JP2021166164A - 蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された蓄電デバイスにおいて、効率的に集電可能な蓄電デバイスを提供する。【解決手段】蓄電デバイスは、負極活物質を含む複数の柱状負極と、各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、正極活物質を含み隣合う分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、を有する、直方体形状の電極集合体と、電極集合体の表面のうち複数の柱状負極の端部が露出した負極集電面に配置され、複数の柱状負極と電気的に接続された負極集電体と、電極集合体の表面のうち負極集電面に垂直な正極集電面に配置され、正極と電気的に接続した正極集電体と、を備え、電極集合体は、正極集電面に垂直な辺の長さをX[mm]、柱状負極の長さをY[mm]とすると、X≦Yを満たす。【選択図】図1
Description
本明細書では、蓄電デバイスを開示する。
従来、この種の蓄電デバイスとしては、負極活物質を有する柱状体である負極と、正極活物質を有する正極と、イオン伝導性を有し負極と正極とを絶縁する分離膜と、を備えるものが提案されている(例えば特許文献1参照)。この蓄電デバイスでは、分離膜を介して正極と隣合う状態で複数の負極が結束された構造を有しており、エネルギー密度をより高めることができる。また、蓄電デバイスとしては、炭素繊維が結束された構造を有する柱状電極と、正極活物質層と、イオン伝導性を有し柱状電極を被覆し柱状電極と正極活物質層との間に介在する電解質と、を備えるものが提案されている(例えば特許文献2参照)。この蓄電デバイスでは、柱状電極を配列させた柱状電極構造を有しており、出入力特性を高めることができるとともに、柱状電極が炭素繊維の結束体であり、充放電容量が向上する。
しかしながら、特許文献1,2の蓄電デバイスでは、電極構造を工夫するものであるが、それだけでは、電極から集電体に至る電子伝導経路の電子抵抗により、集電を効率的に行うことができず、エネルギー密度が低いことがあった。このように、効率的な集電による高エネルギー密度化が可能な集電構造が望まれていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された蓄電デバイスにおいて、効率的に集電可能な蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、柱状負極よりも電子抵抗の高い正極において、正極内から正極集電体に至る電子伝導距離を短くすれば、効率的に集電可能であることを見出し、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示する蓄電デバイスは、
負極活物質を含む複数の柱状負極と、各前記柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、正極活物質を含み隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、を有する、直方体形状の電極集合体と、
前記電極集合体の表面のうち前記複数の柱状負極の端部が露出した負極集電面に配置され、前記複数の柱状負極と電気的に接続された負極集電体と、
前記電極集合体の表面のうち前記負極集電面に垂直な正極集電面に配置され、前記正極と電気的に接続した正極集電体と、
を備え、
前記電極集合体は、前記正極集電面に垂直な辺の長さをX[mm]、前記柱状負極の長さをY[mm]とすると、X≦Yを満たすものである。
負極活物質を含む複数の柱状負極と、各前記柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、正極活物質を含み隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、を有する、直方体形状の電極集合体と、
前記電極集合体の表面のうち前記複数の柱状負極の端部が露出した負極集電面に配置され、前記複数の柱状負極と電気的に接続された負極集電体と、
前記電極集合体の表面のうち前記負極集電面に垂直な正極集電面に配置され、前記正極と電気的に接続した正極集電体と、
を備え、
前記電極集合体は、前記正極集電面に垂直な辺の長さをX[mm]、前記柱状負極の長さをY[mm]とすると、X≦Yを満たすものである。
本開示では、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された蓄電デバイスにおいて、効率的に集電可能である。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、直方体形状の電極集合体の表面のうち、負極集電面に対向する面ではなく、負極集電面に垂直な面を正極集電面とすることで、電極から電極集電体に至る電子伝導距離を、正極と柱状負極とで変えることができる。そして、柱状負極よりも電子抵抗率の大きい正極での電子伝導距離に相当する長さXを、柱状負極での電子伝導距離に相当する長さY以下にすることで、正極での電子抵抗が大きくなりすぎず、正極の集電を効率よく行うことができる。また、柱状負極は長手方向の電子伝導性が高いため、柱状負極の長手方向に電子伝導させて柱状負極の端部で集電することで、負極の集電を効率よく行うことができる。したがって、この蓄電デバイスでは、効率的な集電が可能であり、結果として高エネルギー密度化が可能であると考えられる。
実施形態で説明する本開示の蓄電デバイスは、複数の柱状負極と、分離膜と、正極と、負極集電体と、正極集電体とを備えている。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、アルカリ金属二次電池、アルカリ金属イオン電池などとしてもよい。蓄電デバイスのキャリアイオンは、リチウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンやマグネシウムイオンやストロンチウムイオン、カルシウムイオンなどの第2族イオンなどが挙げられる。また、正極は、分離膜を介して柱状負極の周りに存在するものとしてもよいし、分離膜を介して柱状負極の間の空間に充填されているものとしてもよい。また、この蓄電デバイスは、分離膜を介して正極と隣り合う状態で複数の柱状負極が結束された構造を有するものとしてもよい。更に、この蓄電デバイスは、柱状負極、正極及び分離膜のうち1以上に電解液を含むものとしてもよい。正極及び柱状負極には、集電線などの集電部材が埋設されているものとしてもよいし、この集電部材を備えないものとしてもよい。ここでは、説明の便宜のため、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池をその主たる一例として以下説明する。
ここで、本実施形態で開示する蓄電デバイスについて図面を用いて説明する。図1は、蓄電デバイス10の一例を示す模式図である。図2は、図1のA−A断面図である。蓄電デバイス10は、柱状負極12と、分離膜15と、正極16と、負極集電体22と、正極集電体26とを備えている。単セル11は、柱状負極12と、分離膜15と、正極16とにより構成されている。電極集合体20は、複数の柱状負極12と、各柱状負極12の周囲に設けられた分離膜15と、各分離膜15同士の間を埋めるように設けられた正極16とを備えている。なお、本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、蓄電デバイス10の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
柱状負極12は、負極活物質を含む部材である。ここで、「柱状」とは、屈曲しない太さのもののほか、屈曲可能な繊維状の太さのものも含むものとする。この柱状負極12は、柱状であればよく、その断面は円形であってもよいし、多角形であってもよい。蓄電デバイス10では、複数の柱状負極12が所定方向に配列されている。柱状負極12は、負極集電体22に接続される端部以外の外周が分離膜15に覆われている。例えば、柱状負極12は、蓄電デバイス10全体の負極容量の1/nの容量を有し、n個が負極集電体22に並列接続されているものとしてもよい。この柱状負極12は、長手方向に垂直な断面の直径Dが10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、30μm以上であるものとしてもよい。また、柱状負極12の直径Dは、800μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であるものとしてもよい。この直径Dが10μm以上では、柱状負極12としての強度を担保することができ安定した充放電ができる。また、この直径Dが800μm以下ではキャリアのイオンの移動距離が長くなりすぎず、高出力性能が得られる。また、この直径Dが10〜500μmの範囲では、単位体積あたりのエネルギー密度をより高めることができる。あるいは、この範囲では、キャリアのイオンの移動距離をより短くすることができ、より大きな電流で充放電を行うことができる。
柱状負極12は、負極活物質としての炭素材料を含むものが好ましく、負極活物質として炭素繊維14の束及び炭素材料の一体物のうちいずれか1以上であるものとしてもよい。炭素材料は、導電性が高く、柱状負極12として好ましい。炭素材料としては、例えば、グラファイト類や、コークス類、ガラス状炭素類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のうち1以上が挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。また、炭素材料は、グラファイト構造を有する炭素繊維14としてもよい。このような炭素繊維14は、例えば、繊維方向である長手方向に結晶が配向したものが好ましい。また、長手方向(繊維方向)に直交する方向に断面視したときに結晶が中心から外周面側に放射状に配向したものであることが好ましい。炭素繊維14の直径dは、例えば、5μm以上としてもよいし、7.5μm以上としてもよいし、10μm以上としてもよい。また、炭素繊維14の直径dは、50μm以下の範囲としてもよいし、25μm以下としてもよいし、20μm以下としてもよい。柱状負極12は、複数の炭素繊維14を撚糸して得られたものとしてもよいし、複数の炭素繊維14を結着材により結着させたものとしてもよい。結着材は、キャリアイオンの伝導性を有するものが好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF−HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。また、柱状負極12は、炭素材料の原料を柱状に成形したものを炭素化した一体物としてもよいし、炭化した炭素材料を結着材などで固形化したものとしてもよい。柱状負極12が結着材を含む場合、結着材の重量割合は、容量を高める観点からは少ない方が好ましく、負極活物質の20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、結着材の重量割合は、結着力を高める観点から、負極活物質の2%以上としてもよい。
あるいは、柱状負極12は、キャリアのイオンを吸蔵放出可能な複合酸化物を柱状体に成形したものとしてもよい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。この複合酸化物からなる柱状負極12は、その表面の少なくとも一部に導電成分が形成されているものとしてもよい。この導電成分により、導電性をより高めることができる。この導電成分は、導電性の高い材料であれば特に限定されないが、例えば、金属としてもよい。
分離膜15は、キャリアイオン(例えばリチウムイオン)のイオン伝導性を有し柱状負極12と正極16とを絶縁するものであり、柱状負極12の周囲に設けられている。分離膜15は、正極16と対向する柱状負極12の外周面及び下端面の全体に形成されており、柱状負極12と正極16との短絡を防止している。この分離膜15は、例えば、樹脂を含む原料溶液から自立膜を作製し、柱状負極12の表面をこの自立膜で被覆させることにより形成されてもよいし、原料溶液へ柱状負極12を浸漬させてその表面にコートすることにより形成されるものとしてもよい。この分離膜15の樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF−HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。例えば、PVdFとHFPとの共重合体では、電解液の一部がこの膜を膨潤ゲル化し、イオン伝導膜となる。分離膜15は、例えば、電子絶縁性粉末をバインダで固めた多孔体としてもよい。こうした分離膜15では、多孔体の空隙に電解液を保持することでイオン伝導性を発現する。電子絶縁性粉末としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ベーマイトなどが挙げられる。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイミドなどが挙げられる。この分離膜15は、例えば、電子絶縁性粉末とバインダ粉末とを含む原料粉末又は原料スラリーから多孔質の自立膜を作製し、柱状負極12の表面をこの自立膜で被覆させることにより形成されてもよいし、電子絶縁性粉末とバインダ粉末とを含む原料スラリーへ柱状負極12を浸漬させてその表面にコートすることにより形成されるものとしてもよい。分離膜15の厚さは、例えば、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であるものとしてもよい。この厚さが2μm以上では、絶縁性を確保する上で好ましい。特に、分離膜15の厚さが2μm以上であれば、作製しやすい。また、分離膜15の厚さは、20μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましい。この厚さが15μm以下では、イオン伝導性の低下を抑制できる点や、セルに占める体積をより低減する上で好ましい。分離膜15の厚さが2〜20μmの範囲では、イオン伝導性及び絶縁性が好適である。
分離膜15は、キャリアであるイオンを伝導する電解液を含むものとしてもよい。この電解液は、例えば、非水系溶媒などが挙げられる。電解液の溶媒としては、例えば、非水電解液の溶媒などが挙げられる。この溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。この電解液には、蓄電デバイス10のキャリアであるイオンを含む支持塩を溶解したものとしてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
正極16は、正極活物質を含み、隣合う分離膜15同士の間を埋めるように設けられている。正極16は、正極活物質と、必要に応じて導電材と、結着材とを含むものとしてもよい。正極16は、蓄電デバイス10の作製時においては、柱状負極12を内包し、断面の外形を円形状や六角形状とするものとしてもよいし、図1のように断面の外径を四角形状とするものとしてもよい。蓄電デバイス10において、正極16は、複数の柱状負極12の間に存在するものとすればよく、図1のように断面の外形が四角形状であることに限定されない。正極16は、導電材を含み、それ自体に導電性を有するものとし、集電部材などは省略されているものとしてもよい。この正極16は、例えば、柱状負極12の外周に分離膜15を形成したのち、その外周に正極16の原料を塗布して形成されたものとしてもよい。
正極16は、例えば、正極活物質と、導電材と、必要に応じて結着材とを混合した正極合材からなるものとしてもよい。正極活物質は、例えば、キャリアであるリチウムを吸蔵放出可能な材料が挙げられる。正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属とを有する化合物、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。具体的には、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn2O4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoaNibMncO2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)、Li(1-x)CoaNibMncO4(0<a<1、0<b<1、1≦c<2、a+b+c=2)などとするリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV2O3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV2O5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLiFePO4とするリン酸鉄リチウム化合物などを正極活物質として用いることができる。これらのうち、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、例えば、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2やLiNi0.4Co0.3Mn0.3O2などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。
正極16に含まれる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材は、活物質粒子や導電材粒子を繋ぎ止めて所定の形状を保つ役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
正極16において、正極活物質の含有量は、より多いことが好ましく、正極16の質量全体に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。導電材の含有量は、正極16の全体の質量に対して0質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。このような範囲では、電池容量の低下を抑制し、導電性を十分に付与することができる。また、結着材の含有量は、正極16の質量全体に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましい。
電極集合体20は、複数の柱状負極12と、各柱状負極12の周囲に設けられた分離膜15と、各分離膜15同士の間を埋めるように設けられた正極16とを有し、直方体形状に形成されている。この電極集合体20は、分離膜15及び正極16が形成された柱状負極12を含む単セル11を複数結束した構造を有するものとしてもよい。あるいは、電極集合体20は、柱状負極12と、柱状負極12の表面に形成された分離膜15と、柱状負極12の間に分離膜15を介して正極16が充填された構造を有するものとしてもよい。電極集合体20は、500本以上や1000本以上、10000本以上などの柱状負極12が結束された構造を有するものとしてもよい。電極集合体20は、例えば、単セル11を、柱状負極12の露出した端面12aが上向きになるように、左右方向(X方向とも称する)にS個(Sは、1以上の整数であり、図1では6である)、前後方向(Z方向とも称する)にT個(Tは、1以上の整数であり、図1では9である)、平行に並べて、全体形状が直方体になるように左右及び前後に圧縮することにより結束して形成されたものとしてもよい。あるいは、電極集合体20は、上記同様に単セル11をX方向にS/s個(sは1以上の整数であり、Sはsの倍数である)、Y方向にT/t個(tは1以上の整数であり、Tはtの倍数である)並べて圧縮して形成された小集合体を、上記同様にX方向にs個、Y方向にt個並べて圧縮して形成されたものとしてもよい。小集合体を形成してから電極集合体20を形成すれば、正極密度のムラが生じにくい。また、複数の単セル11を圧縮形成する際に一部の柱状負極12が平行に並ばずにクロスするなどの不具合が生じることがあるが、小集合体を形成してから電極集合体20を形成すれば、こうした不具合が生じにくいし、不具合が生じても不具合が生じた小集合体だけを除去すればよいため、不具合が生じた場合に廃棄する単セル11を低減できる。
電極集合体20では、柱状負極12の端部(図1では端面12a)が露出した負極集電面20a(図1では上面)に負極集電体22が配置される。また、電極集合体20では、負極集電面20aに垂直な正極集電面20b(図1では左面)に正極集電体26が配置される。
電極集合体20は、正極集電面20bに垂直な辺の長さをX[mm]、柱状負極12の長さをY[mm]とすると、X≦Yを満たすように形成されている。長さXは、正極16での電子伝導距離に相当し、長さYは、柱状負極12での電子伝導距離に相当する。正極16は、柱状負極12よりも電子抵抗率が高いが、X≦Yを満たす電極集合体20では、正極16の電子抵抗が大きくなりすぎず、正極の集電を効率よく行うことができるため、好ましい。電極集合体20は、X<Yを満たすことがより好ましい。長さXは、正極16の電子抵抗を低減する観点からは短い方が好ましく、40mm以下が好ましく、35mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。また、長さXは、蓄電デバイス10の容量を高める観点から、例えば、1mm以上としてもよいし、5mm以上としてもよいし、10mm以上としてもよい。長さYは、柱状負極12の電子抵抗を低減する観点からは短い方が好ましく、200mm以下が好ましく、160mm以下がより好ましく、150mm以下がさらに好ましい。長さYは、蓄電デバイス10の容量を高める観点から、20mm以上としてもよいし、30mm以上としてもよいし、50mm以上としてもよい。長さXの長さYに対する比であるX/Yは、例えば0.2以上0.4以下の範囲としてもよく、0.2以上0.35以下の範囲としてもよい。X/Yがこの範囲であれば、正極の集電効率と、負極の集電効率とのバランスがよい。
電極集合体20は、正極集電面20bに平行かつ負極集電面20aに平行な辺の長さをZ[mm]とすると、X≦Zを満たすことが好ましく、X≦Y≦Zを満たすことがより好ましい。長さZが大きいほど、蓄電デバイス10の容量を高めることができる。また、Z方向は、正極16の電子伝導方向でも柱状負極12の電子伝導方向でもないため、長さZが大きくなっても正極16や柱状負極12の電子抵抗は増加しない。このため、X≦Y≦Zを満たす場合には、電子抵抗を増加させることなく蓄電デバイス10の容量を高めることができる。電極集合体20は、X<Zを満たすことが好ましく、Y<Zを満たすことがより好ましい。長さZは、蓄電デバイス10の容量を高める観点からは大きいほどよいが、例えば、300mm以下などとしてもよい。長さXの長さZに対する比であるX/Zは、0.05以上0.3以下の範囲としてもよい。X/Zがこの範囲であれば、蓄電デバイス10のエネルギー密度と正極の集電効率のバランスがよい。X方向及びZ方向には、各々、例えば、10mmあたり20本以上200本以下の柱状負極12が配置されていてもよい。
負極集電体22は、電極集合体20の負極集電面20aに配置され、負極集電面20aに端部が露出した複数の柱状負極12と電気的に接続されている。ここでは、負極集電体22には、全ての柱状負極12の端面12aが並列接続されている。この負極集電体22の材質は、導電性を有するものであればよく、例えば、カーボンペーパー、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、白金、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化(還元)性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀、白金、金などで処理したものも用いることができる。負極集電体22の形状は、複数の柱状負極12が接続できるものであればよく、例えば、板状、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。負極集電体22を柱状負極12と電気的に接続する際には、例えば、電極集合体20の負極集電面20aに柱状負極12の端面12aと接触するように負極集電体22を配置し、圧着、ろう付け又は、導電性接着剤による接着などにより接合してもよい。あるいは、柱状負極12の端面12aが露出した負極集電面20aに、メッキや、印刷などによって、負極集電体22を成膜してもよい。このとき、負極集電面20aに正極16が露出しないよう、図3に示すように、正極16の上面に絶縁層23を形成してもよい。この絶縁層23は、例えば、分離膜15で挙げた材質のいずれかであるものとしてもよい。
正極集電体26は、電極集合体20の正極集電面20bに配置され、正極16と電気的に接続されている。この正極集電体26の材質は、導電性を有するものであればよく、上述した負極集電体22で挙げたいずれかの材質とすることができる。また、正極集電体26の形状は、正極16が接続できるものであれば特に限定されず、上述した負極集電体22で挙げたいずれかの形状とすることができる。正極集電体26を正極16と電気的に接続させる際には、例えば、電極集合体20の正極集電面20bに正極16と接触するように正極集電体26を配置し、圧着、ろう付け又は、導電性接着剤による接着などにより接合してもよい。あるいは、正極16が露出した正極集電面20bに、メッキや、印刷などによって、正極集電体26を成膜してもよい。このとき、正極集電面20bに柱状負極12が露出しないよう、図3に示すように、露出した柱状負極12の周囲に上述した絶縁層23を形成してもよい。
この蓄電デバイス10において、体積エネルギー密度は、より高いことがより好ましく、例えば、400Wh/L以上であることが好ましく、500Wh/L以上であることがより好ましく、600Wh/L以上であることが更に好ましい。この蓄電デバイス10において、正極活物質の容量に対する負極活物質の容量の比である正負極容量比(負極容量/正極容量)は、1.0以上1.5以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.2以下の範囲である。単セル11において、正極16の形成厚さは、柱状負極12の直径D及び正負極容量比に応じて適宜設定されるが、例えば、5μm以上50μm以下の範囲としてもよい。正極16の形成厚さは、例えば、柱状負極12の外周面に形成された部分のうち最大の厚さをいうものとする。
以上詳述した蓄電デバイス10では、分離膜15で周囲を囲われた柱状負極12が正極16内に配置されたものにおいて、効率的に集電可能である。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、直方体形状の電極集合体20の表面のうち、負極集電面20aに対向する面ではなく、負極集電面20aに垂直な面を正極集電面20bとすることで、電極から電極集電体に至る電子伝導距離を、正極と負極とで変えることができる。そして、柱状負極12よりも電子抵抗率の大きい正極16での電子伝導距離に相当する長さXを、柱状負極12での電子伝導距離に相当する長さY以下にすることで、正極16での電子抵抗が大きくなりすぎず、正極の集電を効率よく行うことができる。また、柱状負極12は長手方向(図1の上下方向)の電子伝導性が高いため、柱状負極12の長手方向に電子伝導させて柱状負極12の端部(例えば端面12a)で集電することで、負極の集電を効率よく行うことができる。したがって、この蓄電デバイス10では、効率的な集電が可能であり、結果として高エネルギー密度化が可能であると考えられる。また、この蓄電デバイス10では、正極16及び柱状負極12の電子抵抗が小さいため、電子抵抗による出入力特性の低下が抑制され、高出入力密度化が可能であると考えられる。さらに、この蓄電デバイス10では、柱状負極12の長さYが長さX以上であるため、それよりも短い柱状負極12を用いた場合よりも、理論容量の同じ蓄電デバイス10において柱状負極12の本数を低減できる。このため、単セル11を結束する際に、柱状負極12がクロスするリスクが低減し、電池作製プロセスの信頼性が向上する。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、蓄電デバイスのキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。また、正極活物質は、キャリアのイオンを含むものとすればよい。また、電解液を非水系電解液としたが、水溶液系電解液としてもよい。
上述した実施形態では、柱状負極12は、円柱形状である例を説明したが、特にこれに限定されず、四角柱や六角柱などの形状としてもよい。また、正極16は、外径を四角柱状で示したが(図1の単セル11参照)、隣合う分離膜15同士の間を埋めるものとすればよく、外径が四角形状であることに限定されない。
上述した実施形態では、正極活物質を遷移金属複合酸化物としたが、特に限定されず、例えば、キャパシタに用いられる炭素材料としてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
上述した実施形態では、絶縁層23を備えるものとしたが、負極集電体22と正極16との短絡や、正極集電体26と柱状負極12との短絡を防止できるのであれば、絶縁層23を省略してもよいし、その他の絶縁手段を備えるものとしてもよい。
以下には、上述した蓄電デバイス10を具体的に作製した例を実施例として説明する。なお、実験例1〜9が実施例に相当し、実験例10が比較例に相当する。
[実験例1]
直径7μmの炭素繊維14を1000本束ねた繊維束を、長さ85mmに切断し、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を溶解したN−メチルピロリドン(NMP)溶液に浸漬し、乾燥させることで、直径250μm、長さ85mmの柱状負極12を作製した。次に、ポリフッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)を溶解したNMP溶液を用いたディップコート法により、柱状負極12の外周面及び下面に厚さ12μmのPVdF−HFP分離膜15を形成した。続いて、分離膜15を備えた柱状負極12に水系正極ペーストをディップコートすることで、分離膜15の表面に正極16を形成し、成形前の単セル11を作成した。正極ペーストとしては、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2とカーボンブラックとPVdFバインダとを92:5:3の配合比(質量比)で水中に分散させたものを用いた。この成形前の単セル11複数本を1列に平行に配置して、X方向及びZ方向に二軸プレスをすることで、単セル11が1列に配列した電極集合体20を作成した。この電極集合体20では、長さXが10mm、長さYが85mm、長さZが0.3mmであった。この電極集合体20に、図3の絶縁層23を、分離膜15と同じ材質で形成した。その後、電極集合体20の負極集電面20aに負極集電体22としてのCu箔(厚さ10μm)を配置し、全柱状負極12の端面12aに圧着して両者を電気的に接続させた。また、電極集合体20の正極集電面20bに、正極集電体26としてのAl箔(厚さ10μm)を配置し、正極16に圧着して両者を電気的に接続させた。そして、負極集電体22及び正極集電体26が接続された電極集合体20をケースに入れ、電解液(1M LiPF6,EC/DMC/EMC=3/4/3(体積比))を注液後、密閉することで、蓄電デバイス10としてのリチウムイオン二次電池を作製した。
直径7μmの炭素繊維14を1000本束ねた繊維束を、長さ85mmに切断し、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を溶解したN−メチルピロリドン(NMP)溶液に浸漬し、乾燥させることで、直径250μm、長さ85mmの柱状負極12を作製した。次に、ポリフッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)を溶解したNMP溶液を用いたディップコート法により、柱状負極12の外周面及び下面に厚さ12μmのPVdF−HFP分離膜15を形成した。続いて、分離膜15を備えた柱状負極12に水系正極ペーストをディップコートすることで、分離膜15の表面に正極16を形成し、成形前の単セル11を作成した。正極ペーストとしては、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2とカーボンブラックとPVdFバインダとを92:5:3の配合比(質量比)で水中に分散させたものを用いた。この成形前の単セル11複数本を1列に平行に配置して、X方向及びZ方向に二軸プレスをすることで、単セル11が1列に配列した電極集合体20を作成した。この電極集合体20では、長さXが10mm、長さYが85mm、長さZが0.3mmであった。この電極集合体20に、図3の絶縁層23を、分離膜15と同じ材質で形成した。その後、電極集合体20の負極集電面20aに負極集電体22としてのCu箔(厚さ10μm)を配置し、全柱状負極12の端面12aに圧着して両者を電気的に接続させた。また、電極集合体20の正極集電面20bに、正極集電体26としてのAl箔(厚さ10μm)を配置し、正極16に圧着して両者を電気的に接続させた。そして、負極集電体22及び正極集電体26が接続された電極集合体20をケースに入れ、電解液(1M LiPF6,EC/DMC/EMC=3/4/3(体積比))を注液後、密閉することで、蓄電デバイス10としてのリチウムイオン二次電池を作製した。
得られた蓄電デバイス10を用い、25℃、1Cレート、2V〜4.1Vで充放電試験を行い、正極重量当たりの放電容量を測定した。結果を表1に示す。なお、表1では、放電容量として、実験例1の放電容量を100として規格化した値を示した。
[実験例2〜5]
使用する単セル11の数を増やして、長さXを各々20mm,30mm,36mm,40mmに変えた以外は、実験例1と同様にして放電容量を求めた。結果を表1に示す。
使用する単セル11の数を増やして、長さXを各々20mm,30mm,36mm,40mmに変えた以外は、実験例1と同様にして放電容量を求めた。結果を表1に示す。
[実験例6〜9]
繊維束を切断する長さを長くし、長さYを各々100mm,130mm,150mm,160mmに変えた以外は、実験例1と同様にして放電容量を求めた。結果を表1に示す。
繊維束を切断する長さを長くし、長さYを各々100mm,130mm,150mm,160mmに変えた以外は、実験例1と同様にして放電容量を求めた。結果を表1に示す。
[実験例10]
正極集電体26としてのAl箔を、正極集電面20bではなく、負極集電面20aに対向する面(図1の下面)に配置した以外は、実験例1と同様の蓄電デバイスについて、計算によって放電容量を求めた。具体的には、正極合材単独の抵抗率を測定し、正極の電子伝導距離を85mmと仮定して、正極の電子伝導方向(集電方向)の電子抵抗を算出し、1C放電時の電圧降下(オーム損)を計算した。その結果、正極の電子抵抗によるオーム損で、1C放電直後に電池電圧が放電終止電圧を下回ると試算された。この試算結果から、実験例10の蓄電デバイスでは放電できない(放電容量は0)と判断した。結果を表1に示す。
正極集電体26としてのAl箔を、正極集電面20bではなく、負極集電面20aに対向する面(図1の下面)に配置した以外は、実験例1と同様の蓄電デバイスについて、計算によって放電容量を求めた。具体的には、正極合材単独の抵抗率を測定し、正極の電子伝導距離を85mmと仮定して、正極の電子伝導方向(集電方向)の電子抵抗を算出し、1C放電時の電圧降下(オーム損)を計算した。その結果、正極の電子抵抗によるオーム損で、1C放電直後に電池電圧が放電終止電圧を下回ると試算された。この試算結果から、実験例10の蓄電デバイスでは放電できない(放電容量は0)と判断した。結果を表1に示す。
電極集合体20の表面のうち、負極集電面20aに垂直な正極集電面20bに正極集電体26を接続しX≦Yとした実験例1〜9では、負極集電面20aに対向する面に正極集電体を接続した実験例10に比べて、放電容量が向上した。これは、炭素繊維14を結着材で結着した柱状負極12よりも電子抵抗率の大きい正極16での電子伝導距離に相当する長さXを、柱状負極12での電子伝導距離に相当する長さY以下にすることで、正極16での電子抵抗が大きくなりすぎず、正極の集電を効率よく行うことができたためと推察された。また、炭素繊維14を結着材で結着した柱状負極12では、長手方向(繊維方向)の電子伝導性が高いため、柱状負極12の長手方向に電子伝導させて柱状負極12の端部で集電することで、負極の集電を効率よく行うことができたためと推察された。
また、長さYを固定し、長さXを変えた実験例1〜5の結果から、長さXが短いほど放電容量が向上し、長さXは例えば40mm以下が好ましく、35mm以下がより好ましく、30m以下がさらに好ましいことがわかった。このように放電容量が向上したのは、長さXが短いほど、正極16の電子抵抗が小さくなり、分極が小さくなり、集電効率が向上しためと推察された。また、長さXを固定し、長さYを変えた実験例1〜9の結果から、長さYが短いほど放電容量が向上し、長さYは例えば200mm以下が好ましく、160mm以下がより好ましく、150mm以下がさらに好ましいことがわかった。このように放電容量が向上したのは、長さYが短いほど、柱状負極12の電子抵抗が小さくなり、分極が小さくなり、集電効率が向上したためと推察された。
また、図4に、長さXの長さYに対する比であるX/Yと放電容量との関係を示した。図4より、X/Yが0.2以上0.4以下の範囲では放電容量が向上し、0.2以上0.35以下の範囲では放電容量がより向上し、好ましいことがわかった。このように放電容量が向上したのは、正極の集電効率と負極の集電効率とのバランスがよいためと推察された。
10 蓄電デバイス、11 単セル、12 柱状負極、12a 端面、14 炭素繊維、15 分離膜、16 正極、20 電極集合体、20a 負極集電面、20b 正極集電面、22 負極集電体、23 絶縁層、26 正極集電体。
Claims (4)
- 負極活物質を含む複数の柱状負極と、各前記柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、正極活物質を含み隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、を有する、直方体形状の電極集合体と、
前記電極集合体の表面のうち前記複数の柱状負極の端部が露出した負極集電面に配置され、前記複数の柱状負極と電気的に接続された負極集電体と、
前記電極集合体の表面のうち前記負極集電面に垂直な正極集電面に配置され、前記正極と電気的に接続した正極集電体と、
を備え、
前記電極集合体は、前記正極集電面に垂直な辺の長さをX[mm]、前記柱状負極の長さをY[mm]とすると、X≦Yを満たす、
蓄電デバイス。 - 前記電極集合体は、前記正極集電面に平行かつ前記負極集電面に平行な辺の長さをZ[mm]とすると、X≦Y≦Zを満たす、請求項1に記載の蓄電デバイス。
- 前記電極集合体は、X≦30mm、Y≦150mm及び0.2≦X/Y≦0.4のうちの1以上を満たす、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
- 前記柱状負極は、前記負極活物質として複数の炭素繊維を含み、前記複数の炭素繊維を結着材で結着したものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
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