JP2021130199A - 光造形用インクセット - Google Patents

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Abstract

【課題】壁等を作成することなく作業性に優れ、サポート材の水除去性に優れ、更に自立性に優れたサポート材を用いて、寸法精度が良好な光造形品を得るための光造形用インクセットの提供。【解決手段】光造形用インクセットは、50〜90重量部の単官能モノマー(A)と、3〜25重量部の多官能モノマー(B)と、5〜40重量部のオリゴマー(C)と、1〜15重量部の光重合開始剤(D)とを含有するモデル材用組成物と、19〜80質量部の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)と15〜75質量部の分子量300以上のオキシブチレン基を含むポリアルキレングリコール(b)とを含有するサポート材用組成物とで構成される。【選択図】図1

Description

本発明は、マテリアルジェット光造形法に用いられるモデル材用組成物とサポート材用組成物を組み合わせた光造形用組インクセット、及び、前記光造形用インクセットを用いた光造形品の製造方法に関する。
従来、立体造形物を作成する方法として、紫外線等を照射することにより硬化する光硬化性組成物を用いた造形法が広く知られている。具体的に、このような造形法では、光硬化性組成物に紫外線等を照射して硬化させることにより、所定の形状を有する硬化層を形成する。その後、該硬化層の上にさらに光硬化性組成物を供給して硬化させることにより、新たな硬化層を形成する。前記工程を繰り返し行うことにより、立体造形物を作製する。
前記造形法の中でも、近年、ノズルから光硬化性組成物を吐出させ、その直後に紫外線等を照射して硬化させることにより、所定の形状を有する硬化層を形成するマテリアルジェット方式(インクジェット方式)による光造形法(以下、マテリアルジェット光造形方又はインクジェット光造形法という)が報告されている(特許文献1)。インクジェット光造形法は、光硬化性組成物を貯留する大型の樹脂液槽及び暗室の設置が不要である。そのため、従来法に比べて、造形装置を小型化することができる。インクジェット光造形法は、CAD(Computer Aided Design)データに基づいて、自由に立体造形物を作成可能な3Dプリンターによって実現される造形法として、注目されている。
インクジェット光造形法において、中空形状等の複雑な形状を有する光造形品を造形する場合には、モデル材を支えるために、該モデル材とサポート材とを組み合わせて形成する(特許文献1)。サポート材は、モデル材と同様に、光硬化性組成物に紫外線等を照射して硬化させることにより作成される。モデル材を作成した後は、サポート材を、物理的に剥離する、又は、有機溶媒もしくは水に溶解させることにより、前記サポート材を除去することができる。
さらに、特許文献1には、インクジェット光造形法により、光硬化時および硬化後の水または吸湿による膨潤変形が極めて少ないモデル材用組成物、硬化後の硬化物が水への溶解性に優れ、除去が容易であるサポート材用組成物、ならびに、これらの組成物を用いて造形される光造形品が開示されている。
特開2012−111226号公報 特開2015−107653号公報
特許文献1に開示されたモデル材では、該モデル材を光硬化させることにより、膨潤変形が極めて少ないモデル材が得られる。このようなモデル材を用いれば、寸法精度が良好な光造形品を造形することができる。
一方、特許文献1に開示されたサポート材は、光硬化しない非重合成分を多く含有する。そのため、前記サポート材を光硬化させることにより、ゲル状のサポート材が得られると想定される。特許文献1に開示されたモデル材用組成物を用いて寸法精度が良好な光造形品を造形するためには、例えば、特許文献2に開示されるように、前記サポート材を支えるための壁等を用いる方法が挙げられる。
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、壁等を作成することなく作業性に優れ、サポート材の水除去性に優れ、更に自立性に優れたサポート材を用いて、寸法精度が良好な光造形品を得るための光造形用インクセット及び、前記光造形用インクセットを用いて、作業性に優れた光造形品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、サポート材用組成物中の非重合成分を規定し、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体の含有量を所定の範囲に規定することにより、サポート材の水除去性に優れ、さらに自立性を有しサポート力に優れたサポート材が得られることを見出した。本発明者らは、前記サポート材用組成物と、膨潤変形が極めて少ないモデル材を得ることが可能なモデル材用組成物とを用いることにより、寸法精度が良好な光造形品を造形することができることを見出した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、以下の通りである。
(1)インクジェット光造形法に用いられ、かつ、モデル材を造形するために使用されるモデル材用組成物と、サポート材を造形するために使用されるサポート材用組成物とを組み合わせてなる光造形用インクセットであって、
前記モデル材用組成物は、該モデル材用組成物全体100重量部に対して、
50〜90重量部の単官能モノマー(A)と、
3〜25重量部の多官能モノマー(B)と、
5〜40重量部のオリゴマー(C)と、
1〜15重量部の光重合開始剤(D)と、
を含有し、
前記サポート材用組成物は、該サポート材用組成物全体100重量部に対して、
19〜80質量部の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)と
15〜75質量部のオキシブチレン基を含むポリアルキレングリコール(b)とを含有し、前記オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコール(b)の重量分子量が300以上である、光造形用インクセット。
(2)前記モデル材用組成物の前記オリゴマー(C)は、ウレタン基を含む光造形用インクセット。
(3)前記モデル材用組成物は、該モデル材用組成物全体100重量部に対して、水溶性成分の含有量が10重量部以下である光造形用インクセット。
(4)前記モデル材用組成物は、該モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材の水膨潤率が1重量%以下である光造形用インクセット。
(5)前記サポート材用組成物は、1〜20質量部の光重合開始剤(d)を含有する光造形用インクセット。
(6)前記サポート材用組成物は、更に水溶性有機溶剤を含有し、
前記水溶性有機溶剤の含有量が、前記サポート材用組成物の全質量100質量部に対して、30質量部以下である光造形用インクセット。
(7)前記サポート材用組成物は、更に表面調整剤を含有し、
前記表面調整剤の含有量が、前記サポート材用組成物の全質量100質量部に対して、0.005質量部以上3.0質量部以下である光造形用インクセット。
(8) マテリアルジェット光造形法により、上記いずれか一つに記載の光造形用インクセットを用いて光造形品を製造する方法であって、
前記モデル材用組成物を光硬化させることによりモデル材を得るとともに、前記サポート材用組成物を光硬化させることによりサポート材を得る工程(I)と、
前記サポート材を除去する工程(II)と、
を有する、光造形品の製造方法。
本発明によれば、サポート材の水除去性、且つ、自立性に優れたサポート材を用いて寸法精度が良好な光造形品を得るための光造形用インクセット、及び、前記光造形用インクセットを用いて、作業性に優れた光造形品の製造方法を提供することができる。
図1は、インクジェット造形法によりサポート材用インク及びモデル材用インクを吐出してエネルギー線を照射している状態を示す模式側面図である。 図2は、インクジェット造形法によりサポート材用インク及びモデル材用インクを吐出している状態を示す模式側面図である。 図3は、インクジェット造形法により吐出したサポート材用インク及びモデル材用インクにエネルギー線を照射している状態を示す模式側面図である。 図4は、インクジェット造形法により形成したサポート材とモデル材からなる造形物前駆体の模式側面図である。 図5は、インクジェット造形法により形成した造形物の模式側面図である。
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態ともいう)について詳しく説明する。本発明は、以下の内容に限定されるものではない。なお、以下の説明において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称であり、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を意味するものである。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アリル」についても同様である。
本発明の一実施形態では、インクジェット光造形方に用いられ、かつ、モデル材を造形するために使用されるモデル材用組成物と、モデル材を支持するサポート材を造形するために使用されるサポート材用組成物とを組み合わせてなる光造形用インクセット(光造形用組成物セット)にである。モデル材用組成物、及び、サポート材用組成物は、エネルギー線により硬化し、特に、ラジカル反応により造形物を得ることが好ましい。
1.モデル材用組成物
<単官能モノマー(A)>
上記(A)成分は、エネルギー線により硬化する特性を有する分子内にエチレン性二重結合を1個有する重合性モノマーである。上記(A)成分としては、例えば、炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキル(メタ)アクリレート〔例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等〕、
炭素数6〜20の脂環含有(メタ)アクリレート〔例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等〕、
炭素数5〜20の複素環含有(メタ)アクリレート〔例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート等〕
芳香環含有(メタ)アクリレート〔例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル−3−フノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等〕
が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記(A)成分が2種以上含まれる場合、上記含有量は、各(A)成分の含有量の合計として定める。
上記(A)成分は、樹脂組成物全体100重量部に対して、5〜40重量部の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(A−2)を含有してもよい。(A−2)成分の含有量が上記上限値以下であると、光硬化時や硬化後の水または吸湿によるモデル材(光造形品)の膨潤変形を抑制することができる。
(A−2)成分としては、例えば、炭素数(C)5〜15の水酸基含有(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等];
数平均分子量(Mn)200〜1000のアルキレンオキサイド付加物含有(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1〜4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1〜4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びPEG−PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等];
C3〜15の(メタ)アクリルアミド誘導体[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−(エチルメタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等];
N−ビニル化合物[N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等];及び
(メタ)アクリロイルモルホリン等
が使用できる。(A−2)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、モデル材用組成物の硬化性を向上させる観点から、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、および、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートであることが好ましい。さらに、モデル材用組成物が光硬化時の温度(50〜90℃)に耐え得る耐熱性を有することにより、光造形物の寸法精度を向上させる観点から、イソボルニル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
前記単官能モノマー(A)の含有量は、前記モデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品のTg及び耐脆性を向上させる観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、50〜90重量部とする。前記単官能モノマー(A)の含有量は、55重量部以上であることが好ましく、85重量部以下であることが好ましい。なお、前記(A)成分が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各(A)成分の含有量の合計である。
<二官能以上の多官能モノマー(B)>
多官能モノマー(B)は、活性エネルギー線の照射により重合して硬化する特性を有する成分であり、分子内にエチレン性二重結合を2つ以上有する重合性モノマーである。多官能モノマー(B)として1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(B)成分の含有量は、前記モデル材及び前記光造形品の機械強度及び耐脆性を向上させる観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、3〜25重量部とする。上記(B)成分の含有量は、4重量部以上であることが好ましく、20重量部以下であることが好ましい。なお、上記(B)成分が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各(B)成分の含有量の合計である。
上記(B)成分は、例えば、炭素数10〜25の直鎖または分岐のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはアルキレングリコールトリ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールペンタ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールヘキサ(メタ)アクリレートとして、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−nブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1000)ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(700)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等、炭素数10〜30の環状構造含有ジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレートとして、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート等、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、2官能以上のアミノアクリレート類等が挙げられる。中でも、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
これらの中でも、モデル材用組成物の硬化性を向上させる観点から、(メタ)アクリレート系の単量体であることが好ましく、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートおよび2官能以上のアミノアクリレートがより好ましく、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(
メタ)アクリレートおよび2官能以上のアミノアクリレート類がさらに好ましく、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよび2官能以上のアミノアクリレート類が特に好ましい。
<オリゴマー(C)>
オリゴマー(C)は、1個以上のエチレン性不飽和基を有し、光照射により重合してモデル材用組成物を硬化させ、かつ、該硬化により得られるモデル材の破断強度を高める成分である。上記(C)成分の含有量は、樹脂組成物全体100重量部に対して、5〜40重量部とする。上記(C)成分の含有量が5重量部未満であると、モデル材用組成物を光硬化させて得られるモデル材には、硬化収縮がやや大きくなる。その結果、モデル材の寸法精度が悪化する可能性がある。また、モデル材用組成物を光硬化させて得られるモデル材の破断強度が劣る。一方、上記(C)成分の含有量が40重量部を超えると、モデル材用組成物の粘度が高くなる。そのため、モデル材用組成物をインクジェットヘッドから吐出させる際、ジェッティング特性が悪化して、飛行曲がりを起こす可能性がある。その結果、モデル材用組成物を光硬化させて得られるモデル材の寸法精度が悪化する可能性がある。上記(C)成分の含有量は、10重量部以上であることが好ましく、15重量部以上であることがより好ましく、30重量部以下であることが好ましい。
上記(C)成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。これらの中でも、モデル材用組成物の硬化性を向上させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、および、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーから選択される1種以上であることが好ましい。さらに、モデル材用組成物が光硬化時の温度(50〜90℃)に耐え得る耐熱性を有することにより、モデル材の寸法精度を向上させる観点から、上記(C)成分がウレタン基を含むウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることがより好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記(C)成分が2種以上含まれる場合、上記含有量は、各(C)成分の含有量の合計として定める。
なお、本明細書中において「オリゴマー」は、重量平均分子量が800〜10000である。重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
<光重合開始剤(D)>
本発明のモデル材用組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、紫外線、近紫外線または可視光領域の波長の光を照射するとラジカル反応を促進する化合物であれば、特に限定されない。上記光重合開始剤としては、低エネルギーで重合を開始させることができれば特に限定されないが、アシルフォスフィンオキサイド化合物、α−アミノアルキルフェノン化合物、α−ヒドロキシキノン化合物、チオキサントン化合物、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物およびケタール化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む光重合開始剤を用いることが好ましい。
上記アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、具体的には、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、4−エチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、4−イソプロピルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、例えば、BASF社製の“DAROCURE TPO”等が挙げられる。
上記α−アミノアルキルフェノン化合物としては、具体的には、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メトキシチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−2−オン等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なα−アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、BASF社製の“IRGACURE 369”、“IRGACURE 907”等が挙げられる。
上記α−ヒドロキシキノン化合物としては、具体的には、例えば、、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2-メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−[4−(2-ヒドロキシエトキシ)−フェニル] −2−ヒドロキシ2−メチル−1−プロパン1−オン等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なα−ヒドロキシキノン化合物としては“IRGACURE 184” “DAROCURE 1173”“IRGACURE 2959” “IRGACURE 127” 等が挙げられる。
上記チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なチオキサントン化合物としては、例えば、日本化薬社製の“MKAYACURE DETX−S”、ダブルボンドケミカル社製の“Chivacure ITX”等が挙げられる。
上記ベンゾイン化合物としては、具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
上記アントラキノン化合物としては、具体的には、例えば、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等が挙げられる。
上記ケタール化合物としては、具体的には、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等〕、炭素数13〜21のベンゾフェノン化合物〔例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
上記(D)成分の含有量は、樹脂組成物全体100重量部に対して、1〜15重量部である。上記(D)成分の含有量が上記範囲であると、モデル材用組成物の硬化性が良好となり、光造形物の寸法精度が向上する。上記(D)成分の含有量は、2重量部以上であることが好ましく、13重量部以下であることが好ましい。なお、上記(D)成分が2種以上含まれる場合、上記含有量は、各(D)成分の含有量の合計として定める。
<その他の添加剤>
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、その他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、表面調整剤、着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、充填剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記モデル材用組成物は、重合禁止剤を含有することが好ましい。前記モデル材用組成物が重合禁止剤を含有することにより、前記造形品を成形する温度(50〜90℃程度)において、重合が過剰に起きることを抑制することができる。その結果、単量体を安定させることができるため、前記モデル材用組成物が硬化しやすくなる。
前記重合禁止剤としては、例えば、フェノール化合物[ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル等]、硫黄化合物[ジラウリルチオジプロピオネート等]、リン化合物[トリフェニルフォスファイト等]、アミン化合物[フェノチアジン等]等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合禁止剤の含有量は、単量体の安定性および重合速度を向上させる観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、3重量部以下であることがより好ましく、0.1重量部以上であることが好ましい。なお、前記重合禁止剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各重合禁止剤の含有量の合計である。
前記表面調整剤(E)としては、例えば、分子量264以上かつMn5,000以下である、PEG型非イオン界面活性剤[ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下、EOと略記)1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等]、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。前記表面調整剤のうち、シリコーン系表面調整剤が好ましく、ポリジメチルシロキサン構造を有する表面調整剤が特に好ましい。
前記表面調整剤の含有量は、添加効果、並びに、前記モデル材及び前記光造形品の物性を向上させる観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、3重量部以下であることが好ましく、2重量部以下であることがより好ましく、0.1重量部以上であることが好ましい。なお、前記表面調整剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各表面調整剤の含有量の合計である。
前記着色剤としては、例えば、顔料、染料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記顔料には、有機顔料及び/又は無機顔料が含まれる。前記有機顔料としては、以下に例示する顔料が挙げられる。
(アゾ顔料)
不溶性モノアゾ顔料(トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ファストイエローG等)等;
(多環式顔料)
フタロシアニンブルー等;
(染つけレーキ)
塩基性染料(ビクトリアピュアブルーBOレーキ等)等;
(その他の顔料)
アジン顔料(アニリンブラック等)、昼光蛍光顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料等。
前記無機顔料としては、例えば、金属酸化物(酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン等)、カーボンブラック等が挙げられる。
前記着色剤の含有量は、着色効果、並びに、前記モデル材及び前記光造形品の物性を向上させる観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、2重量部以下であることが好ましく、1重量部以下であることがより好ましく、0.1重量部以上であることが好ましい。なお、前記着色剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各着色剤の含有量の合計である。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール化合物〔単環フェノール(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等)等が挙げられる。
前記酸化防止剤の含有量は、酸化防止効果、並びに、前記モデル材及び前記光造形品の物性を向上させる観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、3重量部以下であることが好ましく、2重量部以下であることがより好ましく、0.1重量部以上であることが好ましい。なお、前記酸化防止剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各酸化防止剤の含有量の合計である。
前記連鎖移動剤としては、例えば、炭化水素[C6〜24の化合物、例えば、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、不飽和脂肪族炭化水素(1−ブテン、1−ノネン等)等];ハロゲン化炭化水素(C1〜24の化合物、例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記連鎖移動剤の含有量は、単量体の重合性及び単量体と連鎖移動剤との相溶性を向上させる観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましく、0.05重量部以上であることが好ましい。なお、前記連鎖移動剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各連鎖移動剤の含有量の合計である。
前記充填剤としては、例えば、金属粉(アルミニウム粉、銅粉等)、金属酸化物(アルミナ、シリカ、タルク、マイカ、クレー等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム等)、金属塩(炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等)、繊維[無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維、アスベスト等)、有機繊維(コットン、ナイロン、アクリル、レーヨン繊維等)等]、マイクロバルーン(ガラス、シラス、フェノール樹脂等)、炭素類(カーボンブラック、石墨、石炭粉等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、有機粉(木粉等)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記充填剤の含有量は、充填効果、インクジェット吐出可能粘度、並びに、前記モデル材及び前記光造形品の物性を向上させる観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、30重量部以下であることが好ましく、20重量部以下であることがより好ましく、3重量部以上であることが好ましい。なお、前記充填剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各充填剤の含有量の合計である。
前記その他の添加剤の含有量は、添加効果、並びに、前記モデル材及び前記光造形品の物性を向上させる観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、30重量部以下であることが好ましく、20重量部以下であることがより好ましく、0.05重量部以上であることが好ましい。なお、前記その他の添加剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各その他の添加剤の含有量の合計である。
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、前記モデル材及び前記光造形品の水膨潤変形及び吸湿変形を防止する観点から、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して、水溶性成分の含有量が10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。
ここで、水溶性成分とは、25℃における水への溶解度が1(g/水100g)以上である成分のことをいう。すなわち、前記モデル材用組成物に含まれる前記(A)〜(D)成分、及び、前記その他の添加物のうち、前記溶解度を示す成分のことをいう。
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、前記(A)〜(D)成分、及び、必要により、前記その他の添加剤を、混合攪拌装置、分散機等を用いて均一に混合することにより、製造することができる。
このようにして製造されたモデル材用組成物は、インクジェットヘッドからの吐出性を良好にする観点から、25℃における粘度が、70mPa・s以下であることが好ましい。なお、モデル材用組成物の粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行われる。
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物を光硬化させることにより、モデル材が得られる。詳しくは、後述する光造形品の製造方法において説明する。前記モデル材は、Tgが50〜120℃であることが好ましい。前記モデル材は、通常50〜90℃で造形される。そのため、前記モデル材のTgが50〜120℃であると、前記モデル材及び前記光造形品の耐熱性を向上させ、かつ、前記モデル材及び前記光造形品の反りを低減することができる。前記モデル材のTgは、55℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。また、前記モデル材のTgは、110℃以下であることがより好ましく、100℃であることがさらに好ましい。前記モデル材のTgは、前記モデル材用組成物に含有される前記(A)〜(D)成分、及び、前記その他の添加物の種類及び含有量を変えることにより、調整することができる。なお、前記モデル材のTgは、DMA(Dynamic Mechanical Analysis)方法により測定することができる。
前記モデル材は、寸法精度を向上させる観点から、水膨潤率が1重量%以下であることが好ましく、0.7重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以下であることがさらに好ましい。前記モデル材の水膨潤率は、前記モデル材用組成物に含有される前記(A)〜(D)成分、及び、前記その他の添加物の種類及び含有量を変えることにより、調整することができる。なお、前記モデル材の水膨潤率は、ASTM D570の吸水率測定法に準じて、下記(ii)式によって求めることができる。ただし、水はイオン交換水を用い、水温は25℃とする。
水膨潤率(%)=100×(水浸漬後の重量−水浸漬前の重量)/(水浸漬前の重量) ・・・(ii)
2.サポート材用組成物
サポート材用組成物は、光硬化によりサポート材を与える、サポート材用の光硬化性組成物である。モデル材を作成後、サポート材をモデル材から物理的に剥離することにより、または、サポート材を有機溶媒もしくは水に溶解させることにより、モデル材から除去することができる。本発明のモデル材用組成物は、サポート材用組成物として従来公知の種々の組成物との組み合わせにおいて用いることができるが、サポート材を除去する際にモデル材を破損することがなく、環境に優しく、細部まできれいにかつ容易にサポート材を除去することができるため、本発明の光造形用組成物セットを構成するサポート材用組成物は、サポート材を水に浸水して除去できる水溶性サポート材であることが好ましい。ここで、水溶性サポート材とは、サポート材を水に混合した際、均一な状態に溶解しているか、若しくは、直径約00.1〜100マイクロメートルの油滴となって分散し乳化状態にあることを示す。
本発明において、水溶性サポート材用組成物は、少なくとも1種の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)、少なくとも1種のポリアルキレングリコール(b)および光重合開始剤(c)を含むことが好ましい。
<水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)>
本発明のサポート材用組成物に含まれる水溶性単官能エチレン性不飽和単量体とは、エネルギー線により硬化する特性を有する分子内にエチレン性二重結合を1個有する重合性モノマーであり、前記モノマーが水溶性であることを意味する。ここで、水溶性とは、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体を水に混合した際、均一な状態に溶解しているか、若しくは、直径約00.1〜100マイクロメートルの油滴となって分散し乳化状態にあることを示す。例えば、炭素数5〜15の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等〕、数平均分子量(Mn)200〜1,000の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、PEG−PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等〕、(メタ)アクリルアミド誘導体〔例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等〕、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記(a)成分の含有量は、上記サポート材用組成物100質量部に対して、19〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは22質量部以上であり、さらに好ましくは25質量部以上であり、より好ましくは76質量部以下であり、さらに好ましくは73質量部以下である。水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させることなく、水によるサポート材の除去性を向上させることができる。
<ポリアルキレングリコール(b)>
サポート材用組成物に含まれ得るポリアルキレングリコール(b)としては、直鎖型、多鎖型のいずれであってもよい。また、水に溶解するものであれば、末端にアルキル基を含んでいてもよく、例えば、好ましくは炭素数6以下のアルキル鎖を含んでいてもよい。このようなポリアルキレングリコール(b)として、具体的には、オキシブチレン基を有するポリアルキレングリコールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
サポート材用組成物に含まれ得るオキシブチレン基を含むポリアルキレングリコール(b)としては、オキシブチレン基を含んでいれば、特にそのアルキレン部分の構造は限定されず、例えば、オキシブチレン基(オキシテトラメチレン基)のみ有するポリブチレングリコール単体であってもよく、また、オキシブチレン基と他のオキシアルキレン基とを共に有するポリブチレンポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリブチレンポリエチレングリコール)であってもよい。例えば、上記ポリブチレングリコールは、下記化学式(1)で示され、上記ポリブチレンポリエチレングリコールは、下記化学式(2)で示される。
Figure 2021130199
Figure 2021130199
上記化学式(2)において、mは5〜300の整数であることが好ましく、nは2〜150の整数であることが好ましい。より好ましくは、mは6〜200、nは3〜100である。また、化学式(1)および化学式(2)中のオキシブチレン基は、直鎖であってもよいが、分岐していてもよい。
サポート材用組成物が、オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコール(b)を含むことにより、サポート材のサポート力を低下させずに水による除去性をより向上させるという特有の効果を得ることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)成分の重量平均分子量は、300以上であり、3000より小さいことが好ましく、更に、800以上であり、2000より小さいことがより好ましい。(b)成分の重量平均分子量が300より小さいと、サポート材用組成物を硬化した際にサポート材のブリーディングが生じる。ブリーディングとは、硬化したサポート材内部から液体成分がサポート材表面に浸みだす現象である。また、ポリアルキレングリコールの重量平均分子量が3000より小さいことにより、サポート材用組成物の吐出安定性に優れる。
(b)成分は、2種類以上使用されてもよい。2種類以上のポリアルキレングリコールが使用される場合、重量平均分子量が300より小さい又は3000より大きいポリアルキレングリコールの含有量は、少量が好ましい。
(b)成分の含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、15〜75質量部であることが好ましく、より好ましくは17質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは72質量部以下であり、さらに好ましくは70質量部以下である。ポリアルキレングリコール(b)の含有量が、上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させずにサポート材の水または水溶性溶媒による除去性を向上させることができる。
<水溶性有機溶剤(c)>
サポート材用組成物は、水溶性有機溶剤(c)を含んでいてもよい。水溶性有機溶剤(c)は、サポート材用組成物を光硬化させて得られるサポート材の水への溶解性を向上させる成分である。また、サポート材用組成物を低粘度に調整する機能も有する。
水溶性有機溶剤(c)としては、グリコール系溶剤を用いることが好ましく、具体的には、例えば、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアセテート、テトラエチレングリコールモノアセテート、テトラプロピレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテートなどのグリコールエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールモノエーテルアセテート系溶剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、低粘度のサポート材組成物を調製しやすく、また、硬化して得られるサポート材が水溶解性に優れる点から、水溶性有機溶剤(c)としては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
サポート材用組成物における水溶性有機溶剤(c)の含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは28質量部以下であり、さらに好ましくは25質量部以下である。水溶性有機溶剤(c)の含有量が、上記範囲内であると、サポート材のサポート力を低下させずにサポート材の水または水溶性溶媒による除去性を向上させることができる。
<光重合開始剤(d)>
光重合開始剤(d)としては、モデル材用組成物に含有され得る光重合開始剤として上記に述べた化合物を同様に使用することができる。サポート材用組成物における光重合開始剤の含有量は、サポート材用組成物100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部であり、より好ましくは2〜18質量部である。
光重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、未反応の重合成分を十分に低減させて、サポート材の硬化性を十分に高めやすい。
上記各成分を上記範囲の含有量で含むことにより、優れた水溶解性とサポート力とを兼ね備えたサポート材用組成物を得ることができる。特に、サポート力に優れるため造形中に空気中の水分を取り込みサポート力が低下するという懸念がなく、寸法精度が良好な光造形品が得られる。更に、上記各成分を上記範囲の含有量で含むことにより、高温・高湿条件下であっても、サポート材用組成物が硬化することにより得られる硬化物(造形物)の軟化を防ぐことができる。
上記サポート材用組成物には、必要により、その他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、表面調整剤、酸化防止剤、着色剤、顔料分散剤、保存安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤等が挙げられる。
サポート材用組成物に、表面調整剤(e)を配合することによりサポート材用組成物の表面張力を適当な範囲に制御することができ、モデル材用組成物とサポート材用組成物がその界面で混合することを抑制することができる。これにより、寸法精度の良好な光造形品を得ることができる。サポート材用組成物が含み得る表面調整剤としては、本発明のモデル材用組成物に用い得る表面調整剤として例示したものと同様のものを用いることができ、その含有量は、サポート材組成物100質量部に対して0.005〜3質量部であることが好ましい。前記表面調整剤のうち、シリコーン系表面調整剤が好ましく、ポリジメチルシロキサン構造を有する表面調整剤が特に好ましい。
また、サポート材用組成物に保存安定化剤(f)を配合することにより保存安定性を向上させることができる。サポート材用組成物が含み得る保存安定剤としては、本発明のモデル材用組成物に用い得る保存安定剤として例示したものと同様のものを用いることができ、その含有量は、サポート材組成物100質量部に対して0.05〜3質量部であることが好ましい。
本発明において、サポート材用組成物の粘度は、インクジェットノズルからの吐出性を良好にする観点から、25℃において30〜200mPa・sであることが好ましく、より好ましくは35mPa・s以上、さらに好ましくは40mPa・s以上であり、より好ましくは170mPa・s以下、さらに好ましくは150mPa・s以下である。なお、上記粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行うことができる。
本発明において、サポート材用組成物の表面張力は、好ましくは24〜30mN/mであり、より好ましくは24.5〜29.5mN/mであり、さらに好ましくは25〜29mN/mである。表面張力が上記範囲内であると、ノズルからの吐出液滴を正常に形成することができ、適切な液滴量や着弾精度を確保することやサテライトの発生を抑制することが可能であり、高い造形精度を確保しやすくなる。なお、サポート材用組成物の表面張力は、モデル材用組成物における表面張力の測定方法と同様の方法に従い測定することができる。
本発明のサポート材用組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、混合攪拌装置等を用いて、サポート材用組成物を構成する成分を均一に混合することにより製造することができる。
3.光造形品およびその製造方法
本実施形態の光造形物の製造方法は、前述の実施形態で説明したマテリアルジェット光造形用組成物セットを用いた光造形物の製造方法であり、マテリアルジェット(インクジェット)方式プリンターを用いてモデル材用組成物又はサポート材用組成物を吐出した後、モデル材用組成物を光硬化させてモデル材を得るとともに、水溶性サポート材用組成物を光硬化させて水溶性サポート材を得る工程と、前記水溶性サポート材を水に浸水することにより除去する工程を備えている。
本実施形態の光造形物の製造方法は、上記マテリアルジェット光造形用組成物セットを用いているため、造形精度に優れた光造形物を形成することができる。
以下、本実施形態の光造形物の製造方法について図面に基づき説明する。図1は、マテリアルジェット造形法によりサポート材用組成物及びモデル材用組成物を吐出してエネルギー線を照射している状態を示す模式側面図である。図1において、三次元造形装置10は、インクジェットヘッドモジュール11と、造形テーブル12とを備えている。また、インクジェットヘッドモジュール11は、光造形用インクユニット11aと、ローラー11bと、光源11cとを備えている。更に、光造形用インクユニット11aは、モデル材用インク13が充填されたモデル材用インクジェットヘッド11aMと、サポート材用インク14が充填されたサポート材用インクジェットヘッド11aSとを備えている。
モデル材用インクジェットヘッド11aMからは、モデル材用組成物13が吐出され、サポート材用インクジェットヘッド11aSからは、サポート材用組成物14が吐出され、光源11cからエネルギー線15が照射され、吐出されたモデル材用組成物13及びサポート材用組成物14を硬化させて、モデル材13PMとサポート材14PSを形成している。図1では、一層目のモデル材13PM及びサポート材14PSを形成する状態を示している。
次に、本実施形態の光造形物の製造方法について図面に基づき更に詳細に説明する。本実施形態の光造形物の製造方法では、先ず、図2に示すように、インクジェットヘッドモジュール11を造形テーブル12に対してX方向(図2では右方向)に走査させる共に、モデル材用インクジェットヘッド11aMからモデル材用組成物13を吐出し、サポート材用インクジェットヘッド11aSからサポート材用組成物14を吐出する。これにより、造形テーブル12の上に、モデル材前駆体13Mからなる層とサポート材前駆体14Sからなる層とを、それぞれの界面同士が接触するように隣接して配置する。
次に、図3に示すように、インクジェットヘッドモジュール11を造形テーブル12に対して逆X方向(図3では左方向)に走査させると共に、ローラー11bでモデル材前駆体13M及びサポート材前駆体14Sからなる層の表面を平滑にした後、光源11cからエネルギー線15を照射し、モデル材前駆体13M及びサポート材前駆体14Sからなる層を硬化させて、一層目のモデル材13PM及びサポート材14PSからなる層を形成す
る。
続いて、造形テーブル12をZ方向に一層分だけ下降させて、上記と同様の工程を行い、二層目のモデル材及びサポート材からなる層を形成する。その後、上記の工程を繰り返すことにより、図4に示すように、モデル材13PMとサポート材14PSからなる光造形品前駆体16が形成される。
最後に、図4に示した光造形品前駆体16を水に浸漬することによりサポート材14PSを溶解して除去し、図5に示すような光造形品17が形成される。
本実施形態の光造形物の製造方法において、光源として、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、UV-LED等を使用できる。三次元造形装置10の小型化が可能であり、消費電力が小さいという観点から、UV-LEDが好ましい。光量は、造形品の硬度および寸法精度の観点から、200〜500mJ/cmが好ましい。光源としてUV-LEDを用いる場合、光が深層まで届きやすくなり、光造形品の硬度および寸法精度を向上させることができることから、中心波長が385〜415nmのものを用いることが好ましい。また、光源11cから照射するエネルギー線15についは、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、遠赤外線、電子線、α線、γ線およびエックス線等を使用することができるが、硬化作業の容易性及び効率性の観点から、紫外線又は近紫外線が好ましい。
本発明の製造方法において、例えば、作製する物体の3次元CADデータをもとに、マテリアルジェット方式で積層して立体造形物を構成するモデル材用組成物のデータ、および、作製途上の立体造形物を支持するサポート材用組成物のデータを作製し、さらにマテリアルジェット方式の3Dプリンタで各組成物を吐出するスライスデータを作製し、作製したスライスデータに基づきモデル材用およびサポート材用の各組成物を吐出後、光硬化処理を層ごとに繰り返し、モデル材用組成物の硬化物(モデル材)およびサポート材用組成物の硬化物(サポート材)からなる光造形物を作製することができる。
立体造形物を構成する各層の厚みは、造形精度の観点からは薄いほうが好ましいが、造形速度とのバランスからは5〜30μmが好ましい。
得られた光造形物は、モデル材とサポート材とが組み合わされたものである。かかる光造形物からサポート材を除去してモデル材である光造形品を得る。サポート材の除去は、例えば、サポート材を溶解させる除去溶剤に得られた光造形物を浸漬し、サポート材を柔軟にした後、ブラシなどでモデル材表面からサポート材を除去して行うことが好ましい。サポート材の除去溶剤には水、水溶性溶剤、例えばグリコール系溶剤、アルコール系溶剤などを用いてもよい。これらは、単独で、あるいは複数用いてもよい。
上記光造形品は、水に接触した場合の吸水及び膨潤が抑制されており、微細構造部分の破損及び変形を起こしにくいものである。また、上記光造形品は撥水撥油性に優れ、汚染されにくいものである。
以下、本実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<モデル材用組成物>
(モデル材用組成物の製造)
表1に下記の実施例及び比較例において、サポート材組成物に使用した成分をまとめた。
Figure 2021130199
表2に示す配合で、(A)〜(E)成分を、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、実施例M1〜M7並びに比較例m1〜m4のモデル材用組成物を製造した。
Figure 2021130199
実施例M1〜5、M7および比較例m1のモデル材用組成物における水溶性成分の含有率は、それぞれ、0質量%であり、実施例M6のモデル材用組成物における水溶性成分の含有率は10.0質量%であり、比較例m2、m3、m4のモデル材用組成物における水溶性成分の含有率は、それぞれ、40.0質量%、55.0質量%、50.0質量%であった。
実施例M1〜5、M7のモデル材用組成物における水膨潤率は、それぞれ、0.1質量%であり、実施例M6のモデル材用組成物における水膨潤率は0.5質量%であり、比較例m1、m2、m3、m4のモデル材用組成物における水膨潤率は、それぞれ、3.8質量%、1.9質量%、3.3質量%、2.3質量%であった。
<サポート材用組成物>
<サポート材用樹脂組成物>
表3に、下記の実施例及び比較例において、サポート材組成物に使用した成分をまとめた。
Figure 2021130199
先ず、実施例S1〜S13、比較例s1のサポート材組成物を次のようにして調製した。即ち、プラスチック製ビンに、表4に示す成分(a)〜(f)を表4に示す配合量(単位:質量部)で計り取り、これらを混合することにより各サポート材組成物を調製した。
Figure 2021130199
次に、上記実施例S1〜13、比較例s1のサポート材組成物について、下記に示す方法によって、サポート材組成物の低温安定性、サポート材組成物を硬化したサポート材硬化物の高温高湿条件安定性(サポート力)及び水除去性を評価した。
<サポート材組成物の低温安定性>
低温でのサポート材組成物の安定性について評価した。各サポート材組成物をガラス瓶に入れ、そのサポート材組成物入りガラス瓶を温度10℃に設定した恒温槽中で24時間保管した。その後、保管後のサポート材組成物の状態を目視で確認して、下記基準でサポート材組成物の低温安定性を評価した。
サポート材組成物が液体状を維持している場合:低温安定性A(優良)
サポート材組成物が一部凝固(固化)している場合:低温安定性B(良)
サポート材組成物が凝固(固化)している場合:低温安定性C(不良)
<サポート材硬化物のサポート力>
ガラス板上に、縦30mm、横30mm、厚さ5mmの額縁状のシリコンゴムにより枠を形成し、その枠の中に各サポート材組成物を流し込み、メタルハライドランプにより積算光量500mJ/cm2の紫外線を照射し、サポート材硬化物を作製した。続いて、上記硬化物をガラス製シャーレに入れ、その硬化物入りシャーレを温度40℃、相対湿度90%の恒温槽中に2時間放置した。その後、放置後の上記硬化物の状態を目視で確認して、下記基準でサポート材硬化物のサポート力を評価した。
硬化物の表面に液体状物質の発生がなく、硬化物の軟化も確認されない場合:サポート力A(優良)
硬化物の表面に液体状物質がわずかに発生し、硬化物の軟化が若干確認された場合:サポート力B(良)
硬化物の表面に液体状物質が発生し、硬化物の軟化が確認された場合:サポート力C(不良)
<サポート材硬化物の水除去性>
上記サポート材硬化物のサポート力の評価の場合と同様にして、サポート材硬化物を作製した。次に、上記硬化物を、50mLのイオン交換水を満たしたビーカーに入れ、水温を25℃に維持しながら超音波洗浄機で処理し、上記硬化物が溶解するまでの時間を測定し、下記基準でサポート材硬化物の水除去性を評価した。
硬化物が完全に溶解するまでに30分を要した場合:水除去性A(優良)
硬化物が完全に溶解するまでに1時間を要した場合:水除去性B(良)
硬化物が完全に溶解するまでに2時間を要した場合:水除去性C(不良)
以上の結果を表5に示す。
Figure 2021130199
実施例S1〜S13のサポート材組成物は、全ての評価項目で満足できる結果を得たことが分かる。
<マテリアルジェット光造形用組成物セット(インクセット)>
表6に示す通りに上記モデル材用組成物及びサポート材用組成物を組み合わせることにより、実施例1〜4及び比較例1〜3を調製した。
ガラス板(商品名「GLASS PLATE」、アズワン社製、200mm×200mm×厚さ5mm)の上面四辺に厚さ1mmのスペーサーを配し、10cm×10cmの正方形に仕切った。該正方形内にサポート材用組成物を注型した後、照射手段として紫外線LED(NCCU001E、日亜化学工業株式会社製)を用い、全照射光量が500mJ/cmとなるように紫外線を照射して硬化させ、サポート材を得た。
次に、上記サポート材の上面四辺に厚さ1mmのスペーサーを配し、10cm×10cmの正方形に仕切った。該正方形内にモデル材用組成物を注型した後、照射手段として紫外線LED(NCCU001E、日亜化学工業株式会社製)を用い、全照射光量が500mJ/cmとなるように紫外線を照射して硬化させ、モデル材を得た。
(密着性の評価)
この状態で30℃の恒温槽に12時間放置し、モデル材とサポート材との密着性の様子を目視にて確認し、下記の基準において評価した。結果を表6に示す。
○:モデル材とサポート材とは密着していた。
×:モデル材とサポート材との界面で剥がれが生じ、モデル材の硬化収縮でモデル材が反るように剥がれた。
Figure 2021130199
表6の結果から分かるように、モデル材用組成物およびサポート材用組成物の両方が本発明の要件を満たす実施例1〜4は、モデル材とサポート材との界面に剥がれが生じず、モデル材とサポート材とがより密着していた。このように、モデル材とサポート材とが密着していれば、寸法精度が良好な光造形品が得られる。
一方、モデル材用組成物およびサポート材用組成物の一方又は両方が本発明の要件を満たしていない比較例1〜3は、モデル材とサポート材との界面で剥がれが生じた。このように、モデル材とサポート材との密着性が悪いと、光造形品の寸法精度が悪化する。
10 三次元造形装置
11 インクジェットヘッドモジュール
11a 光造形用インクユニット
11aM モデル材用インクジェットヘッド
11aS サポート材用インクジェットヘッド
11b ローラー
11c 光源
12 造形テーブル
13 モデル材用インク
13M モデル材前駆体
13PM モデル材
14 サポート材用インク
14S サポート材前駆体
14PS サポート材
15 エネルギー線
16 造形物前駆体
17 造形物

Claims (8)

  1. インクジェット光造形法に用いられ、かつ、モデル材を造形するために使用されるモデル材用組成物と、サポート材を造形するために使用されるサポート材用組成物とを組み合わせてなる光造形用インクセットであって、
    前記モデル材用組成物は、該モデル材用組成物全体100重量部に対して、
    50〜90重量部の単官能モノマー(A)と、
    3〜25重量部の多官能モノマー(B)と、
    5〜40重量部のオリゴマー(C)と、
    1〜15重量部の光重合開始剤(D)と、
    を含有し、
    前記サポート材用組成物は、該サポート材用組成物全体100重量部に対して、
    19〜80質量部の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)と
    15〜75質量部のオキシブチレン基を含むポリアルキレングリコール(b)とを含有し、前記オキシブチレン基を含むポリアルキレングリコール(b)の重量分子量が300以上である、光造形用インクセット。
  2. 請求項1において、前記モデル材用組成物の前記オリゴマー(C)は、ウレタン基を含む光造形用インクセット。
  3. 請求項1又は2において、前記モデル材用組成物は、該モデル材用組成物全体100重量部に対して、水溶性成分の含有量が10重量部以下である光造形用インクセット。
  4. 請求項1〜3において、前記モデル材用組成物は、該モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材の水膨潤率が1重量%以下である光造形用インクセット。
  5. 請求項1〜4において、前記サポート材用組成物は、1〜20質量部の光重合開始剤(d)を含有する光造形用インクセット。
  6. 請求項1〜5において、前記サポート材用組成物は、更に水溶性有機溶剤を含有し、
    前記水溶性有機溶剤の含有量が、前記サポート材用組成物の全質量100質量部に対して、30質量部以下である光造形用インクセット。
  7. 請求項1〜6において、前記サポート材用組成物は、更に表面調整剤を含有し、
    前記表面調整剤の含有量が、前記サポート材用組成物の全質量100質量部に対して、0.005質量部以上3.0質量部以下である光造形用インクセット。
  8. マテリアルジェット光造形法により、請求項1〜7のいずれか一つに記載の光造形用インクセットを用いて光造形品を製造する方法であって、
    前記モデル材用組成物を光硬化させることによりモデル材を得るとともに、前記サポート材用組成物を光硬化させることによりサポート材を得る工程(I)と、
    前記サポート材を除去する工程(II)と、
    を有する、光造形品の製造方法。
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