JP5724436B2 - 耐食性に優れたステンレス鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、海洋構造物、熱交換器、ケミカルタンカー、化学プラント、圧力容器に代表される各種用途で使用される耐食性に優れたステンレス鋼に関するものである。
ステンレス鋼はさびにくい(Stain-less)という最大の特徴を生かし、各種産業分野で、耐食性材料として幅広く使用されている。また、近年、LCC(ライフサイクルコスト)を考慮した場合、ステンレス鋼は、メンテナンスの負荷が軽減される、または、メンテナンスが不要であるという観点から環境負荷の小さい素材として一段と注目を集める材料となっている。一方で、ステンレス鋼の主原料であるNiやMo、Crに代表される合金元素は、価格の高騰や価格の上下動がある。そのため、元素添加量が少ない安価なステンレス鋼または同一鋼組成で耐食性を改善する表面処理技術や表面の高性能化に関する技術の開発要求が各種産業分野で高まっている。
ステンレ鋼は主に耐食性材料として使用されることが多いため、いかに使用環境で耐食性を高めるかが重要な技術課題となる。これに対して、従来では、用途(例えば建築内外装材や食器、器物、自動車排気ガス部材等)にあわせて、鋼の成分を調整(主に高合金化)するか、P、S、C、O、Nに代表される不純物元素を低減(高純度化)し、耐食性を低下させる析出物や介在物を制御(抑止)する方法が一般的に採用されてきた。また、ステンレス鋼の耐食性を左右する、不動態皮膜を制御する表面改質の方法として、最終製品に対して、例えば、硝酸-ふっ酸混合溶液や硝酸を用いた酸洗(酸浸漬処理)や電解処理などの処理(いわゆる不動態化処理)を施す手法も行われてきた。
しかし、元素添加による高合金化や精錬、高純度原料採用による不純物元素の低減はいずれもコストアップにつながる。また、前述した酸洗や電解処理による不動態化処理は、耐食性向上に有効ではあるが、別ラインでの処理になるため廃液処理も含めコストアップや製造に時間がかかる問題がある。また、硝酸-ふっ酸や硫酸、塩酸を使用してステンレス母材を溶かしてしまうと優先的に粒界が腐食され、表面の微細な凹凸が多くなり表面光沢が低下し、汚れがつきやすくなり、美観やステンレス鋼そのものが持つ美麗な金属光沢が失われ意匠性を損なうという問題もある。
このように各種ステンレス鋼に対して、同一成分系の鋼について表面の性状を適切に制御することで耐食性を向上させる技術が十分研究されているとはいいがたい。
従来の、ステンレス鋼の特性(耐食性)を改善する技術としては、例えば、特許文献1〜3などがあげられる。
特許文献1は、表面処理ステンレス鋼板の製造方法、特に建造物の内外装材、車両や家電機器の外装材等に用いられる表面に微小な凹凸が形成された冷延ステンレス鋼板等の製造に適用して好適な表面処理ステンレス鋼板の製造方法に関する。ステンレス鋼板の表面をベルト研磨により所定の表面粗度に研磨した後、前記ベルト研磨で形成される表面粗度より小さい表面粗度を有する第1ワークロールで圧延し、その後、更に、第1ワークロールより大きい表面粗度を有する第2ワークロールで圧延する製造方法が開示されている。さらに、ベルト研磨により形成されるステンレス鋼板の表面粗度:Ra (A)が0.2〜0.4μm であり、第1ワークロールの表面粗度:Ra (B)が、Ra (A)の1/2〜1/3で、且つ第2ワークロールの表面粗度:Ra (C)が、略Ra(A)に等しいことが開示されている。しかしながら、特許文献1は表面の粗さを制御するための製造方法が開示されているのであって、耐食性をはじめとする鋼材の特性と表面性状の関係に関して何ら開示していない。
特許文献2は、各種構造材料、建築材料等として使用されるCr含有ステンレス鋼に、耐食性を低下させることなく優れた研磨面を付与する表面仕上げ方法に関する。Oが0.005重量%以下の低O含有量及びSが0.002重量%以下の低S含有量でCrよりも酸素親和力の大きなV、Ti、Zr、Al、Ca、希土類金属等の易酸化性元素を1種以上含有させたステンレス鋼板を、100番以上の番手の研磨ベルトを使用して機械研磨した後、硝酸系の酸洗液又は硝酸−フッ酸系の混合酸洗液を使用した酸洗によって前記機械研磨の際に生じた酸化皮膜を除去すると共に不動態皮膜を前記ステンレス鋼板の表面に形成する表面仕上げ方法が開示されている。なお、酸洗は、硝酸濃度4〜50%の酸洗液又は硝酸濃度4〜50%及びフッ酸濃度0.2〜5%の混合酸洗液を使用し、ステンレス鋼板を20秒以上浸漬することにより行われる。しかしながら、特許文献2は、V、Ti、Zr、Al、Ca、希土類金属等添加による成分調整を必要とし機械研磨と酸洗処理を追加工程で施すことで耐食性を確保する表面仕上げ方法であり、元素添加量の適正化をすることなしに耐食性を改善する手法が示されているわけではない。
特許文献3は、光沢を有する素地表面に研磨を施して使用するステンレス鋼製品およびステンレス鋼の表面研磨方法に関する。表面の中心線平均粗さRaが0.23以上0.31以下の範囲となるように、日本工業規格JIS R 6001で規定する#400の砥粒に相当する研磨目を有し、表面の色調がLab系で赤色度を示すa値を1.0以下と規定している。しかしながら、特許文献3は、ステンレス鋼帯表面の色調をベルト研磨の方法で制御する手法であり、耐食性の改善手法を開示しているわけではない。
以上のように、ステンレス鋼に関して、耐食性改善に関する技術の開示は見られるものの、合金元素の影響に関する技術が主であり、最終製品の表面特性を制御することで耐食性を改善する技術については十分に開示されていない。
特許第2634991号公報 特許第3179851号公報 特開2004-330394号公報
本発明は、かかる事情に鑑み、耐食性に優れた、特に耐錆性向上や美観低下をもたらす表面の変色、流れ錆を改善することが可能なステンレス鋼を提供することを目的とする。
課題を解決するために、同一成分(鋼組成)および同一履歴で圧延から熱処理まで完了した複数のステンレス鋼に対して種々の鏡面仕上げ処理を施し、表面性状の詳細な検討を行った。
そして、表面光沢やその異方性、ステンレス鋼の耐食性を左右する不動態皮膜におけるCr/Fe比、介在物などに着目して検討を行ったところ、不動態皮膜部におけるCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)と母相のCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)の比を1.2以上、かつ、前記ステンレス鋼表面のJIS Z 8741「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して測定角度60°で測定される圧延方向(L)、垂直方向(C)および圧延45度方向(D)の各々の光沢度(Gs(60))をいずれも50以上、平均光沢度指標を60以上、さらに、JIS G 0555に準拠して測定されるA1系およびA2系のA系介在物の清浄度を0.001〜0.030%と規定することで、耐食性が著しく改善することを見いだした。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
鋼の表面に形成される不動態皮膜部におけるCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)と母相のCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)の比が1.2以上であり、かつ、鋼表面のJIS Z 8741「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して測定角度60°で測定される圧延方向(L)、垂直方向(C)および圧延45度方向(D)の各々の光沢度(Gs(60))がいずれも50以上であり、さらに、下記式(1)で算出される平均光沢度指標が60以上であり、さらに、JIS G 0555に準拠して測定されるA1系およびA2系のA系介在物の清浄度が0.001〜0.030%であることを特徴とする耐発錆性に優れたステンレスクラッド鋼。
平均Gs(60)=(Gs(60)L +2×Gs(60)D + Gs(60)C)/4 --- (1)
なお、平均Gs(60):平均光沢度指標、Gs(60)L:圧延方向(L)の光沢度、Gs(60)C:垂直方向(C)の光沢度、Gs(60)D:圧延45度方向(D)の光沢度を示す。
本発明によれば、耐食性に優れたステンレス鋼が得られる。特に、耐錆性向上や美観低下をもたらす表面の変色、流れ錆を改善することが可能となる。
不動態皮膜と母相のCr濃度(at%)、Fe濃度(at%)の測定例を示す図である。 表面光沢度の測定条件を示す図である。
本発明のステンレス鋼は、鋼の表面に形成される不動態皮膜部におけるCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)と母相のCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)の比が1.2以上であり、かつ、鋼表面の、JIS Z 8741「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して測定角度60°で測定される圧延方向(L)、垂直方向(C)および圧延45度方向(D)の各々の光沢度(Gs(60))がいずれも50以上であり、下記式(1)で算出される平均光沢度指標が60以上であり、さらに、JIS G 0555に準拠して測定されるA1系およびA2系のA系介在物の清浄度が0.001〜0.030%である。
平均Gs(60)=(Gs(60)L +2×Gs(60)D + Gs(60)C)/4 --- (1)
なお、平均Gs(60):平均光沢度指標、Gs(60)L:圧延方向(L)の光沢度、Gs(60)C:垂直方向(C)の光沢度、Gs(60)D:圧延45度方向(D)の光沢度を示す。
そして、上記のように表面性状を制御することにより、耐食性に優れた、特に耐錆性向上や美観低下をもたらす表面の変色、流れ錆を改善することが可能なステンレス鋼が得られることになる。なお、本発明のステンレス鋼としては、熱延鋼板、熱延処理後に焼きならし熱処理を施した鋼板、いずれも含まれ、同様な効果が得られる。
また、機械的な研磨に加え化学的な処理を組み合わせることで表面性状を制御し表面の特性を所定の範囲にすることができる。すなわち、表面制御手法としては、通常のベルト研磨、グラインダー研磨、砥石研磨、電解研磨、酸洗(硫酸、硝酸、塩酸など)処理などが挙げられ、これらの既存の各種表面研磨手法を組み合わせて行なうことができる。これらを組み合わせることで鋼材表面の清浄度を制御し、表面の粗さとその異方性を低く抑え、それに加えて不動態皮膜を強化することで目的の特性が得られる。表面の不動態皮膜を強化する方法としては、硝酸やふっ硝酸、硫酸中における酸洗処理または電解研磨による手法があげられる。さらに素材を曲げたり表層を研磨等で除去することを考えると、母材中の介在物の制御も必要となる。そこで鋼のA系介在物の清浄度を鋼成分や熱処理条件の適正化により析出制御することが重要となる。
次に、ステンレス鋼の表面に形成される不動態皮膜部におけるCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)と母相のCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)の比が1.2以上について、説明する。
不動態皮膜部におけるCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)は、不動態皮膜の耐食性改善に非常に重要な要因となる。基本的には、不動態皮膜部におけるCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)と母相のCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)の比(以下、Cr/Fe濃度比と略す)が高いほど表層に耐食性に優れた安定な不動態皮膜が形成されていることになり、耐食性の観点からCr/Fe濃度比は高いほうが良い。検討したところ、大気暴露試験や促進腐食試験によって耐食性の向上効果が明瞭に現れるにはCr/Fe濃度比が1.2以上であることがわかった。この知見を基に、Cr/Fe濃度比は1.2以上とする。好ましくは1.5以上である。
一方で、Cr/Fe濃度比を安定的かつ大きく上げようとすると不動態皮膜中のCr濃度を高めるために大型の酸洗または電解の製造工程が必要になる。このような過度なCr/Fe濃度比向上には設備的な負荷がかかるため、上限は100以下が好ましい。
なお、機械的な研磨のみではCr/Fe濃度比向上は期待できないので、何らかの既存の化学的な表面制御手法と組み合わせることが重要となる。
また、本発明において、Cr/Fe濃度比は、例えば、深さ方向に鋼表面をスパッタしながら元素の濃度プロファイル(at%)を測定し、各元素(Fe、Cr)濃度プロファイルからFeとCrの原子比を求め、Cr/Fe濃度比を求めることができる。この場合、図1に示すように、Cr、Feの(at%)値がほぼ一定値になった領域を母相と仮定し、それよりスパッタ時間の短い領域を不動態皮膜部と定義する。不動態皮膜部では最もCr/Feが高い値を示した部位での値を不動態皮膜部におけるCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)とする。
次に、JIS Z 8741「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して測定角度60°で測定される圧延方向(L)、垂直方向(C)および圧延45度方向(D)の各々の光沢度(Gs(60))がいずれも50以上であり、さらに、下記式(1)で算出される平均光沢度指標が60以上について、説明する。
平均Gs(60)=(Gs(60)L +2×Gs(60)D + Gs(60)C)/4 --- (1)
なお、平均Gs(60):平均光沢度指標、Gs(60)L:圧延方向(L)の光沢度、Gs(60)C:垂直方向(C)の光沢度、Gs(60)D:圧延45度方向(D)の光沢度を示す。
表面の光沢度は、表面の微細な凹凸を示す指標と考えられ、表面光沢で評価されるような微細な表面粗さはステンレス鋼の美観の指標のみならず耐食性、流れ錆の形態に大きく左右する。光沢が高くしかも異方性の少ない表面材は、汚れがつきにくく隙間腐食の発生を抑止するとともに異方性が少ないため錆の形態が流れ錆よりむしろ点状錆となりやすい。また、一度錆が生じても雨水で洗い流される可能性がある。さらに、微細な凹凸が少なく表面が滑らかであるため、メンテナンスが容易であるとの利点を有する。
このように、表面の微細な凹凸は、ステンレス鋼の耐食性に大きな影響を及ぼすものと考えられる。例えば中性塩化物環境で建築構造物や外壁などに使用した場合、凹凸が大きいほど、海塩粒子や粉塵、ダストが表面に付着しやすくなる。その結果、それらに起因してミクロな隙間を形成(隙間腐食)しやすくなる。
さらに、光沢に異方性がある場合、特定な方向に溶液成分が残存しやすくなり、特に気液界面においては変色や発錆を誘発する。また色調も異なるため、ステンレス鋼を使用する時に板の採取方向などを気にして適用しなくてはいけないという実使用上の制約がある。
そこで、上記に基づき表面光沢と耐食性の関係を鋭意研究したところ、JIS Z 8741「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して測定角度60°で測定した圧延方向(L)と垂直方向(C)と圧延45度方向(D)における光沢度(Gs(60))がいずれも50以上、さらに上記式(1)で算出される平均の光沢度指標(Gs(60))が60以上であれば耐食性が向上することがわかった。
光沢度(Gs(60))は高いほうが好ましいが、光沢度を上げるためのステンレス鋼の研磨には非常に負荷がかかるため、製造負荷を考慮して、圧延方向(L)と垂直方向(C)の圧延45度方向(D)の各々の光沢度上限値は好ましくは95以下、さらに好ましくは98以下である。平均光沢度指標は好ましくは70以上98未満である。
なお、本発明において、各光沢度および平均光沢度指標は、JIS Z 8741「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して多角度光沢計を用いて、図2に示すような条件にて測定することができる。
次に、JIS G 0555に準拠して測定されるA1系およびA2系のA系介在物の清浄度が0.001〜0.030%について、説明する。
本発明のステンレス鋼においてA系介在物(A1系およびA2系)の清浄度は、0.001〜0.030%の範囲に制限する必要がある。ここで、JIS G 0555に準拠して測定される清浄度とは、圧延方向の鋼板断面の板厚1/4の所における清浄度を、JIS G 0555付属書1(点算法による非金属介在物の顕微鏡試験方法)に準じて、400倍の倍率で50視野観察し、視野内のガラス板上の総格子点数、視野数および介在物によって占められた格子点中心の数によって求めた介在物の占める面積百分率(%)の値である。
A系介在物を規定する理由は、鋼中の非金属介在物のうち加工によって粘性変形したA系介在物は、腐食の起点になりやすく初期発錆性に大きな影響を及ぼし、さらには、曲げ等の加工がステンレス鋼に施された場合に割れの起点になりやすい特徴を有するからである。これらの点から、A系介在物は少ない方が好ましく、A系介在物の清浄度は0.030%以下とする。一方、過度に清浄度を下げることは精錬に余分な負荷がかかり工業的に製造が難しくなる。よって、下限は0.001%とする。なお、清浄度を下げる手法として、Mn量やS量の規制のみならず、例えば熱処理(加熱温度、保持時間、冷却速度)制御による製造方法の適正化が挙げられる。
ステンレス鋼に含有されるCrやMo含有量が多い場合、例えばCr含有量18質量%以上でMoを2質量%以上含有するような高合金鋼の場合、σ(シグマ)相やΧ(カイ)相、さらにM23C6、M6C(MはFe、Crが主成分)などが生成し、有効なCrが低下し鋭敏化により著しい耐食性低下を引き起こすことがある。このような場合に、本発明の表面が制御されたステンレス鋼は有効であり、脱Cr層の除去、鋭敏化部の健全化に寄与することができる。
表1に示す成分組成からなるオ−ステナイト系ステンレス鋼(JIS規格範囲のSUS304、SUS316、SUS329J3L、SUS410、SUS444)の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の公知の方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊法により250mm断面のステンレススラブとした。次いで、得られたスラブを、一度室温に冷却した後、1200℃で1時間のスラブ加熱を行い、粗熱間圧延、仕上げ熱間圧延を施し、最終板厚10mmの熱延板を製造した。次いで、1100℃-10分(オーステナイト系ステンレス鋼と2相ステンレス鋼)、一部サンプルは800℃-10分(マルテンサイト系ステンレス鋼とフェライト系ステンレス鋼)で保持後、600℃まで冷却を行なう熱処理を施しステンレス鋼を製造した。1100℃から600℃(オーステナイト系ステンレス鋼と2相ステンレス鋼)または800℃から600℃(マルテンサイト系ステンレス鋼とフェライト系ステンレス鋼)までの間の平均冷却速度は、表2に示す空冷(0.3℃/s)、急速冷却(2℃/s、5℃/s、約10℃/s)の4条件のいずれかで行った。なお、熱処理の条件を表3にまとめて示す。
上記により得られたステンレス鋼に対して、表面のベルト研磨を行なった。具体的には、長手方向に対し多パスのベルト研磨を行なった後、長手垂直方向に対し多パスのベルト研磨を行なった。長手方向研摩の際には、JIS R6256:2006で規定するところの研磨ベルトP60〜P400であるものを用い、長手垂直方向研摩の際には、研磨ベルトP120〜P800であるものを用いた。
次に、硝酸水溶液を単位面積(m2)あたり1L/minで所定時間ステンレス鋼の表面に噴霧し、その後水洗し、不動態化処理を行った。噴霧時間は5秒〜10分、硝酸水溶液濃度は5〜35質量%の範囲で調整しサンプルを作製した。
以上により得られた表面性状を制御したステンレス鋼に対して、Cr/Fe濃度比、光沢度(Gs(60))、鋼材断面のA系介在物の清浄度、孔食電位を測定し、CCT試験を行い、耐食性を評価した。以上より得られた結果を表2に示す。
なお、Cr/Fe濃度比、光沢度(Gs(60))、鋼材断面のA系介在物の清浄度、孔食電位の測定方法、CCT試験方法、耐食性評価方法は下記の通りである。
Cr/Fe濃度比
AES(装置名:PHISICAL ELECTONICS社製 PHI MODEL 660 加速電圧 : 5kV 試料電流量 :0.2μA 測定領域 :5μmx5μm)を用いて深さ方向にスパッタしながら測定した各元素(Fe、Cr)プロファイルからその原子比を求めた。なお、図1に示すように、Cr、Feの値がほぼ一定値になった領域を母相とし、それよりスパッタ時間の短い領域を不動態皮膜部と定義した。不動態皮膜部では最もCr/Feが高い値を示した部位での値をCr/Fe濃度とし、母相のCr/Fe濃度と比較した。
光沢度(Gs(60))
表面光沢はJIS Z 8741「鏡面光沢度−測定方法」に準拠してスガ試験機株式会社製多角度光沢計 GSシリーズ GS-1Kを用い、測定角度60度で測定した。圧延方向(L)、垂直方向(C)と圧延45度方向(D)の3方向について測定し、下記式により平均光沢度指標を求め、得られた平均光沢度指標を表面光沢の異方性とした。平均Gs(60)=(Gs(60)L+2×Gs(60)D + Gs(60)C)/4 --- (1)
なお、平均Gs(60):平均光沢度指標、Gs(60)L:圧延方向(L)の光沢度、Gs(60)C:垂直方向(C)の光沢度、Gs(60)D:圧延45度方向(D)の光沢度を示す。
鋼材断面のA系介在物の清浄度
JIS G 0555付属書1(点算法による非金属介在物の顕微鏡試験方法)に準じて、試験片を採取し、400倍の倍率で50視野観察し、視野内のガラス板上の総格子点数、視野数および介在物によって占められた格子点中心の数によって介在物の占める面積百分率(%)を求めA系介在物の清浄度とした。
孔食電位
塩害環境下における耐孔食性評価はJIS G 0577に準拠した孔食電位測定により行った。電流密度が100μA/cm2に到達した電位を孔食電位とし、Vc100(mV vs. SCE)で表記した。
なお、評価基準は鋼種によって異なり、表1に示す鋼1-5では300mV以上、鋼6では500mV以上、鋼7では900mV以上、鋼8では200mV以上、鋼9では400mV以上を、それぞれ合格とした。
CCT試験
発錆性を評価するため、100mm×70mmのサンプルに対してJASO M609-91のCCT試験を150サイクル行い、下記に従い発錆の程度をランク付けし、耐食性を評価した。なお、評価基準は鋼種によって異なり、表1に示す鋼1〜5、6、8、9では○以上を合格とし、鋼7では◎を合格とした。
◎:発錆なし
○:発錆あり/発錆面積10%未満
△:発錆あり/発錆面積10%以上30%未満
□:発錆あり/発錆面積30%以上50%以下
×:発錆あり/発錆面積50%超
表2より、本発明例では、孔食電位が高く、CCT評価も優れており、耐食性に優れたステンレス鋼が得られていることがわかる。
一方、比較例では、孔食電位が低い傾向にあり、CCT評価が劣っている。

Claims (1)

  1. 鋼の表面に形成される不動態皮膜部におけるCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)と母相のCr濃度(at%)/Fe濃度(at%)の比が1.2以上であり、
    かつ、鋼表面のJIS Z 8741「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して測定角度60°で測定される圧延方向(L)、垂直方向(C)および圧延45度方向(D)の各々の光沢度(Gs(60))がいずれも50以上であり、下記式(1)で算出される平均光沢度指標が60以上であり、
    さらに、JIS G 0555に準拠して測定されるA1系およびA2系のA系介在物の清浄度が0.001〜0.030%であることを特徴とする耐食性に優れたステンレス鋼。
    平均Gs(60)=(Gs(60)L +2×Gs(60)D + Gs(60)C)/4 --- (1)
    なお、平均Gs(60):平均光沢度指標、Gs(60)L:圧延方向(L)の光沢度、Gs(60)C:垂直方向(C)の光沢度、Gs(60)D:圧延45度方向(D)の光沢度を示す。
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