本実施形態においては、鋼部材1の形状加工工程の後に表面処理工程をこの順序で行ったが、この順序に限定されるものではなく、形状加工工程の前に、表面処理工程を行ってもよい。ただし、形状加工工程において溶接歪みを除去するための熱処理を施す場合、熱処理雰囲気によっては酸化皮膜が生成するので、形状加工工程の後に、表面処理工程を行うことが好ましい。
また、本実施形態において一面側表面11に対して行う表面処理工程と、他面側表面12に対して行う表面処理工程とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本実施形態の鋼部材1は、所定の成分組成を有する鋼材からなり、鋼材表面である一面側表面11および他面側表面12に、粗さパラメータRaが0.6以下および/または表面の影領域比が20%以下である平滑領域が形成されているので、優れた熱間加工性および耐発錆性が得られる。
(第2実施形態)
「鋼部材」
図1(b)は、本発明の鋼部材の他の例を示した概略断面図である。図1(b)に示す本実施形態の鋼部材10が、図1(a)に示す第1実施形態の鋼部材1と異なるところは、本実施形態の鋼部材10が、真空装置の部材としてクリーンルーム内などの空調環境下で用いられるものであって、鋼材表面のうち図1(b)に示す他面側表面12aが真空空間に露出される真空露出領域とされているところである。したがって、本実施形態においては、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同じ構成についての説明を省略する。
本実施形態の鋼部材10では、他面側表面12aの粗さパラメータRaが0.1以下であるものとされている。
鋼部材10が真空装置の部材として空調環境下で用いられるものである場合、真空空間に露出される真空露出領域である他面側表面12aのガス放出を抑制する必要がある。本実施形態においては、他面側表面12aの粗さパラメータRaが0.1以下とされていることにより、他面側表面12aにおけるガス放出量が十分に少ないものとなっている。他面側表面12aの粗さパラメータRaは、より一層ガス放出量の少ないものとするために、0.07以下であることが好ましい。
他面側表面12aの粗さパラメータRaが0.1を超えると、本実施形態の鋼部材10の他面側表面12aを真空装置の真空空間に露出させて配置した場合に、他面側表面12aからのガス放出量を十分に低下させることができず、真空空間の圧力を低下させにくくなり、真空装置の真空度が不十分となる恐れがある。なお、他面側表面12aの粗さパラメータRaを0.03未満にすると、生産性が低下するため、粗さパラメータRaは0.03以上であることが好ましい。
また、本実施形態の鋼部材10においても、第1実施形態の鋼部材1と同様に、一面側表面11は使用時に大気に露出される領域とされており、粗さパラメータRaが0.6以下および/または影領域比が20%以下の平滑領域とされている。
「鋼部材の製造方法」
本実施形態の鋼部材10を製造する場合、例えば、他面側表面12aに対する表面処理工程が、300番手以上の研磨剤を用いて機械研磨する真空露出面処理工程を含むこと以外は、第1実施形態と同様にして製造できる。
なお、他面側表面12aに対する表面処理工程は、300番手以上の研磨剤を用いて研磨する真空露出面処理工程のみであってもよいが、生産性を向上させるために、真空露出面処理工程に先立ち、機械切削する工程、機械研削する工程、200番手以下の研磨剤を用いる機械研磨する工程、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行うことが好ましい。
本実施形態において、真空露出面処理工程を行うことにより、図1(b)に示す他面側表面12aの粗さパラメータがRa0.1以下とされる。また、真空露出面処理工程において、他面側表面12aを300番手から800番手の研磨剤を用いて研磨することにより、容易に他面側表面12aの粗さパラメータRaを0.03以上0.1以下にすることができる。
また、真空露出面処理工程は、他面側表面12aを300番手以上の研磨剤を用いて研磨する工程の後に、さらに他面側表面12aをクエン酸処理する工程を含む工程であることが好ましい。この場合、他面側表面12aを300番手以上の研磨剤を用いて研磨することにより形成された加工エッジを、クエン酸処理によって除去することができる。これにより、真空空間に露出される領域である他面側表面12aが、より一層滑らかなものとなり、他面側表面12aの粗さパラメータRaがより一層小さいものとなる。その結果、他面側表面12aのガス放出量をより一層低減させることができる。
なお、他面側表面12aに対する真空露出面処理工程は、一面側表面11に対する表面処理工程を行った後に行ってもよいが、一面側表面11に対する表面処理工程を行う前に行ってもよい。また、真空露出面処理工程は、形状加工工程の前に行ってもよいし、形状加工工程の後に行ってもよい。ただし、形状加工工程において溶接歪みを除去するための熱処理を施す場合、熱処理雰囲気によっては酸化皮膜が生成するので、形状加工工程の後に、真空露出面処理工程を行うことが好ましい。
本実施形態の鋼部材10は、所定の成分組成を有する鋼材からなり、使用時に大気に露出される領域である一面側表面11が、粗さパラメータRaが0.6以下および/または表面の影領域比が20%以下であり、真空空間に露出される領域である他面側表面12aが0.1以下の粗さパラメータRaとされているものであるので、一面側表面11において優れた熱間加工性および耐発錆性が得られるとともに、他面側表面12aのガス放出量が十分に少ないものとなる。したがって、本実施形態の鋼部材10は、真空装置の部材として好適に用いることができる。
なお、本発明の鋼部材において、粗さパラメータRaが0.6以下および/または表面の影領域比が20%以下である平滑領域は、図1(a)に示す鋼部材1のように、鋼部材1の両面であってもよいし、図1(b)に示す鋼部材10のように、鋼部材10の一方の面であってもよいし、鋼部材の一方の面または両面の一部であってもよい。
また、鋼部材が、鋼材表面に真空空間に露出される真空露出領域が形成されているものである場合、真空露出領域は、図1(b)に示す鋼部材10のように、鋼部材10の一方の面であってもよいし、鋼部材の一方の面または両面の一部であってもよい。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
「実施例1」
表1および表2の試験例1〜38の成分組成を有する鋼を溶製、鋳造し、得られた鋼片を1200℃に加熱し、6パスにて総圧下率90%、仕上げ温度800℃の条件で熱間圧延して板厚3mmの鋼板を製造し、熱間加工性を評価した。
熱間加工性は、以下に示す方法により評価した。すなわち、鋼板端部の耳割れ状況を確認し、幅方向に入っている最大耳割れ部の長さが5mm未満のものを「○」とし、5mm以上のものを「×」とした。
熱間加工性の評価結果を表1および2に示す。
表1および2に示すように、本発明の実施例である試験例1〜22、29、30、32、33では、熱間加工性の評価は全て「○」となった。
これに対し、Al含有量が0.05%超えており、成分組成が本発明の範囲外である試験例36〜38では、熱間加工性の評価結果が「×」であった。
次に、熱間加工性の評価が「○」であった表1および表2の試験例1〜35の成分組成を有する鋼を溶製、鋳造し、得られた鋼片を熱間圧延して板厚10mmの鋼板を製造し、曲げ試験を行った。
曲げ試験として、JIS Z 2248に準拠して、90°曲げ試験を行った。
曲げ試験の結果は、曲げ部を目視で観察するか、または、浸透探傷試験を行い、割れが発生していないものを「○」とし、割れが発生しているものを「×」とした。
曲げ試験の評価結果を表1および2に示す。
表1および2に示すように、本発明の実施例である試験例1〜22、29、30、32、33では、曲げ試験の評価も全て「○」となった。
これに対し、成分組成が本発明の範囲外である試験例25〜27では、曲げ試験の結果が「×」であった。
「実施例2」
熱間加工性および曲げ試験の評価が「○」であった表1および表2の試験例1〜24、28〜35の成分組成を有する鋼を溶製、鋳造し、得られた鋼片を熱間圧延して板厚10mmの鋼板を製造した。得られた鋼板から、それぞれ縦200mm、横150mm、厚み10mmの試験片を採取した。その後、試験片に酸洗を行い、表面に形成されている黒皮を除去した。酸洗は、塩酸を用いて表面を洗浄した後、中和する方法により行った。次いで、表3および表4に示すように、一部の試験片に溶接歪み除去を模擬する焼鈍を施した。焼鈍の温度は550℃、保持時間は40分とした。
次に、試験例1〜24、28〜35の試験片の一面側表面に表面処理工程を施した。
一面側表面の表面処理工程としては、表3および表4に示すように、機械切削する工程、フライスを用いて切削加工する機械研削する工程、機械研磨する工程、ブラスト処理工程のいずれか一以上を実施した。なお、試験例30、32、33、35の試験片の一面側表面にはアルミナを投射するブラスト処理工程(セラミックブラスト処理)のみを施した。また、試験例31、34の試験片の一面側表面には表面処理工程を施さなかった。
表3および表4に示すブラスト処理工程としては、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子(ガラスビーズ)を1〜5分間、圧縮空気を用いて投射し、ガラスビーズブラスト処理を行ったものを「○」、ガラスビーズに代えてモース硬度が高いアルミナを用いたセラミックブラスト処理を「×」、行わなかったものを空欄で示した。
一面側表面に表面処理工程を施した後、以下に示すように、一面側表面の粗さパラメータRa、影領域比(一面側表面の表面状態)を測定した。その結果を表3および表4に示す。
なお、Raは、JIS B0601−1994に従い、評価長さ標準値4.0mmを例とした粗さパラメータ測定結果より、平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値とした。
また、影領域比は、表面に垂直な方向に対して20度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合を算出することにより、求めた。
表3および表4に示すように、本発明の実施例である試験例1〜22、29、30、32、33の試験片では、粗さパラメータRaが0.6以下および/または表面の影領域比が20%以下であった。
これに対し、表面処理工程を施さなかった試験例31、34の試験片では、粗さパラメータRaが0.6を超え、かつ表面の影領域比が20%超えていた。
また、表面処理工程として、セラミックブラスト処理のみを行った試験例35の試験片でも粗さパラメータRaが0.6を超え、かつ表面の影領域比が20%超えていた。
また、一面側表面に表面処理工程を施した試験例1〜24、28〜35の試験片の一面側表面の耐発錆性を、以下に示す方法により評価した。
耐発錆性の評価としては、「室内環境曝露試験」と「空調環境曝露試験」とを実施した。室内環境曝露試験は、沿岸から20m程度の屋内倉庫で1年間曝露して評価した。また、空調環境曝露試験は、恒温恒湿槽内で、温度25℃、湿度50%の第1雰囲気に1時間暴露した後、30分間かけて徐々に温度50℃、湿度90%の第2雰囲気にし、第2雰囲気で1時間暴露し、その後、30分間かけて徐々に第1雰囲気にして1時間暴露する3時間/サイクルの腐食試験を720サイクル実施した。
「室内環境曝露試験」および「空調環境曝露試験」は、発錆面積1%以下を「◎」、発錆面積5%以下を「○」、発錆面積5%を超えたものを「×」と評価した。
表3および表4に示すように、本発明の実施例である試験例1〜22、29、30、32、33の試験片では、「室内環境曝露試験」および「空調環境曝露試験」の評価が「◎」または「○」であった。
これに対し、表面処理工程を施さなかった試験例31、34、表面処理工程として、セラミックブラスト処理のみを行った試験例35の試験片は、「室内環境曝露試験」および「空調環境曝露試験」の評価が「×」であった。
「実施例3」
「室内環境曝露試験」および「空調環境曝露試験」の評価が「◎」または「○」であった試験例1〜22、29、30、32、33の試験片の他面側表面に、表面処理工程を行った。
他面側表面の表面処理工程としては、表5および表6に示すように、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、ブラスト処理工程のいずれか一以上を実施した。
なお、機械研磨する工程として300番手以上の研磨剤を用いて機械研磨する工程を行ったものを「○」、200番手以下の研磨剤を用いて機械研磨する工程を行ったものを「×」で示した。
他面側表面に表面処理工程を施した試験例1〜22、29、30、32、33の試験片の他面側表面の表面の粗さパラメータRaを、一面側表面と同様にして測定した。その結果を表5および表6に示す。
また、試験例1〜22、29、30、32、33の試験片の他面側表面におけるガス放出性を以下に示す方法により評価した。
すなわち、試験片を真空中(1×10−5Pa以下)に保持して、250℃に加熱し、放出されたガスの質量分析を行って評価した。質量分析には四重極質量分析計を使用した。なお、ガス放出性試験の予備処理として、試験片をアセトン中で超音波洗浄して表面を脱脂し、真空中に保持して2時間経過した後、400℃で加熱し、60分冷却後、5分間大気中に放置し、吸湿条件を同一条件とした。
ガス放出性は、表面の粗さパラメータRaが0.06のSUS304鋼のガス放出量に対し、1.1倍以下のものは「◎」、1.1倍超1.3倍以下のものは「○」、1.3倍を超えるものは「×」と評価した。
ガス放出性の評価結果を表5および表6に示す。
表5および表6に示すように、試験例1〜22、29、30、32、33の試験片のうち、表面の粗さパラメータRaが0.1以下である試験片では、ガス放出性の評価が「◎」または「○」となった。
1、10・・・鋼部材、11・・・一面側表面、12、12a・・・他面側表面。

Claims (6)

  1. 室内環境下で用いられる鋼部材であって、質量%で、
    C:0.005%以上0.050%以下、
    Si:0.10%以上1.00%以下、
    Mn:0.1%以上3.0%未満、
    P:0.030%以下、
    S:0.005%以下、
    Cr:5.0%以上9.0%以下、
    Al:0.05%以下、
    N:0.020%以下
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼材からなり、
    鋼材表面に、以下に示す(a)(b)のいずれか一方または両方を満足する平滑領域、及び、真空空間に露出される真空露出領域が形成されており、前記真空露出領域の粗さパラメータRaが0.1以下とされていることを特徴とする鋼部材。
    (a)粗さパラメータRaが0.6以下。
    (b)表面に垂直な方向に対して20±5度傾いた方向から光を照射して撮影した画像の単位面積1.5mm当たりの輝度分布0から255までの領域のうち輝度分布128以下の領域の占める割合が20%以下。
  2. 前記鋼材が、更に、質量%で、
    Cu:0.05%以上0.50%以下、
    Ni:0.05%以上0.50%以下
    の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼部材。
  3. 前記鋼材が、更に、質量%で、
    Mo:0.01%以上0.20%以下、
    V:0.005%以上0.050%以下、
    Nb:0.005%以上0.050%以下、
    Ti:0.005%以上0.030%以下、
    Sn:0.01%以上0.30%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼部材。
  4. 前記鋼材が、更に、質量%で、
    Ca:0.0005%以上0.010%以下、
    Mg:0.0005%以上0.010%以下、
    REM:0.001%以上0.010%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の鋼部材。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の鋼部材の製造方法であり、
    鋼材表面に、機械切削する工程、機械研削する工程、機械研磨する工程、鉱物用15段階評価によるモース硬度が5.5〜7.5である球状粒子を投射するブラスト処理工程のいずれか一つまたは二つ以上の工程を行う表面処理工程を含み、前記鋼材表面のうち真空空間に露出される領域に対する前記表面処理工程が、300番手以上の研磨剤を用いて機械研磨する真空露出面処理工程を含むことを特徴とする鋼部材の製造方法。
  6. 前記球状粒子が、ガラスビーズであることを特徴とする請求項5に記載の鋼部材の製造方法。
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