JP3888282B2 - オーステナイト系ステンレス鋼帯およびその製造方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼帯およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光沢むらがない、表面光沢の均一性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼帯とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オーステナイト系ステンレス鋼の熱延焼鈍酸洗鋼帯や冷延焼鈍酸洗鋼帯には、鋼帯幅方向に光沢が異なる部分が発生し、表面の均一性を損なわれるという問題がある。
【0003】
上記の光沢むらは、熱延時や焼鈍時に鋼帯表面に生じた酸化スケールと地金との界面の凹凸の程度が大きい場合、その凹凸形態が焼鈍−酸洗後の表面光沢に反映されて発生する。
【0004】
このため、一般には、界面の凹凸を除去または小さくするために、次の対策が採られる。(a) 熱延直後の鋼帯表面に粒状の研磨材を高圧水で吹き付けて界面を平滑にするメカニカルデスケール法、(b) 酸洗時間を長くする方法、(c) 酸洗後の鋼帯表面を研削した後に冷間圧延する方法、(d) 冷間圧延での1パス当たりの圧下率を大きくする方法。
【0005】
しかし、上記(a) の方法は鋼帯表面の位置ごとのデスケールの均一性に問題があり、(b)〜(d)の方法は、いずれも、工程負荷を増大させ、生産性を著しく低下させる。
【0006】
上記の問題がない光沢むらの防止方法としては、特許文献1および2に示される方法がある。
【0007】
すなわち、その方法は、熱延後の鋼帯を700℃未満の温度で巻取り、後続する焼鈍工程での1100℃以下の最高到達温度Tmまでの平均昇温速度を10℃/秒以上、Tmでの均熱時間を0〜1分とし、Tmから700℃までの平均冷却速度を10℃/秒以上とする工程を含む方法である。
【0008】
つまり、特許文献1および2に示される方法では、熱延後の巻取り温度を低くするとともに、焼鈍時の昇温速度と冷却速度を大きくすれば、熱延時または焼鈍時に鋼帯表面に生じる酸化スケールと地鉄との界面の凹凸の程度が小さくなり、光沢むらは発生しないとしている。
【0009】
しかしながら、上記の方法は、実操業上多くの制約を伴い、必ずしも容易に実施できるものでない。すなわち、巻取り温度を低くするには、熱延工程で通板速度を調整したり、熱延仕上げパス終了後に水をかける等の対策が必要であるが、通板速度の調整は工程負荷が増大し生産性が低下する。また、熱延仕上げパス終了後に水をかけるには、ホットランスプレー等が必要となり設備コストの増大にとどまらず、冷却むらが生じて光沢むらが助長される恐れもある。さらに、焼鈍時の昇温速度や冷却速度を大きくすると設備への負荷が大きくなり、その負荷は板厚の厚い鋼帯ほど顕著になる。
【0010】
また、巻取られた熱延のままの半製品である「熱延鋼板」は、熱延後、直ちには焼鈍−酸洗処理されず、輸送されたり屋外に一定期間放置された後に焼鈍−酸洗処理されることもあるが、この場合、特許文献1および2に示される方法では光沢むらの発生を確実に防止できないという問題があった。
【0011】
なお、特許文献3には、手入れにより表面粗さを100μm以下にしたスラブを所定の温度に一定時間加熱保持してから熱間圧延を行うオーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法が開示されている。
【0012】
また、特許文献4には、スラブを地鉄と酸化スケールとの界面の最大粗さRmaxが0.1mm以下になるように加熱してから熱間圧延を行うオーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法が開示されている。
【0013】
しかし、これらの特許文献に示される方法は、表面疵のないオーステナイト系ステンレス鋼帯を得ることを目的としたもので、光沢むらの改善は全く意図していない。
【0014】
【特許文献1】
特開平2000−328142号公報
【特許文献2】
特開平11−140545号公報
【特許文献3】
特開平9−3543号公報
【特許文献4】
特開2001−348619号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、オーステナイト系ステンレス鋼からなる光沢むらがない熱延焼鈍酸洗鋼帯、冷延焼鈍酸洗鋼帯およびこれらの鋼帯が確実に得られる熱延鋼帯とその製造方法、中でも、熱延鋼帯を屋外に一定期間放置した後に焼鈍−酸洗処理を施す場合に適用して特に有効な熱延鋼帯、熱延焼鈍酸洗鋼帯および冷延焼鈍酸洗鋼帯とその製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)〜(3)のオーステナイト系ステンレス鋼帯、および下記(4)のオーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法にある。
(1)熱延のままのオーステナイト系ステンレス鋼帯であって、鋼帯の幅方向の全体にわたって均等間隔に設定した20点における地鉄と酸化スケールとの界面の十点平均粗さRzが3〜30μmであり、かつ地鉄表層がCr欠乏層であるオーステナイト系ステンレス鋼帯。
(2)上記(1)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼帯に焼鈍と酸洗が施されたオーステナイト系ステンレス鋼帯であって、鋼帯幅方向の全体にわたって均等間隔に設定した20点の粗さ測定を行った際の十点平均粗さRzの最大値と最小値の差が1μm以下であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼帯。
(3)上記(2)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼に冷間圧延、焼鈍および酸洗が1回以上施されたオーステナイト系ステンレス鋼帯であって、鋼帯幅方向の全体にわたって均等間隔に設定した20点の光沢度測定を行った際の光沢度Gs(60°)の最大値と最小値の差が20以下であるオーステナイト系ステンレス鋼帯。
(4)連続鋳造して得られたオーステナイト系ステンレス鋼スラブを、表面手入れした後加熱炉に装入してスラブ表面温度が1200〜1270℃の範囲内になるように加熱し、次いで熱間圧延する際、仕上げ圧延中の950℃を超える鋼帯表面にスプレー水をかけ、その後780℃を超える温度で巻取る工程を含む上記(1)から(3)までのいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法。
【0017】
ここで、十点平均粗さRzとは、JIS B 0601に規定される十点平均粗さRzのことである。また、Cr欠乏層とは、後述するように、EDX元素分析により検出可能な地鉄表面下数μmの領域のCr濃度が母材のCr濃度よりも絶対値で1%以上低い層のことである。すなわち、母材のCr濃度が仮に18%であるとすればその含有量が17%以下になっている層をCr欠乏層という。さらに、光沢度Gs(60゜)とは、JIS Z 8741に規定される鏡面光沢度測定方法における方法3により測定される値のことである。
【0018】
本発明者らは、上記の課題を達成するために、光沢むらの発生機構、中でも、熱延鋼帯を屋外に一定期間放置した後に焼鈍−酸洗処理を施す場合に発生する光沢むらの発生機構とその防止策について種々検討した結果、以下のことを知見し、上記の本発明を完成させた。
【0019】
熱延焼鈍酸洗鋼帯に発生する光沢むらは、半製品の熱延鋼帯の屋外における放置期間が長いほど発生しやすい。その光沢むらは、鋼帯のエッジから約200mmの幅方向両端部分に多く発生し、光沢むら部は正常部に比べて光沢度が高い(表面が平滑)という事実が判明した。そこで、この原因について考察した結果、次のことが判明した。
【0020】
熱延後、通常、700〜800℃で巻取られた熱延鋼帯は、冷却の過程において大気中で500〜800℃の温度領域に長時間さらされる。その際、エッジから約200mmの幅方向両端部分の酸化スケールは、大気の混入により再酸化してへマタイト変態(Fe→Fe)を生じやすい。へマタイトは、鋼との熱膨張係数の差が大きいために酸化スケール中に圧縮応力をもたらし、室温までの冷却中に酸化スケールの剥離が進行しやすくなる。
【0021】
その後、輸送や屋外での放置期間中に雨に濡れると、上記幅方向両端部分の酸化スケールの剥離が進行し、放置期間が長くなるほど剥離が顕著になる。これらの剥離は、水に濡れることによる酸化スケールの変態(Fe+HO→Fe+FeOOH)が関与していると推察される。
【0022】
次いで、焼鈍において酸化スケールが剥離した部位にはCr主体の薄い酸化皮膜が生成し、熱延のままの酸化スケールが密着した部位にはFe主体の酸化スケールが成長して内部酸化が進行する。酸洗後の鋼帯表面は、薄い酸化皮膜を形成した部位は平滑になるが、酸化スケールが成長して内部酸化が進行した部位では凹凸が大きくなる。光沢むらは、上述の履歴を経て、酸洗で生じる部分的な腐食形態の差により発生するという結論に至った。
【0023】
上記の事実から、光沢むらの発生原因は、熱延鋼帯の巻取り後から焼鈍工程に至るまでに生じる酸化スケールの部分的な剥離と、この剥離に伴って焼鈍で生じる酸化形態の部分的な不均一性にあると考えた。しかし、熱延鋼帯の酸化スケールの部分的な剥離を防止することは、輸送や保管時に多くの制約を伴い非常に困難である。
【0024】
従って、光沢むら対策として、酸化スケールの部分的な剥離が生じても、表面光沢の均一性が高い熱延焼鈍酸洗鋼帯を得るために、熱延鋼帯の地鉄と酸化スケールとの界面を適度に粗し、かつ熱延鋼帯表層にCr欠乏層を形成させるという着想に至り、次の実験を行った。
【0025】
表1に示す化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の連続鋳造スラブを準備し、ショットブラストとグラインダーで手入れして十点平均粗さRzで100μmの表面に調整した。手入れ後のスラブは、加熱炉に装入してスラブ表面温度1230℃に加熱し、粗圧延後の仕上げ圧延中の1000〜1100℃の鋼帯表面にスプレー水をかけ、740℃、780℃、820℃の3種類の温度で巻取り、厚さ3.0mm、幅1250mm、長さ600mの熱延鋼帯をそれぞれ2コイルずつ製造した。
【0026】
【表1】
Figure 0003888282
【0027】
これら熱延鋼帯は、3日間の海上輸送後、1週間屋外に放置して2日間雨に濡らし、その後屋内で1週間保管した後、焼鈍と酸洗を行った。焼鈍は、連続焼鈍ラインにおいて、LPG燃焼排ガス雰囲気中で、鋼帯の表面温度が1080℃になるように昇温して3分間保持した後、工業用水で200℃まで強制冷却することにより行った。酸洗は、メカニカルデスケーリングとショットブラストを施した後、硫酸濃度15質量%、温度60℃の硫酸水溶液と、硝酸濃度10質量%、弗酸濃度2質量%、温度60℃の硝弗酸水溶液とからなる酸洗漕を4分間で通板することにより行った。
【0028】
表2は、得られた熱延焼鈍酸洗鋼帯の光沢むら発生状況と幅方向の全体にわたって均等間隔で設定した20点の粗さ測定結果(十点平均粗さRzの最大値と最小値の差ΔRz)を示したものである。
【0029】
表2からわかるように、740℃で巻取られた熱延焼鈍酸洗鋼帯は2コイル中1コイルに、780℃で巻取られた熱延焼鈍酸洗鋼帯には2コイルともに、コイル全長にわたって、エッジから約200mmの幅方向両端部分に表面が平滑な領域が見られ、光沢むらの発生が確認され、光沢むらの部位の十点平均粗さRzは通常の部位よりも2〜3μm小さく、△Rzは1.5μmおよび2.4μmと大きい。
【0030】
これに対し、820℃で巻取られた熱延焼鈍酸洗鋼帯は、2コイルとも、コイル全長にわたって上記のような光沢むらは発生しなかった。これら鋼帯幅方向の十点平均粗さRzのバラツキ△Rzは2コイルとも1μm以下の0.5μmであり、均一性の高い表面が得られた。
【0031】
【表2】
Figure 0003888282
【0032】
以上の結果に基づき、焼鈍前の熱延鋼帯から切板サンプルを採取して、820℃巻取りで光沢むらが改善した原因を詳細に調べた。その結果、以下のメカニズムにより光沢むらが改善したと推定した。
【0033】
熱延鋼帯の表面には、部分的に酸化スケールの剥離(地鉄の露出)が観察された。このような酸化スケールの剥離は、巻取り温度の上昇により顕著になる傾向を示した。また、巻取り温度の上昇(740→820℃)により、地鉄と酸化スケールとの界面粗さRzは1〜15μmと大きくなり、表層(表皮下数μm)のCr濃度は母材の濃度よりも1.0〜2.0%低かった。
【0034】
これらの結果より、820℃巻取り材は、雨濡れなどで部分的な酸化スケール剥離が進行しても、地鉄表面が適度に粗く、かつ地鉄表層部がCr欠乏層となっているために、焼鈍時にCr主体の薄い酸化スケールがブレイクアウトし、Fe主体の酸化スケールが成長(内部酸化の進行)して、酸洗後は一様な腐食形態となり、光沢むらが改善したものと思われる。
【0035】
そこで、さらに実験を行い、熱延鋼板の地鉄と酸化スケールとの界面の十点平均粗さRzが3〜30μmであり、かつ地鉄表層がCr欠乏層であれば、通常行われている焼鈍−酸洗処理、並びにこの焼鈍−酸洗処理後に行われる通常の冷延、焼鈍−酸洗処理で、光沢むらのない熱延焼鈍酸洗鋼帯並びに冷延焼鈍酸洗鋼帯が得られることを知見した。
【0036】
また、上記表面状態の熱延鋼帯は、連続鋳造して得られたオーステナイト系ステンレス鋼スラブを、表面手入れした後加熱炉に装入してスラブ表面温度が1200〜1270℃の範囲内になるように加熱し、次いで熱間圧延する際、仕上げ圧延中の950℃を超える鋼帯表面にスプレー水をかけ、その後780℃を超える温度で巻取れば、確実に得られることも知見した。
【0037】
なお、本発明の製造方法におけるスラブの表面手入れや加熱条件は、前記の特許文献3および4に示される条件と一部重複する。しかし、その条件は表面疵の発生を防止するためのもので、これだけでは光沢むらの発生は防止できず、粗圧延後の仕上げ圧延中の950℃を超える鋼帯表面にスプレー水をかけて始めて光沢むらの発生が防止できるのであり、これら特許文献3および4に示される発明と本発明とは技術思想が全く相違する。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を前記のように定めた理由について詳細に説明する。なお、以下において、「%」は特に断らない限り、「質量%」を意味する。
【0039】
1.本発明で対象とするオーステナイト系ステンレス鋼について、
本発明で対象とするオーステナイト系ステンレス鋼には、特に制限はなく、例えば、JISに規定されるSUS304、SUS301、SUS316等に代表される汎用鋼種およびその相当鋼種を挙げることができる。すなわち、質量%で、C:0.15%以下、Cr:16.0〜20.0%、Ni:6.0〜13.0%を基本組成とするオーステナイト系ステンレス鋼である。なお、C、CrおよびNi以外の成分の作用効果と望ましい含有量は下記のとおりである。
【0040】
Si:
Siは脱酸剤として利用され、耐酸化性の向上に有効な元素であるため、通常0.2〜1.0%含有される。しかし、SiはCrと同様に代表的なフェライト形成元素であり、過剰に含有させるとNiなどオーステナイト形成元素の含有量を増加させることになるので、その上限は1.0%とするのがよい。
【0041】
Mn:
Mnは脱酸剤として有効であり、オーステナイト形成元素でもあるため、通常0.5〜2.0%含有される。しかし、Mnは過剰に含有させると耐食性を低下させる作用もあるので、その上限は2.0%とするのがよい。
【0042】
N:
Nは代表的なオーステナイト形成元素であるため、通常0.02〜0.06%含有される。また、Nはオーステナイト相の強度や耐食性の向上に有効な元素である。従って、0.06%を超えて含有させてもよいが、過剰なNは熱間加工性を著しく損なうので、その上限は0.2%とするのがよい。
【0043】
Cu:
Cuはオーステナイト形成元素であり、オーステナイト相の強度調整や耐食性の向上に有効な元素である。従って、この効果を得たい場合は添加してもよく、その効果は0.3%以上で顕著になるが、Cuを過剰に含有させると、熱間脆性や製品の強度低下を招く恐れがあるので、その上限は2%とするのがよい。
【0044】
Mo:
Moはフェライト形成元素であるとともに、耐食性を著しく向上させる作用がある。従って、この効果を得たい場合は添加してもよく、その効果は0.2%以上で顕著になる。しかし、Moは高価であり、過剰に含有させると経済性を損なううえ、強度低下を招く恐れがあるので、その上限は3.0%とするのがよい。
【0045】
Nb、Ti:
これらの元素はフェライト形成元素であるとともに、CおよびNを固定して焼鈍時や溶接時の鋭敏化現象を抑制する作用がある。このため、この効果を得たい場合は1種以上を添加してもよく、その効果はNbの場合0.01%以上、Tiの場合0.003%以上で顕著になる。しかし、過剰なNbおよびTiは鋼中の固溶Cおよび固溶Nが減って強度低下を招く恐れがあるので、Nbは0.1%以下、Tiは0.02%以下とするのがよい。
【0046】
V:
Vは強度を得るために効果的な元素である。従って、この効果を得たい場合は添加してもよく、その効果は0.05%以上で顕著になる。しかし、その含有量が0.2%を超えると効果が飽和するので、その上限は0.2%とするのがよい。
【0047】
希土類元素(ScおよびYを含めた17元素):
希土類元素は鋼の耐酸化性を向上させる作用がある。このため、この効果を得たい場合に添加してもよく、その効果はいずれの元素も0.001%以上で顕著になるが、合計含有量が0.1%を超えると効果が飽和するうえコストが高くなるので、その含有量は合計で0.1%以下とするのがよい。
【0048】
2.熱延鋼帯について、
本発明の熱延鋼帯は、地鉄と酸化スケールとの界面の十点平均粗さRzが3〜30μm、地鉄表層がCr欠乏層でなければならない。これは、前記界面の十点平均粗さRzが3μm未満であると、熱延鋼帯の酸化スケール剥離が生じた部位に焼鈍時にCr主体の薄い酸化スケールが形成され、光沢むらが発生する。一方、30μmを超えると、焼鈍時の異常酸化によるスケール肌荒れを生じる恐れがある。好ましい上限は25μmである。
【0049】
また、地鉄の表層部分がCr欠乏層でないと、焼鈍時にCr主体の薄い酸化スケールがブレイクアウトしてFe主体の酸化スケールが形成成長せず、酸洗後の腐食形態が一様にならなくなって光沢むらが発生する。以上のことは、後述する実施例からも明らかである。
【0050】
ここで、上記のCr欠乏層とは、EDX元素分析により検出可能な地鉄表面下数μmの領域のCr濃度が母材のCr濃度よりも絶対値で1%以上低い層のことである。なお、Cr欠乏層のCr濃度の下限は特に制限しない。しかし、その濃度が母材のCr濃度よりも絶対値で3%を超えて低いと、焼鈍時の異常酸化によるスケール肌荒れが生じやすくなる。このため、Cr欠乏層のCr濃度の下限値は、母材のCr濃度よりも絶対値で3%低い値とするのがよい。
【0051】
3.熱延酸洗焼鈍鋼帯について、
本発明の熱延焼鈍酸洗鋼帯は、上記本発明の熱延鋼帯に常法に従って焼鈍および酸洗を施して得られる鋼帯であり、鋼帯幅方向に20点の粗さ測定を行った際の十点平均粗さRzの最大値「maxRz」と最小値「minRz」の差△Rzが1μm以下でなければならない。これは、鋼帯幅方向の十点平均粗さRzのばらつき、すなわち△Rzが1μmを超えると、光沢むらが発生するからである。このことも後述する実施例からも明らかである。
【0052】
4.熱延酸洗焼鈍鋼帯について、
本発明の冷延焼鈍酸洗鋼帯は、上記本発明の熱延鋼帯に常法に従って焼鈍および酸洗を施した後、冷間圧延、焼鈍および酸洗を施して得られる鋼帯であり、鋼帯幅方向に20点の粗さ測定を行った際の光沢度Gs(60゜)の最大値「maxGs」と最小値「minGs」の差△Gsが20以下でなければならない。これは、鋼帯幅方向の光沢度Gsのばらつき、すなわち△Gsが20を超えると、光沢むらが発生するからである。このことも、後述する実施例からも明らかである。
【0053】
5.熱延鋼帯の製造方法について、
上記本発明の熱延鋼帯は、前記の化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼を転炉や電気炉で溶解した後、真空脱ガス処理を施し、連続鋳造法により得られたスラブを用いて製造する。このとき、本発明の製造方法においては、連続鋳造して得られたスラブはその表面を手入れした後、加熱炉に装入してスラブの表面温度が1200〜1270℃の範囲内になるように加熱し、次いで熱間圧延する際、粗圧延後の仕上げ圧延中の950℃を超える鋼帯表面にスプレー水をかけ、その後780℃を超える温度で巻取る必要がある。これは、以下の理由による。
【0054】
連続鋳造により得られたスラブは、耐酸化性の高い皮膜で覆われており、スラブ加熱時に酸化されにくい性質を有している。このため、鋳造のままのスラブを加熱したのでは、スラブの表面にFe主体の均一な酸化スケールが形成しない。従って、加熱後のスラブ表面にFe主体の均一な酸化スケールを形成させるには、耐酸化性の高い皮膜を完全に除去するか、または皮膜を部分的に破壊する必要があり、このため本発明では加熱前のスラブ表面手入れを行うのである。
【0055】
手入れ方法は、どのような方法であってもよく、例えば、ショットブラスト法、グラインダーやバイト、あるいはフライスによる研削や切削による方法を挙げることができる。
【0056】
手入れ後のスラブ表面粗さは、特に制限されないが、十点平均粗さRzで200μm以下とするのが望ましい。これは、表面粗さが十点平均粗さRzで200μmを超えると、グラインダーなどの研削目を起点としたこぶ状の異常酸化が生じる恐れがあるからである。なお、Rzの下限は10μm程度とするのがよい。これは、これ以上平滑な表面にしても効果は変わらず、手入れ費用が嵩んでコスト上昇を招くだけになるからである。
【0057】
スラブの加熱温度は、その表面温度が1200℃未満になる温度ではスラブの表面にCr主体の薄い酸化スケールが部分的に残存することがあり、地鉄と酸化スケールとの界面に不均一性が生じる恐れがある。一方、1270℃を超える温度になると、こぶ状の異常酸化が部分的に成長してスケール肌荒れが生じることがある。このため、スラブの加熱温度はその表面温度が1200〜1270℃になる温度と定めた。好ましい上限温度は1250℃である。
【0058】
粗圧延後の仕上げ圧延中の鋼帯表面にスプレー水をかける際の鋼帯の表面温度が950℃以下では、水蒸気の発生量が不足して酸化スケールの成長(酸化進行)が不十分で、地金の表層部に所望のCr欠乏層が形成しない。このため、スプレー水は仕上げ圧延中の表面温度が950℃を超える鋼帯表面にかけることとした。好ましくは1000℃以上である。上限温度は特に規定しない。しかし、あまり高すぎるとスラブの加熱温度が1270℃を超える恐れが生じるので、高くても1200℃程度とするのがよい。
【0059】
スプレー水は、仕上げ圧延スタンド間にスプレー装置を設置し、これを利用してかければよい。また、スプレー水自体は、圧延用ロールと材料(鋼帯)が焼付くのを防止するために使用される圧延油を含むものであってもかまわない。
【0060】
巻取り温度が780℃以下であると、巻取り後の室温までに放冷される間における大気との反応で生じる酸化スケールの成長が不十分で、表層部に十分なCr欠乏層が形成されず、所望の熱延鋼帯、ひいては所望の熱延焼鈍酸洗鋼帯および冷延焼鈍酸洗鋼帯が得られない。このため、巻取り温度は780℃を超える温度と定めた。なお、上限は特に規定しない。しかし、あまり高すぎると、放冷中における酸化スケールの成長が著しくなり、地金の表層部Cr濃度が低くなりすぎて耐食性が低下したりスケール肌荒れが顕著になりやすいので、上限は950℃、より好ましくは900℃とするのがよい。
【0061】
なお、本発明の製造方法においては、光沢むらを助長する熱延鋼帯の部分的なスケール剥離を抑制するために、熱延仕上げパス終了後、巻取りまでの間にホットランスプレーなどの水冷設備は原則として使用しない方がよいが、熱延仕上げパス終了後の熱延鋼帯の温度が著しく高い場合には使用してもよく、特に巻取り時の焼き付き防止とダウンコイラーなどの設備保護のためには熱延鋼帯のトップから10mまでの領域を積極的に冷却することが望ましい。
【0062】
6.熱延焼鈍酸洗鋼帯の製造方法について、
上記の工程を経て製造された熱延鋼帯は、連続式の焼鈍−酸洗ラインを通して前記した本発明の熱延焼鈍酸洗鋼帯とされる。このとき、その焼鈍および酸洗の各条件に特別な制約はなく、常法に従って焼鈍−酸洗処理すればよい。
【0063】
すなわち、焼鈍は、LPG(液化プロパンガス)やLNG(液化天然ガス)などの燃料ガスを空気と混合した燃焼排ガスの酸化性雰囲気中で900〜1120℃の温度に30秒〜5分間加熱保持して行えばよい。また、酸洗は、常法に従ってメカニカルデスケーリングとショットブラストを施した後、硫酸濃度5〜30質量%、温度30〜90℃の硫酸水溶液と、硝酸濃度1〜20質量%、弗酸濃度0.3〜20質量%、温度40〜80℃の硝弗酸水溶液とからなる酸洗漕を1〜7分間通板することにより行えばよい。熱延焼鈍酸洗鋼帯の板厚は、特に限定するものでなく、通常使用されている厚さ(2〜8mm)とすればよい。
【0064】
7.冷延焼鈍酸洗鋼帯の製造方法について、
上記の工程を経て製造された熱延鋼帯は、連続式の焼鈍−酸洗ラインを通して前記した本発明の熱延焼鈍酸洗鋼帯とされ、次いで冷間圧延を施した後、熱延焼鈍酸洗鋼帯の場合と同様に、連続式の焼鈍−酸洗ラインを通して前記した本発明の冷延焼鈍酸洗鋼帯とされる。このとき、その冷間圧延、焼鈍および酸洗の各条件に特別な制約はなく、常法に従って焼鈍−酸洗処理すればよい。
【0065】
すなわち、冷間圧延は、900〜1120℃の温度に10秒〜3分間加熱保持する中間焼鈍を含む複数回の冷間圧延を行えばよい。また、焼鈍は、前記した本発明の熱延焼鈍酸洗鋼帯の場合と同様に、LPG(液化プロパンガス)やLNG(液化天然ガス)などの燃料ガスを空気と混合した燃焼排ガスの酸化性雰囲気中で1000〜1120℃の温度に10秒〜3分間加熱保持して行えばよい。さらに、酸洗も、前記した本発明の熱延焼鈍酸洗鋼帯の場合と同様に、常法に従ってメカニカルデスケーリングとショットブラストを施した後、硫酸濃度5〜30質量%、温度30〜90℃の硫酸水溶液と、硝酸濃度1〜20質量%、弗酸濃度0.1〜20質量%、温度40〜80℃の硝弗酸水溶液とからなる酸洗漕を30秒〜5分間通板することにより行えばよい。
【0066】
本発明の冷延焼鈍酸洗鋼帯は、上記の酸洗処理後、さらに圧下率0.1〜3%で調質圧延を施すことで、その表面をより一層平滑にし、光沢度を向上させるようにすることが好ましく、調質圧延には表面粗さが十点平均粗さRzで0.2μm以下のロールを使用するのが望ましい。冷延焼鈍酸洗鋼帯の板厚も、特に限定するものでなく、通常使用されている厚さ(0.3〜4.5mm)とすればよい。
【0067】
なお、本発明の冷延焼鈍酸洗鋼帯は、JIS G 4305に規定される表面仕上げ記号のNo. 2DまたはNo. 2Bの製品に該当するものであり、No. 2Dの製品は、冷間圧延、焼鈍および酸洗処理のままのもの、No. 2Bの製品は、冷間圧延、焼鈍および酸洗後、さらに調質圧延を施したものである。
【0068】
【実施例】
表3に示す化学組成を有する4種類のオーステナイト系ステンレス鋼からなる厚さ200mmの連続鋳造スラブを製造し、ショットブラストとグラインダーで手入れしてその表面粗さを十点平均粗さRzで100μmに調整したものと、無手入れのものを準備した。
【0069】
【表3】
Figure 0003888282
準備したスラブはその表面温度が表4に示す種々の温度になるように加熱したた後、熱間圧延し、粗圧延後の仕上げ圧延ミルにおいて表面温度が1000〜1100℃の鋼帯表面にスプレー水をかけたものと、かけなかったものを製造し、仕上げ温度900〜1050℃で熱間圧延を終了した。次いで、ホットランスプレーなどの冷却装置を使用せず、700〜900℃で巻取り、厚さ3.0mmの熱延鋼帯を製造した。
【0070】
得られた熱延鋼帯は、3日間の海上輸送と1週間の屋外放置(この間に1日間雨濡れ)後、屋内にて1週間保管した後、焼鈍と酸洗を行って熱延焼鈍酸洗鋼帯とした。焼鈍は、連続焼鈍ラインにおいて、LPG燃焼排ガス雰囲気中で1060〜1100℃に1分間保持する条件で行った。また、酸洗は、メカニカルデスケーリングとショットブラストを施した後、硫酸濃度15質量%、温度40℃の硫酸水溶液と、硝酸濃度10質量%、弗酸濃度1質量%、温度55℃の硝弗酸水溶液とからなる2つの酸洗漕を4分間通板することにより行った。
【0071】
その後、一部の熱延焼鈍酸洗鋼帯は、さらに、冷間圧延と焼鈍および酸洗を1回または2回施して厚さ0.4〜1.0mmのJIS G 4305に規定されるNo. 2DおよびNo. 2Bの製品に該当する冷延焼鈍酸洗鋼帯とした。その際、冷間圧延後の焼鈍は、LPG燃焼排ガス雰囲気中で1050〜1120℃に30秒〜1分間保持する条件で行った。また、酸洗は、硫酸濃度15質量%、温度40℃の硫酸水溶液と、硝酸濃度10質量%、弗酸濃度0.5質量%、温度55℃の硝弗酸水溶液とからなる2つの酸洗漕を2分間通板することにより行った。さらに、No. 2Bの製品に該当する冷延焼鈍酸洗鋼帯の調質圧延は、十点平均粗さRzが0.1μmのロールを使用して圧下率0.4%で行った。
【0072】
各鋼板の評価は以下の方法により行った。
【0073】
熱延鋼帯については、熱延トップおよびボトムから5〜10m付近から切板を採取し、地鉄と酸化スケールとの界面の粗さと鋼表層のCr欠乏層の存在有無を次の方法により調査した。
【0074】
界面の粗さは、採取した切板を、NaOH濃度が18質量%、KMnO濃度が3質量%のアルカリ水溶液中で30分間煮沸し、クエン酸2アンモニウム濃度が10質量%の水溶液中で30分煮沸処理した後、水洗いし、その後スポンジタワシでブラッシングして表面に付着した酸化スケールのみを溶解、除去した地金表面を対象に、JIS B 0601に規定される方法に従って鋼帯幅方向の全体にわたって均等間隔に設定した20点の十点平均粗さRzを測定した。
【0075】
地鉄表層のCr欠乏層は、前記の方法により酸化スケールが溶解、除去された地鉄表面をEDX元素分析により測定して表層のCr濃度が母材のCr濃度よりも絶対値で1%以上低い値が検出された場合をCr欠乏層が存在し、母材のCr濃度よりも絶対値で1%未満低い値が検出された場合をCr欠乏層は存在しないと判定した。
【0076】
熱延焼鈍酸洗鋼帯については、その表面粗さをJIS B 0601に規定される方法に従って鋼帯幅方向の20点の十点平均粗さRzを測定してその最大と最小値とからばらつき△Rzを求めた。一方、光沢むらの判定は、目視による出荷合否判定を行って光沢むらが確認されなかったものを「○」、光沢むらの発生が確認されて表面光沢の均一性が損なわれていたものを「×」とした。
【0077】
冷延焼鈍酸洗鋼帯については、その表面光沢度をJIS Z 8741に規定される測定方法3に従って鋼帯幅方向の20点の光沢度Gs(60゜)で測定してその最大と最小値とからばらつき△Gsを求めた。一方、光沢むらの判定は、熱延焼鈍酸洗鋼帯の場合と同様に、目視による出荷合否判定を行って光沢むらが確認されなかったものを「○」、光沢むらの発生が確認されて表面光沢の均一性が損なわれていたものを「×」とした。
【0078】
以上の結果は、製造条件と併せて、表4に示した。
【0079】
【表4】
Figure 0003888282
【0080】
表4に示すように、本発明で規定する方法により製造された符号A3〜A5、C2およびD2の熱延鋼帯は、いずれも、地鉄と酸化スケールの界面の十点平均粗さRzが3〜30μmの範囲内にあり、かつ地鉄の表層部がCr欠乏層である。そして、これらの熱延鋼帯から得られた符号A3の熱延焼鈍酸洗鋼帯は、鋼帯幅方向の十点平均粗さRzの最大値と最小値の差△Rzが1μm以下で、出荷合格判定において光沢むらは確認されなかった。同様に、これらの熱延鋼帯から得られた符号A4、A5、C2およびD2の冷延焼鈍酸洗鋼帯も、鋼帯幅方向の光沢度Gs(60゜)の最大値と最小値の差△Gsが20以下で、出荷合格判定において光沢むらは確認されなかった。
【0081】
これに対し、符号A1およびA2の熱延鋼帯は、巻取り温度が本発明で規定する範囲を外れているために、界面の十点平均粗さRzが2.8μmで、かつ地鉄の表層部にはCr欠乏層が形成されていない。このため、この熱延鋼帯に焼鈍と酸洗を施して得られた熱延焼鈍酸洗鋼帯は、鋼帯幅方向の十点平均粗さRzの最大値と最小値の差△Rzが2.3μmと大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。また、この熱延酸洗焼鈍鋼帯に冷間圧延、焼鈍および酸洗を施して得られた冷延焼鈍酸洗鋼帯も、鋼帯幅方向の光沢度Gs(60゜)の最大値と最小値の差△Gsが26と大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。
【0082】
符合BlおよびB2の熱延鋼帯は、スラブ手入れと仕上げ圧延中でのスプレー水かけがなく、しかも巻取り温度も本発明で規定する範囲を外れているために、界面の十点平均粗さRzは6.8μmと本発明で規定する範囲内であるが、地鉄の表層部にはCr欠乏層が形成されていない。このため、この熱延鋼帯に焼鈍と酸洗を施して得られた熱延焼鈍酸洗鋼帯は、鋼帯幅方向の十点平均粗さのばらつき△Rzが2.0μmと大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。また、この熱延酸洗焼鈍鋼帯に冷間圧延、焼鈍および酸洗を施して得られた冷延焼鈍酸洗鋼帯も、鋼帯幅方向の光沢度のばらつき△Gsが22以上と大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。
【0083】
符合B3の熱延鋼帯は、仕上げ圧延中でのスプレー水かけがないために、界面の十点平均粗さRzは12.5μmと本発明で規定する範囲内であるが、地鉄の表層部にはCr欠乏層が形成されていない。このため、この熱延鋼帯に焼鈍と酸洗を施して得られた熱延焼鈍酸洗鋼帯は、鋼帯幅方向の十点平均粗さのばらつき△Rzが2.9μmと大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。
【0084】
符合B4の熱延鋼帯は、スラブ手入れがないために、界面の十点平均粗さRzは7.8μmと本発明で規定する範囲内であるが、地鉄の表層部にはCr欠乏層が形成されていない。このため、この熱延鋼帯に焼鈍と酸洗を施して得られた熱延焼鈍酸洗鋼帯は、鋼帯幅方向の十点平均粗さのばらつき△Rzが2.7μmと大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。
【0085】
符合C1の熱延鋼帯は、符号A1およびA2の熱延鋼帯と同様に、巻取り温度が本発明で規定する範囲を外れているために、地鉄の表層部にCr欠乏層が形成されていない。このため、この熱延鋼帯に焼鈍と酸洗を施して得られた熱延焼鈍酸洗鋼帯は、鋼帯幅方向の十点平均粗さのばらつき△Rzが2.3μmと大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。また、この熱延酸洗焼鈍鋼帯に冷間圧延、焼鈍および酸洗を施して得られた冷延焼鈍酸洗鋼帯も、鋼帯幅方向の光沢度のばらつき△Gsが24と大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。
【0086】
符合D1の熱延鋼帯は、符号A1、A2およびC1の熱延鋼帯と同様に、巻取り温度が本発明で規定する範囲を外れているために、地鉄の表層部にCr欠乏層が形成されていない。このため、この熱延鋼帯に焼鈍と酸洗を施して得られた熱延焼鈍酸洗鋼帯は、鋼帯幅方向の十点平均粗さのばらつき△Rzが1.6μmと大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。また、この熱延酸洗焼鈍鋼帯に冷間圧延、焼鈍および酸洗を施して得られた冷延焼鈍酸洗鋼帯も、鋼帯幅方向の光沢度のばらつき△Gsが29と大きく、出荷合格判定において光沢むらが確認され、不合格となった。
【0087】
【発明の効果】
本発明の熱延のままのオーステナイト系ステンレス熱延鋼帯は、地金の表面が適度に粗く、かつ地金の表層部がCr欠乏層であるので、これに焼鈍を施すとFe主体の酸化スケールが鋼帯幅方向に均一に生成し、これが酸洗により除去される。このため、本発明の熱延鋼帯に焼鈍および酸洗を施して得られる本発明のオーステナイト系ステンレス熱延焼鈍酸洗鋼帯、およびこの熱延焼鈍酸洗鋼帯に冷間圧延、焼鈍および酸洗を施して得られる本発明のオーステナイト系ステンレス冷延焼鈍酸洗鋼帯は、いずれも、幅方向の粗さのむらが小さく光沢むらがない。また、本発明の製造方法によれば、上記の熱延鋼帯、熱延焼鈍酸洗鋼帯および冷延焼鈍酸洗鋼帯を、製造工程への負荷やコストアップなく、確実に製造できる。

Claims (4)

  1. 熱延のままのオーステナイト系ステンレス鋼帯であって、鋼帯の幅方向の全体にわたって均等間隔に設定した20点における地鉄と酸化スケールとの界面の十点平均粗さRzが3〜30μmであり、かつ地鉄表層がCr欠乏層であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼帯。
  2. 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼帯に焼鈍と酸洗が施されたオーステナイト系ステンレス鋼帯であって、鋼帯幅方向の全体にわたって均等間隔に設定した20点の粗さ測定を行った際の十点平均粗さRzの最大値と最小値の差が1μm以下であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼帯。
  3. 請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼に冷間圧延、焼鈍および酸洗が1回以上施されたオーステナイト系ステンレス鋼帯であって、鋼帯幅方向の全体にわたって均等間隔に設定した20点の光沢度測定を行った際の光沢度Gs(60°)の最大値と最小値の差が20以下であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼帯。
  4. 連続鋳造して得られたオーステナイト系ステンレス鋼スラブを、表面手入れした後加熱炉に装入してスラブの表面温度が1200〜1270℃の範囲内になるように加熱し、次いで熱間圧延する際、仕上げ圧延中の950℃を超える鋼帯表面にスプレー水をかけ、その後780℃を超える温度で巻取る工程を含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法。
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