JP2021126002A - 搬送装置および物品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 可動子を安定してスムーズに搬送することができる、小型化および低コスト化可能な搬送装置を提供する。【解決手段】 第1の方向に沿って配置された複数のコイルと、 前記複数のコイルに沿って移動する可動子と、を有する搬送装置において、 前記可動子は、第1の方向に沿って配置された第1の磁石群と、 前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って配置された第2の磁石群と、を有し 前記複数のコイルのうちの少なくとも一つは、コアと巻き線部とヨークを有し、前記ヨークは、前記第1の方向に沿って前記巻線部の外周に隣接して設けられていることを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、搬送装置に関する。
一般に、工業製品を組み立てるための生産ラインや半導体露光装置等では、搬送装置が用いられている。特に、生産ラインにおける搬送装置は、ファクトリーオートメーション化された生産ライン内又は生産ラインの間の複数のステーションの間で、部品等のワークを搬送する。また、プロセス装置中の搬送装置として使われる場合もある。搬送装置としては、可動磁石型リニアモータによる搬送装置が既に提案されている。
可動磁石型リニアモータによる搬送装置では、リニアガイド等の機械的な接触を伴う案内装置を使って搬送装置を構成する。またリニアモータの構成として、搬送方向への磁石の列を配置し、コイルの列を磁石の列に対向配置して、いずれかを可動子とし、もう一方を固定子として単軸駆動を行う構成が一般的である。特許文献1に示すように、搬送方向およびその直交方向への2軸駆動を行う場合は、磁石とコイルを2セット直交するように配置することで実現できる。
また、特許文献2には、1つの磁石列と2種類のコイル列によって複数軸方向への搬送が可能な搬送装置が記載されている。特許文献2で記載されている搬送装置は、可動子として三相コイルのまわりに単相コイルを配置し、可動子の移動通路の両側に磁石列を対向配置することで、2軸駆動を可能にしている。
特開平7−318699号 特許第5240563号
しかしながら、先行技術では2軸駆動を行うために2種類のコイルを使用しており、また磁石についてはコイルを挟む形で2列使用している。そのため、装置構成も大きくなり、その分のコストも増加しているといった問題がある。
本発明は、さらなる小型化と低コスト化可能な搬送装置を提供することを目的としている。
本発明の搬送装置は、第1の方向に沿って配置された複数のコイルと、前記複数のコイルに沿って移動する可動子と、を有する搬送装置において、前記可動子は、第1の方向に沿って配置された第1の磁石群と、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って配置された第2の磁石群と、を有し前記複数のコイルのうちの少なくとも一つは、コアと巻き線部とヨークを有し、前記ヨークは、前記第1の方向に沿って前記巻線部の外周に隣接して設けられていることを特徴とする。
また、本発明の搬送装置は、第1の方向に沿って配置された複数のコイルと、前記複数のコイルに沿って移動する可動子と、を有する搬送装置において、前記可動子は、第1の方向に沿って配置された第1の磁石群と、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って配置された第2の磁石群と、前記第1の磁石群が配置されている第1のヨークと、前記第2の磁石群が配置されている第2のヨークと、を有し、前記第1のヨークと前記第2のヨークとは所定距離離れて配置されていることを特徴とする。
本発明の物品の製造方法は、上記の搬送装置により搬送されたワークに加工を行ない、物品を製造することを特徴とする。
本発明によれば、より小型化および低コスト化した搬送装置を実現できる。
本発明の第1実施形態を示す側面図及び上面図である。 図1の断面図である。 図1の固定子部分の断面図である。 本発明の第1実施形態におけるコイルを説明する断面図である。 本発明の第1実施形態におけるコイルの磁気回路を説明する概念図である。 本発明の第1実施形態においてY方向に力を印加する方法を説明する概念図である。 本発明の第1実施形態のシステム構成を示す概略図である。 本発明の第1実施形態の姿勢制御方法を示す概略図である。 本発明の第1実施形態において可動子位置算出関数による処理を説明する概略図である。 本発明の第1実施形態において可動子姿勢算出関数による処理を説明する概略図である。 本発明の第1実施形態においてX方向に力を印加する方法を説明する概略図である。 本発明の第2実施形態を示す側面図及び上面図である。 本発明の第2実施形態におけるY方向の推力について説明する側面図及び上面図である。 本発明の第2実施形態におけるY方向の推力について説明する側面図及び上面図である。 本発明の第2実施形態におけるY方向の推力について説明する側面図及び上面図である。 本発明の第2実施形態を示す可動子の上面図である。
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について図1乃至図11を用いて説明する。
図1は、本実施形態による可動子101及び固定子201を含む搬送装置の全体構成を示す概略図である。なお、図1は、可動子101及び固定子201の主要部分を抜き出して示したものである。また、図1(a)は可動子101を後述のY方向から見た図であり、図1(b)は可動子101を後述のZ方向から見た図である。
まず、以下の説明において用いる座標軸、方向等を定義する。まず、可動子101の搬送方向である水平方向に沿ってX軸をとり、可動子101の搬送方向をX方向とする。また、X方向と直交する方向である鉛直方向に沿ってZ軸をとり、鉛直方向をZ方向とする。また、X方向及びZ方向に直交する方向に沿ってY軸をとり、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。さらに、Z軸周りの回転をWzとする。また、乗算の記号として“*”を使用する。
本実施形態による搬送装置の全体構成について図1を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態による搬送装置1は、台車、スライダ又はキャリッジを構成する可動子101と、搬送路を構成する固定子201とを有している。搬送装置1は、可動磁石型リニアモータ(ムービング永久磁石型リニアモータ、可動界磁型リニアモータ)による搬送装置である。
搬送装置1は、例えば、固定子201により可動子101を搬送することにより、可動子101上によって搬送されるワーク102を、ワーク102に対して加工作業を施す工程装置に搬送する。ワークに加工作業を施すことにより、高精度な物品を製造することができる。なお、図1では、固定子201に対して1台の可動子101を示しているが、これに限定されるものではない。搬送装置1においては、複数台の可動子101が固定子201上を搬送されうる。
次に、本実施形態による搬送装置1における搬送対象である可動子101について図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態による搬送装置1を示す概略図である。なお、図2は、可動子101及び固定子201をX方向から見た図である。また、図2(a)は、図1(b)の(A)−(A)線に沿った断面を示している。また、図2(b)は、図1(b)の(B)−(B)線に沿った断面を示している。
図1及び図2に示すように、可動子101は、永久磁石103として、永久磁石103a、103b、103c、103dを有している。
永久磁石103は、可動子101のX方向に沿った上面に1列配置されて取り付けられている。具体的には、可動子101の上面に、永久磁石103a、103b、103c、103dが取り付けられている。なお、以下では、特に区別する必要がない限り、可動子101の永久磁石を単に「永久磁石103」と表記する。この場合、「永久磁石103a」、「永久磁石103b」、「永久磁石103c」又は「永久磁石103d」と表記して、各永久磁石103を個別に特定する。
永久磁石103a、103dは、可動子101のX方向に沿った上面におけるX方向の両端部に取り付けられている。永久磁石103b、103cは、可動子101の上面の永久磁石103a、103d間に取り付けられている。永久磁石103a、103b、103c、103dは、例えば、X方向に等ピッチに配置されている。
永久磁石103a、103dは、それぞれ可動子101の中心である原点OからX方向の両側に距離rz3だけ離れた位置に取り付けられている。永久磁石103c、103bは、それぞれ原点OからX方向の両側に距離ry3だけ離れた位置に取り付けられている。
永久磁石103a、103dは、それぞれY方向に沿って配置された2個の永久磁石のセットである。永久磁石103a、103dは、それぞれ、固定子201側を向く外側の磁極の極性が交互に異なるように2個の永久磁石がY方向に沿って並べられて構成されたものである。なお、永久磁石103a、103dを構成するY方向に沿って配置された永久磁石の数は、2個に限定されるものではなく、複数個であればよい。また、永久磁石103a、103dを構成する永久磁石が配置される方向は、必ずしも搬送方向であるX方向と直交するY方向である必要はなく、X方向と交差する方向であればよい。すなわち、永久磁石103a、103dは、それぞれ磁極の極性が交互になるようにX方向と交差する方向に沿って配置された複数の永久磁石からなる磁石群であればよい。
一方、永久磁石103b、103cは、それぞれX方向に沿って配置された3個の永久磁石のセットである。永久磁石103b、103cは、それぞれ、固定子201側を向く外側の磁極の極性が交互に異なるように3個の永久磁石がX方向に沿って並べられて構成されている。なお、永久磁石103b、103cを構成するX方向に沿って配置された永久磁石の数は、3個に限定されるものではなく、複数個であればよい。すなわち、永久磁石103b、103cは、磁極の極性が交互になるようにX方向に沿って配置された複数の永久磁石からなる磁石群であればよい。
本明細書において、X方向に沿って配置された複数の永久磁石を第一の磁石群、X方向と交差する方向に配置された複数の永久磁石を第二の磁石群、第一の磁石群およびまたは第二の磁石群を単に磁石群と称する場合がある。
各永久磁石103は、可動子101の上面に設けられた磁石用ヨーク107に取り付けられている。磁石用ヨーク107は、磁性体あるいは透磁率の大きな材料、例えば鉄で構成されている。本明細書において、透磁率の大きな材料とは、比透磁率が1000以上の材料のことであるとする。
永久磁石103が配置された可動子101は、固定子201の複数のコイル202に電流を流すことにより後述するように永久磁石103が受ける電磁力により姿勢が3軸制御されつつ移動可能に構成されている。
可動子101は、X方向に沿って配置された複数のコイル202に沿ってX方向に移動可能である。可動子101は、その上面、側面、あるいは下面に搬送すべきワーク102を載置あるいは装着した状態で搬送される。可動子101は、例えば、ワークホルダ等のワーク102を可動子101上に保持する保持機構を有していてもよい。
次に、本実施形態による搬送装置1における固定子201について図1(a)、図2及び図3を用いて説明する。
図3は、固定子201のコイル202を示す概略図である。なお、図3は、コイル202をZ方向から下から上の方向へ見た図である。
固定子201は、可動子101の搬送方向であるX方向に沿って1列に配置された複数のコイル202を有している。固定子201には、複数のコイル202が可動子101に対向するように取り付けられている。固定子201は、搬送方向(第1の方向)であるX方向に延在して可動子101の搬送路を形成する。
図1及び図2に示すように、固定子201に沿って搬送される可動子101は、リニアスケール104と、Yターゲット105とを有している。リニアスケール104、Yターゲット105は、それぞれ例えば可動子101の側面部にX方向に沿って取り付けられている。
固定子201は、複数のコイル202と、複数のリニアエンコーダ204と、複数のYセンサ205と、複数のボールローラ207とを有している。このとき、ボールローラ207は搬送時に可動子101のガイドとして使用されるが、必ずしもボールローラである必要はなく、エアーなどにより微小に浮上させた搬送方式であってもよい。
複数のコイル202は、可動子101の上面の永久磁石103と対向可能なように、X方向に沿って1列に配置されて固定子201に取り付けられている。1列に配置された複数のコイル202は、可動子101の永久磁石103a、103b、103c、103dと対向可能にX方向に沿って配置されている。
本実施形態では、可動子101に対向するコイル202の列が、それぞれ、互いに構成する複数の永久磁石の配置方向が異なる永久磁石103a、103d及び永久磁石103b、103cに対向可能に配置されている。このため、少ない列数のコイル202で、後述するように可動子101に対して搬送方向及び搬送方向とは異なる力を印加することができ、よって可動子101の搬送制御及び姿勢制御を実現することができる。
こうして、複数のコイル202は、可動子101が搬送される方向に沿って取り付けられている。複数のコイル202は、X方向に所定の間隔で並べられている。また、各コイル202は、その中心軸がZ方向を向くように取り付けられている。なお、コイル202は、コアにコイルが巻かれており、本実施形態において、コイルの位置とは、コアの位置を示す。
複数のコイル202は、例えば3個ずつの単位で電流制御されるようになっている。そのコイル202の通電制御される単位を「コイルユニット203」と記載する。コイル202は、通電されることにより、可動子101の永久磁石103との間で電磁力を発生して可動子101に対して力を印加することができる。
コイルユニット203は、複数のコイル、単数のコイルユニット、あるいは複数のコイルユニットごとに、図1(a)に示すように、コイルボックス2031の中に収容され、コイルボックス2031a、2031bごとにX方向に沿って配置されていてもよい。本実施形態では、コイルボックスの中に収容される複数のコイル、単数のコイルユニット、あるいは複数のコイルユニットをコイル群と称する場合がある。
次に、本実施形態のコイル202にについて図4を用いて説明する。図4は、本発明の本実施形態におけるコイルを説明する断面図である。
わかりやすくするために、図4(a)に一般的なコイル202wの概念図を示す。コイル202wは、コア209と電線を巻きつけた巻線部210からなる構成となっている。
図4(b)に、本実施形態に係るコイルの概念図を示す。図4(b)は、図3に示した複数のコイル202のうちの一つのコイル202を示している。本実施形態に係る複数のコイル202のうちの少なくとも一つは、図4(b)に示すようにコイル用ヨーク208を含んでいる。つまり、本実施形態に係るコイル202は、コア209、巻線部210、およびコイル用ヨーク208からなる構成となっている。コイル用ヨーク208は、コア209と接続されるとともに、巻線部210に電流を流すことにより形成される磁路上に配置される。一例として、図4(b)に示すようにコイル用ヨーク208は、搬送方向(第1の方向)に沿って巻線部210の外周に隣接して設けられる。コイル用ヨーク208は、磁性体あるいは透磁率の大きな材料、例えば鉄で構成されている。本明細書において、透磁率の大きな材料とは、比透磁率が1000以上の材料のことであるとする。また、コイル用ヨーク208と巻線部210は必ずしも接触している必要はない。
コイル用ヨーク208の形状は、必ずしも上記の形状である必要はなく、コイル用ヨーク208とコア209の間が接続されていなくてもよい。例えば、コイル202のY方向の面の両側を挟む形で搬送方向に沿って取り付けられる形などでもよく、限定されるものではない。ただし、コイル用ヨーク208は、コア209の可動子と対抗する面と反対側の面もしくは、コア209の側面と接続されていることが望ましい。
次に、図5を用いて、図4(a)に記載したコイル202wおよび図4(b)に記載したコイル202における磁束の変化について説明する。図5(a)ではコイル用ヨーク208がないとき、図5(b)では、コイル用ヨーク208を取り付けた構成での磁気回路の概念図を示す。図5(a)及び図5(b)は、図4(a)及び図4(b)の一部を拡大した概念図となっている。
図4(a)においては、大気中及びコア209に磁路211が形成される。このとき図5(a)において、構成される磁気回路の磁束Φ[Wb]について説明する。簡単のため、コイルの巻数Nと電流I[A]と断面積S[m^2]は一定として考え、大気中の比透磁率は1に近似できるものとする。また、コア209の材料は鉄であるとする。
大気中において、簡単のため、図5(a)の破線部のような磁路長l1[m]とl3で断面積S[m^2]の磁路が形成されるとし、このときの透磁率をμ0[H/m]として、磁気抵抗をRm1[1/H]とする。
同様に、コア209において、磁路長l2[m]で断面積S[m^2]の磁路が形成されるとし、このときの透磁率をμ0*μr1[H/m]として、磁気抵抗をRm2[1/H]とする。また、起磁力をN*Iとする。
このときの磁気抵抗Rm1、Rm2及び磁束Φは、以下の式(1)のように表される。
Rm1=(l1+l3)/(μ0*S)・・・(1a)
Rm2=l2/(μ0*μr1*S)・・・(1b)
Φ=N*I/(Rm1+Rm2)・・・(1c)
次に、図4(b)においては、大気中、コア209及びコイル用ヨーク208中に磁路212が形成される。このとき同様に図5(b)において、構成される磁気回路の磁束Φ[Wb]について説明する。簡単のため、コイルの巻数Nと電流I[A]と断面積S[m^2]は一定として考え、大気中の比透磁率は1に近似できるものとする。また、コア209及びコイル用ヨーク208の材料は鉄であると仮定する。
大気中において、簡単のため、図6の破線部のような磁路長l1[m]で断面積S[m^2]の磁路が形成されるとし、このときの透磁率をμ0[H/m]として、磁気抵抗をRm1[1/H]とする。
コア209において、磁路長l2[m]で断面積S[m^2]の磁路が形成されるとし、このときの透磁率をμ0*μr1[H/m]として、磁気抵抗をRm2[1/H]とする。
コイル用ヨーク208において、磁路長l3[m]で断面積S[m^2]の磁路が形成されるとし、このときの透磁率をμ0*μr2[H/m]として、磁気抵抗をRm3[1/H]とする。
また、起磁力をN*Iとする。
このときの磁気抵抗Rm及び磁束Φは、以下の式(2)のように表される。
Rm1=l1/(μ0*S)・・・(2a)
Rm2=l2/(μ0*μr1*S)・・・(2b)
Rm3=l3/(μ0*μr2*S)・・・(2c)
Φ=N*I/(Rm1+Rm2+Rm3)・・・(2d)
一般的に、真空中の透磁率に比べ、鉄の透磁率は5000〜200000倍程度であり、非常に大きいことが知られている。また、真空中と大気中の透磁率はほぼ同じであるため、μr2は1と近似できる。そのため、式(1)と(2)を比べると、式(1)におけるRm1のl3/(μ0*S)に比べ、式(2)におけるl3/(μ0*μr2*S)は非常に小さくなることがわかる。したがって図4(b)において、コイル用ヨーク208を追加した分だけ、磁気抵抗が減少する。
以上により、図4(a)に比べて、コイル用ヨーク208を追加した図4(b)において、磁束Φが増加することがわかる。
次に、磁束ΦとY方向の推力Fyの関係について図6を用いて説明する。図6は一般的なコイル202wと可動子101の断面図である。簡単のため、可動子には永久磁石222が一つ取り付けられているものとして、説明する。
コイルコア209の断面積を[m^2]、大気中の磁束密度をμ0[H/m]、コイル202wと可動子101の空間ギャップ221の磁束密度をB[Wb/m^2]とする。
コイル202wに対して可動子101側がN極となるように電流を流したとき、可動子101とコイル202wには、磁路213が形成される。空間ギャップ221の磁気エネルギーWmは単位面積あたり次式で表せる。
Wm=B^2/2μ0 [N/m^2]・・・(3)
吸引力Fmは上式に断面積Sを掛けることで以下のように表せる。
Fm=S*B^2/2μ0 [N]・・・(4)
磁束密度は単位面積あたりの磁束で表せるので、以下のように示される。
B=Φ/S [Wb/m^2]・・・(5)
式(4)、(5)より、吸引力Fmは磁束Φで表せる事がわかる。
Fm=Φ^2/2*μ0*S [N]・・・(6)
このとき、吸引力Fmはコイルコア209と永久磁石103d1の間に働く力Fm1となり、その力はZ方向の力Fm1zとY方向の力Fm1yに分解できる。Y方向の推力Fyは、Y方向に分力であり、Fm1yで示される。
したがって、磁束Φが増加した場合には、推力Fyも増加することがわかる。このことから、コイルヨーク208を設けることによって磁束Φを増加させることで、Y方向の推力を増加させることができることがわかる。
また、図1(b)の永久磁石103dで示すように、永久磁石222の磁石の極性を逆にした永久磁石をY方向負側に隣接するように取り付けた場合を考える。このとき、取り付けた永久磁石とコイルコア209との力は反発の力となり、前記の推力Fm1yと合わせてY方向の推力はおよそ倍となる。
次に、本実施形態による搬送装置1を制御する制御システムについてさらに図7を用いて説明する。図7は、本実施形態による搬送装置1を制御する制御システム3を示す概略図である。
複数のリニアエンコーダ204は、それぞれ可動子101のリニアスケール104と対向可能なようにX方向に沿って固定子201に取り付けられている。各リニアエンコーダ204は、可動子101に取り付けられたリニアスケール104を読み取ることで、可動子101のリニアエンコーダ204に対する相対的な位置を検出して出力することができる。
複数のYセンサ205は、それぞれ可動子101のYターゲット105と対向可能なようにX方向に沿って固定子201に取り付けられている。各Yセンサ205は、可動子101に取り付けられたYターゲット105との間のY方向の相対距離を検出して出力することができる。Yターゲット105とは、可動子の目標とする搬送方向と平行な面を有する凸部であり、この可動子の目標とする搬送方向と平行な面を固定子に固定されたYセンサ205で測定する。これにより、可動子のY方向の姿勢を検知することが可能となる。可動子との間の相対距離を直接検出することも可能であるが、可動子自体を高精度に加工することが困難である場合があるため、そのような場合はYターゲット105を用いることができる。
図7に示すように、制御システム1は、統合コントローラ301と、コイルコントローラ302と、センサコントローラ304とを有し、可動子101と固定子201とを含む搬送装置1を制御する制御装置として機能する。統合コントローラ301には、コイルコントローラ302が通信可能に接続されている。また、統合コントローラ301には、センサコントローラ304が通信可能に接続されている。
コイルコントローラ302には、複数の電流コントローラ303が通信可能に接続されている。コイルコントローラ302及びこれに接続された複数の電流コントローラ303は、1列のコイル202に対応して設けられている。各電流コントローラ303には、コイル202が接続されていてもよいし、複数のコイル202が接続されていてもよいし、コイルユニット203(不図示)が接続されていてもよいし複数のコイルユニット203が接続されていてもよい。電流コントローラ303は、接続されたコイルユニット203の各々のコイル202の電流の大きさを制御することができる。
コイルコントローラ302は、接続された各々の電流コントローラ303に対して目標となる電流値を指令する。電流コントローラ303は接続されたコイル202の電流量を制御する。
センサコントローラ304には、複数のリニアエンコーダ204及び複数のYセンサ205が通信可能に接続されている。
複数のリニアエンコーダ204は、可動子101が搬送中もそのうちの1つが必ず1台の可動子101の位置を測定できる間隔で固定子201に取り付けられている。また、複数のYセンサ205は、そのうちの2つが必ず1台の可動子101のYターゲット105を測定できる間隔で固定子201に取り付けられている。
統合コントローラ301は、リニアエンコーダ204及びYセンサ205からの出力に基づき、複数のコイル202に印加する電流指令値を決定して、コイルコントローラ302に送信する。コイルコントローラ302は、統合コントローラ301からの電流指令値に基づき、上述のように電流コントローラ303に対して電流値を指令する。これにより、統合コントローラ301は、制御装置として機能し、固定子201に沿って可動子101を搬送するとともに、搬送する可動子101の姿勢を3軸で制御する。
以下、統合コントローラ301により実行される可動子101の姿勢制御方法について図7、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態による搬送装置1における可動子101の姿勢制御方法を示す概略図である。図8は、可動子101の姿勢制御方法の概略について主にそのデータの流れに着目して示している。統合コントローラ301は、以下に説明するように、可動子位置算出関数401、可動子姿勢算出関数402、可動子姿勢制御関数403及びコイル電流算出関数404を用いた処理を実行する。これにより、統合コントローラ301は、可動子101の姿勢を3軸で制御しつつ、可動子101の搬送を制御する。なお、統合コントローラ301に代えて、コイルコントローラ302が統合コントローラ301と同様の処理を実行するように構成することもできる。
まず、可動子位置算出関数401は、複数のリニアエンコーダ204からの測定値及びその取り付け位置の情報から、搬送路を構成する固定子201上にある可動子101の台数及び位置を計算する。これにより、可動子位置算出関数401は、可動子101に関する情報である可動子情報406の可動子位置情報(X)及び台数情報を更新する。可動子位置情報(X)は、固定子201上の可動子101の搬送方向であるX方向における位置を示している。可動子情報406は、例えば図8中にPOS−1、POS−2、…と示すように固定子201上の可動子101ごとに用意される。
次いで、可動子姿勢算出関数402は、可動子位置算出関数401により更新された可動子情報406の可動子位置情報(X)から、各々の可動子101を測定可能なYセンサ205を特定する。次いで、可動子姿勢算出関数402は、特定されたYセンサ205から出力される値に基づき、各々の可動子101の姿勢に関する情報である姿勢情報(Y,Wz)を算出して可動子情報406を更新する。可動子姿勢算出関数402により更新された可動子情報406は、可動子位置情報(X)及び姿勢情報(Y,Wz)を含んでいる。
次いで、可動子姿勢制御関数403は、可動子位置情報(X)及び姿勢情報(Y,Wz)を含む現在の可動子情報406及び姿勢目標値から、各々の可動子101について印加力情報408を算出する。印加力情報408は、各々の可動子101に印加すべき力の大きさに関する情報である。印加力情報408は、後述する印加すべき力Tの力の2軸成分(Tx,Ty)及びトルクの1軸成分(Twz)に関する情報を含んでいる。印加力情報408は、例えば図8中にTRQ−1、TRQ−2、…と示すように固定子201上の可動子101ごとに用意される。
次いで、コイル電流算出関数404は、印加力情報408及び可動子情報406に基づき、各コイル202に印加する電流指令値409を決定する。
こうして、統合コントローラ301は、可動子位置算出関数401、可動子姿勢算出関数402、可動子姿勢制御関数403及びコイル電流算出関数404を用いた処理を実行することにより、電流指令値409を決定する。統合コントローラ301は、決定した電流指令値409をコイルコントローラ302に送信する。
ここで、可動子位置算出関数401による処理について図9を用いて説明する。図9は、可動子位置算出関数による処理を説明する概略図である。
図9において、基準点Oeは、リニアエンコーダ204が取り付けられている固定子201の位置基準である。また、基準点Osは、可動子101に取り付けられているリニアスケール104の位置基準である。図9では、可動子101として2台の可動子101a、101bが搬送され、リニアエンコーダ204として2つのリニアエンコーダ204a、204b、204cが配置されている場合を示している。なお、リニアスケール104は、各可動子101a、101bの同じ位置にX方向に沿って取り付けられている。
例えば、図9に示す可動子101bのリニアスケール104には、1つのリニアエンコーダ204cが対向している。リニアエンコーダ204cは、可動子101bのリニアスケール104を読み取って距離Pcを出力する。また、リニアエンコーダ204cの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はScである。したがって、可動子101bの位置Pos(101b)は次式(7)により算出することができる。
Pos(101b)=Sc−Pc…式(7)
例えば、図9に示す可動子101aのリニアスケール104には、2つのリニアエンコーダ204a、204bが対向している。リニアエンコーダ204aは、可動子101aのリニアスケール104を読み取って距離Paを出力する。また、リニアエンコーダ204aの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はSaである。したがって、リニアエンコーダ204aの出力に基づく可動子101aのX軸上の位置Pos(101a)は、次式(8)で算出することができる。
Pos(101a)=Sa−Pa…式(8)
また、リニアエンコーダ204bは、可動子101bのリニアスケール104を読み取って距離Pbを出力する。また、リニアエンコーダ204bの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はSbである。したがって、リニアエンコーダ204bの出力に基づく可動子101aのX軸上の位置Pos(101a)′は、次式(9)により算出することができる。
Pos(101a)′=Sb−Pb…式(9)
ここで、各々のリニアエンコーダ204a、204bの位置は予め正確に測定されているため、2つの値Pos(101a)、Pos(101a)′の差は十分に小さい。このように2つのリニアエンコーダ204の出力に基づく可動子101のX軸上の位置の差が十分小さい場合は、それら2つのリニアエンコーダ204は、同一の可動子101のリニアスケール104を観測していると判定することができる。
なお、複数のリニアエンコーダ204が同一の可動子101と対向する場合は、複数のリニアエンコーダ204の出力に基づく位置の平均値を算出する等して、観測された可動子101の位置を一意に決定することができる。
可動子位置算出関数401は、上述のようにしてリニアエンコーダ204の出力に基づき、可動子位置情報として可動子101のX方向における位置Xを算出して決定する。
次に、可動子姿勢算出関数402による処理について図10を用いて説明する。
図10では、可動子101として可動子101cが搬送され、Yセンサ205としてYセンサ205a、205bが配置されている場合を示している。図10に示す可動子101cのYターゲット105には、2つのYセンサ205a、205bが対向している。2つのYセンサ205a、205bが出力する相対距離の値をそれぞれYa、Ybとし、Yセンサ205a、205b間の間隔がLyの場合、可動子101cのZ軸周りの回転量Wzは、次式(10)により算出される。
Wz=(Ya−Yb)/Ly…式(10)
なお、可動子101の位置によっては3つ以上のYセンサ205が対向する場合もありうる。その場合、最小二乗法等を使ってYターゲット105の傾き、すなわちZ軸周りの回転量Wzを算出することができる。
可動子姿勢算出関数402は、上述のようにして、可動子101の姿勢情報としてZ軸周りの回転量Wzを算出することができる。
また、可動子姿勢算出関数402は、次のようにして可動子101の姿勢情報として可動子101のY方向の位置Yを算出することができる。
まず、可動子101のY方向の位置Yの算出について図10を用いて説明する。図10において、可動子101cがかかる2つのYセンサ205をそれぞれYセンサ205a、205bとする。また、Yセンサ205a、205bの測定値をそれぞれYa、Ybとする。また、Yセンサ205aの位置とYセンサ205bの位置との中点をOe′とする。さらに、式(7)〜(10)で得られた可動子101cの位置をOs′とし、Oe′からOs′までの距離をdX′とする。このとき、可動子101cのY方向の位置Yは、次式により近似的に計算して算出することができる。
Y=(Ya+Yb)/2−Wz*dX′
なお、位置YについてWzの回転量が大きい場合には、さらに近似の精度を高めて算出することができる。
次に、コイル電流算出関数404による処理について図1を用いて説明する。なお、以下で用いる力の表記において、X方向及びY方向の力が働く方向をそれぞれx、yで示し、図1におけるX+側をf、X−方向をbで示す。
図1において各永久磁石103に働く力をそれぞれ次のように表記する。各永久磁石103に働く力は、電流が印加された複数のコイル202により永久磁石103が受ける電磁力である。永久磁石103は、電流が印加された複数のコイル202により、可動子101の搬送方向であるX方向の電磁力のほか、X方向とは異なる方向であるY方向の電磁力を受ける。永久磁石103に働く力の表記は、それぞれ次のとおりである。
Fxf:永久磁石103bのX方向に働く力
Fyf:永久磁石103aのY方向に働く力
Fxb:永久磁石103cのX方向に働く力
Fyb:永久磁石103dのY方向に働く力
また、可動子101に対して印加される力Tを次式(11)により表記する。なお、Tx、Tyは、力の2軸成分であり、それぞれ力のX方向成分及びY方向成分である。また、Twzは、モーメントの1軸成分であり、モーメントのZ軸周り成分である。本実施形態による搬送装置1は、これら力Tの3軸成分(Tx,Ty,Twz)を制御することにより、可動子101の姿勢を3軸で制御しつつ、可動子101の搬送を制御する。
T=(Tx,Ty,Twz)…式(11)
すると、Tx、Ty、Twzは、それぞれ次式(12a)、(12b)、及び(12c)により算出される。
Tx=Fxf+Fxb…式(12a)
Ty=Fyf+Fyb…式(12b)
Twz=(Fyf−Fyb)*rz3…式(12c)
次に、コイル電流算出関数404が、各永久磁石103に働く力から各コイル202に印加する電流量を決定する方法について説明する。
まず、N極及びS極の極性がY方向に交互に並んだ永久磁石103a、103dにY方向の力を印加する場合について説明する。なお、コイル202は、そのY方向の中心が永久磁石103a、103dのY方向の中心に位置するように配置されている。これにより、永久磁石103a、103dに対してX方向及びZ方向に働く力は、殆ど発生しないようになっている。
Xを可動子101の位置、jを列に並んだコイル202の番号として、単位電流当たりのコイル202(j)のY方向に働く力大きさをFy(j、X)とし、コイル202(j)に印加する電流をi(j)とする。なお、コイル202(j)は、j番目のコイル202である。この場合、電流i(j)は、次式(13)を満足するように決定することができる。なお、次式(13)は、永久磁石103dに働く力の大きさFybついての式である。他の永久磁石103aについても同様にしてコイル202に印加する電流を決定することができる。
ΣFy(j、X)*i(j)=Fyb…式(13)
なお、複数のコイル202が永久磁石103に力を及ぼす場合には、各コイル202が及ぼす力に応じて単位電流当たりの力の大きさで電流を按分することにより、永久磁石103に働く力を一意に決定することができる。
次に、N極、S極及びN極の極性がX方向に交互に並んだ永久磁石103bに対してX方向に対して力を印加する方法について説明する。図11は、永久磁石103bに対してX方向に対して力を印加する方法を説明する概略図である。コイル電流算出関数404は、以下に従って、永久磁石103bに対してX方向に対して力を印加するためにコイル202に印加する電流指令値を決定する。なお、永久磁石103cについても、永久磁石103bと同様にX方向に対して力を印加することができる。
Xを可動子101の位置、jを列に並んだコイル202の番号として、単位電流当たりのコイル202(j)のX方向に働く力の大きさを、Fx(j、X)とする。また、コイル202(j)の電流の大きさをi(j)とする。なおコイル202(j)は、j番目のコイル202である。
図11(a)は、横にX軸、縦にY軸を取り、永久磁石103bに対向する6個のコイル202を抜き出して示す図である。図11(b)は、図11(a)をY方向から見た図である。コイル202には、X方向に並んだ順に1から6までの番号jを付与し、以下では例えばコイル202(1)のように表記して各コイル202を特定する。
図11(a)及び(b)に示すように、コイル202は、距離Lのピッチでされている。一方、可動子101の永久磁石103は、距離3/2*Lのピッチで配置されている。
図11(c)のグラフは、図11(a)及び(b)に示す各々のコイル202に対して単位電流を印加した際に発生するX方向の力Fxの大きさを模式的に示したグラフである。
簡単のため、図11では、コイル202のX方向の位置の原点Ocをコイル202(3)とコイル202(4)の中間とし、永久磁石103bのX方向の中心Omを原点としている。このため、図11は、OcとOmとが合致した場合、すなわちX=0の場合を示している。
このとき、例えばコイル202(4)に対して働く単位電流当たりの力は、X方向にFx(4,0)の大きさである。また、コイル202(5)に対して働く単位電流当たりの力は、X方向にFx(5,0)の大きさである。
ここで、コイル202(1)〜202(6)に印加する電流値をそれぞれi(1)〜i(6)とする。すると、永久磁石103bに対して、X方向に働く力の大きさFxfは、それぞれ一般的に次式(14)で表される。
Fxf=Fx(1,X)*i(1)+Fx(2,X)*i(2)+Fx(3,X)*i(3)+Fx(4,X)*i(4)+Fx(5,X)*i(5)+Fx(6,X)*i(6)…式(14)
上記式(14)を満足する電流値i(1)〜i(6)をそれぞれコイル202(1)〜202(6)に印加されるように電流指令値を決定することにより、永久磁石103bに対してX方向に独立に力を印加することができる。コイル電流算出関数404は、永久磁石103に対してX方向に独立に力を印加するために、上述のようにしてコイル202(j)に印加する電流指令値を決定することができる。
こうして決定される電流指令値により可動子101のX方向に力が印加される。可動子101に印加されるX方向の力により、可動子101は、X方向に移動する推進力を得てX方向に移動する。
こうして、統合コントローラ301は、複数のコイル202に印加する電流を制御することにより、可動子101に印加する力の3軸成分のそれぞれを制御する。
なお、可動子101の搬送により永久磁石103bの中心Omに対してコイル202の中心Ocが移動した場合、すなわちX≠0の場合は、移動した位置に応じたコイル202を選択することができる。さらに、コイル202に発生する単位電流当たりの力に基づいて、上記と同様の計算を実行することができる。
上述のようにして、統合コントローラ301は、複数のコイル202に印加する電流の電流指令値を決定して制御することにより、固定子201上での可動子101の姿勢を3軸で制御しつつ、可動子101の非接触での固定子201上の搬送を制御する。すなわち、統合コントローラ301は、可動子101の搬送を制御する搬送制御手段として機能し、複数のコイル202により永久磁石103が受ける電磁力を制御することにより、固定子201上における可動子101の非接触での搬送を制御する。また、統合コントローラ301は、可動子101の姿勢を制御する姿勢制御手段として機能し、固定子201上における可動子101の姿勢を3軸で制御する。なお、制御装置としての統合コントローラ301の機能の全部又は一部は、コイルコントローラ302その他の制御装置により代替されうる。
このように、本実施形態によれば、1列に配置された複数のコイル202により、可動子101に対して、2軸の力成分(Tx,Ty)及び1軸のモーメント成分(Twz)の3軸の力を印加することができる。これにより、可動子101の姿勢を3軸で制御しつつ、可動子101の搬送を制御することができる。本実施形態によれば、制御すべき変数である力の3軸成分の数よりも少ない列数である1列のコイル202により、可動子101の姿勢の3軸制御しつつ、可動子101の搬送を制御することができる。
したがって、本実施形態によれば、コイル202の列数を少なく構成することができるため、システムの大型化や複雑化を伴うことなく、可動子101の姿勢を制御しつつ、可動子101を搬送することができる。さらに、本実施形態によれば、コイル202の列数を少なく構成することができるため、安価に小型の搬送装置を構成することができる。
本実施形態では列数を少なく構成する例(1列のコイル)を示したが、もちろんX方向に沿って複数のコイル202からなるコイル列を複数有していてもよい。
[第2実施形態]
図12は、本発明の第2実施形態による可動子101及び固定子201を含む搬送装置の全体構成を示す概略図である。なお、図12は、可動子101及び固定子201の主要部分を抜き出して示したものである。また、図12(a)は図12(b)の(C)−(C)断面をY方向から見た図であり、図12(b)は可動子101をZ方向から見た図である。本実施形態においては、第1実施形態の可動子の各永久磁石103a、103d、103bおよび103cが、可動子101の上面に設けられた独立した磁石用ヨーク107に取り付けられている例を示す。つまり、永久磁石103aが第1のヨーク、永久磁石103bおよび103cが第2のヨーク、永久磁石103dが第3のヨークに取り付けられ、それぞれのヨークは所定距離離れて配置されている例を示す。第1実施形態と同様の作用を有する構成については同じ符号を付し説明を省略する。
まず、第一の実施形態で説明した、各永久磁石103a、103b、103c、103dが同じ磁石用ヨーク107に取り付けられている時の、永久磁石103cと永久磁石103dの間に形成される磁気回路について、図13を用いて説明する。図13は図1の一部を拡大した図であり、可動子101をY方向負側に図示する矢印の分だけ一定量動かした場合の例を示す概念図である。
図13に示すように、永久磁石103cにおいては、永久磁石103dに近い側から、永久磁石103c1、103c2及び103c3が配置されている。また、永久磁石103dにおいて、Y方向正の向きから、永久磁石103d1及び永久磁石103d2が配置されている。
また、永久磁石103c、103dに対向しているコイル202として、永久磁石103d1に対向するコイルをコイル202a、永久磁石103c1に対向するコイルをコイル202b、永久磁石103c2に対抗するコイルをコイル202cとする。
このとき、コイルに電流を流していない状態で、可動子101に働くY方向の推力について説明する。
図13に示すように、可動子101と固定子201の間において、磁路231a及び磁路231bが形成される。図13に示した磁路は、代表的なものであり、実際に形成される磁路はこの限りではない。磁路231aは、永久磁石103c1、コイル202b、コイル202a、永久磁石103d1及び磁石用ヨーク107により形成される。磁路231bは、永久磁石103c1、コイル202b、コイル202c、永久磁石103c2及び磁石用ヨーク107により形成される。
磁路231a及び磁路231bにより、コイル202bの可動子101側はS極として、コイル202aの可動子101側はN極として働くようになる。X方向には同様に磁路が形成され、固定子201側には対抗する永久磁石に対応した磁極が発生する。
このとき、永久磁石103c1の固定子201側がN極で、コイル202bの可動子101側がS極となるため、固定子201と可動子101の間には引き合う力が働く。これにより、可動子101にはY方向正側への推力Fa1が働く。これは固定子201と可動子101の中心が一致する方向の推力となる。
また磁路231aにより、永久磁石103d1の固定子201側がS極で、コイル202aの可動子101がN極となるため、固定子201と可動子101には引き合う力が働く。これにより、永久磁石103d1にはY方向負側への推力Fb1が働く。
同様にして磁路231bにより、永久磁石103c2の固定子201側がS極で、コイル202cの可動子101がN極となるため、固定子201と可動子101には引き合う力が働く。これにより、永久磁石103c2にはY方向正側への推力Fc1が働く。
このとき、Fa1とFc1は同一方向の推力であるが、Fb1は逆方向であり、Fb1は固定子201と可動子101の中心が一致する方向の推力を減少させる働きをする。
次に、可動子101をY方向正側に図13での移動量と同じ分だけ一定量動かした場合の例を示す概念図を図14に示す。図14は図12の一部を拡大した図である。
図14に示すように、可動子101と固定子201の間において、磁路231c及び磁路231dが形成される。図14に示した磁路は、代表的なものであり、実際に形成される磁路はこの限りではない。磁路231cは、永久磁石103c1、コイル202b、コイル202a、永久磁石103d2及び磁石用ヨーク107により形成される。磁路231dは、永久磁石103c1、コイル202b、コイル202c、永久磁石103c2及び磁石用ヨーク107により形成される。
磁路231c及び磁路231dにより、コイル202bの可動子101側はS極として、コイル202aの可動子101側はN極として働くようになる。X方向には同様に磁路が形成され、固定子201側には対抗する永久磁石に対応した磁極が発生する。
このとき、永久磁石103c1の固定子201側がN極で、コイル202bの可動子101側がS極となるため、固定子201と可動子101の間には引き合う力が働く。これにより、永久磁石103c1にはY方向正側への推力Fa2が働く。これは固定子201と可動子101の中心が一致する方向の推力となる。
また磁路231cにより、永久磁石103d2の固定子201側がN極で、コイル202aの可動子101がN極となるため、固定子201と可動子101には反発する力が働く。これにより、永久磁石103d2にはY方向正側への推力Fb2が働く。
同様にして磁路231dにより、永久磁石103c2の固定子201側がS極で、コイル202cの可動子101がN極となるため、固定子201と可動子101には引き合う力が働く。これにより、永久磁石103c2にはY方向正側への推力Fc2が働く。
このとき、Fa2、Fb2及びFc2は同一方向の推力であるため、Fb2はFb1と異なり固定子201と可動子101の中心が一致する方向の推力を増加させる働きをする。
以上により、可動子101がY方向正側と負側にそれぞれ同一の一定量移動した位置でのY方向の推力には偏りが発生することがわかる。
次に、本実施形態(各永久磁石103a、103bおよび103c、103dが、独立した磁石用ヨーク107に取り付けられている)の磁気回路について図15を用いて説明する。本実施形態では、図15に示すように各永久磁石103a、103bおよび103c、103dは、各々が独立した可動子101の上面に設けられた磁石用ヨーク107に取り付けられている。永久磁石103b及び103cも別々の磁石用ヨーク107の上に取り付けられていても良い。磁石用ヨーク107は、透磁率の大きな材料、例えば鉄で構成されている。
これにより、X方向に沿って配置された永久磁石103aと永久磁石103bの間、及び、永久磁石103cと永久磁石103dの間に、磁石用ヨーク107にギャップを設けることによってできた磁気抵抗の大きなギャップ108が配置される。
永久磁石103cと永久磁石103dの間のギャップ108は磁気抵抗が非常に大きいため、磁路231a及び図14で示した磁路231cを通る磁束が減少する。
このとき、図13で説明したときと同様に永久磁石103c1にFa3、永久磁石103c2にFc3が働く。しかし、永久磁石103d2に働くFb3については、磁路231aを通る磁束が減少しているため、Fb1に比べ減少する。
同様に磁路231cを通る磁束が減少すると図14で示したFb2が減少する。これにより、Y方向の推力の偏りを抑制することが可能となる。
また、可動磁石型リニアモータによる搬送装置では、図16に示すように搬送方向に対して永久磁石に一定の角度をつけることによって、コギングを抑制できることが知られている。
しかし、永久磁石に一定の角度をつけた場合には、永久磁石103dと永久磁石103cの距離が近くなる。このため、永久磁石103dと永久磁石103cの間に形成される磁路による推力の偏りがより大きく発生する。この場合においても、本実施形態の効果により、推力の偏りを抑えることができる。
101 可動子
102 ワーク
103 永久磁石
104 リニアスケール
105 Yターゲット
107 磁石用ヨーク
201 固定子
202 コイル
203 コイルユニット

Claims (6)

  1. 第1の方向に沿って配置された複数のコイルと、
    前記複数のコイルに沿って移動する可動子と、を有する搬送装置において、
    前記可動子は、第1の方向に沿って配置された第1の磁石群と、
    前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って配置された第2の磁石群と、を有し
    前記複数のコイルのうちの少なくとも一つは、コアと巻き線部とヨークを有し、前記ヨークは、前記第1の方向に沿って前記巻線部の外周に隣接して設けられていることを特徴とする搬送装置。
  2. 前記可動子において、
    前記第1の磁石群が配置されている第1のヨークと、
    前記第2の磁石群が配置されている第2のヨークと、を有し、
    前記第1のヨークと前記第2のヨークとは離れて配置されていること
    を特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
  3. 前記ヨークは、磁性体あるいは比透磁率が1000以上の材料であることを特徴とする請求項1または2記載の搬送装置。
  4. 前記第1のヨークおよび前記第2のヨークは、磁性体あるいは比透磁率が1000以上の材料であることを特徴とする請求項3記載の搬送装置。
  5. 第1の方向に沿って配置された複数のコイルと、
    前記複数のコイルに沿って移動する可動子と、を有する搬送装置において、
    前記可動子は、第1の方向に沿って配置された第1の磁石群と、
    前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って配置された第2の磁石群と、
    前記第1の磁石群が配置されている第1のヨークと、
    前記第2の磁石群が配置されている第2のヨークと、を有し、
    前記第1のヨークと前記第2のヨークとは所定距離離れて配置されていることを特徴とする搬送装置。
  6. 請求項1乃至請求項5いずれか一項に記載の搬送装置により搬送されたワークに加工を行ない、物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
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