本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、第1の壁部を有する第1のケースと、第1の壁部に対向する第2の壁部を有する第2のケースとを備え、内燃機関に連結される変速機ケースと、一端部が第1のケースに回転自在に支持されるとともに、他端部が第2のケースに回転自在に支持される複数の回転軸と、複数の回転軸に設けられたギヤとを有し、内燃機関の動力を変速する変速機構と、変速機ケースに収容され、変速機ケースの底部に貯留されるオイルを掻き上げる回転体と、回転体によって掻き上げられたオイルを捕捉し、変速機構の被潤滑部位に導くオイルガターとを備え、オイルガターは、第1の壁部に取付けられた第1のオイルガターと、第2の壁部に取付けられた第2のオイルガターとを有し、第1のオイルガターと第2のオイルガターは、上下方向に離れて設置されている。
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
図1から図7は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。図1から図7において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
まず、構成を説明する。
図1において、車両の図示しないエンジンルームには内燃機関としてのエンジン1と、エンジン1に連結される変速機2とが設けられている。エンジン1の出力は、変速機2から左右のドライブシャフト18L、18R(図6参照)を介して図示しない左右の駆動輪に伝達される。
図2、図4において、変速機2は、変速機ケース3を備えており、変速機ケース3は、ライトケース4およびライトケース4に図示しないボルトによって連結されるレフトケース5を備えている。本実施例の変速機2は、本発明の車両用変速機を構成する。
図4において、ライトケース4は、エンジン1に対向する面が開口している。ライトケース4は、エンジン1に対向する左側面に隔壁4Aが形成されている。変速機ケース3の内部は、隔壁4Aによってライトケース4の内部の空間とレフトケース5の内部の空間とに仕切られている。
レフトケース5は、車幅方向において隔壁4Aに対向する左側壁5Aを有し、レフトケース5の底部には潤滑用のオイルO(図3参照)が貯留されている。本実施例のライトケース4は、本発明の第1のケースを構成し、レフトケース5は、本発明の第2のケースを構成する。隔壁4Aは、本発明の第1の壁部を構成し、左側壁5Aは、本発明の第2の壁部を構成する。
図2、図4に示すように、ライトケース4の隔壁4Aより右側の内部には図示しないクラッチが収容されている。ライトケース4の隔壁4Aよりも左側の内部およびレフトケース5の内部には変速機構6およびディファレンシャル装置17が収容されている。
変速機2は、エンジン1の動力を変速機構6に入力し、図示しないシフタ軸の作動により変速機構6において動力(回転速度)の変速を行い、変速された動力をディファレンシャル装置17により、ドライブシャフト18L、18R(図6参照)に伝達する。
図6に示すように、変速機構6は、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14および後進軸15を有する。
主入力軸11は、1速段用の入力ギヤ11A、2速段用の入力ギヤ11B、3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび4速/6速段用の入力ギヤ11Dを有し、これら入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dは、主入力軸11に固定されている。
カウンタ軸14は、1速段用のカウンタギヤ14A、2速段用のカウンタギヤ14B、5速段用のカウンタギヤ14C、6速段用のカウンタギヤ14D、リダクションドリブンギヤ14Eおよび前進用のファイナルドライブギヤ14Fを有する。
各カウンタギヤ14Aからカウンタギヤ14Dは、カウンタ軸14と相対回転自在となっており、それぞれ同じ変速段を構成する入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dに噛み合っている。
アイドル軸12は、3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bおよびリダクションドライブギヤ12Cを有する。3速段用のアイドルギヤ12Aおよび4速段用のアイドルギヤ12Bは、アイドル軸12と相対回転自在となっており、それぞれ同じ変速段を構成する入力ギヤ11C、11Dに噛み合っている。
副入力軸13は、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびダンパ機構16を有する。リダクションドリブンギヤ13Aは、リダクションドライブギヤ12Cに噛み合っており、リダクションドライブギヤ13Bは、リダクションドリブンギヤ14Eに噛み合っている。
後進軸15は、後進ギヤ15Aおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bを有する。後進ギヤ15Aは、1速段用のカウンタギヤ14Aに噛み合っており、後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。
カウンタ軸14には同期装置31が設けられており、同期装置31は、シフト操作によって変速段が1速段または2速段にシフトされると、1速段用のカウンタギヤ14Aまたは2速段用のカウンタギヤ14Bをカウンタ軸14に連結する。
カウンタ軸14には同期装置32が設けられている。同期装置32は、シフト操作によって変速段が5速段または6速段にシフトされると、5速段用のカウンタギヤ14Cまたは6速段用のカウンタギヤ14Dをカウンタ軸14に連結する。
アイドル軸12には同期装置33が設置されている。同期装置33は、シフト操作によって変速段が3速段または4速段にシフトされると、3速段用のアイドルギヤ12Aまたは4速段用のアイドルギヤ12Bをアイドル軸12に連結する。
後進軸15には同期装置34が設置されている。シフト操作によって後進段にシフトされると、同期装置34は、後進ギヤ15Aを後進軸15に連結する。
前進用のファイナルドライブギヤ14Fおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。
これにより、変速段に応じてエンジン1からカウンタ軸14に直接伝達される動力、または、エンジン1から主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13を経てカウンタ軸14に伝達される動力は、前進用のファイナルドライブギヤ14Fからディファレンシャル装置17に伝達される。
また、エンジン1から主入力軸11およびカウンタ軸14を経て後進軸15に伝達される動力は、後進用のファイナルドライブギヤ15Bからディファレンシャル装置17に伝達される。
図2に示すように、ディファレンシャル装置17は、左側壁5Aに対して隔壁4A側に設置されており、右側の部分がライトケース4に入り込んでいる。
図2、図6に示すように、ディファレンシャル装置17は、ファイナルドリブンギヤ17Aと、ファイナルドリブンギヤ17Aが外周部に取付けられたデフケース17Bと、デフケース17Bに内蔵された差動機構17Cとを有する。
デフケース17Bの左端部には筒状部17aが設けられており、デフケース17Bの右端部には筒状部17bが設けられている。筒状部17a、17bには左右のドライブシャフト18L、18Rのそれぞれの一端部が挿通されている。
左右のドライブシャフト18L、18Rの一端部は、差動機構17Cに連結されており、左右のドライブシャフト18L、18Rの他端部は、それぞれ図示しない左右の駆動輪に連結されている。
ディファレンシャル装置17は、エンジン1の動力を差動機構17Cによって左右のドライブシャフト18L、18Rに分配して伝達し、左右のドライブシャフト18L、18Rから駆動輪に伝達する。
図7に示すように、レフトケース5の左側壁5Aには軸受支持部5B、5C、5D、5E、5Fが設けられている。
図6に示すように、主入力軸11の一端部側は、軸受22Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。主入力軸11の他端部は、軸受22Bを介して左側壁5A(図7参照)に回転自在に支持されている。
アイドル軸12の一端部は、軸受23Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。アイドル軸12の他端部は、軸受23Bを介して軸受支持部5C(図7参照)に回転自在に支持されている。
副入力軸13の一端部は、軸受24Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。副入力軸13の他端部は、軸受24Bを介して軸受支持部5D(図7参照)に回転自在に支持されている。
カウンタ軸14の一端部は、軸受25Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。カウンタ軸14の他端部は、軸受25Bを介して軸受支持部5E(図7参照)に回転自在に支持されている。
後進軸15の一端部は、軸受26Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。後進軸15の他端部は、軸受26Bを介して軸受支持部5F(図7参照)に回転自在に支持されている。
図3、図7のいずれかに示すように、主入力軸11(軸受支持部5B)は、アイドル軸12の後側斜め上方に設置されている。副入力軸13(軸受支持部5D)は、アイドル軸12(軸受支持部5C)の後側で、かつ、主入力軸11の下方に設置されており、アイドル軸12に対して後側斜め下方に位置している。
カウンタ軸14(軸受支持部5E)は、アイドル軸12の後方で、かつ、上下方向で主入力軸11と副入力軸13の間に設置されている。後進軸15(軸受支持部5F)は、カウンタ軸14の後斜め上方に設置されており、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14よりも上方に設置されている。
本実施例の主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14および後進軸15は、本発明の回転軸を構成する。入力ギヤ11A、11B、11C、11D、アイドルギヤ12A、12B、リダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13B、カウンタギヤ14A、14B、14C、14D、リダクションドリブンギヤ14Eおよび後進ギヤ15Aは、本発明のギヤを構成する。
また、軸11から軸15と、これら軸11から軸15に設けられた上述したギヤと、同期装置31、32、33とは、エンジン1の動力(回転速度)を変速する変速機構6を構成する。
図7に示すように、軸受支持部5Bの上部には切り欠き5bが形成されており、切り欠き5bは、軸受支持部5Bの内部と外部とを連通している。軸受支持部5Cの上部には切り欠き5cが形成されており、切り欠き5cは、軸受支持部5Cの内部と外部とを連通している。
軸受支持部5Bと軸受支持部5Eには切り欠き5mが形成されている。具体的には、軸受支持部5Eの前斜め上部と、軸受支持部5Bの後斜め下部と、軸受支持部5Eの前斜め上部と軸受支持部5Bの後斜め下部の間には切り欠き5mが形成されており、軸受支持部5Bの内部と軸受支持部5Eの内部は、切り欠き5mによって連通されている。
図1から図5に示すように、変速機ケース3にはキャッチタンク35とオイルガター41が設置されている。
図2、図3に示すように、オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aの前方で、かつ、後進軸15よりも上方に設置されている。オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを捕捉して一時的に貯留する。
図2、図4に示すように、キャッチタンク35は、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向(前後方向)において、オイルガター41に対してファイナルドリブンギヤ17Aと反対側に位置している。キャッチタンク35は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを一時的に貯留する。
ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられるオイルが飛散する方向である。
図1に示すように、キャッチタンク35は、箱型に形成されたオイル貯留部35Aを有し、オイル貯留部35Aの上方には開口部35aが形成されている。キャッチタンク35は、オイル導入部35Bを有し、オイル導入部35Bは、オイル貯留部35Aから後方に延びている。キャッチタンク35は、ボルト10Cによってライトケース4の隔壁4Aに取り付けられている。
ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、オイル導入部35Bに捕捉され、オイル導入部35Bによって前方に案内されて開口部35aを通してオイル貯留部35Aに導入される。また、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、開口部35aに直接導入される。
オイル貯留部35Aの底部には図示しないオイル排出口が形成されており、オイル排出口は、オイル貯留部35Aからオイルを排出する。オイル排出口の開口面積は、開口部35aの開口面積よりも小さく形成されており、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、常時、オイル貯留部35Aに貯留される。
すなわち、キャッチタンク35は、車両の走行時にオイル排出口から排出されるオイル量がオイル貯留部35Aに貯留されるオイル量を超えることがなく、常時、オイルが貯留された状態を維持できる。
これにより、ファイナルドリブンギヤ17Aが漬かるオイルOの油面を低下させることができ、ファイナルドリブンギヤ17Aの攪拌抵抗を低減できる。本実施例のファイナルドリブンギヤ17Aは、本発明の回転体を構成する。
図3に示すように、オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aの前側で、かつ、後進軸15よりも上方に設置されており、オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを捕捉して一時的に貯留する。
図3において変速機ケース3を車幅方向の左方から見た場合に、ファイナルドリブンギヤ17Aは、車両の前進走行時に反時計周り(図5において変速機ケース3を車幅方向の方から見た場合に、時計周り)に回転する。
図2、図4に示すように、オイルガター41は、右側オイルガター42と、右側オイルガター42と別体に設けられた左側オイルガター43とを有する。本実施例の右側オイルガター42は、本発明の第1のオイルガターを構成し、左側オイルガター43は、本発明の第2のオイルガターを構成する。
右側オイルガター42は、底壁42Aを有する。底壁42Aは、ファイナルドリブンギヤ17Aの上方から後方に直線状に延びた後、左方に屈曲し、レフトケース5に向かって車幅方向に直線状に延びている。
右側オイルガター42は、側壁42B、42Cを有する。側壁42Bは、底壁42Aの幅方向の左端部と後端部から上方に突出し、底壁42Aの上流部から下流部に向かって延びている。
側壁42Cは、仕切壁42aと側壁42bとを有する。仕切壁42aは、底壁42Aの幅方向の右側から上方に突出し、底壁42Aの上流部から後方に向かって直線状に延びている。すなわち、仕切壁42aは、後述するオイル導入部42cからファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向に直線状に延びている。
側壁42bは、仕切壁42aの前端に連絡されるとともに、底壁42Aの前端から上方に突出し、仕切壁42aの前端から底壁42Aの下流部まで延びている。ここで、上流、下流とは、オイルの流れ方向に対して上流、下流を示し、オイルガター41に関しては、ファイナルドリブンギヤ17A側が上流、レフトケース5側が下流である。
右側オイルガター42の上流部は、オイル導入部42cを構成しており、オイル導入部42cにはファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルが導入される。
右側オイルガター42は、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向においてキャッチタンク35のオイル導入部35Bと重なっている。
右側オイルガター42の下流部は、オイル排出部42dを構成しており、右側オイルガター42は、オイル排出部42dから左側オイルガター43にオイルを排出する。左側オイルガター43の上流部は、オイル導入部43bを構成しており、右側オイルガター42から排出されたオイルは、オイル導入部43bから左側オイルガター43に導入される。
図5、図7に示すように、右側オイルガター42にはボルト10Aが締結される締結部42e、42fが設けられており、右側オイルガター42は、ボルト10Aが締結部42e、42fを介してライトケース4に締結されることにより、ライトケース4に取付けられている。
図1に示すように、左側オイルガター43は、右側オイルガター42と上下方向に離れて設置されており、右側オイルガター42のオイル排出部42dは、左側オイルガター43のオイル導入部43bの上方に位置している。
すなわち、右側オイルガター42のオイル排出部42dと左側オイルガター43のオイル導入部43bは、前後方向で重なっている。換言すれば、右側オイルガター42のオイル排出部42dと左側オイルガター43のオイル導入部43bは、上下方向に対向している。
本実施例のオイル排出部42dは、本発明の第1のオイルガターのオイルの流れ方向の下流部を構成し、オイル導入部43bは、本発明の第2のオイルガターのオイルの流れ方向の上流部を構成する。
図2、図4に示すように、左側オイルガター43は、底壁43Aと、底壁43Aの前端から上方に突出し、底壁43Aの車幅方向に沿って延びる前壁43Bと、底壁43Aの後端から上方に突出し、底壁43Aの車幅方向に沿って延びる後壁43Cとを有する。
図7に示すように左側オイルガター43にはボルト10Bが締結される締結部43aが設けられており、左側オイルガター43は、ボルト10Bが締結部43aを介してレフトケース5の左側壁5Aに締結されることにより、レフトケース5の左側壁5Aに取付けられている。
左側オイルガター43の下流部には第1のオイル供給部43Dと第2のオイル供給部43Eが設けられている。図7に示すように、第1のオイル供給部43Dは、底壁43Aから軸受支持部5Bの切り欠き5bまで延びている。第2のオイル供給部43Eは、底壁43Aから軸受支持部5Cの切り欠き5cまで延びている。
図4に示すように、右側オイルガター42は、仕切壁42aによって第1の油路部44Aと第2の油路部44Bに仕切られている。第1の油路部44Aは、仕切壁42aと底壁42Aとライトケース4の隔壁4Aとによって囲まれており、オイル導入部42cから前方に向かって直線状に延びている。
第1の油路部44Aの下流部は、キャッチタンク35のオイル導入部35Bに連通している。ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、オイル導入部42cから第1の油路部44Aを流れ、第1の油路部44Aからキャッチタンク35のオイル導入部35Bに導かれた後、開口部35aを通してオイル貯留部35Aに貯留される。
第2の油路部44Bは、側壁42Bと、仕切壁42aと仕切壁42aに連絡される側壁42bと、底壁42Aとによって囲まれている。これに加えて、第2の油路部44Bは、右側オイルガター42の底壁43Aと前壁43Bと後壁43Cとによって囲まれている。
すなわち、第2の油路部44Bは、第1の油路部44Aを除いた右側オイルガター42の部位と左側オイルガター43によって構成されている。
ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、オイル導入部42cから第2の油路部44Bを流れ、第2の油路部44Bから第1のオイル供給部43Dと第2のオイル供給部43Eに導入される。
第1のオイル供給部43Dに導入されたオイルは、第1のオイル供給部43Dから切り欠き5bを通して軸受支持部5Bの内部に導入され、主入力軸11を回転自在に支持する軸受22Bを潤滑する(図7のオイルO3参照)。
また、軸受支持部5Bの内部に導入されたオイルO3は、主入力軸11の軸方向に延びるオイル通路11a(図6参照)に導入される。
オイル通路11aに導入されたオイルO3は、回転する主入力軸11の遠心力によって主入力軸11に形成された図示しない放射孔を通してオイル通路11aの外部に排出され、主入力軸11にスプライン嵌合されている入力ギヤ11C、11Dのスプラインを潤滑する。
また、軸受支持部5Bの内部に導入されたオイルO3は、切り欠き5mを通して軸受支持部5Eの内部に導入される。軸受支持部5Eの内部に導入されたオイルは、カウンタ軸14の回転自在に支持する軸受25Bを潤滑する(図7のオイルO4参照)。
一方、第2のオイル供給部43Eに導入されたオイルは、切り欠き5cを通して軸受支持部5Cの内部に導入され、アイドル軸12を回転自在に支持する軸受23Bを潤滑する(図7のオイルO5参照)。
本実施例の軸受22B、23B、25Bおよび入力ギヤ11C、11Dは、本発明の被潤滑部位を構成する。
図5、図6に示すように、後進ギヤ15Aは、ファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合う後進用のファイナルドライブギヤ15Bよりも大径に形成されている。
図5に示すように、後進軸15は、オイル導入部42cの下方に設置されており、オイル導入部42cは、ファイナルドリブンギヤ17Aとファイナルドライブギヤ15Bの噛み合い部46に対してファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向(前後方向)でキャッチタンク35側に位置している。
すなわち、オイル導入部42cは、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられるオイルの流れ方向に対して噛み合い部46よりも下流側に設置されている。
図2、図4に示すように、後進ギヤ15Aは、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lの方向(以下、軸心方向という)でファイナルドリブンギヤ17Aに対して隔壁4Aと反対側に設置されている。換言すれば、ファイナルドリブンギヤ17Aは、後進軸15の軸方向で隔壁4Aと後進ギヤ15Aの間に設置されている。なお、軸方向と軸心方向とは同一方向である。
図4、図5に示すように、後進ギヤ15Aは、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心方向でオイル導入部42cと噛み合い部46に対向している。換言すれば、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心方向でオイル導入部42cと噛み合い部46は、後進ギヤ15Aの外周縁に対して放射方向の内方に設置されている。
次に、本実施例の変速機2の効果を説明する。
本実施の形態の変速機2は、隔壁4Aを有するライトケース4と、隔壁4Aに対向する左側壁5Aを有するレフトケース5とを備え、エンジン1に連結される変速機ケース3を有する。
また、変速機2は、一端部がライトケース4に回転自在に支持されるとともに、他端部がレフトケース5に回転自在に支持される主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14および後進軸15と、これら軸11から軸15に設けられたギヤとを有し、エンジン1の動力を変速する変速機構6を有する。
これに加えて、変速機2は、変速機ケース3に収容され、変速機ケース3の底部に貯留されるオイルOを掻き上げるファイナルドリブンギヤ17Aと、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを捕捉し、変速機構6の被潤滑部位に導くオイルガター41とを備えている。
オイルガター41は、隔壁4Aに取付けられた右側オイルガター42と、左側壁5Aに取付けられた左側オイルガター43とを有し、右側オイルガター42と左側オイルガター43は、上下方向に離れて設置されている。
これにより、右側オイルガター42をライトケース4の隔壁4Aに取付け、左側オイルガター43をレフトケース5の左側壁5Aに取付け、ライトケース4とレフトケース5をボルトによって連結することにより、右側オイルガター42と左側オイルガター43を変速機ケース3に組付けることができる。
また、右側オイルガター42と左側オイルガター43は、上下方向に離れて設置されているので、ライトケース4をレフトケース5に組付ける際に、右側オイルガター42と左側オイルガター43が衝突することを防止できる。
これに加えて、右側オイルガター42と左側オイルガター43が衝突しないようにライトケース4をレフトケース5に組付けることができるため、目視確認して組付けることや精度の高い組付けを不要にできる。
この結果、オイルガター41を変速機ケース3に組付ける作業を短時間で簡単に行うことができ、オイルガター41の組付作業の作業性を向上できる。
また、本実施例の変速機2によれば、右側オイルガター42のオイル排出部42dは、左側オイルガター43のオイル導入部43bの上方に位置し、右側オイルガター42のオイル排出部42dと左側オイルガター43のオイル導入部43bは、上下方向に対向している。
これにより、ライトケース4をレフトケース5に組付ける際に、右側オイルガター42と左側オイルガター43が衝突することを確実に防止できる。これに加えて、右側オイルガター42と左側オイルガター43が衝突しないようにライトケース4をレフトケース5に組付けることができるため、目視確認して組付けることや精度の高い組付けを確実に不要にできる。
また、右側オイルガター42のオイル排出部42dから左側オイルガター43のオイル導入部43bにオイルを円滑に流す(受け渡しする)ことができ、変速機構6の被潤滑部位の潤滑性能をより効果的に向上できる。
また、本実施例の変速機2は、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向において、オイルガター41に対してファイナルドリブンギヤ17Aと反対側に位置し、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを一時的に貯留するキャッチタンク35を有する。
キャッチタンク35は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルが導入されるオイル導入部35Bを有し、オイル導入部35Bは、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向において右側オイルガター42と重なっている。
オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルが導入されるオイル導入部42cと、オイル導入部42cに導入されたオイルをキャッチタンク35のオイル導入部35Bに導く第1の油路部44Aと、オイル導入部42cに導入されたオイルを左側壁5A側に導く第2の油路部44Bとを有する。
これに加えて、オイルガター41の第2の油路部44Bのオイルの流れ方向の下流部に、変速機構6の被潤滑部位にオイルを供給する第1のオイル供給部43Dおよび第2のオイル供給部43Eが設けられている。
これにより、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを第1の油路部44Aによってキャッチタンク35のオイル導入部35Bに導き、開口部35aを通してオイル貯留部35Aに貯留できる(図4のオイルO1参照)。
一方、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを第2の油路部44Bによって左側壁5A側に案内できる(図4のオイルO2参照)。すなわち、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、右側オイルガター42によって左側オイルガター43に案内される。
右側オイルガター42の下流部に案内されたオイルは、右側オイルガター42のオイル排出部42dから左側オイルガター43に落下された後、左側オイルガター43によって第1のオイル供給部43Dと第2のオイル供給部43Eに導入される。
第1のオイル供給部43Dに導入されたオイルは、第1のオイル供給部43Dから切り欠き5bを通して軸受支持部5Bの内部に導入されることにより、被潤滑部位を構成する軸受22Bと入力ギヤ11C、11Dが潤滑される。
また、軸受支持部5Bの内部に導入されたオイルは、切り欠き5mを通して軸受支持部5Eの内部に導入され、被潤滑部位を構成する軸受25Bを潤滑する。
また、第2のオイル供給部43Eに導入されたオイルは、切り欠き5cを通して軸受支持部5Cの内部に導入されることにより、被潤滑部位を構成する軸受23Bが潤滑される。
このように本実施例の変速機2は、右側オイルガター42のオイル導入部42cに導入されたオイルを仕切壁42aによって第1の油路部44Aを流れるオイルO1と第2の油路部44Bを流れるオイルO2に分配できる。
このため、オイルガター41を利用してキャッチタンク35へのオイルの貯留と、被潤滑部位の潤滑とを行うことができる。したがって、被潤滑部位の潤滑を行いつつ、ファイナルドリブンギヤ17Aが漬かるオイルOの油面を低下させることができ、ファイナルドリブンギヤ17Aの攪拌抵抗を低減できる。この結果、エンジン1の燃費を向上できる。
また、本実施例の変速機2によれば、オイルガター41は、オイルガター41を第1の油路部44Aと第2の油路部44Bに仕切る仕切壁42aを有し、仕切壁42aは、オイル導入部42cからファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向に直線状に延びている。
このため、第1の油路部44Aを流れるオイルを仕切壁42aに沿ってキャッチタンク35側に円滑に流すことができる。したがって、キャッチタンク35にオイルを効率よく貯留できる。
また、本実施例の変速機2によれば、後進軸15は、ファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合うファイナルドライブギヤ15Bと、ファイナルドライブギヤ15Bよりも大径の後進ギヤ15Aとを有する。
後進ギヤ15Aは、オイル導入部42cがファイナルドリブンギヤ17Aとファイナルドライブギヤ15Bの噛み合い部46に対してファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向でキャッチタンク35側に位置するように、オイル導入部42cの下方に設置されている。
後進ギヤ15Aは、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心方向でファイナルドリブンギヤ17Aに対して隔壁4Aと反対側に設置されており、後進ギヤ15Aは、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心方向でオイル導入部42cと噛み合い部46に対向している。
これにより、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを後進ギヤ15Aに衝突させて(図4のオイルO6参照)、後進軸15の軸方向に飛散することを防止できる。
すなわち、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられるオイルの勢いは、噛み合い部46の付近がオイルの掻き上げる方向の上流側となるため、最も強い。このため、噛み合い部46の付近からファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられる勢いの強いオイルを後進ギヤ15Aに衝突させることにより、後進軸15の軸方向に飛散することを防止できる。
したがって、オイルが入力ギヤ11B、11C、11D等に衝突することを防止でき、入力ギヤ11B、11C、11D等の攪拌抵抗が増大することを防止できる。この結果、エンジン1の燃費をより効果的に低減できる。
また、噛み合い部46の付近からファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられる勢いの強いオイルを後進ギヤ15Aに衝突させることにより、オイル導入部42cに向かって飛散(指向)させることができる(図4のオイルO6参照)。
これに加えて、車両の前進走行時に後進ギヤ15Aは、後進軸15に対して図5の反時計周りに連れ回る(空転する)ため、後進ギヤ15Aに衝突したオイルを後進ギヤ15Aの回転によってオイル導入部42cに向かって飛散させることができる。
このため、オイルガター41から被潤滑部位により多くのオイルを供給でき、被潤滑部位をより効果的に潤滑できるとともに、キャッチタンク35にオイルを一時的に貯留することでファイナルドリブンギヤ17Aが漬かるオイルOの油面をより効果的に低下させることができる。
また、ファイナルドリブンギヤ17Aとファイナルドライブギヤ15Bの噛み合い部46で掻き落とされたオイルを後進ギヤ15Aの回転によってオイル導入部42cに向かって飛散させることができる。
このため、オイルガター41から被潤滑部位により多くのオイルを供給でき、被潤滑部位をより効果的に潤滑できるとともに、キャッチタンク35にオイルを一時的に貯留することでファイナルドリブンギヤ17Aが漬かるオイルOの油面をより効果的に低下させることができる。
また、本実施例のオイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを被潤滑部位に供給するまでオイルを一時的に貯留する。このため、オイルガター41にオイルを貯留できる分だけ、キャッチタンク35のオイル貯留部35Aの容量を増大させる必要がない。したがって、キャッチタンク35の小型化を図ることができ、変速機2の小型化を図ることができる。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。