JP2021136082A - 蓄電デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された蓄電デバイスにおいて、効率的に集電可能であり、且つ内部短絡時の徐放電機構を両立する。【解決手段】蓄電デバイスは、負極活物質を含む複数の柱状負極と、各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、正極活物質を含み隣合う分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、正極の内部で柱状負極と交差する方向に配列された複数の正極導電体と、正極から露出した正極導電体の端面に接続された層状の第1集電体と、第1集電体に接続された層状の第2集電体とを備えている正極集電部と、を備え、第1集電体は、第2集電体よりも高い体積抵抗率を有するものである。【選択図】図1

Description

本明細書では、蓄電デバイスを開示する。
従来、二次電池としては、炭素質ハニカム構造体の外表面を含むセルの隔壁表面に窒化チタン膜を被着したハニカム構造集電体を用いたもの(特許文献1)や、電解質を含むリチウムイオン供給コア部と、リチウムイオン供給コア部の外面を囲んで形成された内部電極と、内部電極の外面を囲んで形成された分離層と、分離層の外面を囲んで形成された外部電極とを備えたもの(特許文献2)などが知られている。また、エネルギー密度の高い二次電池としては、複数の柱状負極と、各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、隣合う分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極とを備えたものが知られている(特許文献3)。この二次電池は、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された構造である。この二次電池の正極は、正六角柱からなる柱状正極を空間充填して得られたものであり、分離膜で囲われた柱状負極が、柱状正極の中心孔に配置されている。
特開2001−126736号公報 特表2014−532277号公報 特開2018−152229号公報
しかしながら、特許文献1では、二次電池の入出力については検討されていなかった。また、特許文献2では、エネルギー密度を高めることの検討がまだ十分ではなかった。また、特許文献3の二次電池では、正極集電構造は柱状正極の一方の端面を金属製の集電板に接続するものであったため、集電を効率的に行うことができず、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度が十分高いとはいえなかった。このように、効率的な集電による高エネルギー密度化と電極の内部短絡に対処することができる集電構造が求められていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された蓄電デバイスにおいて、効率的に集電可能であり、且つ内部短絡時の徐放電機構を両立することができる蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、正極の接続側に体積抵抗率の高い集電層を設け、その集電層の上に体積抵抗率の低い集電層を設けるよう正極集電構造を工夫するものとすれば、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された蓄電デバイスにおいて、効率的に集電可能であり、且つ内部短絡時の徐放電機構を両立することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示する蓄電デバイスは、
負極活物質を含む複数の柱状負極と、
各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、
正極活物質を含み、隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、
前記正極の内部で前記柱状負極と交差する方向に配列された複数の正極導電体と、前記正極から露出した前記正極導電体の端面に接続された層状の第1集電体と、前記第1集電体に接続された層状の第2集電体とを備えている正極集電部と、を備え、
前記第1集電体は、前記第2集電体よりも高い体積抵抗率を有するものである。
本開示は、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された蓄電デバイスにおいて、効率的に集電可能であり、且つ内部短絡時の徐放電機構を両立することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、正極内部に正極導電体を複数設けることによって、正極での集電をより効率よく行うことができる。また、層状の第1集電体を設けることによって、多数の正極導電体を並列接続することが可能となる。この場合、層状の第1集電体は膜厚の制御により抵抗を容易に制御可能である。また、体積抵抗率の高い第1集電体のみでは、全ての正極導電体からの電流を実用的な電圧低下範囲で流すことはできない。そこで、第1集電体上に、より低抵抗な第2集電体を配置した集電構造を設計することができる。すなわち、正極導電体と第2集電体の間の抵抗を、第1集電体が第2集電体よりも高い体積抵抗率を有するものとすることによって、正極導電体の並列接続による低抵抗化を図ることができる。また、第1集電体の抵抗を大きくすることによって、いずれかの単セルで短絡が生じた際に周辺の電極からの電流の流れこみ、ひいては発熱を抑制することができる。したがって、この蓄電デバイスでは、効率的な集電による高エネルギー密度化と内部短絡時の徐放電機構とを両立することができる。
蓄電デバイス10の一例を示す模式図。 蓄電デバイス10の断面を示す模式図。 正極集電部30の製造方法の一例を示す説明図。 第1集電体の厚さと柱状負極端面の面積と抵抗との関係図。 実施例1の蓄電デバイス10の説明図。
(蓄電デバイス)
実施形態で説明する本開示の蓄電デバイスは、複数の柱状負極と、分離膜と、正極と、正極集電部とを備えている。この蓄電デバイスは、負極に電気的に接続された負極集電体を備えているものとしてもよい。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、アルカリ金属二次電池、アルカリ金属イオン電池などとしてもよい。蓄電デバイスのキャリアイオンは、リチウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンやマグネシウムイオンやストロンチウムイオン、カルシウムイオンなどの第2族イオンなどが挙げられる。また、正極は、柱状負極の周りに存在するものとしてもよいし、柱状負極の間の空間に充填されているものとしてもよい。また、この蓄電デバイスは、分離膜を介して正極と隣り合う状態で複数の柱状負極が結束された構造を有するものとしてもよい。更に、この蓄電デバイスは、柱状負極、正極及び分離膜のうち1以上に電解液を含むものとしてもよい。柱状負極には、集電線などの集電部材が埋設されているものとしてもよいし、この集電部材を備えないものとしてもよい。ここでは、説明の便宜のため、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池をその主たる一例として以下説明する。
ここで、本実施形態で開示する蓄電デバイスについて図面を用いて説明する。図1は、蓄電デバイス10の一例を示す模式図である。図2は、蓄電デバイス10の断面を示す模式図である。図3は、正極集電部30の製造方法の一例を示す説明図であり、図3Aが単セル11を一列に並べた直列体の斜視図、図3Bが正極導電体18を形成した直列体の斜視図、図3Cが直列体を積層して得られた電極構造の斜視図である。蓄電デバイス10は、柱状負極12と、負極集電体13と、分離膜15と、正極16と、正極集電部30とを備えている。単セル11は、柱状負極12と、分離膜15と、正極16とにより構成されている。この蓄電デバイス10は、負極活物質を含む柱状負極12と、柱状負極12の周りに分離膜15を介して形成された正極活物質を含む正極16とを備えている。この蓄電デバイス10は、分離膜15及び正極16が形成された柱状負極12を含む単セル11を複数結束した構造を有するものとしてもよい。また、この蓄電デバイス10では、500本以上の柱状負極12が結束された構造を有しているものとしてもよい。あるいは、蓄電デバイス10は、柱状負極12と、柱状負極12の表面に形成された分離膜15と、柱状負極12の間に分離膜15を介して正極16が充填された構造を有するものとしてもよい。
柱状負極12は、負極活物質を含む部材である。ここで、「柱状」とは、屈曲しない太さのもののほか、屈曲可能な繊維状の太さのものも含むものとする。この柱状負極12は、柱状であればよく、その断面は円形であってもよいし、多角形であってもよい。蓄電デバイス10では、複数の柱状負極12が所定方向に配列されている。この柱状負極12は、蓄電デバイス10の最も短い辺の方向とは異なる方向に配列されているものとしてもよい。柱状負極12は、負極集電体13に接続される端部以外の外周が分離膜15に覆われている。例えば、柱状負極12は、蓄電デバイス10全体の負極容量の1/nの容量を有し、n個が負極集電体13に並列接続されているものとしてもよい。この柱状負極12は、長手方向に垂直な断面の直径Dが10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、30μm以上であるものとしてもよい。また、柱状負極12の直径Dは、800μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であるものとしてもよい。この直径Dが10μm以上では、電極構造体としての強度を担保することができ安定した充放電ができる。また、この直径Dが800μm以下ではキャリアのイオンの移動距離が長くなりすぎず、高出力性能が得られる。また、この直径Dが10〜500μmの範囲では、単位体積あたりのエネルギー密度をより高めることができる。あるいは、この範囲では、キャリアのイオンの移動距離をより短くすることができ、より大きな電流で充放電を行うことができる。この柱状体の長手方向の長さは、蓄電デバイスの用途などに応じて適宜定めることができ、例えば、20mm以上200mm以下の範囲などとしてもよい。柱状体の長さが20mm以上では、電池容量をより高めることができ好ましく、200mm以下では、負極の電気抵抗をより低減することができ好ましい。
柱状負極12は、負極活物質としての炭素材料を含むものが好ましく、負極活物質として炭素繊維14の束及び炭素材料の一体物のうちいずれか1以上であるものとしてもよい。炭素材料は、導電性が高く、柱状負極12として好ましい。炭素材料としては、例えば、グラファイト類や、コークス類、ガラス状炭素類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のうち1以上が挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。また、グラファイト構造を有する炭素繊維14としてもよい。このような炭素繊維14は、例えば、繊維方向である長手方向に結晶が配向したものが好ましい。また、長手方向(繊維方向)に直交する方向に断面視したときに結晶が中心から外周面側に放射状に配向したものであることが好ましい。炭素繊維14の直径dは、例えば、5μm以上としてもよいし、7.5μm以上としてもよいし、10μm以上としてもよい。また、炭素繊維11の直径dは、50μm以下の範囲としてもよいし、25μm以下としてもよいし、20μm以下としてもよい。柱状負極12は、複数の炭素繊維14を撚糸して得られたものとしてもよいし、複数の炭素繊維14を結着材により結着させたものとしてもよい。結着材は、キャリアイオンの伝導性を有するものが好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF−HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。また、柱状負極12は、炭素材料の原料を柱状に成形したものを炭素化した一体物としてもよいし、炭化した炭素材料を結着材などで固形化したものとしてもよい。
あるいは、柱状負極12は、キャリアのイオンを吸蔵放出可能な複合酸化物を柱状体に成形したものとしてもよい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。この複合酸化物からなる負極は、その表面の少なくとも一部に導電成分が形成されているものとしてもよい。この導電成分により、導電性をより高めることができる。この導電成分は、導電性の高い材料であれば特に限定されないが、例えば、金属としてもよい。
負極集電体13は、導電性を有する部材であり、柱状負極12に電気的に接続されている。この負極集電体13は、柱状負極12が露出した側に配設されている。この負極集電体13は、例えば、カーボンペーパー、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、白金、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化(還元)性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀、白金、金などで処理したものも用いることができる。負極集電体13の形状は、柱状負極12が接続できるものであれば特に限定されず、例えば、板状、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
分離膜15は、キャリアイオン(例えばリチウムイオン)のイオン伝導性を有し柱状負極12と正極16とを絶縁するものであり、柱状負極12の周囲に設けられている。分離膜15は、正極16と対向する柱状負極12の外周面の全体に形成されており、柱状負極12と正極16との短絡を防止している。この分離膜15は、例えば、樹脂を含む原料溶液から自立膜を作製し、柱状負極12の表面をこの自立膜で被覆させることにより形成されてもよいし、原料溶液へ柱状負極12を浸漬させてその表面にコートすることにより形成されるものとしてもよい。この分離膜15の樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF−HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。例えば、PVdFとHFPとの共重合体では、電解液の一部がこの膜を膨潤ゲル化し、イオン伝導膜となる。この分離膜15の厚さは、例えば、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であるものとしてもよい。この厚さが2μm以上では、絶縁性を確保する上で好ましい。特に、分離膜15の厚さが2μm以上であれば、作製しやすい。また、分離膜15の厚さは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この厚さが15μm以下では、イオン伝導性の低下を抑制できる点や、セルに占める体積をより低減する上で好ましい。分離膜15の厚さが2〜15μmの範囲では、イオン伝導性及び絶縁性が好適である。
分離膜15は、キャリアであるイオンを伝導する電解液を含むものとしてもよい。この電解液は、例えば、非水系溶媒などが挙げられる。電解液の溶媒としては、例えば、非水電解液の溶媒などが挙げられる。この溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。この電解液には、蓄電デバイス10のキャリアであるイオンを含む支持塩を溶解したものとしてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
正極16は、正極活物質を含み、隣合う分離膜15同士の間を埋めるように設けられている。正極16は、正極活物質と、必要に応じて導電材と、結着材とを含むものとしてもよい。正極16は、蓄電デバイス10の作製時において、柱状負極12を内包し断面の外形を六角形状とするものとしてもよい(図1参照)。この形状であれば、正極活物質が外周に形成された柱状負極12を結束すると、正極16が柱状負極12の間に充填されやすく好ましい。この正極16は、複数の柱状負極12の間に存在するものとすればよく、図1に示すように、外形が六角形状であることに限定されない。正極16は、導電材を含み、それ自体に導電性を有するものとしてもよい。この正極16は、例えば、柱状負極12の外周に分離膜15を形成したのち、その外周に正極16の原料を塗布して形成されたものとしてもよい。
正極16は、例えば、正極活物質と、導電材と、必要に応じて結着材とを混合した正極合材からなるものとしてもよい。正極活物質は、例えば、キャリアであるリチウムを吸蔵放出可能な材料が挙げられる。正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属とを有する化合物、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。具体的には、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoaNibMnc2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)、Li(1-x)CoaNibMnc4(0<a<1、0<b<1、1≦c<2、a+b+c=2)などとするリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLiFePO4とするリン酸鉄リチウム化合物などを正極活物質として用いることができる。これらのうち、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、例えば、LiCo1/3Ni1/3Mn1/32やLiNi0.4Co0.3Mn0.32などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。
正極16に含まれる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材は、活物質粒子や導電材粒子を繋ぎ止めて所定の形状を保つ役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
正極16において、正極活物質の含有量は、より多いことが好ましく、正極16の質量全体に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。導電材の含有量は、正極16の全体の質量に対して0質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。このような範囲では、電池容量の低下を抑制し、導電性を十分に付与することができる。また、結着材の含有量は、正極16の質量全体に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましい。
また、正極16の内部には、柱状負極12の長手方向に交差する方向に複数の正極導電体18が配列して配設されている。正極導電体18は、正極合材に比して体積抵抗率が低い材質の部材である。この正極導電体18によって、正極16での集電を効率よく行うことができる。正極導電体18は、その断面形状が正方形や長方形の矩形としてもよいし、円柱や楕円柱、六角柱や八角形柱など多角形柱としてもよい。また、正極導電体18は、膜状(箔状)としてもよい。キャリアイオンの伝導の観点から、この正極導電体18は、層状であるよりも、所定の隙間を設けた間欠パターン(図3,4参照)とすることが好ましい。
正極集電部30は、導電性を有し、正極16から集電する部材であり、正極導電体18の端面18aに電気的に接続されている。正極集電部30は、正極導電体18と、第1集電体31と、第2集電体32とを備えている。第1集電体31は、正極16から露出した複数の正極導電体18の端面18aに接続され平面31aを有する層状の部材である。第2集電体32は、第1集電体31の平面31aに接続された平面32aを有する層状の部材である。ここで「層状」とは、複数の正極導電体18が接続可能であり、1以上の表面が平面であってもよいし平面でなくてもよい1層の平らな形状をいうものとし、例えば、50μm以下の膜状や1000μm以下の板状などを含むものとする。この第1集電体31は、第2集電体32よりも高い体積抵抗率を有する。この第1集電体31は、より高い体積抵抗率を有することによって、例えば、部分的な内部短絡が生じた際に大きな抵抗として働き、急激な放電をより抑える徐放電機能を発現する。この第1集電体31は、多数の正極導電体18が並列接続されるため、通常の充放電時には、集電に与える影響が少なくなっている。また、第2集電体32はより低い体積抵抗率を有することによって、効率よい集電を実現する。
第1集電体31は、第2集電体32に比してより高い体積抵抗率を有することが好ましいが、第2集電体32の10倍以上、より好ましくは100倍以上、あるいは200倍以上や500倍以上の体積抵抗率を有するものとしてもよい。正極導電体18及び第2集電体32の体積抵抗率は、より低いほど好ましい。また、第1集電体31は、本数nが200本以上である正極導電体18が並列接続されているものとしてもよいし、1千本以上や、1万以上の正極導電体18が並列接続されているものとしてもよい。並列接続の本数nに応じて、第1集電体31を介して1本の単セル11にかかる抵抗が決定されるため、所望の充放電特性に応じて、正極導電体18の並列接続の本数nや第1集電体31の体積抵抗率の高さなどを適宜設定すればよい。また、正極導電体18の本数nが多くなると単位体積あたりの活物質量が減少することから、エネルギー密度の観点もふまえて、この正極導電体18の本数nを適宜設定すればよい。この第1集電体31は、例えば、体積抵抗率が1.0×10-6Ωm以上であり、第2集電体32は、体積抵抗率が1.0×10-7Ωm以下であるものとしてもよい。第1集電体31は、体積抵抗率が1.0×10-5Ωm以上であるものとしてもよいし、1.0×10-4Ωm以上であるものとしてもよい。また、正極導電体18や第2集電体32は、体積抵抗率が5.0×10-8Ωm以下であるものとしてもよいし、体積抵抗率が2.0×10-8Ωm以下であるものとしてもよい。正極導電体18と第2集電体32の体積抵抗率は、同じであってもよいし、異なってもよい。
正極集電部30の総抵抗は、より低いことが好ましく、例えば、1.0mΩ以下であることが好ましく、0.7mΩ以下であることがより好ましく、0.1mΩ以下であることが更に好ましい。正極集電部30の総抵抗がより低いと、エネルギー密度の観点からより好ましい。
正極集電部30において、正極導電体18の端面18aの面積yに対する第1集電体31の厚さxの比x/yが0.01以下であることが好ましい。このx/yがより小さいと、正極導電体18と同じ形状の第1集電体121(後述図5B参照)と同様の効果をより発揮しやすくなり、好ましい。即ち、このx/yがより小さいと、単セル11にかかる抵抗をより抑制しつつ、部分短絡時の徐放電機能を発揮することができる。このx/yは、0.008以下が好ましく、0.006以下がより好ましい。また、厚さxの第1集電体31を作製する限界から、x/yは0.001以上や0.002以上が好ましい。
第1集電体31は、その厚さxが第2集電体32の厚さXよりも薄い(小さい)ことが好ましい。第1集電体31の厚さxは、より薄いことが抵抗を高める上で効果的である。また、第2集電体32の厚さXは、より厚いことが抵抗を低減する上で効果的である。第1集電体31は、その厚さxが第2集電体32の厚さXの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましく、1/5以下としてもよい。第1集電体31の厚さxは、例えば、75μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、25μm以下が更に好ましく、20μm以下としてもよい。厚さxは、作製上の制限から、2μm以上や5μm以上であるものとしてもよい。また、第2集電体32の厚さXは、例えば、25μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上としてもよい。厚さXは、体積あたりのエネルギー密度の観点からは、より薄いことが好ましく、1000μm以下や500μm以下としてもよい。
第1集電体31は、例えば、導電材としての金属粒子や炭素粒子を分散したインクを固形化したものや、導電性を有する導電性ポリマーなどとしてもよい。導電材の金属は、例えば、銀などの貴金属などが挙げられる。導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン系、ポリアセチレン系、ポリアニリン系、ポリピロール系などの高分子材料が挙げられる。第2集電体32の材質及び形状は、例えば、上述した負極集電体13で挙げたいずれかの材質及び形状を用いることができる。
この正極集電部30は、例えば、図3に示すように作製することができる。まず、単セル11を作製したのち、例えば、1列に配列した直列体を作製し(図3A)、その側面に正極導電体18を形成する(図3B)。正極導電体18は、金属箔を貼付するものとしてもよいし、金属ペーストを塗布して加熱処理して金属化するものとしてもよい。次に、直列体を積層して、電極構造体を得る(図3C)。この電極構造体の側面側に第1集電体31、第2集電体32を形成する。第1集電体31は、例えば、膜上に形成したものを正極16の側面、正極導電体18の端面18aに接続するよう配置して圧着するものとしてもよい。また、インクや導電性ポリマーを用いる場合は、正極導電体18の端面18aに接触するよう印刷などして形成することもできる。第2集電体32は、例えば第1集電体31の表面を平面31aとし、これに平面32aを有する第2集電体32の箔などを配置して圧着するものとしてもよい。あるいは、第2集電体32の原料ペーストを第1集電体31の平面31a上に印刷して第2集電体32を形成するものとしてもよい。第1集電体31や第2集電体32が膜状や板状を含む層状で形成されていれば第1集電体31や第2集電体32を端面18aに接続する構造を比較的簡便な工程で作製することができる。
蓄電デバイス10において、正極集電部30の有する満充電状態からの内部短絡時における徐放電機能は、安全性の観点では、より長いことが好ましく、例えば、30分以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、2時間以上であることが更に好ましい。この徐放電機能がより長ければ、セル内部の部分短絡時において急激な放電をより抑制し、安全性をより確保することができる。この徐放電機能は、蓄電デバイス10の抵抗の増加など、エネルギー密度の観点からは、5時間以下としてもよい。
この蓄電デバイス10において、体積エネルギー密度は、より高いことがより好ましく、例えば、400Wh/L以上であることが好ましく、500Wh/L以上であることがより好ましく、600Wh/L以上であることが更に好ましい。この蓄電デバイス10において、正極活物質の容量に対する負極活物質の容量の比である正負極容量比(負極容量/正極容量)は、1.0以上1.5以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.2以下の範囲である。正極16の形成厚さは、柱状負極12の直径D及び正負極容量比に応じて適宜設定されるが、例えば、5μm以上50μm以下の範囲としてもよい。正極16の形成厚さは、例えば、柱状負極12上に形成された部分のうち最大の厚さをいうものとする。
以上詳述した蓄電デバイス10では、分離膜15で周囲を囲われた柱状負極12が正極16内に配置されたものにおいて、効率的に集電可能であり、且つ内部短絡時の徐放電機構を両立することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、正極16の内部に正極導電体18を複数設けることによって、正極16での集電をより効率よく行うことができる。また、層状の第1集電体31を設けることによって、多数の正極導電体18を並列接続することが可能となる。この場合、層状の第1集電体31は膜厚の制御により抵抗を容易に制御可能である。また、体積抵抗率の高い第1集電体31のみでは、全ての正極導電体18からの電流を実用的な電圧低下範囲で流すことはできない。そこで、第1集電体31上に、より低抵抗な第2集電体32を配置した集電構造を設計することができる。すなわち、正極導電体18と第2集電体32の間の抵抗を、第1集電体31が第2集電体32よりも高い体積抵抗率を有するものとすることによって、正極導電体18の並列接続による低抵抗化を図ることができる。また、第1集電体31の抵抗を大きくすることによって、いずれかの単セル11で短絡が生じた際に周辺の電極からの電流の流れこみ、ひいては発熱を抑制することができる。したがって、この蓄電デバイス10では、効率的な集電による高エネルギー密度化と内部短絡時の徐放電機構とを両立することができる。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、蓄電デバイスのキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。また、正極活物質は、キャリアのイオンを含むものとすればよい。また、電解液を非水系電解液としたが、水溶液系電解液としてもよい。
上述した実施形態では、柱状負極12は、円柱形状である例を説明したが、特にこれに限定されず、四角柱や六角柱などの形状としてもよい。また、正極16は、外径を六角柱状で示したが、四角柱状や円柱状としてもよい。
上述した実施形態では、正極活物質を遷移金属複合酸化物としたが、特に限定されず、例えば、キャパシタに用いられる炭素材料としてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
上述した実施形態では、特に説明しなかったが、第1集電体31と第2集電体32との間には、ヒューズ機構を備えた接続部を有するものとしてもよい。なお、正極集電部30では、第1集電体31の抵抗が第2集電体32の抵抗に比べて大きいことによって第1集電体31そのものがヒューズの役割を果たすことから、改めてヒューズ機構を加えなくとも徐放電機構が担保される。
以下には、上述した蓄電デバイスを具体的に作製した例を実施例として説明する。
まず、第2集電体に比して高抵抗である層状の第1集電体について、その有効性を検討した。図4は、第1集電体31の厚さxと、正極導電体18の端面18aの面積yと、第1集電体31の抵抗との関係図である。図4Aが厚さx/面積yに対する抵抗比の関係図であり、図4Bが理想的な第1集電体131の構成図であり、図4Cが厚さxの異なる層状の第1集電体31の構成図である。図4Bに示すように、多本数nの正極導電体18を有する蓄電デバイス10において、低抵抗である第2集電体32と正極導電体18との間にそれぞれ高抵抗な柱状の第1集電体131を配設すると、通常時は正極導電体18が並列接続されているため、高抵抗な第1集電体131が存在しても全体では電流負荷が低減される。一方、局所で短絡が生じた場合は、高抵抗な第1集電体131の存在によって、短絡部分の電流集中が大幅に抑制される徐放電の効果が得られると予想される。しかしながら、正極導電体18と同形の第1集電体131を多数(数百〜数万)の正極導電体18のそれぞれに形成することは極めて困難である。そこで、図4Cに示すように、比較的作製が容易である膜状や板状を含む層状の第1集電体31を形成した場合において、図4Bに示す蓄電デバイス120と同じような効果が得られるかを検討した。ここでは、図4Bの第1集電体131の抵抗値を「1」に規格化し、層状の第1集電体31の抵抗値が第1集電体31の厚さxに応じてどのような挙動をするかについて計算により検討した。図4Aがその計算結果である。図4Aの縦軸は、層状の第1集電体31の抵抗値を柱状の第1集電体131の抵抗値で除算して規格化した値とした。図4Aの横軸は、第1集電体31の厚さx(μm)を正極導電体18の1本の端面面積y(μm2)で除算し、単位面積あたりの厚さとして規格化した値とした。図4Aに示すように、厚さxが極限まで薄くなれば、第1集電体31の面方向(図4Cの縦方向)に流れる電流が略なくなり、図4Bの第1集電体131と同じ抵抗「1」を示す。一方、厚さxが厚くなれば、第1集電体31の面方向に流れる電流が多くなり、高抵抗層の効果が減少する。図4Aに示すように、x/yが0.01以下では、第1集電体131の35%以上の抵抗値を示し、高抵抗の第1集電体31の効果が得られるものと推察された。
(実施例1)
(蓄電デバイスの作製)
直径dが7μmの炭素繊維(日本グラファイトファイバー社製)を400本撚糸して結束した直径Dが156.5μmの炭素繊維結束体を柱状負極とした。この柱状負極に対し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP)をN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液をディップ法で被覆、乾燥することで、5μmの膜厚で負極の表面に分離膜としてのポリマー膜を均一塗布した。次に、正極活物質(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)と、導電材としてのアセチレンブラック(デンカ社製HS−100)と、導電材としての気相成長炭素繊維(昭和電工製VGCF)と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ製PVdF7305)とを質量比で90:4:2:4となるよう配合したものにN−メチルピロリドンを加えて正極合材ペーストとした。上記のポリマー被覆負極に対して正極スラリーをディップコートして、正極合材の厚さが35μmとなるように正極合材層を形成した。このように作製した負極/ポリマー膜/正極合材層の単セルを107本を1列に並べた直列体を作製した。この直列体の側面に、柱状負極に交差する方向に正極導電体として、幅200μm、厚さ5μmのアルミニウムを200μm間隔で220本配設した(図3参照)。この直列体を495行(単セル総計52965本)で積層して、静水圧プレスを用いてプレスすることで、96.2mm×24.5mm、高さ88mm)の電極構造体を得た。この電極構造体の電池容量は35Ahである。この電極構造体をAl製のケースに収納し、正極から露出した正極導電体の先端側に第1集電体として導電性高分子(ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸,体積抵抗率3×10-6Ωm)を厚さ30μmとなるように形成した。そして、第1集電体の表面に第2集電体としてのAl箔(厚さ100μm)を配置し圧着させた。柱状負極の端面に負極集電体としてのCu箔を配設し、負極集電体とした。ケースに非水電解液を注液して封止することにより得られた試験セルを実施例1とした。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で30/40/30で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。図5は、実施例1の蓄電デバイス10の説明図である。
(実施例1の抵抗及び徐放電機構の検討)
実施例1において、第1集電体の体積抵抗率は3.0×10-6Ωmであり、第2集電体の体積抵抗率は2.8×10-8Ωmである。また、正極導電体の厚さは5μmであり、第1集電体の厚さは30μmであり、第2集電体の厚さは100μmであり、正極導電体の総抵抗は、7.3×10-6Ωであり、第1集電体の総抵抗は、1.2×10-6Ωであり、第2集電体の総抵抗は、4.2×10-4Ωと見積もられる。正極集電部の全抵抗の大きさは、正極導電体の総抵抗+第1集電体の総抵抗+第2集電体の総抵抗であり、4.3×10-4Ωであるから、セル全体の抵抗に対して正極集電部の総抵抗値は、0.7mΩ以下を満たすものであった。一方、単セル1本あたりの抵抗で比較すると、正極導電体は、7.9×10-1Ωであり、第1集電体の抵抗は、1.3×10-1Ωであり、第2集電体の総抵抗は、4.2×10-4Ωであり、各集電体層の抵抗の大きさは、第1集電体>>第2集電体を満たすものであった。ここで、第1集電体と正極導電体との接点付近で短絡が生じた場合を検討する。ここでは、第1集電体の抵抗が隣の電極からの電流の流れ込みが起こらない程度に十分大きいので、放電時間は第1集電体の正極導電体1本あたりの抵抗で決まる放電電流との間に、単セル1本あたりの第1集電体抵抗=セル平均電圧/放電電流、との関係が成り立つ。実施例1では、単セル1本あたりの抵抗は、1.3×10-1Ωであるので、セル平均電圧を3.7Vとすると、放電電流は29Aとなる。したがって、放電時間=電池容量35Ah/放電電流29A=1.2hとなる。即ち、実施例1の正極集電部の構造によれば、単セル同士で短絡が生じた場合であっても、高抵抗な第1集電体の存在によって、放電時間約1.2時間の徐放電機構が成立することが明らかとなった。
Figure 2021136082
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
10,120 蓄電デバイス、11 単セル、12 負極、12a 端面、13 負極集電体、14 炭素繊維、15 分離膜、16 正極、18 正極導電体、18a 端面、30 正極集電部、31,131 第1集電体、31a,32a 平面、32 第2集電体、d,D 直径、n,N 本数、x,X 厚さ、y 面積。

Claims (9)

  1. 負極活物質を含む複数の柱状負極と、
    各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、
    正極活物質を含み、隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、
    前記正極の内部で前記柱状負極と交差する方向に配列された複数の正極導電体と、前記正極から露出した前記正極導電体の端面に接続された層状の第1集電体と、前記第1集電体に接続された層状の第2集電体とを備えている正極集電部と、を備え、
    前記第1集電体は、前記第2集電体よりも高い体積抵抗率を有する、
    蓄電デバイス。
  2. 前記第1集電体は、前記第2集電体の100倍以上の体積抵抗率を有する、請求項1に記載の蓄電デバイス。
  3. 前記第1集電体は、体積抵抗率が1.0×10-6Ωm以上であり、
    前記第2集電体は、体積抵抗率が1.0×10-7Ωm以下であり、
    前記正極導電体は、体積抵抗率が1.0×10-7Ωm以下である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
  4. 前記正極集電部の総抵抗が0.7mΩ以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  5. 前記正極導電体の端面の面積yに対する前記第1集電体の厚さxの比x/yが0.01以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  6. 前記第1集電体は、その厚さxが前記第2集電体の厚さXよりも小さい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  7. 前記第1集電体は、その厚さxが前記第2集電体の厚さXの1/2以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  8. 前記第1集電体は、200本以上の前記正極導電体が並列接続されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  9. 前記正極導電体は、間欠パターンとして正極内部に配設されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
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