JP2021126003A - 搬送装置、可動子、および物品の製造方法 - Google Patents

搬送装置、可動子、および物品の製造方法 Download PDF

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公介 勝浦
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【課題】 可動子を安定してスムーズに非接触で搬送することができる搬送装置および物品の製造方法を提供する。【解決手段】 第1の方向に沿って配置された複数のコイルと、前記複数のコイルに沿って移動する可動子を有する搬送装置であって、前記複数のコイルは、両隣のコイルとの間の間隔が所定の間隔で配置されたコイルと、両隣のコイルとの間の間隔のどちらかが、前記所定の間隔より広い間隔で配置されたコイルと、を備え、前記可動子は、前記可動子の第一の面から突出する複数の磁石と、前記可動子の端部に形成され、前記第一の面から突出する、磁性体あるいは比透磁率が10以上である材料からなる突出部と、を備え、前記可動子の前記突出部が、前記広い間隔で配置されたコイルと対向する際、前記対向するコイルに電流が印可されることを特徴とする。【選択図】 図1A

Description

本発明は、搬送装置、可動子および物品の製造方法に関する。
一般に、工業製品を組み立てるための生産ラインや半導体露光装置等では、搬送装置が用いられている。特に、生産ラインにおける搬送装置は、ファクトリーオートメーション化された生産ライン内又は生産ラインの間の複数のステーションの間で、部品等のワークを搬送する。また、プロセス装置中の搬送装置として使われる場合もある。搬送装置としては、可動磁石型リニアモータによる搬送装置が既に提案されている。
可動磁石型リニアモータによる搬送装置では、リニアガイド等の機械的な接触を伴う案内装置を使って搬送装置を構成する。しかしながら、リニアガイド等の案内装置を使った搬送装置では、リニアガイドの摺動部から発生する汚染物質、例えば、レールやベアリングの摩耗片や潤滑油、あるいはそれが揮発したもの等が生産性を悪化させるという問題があった。また、高速搬送時には摺動部の摩擦が大きくなってリニアガイドの寿命を小さくするという問題があった。
そこで、特許文献1には、搬送トレイを非接触で搬送可能な磁気浮上搬送装置が記載されている。文献1で記載されているような磁気浮上搬送装置は、搬送トレイの搬送方向に沿って、チャンバの上部には浮上用電磁石を、チャンバの側面には固定子コイルを一定間隔で並べることで安定して非接触での搬送を実現させている。
特表2016−532308号公報
しかしながら、生産ライン内又は生産ラインの間の複数のステーションの間でワーク等の可動子を搬送する場合、どうしても電磁石やコイルを配置することができない場所がある。例えば、真空チャンバにおいては、メンテナンス、雰囲気制御を行なう目的のために途中にゲートバルブを設けて仕切る必要がある。このような場合、一定間隔で電磁石やコイルを配置することができない。そのため、吸引力の変化により搬送中の部品やワークが傾いてしまったり、落下してしまったりする可能性がある。
本発明は、可動子を安定してスムーズに非接触で搬送することができる搬送装置および物品の製造方法を提供することを目的としている。
本発明の搬送装置は、第1の方向に沿って配置された複数のコイルと、前記複数のコイルに沿って移動する可動子を有する搬送装置であって、前記複数のコイルは、両隣のコイルとの間の間隔が所定の間隔で配置されたコイルと、両隣のコイルとの間の間隔のどちらかが、前記所定の間隔より広い間隔で配置されたコイルと、を備え、前記可動子は、前記可動子の第一の面から突出する、複数の磁石からなる磁石群と、前記磁石群に隣接して形成され、前記第一の面から突出する、磁性体あるいは比透磁率が10以上である材料からなる突出部と、を備えることを特徴とする。
本発明の生産システムは、上記の搬送装置と、前記搬送装置によって移動するワークに加工を行なう生産装置とを有することを特徴とする。
本発明の物品の製造方法は、上記の生産システムによって製造されることを特徴とする。
本発明によれば、可動子を安定してスムーズに非接触で搬送することができる。
本発明の実施形態を示す概略図である。 本発明の実施形態を示す概略図である。 本発明の実施形態を示す概略図である。 本発明の実施形態を示す概略図である。 本発明の実施形態を示す概略図である。 本発明の実施形態を示す概略図である。 本発明の実施形態を説明する概略図である。 本発明の実施形態を説明する概略図である。 本発明の実施形態を説明する概略図である。 本発明の実施形態を説明する概略図である。 本発明の実施形態説明する概略図である。 本発明の実施形態を説明する概略図である。 本発明の実施形態を説明する概略図である。 本発明の実施形態を説明する概略図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について図1A乃至図12を用いて説明する。
図1A及び図1Bは、本実施形態による可動子101及び固定子201a、201bを含む搬送装置の全体構成を示す概略図である。なお、図1A及び図1Bは、可動子101及び固定子201a、201bの主要部分を抜き出して示したものである。
まず以下の説明において用いる座標軸、方向等を定義する。可動子101の搬送方向である水平方向に沿ってX軸をとり、可動子101の搬送方向をX方向とする。また、X方向と直交する方向である鉛直方向に沿ってZ軸をとり、鉛直方向をZ方向とする。また、X方向及びZ方向に直交する方向に沿ってY軸をとり、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。さらに、X軸周りの回転をWx、Y軸、Z軸周りの回転を各々Wy,Wzとする。また、乗算の記号として“*”を使用する。また、可動子101の中心を原点Oとし、Y+側をR側、Y−側をL側として記載する。なお、可動子101の搬送方向は必ずしも水平方向である必要はないが、その場合も搬送方向をX方向として同様にY方向及びZ方向を定めることができる。
また、図1Aは可動子101をY方向(側方)から見た図、図1Bは可動子101をZ方向(上方)から見た図である。図1Aは、固定子201aと固定子201bの間に例えばゲートバルブなどの構造物(100)が存在している場所を示している。つまり、生産ライン内又は生産ラインの間の複数のステーションの間で、連続して電磁石やコイルを配置することができない場所を示している。本実施形態においては、構造物100を挟んで2つの固定子を配置する場合を記載したが、これに限らず、固定子が1つであってコイルとコイルの間にスペース(隙間)がある場合も同様である。本実施形態は、連続して電磁石やコイルを配置することができない場所を通過する際に、可動子101に配置されたエンドヨーク108を備えることで可動子の傾きや落下を抑制するものである。
本明細書においては、特に区別する必要がない限り、固定子を単に「固定子201」と表記する。各固定子201を個別に特定する必要がある場合、「固定子201a」、「固定子201b」と表記して各固定子201を個別に特定する。
まず、本実施形態による搬送装置の全体構成について図1A及び図1Bを用いて説明する。
図1A及び図1Bに示すように、本実施形態による搬送装置を有する搬送装置1は、台車、スライダ又はキャリッジを構成する可動子101と、搬送路を構成する固定子201とを有している。搬送装置1は、可動磁石型リニアモータ(ムービング永久磁石型リニアモータ、可動界磁型リニアモータ)による搬送装置である。さらに、搬送装置1は、リニアガイド等の案内装置を持たず、固定子201上において非接触で可動子101を搬送する磁気浮上型の搬送装置として構成されている。
搬送装置1は、固定子201により可動子101を搬送する。これにより、可動子101上のワーク102(図2参照)を、ワーク102に対して加工作業あるいは検査作業を施す生産装置に搬送する。あるいは、生産装置(プロセス装置)中の搬送装置として用いてもよい。ワークに加工作業あるいは検査作業を施すことにより、高精度な物品を製造することができる。実施形態による搬送装置と生産装置が含まれるステムを、本明細書において生産システムと称する場合がある。本明細書における生産装置とは、ワークに対して組立、加工あるいは検査等の作業を施すための装置のことを言う。本実施形態による生産システムは、複数の生産装置を有していてもよく、複数の生産装置は、ワークに対して同じ作業を施すための生産装置であってもよいし、別の作業を施すための生産装置であってもよい。なお、図1A及び図1Bでは、固定子201に対して1台の可動子101を示しているが、これに限定されるものではない。搬送装置1においては、複数台の可動子101が固定子201上を搬送されうる。
次に、本実施形態による搬送装置1における搬送対象である、可動子101について図1A、図1B及び図2を用いて説明する。図2は、本実施形態による搬送装置1における可動子101及び固定子201を示す概略図である。なお、図2は、可動子101及び固定子201をX方向から見た図である。また、図2の(A)領域は、図1Bの(A)−(A)線に沿った断面(A)を示している。また、図2の(B)領域は、図1Bの(B)−(B)線に沿った断面(B)を示している。また、図2の(C)領域は、図1Bの(C)−(C)線に沿った断面(C)を示している。
図1A、図1B及び図2に示すように、可動子101は、永久磁石103として、永久磁石103aR、103bR、103cR、103dR、103aL、103bL、103cL、103dLを有している。そして、バックヨーク107として、107R、107Lを有している。さらに、エンドヨーク108として、108aR、108bR、108aL、108bLを有している。バックヨーク107とエンドヨーク108は、磁性体、あるいは透磁率の大きな材料、例えば鉄で構成されており、永久磁石103の磁束が外部に漏れるのを防止する効果がある。本明細書において、透磁率の大きな材料とは、比透磁率が1000以上の材料のことであるとする。エンドヨーク108は、少なくとも隣接する永久磁石103aL、103aR、103dL、あるいは103dRが取り付けられている面107Aから突出している突出部である。そして、隣接する永久磁石(103aL、103aR、103dL、103dR)よりも表面積が大きい突出部であることが好ましく、バックヨーク107と一体となって形成されていてもよいし別体であってもよい。ここで表面積とは、永久磁石のコイルと対向する面103Aの表面積、あるいは、エンドヨークのコイルと対向する面108Aの面積である。本実施形態において、エンドヨーク108と隣接する永久磁石(103aL、103aR、103dL、103dR)が、2個の永久磁石である例である場合は、2個の永久磁石のコイルと対向する面103Aの面積を合算した値を表面積とする。
また、エンドヨーク108の高さB(エンドヨーク108のコイルと対向する面108Aの、永久磁石が取り付けられている面101Aからの突出量(距離))は、少なくとも隣接する永久磁石103の高さAよりも高い。ここで、永久磁石103の高さAは、永久磁石103のコイルと対向する面103Aの、永久磁石が取り付けられている面101Aからの突出量(距離)である。本明細書において、バックヨーク107を単にヨーク、エンドヨーク108を突出部と称する場合がある。
永久磁石103は、可動子101のX方向に沿った上面101AのL側とR側の端部に2列配置されて取り付けられている。具体的には、可動子101の上面101AのR側に、永久磁石103aR、103bR、103cR、103dRが取り付けられている。また、可動子101の上面101AのL側に、永久磁石103aL、103bL、103cL、103dLが取り付けられている。なお、本明細書では、特に区別する必要がない限り、可動子101の永久磁石を単に「永久磁石103」と表記する。また、R側とL側とを区別する必要まではないが、各永久磁石103を個別に特定する必要がある場合、各永久磁石103に対する符号の末尾からR又はLを除いた識別子としての小文字のアルファベットまでの符号を用いて各永久磁石103を個別に特定する。この場合、「永久磁石103a」、「永久磁石103b」、「永久磁石103c」又は「永久磁石103d」と表記して、各永久磁石103を個別に特定する。
エンドヨーク108は、可動子101のX方向に沿った上面101AのL側とR側の端部に2列配置されて取り付けられている。具体的には、可動子101の上面101AのR側に、エンドヨーク108aR、108bRが取り付けられている。また、可動子101の上面101AのL側に、エンドヨーク108aL、108bLが取り付けられている。
なお、本明細書では、特に区別する必要がない限り、可動子101のエンドヨークを単に「エンドヨーク108」と表記する。また、R側とL側とを区別する必要まではないが、各エンドヨーク108を個別に特定する必要がある場合、「エンドヨーク108a」又は「エンドヨーク108b」と表記する。
可動子101の上面101Aに直接、各エンドヨーク108と各永久磁石103が取り付けられていてもよいが、本実施形態に示すように、バックヨーク107R、107Lの上面107Aに取り付けられていてもよい。
本明細書では、特に区別する必要がない限り、バックヨーク107R、107Lを単に「バックヨーク107」と表記する。
エンドヨーク108aR、108bRは、可動子101のX方向に沿った上面のR側におけるX方向の一方の端部及び他方の端部に取り付けられている。永久磁石103aR、103dRは、可動子101の上面のR側のエンドヨーク108aR、108bRに隣接して取り付けられている。永久磁石103bR、103cRは、可動子101の上面のR側の永久磁石103aR、103dR間に取り付けられている。永久磁石103aR、103bR、103cR、103dRは、例えば、X方向に等ピッチに配置されている。また、エンドヨーク101aR、101bR、永久磁石103aR、103bR、103cR、103dRは、それぞれの中心が、例えば可動子101の上面の中心からR側に所定距離rx3離れたX方向に沿った直線上に並ぶように配置されている。
エンドヨーク108aL、108bLは、可動子101のX方向に沿った上面のR側におけるX方向の一方の端部及び他方の端部に取り付けられている。永久磁石103aL、103dLは、可動子101の上面のR側のエンドヨーク108aL、108bLに隣接して取り付けられている。永久磁石103bL、103cLは、可動子101の上面のL側の永久磁石103aL、103dL間に取り付けられている。永久磁石103aL、103bL、103cL、103dLは、例えば、X方向に等ピッチに配置されている。また、エンドヨーク108aL、108bL、永久磁石103aL、103bL、103cL、103dLは、それぞれの中心が、例えば可動子101の上面の中心からL側に所定距離rx3離れたX方向に沿った直線上に並ぶように配置されている。さらに、エンドヨーク108aL、108bLは、X方向においてそれぞれエンドヨーク108aR、108bRと同位置に配置されている。同様に、永久磁石103aL、103bL、103cL、103dLは、X方向においてそれぞれ永久磁石103aR、103bR、103cR、103dRと同位置に配置されている。
エンドヨーク108a、108bは、それぞれ可動子101の中心である原点OからX方向の一方及び他方の側に距離ry8だけ離れた位置に取り付けられている。
永久磁石103a、103dは、それぞれ可動子101の中心である原点OからX方向の一方及び他方の側に距離rz3だけ離れた位置に取り付けられている。エンドヨーク108a、108b、永久磁石103a、103b、103c、103dは、それぞれ原点OからY方向に距離rx3だけ離れた位置に取り付けられている。永久磁石103c、103bは、それぞれ原点OからX方向の一方及び他方の側に距離ry3だけ離れた位置に取り付けられている。
本実施形態では、エンドヨーク108はX方向の一方の端部及び他方の端部に取り付けられているが、永久磁石103a、103b間、永久磁石103b、103c間、及び永久磁石103c、103d間に追加して取り付けてもよい。
永久磁石103aR、103dR、103aL、103dLは、それぞれY方向に沿って配置された2個の永久磁石のセットである。永久磁石103a、103dは、それぞれ、固定子201側を向く外側の磁極の極性が交互に異なるように2個の永久磁石がY方向に沿って並べられて構成されたものである。なお、永久磁石103a、103dを構成するY方向に沿って配置された永久磁石の数は、2個に限定されるものではなく、複数個であればよい。また、永久磁石103a、103dを構成する永久磁石が配置される方向は、必ずしも搬送方向であるX方向と直交するY方向である必要はなく、X方向と交差する方向であればよい。すなわち、永久磁石103a、103dは、それぞれ磁極の極性が交互になるようにX方向と交差する方向に沿って配置された複数の永久磁石からなる磁石群であればよい。
一方、永久磁石103bR、103cR、103bL、103cLは、それぞれX方向に沿って配置された3個の永久磁石のセットである。永久磁石103b、103cは、それぞれ、固定子201側を向く外側の磁極の極性が交互に異なるように3個の永久磁石がX方向に沿って並べられて構成されている。なお、永久磁石103b、103cを構成するX方向に沿って配置された永久磁石の数は、3個に限定されるものではなく、複数個であればよい。すなわち、永久磁石103b、103cは、磁極の極性が交互になるようにX方向に沿って配置された複数の永久磁石からなる磁石群であればよい。
こうして、可動子101には、可動子101のX軸に沿った中心軸を対称軸として、複数の永久磁石103が上面のR側及びL側に対称に配置されている。このように、可動子101は、後述するように固定子201の複数のコイル202により永久磁石103が受ける電磁力により姿勢が6軸制御されつつ移動可能に構成されている。
さらに、可動子101には、可動子101のX軸に沿った中心軸を対称軸として、複数のエンドヨーク108がR側及びL側の上面の端部に対称に配置されている。
エンドヨーク108が配置された可動子101は、上述した永久磁石103と固定子201の複数のコイル202による6軸制御だけでなく、後述するようにエンドヨーク108と固定子201の複数のコイル202によるZ軸とWy軸の2軸制御も可能である。
これにより、後述する連続して電磁石やコイルを配置できない場所を搬送する際に、可動子を傾かせることなく、スムーズに搬送することができる。
可動子101は、X方向に沿って2列に配置された複数のコイル202に沿ってX方向に移動可能である。可動子101は、その上面あるいは下面に搬送すべきワーク102を載置あるいは装着した状態で搬送される。可動子101は、例えば、ワークホルダ等のワーク102を可動子101上に保持する保持機構を有していてもよい。
次に、本実施形態による搬送装置1における固定子201について図1A、図2及び図3を用いて説明する。
図3は、固定子201のコイル202を示す概略図である。なお、図3は、コイル202をZ方向から見た図である。
固定子201は、可動子101の搬送方向であるX方向に沿って2列に配置された複数のコイル202を有している。固定子201には、複数のコイル202がそれぞれ上面のR側及びL側から可動子101に対向するように取り付けられている。固定子201a、201bは、搬送方向であるX方向に延在して可動子101の搬送路を形成する。
固定子201に沿って搬送される可動子101は、リニアスケール104と、Yターゲット105と、Zターゲット106とを有している。リニアスケール104、Yターゲット105及びZターゲット106は、それぞれ例えば可動子101の底部にX方向に沿って取り付けられている。Zターゲット106は、リニアスケール104及びYターゲット105の両側にそれぞれ取り付けられている。図4に示すように、固定子201は、複数のコイル202と、複数のリニアエンコーダ204と、複数のYセンサ205と、複数のZセンサ206とを有している。
Yターゲット105とは、可動子の目標とする搬送方向と平行な面を有する凸部であり、この可動子の目標とする搬送方向と平行な面を固定子に固定されたYセンサ205で測定する。これにより、可動子のY方向の姿勢を検知することが可能となる。可動子との間の相対距離を直接検出することも可能であるが、可動子自体を高精度に加工することが困難である場合があるため、そのような場合はYターゲット105を用いることができる。また、同様に、Zターゲット106とは、鉛直方向と直交する方向の面を有する凸部であり、鉛直方向と直交する方向の面を固定子に固定されたZセンサ206で測定する。これにより可動子の鉛直方向の姿勢を検知することが可能となる。可動子との間の相対距離を直接検出することも可能であるが、可動子自体を高精度に加工することが困難である場合があるため、そのような場合はZターゲット106を用いることができる。
複数のコイル202は、可動子101の上面のR側及びL側の永久磁石103とそれぞれ対向可能なように、X方向に沿って2列に配置されて固定子201に取り付けられている。R側において1列に配置された複数のコイル202は、可動子101のR側の永久磁石103aR、103bR、103cR、103dRと対向可能にX方向に沿って配置されている。また、L側において1列に配置された複数のコイル202の可動子と対向する面は、可動子101のL側の永久磁石103aL、103bL、103cL、103dLと対向可能にX方向に沿って配置されている。
本実施形態では、可動子101のR側及びL側のコイル202の列が、それぞれ、互いに構成する複数の永久磁石の配置方向が異なる永久磁石103a、103d及び永久磁石103b、103cに対向可能に配置されている。このため、少ない列数のコイル202で、後述するように可動子101に対して搬送方向及び搬送方向とは異なる力を印加することができ、よって可動子101の搬送制御及び姿勢制御を実現することができる。
こうして、複数のコイル202は、可動子101が搬送される方向に沿って取り付けられている。複数のコイル202は、X方向に所定の間隔で並べられている。また、各コイル202は、その中心軸がZ方向を向くように取り付けられている。なお、コイル202は、コアにコイルが巻かれており、本実施形態において、コイルの位置とは、コアの位置を示す。
複数のコイル202は、例えば3個ずつの単位で電流制御されるようになっている。そのコイル202の通電制御される単位を「コイルユニット203」と記載する。コイル202は、通電されることにより、可動子101の永久磁石103との間で電磁力を発生して可動子101に対して力を印加することができる。
コイル202あるいはコイルユニット203は、複数のコイル、単数のコイルユニットあるいは複数のコイルユニットごとに、図1Aに示すように、コイルボックス2031の中に収容され、コイルボックス2031ごとにX方向に沿って配置してもよい。その場合は、コイルボックス2031と隣接するコイルボックス(例えば図1Aに示すコイルボックス2031aと隣接するコイルボックス2031b)の間は、隙間S1をあけて配置されていてもよい。本実施形態では、コイルボックスの中に収容される単数のコイルユニットあるいは複数のコイルユニットをコイル群と称する場合がある。
図1Aは、固定子201aと固定子201bの間に例えばゲートバルブなどの構造物(100)が存在している場所を示している。つまり、生産ライン内又は生産ラインの間の複数のステーションの間で、連続して電磁石やコイルを配置することができない場所を示している。すなわち、真空チャンバの境界でゲートを開閉する機構等が配されていると、可動子をガイドかつ駆動する固定子、あるいはその駆動系を隙間なく連続的に配することができない。そのため、可動子がその境界を通過する際に、固定子側の駆動系より得られる浮上、位置制御、推進力に対応する駆動力に不連続点が生じ、可動子が目標軌道からはずれたり、位置ずれを生じたり、位置精度が低下する問題を生じる危険がある。
図1Aには、構造物を挟んで2つの固定子の間に隙間S1より大きいスペースS2がある例を記載するが、固定子が1つであってコイルとコイルの間に隙間S1以上のスペースS2がある場合であっても本発明の効果は発揮される。
図1において、永久磁石103a、103dは、それぞれY方向に2個の永久磁石が並べられた磁石群により構成されていている。これに対して、各コイル202は、永久磁石103a、103dの2個の永久磁石のY方向の中心がコイル202のY方向の中心と合致するように配置されている。永久磁石103a、103dに対向するコイル202に通電することで、永久磁石103a、103dに対してY方向に力を発生する。
また、永久磁石103b、103cは、X方向に3個の永久磁石が並べられた磁石群により構成されている。これに対して、永久磁石103b、103cに対向するコイル202に通電することで、永久磁石103b、103cに対してX方向及びZ方向に力を発生する。
本明細書において、X方向に3個の永久磁石が並べられた磁石群を第一の磁石群、Y方向に2個の永久磁石が並べられた磁石群を第二の磁石群と称する場合がある。また、第一の磁石群、および第二の磁石群をまとめて単に磁石群と称する場合がある。
図10は、本実施形態を説明するための概念図である。図10Aは、連続してコイルを配置することができる場所における固定子と可動子の関係を示した図である。つまり、コイルボックス2032a〜2032gをコイルボックスとコイルボックスとの間に所定の間隔(隙間S1)をあけて配置した時における固定子と可動子の関係を示した図である。所定の間隔(隙間S1)をあけずコイルボックス同士を接触させて配置させてもよい。また、コイルボックスを等間隔に配置することができれば、可動子に係る重力と、コイルと永久磁石による吸引力とが釣り合った状態になる(V=G)。すなわち可動子は浮上した状態で姿勢を維持することができる。
図10Bは、図10Aにおけるコイルボックス2032fを配置させることができず、所定の間隔より広い間隔(スペースS2)が空いてしまった場合における固定子と可動子の関係を示した図である。つまり、両隣のコイルボックスとの間の間隔が所定の間隔S1で配置されたコイルボックスと、両隣のコイルボックスとの間の間隔の一方が、前記所定の間隔S1より広い間隔S2で配置されたコイルボックスとの関係を示した図である。コイルボックス2032fに吸引力を発生させることができないため、可動子に係る重力Gの方がコイルと永久磁石による吸引力を上回ってしまう。これを解消させようと、コントローラは、コイルに、より大きな電流が流れるように制御する。これにより、可動子には、T1+T2+T3の吸引力が加えられる。T1、T2、T3を示す矢印はそれぞれ吸引力の大きさを示しており、バランスを考慮し、コイルのないコイルボックス2032fに近いコイルの電流を大きくする。そして付加する吸引力もT1<T2<T3となるように制御されている。しかし、電流増加による吸引力アップには限界があり、不足している重力Gに対応する吸引力を発生させることは難しい。
すなわち、4×G>3×V+(T1+T2+T3)のような関係にある。
そこで、図10Cに示すように、エンドヨーク108a、108bに対向するコイルに電流を印加する。これにより、吸引力を補助することができる。この時、発生させる吸引力は、電流増加による吸引力増加分T1,T2,T3と、エンドヨーク108a、108bに対向するコイルに電流を印加した分のKa、Kbの合計となる。これにより、Z軸の重力と吸引力が釣り合うように制御することが可能となる。
4*G=3*V+(T1+T2+T3)+Ka+Kb
また、Wy軸の姿勢に関しても、Ka、Kbの大きさによって、可動子101の中心O周りのモーメントが釣り合うように制御することができる。左辺が可動子101の左側に働く力のモーメントであり、右辺が右側に働く力のモーメントである。
Kb*L3+T1*L2+T2*L1=T3*L1−V*L2+Ka*L3
これにより、可動子を傾かせることなく、スムーズに搬送させることができる。
本実施形態ではコイルボックスとコイルボックスの間にスペースS2がある場合を説明したがコイルとコイルの間にスペースS2がある場合であっても同じである。また、コイル群とコイル群の間にスペースS2がある場合であっても同じである。
また、エンドヨーク108と永久磁石103の配置位置は、永久磁石103がスペースS2に対向する位置にある際に、必ずエンドヨーク108がコイルボックス2032に対向する位置に来るように配置する方が良い。つまり、図10Cに示すS2<S3の条件を満たしていれば良い。そうすることで、重力と吸引力のつり合いが崩れた際に、常にエンドヨーク108を使った吸引力の補助を働かせることが可能となり、可動子を安定してスムーズに搬送させることができる。
本実施形態ではエンドヨーク108を可動子101内に収まるように配置した場合を説明したが、可動子101より外側にはみ出して配置しても良い。そうすることで、可動子101の搬送中に、エンドヨーク108を使った吸引力の補助をより長い間働かせることが可能となり、可動子を安定してスムーズに搬送させることができる。
また、本実施形態ではエンドヨーク108を可動子101の上面に取り付けた場合を説明したが、図10Cのエンドヨーク108cに示すように可動子101の側面にL字状に取り付けても良い。そうすることで、可動子101の上面に永久磁石103を敷き詰めて配置することができ、永久磁石103による吸引力をより強力にすることができる。それとともに、エンドヨーク108を使った吸引力の補助を働かせることが可能となり、可動子を安定してスムーズに搬送させることができる。
また、本実施形態ではエンドヨーク108の高さは、永久磁石103の高さに比べて、同じか高くなるように設計されている。これにより、磁束漏れの防止効果が高められると共に、エンドヨーク108を使った吸引力の補助をより強くすることができる。しかし、エンドヨーク108の高さを高くしすぎると、可動子が移動中に固定子201のコイル202に干渉する可能性があるため、可動子の可動範囲を考慮して設計する必要がある。
次に、本実施形態による搬送装置1を制御する制御システムについて図2を参照しながら図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態による搬送装置1を制御する制御システムを示す概略図である。
図4に示すように、制御システムは、統合コントローラ301と、コイルコントローラ302と、センサコントローラ304とを有し、可動子101と固定子201とを含む搬送装置1を制御する制御装置として機能する。統合コントローラ301には、コイルコントローラ302が通信可能に接続されている。また、統合コントローラ301には、センサコントローラ304が通信可能に接続されている。
コイルコントローラ302には、複数の電流コントローラ303が通信可能に接続されている。コイルコントローラ302及びこれに接続された複数の電流コントローラ303は、2列のコイル202のそれぞれの列に対応して設けられている。各電流コントローラ303には、コイル202が接続されている。電流コントローラ303は、接続された各々のコイル202の電流の大きさを制御することができる。
コイルコントローラ302は、接続された各々の電流コントローラ303に対して目標となる電流値を指令する。電流コントローラ303は接続されたコイル202の電流量を制御する。
コイル202及び電流コントローラ303は、可動子101が搬送されるX方向の可動子101の上面の両側に取り付けられている。
センサコントローラ304には、複数のリニアエンコーダ204、複数のYセンサ205及び複数のZセンサ206が通信可能に接続されている。
複数のリニアエンコーダ204は、それぞれ可動子101のリニアスケール104と対向可能なようにX方向に沿って固定子201に取り付けられている。各リニアエンコーダ204は、可動子101に取り付けられたリニアスケール104を読み取ることで、可動子101のリニアエンコーダ204に対する相対的な位置を検出して出力することができる。
複数のYセンサ205は、それぞれ可動子101のYターゲット105と対向可能なようにX方向に沿って固定子201に取り付けられている。各Yセンサ205は、可動子101に取り付けられたYターゲット105との間のY方向の相対距離を検出して出力することができる。
複数のZセンサ206は、それぞれ可動子101のZターゲット106と対向可能なようにX方向に沿って固定子201に2列に取り付けられている。各Zセンサ206は、可動子101に取り付けられたZターゲット106との間のZ方向の相対距離を検出して出力することができる。
複数のリニアエンコーダ204は、可動子101が搬送中もそのうちの1つが必ず1台の可動子101の位置を測定できるような間隔で固定子201に取り付けられている。また、複数のYセンサ205は、そのうちの2つが必ず1台の可動子101のYターゲット105を測定できるような間隔で固定子201に取り付けられている。また、複数のZセンサ206は、その2列のうちの3つが必ず1台の可動子101のZターゲット106を測定できるような間隔で固定子201に取り付けられている。
統合コントローラ301は、リニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206からの出力に基づき、複数のコイル202に印加する電流指令値を決定して、コイルコントローラ302に送信する。コイルコントローラ302は、統合コントローラ301からの電流指令値に基づき、上述のように電流コントローラ303に対して電流値を指令する。これにより、統合コントローラ301は、制御装置として機能し、固定子201に沿って可動子101を非接触で搬送するとともに、搬送する可動子101の姿勢を6軸で制御する。
以下、統合コントローラ301により実行される可動子101の姿勢制御方法について図4を参照しながら図5を用いて説明する。図5は、本実施形態による搬送システム1における可動子101の姿勢制御方法を示す概略図である。図5は、可動子101の姿勢制御方法の概略について主にそのデータの流れに着目して示している。
統合コントローラ301は、以下に説明するように、可動子位置算出関数401、可動子姿勢算出関数402、可動子姿勢制御関数403、コイル電流算出関数404及び補助印可力算出関数410を用いた処理を実行する。これにより、統合コントローラ301は、可動子101の姿勢を6軸で制御しつつ、可動子101の搬送を制御する。なお、統合コントローラ301に代えて、コイルコントローラ302が統合コントローラ301と同様の処理を実行するように構成することもできる。
まず、可動子位置算出関数401は、複数のリニアエンコーダ204からの測定値及びその取り付け位置の情報から、搬送路を構成する固定子201上にある可動子101の台数及び位置を計算する。これにより、可動子位置算出関数401は、可動子101に関する情報である可動子情報406の可動子位置情報(X)及び台数情報を更新する。可動子位置情報(X)は、固定子201上の可動子101の搬送方向であるX方向における位置を示している。可動子情報406は、例えば図5中にPOS−1、POS−2、…と示すように固定子201上の可動子101ごとに用意される。
次いで、可動子姿勢算出関数402は、可動子位置算出関数401により更新された可動子情報406の可動子位置情報(X)から、各々の可動子101を測定可能なYセンサ205及びZセンサ206を特定する。次いで、可動子姿勢算出関数402は、特定されたYセンサ205及びZセンサ206から出力される値に基づき、各々の可動子101の姿勢に関する情報である姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を算出して可動子情報406を更新する。可動子姿勢算出関数402により更新された可動子情報406は、可動子位置情報(X)及び姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を含んでいる。
次いで、可動子姿勢制御関数403は、可動子位置情報(X)及び姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を含む現在の可動子情報406及び姿勢目標値から、各々の可動子101について印加力情報408を算出する。印加力情報408は、各々の可動子101に印加すべき力の大きさに関する情報である。印加力情報408は、後述する印加すべき力Tの力の3軸成分(Tx,Ty,Tz)及びトルクの3軸成分(Twx,Twy,Twz)に関する情報を含んでいる。印加力情報408は、例えば図5中にTRQ−1、TRQ−2、…と示すように固定子201上の可動子101ごとに用意される。
一方、補助印可力算出関数410は、可動子位置算出関数401により更新された可動子情報406の可動子位置情報(X)と、搬送路を構成する固定子201間の隙間の情報である空白領域情報412から、補助印可力情報413を算出する。
空白領域情報412は、搬送システム起動時に、搬送路を構成する固定子201間の各隙間の情報が、X方向の開始位置と終了位置として記録されている。本実施形態では、隙間の情報を記録しているが、搬送路を構成する固定子201のX方向の位置情報を記録し、その情報から各隙間を計算してもよい。
補助印可力情報413は、各々の可動子101に補助として印可すべき力の大きさに関する情報である。補助印可力情報413は、後述する補助として印可すべき力Kの力のZ軸成分(Kz)及びトルクのWy軸成分(Kwy)に関する情報を含んでいる。補助印可力情報413は、例えば図5中SUPPORT−TRQ−1、SUPPORT−TRQ−2、…と示すように固定子201の可動子101ごとに用意される。
そして、補助印可力算出関数410によって算出された補助印可力情報413は、可動子姿勢制御関数403によって算出された印加力情報408に加えられる。そうすることで、空白領域によって生じる吸引力の変化も含めた印加力情報408となる。
次いで、コイル電流算出関数404は、印加力情報408及び可動子情報406に基づき、各可動子101の各永久磁石103と各エンドヨーク108に対向する位置にある各コイル202に印加する電流指令値409を決定する。
こうして、統合コントローラ301は、可動子位置算出関数401、可動子姿勢算出関数402、可動子姿勢制御関数403、コイル電流算出関数404及び補助印可力算出関数410を用いた処理を実行することにより、電流指令値409を決定する。統合コントローラ301は、決定した電流指令値409をコイルコントローラ302に送信する。
ここで、可動子位置算出関数401による処理について、図2、図4を参照しながら図6、図7、図8を用いて説明する。図6は、可動子位置算出関数による処理を説明する概略図である。
図6において、基準点Oeは、リニアエンコーダ204が取り付けられている固定子201の位置基準である。また、基準点Osは、可動子101に取り付けられているリニアスケール104の位置基準である。図6では、可動子101として2台の可動子101a、101bが搬送され、リニアエンコーダ204として2つのリニアエンコーダ204a、204b、204cが配置されている場合を示している。なお、リニアスケール104は、各可動子101a、101bの同じ位置にX方向に沿って取り付けられている。
例えば、図6に示す可動子101bのリニアスケール104には、1つのリニアエンコーダ204cが対向している。リニアエンコーダ204cは、可動子101bのリニアスケール104を読み取って距離Pcを出力する。また、リニアエンコーダ204cの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はScである。したがって、可動子101bの位置Pos(101b)は次式(1)により算出することができる。
Pos(101b)=Sc−Pc…式(1)
例えば、図6に示す可動子101aのリニアスケール104には、2つのリニアエンコーダ204a、204bが対向している。リニアエンコーダ204aは、可動子101aのリニアスケール104を読み取って距離Paを出力する。また、リニアエンコーダ204aの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はSaである。したがって、リニアエンコーダ204aの出力に基づく可動子101aのX軸上の位置Pos(101a)は、次式(2)で算出することができる。
Pos(101a)=Sa−Pa…式(2)
また、リニアエンコーダ204bは、可動子101bのリニアスケール104を読み取って距離Pbを出力する。また、リニアエンコーダ204bの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はSbである。したがって、リニアエンコーダ204bの出力に基づく可動子101aのX軸上の位置Pos(101a)′は、次式(3)により算出することができる。
Pos(101a)′=Sb−Pb…式(3)
ここで、各々のリニアエンコーダ204a、204bの位置は予め正確に測定されているため、2つの値Pos(101a)、Pos(101a)′の差は十分に小さい。このように2つのリニアエンコーダ204の出力に基づく可動子101のX軸上の位置の差が十分小さい場合は、それら2つのリニアエンコーダ204は、同一の可動子101のリニアスケール104を観測していると判定することができる。
なお、複数のリニアエンコーダ204が同一の可動子101と対向する場合は、複数のリニアエンコーダ204の出力に基づく位置の平均値を算出する等して、観測された可動子101の位置を一意に決定することができる。
可動子位置算出関数401は、上述のようにしてリニアエンコーダ204の出力に基づき、可動子位置情報として可動子101のX方向における位置Xを算出して決定する。
次に、可動子姿勢算出関数402による処理について図7、図8A及び図8Bを用いて説明する。
図7では、可動子101として可動子101cが搬送され、Yセンサ205としてYセンサ205a、205bが配置されている場合を示している。図7に示す可動子101cのYターゲット105には、2つのYセンサ205a、205bが対向している。2つのYセンサ205a、205bが出力する相対距離の値をそれぞれYa、Ybとし、Yセンサ205a、205b間の間隔がLyの場合、可動子101cのZ軸周りの回転量Wzは、次式(4)により算出される。
Wz=(Ya−Yb)/Ly…式(4)
なお、可動子101の位置によっては3つ以上のYセンサ205が対向する場合もありうる。その場合、最小二乗法等を使ってYターゲット105の傾き、すなわちZ軸周りの回転量Wzを算出することができる。
また、図8A及び図8Bでは、可動子101として可動子101dが搬送され、Zセンサ206としてZセンサ206a、206b、206cが配置されている場合を示している。図8A及び図8Bに示す可動子101dのZターゲット106には、3つのZセンサ206a、206b、206cが対向している。ここで、3つのZセンサ206a、206b、206cが出力する相対距離の値をそれぞれZa、Zb、Zcとする。また、X方向のセンサ間距離、すなわちZセンサ206a、206b間の距離をLz1とする。また、Y方向のセンサ間距離、すなわちZセンサ206a、206c間の距離をLz2とする。すると、Y軸周りの回転量Wy及びX軸周りの回転量Wxは、それぞれ次式(5a)及び(5b)により算出することができる。
Wy=(Zb−Za)/Lz1…式(5a)
Wx=(Zc−Za)/Lz2…式(5b)
可動子姿勢算出関数402は、上述のようにして、可動子101の姿勢情報として各軸周りの回転量Wx、Wy,Wzを算出することができる。
また、可動子姿勢算出関数402は、次のようにして可動子101の姿勢情報として可動子101のY方向の位置Y及びZ方向の位置Zを算出することができる。
まず、可動子101のY方向の位置Yの算出について図7を用いて説明する。図7において、可動子101cがかかる2つのYセンサ205をそれぞれYセンサ205a、205bとする。また、Yセンサ205a、205bの測定値をそれぞれYa、Ybとする。また、Yセンサ205aの位置とYセンサ205bの位置との中点をOe′とする。さらに、式(1)〜(3)で得られた可動子101cの位置をOs′とし、Oe′からOs′までの距離をdX′とする。このとき、可動子101cのY方向の位置Yは、次式により近似的に計算して算出することができる。
Y=(Ya+Yb)/2−Wz*dX′
次に、可動子101のZ方向の位置Zの算出について図8A及び図8Bを用いて説明する。可動子101dがかかる3つのZセンサ206をそれぞれZセンサ206a、206b、206cとする。また、Zセンサ206a、206b、206cの測定値をそれぞれZa、Zb、Zcとする。また、Zセンサ206aのX座標とZセンサ206cのX座標とは同一である。また、リニアエンコーダ204は、Zセンサ206aとZセンサ206cとの中間の位置にあるものとする。また、Zセンサ206a及びZセンサ206cの位置XをOe″とする。さらに、Oe″から可動子101の中心Os″までの距離をdX″とする。このとき、可動子101のZ方向の位置Zは、次式により近似的に計算して算出することができる。
Z=(Za+Zb)/2+Wy*dX″
なお、位置Y及び位置ZともにそれぞれWz、Wyの回転量が大きい場合には、さらに近似の精度を高めて算出することができる。
次に、可動子101が図11に示す状態の時の補助印可力算出関数410による処理を説明する。図11は、補助印可力算出関数410による処理を説明する概略図である。
図11において、Gは可動子101にかかる重力、Glossはコイルボックス2032eとコイルボックス2032g間の隙間によって損失した吸引力である。また、POS(X)は、可動子情報406に記録されている可動子のX位置情報、STARTとENDは、空白領域情報412に記録されているNo.2の空白領域の開始位置情報と、終了位置情報である。また、基準点Oeは、POS(X)、START及びENDの位置基準である。また、Lmagは可動子101の永久磁石103b、103cのX方向の長さである。また、ry3は可動子101の中心Oと永久磁石103b、103cの中心位置との間の距離、ry8は可動子101の中心Oとバックヨーク108a、108bの中心位置との間の距離である。また、Lmag、ry3、ry8は、図示しないが可動子情報406に記録されている。
補助印可力算出関数410は、上記損失した吸引力Glossを補助するための補助印可力Kを算出する。また、補助印可力Kは上述したように力のZ軸成分(Kz)及びトルクのWy軸成分(Kwy)を含んでいる。
図11より、補助印可力KのZ軸成分(Kz)とWy軸成分(Kwy)は、それぞれ次式(6a)及び(6b)により算出される。またr2は、コイルボックス2032fがないために損失した吸引力Glossが作用する位置の可動子101の中心Oからの距離を示す。
Kz=−Gloss…式(6a)
Kwy=−Gloss×r2…式(6b)
上記Glossとr2は次式(7a)及び(7b)により算出される。
Gloss=G*r1/Lmag…式(7a)
r2=(START−POS(X))+r1/2…式(7b)
上記r1は次式(8)により算出される。
r1=ry3+Lmag/2−(START−POS(X))…式(8)
したがって、補助印可力KのZ軸成分(Kz)とWy軸成分(Kwy)は、式(6a)及び(6b)に、式(7a)及び(7b)と式(8)に代入することで算出される。
ここで、式(7a)及び(7b)と式(8)は、可動子情報406と空白領域情報412に記録されている情報で算出できる。
補助印可力算出関数410は、上述のようにして、可動子情報406と空白領域情報412から、各々の可動子101に補助として印可すべき力として補助印可力情報413を算出することができる。
こうして算出された補助印可力情報413(Kz、Kwy)は、上述した可動子姿勢制御関数403によって算出された印加力情報408(Tx、Ty、Tz、Twx、Twy、Twz)に以下式(9)及び(10)に示すように加算される。
Tz’=Tz+Kz…式(9)
Twy’=Twy+Kwy…式(10)
次に、コイル電流算出関数404による処理について図1と図12を用いて説明する。なお、以下で用いる力の表記において、X方向、Y方向及びZ方向の力が働く方向をそれぞれx、y、zで示し、図1におけるY+側であるR側をR、Y−側であるL側をL、X+側をf、X−側をbで示す。
図1においてR側及びL側の各永久磁石103と各エンドヨーク108に働く力をそれぞれ次のように表記する。この時各永久磁石103に働く力は、電流が印加された複数のコイル202により永久磁石103が受ける電磁力である。永久磁石103は、電流が印加された複数のコイル202により、可動子101の搬送方向であるX方向の電磁力のほか、X方向とは異なる方向であるY方向及びZ方向の電磁力を受ける。
また、エンドヨーク108は、電流が印加された複数のコイル202により、可動子101のZ方向+側の電磁力と、可動子101の搬送方向であるX方向の電磁力を受ける。ここで、エンドヨーク108がコイルより受けるX方向の電磁力に関しては、永久磁石103がコイルより受けるX方向の電磁力よりも十分小さいことから無視して計算することができる。
R側の永久磁石103に働く力の表記は、それぞれ次のとおりである。
FzfR:R側の永久磁石103bRのZ方向に働く力
FxfR:R側の永久磁石103bRのX方向に働く力
FyfR:R側の永久磁石103aRのY方向に働く力
FxbR:R側の永久磁石103cRのX方向に働く力
FybR:R側の永久磁石103dRのY方向に働く力
FzbR:R側の永久磁石103cRのZ方向に働く力
L側の永久磁石103に働く力の表記は、それぞれ次のとおりである。
FzfL:L側の永久磁石103bLのZ方向に働く力
FxfL:L側の永久磁石103bLのX方向に働く力
FyfL:L側の永久磁石103aLのY方向に働く力
FxbL:L側の永久磁石103cLのX方向に働く力
FybL:L側の永久磁石103dLのY方向に働く力
FzbL:L側の永久磁石103cLのZ方向に働く力
R側のエンドヨーク108に働く力の表記は、それぞれ次のとおりである。
KzfR:R側のエンドヨーク108aRのZ方向+側に働く力
KzbR:R側のエンドヨーク108bRのZ方向+側に働く力
KxfR:R側のエンドヨーク108aRのX方向に働く力 ※無視できる
KxbR:R側のエンドヨーク108bRのX方向に働く力 ※無視できる
L側のエンドヨーク108に働く力の表記は、それぞれ次のとおりである。
KzfL:L側のエンドヨーク108aLのZ方向+側に働く力
KzbL:L側のエンドヨーク108bLのZ方向+側に働く力
KxfL:L側のエンドヨーク108aLのX方向に働く力 ※無視できる
KxbL:L側のエンドヨーク108bLのX方向に働く力 ※無視できる
可動子101に対して印可される力Tは、永久磁石103に対して印可される力T1と、エンドヨーク108に対して印可される力T2に分けられる。永久磁石103に対して印加される力T1を次式(11)により表記し、エンドヨーク108に対して印加される力T2を次式(12)により表記する。
なお、T1x、T1y、T1zは、力の3軸成分であり、それぞれ力のX方向成分、Y方向成分及びZ方向成分である。また、T1wx,T1wy、T1wzは、モーメントの3軸成分であり、それぞれモーメントのX軸周り成分、Y軸周り成分及びZ軸周り成分である。
また、T2zはZ方向成分の力であり、T2wyはY軸周り成分のモーメントである。
本実施形態による搬送システム1は、この力T1の6軸成分(T1x,T1y,T1z,T1wx,T1wy、T1wz)と力T2の2軸成分(T2z、T2wy)を制御することにより、可動子101の姿勢を制御しつつ、可動子101を搬送する。
T1=(T1x,T1y,T1z,T1wx,T1wy,T1wz)…式(11)
T2=(0,0,T2z,0,T2wy,0)…式(12)
ここで、T1x、T1y、T1z、T1wx、T1wy、T1wzは、それぞれ次式(13a)、(13b)、(13c)、(13d)、(13e)及び(13f)により算出される。
T1x=FxfR+FxbR+FxfL+FxbL…式(13a)
T1y=FyfL+FyfR+FybL+FybR…式(13b)
T1z=FzbR+FzbL+FzfR+FzfL…式(13c)
T1wx={(FzfL+FzbL)−(FzfR+FzbR)}*rx3…式(13d)
T1wy={(FzfL+FzfR)−(FzbL+FzbR)}*ry3…式(13e)
T1wz={(FyfL+FyfR)−(FybL+FybR)}*rz3…式(13f)
このとき、永久磁石103に働く力については、次式(13g)、(13h)、(13i)及び(13j)により表される制限を導入することができる。これらの制限を導入することにより、所定の6軸成分を有する力T1を得るための各永久磁石103に働く力の組み合わせを一意に決定することができる。
FxfR=FxbR=FxfL=FxbL…式(13g)
FyfL=FyfR…式(13h)
FybL=FybR…式(13i)
FzbR=FzbL…式(13j)
一方、T2z、T2wyは、それぞれ次式(14a)、及び(14b)により算出される。
T2z=KzbR+KzbL+KzfR+KzfL…式(14a)
T2wy={(KzfL+KzfR)−(KzbL+KzbR)}*ry8…式(14b)
このとき、エンドヨーク108に働く力については、次式(14c)、及び(14d)により表される制限を導入することができる。これらの制限を導入することにより、所定の2軸成分を有する力T2を得るための各エンドヨーク108に働く力の組み合わせを一意に決定することができる。
KzbR=KzbL…式(14c)
KzfR=KzfL…式(14d)
上述したエンドヨークに印可する力T2は、前述した図10B及びCに示すような所定の間隔より広い間隔が空いた領域を通過する際に、上述した力T1だけでは、Z方向+側の力とWy軸のモーメントが不足する場合に、補助力として効果を発揮する。
そのため、次式(15a)で示すように、可動子101に印可したいZ方向の力Tzが+方向の力であり、かつ永久磁石103で印可できるZ方向の力の最大値T1zmaxよりも大きい時に、不足している分を力T2zに割り振る。
T2z=Tz−T1zmax…式(15a)
また、Wy方向の力T2wyも同様に、次式(15b)で示すように、永久磁石103で印可できるWy方向の力の最大値T1wymaxよりも大きい時に、不足している分を力T2wyに割り振る。
T2wy=Twy−T1wymax…式(15b)
これにより、永久磁石103に対して印可される力T1だけでは可動子101の姿勢を制御できない状況において、エンドヨーク108に対して印可される力T2の2軸成分を補助力として働かせることができる。
また、本実施形態では、上述したように力T1だけでは足りない分を力T2に割り振る方法を説明したが、可動子101に対して印可される力Tに対して、任意の割合で力T1、T2に按分しても良い。例えば、永久磁石103とエンドヨーク108のそれぞれに対向するコイルの電磁力によって印可することのできる力の最大値で按分してもよい。
次に、コイル電流算出関数404が、各永久磁石103とエンドヨーク108に働く力からそれぞれ各永久磁石103と各エンドヨーク108に対向する位置にある各コイル202に印加する電流量を決定する方法について説明する。
まず、N極及びS極の極性がY方向に交互に並んだ永久磁石103a、103dにY方向の力を印加する場合について説明する。なお、コイル202は、そのY方向の中心が永久磁石103a、103dのY方向の中心に位置するように配置されている。これにより、永久磁石103a、103dに対してX方向及びZ方向に働く力は、殆ど発生しないようになっている。
Xを可動子101の位置、jを列に並んだコイル202の番号として、単位電流当たりのコイル202(j)のY方向に働く力の大きさを、Fy(j、X)とし、コイル202(j)に印加する電流をi(j)とする。なお、コイル202(j)は、j番目のコイル202である。この場合、電流i(j)は、次式(16)を満足するように決定することができる。なお、次式(16)は、永久磁石103dRについての式である。他の永久磁石103aR、103aL、103dLについても同様にしてコイル202に印加する電流を決定することができる。
ΣFy(j、X)*i(j)=FydR…式(16)
コイル電流算出関数404は、上述のようにしてコイル202(j)に印加する電流指令値を決定することができる。こうして決定される電流指令値により可動子101に印加されるY方向の力により、可動子101は、Y方向にその姿勢が制御される。
なお、複数のコイル202が永久磁石103に力を及ぼす場合には、各コイル202が及ぼす力に応じて単位電流当たりの力の大きさで電流を按分することにより、永久磁石103に働く力を一意に決定することができる。
次に、N極、S極及びN極の極性がX方向に交互に並んだ永久磁石103bに対してX方向及びZ方向に対して独立に力を印加する方法について説明する。図9は、永久磁石103bに対してX方向及びZ方向に独立に力を印加する方法を説明する概略図である。コイル電流算出関数404は、以下に従って、永久磁石103bに対してX方向及びZ方向に対して独立に力を印加するためにコイル202に印加する電流指令値を決定する。なお、永久磁石103cについても、永久磁石103bと同様にX方向及びZ方向に対して独立に力を印加することができる。
Xを可動子101の位置、jを列に並んだコイル202の番号として、永久磁石103に対して、単位電流当たりのコイル202(j)のX方向及びZ方向に働く力の大きさを、それぞれFx(j、X)及びFz(j、X)とする。
図9Aは、横にX軸、縦にY軸を取り、永久磁石103bRとエンドヨーク108aRに対向する8個のコイル202を抜き出して示す図である。図9Bは、図9AをY方向から見た図である。コイル202には、X方向に並んだ順に1から8までの番号jを付与し、以下では例えばコイル202(1)のように表記して各コイル202を特定する。
図9A及びBの図に示すように、コイル202は、距離Lのピッチで配されている。一方、可動子101の永久磁石103は、距離3/2*Lのピッチで配置されており、コイル202(6)とコイル202(7)の間は、コイル1つ分の空白領域があるものとする。
図9Cの左側のグラフは、図9A及びBの図に示す各々のコイル202に対して単位電流を印加した際に、永久磁石103に発生するX方向の力Fx及びZ方向の力Fzの大きさを模式的に示したグラフである。図9Cの右側のグラフは、図9A及びBの図に示す各々のコイル202に対して力の割合に応じた電流を印加した際に、エンドヨーク108に発生するX方向の力Kx及びZ方向の力Kzの大きさを模式的に示したグラフである。
また、この時、エンドヨーク108aRに対してX方向に働く力Kxは比較的小さく、かつ互いに打ち消しあう方向に働くことから、上述したようにエンドヨーク108に対してX方向に働く力の大きさは0と見なし無視できる。
簡単のため、図9では、コイル202のX方向の位置の原点Ocをコイル202(3)とコイル202(4)の中間とし、永久磁石103bRのX方向の中心Omを原点としている。このため、図9は、OcとOmとが合致した場合、すなわちX=0の場合を示している。
このとき、例えばコイル202(4)に対して働く単位電流当たりの力は、X方向にFx(4,0)、Z方向にFz(4,0)の大きさである。また、コイル202(5)に対して働く単位電流当たりの力は、X方向にFx(5,0)、Z方向にFz(5,0)の大きさである。
ここで、コイル202(1)〜202(6)に印加する電流値をそれぞれi(1)〜i(6)とする。すると、永久磁石103bRに対して、X方向に働く力の大きさFxfR及びY方向に働く力の大きさFzfRは、それぞれ一般的に次式(17)及び(18)で表される。
FxfR=Fx(1,X)*i(1)+Fx(2,X)*i(2)+Fx(3,X)*i(3)+Fx(4,X)*i(4)+Fx(5,X)*i(5)+Fx(6,X)*i(6)…式(17)
FzfR=Fz(1,X)*i(1)+Fz(2,X)*i(2)+Fz(3,X)*i(3)+Fz(4,X)*i(4)+Fz(5,X)*i(5)+Fz(6,X)*i(6)…式(18)
上記式(17)及び(18)を満足する電流値i(1)〜i(6)をそれぞれコイル202(1)〜202(6)に印加されるように電流指令値を決定することにより、永久磁石103bRに対してX方向及びZ方向に独立に力を印加することができる。
より簡単のため、図9に示す場合において、永久磁石103bRに対してコイル202(1)〜202(6)のうちのコイル202(3)、202(4)、202(5)だけを使い、さらにこれら3つの電流値の総和が0となるように制御する場合を例に考える。この例の場合、永久磁石103bRに対してX方向に働く力FxfR及びZ方向に働く力FzfRは、それぞれ次式(19)及び(20)により表される。
FxfR=Fx(3,X)*i(3)+Fx(4,X)*i(4)+Fx(5,X)*i(5)…式(19)
FzfR=Fz(3,X)*i(3)+Fz(4,X)*i(4)+Fz(5,X)*i(5)…式(20)
また、コイル202(1)〜202(6)の電流値は、次式(21)及び(22)を満足するように設定することができる。
i(3)+i(4)+i(5)=0…式(21)
i(1)=i(2)=i(6)=0…式(22)
したがって、永久磁石103bRに対して必要な力の大きさ(FxfR、FzfR)が決定された場合、電流値i(1)〜i(6)を一意に決定することができる。こうして決定される電流指令値により可動子101にX方向及びZ方向に力が印加される。可動子101に印加されるX方向の力により、可動子101は、X方向に移動する推進力を得てX方向に移動する。また、こうして決定される電流指令値により可動子101に印加されるX方向及びZ方向の力により、可動子101はその姿勢が制御される。
一方、コイル202に印可する電流iと、エンドヨーク108のZ方向に働く力Kzは、単純な比例関係とはならない。
図12は、コイル202に印可する電流iと、エンドヨーク108のZ方向に働く力Kzの関係を表したグラフである。エンドヨーク108のZ方向に働く力Kzは、コイル202に印可する電流iの二乗に比例し、次式(23)で表される。式(23)の係数Aは、コイル202とエンドヨーク108の磁気回路設計によって決まる。Wは、コイル202とエンドヨーク108が重なっている面積の割合であり、コイル202の全領域にエンドヨーク108が重なっている状態を1.0としている。
Kz=W*A*i^2…式(23)
Xを可動子101の位置、jを列に並んだコイル202の番号として、コイル202(j)のZ方向に働く力の大きさをKz(j、X)とし、コイル202(j)に分配する力の割合をW(j、X)とする。この場合、Z方向に働く力Kz(j、X)は、次式(24)を満足するように決定することができる。なお、力の割合W(j、X)は、上記式(23)のWと同じ割合であり、各エンドヨーク108と各コイル202の重なっている面積に応じて決定する。なお、次式(24)は、エンドヨーク108bRについての式である。他のエンドヨーク108aR、108aL、108bLについても同様にしてコイル202のZ方向に働く力を決定することができる。
ΣW(j、X)*Kz(j、X)=KzbR…式(24)
ここで、コイル202(j)に印加する電流をi(j)とすると、上記式(23)、(24)から、次式(25)、(26)を満足するような電流i(j)を決定することができる。
Kz(j、X)=W(j、X)×A×i(j)^2…式(25)
i(j)≧0…式(26)
したがって、エンドヨーク108aRに対して必要な力の大きさ(KxfR=0、KzfR)が決定された場合、電流値i(7)、i(8)を一意に決定することができる。こうして決定される電流指令値により可動子101にZ方向に力が印加される。
こうして、統合コントローラ301は、複数のコイル202に印加する電流の電流指令値を決定して制御することにより、固定子201上での可動子101の姿勢を6軸で制御しつつ、可動子101の非接触での固定子201上の搬送を制御する。
なお、可動子101の搬送により永久磁石103bRの中心Omに対してコイル202の中心Ocが移動した場合、すなわちX≠0の場合は、移動した位置に応じたコイル202を選択することができる。
そして、永久磁石103に対向するコイル202に関しては、発生する単位電流当たりの力に基づいて、上記と同様の計算を実行することができる。
エンドヨーク108に対向するコイル202に関しては、力の分配割合に基づいて、上記と同様の計算を実行することができる。
上述のようにして、統合コントローラ301は、永久磁石103に対向する複数のコイル202に印可する電流指令値を決定して制御することで、固定子201上での可動子101の姿勢を6軸で制御する。それとともに、可動子101の非接触での固定子201上の搬送を制御する。さらに、エンドヨーク108に対向する複数のコイル202に印可する電流指令値を決定して制御することで、固定子201上での可動子101の姿勢をZ軸方向及びWy軸ほうこうについて制御する。
すなわち、統合コントローラ301は、可動子101の搬送を制御する搬送制御手段として機能する。それとともに、複数のコイル202により永久磁石103とエンドヨーク108が受ける電磁力を制御することで、固定子201上における可動子101の非接触での搬送を制御する。
また、統合コントローラ301は、可動子101の姿勢を制御する姿勢制御手段として機能し、固定子201上における可動子101の姿勢を6軸で制御する。
また、統合コントローラ301は、連続して電磁石やコイルを配置することができない場所を通過する際に、可動子101の姿勢制御を補助する制御手段として機能し、固定子201上における可動子101の姿勢をZ軸方向及びWy軸方向について制御する。
なお、制御装置としての統合コントローラ301の機能の全部又は一部は、コイルコントローラ302その他の制御装置により代替されうる。
このように、本実施形態によれば、2列に配置された複数のコイル202により、可動子101に対して、3軸の力成分(Tx,Ty,Tz)及び3軸のモーメント成分(Twx,Twy,Twz)の6軸の力を印加することができる。これにより、可動子101の姿勢を6軸で制御しつつ、可動子101の搬送を制御することができる。本実施形態によれば、制御すべき変数である力の6軸成分の数よりも少ない列数である2列のコイル202により、可動子101の姿勢の6軸制御しつつ、可動子101の搬送を制御することができる。
したがって、本実施形態によれば、コイル202の列数を少なく構成することができるため、システムの大型化や複雑化を伴うことなく、可動子101の姿勢を制御しつつ、可動子101を非接触で搬送することができる。さらに、本実施形態によれば、コイル202の列数を少なく構成することができるため、安価に小型の磁気浮上型の搬送システムを構成することができる。
また、本実施形態によれば、可動子101の側面に永久磁石103が配置されているため、ワーク102に対する良好なアクセスを実現することができる。これにより、可動子101上のワーク102に対して、高い自由度で工程装置により加工作業を施すことができる。
101 可動子
102 ワーク
103 永久磁石
107 バックヨーク
108 エンドヨーク
201 固定子
202 コイル

Claims (15)

  1. 第1の方向に沿って配置された複数のコイルと、前記複数のコイルに沿って移動する可動子を有する搬送装置であって、
    前記複数のコイルは、両隣のコイルとの間の間隔が所定の間隔で配置されたコイルと、両隣のコイルとの間の間隔のどちらかが、前記所定の間隔より広い間隔で配置されたコイルと、を備え、
    前記可動子は、前記可動子の第一の面から突出する、複数の磁石からなる磁石群と、
    前記磁石群に隣接して形成され、前記第一の面から突出する、磁性体あるいは比透磁率が1000以上である材料からなる突出部と、を備えることを特徴とする搬送装置。
  2. 前記突出部が、前記広い間隔で配置されたコイルと対向する際、前記対向するコイルに電流が印可されることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
  3. 前記コイルに印可される電流は、前記可動子の中心位置と前記広い間隔で配置されたコイルとの間の距離に基づいて制御することを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
  4. 前記磁石群は、第1の方向に沿って配置された第1の磁石群と、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って配置された第2の磁石群とを有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の搬送装置。
  5. 前記第1の磁石群及び前記第2の磁石群は、前記可動子の上面に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
  6. 前記第1の磁石群及び前記第2の磁石群は、前記可動子の上面にヨークを介して配置されていることを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
  7. 前記突出部の前記第一の面からの突出量は、前記複数の磁石の前記第一の面からの突出量より大きいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の搬送装置。
  8. 前記複数のコイルは、複数のコイルボックスに収容されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれか一項に記載の搬送装置。
  9. 第一の面から突出する、複数の磁石からなる磁石群と、
    前記磁石群に隣接して形成され、前記第一の面から突出する、磁性体あるいは比透磁率が1000以上である材料からなる突出部と、を備えることを特徴とする可動子。
  10. 前記磁石群は、第1の方向に沿って配置された第1の磁石群と、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って配置された第2の磁石群とを有することを特徴とする請求項9に記載の可動子。
  11. 前記第1の磁石群及び前記第2の磁石群は、前記可動子の上面に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の可動子。
  12. 前記第1の磁石群及び前記第2の磁石群は、前記可動子の上面にヨークを介して配置されていることを特徴とする請求項11に記載の可動子。
  13. 前記突出部の前記第一の面からの突出量は、前記複数の磁石の前記第一の面からの突出量より大きいことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか一項に記載の可動子。
  14. 請求項1乃至8いずれか一項に記載の搬送装置と、前記搬送装置によって移動するワークに加工を行なう生産装置とを有することを特徴とする生産システム。
  15. 請求項14に記載の生産システムによって製造されることを特徴とする物品の製造方法。
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