以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一又は相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
この実施の形態に係る自動分析装置(以下、単に「分析装置」と称する)は、分注ノズルにより検体及び試薬の各々を反応容器に分注し、反応容器内の反応状態を光学的に測定するように構成される。以下、分注ノズル、検体を、それぞれ「プローブ」、「サンプル」と称する。サンプルとしては、例えば血液成分及び尿を採用できる。この実施の形態では、分析装置の反応容器として、例えばディスポーザブルキュベット(例えば、後述する図3に示すキュベット100)を採用する。以下、図1〜図5を参照して、分析装置の概要について説明する。
図1は、分析装置1000の制御システムを示す図である。分析装置1000は、制御装置500、試薬保冷庫700、サンプルラック800、読取装置150、開閉センサ160、サンプル分注装置20、キュベット供給装置110、キュベット移送装置120、試薬分注装置10、攪拌装置200、測定装置300、及び入出力装置600を備える。
制御装置500は、CPU(Central Processing Unit)510と、RAM(Random Access Memory)520と、記憶装置530と、各種信号を入出力するための入出力バッファとを含む。制御装置500は、試薬保冷庫700、サンプルラック800、読取装置150、開閉センサ160、サンプル分注装置20、キュベット供給装置110、キュベット移送装置120、試薬分注装置10、攪拌装置200、測定装置300、及び入出力装置600を制御する。
CPU510は、記憶装置530に格納されている制御プログラムをRAM520に展開して実行する。この制御プログラムは、制御装置500により実行される各種処理の手順が記されたプログラムである。記憶装置530には、処理手順を記した制御プログラムのほか、各種処理に用いられる各種情報(例えば、試薬情報、サンプル情報、分析スケジュール、分析履歴等)が格納されている。試薬情報は、試薬保冷庫700で保管されている試薬の情報である。サンプル情報は、サンプルラック800で保管されているサンプルの情報である。分析スケジュールは、分析が行われる順番である。分析装置1000は、予約された全てのサンプルの分析を効率良く行うために、各サンプルの分析項目及び後述の各ポートの空き状況に基づいて分析スケジュールを決定する。これにより、分析装置1000は、複数のサンプルを並行して分析することができる。分析履歴は、分析の進行状況及び測定結果を含む情報であり、分析の進行に応じて逐次更新される。制御装置500は、これらの制御プログラム及び各種情報に従って、分析装置における各種処理を実行する。なお、処理については、ソフトウェアによるものに限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
試薬保冷庫700は、分析に使用される試薬が入った試薬容器を収容及び保冷する。試薬容器には試薬容器内の試薬を特定可能な識別子(例えば、バーコード、QRコード(登録商標)、データマトリックス等)が付されている。試薬容器に付された識別子には、試薬容器及び試薬容器内の試薬に関する情報(例えば、試薬の種類(分析項目)、試薬が1試薬系か2試薬系かを示す情報、試薬のロット番号、試薬の使用期限、試薬のシリアル番号、試薬容器の形状、試薬容器の容量、分析可能回数等)が埋め込まれている。
サンプルラック800は、分析対象のサンプルが入ったサンプル容器を収容する。サンプル容器にはサンプル容器内のサンプルを特定可能な識別子(例えば、バーコード、QRコード(登録商標)、データマトリックス等)が付されている。サンプル容器に付された識別子には、サンプル容器内のサンプルに関する情報(例えば、患者情報、サンプルのID、分析項目等)が埋め込まれている。
読取装置150は、試薬容器に付された識別子を読み取る読取装置150A、及び、サンプル容器に付された識別子を読み取る読取装置150Bを含む。
開閉センサ160は、試薬保冷庫700の蓋の開閉を検知する開閉センサ160A、サンプルラック800の蓋の開閉を検知する開閉センサ160Bを含む。
サンプル分注装置20は、キュベットにサンプルを分注する。キュベット供給装置110は、サンプル分注装置20がサンプルを分注可能な位置(サンプル分注ポート)に空のキュベットを供給する。キュベット移送装置120は、サンプルが分注されたキュベットを移送する。試薬分注装置10は、サンプルが分注されたキュベットに試薬を分注する。攪拌装置200は、所定の条件(例えば、攪拌速度及び攪拌時間)でキュベットの内容物を攪拌する。測定装置300は、キュベットの内容物に所定の測定を行う。この実施の形態では、測定装置300は、光源及び光検出器を有し、キュベットの内容物に光源の光を照射し、光検出器で検出される光量の変化に基づいてキュベット内の反応状態を測定する。
入出力装置600は、ユーザからの入力を受け付ける入力装置と、ユーザに対し所定の出力(例えば、試薬管理画面の表示、分析スケジュールの表示、分析履歴の表示、エラーの通知等)を行う出力装置とを含む。入出力装置600は、ユーザの操作を受け付けた場合には、その操作に対応する信号を制御装置500へ出力する。入出力装置600は、制御装置500から要求があった場合には、その要求に従って所定の表示又は通知を行う。入出力装置600には、タッチパネルディスプレイ等、入力装置と出力装置とが一体となったものを採用することができる。なお、入力装置と出力装置とが別体であってもよい。入力装置は、例えば、各種ポインティングデバイス(例えば、マウス、タッチパッド等)、キーボード、又は携帯機器(例えば、スマートフォン等)の操作部でもよい。ユーザへの出力形態は任意であり、表示装置への表示(例えば、文字又は画像の表示)で知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)で知らせてもよいし、所定のランプを点灯(点滅を含む)させてもよい。
図2は、分析装置1000において、キュベットの移送及び廃棄、並びにキュベットの内容物の攪拌及び測定を行う構成を示す図である。
分析装置1000は、サンプル分注ポートP1を備える。キュベット供給装置110は、キュベット収容部111と、供給機構112とを含む。キュベット収容部111は、多数のキュベット(例えば最大で1000個)を収容することができる。供給機構112は、キュベット収容部111に収容されているキュベットをサンプル分注ポートP1へ供給する。キュベット収容部111及び供給機構112の詳細については、図3にて説明する。
サンプル分注ポートP1は、サンプル分注装置20(図1)がキュベットにサンプルを分注可能な位置に配置される。サンプル分注ポートP1にキュベットがセットされると、サンプル分注装置20によってキュベットにサンプルが分注される。
キュベット移送装置120は、チャック付きアーム121(以下、単に「アーム121」と称する)と、駆動装置122とを含む。アーム121は、キュベットを把持可能に構成されたチャックを有する。アーム121は、チャックによってキュベットを着脱可能に保持するように構成されている。駆動装置122は、アーム121を作動させてチャックの位置を変える。アーム121及び駆動装置122の詳細についても、図3にて説明する。
分析装置1000は、キュベット移送装置120によりキュベットを移送可能な複数のポート、具体的には、攪拌ポートP2、測光ポートP3、及び廃棄ポートP4をさらに備える。測光ポートP3は、複数の散乱ポートP3aと、複数の比色ポートP3bとを含む。サンプル分注ポートP1、攪拌ポートP2、測光ポートP3、及び廃棄ポートP4の各々には、キュベットの有無を検出するポートセンサが設けられている。
攪拌ポートP2は、攪拌装置200の攪拌位置に配置される。攪拌装置200は、攪拌ポートP2にキュベットがセットされると、所定の条件(例えば、攪拌速度及び攪拌時間)でキュベットの内容物を攪拌する。
散乱ポートP3a及び比色ポートP3bの各々は、測定装置300の測定位置に配置されている。以下では、区別して説明する場合を除いて、散乱ポートP3a及び比色ポートP3bの各々を「測光ポートP3」と記載する。
測定装置300は、キュベットの内容物に所定の測定を行うように構成される。この実施の形態では、測定装置300が、光源及び光検出器を有し、いずれかの測光ポートP3にセットされたキュベットの内容物に光源の光を照射し、光検出器で検出される光量の変化に基づいてキュベット内の反応状態を測定する。測定装置300は、散乱ポートP3aに対する光源及び光検出器と、比色ポートP3bに対する光源及び光検出器とを含む。散乱ポートP3aに対する光源、光検出器としては、それぞれ発光ダイオード、フォトダイオードを採用できる。散乱ポートP3aに対する光検出器は、90°散乱光(すなわち、光の照射方向に直交する方向の散乱光)を検出する。比色ポートP3bに対する光源、光検出器としては、それぞれハロゲンランプ、フォトダイオードを採用できる。比色ポートP3bに対する光検出器は、透過光量を検出する。
廃棄ポートP4は、使用済みのキュベットを回収する。廃棄ポートP4は、配管を介してキュベット廃棄容器400につながっている。廃棄ポートP4にキュベットが投入されると、キュベットはキュベット廃棄容器400へ導かれる。
図3は、分析装置1000が備える分析テーブルの平面図である。図3中には、互いに直交する3つの軸(X軸、Y軸、及びZ軸)が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸のうち、X軸は分析装置の幅方向を、Y軸は分析装置の奥行き方向を、Z軸は鉛直方向(すなわち、上下方向)を示している。Z軸の矢印が指し示す方向は「上」、その反対の方向は「下(すなわち、重力方向)」に相当する。
図2および図3を参照して、キュベット収容部111は、複数のキュベット100を収容している。ユーザは、キュベット収容部111の投入口からキュベット収容部111内へキュベット100を補給することができる。キュベット100は、光を透過可能であれば材質は任意であり、例えば透明のアクリル製のものを採用することができる。
供給機構112は、キュベット100をキュベット収容部111から1つずつ取り出してサンプル分注ポートP1に供給する。供給機構112におけるキュベット100の移送方式は任意であり、例えば、滑り台方式(自重方式)、ベルトコンベア方式、ローラ方式、スライド方式のいずれであってもよい。供給機構112は、サンプル分注ポートP1のポートセンサの検出結果を受信し、サンプル分注ポートP1が空いたら次のキュベット100をサンプル分注ポートP1に供給する。但し、これに限られず、供給機構112は、制御装置500(図1)からの指示に従ってキュベット100をサンプル分注ポートP1に供給してもよい。
アーム21は、サンプル吸引ポートP21から吸引されるサンプルを、サンプル分注ポートP1にセットされたキュベット100へ分注するための機器(サンプル分注装置20(図1))である。アーム21は、第2プローブ21aと、アーム本体21bとを含む。アーム本体21bが回転軸23aの回りを旋回することによって、アーム本体21bの先端に設けられた第2プローブ21aがXY平面において円弧状の軌道L2を描くように移動する。
アーム本体21bが旋回することによって、第2プローブ21aは、軌道L2上に設けられたサンプル分注ポートP1、サンプル吸引ポートP21、SポートP22、及び洗浄ポートP23の各々に移動する。SポートP22は、洗剤ポートP22a,P22bと、緩衝液ポートP22c,P22d,P22eと、希釈液ポートP22f,P22g,P22h,P22iとを含む。
サンプル吸引ポートP21の下方には、可動式のサンプルラック800(図1)が設けられている。サンプルラック800には、血液成分又は尿等のサンプルが入った複数のサンプル容器が載置されている。サンプル分注ポートP1にセットされたキュベット100へのサンプルの分注に先立ち、サンプルラック800は、分注対象のサンプル容器がサンプル吸引ポートP21の直下に配置されるように作動する。CTS機構24は、サンプル吸引ポートP21の近傍に設けられる。CTS機構24は、分注対象のサンプル容器にキャップが付いている場合に、ピアサでキャップを穿孔する。
アーム11は、吸引ポートP11,P12から吸引される試薬を、測光ポートP3にセットされている対象のキュベット100へ分注するための機器(試薬分注装置10(図1))である。アーム11は、第1プローブ11aと、アーム本体11bとを含む。アーム本体11bが回転軸13aの回りを旋回することによって、アーム本体11bの先端に設けられた第1プローブ11aがXY平面において円弧状の軌道L1を描くように移動する。
吸引ポートP11,P12の下方には、複数の試薬容器A(又は複数の洗剤容器)が載置された試薬トレイ710が設けられている。試薬トレイ710は、試薬保冷庫700内に設けられている。複数の試薬容器Aは互いに異なる試薬を保有しており、複数の洗剤容器は互いに異なる洗剤を保有している。試薬トレイ710は円盤状のターンテーブルであり、ターンテーブルが駆動することにより、所望の試薬容器A(又は洗剤容器)が吸引ポートP11,P12の直下に配置される。第1プローブ11aは、吸引ポートP11,P12の直下に配置された試薬容器A(又は洗剤容器)内の試薬(又は洗浄液)を吸引する。
アーム本体11bが旋回することによって、第1プローブ11aは、軌道L1上に設けられた各散乱ポートP3a、各比色ポートP3b、吸引ポートP11,P12、回収ポートP13の各々に移動する。なお、第1プローブ11aは試薬間のコンタミネーションを回避するために2本のプローブで構成されていてもよい。また、試薬トレイ710は外周トレイと内周トレイとを有していてもよい。2本のプローブが外周トレイ上の試薬(又は洗浄液)及び内周トレイ上の試薬(又は洗浄液)を吸引ポートP11,P12から吸引する。回収ポートP13は、使用済みの洗浄液を回収するポートであり、特に図示しないが、第1プローブ11aから吐出される水を溜めてプローブ先端の外面を洗浄する水溜め部と、液体を廃棄する廃棄部とを含む。
アーム121は、チャック121aと、アーム本体121bとを含む。チャック121aは、キュベット100を把持可能に構成される。チャック121aがキュベット100を保持する方式は任意であり、チャック121aは、メカニカルチャックであってもよいし、マグネットチャックであってもよいし、真空チャックであってもよい。アーム本体121bが回転軸122aの回りを旋回することによって、アーム本体121bの先端に設けられたチャック121aがXY平面において円弧状の軌道L1を描くように移動することができる。
上記のように、アーム11とアーム121との旋回の中心は同じである。軌道L1上には、サンプル分注ポートP1と、攪拌ポートP2と、複数の測光ポートP3(複数の散乱ポートP3a及び複数の比色ポートP3b)と、廃棄ポートP4と、吸引ポートP11,P12と、回収ポートP13とが設けられている。アーム121は、サンプル分注ポートP1、攪拌ポートP2、各測光ポートP3、及び廃棄ポートP4にチャック121aを移動させることができ、アーム11は、吸引ポートP11,P12、回収ポートP13、攪拌ポートP2、及び各測光ポートP3に第1プローブ11aを移動させることができる。
図4は、図3に示したアーム11及びアーム121の構造を説明するための図である。図4中のX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ図3中のX軸、Y軸、Z軸に対応している。
図3および図4を参照して、アーム11とアーム121とは上下方向にずれて配置される。この実施の形態では、アーム11がアーム121よりも高い位置に配置される。第1プローブ11aはアーム本体11bの先端部E1に接続され、回転軸13aはアーム本体11bの基端部E2に接続されている。第1プローブ11aは、先端に開口部OPを有する。駆動装置の昇降アクチュエータがアーム11及び回転軸13aを一体的に上下方向に動かすことによって、アーム11(ひいては、第1プローブ11a)が上下に変位する。例えば、第1プローブ11aは、比色ポートP3bにセットされたキュベット100Bに試薬を分注するときに下降してキュベット100Bに近づき、試薬の分注が終了すると、上昇してキュベット100Bから離れる。
チャック121aはアーム本体121bの先端部E3に接続され、回転軸122aはアーム本体121bの基端部E4に接続されている。アーム本体121bの基端部E4は、上下方向に変位可能な態様で回転軸122aに保持されている。駆動装置の昇降アクチュエータがアーム121を上下方向に動かすことによって、アーム121(ひいては、チャック121a)が上下に変位する。例えば、チャック121aは、散乱ポートP3aにセットされたキュベット100Aを移送するときに下降してキュベット100Aを把持し、キュベット100Aを把持したまま上昇して散乱ポートP3aから離れる。その後、アーム121が駆動装置により回転駆動されて移送先のポート(より特定的には、軌道L1上に位置するいずれかのポート)にチャック121aが到達したら、チャック121aは再び下降してポートにキュベット100Aをセットする。キュベット100Aがポートにセットされたら、チャック121aはキュベット100Aを離して(すなわち、チャック解除して)、再び上昇する。
次に、分析装置1000における分析の流れについて説明する。分析装置1000は、分析スケジュール(図1)に従って、複数のサンプルの分析を同時に進行する。具体的には、分析装置1000は、あるサンプルの測定準備(吸引ポートP11(図3)又はサンプル吸引ポートP21(図3)における分注)を行いながら、別のサンプルの測定(測光ポートP3(図3)における光学的な測定)を行う。分析スケジュールは、予約された全てのサンプルの分析が効率良く行われるように、サンプル情報(例えば、各サンプルの分析項目)及び各ポートの空き状況に基づいて分析装置1000によって決定される。分析スケジュールには、分注及び測定の各々のタイミングと、分注対象のサンプルの情報と、分注対象の試薬の情報と、測定を行う測光ポートP3(図3)の番号とが含まれる。分析スケジュールは、記憶装置530(図1)に保存され、サンプルのID毎(サンプル容器毎)に管理される。
分析開始時に、分析で使用されるキュベット100(図3)にID(キュベットのID)が付与される。分析が進行すると、途中経過を含む分析履歴(図1)が記憶装置530(図1)に保存される。分析履歴は、分析の進行に応じて逐次更新される。分析履歴には、キュベット100の移動経路(現在位置を含む)と、キュベット100に分注されたサンプル及び試薬と、測定が行われた測光ポートP3(図3)と、測定結果とが含まれる。分析履歴は、キュベットのID毎(キュベット100毎)に管理される。ユーザは、分析履歴を参照することにより、分析が分析スケジュールどおりに行われたか(又は、進行しているか)を確認することができる。
図5は、分析装置1000における分析の一連の流れを示すフローチャートである。図5に示す処理は、制御装置500が行う処理であり、CPU510が記憶装置530に格納されている制御プログラムを実行することにより実現される。
図1、図3、および図5を参照して、まず、制御装置500は、キュベット100をサンプル分注ポートP1に供給する(ステップS510)。具体的には、供給機構112が、キュベット100をキュベット収容部111から取り出してサンプル分注ポートP1に供給する。供給機構112は、サンプル分注ポートP1のポートセンサの出力に基づき、サンプル分注ポートP1が空くと次のキュベット100をサンプル分注ポートP1に供給する。
次いで、制御装置500は、サンプルをキュベット100に分注し、キュベット100の内容物を攪拌する(ステップS520)。具体的には、制御装置500は、分析スケジュールを参照しながら、可動式のサンプルラック800を制御することにより、サンプル吸引ポートP21の直下に所定のサンプル(より特定的には、分析スケジュールが指定するサンプル)を配置する。続けて、制御装置500は、駆動装置を制御して、第2プローブ21aをサンプル吸引ポートP21に移動させ、第2プローブ21aに上記サンプルを吸引させる。続けて、制御装置500は、駆動装置を制御して、第2プローブ21aをサンプル分注ポートP1に移動させ、上記サンプルを第2プローブ21aからキュベット100(より特定的には、ステップS510でサンプル分注ポートP1に供給されたキュベット100)に分注する。分注後、第2プローブ21aは洗浄される。
次いで、制御装置500は、キュベット100を測光ポートP3へ移送する(ステップS530)。具体的には、制御装置500は、駆動装置を制御してアーム121を動かすことにより、キュベット100をサンプル分注ポートP1から測光ポートP3に移送する。
次いで、制御装置500は、キュベット100を攪拌ポートP2へ移送する(ステップS540)。具体的には、制御装置500は、駆動装置を制御してアーム121を動かすことにより、キュベット100を測光ポートP3から攪拌ポートP2に移送する。ただし、分析項目が凝固項目である場合には、ステップS540及び後述するステップS560は省略される。この場合、後述するステップS550においては、制御装置500は、測光ポートP3に位置するキュベット100に試薬を分注し、分注後の攪拌は行わない。ステップS550における試薬吐出の勢いでキュベット100の内容物が混合される。
ステップS550では、制御装置500は、サンプルの入ったキュベット100に試薬を分注し、キュベット100の内容物を攪拌する。具体的には、制御装置500は、分析スケジュールを参照しながら、試薬保冷庫700のターンテーブルを駆動することにより、吸引ポートP11の直下に所定の試薬(より特定的には、分析スケジュールが指定する試薬)を配置する。続けて、制御装置500は、駆動装置を制御して、第1プローブ11aを吸引ポートP11に移動させ、第1プローブ11aに上記試薬を吸引させる。続けて、制御装置500は、駆動装置を制御して、第1プローブ11aを攪拌ポートP2に移動させ、上記試薬を第1プローブ11aからキュベット100に分注する。分注後、攪拌装置200によってキュベット100の内容物が攪拌される。また、分注後、第1プローブ11aは洗浄される。
制御装置500は、分析項目が2試薬系の比色項目である場合には、上記ステップS530〜ステップS550の処理を繰り返して、第1試薬及び第2試薬の分注を行う。全ての試薬の分注が完了すると、制御装置500は、キュベット100を測光ポートP3へ移送する(ステップS560)。
次いで、制御装置500は、測定装置300を制御することにより、以下に説明する測定を行う(ステップS570)。
例えば、サンプルが血漿であり、分析項目が凝固項目である場合には、散乱ポートP3aにおいてサンプルの凝固時間が測定される。凝固の進行に伴って散乱光の強度が増加し、凝固反応が終了すると、散乱光の強度はほとんど変化しなくなるため、散乱光の強度から凝固時間を求めることができる。
サンプルが血漿であり、分析項目が比色項目である場合には、比色ポートP3bにおいてサンプルの濃度及び活性値が測定される。制御装置500は、サンプルをキュベット100に分注してから所定時間経過後に第1試薬をキュベット100に分注し、さらに、第1試薬の分注から所定時間経過後に第2試薬(より特定的には、第1試薬とは異なる試薬)をキュベット100に分注する。第2試薬をキュベット100に分注することによって、サンプルと試薬との反応が開始し、キュベット100の内容物の吸光度が変化する。こうした吸光度の推移からサンプルの濃度及び活性値を求めることができる。こうした測定では、第1試薬及び第2試薬の各々の分注後において、第1プローブ11aが洗浄される。
サンプルが尿である場合には、例えば比色ポートP3bにおいて、サンプルと試薬との反応によって生ずる吸光度の変化が光学的に測定される。
上記測定が終了すると、制御装置500は、キュベット100を廃棄する(ステップS580)。具体的には、制御装置500は、駆動装置を制御してアーム121を動かすことにより、測光ポートP3から廃棄ポートP4にキュベット100を移送するとともに、アーム121のチャックを解除して、廃棄ポートP4にキュベット100を投入する。廃棄ポートP4にキュベット100が投入されると、そのキュベット100(すなわち、使用済みの反応容器)はキュベット廃棄容器400(図2)に回収される。
ステップS580の後、制御装置500は、分析スケジュールが指定する次のサンプルの分析を開始するため、処理をステップS510へ移行する。
このように、分析装置1000は、サンプル及び試薬の各々をキュベット100に分注し、キュベット100内の反応状態を光学的に測定する。サンプル毎に分析項目が異なっており、かつ、分析項目毎に使用される試薬が異なる。したがって、キュベット100に分注するサンプル及び試薬の組合せが正しくなければ、正しい分析が行われない。分析装置1000は、試薬容器に付されている識別子を読み取ることによって試薬保冷庫700(図1)内の試薬の情報を管理している。また、分析装置1000は、サンプル容器に付されている識別子を読み取ることによってサンプルラック800(図1)内のサンプルの情報を管理している。分析装置1000は、管理しているサンプル及び試薬の情報を基に、分析スケジュールが指定するサンプルをサンプル吸引ポートP21の直下に配置し、分析スケジュールが指定する試薬を吸引ポートP11の直下に配置する。正しい分析結果を得るためには、サンプル及び試薬の分注が正しく行われる必要があり、そのためには、分析開始時に試薬情報及びサンプル情報が最新の状態に更新されている必要がある。
図6〜図11を参照して、分析装置1000における試薬情報及びサンプル情報の更新処理について説明する。図6は、試薬情報の更新処理を説明するための図である。図6には、試薬保冷庫700の平面図が模式的に描かれている。試薬保冷庫700に収容されている試薬の情報は、制御装置500によって管理されている。制御装置500は、読取装置150Aに試薬容器Aに付されている識別子を読み取らせ、読取装置150Aが読み取った情報と試薬容器Aが配置されているホルダHaの番号(試薬容器Aの配置情報)とを対応付けた情報(試薬情報)を記憶装置530に保存する。制御装置500は、試薬情報を反映させた試薬管理画面を生成し、入出力装置600に試薬管理画面を表示する。ユーザは、試薬管理画面上で最新の試薬情報を確認することができる。
試薬保冷庫700には、試薬トレイ710が設けられている。試薬トレイ710には、試薬容器A又は洗剤容器が配置される複数のホルダHaが設けられている。試薬容器Aは、試薬トレイ710の外周に位置する1番〜25番のホルダHaのいずれかに配置される。試薬トレイ710は円盤状のターンテーブルであり、ターンテーブルが駆動することにより、試薬保冷庫700内の試薬容器Aの位置が変化する。図6では、1番〜25番のホルダHaの全てに試薬容器Aが配置されているが、試薬容器Aが配置されていないホルダHaがあってもよい。また、試薬容器Aが配置されるホルダHaの数は25個に限られない。試薬保冷庫700の壁には光を透過可能な窓Wが設けられている。窓Wの位置と読取装置150Aの読取位置R1とが重なるように、読取装置150Aが配置されている。
開閉センサ160Aは、試薬保冷庫700の蓋720の開閉を検知する。試薬保冷庫700の蓋720は、読取装置150Aの読取位置R1を含む領域を覆う蓋720aと、読取装置150Aの読取位置R1を含まない領域を覆う蓋720bとから構成される。ユーザは、両方の蓋720を開けて試薬容器Aを交換してもよいし、蓋720aのみを開けて試薬容器Aを交換してもよい。
開閉センサ160Aは、試薬保冷庫700の近傍に設けられている。開閉センサ160Aは、試薬保冷庫700の蓋720の開閉を検知すると、制御装置500へ信号を送信する。制御装置500は、信号を受信すると、ホルダHaが1つずつ読取位置R1に位置するように試薬トレイ710を回転させ、ホルダHaが読取位置R1に位置する毎に読取装置150Aに読取処理を実行させる。
読取装置150Aは、試薬容器Aに付されている識別子を読み取ることができた場合には読み取った情報を制御装置500へ送信し、試薬容器Aに付されている識別子を読み取ることができなかった場合には読取エラーを示す信号を制御装置500へ送信する。制御装置500は、読取装置150Aが読み取った情報を受信した場合には、その情報と読取位置R1に位置するホルダHaの番号とを対応付けた情報(試薬情報)を記憶装置530に保存する。一方、制御装置500は、読取エラーを示す信号を受信した場合には、読取エラーであることをユーザに報知する。ユーザへの報知形態は任意であり、入出力装置600への表示(例えば、文字又は画像の表示)で知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)で知らせてもよいし、所定のランプを点灯(点滅を含む)させてもよい。全てのホルダHaに対し読取処理が完了すると、制御装置500は、試薬情報を反映させた試薬管理画面を生成して入出力装置600に表示する。なお、制御装置500は、一のホルダHaに対し読取処理が完了する毎に、試薬情報を反映させた試薬管理画面を生成して入出力装置600に表示してもよい。
なお、図6では、読取装置150Aは、試薬保冷庫700に対し1つのみ設けられているが、複数設けられてもよい。
図7は、サンプル情報の更新処理を説明するための図である。図7には、サンプルラック800の平面図が模式的に描かれている。サンプルラック800に収容されているサンプルの情報は、制御装置500によって管理されている。制御装置500は、読取装置150Bにサンプル容器Bに付されている識別子を読み取らせ、読取装置150Bが読み取った情報とサンプル容器Bが配置されているホルダHbの番号(サンプル容器Bの配置情報)とを対応付けた情報(サンプル情報)を記憶装置530に保存する。制御装置500は、サンプル情報を反映させた管理画面を生成し、入出力装置600に管理画面を表示する。ユーザは、管理画面上で最新のサンプル情報を確認することができる。
サンプルラック800がセットされる領域は、ラックカバー810で覆われている。ユーザはラックカバー810を開けてサンプルラック800をセットする。サンプルラック800には、サンプル容器Bが配置される複数のホルダHb(1番〜5番のホルダHb)が設けられている。サンプルラック800は移動可能に構成されている。サンプル容器Bは、1番〜5番のホルダHbのいずれかに配置される。図7では、1番〜5番のホルダHbの全てにサンプル容器Bが配置されているが、サンプル容器Bが配置されていないホルダHbがあってもよい。また、サンプル容器Bが配置されるホルダHbの数は5個に限られない。読取装置150Bの読取位置R2がサンプルラック800の方に向くように、読取装置150Bが配置されている。
開閉センサ160Bは、ラックカバー810の開閉を検知する。開閉センサ160Bは、ラックカバー810の近傍に設けられている。開閉センサ160Bは、ラックカバー810の開閉を検知すると、制御装置500へ信号を送信する。制御装置500は、信号を受信すると、ホルダHbが1つずつ読取装置150Bの読取位置R2に位置するようにサンプルラック800を移動させ、ホルダHbが読取位置R2に位置する毎に読取装置150Bに読取処理を実行させる。
読取装置150Bは、サンプル容器Bに付されている識別子を読み取ることができた場合には読み取った情報を制御装置500へ送信し、サンプル容器Bに付されている識別子を読み取ることができなかった場合には読取エラーを示す信号を制御装置500へ送信する。制御装置500は、読取装置150Bが読み取った情報を受信した場合には、その情報と読取位置R2に位置するホルダHbの番号とを対応付けた情報(サンプル情報)を記憶装置530に保存する。一方、制御装置500は、読取エラーを示す信号を受信した場合には、読取エラーであることをユーザに報知する。ユーザへの報知形態は任意であり、入出力装置600への表示(例えば、文字又は画像の表示)で知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)で知らせてもよいし、所定のランプを点灯(点滅を含む)させてもよい。全てのホルダHbに対し読取処理が完了すると、制御装置500は、サンプル情報を反映させた管理画面を生成して入出力装置600に表示する。なお、制御装置500は、一のホルダHbに対し読取処理が完了する毎に、サンプル情報を反映させた管理画面を生成して入出力装置600に表示してもよい。
なお、図7では、読取装置150Bは、サンプルラック800に対し1つのみ設けられているが、複数設けられてもよい。
図8は、読取装置150による読取処理を説明するための図である。読取装置150A(又は、読取装置150B)は、試薬容器A(又は、サンプル容器B)に付されている識別子5に光を照射して、識別子5に埋め込まれている情報を読み取る。識別子5は、例えば、バーコード、QRコード(登録商標)、データマトリックス等である。
読取装置150は、光源153と、受光素子154、識別子5に埋め込まれている情報を特定する特定部155とを含む。読取装置150が制御装置500から読取指示を受信すると、光源153が発光する。光源153からの光151が識別子5に照射され、反射光152が受光素子154によって受け取られる。受光素子154は、反射光152のパターンを特定部155に出力する。特定部155は、反射光152のパターンを基に識別子5に埋め込まれている情報を特定することができた場合には、その特定した情報を制御装置500へ送信する。一方、特定部155は、反射光152のパターンを基に識別子5に埋め込まれている情報を特定することができなかった場合には、読取エラーを制御装置500へ送信する。読取エラーとなる場合は、例えば、光源153からの光151が照射される位置に識別子5が存在しない場合、光源153からの光151が照射される位置に識別子5の一部のみが存在する場合等である。このような場合には、試薬容器A(又は、サンプル容器B)の向きを変更して、識別子5を光151が照射される位置に位置付けると、読取エラーが解消される。
図9は、試薬情報の更新処理を示すフローチャートである。図9に示す処理は、制御装置500が行う処理であり、CPU510が記憶装置530に格納されている制御プログラムを実行することにより実現される。
まず、制御装置500は、試薬保冷庫700の蓋720の開閉を検知したか否かを判定する(ステップS910)。試薬保冷庫700の蓋720が開閉された場合には、試薬容器Aが交換、又は、新たに配置された可能性があることから、分析装置1000は、試薬保冷庫700の蓋720の開閉を契機に試薬情報の更新処理を開始する。制御装置500は試薬保冷庫700の蓋720の開閉を検知するまでステップS910を繰り返し、試薬保冷庫700の蓋720の開閉を検知した場合には(ステップS910においてYES)、処理をステップS920に移行する。
ステップS920において、制御装置500は、試薬トレイ710を回転させて、1つのホルダHaを読取位置R1に位置づける。
次いで、制御装置500は、読取装置150Aに読取処理を実行させる(ステップS930)。
次いで、制御装置500は、読取装置150Aから読取エラーを受信したか否かを判定する(ステップS940)。読取装置150Aから読取エラーを受信した場合には(ステップS940においてYES)、制御装置500は、処理をステップS990に移行する。一方、読取装置150Aから読取エラーを受信しなかった場合には(ステップS940においてNO)、制御装置500は、処理をステップS950に移行する。
ステップS990において、制御装置500は、読取エラーをユーザに報知する。ユーザへの報知形態は任意であり、入出力装置600への表示(例えば、文字又は画像の表示)で知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)で知らせてもよいし、所定のランプを点灯(点滅を含む)させてもよい。例えば、制御装置500は、試薬管理画面のエラー欄(図10のメインメニューG1参照)に、エラーコメントを表示させてもよい。ユーザは、読取エラーの報知を契機に試薬容器Aの向きを変更し、識別子が読取位置R1の方に向くようにすることで、読取エラーを解消することができる。ステップS990の後、制御装置500は、処理をステップS970に移行する。
ステップS950において、制御装置500は、読取装置150Aが読み取った情報を読取装置150Aから受信したか否かを判定する。制御装置500は、読取装置150Aが読み取った情報を読取装置150Aから受信するまでステップS950を繰り返し、読取装置150Aが読み取った情報を読取装置150Aから受信した場合には(ステップS950においてYES)、制御装置500は、処理をステップS960に移行する。
ステップS960において、制御装置500は、読取装置150Aが読み取った情報と読取位置R1に位置するホルダHaの番号とを対応付けた情報(試薬情報)を記憶装置530に保存する。ステップS960の後、制御装置500は、処理をステップS970に移行する。
ステップS970において、制御装置500は、全てのホルダHaに対し、読取処理を実行したか否かを判定する。全てのホルダHaに対し、読取処理を実行した場合には(ステップS970においてYES)、制御装置500は、処理をステップS980に移行する。一方、まだ全てのホルダHaに対し、読取処理を実行していない場合には(ステップS970においてNO)、制御装置500は、処理をステップS920に移行する。
ステップS980において、制御装置500は、試薬情報を反映させた試薬管理画面を生成して入出力装置600に表示する。
ステップS980の後、制御装置500は、図9に示す処理を終了する。
図9に示す処理により、分析装置1000は、試薬情報を更新するとともに、読取エラーを解消する契機をユーザに与えることができる。分析装置1000は、読取装置150Aが読取処理を実行しても識別子に埋め込まれている情報を読み取ることができなかった場合には、読取エラーをユーザに報知する。これを契機に、ユーザは、識別子が読取装置150Aの読取位置R1の方に向くように試薬容器Aの向きを調整し、読取エラーを解消した上で分析の開始を指示することができる。これにより、試薬情報が更新された状態で分析が開始されることとなるので、試薬情報が更新されないまま誤った分析がなされることを未然に防ぐことができる。
図10は、メインメニュー及び試薬管理画面の一例を示す図である。メインメニューG1は、分析の開始を指示するためのボタン、分析の一時停止を指示するためのボタン、及び、分析装置1000においてエラーが発生している場合に点灯するボタン等を含む。試薬管理画面G2は、試薬保冷庫700(図6)内の試薬の情報をユーザに示すための画面である。メインメニューG1及び試薬管理画面G2は、入出力装置600(図6)に表示される。
試薬管理画面G2には、試薬保冷庫700内の試薬容器A(図6)の配置と各試薬容器Aに付された識別子に埋め込まれている情報が表示される。試薬管理画面G2には、試薬トレイ710(図6)を模した画像G21、試薬トレイ710のホルダHa(図6)を模した画像G22、及びホルダHaの番号Nが表示されている。画像G22のうち文字が表示されていない画像は、ホルダHaに試薬容器Aが配置されていないことを示している。画像G22のうち文字が表示されている画像は、ホルダHaに試薬容器Aが配置されていることを示している。例えば、番号Nが1の画像G22は、1番のホルダHaに配置されている試薬容器Aには「PT−n」という試薬が納められており、その試薬で「PT−n」という項目を42回分析できるということを示している。
矢印を模した画像G23、G24は、試薬トレイ710を回転させるためのボタンである。ユーザが画像G23を1回押すと、矢印の向きに試薬トレイ710が1コマ分(図10では72度)回転する。ユーザが画像G24を1回押すと、矢印の向きに試薬トレイ710が2コマ分(図10では144度)回転する。ユーザは、蓋720a(図6)のみを開けて試薬容器Aを試薬トレイ710に配置する場合には、試薬管理画面G2上でボタンを操作して、試薬容器Aを配置したいホルダHaを蓋720aの開いている位置に移動させることができる。
詳細情報欄G25には、試薬管理画面上で選択されている試薬容器Aについての詳細な情報が表示される。詳細情報欄G25には、例えば、試薬名(試薬の種類、分析項目)、試薬が1試薬系か2試薬系かを示す情報、試薬のロット番号、試薬の使用期限、試薬のシリアル番号、試薬容器の形状(試薬容器の種別)、試薬容器の容量、分析可能回数等が表示される。これらの情報には、試薬容器Aに付された識別子に埋め込まれている情報、及び、試薬容器Aに付された識別子に埋め込まれている情報を基に制御装置500が算出した情報が含まれる。
図11は、サンプル情報の更新処理を示すフローチャートである。図11に示す処理は、制御装置500が行う処理であり、CPU510が記憶装置530に格納されている制御プログラムを実行することにより実現される。
まず、制御装置500は、サンプルラック800のラックカバー810の開閉を検知したか否かを判定する(ステップS1110)。サンプルラック800のラックカバー810が開閉された場合には、サンプル容器Bが交換、又は、新たに配置された可能性があることから、分析装置1000は、サンプルラック800のラックカバー810の開閉を契機にサンプル情報の更新処理を開始する。制御装置500はサンプルラック800のラックカバー810の開閉を検知するまでステップS1110を繰り返し、サンプルラック800のラックカバー810の開閉を検知した場合には(ステップS1110においてYES)、処理をステップS1120に移行する。
ステップS1120において、制御装置500は、サンプルラック800を移動させて、1つのホルダHbを読取位置R2に位置づける。
次いで、制御装置500は、読取装置150Bに読取処理を実行させる(ステップS1130)。
次いで、制御装置500は、読取装置150Bから読取エラーを受信したか否かを判定する(ステップS1140)。読取装置150Bから読取エラーを受信した場合には(ステップS1140においてYES)、制御装置500は、処理をステップS1190に移行する。一方、読取装置150Bから読取エラーを受信しなかった場合には(ステップS1140においてNO)、制御装置500は、処理をステップS1150に移行する。
ステップS1190において、制御装置500は、読取エラーをユーザに報知する。ユーザへの報知形態は任意であり、入出力装置600への表示(例えば、文字又は画像の表示)で知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)で知らせてもよいし、所定のランプを点灯(点滅を含む)させてもよい。例えば、制御装置500は、入出力装置600に、エラーコメントを表示させてもよい。ユーザは、読取エラーの報知を契機にサンプル容器Bの向きを変更し、識別子が読取位置R2の方に向くようにすることで、読取エラーを解消することができる。ステップS1190の後、制御装置500は、処理をステップS1170に移行する。
ステップS1150において、制御装置500は、読取装置150Bが読み取った情報を読取装置150Bから受信したか否かを判定する。制御装置500は、読取装置150Bが読み取った情報を読取装置150Bから受信するまでステップS1150を繰り返し、読取装置150Bが読み取った情報を読取装置150Bから受信した場合には(ステップS1150においてYES)、制御装置500は、処理をステップS1160に移行する。
ステップS1160において、制御装置500は、読取装置150Bが読み取った情報と読取位置R2に位置するホルダHbの番号とを対応付けた情報(サンプル情報)を記憶装置530に保存する。ステップS1160の後、制御装置500は、処理をステップS1170に移行する。
ステップS1170において、制御装置500は、全てのホルダHbに対し、読取処理を実行したか否かを判定する。全てのホルダHbに対し、読取処理を実行した場合には(ステップS1170においてYES)、制御装置500は、処理をステップS1180に移行する。一方、まだ全てのホルダHbに対し、読取処理を実行していない場合には(ステップS1170においてNO)、制御装置500は、処理をステップS1120に移行する。
ステップS1180において、制御装置500は、サンプル情報を入出力装置600に表示する。
ステップS1180の後、制御装置500は、図11に示す処理を終了する。
図11に示す処理により、分析装置1000は、サンプル情報を更新するとともに、読取エラーを解消する契機をユーザに与えることができる。分析装置1000は、読取装置150Bが読取処理を実行しても識別子に埋め込まれている情報を読み取ることができなかった場合には、読取エラーをユーザに報知する。これを契機に、ユーザは、識別子が読取装置150Bの読取位置R2の方に向くようにサンプル容器Bの向きを調整し、読取エラーを解消した上で分析の開始を指示することができる。これにより、サンプル情報が更新された状態で分析が開始されることとなるので、サンプル情報が更新されないまま誤った分析がなされることを未然に防ぐことができる。
図6〜図11に示したように、分析装置1000は、読取エラーを解消する契機をユーザに与えることができる。仮に、読取エラーを解消することができたとしても、容器から読み取った情報を制御装置500に通知できる状態でなければ、情報が更新されないまま誤った分析がなされてしまう。そこで、分析装置1000は、読取装置150と制御装置500との接続確認を行って、容器から読み取った情報を制御装置500に通知できる状態にあるか否かを確認する。図12及び図13を参照して、読取装置150と制御装置500との接続確認処理について説明する。
図12は、試薬情報を読み取るための読取装置150Aに対する接続確認処理を示すフローチャートである。図12に示す処理は、制御装置500が行う処理であり、CPU510が記憶装置530に格納されている制御プログラムを実行することにより実現される。
まず、制御装置500は、分析装置1000の電源がオンになったこと、又は、試薬保冷庫700の蓋720が開閉されたことを検知したか否かを判定する(ステップS1210)。分析装置1000では、設定された時刻になると電源が自動でオンになり、初期化処理が行われる。初期化処理においては、各種設定の初期化、プローブの洗浄、及び、ポートの洗浄等が行われる。読取装置150Aに対する接続確認処理は、この初期化処理の一環として行われる。初期化処理において接続状態が良好であることが確認されたとしても、分析が開始されるとプローブ等の動作振動によって読取装置150Aと制御装置500との間の接続状態が不良となる可能性がある。そこで、分析装置1000は、分析装置1000の電源がオンになった場合に加え、試薬情報の読取処理を行う場合(すなわち、試薬保冷庫700の蓋720が開閉された場合)にも読取装置150Aに対する接続確認処理を行う。分析装置1000の電源がオンになったこと、又は、試薬保冷庫700の蓋720が開閉されたことを検知した場合には(ステップS1210においてYES)、制御装置500は、処理をステップS1220に移行する。一方、分析装置1000の電源がオンになったことも、試薬保冷庫700の蓋720が開閉されたことも検知しなかった場合には(ステップS1210においてNO)、制御装置500は、図12に示す処理を終了する。
ステップS1220において、制御装置500は、読取装置150Aにコマンドを送信する。当該コマンドは、読取装置150Aに対するコマンドであり、制御装置500に対し信号を送ることを指示するコマンドである。
次いで、制御装置500は、読取装置150Aから信号を受信したか否かを判定する(ステップS1230)。読取装置150Aから信号を受信した場合には(ステップS1230においてYES)、制御装置500は、図12に示す処理を終了する。一方、読取装置150Aから信号を受信していない場合には(ステップS1230においてNO)、制御装置500は、処理をステップS1240に移行する。
ステップS1240において、制御装置500は、読取装置150Aにコマンドを送信してから2秒経過したか否かを判定する。なお、読取装置150Aにコマンドを送信してからの経過時間は2秒に限られず、分析装置1000の性能に合わせた所定時間であればよい。読取装置150Aにコマンドを送信してからから2秒経過した場合には(ステップS1240においてYES)、制御装置500は、処理をステップS1250に移行する。一方、読取装置150Aにコマンドを送信してからまだ2秒経過していない場合には(ステップS1240においてNO)、制御装置500は、処理をステップS1230に移行する。
ステップS1250において、制御装置500は、接続状態の異常を報知する。異常を報知する形態は任意であり、入出力装置600への表示(例えば、文字又は画像の表示)で知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)で知らせてもよいし、所定のランプを点灯(点滅を含む)させてもよい。ユーザは、この報知を契機に読取装置150Aと制御装置500との間の接続状態を復帰させることにより、接続不良を解消することができる。
ステップS1250の後、制御装置500は、図12に示す処理を終了する。
図12に示す処理により、分析装置1000は、分析装置1000の電源がオンになった場合、又は、試薬情報の読取処理を行う場合に、試薬容器Aに付されている識別子から読み取った情報を制御装置500に通知できる状態にあるか否かを確認することができる。
図13は、サンプル情報を読み取るための読取装置150Bに対する接続確認処理を示すフローチャートである。図13に示す処理は、制御装置500が行う処理であり、CPU510が記憶装置530に格納されている制御プログラムを実行することにより実現される。
まず、制御装置500は、分析装置1000の電源がオンになったこと、又は、サンプルラック800のラックカバー810が開閉されたことを検知したか否かを判定する(ステップS1310)。分析装置1000では、設定された時刻になると電源が自動でオンになり、初期化処理が行われる。初期化処理においては、各種設定の初期化、プローブの洗浄、及び、ポートの洗浄等が行われる。読取装置150Bに対する接続確認処理は、この初期化処理の一環として行われる。初期化処理において接続状態が良好であることが確認されたとしても、分析が開始されるとプローブ等の動作振動によって読取装置150Bと制御装置500との間の接続状態が不良となる可能性がある。そこで、分析装置1000は、分析装置1000の電源がオンになった場合に加え、サンプル情報の読取処理を行う場合(すなわち、サンプルラック800のラックカバー810が開閉された場合)にも読取装置150Bに対する接続確認処理を行う。分析装置1000の電源がオンになったこと、又は、サンプルラック800のラックカバー810が開閉されたことを検知した場合には(ステップS1310においてYES)、制御装置500は、処理をステップS1320に移行する。一方、分析装置1000の電源がオンになったことも、サンプルラック800のラックカバー810が開閉されたことも検知しなかった場合には(ステップS1310においてNO)、制御装置500は、図13に示す処理を終了する。
ステップS1320において、制御装置500は、読取装置150Bにコマンドを送信する。当該コマンドは、読取装置150Bに対するコマンドであり、制御装置500に対し信号を送ることを指示するコマンドである。
次いで、制御装置500は、読取装置150Bから信号を受信したか否かを判定する(ステップS1330)。読取装置150Bから信号を受信した場合には(ステップS1330においてYES)、制御装置500は、図13に示す処理を終了する。一方、読取装置150Bから信号を受信していない場合には(ステップS1330においてNO)、制御装置500は、処理をステップS1340に移行する。
ステップS1340において、制御装置500は、読取装置150Bにコマンドを送信してから2秒経過したか否かを判定する。なお、読取装置150Bにコマンドを送信してからの経過時間は2秒に限られず、分析装置1000の性能に合わせた所定時間であればよい。読取装置150Bにコマンドを送信してから2秒経過した場合には(ステップS1340においてYES)、制御装置500は、処理をステップS1350に移行する。一方、読取装置150Bにコマンドを送信してからまだ2秒経過していない場合には(ステップS1340においてNO)、制御装置500は、処理をステップS1330に移行する。
ステップS1350において、制御装置500は、接続状態の異常を報知する。異常を報知する形態は任意であり、入出力装置600への表示(例えば、文字又は画像の表示)で知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)で知らせてもよいし、所定のランプを点灯(点滅を含む)させてもよい。ユーザは、この報知を契機に読取装置150Bと制御装置500との間の接続状態を復帰させることにより、接続不良を解消することができる。
ステップS1350の後、制御装置500は、図13に示す処理を終了する。
図13に示す処理により、分析装置1000は、分析装置1000の電源がオンになった場合、又は、サンプル情報の読取処理を行う場合に、サンプル容器Bに付されている識別子から読み取った情報を制御装置500に通知できる状態にあるか否かを確認することができる。
[態様]
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)一態様に係る自動分析装置は、検体と試薬とを反応させることにより検体の生化学分析を行う自動分析装置であって、自動分析装置の動作を制御する制御部と、識別子が付された複数の容器が配置される容器配置部と、容器配置部の少なくとも一部を覆う蓋体と、蓋体の開閉を検知する検知部と、容器に付されている識別子を読み取るとともに、読み取った識別子を制御部へ送信する読取部と、容器配置部における容器の配置情報と当該容器に収容された収容体の情報とを対応付けて記憶する記憶部とを備える。識別子は、当該識別子が付された容器に収容されている収容体を識別可能な情報である。制御部は、読取部から受信した識別子に基づいて記憶部の情報を更新する。制御部は、自動分析装置の電源がオンになったとき、または、検知部が蓋体の開閉を検知したときに、読取部にコマンドを送信する。読取部は、コマンドを受信したときにレスポンスを制御部に送信する。制御部は、コマンドを送信した後にレスポンスを受信しない場合に、異常を報知する信号を出力する。
第1項に記載の自動分析装置によれば、自動分析装置の電源がオンになったとき、または、蓋体の開閉が検知されたときに、制御部と読取部との接続状態が確認され、接続不良と判断された場合には、接続不良であることが報知される。これにより、容器から読み取った情報を制御部に通知できる状態にあるか否かを確認することができる。
(第2項)第1項に記載の自動分析装置において、読取部は、識別子を読み取ることができなかった場合には、識別子を読み取ることができなかったことを制御部へ通知し、制御部は、識別子を読み取ることができなかったことを示す信号を出力する。
第2項に記載の自動分析装置によれば、読取エラーを解消する契機をユーザに与えることができる。読取エラーが報知された場合には、ユーザは読取エラーを解消した上で分析の開始を指示することができる。これにより、情報が更新された状態で分析が開始されることとなるので、情報が更新されないまま誤った分析がなされることを未然に防ぐことができる。
(第3項)第1項又は第2項に記載の自動分析装置において、容器は、試薬を収容する試薬容器であって、識別子は、当該識別子が付された試薬容器に収容されている試薬を識別可能な情報である。
第3項に記載の自動分析装置によれば、試薬情報が更新されないまま誤った分析がなされることを未然に防ぐことができる。
(第4項)第1項又は第2項に記載の自動分析装置において、容器は、検体を収容する検体容器であって、識別子は、当該識別子が付された検体容器に収容されている検体を識別可能な情報である。
第4項に記載の自動分析装置によれば、検体情報が更新されないまま誤った分析がなされることを未然に防ぐことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。