JP2021120442A - 二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム - Google Patents

二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム Download PDF

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卓也 林
健太 高橋
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Abstract

【課題】ポリアリーレンスルフィド樹脂の優れた電気絶縁性、耐加水分解性などを維持し、フィルム生産性及び加工性に優れ、優れた耐熱性と引裂強度を有した二軸配向フィルムを提供する。【解決手段】メルトフローレイトが0.1g/10min以上30g/10min以下の直鎖状ポリアリーレンスルフィド樹脂からなるフィルムにおいて、フィルムの引裂強度が3N/mm以上であることを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称することがある)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略称することがある)は、優れた耐熱性、難燃性、耐加水分解性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの性質を有しており、特に電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。
近年、PASフィルムは、耐熱性、電気絶縁性、耐加水分解性、耐薬品性などの特性を活かし、電気絶縁材料、離型材料、テープ材料、音響機器振動板材料などへの適用が進められている。
これら用途に用いられるPASフィルムについて、機械物性に優れたPASフィルムを、工業的に極めて効率よく製造し得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、少なくともメルトフローレイト(MFR)が40〜200のポリアリーレンスルフィド樹脂(A樹脂)とメルトフローレイト(MFR)が5〜20のポリアリーレンスルフィド樹脂(B樹脂)を含有する樹脂組成物を溶融押出後二軸延伸することを特徴とするフィルムの製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、加熱成形性に優れた二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムが提案されている(特許文献3参照)。
特開昭56−062126号公報 特開2006−077203号公報 特開2014−189718号公報
しかしながら、特許文献1に記載の上記のフィルムは引裂強度が十分ではなく、モーターのスロットライナーやウェッジとして用いる場合、フィルムが裂けてしまったりする問題があった。
また、特許文献2に記載のフィルムは、引裂伝播抵抗(引裂強度)は高いものの、A樹脂とB樹脂のブレンドが必要であることから生産性が悪く、ブレンド不均一や樹脂の分級により安定したフィルム生産が難しく、改善の余地があった。
特許文献3には、200℃破断伸度が150%以上であることを特徴する二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムが開示されているが、ポリアリーレンスルフィド樹脂が、m−フェニレンスルフィド単位を5〜15%含むポリアリーレンスルフィドであり、フィルムの融点が260℃以下であることから、係るフィルムは耐熱性や耐薬品性が悪化する場合があった。
本発明は、上記した問題点を解消することを課題とする。具体的には、PAS樹脂の優れた電気絶縁性、耐加水分解性などを維持し、フィルム生産性及び加工性に優れ、優れた耐熱性と引裂強度を有した二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することを目的とするものである。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、上記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、メルトフローレイトが0.1g/10min以上30g/10min以下の直鎖状ポリフェニレンスルフィド樹脂からなるフィルムにおいて、フィルムの引裂強度が3N/mm以上の範囲である二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムである。
本発明によれば、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの生産性及び加工性に優れ、優れた耐熱性と引裂強度を有した二軸配向フィルムを得ることが出来る。
以下、本発明のフィルムの製造方法について、実施形態を例示し説明する。
本発明におけるPAS樹脂とは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とするホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(L)などで表される単位などがある(R1,R2は水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)。なかでも式(A)であらわされる直鎖状PAS樹脂が好ましい。下記の式(M)〜式(P)などで表される分岐単位または架橋単位を含む架橋状PAS樹脂は、十分な引裂強度を有した二軸配向フィルムを得られず、本発明の効果が発現しない場合がある。本発明の直鎖状PAS樹脂とは、分岐構造を有するPASが、フィルム中に配合するPASの0.5モル%以下がより好ましく、0.1モル%以下がさらに好ましく、0.01モル%以下がより一層好ましい。
Figure 2021120442
Figure 2021120442
これらの代表的なものとして、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンスルフィドケトンが挙げられる。特に好ましいPAS樹脂としては、ポリアリーレンスルフィドが挙げられる。
本発明で用いられるPAS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であることが好ましく、耐熱性の点から、かかる繰り返し単位が80モル%以上、好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上を含む重合体であることが好ましい。
Figure 2021120442
かかる繰り返し単位の成分が上記の好ましい範囲では、ポリマー(重合体)の結晶性、熱転移温度などが高くなり、PAS樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるフィルムの特徴である耐熱性、寸法安定性および機械的特性を十分に発揮できる傾向がある。
本発明の二軸配向PASフィルムは、実質的に上記PAS樹脂のみからなる二軸配向フィルムである。実質的にPAS樹脂のみからなるとは、フィルムを構成する熱可塑性樹脂として、PAS樹脂を90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上含むことを意味するものである。ここで、本発明のPASフィルムの融点は170℃以上350℃以下の範囲、好ましくは250℃以上300℃以下、より好ましくは270℃以上300℃以下が好ましい。PASフィルムの融点が上記の好ましい範囲では、PASフィルムとしての耐熱性や耐薬品性が向上する傾向がある。
本発明の二軸配向PASフィルムを構成するPAS樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填材を配合することも可能である。かかる充填材の具体例としては酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルクおよびカオリンなどの無機や有機化合物などが挙げられる。
また、本発明におけるPASはメルトフローレイト(MFR)が0.1g/10min以上30g/10min以下である必要があり、好ましくは1g/10min以上30g/10min以下の範囲、より好ましくは5g/10min以上30g/10min以下の範囲、さらに好ましくは10g/10min以上30g/10min以下の範囲が例示できる。メルトフローレイト(MFR)が30g/10minより大きい場合、引裂強度を十分に向上できない傾向がある。また、MFRが0.1g/10minより小さい場合、押出成形不可能の場合がある。本発明のPAS樹脂のメルトフローレイト(MFR)を本発明の範囲にする方法は、重合時の原料組成比や重合温度や時間を変更することで、メルトフローレイト(MFR)を調節する方法が例示できる。重合時に多官能成分を添加する方法や酸化架橋する方法では、PAS樹脂のメルトフローレイト(MFR)を本発明の範囲に制御可能であるが、十分な引裂強度が得られない傾向がある。
なお、本発明のMFRは、ASTM−D1238−70に準じて、穴径2.096mm、長さ8.00mmのオリフィスを用いて、温度315.5℃、荷重5000gの条件で測定した値である。また、複数種類のPASを配合する場合は、各PASのMFRの値および重量比より求めた値を用いる。
また、本発明の二軸配向PASフィルムの引裂強度は、3N/mm以上である必要があり、好ましくは3.5N/mm以上の範囲が例示できる。引裂強度が3N/mm未満の場合、上記のフィルムは引裂強度が十分ではなく、モーターのスロットライナーやウェッジとして用いる場合、フィルムが裂けてしまう傾向がある。一方で、上限に制限はなく高ければ高いほど好ましいが、本発明の様態では30N/mm以下、5N/mm以下となる場合がより多い。従来、引裂強度を5N/mmより大きくする方法として、少なくともメルトフローレイト(MFR)が40〜200のポリアリーレンスルフィド樹脂(A樹脂)とメルトフローレイト(MFR)が5〜20のポリアリーレンスルフィド樹脂(B樹脂)を含有する樹脂組成物を溶融押出後二軸延伸することを特徴とするフィルムの製造方法が提案されていた(特許文献2参照)。しかしながら、引裂伝播抵抗(引裂強度)は高いものの、A樹脂とB樹脂のブレンドが必要であることから生産性が悪く、ブレンド不均一や樹脂の分級により安定したフィルム生産が難しく、改善の余地があった。本発明はかかる課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、直鎖状PAS樹脂、具体的には、フィルム中に配合するPAS中の分岐構造を有するPASが、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下、さらに好ましくは0.01モル%以下であるPAS樹脂を用いることで、十分な引裂強度が得られることを見出したものである。
なお、本発明の引裂強度は、JIS K 7128−2(エレメンドルフ引裂法)に準じて測定し求める。重荷重引裂試験機を用いて、一辺の長さが75mm、その長さの垂直方向の長さが63mmの長方形サイズとし、その75mmの中央部の位置に端から20mmの深さの切れ込みを入れ、残り40mmを引き裂いたときの指示値を読み取り、指示値より求めた引裂力(N)をフィルム厚み(mm)で除した値を引裂強度とする。
本発明の二軸配向PASフィルムは、破断強度が50MPa以上300MPa以下の範囲が好ましい。より好ましくは破断強度が100MPa以上250MPa以下の範囲であり、さらに好ましくは破断強度が125MPa以上225MPa以下の範囲として例示できる。破断強度を上記の好ましい範囲とすることで、フィルムを任意の形状に加工しやすくなる傾向がある。
本発明でいう二軸配向フィルムとは、フィルム面内の2軸に配向したフィルムをいい、分子配向計にて測定される配向度パラメーター(Q)が4300以上かどうかにより判断することができる。配向度パラメーター(Q)はより好ましくは4500以上であり、さらに好ましくは4700以上である。未延伸フィルムや一軸延伸フィルムの場合、分子鎖の配向度が十分でなく引裂強度や破断強度を満たすことができない場合がある。なお、配向度パラメーター(Q)の値に上限は特に設けないが、破れなどなく安定的に製膜可能なフィルムとして5500以下が実質的な上限となる。配向度パラメータ(Q)はフィルムを5cm×5cmの正方形に切り出し、分子配向計(王子計測機器株式会社製、MOA−7015)を用いて測定することができる。配向度パラメーター(Q)が4300以上とする方法としては、後述するフィルムの製造方法において、例示した条件でフィルム長手方向および幅方向に延伸することにより得ることができる。
なお、本発明における破断強度は、ASTM−D882に準じて、引張速度が100mm/分において測定した値である。二軸配向PASフィルムの破断強度を本発明の範囲にする方法は、特に限定はされないが、例えば非晶状態の未延伸フィルムのフィルム長手方向および幅方向における延伸倍率を2倍以上5倍以下、より好ましくは2.5倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは2.5倍以上3.3倍以下の範囲とすることで、破断強度を調整する方法が例示できる。
ここで、本発明における二軸配向PASフィルムの製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
メルトフローレイトが0.1g/10min以上30g/10min以下の直鎖状PAS樹脂を、ステアリン酸カルシウム0.05重量%を分散させたペレットに加工する。これをシリンダー径150mmの一軸押出機に供給し、320℃で溶融させた後、10μm以上の異物をカットする濾過フィルターを通過させて、リップ幅1200mm、リップ間隙1.5mmのTダイ口金からフィルム状に押出す。このようにして押出された溶融フィルムに静電荷を印可させて、PAS樹脂のガラス転移点以下に冷却されたキャスティングドラム(直径800mm)に密着冷却固化させて、実質的に非晶状態の未延伸フィルムを得る。
次に、この未延伸フィルムをフィルム長手方向および幅方向に延伸する。延伸方法としては、未延伸フィルムをロールやテンターを用い縦方向、横方向に逐次延伸する逐次二軸延伸法がある。また、未延伸フィルムをテンターにて縦延伸及び横延伸を同時に行う同時二軸延伸法は、逐次二軸延伸法に比べ工程が短くなるのでコストダウンにつながり、延伸破れやロール傷が発生しにくい為有効である。本発明において、例えば逐次二軸延伸法を用いる場合、長手方向の延伸の条件は特に限定されないが、延伸速度1000%/分以上50000%/分以下の速度で、延伸温度は、PAS樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、ガラス転移温度(Tg)+50℃以下の範囲が好ましく、延伸倍率は2倍以上5倍以下、より好ましくは2.5倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは2.5倍以上3.3倍以下の範囲である。長手方向に延伸することにより一軸配向フィルムを得る。
次に行う幅方向の延伸は、テンターを用いて、延伸温度をPAS樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、ガラス転移温度(Tg)+80℃以下、より好ましくはPAS樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、ガラス転移温度(Tg)+40℃以下の範囲とし、延伸倍率を2倍以上5倍以下、より好ましくは2.5倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは2.5倍以上3.3倍以下の範囲であることが好ましい。その際の延伸速度は特に限定されないが、1000%/分以上50000%/分以下が好ましい。
次にボイド面積比率の低減や熱収縮率の低減等のために、必要に応じて熱処理を行う。熱処理条件としては、定長下、微延伸下、弛緩状態下のいずれかで、200℃以上270℃以下、より好ましくは220℃以上260℃以下、さらに好ましくは240℃以上250℃以下の範囲で0.5秒以上60秒以下行うことが好適である。二軸延伸の倍率が低い場合、熱処理時にしわが発生して、均一なフィルムを得ることができない場合があり、二軸延伸の倍率が高い場合、引張強度が十分ではなく、モーターのスロットライナーやウェッジとして用いる場合、フィルムが裂けてしまったりする場合がある。
また、同時二軸延伸法により延伸する場合は、リニアモーターを利用した駆動方式によるテンターを用いて同時二軸延伸する方法が好ましい。同時二軸延伸の温度としては、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上、ガラス転移温度(Tg)+50℃以下であることが好ましい。延伸温度がこの範囲を大きくはずれると、均一延伸ができなくなり、厚みムラやフィルム破れが生じ好ましくない。延伸倍率は、縦延伸、横延伸それぞれ2倍以上5倍以下、より好ましくは2.5倍以上3.5倍以下の範囲であることが好ましい。その際の延伸速度は特に限定されないが、1000%/分以上50000%/分以下が好ましい。このようにぞれぞれの方法で二軸配向し熱処理を施したフィルムを、室温まで徐冷しワインダーにて巻き取る。冷却方法は、二段階以上に分けて室温まで徐冷するのが好ましい。
以下、本発明の方法を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定法は以下の通りである。
(1)メルトフローレイト(MFR)
ASTM−D1238−70に準じて測定した。東洋精機社製メルトインデクサ−を用い、穴径2.096mm、長さ8.00mmのオリフィスを用いて、温度315.5℃、荷重5000gの条件で測定を行った。サンプル約7gを装置に入れ、1分経過後、ピストンを挿入し、更に4分経過の後、ピストンに荷重を載せ、単位時間あたりに流出するポリマーの重量から算出した。
(2)引裂強度
JIS K 7128−2(エレメンドルフ引裂法)に準じて測定した。重荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて、一辺の長さが75mm、その長さの垂直方向の長さが63mmの長方形サイズとし、その75mmの中央部の位置に端から20mmの深さの切れ込みを入れ、残り40mmを引き裂いたときの指示値を読みとった。引裂強度としては、指示値より求めた引裂力(N)をフィルム厚み(mm)で除した値とした。なお、測定は10本のサンプルを用いて行い、その平均値を採用した。
(3)破断強度
ASTM−D882に準じて測定した。オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用い、試料数10の平均値を採用した。
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:100mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
(4)融点
JIS K7121―1987に準じて測定した。示差走査熱量計セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上で室温から340℃まで昇温速度20℃/分で昇温して、観測される融解の吸熱ピ−ク温度を融点とした。
(5)フィルム厚み
フィルムの厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムから切り出した試料の任意の場所5カ所の厚みを測定し、平均値を採用した。
(参考例1)
撹拌機付きの1キロリットルSUS製容器に、47%水硫化ナトリウム1キロモル、47%水酸化ナトリウム1.02キロモル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1.6キロモル、酢酸ナトリウム0.3キロモル、及びイオン交換水100キログラムを仕込み、240rpmで撹拌しながら常圧で窒素を通じながら235℃まで約180分かけて徐々に加熱し、水209キログラムおよびNMP0.4キログラムを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。また、硫化水素の飛散量は0.02キロモルであった。残留混合物に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)1.02キロモル、NMP2.40キロモルを加えた。続いて反応容器を窒素ガス下に密封した。400rpmで撹拌しながら160℃から220℃まで100分かけて昇温し、220℃で反応を300分間行った。次いで220℃から255℃に60分かけて昇温し、0.8キロモルの水を10分かけて系内に注水し、440分間反応を継続した。その後、255℃から200℃まで100分かけて冷却した。150℃に到達後、送風機を用い室温近傍まで急冷した。内容物を取り出し、1キロリットルのNMPを加えて85℃で30分撹拌した後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別した。得られた固形物に、1キロリットルのNMPを加えて85℃で30分撹拌し、濾別した。得られた固形物に、1キロリットルの温水を加えて70℃で30分撹拌し、濾別する操作を3回繰り返した。得られた固形物に酢酸カルシウム一水和物4.5キログラムと水溶液1キロリットルの温水を加えて70℃で30分撹拌し、濾別した。得られた固形物に、1キロリットルの温水を加えて70℃で30分撹拌し、濾別する操作を2回繰り返した。これを、120℃5時間で減圧乾燥を行い、メルトフローレイト(MFR)20g/10minの直鎖状PPS樹脂Aを得た。
(参考例2)
参考例1の酢酸カルシウム一水和物を酢酸0.3キログラムに変更した以外、参考例1と同様の操作を行い、メルトフローレイト(MFR)50g/10minの直鎖状PPS樹脂Bを得た。
(参考例3)
撹拌機付きの1キロリットルSUS製容器に、47%水硫化ナトリウム1キロモル、47%水酸化ナトリウム1.02キロモル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1.65キロモル、酢酸ナトリウム0.3キロモル、及びイオン交換水100キログラムを仕込み、240rpmで撹拌しながら常圧で窒素を通じながら235℃まで約180分かけて徐々に加熱し、水209キログラムおよびNMP0.4キログラムを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。また、硫化水素の飛散量は0.02キロモルであった。残留混合物に、1、2、4−トリクロロベンゼン0.0004キロモル、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)1.02キロモル、NMP1.35キロモルを加えた。続いて反応容器を窒素ガス下に密封した。400rpmで撹拌しながら160℃から270℃まで180分かけて昇温し、270℃で反応を135分間行った。270℃から200℃まで100分かけて冷却した。冷却開始と同時に0.8キロモルの水を10分かけて系内に注水した。200℃に到達後、送風機を用い室温近傍まで急冷した。内容物を取り出し、1キロリットルのNMPを加えて85℃で30分撹拌した後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別した。得られた固形物に、1キロリットルのNMPを加えて85℃で30分撹拌し、濾別した。得られた固形物に、1キロリットルの温水を加えて70℃で30分撹拌し、濾別する操作を3回繰り返した。得られた固形物を0.005重量%の酢酸カルシウム水溶液1キロリットルの温水を加えて70℃で30分撹拌し、濾別した。得られた固形物に、1キロリットルの温水を加えて70℃で30分撹拌し、濾別する操作を2回繰り返した。これを、120℃5時間で減圧乾燥を行い、メルトフローレイト(MFR)70g/10minの架橋状PPS樹脂Cを得た。
(参考例4)
参考例3の1、2、4−トリクロロベンゼンを0.003キロモルに変更した以外、参考例1と同様の操作を行い、メルトフローレイト(MFR)3g/10minの架橋状PPS樹脂Dを得た。
(実施例1)
参考例1で得たメルトフローレイト(MFR)20g/10minの直鎖状PAS樹脂Aを、ステアリン酸カルシウム0.05重量%を分散させたペレットに加工した。これをシリンダー径150mmの一軸押出機に供給し、320℃で溶融させた後、10μm以上の異物をカットする濾過フィルターを通過させて、リップ幅1200mm、リップ間隙1.5mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。このようにして押出された溶融フィルムに静電荷を印可させて、ポリフェニレンスルフィド樹脂のガラス転移点以下に冷却されたキャスティングドラム(直径800mm)に密着冷却固化させて、実質的に非晶状態の単体シートを得た。次いで、該単膜シートを表面温度95℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向に2.8倍延伸した。この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で2.8倍延伸し、続いて250℃で10秒間熱処理を行い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。しわの無いフィルムが得られ、フィルムの物性を測定したところ、厚み34μm、引裂強度4.0N/mm、破断強度147MPa、融点286℃であった。
(実施例2)
実施例1の延伸倍率を、長手方向に3.0倍延伸、この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で3.0倍延伸に変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、しわの無い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。しわの無いフィルムが得られ、物性を測定したところ、厚み37μm、引裂強度3.9N/mm、破断強度207MPa、融点288℃であった。
(比較例1)
実施例1の延伸倍率を、長手方向に3.4倍延伸、この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で3.4倍延伸に変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。しわの無いフィルムが得られ、フィルムの物性を測定したところ、厚み29μm、引裂強度1.9N/mm、破断強度250MPa、融点288℃であった。
(比較例2)
参考例2で得たメルトフローレイト(MFR)50g/10minの直鎖状PAS樹脂Bを用い、長手方向に2.8倍延伸、この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で2.8倍延伸に変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。熱処理時にしわが発生しており、フィルムの物性を測定したところ、厚み35μm、引裂強度3.0N/mm、破断強度135MPa、融点288℃であった。
(比較例3)
比較例2の延伸倍率を、長手方向に3.4倍延伸、この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で3.4倍延伸に変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。しわの無いフィルムが得られ、フィルムの物性を測定したところ、厚み26μm、引裂強度1.8N/mm、破断強度244MPa、融点288℃であった。
(比較例4)
参考例3で得たメルトフローレイト(MFR)70g/10minの架橋状PAS樹脂Cを用い、長手方向に3.0倍延伸、この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で3.0倍延伸に変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。熱処理時にしわが発生しており、フィルムの物性を測定したところ、厚み31μm、引裂強度2.5N/mm、破断強度162MPa、融点285℃であった。
(比較例5)
比較例4の延伸倍率を、長手方向に3.4倍延伸、この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で3.4倍延伸に変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。フィルムの物性を測定したところ、厚み26μm、引裂強度1.8N/mm、破断強度260MPa、融点286℃であった。
(比較例6)
参考例4で得たメルトフローレイト(MFR)3g/10minの架橋状PAS樹脂Dを用い、長手方向に2.8倍延伸、この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で2.8倍延伸に変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。しわの無いフィルムが得られ、フィルムの物性を測定したところ、厚み49μm、引裂強度3.1N/mm、破断強度177MPa、融点284℃であった。
(比較例7)
比較例6の延伸倍率を、長手方向に3.0倍延伸、この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で3.0倍延伸に変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。しわの無いフィルムが得られ、フィルムの物性を測定したところ、厚み45μm、引裂強度2.4N/mm、破断強度213MPa、融点284℃であった。
(比較例8)
比較例6の延伸倍率を、長手方向に3.4倍延伸、この1軸延伸シートをテンターにて長手方向と直交方向に100℃で3.4倍延伸に変更した以外、実施例1と同様の操作を行い、表1に示す二軸配向PPSフィルムを得た。しわの無いフィルムが得られ、フィルムの物性を測定したところ、厚み35μm、引裂強度1.6N/mm、破断強度268MPa、融点284℃であった。
Figure 2021120442

Claims (2)

  1. メルトフローレイトが0.1g/10min以上30g/10min以下の直鎖状ポリアリーレンスルフィド樹脂からなるフィルムにおいて、フィルムの引裂強度が3N/mm以上であることを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  2. 破断強度が50MPa以上300MPa以下の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
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