JP2022187975A - 搬送システム及び搬送システムの制御方法 - Google Patents

搬送システム及び搬送システムの制御方法 Download PDF

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聡 温品
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Abstract

【課題】ワークの加工時に可動子に加わる外力の大きさによらず可動子の位置を安定させることができる浮上型の搬送システム及び可動子の制御方法を提供する。【解決手段】搬送システムは、ワークを搭載し、第1の方向に沿って移動可能な可動子と、第1の方向に沿って配置された複数のコイルを有し、電流が印加された複数のコイルにより、第1の方向と交差する第2の方向に浮上させつつ第1の方向に前記可動子を搬送する力を可動子に力を印加する固定子と、第2の方向に浮上しつつ第1の方向に沿って移動する可動子の位置及び姿勢を取得し、取得した位置及び姿勢に基づき、複数のコイルに印加する電流値を制御して可動子の動作を制御する制御部と、可動子の移動を規制する位置決め部とを有し、位置決め部は、ワークに加わる外力の方向における可動子の移動を規制する第1の位置決め部を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、搬送システム及び搬送システムの制御方法に関する。
一般に、工業製品を組み立てるための生産ラインや半導体露光装置等では、搬送システムが用いられている。特に、生産ラインにおける搬送システムは、ファクトリーオートメーション化された生産ライン内又は生産ラインの間の複数のステーションの間で、複数の可動子が部品等のワークを搬送する。また、プロセス装置中の搬送装置として使われる場合もある。搬送システムとしては、非接触の磁気浮上型のリニアモータによる搬送システムが既に提案されている。
非接触の磁気浮上型のリニアモータによる搬送システムでは、複数の可動子が部品等のワークの搬送を行う。生産ラインの各工程では、ワークに対して加工作業が施される。特許文献1には、可動子の側面に永久磁石を配置し、ワークに対する良好なアクセスを実現し、可動子上のワークに対して、高い自由度で工程装置により加工作業を施す方法が記載されている。
特開2020-28212号公報
生産ラインの各工程において安定した加工を実現するためには、加工時の外力に対して、ワークを搬送する可動子が安定した位置を維持し、精度良くワークが位置決めされている必要がある。
この点、特許文献1に記載の方法は、工程から可動子に加わる外力に対して、制御剛性で受けることで、可動子を安定した位置に維持している。すなわち、特許文献1に記載の方法は、可動子に力を加えるためのコイルに流す電流を制御することで、可動子を安定した位置を維持している。
一方、コイルに印加できる電流には上限があるため、可動子を安定した位置に維持するための力には上限がある。このため、工程から可動子に加わる外力は、可動子を安定した位置を維持するための力の上限よりも小さくする必要がある。
したがって、加工時の大きな外力に対しては、可動子が安定した位置を維持することができないことがある。精度良くワークを位置決めするためには、ワークの加工時に可動子に加わる外力の大きさによらず可動子が安定した位置を維持する必要がある。
本発明は、ワークの加工時に可動子に加わる外力の大きさによらず可動子の位置を安定させることができる浮上型の搬送システム及び搬送システムの制御方法を提供することを目的としている。
本発明の一観点によれば、ワークを搭載し、第1の方向に沿って移動可能な可動子と、前記第1の方向に沿って配置された複数のコイルを有し、電流が印加された前記複数のコイルにより、前記第1の方向と交差する第2の方向に浮上させつつ前記第1の方向に前記可動子を搬送する力を前記可動子に力を印加する固定子と、前記第2の方向に浮上しつつ前記第1の方向に沿って移動する前記可動子の位置及び姿勢を取得し、取得した前記位置及び前記姿勢に基づき、前記複数のコイルに印加する電流値を制御して前記可動子の動作を制御する制御部と、前記可動子の移動を規制する位置決め部とを有し、前記位置決め部は、前記ワークに加わる外力の方向における前記可動子の移動を規制する第1の位置決め部を含むことを特徴とする搬送システムが提供される。
本発明の他の観点によれば、ワークを搭載し、第1の方向に沿って移動可能な可動子と、前記第1の方向に沿って配置された複数のコイルを有し、電流が印加された前記複数のコイルにより、前記第1の方向と交差する第2の方向に浮上させつつ前記第1の方向に前記可動子を搬送する力を前記可動子に力を印加する固定子と、前記可動子の移動を規制する位置決め部とを有し、前記位置決め部は、前記ワークの加工時に前記可動子に加わる外力の方向における前記可動子の移動を規制する第1の位置決め部を含む搬送システムの制御方法であって、前記第2の方向に浮上しつつ前記第1の方向に沿って移動する前記可動子の位置及び姿勢を取得し、取得した前記位置及び前記姿勢に基づき、前記複数のコイルに印加する電流値を制御して前記可動子の動作を制御し、前記可動子を前記外力の方向に着地させ、前記第1の位置決め部により前記可動子の移動が規制されるように前記可動子を押し付ける押し付け制御を行うことを特徴とする制御方法が提供される。
本発明によれば、浮上型の搬送システムにおいて、ワークの加工時に可動子に加わる外力の大きさによらず可動子の位置を安定させることができる。
本発明の第1実施形態による搬送システムの構成を示す概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムの構成を示す概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムの構成を示す概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおけるコイル及びコイルに関連する構成を示す概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムを制御する制御システムを示す概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおける可動子の姿勢制御方法を示す概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおいて可動子の位置及び姿勢を制御するための制御ブロックの一例を示す概略図である。 本発明の第1実施形態よる搬送システムにおける可動子位置算出関数による処理を説明する概略図である。 本発明の第1実施形態よる搬送システムにおける可動子位置算出関数による処理を説明する概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおける可動子姿勢算出関数による処理を説明する概略図である。 本発明の第1実施形態よる搬送システムにおける可動子姿勢算出関数による処理を説明する概略図である。 本発明の第1実施形態よる搬送システムにおける可動子姿勢算出関数による処理を説明する概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおける可動子に取り付けられたヨーク板に働く力と可動子に働く力成分及びトルク成分との関係を示す概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおけるZ方向の推力定数プロファイルを模式的に示すグラフである。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおける固定子のコイルを示す概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおける固定子のコイルを示す概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおいて、コイルに印加する電流量と、コイルとヨーク板との間に働く吸引力の大きさとの関係を模式的に示すグラフである。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおける可動子をZ方向に沿って上から下に見た概略図である。 本発明の第1実施形態による搬送システムにおけるY方向の吸引力プロファイルを模式的に示すグラフである。 本発明の第1実施形態による搬送システムの制御方法を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態による搬送システムの構成を示す概略図である。 本発明の第2実施形態による搬送システムの構成を示す概略図である。 本発明の第2実施形態による搬送システムの制御方法を示すフローチャートである。 本発明の第3実施形態による搬送システムの構成を示す概略図である。 本発明の第3実施形態による搬送システムの構成を示す概略図である。 本発明の第3実施形態による搬送システムの別の構成を示す概略図である。 本発明の第3実施形態による搬送システムの別の構成を示す概略図である。 本発明の第3実施形態による搬送システムの別の構成を示す概略図である。 本発明の第3実施形態による搬送システムの別の構成を示す概略図である。 本発明の第3実施形態による搬送システムの制御方法を示すフローチャートである。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図1乃至図16を用いて説明する。
まず、本実施形態による搬送システム1の構成について図1乃至図3を用いて説明する。図1及至図2Bは、本実施形態による可動子101及び固定子201を含む搬送システム1の構成を示す概略図である。なお、図1及び図2Aは、それぞれ可動子101及び固定子201の主要部分を抜き出して示したものである。図2Bは、可動子101、固定子201側のZ軸位置決め部705及び可動子101側のZ軸位置決め部706を抜き出して示したものである。また、図1及び図2Bは可動子101を斜め上方から見た図、図2Aは可動子101及び固定子201をX方向から見た図である。図3は、搬送システム1におけるコイル202、207、208及びコイル202、207、208に関連する構成を示す概略図である。
図1及至図2Bに示すように、本実施形態による搬送システム1は、キャリア、台車又はスライダを構成する可動子101と、搬送路を構成する固定子201とを有している。
また、搬送システム1は、統合コントローラ301と、コイルコントローラ302と、コイルユニットコントローラ303と、センサコントローラ304とを有している。なお、図1では、可動子101として3つの可動子101a、101b、101c、固定子201として2つの固定子201a、201bを示している。以後、可動子101、固定子201等の複数存在しうる構成要素について特に区別する必要がない場合には共通の数字のみの符号を用い、必要に応じて数字の符号の後に小文字のアルファベットを付して個々を区別する。また、可動子101のR側の構成要素とL側の構成要素とを区別する場合には、小文字のアルファベットの後にR側を示すR又はL側を示すLを付す。
本実施形態による搬送システム1は、固定子201のコイル207と可動子101の導電板107との間で電磁力を発生させX方向の推力を可動子101に印加する誘導型リニアモータによる搬送システムである。また、本実施形態による搬送システム1は、可動子101を浮上させて非接触で搬送する磁気浮上型の搬送システムである。本実施形態による搬送システム1は、可動子101により搬送されたワーク102に対して加工を施す工程装置をも有する加工システムの一部を構成している。
搬送システム1は、例えば、固定子201により可動子101を搬送することにより、可動子101に保持されたワーク102を、ワーク102に対して加工作業を施す工程装置に搬送する。工程装置は、特に限定されるものではないが、例えば、ワーク102に部品等の組付けを行う組立装置701である。なお、図1では、2台の固定子201に対して3台の可動子101を示しているが、これらに限定されるものではない。搬送システム1においては、1台又は複数台の可動子101が1台又は複数台の固定子201上を搬送されうる。
ここで、以下の説明において用いる座標軸、方向等を定義する。まず、可動子101の搬送方向である水平方向に沿ってX軸をとり、可動子101の搬送方向をX方向とする。X方向のうち、可動子101が進行する方向を+X方向、+X方向とは逆方向を-X方向とする。また、X方向と直交する方向である鉛直方向に沿ってZ軸をとり、鉛直方向をZ方向とする。鉛直方向は、重力の方向(mg方向)である。Z方向のうち、上から下に重力が作用するmg方向を-Z方向、-Z方向とは逆方向を+Z方向とする。また、X方向及びZ方向に直交する方向に沿ってY軸をとり、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。Y方向のうち、+X方向に対して左から右に向かう方向を+Y方向、+Y方向とは逆方向を-Y方向とする。さらに、X軸周りの回転方向をWx方向、Y軸周りの回転方向をWy方向、Z軸周りの回転方向をWz方向とする。また、乗算の記号として”*”を使用する。また、可動子101の中心を原点Ocとし、Y+側をR側、Y-側をL側として記載する。なお、可動子101の搬送方向は必ずしも水平方向である必要はないが、その場合も搬送方向をX方向として同様にY方向及びZ方向を定めることができる。なお、X方向、Y方向及びX方向は、必ずしも互いに直交する方向に限定されるものではなく、互いに交差する方向として定義することもできる。また、搬送方向の変位を位置とし、それ以外の方向の変位を姿勢、位置と姿勢とを合わせて状態と定義する。
また、以下の説明において用いる記号は、次のとおりである。なお、記号は、コイル202、207、208の各場合について重複して用いられる。
Oc:可動子101の原点
Os:リニアスケール104の原点
Oe:固定子201の原点
j:コイルを特定するための指標
(ただし、jは、Nを2以上の整数として1≦j≦Nを満たす整数である。)
N:コイルの設置数
Ij:j番目のコイルに印加される電流量
P:可動子101の位置及び姿勢を含む状態(X,Y,Z,Wx,Wy,Wz)
X(j,P):状態Pの可動子101の中心から見たj番目のコイルのX座標
Y(j,P):状態Pの可動子101の中心から見たj番目のコイルのY座標
Z(j,P):状態Pの可動子101の中心から見たj番目のコイルのZ座標
T:可動子101に印加する力
Tx:力TのX方向の力成分
Ty:力TのY方向の力成分
Tz:力TのZ方向の力成分
Twx:力TのWx方向のトルク成分
Twy:力TのWy方向のトルク成分
Twz:力TのWz方向のトルク成分
Ex(j,P):j番目のコイルに単位電流を印加した際に状態Pの可動子101に対して働くX方向の力
Ey(j,P):j番目のコイルに単位電流を印加した際に状態Pの可動子101に対して働くY方向の力
Ez(j,P):j番目のコイルに単位電流を印加した際に状態Pの可動子101に対して働くZ方向の力
Σ:指標jを1からNまで変化させた場合の合計
*:行列、ベクトルの積
M:トルク寄与行列
K:疑電流ベクトル(列ベクトル)
Tq:トルクベクトル(列ベクトル)
Is:コイル電流ベクトル(列ベクトル)
Fs:コイル力ベクトル(列ベクトル)
M(a,b):行列Mのa行b列の要素
Inv():逆行列
Tr():転置行列
Tr(要素1,要素2,…):要素1、要素2、…を要素とする列ベクトル
図1中の矢印で示すように、可動子101は、搬送方向であるX方向に沿って移動可能に構成されている。可動子101は、ヨーク板103と、導電板107とを有している。また、可動子101は、リニアスケール104と、Yターゲット105と、Zターゲット106とを有している。また、可動子101は、Z軸位置決め部706を有している。さらに、可動子101は、それぞれの可動子101を識別するための識別情報が登録された情報媒体であるRFID(Radio Frequency Identification)タグ512を有している。
ヨーク板103は、可動子101の複数箇所に複数取り付けられて設置されている。具体的には、ヨーク板103は、可動子101の上面において、R側及びL側それぞれの端部にX方向に沿って取り付けられて設置されている。また、ヨーク板103は、可動子101のR側及びL側それぞれの側面にX方向に沿って取り付けられて設置されている。各ヨーク板103は、透磁率の大きな物質、例えば鉄で構成された鉄板である。
導電板107は、可動子101の上面において中央部にX方向に沿って取り付けられて設置されている。導電板107は、導電性を有する金属板等の導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、電気抵抗の小さいアルミニウム板等が好適である。
なお、ヨーク板103及び導電板107の設置場所及び設置数は、上記の場合に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
リニアスケール104、Yターゲット105及びZターゲット106は、可動子101において、それぞれ固定子201に設置されたリニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206により読み取り可能な位置に取り付けられて設置されている。
RFIDタグ512は、可動子101において、RFIDリーダー513により読み取り可能な位置に取り付けられて設置されている。RFIDリーダー513は、搬送システム1における可動子101の搬送路の特定の位置に設置されている。RFIDタグ512には、当該RFIDタグ512が取り付けられた可動子101を識別できるように識別情報である個別ID(Identification)が登録されている。なお、可動子101には、RFIDタグ512に代えて可動子101の個別IDを示すQRコード(登録商標)等の情報媒体が設けられていてもよい。この場合、RFIDリーダー513に代えて、情報媒体に応じて当該情報媒体から個別IDを読み取るスキャナ等のリーダーを用いることができる。
可動子101は、例えば、その上又は下にワーク102が取り付けられ又は保持されて搬送されるようになっている。なお、図2Aでは、ワーク102が可動子101の上に取り付けられて可動子101に搭載された状態を示している。なお、ワーク102を可動子101に取り付け又は保持するための機構は、特に限定されるものではないが、機械的なフック、静電チャック等の一般的な取り付け機構、保持機構等を用いることができる。
固定子201は、コイル202、207、208と、リニアエンコーダ204と、Yセンサ205と、Zセンサ206とを有している。また、固定子201は、Z軸位置決め部705を有している。
図2Aにおいて、コイル202は、可動子101の上面に設置されたヨーク板103にZ方向に対向可能なように固定子201にX方向に沿って複数取り付けられて設置されている。具体的には、複数のコイル202は、可動子101の上面におけるR側及びL側それぞれの端部に設置された2つのヨーク板103にZ方向に沿って上方から対向可能なようにX方向に沿って2列に配置されて設置されている。
コイル208は、可動子101の側面に設置されたヨーク板103にY方向に対向可能なように固定子201にX方向に沿って複数取り付けられて設置されている。具体的には、複数のコイル208は、可動子101のR側及びL側それぞれの側面に設置された2つのヨーク板103にY方向に沿って側方から対向可能なようにX方向に沿って2列に配置されて設置されている。
コイル207は、可動子101の上面に設置された導電板107にZ方向に対向可能なように固定子201にX方向に沿って複数取り付けられて設置されている。具体的には、複数のコイル207は、可動子101の上面における中央部に設置された導電板107にZ方向に沿って上方から対向可能なようにX方向に沿って1列に配置されて設置されている。
固定子201は、電流が印加された各コイル202、207、208により、搬送方向に沿って移動可能な可動子101に力を印加する。これにより、可動子101は、位置及び姿勢が制御されつつ搬送方向に沿って搬送される。
なお、コイル202、207、208の設置場所は、上記の場合に限定されるものではなく、適宜変更することができる。また、コイル202、207、208の設置数は、適宜変更することができる。
リニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206は、搬送方向に沿って移動する可動子101の位置及び姿勢を検出する検出部として機能する。
リニアエンコーダ204は、可動子101に設置されたリニアスケール104を読み取り可能なように固定子201に取り付けられて設置されている。リニアエンコーダ204は、リニアスケール104を読み取ることにより可動子101のリニアエンコーダ204に対する相対的な位置を検出する。
Yセンサ205は、可動子101に設置されたYターゲット105との間のY方向の距離を検出可能なように固定子201に取り付けられて設置されている。Zセンサ206は、可動子101に設置されたZターゲット106との間のZ方向の距離を検出可能なように固定子201に取り付けられて設置されている。
また、図1は、固定子201aと固定子201bとの間に、例えば工程と工程を結合する構造物100が存在している場所を含む領域を示している。構造物100が存在する場所は、生産ライン内又は生産ラインの間の複数のステーションの間で、連続して電磁石やコイルを配置することができない場所になっている。
また、搬送システム1は、Z方向において可動子101の位置決めを行うための位置決め部として、固定子201側のZ軸位置決め部705と、可動子101側のZ軸位置決め部706とを有している。Z軸位置決め部705、706は、ワーク102の加工時にワーク102及び可動子101に加わる後述の外力704Fの方向であるZ方向における可動子101の移動を規制する部材である。
すなわち、固定子201は、複数のZ軸位置決め部705を有している。Z軸位置決め部705は、Z方向を向く面の面精度が出ており、Z方向の位置決め基準とすることができる。また、可動子101は、複数のZ軸位置決め部705に対応する複数のZ軸位置決め部706を有している。Z軸位置決め部706は、Z方向を向く面の面精度が出ており、Z方向の位置決め基準とすることができる。
固定子201において、複数のZ軸位置決め部705は、可動子101が着地する領域の床面に設置されている。可動子101が着地する領域は、組立装置701により可動子101の上のワーク102への部品704の組み付けが行われる作業領域707である。
複数のZ軸位置決め部705は、それぞれ+Z方向を向くXY平面に平行な上面を有する柱状部材である。複数のZ軸位置決め部705の上面は、Z方向の位置が互いに同じになっている。複数のZ軸位置決め部705は、固定子201の底面である床面に設けられている。複数のZ軸位置決め部705の材質は、固定子201の材質と同じであってもよい。その場合、複数のZ軸位置決め部705は、固定子201と一体に形成される。また、複数のZ軸位置決め部705と、固定子201の床面の間には不図示のゴムなどの弾性体が設けられていてもよい。
可動子101において、複数のZ軸位置決め部706は、固定子201のZ軸位置決め部705が設置された床面の側を向く下面に設置されている。複数のZ軸位置決め部706は、それぞれ-Z方向を向くXY平面に平行な下面を有する柱状部材である。複数のZ軸位置決め部706の下面は、Z方向の位置が互いに同じになっている。複数のZ軸位置決め部706は、対応するZ軸位置決め部705に対向可能な位置に配置されている。
後述するように+Z方向に浮上させられつつX方向に搬送された可動子101は、作業領域707において、各Z軸位置決め部706の下面が、対応するZ軸位置決め部705の上面に接触するようにZ方向において着地する。着地した可動子101は、再び浮上して搬送されうる。
可動子101がZ方向に着地した後、再び浮上するためには、可動子101が+Z方向に動作することができる必要がある。そのため、固定子201側のZ軸位置決め部705及び可動子101側のZ軸位置決め部706は、可動子101が+Z方向に動作できる範囲内に設置されている。すなわち、Z軸位置決め部705、706は、可動子101のZ方向における可動範囲の内部に設置されている。
すなわち、可動子101がZ方向に着地した際、可動子101へ働く-Z方向の重力よりもコイル202が発生することができる+Z方向の浮上力が大きくないと、可動子101は+Z方向に動作することができない。コイル202が発生することができる+Z方向の最大浮上力は、コイル202とヨーク板103との間の間隔で決定される。コイル202とヨーク板103との間の間隔が大きいと、最大浮上力が小さくなる。そのため、固定子201側のZ軸位置決め部705及び可動子101側のZ軸位置決め部706は、Z軸位置決め部705とZ軸位置決め部706との間の間隔が、可動子101が+Z方向に動作することができる範囲内の間隔となるように設置されている。
可動子101及び固定子201に対しては、可動子101により搬送されるワーク102に対して加工作業を施す工程装置が設置されている。図2Aには、ワーク102に対して加工作業を施す工程装置の例である組立装置701内に可動子101及び固定子201が組み込まれている場合を示している。
組立装置701は、可動子101に取り付けられたワーク102に対して組立作業を行う組立ロボット703を有している。組立作業は、ワーク102に対して部品704を組み付けて組立を行うものである。組立ロボット703は、可動子101の上部に取り付けられたワーク102に対して組立作業を実行可能なように組立装置701に設置されている。組立ロボット703の設置場所の前の作業領域707に搬送された可動子101の上部に取り付けられたワーク102に対して、組立ロボット703によりZ方向から部品704が組み付けられる。
搬送システム1に対しては、これを制御する制御システム3が設けられている。なお、制御システム3は、搬送システム1の一部を構成しうる。制御システム3は、統合コントローラ301と、コイルコントローラ302と、コイルユニットコントローラ303と、センサコントローラ304とを有している。統合コントローラ301には、コイルコントローラ302及びセンサコントローラ304が通信可能に接続されている。コイルコントローラ302には、複数のコイルユニットコントローラ303が通信可能に接続されている。センサコントローラ304には、複数のリニアエンコーダ204、複数のYセンサ205、複数のZセンサ206が通信可能に接続されている。各コイルユニットコントローラ303には、コイル202、207、208が接続されている(図3参照)。
統合コントローラ301は、センサコントローラ304から送信されるリニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206からの出力に基づき、複数のコイル202、207、208に印加する電流指令値を決定する。統合コントローラ301は、決定した電流指令値をコイルコントローラ302に送信する。コイルコントローラ302は、統合コントローラ301から受信した電流指令値を各コイルユニットコントローラ303に送信する。コイルユニットコントローラ303は、コイルコントローラ302から受信した電流指令値に基づき、接続されたコイル202、207、208の電流量を制御する。
また、統合コントローラ301には、RFIDリーダー513が通信可能に接続されている。RFIDリーダー513は、可動子101のRFIDタグ512を読み取ることにより当該可動子101の個別IDを取得する。RFIDリーダー513は、取得した個別IDを統合コントローラ301に送信する。統合コントローラ301は、RFIDリーダー513から送信される可動子101の個別IDを受信して認識し、可動子101を識別することができる。RFIDリーダー513は、固定子201により構成される搬送路において一又は複数の位置に設置されている。
図3に示すように、コイルユニットコントローラ303には、1個又は複数個のコイル202、207、208が接続されている。コイル202、207、208には、各々電流センサ312及び電流コントローラ313が接続されている。電流センサ312は、接続されたコイル202、207、208に流れる電流値を検出する。電流コントローラ313は、接続されたコイル202、207、208に流れる電流量を制御する。
コイルユニットコントローラ303は、コイルコントローラ302から受信した電流指令値に基づき、電流コントローラ313に所望の電流量を指令する。電流コントローラ313は、電流センサ312により検出された電流値を検出して個々のコイル202、207、208に対して所望の電流量の電流が流れるように電流量を制御する。
次に、本実施形態による搬送システム1を制御する制御システム3についてさらに図4を用いて説明する。図4は、本実施形態による搬送システム1を制御する制御システム3を示す概略図である。
図4に示すように、制御システム3は、統合コントローラ301と、コイルコントローラ302と、コイルユニットコントローラ303と、センサコントローラ304とを有している。制御システム3は、可動子101と固定子201とを含む搬送システム1を制御する制御部として機能する。統合コントローラ301には、コイルコントローラ302、センサコントローラ304及びRFIDリーダー513が通信可能に接続されている。
コイルコントローラ302には、複数のコイルユニットコントローラ303が通信可能に接続されている。コイルコントローラ302及びこれに接続された複数のコイルユニットコントローラ303は、コイル202、207、208のそれぞれの列に対応して設けられている。各コイルユニットコントローラ303には、コイル202、207、208が接続されている。コイルユニットコントローラ303は、接続されたコイル202、207、208の電流の大きさを制御することができる。
コイルコントローラ302は、接続された各々のコイルユニットコントローラ303に対して目標となる電流値を指令する。コイルユニットコントローラ303は、接続されたコイル202、207、208の電流量を制御する。
センサコントローラ304には、複数のリニアエンコーダ204、複数のYセンサ205及び複数のZセンサ206が通信可能に接続されている。
複数のリニアエンコーダ204は、可動子101の搬送中もそのうちの1つが必ず1台の可動子101の位置を測定できるような間隔で固定子201に取り付けられている。また、複数のYセンサ205は、そのうちの2つが必ず1台の可動子101のYターゲット105を測定できるような間隔で固定子201に取り付けられている。また、複数のZセンサ206は、その2列のうちの3つが必ず1台の可動子101のZターゲット106を測定できるような間隔でかつ面をなすように固定子201に取り付けられている。
統合コントローラ301は、リニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206からの出力に基づき、複数のコイル202に印加する電流指令値を決定して、コイルコントローラ302に送信する。コイルコントローラ302は、統合コントローラ301からの電流指令値に基づき、上述のようにコイルユニットコントローラ303に対して電流値を指令する。これにより、統合コントローラ301は、制御部として機能し、固定子201に沿って可動子101を非接触で搬送するとともに、搬送する可動子101の姿勢を6軸で制御する。
統合コントローラ301は、可動子101に取付けられているRFIDタグ512を読み取ったRFIDリーダー513から受信した可動子101の個別IDにより可動子101を識別することができる。これにより、統合コントローラ301は、それぞれの可動子101に対して個別のパラメータを適用して可動子101の動作を制御することができる。
次に、統合コントローラ301により実行される可動子101の姿勢制御方法について図5を用いて説明する。図5は、本実施形態による搬送システム1における可動子101の姿勢制御方法を示す概略図である。図5は、可動子101の姿勢制御方法の概略について主にそのデータの流れに着目して示している。統合コントローラ301は、以下に説明するように、可動子位置算出関数401、可動子姿勢算出関数402、可動子姿勢制御関数403及びコイル電流算出関数404を用いた処理を実行する。これにより、統合コントローラ301は、可動子101の姿勢を6軸で制御しつつ、可動子101の搬送を制御する。なお、統合コントローラ301に代えて、コイルコントローラ302が統合コントローラ301と同様の処理を実行するように構成することもできる。
まず、可動子位置算出関数401は、複数のリニアエンコーダ204からの測定値、その取り付け位置の情報から、搬送路を構成する固定子201上にある可動子101の台数及び位置を計算する。
上記の計算により、可動子位置算出関数401は、可動子101に関する情報である可動子情報406の可動子位置情報(X)及び台数情報を更新する。可動子位置情報(X)は、固定子201上の可動子101の搬送方向であるX方向における位置を示している。可動子情報406は、例えば図5中にPOS-1、POS-2、…と示すように固定子201上の可動子101ごとに用意される。
次いで、可動子姿勢算出関数402は、可動子位置算出関数401により更新された可動子情報406の可動子位置情報(X)から、各々の可動子101を測定可能なYセンサ205及びZセンサ206を特定する。
次いで、可動子姿勢算出関数402は、各々の可動子101の姿勢に関する情報である姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を算出して可動子情報406を更新する。可動子姿勢算出関数402は、特定されたYセンサ205及びZセンサ206から出力される値に基づき、姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を算出する。可動子姿勢算出関数402により更新された可動子情報406は、可動子位置情報(X)及び姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を含んでいる。
次いで、可動子姿勢制御関数403は、可動子位置情報(X)及び姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を含む現在の可動子情報406及び姿勢目標値から、各々の可動子101について印加力情報408を算出する。印加力情報408は、各々の可動子101に印加すべき力の大きさに関する情報である。印加力情報408は、印加すべき力Tの力の3軸成分(Tx,Ty,Tz)及びトルクの3軸成分(Twx,Twy,Twz)に関する情報を含んでいる。印加力情報408は、例えば図5中にTRQ-1、TRQ-2、…と示すように固定子201上の可動子101ごとに用意される。
ここで、力の3軸成分であるTx、Ty、Tzは、それぞれ力のX方向成分、Y方向成分及びZ方向成分である。また、トルクの3軸成分であるTwx、Twy、Twzは、それぞれトルクのX軸周り成分、Y軸周り成分及びZ軸周り成分である。本実施形態による搬送システム1は、これら力Tの6軸成分(Tx,Ty,Tz,Twx,Twy,Twz)を制御することにより、可動子101の姿勢を6軸で制御しつつ、可動子101の搬送を制御する。
次いで、コイル電流算出関数404は、印加力情報408及び可動子情報406に基づき、各コイル202に印加する電流指令値409を決定する。
こうして、統合コントローラ301は、可動子位置算出関数401、可動子姿勢算出関数402、可動子姿勢制御関数403及びコイル電流算出関数404を用いた処理を実行することにより、電流指令値409を決定する。統合コントローラ301は、決定した電流指令値409をコイルコントローラ302に送信する。
可動子101の位置及び姿勢の制御についてさらに図6を用いて詳細に説明する。図6は可動子101の位置及び姿勢を制御するための制御ブロックの一例を示す概略図である。
図6において、Pは、可動子101の位置及び姿勢(位置姿勢又は状態ともいう)であり、(X,Y,Z,Wx、Wy,Wz)を成分とする。refは、(X,Y,Z,Wx、Wy,Wz)の目標値である。errは、目標値refと位置及び姿勢Pとの間の偏差である。
可動子姿勢制御関数403は、偏差errの大きさ、偏差errの変化、偏差errの積算値等に基づき、目標値refを実現するために可動子101に印加すべき力Tを算出する。
コイル電流算出関数404は、印加すべき力T並びに位置及び姿勢Pに基づき、可動子101に力Tを印加するためにコイル202、207、208に印加すべきコイル電流Iを算出する。こうして算出されたコイル電流Iがコイル202、207、208に印加されることにより、力Tが可動子101に作用して位置及び姿勢Pが目標値refに変化する。
このように制御ブロックを構成することにより、可動子101の位置及び姿勢Pを所望の目標値refに制御することが可能になる。
ここで、可動子位置算出関数401による処理について図7A及び図7Bを用いて説明する。図7A及び図7Bは、可動子位置算出関数による処理を説明する概略図である。
図7Aにおいて、基準点Oeは、リニアエンコーダ204が取り付けられている固定子201の位置基準である。また、基準点Osは、可動子101に取り付けられているリニアスケール104の位置基準である。図7Aでは、可動子101として2台の可動子101a、101bが搬送され、リニアエンコーダ204として3つのリニアエンコーダ204a、204b、204cが配置されている場合を示している。なお、リニアスケール104は、各可動子101a、101bの同じ位置にX方向に沿って取り付けられている。
例えば、図7Aに示す可動子101bのリニアスケール104には、1つのリニアエンコーダ204cが対向している。リニアエンコーダ204cは、可動子101bのリニアスケール104を読み取って距離Pcを出力する。また、リニアエンコーダ204cの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はScである。したがって、可動子101bの位置Pos(101b)は次式(1)により算出することができる。
Pos(101b)=Sc-Pc …式(1)
例えば、図7Aに示す可動子101aのリニアスケール104には、2つのリニアエンコーダ204a、204bが対向している。リニアエンコーダ204aは、可動子101aのリニアスケール104を読み取って距離Paを出力する。また、リニアエンコーダ204aの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はSaである。したがって、リニアエンコーダ204aの出力に基づく可動子101aのX軸上の位置Pos(101a)は、次式(2)で算出することができる。
Pos(101a)=Sa-Pa …式(2)
また、リニアエンコーダ204bは、可動子101aのリニアスケール104を読み取って距離Pbを出力する。また、リニアエンコーダ204bの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はSbである。したがって、リニアエンコーダ204bの出力に基づく可動子101aのX軸上の位置Pos(101a)′は、次式(3)により算出することができる。
Pos(101a)′=Sb-Pb …式(3)
ここで、各々のリニアエンコーダ204a、204bの位置は予め正確に測定されているため、2つの値Pos(101a)、Pos(101a)′の差は十分に小さい。このように2つのリニアエンコーダ204の出力に基づく可動子101のX軸上の位置の差が十分小さい場合は、それら2つのリニアエンコーダ204は、同一の可動子101のリニアスケール104を観測していると判定することができる。
なお、複数のリニアエンコーダ204が同一の可動子101と対向する場合は、複数のリニアエンコーダ204の出力に基づく位置の平均値を算出する等して、観測された可動子101の位置を一意に決定することができる。
また、可動子101は、Z軸周りに回転量Wzで回転しうる。この回転量Wzの変位による可動子101の位置の補正が必要な場合について図7Bで説明する。図7Bは、可動子101bのY方向の側面における一方の側面にリニアスケール104が取り付けられている場合について説明している。Osはリニアスケール104の原点、Ocは可動子101bの原点である。可動子101bの中心Ocからリニアスケール104までの距離をDとすれば、可動子101bの位置Pos(101b)は、次式(1b)を用いて計算することにより、より正確な可動子101bの位置を得ることができる。
Pos(101b)=Sc-Pc-Wz*D …式(1b)
可動子位置算出関数401は、上述のようにしてリニアエンコーダ204の出力に基づき、可動子位置情報として可動子101のX方向における位置Xを算出して決定する。
次に、可動子姿勢算出関数402による処理について図8、図9A及び図9Bを用いて説明する。
図8では、可動子101として可動子101cが搬送され、Yセンサ205としてYセンサ205a、205bが配置されている場合を示している。図8に示す可動子101cのYターゲット105には、2つのYセンサ205a、205bが対向している。2つのYセンサ205a、205bが出力する相対距離の値をそれぞれYa、Ybとし、Yセンサ205a、205b間の間隔がLyの場合、可動子101cのZ軸周りの回転量Wzは、次式(4)により算出される。
Wz=(Ya-Yb)/Ly …式(4)
なお、可動子101の位置によっては3つ以上のYセンサ205が対向する場合もありうる。その場合、最小二乗法等を使ってYターゲット105の傾き、すなわちZ軸周りの回転量Wzを算出することができる。
また、図9A及び図9Bでは、可動子101として可動子101dが搬送され、Zセンサ206としてZセンサ206a、206b、206cが配置されている場合を示している。図9A及び図9Bに示す可動子101dのZターゲット106には、3つのZセンサ206a、206b、206cが対向している。ここで、3つのZセンサ206a、206b、206cが出力する相対距離の値をそれぞれZa、Zb、Zcとする。また、X方向のセンサ間距離、すなわちZセンサ206a、206b間の距離をLz1とする。また、Y方向のセンサ間距離、すなわちZセンサ206a、206c間の距離をLz2とする。すると、Y軸周りの回転量Wy及びX軸周りの回転量Wxは、それぞれ次式(5a)及び(5b)により算出することができる。
Wy=(Zb-Za)/Lz1 …式(5a)
Wx=(Zc-Za)/Lz2 …式(5b)
可動子姿勢算出関数402は、上述のようにして、可動子101の姿勢情報として各軸周りの回転量Wx、Wy,Wzを算出することができる。
また、可動子姿勢算出関数402は、次のようにして可動子101の姿勢情報として可動子101のY方向の位置Y及びZ方向の位置Zを算出することができる。
まず、可動子101のY方向の位置Yの算出について図8を用いて説明する。図8において、可動子101cがかかる2つのYセンサ205をそれぞれYセンサ205a、205bとする。また、Yセンサ205a、205bの測定値をそれぞれYa、Ybとする。また、Yセンサ205aの位置とYセンサ205bの位置との中点をOe′とする。さらに、式(1)~(3)で得られた可動子101cの位置をOs′とし、Oe′からOs′までの距離をdX′とする。このとき、可動子101cのY方向の位置Yは、次式により近似的に計算して算出することができる。
Y=(Ya+Yb)/2-Wz*dX′ …式(6)
次に、可動子101のZ方向の位置Zの算出について図9A及び図9Bを用いて説明する。可動子101dがかかる3つのZセンサ206をそれぞれZセンサ206a、206b、206cとする。また、Zセンサ206a、206b、206cの測定値をそれぞれZa、Zb、Zcとする。また、Zセンサ206aのX座標とZセンサ206cのX座標とは同一である。また、リニアエンコーダ204は、Zセンサ206aとZセンサ206cとの中間の位置にあるものとする。また、Zセンサ206a及びZセンサ206cの位置XをOe″とする。さらに、Oe″から可動子101dの中心Os″までの距離をdX″とする。このとき、可動子101dのZ方向の位置Zは、次式により近似的に計算して算出することができる。
Z=(Za+Zb)/2+Wy*dX″ …式(7)
なお、位置Y及び位置ZともにそれぞれWz、Wyの回転量が大きい場合には、さらに近似の精度を高めて算出することができる。
こうして、統合コントローラ301は、可動子位置算出関数401及び可動子姿勢算出関数402を用いた処理を実行することにより、可動子101の位置及び姿勢を取得する取得部として機能する。
次に、可動子101に所望の力Tを印加するためのコイル202、207、208に印加する電流値の決定方法について説明する。可動子101に印加する力Tは、上述のように、力の3軸成分であるTx、Ty、Tz及びトルクの3軸成分であるTwx、Twy、Twzを有するものである。コイル電流算出関数404を用いた処理を実行する統合コントローラ301は、以下に説明する電流値の決定方法に従ってコイル202、207、208に印加する電流値を決定することができる。
なお、コイル202、207、208が印加する力及びトルクのうち、1つの力又はトルクが他の力又はトルクに与える影響を十分無視できる場合がある。コイル202、207、208が印加する力及びトルクは、具体的には、コイル207が印加するX方向の力、コイル208が印加するY方向の力及びWz方向のトルク、並びにコイル202が印加するZ方向の力、Wx方向のトルク及びWy方向のトルクである。コイル208が印加するY方向の力及びWz方向のトルクは、水平方向において作用するものである。コイル202が印加するZ方向の力、Wx方向のトルク及びWy方向のトルクは、浮上方向において作用するものである。影響を十分無視できる場合、コイル207についてはX方向の力だけを、コイル208についてはY方向の力及びWz方向のトルクだけを、コイル202についてはZ方向の力、Wx方向のトルク及びWy方向のトルクだけを考慮して電流値を計算すればよい。以下、影響を十分に無視できる場合について説明する。
まず、Z方向の力成分Tz、Wx方向のトルク成分Twx及びWy方向のトルク成分Twyを可動子101に印加するために各コイル202に印加する電流について図10乃至図12Bを用いて説明する。
図10は、可動子101上に取り付けられたヨーク板103に働く力と可動子101に働く力成分Tz及びトルク成分Twx、Twyとの関係を示す概略図である。
図10において、Fzjは、j番目のコイル202がヨーク板103に印加する力である。ただし、コイル202の設置数Nを2以上の整数として、jは1≦j≦Nを満たす整数である。各力Fzjが印加するトルクは、トルク成分Twx、Twyに寄与する。各力Fzjが印加するトルクは、その力Fzj及びその作用点と可動子101の中心Ocとの距離に応じて決定される。
図11は、Z方向の推力定数プロファイル601を模式的に示すグラフである。推力定数プロファイル601は、ヨーク板103に対向する浮上用のコイル202に単位電流を印加した際にヨーク板103に働く吸引力を模式的に示している。その吸引力の大きさは、X方向の移動に対して連続的に変化する。
ここで、コイル202の構成の例について図12A及び図12Bを用いて説明する。図12A及び図12Bは、コイル202を示す概略図である。図12Aはコイル202をZ方向から見た図、図12Bはコイル202をX方向から見た図である。
図12A及び図12Bに示すように、コイル202は、巻き線210とコア211とを有している。巻き線210には、電流コントローラ313により電流が印加される。巻き線210に電流が印加されると、磁束の経路である磁路212が形成される。こうして形成された磁路212中の磁束により、コイル202とヨーク板103の間に吸引力が働く。
コイル202に印加する電流とコイル202と、ヨーク板103との間に働く力の大きさとの関係について図12A乃至図13を用いてさらに詳しく説明する。図13は、コイル202に印加する電流と、コイル202とヨーク板103との間に働く吸引力の大きさとの関係を模式的に示すグラフである。図13に示すグラフにおいて、横軸はコイル202に印加する電流量I、縦軸はコイル202とヨーク板103との間に働く吸引力の大きさFzを示している。図13に示すグラフには、電流量Iに対する吸引力の大きさFzを示す吸引力プロファイル604が示されている。
コイル202とヨーク板103との間のZ方向の間隔が一定の場合、吸引力Fzは、電流量Iの二乗に概ね比例する。ここで、図13に示すグラフ中、F0は、可動子101に働く重力mgを補償するために必要な各コイルに平均的に働く力の大きさである。
ここで、次のように数値及び記号を設定する。
1個のコイル202のコア211の底面積:S=0.01[m
1個のコイル202が補償する可動子101の質量の一部:F0=100[N](約10[kg])
真空の透磁率:μ0=4π×10-7
空気ギャップ:gap[m]
コイル巻き数:n[回]
コイル電流:I[A]
コア211とヨーク板103との間の磁束密度:B[T]
コア211及びヨーク板103の透磁率が真空の透磁率に対して十分大きいとすると、Fz及びBは、それぞれ次式(8a)及び(8b)により近似的に計算することができる。
Fz=S*B/(2*μ0) …式(8a)
B=n*I*μ0/(2*gap) …式(8b)
ここで、巻き数Nが500[回]、コイル電流I0が1.0[A]のとき、空気ギャップgapは、式(8a)及び(8b)により0.006266[m]と計算することができる。
ここで、吸引力プロファイル604において、Fz=F0となるI=I0の点をQとする。この点Qの周りについて説明する。
仮に、gapが0.006266[m]から0.25mmだけ大きい方向に変化した場合、拡大するgapを補償するため、コイル202にはより大きな起磁力を発生させる必要がある。gapを0.006516[m]として式(8a)及び(8b)を同じFzを発生するようにして計算すれば、コイル電流Iは、1.0399[A]と計算される。この程度の電流値であるから、可動子101の搬送中におけるコイル電流の電流値の変動は、基準となるコイル電流I0に比べて十分小さい。
したがって、点Qの周りでは、電流I0に対して追加で印加する電流dIと、電流dIの印加によりZ方向に追加して発生する力の大きさdFとの間には、次式(8c)で示される関係が成り立つ。なお、原点Oの周りでは、式(8c)で示される関係は成立しない。
dF ∝ dI …式(8c)
ここでdFとdIの比を次式(8d)により定義する。
dF/dI=Ez …式(8d)
図11に示す推力定数プロファイル601において、Ez(j,P)が示されている。Ez(j,P)は、式(8d)に示す比になっている。すなわち、Ez(j,P)は、可動子101が位置姿勢Pにあるときにj番目のコイル202に平均的に印加している電流I0に対して追加で電流dIを印加した際における、電流dIに対するZ方向に追加して発生する力の大きさdFの比である。
jをコイル202を特定する指標として上記表記方法に従って図10を参照して説明する。以下、簡単のため、Z方向の追加の力dFzjを単にFzjと表記し、追加の電流dIjをIjと表記する。
j番目のコイル202が発生するZ方向の追加の力Fzjは、Ijをj番目のコイル202に印加する追加の電流とすれば、次式(9a)により表される。
Fzj=Ez(j,P)*Ij …式(9a)
さらにX(j,P)をj番目のコイル202の可動子101の中心Ocから見たX方向の相対位置、Y(j,P)をj番目のコイル202の可動子101の中心Ocから見たY方向の相対位置とする。すると、Z方向の力成分Tz、Wx方向のトルク成分Twx及びWy方向のトルク成分Twyは、それぞれ次式(9b)、(9c)及び(9d)により表される。
Tz=Σ(Ez(j,P)*Ij) …式(9b)
Twx=Σ(-Ez(j,P)*Y(j,P)*Ij) …式(9c)
Twy=Σ(Ez(j,P)*X(j,P)*Ij) …式(9d)
上式(9b)、(9c)及び(9d)を満足する電流Ijを各コイル202に印加すれば、所望の力成分及びトルク成分(Tz、Twx、Twy)を得ることができる。
ここで、トルク寄与行列Mを定義する。トルク寄与行列Mは、可動子101が位置姿勢Pにある場合に1~j番目のコイル202の各々に対して単位電流を印加した場合の各力成分及びトルク成分(Tz、Twx、Twy)への寄与の大きさを示す行列である。このように、トルク寄与行列Mを用いて、各コイル202に印加される単位電流による力成分及びトルク成分(Tz、Twx、Twy)の各成分に対する寄与に関する情報を用いて、各コイル202に印加される電流値を決定する。
トルク寄与行列Mでは、その1行目をZ方向、2行目をWx方向、3行目をWy方向に対応させる。すると、トルク寄与行列Mの1行j列、2行j列及び3行j列の各要素M(1,j)、M(2,j)及びM(3,j)は、それぞれ次式(10a)、(10b)及び(10c)により表される。トルク寄与行列Mは、3行N列の行列である。なお、トルク寄与行列Mの各行は、互いに線形独立である。
M(1,j)=Ez(j,P) …式(10a)
M(2,j)=-Ez(j,P)*Y(j,P) …式(10b)
M(3,j)=Ez(j,P)*X(j,P) …式(10c)
一方、コイル電流ベクトルIsとして、1~N番目のコイル202に印加する電流量I1~INを要素とする列ベクトルを導入する。コイル電流ベクトルIsは、次式(10d)により表されるN行1列の列ベクトルである。
Is=Tr(I1,I2,…,Ij,…,IN) …式(10d)
ここでトルクベクトルTqを次式(11)により定義する。
Tq=Tr(Tz,Twx,Twy) …式(11)
すると、式(9b)~(9d)、(10a)~(10d)及び(11)から次式(12)が得られる。
Tq=M*Is …式(12)
ここで、疑電流ベクトルKを導入する。疑電流ベクトルKは、3行1列の列ベクトルであり、Tr(M)をトルク寄与行列Mの転置行列とすれば、次式(13)を満足するベクトルである。
Tr(M)*K=Is …式(13)
コイル電流ベクトルIsを式(13)により表されるものとすることで、Tz、Twx、Twyへの寄与の大きいコイル202により多くの電流値を印加することができるため、効率的に電流を印加することができる。
式(12)は、式(13)を用いて次式(14)に変形することができる。
Tq=M*Tr(M)*K …式(14)
式(14)において、M*Tr(M)は、3行N列の行列とN行3列の行列との積であるから3行3列の正方行列である。また、トルク寄与行列Mの各行は、互いに線形独立である。したがって、M*Tr(M)は、逆行列を常に得ることができる。そのため、式(14)は、次式(15)に変形することができる。
K=Inv(M*Tr(M))*Tq …式(15)
式(13)及び(15)から、最終的には次式(16)で表されるコイル電流ベクトルIsを得る。こうして、コイル電流ベクトルIsを一意に求めることができる。
Tr(M)*Inv(M*Tr(M))*Tq=Is …式(16)
以上のようにしてコイル電流ベクトルIsを計算することにより、各コイル202に印加する電流を決定することができる。これにより、可動子101に対してZ方向の力成分Tz、Wx方向のトルク成分Twx及びWy方向のトルク成分Twyを独立して印加することができるので、Z方向、Wx方向及びWy方向において可動子101の姿勢を安定させることができる。
次に、Y方向の力成分Ty及びWz方向のトルク成分Twzを可動子101に印加するためにコイル208に印加する電流について図14及び図15を用いて説明する。力成分Ty及びトルク成分Twzは、それぞれ水平方向において作用するものである。図14は可動子101をZ方向に沿って上から下に見た概略図である。図15は、Y方向の吸引力プロファイル605を模式的に示すグラフである。図15に示すグラフにおいて、横軸はコイル208に印加する電流、縦軸は可動子101に働く力を示している。
なお、簡単のため、図14には、固定子201に設置されたコイル208として、4個のコイル208aR、208bR、208aL、208bLが可動子101に対向している場合を示している。また、コイル208aLとコイル208aRとは、一対となって1個のコイル208aとして動作する。また、コイル208bLとコイル208bRとは、一対となって1個のコイル208bとして動作する。このように、j番目の対のコイル208jRとコイル208jLとは、一対となって1個のコイル208jとして動作するものとする。
図15において、吸引力プロファイル605は、j番目の1対のコイル208jに印加する電流の大きさIL、IRと可動子101に働く力Fyの大きさとの関係を示している。コイル208とヨーク板103の間には、反発力は働かず吸引力のみが働く。このため、可動子101に対してY+方向に力を印加する場合には、吸引力プロファイル605の範囲605aにおいて、R側のコイル208jRに電流を印加する。また、可動子101に対してY-方向に力を印加する場合には、吸引力プロファイル605の範囲605bにおいて、L側のコイル208jLに電流を印加する。
例えば、Y+方向の力Faを印加する場合には、R側のコイル208jRに電流Iaを印加することができる。また、例えば、Y-方向の力Fbを印加する場合には、L側のコイル208jLに電流Ibを印加することができる。
jを一対のコイル208を特定する指標とする。また、X(j,P)をj番目の一対のコイル208の可動子101の中心Ocから見たX方向の相対位置とする。また、j番目の一対のコイル208が印加するY方向の力をFyjとする。すると、水平方向のY方向の力成分Ty及びWz方向のトルク成分Twzは、それぞれ次式(17a)及び(17b)により表される。
Ty=ΣFyj …式(17a)
Twz=Σ(-Fyj*X(j,P)) …式(17b)
ここで、1~N番目のコイル208が印加するY方向の力Fy1、Fy2、…、FyNを要素とするY方向力ベクトルFysを次式(17c)により定義する。
Fys=Tr(Fy1,Fy2,…,Fyj,…,FyN) …式(17c)
さらに、トルクベクトルTqを次式(17d)により定義する。
Tq=Tr(Ty,Twz) …式(17d)
トルク寄与行列Mでは、1行目をY方向、2行目をWz方向に対応させる。すると、トルク寄与行列Mの1行j列及び2行j列の各要素M(1,j)及びM(2,j)は、それぞれ次式(17e)及び(17f)により表される。
M(1,j)=1 …式(17e)
M(2,j)=X(j,P) …式(17f)
コイル208に印加する電流を算出するため、まず、次式(17g)を満足するY方向力ベクトルFysを決定する。
Tq=M*Fys …式(17g)
Tqは2行1列のベクトル、Mは2行N列の行列であるから、式(17g)を満足するY方向力ベクトルFysの要素の組み合わせは無数にあるが、以下の方法に従って一意に計算することができる。
ここで、2行1列の疑電流ベクトルKを導入する。疑電流ベクトルKは、Tr(M)をトルク寄与行列Mの転置行列とすれば、次式(17h)を満足するベクトルである。
Tr(M)*K=Fys …式(17h)
式(17g)は、式(17h)を用いて次式(17i)に変形することができる。
Tq=M*Tr(M)*K …式(17i)
M*Tr(M)は、2行N列の行列とN行2列の行列との積であるから2行2列の正方行列である。また、トルク寄与行列Mの各行は、互いに線形独立である。したがって、M*Tr(M)は、逆行列を常に得ることができる。そのため、式(17i)は、次式(17j)に変形することができる。
K=Inv(M*Tr(M))*Tq …式(17j)
式(17h)及び(17j)から、最終的に次式(17k)で表されるY方向力ベクトルFysを得る。これにより、Y方向力ベクトルFysを一意に計算することができる。
Tr(M)*Inv(M*Tr(M))*Tq=Fys …式(17k)
Y方向力ベクトルFysが得られた後は、予め計算又は測定されている吸引力プロファイル605から逆算して各コイル208に印加する電流を算出することができる。
以上のようにして、各コイル208に印加する電流を決定することができる。これにより、可動子101に対してY方向の力成分Ty及びWz方向のトルク成分Twzを独立して印加することができるので、Y方向及びWz方向において可動子101の姿勢を安定させることができる。例えば、コイル208に対しては、Wz方向のトルクが常に0となるように電流を印加することができる。
このように、本実施形態では、複数のコイル202、208に印加する電流値を制御する。これにより、目標の姿勢(Y,Z,Wx、Wy,Wz)になるように可動子101の動作を制御する。
次に、搬送方向であるX方向の推力を可動子101に印加するコイル207の制御方法について説明する。本実施形態による搬送システム1は、誘導型リニアモータによる搬送システムである。コイル207は、可動子101の導電板107との間で電磁力を発生させてX方向の推力、すなわちX方向の力成分Txを可動子101に印加する。導電板107としては、特に限定されるものではないが、電気抵抗が比較的小さい例えばアルミニウム製の板が用いられている。
各コイル207は、電流が印加されることにより搬送方向であるX方向に移動磁界を発生させてコイル207と導電板107との間に電磁力を発生させる。これにより、各コイル207は、可動子101に搬送方向であるX方向の推力として力成分Txを発生させる。可動子101の速度が不足する場合は、各コイル207に印加する電流を増加したり、移動磁界が移動する速度が大きくなるように各コイル207に印加する電流のタイミングを変更したりすることができる。
上述のようにして、統合コントローラ301は、各コイル202、207、208に印加する電流の電流指令値を決定して制御する。これにより、統合コントローラ301は、固定子201により搬送される可動子101の姿勢を6軸で制御しつつ、可動子101の非接触での固定子201上の搬送を制御する。なお、制御装置としての統合コントローラ301の機能の全部又は一部は、コイルコントローラ302その他の制御装置により代替されうる。
なお、本実施形態では、コイル207もコイル202、コイル208と同様に電流が制御される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、より簡単に、誘導モーターコントローラを統合コントローラ301に接続して、誘導モーターコントローラにより一定の移動磁界が発生するように各コイル207の電流を制御するように構成することもできる。
以上のとおり、本実施形態によれば、可動子101に対して6軸の力成分及びトルク成分(Tx,Ty,Tz,Twx,Twy,Twz)を独立して印加することができる。このため、本実施形態によれば、Y方向、Z方向、Wx方向、Wy方向及びWz方向において可動子101の姿勢を安定させつつX方向に安定して可動子101を非接触状態で搬送することができる。
本実施形態による搬送システム1は、上述のように可動子101の姿勢を制御しつつ可動子101を組立装置701の作業領域707に搬送し、作業領域707において可動子101をZ方向に着地させて停止させることができる。搬送システム1は、可動子101側のZ軸位置決め部706のそれぞれが、対応する固定子201側のZ軸位置決め部705と接触するように可動子101の停止位置を調整して可動子101を作業領域707に着地させて停止させることができる。
組立装置701の組立ロボット703は、作業領域707に搬送された可動子101に取り付けられ又は保持されて可動子101に搭載されたワーク102に対して、部品704を組み付ける作業等の加工作業を行う。具体的には、組立ロボット703は、可動子101に搭載されたワーク102に対してZ方向に部品704を組み付ける。加工作業の際、図2A及び図2Bに示すように、ワーク102及び可動子101に対して、Z方向に部品704を組み付ける組立ロボット703による加工時の外力704Fが-Z方向に加わる。
一方、このようにZ方向に部品704を組み付ける際に、本実施形態では、固定子201側のZ軸位置決め部705と可動子101側のZ軸位置決め部706とが接触している。これにより、加工時の外力704Fを、互いに接触するZ軸位置決め部705及びZ軸位置決め部706で受けることができる。このとき、Z軸位置決め部705、706は、可動子101のZ方向における可動範囲を制限するストッパーとして機能する。こうして、本実施形態では、加工時の外力704Fに対して、可動子101が安定した位置を維持することができ、精度良くワーク102の位置決めを行うことができる。なお、Z軸位置決め部705、706は、外力704Fが加わった際に、外力704Fが加わる-Z方向に移動可能に構成されていても良い。
また、図2Bに示すように、互いに接触するZ軸位置決め部705及びZ軸位置決め部706は、Z方向に着地した可動子101を支持する支持構造708を構成する。支持構造708は、互いに接触するZ軸位置決め部705及びZ軸位置決め部706が、多角形の複数の頂点のうちの全部又は一部に配置されて構成される。また、支持構造708は、1組又は2組の互いに接触するZ軸位置決め部705及びZ軸位置決め部706で構成されてもよい。
支持構造708を構成するZ軸位置決め部705、706は、加工時の外力704Fの方向ベクトルが、Z軸位置決め部705、706で構成される支持構造708の内側に入るように配置されている。これにより、加工時の外力704Fによりワーク102及び可動子101に働く回転力を低減し、さらにはかかる回転力の発生を防止することができる。こうして、本実施形態では、ワーク102の加工時に可動子101に加わるZ方向の外力704Fの大きさによらず、特に加工時の大きな外力704Fに対しても、可動子101の位置を安定させることができる。また、本実施形態では、可動子101の位置を安定させることにより、精度良くワーク102を位置決めすることができる。
次に、固定子201側のZ軸位置決め部705と可動子101側のZ軸位置決め部706とを用いて可動子101の位置決めを行うための搬送システム1の制御方法について図16を用いて説明する。図16は、本実施形態による可動子101の位置決めを行うための搬送システム1の制御方法を示すフローチャートである。統合コントローラ301として機能するコンピュータは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体から図16に示す制御方法を実行するためのプログラムを読み取って当該プログラムを実行することにより、図16に示す制御方法を実行することができる。
まず、統合コントローラ301は、各コイル202、207、208に印加する電流の電流指令値を制御することにより、ワーク102を含む可動子101の浮上搬送を制御する。これにより、統合コントローラ301は、作業領域707における固定子201側のZ軸位置決め部705の上空まで可動子101を+Z方向に浮上させつつX方向に搬送する。その後、統合コントローラ301は、図16に示すフローチャートの処理に従って、組立装置701の組立ロボット703による加工時における可動子101の位置決めを行う。
最初に、統合コントローラ301は、ステップS100を実行し、加工軸方向であるZ方向において可動子101の着地を行う。加工軸方向は、組立ロボット703により加工が行われる方向である。可動子101のZ方向の着地に際し、統合コントローラ301は、可動子101側のZ軸位置決め部706が、対応する固定子201側のZ軸位置決め部705に接触するように、各コイル202、207、208に印加する電流の電流指令値を制御する。
次に、統合コントローラ301は、ステップS101を実行し、Z方向に可動子101を押し付ける押し付け制御を行う。Z方向への押し付け制御において、統合コントローラ301は、各コイル202に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くZ方向の力成分Tzを制御することにより、可動子101を-Z方向に押し付ける。これにより、統合コントローラ301は、可動子101側のZ軸位置決め部706を、固定子201側のZ軸位置決め部705に押し付ける。Z軸位置決め部706がZ軸位置決め部705に押し付けられることにより、互いに接触するZ軸位置決め部705とZ軸位置決め部706との間において、X方向の静止摩擦力及びY方向の静止摩擦力がそれぞれ増加する。そのため、組立ロボット703によりZ方向からワーク102が加工された際に、可動子101のZ方向の移動が規制されるとともに、可動子101の位置がX方向及びY方向にずれにくくなる。こうして、統合コントローラ301は、可動子101を外力704Fの方向であるZ方向に着地させ、Z軸位置決め部705、706により可動子101のZ方向における移動が規制されるように可動子101を押し付ける押し付け制御を行う。
上述のようにして、統合コントローラ301は、組立ロボット703によりワーク102の加工が行われる間、可動子101の位置決めを行う制御を実行する。加工完了後、統合コントローラ301は、位置決めを行う制御を終了して可動子101の浮上搬送を再び実行することができる。
このように、本実施形態では、可動子101とともにワーク102を搬送した後、Z軸位置決め部705、706を用いて可動子101の位置決めを行う。これにより、ワーク102の加工時にワーク102に加わる大きな外力に対して、可動子101が安定した位置を維持することができる。この結果、精度良くワーク102の位置決めが行われ、ワーク102に対して工程装置により精度良く加工が施されて物品が製造される。
以上より、本実施形態によれば、ワーク102の加工時に可動子101に加わる外力の大きさによらず可動子101の位置を安定させることができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について図17A乃至図18を用いて説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
まず、本実施形態による搬送システム1の構成について図17A及び図17Bを用いて説明する。図17A及び図17Bは、本実施形態による可動子101及び固定子201を含む搬送システム1の構成を示す概略図である。なお、図17Aは、可動子101及び固定子201の主要部分を抜き出して示したものである。図17Bは、可動子101、固定子201側のY軸位置決め部1705及び可動子101側のY軸位置決め部1706を抜き出して示したものである。図17Aは可動子101及び固定子201をX方向から見た図、図17Bは可動子101を斜め上方から見た図である。
本実施形態による搬送システム1の基本的構成は、第1実施形態の構成と同様である。本実施形態による搬送システム1は、第1実施形態の構成に加えて、Y方向において可動子101の位置決めを行うための位置決め部として、固定子201側のY軸位置決め部1705と、可動子101側のY軸位置決め部1706とを有している。Y軸位置決め部1705、1706は、ワーク102の加工時にワーク102及び可動子101に加わる後述の外力1704Fの方向であるY方向における可動子101の移動を規制する部材である。
可動子101は、例えば、その上又は下にワーク1102が取り付けられ又は保持されて搬送されるようになっている。なお、図17Aでは、ワーク1102が可動子101の上に取り付けられて可動子101に搭載された状態を示している。なお、ワーク1102を可動子101に取り付け又は保持するための機構は、特に限定されるものではないが、機械的なフック、静電チャック等の一般的な取り付け機構、保持機構等を用いることができる。
固定子201は、複数のY軸位置決め部1705を有している。Y軸位置決め部1705は、Y方向を向く面の面精度が出ており、Y方向の位置決め基準とすることができる。また、可動子101は、複数のY軸位置決め部1705に対応する複数のY軸位置決め部1706を有している。Y軸位置決め部1706は、Y方向を向く面の面精度が出ており、Y方向の位置決め基準とすることができる。
固定子201において、複数のY軸位置決め部1705は、可動子101が着地する領域の側面に設置されている。可動子101が着地する領域は、組立装置701により可動子101の上のワーク1102への部品1704の組み付けが行われる作業領域1707である。複数のY軸位置決め部1705は、それぞれ-Y方向を向くXZ平面に平行な側面を有する柱状部材である。複数のY軸位置決め部1705の側面は、Y方向の位置が互いに同じになっている。複数のY軸位置決め部1705は、固定子201の内壁面である側面に設けられている。複数のY軸位置決め部1705の材質は、固定子201の材質と同じであってもよい。その場合、複数のY軸位置決め部1705は、固定子201と一体に形成される。また、複数のY軸位置決め部1705と、固定子201の側面の間には不図示のゴムなどの弾性体が設けられていてもよい。作業領域1707の床面には、第1実施形態と同様にZ軸位置決め部705が設置されている。なお、Z軸位置決め部705は、必ずしも設置されている必要はない。
可動子101において、複数のY軸位置決め部1706は、固定子201のY軸位置決め部1705が設置された側面の側を向く側面に設置されている。複数のY軸位置決め部1706は、それぞれ+Y方向を向くXZ平面に平行な側面を有する柱状部材である。複数のY軸位置決め部1706の側面は、Y方向の位置が互いに同じになっている。複数のY軸位置決め部1706は、対応するY軸位置決め部1705に対向可能な位置に配置されている。可動子101の下面には、第1実施形態と同様にZ軸位置決め部706が設置されている。なお、Z軸位置決め部706は、必ずしも設置されている必要はない。
後述するように+Z方向に浮上させられつつX方向に搬送された可動子101は、作業領域1707において、各Y軸位置決め部1706の側面が、対応するY軸位置決め部1705の側面に接触するようにY方向において着地する。着地した可動子101は、Y方向に再び浮上して搬送されうる。可動子101がY方向に再び浮上することができるように、Y軸位置決め部1705、1706は、可動子101のY方向における可動範囲の内部に設置されている。
可動子101及び固定子201に対しては、可動子101により搬送されるワーク1102に対して加工作業を施す工程装置が設置されている。図17Aには、ワーク1102に対して加工作業を施す工程装置の例である組立装置701内に可動子101及び固定子201が組み込まれている場合を示している。
組立装置701は、可動子101に取り付けられたワーク1102に対して組立作業を行う組立ロボット703を有している。組立作業は、ワーク1102に対して部品1704を組み付けて組立を行うものである。組立ロボット703は、可動子101の上部に取り付けられたワーク1102に対して組立作業を実行可能なように組立装置701に設置されている。組立ロボット703の設置場所の前の作業領域1707に搬送された可動子101の上部に取り付けられたワーク1102に対して、組立ロボット703によりY方向から部品1704が組付けられる。
本実施形態による搬送システム1は、第1実施形態と同様にして可動子101の姿勢を制御しつつ可動子101を組立装置701の作業領域1707に搬送し、作業領域1707において可動子101をY方向に着地させて停止させることができる。搬送システム1は、可動子101側のY軸位置決め部1706のそれぞれが、対応する固定子201側のY軸位置決め部1705と接触するように可動子101の停止位置を調整して可動子101を作業領域1707に着地させて停止させることができる。なお、本実施形態による搬送システム1は、可動子101をY方向に着地させるとともに、第1実施形態と同様にして可動子101をZ方向に着地させることができる。
組立装置701の組立ロボット703は、作業領域1707に搬送された可動子101に取り付けられ又は保持されたワーク1102に対して、部品1704を組み付ける作業等の加工作業を行う。具体的には、組立ロボット703は、ワーク1102に対してY方向に部品1704を組み付ける。組立装置701による加工作業の際、図17A及び図17Bに示すように、ワーク1102及び可動子101に対して、Y方向に部品1704を組み付ける組立ロボット703による加工時の外力1704Fが+Y方向に加わる。
一方、このようにY方向に部品1704を組み付ける際に、本実施形態では、固定子201側のY軸位置決め部1705と可動子101側のY軸位置決め部1706とが接触している。これにより、加工時の外力1704FをY軸位置決め部1705及びY軸位置決め部1706で受けることができる。このとき、Y軸位置決め部1705、1706は、可動子101のY方向における可動範囲を制限するストッパーとして機能する。こうして、本実施形態では、加工時の外力1704Fに対して、可動子101が安定した位置を維持することができ、精度良くワーク102の位置決めを行うことができる。なお、Y軸位置決め部1705、1706は、外力1704Fが加わった際に、外力1704Fが加わる-Y方向に移動可能に構成されていても良い。
また、図17Bに示すように、互いに接触するY軸位置決め部1705及びY軸位置決め部1706は、Y方向に着地した可動子101を支持する支持構造1708を構成する。支持構造1708は、互いに接触するY軸位置決め部1705及びY軸位置決め部1706が、多角形の複数の頂点のうちの全部又は一部に配置されて構成される。また、支持構造1708は、1組又は2組の互いに接触するY軸位置決め部1705及びY軸位置決め部1706で構成されてもよい。なお、図17Bでは、2組の互いに接触するY軸位置決め部1705及びY軸位置決め部1706で構成された支持構造1708を示している。
図17Bでは、加工時の外力1704Fの方向ベクトルが、Y軸位置決め部1705及びY軸位置決め部1706で構成される支持構造1708の内側に位置していないため、加工時の外力1704Fにより可動子101にX軸周りの回転力が発生する。そのため、可動子101の位置を安定させる観点から、加工時の外力1704FによりX軸周りに可動子101に発生する回転力を低減し、又はかかる回転力の発生を防止する必要がある。
まず、加工時の外力1704Fの方向ベクトルが、Y軸位置決め部1705及びY軸位置決め部1706で構成される支持構造1708の内側に入るように、Y軸位置決め部1705及びY軸位置決め部1706を配置することができる。この場合、加工時の外力1704FによるX軸周りの回転力の発生を防止することができる。
また、加工時の外力1704FによりX軸周りに発生する回転力を低減するためには、加工時の外力1704Fの作用点と、Y軸位置決め部1705及びY軸位置決め部1706で構成される支持構造1708との間の距離を小さくすればよい。この場合、加工時の外力1704FによりX軸周りに可動子101に発生する回転力と比較して、可動子101に働くX軸周りのトルク成分Twxは十分大きい。こうして、本実施形態では、ワーク1102の加工時に可動子101に加わるY方向の外力1704Fの大きさによらず、特に加工時の大きな外力1704Fに対しても、可動子101の位置を安定させることができる。また、本実施形態では、可動子101の位置を安定させることにより、精度良くワーク1102を位置決めすることができる。
さらに、本実施形態でも、ワーク1102の加工時において、第1実施形態と同様に固定子201側のZ軸位置決め部705と可動子101側のZ軸位置決め部706とをも接触させておくことができる。これにより、加工時における可動子101のZ方向の位置ずれをも低減又は防止することができる。
次に、固定子201側のY軸位置決め部1705と可動子101側のY軸位置決め部1706とを用いて可動子101の位置決めを行うための搬送システム1の制御方法について図18を用いて説明する。図18は、本実施形態による可動子101の位置決めを行うための搬送システム1の制御方法を示すフローチャートである。統合コントローラ301として機能するコンピュータは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体から図18に示す制御方法を実行するためのプログラムを読み取って当該プログラムを実行することにより、図18に示す制御方法を実行することができる。
まず、統合コントローラ301は、第1実施形態と同様にして、ワーク1102を含む可動子101の浮上搬送を制御する。これにより、統合コントローラ301は、作業領域1707における固定子201側のY軸位置決め部1705の側方まで可動子101を+Z方向に浮上させつつX方向に搬送する。その後、統合コントローラ301は、図18に示すフローチャートの処理に従って、組立装置701の組立ロボット703による加工時における可動子101の位置決めを行う。
最初に、統合コントローラ301は、ステップS200を実行し、Y方向において可動子101の着地を行う。可動子101のY方向の着地に際し、統合コントローラ301は、可動子101側のY軸位置決め部1706が、対応する固定子201側のY軸位置決め部1705に接触するように、各コイル202、207、208に印加する電流の電流指令値を制御する。
次に、統合コントローラ301は、ステップS201を実行し、Y方向への可動子101の制御を停止する。統合コントローラ301は、6軸の力成分及びトルク成分(Tx,Ty,Tz,Twx,Twy,Twz)のうちTy=0とすることでY方向への制御を停止することができる。統合コントローラ301は、各コイル208に印加する電流の電流指令値を制御することにより、Ty=0とすることができる。
次に、統合コントローラ301は、ステップS202を実行し、Z方向において可動子101の着地を行う。可動子101のZ方向の着地に際し、統合コントローラ301は、可動子101側のZ軸位置決め部706が、対応する固定子201側のZ軸位置決め部705に接触するように、各コイル202、207、208に印加する電流の電流指令値を制御する。
次に、統合コントローラ301は、ステップS203を実行し、Z方向への可動子101の制御を停止する。統合コントローラ301は、6軸の力成分及びトルク成分(Tx,Ty,Tz,Twx,Twy,Twz)のうち、Tz=0とすることでZ方向への制御を停止することができる。統合コントローラ301は、各コイル202に印加する電流の電流指令値を制御することにより、Tz=0とすることができる。なお、統合コントローラ301は、ステップS203を省略して、ステップS202に続いて次のステップS204を実行することもできる。
次に、統合コントローラ301は、ステップS204を実行し、Z方向に可動子101を押し付ける押し付け制御を行う。Z方向への押し付け制御において、統合コントローラ301は、第1実施形態と同様にして可動子101を-Z方向に押し付けて、可動子101側のZ軸位置決め部706を、固定子201側のZ軸位置決め部705に押し付ける。これにより、Y方向からワーク1102が加工された際の可動子101のZ方向への位置ずれを低減又は防止することができる。
次に、統合コントローラ301は、ステップS205を実行し、Y方向に可動子101を押し付ける押し付け制御を行う。Y方向への押し付け制御において、統合コントローラ301は、各コイル208に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くY方向の力成分Tyを制御することにより、可動子101を+Y方向に押し付ける。これにより、統合コントローラ301は、可動子101側のY軸位置決め部1706を、固定子201側のY軸位置決め部1705に押し付ける。Y軸位置決め部1706がY軸位置決め部1705に押し付けられることにより、互いに接触するY軸位置決め部1705とY軸位置決め部1706との間において、X方向の静止摩擦力が増加する。そのため、組立ロボット703によりY方向からワーク1102が加工された際に、可動子101のY方向の移動が規制されるとともに、可動子101の位置がX方向にずれにくくなる。
こうして、統合コントローラ301は、可動子101を外力1704Fの方向であるY方向に着地させ、Y軸位置決め部1705、1706により可動子101のY方向における移動が規制されるように可動子101を押し付ける押し付け制御を行う。また、統合コントローラ301は、可動子101をZ方向にも着地させ、Z軸位置決め部705、706により可動子101のZ方向における移動が規制されるように可動子101を押し付ける押し付け制御を行う。
次に、統合コントローラ301は、ステップS206を実行し、Y方向及びZの方向への押し付け制御により可動子101に発生するX軸周りの回転力を相殺するように、X軸周りに回転力としてWx方向のトルク成分Twxを発生させる。統合コントローラ301は、各コイル202に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くWx方向のトルク成分Twxを制御する。押し付け制御による回転力を相殺することにより、可動子101の位置をさらに安定させることができる。
上述のようにして、統合コントローラ301は、組立ロボット703によりワーク1102の加工が行われる間、可動子101の位置決めを行う制御を実行する。加工完了後、統合コントローラ301は、位置決めを行う制御を終了して可動子101の浮上搬送を再び実行することができる。
このように、本実施形態では、可動子101とともにワーク1102を搬送した後、Y軸位置決め部1705、1706及びZ軸位置決め部705、706を用いて可動子101の位置決めを行う。これにより、加工時にワーク1102に加わる大きな外力に対して、可動子101が安定した位置を維持することができる。これにより、精度良くワーク1102の位置決めが行われ、ワーク1102に対して工程装置により精度良く加工が施されて物品が製造される。
以上より、本実施形態によれば、ワーク1102の加工時に可動子101に加わる外力の大きさによらず可動子101の位置を安定させることができる。
なお、上記では、Y軸位置決め部1705、1706及びZ軸位置決め部705、706が設置された構成について説明したが、これに限定されるものではない。Z軸位置決め部705、706は、必ずしも設置されていなくてもよい。この場合、統合コントローラ301は、各コイル207に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くZ方向の力成分Tz等を制御することにより、Z方向において可動子101の位置決めを行うことができる。
また、上記ステップS200からステップS206までの各ステップの順序は、図18に示す場合に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、ステップS200及びこれに続くステップS201と、ステップS202及びこれに続くステップS202とは、先後を入れ替えて実行してもよいし、並行して実行してもよい。また、例えば、ステップS204とステップS205とは、先後を入れ替えて実行してもよいし、並行して実行してもよい。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について図19A及至図22を用いて説明する。なお、上記第1及び第2実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
まず、本実施形態による搬送システム1の構成について図19A及び図19Bを用いて説明する。図19A及び図19Bは、本実施形態による可動子101及び固定子201を含む搬送システム1の構成を示す概略図である。なお、図19Aは、可動子101及び固定子201の主要部分を抜き出して示したものである。図19Bは、可動子101、固定子201側のX軸位置決め部2705及び可動子101側のX軸位置決め部2706を抜き出して示したものである。図19Aは可動子101及び固定子201をX方向から見た図、図19Bは可動子101を斜め上方から見た図である。
本実施形態による搬送システム1の基本的構成は、第2実施形態の構成と同様である。本実施形態による搬送システム1は、第2実施形態の構成に加えて、X方向において可動子101の位置決めを行うための位置決め部として、固定子201側のX軸位置決め部2705と、可動子101側のX軸位置決め部2706とを有している。X軸位置決め部2705、2706は、ワーク102の加工時にX方向における可動子101の移動を規制する部材である。
可動子101は、例えば、その上又は下にワーク102が取り付けられ又は保持されて搬送されるようになっている。なお、図19Aでは、ワーク102が可動子101の上に取り付けられて可動子101に搭載された状態を示している。なお、ワーク102を可動子101に取り付け又は保持するための機構は、特に限定されるものではないが、機械的なフック、静電チャック等の一般的な取り付け機構、保持機構等を用いることができる。
固定子201は、X軸位置決め部2705を有している。X軸位置決め部2705は、X方向を向く面の面精度が出ており、X方向の位置決め基準とすることができる。X軸位置決め部2705は、可動子101の位置決めに際して、可動子101の搬送方向(X方向)を塞ぐ形で配置される。そのため、X軸位置決め部2705は、可動子101の位置決めを行う際に、搬送路、すなわち可動子101のX方向における可動範囲に進出するように構成された可動式になっている。
なお、X軸位置決め部2705は、必ずしも可動式のものである必要はなく、搬送路の所定の位置に固定された固定式のものとすることもできる。この場合、可動子101がX軸位置決め部2705を避けて搬送されるように、可動子101の形状、搬送位置等を調整することができる。
また、可動子101は、X軸位置決め部2705に対応するX軸位置決め部2706を有している。X軸位置決め部2706は、X方向を向く面の面精度が出ており、X方向の位置決め基準とすることができる。
固定子201において、X軸位置決め部2705は、可動子101が着地する領域に進出可能に設置されている。可動子101が着地する領域は、組立装置701により可動子101の上のワーク102への部品704の組み付けが行われる作業領域2707である。X軸位置決め部2705は、-X方向を向くYZ平面に平行な側面を有する柱状部材である。作業領域2707の床面及び側面には、それぞれ第2実施形態と同様にZ軸位置決め部705及びY軸位置決め部1705が設置されている。なお、Z軸位置決め部705及びY軸位置決め部1705は、必ずしも設置されている必要はない。
可動子101において、X軸位置決め部2706は、可動子101の進行方向を向く側面に設置されている。X軸位置決め部2706は、+X方向を向くYZ平面に平行な側面を有する柱状部材である。X軸位置決め部2706は、対応するX軸位置決め部2705に対向可能な位置に配置されている。可動子101の下面及び側面には、第2実施形態と同様にZ軸位置決め部706及びY軸位置決め部1706が設置されている。なお、Z軸位置決め部706及びY軸位置決め部1706は、必ずしも設置されている必要はない。
後述するように+Z方向に浮上させられつつX方向に搬送された可動子101は、作業領域2707において、X軸位置決め部2706の側面が、対応するX軸位置決め部2705の側面に接触するようにX方向において着地する。着地した可動子101は、再び浮上して搬送されうる。
可動子101及び固定子201に対しては、可動子101により搬送されるワーク102に対して加工作業を施す工程装置が設置されている。図19Aには、ワーク102に対して加工作業を施す工程装置の例である組立装置701内に可動子101及び固定子201が組み込まれている場合を示している。
組立装置701は、組立ロボット703を含む第1実施形態と同様の構成を有している。組立ロボット703の設置場所の前の作業領域2707に搬送された可動子101の上部に取り付けられたワーク102に対して、組立ロボット703によりZ方向から部品704が組み付けられる。
本実施形態による搬送システム1は、第1実施形態と同様にして可動子101の姿勢を制御しつつ可動子101を組立装置701の作業領域2707に搬送し、作業領域2707において可動子101をX方向に着地させて停止させることができる。搬送システム1は、可動子101側のX軸位置決め部2706が、対応する固定子201側のX軸位置決め部2705と接触するように可動子101の停止位置を調整して可動子101を作業領域2707に着地させて停止させることができる。なお、本実施形態による搬送システム1は、可動子101をX方向に着地させるとともに、第2実施形態と同様にして可動子101をY方向及びZ方向に着地させることができる。
組立装置701の組立ロボット703は、作業領域2707に搬送された可動子101に取り付けられ又は保持されたワーク102に対して、第1実施形態と同様にZ方向に部品1704を組み付ける。組立装置701による加工作業の際、図19A及び図19Bに示すように、ワーク102及び可動子101に対して、第1実施形態と同様に加工時の外力704Fが-Z方向に加わる。
一方、このようにZ方向に部品704を組み付ける際に、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、固定子201側のZ軸位置決め部705と可動子101側のZ軸位置決め部706とが接触している。これにより、加工時の外力をZ軸位置決め部705及びZ軸位置決め部706で受けることができる。こうして、本実施形態でも、加工時の大きな外力704Fに対して、可動子101が安定した位置を維持することができ、精度良くワーク102の位置決めを行うことができる。
また、本実施形態でも、部品704を組み付ける際に第2実施形態と同様に固定子201側のY軸位置決め部1705と可動子101側のY軸位置決め部1706とを接触させることができる。これにより、加工時に発生する可動子101のY方向における位置ずれを低減又は防止することができる。
さらに、本実施形態では、部品704を組み付ける際に、固定子201側のX軸位置決め部2705と可動子101側のX軸位置決め部2706とを接触している。このとき、X軸位置決め部2705、2706は、可動子101のX方向における可動範囲を制限するストッパーとして機能する。これにより、加工時に発生する可動子101のX方向における位置ずれをも低減又は防止することができる。なお、X軸位置決め部2705、2706は、可動子101の進行方向である+X方向、後退方向である-X方向に対してそれぞれ移動可能に構成されていても良い。
なお、可動子101側のX軸位置決め部2706及び固定子201側のX軸位置決め部2705は、図20A乃至図21Bに示すように、図19A及び図19Bに示す構成とは別の構成をとることもできる。
図20Aは、可動子101側のX軸位置決め部2706の別の構成として可動子101側のX軸位置決め部3706を示し、固定子201側のX軸位置決め部2705の別の構成として固定子201側のX軸位置決め部3705を示している。
図20Aに示すように、固定子201側のX軸位置決め部3705は、可動式であり、位置決めが必要な際に+Z方向に移動して、可動子101の位置決めに使用される。位置決めに際して、可動子101が+X方向に移動する。これにより、可動子101側のX軸位置決め部3706と+Z方向に移動した固定子201側のX軸位置決め部3705とが接触して位置決めが実現される。図20Aにおいて、ワーク102への加工が終わり、可動子101の浮上搬送が再び行われる場合、固定子201側のX軸位置決め部3705は、-Z方向に移動して可動子101の搬送路を確保する。このように、X軸位置決め部3705は、可動子101の搬送路を確保するように移動可能に構成されている。
一方、図20Bは、固定子201側のX軸位置決め部3705及び可動子101側のX軸位置決め部3706が図20Aに示す場合とは動作が異なる場合を示している。すなわち、図20Bでは、固定子201側のX軸位置決め部3705が固定されているのに対して、位置決めに際して、可動子101が-Z方向に下降し、+X方向に移動する。これにより、可動子101側のX軸位置決め部3706と固定子201側のX軸位置決め部3705とが接触して位置決めが実現される。図20Bにおいて、ワーク102への加工が終わり、可動子101の浮上搬送が再び行われる場合、可動子101は、固定子201側のX軸位置決め部3705と干渉しない高さまで+Z方向に浮上して可動子101の搬送路を確保する。
図21Aは、可動子101側のX軸位置決め部2706の別の構成として可動子101側のX軸位置決め部4706を示し、固定子201側のX軸位置決め部2705の別の構成として固定子201側のX軸位置決め部4705を示している。
図21Aに示すように、固定子201側のX軸位置決め部4705は、可動式であり、位置決めが必要な際に-Y方向に移動して可動子101の位置決めに使用される。位置決めに際して、可動子101が+X方向に移動する。これにより、可動子101側のX軸位置決め部4706と-Y方向に移動した固定子201側のX軸位置決め部4705とが接触して位置決めが実現される。図21Aにおいて、ワーク102への加工が終わり、可動子101の浮上搬送が再び行われる場合、固定子201側のX軸位置決め部4705は+Y方向に移動して可動子101の搬送路を確保する。このように、X軸位置決め部4705は、可動子101の搬送路を確保するように移動可能に構成されている。
一方、図21Bは、固定子201側のX軸位置決め部4705及び可動子101側のX軸位置決め部4706が図21Aに示す場合とは動作が異なる場合を示している。すなわち、図20Bでは、固定子201側のX軸位置決め部4705が固定されているのに対して、位置決めに際して、可動子101が+Y方向に移動し、+X方向に移動する。これにより、可動子101側のX軸位置決め部4706と固定子201側のX軸位置決め部4705とが接触して位置決めが実現される。図21Bにおいて、ワーク102への加工が終わり、可動子101の浮上搬送が再び行われる場合、可動子101は、固定子201側のX軸位置決め部4705と干渉しないように-Y方向に移動して可動子101の搬送路を確保する。
次に、固定子201側のX軸位置決め部2705と可動子101側のX軸位置決め部2706とを用いて可動子101の位置決めを行うための搬送システム1の制御方法について図22を用いて説明する。図22は、本実施形態による可動子101の位置決めを行うための搬送システム1の制御方法を示すフローチャートである。統合コントローラ301として機能するコンピュータは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体から図22に示す制御方法を実行するためのプログラムを読み取って当該プログラムを実行することにより、図22に示す制御方法を実行することができる。
まず、統合コントローラ301は、第1実施形態と同様にして、ワーク102を含む可動子101の浮上搬送を制御する。これにより、統合コントローラ301は、作業領域2707における固定子201側のZ軸位置決め部705の上空まで可動子101を+Z方向に浮上させつつX方向に搬送する。その後、統合コントローラ301は、図22に示すフローチャートでの処理に従って、組立装置701の組立ロボット703による加工時における可動子101の位置決めを行う。
最初に、統合コントローラ301は、ステップS300を実行し、組立ロボット703による加工の加工軸方向であるZ方向において可動子101の着地を行う。可動子101のZ方向の着地に際し、統合コントローラ301は、可動子101側のZ軸位置決め部706が、対応する固定子201側のZ軸位置決め部705に接触するように、各コイル202、207、208に印加する電流の電流指令値を制御する。
次に、統合コントローラ301は、ステップS301を実行し、Z方向への可動子101の制御を停止する。統合コントローラ301は、6軸の力成分及びトルク成分(Tx,Ty,Tz,Twx,Twy,Twz)のうち、Tz=0とすることでZ方向への制御を停止することができる。統合コントローラ301は、各コイル202に印加する電流の電流指令値を制御することにより、Tz=0とすることができる。
次に、統合コントローラ301は、ステップS302を実行し、Y方向において可動子101の着地を行う。可動子101のY方向の着地に際し、統合コントローラ301は、可動子101側のY軸位置決め部1706が、対応する固定子201側のY軸位置決め部1705に接触するように、各コイル202、207、208に印加する電流の電流指令値を制御する。
次に、統合コントローラ301は、ステップS303を実行し、Y方向への可動子101の制御を停止する。統合コントローラ301は、6軸の力成分及びトルク成分(Tx,Ty,Tz,Twx,Twy,Twz)のうち、Ty=0とすることでY方向への制御を停止することができる。統合コントローラ301は、各コイル208に印加する電流の電流指令値を制御することにより、Ty=0とすることができる。
次に、統合コントローラ301は、ステップS304を実行し、X方向において可動子101の着地を行う。可動子101のX方向の着地に際し、統合コントローラ301は、可動子101側のX軸位置決め部2706が、対応する固定子201側のX軸位置決め部2705に接触するように、各コイル202、207、208に印加する電流の電流指令値を制御する。
次に、統合コントローラ301は、ステップS305を実行し、X方向への可動子101の制御を停止する。統合コントローラ301は、6軸の力成分及びトルク成分(Tx,Ty,Tz,Twx,Twy,Twz)のうち、Tx=0とすることでX方向への制御を停止することができる。統合コントローラ301は、各コイル207に印加する電流の電流指令値を制御することにより、Tx=0とすることができる。なお、統合コントローラ301は、ステップS305を省略して、ステップS304に続いて次のステップS306を実行することもできる。
次に、統合コントローラ301は、ステップS306を実行し、X方向に可動子101を押し付ける押し付け制御を行う。X方向への押し付け制御において、統合コントローラ301は、各コイル207に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くX方向の力成分Txを制御することにより、可動子101を+X方向に押し付ける。これにより、統合コントローラ301は、可動子101側のX軸位置決め部2706を、固定子201側のX軸位置決め部2705に押し付ける。これにより、組立ロボット703によりZ方向からワーク102が加工された際に、可動子101のX方向への位置ずれを低減し又は防止することができる。
次に、統合コントローラ301は、ステップS307を実行し、Y方向に可動子101を押し付ける押し付け制御を行う。Y方向への押し付け制御において、統合コントローラ301は、各コイル208に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くY方向の力成分Tyを制御することにより、可動子101を+Y方向に押し付ける。これにより、統合コントローラ301は、可動子101側のY軸位置決め部1706を、固定子201側のY軸位置決め部1705に押し付ける。これにより、組立ロボット703によりZ方向からワーク102が加工された際に、可動子101のY方向への位置ずれを低減し又は防止することができる。
次に、統合コントローラ301は、ステップS308を実行し、Z方向に可動子101を押し付ける押し付け制御を行う。Z方向への押し付け制御において、統合コントローラ301は、各コイル202に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くZ方向の力成分Tzを制御することにより、可動子101を-Z方向に押し付ける。これにより、統合コントローラ301は、可動子101側のZ軸位置決め部706を、固定子201側のZ軸位置決め部705に押し付ける。これにより、組立ロボット703によりZ方向からワーク102が加工された際に、可動子101のZ方向への位置ずれを低減し又は防止することができる。
次に、統合コントローラ301は、ステップS309を実行し、X方向への押し付け制御により可動子101に発生するY軸周りやZ軸周りの回転力を相殺するように、Y軸周りやZ軸周りに回転力を発生させる。すなわち、統合コントローラ301は、Y軸周りやZ軸周りに回転力としてWy方向のトルク成分TwyやWz方向のトルク成分Twzを発生させる。統合コントローラ301は、各コイル202に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くWy方向のトルク成分Twyを制御する。また、統合コントローラ301は、各コイル208に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くWz方向のトルク成分Twzを制御する。押し付け制御による回転力を相殺することにより、可動子101の位置をさらに安定させることができる。
上述のようにして、統合コントローラ301は、組立ロボット703によりワーク102の加工が行われる間、可動子101の位置決めを行う制御を実行する。加工完了後、統合コントローラ301は、位置決めを行う制御を終了して可動子101の浮上搬送を再び実行することができる。
このように、本実施形態では、可動子101とともにワーク102を搬送した後、X軸位置決め部2705、2706、Y軸位置決め部1705、1706及びZ軸位置決め部705、706を用いて可動子101の位置決めを行う。これにより、加工時にワーク102に加わる大きな外力に対して、可動子101が安定した位置を維持することができる。これにより、精度良くワーク102の位置決めが行われ、ワーク102に対して工程装置により精度良く加工が施されて物品が製造される。
以上より、本実施形態によれば、ワーク102の加工時に可動子101に加わる外力の大きさによらず可動子101の位置を安定させることができる。
なお、上記では、X軸位置決め部2705、2706、Y軸位置決め部1705、1706及びZ軸位置決め部705、706が設置された構成について説明したが、これに限定されるものではない。Y軸位置決め部1705、1706は、必ずしも設置されていなくてもよい。この場合、統合コントローラ301は、各コイル208に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くY方向の力成分Ty等を制御することにより、Y方向において可動子101の位置決めを行うことができる。また、Z軸位置決め部705、706も、必ずしも設置されていなくてもよい。この場合、統合コントローラ301は、各コイル207に印加する電流の電流指令値を制御して可動子101に働くZ方向の力成分Tz等を制御することにより、Z方向において可動子101の位置決めを行うことができる。
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
固定子201のX軸位置決め部2705が可動式になっている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。固定子201のZ軸位置決め部705およびY軸位置決め部1705の少なくとも1つを可動式にすることができる。
複数のコイル202、207、208が所定の列数で配置されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。可動子101に配置されたヨーク板103、導電板107に応じて、各コイルを所定の列数で配置することができる。
また、上記実施形態では、可動子101にヨーク板103及び導電板107が設けられている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。可動子101は、ヨーク板103及び導電板107に代えて、複数の永久磁石を含む磁石群を有していてもよい。
磁石群は、例えば、X方向に沿って配置された複数の永久磁石を含むものとすることができる。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
1 搬送システム
3 制御システム
101 可動子
102 ワーク
103 ヨーク板
104 リニアスケール
105 Yターゲット
106 Zターゲット
107 導電板
201 固定子
202 コイル
204 Xセンサ
206 Zセンサ
207 コイル
208 コイル
210 巻き線
211 コア
301 統合コントローラ
302 コイルコントローラ
303 コイルユニットコントローラ
304 センサコントローラ
312 電流センサ
313 電流コントローラ
512 RFIDタグ
513 RFIDリーダー
701 組立装置
703 組立ロボット
704 部品
705 Z軸位置決め部
706 Z軸位置決め部
708 支持構造
1102 ワーク
1704 部品
1705 Y軸位置決め部
1706 Y軸位置決め部
1708 支持構造
2705 X軸位置決め部
2706 X軸位置決め部
3705 X軸位置決め部
3706 X軸位置決め部
4705 X軸位置決め部
4706 X軸位置決め部

Claims (19)

  1. ワークを搭載し、第1の方向に沿って移動可能な可動子と、
    前記第1の方向に沿って配置された複数のコイルを有し、電流が印加された前記複数のコイルにより、前記第1の方向と交差する第2の方向に浮上させつつ前記第1の方向に前記可動子を搬送する力を前記可動子に力を印加する固定子と、
    前記第2の方向に浮上しつつ前記第1の方向に沿って移動する前記可動子の位置及び姿勢を取得し、取得した前記位置及び前記姿勢に基づき、前記複数のコイルに印加する電流値を制御して前記可動子の動作を制御する制御部と、
    前記可動子の移動を規制する位置決め部と
    を有し、
    前記位置決め部は、前記ワークに加わる外力の方向における前記可動子の移動を規制する第1の位置決め部を含む
    ことを特徴とする搬送システム。
  2. 前記外力の方向は、前記第2の方向、又は前記第1の方向及び前記第2の方向と交差する第3の方向である
    ことを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
  3. 前記制御部は、前記可動子を前記外力の方向に着地させ、前記第1の位置決め部により前記可動子の移動が規制されるように前記可動子を押し付ける押し付け制御を行う
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送システム。
  4. 前記位置決め部は、前記第1の方向及び前記外力の方向と交差する方向における前記可動子の移動を規制する第2の位置決め部を含む
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の搬送システム。
  5. 前記制御部は、前記可動子を前記外力の方向及び前記第1の方向と交差する方向に着地させ、前記第2の位置決め部により前記可動子の移動が規制されるように前記可動子を押し付ける押し付け制御を行う
    ことを特徴とする請求項4に記載の搬送システム。
  6. 前記位置決め部は、前記第1の方向における前記可動子の移動を規制する第3の位置決め部を含む
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の搬送システム。
  7. 前記制御部は、前記可動子を前記第1の方向に着地させ、前記第3の位置決め部により前記可動子の移動が規制されるように前記可動子を押し付ける押し付け制御を行う
    ことを特徴とする請求項6に記載の搬送システム。
  8. 前記位置決め部は、前記第1の方向における前記可動子の搬送路を確保するように移動可能な可動式である
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の搬送システム。
  9. 前記制御部は、前記押し付け制御により前記可動子に発生する回転力を相殺する回転力を発生させる制御を行う
    ことを特徴とする請求項3、5及び7のいずれか1項に記載の搬送システム。
  10. 前記位置決め部は、前記可動子の可動範囲を制限するストッパーである
    ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の搬送システム。
  11. 前記位置決め部は、前記可動範囲の内部に設置されている
    ことを特徴とする請求項10に記載の搬送システム。
  12. ワークを搭載し、第1の方向に沿って移動可能な可動子と、
    前記第1の方向に沿って配置された複数のコイルを有し、電流が印加された前記複数のコイルにより、前記第1の方向と交差する第2の方向に浮上させつつ前記第1の方向に前記可動子を搬送する力を前記可動子に力を印加する固定子と、
    前記可動子の移動を規制する位置決め部と
    を有し、
    前記位置決め部は、前記ワークの加工時に前記可動子に加わる外力の方向における前記可動子の移動を規制する第1の位置決め部を含む搬送システムの制御方法であって、
    前記第2の方向に浮上しつつ前記第1の方向に沿って移動する前記可動子の位置及び姿勢を取得し、取得した前記位置及び前記姿勢に基づき、前記複数のコイルに印加する電流値を制御して前記可動子の動作を制御し、
    前記可動子を前記外力の方向に着地させ、前記第1の位置決め部により前記可動子の移動が規制されるように前記可動子を押し付ける押し付け制御を行う
    ことを特徴とする制御方法。
  13. 前記位置決め部は、前記外力の方向及び前記第1の方向と交差する方向における前記可動子の移動を規制する第2の位置決め部を含み、
    前記可動子を前記外力の方向及び前記第1の方向と交差する方向に着地させ、前記第2の位置決め部により前記可動子の移動が規制されるように前記可動子を押し付ける押し付け制御を行う
    ことを特徴とする請求項12に記載の制御方法。
  14. 前記位置決め部は、前記第1の方向における前記可動子の移動を規制する第3の位置決め部を含み、
    前記可動子を前記第1の方向に着地させ、前記第3の位置決め部により前記可動子の移動が規制されるように前記可動子を押し付ける押し付け制御を行う
    ことを特徴とする請求項12又は13に記載の制御方法。
  15. 前記押し付け制御により前記可動子に発生する回転力を相殺する回転力を発生させる制御を行う
    ことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の制御方法。
  16. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載された搬送システムと、
    前記可動子により搬送される前記ワークに対して加工を施す工程装置と
    を有することを特徴とする加工システム。
  17. 請求項16に記載の加工システムを用いて物品を製造する物品の製造方法であって、
    前記可動子により前記ワークを搬送する工程と、
    前記可動子により搬送された前記ワークに対して、前記工程装置により前記加工を施す工程と
    を有することを特徴とする物品の製造方法。
  18. コンピュータに、請求項12乃至15のいずれか1項に記載の制御方法を実行させることを特徴とするプログラム。
  19. 請求項18に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
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