JP2021140958A - めっき銅線、めっき撚線及び絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性を向上させためっき銅線、めっき撚線及び絶縁電線並びにめっき銅線の製造方法を提供する。【解決手段】めっき銅線3は、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppmを超えて25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比が0.5以上1.5未満である銅線1と、前記銅線1の外周に有するめっき層2と、を備え、伸びが10%以上であり、0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、めっき銅線、めっき撚線及び絶縁電線に関する。
産業界の電子機器、設備、車両等の機器は、動力や電気信号などあらゆる部分に電気が用いられており、それらを伝達するために多くの絶縁電線が使用されている。絶縁電線を構成する導体には、例えば、銅線の外周にめっき層を有するめっき銅線が使用されている(例えば、特許文献1)。
一般に、絶縁電線の導体に使用されるめっき銅線の外径や本数は、使用用途に応じた電流容量によって決定される。例えば、大きな電流容量を必要とする用途では、導体での断面積を増加させるために、めっき銅線の本数を増加させることや、めっき銅線の外径を大きくさせることが行われている。
しかしながら、上述した方法によって導体の断面積を増加させた場合、めっき銅線を構成する銅線の体積や重量も増加し、コストも高くなってしまう。そのため、使用する銅線の使用量は極力少ないことが望ましい。
そこで、本発明の目的は、従来と同じ断面積で従来よりも大きな電流容量が得られるめっき銅線、めっき撚線及び絶縁電線を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、下記のめっき銅線、めっき撚線及び絶縁電線を提供する。
[1]5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比が0.5以上1.5未満である銅線と、前記銅線の外周に有するめっき層と、を備え、伸びが10%以上であり、0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である、めっき銅線。
[2]前記めっき層は、厚さが0.1μm以上1.0μm以下である[1]に記載のめっき銅線。
[3]5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比が0.5以上1.5未満である銅線と、前記銅線の外周に有するめっき層と、を備えるめっき銅線が複数本撚り合わされており、前記めっき銅線の伸びが10%以上であり、前記めっき銅線の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である、めっき撚線。
[4]5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比率が0.5以上1.5未満である銅線と、前記銅線の外周に有するめっき層と、を備えるめっき銅線が複数本撚り合わされているめっき撚線と、前記めっき撚線の外周に有する絶縁層と、を備え、前記めっき銅線の伸びが10%以上であり、前記めっき銅線の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である、絶縁電線。
[2]前記めっき層は、厚さが0.1μm以上1.0μm以下である[1]に記載のめっき銅線。
[3]5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比が0.5以上1.5未満である銅線と、前記銅線の外周に有するめっき層と、を備えるめっき銅線が複数本撚り合わされており、前記めっき銅線の伸びが10%以上であり、前記めっき銅線の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である、めっき撚線。
[4]5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比率が0.5以上1.5未満である銅線と、前記銅線の外周に有するめっき層と、を備えるめっき銅線が複数本撚り合わされているめっき撚線と、前記めっき撚線の外周に有する絶縁層と、を備え、前記めっき銅線の伸びが10%以上であり、前記めっき銅線の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である、絶縁電線。
本発明によれば、従来と同じ断面積で従来よりも大きな電流容量が得られるめっき銅線、めっき撚線及び絶縁電線を提供することができる。
〔めっき銅線〕
図1は、本発明の実施の形態に係るめっき銅線の一例を示す横断面図である。
本発明の実施の形態に係るめっき銅線3は、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、酸素濃度(O濃度)に対するチタン濃度(Ti濃度)の比である「チタン濃度/酸素濃度」が0.5以上1.5未満である銅線1と、銅線1の外周上のめっき層2と、を備える。なお、不可避不純物には、窒素等が含まれていてもよい。
図1は、本発明の実施の形態に係るめっき銅線の一例を示す横断面図である。
本発明の実施の形態に係るめっき銅線3は、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、酸素濃度(O濃度)に対するチタン濃度(Ti濃度)の比である「チタン濃度/酸素濃度」が0.5以上1.5未満である銅線1と、銅線1の外周上のめっき層2と、を備える。なお、不可避不純物には、窒素等が含まれていてもよい。
本発明者等の検討によれば、めっき銅線を構成する銅の体積や重量を少なくして所定の電流容量を得るためには、めっき銅線に使用される銅線に所定の組成からなる銅線を用いて導電性を向上させることが有効であるとの知見が見いだされた。そこで、めっき銅線3では、銅線1が、チタンと、硫黄と、酸素とを上述した含有量で含有し、かつ、酸素濃度に対するチタン濃度の比が0.5以上1.5未満であることにより、銅線1の外周にめっき層が設けられた状態での電気抵抗が小さいめっき銅線3とすることができる。その結果、例えば、配電盤の内部配線やモーターの口出線などの大きな電流容量を必要とする用途においても、めっき銅線3を構成する銅線の体積や重量を増加させて導体の断面積を増加させることなく(めっき銅線3を構成する銅線の使用量を少なくして)所定の電流容量を得ることができる。すなわち、めっき銅線3を用いて従来と同じ断面積の導体とした場合には、従来よりも大きな電流容量を得ることができる。換言すれば、めっき銅線3では、従来よりも小さい断面積で従来と同じ電流容量を有する導体を得ることができる。このことは、めっき銅線3を導体として用いた絶縁電線10の細径化、あるいはめっき銅線3や絶縁層5に使用される各種材料の低減を可能とし、絶縁電線の低コスト化や軽量化も実現することができる。
めっき銅線3は、0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である。より好ましくは、200MPa以上210MPa以下である。0.2%耐力が200MPa以上であると、後工程の撚線作業や押出作業中の張力で線径が減少しにくくなるため、所定の寸法が得られやすく、電気抵抗の増加を抑制しやすい。0.2%耐力が250MPa以下であると、撚線作業や押出作業で可とう性が低下しにくくなる(めっき銅線3が硬くなりにくい)ため、電気抵抗の増加を抑制しながら、均一な形状の絶縁電線を形成しやすくすることができる。なお、めっき銅線3は、銅線1が10%以上の伸びを有する軟質銅線からなり、めっき銅線3の伸びは、10%以上からなる。軟質銅線の伸び、およびめっき銅線3の伸びは、JIS Z2241に準拠する引張試験によって測定される破断時全伸びである。
めっき層2としては、例えば、錫めっき、ニッケルめっき、銀めっきを適用でき、特に錫めっきが好ましい。めっき層2は、厚さが0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
〔めっき撚線〕
図2は、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の一例を示す横断面図である。
本発明の実施の形態に係るめっき撚線4は、本発明の実施の形態に係る上記めっき銅線3を複数本撚り合わせてなるものであり、絶縁電線10の導体として用いられる。なお、めっき撚線4では、撚り合わせた後において、めっき銅線3の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である。また、めっき撚線4では、めっき銅線3が軟質銅線(伸びが10%以上)からなる。図2に示す実施形態においては、めっき銅線3を7本撚り合わせているが、本数はこれに限られない。また、めっき撚線4は、複数本のめっき銅線3を撚り合わせた後にダイスなどを用いて円形状に圧縮させたものであってもよい。めっき撚線4の長手方向に垂直な断面(横断面)の面積(断面積)は、例えば、0.75mm2以上325mm2以下である。
図2は、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の一例を示す横断面図である。
本発明の実施の形態に係るめっき撚線4は、本発明の実施の形態に係る上記めっき銅線3を複数本撚り合わせてなるものであり、絶縁電線10の導体として用いられる。なお、めっき撚線4では、撚り合わせた後において、めっき銅線3の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である。また、めっき撚線4では、めっき銅線3が軟質銅線(伸びが10%以上)からなる。図2に示す実施形態においては、めっき銅線3を7本撚り合わせているが、本数はこれに限られない。また、めっき撚線4は、複数本のめっき銅線3を撚り合わせた後にダイスなどを用いて円形状に圧縮させたものであってもよい。めっき撚線4の長手方向に垂直な断面(横断面)の面積(断面積)は、例えば、0.75mm2以上325mm2以下である。
〔絶縁電線〕
本発明の実施の形態に係る絶縁電線10は、本発明の実施の形態に係る上記めっき撚線4と、めっき撚線4の外周に被覆された絶縁層5とを備える。絶縁電線10では、絶縁層5が被覆された後において、めっき銅線3が200MPa以上250MPa以下の0.2%耐力を有することが好ましい。また、絶縁電線10では、絶縁層5が被覆された後において、めっき銅線3の伸びが10%以上からなる。なお、絶縁電線10では、めっき撚線4と被覆層5との間に、ナイロンやポリエチレンテレフタレートからなるテープ等で構成される介在物を備えていてもよい。
本発明の実施の形態に係る絶縁電線10は、本発明の実施の形態に係る上記めっき撚線4と、めっき撚線4の外周に被覆された絶縁層5とを備える。絶縁電線10では、絶縁層5が被覆された後において、めっき銅線3が200MPa以上250MPa以下の0.2%耐力を有することが好ましい。また、絶縁電線10では、絶縁層5が被覆された後において、めっき銅線3の伸びが10%以上からなる。なお、絶縁電線10では、めっき撚線4と被覆層5との間に、ナイロンやポリエチレンテレフタレートからなるテープ等で構成される介在物を備えていてもよい。
絶縁層5は、例えば、押出機を用いてめっき撚線4の外周に充実押出して押出被覆することにより設けることができる。絶縁層5の材料としては、種々の絶縁材料を使用することができる。絶縁材料には、例えば、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン等のハロゲン元素含有ゴムを使用することができる。上述した絶縁材料には、必要に応じて、充填剤、難燃剤、滑剤などの各種添加剤を添加することができる。絶縁体5の厚さは、例えば、0.5mm以上30.0mm以下である。また、絶縁電線の外径は、例えば、2.5mm以上35.0mm以下である。
〔めっき銅線の製造方法〕
本発明の実施の形態に係るめっき銅線3の製造方法は、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、酸素濃度に対するチタン濃度の比が0.5以上1.5未満である銅系材料(例えば、銅荒引き線)を準備する工程と、銅系材料に対して所定の外径に伸線するための伸線加工を施す工程と、伸線加工を施した銅系材料(伸線材)を熱処理して軟質銅線(伸びが10%以上の銅線)を得る工程と、温度270℃以上350℃以下のめっき浴中に軟質銅線を浸漬して、軟質銅線の外周上にめっき層を形成する工程と、を有する。
本発明の実施の形態に係るめっき銅線3の製造方法は、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、酸素濃度に対するチタン濃度の比が0.5以上1.5未満である銅系材料(例えば、銅荒引き線)を準備する工程と、銅系材料に対して所定の外径に伸線するための伸線加工を施す工程と、伸線加工を施した銅系材料(伸線材)を熱処理して軟質銅線(伸びが10%以上の銅線)を得る工程と、温度270℃以上350℃以下のめっき浴中に軟質銅線を浸漬して、軟質銅線の外周上にめっき層を形成する工程と、を有する。
なお、めっき層を形成する工程では、製造されるめっき銅線の品質や特性を安定させることや作業性を向上させること等の観点から、複数本の軟質銅線を一度に1つのめっき浴中へ浸漬させ、その後、めっき浴から取り出されためっき層を有する複数本の軟質銅線を1つに束ねた状態でボビン等に巻き取られることが好ましい。銅系材料に伸線加工を施す工程と熱処理して軟質銅線を得る工程と軟質銅線の外周上にめっき層を形成する工程とを別々にすることにより、それらの工程の一部または全部を同時に行う場合に比べて、作業条件の最適化が行いやすいため、品質や特性が所定の範囲であるめっき銅線(例えば、後述する所定の導電性や0.2%耐力を有するめっき銅線)を安定して製造しやすい。
伸線加工を施して得られる伸線材は、半軟化温度が160℃以上200℃以下である。ここで、半軟化温度は、鋳造圧延材を冷間伸線加工した2.6mmの外径を有する伸線材をソルトバス中に浸漬させて、500℃以下で各温度1時間の保持後、水中急冷し、引張試験を実施し、加熱前の室温で引張試験したときの引張強さと500℃で1時間のソルトバスで熱処理後に引張試験したときの引張強さを足して2で割った値を示す強度に対応する温度を半軟化温度と定義し求めた。
伸線加工を施した銅系材料(伸線材)を熱処理して軟質銅線を得る工程は、伸線加工を施す工程と同一の製造装置上で行うことでもよい。この場合は、例えば、伸線加工を施した銅系材料(伸線材)を、伸線加工と同一の製造装置上で通電加熱することによって熱処理する。この方法以外には、伸線加工を施す工程で得られた銅系材料(伸線材)をボビン等に巻き取った後、ボビン等に巻き取られた状態の伸線材を焼鈍炉で焼鈍することによって伸線材を熱処理してもよい。なお、いずれの熱処理においても、熱処理後の伸線材が10%以上の伸びを有する軟質銅線となるように熱処理する。軟質銅線の伸びは、JIS Z2241に準拠する引張試験によって測定される破断時全伸びである。
〔絶縁電線の製造方法〕
図3は、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の製造工程フローである。
本発明の実施の形態に係る絶縁電線10の製造方法は、本発明の実施の形態に係る上記製造方法で得られためっき銅線3を複数本撚り合わせてめっき撚線4を製造する。その後、めっき撚線4の外周に絶縁層5を押出被覆して絶縁電線10を製造する。なお、めっき撚り線4の外周に絶縁層5を押出被覆する際に、めっき撚線4の外周にテープ等で構成される介在物を施し、この介在物の外周に絶縁層5を押出被覆して絶縁電線10を製造することでもよい。また、めっき撚線4を製造する際には、複数本のめっき銅線3が束になった状態で巻き取られているボビンを1つ以上準備し、このボビンに巻き取られている複数本のめっき銅線3を撚り合わせることでもよい。
図3は、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の製造工程フローである。
本発明の実施の形態に係る絶縁電線10の製造方法は、本発明の実施の形態に係る上記製造方法で得られためっき銅線3を複数本撚り合わせてめっき撚線4を製造する。その後、めっき撚線4の外周に絶縁層5を押出被覆して絶縁電線10を製造する。なお、めっき撚り線4の外周に絶縁層5を押出被覆する際に、めっき撚線4の外周にテープ等で構成される介在物を施し、この介在物の外周に絶縁層5を押出被覆して絶縁電線10を製造することでもよい。また、めっき撚線4を製造する際には、複数本のめっき銅線3が束になった状態で巻き取られているボビンを1つ以上準備し、このボビンに巻き取られている複数本のめっき銅線3を撚り合わせることでもよい。
本発明の実施の形態に係るめっき銅線、および該めっき銅線を用いためっき撚線は、0.2%耐力が所定の範囲にあるため、作業中での線径の低下による電気抵抗の増加がない。これに加えて、めっき銅線およびめっき撚線は、従来のめっき銅線に比べて導電性が高いため、従来のめっき銅線と同じ電気抵抗とすれば撚線本数が同じ場合、素線の線径を小さくすることができる。また、撚線本数が異なる場合でも同じ電気抵抗とすれば導体の全体積は従来と比べて低減することができる。そのため、本発明の実施の形態に係るめっき銅線、および該めっき銅線を用いためっき撚線では、銅線に使用される銅の目付量が低減されるため、絶縁電線のコストを大幅に低減することができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1の構造のめっき銅線及び図2の構造の絶縁電線を下記の通りの方法で製造し、評価を行なった。
まず、めっき工程に供する原料として5mass ppm以上35mass ppm以下のチタンと、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素とを含み、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅系材料において、Ti濃度、S濃度、O濃度が所望の組成となるように準備し、Ti濃度/O濃度がそれぞれ異なる銅系材料を製作した。この銅系材料としては、連続鋳造圧延装置(SCR)により、外径が8mmの動荒引き線を製造し、この銅荒引き線を伸線加工と熱処理を施して作製した外径が0.44mmの軟質銅線(伸びが10%以上の銅線)を用いた。
次に、溶融した錫浴(錫浴温度280℃)に作製した軟質銅線を浸漬し、銅線の外周に錫めっきからなるめっき層を設けためっき銅線を得た。このめっき銅線を7本撚り合わせすることによってめっき撚線とし、その後、めっき撚線の外周に押出法によって被覆層を形成して絶縁電線を製造した。
めっき銅線の評価は、製造した絶縁電線から採取しためっき銅線を用いることにより、絶縁電線の被覆層が被覆された後のめっき銅線の0.2%耐力および電気抵抗を測定した。
めっき銅線の0.2%耐力は、JIS Z2241に準拠する引張試験を行い測定した。より具体的には、絶縁電線の被覆層が被覆された後のめっき銅線の0.2%耐力は、上記方法によって製造した絶縁電線からめっき銅線を採取し、採取しためっき銅線に対して上記引張試験(オフセット法、標線間距離:250mm、引張速度:50m/min)を行い、めっき銅線の0.2%耐力を測定した。
めっき銅線の電気抵抗は、絶縁電線から採取しためっき銅線に対して、JIS C3002に準拠する試験方法を行うことよって測定した。より具体的には、撚線押出後の絶縁電線を解体しためっき銅線の電気抵抗を測定し、測定した電気抵抗の値を、従来例のめっき銅線の電気抵抗を100とした場合の比で表した。すなわち、電気抵抗比が100%より大きい場合は、汎用の銅系材料であるタフピッチ銅を用いためっき銅線よりも電気抵抗は大きくなる。一方、電気抵抗比が100%より小さい場合は、タフピッチ銅を用いためっき銅線よりも電気抵抗は小さくなる。電気抵抗比が小さくなると、めっき銅線の断面積が同じ場合では、大きな電流容量が得られることになる。
表1では、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなる銅線を用い、Ti濃度、S濃度、O濃度をパラメータとし、酸素濃度に対するチタン濃度の比(Ti濃度/O濃度)の影響を実施例と比較例で評価したものである。また、従来例として汎用の銅系材料であるタフピッチ銅(TPC)を用いた結果を示した。
実施例1〜4は、Ti濃度/O濃度は0.5以上1.5未満の範囲内である。さらに、めっき銅線の0.2%耐力は200MPa以上250MPa以下の範囲内である。このようなめっき銅線を撚線押出後に解体して測定した電気抵抗比は、従来例と比べて小さくなっておりめっき銅線の導電性が向上しているといえる。なお、実施例1〜4のめっき銅線では、いずれも10%以上の伸びを有していた。めっき銅線の伸びの評価は、0.2%耐力と同様の引張試験条件で評価した。
一方、比較例1〜2は、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素の範囲内であるが、0.5以上1.5未満のTi濃度/O濃度の範囲が外れる場合を示す。比較例3は、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素の範囲、およびTi濃度/O濃度の範囲が共に外れる場合を示す。このとき、比較例1〜3では、めっき銅線の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下の範囲外であった。ここで、比較例1の電気抵抗比が従来例と同等なのは、Ti濃度/O濃度が0.5未満であり、電気抵抗を低下させる不純物であるSと結合するTiが少ないためである。また、めっき銅線の0.2%耐力も250MPaを超えているため撚線作業や押出作業で可とう性が低下し均一な形状の絶縁電線が成形できなかった。ここで、比較例2、3の電気抵抗比が従来例よりも増加しているのはめっき銅線の0.2%耐力が200MPaよりも小さく、後工程の撚線作業や押出作業中の張力で線径が減少してしまい所定の寸法が得られず電気抵抗が増加してしまうためである。
比較例4は、Ti濃度/O濃度は0.5以上1.5未満の範囲内であるものの、O濃度が4mass ppm以上25mass ppm以下の範囲外であり、また、めっき銅線の0.2%耐力も200MPa以上250MPa以下の範囲内である。そして、めっき銅線の電気抵抗比は、従来例と同等であった。これは、O濃度が4mass ppm以上25mass ppm以下の範囲を超えており、O濃度が高いことによってTi酸化物が多く形成してしまい電気抵抗比が低下しなかったためであると考える。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るめっき銅線3は、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、酸素濃度に対するチタン濃度の比率が0.5以上1.5未満である銅線1と、銅線1の外周上のめっき層2と、を備える。
以上説明したように、本実施の形態に係るめっき銅線3は、5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、酸素濃度に対するチタン濃度の比率が0.5以上1.5未満である銅線1と、銅線1の外周上のめっき層2と、を備える。
このように構成することで、従来よりも導電性を向上させためっき銅線3とすることができる。その結果、例えば、大きな電流容量を必要とする用途においても、めっき銅線3を構成する銅の体積や重量を増加させて導体の断面積を増加させることなく(めっき銅線3を構成する銅の体積や重量を少なくして)所定の電流容量を得ることが実現できる。
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比率が0.5以上1.5未満である銅線(1)と、前記銅線(1)の外周に有するめっき層(2)と、を備える、めっき銅線(3)。
[2]0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である[1]に記載のめっき銅線(3)。
[3]5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比率が0.5以上1.5未満である銅線(1)と、前記銅線(1)の外周に有するめっき層(2)と、を備えるめっき銅線(3)が複数本撚り合わされているめっき撚線(4)。
[4]前記めっき銅線(3)は、0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である[3]に記載のめっき撚線(4)。
[5]5mass ppm以上35mass ppm以下のチタン、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比率が0.5以上1.5未満である銅線(1)と、前記銅線(1)の外周に有するめっき層(2)と、を備えるめっき銅線(3)が複数本撚り合わされているめっき撚線(4)と、前記めっき撚線(4)の外周に有する絶縁層(5)と、を備える、絶縁電線(10)。
[6]前記めっき銅線(3)の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である[5]に記載の絶縁電線(10)。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
1:銅線、2:めっき層、3:めっき銅線、4:めっき撚線
5:絶縁層、10:絶縁電線
5:絶縁層、10:絶縁電線
Claims (4)
- 5mass ppm以上35mass ppm以下のチタンと、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比が0.5以上1.5未満である銅線と、
前記銅線の外周に有するめっき層と、を備え、
伸びが10%以上であり、0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である、
めっき銅線。 - 前記めっき層は、厚さが0.1μm以上1.0μm以下である請求項1に記載のめっき銅線。
- 5mass ppm以上35mass ppm以下のチタンと、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比が0.5以上1.5未満である銅線と、前記銅線の外周に設けられためっき層と、を備えるめっき銅線が複数本撚り合わされており、
前記めっき銅線の伸びが10%以上であり、前記めっき銅線の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である、
めっき撚線。 - 5mass ppm以上35mass ppm以下のチタンと、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄、および4mass ppm以上25mass ppm以下の酸素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比が0.5以上1.5未満である銅線と、前記銅線の外周に設けられためっき層と、を備えるめっき銅線が複数本撚り合わされているめっき撚線と、前記めっき撚線の外周に設けられた絶縁層と、を備え、
前記めっき銅線の伸びが10%以上であり、前記めっき銅線の0.2%耐力が200MPa以上250MPa以下である、
絶縁電線。
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