JP2021112575A - キッチンタオルロール - Google Patents

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Abstract

【課題】坪量を下げずにシートの柔らかさに優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、ロールの使い始めから終わりまでミシン目がカットし易く、持ち運びや保管時の省スペース性に優れたキッチンタオルロールを提供する。【解決手段】一方の面が凸部となり、対応する反対面が凹部となる凹凸2を複数有すると共に、幅W方向に沿ってミシン目10mを有するキッチンタオルシート10xをロール状に巻き取ったキッチンタオルロール10であって、巻長が15〜60m、巻直径が85〜155mm、ロール幅200mm当たりのコアを含むロール質量が130〜530g、ロール幅76mm当たりのミシン目のJIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTが3〜25N/76mmである。【選択図】図1

Description

この発明は、キッチンタオルシートを巻き取ったキッチンタオルロールに関するものである。
キッチンタオルシートは、主に4ロール又は2ロール等を単位として包装されたものが市販されている。これらの包装体は嵩張るため、購入時に持ち運べる量は限られており、一度に購入できる量は自ずと限度がある。また、家庭や職場、公共施設などにおいても保管スペースが限られている。
このようなことから、キッチンタオルシートのシート1枚当りの坪量を19〜23g/mに低減し、巻長を11〜12mに長くしたキッチンタオルロールが開発されている(特許文献1)。
特開2010-68972号公報
ところで、一般にキッチンタオルロールは幅方向に沿ったミシン目を複数有しており、ミシン目でシート状にカットして使用するようになっている。しかしながら、長尺のキッチンタオルロールは重いため、使い始めの際はキッチンタオルロールの重さで回転しにくく、ミシン目の強度が弱いと、必要な長さのシートにカットする前に途中のミシン目で切れてしまうという問題がある。
一方、ミシン目を入れなかったり、ミシン目の強度を強くすると、使い始めでは所望の長さでシートをカットし易いが、使い終わりに近づいてロールが軽くなるとシートをカットし難くなる。シートの強度を高くした場合も、ミシン目の強度が高くなるので同様な傾向にあると共に、シートの柔らかさが劣る。
一方、長尺のキッチンタオルロールを得るために紙の坪量を下げると、強度が低下すると共に使用感や嵩高さが低下する。そこで、シートにエンボスを付与して適度な凹凸状にすると、柔らかさを向上できると考えられる。
ところが、長尺のキッチンタオルロールのシートにエンボスを付与すると、ミシン目の強度が弱くなり、ロールの使い始めから終わりまでカットし易い強度を確保することが困難になることが判明した。これは、エンボスを入れると繊維間結合が緩んだり切れたりする傾向にあるため、ミシン目の強度に影響するツナギ部の強度が弱くなるためと考えられる。そして、一般に紙は、最も弱い部分を起点に破断するので、エンボスが入ったツナギ部から破断すると想定される。
従って本発明は、坪量を下げずにシートの柔らかさに優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、ロールの使い始めから終わりまでミシン目がカットし易く、持ち運びや保管時の省スペース性に優れたキッチンタオルロールの提供を目的とする。
本発明者らは、キッチンタオルシートのシートの柔らかさとカットし易さを両立するためには、エンボス等による凹凸を付与すると共に、凹凸によりミシン目の強度が低下しないよう、凹凸の凹部の深さを所定の範囲にすることで、ロールの使い始めから終わりまでカットし易いミシン目の強度を見出した。
上記課題を解決するため、本発明のキッチンタオルロールは、一方の面が凸部となり、対応する反対面が凹部となる凹凸を複数有すると共に、幅方向に沿ってミシン目を有するキッチンタオルシートをロール状に巻き取ったキッチンタオルロールであって、巻長が15〜60m、巻直径が85〜155mm、ロール幅200mm当たりのコアを含むロール質量が130〜530g、ロール幅76mm当たりの前記ミシン目のJIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTが3〜25N/76mmである。
前記凹凸の凹部の深さが0.04〜0.55mmであることが好ましい。
(前記ミシン目のDMDT)×1000/(前記ロール質量)で表される比が11〜95N/(76mm×g)であることが好ましい。
前記ミシン目を含まない前記キッチンタオルシートのDMDTが25〜90N/76mmであることが好ましい。
前記ミシン目の、{ツナギ部の長さ/(ツナギ部の長さ+切込線の長さ)}×100で表されるボンド率が5〜50%であことが好ましい。
前記ミシン目のツナギ部の長さが0.3〜2.8mmであることが好ましい。
前記ミシン目の切込線の長さが2.5〜20.0mmであることが好ましい。
前記凹凸がエンボスであることが好ましい。
この発明によれば、坪量を下げずにシートの柔らかさに優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、ロールの使い始めから終わりまでミシン目がカットし易く、持ち運びや保管時の省スペース性に優れたキッチンタオルロールを得ることができる。
本発明の実施形態に係るキッチンタオルロールの外観を示す斜視図である。 ロール表面及び裏面に設けられたエンボスを示す断面図である。 ロール巻取り加工機の一例を示す図である。 エンボス深さの測定方法を示す図である。 エンボス深さの測定方法を示す別の図である。 図5に続く図である。 マシンワインダーの一例を示す図である。 ミシン目の強度を測定する方法を示す図である。 エンボスが流れ方向(MD方向)につながっている場合のエンボス深さの測定方法を示す図である。 エンボス1個当たりの平均面積(大きさ)と、シート間隙(嵩高さ)との関係を示す図である。 ロール密度の測定方法を示す図である。 吸水量の測定方法を示す図である。 ダブルエンボス加工装置の一例を示す図である。
以下に本発明の好ましい実施形態につき説明するが、これらは例示の目的で掲げたものでこれらにより本発明を限定するものではない。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るキッチンタオルロール10は、凹凸を複数有すると共に、ミシン目10mを有するキッチンタオルシート10xをロール状に巻き取ったキッチンタオルロールであって、巻長(巻き取り長さ)が15〜60m、巻直径DRが85〜155mm、後述するロール質量が130〜500g、後述するミシン目の引張強さDMDTが3〜25N/76mmである。
なお、キッチンタオルシート10xのロール外側の表面をロール表面(又はキッチンタオルシートの表面)10aとし、ロール内側の表面をロール裏面(又はキッチンタオルシートの裏面)10bとする。
キッチンタオルロール10の巻長が15m未満であると、1ロール当りの巻長が短くなり、保管時の省スペースが図れない。ロールの巻長が60mを超えるものは、巻直径DRが大きくなり過ぎてキッチンタオルシートホルダー等に収まり難くなる。
巻長は、好ましくは20〜50m、より好ましくは30〜40mである。
巻直径DRが85mm未満であると、巻長も15m未満に短くなる。巻直径DRが155mmを超えると、キッチンタオルシートホルダー等に収まり難くなる。
巻直径DRは、好ましくは95〜138mm、より好ましくは111〜130mmである。
ロール幅Wが200mm当たりのコア(巻芯)を含むロール質量が130〜530gである。ここで、ロール幅Wが200mmと異なる場合は、Wを200mmに換算してロール質量を求める。例えば、ロール幅Wが210mmの場合、そのロール質量に係数(200/210)を乗じた質量を、Wが200mm当たりのロール質量とする。
上記ロール質量が130g未満であると、1ロール当りの巻長が短くなり、保管時の省スペースが図れない。ロール質量が530gを超えるものは、巻直径DRが大きくなり過ぎてキッチンタオルシートホルダー等に収まり難くなる。
上記ロール質量は、好ましくは160〜460g、より好ましくは220〜360gである。
ロール幅Wが76mm当たりのミシン目10mのJIS P8113に基づく乾燥時の縦方向(MD)の引張強さDMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)が3〜25N/76mmである。
DMDTは、図8に示すように、シート(キッチンタオルシート)10xのMD方向(幅Wに垂直な長手方向)を長さL1=250mmの長手方向とした短冊状で、ロール幅W方向の長さを76mmとする試験片S1を切り出して測定する。引張試験機のつかみ具とつかみ具の間隔を100mmとし、この間隔が100mmを確保できれば、試験片の長さL1=250mmより短くしても影響ない。試験片S1の長手方向のほぼ中央に1つのミシン目10mが入るようにする。そして、1つのミシン目10mを分断するように、ミシン目10mの前後にMD方向に引張速度300mm/minの条件で引っ張って測定する。
上記ミシン目のDMDTが3N/76mm未満であると、特に使い始めにキッチンタオルロールが重さで回転しにくい場合に、ミシン目の強度が弱くなって必要な長さのシートにカットする前に途中のミシン目で切れてしまう。上記ミシン目のDMDTが25N/76mmを超えると、ミシン目の強度が高過ぎて、使用が進んでロールが軽くなるとシートをカットし難くなる。
上記ミシン目のDMDTは、好ましくは4〜20N/76mm、より好ましくは6〜12N/76mmである。
<凹凸>
本発明のキッチンタオルロール10(キッチンタオルシート10x)は、凹凸を複数有する。この凹凸は、例えばエンボス加工により施すことができる。本発明では、シートが2plyの場合シングルエンボス又はダブルエンボスとなるが、ダブルエンボスが好ましい。もちろん、公知のダブルハイトのエンボスロールを用いたり、シングルエンボスを複数回、施すことができる。又、シートが1plyの場合、シングルエンボスとなる。
ダブルエンボス加工は、シートにそれぞれエンボス加工し、各シートのエンボスの凸面同士を対向させるように2プライに積層したものである。ダブルエンボスにすることで、紙厚や比容積を高くし易く、吸水性をより高くしやすい。また、ダブルエンボスにする際は、エッジエンボスや糊によって2プライにすることができるが、糊を使用するとエンボスの形状を保ちやすくできるため好ましい。また、ダブルエンボスとしては、ネステッドエンボスが好ましい。
また、エンボスパターン(エンボスの大きさ、深さ、個数、面積率)を適宜変更することができる。
以下、凹凸としてエンボスを例に説明する。
シングルエンボスは、図3に示すように、キッチンタオルシート10xの一方の面からのみ、エンボスロール151のエンボス凸部を押し当てて形成される。
図2は、キッチンタオルロール10(キッチンタオルシート10x)に設けられたシングルエンボス2を示す断面図である。
なお、図2の例では、キッチンタオルシート10xは2プライからなり、図2の上部がロール表面10a側に対応する。キッチンタオルシート10xのエンボスロール151を押し当てた面(図2の表面)に凹部2R、裏面に凸部2Pが現れるエンボス(シングルエンボス)2が形成される。
なお、図2(a)はエンボス深さが深い場合、図2(b)はエンボス深さが浅い場合である。
この場合、エンボス処理後のキッチンタオルシート10xの紙厚t2(この紙厚は、キッチンタオルシート10xの表面の非エンボス部と、裏面のエンボスの凸部2Pの間の距離を反映する)が同一であってもエンボス深さ(凹凸の凹部の深さに相当)Dが深くなるようにエンボスを付けた図2(a)の方が、シートが柔らかく風合いに優れる。これは、エンボスの凹凸が顕著な図2(a)の方が、原紙の紙厚に対する嵩が高くなり(密度が低くなり)、変形し易くなってシートの柔らかさが向上するためと考えられる。
又、図2(a)の場合、エンボス深さDを深くするには、その分だけシート1枚当りの紙厚t1を薄くして凹凸を顕著にする必要がある。
エンボス深さを確保できるよう、パルプ配合や叩解条件、クレープ率等により、エンボス処理前のシートの紙厚をコントロールすることができる。
一方、キッチンタオルシート10xの表面にエンボスを設けずに平滑にすると、滑らか過ぎて表面がパリパリに感じ、シートの柔らかさが劣る。なお、キッチンタオルシート10xのうち、調理時等に水が付着し易いロール外側(ロール表面10a側)に、エンボスの凹部2Rを設けると、凹部2Rは凸部より触感が良いため、シートの柔らかさが向上する。
又、キッチンタオルシート(シート)10xの柔らかさを確保する手段としては、表面に凹凸を付与するものであれば、エンボスに限らず、例えば、凹凸ファブリックを用いて抄紙時にウェブに凹凸を付けてもよい。又、この場合、凹凸の凹部の深さは、エンボス深さDに相当する範囲とすると良い。
また、図13にダブルエンボス加工装置の例を示す。エンボス加工装置においては、エンボス2の凸面40xが形成された凸エンボスロール40と、対向するゴム製抑えロールとの間に、ロール表面10a側のシートを通し、エンボス2を付与する。同様に、エンボス2の凸面40xが形成された凸エンボスロール40と、対向するゴム製抑えロールとの間に、ロール裏面10b側の1プライのシートを通し、エンボス2を付与する。そして、双方のシートのエンボスの凸面に適宜糊(プライボンド)6を塗布した後、重ね合せロールにて、各シートのエンボスの凸面同士が対向するようにして2プライに重ねて接着され、適宜巻き取る。もちろん、10a側のシートがロール裏面、10b側のシートがロール表面側となっても良い。
エンボス1個当たりの平均面積は好ましくは1.0〜10.0mm/個、より好ましくは1.5〜7.0mm/個、さらに好ましくは2.0〜5.0mm/個である。
図10(a)は、エンボス1個当たりの平均面積が1.0〜10.0mm/個である場合を示し、個々のエンボス2の面積(大きさ)が適切であるので、ダブルエンボス(ネステッドエンボス)としたときに、各シート10a、10bに設けられたエンボス2が糊6を介して適度な隙間で重ねられ、シート間隙が大きくなって嵩高くなり、吸水性が高くなる。
一方、図10(b)に示すように、個々のエンボス2の面積(大きさ)が小さくなり過ぎると、ダブルエンボス(ネステッドエンボス)としたときに、各シート10a、10bに設けられたエンボス2がぴったり合わせられ、シート間隙が小さくなって嵩が低くなり、吸水性が低下する。
又、図10(c)に示すように、個々のエンボス2の面積(大きさ)が大きくなり過ぎても、ダブルエンボス(ネステッドエンボス)としたときに、各シート10a、10bに設けられたエンボス2がぴったり合わせられ、シート間隙が小さくなって嵩が低くなり、吸水性が低下する。
又、凹凸の凹部の深さDは、マイクロスコープを用いて測定して求める。
マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR−3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR−H1A」を使用することができる。又、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。なお、測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更しても良い。
まず、図4に示すように、エンボスの周縁frの最長部aを求める。図5(a)は、マイクロスコープによるX−Y平面上の高さプロファイルを示し、キッチンタオルシート表面の高さが濃淡で表されることがわかる。図5(a)の濃色部位が個々のエンボス2を示し、図5(a)から1つのエンボス2の最長部aを見分けることができる。この最長部aを横切る線分A−Bを引くと、図5(b)に示すようにエンボス2の高さ(測定断面曲線)プロファイルが得られる。ここで、X−Y平面画像の色の濃淡で、エンボスの凸部(非エンボス部)と凹部がわかるので、凸部と凹部が隣接している部分を横切るように線分A−Bを決めればよい。
ここで、図5(b)の高さプロファイルは、実際のキッチンタオルシートの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(キッチンタオルシートの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、図6に示すように、高さプロファイルの断面曲線Sから「輪郭曲線」Wを計算し、この輪郭曲線Wのうち、上に凸となる2つの変曲点P1,P2と、変曲点P1,P2で挟まれる最小値を求め、深さの最小値Minとする。さらに、変曲点P1,P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。
このようにして、凹凸の凹部の深さD=最大値Max−最小値Minとする。又、変曲点P1,P2のX−Y平面上の距離(長さ)を最長部aの長さと規定する。なお、「輪郭曲線」は、断面曲線からλc:800μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。なお、λcを、隣接するエンボス同士のP1の間隔(これを、エンボスピッチという)以上に設定すると、ピークをノイズと認識してしまう可能性があるので、λcをエンボスピッチ未満とする。例えば、エンボスピッチが800μm以下の場合、例えばλc:250μmに設定する。隣接するエンボス同士のP1の間隔は、図6の左又は右に繋がる次のエンボスについて同様にP1,P2を求め、隣接するエンボス同士でP1、P2、P1と並ぶときの2つのP1の間隔である。
同様にして、図5(a)において最長部aに垂直な方向での最長部bについても凹凸の凹部の深さDを測定し、最長部aとbの各凹凸の凹部の深さDのうち、大きい方の値を凹凸の凹部の深さDとして採用する。以上の測定を、キッチンタオルシート10xの表面10aの任意の10個のエンボス2について行い、その平均値を最終的な凹凸の凹部の深さDとして採用する。
ただし、図9に示すように、エンボス2が流れ方向(MD方向)につながっている場合、最長部aが巻長と同じになってしまい、高低差が得られず、凹部の深さDを測定できない。そこで、エンボス2が繋がる方向(MD方向)に直交する幅W方向に、エンボス2を跨ぐように線分A−Bを引き、凹部の深さDを測定することができる。
同様に、エンボス2が幅W方向(CD方向)につながっている場合、流れ方向(MD方向)に、エンボス2を跨ぐように線分A−Bを引き、凹部の深さDを測定する。
なお、凹凸の凹部の深さDを測定する際、測定面は表面10a側とする。
また、凹凸の凹部の深さDを求める際、任意の10個のエンボス(凹凸)2を選定する際には、キッチンタオルロール10の外巻の端部(キッチンタオルシートを使用し始める位置)から、キッチンタオルロール10の巻長の10%に当たる部分(例えば、巻長が30mの場合、端部から30m×10%=3mの部分)において、幅方向に沿って並ぶエンボス2の中から任意の10個を選ぶ。又、幅方向Wにエンボス2が10個未満しか存在しない場合は、そのエンボス2に隣接する外巻側又は内巻側のエンボス2の群の中から不足する個数のエンボスを選べばよい。なお、測定するエンボス2がミシン目に当たる場合は、ミシン目に隣接する外巻側のエンボス2の群を対象に測定する。
凹凸の凹部の深さDは好ましくは0.04〜0.55mmであり、より好ましくは0.10〜0.45mm、更に好ましくは0.15〜0.35mmである。
深さDが上記範囲より小さいと、凹凸の度合いが小さくなって嵩が低くなり(密度が高くなり)、シートの柔らかさを向上させることが困難な場合がある。深さDが上記範囲を超えると、凹凸が顕著になり過ぎて嵩が高くなり過ぎ(密度が低くなり過ぎ)、巻直径DRが大きくなり過ぎ、ペーパーホルダーにキッチンタオルロール10を装着し難くなる場合がある。また、ミシン目の強度が低くなり過ぎ、必要な長さのシートにカットする前に途中のミシン目で切れてしまうことがある。
また、最長部aと最長部bの積(a×b)をエンボスパターンの面積とし、10個の平均値を上記のエンボス1個当たりの平均面積とする。また、エンボスパターンの面積率(キッチンタオルの表面のうち、エンボスパターンが存在する部分の割合)は、3%以上50%以下であることが好ましく、5%以上45%以下であることがより好ましく、8%以上30%以下であることが更に好ましい。
なお、キッチンタオルのエンボスパターンの面積率を求めることが難しい場合、エンボスロール151(図3参照)の凸部の面積率をエンボスパターンの面積率とすることができる。凸部の面積率は、エンボスロール151の平面像にて、エンボスロール151の全投影面積(矩形状)に対する凸部の面積率として求める。
ミシン目を含まないJIS P8113に基づく乾燥時の縦方向(MD)のキッチンタオルシートの引張強さDMDTが好ましくは25〜90N/76mm、より好ましくは35〜75N/76mm、さらに好ましくは45〜60N/76mmである。
図8に示すように、シート(キッチンタオルシート)10xのミシン目10mが入らない部位で、試験片S1と同一寸法の試験片S3を切り出し、MD方向に引っ張って測定する。ミシン目を含まないキッチンタオルシートのDMDTを上記範囲とすることで、上記ミシン目のDMDTも所定の範囲にすることができる。
なお、本発明で規定するすべてのDMDTとDCDTは、引張試験機のつかみ具とつかみ具の間隔を100mmとし、引張速度300mm/minの条件で測定を行う。シートのミシン目の間隔が小さく、つかみ具とつかみ具の間隔を100mm確保できない場合は、つかみ具とつかみ具の間隔を測定するシートの長さの80%とする。
(上記ミシン目のDMDT)×1000/(上記ロール質量)で表される比が好ましくは11〜95N/(76mm×g)であり、より好ましくは15〜75N/(76mm×g)、更に好ましくは22〜50N/(76mm×g)である。
ミシン面のDMDTの値が同じであっても、ロールの質量が重ければ使い始めに切れ易くなるので、ロール質量当たりのミシン面のDMDTで表される上記比を規定した。
上記比が11N/(76mm×g)未満であると、ミシン目の強度が弱くなり、必要な長さのシートにカットする前に途中のミシン目で切れてしまうことがある。上記比が95N/(76mm×g)を超えると、ミシン目の強度が高過ぎてシートをカットし難くなる場合がある。なお、単位は(N/76mm)/gをN/(76mm×g)と表記した。
図1に示すように、ミシン目10mのうち、MD方向にシートが繋がっている部位がツナギ部10m1である。又、幅W方向に隣接するツナギ部10m1の間に位置し、MD方向に切れ目となっている部位が切込線10m2である。又、幅W方向に沿ってツナギ部10m1及び切込線10m2の長さを規定する。
ここで、ミシン目10mの、{ツナギ部10m1の長さ/(ツナギ部10m1の長さ+切込線10m2の長さ)}×100)で表されるボンド率が好ましくは5〜50%であり、より好ましくは8〜35%、更に好ましくは10〜20%である。
ボンド率を上記範囲に管理することで、ミシン目10mの強度(DMDT)を上述の範囲に確実に管理できる。
ボンド率が5%未満であるとミシン目10mの強度が弱くなり、必要な長さのシートにカットする前に途中のミシン目で切れてしまう場合がある。一方、ボンド率が50%を超えると、ミシン目10mの強度が強くなり、ミシン目の強度が高過ぎてシートをカットし難くなる場合がある。
又、ツナギ部10m1の長さが好ましくは0.3〜2.8mmであり、より好ましくは0.6〜2.3mm、更に好ましくは0.9〜1.8mmである。
又、切込線10m2の長さが好ましくは2.5〜20.0mmであり、より好ましくは4.0〜15.0mm、更に好ましくは5.0〜10.0mmである。
ツナギ部10m1及び切込線10m2の長さを上記範囲に管理することで、ボンド率、ひいてはミシン目10mの強度(DMDT)を上述の範囲に確実に管理できる。
ミシン目を含まないJIS P8113に基づく乾燥時の横方向(CD)のキッチンタオルシートの引張強さDCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)が好ましくは9〜35N/76mm、より好ましくは12〜30N/76mm、更に好ましくは15〜24N/76mmである。
DCDTが上記値未満であると、やぶれ易くて実用に適さないことがある。DCDTが上記値より高いと硬くなり、シートの柔らかさが損なわれることがある。
なお、キッチンタオルシートの抄紙の流れ方向を「縦方向」とし、流れ方向に直角な方向を「横方向」とする。
ロール密度は、好ましくは0.10〜0.30g/cm、より好ましくは0.11〜0.27g/cm、さらに好ましくは0.12〜0.20g/cmである。
キッチンタオルロール10のロール密度が0.10g/cm未満であるものは、巻長当たりの巻直径が過大となり、保管時の省スペースが図れない場合がある。ロール密度が0.30g/cmを超えるものはロールの巻きが固くなり過ぎ、エンボスが潰れる場合がある。
なお、ロール密度は、図11に示すように、コアCを除く1個のキッチンタオルロール10の底面積Sにロール幅(高さ)Wを乗じた値(つまり、コアCを除く1個のキッチンタオルロール10の体積)を求め、コアCを除く1個のキッチンタオルロール10の質量をこの体積で除して求める。
例えば、コアCを除くロール質量が281g、巻直径119mm、コアの直径(外径)が39mm、ロール幅(高さ)が190mmの場合、ロール密度=281g÷[{3.14×(119mm÷2÷10)−3.14×(39mm÷2÷10)}×(190mm÷10)]=0.15g/cmとなる。なお、コア(紙管)直径は、ロール中心孔の直径であり、コアがある場合はコアの外径とし、コアが無い場合はロール2の中心孔の直径とする。コアがある方が、ロール使用時にロールの形状が安定するため好ましい。
コア(巻芯)の外径が好ましくは20〜60mmであり、より好ましくは27〜53mm、さらに好ましくは35〜45mmである。なお、コアの無いキッチンタオルロールの場合は、キッチンタオルロールの内径をコアの外径とみなす。また、ロール幅200mm当たりのコアの質量は、4〜14gである。ロール幅200mm当たりのコアの質量が4g未満の場合、コアが潰れる場合がある。一方、ロール幅200mm当たりのコアの質量が14gを超えると、コストアップになる場合がある。ロール幅200mm当たりのコアの質量は、好ましくは5〜13g、より好ましくは7〜11gである。
キッチンタオルシート10xのシートの製品ply数当たりの坪量が好ましくは26〜58g/m、より好ましくは32〜52g/m、更に好ましくは38〜46g/mである。
又、シートの紙厚が好ましくは1.0〜3.2mm/10枚、より好ましくは1.2〜2.5mm/10枚、更に好ましくは1.4〜2.0mm/10枚である。ply数には制限がないが、好ましくは1〜3ply、より好ましくは2plyである。
シートの坪量及び紙厚を上記範囲とすると、巻長、巻直径DRを上記範囲に調整し易くなるので好ましい。また、キッチンタオルシート使用時の触感、吸水性や強度等の使用感が良好になる。
シートの坪量及び紙厚を上記範囲に調整する方法としてはエンボス条件を規定する。
キッチンタオルシート10xのシートの製品ply数当たりの坪量が26g/m以下であるか、又は紙厚が1.00mm/10枚未満であると、吸水性や強度が低下すると共に使用感(嵩高さ)も低下する場合がある。キッチンタオルシート10xの1枚当りの坪量が58g/mを超えるか、又は紙厚が3.20mm/10枚を超えると、キッチンタオルシートが厚くなり、ロールの巻直径DRが155mmを超え、キッチンタオルシートホルダーに収まり難くなる場合がある。
キッチンタオルシートの比容積が好ましくは4〜15cm/g、より好ましくは5〜12cm/g、さらに好ましくは6〜9cm/gである。
比容積が4cm/g未満であると、シートの柔らかさが乏しくなったり、バルク(嵩高さ)が低下して水分の吸収性に劣る場合がある。一方、比容積が15cm/gを超えると、シートのバルク(嵩高さ)は高くなるが、紙厚が高くなって巻直径が大きくなる場合がある。
キッチンタオルシートの吸水度は、好ましくは1.0〜5.0秒、より好ましくは1.0〜4.0秒、さらに好ましくは1.0〜3.0秒である。
シートの吸水度は、旧JIS−S3104法の吸水度に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で、製品プライ数のシートに0.1mlの水を滴下し、水滴がシートに吸収される時間(秒)を測定する。なお、吸水度が1.0秒未満の場合であっても、1.0秒とみなす。吸水度が5.0秒を超えると、吸水性が劣る場合がある。吸水度が1.0秒未満の場合であっても特に問題はない。
製品プライ数のシートの面積当たりの吸水量が105〜250Water−g/mであることが好ましい。吸水量が105Water−g/m未満であると吸水性が低下し、250Water−g/mを超えるとコストアップになったり、風合いが硬くなることがある。
吸水量が130〜220Water−g/mであることがより好ましく、150〜190Water−g/mであることがさらに好ましい。
製品プライ数のシートの質量当たりの吸水量が2.7〜5.4Water−g/gであることが好ましい。吸水量が2.7Water−g/g未満であると吸水性が低下し、5.4Water−g/gを超えると紙厚が高くなって巻直径DRも大きくなり、ロールホルダー等に収まり難くなることがある。
吸水量が3.2〜4.9Water−g/gであることがより好ましく、3.7〜4.5Water−g/gであることがさらに好ましい。
なお、上述のように吸水量の単位として、Water−g/mは、シートの面積当たりの吸水量であり、坪量を高くすればWater−g/mは向上するが、その分コストアップになる。一方、Water−g/gは、シートの質量当たりの吸水量であり、坪量を高くしてもWater−g/gは単純に向上せず、シートの紙厚(比容積)を高くすることで、Water−g/gも高くなる。
つまり、吸水量の単位として、Water−g/mとWater−g/gの両方の好適な範囲を規定することで、コスト及び紙厚(嵩高さ)を両立しつつ吸水性を確保できる。
各吸水量は、図12に示すようにして測定する。まず、製品プライ数に重ねられたシートを採取し、一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片を作成する。吸水前の試験片の質量を電子天秤で測定しておく。試験片をホルダー(試験片の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ1cm入れ、ホルダーにセットした試験片を蒸留水中に2分間浸漬する。2分浸漬後に試験片をホルダーと共に蒸留水から取り出し、図12に示すように、試験片200の1つの隅部200dに帯210を貼り付ける。帯210は、1plyの一般的なキッチンタオル紙製品を幅2mm×長さ15mmの大きさに切り、試験片の隅部200dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。
次に、ホルダーと試験片200を、隅部200dに対向する隅部200aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて30分間、放置する。その後、ホルダー220と試験片200を水槽から取り出し、帯210とホルダー220を外し、電子天秤で試験片200の質量を測定する。蒸留水に浸す前後での試験片200の質量変化から、試験片1m2当たりの蒸留水の吸水量(Water−g/m)を計算する。
さらに、吸水量(Water−g/m)を試験片の製品プライ数の坪量で割ることにより、吸水量(Water−g/m)/製品プライ数の坪量(g/m)=吸水量(Water−g/g)を算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用した。
なお、本測定は、JIS−P8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
図3はロール巻取り加工機150の一例を示す。原紙ロールは、原反4(シートの紙厚t1)となる。この原反4は、ロール巻取り加工機150にセットされ、エンボスユニット(エンボスロール)151によってシングルエンボス処理された後、巻取り機構153によって上記の巻直径の幅広のキッチンタオルシート原ロール10Wに巻き取られる。その後、この原ロール10Wを所定幅(200mm等)に切り、キッチンタオルロール10となる。
ロール巻取り加工機150は、大別するとサーフェイス方式とセンター方式の2種類がある。サーフェイス方式は巻取るロールを外側から別の複数の駆動ロールで支持しながら巻取る方法であり、巻取られたキッチンタオルロール10は、巻き径のコントロールがし易く、生産速度がより高速となる。センター方式は巻取りロールの中心に通したシャフトの駆動により巻取る方法で、巻取られたキッチンタオルロール10は、比較的柔らかな製品となり、デリケートなエンボスを施した製品に適している。本発明においては、いずれの方法でも巻き取ることができるが、好ましくはサーフェイス方式である。
なお、ロール巻取り加工機150にマシンワインダー100を組み込んだり、ロール巻取り加工機150にカレンダー101、102の両方(2スタック)または片方(1スタック)を組み込み、ロール巻取り加工機にてカレンダー処理、エンボス処理をこの順で行ってもよい。
凹凸の凹部の深さDは、エンボスロール151と対向するゴムロール(図3参照)のニップ幅を適宜調整して制御することができる。ニップ幅は、ロールの特性によっても異なるが、好ましくは20〜60mm、より好ましくは25〜50mm、さらに好ましくは30〜45mmである。ニップ幅が50mmを超えると、エンボスが強くなりすぎて表裏差が大きくなったり、紙厚が高くなってロールの巻直径DRが大きくなってしまう場合がある。一方、ニップ幅が20mm未満であると、エンボスが弱くなってシートの柔らかさが劣る場合がある。ニップ幅は、カーボン紙を用いて測定することができる。測定方法としては、まず、エンボスロールのニップを逃がし、カーボン紙と一般的なコピー用紙を重ねてセットする。次に、エンボスロールにニップをかける。その後、ニップを逃がし、カーボン紙とコピー用紙を取り外す。エンボスロールでニップがかかっていた部分のカーボン紙の色がコピー用紙に転写されるので、ニップ幅を測定することができる。
なお、エンボスロールの凹凸が深ければニップ幅を狭くし、エンボスロールの凹凸が浅ければニップ幅を広くすることで、凹凸の凹部の深さDを調整できる。
ロール巻取り加工機にて同時に、カレンダー、印刷、エンボス付与、ミシン目加工、テールシール、所定幅(200mm等)のカットを行うことができ、キッチンタオルロール10を製造することができる。さらに、その後、フイルム包装加工してキッチンタオルロールの包装体を製造することができる。
シートは木材パルプ100質量%から成っていてもよく、古紙パルプ、非木材パルプを含んでも良い。目標とする品質を得るためには、NBKP(針葉樹クラフトパルプ):LBKP(広葉樹クラフトパルプ)=25〜70:30〜75(質量比)の木材パルプを原料とすることが好ましく、より好ましい範囲はNBKP:LBKP=35〜60:40〜65、更に好ましい範囲はNBKP:LBKP=40〜55:45〜60である。
上記LBKPの材種としてユーカリ属グランディス、及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属から製造されるパルプが好ましい。又、このNBKPとLBKPのパルプ100質量部に対して、牛乳パック由来等の古紙パルプを100質量部まで含むことができる。古紙パルプは品質的バラツキが大きく、配合割合が増えると製品の品質、特に柔らかさに大きく影響するので、このNBKPとLBKPのパルプ100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、最も好ましくは0質量部配合するのが望ましい。
なお、シートに適正な強度を確保するために、通常の手段で原料配合し、パルプ繊維の叩解処理にて強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解としては、叩解前後のパルプにおいて、市販のバージンパルプに対して、JIS-P8121で測定されるカナダ標準ろ水度で20〜350ml、より好ましくは50〜300ml、更に好ましくは100〜250ml濾水度を低減させる。
シートは、紙料にバージン系原料を使用する場合は一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合して抄紙することができる。紙料への添加剤としては最終製品の要求品質に応じ、デボンダー柔軟剤を含めた柔軟剤、嵩高剤、染料、分散剤、乾燥紙力増強剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、吸収性向上剤、湿潤剤などを用いることができる。特に、目的の強度となるよう、公知の乾燥紙力増強剤と湿潤紙力増強剤を添加することが好ましい。
シートとして古紙原料を使用する場合も、上記バージン系の場合と同様の処理を行う。
キッチンタオルシートは、例えば以下のように、(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理及びロール巻取り加工、の順で製造することができる。このうち、(2)については既に説明したので省略する。
(1)抄紙及びクレーピング、
まず、公知の抄紙機のワイヤーパート上で上記紙料からウェブを抄紙し、プレスパートのフェルトへ移動させる。ワイヤーパートの方式としては、丸網式、長網(フォードリニアー)式、サクションブレスト式、短網式、ツインワイヤー式、クレセントフォーマー式などが挙げられる。
そして、ウェブに対し、サクションプレッシャーロール又はサクションなしのプレッシャーロール又はプレスロールなどで機械的に圧縮をしたり、あるいは熱風による通気乾燥などの脱水方法により脱水を続ける。また、サクションプレッシャーロール又はサクションなしのプレッシャーロールは、プレスパートからヤンキードライヤーにウェブを移動させる手段としても使用される。
ヤンキードライヤーに移動されたウェブは、ヤンキードライヤー及びヤンキードライヤーフードで乾燥された後、クレーピングドクターによりクレーピング処理され、リールパートで巻き取られる。
クレーピング(クレープと言われる波状の皺をつけること)は、紙を縦方向(抄紙機上のシート走行方向)に機械的に圧縮することである。そして、キッチンタオルシートのウェブの製造の際、クレーピングドクターによりヤンキードライヤー上のウェブが剥がされ、リールパートで巻き取られるが、ヤンキードライヤーとリールパートの速度差(リールパートの速度≦ヤンキードライヤーの速度)によりクレーピングドクターにてクレープ(皺)が形成される。
キッチンタオルシートに必要な品質、すなわち嵩(バルク感)、柔らかさ、吸水性、表面の滑らかさ、美観(クレープの形状)などは上記速度差で左右される。上記速度差等の条件にもよるが、クレーピング後のリール上のウェブの坪量は、2ply用のシートでは概略13〜30g/m2となり、クレーピング前のヤンキードライヤー上のウェブの坪量より重くなる。上記坪量は、好ましくは16〜26g/m2、より好ましくは19〜23g/m2ある。上記範囲を超えると、強度が高くなって紙がゴワゴワする場合があり、上記範囲未満であると、強度が弱くて破れやすくなる場合がある。
ここで、ヤンキードライヤーとリールのスピード差に基づくクレープ率は次式により定義される。
クレープ率(%)=100×(ヤンキードライヤー速度(m/分)−リール速度(m/分))÷リール速度(m/分)
品質や操業性の良し悪しはこのクレーピングの条件で大方決まり、クレーピング条件を最適とする操業条件が当業者にとって重要な事項となる。本発明においてキッチンタオルシートを製造する際のクレープ率は好ましくは10〜50%、より好ましくは20〜40%、最も好ましくは25〜35%である。
なお、エンボス処理前のキッチンタオルシートの紙厚は、図7ではカレンダー処理後の原反ロール4における紙厚であり、図2の紙厚t1に相当する。但し、後述するように、紙厚は測定荷重3.7kPaで測定した値であるため、図2の紙厚t1を正確に反映したものではない。
又、表1,2に示したエンボス処理後のキッチンタオルシートの紙厚は図2の紙厚t2に相当するが、測定荷重3.7kPaで測定した値であるため、紙厚t2を正確に反映したものではない。
一方、凹凸の凹部の深さ(エンボス深さ)Dはエンボスを圧縮しない生成りの状態での値を測定している。従って、凹凸の凹部の深さDは紙厚t1、t2から計算される値(この値は、エンボスを測定荷重3.7kPaで圧縮した値である)よりは大幅に大きい。
原反4を、例えば図3のロール巻取り加工機150によってエンボス処理し、キッチンタオルロール10を得る。なお、ロール密度は、図3のロール巻取り加工機150において、巻取り機構153で幅広のキッチンタオルシート原ロール10Wに巻き取る際、原ロール10Wを外周側から押圧してシートを順次巻くためのライダーロール154の押圧力を、所定範囲に設定することで調整できる。
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
パルプ組成の含有率が(質量%)NBKP50%、LBKP50%とし、図13に示す装置により、表1〜表3に示すキッチンタオルシート及びキッチンタオルロールを製造した。
以下の評価を行った。
ミシン目及びそれ以外の部位の、乾燥時の縦方向引張り強さDMDTと乾燥時の横方向引張り強さDCDT:JIS P8113に基づいて、キッチンタオルシート(製品プライ数)につき、破断までの最大荷重を測定した。具体的な試験片及び測定方法は既に述べた通りである。
坪量:JIS P8124に基づいて測定し、製品プライ数当たりとした。
紙厚:シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、シートを10枚(2プライの場合は5シート(5組)分)重ねて測定を行った。又、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。そして、得られた1回当りの平均値を枚数で割ってシート1枚当りの紙厚とした。
比容積:シート1枚当たりの厚さを1枚当たりの坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表した。
ロールの質量及びコアの質量:電子天秤を用いて測定した。まず、コアを含むロール質量を測定し、その後、コアの質量を測定した。コアを含むロール質量から、コアの質量を差し引き、コアを含まないロール質量とした。ロール質量は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
巻長:まず、ロールのミシン目とミシン目の間を1シートとし、連続する10シート分の長さを実測し、10で除して1シートの平均長さを算出した。次に、1個のロールのミシン目とミシン目の間の全シート数を実測し、1シートの平均長さに全シート数を乗じて巻長を求めた。例えば、10シート分の長さが1.135m、シート数が300シートの場合、巻長=1.135m×(300/10)=34mとなる。なお、ミシン目がない場合は、1個のロールを巻きだしたシートの全長を実測することにより巻長を求めた。
ロールの巻直径DR、コア外径DI:ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
ロール密度、エンボス深さDは上述の方法で測定した。なお、ロール密度は、ロールの巻直径DRの測定に用いた10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
官能評価は、モニター20人によって行った。評価基準は5点満点で行った。評価基準が3点以上であれば良好である。
なお、坪量、引張強さ、厚さ(紙厚)、ロールの質量及びコアの質量、比容積、巻直径DR、コア外径DI、ロール密度、エンボス深さの測定は、JIS-P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
得られた結果を表1〜表3に示す。
Figure 2021112575
Figure 2021112575
Figure 2021112575
表1〜表3から明らかなように、キッチンタオルロールの巻長、巻直径、及びミシン目の強度(DMDT)が所定の範囲である各実施例の場合、坪量を下げずにシートの柔らかさに優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、ロールの使い始めから終わりまでミシン目をカットし易くすることができた。
一方、巻長を15m未満、巻直径を85mm未満、コアを含むロール質量を130g未満とした比較例1の場合、ロールの交換頻度が多くなった。
巻長が60mを超え、巻直径が155mmを超え、コアを含むロール質量が530gを超えた比較例2の場合、ロール径が大きくなってキッチンタオルシートホルダーに収まり難くなった。
ミシン目の強度(DMDT)が3N/76mm未満の比較例3、5、8の場合、ロールの使い始めでミシン目が不用意にカットされ、必要な長さにカットできなかった。
なお、比較例3は、ミシン目を含まないキッチンタオルシートのDMDTが25N/76mm未満であり、キッチンタオルシート自体の強度が低いためにミシン目の強度が低下し、シート自体も破れやすくなった。
一方、比較例5、8は、ミシン目を含まないキッチンタオルシートのDMDTが25N/76mm以上であり、キッチンタオルシート自体の強度は確保したものの、ミシン目のボンド率が5%未満であるためにミシン目の強度が低下した。
ミシン目の強度(DMDT)が25N/76mmを超えた比較例4、6、7の場合、ロールの使い終わりでミシン目がカットし難くなった。
なお、比較例4は、ミシン目を含まないキッチンタオルシートのDMDTが90N/76mmを超え、キッチンタオルシート自体の強度が高過ぎるためにミシン目の強度が高くなり過ぎた。又、シート自体も固くなって柔らかさに劣った。
一方、比較例6,7は、ミシン目を含まないキッチンタオルシートのDMDTが適切で、キッチンタオルシート自体の強度は適切な範囲であるものの、ミシン目のボンド率が50%を超えたためにミシン目の強度が高くなり過ぎた。
エンボス(凹部)の深さが0.04mm未満である以外は、実施例13と同じ製造条件で製造した比較例9の場合、エンボスが浅すぎるために実施例13よりミシン目の強度が高くなりすぎ、ロールの使い終わりでミシン目がカットし難くなった。
エンボス(凹部)の深さが0.55mmを超えたこと以外は、実施例10と同じ製造条件で製造した比較例10の場合、実施例10よりミシン目の強度が低くなりすぎ、ロールの使い始めでミシン目が不用意にカットされ、必要な長さにカットできなかった。
2 エンボス(凹凸)
10 キッチンタオルロール
10m ミシン目
10m1 ミシン目のツナギ部
10m2 ミシン目の切込線
10x キッチンタオルシート
D エンボス深さ(凹部の深さ)
上記課題を解決するため、本発明のキッチンタオルロールは、一方の面が凸部となり、対応する反対面が凹部となる凹凸を複数有すると共に、幅方向に沿ってミシン目を有するキッチンタオルシートをロール状に巻き取ったキッチンタオルロールであって、巻長が15〜60m、巻直径が85〜155mm、ロール幅200mm当たりのコアを含むロール質量が130〜530g、ロール幅76mm当たりの前記ミシン目のJIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTが3〜25N/76mm、前記凹凸の凹部の深さが0.04〜0.55mmである。
前記ミシン目のDMDT)×1000/(前記ロール質量)で表される比が11〜95N/(76mm×g)であることが好ましい。
前記ミシン目を含まない前記キッチンタオルシートの前記DMDTが25〜90N/76mmであることが好ましい。
前記ミシン目の、{ツナギ部の長さ/(ツナギ部の長さ+切込線の長さ)}×100で表されるボンド率が5〜50%であことが好ましい。
前記ミシン目のツナギ部の長さが0.3〜2.8mmであることが好ましい。
前記ミシン目の切込線の長さが2.5〜20.0mmであることが好ましい。
前記凹凸がエンボスであることが好ましい。

Claims (8)

  1. 一方の面が凸部となり、対応する反対面が凹部となる凹凸を複数有すると共に、幅方向に沿ってミシン目を有するキッチンタオルシートをロール状に巻き取ったキッチンタオルロールであって、
    巻長が15〜60m、巻直径が85〜155mm、ロール幅200mm当たりのコアを含むロール質量が130〜530g、ロール幅76mm当たりの前記ミシン目のJIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTが3〜25N/76mmであるキッチンタオルロール。
  2. 前記凹凸の凹部の深さが0.04〜0.55mmである請求項1記載のキッチンタオルロール。
  3. (前記ミシン目のDMDT)×1000/(前記ロール質量)で表される比が11〜95N/(76mm×g)である請求項1又は2に記載のキッチンタオルロール。
  4. 前記ミシン目を含まない前記キッチンタオルシートのDMDTが25〜90N/76mmである請求項1〜3のいずれか一項に記載のキッチンタオルロール。
  5. 前記ミシン目の、{ツナギ部の長さ/(ツナギ部の長さ+切込線の長さ)}×100で表されるボンド率が5〜50%である請求項1〜4のいずれか一項に記載のキッチンタオルロール。
  6. 前記ミシン目のツナギ部の長さが0.3〜2.8mmである請求項1〜5のいずれか一項に記載のキッチンタオルロール。
  7. 前記ミシン目の切込線の長さが2.5〜20.0mmである請求項1〜6のいずれか一項に記載のキッチンタオルロール。
  8. 前記凹凸がエンボスである請求項1〜7のいずれか一項に記載のキッチンタオルロール。
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