本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るエキスパンド装置を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るエキスパンド装置の加工対象のワークユニットの一例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係るエキスパンド装置の構成例を模式的に示す断面図である。図3は、図2に示されたエキスパンド装置の封鎖ユニットを断面で示す斜視図である。図4は、図2に示されたエキスパンド装置の封鎖ユニットの断面図である。
実施形態1に係るエキスパンド装置は、図1に示すワークユニット200のワーク201を個々のチップ202に分割する装置である。実施形態1では、加工対象のワークユニット200は、図1に示すように、ワーク201と、エキスパンドシート210と、環状フレーム211とを備える。
実施形態1では、ワーク201は、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素又はSiC(炭化ケイ素)などを基板203とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。ワーク201は、図1に示すように、表面204の互いに交差する複数の分割予定ライン205で区画された各領域にそれぞれデバイス206が形成されている。ワーク201は、エキスパンドシート210上に貼着され、表面204の裏側の裏面207側から基板203に対して透過性を有する波長のレーザー光線が分割予定ライン205に沿って照射されて、基板203の内部に分割予定ライン205に沿った分割起点である改質層208が形成されている。
エキスパンドシート210は、伸縮性を有する合成樹脂で構成され、ワーク201の外径よりも外径が大きな円盤状に形成されている。また、エキスパンドシート210は、加熱されると収縮する熱収縮性も有する。エキスパンドシート210は、中央にワーク201の裏面207を貼着している。環状フレーム211は、内径がワーク201の外径よりも大きな環状に形成され、エキスパンドシート210の外周側が貼着されて、内側の開口にワーク201を支持している。
ワーク201は、改質層208を分割起点に分割予定ライン205に沿って個々のチップ202に分割される。チップ202は、基板203の一部分と、基板203の表面に形成されたデバイス206とを備える。
なお、改質層208とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。実施形態1では、改質層208は、基板203の他の部分よりも機械的な強度が低い。
また、実施形態1では、ワークユニット200は、ワーク201の基板203の裏面207とエキスパンドシート210との間に円板状のDAF(Die Attach Film)212が貼着されている。DAF212は、チップ202を他のチップ又は基板等に固定するためのダイボンディング用の接着フィルムである。実施形態1では、DAF212は、ワーク201の外径よりも大径でかつ環状フレーム211の内径よりも小径な円板状に形成されている。DAF212は、個々のチップ202毎に分割される。分割後のチップ202において、DAF212は、チップ202の基板203の裏面207に積層される。
実施形態1に係るエキスパンド装置1は、ワークユニット200のエキスパンドシート210を拡張して、ワーク201を個々のチップ202に分割するとともに、DAF212をチップ202毎に分割する装置である。エキスパンド装置1は、図2に示すように、チャンバ10と、環状のフレーム保持部20と、冷却テーブル30と、拡張手段である拡張ユニット40と、加熱手段である加熱ユニット50と、封鎖ユニット90と、制御手段である制御ユニット100とを備える。
チャンバ10は、箱状に形成され、フレーム保持部20と、冷却テーブル30と、拡張ユニット40と、加熱ユニット50と、封鎖ユニット90とを収容している。チャンバ10は、側壁11に開口12を設け、開口12を通して、ワークユニット200が出し入れされる。なお、開口12は、開閉扉13により開閉される。
フレーム保持部20は、ワークユニット200のワーク201をエキスパンドシート210よりも下に向けるとともに、エキスパンドシート210をワーク201よりも上に向けた状態で、ワークユニット200の環状フレーム211を保持して、固定するものである。フレーム保持部20は、フレーム載置プレート21と、フレーム押さえプレート22とを備える。フレーム載置プレート21は、内径が環状フレーム211の内径よりも若干小さくかつワーク201及びDAF212の外径よりも大きいとともに、外径が環状フレーム211の外径よりも若干大きな円環状に形成され、上面23が水平方向と平行に平坦に形成されている。フレーム載置プレート21は、上面23にワークユニット200の環状フレーム211が載置される。
また、フレーム載置プレート21は、拡張ユニット40の昇降用シリンダ42により昇降自在に設けられている。フレーム載置プレート21は、昇降用シリンダ42のロッド45の先端が取り付けられて、ロッド45が伸縮することで、チャンバ10内で鉛直方向に沿って昇降する。なお、実施形態1では、フレーム載置プレート21は、昇降用シリンダ42により図2に示す上面23が開口12の下縁よりも若干上方に位置する位置から上昇される。
フレーム押さえプレート22は、内径がフレーム載置プレート21の内径よりも小さくかつワーク201及びDAF212の外径よりも大きいとともに、外径が環状フレーム211の外径よりも若干大きな円環状に形成され、下面24が水平方向と平行に平坦に形成されている。フレーム押さえプレート22は、フレーム載置プレート21と同軸となる位置に設けられ、実施形態1では、フレーム載置プレート21よりも上方に配置される。実施形態1では、フレーム載置プレート21は、下面24が開口12の上縁よりも若干下方に位置する位置に配置されて、下方に位置するフレーム載置プレート21と間隔をあけて配置されている。
実施形態1では、フレーム載置プレート21は、チャンバ10内において、スライド支持部材25により昇降自在に支持されている。実施形態1では、フレーム載置プレート21は、図2に示す下面24が開口12の上縁よりも若干下方に位置する位置からスライド支持部材25により鉛直方向に沿って上昇可能に支持されている。
フレーム保持部20は、昇降用シリンダ42により下方に位置付けられたフレーム載置プレート21の上面23に開口12を通してチャンバ10内に挿入されたワークユニット200の環状フレーム211が載置される。フレーム保持部20は、上面23に環状フレーム211が載置されたフレーム載置プレート21が昇降用シリンダ42により上昇させて、フレーム載置プレート21とフレーム押さえプレート22との間に環状フレーム211及びエキスパンドシート210の外周側を挟んで、環状フレーム211を保持するとともに、環状フレーム211及びエキスパンドシート210の外周側を挟んだ位置からフレーム載置プレート21とフレーム押さえプレート22とを上昇する。また、実施形態1では、フレーム保持部20は、エキスパンドシート210のとの間をシールするシール部材26をフレーム押さえプレート22の下面24の全周に亘って取り付けている。
また、実施形態1では、フレーム保持部20のフレーム押さえプレート22の下面24のシール部材26の内周側には、フレーム押さえプレート22の内部に設けられた供給路60、ボルテックスチューブ64、開閉弁61を介して、圧縮エアー供給源62から圧縮エアーが供給される圧縮エアー吹き出し口63が設けられている。圧縮エアー吹き出し口63は、フレーム押さえプレート22の全周に亘って設けられている。
冷却テーブル30は、ワーク201に対応した大きさの当接面31を含み、フレーム保持部20で保持された環状フレーム211を含むワークユニット200のエキスパンドシート210に当接するものである。冷却テーブル30は、厚手の円板状のテーブル本体32と、テーブル本体32を冷却する冷却ユニット33と、テーブル昇降ユニット34と、を備える。
テーブル本体32は、実施形態1では、アルミニウム合金により構成され、外径がフレーム押さえプレート22の内径よりも小さく形成され、フレーム押さえプレート22の内周のフレーム押さえプレート22と同軸となる位置に配置されている。テーブル本体32の下面は、外径がワーク201の大きさである外径と対応した当接面31である。実施形態1では、テーブル本体32の外径は、DAF212の外径と等しいことで、下面である当接面31の外径が、ワーク201の大きさである外径と対応している。テーブル本体32の当接面31は、フレーム保持部20により環状フレーム211が保持されたワークユニット200のエキスパンドシート210及びDAF212を介してワーク201の裏面207と対向する。
また、テーブル本体32の当接面31には、テーブル本体32内に設けられ吸引路70及び開閉弁71を介してエジェクタ等の吸引源72と接続した吸引孔35が複数開口している。テーブル本体32は、吸引路70及び開閉弁71を介して吸引孔35が吸引源72により吸引されることで、エキスパンドシート210及びDAF212を介してワーク201の裏面207側を当接面31に吸引保持することが可能である。
実施形態1では、冷却ユニット33は、テーブル本体32の上面の中央部に設けられ、テーブル本体32即ち当接面31を冷却するものである。実施形態1では、冷却ユニット33は、テーブル本体32を冷却可能なピストンクーラーであるが、本発明では、ピストンクーラーに限定されない。
テーブル昇降ユニット34は、図示しないモータ、モータにより回転するボールネジ等で構成され、テーブル本体32及び冷却ユニット33をチャンバ10内で昇降させる。
また、実施形態1において、冷却テーブル30のテーブル本体32及び冷却ユニット33は、テーブルカバー36により覆われている。テーブルカバー36は、テーブル本体32を保冷するものであり、実施形態では、テーブル本体32の外周面と間隔をあけて外周面を覆う円筒状の大径円筒部37と、外縁が大径円筒部37に連なりかつテーブル本体32の上面と間隔をあけて上面を覆うリング状の円環部38と、円環部38の内縁に連なりかつ冷却ユニット33の外周面と間隔をあけて外周面を覆う円筒状の小径円筒部39とを一体に備え、テーブル本体32及び冷却ユニット33と同軸に配置されている。テーブルカバー36は、テーブル本体32及び冷却ユニット33と一体にテーブル昇降ユニット34により昇降される。
なお、実施形態1は、冷却テーブル30とテーブルカバー36との間には、供給路80、開閉弁81を介して、圧縮エアー供給源82から圧縮エアーが供給される。
拡張ユニット40は、フレーム保持部20で保持された環状フレーム211に貼着されたエキスパンドシート210を拡張するものである。拡張ユニット40は、チャンバ10に固定された拡張ドラム41と、フレーム載置プレート21を昇降させる昇降用シリンダ42とを備える。
拡張ドラム41は、円筒状のドラム部43を備える。ドラム部43は、内径がテーブルカバー36の大径円筒部37の外径よりも大きく、外径がフレーム押さえプレート22の内径よりも小さく形成されている。ドラム部43は、テーブル本体32の大径円筒部37の外周側でかつフレーム押さえプレート22の内周側に配置されて、フレーム保持部20及び冷却テーブル30と同軸に配置されている。拡張ドラム41のドラム部43の下端には、下方に位置するフレーム押さえプレート22の下面24と同一平面上に設けられかつ軸心回りに回転自在に設けられた円柱状のコロ部材44が取り付けられている。
拡張ドラム41のドラム部43の下端に取り付けられたコロ部材44は、昇降用シリンダ42によりワークユニット200の環状フレーム211を保持したフレーム保持部20のフレーム載置プレート21とフレーム押さえプレート22とが上昇されると、フレーム保持部20で保持された環状フレーム211を含むワークユニット200のワーク201の外周縁と環状フレーム211の内周縁との間のエキスパンドシート210に当接し、エキスパンドシート210を下方に向かって押圧する。このために、コロ部材44は、特許請求の範囲に記載された押圧部材である。
また、コロ部材44は、昇降用シリンダ42によりフレーム載置プレート21が下降されると、フレーム保持部20のフレーム載置プレート21に対して相対的にフレーム載置プレート21より上方の退避位置に配設される。こうして、コロ部材44は、昇降用シリンダ42によりフレーム載置プレート21が昇降されることで、退避位置と、ワークユニット200のワーク201の外周縁と環状フレーム211の内周縁との間のエキスパンドシート210を押圧する押圧位置とに亘って、フレーム保持部20に対して相対的に移動する。
また、昇降用シリンダ42は、フレーム載置プレート21を昇降することで、コロ部材44をフレーム保持部20に対して相対的に、退避位置と、押圧位置とに亘って移動させる移動ユニットである。このために、移動ユニットである昇降用シリンダ42は、フレーム載置プレート21を上昇することで、コロ部材44をフレーム保持部20に対して相対的に退避位置から押圧位置へと移動させることとなる。
加熱ユニット50は、フレーム保持部20で保持されエキスパンドシート210が拡張されたワークユニット200のワーク201の外周縁と環状フレーム211の内周縁との間のエキスパンドシート210を加熱し、収縮するものである。加熱ユニット50は、ヒータプレート51と、複数の温風噴射部52とを備える。
ヒータプレート51は、外径がフレーム押さえプレート22の内径と等しい円板状に形成され、フレーム載置プレート21の内周側でかつフレーム保持部20及び冷却ユニット33と同軸に配置されている。ヒータプレート51は、上面が水平方向と平行でかつ下方に位置するフレーム載置プレート21の下面よりも下方に配置されている。ヒータプレート51は、チャンバ10に取り付けられたヒータプレート回転用モータ54により軸心回りに回転される。
複数の温風噴射部52は、フレーム保持部20で保持されエキスパンドシート210が拡張されたワークユニット200のワーク201の外周縁と環状フレーム211の内周縁との間のエキスパンドシート210に対面して、温風300(図9に示す)を噴射するものである。複数の温風噴射部52は、ヒータプレート51の上面の外縁部に周方向に等間隔に設けられて、フレーム保持部20で保持されエキスパンドシート210が拡張されたワークユニット200のワーク201の外周縁と環状フレーム211の内周縁との間のエキスパンドシート210に対面する。
温風噴射部52は、上部に開口部が設けられた有底筒状の噴射部本体521と、噴射部本体521内に収容された加熱部であるコイルヒータ522と、噴射部本体521内に供給路523及び開閉弁524を介してエアーを供給するエアー供給源525とを備える。コイルヒータ522は、スイッチが閉じることで直流電源から電力が供給されて発熱する。温風噴射部52は、開閉弁524が開いてエアー供給源525が、噴射部本体521内にエアーを供給し、供給されたエアーがコイルヒータ522により加熱され、開口部から温風300を噴射する。
封鎖ユニット90は、押圧位置に位置付けられたコロ部材44よりも下方に配置され、冷却テーブル30と鉛直方向に対面して環状フレーム211を保持したフレーム保持部20のフレーム載置プレート21の内周側の開口27を塞ぐ封鎖面922を有している。封鎖ユニット90は、フレーム保持部20で環状フレーム211が固定されたワークユニット200のエキスパンドシート210と、フレーム保持部20と、封鎖面922と、でワーク201を収容する閉鎖空間400(図6に示す)を形成するものである。
封鎖ユニット90は、図3及び図4に示すように、基台部91と、粘着層92とを備える。基台部91は、外径がフレーム載置プレート21の内径よりも若干小さな円盤状に形成され、互いに同軸に配置されたシャッタプレート93と湾曲プレート94とを備えている。
シャッタプレート93は、温風噴射部52の上方でかつフレーム載置プレート21の内周側にフレーム保持部20及び冷却ユニット33と同軸に配置されている。シャッタプレート93は、ヒータプレート51に取り付けられたシャッタプレート回転用モータ55により軸心回りに回転される。なお、実施形態1では、シャッタプレート93即ち封鎖ユニット90は、シャッタプレート回転用モータ55に永久磁石により着脱自在である。また、シャッタプレート93は、外縁部に温風噴射部52を露出させることが可能な開口部95を設けている。開口部95は、シャッタプレート93の外縁部に周方向に等間隔に複数設けられている。開口部95は、温風噴射部52と1体1で対応し、温風噴射部52と同数設けられている。
湾曲プレート94は、フレーム保持部20に保持されたワークユニット200のワーク201と複数の温風噴射部52との間に配設され、ワーク201に向かって気体であるエアーを噴出する噴出口97を中央に有し、温風噴射部52から噴射された温風300の基台部91と冷却テーブル30との間への侵入を抑制するものである。湾曲プレート94は、フレーム保持部20及び冷却ユニット33と同軸に配置されているとともに、シャッタプレート93の上面に固定されている。
湾曲プレート94は、シャッタプレート93の上面に固定されていることで、フレーム保持部20に保持されたワークユニット200のワーク201と対面する。実施形態1において、湾曲プレート94は、外縁部に開口部95と連通した開口部96を設けている。開口部96は、湾曲プレート94外縁部に周方向に等間隔に複数設けられている。開口部96は、温風噴射部52及び開口部95と1体1で対応し、温風噴射部52及び開口部95と同数設けられている。開口部96は、シャッタプレート93に設けられた開口部95よりも平面形状が大きく形成されている。開口部96は、図3及び図4に示すように、内側にシャッタプレート93の上面の開口部95の周り931を露出させる。湾曲プレート94は、中央の厚みが最小でかつ外周縁に向かうにしたがって徐々に厚みが厚くなるように湾曲している。
粘着層92は、湾曲プレート94の上面に積層され、表面が冷却テーブル30と鉛直方向に対面している。粘着層92は、噴出口97が貫通し、開口部96が開口している。粘着層92の上面は、環状フレーム211を保持したフレーム保持部20のフレーム載置プレート21の内周側の開口27を塞ぐ封鎖面922をなしている。粘着層92の封鎖面922は、粘着性を有している。実施形態1において、粘着層92は、合成樹脂からなる基材層の両表面に粘着性を有する粘着剤層が積層された両面テープにより構成され、一方の粘着剤層が湾曲プレート94の上面に貼着され、他方の粘着剤層により粘着性を有している。粘着層92を構成する両面テープは、湾曲プレート94の上面から剥がすことが可能である。粘着層92は、両面テープが湾曲プレート94の上面から剥がすことが可能であることにより基台部91から着脱自在に配設されている。また、本発明では、粘着層92はあ、複数枚の粘着シートが積層されても良く、この場合、破断屑などの異物が付着した粘着シートが上から順に剥離されても良い。
実施形態1において、噴出口97は、図3に示すように、湾曲プレート94の中央と粘着層92とを貫通し、供給路971及び開閉弁972を介してエアー供給源973からのエアーが供給される。エアー供給源973から供給されかつ噴出口97から噴出されたエアーは、封鎖ユニット90の封鎖面922が前述したように湾曲しているので、封鎖面922とワーク201との間に留まろうとして、封鎖面922とワーク201との間に温風噴射部52から噴射された温風300が侵入することを抑制する。
また、封鎖ユニット90は、図3及び図4などに示すように、シャッタプレート93の上面の開口部95に周り931に開口する吸引口98が形成されている。吸引口98は、シャッタプレート93の上面の開口部95に周り931に開口して、フレーム保持部20に保持されたワークユニット200のワーク201よりも外周側に開口している。実施形態1では、吸引口98は、湾曲プレート94の開口部96の内縁に沿って設けられている。吸引口98は、一部がシャッタプレート93の内部に径方向に沿って設けられた吸引路981及び開閉弁982を介して吸引源983に接続している。吸引路981は、供給路971とは遮断されている。吸引口98は、吸引源983により吸引されることで、閉鎖空間400内で閉鎖空間400の外周縁に下向きの気流401(図6などに示す)を生成する。
また、吸引口98は、閉鎖空間400の外周縁に下向きの気流401を生成することで、温風噴射部52から噴射された温風300を吸引して、封鎖面922とワーク201との間に温風噴射部52から噴射された温風300が侵入することを抑制する。また、吸引口98は、下向きの気流401を生成しても、フレーム保持部20に保持されたワークユニット200のワーク201よりも外周側に開口しているので、ワーク201が改質層208を分割起点に分割された際に生じる破断屑を吸い込むことを抑制できる。
制御ユニット100は、エキスパンド装置1の構成要素をそれぞれ制御して、ワークユニット200に対する加工動作をエキスパンド装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、エキスパンド装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してエキスパンド装置1の構成要素に出力する。
制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
次に、本明細書は、前述したエキスパンド装置1の加工動作を説明する。図5は、図2に示されたエキスパンド装置のフレーム載置プレートにワークユニットの環状フレームが載置された状態を模式的に示す断面図である。図6は、図5に示されたエキスパンド装置のフレーム保持部が環状フレームを固定した状態を模式的に示す断面図である。図7は、図6に示されたエキスパンド装置のフレーム載置プレートを上昇させてエキスパンドシートを拡張した状態を模式的に示す断面図である。図8は、図7に示されたエキスパンド装置の要部を模式的に示す断面図である。図9は、図7に示されたエキスパンドシートを加熱、収縮する状態を模式的に示す断面図である。
前述した構成のエキスパンド装置1は、制御ユニット100に加工内容情報が登録され、加工開始指示を受け付けると加工動作を開始する。加工動作では、エキスパンド装置1は、フレーム載置プレート21を下降し、冷却テーブル30のテーブル本体32の当接面31をフレーム押さえプレート22の下面24よりも上方に位置付ける。エキスパンド装置1は、開閉弁61,71,81,972,524を閉じて、冷却ユニット33でテーブル本体32を冷却する。
また、エキスパンド装置1は、開閉弁982を開いて、吸引口98から吸引し、回転用モータ54,55を制御して開口部95,96を温風噴射部52の上方に位置付けずに、温風噴射部52の開口部を封鎖ユニット90で塞ぐ。また、エキスパンド装置1は、スイッチを閉じてコイルヒータ522に直流電源からの電力を供給して、コイルヒータ522を発熱した状態で、開閉扉13により開口12を開放する。エキスパンド装置1は、開口12を通して、ワークユニット200がチャンバ10内に挿入され、図5に示すように、チャンバ10内に挿入されたワークユニット200の環状フレーム211がフレーム載置プレート21の上面23に載置される。
エキスパンド装置1は、開閉扉13により開口12を閉じ、開閉弁61,81を開いて、圧縮エアー吹き出し口63から圧縮エアーを吹き出すとともに、圧縮エアー供給源82からの圧縮エアーをテーブル本体32及び冷却ユニット33とテーブルカバー36との間に供給する。エキスパンド装置1は、昇降用シリンダ42のロッド45を伸張して、フレーム載置プレート21を上昇するとともに、テーブル昇降ユニット34により冷却テーブル30のテーブル本体32等を下降する。
エキスパンド装置1は、図6に示すように、下方に位置するフレーム押さえプレート22とフレーム載置プレート21との間に環状フレーム211及びエキスパンドシート210の外周側を挟んで保持するとともに、当接面31をシール部材26の下面と同一平面上に位置付けて、エキスパンドシート210に貼着されたDAF212に近付ける。エキスパンド装置1は、フレーム押さえプレート22とフレーム載置プレート21との間に環状フレーム211及びエキスパンドシート210の外周側を挟んでフレーム保持部20がワークユニット200を保持すると、フレーム保持部20で環状フレーム211が固定されたワークユニット200のエキスパンドシート210とフレーム保持部20と封鎖ユニット90とでワーク201を収容する閉鎖空間400を形成する。
エキスパンド装置1は、フレーム載置プレート21を更に上昇するとともに、エキスパンドシート210が当接面31に接触するタイミングで、テーブル昇降ユニット34により冷却テーブル30のテーブル本体32等を上昇する。なお、エキスパンドシート210が当接面31に接触すると、DAF212は、エキスパンドシート210及びテーブル本体32を介して冷却ユニット33により冷却される。
エキスパンド装置1は、フレーム押さえプレート22は、環状フレーム211及びフレーム載置プレート21等から押圧されて上昇して、フレーム押さえプレート22の下面24がコロ部材44の下端よりも上方まで上昇し、テーブル昇降ユニット34により冷却テーブル30のテーブル本体32の当接面31をコロ部材44の下端と同一平面上に位置付ける。すると、図7に示すように、フレーム保持部20に保持されたワークユニット200のエキスパンドシート210がコロ部材44に当接して、エキスパンドシート210が面方向に拡張される。拡張の結果、エキスパンドシート210は、放射状に引張力が作用する。
このようにワーク201の裏面207に貼着されたエキスパンドシート210に放射状に引張力が作用すると、ワーク201は、分割予定ライン205に沿って改質層208が形成されているので、改質層208を分割基点として、分割予定ライン205に沿って個々のチップ202に分割される。また、ワーク201の裏面207に貼着されたDAF212は、ワーク201が個々のチップ202に分割される際に、エキスパンドシート210から作用する拡張方向の力がチップ202間に集中して、個々のチップ202毎に分割される。
また、エキスパンド装置1は、エキスパンドシート210を拡張して、ワーク201を個々のチップ202に分割する際に、破断屑を発生させる。エキスパンド装置1は、エキスパンドシート210を拡張して、ワーク201を個々のチップ202に分割する際に、図7及び図8に示すように、開閉弁982を開いて吸引口98から吸引しているので、閉鎖空間400の外周縁に下向きの気流401を生成している。このために、エキスパンド装置1は、エキスパンドシート210を拡張して、ワーク201を個々のチップ202に分割した際に発生した破断屑を気流401に沿って流して、個々のチップ202に分割されたワーク201に付着することを防止する。
このように、実施形態1において、エキスパンド装置1は、加工動作を開始直後から開閉弁982を開いて、吸引口98から吸引しているが、本発明では、これに限定されずに、少なくともエキスパンドシート210の拡張時に開閉弁982を開いて、吸引口98から吸引して、閉鎖空間400の外周縁に下向きの気流401を生成すれば良い。エキスパンド装置1は、昇降用シリンダ42のロッド45が伸張し終えると、開閉弁71を開いて、冷却テーブル30のテーブル本体32の当接面31にエキスパンドシート210を介してワーク201即ち個々に分割されたチップ202を吸引保持する。
エキスパンド装置1は、昇降用シリンダ42のロッド45を縮小して、フレーム載置プレート21をフレーム押さえプレート22とともに下降するとともに、テーブル昇降ユニット34により冷却テーブル30のテーブル本体32等をフレーム載置プレート21とともに下降する。エキスパンド装置1は、図9に示すように、開閉弁61を閉じて圧縮エアー吹き出し口63からの圧縮エアーの吹き出しを停止し、開閉弁972を開き、封鎖ユニット90の封鎖面922と冷却テーブル30のテーブル本体32の当接面31に吸引保持されたワーク201との間にエアーを供給する。また、エキスパンド装置1は、回転用モータ54,55を制御して、開口部95,96を温風噴射部52の上方に位置付ける。さらに、エキスパンド装置1は、回転用モータ54,55を制御して、開口部95,96を温風噴射部52の上方に位置付けた状態で、ヒータプレート51及び封鎖ユニット90を回転しながら、開閉弁524を開いて、温風300を温風噴射部52から噴射する。
そして、エキスパンド装置1は、フレーム載置プレート21等の下降とともに、エキスパンドシート210がコロ部材44から離れるので、ワーク201の外周側から環状フレーム211の内周縁との間のエキスパンドシート210に一旦拡張されていることで生じる弛み部に全周に割って温風300を吹き付け、弛み部を加熱収縮する。
なお、エキスパンド装置1は、ワーク201の外周側から環状フレーム211の内周縁との間のエキスパンドシート210を加熱収縮する際、エアー供給源973からエアーを湾曲プレート94とワーク201との間に供給する。このために、湾曲プレート94の上面が前述したように湾曲し、封鎖面922に噴出口97が形成されることで、封鎖面922とワーク201との間にエアー供給源973から供給されたエアーがたまる空気溜まり301を形成する。エキスパンド装置1は、空気溜まり301を形成し、吸引口98から吸引することで、温風300の空気溜まり301への侵入、即ち温風300によりワーク201及び冷却テーブル30のテーブル本体32の当接面31が加熱されることを抑制する。こうして、湾曲プレート94は、温風噴射部52から噴射された温風300の湾曲プレート94とワーク201との間に侵入することを抑制する。
エキスパンド装置1は、昇降用シリンダ42のロッド45が縮小し終えると、開閉弁71,81,972,524,982を閉じて、開閉扉13で開口12を開いて、ワーク201が個々のチップ202に分割され、DAF212が個々のチップ202毎に分割されたワークユニット200がチャンバ10外に搬出される。ワーク201が個々のチップ202に分割され、DAF212が個々のチップ202毎に分割されたワークユニット200は、エキスパンドシート210の拡張後、冷却テーブル30のテーブル本体32の当接面31に吸引保持された状態でエキスパンドシート210が加熱収縮されているので、分割されたチップ202同士が擦れることを抑制することができる。また、エキスパンド装置1は、図5から図9に示す工程を繰り返して、複数のワークユニット200を順に連続して、ワーク201を個々のチップ202に分割し、DAF212を個々のチップ202毎に分割する。
以上説明したように、実施形態1に係るエキスパンド装置1は、フレーム保持部20で環状フレーム211を保持したワークユニット200のエキスパンドシート210と、フレーム保持部20と、封鎖ユニット90と、でワーク201を収容する閉鎖空間400を形成し、少なくともエキスパンドシート210の拡張時に吸引口98から吸引することで閉鎖空間400内に下向きの気流401を生成する。その結果、エキスパンド装置1は、ワーク201に破断屑が付着するおそれを低減しうることができるという効果を奏する。
また、エキスパンド装置1は、封鎖ユニット90の封鎖面922が粘着性を有するので、封鎖面922へと落下した破断屑が再浮遊してワーク201に付着することが防止できる。特に、エキスパンド装置1は、破断屑がDAF212の一部分を含んでいる場合には、装置内に破断屑が付着すると固着してしまうので除去が難しいが、粘着層92が基台部91に着脱自在に配設されているので、粘着層92を交換することで、装置内の清掃が容易である。
また、エキスパンド装置1は、吸引口98が閉鎖空間400の外周縁に下向きの気流401を生成するので、温風噴射部52から噴射された温風300を吸引して、封鎖面922とワーク201との間に温風噴射部52から噴射された温風300が侵入することを抑制する。また、エキスパンド装置1は、吸引口98が下向きの気流401を生成しても、フレーム保持部20に保持されたワークユニット200のワーク201よりも外周側に開口しているので、破断屑を吸引口98から吸い込むことを抑制できる。
また、エキスパンド装置1は、温風噴射部52から噴射された温風300の封鎖面922とワーク201との間に侵入することを抑制する温風進入防止手段である湾曲プレート94を備える。このために、エキスパンド装置1は、冷却テーブル30でワーク201を冷却する領域であるテーブル本体32と封鎖面922との間に温風300が進入してこれらの間の雰囲気が温度上昇することを抑制でき、次のワーク201の裏面207に貼着されたDAF212を冷却することができ、エキスパンドシート210を拡張する際のワーク201及びDAF212の冷却不良を抑制できる。その結果、エキスパンド装置1は、連続して複数のワークユニット200のエキスパンドシート210を拡張する場合でも、拡張後のワークユニット200のエキスパンドシート210の弛みを解消してチップ202の損傷を防ぐとともに、次に拡張するワークユニット200の冷却不良を抑制でき、分割不良が生じることを抑制することができるという効果を奏する。
また、実施形態1に係るエキスパンド装置1は、封鎖面922にエアーを噴出する噴出口97が形成されて、封鎖面922とワーク201との間に空気溜まり301を形成するので、封鎖面922とワーク201との間に温風300が侵入することを抑制することができる。
また、エキスパンド装置1は、封鎖面922とワーク201との間にエアー供給源973から供給されたエアーがたまる空気溜まり301を形成し、吸引口98から吸引するので、温風300の空気溜まり301への侵入、即ち温風300によりワーク201及び冷却テーブル30のテーブル本体32の当接面31が加熱されることを抑制することができる。
また、実施形態1に係るエキスパンド装置1は、エキスパンドシート210を加熱収縮する際、開閉弁81を開いて、冷却テーブル30のテーブル本体32及び冷却ユニット33とテーブルカバー36との間に圧縮エアー供給源82から供給される圧縮エアーを供給するので、前述した空気溜まり301の外周で圧縮エアー供給源82から供給される圧縮エアーが流れることとなり、温風300が空気溜まり301に侵入することを抑制することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、実施形態1では、フレーム保持部20のフレーム押さえプレート22を昇降自在に設けたが、本発明では、フレーム保持部20のフレーム押さえプレート22をチャンバ10に固定しても良い。また、実施形態1では、昇降用シリンダ42は、フレーム載置プレート21が昇降することで、フレーム保持部20に対してコロ部材44を相対的に退避位置と押圧位置とに亘って移動させる移動ユニットであったが、本発明では、拡張ドラム41を昇降してコロ部材44をフレーム保持部20に対して相対的に退避位置と押圧位置とに亘って移動させる移動ユニットを備えても良い。
また、実施形態1では、ワーク201に分割予定ライン205に沿って分割起点である改質層208が形成されている例を説明したが、本発明では、改質層208に限定されない。本発明では、エキスパンド装置1の拡張前に、ワーク201に切削加工又はレーザアブレーション加工を施して分割予定ライン205に沿って個々のチップ202に分割しておいても良く、ワーク201に切削加工又はレーザアブレーション加工を施して分割予定ライン205に沿って表面204から凹の加工溝を分割起点として形成しても良い。また、実施形態1では、ワークユニット200は、ワーク201とDAF212とを備えるが、本発明では、これに限定されずに、ワーク201とDAF212とのうち一方を備え、他方を備えなくても良い。