JP2021155498A - 透湿防水成形体及び透湿防水成形体の製造方法 - Google Patents

透湿防水成形体及び透湿防水成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】環境的に負荷の少ない材料を用いて、射出成形性、押出成形性に優れると同時に、透湿防水性を有する透湿防水成形体及びその製造方法を提供する。【解決手段】熱可塑性エラストマーと、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂とを含む材料を混練し、熱可塑性エラストマー組成物を得る工程と、前記熱可塑性エラストマー組成物を成形して成形体を得る工程と、前記成形体を水系媒体で処理して透湿防水成形体を得る工程とを有する透湿防水成形体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー組成物よりなる透湿防水成形体及び透湿防水成形体の製造方法に関する。
熱可塑性エラストマーは、ゴム弾性、着色性、意匠性に優れ、通常の熱可塑性プラスチックと同じように射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形等の各種成形が出来ることから、自動車、建材用のパッキング、自動車の内外装材、建材用部品、日用雑貨等、多方面にわたり使用されている。
熱可塑性エラストマーの物性の特徴は、ゴムのようなJIS−A硬度領域に当たり、低硬度から高硬度まで幅広い硬度領域が得られる点にあり、このため柔軟性が必要とされる用途に適している。こうした柔軟性に富んだ熱可塑性エラストマーの代表的な材料として、スチレン系熱可塑性エラストマーやオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーは、耐水性が高いことによる防水性能を活かし、シール性が求められる部位を構成する成形体の材料として用いることが可能であるが、一方で、例えば、椅子のシートのように人が接触する部位においては、この材料よりなる成形体は汗による水蒸気を通さないため、長時間の使用によるムレが生じることがあり、快適性に問題があった。
成形体を多孔質体とすることで、こうしたムレは解消される方向にはあるが、この場合には防水性が損なわれるおそれがある。例えば、シートに適用した場合、その上に水をこぼしたり、衣服が濡れた状態でシートに座ったりすると、水がシート内部に浸透することにより、シートそのものが濡れてしまい、シートが汚れてしまうという問題が発生する。
そこで、防水性能を維持しつつ透湿性能を保持する(透湿防水性を有する)成形体が望まれる。
透湿防水性の商品としては、レインウエア、スキー・スノーボードウエア等のスポーツウエア、また、アウトドア用品におけるテント素材やシューズ等において、身体からの発汗による水蒸気を衣服外に放出し、かつ衣服内に雨が侵入するのを防ぐため、糸を高密度に織り込んだ高密度織物、布帛にポリウレタン樹脂等を薄くコーティングまたはラミネートしたコーティング布帛、微多孔質膜と貼り合わせた布帛等が知られている。また、建材においても、ハウス内の結露を抑え、湿度を除去する機能により、ハウス内の湿度環境を向上させるために、透湿防水シートが用いられている。
このような透湿防水素材は、水滴は通さないが、水蒸気は通過できる直径数ミクロン以下の細孔を有しており、一般に、フィルム等の薄膜素材が多い。
透湿防水素材をフィルム等の薄膜素材以外、例えば厚みを有する各種形状の成形体に応用するためには、このような成形体に水滴は通さず、水蒸気は通過できる直径数ミクロン以下の細孔を付与する技術が必要となる。
細孔を有する成形体を製造する方法としては、従来、シリコーンゴムや架橋ゴム、熱可塑性樹脂である高密度ポリエチレン等の材料中に気孔形成剤を混合して溶融混練した後、成形して成形体を得、得られた成形体から気孔形成剤を溶出させて除去することにより多孔体を得る方法が知られている(特許文献1や特許文献2参照)
特開2008−94981号公報 特開2014−148581号公報
上記特許文献1や特許文献2に記載された方法は、多孔体とすることで、透湿性能は得られても、防水性能を付与することは難しい。また、気孔形成剤を水中に溶解させることから、環境的な配慮も必要であり、環境的に負荷の少ない材料で製造することも望まれている。
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、環境的に負荷の少ない材料を用いて、透湿性能と防水性能を有する透湿防水成形体を良好な成形性のもとに製造する方法と、成形性、透湿防水性に優れた透湿防水成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、熱可塑性エラストマーと、特定のポリビニルアルコール系樹脂とを含む熱可塑性エラストマー組成物の成形体を水系媒体で洗浄することで、環境的に負荷の少ない材料を用いて、射出成形性、押出成形性に優れると同時に透湿防水性を有する透湿防水成形体を実現できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、以下を要旨とする。
[1] 熱可塑性エラストマーと、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂とを含む材料を混練し、熱可塑性エラストマー組成物を得る工程と、前記熱可塑性エラストマー組成物を成形して成形体を得る工程と、前記成形体を水系媒体で処理して透湿防水成形体を得る工程とを有する透湿防水成形体の製造方法。
[2] 前記側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂が、ブテンジオール・ビニルアルコール共重合樹脂である[1]に記載の透湿防水成形体の製造方法。
[3] 前記熱可塑性エラストマーが下記成分(A)と下記成分(B)を含む[1]又は[2]に記載の透湿防水成形体の製造方法。
成分(A):少なくとも2個の、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックPと、少なくとも1個の、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQとを有するブロック共重合体の水素添加物
成分(B):オレフィン系樹脂
[4] 前記熱可塑性エラストマーが更に下記成分(C)を含む[1]〜[3]のいずれかに記載の透湿防水成形体の製造方法。
成分(C):炭化水素系ゴム用軟化剤
[5] 前記熱可塑性エラストマーが、更に下記成分(D)を含む[1]〜[4]の透湿防水成形体の製造方法。
成分(D):ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有する化合物
[6] 熱可塑性エラストマー組成物よりなり、平均孔径が0.1〜20μmの孔を有する透湿防水成形体。
本発明によれば、環境的に負荷の少ない材料を用いて、射出成形性、押出成形性に優れると同時に、透湿防水性を有する透湿防水成形体と、その製造方法を提供できる。
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本発明において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明の透湿防水成形体は、熱可塑性エラストマー組成物よりなり、平均孔径が0.1〜20μmの細孔を有する成形体である。この細孔は、海島型及び/又は共連続相型の相分離構造を有する熱可塑性エラストマーをベースとする材料に、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)を分散させ、得られる熱可塑性エラストマー組成物を成形して成形体を得、この成形体を水系媒体で処理することにより、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を水系媒体中に溶出させることで形成することができる。
前記熱可塑性エラストマー組成物の成形体において、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂が、熱可塑性エラストマーにより形成される海島及び/又は共連続相との間の界面に存在するよう制御することで、成形体中に側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を連続的な筋状に存在させ易くなり、これを溶出させた後に、透湿防水性に優れた連続気孔を形成することが可能となる。
好ましくは、更に、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有する化合物(以下、「成分(D)」と称す場合がある。)を配合することで、成形体中で、成分(D)の親水性ポリマーが筋状に存在することを利用して、これと相溶性の高い側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂をも同様に筋状に存在させ、このように配置された側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を溶出除去することにより、透湿防水性に優れた連続気孔を形成することが可能となる。
このように、本発明の透湿防水成形体は、熱可塑性エラストマーと、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を混練して得られた熱可塑性エラストマー組成物の成形体から、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を溶出させて除去することにより得られるものである。
[熱可塑性エラストマー]
本発明において、熱可塑性エラストマーとは、使用温度では加硫されたゴムと同様の性質を持つが、昇温されると熱可塑性樹脂と同様に成形することができ、また、再成形することができるポリマー又はポリマーブレンドからなるものをいい、材料内に柔軟性成分(ゴム相またはソフトセグメント)と分子拘束成分(樹脂相またはハードセグメント)の両者を含有する。
例えば、少なくとも2個の、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックPと、少なくとも1個の、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQとを有するブロック共重合体の水素添加物(以下、「成分(A)」と称す場合がある。)は、常温では、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックP(ハードセグメント)と共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQ(ソフトセグメント)の二相に分かれ、それぞれのブロックは、共有結合で繋がれているため、ミクロに相分離する。ゴム弾性を有するブロックQは、その両端を、加硫ゴムの架橋点に相当して塑性変形を防止し、補強効果を付与するブロックPが凝集した球状ドメインで拘束され、架橋なしでも常温近辺でエラストマーとしての性能を発揮するため、本発明で用いる熱可塑性エラストマーとして好ましい。
このような芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックPと、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQとを有するブロック共重合体を水素添加して得られるブロック共重合体(以下、「水添ブロック共重合体」と称す場合がある。)を、後述のオレフィン系樹脂(以下、「成分(B)」と称す場合がある。)にブレンドした場合、オレフィン系樹脂がマトリックスとなり、このマトリックス中に水添ブロック共重合体が分散した状態として存在するものとなる。この時、水添ブロック共重合体よりなるドメインが独立した島のようにマトリックスに存在すると海島構造となり、独立でなく連続的に存在している状態では共連続相となり、エラストマーとしての性能を示す。
従って、本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、成分(A)と成分(B)、更に必要に応じて、後述の成分(C),(D)等を含むものであることが好ましい。
<成分(A)>
本発明で用いる成分(A)は、少なくとも2個の、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックP(以下、単に「ブロックP」と称す場合がある。)、及び、少なくとも1個の、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQ(以下、単に「ブロックQ」と称す場合がある。)を有するブロック共重合体の水添ブロック共重合体である。
ここで、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックPとは、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位を当該共重合体ブロックP中に50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上含むことを意味する。また、共役ジエン化合物単量体単位を主体とするブロックQとは、共役ジエン化合物単量体に由来する単量体単位を当該ブロックQ中に50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上含むことを意味する。
ブロックPを構成する芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンが挙げられる。これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましく用いられる。特に好ましくはスチレンである。
ブロックPは、1種の芳香族ビニル化合物単位で構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。また、ブロックPには、芳香族ビニル化合物単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。
ブロックQを構成する共役ジエン化合物とは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、以下に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく用いられる。特に好ましくは1,3−ブタジエンである。
ブロックQは、1種の共役ジエン化合物単位で構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。また、ブロックQには、共役ジエン化合物単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。
ブロックPの少なくとも2個と、ブロックQを少なくとも1個有する水添前のブロック重合体は、直鎖状、分岐状、放射状等の何れであってもよいが、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体である場合が好ましい。
P−(Q−P) …(1)
(P−Q) …(2)
(式(1),(2)中、PはブロックPを、QはブロックQをそれぞれ表し、mは1〜5の整数を表し、nは2〜5の整数を表す)
式(1)又は(2)においてm及びnは、ゴム的高分子体としての秩序−無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。
成分(A)としては、mが3以下である式(1)で表されるブロック共重合体の水素添加物がより好ましく、mが2以下である式(1)で表されるブロック共重合体の水素添加物が更に好ましく、mが1である式(1)で表されるブロック共重合体の水素添加物が最も好ましい。
また、成分(A)中の全芳香族ビニル化合物単位の含有率は、10〜80質量%であることが好ましく、15〜75質量%であることがより好ましく、更に好ましくは20〜75質量%である。成分(A)中の、全芳香族ビニル化合物単位の含有率が上記下限以上であることで、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度、耐熱性が良好となる傾向がある。一方、上記上限以下であることで、柔軟性とゴム弾性に優れるとともに、後述する成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤のブリードを抑制しやすくなる。
本発明で用いる成分(A)は、成分(A)中の全共役ジエン化合物単位の80mol%以上が水素添加されていることが好ましい。成分(A)に含まれる全共役ジエン化合物単位の水素添加率(以下、この水素添加率を単に「水素添加率」と称す場合がある。)、すなわち共役ジエン化合物単位の炭素−炭素二重結合の水素添加率は、85mol%以上であることがより好ましく、90mol%以上であることが更に好ましい。なお、本明細書中、共役ジエン化合物単位は、水添前後に係らず「共役ジエン化合物単位」と称する。
成分(A)としては、例えば、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(スチレン・ブタジエン・スチレンのようなトリブロック共重合体も含む)の水素添加物、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン・ブタジエン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としては、スチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレン共重合体(SBBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物としては、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。
成分(A)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の分子量として、好ましくは8万〜100万であるが、より好ましくは8万〜60万、更に好ましくは8万〜40万である。重量平均分子量が上記範囲であると、ゴム弾性、機械的強度を所望の範囲に維持しやすく、また後述する成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤のブリードの発生を抑制できる。更には、流動性にも優れ、成形しやすくなる。
本発明における成分(A)の製造方法は、上述の構造と物性が得られる方法であればどのような方法でもよく、特に限定されない。水素添加前のブロック共重合体は、例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法によりリチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック重合を行うことによって得ることができる。また、ブロック共重合体の水素添加は、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報及び特開昭60―79005号公報等に記載された方法により、不活性溶媒中で水添触媒の存在下で行うことができる。
成分(A)は、市販品を用いることも可能である。市販品としては例えば、クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標)G」、クラレ社製「セプトン(登録商標)」、旭化成社製「タフテック(登録商標)」、「S.O.E(登録商標)」、TSRC社製「TAIPOL(登録商標)」が挙げられる。
成分(A)は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(B)>
本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、成分(B)として、オレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等の単独重合体又は共重合体が挙げられ、なかでもポリプロピレンが好ましい。
ポリプロピレンとしては公知の重合方法によって重合される公知のものを使用できる。プロピレンを重合する際、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンと共重合してもよい。ポリプロピレンの立体構造としては、アイソタクチック構造が好ましいが、シンジオタクチック構造のものやこれらの構造の混ざったもの、一部アタクチック構造を含むものも用いることができる。
ポリプロピレンは、プロピレンから誘導される繰り返し単位を含有する結晶性重合体であり、ホモポリプロピレン、プロピレン・α−オレフィン共重合体(プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体等)が好ましく、これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ここで、ホモポリプロピレンはプロピレンの単独重合体である。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、プロピレンとα−オレフィンがランダムに重合した共重合体である。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体中のプロピレン含有率は55モル%以上が望ましい。
プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体は、第一セグメント及び第二セグメントからなり、第一セグメントがプロピレン単独重合のホモポリプロピレン部であり、第二セグメントがプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部である、ブロック共重合体として分散相を形成した構造からなる。プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体の第一セグメントとして、第二セグメントとα−オレフィン含有割合の異なるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いてもよい。プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体におけるプロピレン含有率は20〜80モル%で、分散相成分のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部の含有率は5〜30質量%が望ましい。
なお、成分(B)中の各構成単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
プロピレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィンはエチレンを含む広義のα−オレフィンを意味する。プロピレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等のプロピレンを除く炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも入手が容易の観点からエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好ましい。
なお、α−オレフィンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
成分(B)のオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)(JIS K7210(1999)、230℃、21.2N荷重)は、通常0.05〜200g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分である。メルトフローレートが上記範囲のものであることで、得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形性が良好で外観に優れ、また機械的特性、特に引張強度を所望の範囲に維持できる。
成分(B)のポリオレフィンは市販品として入手することができる。市販品としては、日本ポリプロピレン社製「ノバテックPP(登録商標)」シリーズ等から該当するものを適宜選択して用いることができる。
成分(B)のオレフィン系樹脂は1種のみを用いてもよく、構成単位の種類や組成、物性等の異なるものを2種以上用いてもよい。
<成分(C)>
本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、成分(C)として炭化水素系ゴム用軟化剤を含むことが好ましい。
成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤としては、重量平均分子量が通常300〜2,000、好ましくは400〜1,500の炭化水素が使用され、鉱物油系炭化水素または合成樹脂系炭化水素が好適である。なお、ここで、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の分子量である。
一般に鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素、パラフィン系炭化水素の混合物である。全炭素量に対し、芳香族炭化水素の炭素の割合が35%以上のものは芳香族系オイル、ナフテン系炭化水素の割合が30から45%のものはナフテン系オイル、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50%以上のものはパラフィン系オイルと呼ばれる。本発明では、パラフィン系オイルが好適に使用される。
成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤の40℃における動粘度(ASTMD 445/JIS K2283)は特に限定されないが、好ましくは20cSt以上、より好ましくは50cSt以上であり、また、好ましくは800cSt以下、より好ましくは600cSt以下である。また、炭化水素系ゴム用軟化剤の引火点(COC法)は、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。
成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤は市販のものを用いてもよい。成分(C)の市販品としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製「日石ポリブテン(登録商標)HV」シリーズ、出光興産社製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW」シリーズが挙げられ、これらの中から適宜選択して使用することができる。
成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<成分(D)>
得られる透湿防水成形体の透湿性能を高めるために、本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、成分(D)として、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有する化合物を含むことが好ましい。
成分(D)としては、具体的には、特開2001−278985号公報に記載されている、ポリオレフィンブロックと親水性ポリマーのブロックとがエステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマーが挙げられる。
ブロックポリマーを構成するポリオレフィンのブロックとしては、カルボニル基(好ましくは、カルボキシル基、以下同じ。)をポリマーの両末端に有するポリオレフィン、水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン、アミノ基をポリマー両末端に有するポリオレフィンが好適である。更に、カルボニル基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン、水酸基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン、アミノ基をポリマー片末端に有するポリオレフィンも使用できる。このうち、変性のし易さからカルボニル基を有するポリオレフィンが好ましい。
ポリオレフィンとしては、炭素数2〜30、好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜10のオレフィンの1種又は2種以上の混合物の(共)重合(重合又は共重合を意味する。以下同様である。)によって得られるポリオレフィンが使用できる。炭素数2〜30のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、炭素数4〜30(好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜10)のα−オレフィン及び炭素数4〜30(好ましくは4〜18、更に好ましくは4〜8)のジエンが用いられる。α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン及び1−ドデセンが挙げられる。ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン及び1,11−ドデカジエンが挙げられる。これらのうち、エチレン、プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィン、ブタジエン及びイソプレンが好ましく、エチレン、プロピレン、炭素数4〜8のα−オレフィン及びブタジエンがより好ましく、プロピレン、エチレン及びブタジエンが更に好ましい。
また、ブロックポリマーを構成する親水性ポリマーとしては、ポリエーテル、ポリエーテル含有親水性ポリマー、カチオン性ポリマー、およびアニオン性ポリマーが使用できる。より詳細には、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、およびこれらの変性物、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、同セグメントを有するポリエーテルアミドイミド、同セグメントを有するポリエーテルエステル、同セグメントを有するポリエーテルアミド、および同セグメントを有するポリエーテルウレタン、非イオン性分子鎖で隔てられた2〜80個、好ましくは3〜60個のカチオン性基を分子内に有するカチオン性ポリマー、スルホニル基を有するジカルボン酸と、ジオールまたはポリエーテルを必須構成単位とし、かつ分子内に2〜80個、好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマー等が挙げられる。
成分(D)のブロックポリマーとしては具体的には、ポリプロピレンと無水マレイン酸とを反応させて得られる変性ポリプロピレンとポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)とを触媒存在下でエステル化することによって得られるブロックポリマーが好適なものとして挙げられる。このようなブロックポリマーの市販品としては、例えば、三洋化成工業社製「ペレスタット(登録商標)」が挙げられる。
成分(D)のポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有する化合物は、1種のみを用いてもよく、ブロック構造等の異なるものを2種以上用いてもよい。
<成分(E)>
本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、必要に応じて成分(E)として充填材を含むものであってもよい。
充填材としては、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<成分(F)>
本発明で用いる熱可塑性エラストマーには、上述した成分に加えて、成分(F)として有機過酸化物を配合し、有機過酸化物の存在下で動的熱処理してもよい。これによって、成分(A)の一部を変性させ、圧縮永久歪や機械物性を向上させることができる。
有機過酸化物としては、芳香族系もしくは脂肪族系のいずれも使用でき、単一の過酸化物でも2種以上の過酸化物の混合物でもよい。有機過酸化物としては、具体的には、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)−3−ヘキシン等のパーオキシエステル類、アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類が用いられる。この中では、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが特に好ましい。
これらの有機過酸化物は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
<熱可塑性エラストマー中の含有割合>
本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、好ましくは成分(A)の水添ブロック共重合体と、成分(B)のオレフィン系樹脂と、成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤と、成分(D)のポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有する化合物、更に必要に応じて成分(E)の充填材、成分(F)の有機過酸化物を含むものであるが、本発明で用いる熱可塑性エラストマー中の各成分は、好ましい含有割合は以下の通りである。
成分(A)100質量部に対して、成分(B)の割合は10〜400質量部が好ましく、25〜250質量部がより好ましい。成分(A)に対する成分(B)の割合の下限を上記下限以上とすることで、柔軟性に優れる傾向がある。一方、上限を上記上限以下とすることで、成形性が良好になる傾向がある。
成分(A)100質量部に対して、成分(C)の割合は0〜400質量部が好ましく、10〜300質量部がより好ましく、40〜300質量部が更に好ましい。成分(A)に対する成分(C)の割合の下限を上記下限以上とすることで、成形性に優れる傾向がある。一方、上限を上記上限以下とすることで、粘着やブリードの発生を抑制し易くなる。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーが成分(D)のポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有する化合物を含む場合、その含有量は、成分(A)〜(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。成分(D)の含有量を上記範囲とすることで物性を損なうことなく相溶化剤として分散効果に優れる傾向にある。
更に、成分(E)を用いる場合、成分(E)は、成分(A)〜(C)の合計100質量部に対して、300質量部以下で含有してもよい。成分(E)の含有量が過度に多いと密度が大きくなり、引張物性も大きく落ちるので、成分(A)〜(C)の合計100質量部に対する成分(E)の含有量は200重量部以下が好ましい。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーが成分(F)の有機過酸化物を含む場合、その含有量は、成分(A)〜(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜2.0質量部であり、より好ましくは0.07〜1.5質量部である。有機過酸化物の配合量を上記範囲とすることで、変性反応を制御しやすく、所望の変性効果が得られる。
<その他の成分>
本発明で用いる熱可塑性エラストマーには、必要に応じて、安定剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、着色剤等の各種添加剤や、前記成分(A),(B),(D)や、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂以外の熱可塑性樹脂やゴム(以下、「その他の樹脂成分」と称す場合がある。)を配合してもよい。
特に本発明で用いる熱可塑性エラストマーには、安定剤として酸化防止剤を配合することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えばモノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、フェニレンジアミン系の酸化防止剤が挙げられる。これらの中では、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系の酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤の配合量は、成分(A)〜(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部である。酸化防止剤の配合量をこの範囲とすることで、酸化防止剤の添加効果を十分に得ることができる。
その他の樹脂成分としての熱可塑性樹脂としては、例えばポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ただし、成分(A)に含まれるものを除く。)、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂以外の生分解性樹脂、植物由来原料樹脂を挙げることができる。ゴムとしては、例えばポリブタジエンゴムを挙げることができる。
[側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂]
本発明で用いる側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂としては、通常、一般式(i)で示される1,2−ジオール構造単位を含有するポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)が挙げられ、中でもブテンジオール・ビニルアルコール共重合樹脂が好適である。
Figure 2021155498
ここで、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
、R、Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基の水素原子は、特性を大幅に損なわない範囲で有機基で置換されていてもよく、その有機基としては、例えば、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基が挙げられる。製造上の観点から、R、R、Rは、すべて水素原子であることがより好ましい。
このようなポリビニルアルコール系樹脂自体は、公知であって、通常、ビニルエステル系モノマーと3,4−ジアセトキシ−1−ブテン等の3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化することによって製造することができる。以下、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いる場合を例示する。
ビニルエステル系モノマーとしては、通常、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、中でも酢酸ビニルが好ましい。
ビニルエステル系モノマーと、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの共重合割合は、後述の1,2−ジオール結合の導入量に合わせて決定される。
ポリビニルアルコール系樹脂の側鎖に導入される1,2−ジオール結合量は、0.1〜20モル%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜15モル%、更に好ましくは0.5〜12モル%である。かかる結合量が少なすぎると本発明の効果が得難く、逆に多すぎるとポリビニルアルコール系樹脂の製造が困難となる傾向がある。
また、上記共重合体は、場合により、上記の共重合成分以外にも本発明の目的を阻害しない範囲において、他のモノマーを少量、例えば10モル%以下、好ましくは5モル%以下で共重合させたものでもよい。
上記のビニルエステル系モノマーと3,4−ジアセトキシ−1−ブテン(更には他のモノマー)を共重合するに当たっては、公知のビニルエステル系モノマーの重合条件及び重合手法と同様の方法を採用することができる。重合手法としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、エマルジョン重合を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
また、共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用されるが、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが得られる共重合体の分子鎖中に均一に分布され、得られるポリビニルアルコール系樹脂の融点が降下する等の物性面での点から滴下重合が好ましい。
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮
して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの場合は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(質量比)、好ましくは0.05〜3(質量比)程度の範囲から選択される。
共重合に当たっては重合触媒が用いられる。かかる重合触媒としては、例えば、アゾ系触媒、過酸化物触媒、レドックス系触媒が挙げられ、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やアゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル等の低温活性ラジカル重合触媒が挙げられる。
重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して0.01〜0.2モル%が好ましく、0.02〜0.15モル%がより好ましい。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力に応じて40℃〜沸点程度の範囲で調整することが好ましい。
得られた共重合体は、次いでケン化される。このケン化反応は公知のポリビニルアルコール系樹脂のケン化条件と基本的に同じである。即ち、通常、上記で得られた共重合体をアルコールまたは含水アルコールに溶解または分散し、ケン化触媒を用いて行われる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノールが挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60質量%の範囲から選ばれる。
ケン化触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートのようなアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタンスルホン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
かかるケン化触媒の使用量は、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系モノマー及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの合計量1モルに対して通常0.1〜30ミリモル、好ましくは2〜17ミリモルが適当である。
また、ケン化反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。
上記のケン化反応によってビニルエステル系モノマーのエステル部分と3,4−ジアセトキシ−1−ブテンのアセトキシ部分とが同時に水酸基へ変換され、上記ポリビニルアルコール系樹脂を製造することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂は、生分解性石油由来プラスチックに位置付けられており、本発明で用いる側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂も、生分解性プラスチックであることから、本発明の透湿防水成形体の製造工程で、水系媒体に溶出した側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂も環境に対して負荷の低い材料と位置付けられる。
側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂は市販品として入手することができる。市販品としては、例えば三菱ケミカル社製「ゴーセノール(登録商標)」、「ニチゴーGポリマー(登録商標)」が挙げられる。
側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂は1種のみを用いてもよく、構成単位や物性等の異なるものを2種以上用いてもよい。
本発明における熱可塑性エラストマー組成物は、前述の本発明で用いる熱可塑性エラストマーと、上述の側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂とを含むものである。熱可塑性エラストマー組成物中の側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂の含有割合は、目的とする透湿防水成形体の気孔率、成形体の厚みによっても異なるが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を熱可塑性エラストマー100質量部に対し10〜900質量部含有することが好ましく、10〜400質量部含有することがより好ましく、20〜250質量部含有することが更に好ましい。
熱可塑性エラストマー組成物中の側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂の含有量が上記下限以上であれば、得られる透湿防水成形体の気孔率を高め、透湿性を良好なものとすることができる。
一方、熱可塑性エラストマー組成物中の側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂の含有量が上記上限以下であれば、得られる透湿防水成形体の気孔率が過度に大きくなることを抑制して、防水性や機械的強度を高めることができる。
[透湿防水成形体の製造方法]
以下に、上述の本発明で用いる熱可塑性エラストマーと側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂とを含む熱可塑性エラストマー組成物を用いる本発明の透湿防水成形体の製造方法について説明する。
<熱可塑性エラストマー組成物を得る工程>
この工程は、熱可塑性エラストマーと、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂とを含む材料を混練し、熱可塑性エラストマー組成物を得る工程である。例えば、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び必要に応じて成分(D)等を含む熱可塑性エラストマーを用いる場合には、これらの熱可塑性エラストマーと、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂とを、通常の押出機やバンバリーミキサー、ミキシングロール、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブラベンダー等を用いて常法に従って混合又は混練或いは溶融混練することで熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。これらの中でも、押出機、特に二軸押出機を用いることが好ましい。
熱可塑性エラストマー組成物を押出機等で混練して製造する際には、通常80〜300℃、好ましくは100〜250℃に加熱した状態で溶融混練することが好ましい。
側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂は、熱可塑性エラストマーとしての成分(A)〜(C)や成分(A)〜(D)や成分(A)〜(E)或いは成分(A)〜(F)の混練後に加えて混練しても、これらの成分と一緒に加えて混練しても構わないが、成分(A)〜(C)や成分(A)〜(D)や成分(A)〜(E)或いは成分(A)〜(F)の混練後に加えて混練するのが透湿防水性発現の観点から好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物を成形して成形体を得る工程>
前記熱可塑性エラストマー組成物を成形して成形体を得る工程は、熱可塑性エラストマー組成物を射出成形機、単軸押出成形機、二軸押出成形機、圧縮成形機、カレンダー加工機、Tダイ成形機等の成形機で成形することにより行うことができる。
<透湿防水成形体を得る工程>
透湿防水成形体を得る工程では、上記成形工程で得られた成形体を、水系媒体で処理する。ここで、水系媒体で処理するとは、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を水系媒体中に溶出させる操作をいい、例えば、水系媒体中に成形体を浸漬したり、成形体に水系媒体を噴射したりすることで、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を溶出させる。
水系媒体としては、水、水に可溶なアルコール溶媒を含むもの等を使用できるが、アルコール濃度が高いものは側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂が溶解し難くなるので適さない。水系媒体の温度は通常20〜90℃程度であるが、高温の水系媒体で洗浄することで、より側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂が溶出し易くなる。この場合、水系媒体の温度は50〜90℃程度が好ましい。
[透湿防水成形体]
本発明の透湿防水成形体は、熱可塑性エラストマーと側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂とを含む熱可塑性エラストマー組成物から、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂が溶出して除去された熱可塑性エラストマー組成物、即ち、本発明で用いる熱可塑性エラストマーよりも側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂の含有量が少ないか、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を全く含まない本発明で用いる熱可塑性エラストマーよりなるものであり、平均孔径0.1〜20μmの細孔を有する透湿防水性の成形体である。
本発明の透湿防水成形体の平均孔径が上記範囲であることで、良好な透湿性と防水性とを得ることができる。
ここで、平均孔径とは、透湿防水成形体の断面を電子顕微鏡にて観察し、観察される孔のサイズ(直径)を測定し、平均して得られる値である。
本発明の透湿防水成形体は、各種自動車部材をはじめ、建築部材、雑貨部材等、幅広い用途に適用できるが、なかでも透湿防水機能を備えたシートに好適であり、シートとしての使用形態において、本発明の効果が充分に発揮される傾向がある。
なお、本発明においてシートとは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。一方で、フィルムとは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(JIS K6900)。
したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、厚みで区分する場合、各々の規格等により、以下の定義がなされている。
JIS(日本工業規格)の[包装用語]規格によると、フィルムとは「厚さが250μm未満のプラスチックの膜状のもの」、シートとは「厚さ250μm以上のプラスチックの薄い板状のもの」とされている。
一方、日本標準産業分類(総務省)[プラスチックフィルム・シート・床材・合成皮革製造業]の定義によれば「シートとは,厚さが0.2ミリメートル以上で軟質製のものをいう。」とされ、「フィルムとは厚さが0.2ミリメートル未満で軟質製のもの及び0.5ミリメートル未満で硬質製のものをいう。」とされている。
一般的に200μm以下の厚さのものをフィルム、それ以上の厚さをシートと慣習的に称することが多いことから、本発明において、「シート」と称する場合は、厚さが200μm以上のものを含むものとする。
即ち、本発明の透湿防水成形体よりなるシートとは、厚さが通常200μm以上のものである。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原材料]
以下の諸例では次の原材料を使用した。
<成分(A):水添ブロック共重合体>
A−1:スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(TSRC社製「TAIPOL(登録商標)6151」)
スチレン含有率:33質量%
水素添加率:98mol%以上
重量平均分子量:約26万
A−2:スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(旭化成社製「S.O.E.S(登録商標)1605」)
スチレン含有率:67質量%
水素添加率:95mol%以上
重量平均分子量:約15万
<成分(B):オレフィン系樹脂>
B−1:ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)(日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP FY6」)
MFR(JIS K7210(1999)):2.5g/10分(230℃、21.2N荷重
B−2:ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)(日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP FY4」)
MFR(JISK 7210(1999)):5.0g/10分(230℃、21.2N荷重)
B−3:ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)(日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP MA3」)
MFR(JIS K7210(1999)):11g/10分(230℃、21.2N荷重)
B−4:プロピレン・エチレンブロック共重合体(三菱ケミカル社製「Tefabloc(登録商標)5013」)
MFR(JISK 7210(1999)):0.7g/10分(230℃、21.2N)
プロピレン単位含有率:79質量%
B−5:リニア低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製「ノバテック(登録商標)PE UF442」
MFR(JIS K6922−2):1.7g/10分(190℃、21.2N)
<成分(C):炭化水素系ゴム用軟化剤>
C−1:パラフィン系オイル(出光興産社製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW90」)
重量平均分子量:530
40℃の動粘度:95.5cSt
引火点:272℃
<側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂>
PV−1:ブテンジオール・ビニルアルコール共重合樹脂(三菱ケミカル社製「ニチゴーGポリマー(登録商標)BVE−8049P」)
<成分(D):ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有する化合物>
D−1:ポリプロピレンのブロックと、親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有し、親水性ポリマーが二価アルコール、二価フェノール及び/または三級アミノ基含有ジオールとアルキレンオキシドとから誘導される構造を有するポリオキシアルキレンエーテル単位を含んでなる化合物(三洋化成工業社製「ペレスタット(登録商標)300」)
<成分(E):充填材>
E−1:炭酸カルシウム(備北粉化工業社製「ソフトン1200」)
<成分(F):有機過酸化物>
F−1:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物(化薬アクゾ社製「AD40C」)
[熱可塑性エラストマーの調製]
表1に示す配合に加え、安定剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製「イルガノックス1010」)0.1質量部を添加してヘンシェルミキサーで混合し、重量式フィーダーを用いてJSW製二軸押出機「TEX30」にて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数400rpmで押し出しを行って、熱可塑性エラストマー(TPS−1〜4)を得た。
得られた熱可塑性エラストマー(TPS−1〜4)について、それぞれ以下の(1),(2)の方法でメルトフローレートと密度を測定した。
また、得られた熱可塑性エラストマー(TPS−1〜4)を用いて、それぞれ、インラインスクリュータイプの射出成形機(東芝機械社製、商品番号:IS130)を用い、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件下にて、射出成形して、厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシートを成形した。このシートについて、それぞれ下記(3)の方法で硬度デュロAを測定した。
また、得られたシート(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mm)からISO37に準拠し、試験片打抜刃(TYPE1Aダンベル状)を用いて、ダンベル状の試験片を打ち抜き、この試験片を用いて下記(4)の方法で引張試験を行った。
(1)メルトフローレート(MFR)の測定
ISO1133の規格に準拠した方法で測定温度230℃、測定荷重21.2Nで測定した。
(2)密度
ISO1183の規格に準拠し、水中置換法により測定した。
(3)硬度デュロA
ISO7619に準拠し、硬度(15秒後)を測定した。
(4)引張試験
ISO37に準拠し、TYPE1A、試験速度:500mm/分で、切断時引張破壊強さと切断時引張破壊伸びを測定した。
これらの結果を表1に示す。表1に示される物性の評価結果の値は、透湿防水成形体を構成する熱可塑性エラストマー組成物の物性の評価結果に相当する。
Figure 2021155498
[実施例1]
<シートの成形>
熱可塑性エラストマーTPS−1:100質量部に、PV−1:側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を20質量部加え、東洋精機製作所社製ラボプラストミル20C200、ミキサーR−60Hを使用し200℃で5分間混練し、熱可塑性エラストマー組成物を得た。この熱可塑性エラストマー組成物を圧縮プレス機で160×160×0.5mmのサイズにプレス成形し、成形シートを得た。
<成形シートの評価>
得られた成形シートについて、射出成形性及び押出成形性の指標として、状態を目視観察し、下記基準で評価した。
(シート外観の良否判断基準)
◎:シートに筋がなく表面剥離や亀裂等の状態が何も観察されず、各成分が非常に均一に混合していることから、射出成形性及び押出成形性に非常に優れると判断される。
〇:シートに少し筋があるもの表面剥離や亀裂等の不具合がなく、各成分が均一に混合していることから、射出成形性及び押出成形性に優れると判断される。
△:シートに表面に一部表面剥離が観察され、各成分の均一な混合にやや欠けることから、射出成形性及び押出成形性に若干劣ると判断される。
×:シート内部まで亀裂があり、各成分が均一に混合しているとは言えないことから、射出成形性及び押出成形性に劣ると判断される。
<透湿防水シートの作製>
上記で得られた成形シートを、沸騰したお湯に浸漬し、そのまま加熱することなく24時間放置し、その後室温状態にて取り出し、表面を軽く洗浄した後にキムワイプで表面を軽くぬぐい、表面の水分を取り除き、透湿防水性評価用シートを得た。
得られた透湿防水性評価用シートについて、以下の透湿試験と防水試験を行った。
<透湿試験>
直径が14cmの2Lのビーカーに温度が90℃のお湯2Lを満たし、その上に評価用シートを載せて、更にその上に厚み0.5mmのペットシートを載せて、ペットシート表面への透湿の状態を観察し、下記基準で評価した。
(透湿性判断基準)
◎:1分間以内に透湿しペットシートに転写し、透湿部分が最大直径として10cm以上に広がる。
○:1分間以内に透湿しペットシートに転写し、透湿部分が最大直径として5cm以上10cm未満に広がる。
△:1分間以内に透湿しペットシートに転写し、透湿部分が最大直径で5cm未満に広がる。
×:透湿しない。
<防水試験>
直径が14cmの2Lの空のビーカー上に評価用シートを載せて、その表面に水滴を垂らし、5時間放置後のビーカー内と水滴を垂らしたシート裏面を観察し、水の浸透状態を観察し、下記基準で評価した。
(防水性判断基準)
〇:ビーカー内にもシートの裏側にも水が浸透しない。
△:ビーカー内に水滴は落ちないが、シートの裏面にやや水が浸透した跡がある。
×:ビーカー内に水滴が落ち、シートの裏面にも水が浸透した跡がある。
上記評価結果を表2に示す。
[実施例2〜8、比較例1〜3]
成形材料を表2に示す配合とした以外は実施例1と同様にして実施例2〜8の熱可塑性エラストマー組成物、比較例1〜3の樹脂組成物を得、それぞれ同様に成形シートを作成し、更に同様に透湿防水性評価用シートを作成した。成形シート、透湿防水性評価用シートについて実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2021155498
表2より明らかなように、実施例1〜8のシートは、成形シートの状態も良く、押出成形性、射出成形性に優れ、また、透湿性及び防水性においても良好な結果を示した。特に、成分(D):ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有した化合物を配合した実施例2は、気孔形成剤である側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂の配合量を同じとした実施例1,3,4と比べて透湿性が良好であった。実施例2のシート断面を電子顕微鏡にて観察した結果、平均孔径1〜10μmの孔が点在していることが確認できた。
これに対して、比較例1は、シートの状態(射出成形性及び押出成形性)が良くない上に、透湿性が発現しなかった。比較例2は、シートの状態(射出成形性及び押出成形性)が良くなかった。比較例3は、シートの状態(射出成形性及び押出成形性)、透湿性、防水性いずれも悪かった。

Claims (6)

  1. 熱可塑性エラストマーと、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂とを含む材料を混練し、熱可塑性エラストマー組成物を得る工程と、
    前記熱可塑性エラストマー組成物を成形して成形体を得る工程と、
    前記成形体を水系媒体で処理して透湿防水成形体を得る工程と
    を有する透湿防水成形体の製造方法。
  2. 前記側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂が、ブテンジオール・ビニルアルコール共重合樹脂である請求項1に記載の透湿防水成形体の製造方法。
  3. 前記熱可塑性エラストマーが下記成分(A)と下記成分(B)を含む請求項1又は2に記載の透湿防水成形体の製造方法。
    成分(A):少なくとも2個の、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックPと、少なくとも1個の、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQとを有するブロック共重合体の水素添加物
    成分(B):オレフィン系樹脂
  4. 前記熱可塑性エラストマーが更に下記成分(C)を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の透湿防水成形体の製造方法。
    成分(C):炭化水素系ゴム用軟化剤
  5. 前記熱可塑性エラストマーが、更に下記成分(D)を含む請求項1〜4の透湿防水成形体の製造方法。
    成分(D):ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有する化合物
  6. 熱可塑性エラストマー組成物よりなり、平均孔径が0.1〜20μmの孔を有する透湿防水成形体。
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