JP3583268B2 - 表面光沢に優れたステンレス鋼帯及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、表面光沢に優れたステンレス鋼帯及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オーステナイト系ステンレス鋼,マルテンサイト系ステンレス鋼,二相ステンレス鋼等の熱延鋼帯は、熱間圧延後に通常750〜850℃の温度で巻き取られ、次いで焼鈍及び酸洗が施されている。熱間圧延や高温巻取り等の際にCr系炭化物生成に起因するCr欠乏層が生成するが、Cr欠乏層は巻取り後の焼鈍によって解消される。しかし、熱間圧延時及びその後の冷却過程や焼鈍工程で酸化スケールが鋼板表面に生成する。酸化スケールは、鋼板表面で不規則に成長するため、母相金属との界面に凹凸が生じ易い。焼鈍・酸洗界面された鋼板は、界面の凹凸を反映した表面粗さとなり、表面粗さが大きいと光沢度が不良になる。
金属/酸化スケールの界面にある凹凸に起因した表面粗さを小さくするために、通板速度を落として焼鈍時の酸洗時間を長くする方法,酸洗した熱延コイルを研削した後で冷間圧延する方法,冷間圧延での1パス当りの圧下率を大きくして表面凹凸の深さを低減する方法等が採用されている。また、特開平2−73918号公報では、砂鉄等の研磨剤を高圧水と共に熱間圧延直後の鋼帯に吹き付けることにより、金属/酸化スケールの界面を平滑化することが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、焼鈍工程で通板速度を落とす方法,表面欠陥を研削除去する方法,大圧下量で冷間圧延する方法等では、工程負荷を増大させ、生産性を低下させる。また、表面欠陥を研削除去した後で冷間圧延する光輝焼鈍製品では、研磨による表面凹凸が冷間圧延で完全に解消されない。熱間圧延時にメカニカルデスケーリングすることにより酸化スケールを除去することも一部で実施されているが、メカニカルデスケーリングではスケールが均一に除去されず、表面光沢が要求される用途では特性改善が十分でない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、熱延板焼鈍時に金属/酸化スケール界面の凹凸を小さくする条件を採用することにより、本質的に研磨を必要とすることなく、焼鈍工程及び冷間圧延工程を簡略化し、優れた光沢度をもつステンレス鋼帯を得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の製造方法は、その目的を達成するため、熱間圧延されたステンレス鋼帯を温度700℃未満で巻き取り、後続する焼鈍工程で700℃から1100℃以下の到達最高材料温度までの昇温速度を10℃/秒以上とし、均熱1分以下で到達最高材料温度に保持した後、到達最高材料温度から700℃までの降温速度を10℃/秒以上とすることを特徴とする。
比較的低温で巻き取り、後続する焼鈍工程で700℃〜焼鈍温度の範囲を急速に加熱・冷却すると、得られたステンレス鋼帯は、中心線平均粗さR Z が小さく、焼鈍・酸洗後に100以上,光輝焼鈍後に760以上の光沢度G S (20°)を呈する。
【0005】
【作用】
本発明者等は、ステンレス鋼の表面光沢を低下させる原因である熱延−焼鈍材の酸洗前の金属/酸化スケール界面の凹凸に及ぼす製造条件の影響を種々調査・研究した。その結果、鋼帯を温度700℃以上に保持するとき酸化スケールの不規則成長が著しく、金属/酸化スケール界面の凹凸が大きくなることを見い出した。すなわち、700℃近傍の温度では粒界にCr系炭化物が析出し、Cr欠乏層が生じる。Cr欠乏層により酸化が促進され、粒界酸化と相俟つて粒界近傍が優先的に酸化される。したがって、酸化スケールの生成が加速され、金属/酸化スケール界面の凹凸が大きくなるものと推察される。
この知見に基づき、本発明者等は、700℃以上の高温に熱延鋼帯を保持することを可能な限り避けることを前提として、熱間圧延後の巻取り条件や熱延鋼帯の焼鈍条件を検討した。そして、700℃未満の巻取り温度で熱延鋼帯を巻き取り、後続する焼鈍工程で700℃〜焼鈍温度の範囲を急速に加熱・冷却することにより、粒界の優先酸化が抑制され、金属/酸化スケール界面の凹凸が小さくなることを解明した。
【0006】
熱延鋼帯を熱延巻取り温度から室温まで冷却する過程で、鋼帯が500〜800℃の温度域にあるとき、Cr系炭化物が析出し易くなる。Cr系炭化物の析出によって粒界近傍にCr欠乏層が形成され、その後の再加熱で耐酸化性が特に粒界近傍で低下、酸化スケールの発生が促進される。そこで、本発明においては、熱延鋼帯が可能な限り低温に維持されるように、700℃未満の低温で熱延鋼帯を巻き取る。
熱延鋼帯の焼鈍も、同様な理由から700℃〜到達最高材料温度の温度域を10℃/秒以上の昇温速度及び降温速度とし、1100℃以下の到達最高材料温度で均熱1分以下で短時間焼鈍する。10℃/分以上の昇温速度及び降温速度は、金属及び酸化スケールの熱膨張差に起因する界面剥離を促進させ、金属/酸化スケール界面の凹凸を小さくすることにも有効である。
【0007】
なお、昇温速度及び降温速度を大きくし、到達最高材料温度を低く設定することにより、巻取り後の冷却中に析出した炭化物が十分に固溶しない虞れがある。しかし、本発明では、熱間圧延後の巻取り温度を炭化物の析出が起こりにくい温度に設定しているので、析出した炭化物を固溶させるため1100℃を超える高温に焼鈍温度を設定する必要がない。
このように熱間圧延後の巻取り温度,焼鈍時の昇温速度,降温速度,焼鈍温度を規制することにより、酸化スケールの不規則成長が抑制され、金属/酸化スケール界面の凹凸が小さくなり、熱延鋼帯酸洗後の表面粗さが大幅に小さくなる。その結果、表面光沢の改善のために必要であった熱延鋼帯焼鈍時に通板速度を大きくすることや、冷延工程で1パス当りの圧下率を増加する等の対策が不要になり、冷間圧延が簡略化され、酸洗後の熱延コイルを研削する工程も省略できる。しかも、光沢度に優れた熱延焼鈍酸洗製品や熱延焼鈍酸洗後の冷延焼鈍酸洗製品,光輝焼鈍製品等が得られる。なお、光輝焼鈍は、たとえば窒素25%,水素75%の雰囲気で1050℃まで鋼帯を昇温した後、ただちに冷却する条件下で実施される。
【0008】
【実施例】
合金設計を表1に示した各種ステンレス鋼を電気炉,転炉で溶製し、脱ガス処理を経てスラブに連続鋳造した。得られたスラブを板厚3.8mmまで熱間圧延し、焼鈍・酸洗を施した。一部の熱延鋼帯については、更に板厚1.0mmまで冷間圧延し、焼鈍・酸洗又は最終焼鈍を施して最終製品に製造した。また、一部の冷延鋼帯を窒素25%,水素75%の雰囲気で1050℃まで昇温した後、ただちに冷却する光輝焼鈍を施した。
このとき、熱間圧延後の巻取り温度及び熱延鋼帯の焼鈍条件を表2,3に示すように種々変化させ、巻取り温度及び焼鈍条件が表面光沢に及ぼす影響を調査した。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
試験番号1及び18のステンレス鋼を熱延巻取りした後、焼鈍・酸洗したものについて、鋼帯の表面組織を観察すると共に、JIS B0601で規定する中心線平均粗さRz で表面粗さを測定した。
調査結果をそれぞれ図1及び図2に示す。比較例の試験番号18では中心線平均粗さRz が11.0μmと表面粗さが大きいのに対し、本発明例の試験番号1では中心線平均粗さRz が5.9μmと明らかに表面粗さが小さくなっている。また、JIS Z8741で規定する光沢度についても、試験番号18のGs (20°)=30に対して、試験番号1がGs (20°)=141と大幅に改善されている。
【0013】
同様にして熱延焼鈍材の中心線平均粗さRz 及び光沢度Gs (20°)を調査した結果を表4に示す。また、光輝焼鈍材の中心線平均粗さRz 及び光沢度Gs (20°)を調査した結果を表5に示す。なお、中心線平均粗さRz 及び光沢度Gs (20°)は、何れも圧延方向に直交する方向に測定した。
表4から明らかなように、本発明に従って巻取り,焼鈍された熱延焼鈍材では、何れも中心線平均粗さRz が小さく、Gs (20°)が109以上と優れた光沢度を呈していた。これに対し、比較例のステンレス鋼板では、光沢度が最高でもGs (20°)=87に止まっていた。この傾向は、表5に示されているように光輝焼鈍材でも同様であった。
この対比から、本発明で規定した低温巻取り及び急速加熱→短時間焼鈍→急速冷却の焼鈍が酸化スケールの不規則成長を効果的に抑制し、金属/酸化スケール界面の凹凸が大きくなること防止し、結果として光沢度を改善していることが判る。
【0014】
また、光輝焼鈍材の表面光沢について熱延後の巻取り温度と光沢度Gs (20°)との関係を調査したところ、図3に示すように本発明に従った製品では、熱延鋼帯の巻取り温度を700℃未満にすることにより、光沢度Gs (20°)が850以上の優れた表面光沢を示すことが判った。しかし、巻取り温度が700℃未満であっても、焼鈍保持時間が長い試験番号16,到達最高材料温度が1100℃を超え且つ焼鈍後の冷却速度が遅い試験番号17にみられるように、焼鈍条件が本発明で規定した範囲を外れるとき光沢度Gs (20°)が760を下回り、表面光沢が低下した。このことから、巻取り温度及び焼鈍条件の組合せにより初めて優れた表面光沢をもつステンレス鋼板が得られるものといえる。
【0015】
【0016】
【0017】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、表面光沢低下の原因となる酸化スケールの生成・成長が促進されないようにステンレス鋼の熱延巻取り温度及び焼鈍条件を規制することにより、金属/酸化スケール界面の凹凸を小さくし、表面光沢に優れた熱延焼鈍材や光輝焼鈍材を製造している。この方法によるとき、熱延焼鈍の通板速度を低下させたり、中間工程で焼鈍材を研磨する必要がなく、高生産性で熱延焼鈍材や光輝焼鈍材が製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従った条件下で製造された試験番号1の熱延鋼帯を焼鈍酸洗した後の表面組織及び表面粗さのプロフィール
【図2】本発明で規定した範囲を外れる条件下で製造された試験番号18の熱延鋼帯を焼鈍酸洗した後の表面組織及び表面粗さのプロフィール
【図3】熱延巻取り温度と光輝焼鈍材の表面光沢との関係を示すグラフ
Claims (2)
- 熱間圧延されたステンレス鋼帯を温度700℃未満で巻き取り、後続する焼鈍工程で700℃から1100℃以下の到達最高材料温度までの昇温速度を10℃/秒以上とし、均熱1分以下で到達最高材料温度に保持した後、到達最高材料温度から700℃までの降温速度を10℃/秒以上とすることを特徴とする表面光沢に優れたステンレス鋼帯の製造方法。
- 光輝焼鈍後に760以上の光沢度G S (20°)を呈する請求項1の方法で製造された表面光沢に優れたステンレス鋼帯。
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JP30261597A JP3583268B2 (ja) | 1997-11-05 | 1997-11-05 | 表面光沢に優れたステンレス鋼帯及びその製造方法 |
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JPH11140545A JPH11140545A (ja) | 1999-05-25 |
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- 1997-11-05 JP JP30261597A patent/JP3583268B2/ja not_active Expired - Fee Related
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